(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】上部尿路への局所薬物送達のための薬物送達装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M37/00 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519695
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 US2019060493
(87)【国際公開番号】W WO2020097476
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514274409
【氏名又は名称】タリス バイオメディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アバーテ・エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・カレン
(72)【発明者】
【氏名】コールキンス・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホー・ドゥック・ホン・リン
(72)【発明者】
【氏名】グリーナウェイ・エリック
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA74
4C267CC26
(57)【要約】
薬物を、それを必要とする患者の上部尿路に送達するための薬物送達装置及びシステムが提供される。薬物送達装置(100)は、患者の尿管、膀胱、及び尿道を介して腎盂内に直接配備されてもよく、薬物送達装置は、長期間にわたって薬物の局所的な連続的制御放出のために全体的にその中に保持され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腎盂内に配備するための薬物送達装置であって、前記薬物送達装置は、
弾性体であって、前記弾性体は、
(i)細長い外壁を含む外側管と、
(ii)前記外側管内に位置する細長い弧状の内壁であって、前記弧状の内壁の2つの対向縁部に沿って前記外壁の内側表面に一体に接続された、細長い弧状の内壁と、を含み、前記外壁及び前記内壁は共に、(a)前記内壁の凹側面上のガイドワイヤ内腔と、(b)前記内壁の対向する凸側面上の薬物リザーバ内腔と、を画定し、前記薬物リザーバ内腔は、その対向端部で閉鎖されている、弾性体と、
前記薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、前記薬物ペイロードは少なくとも1種の薬物を含む、薬物ペイロードと、を備え、
前記薬物送達装置は、尿管を介した前記患者の前記腎盂への前記薬物送達装置の通過のための配備形状と、前記腎盂からの前記装置の移動を軽減するように構成された保持形状との間で弾性変形可能である、薬物送達装置。
【請求項2】
前記装置は、ガイドワイヤが前記ガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に前記保持形状になるように付勢される、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
前記保持形状が螺旋部分を有する、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
前記保持形状が、前記装置の長手方向に延在する直線終端部分を更に含む、請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項5】
前記螺旋部分が2~10回の巻きを含む、請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項6】
前記巻きのうちの少なくとも2つが、中間直線部分によって分離されている、請求項5に記載の薬物送達装置。
【請求項7】
前記装置本体の一方又は両方の端部が先細りである、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項8】
前記外側管が、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して透過性であり、前記第2の材料は、前記薬物ペイロードに隣接している、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項9】
前記第2の材料が、前記細長い外壁の長さに延在する薬物透過性ストライプの形態である、請求項8に記載の薬物送達装置。
【請求項10】
前記外壁が円筒形であり、前記薬物透過性ストライプは、前記断面内の前記外壁の外周の約30°~約120°の弧角度を有する、請求項9に記載の薬物送達装置。
【請求項11】
前記薬物透過性ストライプは、前記断面内の前記外壁の前記外周の約55°~約120°の弧角度を有する、請求項10に記載の薬物送達装置。
【請求項12】
前記第1の材料がテコフレックスポリウレタンを含む、請求項9に記載の薬物送達装置。
【請求項13】
前記第1の材料が放射線不透過性充填剤を更に含む、請求項9に記載の薬物送達装置。
【請求項14】
前記第2の材料がテコフィリックポリウレタンを含む、請求項9に記載の薬物送達装置。
【請求項15】
前記薬物リザーバ内腔が三日月形断面形状を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項16】
前記ガイドワイヤ内腔が円形断面形状を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項17】
保持フレーム内腔及び前記保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に備え、前記保持フレームは、前記薬物送達装置を前記保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項18】
前記保持形状が螺旋部分を含み、前記薬物送達装置は、前記配備形状にあるとき、約5cm~約15cmの長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項19】
前記薬物送達装置は、前記保持形状にあるとき、約0.8cm~約2cmの長さを有する、請求項18に記載の薬物送達装置。
【請求項20】
前記薬物リザーバ内腔の前記対向端部のそれぞれがスペーサによって封止されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項21】
前記薬物リザーバ内腔内で前記対向端部間の位置に配置された少なくとも1つの中間スペーサを更に備える、請求項20に記載の薬物送達装置。
【請求項22】
前記弾性体、前記端部スペーサ、及び/又は前記少なくとも1つの中間スペーサが、放射線不透過性充填材料を含む、請求項20又は21に記載の薬物送達装置。
【請求項23】
前記薬物送達装置に取り付けられた回収ストリングを更に備える、請求項1~20のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項24】
前記回収ストリングは、前記薬物送達装置が前記腎盂内に配備されているときに、前記回収ストリングの端部が前記患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する、請求項23に記載の薬物送達装置。
【請求項25】
前記薬物ペイロードが、固体又は半固体形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項26】
前記薬物ペイロードが、粉末又は複数の錠剤の形態である、請求項25に記載の薬物送達装置。
【請求項27】
前記薬物ペイロードが、三日月形断面形状を有する複数の錠剤の形態である、請求項25に記載の薬物送達装置。
【請求項28】
前記外側管及び前記内壁が、共押出プロセスによって一緒に形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項29】
前記弾性体が、前記保持形状を有するように熱的に形状設定されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項30】
薬物を必要とする患者に前記薬物を投与するためのシステムであって、前記システムが、
請求項1~29のいずれか一項に記載の薬物送達装置と、
前記患者の腎盂内に前記薬物送達装置を配備するためのガイドワイヤ配備システムであって、前記ガイドワイヤ配備システムは、(i)前記薬物送達装置と動作可能に関連付けられるように構成され、かつ対向する近位端部分が前記患者の尿道から外に延在している間、前記腎盂内に延在することが可能な遠位端部分を有するガイドワイヤと、(ii)前記薬物送達装置を前記ガイドワイヤ上で、前記遠位端から前記腎盂内へと押し入れるためのプランジャ装置と、を含む、ガイドワイヤ配置システムと、を備え、
前記ガイドワイヤは、前記薬物送達装置の前記ガイドワイヤ内腔を通過するように寸法決めされた断面積を有する、システム。
【請求項31】
前記プランジャ装置が、
プランジャと、
ハンドルと、
前記プランジャと前記ハンドルとの間に延在するシースであって、前記シースは、前記ハンドルに加えられた駆動力を前記プランジャに伝達する、シースと、
前記プランジャ装置が前記ガイドワイヤ上を移動し得るように、前記ガイドワイヤを受容するための内部ボアと、を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記プランジャは、前記薬物送達装置が前記ガイドワイヤから分離していることを示すように構成された停止部を更に含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
患者の腎盂内に配備するための薬物送達装置であって、前記薬物送達装置は、
細長い弾性体であって、前記弾性体は、ガイドワイヤ内腔及び別個の薬物リザーバ内腔を含む、細長い弾性体と、
前記薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、前記薬物ペイロードは少なくとも1種の薬物を含む、薬物ペイロードと、を備え、
前記薬物送達装置は、尿管を介した前記患者の前記腎盂への前記薬物送達装置の通過用に構成された配備形状と、前記腎盂からの前記装置の移動を軽減するように構成された螺旋状の保持形状との間で弾性変形可能である、薬物送達装置。
【請求項34】
前記装置は、ガイドワイヤが前記ガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に前記保持形状になるように付勢され、前記弾性体は、(i)前記保持形状を有するように熱的に形状設定されており、かつ/又は(ii)保持フレーム内腔及び前記保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に含み、前記保持フレームは、前記薬物送達装置を前記保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである、請求項33に記載の薬物送達装置。
【請求項35】
前記細長い弾性体に取り付けられた回収ストリングを更に備え、前記回収ストリングは、前記薬物送達装置が前記腎盂内に配備されているときに、前記回収ストリングの端部が前記患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する、請求項34に記載の薬物送達装置。
【請求項36】
前記薬物ペイロードが、粉末又は複数の錠剤の形態である、請求項34に記載の薬物送達装置。
【請求項37】
前記細長い弾性体は、尿が前記薬物リザーバ内腔内に拡散して前記薬物ペイロードに接触することを可能にするように構成された水透過性壁を含む、請求項36に記載の薬物送達装置。
【請求項38】
前記細長い弾性体は、前記薬物リザーバ内腔に隣接する薬物透過性壁を含み、前記薬物透過性壁は、前記薬物が溶液中で前記装置から拡散することを可能にするように構成されている、請求項37に記載の薬物送達装置。
【請求項39】
薬物透過性壁が、前記弾性体の前記長さに延在する薬物透過性ストライプの形態である、請求項38に記載の薬物送達装置。
【請求項40】
前記細長い弾性体が、前記薬物リザーバ内腔に隣接する薬物不透過性壁を更に含む、請求項38に記載の薬物送達装置。
【請求項41】
前記薬物透過性壁がテコフィリックポリウレタンを含み、前記薬物不透過性壁がテコフレックスポリウレタンを含む、請求項39に記載の薬物送達装置。
【請求項42】
前記テコフレックスポリウレタンが、EG-100A-B20又はEG-80A-B20のいずれかである、請求項41に記載の薬物送達装置。
【請求項43】
前記螺旋状の保持形状が、前記装置の長手方向に延在する直線終端部分を更に含む、請求項33~42のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項44】
前記薬物リザーバ内腔の対向端部のそれぞれが端部スペーサによって封止されている、請求項43に記載の薬物送達装置。
【請求項45】
前記細長い弾性体の対向端部間のほぼ中間の位置に、前記薬物リザーバ内腔内に配置された少なくとも1つの中間スペーサを更に備える、請求項44に記載の薬物送達装置。
【請求項46】
前記端部スペーサ及び前記少なくとも1つの中間スペーサが、放射線不透過性充填材料を含む、請求項45に記載の薬物送達装置。
【請求項47】
前記薬物リザーバ内腔が三日月形断面形状を有し、前記薬物ペイロードは、粉末又は複数の三日月形状の錠剤を含む、請求項33~42のいずれか一項に記載の薬物送達装置。
【請求項48】
薬物錠剤であって、
薬物と、
前記薬物と組み合わされた1つ以上の賦形剤と、を含み、
前記薬物と前記1つ以上の賦形剤との前記組み合わせは、三日月形状の断面プロファイルを有する錠剤形態である、薬物錠剤。
【請求項49】
前記錠剤が平坦な端部壁を有する、請求項48に記載の薬物錠剤。
【請求項50】
前記薬物が、前記錠剤の90重量%~99重量%を構成する、請求項48又は49に記載の薬物錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/757,798号(2018年11月9日出願)の優先権利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、治療薬及び予防薬を、それを必要とする患者の上部尿路に局所的に制御送達するためのin vivoで配備可能な薬物送達装置に関し、より具体的には、長期間にわたって患者の腎盂に薬物を局所的に投与するための薬物送達装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
移植可能な薬物送達装置は、全身薬物送達に関連付けられた1つ以上の問題を回避するために標的化された、例えば局所的又は局部的な薬物送達用として知られている。しかしながら、いくつかの組織部位への標的化された薬物送達は、大幅な改善の余地を有する。このような部位としては、腎臓及び尿管が挙げられる。
【0004】
現在利用可能な薬物送達装置ベースの治療は、侵襲性であり、かつ/又は送達カテーテルが患者の体外から体内に延在している間のみ薬物を送達することができる。BENEPHIT(商標)腎注入システムなどのいくつかのかかるシステムは、カテーテルシステムを通して腎動脈を介して腎臓に直接治療薬を送達するが、介入処置又は外科処置において望ましくない動脈穿刺を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に長期間にわたって、好ましくは継続的に、かつ患者が歩行している間に、上部尿路、例えば、腎盂内への薬物送達を提供するための低侵襲性薬物送達装置及び方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
改善された薬物送達装置及びシステム、並びに薬物送達の方法が本明細書に提供される。薬物送達装置は、患者の身体の自然な内腔を介して、すなわち、尿管、膀胱、及び尿道を介して、腎盂内に直接配備されてもよく、薬物送達装置は、薬物の外部供給及び投与期間中に体内に延在するカテーテルに依存することなく、長期間、例えば数日間又は数週間にわたる薬物送達のためにその中に完全に保持され得る。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、腎盂内に挿入し、その中で持続的に薬物送達するように構成され、好ましくは、治療的に有効な量の薬物の0次放出速度を提供する。
【0007】
一態様では、患者の腎盂内に配備されるように構成された薬物送達装置が提供される。実施形態では、装置は、(i)細長い弾性体であって、弾性体はガイドワイヤ内腔及び別個の薬物リザーバ内腔を有する、細長い弾性体と、(ii)薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、薬物ペイロードは薬物を含む、薬物ペイロードと、を含み、薬物送達装置は、(a)薬物送達装置を尿管に通して患者の腎盂内に渡すように構成された配備形状と、(b)腎盂からの装置の移動を軽減するように構成された保持形状との間で弾性変形可能である。いくつかの好ましい実施形態では、保持形状は螺旋状である。いくつかの実施形態では、弾性体は、(i)細長い外壁を含む外側管と、(ii)外側管内に位置する細長い弧状の内壁であって、弧状の内壁の2つの対向縁部に沿って外壁の内側表面に一体に接続された、細長い弧状の内壁と、を含み、外壁及び内壁は共に、(a)内壁の凹側面上のガイドワイヤ内腔と、(b)内壁の対向する凸側面上の薬物リザーバ内腔と、を画定し、薬物リザーバ内腔は、その対向端部で閉鎖されている。
【0008】
別の態様では、患者の腎盂への薬物の局所的な投与のためのシステムが提供される。いくつかの実施形態では、システムは、本明細書に記載されるような薬物送達装置と、腎盂内に薬物送達装置を配備するためのガイドワイヤ配備システムと、を含み、ガイドワイヤ配備システムは、(i)ガイドワイヤと、(ii)ガイドワイヤ上で薬物送達装置を押すためのプランジャ装置と、を含む。
【0009】
更に別の態様では、薬物を必要とする患者に薬物を投与するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、薬物送達装置を患者の腎盂内に配備することと、少なくとも24時間の長期治療期間にわたって、配備された薬物送達装置から腎盂内の尿に継続的に薬物を放出することと、を含み、薬物送達装置は、少なくとも患者の尿管の中に延在する回収ストリングの任意選択的な例外を除いて、腎盂内に完全に収容される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
詳細な説明は、添付の図面を参照して記載される。同じ参照番号の使用は、類似又は同一の項目を示し得る。様々な実施形態は、図面に示されるもの以外の要素及び/又は構成要素を利用することができ、いくつかの要素及び/又は構成要素は、様々な実施形態において存在しなくてもよい。図面に示される要素及び/又は構成要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。本開示全体を通して、文脈に応じて、単数形及び複数形の用語が互換的に使用され得る。
【
図1A】本明細書に開示される螺旋状の保持形状を有する薬物送達装置の一実施形態の斜視図である。
【
図1B】直線化された配備形状での
図1Aの薬物送達装置の斜視図である。
【
図2】本明細書に開示されるような単一コイル保持形状を有する薬物送達装置の一実施形態の斜視図である。
【
図3】本明細書に開示されるようなトリプル内腔設計を有する薬物送達装置の一実施形態の断面図である。
【
図4A】本明細書に開示されるような薬物送達装置の一実施形態の、直線化された構成の平断面図であり、断面平面は、装置の端部及び薬物リザーバ内腔を通って長手方向に延在している。
【
図4C】
図4Aに示された薬物送達装置の側断面図であり、断面平面は、装置の端部を通って、かつ薬物リザーバ内腔及びガイドワイヤ内腔を通って長手方向に延在している。
【
図5A】本明細書に開示される薬物送達装置の別の実施形態の、直線化された構成の平断面図であり、断面平面は、装置の端部及び薬物リザーバ内腔を通って長手方向に延在している。
【
図5C】
図5Aに示された薬物送達装置の側断面図であり、断面平面は、装置の端部を通って、かつ薬物リザーバ内腔及びガイドワイヤ内腔を通って長手方向に延在している。
【
図6】螺旋状の保持形状及び直線端部を有する薬物送達装置の一実施形態の斜視図である。
【
図7】螺旋状の保持形状及び直線端部を有する薬物送達装置の別の実施形態の斜視図である。
【
図8】相対的に直線状の2つの中間部分を有する、螺旋状の保持形状を有する薬物送達装置の一実施形態の斜視図である。
【
図9】相対的に直線状の単一の中間部分を有する、螺旋状の保持形状を有する薬物送達装置の一実施形態の斜視図である。
【
図10A】先細りの端部を有する薬物送達装置の一実施形態の一部分を示す斜視図である。
【
図10B】先細りの端部を有する薬物送達装置の別の実施形態の、直線化された構成での側断面図であり、断面平面は、装置の端部を通って、かつ薬物リザーバ内腔及びガイドワイヤ内腔を通って長手方向に延在している。
【
図11】本明細書に記載される2つの異なる実施形態による薬物送達装置からのin vitroでの薬物放出速度のグラフである。
【
図12】本明細書に記載される2つの異なる実施形態による薬物送達装置からのin vitroでの薬物放出速度のグラフである。
【
図13】本明細書に開示されるような三日月形状の薬物錠剤の一実施形態の斜視図及び正面図を示す。
【
図14A】本明細書に開示されるような、薬物送達装置を、例えば患者の腎盂内に配備するための配備システムの一実施形態の斜視図である。
【
図14B】ガイドワイヤに沿った薬物送達装置の前進後の、
図14Aに示された配備システムの斜視図である。
【
図15】薬物送達装置の一実施形態の、直線化された構成での側断面図であり、断面平面は、装置の端部を通って、かつ薬物リザーバ内腔及びガイドワイヤ内腔を通って長手方向に延在しており、接続された回収ストリングの一実施形態を示す。
【
図16】薬物送達装置の一実施形態の、直線化された構成での側断面図であり、断面平面は、装置の端部を通って、かつ薬物リザーバ内腔及びガイドワイヤ内腔を通って長手方向に延在しており、接続された回収ストリングの別の実施形態を示す。
【
図17】本明細書に記載されるような薬物送達装置の一実施形態の内腔の端部に挿入するためのスペーサの平断面図であり、スペーサは横方向貫通孔を含み、そこに通して回収ストリングが固定される。
【
図18】本明細書に記載されるような薬物送達装置を患者の体内に、例えば患者の腎盂内に配備するための方法の一実施形態のブロック図である。
【
図19】螺旋状の保持形状にあり、腎盂内の配備位置に位置する、本明細書に記載されるような薬物送達装置の一実施形態を示し、取り付けられた回収ストリングは、薬物送達装置から尿管を通って膀胱内に延在している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上部尿路の1つ以上の状態を治療するために使用され得る薬物送達装置、システム、及び方法が本明細書に提供される。上部尿路の1つ以上の状態としては、腎臓癌、尿管癌、又は腎臓及び/若しくは尿管に影響を及ぼす他の疾病が挙げられ得る。本明細書に記載される薬物送達装置は、例えば、腎盂内で上部尿路に配備されてもよい。薬物送達装置は、長期間にわたって上部尿路内で薬物を放出することができる。
【0012】
配備後、装置は、有利には外部ポンプ、尿管ステント、又は経尿道カテーテルの使用又は必要なしに、数日間又は数週間にわたって、腎盂内に連続的に薬物を局所的に放出することができる。すなわち、薬物ペイロード全体及び薬物放出を有益に制御するための手段が腎盂内に内蔵される。
【0013】
いくつかの実施形態では、患者の腎盂内に配備するための薬物送達は、(i)細長い弾性体であって、弾性体はガイドワイヤ内腔及び別個の薬物リザーバ内腔を有する、細長い弾性体と、(ii)薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、薬物ペイロードは薬物を含む、薬物ペイロードと、を含み、薬物送達装置は、(a)薬物送達装置を尿管に通して患者の腎盂内に渡すように構成された配備形状と、(b)腎盂からの装置の移動を軽減するように構成された保持形状との間で弾性変形可能である。いくつかの好ましい実施形態では、保持形状は螺旋状である。いくつかの実施形態では、螺旋状の保持形状は、2~10回の巻きを有する。
【0014】
装置は、(i)保持形状を有するように熱的に形状設定され、かつ/又は(ii)保持フレーム内腔及び保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に含む弾性体によって、ガイドワイヤがガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に保持形状に付勢され、保持フレームは、薬物送達装置を保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである。
【0015】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、典型的には端部において、細長い弾性体に取り付けられた回収ストリングを含み、回収ストリングは、薬物送達装置が腎盂内に配備されているときに、回収ストリングの端部が患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する。
【0016】
薬物ペイロードは、任意の好適な形態であってもよいが、いくつかの好ましい実施形態では、薬物ペイロードは、粉末又は複数の錠剤の形態である。いくつかの実施形態では、細長い弾性体は、尿が薬物リザーバ内腔内に拡散して薬物ペイロードに接触することを可能にするように構成された水透過性壁を含む。いくつかの実施形態では、細長い弾性体は、薬物リザーバ内腔に隣接する薬物透過性壁を含み、薬物透過性壁は、薬物が溶液中で装置から拡散することを可能にするように構成されている。細長い弾性体は、例えば、薬物の経壁拡散のために利用可能な領域を制限し、それによって薬物の放出を遅らせる/延長するために、薬物リザーバ内腔に隣接する薬物不透過性壁を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、弾性体は、1つ以上の熱可塑性ポリウレタン、例えば脂肪族ポリエーテルから形成される。例えば、いくつかの実施形態では、薬物透過性壁はTecophilic(商標)ポリウレタンを含み、薬物不透過性壁はTecoflex(商標)ポリウレタンを含む。薬物透過性壁は、弾性体の長さに延在する薬物透過性ストライプの形態であってもよい。
【0017】
薬物リザーバ内腔の対向端部は、典型的には、端部スペーサによってそれぞれ封止され、一方、ガイドワイヤ内腔は、ガイドワイヤの通過を可能にするために、その両端が開放されたままである。
【0018】
薬物送達装置は、薬物リザーバ内腔内で、例えば、細長い弾性体の対向端部間のほぼ中間の位置に配置された1つ以上の中間スペーサを更に含んでもよい。弾性体、端部スペーサ、及び/又は中間スペーサは、例えば、腎盂内の配置を容易にするために、in vivoでの装置の可視化を可能にするための放射線不透過性充填材料を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、薬物リザーバ内腔は三日月形断面形状を有し、薬物ペイロードは、粉末又は複数の三日月形状の錠剤を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置の弾性体は、(i)細長い外壁を含む外側管と、(ii)外側管内に位置する弧状の細長い内壁であって、弧状の内壁の2つの対向縁部に沿って外壁の内側表面に一体に接続された、弧状の細長い内壁と、を含み、外壁及び内壁は共に、(a)内壁の凹側面上のガイドワイヤ内腔と、(b)内壁の対向する凸側面上の薬物リザーバ内腔と、を画定し、薬物リザーバ内腔は、その対向端部で閉鎖されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置の弾性体は、少なくとも1つの直線終端部分を有する。いくつかの実施形態では、2つの対向する終端部分のそれぞれは、直線終端部分である。いくつかの実施形態では、弾性体は、1つ以上の中間の直線部分及び/又は1つ以上の螺旋部分を含み、直線部分又は螺旋部分は、弾性体の対向する終端部分間に配置される。
【0022】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置の外側管は、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、水に対して透過性であるが、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、水に対して透過性であり、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して透過性である。第2の材料は、薬物ペイロードに隣接していてもよい。本明細書で使用するとき、「薬物に対して不透過性」という語句は、本質的に薬物が治療放出期間にわたって材料を介して放出されないように、薬物に対して実質的に不透過性である材料を指す。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、水が第1の材料及び第2の材料を通って薬物リザーバ内腔内に拡散することを可能にし、薬物ペイロードを可溶化するように、かつ、可溶化された薬物を薬物送達装置から第2の材料を通して制御可能に放出するように、in vivoで動作可能である。一実施例では、第2の材料は、Tecophilic(商標)ポリウレタンで形成された薬物透過性壁であり、第1の材料は、Tecoflex(商標)ポリウレタンで形成された薬物不透過性壁である。いくつかの実施形態では、これらの壁は互いに横方向に接続され、その結果、それぞれが直接境界をとり、共に装置内の薬物リザーバを画定する。場合によっては、これは、壁が共に環状体を画定することを意味する。
【0023】
いくつかの代替的な実施形態では、第1の材料は、水不透過性及び薬物不透過性の両方であり、第2の材料は、水透過性及び薬物透過性の両方である。
【0024】
本明細書に記載される薬物送達装置の一実施形態を
図1A~
図1Cに示す。
図1Aは、細長い弾性体102と、細長い弾性体102の一端に取り付けられた回収ストリング180と、を含む薬物送達装置100を示す。
図1Aでは、装置100は螺旋状の保持形状で示されている。
図1Bは、直線化された配備形状にある装置100を示す。
図1B~
図1Cに示されるように、弾性体102は、内部を通って延在するガイドワイヤ内腔112と、弾性体102内に延在する別個の薬物リザーバ内腔114と、を含む。薬物ペイロード116は、三日月形薬物リザーバ内腔114内に配置される。この実施形態では、薬物ペイロード116は、複数の三日月形錠剤の形態である。弾性体102は、細長い外壁106を含む外側管104と、外側管内に位置する細長い弧状の内壁108であって、弧状の内壁108の対向縁部に沿って外壁の表面に一体に接続された、細長い弧状の内壁108と、を含む。薬物リザーバ内腔114は、内壁108の凸側面上に長手方向に画定され、ガイドワイヤ内腔112は、内壁108の対向する凹側面上に長手方向に画定される。薬物リザーバ内腔114の対向端部はそれぞれ、端部スペーサ120で封止される。
【0025】
図1A~
図1Cに示される実施形態では、弾性体は、2つの構成材料で形成されており、1つは薬物不透過性壁122を形成する材料、もう1つは薬物透過性壁124を形成する材料である。薬物透過性壁124は、薬物リザーバ内腔114の少なくとも一部分を画定し、したがって、薬物リザーバ内腔114内に配置された薬物ペイロード116に隣接する。薬物不透過性壁122を形成する材料はまた、弧状の内壁108及び外側管104の残部、すなわち、図示されるように薬物透過性壁124として機能する薬物透過性材料のストライプを除く部分を形成してもよい。この実施形態では、
図1Aに示すように、弾性体の端部190は鈍端である、すなわち、先細りではなく、弾性体の終端部分は、螺旋状の保持形状にあるときに螺旋状である。
【0026】
薬物透過性壁(ストライプ)124は、薬物送達装置100の全長を横断して薬物放出のための経路を提供する。薬物透過性ストライプの幅は、そこを通した薬物の経壁拡散の有効速度を調整するために選択されてもよい。外側管104は円形断面を有するため、薬物透過性ストライプの幅は、ストライプの弧角度によって特徴付けられ得る。
図1Cに示す実施形態では、弧角度αは約60°である。しかしながら、薬物透過性ストライプの角度及び/又は長さ及び/又は形状は、薬物放出速度を変更するために変化させられ得る。
【0027】
図2は、薬物送達装置の別の実施形態を示す。ここで、薬物送達装置200は、弾性体202及び回収ストリング280を含む。これは薬物送達装置100のものと同様の構成を有するが、保持形状は、重なり合う終端部分を有する単一のコイルである。
【0028】
図3は、薬物送達装置の別の実施形態を示す。ここで、薬物送達装置300は弾性体302を含む。これは、薬物送達装置100の構成と同様に、内部を通って延在するガイドワイヤ内腔312と、弾性体302の長さに延在し、薬物リザーバ内腔314内に配置された薬物ペイロード316を収容する別個の三日月形薬物リザーバ内腔314と、を含む。弾性体302は、保持フレーム332が配置された保持フレーム内腔330である第3の内腔を更に含む。この図示した実施形態では、保持フレーム内腔330は、弧状の内壁308及び外壁306の端縁部の交点付近に画定される。薬物送達装置100の構成と同様に、外壁306は、二重材料ポリウレタン押出成形を介して形成され得、薬物リザーバ内腔は、水及び薬物に対して透過性である二次ポリウレタン材料のストライプによって少なくとも部分的に画定される。場合によっては、管の大部分は、水透過性ポリウレタンから作製される。薬物送達装置300は、
図1Aのような螺旋状の保持形状を有してもよい。
【0029】
図6は、弾性体が中間螺旋部分674及び対向する直線終端部分672を有する薬物送達装置600の実施形態を示す。直線終端部分672は、先細りの端部676を含む。直線終端部分672は、中央の螺旋部分674の巻きの平面に対してほぼ垂直な方向に延在し、すなわち、それらは装置の長手方向に延在する。直線終端部分672は、熱的に形状設定されてもよい。これらの終端部分は「直線」と称されるが、これらは、単一直線に文字通り一致する必要はないことが理解される。
図6で明らかなように、直線終端部分672はわずかな曲率を有するが、螺旋部分674と比較して相対的に直線であり、
図1Aの装置100の螺旋終端部分とは異なる。直線終端部分672は、装置が保持形状にあるとき、一方の直線終端部分672(例えば、先端部)が、他方の直線終端部分672(例えば、後端部)と実質的に(装置に対して斜めに)整列されるように、螺旋部分674の両側から延在する。この構成は有利には、(i)薬物送達装置をガイドワイヤ上に装填して配備することを容易にし、(ii)腎盂内での保持を改善することができ、(iii)先行する直線終端部分がガイドワイヤから押し出されたときに(コイル状でないため)その位置を実質的に維持するため、腎盂内での装置の正確な配置を補助する。
【0030】
この実施形態の別の変形例を
図7に示す。薬物送達装置700は同様に、中央の螺旋部分774及び直線終端部分772を含む。しかしながら、直線終端部分は、薬物送達装置に対して斜めに整列されず、代わりに、一般に螺旋部分774の同じ側に配置され、薬物送達装置700の長手方向軸線にほぼ平行な線に沿って整列される。直線終端部分772は、先細りの端部776を含む。
【0031】
いくつかの他の実施形態では、薬物送達装置の細長い本体は、コイル間又は螺旋間に配置された1つ以上の中間直線部分を有する。これらの実施形態の非限定的な例を
図8~
図9に示す。これらの構成は、特定の腎盂解剖学的構造及び/又はサイズを有する患者での使用に特に好適であり得る。例えば、中間直線部分は、より小さい腎臓の腎盂の挟持点領域内に好適に位置付けられ、挟持点組織に対して過度の圧力をかけずに保持を提供し得る。直線終端部分と同様に、中間直線部分はわずかな曲率を有してもよいが、上記の螺旋部分における巻き又はコイルよりも明らかに直線状である。
【0032】
図8は、細長い本体が2つの中間直線部分878によって分離された3つのループ874を含む薬物送達装置800の実施形態を示す。この装置は、先細りの端部876を含む。
図9は、細長い本体が単一の中間直線部分978によって分離された2つのループ974を含む薬物送達装置900の実施形態を示す。この装置は、先細りの端部976を含む。
【0033】
中間直線部分及びコイル部分のサイズ、数、及び配置は、異なる患者に必要とされる様々な薬物ペイロード体積及び腎盂の解剖学的特徴の両方に適応するように選択され得る。装置の全体的なサイズ及び配備可能性はまた、薬物送達装置の選択された設計に影響を及ぼし得る。例えば、薬物送達装置は、螺旋部分により少ない巻きを使用することによって、非コイル状の長さがより短いものになり得る。あるいは、コイル外径を縮小することで、より密着したコイルになり得る。コイル外径が約8mm、又は更には7mmほどの小さい薬物送達装置は、より小さい腎臓に対して有効な保持サイズであり得、一方、コイル外径が12mm程又はそれ以上の薬物送達装置は、より大きな腎臓に対して有効な保持サイズであり得る。コイル外径を7mm以下に減少させることができるが、装置をガイドワイヤ上に装填し、それを配備することがより困難になり得る。
【0034】
弾性体
弾性体は、薬物ペイロードのハウジングとして機能し、経壁拡散及び/又は浸透圧による薬物の放出を制御する。いくつかの実施形態では、弾性体は、薬物リザーバ内腔、ガイドワイヤ内腔、及び任意選択的に保持フレーム内腔を画定する壁を含む。本明細書に記載される薬物送達装置の弾性体を形成する壁は、外側管及び内壁が一体に接続されるように、押出成形(又は共押出)プロセスによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、弾性体は、保持形状を有するように熱的に形状設定される。
【0035】
いくつかの実施形態では、弾性体は、概して、長く薄い管である外側形状を有し、保持形状では、例えば螺旋形状にそれ自体に巻かれている。弾性体の長さに延在する内腔は、十分な薬物ペイロード体積の装填を可能にする、本質的に任意のサイズ又は形状を有してもよく、腎腔内の装置の配備をもたらすのに十分な直径のガイドワイヤを収容し得る。内腔の境界をとる/内腔を画定する壁は、装置を腎盂内に収めるのに十分小さくし、かつ壁の厚さ及び面積が所望の水透過性及び薬物放出動態を達成するように寸法決めされることを提供すると同時に、装置が配備、使用、及び回収時に可撓性でありながら適切な機械的堅牢性を保つことのできる厚さを有する必要がある。
【0036】
弾性体は、本明細書に記載される薬物送達装置が変形可能であり、したがって配備形状及び保持形状をとることができるように十分な可撓性を有する、任意の1つ以上の材料で形成されてもよい。特に、材料は、当該技術分野において既知の熱可塑性エラストマーなどの生体適合性エラストマーであってもよい。装置は、典型的には、保持形状に付勢されており、そのため、負荷荷重(例えば、直線化された形状又は配備形状に向かって/それらの形状に弾性変形するのに有効な荷重)がない場合には、装置は保持形状を有する。負荷荷重は、弾性体内のガイドワイヤ内腔を通って延在するガイドワイヤの存在によって付与され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置の外側管は、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して透過性である。第2の材料は、薬物ペイロードに隣接していてもよい。換言すれば、第2の材料は、薬物送達装置に搭載された薬物の少なくとも一部分が、薬物の溶解前、溶解中、及び/又は溶解後に、第2の材料の少なくとも一部分に接触し得るように位置付けられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬物送達装置は、第2の材料の薬物透過性ストライプを含む。薬物透過性ストライプは、いくつかの実施形態では、外側管の長手方向長さの約50%~100%、約80%~100%、約90%~100%、又は100%を横断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬物送達装置は、第2の材料から形成された2つ以上の別個の部分を有する外側管を含む。1つ以上の別個の部分は、任意の好適なサイズ又は寸法を有してもよい。
【0039】
本明細書に記載される薬物送達装置が第2の材料の薬物透過性ストライプを含む場合、薬物透過性ストライプは、断面において外側管の外周の約30°~約120°、約40°~約120°、約45°~約120°、約55°~約120°、約60°~約120°、約60°~約110°、約60°~約100°、約60°~約90°、又は約60°の弧角度を有し得る。薬物透過性ストライプの「弧角度」は、換言すれば、外側管の中心から薬物透過性ストライプの第1の側及び第2の側に延在する第1の線と第2の線との間に形成される角度である。
【0040】
いくつかの実施形態では、外側管の内径は、約1.0mm~約2.3mmである。いくつかの実施形態では、外側管の外径は約2.2mm~約2.4mmである。いくつかの実施形態では、外側管、第1の内側管、及び/又は第2の内側管の壁の厚さ(すなわち、外径と内径との差)は、約0.1mm~約1.4mm、又は約0.15mm~約0.25mmである。いくつかの実施形態では、外側管の厚さは、第1の内側管、第2の内側管、又はこれらの組み合わせの厚さとは異なる。
【0041】
概して、本明細書に記載される薬物送達装置の弾性体は、薬物送達装置を保持形状と配備形状との間で変形可能にするのに十分な可撓性を薬物送達装置に付与する任意の1つ以上の材料で作製されてもよい。弾性体が、本明細書に記載されるように、第1の材料及び第2の材料を含む場合、第1の材料は、概して、薬物送達装置内に収容された薬物に対して実質的に不透過性である任意の可撓性材料、例えばエラストマーを含んでもよい。場合によっては、このエラストマーは水透過性である。第2の材料は、概して、水及び薬物送達装置に収容される薬物に対して透過性である任意の可撓性材料、例えばエラストマーを含んでもよい。
【0042】
第1の材料及び第2の材料は、様々な好適な材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性シリコーンポリエーテルポリウレタン、脂肪族熱可塑性シリコーンポリエーテルポリウレタン、セグメント化ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリカーボネートポリウレタン、BIONATE(商標)PCU、BIOSPAN(商標)SPU、CARBOSIL(商標)TSPCU、ELASTHANE(商標)TPU、PURSIL(商標)TSPU(DSM)、脂肪族及び芳香族のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンを含む、他の熱可塑ポリウレタン(TPU)、例えば、CARBOTHANE(商標)TPU、TECOFLEX(商標)TPU、TECOTHANE(商標)TPU、PELLETHANE(商標)TPU、及びTECOPHILIC(商標)TPU、並びにこれらの組み合わせ又はブレンドから選択されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2の材料は、TECOPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン、HYDROTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン(AdvanSource Biomaterials Corp.)、QUADRAPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン(Biomerics,LLC)(ALCグレードは脂肪族ポリカーボネート系、及びALEグレードは脂肪族ポリエーテル系親水性ポリウレタン)、HYDROMED(商標)(AdvanSource Biomaterials Corp.)、又はDRYFLEX(商標)(HEXPOL TPE)から選択される。第2の材料のために選択され得る別の親水性ポリマーは、ポリエーテルブロックアミドPEBAX(登録商標)MV 1074 SA 01 MED(Arkema)であり、これは、可撓性及び親水性ポリエーテル及び剛性ポリアミドから作製される熱可塑性エラストマーである。
【0044】
いくつかの実施形態では、弾性体は、1つ、2つ、又はそれ以上の水透過性熱可塑性ポリウレタンを含む。例えば、弾性体は、2つの平行な内腔を含み、かつ(i)50重量%超の第1の水透過性熱可塑性ポリウレタンと、(ii)50重量%満の第2の水透過性熱可塑性ポリウレタンと、からなる細長い本体を形成する、押出プロセスによって形成されてもよい。これらの場合の一部では、第1の水透過性熱可塑性ポリウレタンは薬物不透過性であり、第2の水透過性熱可塑性ポリウレタンは薬物透過性である。
【0045】
いくつかの実施形態では、弾性体は、第1の材料及び第2の材料を含み、第1の材料はテコフレックスポリウレタンを含み、第2の材料はテコフィリックポリウレタンを含む。いくつかの実施形態では、テコフレックスポリウレタンは、TECOFLEX(商標)EG-80A-B20、20%硫酸バリウム添加テコフレックスポリウレタン(Lubrizol Life Sciences,USA)を含む。いくつかの実施形態では、テコフレックスポリウレタンは、TECOFLEX(商標)EG-100A-B20、20%硫酸バリウム添加テコフレックスポリウレタン(Lubrizol Life Sciences,USA)を含む。いくつかの実施形態では、テコフィリックポリウレタンは、TECOPHILIC(商標)HP-60D-35 TPU(熱可塑性ポリウレタン)(Lubrizol Life Sciences,USA)を含む。特定の薬物に関するいくつかの実施形態では、テコフレックスポリウレタンは、硫酸バリウム添加を有する薬物不透過性材料であり、装置の挿入又は回収中の可視化を可能にし得る。特定の薬物に関するいくつかの実施形態では、TECOPHILIC(商標)TPUは、水透過性及び薬物透過性材料であり、水が薬物送達装置内に入ることを可能にし、可溶化又は液体薬物が第2の材料を横断し、薬物送達装置を取り囲む空間に入ることを可能にする。
【0046】
腎盂での使用のために、配備された装置は、患者に対する不快感及び刺激を回避又は軽減するために適合性がある(すなわち、容易に屈曲し、柔らかな感触である)べきであるが、腎盂から腎杯又は尿管内に容易に、意図せず移動するほど、例えば、尿の流れと共に尿管に運ばれるほどの適合性があるべきではない。したがって、構造の第1及び第2の材料のデュロメータは重要であり得、高デュロメータ材料の割合は、腎盂内で好適な適合性を保ちながら、所与のサイズの弾性体を構成するうえで制限され得る。例えば、TECOPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン(Lubrizol Corp.)は、70Aより高い、例えば80A~65Dのショア硬度を有し得る一方で、他の薬物不透過性熱可塑性ポリウレタンは、90A未満など、TECOPHILIC(商標)より低い又はより高いショア硬度を有し得る。したがって、水膨潤親水性、薬物透過性の第2の材料で装置全体を作製するのではなく、2つの異なるポリマー材料の組み合わせを利用して、装置の所望の機械的特性を得ることが有利であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、細長い弾性体の終端部分が細長い弾性体の中央部分よりも狭くなるように、鈍端ではなく先細りの端部を有してもよい。
図10Aは、弾性体1002が先細りの終端部分1060を含む薬物送達装置の一実施形態を示す。先細りの端部は、先細りが装置の端部での組織の捕捉を低減するため、薬物送達装置を患者の尿管に挿入して腎盂に到達させ得る容易さを有利に高め得る。同様に、先細りの端部はまた、除去プロセス中に、腎盂からの装置の引き出しを促進し、尿管への進入、場合によっては尿道への進入を容易にし得る。したがって、装置の先端及び後端のいずれか又は両方が先細りであってもよい。先細りの端部は、直線終端部分又はコイル状終端部分の一部であってもよい。
【0048】
図10Bは、先細りの端部1060を有する薬物送達装置1000の一実施形態の断面図を示す。細長い弾性体は、薬物透過性ストライプ1024を有する外壁1006を含む。薬物リザーバ内腔は、端部を先細りの端部に形成する前に、その中に設置され得るスペーサ1020によって閉鎖される。図示のように、外壁1006、薬物透過性ストライプ1024、内壁1008、及びスペーサ1020は、薬物送達装置の端部に向かってテーパを形成するプロセスにおいて可塑的に変形(例えば、薄く、丸みを帯びたもの)されてもよいが、先細りの端部を形成するプロセスは、ガイドワイヤ内腔1012を全く又は少なくともガイドワイヤの通過を妨げる任意の程度まで狭める又は潰すべきではない。これにより、
図10Bに示されるように、先細りの終端部分が装置の長手方向中心軸の周りで非対称であることになり得る。
【0049】
本明細書に記載される薬物送達装置の弾性体の長さは、装置が配備される治療にわたって管理される必要のある薬物ペイロードの量、特定の薬物の放出動態、及び装置を腎盂内に保持するために必要な全体的な形状及びサイズを含む様々な要因に応じて選択されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、弾性体は、相対的に直線化された配備形状にあるとき、約5cm~約15cm、約5cm~約12cm、約6cm~約12cm、約7cm~約12cm、約8cm~約12cm、約10cm~約12cm、約10cm、又は約12cmの長さを有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬物送達装置の弾性体は、薬物送達装置の回収が薬物の放出後に必要とされないように、完全に又は部分的に生体分解可能であるように作製され得る。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、部分的浸食時に、上部尿路から排泄されるのに十分小さい非浸食性片に分解するように、部分的に生体分解可能である。本明細書で使用するとき、用語「生体分解可能な」は、薬物送達装置又はその一部が、溶解、酵素加水分解、浸食、吸収、又はこれらの組み合わせによってin vivoで分解することを意味する。いくつかの実施形態では、この分解は、薬物送達装置からの薬物放出の意図される動態に干渉しない時間で生じる。例えば、薬物送達装置の実質的な浸食は、薬物が実質的に又は完全に放出された後まで発生しない場合がある。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は侵食性であり、薬物の放出は、少なくとも部分的に、浸食性薬物送達装置本体の分解又は浸食特性によって制御される。
【0052】
薬物リザーバ内腔
本明細書に記載される薬物送達装置は、薬物リザーバ内腔を含む。いくつかの実施形態では、薬物リザーバ内腔は、(i)弾性体の細長い外壁の少なくとも一部と、(ii)弾性体の弧状の細長い内壁の少なくとも一部と、によってそれらの間に画定される。外壁及び内壁は、例えば押出プロセスによって形成された単一のモノリシック構造、例えばエラストマー構造であってもよい。細長い薬物リザーバ内腔は、いくつかの実施形態では、その対向端部で閉鎖される。
【0053】
本明細書に記載される薬物送達装置の薬物リザーバ内腔は、概して、任意の断面形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、薬物リザーバ内腔は、三日月形断面形状を有する。三日月形断面形状を有する薬物リザーバ内腔の例を
図1B及び
図1Cに示す。他の断面形状は、例えば、外側管壁の全体形状、内壁の形状、存在する場合は、ガイドワイヤ内腔及び保持フレーム内腔の存在、形状、及び位置に応じて想定される。
【0054】
本明細書に記載される薬物送達装置の薬物リザーバ内腔のそれぞれの端部は、典型的には、薬物リザーバ内腔内に薬物ペイロードを収容するように封止される。薬物リザーバ内腔は、熱的に及び/又は接着剤(TECOFLEX(登録商標)1-MP TPU接着剤、Lubrizol,USAなど)で封止されてもよい。薬物リザーバ内腔は、第1の端部及び第2の端部を有してもよく、いくつかの実施形態では、第1のスペーサ及び第2のスペーサは、薬物リザーバ内腔の第1の端部及び第2の端部に配置される。スペーサは、任意の生体適合性材料から形成されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、スペーサは、薬物リザーバ内腔内の固定された封止位置にヒートセット(溶融/再形成)される。いくつかの他の実施形態では、スペーサは、摩擦、接着剤、機械的特徴(タブ若しくは他の係止機構など)、又はこれらの組み合わせによって薬物リザーバ内腔内に保持されてもよい。例えば、スペーサは、スペーサが摩擦によって保持されるように、薬物リザーバ内腔の断面寸法を超える寸法を有してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、スペーサは、放射線不透過性充填材料を含む。いくつかの実施形態では、スペーサを形成するために使用される材料は、バリウム添加材料であり、これは、配備、除去、若しくはこれらの組み合わせの間及び/又はその後に、スペーサが薬物送達装置内での可視化点として機能することを可能にし得る。
【0056】
ガイドワイヤ内腔
本明細書に記載される薬物送達装置は、ガイドワイヤ内腔を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ内腔は、(i)弾性体の細長い外壁の少なくとも一部と、(ii)弾性体の弧状の細長い内壁の少なくとも一部と、によってそれらの間に画定される。ガイドワイヤ内腔及び薬物リザーバ内腔は、内壁の両側にある。外壁及び内壁は、例えば押出プロセスによって形成された単一のモノリシック構造、例えばエラストマー構造であってもよい。細長いガイドワイヤ内腔は、ガイドワイヤ内腔を通って延在するガイドワイヤを収容するために開放端部を有する。
【0057】
ガイドワイヤ内腔は、概して、薬物送達装置が、腎盂配備に適したガイドワイヤ上を移動することを可能にする任意の断面サイズ及び形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ内腔は、実質的に円形断面形状を有する。しかしながら、限定するものではないが、多角形、例えば六角形、八角形など、又は非多角形、例えば長円形、楕円形などの断面形状を含む、他の断面形状が想定される。
【0058】
保持及び配備形状
本明細書に記載される薬物送達装置は、患者の腎盂内への内腔を通じた挿入に適した相対的に直線化された形状と、装置を腎盂内に保持するのに適した保持形状との間で弾性変形可能である。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、保持形状が自然に想定されてよく、身体内に挿入するために、手動で又は外部装置の助けを得て相対的に直線化された形状に変形されてもよい。配備された後、装置は、例えば、装置本体内のガイドワイヤ内腔を通って延在するガイドワイヤの存在によって付与される矯正力を除去すると、本体内に保持するための初期の保持形状へと自発的に又は自然に戻り得る。
【0059】
本明細書で使用するとき、語句「保持形状」は、概して、本明細書に記載される薬物送達装置を腎盂内に保持するのに適した任意の形状を示す。
【0060】
同様に、「配備形状」という語句は、概して、本明細書に記載される薬物送達装置を、患者の尿道、膀胱、及び尿管を通して腎盂内に配備するのに適した任意の形状を示す。
【0061】
いくつかの実施形態では、弾性体自体は、薬物送達装置の保持形状機能を提供するように構成される。すなわち、弾性体は、適切な材料(例えば、高デュロメータのシリコーン)で形成され、薬物送達装置が必要とする必須の弾性及びばね定数を付与するように寸法決めされてもよい。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、薬物送達装置の保持形状機能を提供するための保持フレームを含む。
【0062】
保持形状の弾性体は、本質的に任意の形状及びサイズを有してもよく、この形状及びサイズは、腎盂内に適合し、腎盂の壁に多面的又は側面的に、すなわち複数の方向に接触し、それによって移動に抵抗し、装置の保持を促進する。加えて、この形状は、腎臓内の多数の異なる組織表面に薬物を送達することを促進し得、腫瘍を治療する場合、有利には、薬物送達を腫瘍の位置に対して曖昧にすることができる。このような形状の例としては、コイル、螺旋、及び細長く狭い管が前後に又はそれ自体に巻き付けられて、実質的に円形の特徴、例えば、球形、円筒形を有する全体的な3D形状を形成し得る他の構成が挙げられる。これらの実施形態では、装置は、ガイドワイヤ又は他の配備器具の上に/それを通して配備するために、弾性的に本質的に線形の形状にすることができる。
【0063】
外側管寸法は、管が熱的に成形された場合/ときに、捻れを防止するように選択されるべきである。純粋な曲げ条件下での弾性管の臨界曲げ曲率半径(R*)は、以下の式を使用して近似することができる。
【0064】
【数1】
式中、vはポアソン比であり、rは平均半径(すなわち、(ID+OD)/4)であり、wは管壁厚である(Guarracino,F.2003.On the analysis of cylindrical tubes under flexure:theoretical formulations,experimental data and finite element analyses.Thin Wall Struct;41:127-147)。
【0065】
いくつかの実施形態では、保持形状はコイルを含む。本明細書で使用するとき、用語「コイル」は、概して、薬物送達装置の弾性体で形成された単一のループを指す。コイル保持形状を有する薬物送達装置の実施形態を
図2に示す。
【0066】
いくつかの実施形態では、保持形状は螺旋を含む。本明細書で使用するとき、用語「螺旋」は、概して、同じ又は異なるコイル直径を有する2つ以上のコイルを形成する弾性体を指し、弾性体の少なくとも一部分は、コルク栓抜き又はつる巻きばねに似ている。いくつかの実施形態では、螺旋状の保持形状を有する薬物送達装置は、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回の巻きを含む。薬物送達装置のそれぞれの巻き(コイル)は、隣接するコイルに接触しても接触しなくてもよい。薬物送達装置のそれぞれのコイルは、同じ又は異なる形状を画定してもよい。
【0067】
本明細書に記載される薬物送達装置が保持形状にあるとき、成人患者の薬物送達装置は、薬物送達装置を腎盂内に保持するように選択された寸法を有してもよい。例えば、薬物送達装置が螺旋状の保持形状を有する場合、薬物送達装置は、相対的に直線化された配備形状にあるとき、約8cm~約15cm、約8cm~約12cm、又は約10cm~約12cmの長さを有してもよい。螺旋状の保持形状の場合、本明細書に記載される薬物送達装置は、約0.8cm~約2cm、約0.8cm~約1.8cm、約0.8cm~約1.5cm、約0.8cm~約1.4cm、約0.8cm~約1.2cm、又は約1cmの長さを有してもよい。螺旋状の保持形状にあるとき、薬物送達装置の「長さ」は、2つ以上のコイルによって囲まれた軸に沿って測定される。螺旋状の保持形状にあるとき、本明細書に記載される薬物送達装置は、約0.5cm~約1.4cm、又は約0.5cm~約1cmの最大幅を有してもよい。2つ以上のコイルが実質的に円形であり、実質的に同じコイル直径を有する場合、薬物送達装置の幅は、幅がそれに沿って測定される軸(長さがそれに沿って測定される軸に対して垂直である、幅に対応する軸)に関係なく実質的に同一であってもよい。2つ以上のコイルが非円形であり、かつ/又は異なるコイル直径を有する場合、幅は、幅がそれに沿って測定される軸に応じて変化し得る。したがって、前述の範囲は、本明細書に記載される薬物送達装置のいくつかの実施形態の「最大幅」を定義する。
【0068】
更なる例として、薬物送達装置がコイル保持形状を有する場合、薬物送達装置の長さは、相対的に直線化された配備形状にあるとき、約4cm~約8cm、又は約4cm~約6cmであってもよい。コイル保持形状を有する薬物送達装置は、保持形状にあるとき、約1cm~約3cm、又は約1.5cm~約3cmの最大幅を有してもよい。再び、弾性体は、薬物送達装置がコイル保持形状を有するとき、実質的に円形ではないループを形成してもよく、したがって、「最大幅」は、前述の範囲によって提供される。
【0069】
小児患者の場合、薬物送達装置の寸法は、例えば、解剖学的サイズ差に基づいて、及び/又は成人患者と小児患者との間の薬物投与量の差に基づいて、より小さく、例えば、比例してもよい。挿入を可能にすることに加えて、相対的に小さいサイズの薬物送達装置は、患者の不快感及び腎盂を含む上部尿路への外傷を低減し得る。薬物送達装置はまた、保持形状において腎盂内でのわずかな移動性を可能にするのに十分に小さくてもよいが、移動性は、存在する場合、装置の端部が尿内で取り込まれ、尿に流入するのを防止するために最小化されることが好ましい。薬物送達装置の移動は、腎盂全体にわたる均一な薬物送達を促進し得る。
【0070】
保持フレーム
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、ガイドワイヤ内腔及び薬物リザーバ内腔とは別個の更なる細長い内腔を含んでもよい。この更なる内腔は、保持フレームが配置される保持フレーム内腔であってもよい。保持フレーム内腔は、その端部で閉鎖されてもよい。
【0071】
保持フレーム内腔は、その中に配置された弾性変形可能な保持フレームを含む。保持フレームは、薬物送達装置の弾性体を保持形状に付勢する働きをする。保持フレームは、弾性ワイヤであってもよい。これは、弾性体に、延いては薬物送達装置に好適な弾性率又はばね定数を付与するのに有効な任意の弾性材料で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、保持フレームは、ニチノール又は別の超弾性合金などの超弾性合金から形成されたワイヤである。例えば、弾性ワイヤは、コイル状又は螺旋状の保持形状を有するように熱的に形状設定されてもよい。
【0072】
薬物送達装置及び配備システム
一態様では、薬物送達システム、又はキットが提供される。いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、本明細書に記載される薬物送達装置と、患者の腎盂内に薬物送達装置を配備するための配備システムと、を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、配備システムは、(i)ガイドワイヤと、(ii)ガイドワイヤ上で薬物送達装置を押すためのプランジャ装置と、を含むガイドワイヤ配備システムである。ガイドワイヤは、薬物送達装置のガイドワイヤ内腔を通り抜けるようにサイズ決めされ、成形された断面積を有してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、プランジャ装置は、プランジャと、ハンドルと、プランジャとハンドルとの間に延在するシースと、ハンドルに加えられた駆動力をプランジャに伝達するシースと、ガイドワイヤを受容するための内部ボアと、を含み、それによってプランジャ装置はガイドワイヤ上を移動することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、
図1A~
図1Cの薬物送達装置100は、特殊なガイドワイヤ配備システムを使用して腎盂内に配備されてもよい。
図14A~
図14Bは、薬物送達装置を腎盂内に配備するためのこのようなガイドワイヤ配備システム1400の実施形態を示す。ガイドワイヤ配備システム1400は、概して、ガイドワイヤ1402及びプランジャ装置1404を含む。ガイドワイヤ1402は、腎盂から尿道の端部までの距離よりも長く、それにより、ガイドワイヤ1402が尿道内に位置付けられたとき、その近位端は、その遠位端が腎盂内にあるときに尿道から延出する。ガイドワイヤ1402は、薬物送達装置100のガイドワイヤ内腔を通り抜けるようにサイズ決めされ、成形される。例えば、ガイドワイヤ1402は、ガイドワイヤ内腔の断面積又は直径よりも小さい断面積又は直径を有してもよい。
【0076】
プランジャ装置1404は、シース1410を介してハンドル1408に動作可能に接続されたプランジャ1406を含む。シース1410は、ハンドル1408からプランジャ1406に駆動力を伝達するのに十分な剛性がある。プランジャ1406及びシース1410は、プランジャ装置1404をガイドワイヤ1402上に通すのに適した内部ボアを有する。プランジャ装置1404がそのように通されると、ハンドル1408はガイドワイヤ1402の近位端に位置付けられ、プランジャ1406はガイドワイヤ1402上でその遠位端の後方に位置付けられ、剛性シース1410はハンドル1408からプランジャ1406まで延在し、それによってハンドル1408に加えられた駆動力がプランジャ1406に伝達され得る。
【0077】
使用中、ガイドワイヤ1402は、その遠位端が腎盂内に位置し、その近位端が患者の身体の外側に露出するように、尿管内に位置付けられてもよい。薬物送達装置100は、ガイドワイヤ1402が、
図1A及び
図1Bに示されるようなガイドワイヤ内腔112を通過している状態で、ガイドワイヤ1402に通されてもよい。プランジャ装置1404はガイドワイヤ1402上に通されてもよく、ハンドル1408は前進されてもよく、その結果、剛性シース1410は、ガイドワイヤ1402に沿って移動して、薬物送達装置100がガイドワイヤ1402から押し出されるまでプランジャ1406を前進させる。ガイドワイヤ1402は、その後、
図19に示すように、腎盂内に薬物送達装置を残して、尿管、膀胱、及び尿道から除去されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、プランジャ装置1404は停止部1412を更に含む。停止部1412は、薬物送達装置100がガイドワイヤ1402から分離されると、停止部1412が患者の身体に接触するように、プランジャ装置1404上の適切な位置に位置付けられる。このようにして、薬物送達装置100がin vivoで配備されたことがユーザーに伝えられ、その結果、ユーザーは、ハンドル1408を前方に進めるのをやめることができる。いくつかの実施形態では、停止部1412は、解剖学的サイズの違いを考慮するように調整可能であってもよい。ユーザーは、必要に応じて、プランジャ装置1404を前進させる前に停止部1412を調整することができる。
【0079】
ガイドワイヤ1402は、薬物送達装置100を腎盂内に保持するのに適した保持形状から、薬物送達装置100を尿道及び尿管に通過させるのに適した配備形状へと、薬物送達装置100を直線化するのを容易にし得る。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ1402は、別個の配備カテーテルと関連して使用されてもよい。このような実施形態では、ガイドワイヤ1402は、配備カテーテルに通されてもよいが、他の構成も可能である。ガイドワイヤ1402はまた、男性尿道に通して薬物送達装置を配備するのに適したJ字形状又は湾曲形状を有してもよい。ガイドワイヤ配備システム1400及び薬物送達装置100はまた、パッケージ内に一緒に提供されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、
図14A~
図14Bを参照して本明細書に記載される配備器具のいずれかは、キットの一部として提供されてもよい。キットは、器具のうちの1つ及び本明細書に記載される薬物送達装置のうちの1つを収容するパッケージを含んでもよい。例えば、キットは、ガイドワイヤ、配備カテーテル、プランジャ装置、並びに腎盂配備及び保持のために構成された薬物送達装置を含んでもよい。パッケージは、配備処置の前にパッケージ化された構成要素を保護し得る。例えば、構成要素は一緒に滅菌され、使用に必要とされるまでパッケージ内で一緒に輸送及び保管されてもよい。そのような実施形態では、本明細書に記載される薬物送達装置は、配備器具がパッケージ内に配置される前に、配備器具内又は配備器具上に予め装填することができ、配備処置中に薬物送達装置を装填する必要性を排除し、手順における工程の数を低減し、薬物送達装置を装填中に不注意に落下させる又は損傷させるリスクを低減する。しかしながら、薬物送達装置は予め装填される必要はない。その代わりに、薬物送達装置は、配備器具と共に提供されてもよく、又は別々にパッケージ化されてもよい。また、スタイレットは、配備器具と共にパッケージ化されるか、別個にパッケージ化されるか、又は完全に省略されるかのいずれかであり得る。どの構成要素が一緒にパッケージ化されるかに関わらず、パッケージは、ガンマ線照射又はエチレンオキシド滅菌などを使用して滅菌されてもよい。
【0081】
図19は、螺旋状の保持形状にあり、腎臓1910の腎盂1920内の配備位置に位置する、本明細書に記載されるような薬物送達装置1900の実施形態を示し、取り付けられた回収ストリング1902は、薬物送達装置から尿管1940を通って膀胱1930内へと延在している。この実施形態では、薬物送達装置1900は、腫瘍1950、例えば、腎細胞癌への局所的な薬物送達を提供する。しかしながら、他の場合では、薬物送達装置を使用して、腎臓に関与する癌以外の他の疾病及び疾患を治療することができる。
【0082】
薬物ペイロード及び薬物
概して、本明細書で提供される薬物送達装置は、薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードを含む。薬物ペイロードは、少なくとも1種の薬物を含む。いくつかの実施形態では、薬物ペイロードは固体又は半固体形態である。例えば、薬物ペイロードは、粒子形態(例えば、粉末、顆粒)、1つ以上の固体薬物単位(例えば、ビーズ、錠剤、カプセル)の形態、又はこれらの組み合わせであってもよい。固体単位は、典型的には、選択的に付与された均一なサイズ及び形状を有するように弾性体の外側に形成され、次いで固体単位は薬物リザーバ内腔内に充填される。特定の実施形態では、単位は、薬物リザーバ内腔内に(装填される)固体単位の配向を保持するように構成された最長寸法を有すると同時に、その寸法を、装填された装置がその長さに沿って弾性変形することができるように十分な隙間を(隣接する単位間に)有するのに十分な短さに保つべきである。いくつかの実施形態では、薬物ペイロードは、薬物リザーバ内腔において端部同士で整列された複数の固体錠剤を含む。
【0083】
固体単位は、直接粉末圧縮若しくは錠剤化プロセス、成形プロセス、又は医薬分野で既知の他のプロセスによって作製されてもよい。いくつかの実施形態では、三日月形状の錠剤は、粉末混合物が特殊な形状の金型に装填されてから圧縮されて、粉末を錠剤に結合する、改良錠剤化プロセスによって作製されてもよい。いくつかの他の実施形態では、薬物ペイロードは、作業可能な形態で薬物送達装置に装填され、その後、その中で硬化/固化されてもよい。
【0084】
薬物ペイロードは、少なくとも1つの薬物及び少なくとも1つの賦形剤を含む製剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬物は、1つ以上の有効活性成分(API)を含み、賦形剤は、1つ以上の製薬的に許容される賦形剤を含む。製剤は、本質的に任意の治療薬、予防薬、又は診断薬、例えば、腎盂に局所的に送達するのに有用なものなどを含み得る。薬物ペイロードは、APIのみで構成されてもよく、又は1つ以上の賦形剤が含まれてもよい。本明細書で使用するとき、本明細書に記載される任意の特定の薬物を参照する「薬物」という用語は、塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、及び水和物などのその代替的な形態を含む。用語「賦形剤」は当該技術分野において既知であり、本製剤において有用な賦形剤の代表的な例としては、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、着色剤、充填剤、希釈剤、コーティング、又は防腐剤などの成分、並びに、薬物の製造、安定性、分散性、湿潤性、及び/若しくは放出動態、又は製剤の投与を促進するための他の非活性成分が挙げられ得る。薬物は、他の形態/種類の活性成分の中でも、低分子、巨大分子、生物学的、代謝拮抗薬、又は代謝産物であってもよい。いくつかの実施形態では、薬物はヌクレオシド類似体である。
【0085】
選択された(小さい)サイズの所与の薬物送達装置に保存され、そこから放出され得る薬物の量を最大化するために、薬物ペイロードは、好ましくは、高重量分画の薬物又はAPIと、固体薬物単位の製造及び薬物送達装置アセンブリの製造並びに使用上の考慮事項に必要とされるものとして減量又は低重量分画の賦形剤と、を含む。本開示の目的のために、薬物又はAPIに関する「重量分画」、「重量パーセント(weight percentage)」、及び「重量パーセント(percentage by weight)」などの用語は、塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、又は水和物形態など、用いられる形態の薬物又はAPIを指す。例えば、塩形態の薬物の90重量%を有する固体薬物単位は、遊離塩基形態ではその薬物の90重量%未満を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、薬物ペイロードは、50重量%を超える薬物である。いくつかの実施形態では、薬物ペイロードの75重量%以上が薬物であり、残りの重量は、固体薬物単位の作製を容易にする潤滑剤及び結合剤などの賦形剤を含む。本開示の目的のために、薬物又はAPIに関する用語「高重量分画」は、賦形剤が、25重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、更により好ましくは10重量%未満の薬物ペイロードを構成することを意味する。場合によっては、内容物は、薬物ペイロードの重量の約75%以上を含む。より具体的には、薬物は、薬物ペイロードの重量の約80%以上を含んでもよい。例えば、薬物は、固体薬物単位の重量の約85%~約99.9%を含んでもよい。いくつかの実施形態では、賦形剤含量を完全に省略することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置が腎盂内に位置するときに固体薬物形態が可溶化され、可溶化された薬物を放出し得るように、薬物及び賦形剤(複数可)は、固体薬物形態が水溶性であるように選択される。
【0088】
個々の固体薬物単位は、本明細書に記載される薬物送達装置の薬物リザーバ内腔内に嵌合する、本質的に任意の選択された形状及び寸法を有してもよい。いくつかの実施形態では、固体薬物単位は、薬物リザーバ内腔が、選択された数の固体薬物単位によって実質的に満たされるようにサイズ設定され、成形される。それぞれの固体薬物単位は、特定のハウジングの薬物リザーバ内腔の断面形状に実質的に対応する断面形状を有してもよい。例えば、薬物単位は、三日月形断面形状を有する薬物リザーバ内腔内に位置付けるための押し出された三日月形状を有してもよい。いったん装填された固体薬物単位は、いくつかの実施形態では、薬物リザーバ内腔を実質的に満たし得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、固体薬物単位は、装置の薬物リザーバ内腔内で一列に整列されるように成形される。例えば、それぞれの固体薬物単位は、薬物リザーバ内腔の断面形状に対応する断面形状を有してもよく、それぞれの固体薬物単位は、隣接する固体薬物単位の端面に対応する端面形状を有してもよい。固体薬物単位間の隙間又は破断部は、配備中などの薬物送達装置の変形又は移動に適応しながら、個々の薬物単位がそれらの固体形態を保持することを可能にし得る。したがって、それぞれの薬物単位が隣接する薬物単位に関連して移動することを可能にし得るため、薬物送達装置は、固体薬物が装填されているにもかかわらず、比較的可撓性があるか又は変形可能になり得る。
【0090】
いくつかの他の実施形態では、薬物ペイロードは、エマルション若しくは懸濁液、ゲル、又はペーストなどの半固体形態の製剤を含む。例えば、製剤は、高粘稠なエマルション又は懸濁液であってもよい。いくつかの他の実施形態では、製剤は液体形態である。
【0091】
薬物リザーバ内腔は、多数の薬物錠剤又は他の固体薬物単位を保持してもよい。いくつかの実施形態では、装置は、4~400錠の薬物錠剤、例えば、10~100錠の薬物錠剤、5~50錠の錠剤、又は10~40錠の錠剤を保持する。
【0092】
いくつかの実施形態では、薬物錠剤は三日月形状の断面を有する。すなわち、錠剤の断面は、凸側面と、より短い丸みのある辺でそれらの端部/縁部で接続される対向する凹側面と、を有してもよい。他の実施形態では、図示されていないが、凸側面及び凹側面は点で交わり、三日月形状の断面をもたらし得る。便宜上、これらの腎臓形状及び三日月形状の錠剤断面積は、本明細書では「三日月」形状と称される。三日月形状では、薬物錠剤は、三日月形状の薬物リザーバの薬物リザーバ内腔の近似形状をとり、それに嵌合し、薬物リザーバ内腔の断面積の実質的な部分、例えばその80%~99%を満たし得る。三日月形状の錠剤は、平坦な端部を有してもよい。
【0093】
三日月形状の錠剤の一例を
図13に示す。錠剤1300は、主曲面1342及び副曲面1340を含む三日月形断面形状を有する。主曲面1342及び副曲面1340は丸みを帯びた曲線であるが、これらの表面は平坦な表面であってもよく、又は平坦な表面を含んでもよいことが想定される(例えば、断面の主曲線又は副曲線は、五角形の3辺、六角形の3辺などに類似し得る)。主曲線及び副曲線は、2つの重なり合う円が三日月形を形成するときのように、断面で見たときに、錠剤の一方又は両方の端部において点で交わってもよく、又は、主曲線及び副曲線は、
図13に示される実施形態で特徴付けられるように、テーブルの丸みを帯びた部分によってテーブルの一方又は両方の端部で接続されてもよい。三日月形状の錠剤は、主曲線と副曲線との間の距離が先細りであるか、実質的に一定であるか、又はこれらの組み合わせである構造を有してもよい。錠剤は、その主曲線と副曲線との間の最大距離が錠剤の高さの95%以下である場合、三日月形断面形状を有すると考えられる。
【0094】
薬物は、低溶解度薬物であってもよい。本明細書で使用するとき、「低溶解度」という用語は、37℃の水で約0.01mg/mL~約10mg/mLの溶解度特性を有する薬物を指す。いくつかの他の実施形態では、薬物は高溶解度薬物である。本明細書で使用するとき、「高溶解度」という用語は、37℃の水で約10mg/mLを超える溶解度を有する薬物を指す。例えば、特定の製剤のおよその溶解度は、トロスピウム塩化物:500mg/mL;リドカインHCl:680mg/mL;リドカイン塩基:8mg/mL;ゲムシタビンHCl:80mg/mL;ゲムシタビン塩基:15mg/mL;オキシブチニンHCl:50mg/mL;オキシブチニン塩基:0.012mg/mL;及びトリテロジン酒石酸塩:12mg/mLである。
【0095】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、上部尿路上皮癌などの上部尿路癌を含む、上部尿路の疾病を治療するために使用される。使用され得る薬物としては、抗増殖剤、細胞毒、化学療法剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。上部尿路癌の治療に好適であり得る薬物の代表的な例としては、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、ドセタキセル、シスプラチン、ドキソルビシン、バルルビシン、ゲムシタビン、マイコバクテリア細胞壁-DNA複合体(MCC)、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC、フルオロウラシル、ロイプロリド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、選択的エストロゲン受容体修飾薬(すなわちタモキシフェンなどのSERM)、ボツリヌス毒素、及びシクロホスファミドが挙げられる。薬物は、モノクローナル抗体、TNF阻害薬、抗ロイキンなどを含んでもよい。薬物はまた、イミキモド又は別のTLR7アゴニストを含むTLRアゴニストなどの免疫調節剤であってもよい。薬物はまた、特に、線維芽細胞成長因子受容体-3(FGFR3)、選択的チロシンキナーゼ阻害薬、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬、又はマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害薬などのキナーゼ阻害薬、又はこれらの組み合わせであってもよい。他の例としては、セレコキシブ、エロロチニブ、ゲフィチニブ、パクリタキセル、ポリフェノンE、バルルビシン、ネオカルチノスタチン、アパジコン、ベリノスタット、インゲノールメブテート、ウロシジン(MCC)、プロキシニウム(VB4845)、BC819(BioCancell Therapeutics)、キーホールリンペットヘモシアニン、LOR2040(Lorus Therapeutics)、ウロカニン酸、OGX427(OncoGenex)、及びSCH721015(Schering-Plough)が挙げられる。薬物治療は、癌性組織を標的とする従来の放射線療法又は外科療法と併用されてもよい。
【0096】
いくつかの他の実施形態では、薬物送達装置は、疼痛を治療するために使用され得、薬物ペイロードは、麻酔剤、鎮痛剤、及びこれらの組み合わせを含む。例えば、麻酔剤は、アミノアミド(例えば、リドカイン)、アミノエステル(例えば、ベンゾカイン)、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、鎮痛剤はオピオイド作動薬を含む。
【0097】
いくつかの他の実施形態では、薬物送達装置は、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、膀胱痛症候群、前立腺炎、尿道炎、術後疼痛、及び腎臓結石などの炎症性状態を治療するために使用されてもよい。これらの状態に対する特定の薬物の非限定的な例としては、リドカイン、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、スロデキシド)、ペントサン多硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキセイト、ケトロラック、サイクロスポリン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。腎臓結石には、薬物(複数可)は、疼痛を治療するため、及び/又は腎石の溶解を促進するように選択されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、急迫性尿失禁及び神経性失禁を含む尿失禁、尿意頻数、又は尿意切迫、並びに膀胱三角炎を治療するために使用されてもよい。使用され得る薬物としては、抗コリン剤、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、β-2アゴニスト、アルファアドレナリンアゴニスト、抗けいれん薬、ノルエピネフリン取り込み阻害薬、セロトニン取り込み阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチャネル開口薬、及び筋弛緩剤が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、腎臓、尿管、膀胱、及び尿道に関係する感染症を治療するために使用されてもよい。このような感染症の治療には、抗生物質、抗細菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、消毒薬、抗ウイルス薬及び他の抗感染薬を投与することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、薬物は、リドカイン、ゲムシタビン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、トロスピウム、トルテロジン、オキシブチニン、及びマイトマイシンCから選択される。
【0101】
他の薬物送達装置特徴部
撮像特徴部
本明細書に記載される薬物送達装置は、配備処置及び/又は回収処置の一部として、医療施術者による薬物送達装置の検出又は閲覧(例えば、X線撮像又は蛍光透視法による)を促進するための放射線不透過性部分又は構造を含んでもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、弾性体は、撮像素子を含む材料で構成される。撮像素子は、当該技術分野において既知の硫酸バリウム又は別の放射線不透過性材料などの放射線不透過性充填材料を含んでもよい。撮像素子は、弾性体に固定された1つ以上の放射線不透過性マーカーバンドを含んでもよい。いくつかの弾性体は、弾性体が形成される材料の加工中に、硫酸バリウム又は別の好適な材料などの放射線不透過性充填剤をブレンドすることによって、放射線不透過性にされてもよい。いくつかの実施形態では、弾性体が形成される第1の材料は、硫酸バリウム添加材料、すなわち、硫酸バリウムを含む材料である。いくつかの実施形態では、薬物送達装置の少なくとも1つのスペーサは、バリウム硫酸塩などの放射線不透過性充填材料を含むが、これらに限定されない、撮像材料を含む。好ましい実施形態では、薬物送達装置は、2つの端部スペーサと、少なくとも1つの中間スペーサとを含み、これらの全ては薬物リザーバ内腔内に配置される。超音波撮像又は蛍光透視法を使用して、薬物送達装置をin vivoで画像化することができる。挿入中又は他の方法で薬物送達装置の視感度を改善するために、弾性体(例えば、第1の材料、第2の材料、又はこれらの組み合わせ)、1つ以上のスペーサ、又はこれらの組み合わせの中で硫酸バリウム濃度を高めることができる。
【0103】
回収ストリング
本明細書に記載される薬物送達装置は、回収ストリング、ループ、タブ、又は腎盂からの薬物送達装置の除去を容易にする他の構造などの回収特徴部を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、回収特徴部は、薬物送達装置の端部に固定された遠位端と、装置配備後に尿管を通って膀胱内に延在するように構成された近位端と、を有する回収ストリングである。次いで、例えば、処置期間の終了後(例えば、薬物ペイロードのいくつか又は全てを腎盂内に放出した後)、装置は、回収ストリングの近位端を把持して引っ張ることによって腎盂から除去され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、配備された薬物送達装置は、回収ストリングを係合して薬物送達装置を尿管、膀胱、及び尿道を通して引っ張ることによって、腎盂から除去されてもよい。薬物送達装置は、薬物送達装置を回収機構によって尿管内へ、次いで尿道内へと引っ張るときに、比較的狭い又は線形の形状をとるように構成されてもよい。回収ストリングは、薬物送達装置に取り付けられた第1の終端部分と、尿管、膀胱、及び尿道を通して薬物送達装置を引っ張るために係合される対向する第2の終端部分と、を有する。回収ストリングは、
図19に示すように、薬物送達装置が腎盂内に配備されているときに、回収ストリングの第2の端部が膀胱内に存在するのに十分な長さを有してもよい。回収ストリングは、概して、生体適合性の織布又は不織布材料から形成される。いくつかの実施形態では、回収ストリングは、当該技術分野において既知の縫合材料、例えば、絹、ナイロン、ポリエステル、PVDF、及びポリプロピレンで構成される。回収ストリングは、薬物送達装置の細長い本体の終端部分又は中間部分を含む、薬物送達装置の任意の部分に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、2つ以上の回収ストリングを含む。
【0105】
回収ストリングは、これらの構成要素を接続する異なる手段及び位置を含む、多数の異なる方法で装置本体に取り付けられてもよい。例えば、
図15~
図16は、薬物送達装置の端部に回収ストリングが固定される2つの異なる実施形態を示し、
図17は、薬物送達装置(図示せず)の内腔内にアセンブリを配置する前に、端部スペーサに固定された回収ストリングの別の実施形態を示す。
【0106】
一実施形態が
図15に示されており、この図は、(i)薬物ペイロード1590を収容する薬物リザーバ内腔1507及び(ii)ガイドワイヤ内腔1512の境界となる外壁1506及び内壁1508を有する細長い管状本体を有する薬物送達装置1500を示す。スペーサ1520は、薬物リザーバ内腔内に固定され、その端部で閉鎖されている。外壁1506は、回収ストリング1580が通過する孔1586を含む。回収ストリング1580は、それ自体でループを形成し、回収ストリングの第1の部分はスペーサ1520と外壁1506との間に固定され、回収ストリングの第2の部分は外壁の外側表面に沿って通過し、回収ストリングの第2の部分は結び目1582で回収ストリング(strong)の第1の部分に結ばれている。あるいは、又は結び目に加えて、回収ストリング1580は、スペーサ1520と外壁1506の内側部分との間の摩擦、及び/又は接着剤の補助のいずれかによって適所に保持されてもよい。この実施形態の変形例(図示せず)では、孔はスペーサ内に延在し、回収ストリングは、回収ストリングの第1の部分が、スペーサと外壁の代わりに内壁との間に固定されるように、外壁の孔及びスペーサの孔の両方を通過する。
【0107】
別の実施形態が
図16に示されており、この図は、(i)薬物ペイロード1690を収容する薬物リザーバ内腔1607及び(ii)ガイドワイヤ内腔1612の境界となる外壁1606及び内壁1608を有する細長い管状本体を有する薬物送達装置1600を示す。スペーサ1620は、薬物リザーバ内腔内に固定され、その端部で閉鎖されている。外壁1606、内壁1608、及びスペーサ1620のうちの1つは共に、孔1686を有し、この孔を通って延在している。回収ストリング1580は、孔1686を通過し、それ自体でループを形成しており、回収ストリングの第1の部分は外壁の外側表面に沿って通過し、第2の部分はガイドワイヤ内腔内の内壁に沿って通過し、回収ストリングの第1の部分は、結び目1682で回収ストリング(strong)の第2の部分に結ばれている。あるいは、又は結び目に加えて、回収ストリング1680は、接着剤の補助によって適所に保持されてもよい。1つの変形例(図示せず)では、スペーサ内の孔は、(図示した実施形態のように互いに位置合わせされる代わりに)外壁及び内壁内の孔からオフセットされ、その結果、回収ストリングの一部が、スペーサと内壁及び/又は外壁との間の摩擦係合によって捕捉される。別の変形例(図示せず)では、孔は、内壁を貫通することなく、2点で装置本体の外壁を通って横方向に延在してもよい。
【0108】
回収ストリングを有するスペーサの一実施形態を
図17に示す。スペーサ1720は、本体の長手方向軸に垂直な方向に延在する孔1784を有する細長い円筒形本体である。回収ストリング1780は、孔1784を通って延在し、ループを形成し、結び目1782でそれ自体に結ばれている。このスペーサ及び回収ストリングのアセンブリは、次いで、本明細書に記載される薬物送達装置内の薬物リザーバ内腔の端部内に固定されてもよい。
【0109】
更に別の実施形態では、回収ストリングは、スペーサに直接埋め込まれる。例えば、回収ストリングは、スペーサの形成中に取り付けられてもよく、例えば、スペーサを作製するための成形工程中に熱可塑性材料と共に取り込まれる。更に別の実施形態では、回収ストリングは、スペーサを含まない部品及び/又は場所で、装置本体に直接取り付けられる。例えば、回収ストリングは、装置本体の側壁に接着剤で結ばれてもよく、かつ/又は固定されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、回収タブを含んでもよい。回収タブは、装置本体の一部であってもよく、例えば、それと一体に形成されてもよい。装置は、尿管、膀胱、及び尿道を通して薬物送達装置を引っ張るために鉗子又は別の器具を用いて回収タブを把持するか、ないしは別の方法で係合することによって、腎盂から除去されてもよい。例えば、尿管鏡を用いて、器具の遠位端を尿道、膀胱、及び尿管を通って腎盂内に誘導し、装置に到達させてもよい。薬物送達装置は、薬物送達装置をタブによって尿道内又は尿管内へと引っ張るときに、比較的狭い又は線形の形状をとるように構成されてもよい。
【0111】
薬物送達の方法
本明細書に開示される薬物送達装置、システム、及び方法は、ヒトでの使用に特に適合される。また、獣医学又は家畜用途などの他の哺乳動物での使用に適合されてもよい。したがって、用語「患者」は、ヒト又は別の哺乳動物対象を指し得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、患者への薬物の制御放出を提供する方法は、(i)本明細書に記載される薬物送達装置を患者内に、例えば、腎盂内に配備することと、(ii)薬物を装置内の薬物リザーバ内腔から持続期間、すなわち24時間超にわたって連続的に腎盂の局所的な環境内に放出することと、を含む。例えば、薬物は、腎盂を通して尿中にわたり、次いで、隣接する組織内に拡散し得る。いくつかの実施形態では、薬物は、腎盂内の配備部位の組織に局所的に放出される。いくつかの実施形態では、放出された薬物は、隣接する組織に分配されてもよい。いくつかの実施形態では、放出された薬物は、尿管、膀胱、及び尿道を治療するために、腎盂から尿中に運ばれてもよい。薬物送達装置を尿管ステントなしに完全に腎盂内に存在させることは、長期間にわたって治療薬と共に上部路(例えば、腎臓及び尿管)の組織を継続的に治療するのに特に有利な方法であり得る。
【0113】
放出は、例えば、装置の弾性体を通る経壁拡散を介して生じ得るか、又は装置の本体の1つ以上の開口を通して薬物を浸透圧駆動することによって生じ得る。いくつかの実施形態では、装置は、(i)薬物に対して不透過性である第1の材料と、(ii)薬物に対して透過性である第2の材料と、を含み、第2の材料のみを通って(経壁拡散によって)薬物拡散する外側管を含む弾性本体を有する。薬物送達装置は、本明細書に記載される任意の特徴部、又は特徴部の組み合わせを含んでもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、尿は、第1の材料、第2の材料、又はこれらの組み合わせを通じた経壁拡散によって薬物リザーバ内腔内に拡散し、薬物リザーバ内腔内に収容された薬物に接触して、薬物の溶液を生成し、溶液はその後、経壁拡散によって第2の材料を通って腎盂内へと拡散する。
【0115】
いくつかの実施形態では、配備された薬物送達装置は、所定の処置期間に腎盂内に留まり、所定の処置期間にわたって薬物を制御可能に放出する。薬物送達装置は、その配備後に、数日間、数週間、数か月間、又はそれ以上の治療期間にわたって薬物を送達してもよい。
【0116】
いったん配備されると、薬物送達装置は、所望の既定期間にわたって所望の量の薬物を放出する。好ましい実施形態では、薬物送達装置は、24時間以上、例えば、1~90日、2~60日、3~45日、3~30日、3~21日、3~14日、7~45日、7~30日、7~14日、7~10日、3~10日、24~72時間、36~60時間、又は48~90時間にわたって、所望の投与量の薬物を継続的に送達し得る。薬物の送達速度及び投与量は、送達される薬物及び治療される疾病又は状態に応じて選択され得る。いくつかの実施形態では、薬物送達装置からの薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわたって実質的にゼロ次である。いくつかの実施形態では、薬物送達装置からの薬物の放出速度は、少なくとも7日間にわたって実質的にゼロ次である。
【0117】
いくつかの実施形態では、薬物は、ゲムシタビン、例えば、ゲムシタビン塩酸塩である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、少なくとも25mg/日のゲムシタビンが7日間にわたって放出される。別の実施形態では、少なくとも1mg/日のゲムシタビン塩酸塩が7日間~3か月にわたって放出される。
【0118】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置からの薬物の溶出は、薬物送達装置内の薬物の溶解後に生じる。例えば、尿は薬物送達装置に入り、薬物に接触し、薬物を可溶化し、その後、溶解された薬物は、例えば、拡散及び/又は浸透圧ポンピングによって薬物送達装置から放出される。いくつかの実施形態では、薬物送達装置から薬物を放出することは、薬物を、外側管の第2の材料、又は外側管の第1の材料及び第2の材料の両方を通して吸収された水によって可溶化することを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、異なる時点で放出される2つの薬物のペイロードを有してもよい。第1のペイロードは、比較的迅速な解放用に適合されてもよく、第2のペイロードは、より長時間の解放用に適合されてもよい。2つのペイロード中の薬物は、同じ薬物又は2種類の異なる薬物であってもよい。
【0120】
装置の配備及び回収の方法
一般に、この方法は、本明細書に記載される薬物送達装置を患者の腎盂内に配備することを含み、薬物送達装置は、患者の膀胱内に、又は膀胱及び尿道を通って延在するように構成された回収ストリングの任意選択的な例外を除いて、患者の腎盂内に完全に収容される。薬物送達装置は、薬物送達装置が再吸収性でないか、ないしは別の方法で除去される必要がある場合などに、身体から回収され得る。代替的な実施形態では、薬物送達装置は、完全に又は部分的に生体侵食性、再吸収性、又は生分解性であり、薬物送達装置全体は再吸収されるか、又は薬物送達装置は、腎盂から流れる尿と共に排出されるのに十分小さい片に十分に分解するかのいずれかであるため、回収は不要である。実施形態では、薬物送達装置は、薬物の一部、又は好ましくは薬物のほとんど若しくは全てが放出されるまで回収又は再吸収されなくてもよい。必要に応じて、新しく薬物が装填された薬物送達装置を、回収と同じ処置中に又はしばらく経ってから後続的に配備することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、患者内に薬物送達装置を配備することは、配備器具を介して患者の腎盂内に薬物送達装置を挿入することを含む。いくつかの実施形態では、患者の腎盂内に薬物送達装置を配備することは、薬物送達装置を配備形状に弾性変形させることと、薬物送達装置を患者の尿道、膀胱、及び尿管を通して挿入することと、薬物送達装置が、腎盂から、例えば、尿管又は腎杯内への薬物送達装置の移動を防止又は軽減するのに適した保持形状をとるように、薬物送達装置を患者の腎盂内に放出することと、を含む。いくつかの実施形態では、患者の薬物送達装置を配備することは、尿道、膀胱、尿管を通して患者の腎盂内にガイドワイヤを挿入することと、ガイドワイヤに沿って薬物送達装置を前進させることであって、ガイドワイヤは、薬物送達装置が腎盂内に位置付けられるまで、ガイドワイヤ内腔内に位置付けられる、ことと、次いで、ガイドワイヤを患者から及びガイドワイヤ内腔から後退させることと、を含む。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、コイル状又は螺旋状の保持形状と相対的に直線化された挿入形状との間で弾性変形可能であり、薬物送達装置をガイドワイヤに沿って前進させる工程の間に、ガイドワイヤ内腔内に位置するガイドワイヤは、薬物送達装置上に負荷をかけて、薬物送達装置を相対的に直線化された挿入形状へと付勢し、ガイドワイヤをガイドワイヤ内腔から後退させる工程の後、薬物送達装置は、患者の腎盂内に薬物送達装置を保持するのに適したコイル状又は螺旋状の保持形状に弾性的に戻る。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は放射線不透過性マーカー又は薬剤を含み、配備は、X線撮影によって患者内の薬物送達装置の配置を決定することを含む。
【0122】
図18は、患者の体内、例えば、腎盂内での本明細書に記載される薬物送達装置の使用方法1800の一実施形態を示すブロック図である。ブロック1802では、配備器具が体内に挿入され、患者の尿道、膀胱、及び尿管のうちの1つを通る経路を提供して、腎盂に到達する。配備器具を挿入することは、一般に、配備器具を尿道、膀胱、及び尿管に挿入することと、近位端が体外に留まっている間に、遠位端が腎盂内に位置付けられるまで配備器具を前方に駆動することとを含む。実施形態では、薬物送達装置は、独立した処置において又は別の泌尿器科的処置(例えば、砕石術)において、他の処置の前、最中、若しくは後のいずれかで患者の腎盂内に配備される。
【0123】
いくつかの実施形態では、配備器具は、配備処置の可視化を可能にする膀胱鏡又は尿道鏡に関連して、ブロック1802で体内に挿入される。いくつかの実施形態では、ブロック1802で配備器具を体内に挿入することはまた、配備器具の遠位端が腎盂内に位置付けられていることを検証することを含む。遠位端の位置は、配備器具の遠位端を膀胱鏡、超音波又はX線で可視化することによって検証され得る。また、いくつかの実施形態では、ブロック1802において配備器具を体内に挿入することはまた、遠位端上に位置付けられたバルーンを膨張させることなどによって、配備器具の遠位端を腎盂内に固定することを含む。
【0124】
ブロック1804において、薬物送達装置は、配備器具と動作可能に関連付けられる。関連のタイプは、関与する配備器具に依存する。器具が内腔器具(例えば、膀胱鏡、尿道鏡、カテーテルなど)である場合、関連付け工程は、薬物送達装置を器具の内腔内に挿入することを含む。器具がガイドワイヤを含む場合、関連付け工程は、ガイドワイヤを薬物送達装置のガイドワイヤ内腔内に挿入することを含む。異なる配備器具及び動作可能な関連付けの組み合わせが使用されてもよい。典型的な実施形態では、動作可能な関連付けは、薬物送達装置をその保持形状からその配備形状へと弾性変形させることを含む。配備器具と薬物送達装置とが互いに動作可能に関連付けられているとき、それらの間の摺動係合を容易にするために潤滑剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、配備器具が体内に挿入される前に配備器具の上/中に予め装填される。そのような場合、ブロック1802及び1804の順序は反転される。
【0125】
ブロック1806では、薬物送達装置は、腎盂内に駆動される。実施形態では、この工程は、薬物送達装置が配備器具から分離されるまで(遠位端が配備器具と共に留まり得る回収ストリングの任意選択的な例外を除く)、薬物送達装置を配備器具の遠位端に向かって押し、薬物送達装置を腎盂内に放出することを含む。内腔配備器具の場合、薬物送達装置は、例えば、内腔を通って薬物送達装置の後側に進むスタイレット及び/又は非圧縮性流体(例えば、水、潤滑剤)を使用して、器具の遠位端部分の開口部から押し出される。ガイドワイヤタイプの配備器具の場合、薬物送達装置は、例えば、ガイドワイヤに乗り上げるプランジャを使用して、ガイドワイヤの遠位端から押し出される。いくつかの実施形態では、薬物送達装置の配備器具からの分離に続いて、薬物送達装置は、装置が配備器具から直線化を誘導する負荷を受けなくなると、典型的には自発的にその保持形状に弾性的に戻る。いくつかの実施形態では、ブロック1806で薬物送達装置を腎盂内へと駆動することは、薬物送達装置が適切に配備されたことを確実にするために、腎盂内の薬物送達装置を観察することを含む。例えば、薬物送達装置は、尿道鏡、超音波、又はX線を使用して観察され得る。
【0126】
ブロック1808において、配備器具は、器具を腎盂、尿管、膀胱、次いで尿道から引き出すことによって、患者の身体から除去される。配備器具が複数の構成要素を含む場合、構成要素は、患者の不快感及び/又は配備器具が通過する内腔組織の外傷を最小限に抑えるために所望される構成要素及び方法に応じて、同時に又は数回にわたって引き出され得る。薬物送達装置が取り付けられた回収ストリングを含む場合、回収ストリングの自由な遠位端は、配備器具と共に引き出され、患者内の所望の位置(例えば、膀胱内)に解放されてもよい。
【0127】
その後、ブロック1810において、薬物送達装置は、選択された処置期間の間、腎盂内に配備されたまま、処置期間にわたって薬物ペイロードから薬物を選択された速度/量で放出する。すなわち、in vivoで配備されると、薬物送達装置は、1つ以上の疾病又は状態の治療(又は予防)のために薬物をその薬物ペイロードから放出する。
【0128】
ブロック1812において、薬物送達装置は、例えば治療期間の完了時、又は薬物ペイロードの全て若しくは大部分の放出時に、患者の身体から除去される。この工程は、除去器具を体内に挿入することと、薬物送達装置又はその一部を配置することと、除去器具の助けを借りて薬物送達装置を身体から引き抜くことと、を含んでもよい。除去器具は、膀胱鏡、カテーテル、又は尿管鏡を含んでもよく、鉗子、ラリアット、又は別の把持器具を更に含んでもよい。薬物送達装置が回収ストリングを含む実施形態では、患者から装置を除去する方法は、患者の膀胱内に位置し得る回収ストリングの遠位端部分を把持することと、次いで、回収ストリングを引っ張ることによって、尿管、膀胱、及び尿道を通して薬物送達装置を患者から除去することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、管腔除去器具の遠位端部分に引き込まれて、除去器具に入る際に装置が折り畳まれるようにする又は配備形状をとらせることができる。いくつかの実施形態では、除去器具を通過した鉗子を使用して薬物送達装置を把持し、除去器具を引き出す前に薬物送達装置を部分的に又は完全に除去器具内に引き込むことができる。いくつかの実施形態では、除去器具は、この目的のために構成された薬物送達装置の一部に磁気的に結合するための磁石を含んでもよい。磁気結合は、有利には、ブラインド処置で行うことができる。すなわち、装置を除去器具で固定するために装置を可視化する必要はない。いくつかの他の実施形態では、薬物送達装置の任意の部分が(例えば、回収ストリングによって)しっかりと把持された後、除去器具が患者の身体から引き出され、薬物送達装置は、除去器具内ではなくその後ろに追従する。これらの実施形態では、薬物送達装置は、尿管及び尿道に入る際に配備形状に引き込まれてもよく、これらの組織構造は、薬物送達装置をその配備形状に維持しながら、通過させる。様々な処置において、薬物送達装置は、除去器具から引き抜かれてもよく、その後、除去器具が本体から除去されてもよく、あるいは、薬物送達装置及び除去器具は、本体から同時に除去されてもよい。
【0129】
方法1800における薬物送達装置は、
図1A~
図1Cに示される薬物送達装置100の実施形態を含む、本明細書に記載の任意の好適な薬物送達装置であり得、配備器具1400は、
図14A~
図14Bに示される器具であってもよい。一実施例では、薬物送達装置は、配備器具、例えば、尿管カテーテル及び/又はガイドワイヤシステムを用いて薬物送達装置を誘導し、薬物送達装置を配備器具から腎盂内に放出することによって配備される。これらの場合、薬物送達装置は、薬物送達装置が配備器具から腎盂内に出現すると、保持形状(例えば、コイル又は螺旋の形状)をとることができる。配備器具は、本明細書に記載されるガイドワイヤ配備システムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、患者の腎盂内に薬物送達装置を配備することは、(i)薬物送達装置を配備形状に弾性変形させることと、(ii)薬物送達装置を患者の尿道、膀胱、及び尿管を通して挿入することと、(iii)薬物送達装置が、装置の不必要な移動を防止するのに適した保持形状をとるように、薬物送達装置を患者の腎盂内に放出することと、を含む。
【0130】
治療方法
配備された薬物送達装置は、多種多様な疾病又は状態の局所的又は局部的治療又は予防のために、患者の腎盂に局所的に1種以上の薬物を放出し得る。非限定的な例としては、尿路感染症、腎感染症(腎盂腎炎)、腎細胞癌、線溶亢進、上部尿路上皮癌、並びに腎石、尿管結石、及び膀胱結石などの尿結石が挙げられる。他の疾病及び状態の治療も想定される。
【0131】
一実施形態では、患者は結石の治療及び/又は予防を必要とする。装置によって送達される薬物の非限定的な例としては、抗菌剤、アルカリ化剤、酸性化剤、ウレアーゼ阻害剤、抗炎症剤、及び抗線維化剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は、患者内の腎臓結石の治療のために体外衝撃波砕石術(ESWL)で患者を治療した後に、患者に挿入される。より小さい結石片の腎臓の下部又は下極腎杯への移動は、重力及び解剖学的構成に起因してESWL治療後に生じることが観察されている(Bourdoumisら、「Lower Pole Stone Management」Med Surg Urol S1:002(2012))。これらの結石片は、より下部の腎杯内に再配置され、新たな結石形成の核として作用して、下極腎杯結石症を引き起こす。したがって、本方法の実施形態では、結石形成を阻害する薬物が、配備された装置から腎盂内に放出される。放出された薬物は、重力及び解剖学的構成に起因してこれらのより低い腎杯により集中し、有効となり得る。
【0132】
一実施形態では、患者は、尿路感染症(UTI)又は腎盂腎炎の治療又は予防を必要とする。特定の実施形態では、治療又は予防方法は、薬物送達装置を介して抗菌剤を送達することを含む。抗菌剤は、当該技術分野において既知の抗生物質、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、駆虫剤、消毒剤、又は防腐剤であってもよい。特定の実施形態では、抗菌剤は、アミノグリコシド、浸透剤、又は鉄模倣物質であってもよい。特定の抗菌剤の非限定的な例としては、UTI又は腎盂腎炎の治療又は予防の方法に使用され得る特定の抗菌剤の非限定的な例としては、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、トリメトプリム、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ノルフロキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシン、ニトロフラントイン、ホスホマイシン、ピバメシリナム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフェピム、アモキシシリン/クラブラン酸、ピペラシリン/タゾバクタム、ゲンタマイシン、アミカシン、エルタペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、ドリペネム、アズトレオナム、ガリウム系鉄模倣物質、及びこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、患者に投与される「薬物」は、再発性尿路感染又は腎盂腎炎を予防するために、尿生殖路に非病原菌を定着させるための弱毒化細菌/病原体を含む。
【0133】
別の実施形態では、患者は腎細胞癌の治療を必要とする。特定の実施形態では、治療方法は、薬物送達装置を介して、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、又はこれらの組み合わせを送達することを含む。腎細胞癌の治療方法において使用され得る特定の薬物の非限定的な例としては、エベロリムス、アルデスロイキン、ベバシズマブ、アキシチニブ、ソラフェニブトシル酸塩、パザパニブ塩酸塩、アルデスロイキン、リンゴ酸スニチニブ、テムシロリムス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他の治療は、本明細書に記載される装置、薬物送達装置の使用と共に使用されてもよい。例えば、治療方法は、手術、例えば部分的腎切除、放射線、又は全身化学療法を更に含んでもよい。
【0134】
更に別の実施形態では、患者は、上部尿路上皮癌、又は腎盂及び尿管の移行上皮癌の治療を必要とする。上部尿路上皮癌の治療方法において使用され得る特定の薬物の非限定的な例としては、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)、マイトマイシンC、BCG/インターフェロン、インターフェロン(IFN)-2a、エピルビシン、チオテパ、ドキソルビシン、ゲムシタビン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他の治療は、本明細書に記載される薬物送達装置の使用と共に使用されてもよい。例えば、治療方法は、手術、放射線、又は全身化学療法を更に含んでもよい。
【0135】
別の実施形態では、患者は線溶亢進の治療を必要とする。線溶亢進の治療方法において使用され得る特定の薬物の非限定的な例としては、トラネキサム酸、アミノカプロン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0136】
更に他の実施形態では、治療方法は、配備された薬物送達装置から抗炎症剤、抗線維症剤、又はこれらの組み合わせを放出することを含んでもよい。
【0137】
本明細書に引用される刊行物及びそれらが引用される材料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0138】
本明細書で提供される説明において、「含む(includes)」、「である(is)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」、及び「備える、含む(comprises)」という用語は、非制限様式で使用され、したがって「含むが、これらに限定されない」を意味すると解釈されるべきである。方法、システム、又は装置が、様々な構成要素又は工程を「含むこと(comprising)」に関して特許請求又は記載されるとき、方法又はシステムは、別途記載のない限り、様々な構成要素又は工程「から本質的になる」又は「からなる」可能性もある。
【0139】
様々な数値範囲が本明細書に開示され得る。出願人が任意の種類の範囲を開示又は特許請求する場合、出願人の意図は、そのような範囲が、その範囲の端点並びにその範囲内に包含される任意の部分範囲及び部分範囲の組み合わせの終了点を含み、合理的に包含し得る、それぞれの可能な数を個々に開示又は特許請求することである。更に、本明細書に開示される範囲の全ての数値の終了点は近似である。代表的な例として、出願人は、一実施形態では、薬物送達装置が、保持形状にあるとき、約1.5cm~約3cmの長さを有することを開示している。この範囲は、約1.5cm~約3cmの長さを包含するものとして解釈されるべきであり、「約」1.6cm、1.7cm、1.8cm、1.9cm、2cm、2.1cm、2.2cm、2.3cm、2.4cm、2.5cm、2.6cm、2.7cm、2.8cm、及び2.9cmのそれぞれを、これらの値のうちの任意の値間の任意の範囲及び部分範囲を含み、更に包含する。
【0140】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、示された値の5%以内の値を指す。例えば、「約2cm」は、1.9cm~2.1cmを包含することになる。
【0141】
本明細書に記載される本開示の多くの改変及び他の実装は、前述の説明及び関連する図面に提示される教示の利益を有することが明らかとなるであろう。したがって、本開示は、開示される特定の実装に限定されるものではなく、改変及び他の実装が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。
【実施例】
【0142】
本発明を以下の非限定的な実施例によって更に説明する。
【0143】
実施例1-薬物送達装置
in vitro試験のためにゲムシタビン放出装置を製造した。二重材料ポリウレタン管を使用してシステムを構成した。本実施例の薬物送達装置の薬物リザーバ内腔は、ゲムシタビン塩酸塩、KOLLIDON(登録商標)30ポリビニルピロリドン(PVP)(BASF Corp.,USA)、及びCAB-O-SIL(登録商標)ヒュームドシリカ(Cabot Corp.,USA)を含む、ゲムシタビン塩酸塩粉末ブレンドを収容した。
【0144】
薬物送達装置は、実質的に円形のガイドワイヤ内腔と、
図1Cに示される薬物リザーバ内腔などの三日月形断面形状を有する薬物リザーバ内腔と、を含む、二重内腔構造を有した。装置の弾性体を、硫酸バリウム添加テコフレックスポリウレタン(TECOFLEX(商標)EG-80A-B20、20%硫酸バリウム添加、テコフレックスポリウレタン、Lubrizol Life Sciences,USA)、及びTECOPHILIC(商標)TPUポリウレタン(HP-60D-35、Lubrizol Life Sciences,USA)から作製した。テコフレックスポリウレタンは、硫酸バリウム添加を有する水透過性及び薬物不透過性材料であり、この材料は挿入中の可視化を可能にした。この材料は、水が薬物送達装置内に拡散することを可能にし、装填された薬物ペイロードの溶解に寄与した。TECOPHILIC(商標)TPUポリウレタンを使用して、薬物透過性ストライプを形成した。したがって、TECOPHILIC(商標)TPUポリウレタンは、水透過性及び薬物透過性材料であり、水が薬物送達装置内に入ることを可能にし、かつ溶解した薬物が薬物透過性ストライプを横断して、薬物送達装置を取り囲む領域に入ることを可能にした。
【0145】
薬物送達装置の薬物リザーバ内腔の第1の端部に第1のスペーサを熱融着させた。次いで、ゲムシタビン塩酸塩粉末ブレンドを薬物送達装置の薬物リザーバ内腔内に充填し、次いで、第2のスペーサを薬物リザーバ内腔の第2の端部内に熱融着させ、薬物リザーバ内腔を封止/閉鎖した。
【0146】
本実施例の薬物送達装置を
図4A~
図4Cに示す。薬物送達装置400は、テコフィリックポリウレタンの薬物透過性ストライプ424と共に、テコフレックスポリウレタンで形成された外壁406を含んでいた。薬物リザーバ内腔407のそれぞれの端部をスペーサ420で封止し、薬物リザーバ内腔に薬物ペイロード416、ゲムシタビン粉末ブレンドを装填した。薬物透過性ストライプ424は、
図4Cの薬物透過性ストライプ424を通過する矢印によって示されるように、薬物送達装置の長さに沿って延び、経壁拡散による薬物放出の経路を提供した。
図4Cはまた、外壁406と内壁408との間に画定されたガイドワイヤ内腔412を示す。
【0147】
薬物リザーバ内腔の中間にスペーサを追加することを含む、装置の代替的な設計も作製した。この設計は、中間スペーサ及び端部スペーサが放射線不透過性材料を含む場合に特に有用であり、in vivoで配備されているときに装置の3点可視化を可能にするものであった。このような実施形態では、弾性体を形成する材料内に放射線不透過性材料を含める必要はない。このような薬物送達装置の例を
図5A~
図5Cに示す。薬物送達装置500は、テコフィリックポリウレタンの薬物透過性ストライプ524と共に、テコフレックスポリウレタンで形成された外壁506を含んでいた。薬物リザーバ内腔507のそれぞれの端部をテコフレックスポリウレタンスペーサ520で封止した。薬物リザーバ内腔は、薬物ペイロード516(ゲムシタビン粉末ブレンド)とテコフレックスポリウレタンスペーサ550とを収容し、端部スペーサ520間にほぼ中間に配置されていた。アセンブリプロセスは、(i)第1のスペーサの配置後に、ゲムシタビン粉末製剤の約半分を薬物リザーバ内腔内に充填することと、(ii)中間のスペーサを薬物リザーバ内腔内に挿入することと、(iii)薬物ペイロードの残部を薬物リザーバ内腔内に充填することと、次いで(iv)第2の端部スペーサを設置することと、を含んだ。端部スペーサを薬物リザーバ内腔の端部に熱融着させた。薬物透過性ストライプ524は、
図5Cの薬物透過性ストライプ524を通過する矢印によって示されるように、薬物送達装置の長さに沿って延び、経壁拡散による薬物放出の経路を提供した。
図5Cはまた、外壁506と内壁508との間に画定されたガイドワイヤ内腔512を示す。
【0148】
薬物送達装置を組み立てた後、熱設定プロセスを用いて保持形状を装置に適用した。薬物送達装置は、保持形状に弾性変形され、次いで90℃のオーブン内に10分間置かれた。薬物送達装置を保持形状のまま室温まで冷却し、薬物送達装置は保持形状を維持した。単一のコイル状及び螺旋状の保持形状が生成される。
【0149】
薬物送達装置に保持形状が付与された後、薬物送達装置の端部に回収ストリングを取り付けた。回収ストリングは、薬物送達装置の配置、薬物送達装置の抜去、又は薬物送達装置の配置及び抜去の両方を補助するために追加された単繊維ナイロン材であった。あるいは、単繊維ポリエチレン材が、その機械的特性をin vivoで維持するその能力により、回収ストリングとして使用されてもよい。回収ストリングは、薬物送達装置のガイドワイヤ内腔から(薬物送達装置の端部から2.5mmの距離で)薬物リザーバ内腔内の[1]第1のスペーサ、及び[2]薬物リザーバ内腔に対向する外壁を貫通する。次いで、回収ストリングを2倍になるまで引っ張った後、ストリングを1つに結んだ。回収ストリングは、処置の終了時に簡単に把持し、除去するために、端部が試験動物(以下に記載)の膀胱内に存在し得るような長さに設定した。
【0150】
実施例2-薬物送達装置のin vivo試験
異なる保持形状を有する2つの薬物送達装置の移動を、in vivo試験を用いて評価した。
【0151】
4cm及び6cmの長さ(実質的に真っ直ぐな配置形状にあるとき)を有する単一コイル設計(例えば、
図2のもの)を、家畜ヨークシャーブタの腎臓の腎盂の極に配備した。剖検では、薬物送達装置が移動したこと、また、より小さい薬物送達装置は、より大きい薬物送達装置よりも移動しやすいことが判明した。また、単一コイル薬物送達装置は、利用可能な腎盂空間に適合するために長さがより短く、薬物ペイロードが制限された。
【0152】
単一コイル薬物送達装置を、4匹の家畜ヨークシャーブタの4つの腎臓の上極及び下極に配置した。2つの小さい(すなわち、4cm)単一コイル薬物送達装置を、2匹の動物(4つの全小型薬物送達装置)内に10日間配備し、2つの大きい薬物送達装置(すなわち、6cm)を1匹の動物内に10日間配備した。腎盂の小さい幾何学的形状に起因して、1つの大きい薬物送達装置(すなわち、6cm)を残りの動物内に10日間配備した。剖検時に、4つの小さい薬物送達装置のうちの1つは近位尿管に移動し、2つの小さい薬物送達装置は腎臓の皮下に移動し、残りの小さい薬物送達装置は腎臓内に留まった。3つの大きい薬物送達装置は、剖検時に腎臓内で見つかった。したがって、小さい薬物送達装置は、より大きい薬物送達装置よりも移動しやすいことが認められた。
【0153】
6cm及び8cmの長さ(相対的に直線化された配備形状にあるとき)並びに0.5cmの内側コイル直径を有する螺旋状(多コイル)の薬物送達装置と、10cm及び12cmの長さ並びに1cmの内側コイル直径を有する螺旋状の薬物送達装置と、を腎臓の腎盂の極内に配備した。剖検では、いずれのサイズの薬物送達装置も有意な移動可能性を呈さないことが判明し、コイル設計に対する螺旋設計の保持力の改善を示した。加えて、より長いシステムは、配置後により短いシステムよりも安全であったことが認められた。これらの三次元形状により、多コイル薬物送達装置は、あらゆる方向で腎盂の壁に接触し、それによって保持力が向上した。また、この形状の相対的な複雑さにより、これらの薬物送達装置は、尿管から後退する及び尿管を下がる可能性が低くなる。多コイル薬物送達装置の長さが長いほど、より大きい薬物ペイロードを使用することができた。
【0154】
螺旋設計は、4匹の家畜ヨークシャーブタの8つの腎臓の上極に7日間の配備を行った。本実施例の螺旋設計の配備は、以下の表に提供される。
【0155】
【0156】
7日後、8つの螺旋設計薬物送達装置のうちの1つは、尿管に移動した。移動した薬物送達装置は、ストリング固定具の除去を試みている間に、少なくとも部分的に取り除かれた可能性がある。全てのサイズ(長さ及びコイル直径)の螺旋設計薬物送達装置は、有意な移動可能性を呈さず、保持力の全体的な改善を示した。
【0157】
実施例3-薬物送達装置形状の変形例
図6に示されるような薬物送達装置を、螺旋部分の3回の巻き、及び装置の螺旋部分にほぼ垂直に延在する直線端部を用いて製造した。直線端部をヒートセットで成形し、装置に対して斜めに整列させた。外部コイル直径は12mmであった。
【0158】
図7に示すように、螺旋部分の6回の巻き、及びヒートセットで形成された直線端部を有する薬物送達装置を製造した。装置の外部コイル直径は8mmであった。装置の非コイル状の長さは120mmであった。
【0159】
図8に示されるような、3つのコイルが2つの中間直線部分によって離間している薬物送達装置を製造した。装置の非コイル状の長さは85mmであった。
【0160】
図9に示されるような、2つのコイルが単一の中間直線部分によって離間している薬物送達装置を製造した。装置の非コイル状の長さは75mmであった。
【0161】
8回の巻き及び直線端部を有する薬物送達装置も製造した。この装置は、7mmの外部コイル直径を有した。
【0162】
これらの装置のそれぞれの先端部を、
図10Aに示すように、先細りの端部を提供するように熱成形した。
【0163】
実施例4-薬物のin vitro放出
実施例1の薬物送達装置のいくつかの実施形態に対して、ゲムシタビンのin vitro放出の試験を行った。本実施例で試験した異なる実施形態は、[1]異なる弧角度の薬物透過性ストライプを有し、[2]異なる回収ストリングn取り付け方法で作製され、[3]異なる長さを有し、[4]異なるヒートセット形状を有する薬物送達装置を含んでいた。
【0164】
それぞれの薬物送達装置を37℃の脱イオン水300gに入れ、時点サンプルを所定の時点で収集して、in vitro放出プロファイルを構成した。
【0165】
a.ストライプ角度
2つの異なるストライプ弧角度を有する薬物送達装置を試験した。第1の薬物送達装置のストライプ弧角度は60°であり、第2の薬物送達装置のストライプ弧角度は120°であった。
【0166】
より小さいストライプ弧角度(すなわち、60°)は、より長い放出持続時間をもたらした。120°のストライプ弧角度を有する薬物送達装置は、4日間持続する放出プロファイルを有し、60°のストライプ弧角度を有する薬物送達装置は、7日間持続する放出プロファイルを有した。
【0167】
b.回収ストリングの取り付け
実施例1で説明した回収ストリングの取り付け方法では漏れは生じず、試験された最も単純な取り付け方法であった。
【0168】
c.薬物送達装置長さ
相対的に直線化された配備形状でコイル保持形状又は螺旋状の保持形状、及び長さ4cm(コイル状の保持形状)、8cm(コイル状の保持形状)、10cm(螺旋状の保持形状)、及び12cm(螺旋状の保持形状)を有する薬物送達装置を試験した。しかしながら、4cm及び8cmの長さを有する薬物送達装置では、配備後に望ましくない移動が生じた。10cm又は12cmの長さを有する薬物送達装置では、配備後に望ましくない移動は生じず、長さの変化(4cm又は8cmから)は薬物送達装置の放出持続時間に影響を与えなかったが、この変化によりピーク放出速度が上がった。
【0169】
d.ヒートセット構成
ヒートセット構成への変更は、薬物送達装置の放出プロファイルに顕著な影響を及ぼさなかった。
【0170】
図11は、この実施例の2つの異なる薬物送達装置の放出プロファイルを示し、第1の薬物送達装置は、弧角度60℃のストライプ、相対的に直線化された配置形状にあるときの長さ10cm、及び螺旋状のヒートセット構成を有する。第2の薬物送達装置は、その長さが12cmであることを除いて、第1と同一であった。
図11のプロットは、2つの薬物送達装置で達成された放出速度が類似しているが、より長い長さを有する装置(装置2)は、1~9日目のそれぞれにおいてより多量の薬物を放出したことを示している。
【0171】
e.ストライプ角度
ストライプ角度への変化は、より小さいストライプ角度を有する装置がより大きい薬物ペイロードを有するときに試験された薬物送達装置の放出プロファイルに顕著な影響を与えなかった。
【0172】
図12は、2つの異なる薬物送達装置構成の放出プロファイルを示す。薬物送達装置の第1の構成は、EG-100A-B20をベース材料として作製し、薬物送達装置の第2の構成は、EG-80A-B20をベース材料として作製した。EG-100A-B20は、剛性の高い材料であり、薬物送達装置のカラム強度を上げ、薬物送達装置がガイドワイヤに沿って押されたときの薬物送達装置の崩壊を軽減する。薬物送達装置の第1の構成は、9Frの外径及びより高い薬物ペイロード可能性を有し、第2の構成は、8Frの外径を有した。両方の薬物送達装置の薬物透過性ストライプをHP-60D-35で作製した。第2の構成のストライプ角度は60°であった。第1の構成は、より高い薬物ペイロード可能性を有するため、ストライプ角度は55°まで減少させて、薬物プロファイルのピーク放出を維持した。
図12に見られるように、第2の構成を製造するための薬物送達装置の改変にもかかわらず、両方の構成とも非常に類似した薬物放出プロファイルを有し、ピーク放出は維持された。
【0173】
実施例5-三日月形状の錠剤
実施例1の薬物送達装置の薬物リザーバ内腔の寸法に対応するものを含む三日月形状の錠剤を製造した。三日月形状の錠剤の製造には、単一ステーション自動プレス、及びプラシーボブレンドを使用した。三日月形状の錠剤は、
図13に示されるものと類似したものであった。
【0174】
例示的実施形態
実施形態1.患者の腎盂内に配備するための薬物送達装置であって、薬物送達装置は、弾性体であって、弾性体は、(i)細長い外壁を含む外側管と、(ii)外側管内に位置する細長い弧状の内壁であって、弧状の内壁の2つの対向する縁部に沿って外壁の内側表面に一体に接続された、細長い弧状の内壁と、を含み、外壁及び内壁は共に、(a)内壁の凹側面上のガイドワイヤ内腔と、(b)内壁の対向する凸側面上の薬物リザーバ内腔と、を画定し、薬物リザーバ内腔は、その対向端部で閉鎖されている、弾性体と、薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、薬物ペイロードは少なくとも1種の薬物を含む、薬物ペイロードと、を含み、薬物送達装置は、尿管を介した患者の腎盂への薬物送達装置の通過のための配備形状と、腎盂からの装置の移動を軽減するように構成された保持形状との間で弾性変形可能である、薬物送達装置。
【0175】
実施形態2.装置は、ガイドワイヤがガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に保持形状になるように付勢される、実施形態1に記載の薬物送達装置。
【0176】
実施形態3.保持形状が螺旋状である、実施形態1又は2に記載の薬物送達装置。
【0177】
実施形態4.螺旋状の保持形状が、2~10回の巻きを含む、実施形態3に記載の薬物送達装置。
【0178】
実施形態5.外側管が、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して透過性であり、第2の材料は、薬物ペイロードに隣接している、実施形態1~4のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0179】
実施形態6.第2の材料が、細長い外壁の長さに延在する薬物透過性ストライプの形態である、実施形態5に記載の薬物送達装置。
【0180】
実施形態7.外壁が円筒形であり、薬物透過性ストライプは、断面内の外壁の外周の約30°~約120°の弧角度を有する、実施形態6に記載の薬物送達装置。
【0181】
実施形態8.薬物透過性ストライプは、断面内の外壁の外周の約60°~約120°の弧角度を有する、実施形態7に記載の薬物送達装置。
【0182】
実施形態9.薬物リザーバ内腔が三日月形断面形状を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0183】
実施形態10.ガイドワイヤ内腔が円形断面形状を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0184】
実施形態11.保持フレーム内腔及び保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に備え、保持フレームは、薬物送達装置を保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0185】
実施形態12.保持形状が螺旋状であり、薬物送達装置は、配備形状にあるとき、約5cm~約15cm、約8cm~約12cm、又は約10cm~約12cmの長さを有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0186】
実施形態13.薬物送達装置が、約0.5cm~約1.4cm、約0.5cm~約1cm、又は約0.5cm~約1cmの最大幅を有する、実施形態12に記載の薬物送達装置。
【0187】
実施形態14.薬物送達装置が、保持形状にあるとき、約0.8cm~約2cm、又は約0.8cm~約1.8cm、又は約0.8cm~約1.4cmの長さを有する、実施形態12又は13に記載の薬物送達装置。
【0188】
実施形態15.薬物リザーバ内腔の対向端部のそれぞれがスペーサによって封止されている、実施形態1~14のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0189】
実施形態16.薬物リザーバ内腔内で対向端部間の位置に配置された少なくとも1つの中間スペーサを更に備える、実施形態1~15のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0190】
実施形態17.弾性体、端部スペーサ、及び/又は少なくとも1つの中間スペーサが、放射線不透過性充填材料を含む、実施形態15又は16に記載の薬物送達装置。
【0191】
実施形態18.外側管が、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して不透過性であるテコフレックスポリウレタンを含み、第2の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して透過性であり、第2の材料は、薬物ペイロードに隣接している、実施形態1~17のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0192】
実施形態19.第1の材料が放射線不透過性充填剤を更に含む、実施形態18に記載の薬物送達装置。
【0193】
実施形態20.第2の材料が、テコフィリックポリウレタンを含む、実施形態18又は19に記載の薬物送達装置。
【0194】
実施形態21.薬物送達装置に取り付けられた第1の端部を有する回収ストリングを更に備える、実施形態1~20のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0195】
実施形態22.回収ストリングは、薬物送達装置が腎盂内に配備されているときに、回収ストリングの第2の端部が患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する、実施形態21に記載の薬物送達装置。
【0196】
実施形態23.弾性体の終端部分に固定され、鉗子によって把持されるように構成されたタブを更に備える、実施形態1~22のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0197】
実施形態24.薬物ペイロードが、固体又は半固体形態である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0198】
実施形態25.薬物ペイロードが、粉末又は複数の錠剤の形態である、実施形態24に記載の薬物送達装置。
【0199】
実施形態26.薬物ペイロードが、三日月形断面形状を有する複数の錠剤の形態である、実施形態24に記載の薬物送達装置。
【0200】
実施形態27.外側管及び内壁が、共押出プロセスによって一緒に形成されている、実施形態1~26のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0201】
実施形態28.弾性体が、保持形状を有するように熱的に形状設定されている、実施形態1~27のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0202】
実施形態29.薬物を必要とする患者に薬物を投与するためのシステムであって、システムは、実施形態1~28のいずれか1つに記載の薬物送達装置と、患者の腎盂内に薬物送達装置を配備するためのガイドワイヤ配備システムと、を備え、ガイドワイヤ配備システムは、(i)薬物送達装置と動作可能に関連付けられるように構成され、かつ対向する近位端部分が患者の尿道から外に延在している間、腎盂内に延在することが可能な遠位端部分を有するガイドワイヤと、(ii)薬物送達装置をガイドワイヤ上で、遠位端から腎盂内へと押し入れるためのプランジャ装置と、を含む、システム。
【0203】
実施形態30.ガイドワイヤが、薬物送達装置のガイドワイヤ内腔を通過するように寸法決めされた断面積を有する、実施形態29に記載のシステム。
【0204】
実施形態31.プランジャ装置は、プランジャと、ハンドルと、プランジャとハンドルとの間に延在するシースであって、シースは、ハンドルに加えられた駆動力をプランジャに伝達する、シースと、プランジャ装置がガイドワイヤ上を移動し得るように、ガイドワイヤを受容するための内部ボアと、を含む、実施形態29又は30に記載のシステム。
【0205】
実施形態32.プランジャは、薬物送達装置がガイドワイヤから分離していることを示すように構成された停止部を更に含む、実施形態31に記載のシステム。
【0206】
実施形態33.薬物を必要とする患者に薬物を投与する方法であって、方法は、患者の腎盂内に実施形態1~28のいずれか1つに記載の薬物送達装置を配備することであって、薬物送達装置は、患者の膀胱内に、又は膀胱を通って患者の尿道の中に、又は患者の尿道を通って延在するように構成された回収ストリングの任意選択的な例外を除いて、患者の腎盂内に完全に収容される、ことと、薬物送達装置から腎盂内に薬物を放出することと、を含む、方法。
【0207】
実施形態34.薬物が、外壁の少なくとも一部を通る経壁拡散を介して放出される、実施形態33に記載の方法。
【0208】
実施形態35.外壁は、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して透過性であり、第2の材料は薬物ペイロードに隣接し、薬物は、第2の材料を介した経壁拡散によって放出される、実施形態34に記載の方法。
【0209】
実施形態36.薬物送達装置を配備することが、薬物送達装置を配備形状に弾性変形させることと、薬物送達装置を患者の尿道、膀胱、及び尿管を通して挿入することと、薬物送達装置が保持形状に弾性変形するように、薬物送達装置を患者の腎盂内に放出することと、を含む、実施形態33~35のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
実施形態37.薬物送達装置を配備することが、ガイドワイヤの遠位端を患者の尿道、膀胱、尿管を通して患者の腎盂内に挿入することと、ガイドワイヤに沿ってガイドワイヤの遠位端に向かって、ガイドワイヤの近位端から離れる方向に薬物送達装置を前進させることであって、ガイドワイヤは、薬物送達装置が腎盂内に位置付けられるまで、ガイドワイヤ内腔内に位置付けられる、ことと、次いで、ガイドワイヤ内腔から及び患者からガイドワイヤを引き出すことと、を含む、実施形態33~36のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
実施形態38.薬物送達装置が、コイル状又は螺旋状の保持形状と相対的に直線化された挿入形状との間で弾性変形可能であり、ガイドワイヤに沿って薬物送達装置を前進させる工程の間に、ガイドワイヤ内腔内に位置するガイドワイヤは、薬物送達装置上に負荷をかけて、薬物送達装置を相対的に直線化された挿入形状に付勢し、ガイドワイヤをガイドワイヤ内腔から引き出す工程の後、薬物送達装置は、患者の腎盂内に薬物送達装置を保持するのに適したコイル状又は螺旋状の保持形状に弾性変形する、実施形態37に記載の方法。
【0212】
実施形態39.薬物送達装置が放射線不透過性マーカー又は薬剤を含み、方法は、X線撮影によって患者内の薬物送達装置の配置を決定することを更に含む、実施形態33~38のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
実施形態40.腎盂内への薬物送達装置の配備に続き、尿が、薬物リザーバ内腔内に拡散して薬物リザーバ内腔内に収容されている薬物に接触し、薬物の溶液を生成し、その後に当該溶液が腎盂内に放出される、実施形態33~39のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施形態41.外壁が、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、薬物が溶液中にあるときに薬物に対して透過性であり、腎盂内への薬物送達装置の配備に続いて、尿が、第1及び/又は第2の材料を介した経壁拡散によって薬物リザーバ内腔内に拡散し、薬物リザーバ内腔内に収容された薬物に接触し、薬物の溶液を生成し、その後に当該溶液が第2の材料を介した経壁拡散によって腎盂内に放出される、実施形態40に記載の方法。
【0215】
実施形態42.薬物送達装置からの薬物の放出の速度が、36時間~7日間の範囲の期間に本質的にゼロ次である、実施形態33~41のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
実施形態43.薬物を必要とする患者に薬物を投与する方法であって、薬物送達装置を患者の腎盂内に配備することと、少なくとも24時間の長期治療期間にわたって、配備された薬物送達装置から腎盂内の尿に継続的に薬物を放出することと、を含み、薬物送達装置は、少なくとも患者の尿管の中に延在する回収ストリングの任意選択的な例外を除いて、腎盂内に完全に収容される、方法。
【0217】
実施形態44.治療期間が1日~90日である、実施形態43に記載の方法。
【0218】
実施形態45.薬物が、薬物送達装置の壁内の開口を通って、経壁拡散によって又は浸透圧によって薬物送達装置から放出される、実施形態43又は44に記載の方法。
【0219】
実施形態46.患者が尿路感染症又は腎盂腎炎の治療又は予防を必要とする、実施形態43~45のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
実施形態47.薬物が抗菌剤を含む、実施形態46に記載の方法。
【0221】
実施形態48.薬物が、アミノグリコシド、浸透剤、又は鉄模倣物質を含む、実施形態46に記載の方法。
【0222】
実施形態49.薬物が、抗生物質、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、駆虫剤、消毒剤、又は防腐剤を含む、実施形態46に記載の方法。
【0223】
実施形態50.薬物が、再発性尿路感染又は腎盂腎炎を予防するために、尿生殖路に非病原菌を定着させるための弱毒化細菌/病原体を含む、実施形態46に記載の方法。
【0224】
実施形態51.患者が腎細胞癌の治療を必要とする、実施形態43~45のいずれか1つに記載の実施形態。
【0225】
実施形態52.薬物が、エベロリムス、アルデスロイキン、ベバシズマブ、アキシチニブ、ソラフェニブトシル酸塩、パザパニブ塩酸塩、アルデスロイキン、リンゴ酸スニチニブ、テムシロリムス、ゲムシタビン、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態51に記載の方法。
【0226】
実施形態53.患者が上部尿路上皮癌の治療を必要とする、実施形態43~45のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
実施形態54.薬物が、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)、マイトマイシンC、BCG/インターフェロン、インターフェロン2α、エピルビシン、ドキソルビシン、チオテパ、ゲムシタビン、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態53に記載の方法。
【0228】
実施形態55.患者が線溶亢進の治療を必要とする、実施形態43~45のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
実施形態56.薬物が、トラネキサム酸(ranexamic)、アミノカプロン酸、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態55に記載の方法。
【0230】
実施形態57.患者が尿結石の治療を必要とする、実施形態43~45のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
実施形態58.腎盂内への薬物送達装置の配備が、患者の腎臓結石の治療のために体外衝撃波砕石術で患者を治療した後で行われる、実施形態57に記載の方法。
【0232】
実施形態59.薬物が、抗菌剤、アルカリ化剤、酸性化剤、ウレアーゼ阻害剤、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態57又は58に記載の方法。
【0233】
実施形態60.薬物送達装置が、実施形態1~28のいずれか1つに記載の装置を含む、実施形態43~59のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
実施形態61.患者の腎盂内に配備するための薬物送達装置であって、薬物送達装置は、細長い弾性体であって、弾性体は、ガイドワイヤ内腔及び別個の薬物リザーバ内腔を含む、細長い弾性体と、薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、薬物ペイロードは少なくとも1種の薬物を含む、薬物ペイロードと、を含み、薬物送達装置は、尿管を介した患者の腎盂内への薬物送達装置の通過に対応するように構成された配備形状と、腎盂からの装置の移動を軽減するように構成された螺旋状の保持形状との間で弾性変形可能である、薬物送達装置。
【0235】
実施形態62.螺旋状の保持形状が、2~10回の巻きを含む、実施形態61に記載の薬物送達装置。
【0236】
実施形態63.装置は、ガイドワイヤがガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に保持形状になるように付勢され、弾性体は、(i)保持形状を有するように熱的に形状設定されており、かつ/又は(ii)保持フレーム内腔及び保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に含み、保持フレームは、薬物送達装置を保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである、実施形態61又は62に記載の薬物送達装置。
【0237】
実施形態64.細長い弾性体の終端部分に取り付けられた第1の端部を有する回収ストリングを更に備え、回収ストリングは、薬物送達装置が腎盂内に配備されているときに、回収ストリングの第2の端部が患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する、実施形態61~63のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0238】
実施形態65.薬物ペイロードが、粉末、複数の錠剤、又はゲルなどの半固体形態の形態である、実施形態61~64のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0239】
実施形態66.細長い弾性体は、尿が薬物リザーバ内腔内に拡散して薬物ペイロードに接触することを可能にするように構成された水透過性壁を含む、実施形態61~65のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0240】
実施形態67.細長い弾性体は、薬物リザーバ内腔に隣接する薬物透過性壁を含み、薬物透過性壁は、薬物が溶液中で装置から拡散することを可能にするように構成されている、実施形態61~66のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0241】
実施形態68.細長い弾性体が、薬物リザーバ内腔に隣接する薬物不透過性壁を更に含む、実施形態67に記載の薬物送達装置。
【0242】
実施形態69.薬物透過性壁がテコフィリックポリウレタンを含み、薬物不透過性壁がテコフレックスポリウレタンを含む、実施形態68に記載の薬物送達装置。
【0243】
実施形態70.薬物透過性壁が、弾性体の長さに延在する薬物透過性ストライプの形態である、実施形態68又は69に記載の薬物送達装置。
【0244】
実施形態71.薬物リザーバ内腔の対向端部のそれぞれが端部スペーサによって封止されている、実施形態61~70のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0245】
実施形態72.細長い弾性体の対向端部間のほぼ中間の位置に、薬物リザーバ内腔内に配置された少なくとも1つの中間スペーサを更に備える、実施形態61~71のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0246】
実施形態73.弾性体、端部スペーサ、及び/又は少なくとも1つの中間スペーサが、放射線不透過性充填材料を含む、実施形態71又は72に記載の薬物送達装置。
【0247】
実施形態74.薬物リザーバ内腔は三日月形断面形状を有し、薬物ペイロードは、粉末又は複数の三日月形状の錠剤を含む、実施形態61~73のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0248】
実施形態75.弾性体が、1つ以上の水透過性熱可塑性ポリウレタンを含む、実施形態61~74のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0249】
実施形態76.保持形状が、1つの直線端部を有する螺旋部分を有する、実施形態61~75のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0250】
実施形態77.保持形状が、2つの直線端部を有する螺旋部分を有する、実施形態61~75のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0251】
実施形態78.保持形状が、螺旋部分と少なくとも1つの中間直線部分とを有する、実施形態61~77のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0252】
実施形態79.保持形状が、2つ以上の中間直線部分を含む、実施形態78に記載の薬物送達装置。
【0253】
実施形態80.装置本体が、ベース材料EG-100A-B20と、約55度のストライプ角度を有するストライプ材料HP-60 D-35と、を含む管を含む、実施形態61~79のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0254】
実施形態81.装置本体が9Frの外径を有する、実施形態61~80のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0255】
実施形態82.装置本体の2つの対向する端部は、直線状であり、保持形状にあるとき、本体の螺旋コイル内の平面に対してほぼ垂直な方向に延在する、実施形態61~81のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0256】
実施形態83.外部コイル直径は8mm~12mmであり、装置は3~8個のコイルを有する、実施形態61~82のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0257】
実施形態84.薬物ペイロードは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%の薬物を含み、薬物ペイロードは、充填された粉末又は複数の錠剤の形態である、実施形態61~83のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0258】
実施形態85.薬物がゲムシタビン塩酸塩である、請求項84に記載の薬物送達装置。
【0259】
実施形態86.薬物送達装置は、尿道及び尿管を通した患者の腎盂内への装置の導入を促進する先端部として機能するように構成された先細りの端部を備える、実施形態1~85のいずれか1つに記載の装置、システム、又は方法。
【0260】
実施形態87.薬物送達装置は、末端部として機能するように構成された先細りの端部を更に備える、実施形態86に記載の装置、システム、又は方法。
【0261】
実施形態88.薬物送達装置は、装置に固定された少なくとも1つの回収ストリングを更に備える、実施形態86又は87に記載の装置、システム、又は方法。
【0262】
〔実施の態様〕
(1) 患者の腎盂内に配備するための薬物送達装置であって、前記薬物送達装置は、
弾性体であって、前記弾性体は、
(i)細長い外壁を含む外側管と、
(ii)前記外側管内に位置する細長い弧状の内壁であって、前記弧状の内壁の2つの対向縁部に沿って前記外壁の内側表面に一体に接続された、細長い弧状の内壁と、を含み、前記外壁及び前記内壁は共に、(a)前記内壁の凹側面上のガイドワイヤ内腔と、(b)前記内壁の対向する凸側面上の薬物リザーバ内腔と、を画定し、前記薬物リザーバ内腔は、その対向端部で閉鎖されている、弾性体と、
前記薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、前記薬物ペイロードは少なくとも1種の薬物を含む、薬物ペイロードと、を備え、
前記薬物送達装置は、尿管を介した前記患者の前記腎盂への前記薬物送達装置の通過のための配備形状と、前記腎盂からの前記装置の移動を軽減するように構成された保持形状との間で弾性変形可能である、薬物送達装置。
(2) 前記装置は、ガイドワイヤが前記ガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に前記保持形状になるように付勢される、実施態様1に記載の薬物送達装置。
(3) 前記保持形状が螺旋部分を有する、実施態様1に記載の薬物送達装置。
(4) 前記保持形状が、前記装置の長手方向に延在する直線終端部分を更に含む、実施態様3に記載の薬物送達装置。
(5) 前記螺旋部分が2~10回の巻きを含む、実施態様3に記載の薬物送達装置。
【0263】
(6) 前記巻きのうちの少なくとも2つが、中間直線部分によって分離されている、実施態様5に記載の薬物送達装置。
(7) 前記装置本体の一方又は両方の端部が先細りである、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(8) 前記外側管が、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して透過性であり、前記第2の材料は、前記薬物ペイロードに隣接している、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(9) 前記第2の材料が、前記細長い外壁の長さに延在する薬物透過性ストライプの形態である、実施態様8に記載の薬物送達装置。
(10) 前記外壁が円筒形であり、前記薬物透過性ストライプは、前記断面内の前記外壁の外周の約30°~約120°の弧角度を有する、実施態様9に記載の薬物送達装置。
【0264】
(11) 前記薬物透過性ストライプは、前記断面内の前記外壁の前記外周の約55°~約120°の弧角度を有する、実施態様10に記載の薬物送達装置。
(12) 前記第1の材料がテコフレックスポリウレタン(tecoflex polyurethane)を含む、実施態様9に記載の薬物送達装置。
(13) 前記第1の材料が放射線不透過性充填剤を更に含む、実施態様9に記載の薬物送達装置。
(14) 前記第2の材料がテコフィリックポリウレタン(tecophilic polyurethane)を含む、実施態様9に記載の薬物送達装置。
(15) 前記薬物リザーバ内腔が三日月形断面形状を有する、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
【0265】
(16) 前記ガイドワイヤ内腔が円形断面形状を有する、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(17) 保持フレーム内腔及び前記保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に備え、前記保持フレームは、前記薬物送達装置を前記保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(18) 前記保持形状が螺旋部分を含み、前記薬物送達装置は、前記配備形状にあるとき、約5cm~約15cmの長さを有する、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(19) 前記薬物送達装置は、前記保持形状にあるとき、約0.8cm~約2cmの長さを有する、実施態様18に記載の薬物送達装置。
(20) 前記薬物リザーバ内腔の前記対向端部のそれぞれがスペーサによって封止されている、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
【0266】
(21) 前記薬物リザーバ内腔内で前記対向端部間の位置に配置された少なくとも1つの中間スペーサを更に備える、実施態様20に記載の薬物送達装置。
(22) 前記弾性体、前記端部スペーサ、及び/又は前記少なくとも1つの中間スペーサが、放射線不透過性充填材料を含む、実施態様20又は21に記載の薬物送達装置。
(23) 前記薬物送達装置に取り付けられた回収ストリングを更に備える、実施態様1~20のいずれかに記載の薬物送達装置。
(24) 前記回収ストリングは、前記薬物送達装置が前記腎盂内に配備されているときに、前記回収ストリングの端部が前記患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する、実施態様23に記載の薬物送達装置。
(25) 前記薬物ペイロードが、固体又は半固体形態である、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
【0267】
(26) 前記薬物ペイロードが、粉末又は複数の錠剤の形態である、実施態様25に記載の薬物送達装置。
(27) 前記薬物ペイロードが、三日月形断面形状を有する複数の錠剤の形態である、実施態様25に記載の薬物送達装置。
(28) 前記外側管及び前記内壁が、共押出プロセスによって一緒に形成されている、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(29) 前記弾性体が、前記保持形状を有するように熱的に形状設定されている、実施態様1~6のいずれかに記載の薬物送達装置。
(30) 薬物を必要とする患者に前記薬物を投与するためのシステムであって、前記システムが、
実施態様1~29のいずれかに記載の薬物送達装置と、
前記患者の腎盂内に前記薬物送達装置を配備するためのガイドワイヤ配備システムであって、前記ガイドワイヤ配備システムは、(i)前記薬物送達装置と動作可能に関連付けられるように構成され、かつ対向する近位端部分が前記患者の尿道から外に延在している間、前記腎盂内に延在することが可能な遠位端部分を有するガイドワイヤと、(ii)前記薬物送達装置を前記ガイドワイヤ上で、前記遠位端から前記腎盂内へと押し入れるためのプランジャ装置と、を含む、ガイドワイヤ配置システムと、を備え、
前記ガイドワイヤは、前記薬物送達装置の前記ガイドワイヤ内腔を通過するように寸法決めされた断面積を有する、システム。
【0268】
(31) 前記プランジャ装置が、
プランジャと、
ハンドルと、
前記プランジャと前記ハンドルとの間に延在するシースであって、前記シースは、前記ハンドルに加えられた駆動力を前記プランジャに伝達する、シースと、
前記プランジャ装置が前記ガイドワイヤ上を移動し得るように、前記ガイドワイヤを受容するための内部ボアと、を含む、実施態様30に記載のシステム。
(32) 前記プランジャは、前記薬物送達装置が前記ガイドワイヤから分離していることを示すように構成された停止部を更に含む、実施態様31に記載のシステム。
(33) 薬物を必要とする患者に前記薬物を投与する方法であって、前記方法が、
薬物送達装置を前記患者の腎盂内に配備することであって、前記薬物送達装置は、前記患者の膀胱内に、又は前記膀胱を通って前記患者の尿道内に、又は前記患者の前記尿道を通って延在するように構成された回収ストリングの任意選択的な例外を除いて、前記患者の前記腎盂内に完全に収容される、ことと、
薬物を前記薬物送達装置から前記腎盂内に放出することと、を含む、方法。
(34) 前記薬物が、前記薬物送達装置の外壁の少なくとも一部を通って、経壁拡散を介して放出される、実施態様33に記載の方法。
(35) 前記外壁は、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して透過性であり、
前記第2の材料は、前記薬物を含むペイロードに隣接し、
前記薬物は、前記第2の材料を通した経壁拡散を介して放出される、実施態様34に記載の方法。
【0269】
(36) 前記薬物送達装置の前記配備が、
前記薬物送達装置を配備形状に弾性変形させることと、
前記薬物送達装置を前記患者の尿道、膀胱、及び尿管に通して挿入することと、
前記薬物送達装置が保持形状に弾性変形するように、前記薬物送達装置を前記患者の腎盂内に放出することと、を含む、実施態様33~35のいずれかに記載の方法。
(37) 前記薬物送達装置を配備することが、
ガイドワイヤの遠位端を前記患者の尿道、膀胱、尿管に通して前記患者の腎盂内に挿入することと、
前記ガイドワイヤに沿って前記ガイドワイヤの前記遠位端に向かって、前記ガイドワイヤの近位端から離れる方向に前記薬物送達装置を前進させることであって、前記ガイドワイヤは、前記薬物送達装置が前記腎盂内に位置付けられるまで、前記ガイドワイヤ内腔内に位置付けられる、ことと、次いで、
前記ガイドワイヤ内腔から及び前記患者から前記ガイドワイヤを引き出すことと、を含む、実施態様33に記載の方法。
(38) 前記薬物送達装置がコイル状又は螺旋状の保持形状と相対的に直線化された挿入形状との間で弾性変形可能であり、
前記ガイドワイヤに沿って前記薬物送達装置を前進させる前記工程の間に、前記ガイドワイヤ内腔内に位置する前記ガイドワイヤは、前記薬物送達装置上に負荷をかけて、前記薬物送達装置を前記相対的に直線化された挿入形状に付勢し、
前記ガイドワイヤを前記ガイドワイヤ内腔から引き出す前記工程に続いて、前記薬物送達装置は、患者の前記腎盂内に前記薬物送達装置を保持するのに適した前記コイル状又は螺旋状の保持形状に弾性変形する、実施態様37に記載の方法。
(39) 前記薬物送達装置が放射線不透過性マーカー又は薬剤を含み、前記方法は、X線撮影によって前記患者内の前記薬物送達装置の配置を決定することを更に含む、実施態様33に記載の方法。
(40) 前記腎盂内への前記薬物送達装置の前記配備に続き、尿が、前記薬物リザーバ内腔内に拡散して前記ペイロード内の前記薬物に接触し、前記薬物の溶液を生成し、その後に前記溶液が前記腎盂内に放出される、実施態様33に記載の方法。
【0270】
(41) 前記外壁は、2つの異なる構成材料を含み、そのうちの第1の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して不透過性であり、第2の材料は、前記薬物が溶液中にあるときに前記薬物に対して透過性であり、
前記腎盂内への前記薬物送達装置の前記配備に続いて、尿が、前記第1及び/又は前記第2の材料を介した経壁拡散によって前記薬物リザーバ内腔内に拡散し、前記薬物リザーバ内腔内に収容された前記薬物に接触し、前記薬物の溶液を生成し、その後に前記溶液が前記第2の材料を介した経壁拡散によって前記腎盂内に放出される、実施態様40に記載の方法。
(42) 前記薬物送達装置からの前記薬物の前記放出の速度が、36時間~7日間の範囲の期間に本質的にゼロ次である、実施態様33に記載の方法。
(43) 薬物を必要とする患者に前記薬物を投与する方法であって、
薬物送達装置を前記患者の腎盂内に配備することと、
少なくとも24時間の長期治療期間にわたって、配備された前記薬物送達装置から前記腎盂内の尿に継続的に薬物を放出することと、を含み、
前記薬物送達装置は、少なくとも前記患者の尿管の中に延在する回収ストリングの任意選択的な例外を除いて、前記腎盂内に完全に収容される、方法。
(44) 前記治療期間が1日~90日である、実施態様43に記載の方法。
(45) 前記薬物が、前記薬物送達装置の壁内の開口を通って、経壁拡散によって又は浸透圧によって前記薬物送達装置から放出される、実施態様43に記載の方法。
【0271】
(46) 前記患者が尿路感染症又は腎盂腎炎の治療又は予防を必要とする、実施態様43~45のいずれかに記載の方法。
(47) 前記患者が腎細胞癌の治療を必要とする、実施態様43~45のいずれかに記載の方法。
(48) 前記患者が上部尿路上皮癌の治療を必要とする、実施態様43~45のいずれかに記載の方法。
(49) 前記患者が線溶亢進の治療を必要とする、実施態様43~45のいずれかに記載の方法。
(50) 前記患者が尿結石の治療を必要とする、実施態様43~45のいずれかに記載の方法。
【0272】
(51) 前記腎盂内への前記薬物送達装置の前記配備が、前記患者の腎臓結石の治療のために体外衝撃波砕石術で前記患者を治療した後に行われる、実施態様50に記載の方法。
(52) 患者の腎盂内に配備するための薬物送達装置であって、前記薬物送達装置は、
細長い弾性体であって、前記弾性体は、ガイドワイヤ内腔及び別個の薬物リザーバ内腔を含む、細長い弾性体と、
前記薬物リザーバ内腔内に配置された薬物ペイロードであって、前記薬物ペイロードは少なくとも1種の薬物を含む、薬物ペイロードと、を備え、
前記薬物送達装置は、尿管を介した前記患者の前記腎盂への前記薬物送達装置の通過用に構成された配備形状と、前記腎盂からの前記装置の移動を軽減するように構成された螺旋状の保持形状との間で弾性変形可能である、薬物送達装置。
(53) 前記装置は、ガイドワイヤが前記ガイドワイヤ内腔内に挿入されていない場合に前記保持形状になるように付勢され、前記弾性体は、(i)前記保持形状を有するように熱的に形状設定されており、かつ/又は(ii)保持フレーム内腔及び前記保持フレーム内腔内に配置された保持フレームを更に含み、前記保持フレームは、前記薬物送達装置を前記保持形状に付勢するように構成された弾性ワイヤである、実施態様52に記載の薬物送達装置。
(54) 前記細長い弾性体に取り付けられた回収ストリングを更に備え、前記回収ストリングは、前記薬物送達装置が前記腎盂内に配備されているときに、前記回収ストリングの端部が前記患者の膀胱内に存在するのに十分な長さを有する、実施態様53に記載の薬物送達装置。
(55) 前記薬物ペイロードが、粉末又は複数の錠剤の形態である、実施態様53に記載の薬物送達装置。
【0273】
(56) 前記細長い弾性体は、尿が前記薬物リザーバ内腔内に拡散して前記薬物ペイロードに接触することを可能にするように構成された水透過性壁を含む、実施態様55に記載の薬物送達装置。
(57) 前記細長い弾性体は、前記薬物リザーバ内腔に隣接する薬物透過性壁を含み、前記薬物透過性壁は、前記薬物が溶液中で前記装置から拡散することを可能にするように構成されている、実施態様56に記載の薬物送達装置。
(58) 薬物透過性壁が、前記弾性体の前記長さに延在する薬物透過性ストライプの形態である、実施態様57に記載の薬物送達装置。
(59) 前記細長い弾性体が、前記薬物リザーバ内腔に隣接する薬物不透過性壁を更に含む、実施態様57に記載の薬物送達装置。
(60) 前記薬物透過性壁がテコフィリックポリウレタンを含み、前記薬物不透過性壁がテコフレックスポリウレタンを含む、実施態様58に記載の薬物送達装置。
【0274】
(61) 前記テコフレックスポリウレタンが、EG-100A-B20又はEG-80A-B20のいずれかである、実施態様60に記載の薬物送達装置。
(62) 前記螺旋状の保持形状が、前記装置の長手方向に延在する直線終端部分を更に含む、実施態様52~61のいずれかに記載の薬物送達装置。
(63) 前記薬物リザーバ内腔の対向端部のそれぞれが端部スペーサによって封止されている、実施態様62に記載の薬物送達装置。
(64) 前記細長い弾性体の対向端部間のほぼ中間の位置に、前記薬物リザーバ内腔内に配置された少なくとも1つの中間スペーサを更に備える、実施態様63に記載の薬物送達装置。
(65) 前記端部スペーサ及び前記少なくとも1つの中間スペーサが、放射線不透過性充填材料を含む、実施態様64に記載の薬物送達装置。
【0275】
(66) 前記薬物リザーバ内腔が三日月形断面形状を有し、前記薬物ペイロードは、粉末又は複数の三日月形状の錠剤を含む、実施態様52~61のいずれかに記載の薬物送達装置。
(67) 薬物錠剤であって、
薬物と、
前記薬物と組み合わされた1つ以上の賦形剤と、を含み、
前記薬物と前記1つ以上の賦形剤との前記組み合わせは、三日月形状の断面プロファイルを有する錠剤形態である、薬物錠剤。
(68) 前記錠剤が平坦な端部壁を有する、実施態様67に記載の薬物錠剤。
(69) 前記薬物が、前記錠剤の90重量%~99重量%を構成する、実施態様67又は68に記載の薬物錠剤。
【国際調査報告】