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特表2022-505063アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、それらの調製およびそれらの使用
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  • 特表-アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、それらの調製およびそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、それらの調製およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20220106BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C07F7/10 W
C08G18/38 093
C07F7/10 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520960
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2019078118
(87)【国際公開番号】W WO2020079097
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】18201573.5
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512135078
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials GmbH
【住所又は居所原語表記】Chempark,Gebaeude V7,51368 Leverkusen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チェルニショフ,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】エバースハイム,ウベルトゥス
【テーマコード(参考)】
4H049
4J034
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP06
4H049VP07
4H049VP08
4H049VP09
4H049VP10
4H049VQ02
4H049VQ21
4H049VQ28
4H049VQ35
4H049VQ79
4H049VR22
4H049VR42
4H049VR43
4H049VS21
4H049VS35
4H049VS79
4H049VU20
4H049VW02
4J034CA14
4J034CA15
4J034CA16
4J034CD15
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB10
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
本発明は、アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、ポリイソシアネート架橋剤を使用する硬化性組成物の製造、特にコーティング組成物の製造におけるそれらの使用、前記硬化性組成物から得られる硬化組成物および硬化組成物を含む物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】

ここで
Aは、酸素(-O-)またはR SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、但し(i)Aが酸素(-O-)の場合、zは2であり、そして(ii)Aがポリオルガノシロキサニル残基の場合、ポリオルガノシロキサニル残基は、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含むという条件であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキレン基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、6から12個の炭素原子を有するアリーレン基、7から10個の炭素原子を有するアラルキレン基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニレン基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、そしてより好ましくは、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキレン基、以下に概略的に示す、特にSiおよびN原子に結合した2,2-ジメチルブチレンなどからなる群から独立して選択され、
【化2】

およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
Xは独立して0または1の整数であり、好ましくはXは0であり、そして
Zは、独立して、2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である、化合物。
【請求項2】
Aが、1から2000、好ましくは2から2000のシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aは、直鎖状または分枝状のポリオルガノシロキサニル残基であり、好ましくは
Aは式(IV)の基であり、
【化3】

ここで
下付き文字nは、0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から100、さらにより好ましくは0から50、さらにより好ましくは1から100、さらにより好ましくは1から50の範囲の整数であり、そして
は独立して有機基であり、好ましくは脂肪族または芳香族基から選択され、より好ましくは、最大30個の炭素原子を有するn-アルキル、イソアルキル、または第三級アルキル、最大30個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、5から30個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から30個の炭素原子を有するアリール、7から30個の炭素原子を有するアルキルアリール、これらの基は、さらに1つまたは複数の酸素、窒素、硫黄および/またはフッ素原子で置換することができ、または最大500のアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテルから選択され、基Rは脂肪族不飽和がなく、好ましくは、Rは、CH-、CHCH-、(CHCH-、C17-およびC1021-などのアルキルラジカルを含む一価の炭化水素ラジカル、シクロヘキシルエチルを含む脂環式ラジカル、フェニル、トリル、キシリルを含むアリールラジカル、ベンジルおよび2-フェニルエチルを含むアラルキルラジカル、CFCHCH-、CCHCH-、C13CHCH-を含む式C2m+1CHCH-を有する一価のハロ炭化水素ラジカル、ここでmは1から10の値を有し、または、C-O(CF-CF-O)1-10CF-、F[CF(CF)-CF-O]1-5-(CF0-2-、C-OCF(CF)-およびC-OCF(CF)-CF-OCF(CF)-を含む酸素で置換されたハロ炭化水素ラジカルであり、最も好ましくは、Rはメチルまたはフェニルである、請求項1または2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
Aは、式(V)を有するポリシロキサン残基であり、
【化4】

ここで単位はブロック状またはランダムに任意の順序で配置され、そしてここで
11は、一価の脂肪族基、好ましくは1から4個の炭素原子のアルキル基、より好ましくはメチルであり、
12は、一価の芳香族基、好ましくは6から12個の炭素原子のアリール基、より好ましくはフェニルであり、
下付き文字n1、n2、およびn3は、独立してn1=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは2から50、
n2=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から50、そして
n3=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から50の範囲の整数であり、但しn1+n2+n3=n、ここでnは1から2000であるという条件である、
請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
【化5】

および
【化6】

ここで
は、独立して、1から10個の炭素原子を有する二価の直鎖アルキレン基、または3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキレン基であり、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルプロピレンおよび2,2-ジメチルブチレン、そしてより好ましくは、2,2-ジメチルブチレンなどの3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキレン基であり、
およびRは、1から4個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはエチルからなる群から独立して選択され、
およびRは独立してアルキル基であり、より好ましくはメチルまたはエチルであり、
n1は1から1000、n2は1から1000、そしてn3は1から1000、好ましくはn1は2から100、n2は2から100、そしてn3は2から100であり、但しn1+n2=n、およびn1+n3=n、ここでnは2から2000であるという条件であり、
そしてここでジメチルシロキシ、ジフェニルシロキシおよびメチルフェニルシロキシ基は、任意の順序で配置されることができる、
式(VII)および(VIII)からなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
は、以下に概略的に示す、特にSiおよびN原子に結合した2,2-ジメチルブチレンである、
【化7】

請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
好ましくはポリイソシアネートを含む、架橋性組成物の製造のための請求項1から6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項8】
好ましくは、
A)請求項1から6のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物、
B)少なくとも1つのポリイソシアネート、および
C)任意選択で、好ましくは、ポリオール、ポリチオールおよびポリアミン、好ましくはポリオールおよびポリアミンからなる群から選択される、成分Aとは異なる1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物
を含む、請求項1から6のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物を含む硬化性組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化組成物。
【請求項10】
ポリウレタン真空キャスティング樹脂、ポリウレタンクイックキャスト樹脂、エラストマー硬化PUキャスト樹脂、電気ポッティングコンパウンド、エッジキャスティングコンパウンドを含む、塗料、コーティング、接着剤、フォーム、封止材;マットレス、靴底、ガスケット、ホース、床、断熱材、塗料、接着剤、シーラント、スキー、カーシート、スタジアムのランニングトラック、ダッシュボード、キャスティングコンパウンド、ラテックスフリーコンドーム、およびキャストフロアを含むポリウレタン製品の製造のための、請求項8に記載の硬化性組成物の使用。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化組成物を含む物品。
【請求項12】
請求項1から6のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物を含むコーティング組成物。
【請求項13】
請求項8に記載の硬化性組成物を硬化させることによって得られるコーティング。
【請求項14】
請求項9に記載の硬化組成物または請求項13に記載のコーティングをその表面の少なくとも一部に有する少なくとも1つの基材を含む複合物品であって、ここで基材は、好ましくは、金属、プラスチック、コンクリート、および木材からなる群から選択される、複合物品。
【請求項15】
請求項1から6のいずれかに記載の化合物の製造の方法であって、前記方法は、方法(A)から(D)からなる群から選択され、ここで
方法(A)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を、
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
式(XVIII)の化合物と
(OH) (XVIII)
反応させて式(XIX)の中間化合物を得ること、
【化8】

および
(b)ステップ(a)の中間化合物を式(XX)の化合物と
【化9】

反応させて式(Ia)のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを得ること、を含み、
【化10】

ここで
は、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、そしてRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、そしてポリオルガノシロキサニル残基Aは、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含み、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、および
zは、独立して、2から8、好ましくは2、3または4、より好ましくは2の整数である、
方法(B)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
式(XX)の化合物と
【化11】

反応させて式(XXI)の中間化合物を得ること、
【化12】

および
(b)ステップ(a)からの式(XXI)の中間化合物を式(XVIII)の化合物と
(OH) (XVIII)
反応させて式(Ia)のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを得ること、を含み、
【化13】

ここでAは、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、そしてRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、そしてポリオルガノシロキサニル残基Aは、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含み、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して、2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である、
方法(C)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
水と反応させて式(XXII)の中間化合物を得ること、
【化14】

および
(b)ステップ(b)にて式(XXII)の中間化合物を式(XX)の化合物と
【化15】

反応させて式(I)の化合物を得ること、を含み、
【化16】

ここで
Aは酸素であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは2である、および
方法(D)は、
(a)式(XXI)のシラン化合物を
【化17】

水と反応させて式(I)の化合物を得ること、を含み
【化18】

ここで
Aは酸素であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは2である、
方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、ポリイソシアネート架橋剤を使用する硬化性組成物の製造、特にコーティング組成物の製造におけるそれらの使用、前記硬化性組成物から得られる硬化組成物、および硬化組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格がウレタンおよび/または尿素基を含む反応性ポリウレタンおよびポリ尿素ポリマーを含むポリマーコーティングシステムは、建設、海洋、工業および自動車分野における多種多様な商業的用途で利用される強靭で耐久性のある組成物として当技術分野で非常によく知られている。ポリウレタンまたはポリ尿素系のコーティング組成物の高性能特性にもかかわらず、そのようなシステムは、曲げ強度、伸び、衝撃柔軟性、および耐薬品性の追加の調整を非常に頻繁に必要とする。ポリシロキサンは、ポリウレタンおよびポリ尿素コーティングシステムの屋外耐久性および耐薬品性を改善することができる構造的柔軟剤および耐衝撃性改質剤として当技術分野でよく知られている。しかしながら、ポリシロキサンとポリオールまたはポリアミンとの適合性が低く、ポリ尿素および/またはポリウレタン硬化化学に対するポリシロキサンの反応性が低いため、ポリシロキサンをポリ尿素またはポリウレタンマトリックスに直接組み込むことは容易ではない。
【0003】
ヒドロキシル官能基、アミン官能基、チオール官能基などを含むがこれらに限定されない異なる官能基で修飾されたポリシロキサンポリマーは、当業者に知られている。一級、二級または三級アミノ官能性アルコキシシランは、ポリシロキサンポリマーを修飾するために使用されてきた。しかし、これらのアミノシラン修飾ポリシロキサンポリマーを2成分ポリ尿素またはポリウレタンシステムに直接適用することは、ポリイソシアネート型架橋剤に対するアミノ官能基の反応性が非常に高いため、実用的ではない。典型的には、そのような高い反応性は、コーティング組成物の早期ゲル化をもたらし、これは許容できない混合ポットライフを有する2成分コーティングシステムをもたらす。
【0004】
コーティング接着剤およびシーラントにおけるアスパラギン酸エステル官能性シランおよびアスパラギン酸エステル官能性シラン修飾プレポリマーの適用は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第6,001,946号は、アルコキシシリル末端基が水分と反応してポリウレタンプレポリマーを架橋するポリアスパラギン酸シランエンドキャップポリウレタンプレポリマーを、接着剤およびシーラントの配合に使用できることを開示している。これらのポリアスパラギン酸シランエンドキャップポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタンとポリ尿素に基づくコーティング配合物の柔軟性の改善を提供せず、低温で脆い組成物をもたらすTgを有している。
【0005】
アスパラギン酸エステル官能性シランの他の用途も知られている。例えば、米国特許第9,085,712号は、第1部分がポリシロキサン、例えばメトキシ末端ポリシロキサン、シランおよび任意選択で加水分解性シランを含むアスパラギン酸エステルを含み、そして第2部分がポリイソシアネートおよび触媒を含む2部分組成物を開示している。2部分組成物にはいくつかの制限を有しており、例えば、ポリシロキサンは有機樹脂との混和性が非常に限られているため、ポリオールと組み合わせたポリシロキサンの直接適用には問題がある。
【0006】
アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンも知られている。例えば、U.S.2016/009971A1およびCN104312398Bは、反応性アルコキシシリル官能基を含まないアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを開示している。これらのアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンは、反応性アルコキシ官能基の加水分解および縮合反応を介して架橋することができず、金属基材に化学的に結合することができない。
【発明の概要】
【0007】
上述の問題を克服するために、本発明は、反応性とポットライフの適切なバランスを有する特定のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを提供する。このような特定のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンは、(i)ポリ尿素およびポリウレタンコーティングシステムとの非常に優れた適合性、(ii)機械的特性および耐薬品性が改善されたポリ尿素および/またはポリウレタンコーティング組成物、(iii)当技術分野で知られている標準的な2成分ポリ尿素および/またはポリウレタンコーティング組成物について典型的なポットライフを有する2成分ウェットコーティング材料、を提供する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ポリイソシアネート系の硬化組成物において十分な反応性およびポットライフを有し、ポリ尿素および/またはポリウレタンコーティング組成物と適合性があり、曲げ柔軟性、耐衝撃性、伸び、および耐薬品性が向上したポリ尿素および/またはポリウレタン組成物が可能になり、そして金属基材への耐食性の向上をもたらす、アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを提供することである。
【0009】
本発明の別の態様は、ポリイソシアネートポリオール(ポリウレタン)またはポリイソシアネートポリアミン(ポリ尿素)硬化化学に基づいており、本発明の少なくとも1つのアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを含む2成分コーティング組成物を提供することである。本発明のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンは、2成分組成物中のポリウレタンおよび/またはポリ尿素樹脂前駆体と高度に適合性がある。これらの2成分組成物は、混合後の許容可能な反応性およびポットライフを有し、改善された曲げ柔軟性、耐衝撃性、伸びおよび耐薬品性を有するポリウレタンおよびポリ尿素に硬化することができ、そしてこれは金属基材への向上した耐食性をもたらす。
【0010】
本発明によれば、式(I)を有するアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンが提供され:
【化1】

ここで
Aは酸素(-O-)またはR SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、但し(i)Aが酸素(-O-)の場合、zは2であり、そして(ii)Aがポリオルガノシロキサニル残基である場合、ポリオルガノシロキサニル残基は、ケイ素原子に結合することができる少なくとも2つのシロキシ基を含むという条件であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキレン基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、6から12個の炭素原子を有するアリレン基、7から10個の炭素原子を有するアラルキレン基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニレン基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して、2から8、好ましくは2、3または4、より好ましくは2の整数である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、比較例IIIおよび例8の実験的試験コーティングの調査結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本件の明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、示されているように理解されるべきである。
【0013】
単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれ、特定の数値への参照には、文脈で明確に別段の指示がない限り、少なくともその特定の値が含まれる。
【0014】
実施例または他に示された場合を除き、明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、持続時間、材料の定量化された特性などを表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されることが理解されるべきである。
【0015】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすること意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に制限を課さない。
【0016】
明細書のいかなる文言も、クレームされていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0017】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語、およびそれらの文法上の同等物は、追加の、引用されていない要素または方法のステップを除外しない包括的または非限定の用語であり、また「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentiallyof)」というより限定的な用語を含むことも理解される。
【0018】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その範囲内のすべての下位範囲、およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0019】
本明細書で使用される場合、化学量論的添え字の整数値は分子種を指し、化学量論的添え字の非整数値は、分子量平均ベース、数平均ベース、またはモル分率ベースでの分子種の混合物を指す。
【0020】
以下の説明では、すべての重量パーセントは、特に明記しない限り、有機材料の総重量パーセントに基づいており、本明細書に記載のすべての範囲は、それらの間のすべての下位範囲、およびそれらの間の範囲および/または下位範囲の任意の組み合わせを含む。
【0021】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または暗黙的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載されている化合物、材料または物質は、その群の個々の代表物およびそれらのすべての組み合わせを含むことがさらに理解される。
【0022】
「炭化水素基」または「炭化水素ラジカル」という表現は、1つまたは複数の水素原子が除去され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アラルキルおよびアレーニル基を含む、水素および炭素原子から構成される任意の炭化水素を意味する。
【0023】
基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭化水素基、より具体的には、酸素、窒素または硫黄の少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭化水素基から構成することができる。
【0024】
「アルキル」という用語は、任意の一価の飽和直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味し;「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む任意の一価の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素二重結合またはその中の他の場所のいずれかであり得;そして「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合、および任意選択で1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む任意の一価の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素三重結合、炭素-炭素二重結合、またはその中の他の場所のいずれかであり得る。アルキルの例には、メチル、エチル、プロピルおよびイソブチルが含まれる。アルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルが含まれる。アルキニルの例には、アセチレニル、プロパルギルおよびメチルアセチレニルが含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、シロキシ単位は、便宜上、省略表記を使用し得る。省略表記は、単官能性単位であるR SiO1/2を表すM;2官能性単位であるR SiO2/2を表すD;3官能性単位であるRSiO3/2を表すT;および4官能性(またはテトラ官能性)単位であるSiO4/2を表すQである。表記は、一般的に適用されるポリオルガノシロキサンの命名法に従う(例えば、WalterNoll, Chemistry and Technology of Silicones, page3, Elsevier, 2012参照)。
【0026】
本発明によれば、アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンは、式(I)を有し:
【化2】

ここで
Aは酸素(-O-)またはR SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合し、但し、(i)Aが酸素(-O-)の場合、zは2であり、そして(ii)Aがポリオルガノシロキサニル残基である場合、ポリオルガノシロキサニル残基は、ケイ素原子に結合することができる少なくとも2つのシロキシ基を含むという条件であり;
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、そしてより好ましくは2,2-ジメチルブチレン、特に2,2-ジメチルブチレンが以下のように窒素およびケイ素原子に結合しているもの、
【化3】

からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である。
【0027】
本発明において、ポリオルガノシロキサニル残基である基Aは、AがR SiO2/2によって表される1つの2官能性単位D(したがって、z=2)、RSiO3/2で表される1つの3官能性単位T(したがって、z=3)、またはSiO4/2で表される1つの4官能性(またはテトラ官能性)単位Q(したがって、z=4)である可能性も含むという点で理解されるべきである。
【0028】
一実施形態では、Aは好ましくはD単位からなり、すなわち、Aは好ましくは直鎖状ポリジオルガノシロキサニル残基である。しかしながら、本発明の別の実施形態において、Aはまた、Tおよび/またはQ単位を含む分岐状ポリオルガノシロキサニル残基であり得る。分岐の程度は、必ずしも官能性zに対応するわけではない。例えば、Aは、T単位を含む分岐ポリオルガノシロキサニル残基であり得るが、z=2の官能性しか存在しない可能性がある。そのような場合、1つの分岐ポリオルガノシロキサニル残基は、例えば、M単位によって末端化することができる。但し一般的に、分岐の程度はzで示される機能性に対応する。すなわち、T単位を含む分岐ポリオルガノシロキサニル残基はz=3に対応し、そしてQ単位を含む分岐ポリオルガノシロキサニル残基はz=4に対応する。
【0029】
好ましい単位Dは、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシおよびジフェニルシロキシからなる群から選択される。好ましい単位Tは、メチルシロキシおよびフェニルシロキシの群から選択される。
【0030】
直鎖ヒドロキシル末端ポリオルガノシロキサンは当技術分野で知られており、ジオルガノジハロシランを水と反応させることによって製造することができる。分岐ポリシロキサン残基は、オルガノトリハロシラン、例えば、PhSiClまたはMeSiCl(3官能性モノマー)など、および/またはテトラハロシランを、2官能性モノマー、例えばMeSiCl、MePhSiCl、PhSiClなどに加えてポリシロキサン流体の合成に組み込むことによって生成できる。例えば、MeSiClなどのトリオルガノハロシランはまた、ポリシロキサンの官能性を低下させるためのエンドブロッカーとして、ヒドロキシル含有ポリシロキサンの合成に組み込むことができる。その後、得られた直鎖状または分枝状のヒドロキシル含有ポリシロキサンをアミノ官能性アルコキシシランと反応させ、そして最後にマレイン酸またはフマル酸エステルまたはマレイン酸またはフマル酸と反応させて、以下で詳述するように説明および調製される、対応するアスパラギン酸エステル誘導体を生成する。
【0031】
本発明の化合物の好ましい実施形態では、Aは、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基のAであり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、但しポリオルガノシロキサニル残基は、式(I)に示されるケイ素原子に結合することができる少なくとも2つのシロキシ基を含むという条件である。ポリオルガノシロキサニル残基がケイ素原子に結合することができる少なくとも2つのシロキシ基を含むという条件は、以下の式に示されるように、AまたはAが1つのD基である可能性を含む:
【化4】

ここでR、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して上記で定義されている。
【0032】
同様に、AまたはAも1つのTまたはQ基にすることができ、その場合、zは3または4になる。
【0033】
本発明の化合物の好ましい実施形態では、Aは、上記のM、D、TおよびQから選択される1から2000、好ましくは2から2000のシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基である。したがって、Aは直鎖状または分枝状のポリオルガノシロキサニル残基である。通常、直鎖状のポリオルガノシロキサニル残基の場合、z=2であり、そして分岐状のポリオルガノシロキサニル残基の場合、zは3から8であり、好ましくはzは3または4である。
【0034】
zが2の場合、Aは酸素(-O-)でもあり得、すなわち、本発明の化合物は式(II)に対応し、
【化5】

ここで
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、好ましくはメチル、エチルおよびプロピルからなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、化合物は以下の式(III)を有し:
【化6】

ここで
Aは式(IV)の基であり、
【化7】

ここで
下付き文字nは、0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から100、さらにより好ましくは0から50、さらにより好ましくは1から100、さらにより好ましくは1から50の範囲の整数であり、そしてRは独立して有機基であり、
は、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRは、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルからなる群から独立して選択され、
およびRは、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、好ましくはメチル、エチルおよびプロピルからなる群から独立して選択され、および
xは、0または1から独立して選択される整数であり、好ましくは、xは0である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、Rは脂肪族または芳香族基から選択され、好ましくは最大30個の炭素原子を有するn-アルキル、イソアルキル、または第三級アルキル、最大30個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、5から30個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から30個の炭素原子を有するアリール、7から30個の炭素原子を有するアルキルアリールであって、これらの基はさらに1つまたは複数の酸素、窒素、硫黄および/またはフッ素原子で置換することができ、または最大500のアルキレンオキシ単位を持つポリ(C-C)-アルキレンエーテルから選択され、基Rには脂肪族不飽和がない。適切な一価炭化水素ラジカルの代表的かつ非限定的な例には、アルキルラジカル、好ましくは例えば、CH-、CHCH-、(CHCH-、C17-およびC1021-など、脂環式ラジカル、例えばシクロヘキシルエチル、アリールラジカル、例えばフェニル、トリル、キシリルなど、およびアラルキルラジカル、例えばベンジルおよび2-フェニルエチルなどが含まれる。好ましい一価のハロ炭化水素ラジカルは、式C2m+1CHCH-を有し、ここでmは1から10の値を有し、例えば、CFCHCH-、CCHCH-、C13CHCH-、または酸素で置換されたハロ炭化水素ラジカル、例えば、C-O(CF-CF-O)1-10CF-、F[CF(CF)-CF-O]1-5-(CF0-2-、C-OCF(CF)-、およびC-OCF(CF)-CF-OCF(CF)-である。
【0037】
の好ましい基は、アルキルおよびアリール、特にメチル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピルから選択され、最も好ましいのはメチルおよびフェニルである。
【0038】
好ましい実施形態では、Rは、R11およびR12からなる群から独立して選択され、そしてここでR11は、脂肪族基、好ましくは脂肪族ヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基、さらにより好ましくはメチル基から選択され、R12は、芳香族基、好ましくは芳香族ヒドロカルビル基、より好ましくはアリール基、さらにより好ましくはフェニル基から選択される。R11およびR12の好ましい実施形態に関しては、上記のRについて与えられたものを参照することができる。
【0039】
好ましくは、Rは、メチレン、プロピレン、2-メチルプロピレンおよび2,2-ジメチルブチレン、さらにより好ましくは、2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択される。
【0040】
好ましくは、RおよびRは、1から4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはエチルからなる基から独立して選択される。
【0041】
好ましくは、RおよびRは、1から4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルまたはエチルからなる基から独立して選択される。
【0042】
本発明の化合物の好ましい実施形態では、Rは脂肪族および芳香族基から選択され、好ましくはRはアルキルおよびフェニル基から選択され、さらにより好ましくはRはメチルおよびフェニル基から選択される。
【0043】
本発明の化合物の好ましい実施形態において、Aは、式(V)を有するポリシロキサン残基であり、
【化8】

ここで該単位はブロック状またはランダムに任意の順序で配置され、そしてここで
11は、一価の脂肪族基、好ましくは1から4個の炭素原子のアルキル基、より好ましくはメチルであり、
12は、一価の芳香族基、好ましくは6から12個の炭素原子のアリール基、より好ましくはフェニルであり、
下付き文字n1、n2、およびn3は、独立してn1=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは2から50、
n2=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から50、および
n3=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から50の範囲の整数であり、但しn1+n2+n3=n、ここでnは1から2000であるという条件である。
【0044】
本発明の化合物の好ましい実施形態では、Aは、ジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシおよび/またはメチルフェニルシロキシからなる群から選択されるシロキシ単位を有し、式(VI)を有するポリシロキサン残基であり、
【化9】

ここでn1、n2およびn3は上記で定義された通りであり、ここで前記式は任意の順序で、特にブロック状またはランダムに配置されている。好ましくは、モル比n1:(n2+ n3)は、100:1から1:10の範囲である。
【0045】
本発明の化合物のさらに好ましい実施形態では、Aは、式(VI)を有するポリシロキサン残基であり、ここでn1およびn2は、1から2000、好ましくは1から100、より好ましくは2から100の形態の整数であり、そしてn3はゼロであり、そしてここで好ましくはモル比n1:n2は100:1から1:10の範囲である。
【0046】
本発明の化合物のさらに好ましい実施形態では、Aは、式(VI)を有するポリシロキサンであり、n1は1から2000、好ましくは1から100、より好ましくは2から100であり、n2およびn3はゼロである。
【0047】
さらに好ましい実施形態において、本発明の化合物は、式(VII)および(VIII)からなる群から選択され、
【化10】

および
【化11】

ここで
は、独立して二価のアルキレン基、好ましくはメチレン、プロピレン、2-メチルプロピレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンであり、
およびRは、1から4個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはエチルからなる群から独立して選択され、
およびRは独立してアルキル基であり、より好ましくはメチルまたはエチルであり、
n1は1から1000、n2は1から1000、そしてn3は1から1000、好ましくはn1は2から100、n2は2から100、そしてn3は2から100であり、但しn1+n2+n3=n、ここでnは2から2000であるという条件であり、そしてここでジメチルシロキシ、ジフェニルシロキシおよびメチルフェニルシロキシ基は、任意の順序で配置されることができる。
【0048】
本発明の化合物のさらに好ましい実施形態では、Rは、独立して、メチレン、プロピレン、2-メチルプロピレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンであり、RおよびRは、1から4個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはエチルからなる群から独立して選択され、そしてRおよびRは、メチルまたはエチルからなる群から独立して選択される。
【0049】
本発明の特に好ましい化合物には、
【化12】

(式中、n1は約4から約8である)、これは、
【化13】

(式中、n1は、約4から8である)からジエチルマレエートへのマイケル付加により得られる、および
【化14】

(式中、Phはフェニルを表し、n1は約5から約10であり、そしてn2は約2から約6である)、これは、
【化15】

(式中、Phはフェニルを表し、n1は約5から約10であり、そしてn2は約2から約6である)からジエチルマレエートへのマイケル付加により得られる、
が含まれる。
【0050】
本発明による化合物は、好ましくは、架橋可能な組成物、すなわち硬化性組成物の製造に使用され、ここで本発明によるこれらのアスパラギン酸エステル官能化ポリシロキサン化合物は、それらのアミノ基を介して、活性水素基と反応する官能基、例えば、硬化組成物のポリマーマトリックスに組み込まれるポリイソシアネートまたはポリウレタンまたはポリ尿素樹脂のイソシアネート基と反応する。特にポリウレタンおよびポリ尿素に基づく硬化組成物のポリマーマトリックスへの本発明の化合物の組み込みは、硬化組成物の改善された曲げ柔軟性、耐衝撃性、伸びおよび耐薬品性を提供し、そしてそれらは金属基材への耐食性を提供する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、化合物は、ポリイソシアネートを含む架橋可能な組成物の製造に使用される。
【0052】
ポリイソシアネートには、特に2以上のNCO官能基を有する脂肪族、芳香族または脂環式ポリイソシアネートを含む様々なポリイソシアネートが含まれ、当業者に知られている。
【0053】
そのような適切なポリイソシアネートの代表的かつ非限定的な例には、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、任意の所望の異性体含有量のビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタンを含む異性体混合物、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナトプロプ-2-イル)ベンゼン、1,4-ビス(2-イソシアナトプロプ-2-イル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、C1-C8-アルキル基を有するアルキル2,6-ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)およびそれらの混合物が含まれる。
【0054】
ポリイソシアネートはまた、例えば、三量体化またはビウレット化などの適切な修飾反応を使用することによってそれから調製される高分子オリゴマーポリイソシアネートを含む。ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートは、対応するポリイソシアネートを調製するための出発ジイソシアネートとして使用することができる。このようなオリゴマーポリイソシアネートは、本発明において好ましい。それらは、少なくとも2つの一般的に等しいジイソシアネート単位が、イソシアネート基の一部を反応させることによって、任意選択で、例えば一価または多価アルコールを加えることによって互いに結合するポリイソシアネートを含む。
【0055】
特に好ましいオリゴマーポリイソシアネートは、ジイソシアネートの二量体、三量体、または二量体と二量体の混合物である。それらのオリゴマーポリイソシアネートは、対応するジイソシアネートよりも高分子量を有する。ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくオリゴマーポリイソシアネートは、好ましくは、168.20グラム/モルより高い分子量を有する。イソホロンジイソシアネートに基づくオリゴマーポリイソシアネートは、好ましくは、222.29グラム/モルよりも高い分子量を有する。本発明の意味において、オリゴマーポリイソシアネートは、1つのタイプのジイソシアネートのみ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのみ、またはイソホロンジイソシアネートのみをジイソシアネート単位として反応させることによって得られることが特に好ましい。好ましくは、オリゴマーポリイソシアネートは、1500グラム/モル未満の分子量を有する。反応条件に応じて、ジイソシアネート単位の異なる反応が起こり、ポリイソシアネートを形成し得る。
【0056】
さらに、ポリイソシアネートはまた、ポリウレタンを形成するための、好ましくは低分子量ポリオールとのジイソシアネートの反応生成物を含む。そのようなポリオールは、好ましくは、62から400グラム/モルの分子量範囲を有する。
【0057】
ジイソシアネートの反応は、例えば、ウレチオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレットおよび/またはオキサジアジントリオン基などの異なる官能基を形成することができる。これらの官能基の少なくとも1つを有するオリゴマーポリイソシアネートは、対応するジイソシアネートの「誘導体」と称され得る。一般に、オリゴマーポリイソシアネートの合成は、規定された化合物の形で起きないが、分子量分布を持つ異なるオリゴマーの混合物である。オリゴマーポリイソシアネートは、好ましくは、Nachrichten aus der Chemie (News from Chemistry), 55, 380-384 (2007)に開示されているように、式(IX)-(XV)を有する以下のタイプの構造を含むことができ、
【化16】

【化17】

ここでXは脂肪族残基であり、Rは有機基であり、nは、1から10の範囲の整数、好ましくは2または3であり、そしてmは2から10の範囲の整数、好ましくは2または3である。オリゴマーポリイソシアネートは、これらの官能基の少なくとも1つを含むことができ、これらの異なる官能基の2つ以上を含むことができる。Xに特に好ましい構造は、ヘキサメチレンジイソシアネーに基づくオリゴマーポリイソシアネートの場合、-CHCHCHCHCHCH-であり、または、イソホロンジイソシアネートに基づいたオリゴマーポリイソシアネートの場合、
【化18】

である。
【0058】
したがって、好ましくは、オリゴマーポリイソシアネートは2以上の官能性を有し、そして式(IX)-(XV)のウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンまたはオキサジアジントリオン化合物、およびこれら化合物の混合物、特にポリイソシアネートに三価以上の脂肪族基を含むもの、例えば、ビウレット、アロファネート、ウレタン、およびイソシアヌレート、およびジイソシアネートの高次オリゴマー、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサンおよび/またはビス(イソシアナトシクロヘキシル)-メタンのオリゴマーから選択される。そのようなポリイソシアネートの特定の例には、例えば、以下の構造を有するヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットおよびそのオリゴマー、
【化19】

これは、CovestroからDesmodur(登録商標)100の商品名で市販されている、下記構造を有するヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、
【化20】

CovestroからDesmodur(登録商標)N3300の商品名で市販されている、N,N’,N’’-トリス-[(4-イソシアノト-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル)メチル]イソシアヌレート、CovestroからDesmodur(登録商標)Z4470の商品名で、またはVencorexからTolonate IDT70Bの商品名で市販されている、下記構造を有する五量体などのそれらの高次オリゴマー、
【化21】

これはヘキサメチレンジイソシアネートに基づいており、および4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)に基づく類似の五量体、または
【化22】

などの不斉三量体、これはヘキサメチレンジイソシアネートに基づいており、および4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)に基づく類似の不斉三量体が含まれる。
【0059】
特に適切なポリイソシアネートには、好ましくは2.0から5.5、好ましくは2.8から5.0、より好ましくは3.0から4.5の平均NCO官能基を有するイソシアネートまたはそれらの混合物が含まれる。ポリイソシアネートの固形分に基づくNCO含有量は、好ましくは約2から約50重量パーセント、好ましくは約10から約30重量パーセント、より好ましくは約11から約25重量パーセントである。ポリイソシアネート中のモノマージイソシアネートの含有量は、好ましくは約10重量パーセント未満、より好ましくは約2重量パーセント未満、最も好ましくは約0.5重量パーセント未満である。
【0060】
特に適切なポリイソシアネートには、ビウレット、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ウレトジオン、アロファネートおよび/またはウレタン基を含むポリイソシアネート付加物が含まれる。ウレタン基は、モノマーイソシアネートと、トリメチロールプロパン、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールおよびそれらの混合物などの分子量の多官能性アルコールとの反応生成物に基づいている。これらのポリイソシアネート付加物は、例えば、J. Prakt. Chem., 336, 185-200 (1994)、および"Lackharze, Chemie, Eigenschaften und Anwendungen",publ. D. Stoye, W. Freitag, Hanser Verlag, Munich, Vienna 1996に記載されている。
【0061】
ポリイソシアネート付加物は、例えばJ. Prakt. Chem., 336, 185-200 (1994)に記載されているように、モノマージイソシアネートのオリゴマー化によって調製することができる。適切なモノマージイソシアネートの例には、1,4-ブタンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンおよび4,4’-ジイソシアネート-シクロヘキシルメタンが含まれる。
【0062】
特に好ましいのは、3.0から4.5のNCO官能性および2重量パーセント未満のモノマー含有量を有するイソシアヌレート基(三量体)を含むポリイソシアネートである。それらは、EP330,996に記載されている三量体化プロセスによって調製することができる。さらに、例示的なポリイソシアネートには、これらに限定されないが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)、ポリマーMDI、カルボジイミド修飾液体MDI、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(「H.sub.12MDI」)、p-フェニレンジイソシアネート(「PPDI」)、m-フェニレンジイソシアネート(「MPDI」)、トルエンジイソシアネート(「TDI」)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(「TODI」)、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、ナフタレンジイソシアネート(「NDI」)、キシレンジイソシアネート(「XDI」)、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(「p-TMXDI」)、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(「m-TMXDI」)、エチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレン-ジイソシアネート(「HDI」)、ドデカン-1,12-ジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、HDIのイソシアヌレート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジイソシアネート(「TMDI」)のトリイソシアネート、テトラセンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、アントラセンジイソシアネート、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン(CovestroからDesmodur Rの商品名で入手可能)、1,3,5-トリス(3-イソシアナト-4-メチルフェニル)-2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(CovestroからDesmodur ILの商品名で入手可能)、N-イソシアナトヘキシル-アミノカルボニルN,N’-ビス(イソシアナトヘキシル)ウレア(CovestroからDesmodur Nの商品名で入手可能)、2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリス(6-イソシアナト-ヘキシル)ヘキサ-ヒドロ-1,3,5-トリアジン(CovestroからDesmodur N3390の商品名で入手可能)、2,4,6-チリオキソ-1,3,5-トリス(5-イソシアナト-1,3,3-トリメチルシクロヘキシルメチル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(CovestroからDesmodur N4370の商品名で入手可能)、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5-テトライソシアネート、4-メチルジフェニルメタン-3,5,2’,4’,6’-ペンタイソシアネートなどが含まれる。
【0063】
取り扱いを改善するために、ポリイソシアネート(混合物)を最大約50重量パーセントの従来の溶媒で希釈することができる。適切な溶媒は、NCO基に対して反応性がない溶媒、例えば、ブチルアセテート、エチルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、トルエン、2-ブタノン、キシレン、1,4-ジオキサン、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどである。
【0064】
本発明の一実施形態は、上記で定義された本発明による少なくとも1つのアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを含む硬化性組成物である。
【0065】
好ましくは、本発明の硬化性組成物は、
A)上記で定義された本発明による少なくとも1つのアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、
B)少なくとも1つのポリイソシアネート、および
C)任意選択で、成分Aとは異なる1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物
を含む。
【0066】
成分Aとは異なるイソシアネート反応性化合物は、特に限定されないが、好ましくは、その分子内に、イソシアネート基と反応性を有する2つ以上の活性水素原子を有する化合物を含む。その分子内に2つ以上の活性水素原子を有する化合物の代表的かつ非限定的な例には、ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールが含まれる。これらの中で、ポリオールおよびポリアミンが好ましい。ポリアミンが特に好ましい。ポリオールの特定の非限定的な例には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールおよびフッ素含有ポリオール、好ましくはアクリルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールが含まれる。その分子内に2つ以上の活性水素原子を有するこれらの化合物は、それぞれ単独で、またはそれらの2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0067】
本発明の化合物を使用する硬化性組成物は、溶剤系または水系の組成物であることができる。溶剤系または水系の硬化性組成物を調製する場合、別のイソシアネート反応性化合物、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤および通常コーティングに使用される他の成分などの添加剤を加えることができる。混合物の粘度を調整するために、必要に応じて、有機溶媒または水を加えることができる。イソシアネート反応性化合物は、水分散体または水溶解形態として加えることもできる。
【0068】
ポリエステルポリオールは、例えば、以下に限定されないが、単一の酸または二塩基酸の酸混合物、例えばカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、および単一の多価アルコール、または、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、およびエトキシル化トリメチロールプロパンの多価アルコールの混合物との間の縮合反応によって得ることができる。さらに、例えば、ε-カプロラクトンなどのラクトンの、多価アルコールを使用した開環重合によって得られたポリカプロラクトンも、ポリエステルポリオールとして使用することができる。
【0069】
ポリエーテルポリオールの代表的かつ非限定的な例には、例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムの水素化物などの水酸化物、アルコラートまたはアルキルアミンなどの強塩基性触媒、および金属ポルフィリンまたは亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体などの複合金属シアン化合物錯体を使用することにより、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびスチレンオキシドなどの、単一のアルキレンオキシドまたはアルキレンオキシドの混合物の、多価ヒドロキシ化合物へのランダムまたはブロック付加によって得られるポリエーテルポリオール;アルキレンオキシドとエチレンジアミンなどのポリアミン化合物との反応で得られるポリエーテルポリオール;およびこれらのポリエーテルポリオールを媒体として使用することにより、アクリルアミドなどを重合することにより得られる、いわゆるポリマーポリオールが含まれる。
【0070】
多価ヒドロキシ化合物の代表的かつ非限定的な例には、例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールなどのポリオール;エリスリトール、D-スレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、およびラムニトールなどの糖アルコール化合物、およびオリゴサッカライドなどのサッカライドが含まれる。
【0071】
アクリルポリオールは、例えば、その1つの分子中に1つまたは複数の活性水素原子を有する重合性モノマーと、前述の重合性モノマーと共重合可能な別のモノマーとを共重合することによって得ることができる。活性水素含有アクリル酸エステルの例は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2-ヒドロキシブチルアクリレート、またはメタクリル酸エステル、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび4-ヒドロキシブチルメタクリレート;グリセリンおよびトリメチロールプロパンなどのトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステルなどの多価活性水素含有(メタ)アクリル酸エステルである。共重合可能なモノマーには、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートおよびグリシジルメタクリレート、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびイタコン酸、不飽和アミド、例えばアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミド、または加水分解性シリル基含有ビニルモノマー、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランおよびγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および他の重合性モノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、およびジブチルフマレートが含まれる。
【0072】
ポリオレフィンポリオールの代表的かつ非限定的な例には、2つ以上のヒドロキシル基を有するポリブタジエン、2つ以上のヒドロキシル基を有する水素化ポリブタジエン、2つ以上のヒドロキシル基を有するポリイソプレンおよび2つ以上のヒドロキシル基を有する水素化ポリイソプレンが含まれる。
【0073】
好ましい実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1つの脂肪族ポリアミンを含む。本明細書で使用される場合、「ポリアミン」は、それぞれが一級アミノ基および二級アミノ基から選択される少なくとも1つの活性水素(N-H基)を含む少なくとも2つのアミノ基を有する化合物を指す。例示的な脂肪族ポリアミンには、脂肪族一級ポリアミン、脂肪族二級ポリアミン、およびそれらの組み合わせが含まれる。例示的で非限定的な脂肪族第一級ポリアミンには、ポリ(オキシプロピレン)ジアミン、例えばHuntsmanのJEFFAMINE D-230とJEFFAMINE D-400、好ましくは400-5000グラム/モルの範囲の分子量を有する、ポリ(オキシプロピレン)トリアミン、1,4-ジアミノブタン、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパンおよび1,3-ジアミノプロパンが含まれる。例示的で非限定的な第二級アミンには、環状脂肪族二級ジアミン、非環状脂肪族二級ジアミンが含まれる。さらなる例示的で非限定的な第二級アミンには、アスパラギン酸エステルポリアミンが含まれる。有用な環状脂肪族二級ジアミンは、架橋基によって結合された2つの任意選択で置換されたヘキシル基を含み、ここで、各ヘキシル環は、例えばWO2013/188176に記載されるような二級アミン置換基を含む。この構造を有する市販の脂肪族環状二級ジアミンには、Dorf Ketal Chemicals LLCのCLEARLINK 1000およびCLEARLINK 3000として入手可能なものが含まれる。別の実施形態において、有用な脂肪族環状二級ジアミンは、単一のヘキシル環を含む。この構造を有する市販の脂環式二級ジアミンは、例えば、HuntsmanのJEFFLINK 754として入手可能である。
【0074】
有用な脂肪族環状二級ジアミンは、イソホロンジアミンと、得られる二級アミン基の求核性を低下させるマイケル受容体基を有する化合物との反応によって調製することができる。代表的なマイケル受容体には、アクリロニトリルおよびα,β-不飽和カルボニル化合物が含まれ、通常はアクリロニトリルが好ましい。いくつかの実施形態において、末端-CN基とアミン基との間のアルキレン基は、少なくとも2つの炭素原子を有する。この構造を有する市販の脂肪族環状二級ジアミンには、例えば、Hanson Group LLCのHXA CE 425、およびBASFのBAXXODUR PC-136が含まれる。
【0075】
例示的な非環状脂肪族二級ジアミンには、商品名ETHACURE 90でAlbemarle Corporationから入手可能な、N,N’-ビス(3’,3’-ジメチルブタン-2-イル)-1,6-ジアミノヘキサンが含まれる。
【0076】
特に好ましいポリアミンは、アスパラギン酸エステルポリアミンである。これらのアスパラギン酸エステルポリアミンは、例えば、マレインまたはフマル酸ジアルキルエステルに一級脂肪族アミンを付加することによって、または不飽和オリゴエステルまたはポリエステルに一級脂肪族アミンを付加することによって生成できる二級アミノ基を有するポリアミンである。有用なアスパラギン酸エステルポリアミンには、例えば、一般式(XVI)を有するアスパラギン酸エステルポリアミンが含まれ、
【化23】

ここでRは最大40個の炭素原子を有する二価の有機基であり、そして各Rは独立して1から4個の炭素原子を有する低級アルキル基を表す。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであり得る。好ましくは、Rは、好ましくは1から20個の炭素原子を有する二価の脂肪族基を表し、これは、例えば、分岐、非分岐、または環状であり得る。より好ましくは、Rは、二価の炭化水素基であるブチレン、ヘキシレン、2,2,4-トリメチルヘキシレンから選択されるか、または1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンまたは3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンからアミノ基を除去することによって得られる。いくつかの実施形態において、Rは、分岐状C4からC12のアルキレン基である。
【0077】
適切なアスパラギン酸エステルアミン樹脂は、DESMOPHEN NH 1420、DESMOPHEN NH 1520、およびDESMOPHEN NH 1220の商品名でCovestroから市販されている。DESMOPHEN NH 1420樹脂は、実質的に次の化合物で構成されている。
【化24】

DESMOPHENNH1520樹脂は、実質的に次の化合物で構成されている。
【化25】

DESMOPHENNH 1220は、実質的に次の化合物で構成されている。
【化26】
【0078】
脂肪族ポリアミンは、1つまたは複数の芳香族ポリアミンと組み合わせることができる。適切な固体芳香族ポリアミンには、LONZACURE M-MIP Aの商品名でLonzaから市販されている4,4’-メチレンビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、LonzaからLONZACUR EM-DIPAの商品名で市販されている4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、4,4’メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、およびLonzaからLONZACURE MCDEAの商品名で市販されている4,4’-メチルレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)などのアルキルアニリンが含まれる。
【0079】
成分Aとは異なる1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物であるポリイソシアネート組成物は、そのまま使用することも、有機溶媒と混合して使用することもできる。有機溶媒は特に限定されないが、有機溶媒は、好ましくは、ヒドロキシル基およびイソシアネート基と反応する官能基を有さず、好ましくは、ポリイソシアネート組成物と十分に適合性がある。そのような有機溶媒の例には、コーティング材料溶媒として一般的に使用される以下の化合物、例えばエステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系化合物、炭化水素系溶剤および芳香族溶剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
コーティング組成物は、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤および界面活性剤などの様々な従来の添加剤を含み得る。
【0081】
硬化促進触媒の代表的で非限定的な例には、金属塩、例えば、ジブチルスズジラウレート、スズ2-エチルヘキサノエート、亜鉛2-エチルヘキサノエートおよびコバルト塩;ならびに第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’-エンドエチレンピペラジンおよびN,N’-ジメチルピペラジンが含まれる。
【0082】
本発明の硬化性コーティング組成物は、コーティング材料、例えば、ロールコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、ベルコーティングおよび静電コーティングとして使用することができるが、これらに限定されない。例えば、本実施形態のコーティング組成物は、プライマーのコーティング材料、または鋼板および表面処理鋼板を含む金属、プラスチック、木材、フィルム、および無機材料などの材料の上部および中間コーティングとしても有用である。本実施形態のコーティング組成物は、例えば、防錆鋼板を含むプレコート金属および車両コーティングに、例えば、美観、耐候性、耐酸性、防錆および耐チッピング性を付与するためのコーティング材料としても有用である。さらに、本実施形態のコーティング組成物は、接着剤、感圧接着剤、エラストマー、発泡体および表面処理剤のためのウレタン出発材料としても有用である。
【0083】
さらに本発明は、本発明による硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化組成物に関する。
【0084】
本発明による硬化性組成物は、ポリウレタン真空キャスティング樹脂、ポリウレタンクイックキャスト樹脂、エラストマー硬化ポリウレタンキャスト樹脂、電気ポッティングコンパウンド、エッジキャスティングコンパウンドを含む、塗料、コーティング、接着剤、フォーム、封止材;マットレス、靴底、ガスケット、ホース、床、断熱材、塗料、接着剤、シーラント、スキー、カーシート、スタジアムのランニングトラック、ダッシュボード、キャスティングコンパウンド、ラテックスフリーコンドーム、およびキャストフロアなどを含むポリウレタン製品の製造などの様々な用途に使用することができる。
【0085】
さらに本発明は、本発明による硬化組成物を含む物品に関する。
【0086】
さらに本発明は、本明細書に記載の本発明による少なくとも1つのアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを含むコーティング組成物に関する。特に、コーティング組成物は、架橋剤としてのポリイソシアネートに基づくものであるが、基本的に、本発明のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンは、エポキシ樹脂組成物などの任意のアミン架橋コーティング組成物に使用することができる。
【0087】
さらに本発明は、本発明による硬化性組成物を硬化させることによって得られるコーティング、およびその表面の少なくとも一部に少なくとも1つの本発明によるアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを含む硬化組成物を有する少なくとも1つの基材を含む、得られる複合物品に関する。本発明のコーティング組成物を適用することができる好ましい基材は、例えば、金属、プラスチック、コンクリート、および木材からなる群から選択される。好ましいのは、特に金属であり、これには、例えば亜鉛めっきによって前処理されたものを含むすべての種類の金属が含まれる。
【0088】
本発明はさらに、本発明によるアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンの製造方法に関する。このような方法は、好ましくは、以下の方法(A)から(C)からなる群から選択される。
【0089】
方法(A)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
式(XVIII)の化合物と
(OH) (XVIII)
反応させて、式(XIX)の中間化合物を得ること、
【化27】

および
(b)ステップ(a)の中間化合物を式(XX)の化合物と反応させて
【化28】

式(Ia)のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを得ること、を含み、
【化29】

ここで
は、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合し、そしてポリオルガノシロキサニル残基Aは、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含み、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、そしてより好ましくは、2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である。
【0090】
方法(B)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
式(XX)の化合物と
【化30】

反応させて、式(XXI)の中間化合物を得ること、
【化31】

および
(b)ステップ(a)からの式(XXI)の中間化合物を、式(XVIII)の化合物と反応させて、
(OH) (XVIII)
式(Ia)のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを得ること、を含み、
【化32】

ここでAは、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2、およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、そしてポリオルガノシロキサニル残基Aは、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含んでおり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは、2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である。
【0091】
方法(C)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
H-R-Si(R(OR3-x (XVII)
水と反応させて、式(XXII)の中間化合物を得ること、
【化33】

および
(b)ステップ(b)にて式(XXII)の中間化合物を式(XX)の化合物と反応させて、
【化34】

式(I)の化合物を得ること、を含み、
【化35】

ここで
Aは酸素であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは、2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは整数2である。
【0092】
方法(D)は、
(a)式(XXI)のシラン化合物を
【化36】

水と反応させて、式(I)の化合物を得ること、
【化37】

ここで
Aは酸素であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは、2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは整数2である。
【0093】
好ましい実施形態では、方法(A)または方法(B)は、式(XVIII)のヒドロキシル含有ポリシロキサン化合物A(OH)を使用し、ここでzは2であり、式(XXIII)を有し、
【化38】

ここでRは独立して有機基から選択され、好ましくはRは脂肪族または芳香族基から選択され、好ましくは、最大30個の炭素原子を有するn-アルキル、イソアルキル、または第三級アルキル、最大30個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、5から30個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から30個の炭素原子を有するアリール、7から30個の炭素原子を有するアルキルアリール、これらの基は、さらに1つまたは複数の酸素、窒素、硫黄および/またはフッ素原子で置換することができ、または最大500のアルキレンオキシ単位を持つポリ(C-C)-アルキレンエーテルから選択され、そして基Rには脂肪族不飽和がない。適切な一価炭化水素ラジカルの代表的で非限定的な例には、アルキルラジカル、好ましくは、例えば、CH-、CHCH-、(CHCH-、C17-およびC1021-、および脂環式ラジカル、例えば、シクロヘキシルエチル、アリールラジカル、例えば、フェニル、トリル、キシリル、アラルキルラジカル、例えば、ベンジルおよび2-フェニルエチルが含まれる。好ましい一価のハロ炭化水素ラジカルは、式C2n+1CHCH-を有し、ここでnは1から10の値を有し、例えば、CFCHCH-、CCHCH-、C13CHCH-など、または、酸素で置換されたハロ炭化水素ラジカル、例えば、C-O(CF-CF-O)1-10CF-、F[CF(CF)-CF-O]1-5-(CF0-2-、C-OCF(CF)-およびC-OCF(CF)-CF-OCF(CF)-など、そしてnは、1から2000、好ましくは2から2000、より好ましくは0から100、さらにより好ましくは0から10の整数である。
【0094】
方法A、BまたはCで使用することができる好ましいシランは、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、これはMomentive Performance Materialsから商品名Silquest*A-1637シランで市販されており、および4-アミノ-3,3-ジメチルブチルメチルジメトキシシランである。
【0095】
ヒドロキシル含有ポリオルガノシロキサンは市販されている。適切なシラノール官能性ポリシロキサンには、Wacker SiliconeのSilres SY 300、Silres SY 440、Silres MKおよびREN 168、Dow ChemicalのDC-840、DC233、DG431HSおよびDC-Z-6018、およびRhodiaSiliconesのRhodorsil Resin 6407および6482が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
マレイン酸エステルは市販されており、例えば、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ-n-ブチルマレエート、ジ-sec-ブチルマレエート、ジ-tert-ブチルマレエート)、ジアミルマレエート、ジ-2-エチルヘキシルマレエートエステル、および上記および/または他のアルキル基の混合物に基づく混合エステルが含まれる。ジメチル、ジエチルマレエートおよびジブチルマレエートが好ましく、一方でジエチルマレエートエステルが特に好ましい。
【0097】
一実施形態では、マレエートエステルの代わりにフマレートエステルを使用することができ、なぜなら、これらのエステルは、アミンの存在下で異性化して、フマレートエステルとマレエートエステルの混合物になるからである。
【0098】
マレイン酸エステル化合物とアミノ官能性化合物との反応は、例えば、0から150℃の温度で、少なくとも1つ、好ましくは1つのオレフィン二重結合が各一級アミノ基に存在するような比率での出発物質を使用して実施することができる。過剰の出発物質は、反応後の蒸留によって除去することができる。反応は、アルコール、エーテル、アセテートおよびケトン、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブチルアセテート、ブチルグリコール、メチルエチルケトン、ジオキサン、およびそのような有機溶媒の混合物などの適切な有機溶媒の非存在下または存在下で実施することができる。好ましい溶媒は、イソシアネートと反応しないものである。
【0099】
上記の説明は多くの詳細を含むが、これらの詳細は、本発明の範囲における制限として解釈されるべきではなく、単にその好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲および好ましい実施形態によって定義される本発明の範囲および精神の範囲内にある他の多くの可能な変形を想定することができる。
【0100】
本発明の好ましい実施形態
実施形態1
式(I)の化合物:
【化39】

ここで
Aは、酸素(-O-)またはR SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、但し(i)Aが酸素(-O-)の場合、zは2であり、そして(ii)Aがポリオルガノシロキサニル残基の場合、ポリオルガノシロキサニル残基は、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含むという条件であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキレン基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、6から12個の炭素原子を有するアリーレン基、7から10個の炭素原子を有するアラルキレン基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニレン基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキレン基、例えば、以下に概略的に示す、特にSiおよびN原子に結合した2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
【化40】

およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して、2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である。
【0101】
2.Aが1から2000、好ましくは2から2000のシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基である、実施形態1の化合物。
【0102】
3.Aが直鎖状または分枝状のポリオルガノシロキサニル残基である、実施形態1または2のいずれかに記載の化合物。
【0103】
4.Aは式(IV)の基であり、
【化41】

ここで
下付き文字nは、0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から100、さらにより好ましくは0から50、さらにより好ましくは1から100、さらにより好ましくは1から50の範囲の整数であり、
は独立して有機基であり、好ましくは脂肪族または芳香族基から選択され、より好ましくは、最大30個の炭素原子を有するn-アルキル、イソアルキル、または第三級アルキル、最大30個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、5から30個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から30個の炭素原子を有するアリール、7から30個の炭素原子を有するアルキルアリール、これらの基はさらに1つまたは複数の酸素、窒素、硫黄および/またはフッ素原子で置換することができ、または最大500のアルキレンオキシ単位を持つポリ(C-C)-アルキレンエーテルから選択され、ここで基Rは脂肪族不飽和がない、実施形態1から3のいずれかによる化合物。
【0104】
5.Rは、アルキルラジカルを含む一価の炭化水素ラジカル、好ましくは例えば、CH-、CHCH-、(CHCH-、C17-およびC1021-、シクロヘキシルエチルを含む脂環式ラジカル、フェニル、トリル、キシリルを含むアリールラジカル、ベンジルおよび2-フェニルエチルを含むアラルキルラジカル、式C2m+1CHCH-を有する一価のハロ炭化水素ラジカル、ここでmは1から10の値を有し、CFCHCH-、CCHCH-、C13CHCH-を含み、または、C-O(CF-CF-O)1-10CF-、F[CF(CF)-CF-O]1-5-(CF0-2-、C-OCF(CF)-およびC-OCF(CF)-CF-OCF(CF)-を含む酸素で置換されたハロ炭化水素ラジカルである、実施形態4による化合物。
【0105】
6.Rがメチルまたはフェニルである、実施形態4および5のいずれかに記載の化合物。
【0106】
7.Aは、式(V)を有するポリシロキサン残基であり、
【化42】

ここで単位はブロック状またはランダムに任意の順序で配置され、そしてここで
11は、一価の脂肪族基、好ましくは1から4個の炭素原子のアルキル基、より好ましくはメチルであり、
12は、一価の芳香族基、好ましくは6から12個の炭素原子のアリール基、より好ましくはフェニルであり、
下付き文字n1、n2、およびn3は、整数であって、独立してn1=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは2から50、
n2=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から50、そして
n3=0から2000、好ましくは1から2000、より好ましくは2から2000、さらにより好ましくは0から50の範囲であり、但しn1+n2+n3=n、ここでnは1から2000であるという条件である、実施形態1から6のいずれかに記載の化合物。
【0107】
8.R11がメチル基であり、R12がフェニル基である、実施形態7に記載の化合物。
【0108】
9.モル比n1:(n2+n3)が100:1から1:10の範囲にある、実施形態8の化合物。
【0109】
10.n1が1から100であり、n2が1から100であり、そしてn3が0である、実施形態7から9のいずれかの化合物。
【0110】
11.
【化43】

および
【化44】

ここで
は、独立して、1から10個の炭素原子を有する二価の直鎖アルキレン基、または3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキレン基であり、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルプロピレンおよび2,2-ジメチルブチレン、そしてより好ましくは、3から10個の炭素原子を有する分岐鎖アルキレン基、例えば、2,2-ジメチルブチレンであり、
およびRは、1から4個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはエチルからなる群から独立して選択され、
およびRは独立してアルキル基であり、より好ましくはメチルまたはエチルであり、
n1は1から1000、n2は1から1000、そしてn3は1から1000、好ましくはn1は2から100、n2は2から100、そしてn3は2から100であり、但しn1+n2=n、およびn1+n3=n、ここでnは2から2000という条件であり、
そしてここでジメチルシロキシ、ジフェニルシロキシおよびメチルフェニルシロキシ基は、任意の順序で配置されることができる、
式(VII)および(VIII)からなる群から選択される、実施形態1から10のいずれかに記載の化合物。
【0111】
12.Rは、以下に概略的に示す、特にSi原子とN原子に結合した2,2-ジメチルブチレン
【化45】

である、実施形態1から11のいずれかに記載の化合物。
【0112】
13.架橋性組成物の製造のための、実施形態1から12のいずれかによる化合物の使用。
【0113】
14.ポリイソシアネートを含む架橋性組成物の製造のための実施形態13による化合物の使用。
【0114】
15.実施形態1から12のいずれかによる少なくとも1つの化合物を含む硬化性組成物。
【0115】
16.A)実施形態1から12のいずれかによる少なくとも1つのアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン、
B)少なくとも1つのポリイソシアネート、および
C)成分Aとは異なる任意選択で1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物、
を含む、実施形態15による硬化性組成物。
【0116】
17.成分A)とは異なる1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物C)は、ポリオール、ポリチオールおよびポリアミン、好ましくはポリオールおよびポリアミンからなる群から選択される、実施形態16による硬化性組成物。
【0117】
18.実施形態15から17のいずれかによる硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化組成物。
【0118】
19.ポリウレタン真空キャスティング樹脂、ポリウレタンクイックキャスト樹脂、エラストマー硬化PUキャスト樹脂、電気ポッティングコンパウンド、エッジキャスティングコンパウンドを含む、塗料、コーティング、接着剤、フォーム、封止材;マットレス、靴底、ガスケット、ホース、床、断熱材、塗料、接着剤、シーラント、スキー、カーシート、スタジアムのランニングトラック、ダッシュボード、キャスティングコンパウンド、ラテックスフリーコンドーム、キャストフロアなどを含むポリウレタン製品の製造のための実施形態15から17のいずれかによる硬化性組成物の使用。
【0119】
20.実施形態19による硬化組成物を含む物品。
【0120】
21.実施形態1から12のいずれかによる少なくとも1つの化合物を含むコーティング組成物。
【0121】
22.実施形態15から17のいずれかによる硬化性組成物を硬化させることによって得られるコーティング。
【0122】
23.その表面の少なくとも一部に、実施形態18による硬化組成物または実施形態22のコーティングを有する少なくとも1つの基材を含む複合物品。
【0123】
24.基材が、金属、プラスチック、コンクリート、および木材からなる群から選択される、実施形態23による複合物品。
【0124】
25.実施形態1から12のいずれかによる化合物の製造のための方法であって、前記方法は方法(A)から(C)からなる群から選択され、
ここで
方法(A)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
式(XVIII)の化合物と
(OH) (XVIII)
反応させて、式(XIX)の中間化合物を得ること、
【化46】

および
(b)ステップ(a)の中間化合物を式(XX)の化合物と
【化47】

反応させて、式(Ia)のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを得ること、を含み、
【化48】

ここで
は、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、そしてポリオルガノシロキサニル残基Aは、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含み、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して2から8の整数であり、好ましくは2、3または4、より好ましくは2であり、
方法(B)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
式(XX)の化合物と
【化49】

反応させて、式(XXI)の中間化合物を得ること、
【化50】

および
(b)ステップ(a)からの式(XXI)の中間化合物を式(XVIII)のヒドロキシル含有ポリシロキサン化合物と
(OH) (XVIII)
反応させて、式(Ia)のアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンを得ること、を含み、
【化51】

ここでAは、R SiO1/2、R SiO2/2、RSiO3/2およびSiO4/2からなる群から選択される少なくとも1つのシロキシ単位を含むポリオルガノシロキサニル残基であり、ここでRは有機基であり、そしてポリオルガノシロキサニル残基は酸素原子を介してSiに結合しており、そしてポリオルガノシロキサニル残基Aは、ケイ素原子に結合できる少なくとも2つのシロキシ基を含み、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは、独立して2から8の整数、好ましくは2、3または4、より好ましくは2である、
ならびに
方法(C)は、
(a)式(XVII)のシラン化合物を
N-R-Si(R(OR3-x (XVII)
水と反応させて、式(XXII)の中間化合物を得ること、
【化52】

および
(b)ステップ(b)において式(XXII)の中間化合物を式(XX)の化合物と、
【化53】

反応させて、式(I)の化合物を得ること、を含み、
【化54】

ここで
Aは酸素であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基、および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは2である、
方法(D)は、
(a)式(XXI)のシラン化合物を
【化55】

水と反応させて、式(I)の化合物を得ること、を含み、
【化56】

ここで
Aは酸素であり、
各Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6から12個の炭素原子を有するアリール基、7から10個の炭素原子を有するアラルキル基および7から10個の炭素原子を有するアレーニル基、好ましくは、メチレン、プロピレン、2-メチルブチレンおよび2,2-ジメチルブチレン、より好ましくは2,2-ジメチルブチレンからなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
およびRの各々は、1から10個の炭素原子の直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基および3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から独立して選択され、
xは独立して0または1の整数であり、好ましくはxは0であり、そして
zは2である、
方法。
【0125】
本発明は、以下の例によってより詳細に説明される。
【実施例
【0126】
例1.アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン(AEAFP-1)の合成
4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン(256グラム、1.15モル)を、攪拌機、凝縮器、温度計および滴下漏斗を備えた1000mlの4つ口フラスコに入れた。ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(260グラム、OH含有量4.4ミリモル/グラムまたは1.15モルのOH)を、室温で開始して、30分にわたって滴下漏斗からアミノシランに加えた。供給中、温度は31℃まで上昇した。供給後、混合物を70℃まで加熱し、70℃で2時間保持した。その後、形成されたメタノールを150℃、20ミリバールで除去した。収量:1モーラーの塩酸で滴定することにより決定された、2.4ミリモルN/グラムのアミン含有量を有する450グラムの低粘度アミノ官能性シロキサン。以下の生成物(AFP-1)の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化57】

ここでn1は約4から約8である。
【0127】
アミノ官能性ポリシロキサン(AFP-1)(2.4モルのアミノ基に対応する1000グラム)を、撹拌機、凝縮器、温度計、および滴下漏斗を備えた2000mlの4つ口フラスコに入れた。反応温度を20-30℃に維持しながら、ジエチルマレエート(409グラム、2.4モル)を滴下漏斗から上記のアミノ官能性ポリシロキサンに4時間の期間で滴下した。その後、フラスコの温度を80℃に上げ、そして反応混合物をこの温度で4時間維持した。最後に、反応混合物を室温に冷却し、さらに精製することなくさらなる実験に使用した。以下の生成物(AEAFP-1)の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化58】

ここでn1は約4から約8である。
【0128】
例2.アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン(AEAFP-2)の合成
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(221グラム、1モル、MomentiveからSilquest * A-1100シランの商品名で入手)を、撹拌機、凝縮器、温度計、滴下漏斗を備えた1000mlの4つ口フラスコに入れた。滴下漏斗上で、4.4ミリモル/グラムのOH含有量または1.15モルのOHを有する260グラムのヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを、室温で開始して、上記のアミノシランに30分かけて加えた。供給中、温度は31℃まで上昇した。供給後、混合物を70℃まで加熱し、70℃で2時間保持した。その後、形成されたエタノールを150℃、20ミリバールで除去した。収量:1モーラーの塩酸で滴定することにより決定された、アミン含有量が2.5ミリモルN/グラムの低粘度アミノ官能性ポリシロキサン(AFP-2)450グラム。以下の生成物(AFP-2)の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化59】

ここでn1は約4から約8である。
【0129】
アミノ官能性ポリシロキサンAFP-2(610グラム、2モルのアミノ基)を、攪拌機、凝縮器、温度計および滴下漏斗を備えた2000mlの4つ口フラスコに入れた。ジエチルマレエート(340グラム、2モル)を滴下漏斗からアミノ官能性ポリシロキサンAFP-2に4時間の期間で滴下し、反応温度を20-30℃に維持した。その後、フラスコの温度を80℃に上げ、そして反応混合物をこの温度で4時間維持した。最後に、反応混合物を冷却し、さらに精製することなくさらなる実験に使用した。以下の生成物(AEAFP-2)の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化60】

ここでn1は約4から約8である。
【0130】
比較例I.アクリル酸エステル官能性ポリシロキサン(AEAFP-3)の合成
例1からのアミノ官能性ポリシロキサンAFP-1(1000グラム、2.4モルのアミノ基)を、攪拌機、凝縮器、温度計および滴下漏斗を備えた2000mlの4つ口フラスコに入れた。メチルアクリレート(205グラム、2.4モル)を滴下漏斗からアミノ官能性ポリシロキサン1に4時間の期間で滴下し、反応温度を20-30℃に維持した。その後、反応混合物を室温で一晩保持した。その後、フラスコの温度を80℃に上げ、そして反応混合物をこの温度で4時間維持した。最後に、反応混合物を冷却し、さらに精製することなくさらなる実験に使用した。以下の生成物(AEAFP-3)の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化61】

ここでn1は約4から約8である。
【0131】
例3.アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン(AEAFP-4)の合成
4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン(255グラム、1.15モル)およびヒドロキシ末端混合ジメチル-ジフェニルポリシロキサン(681グラム、OH含有量1.5ミリモル/グラムまたは1.0モルOH)を、撹拌機、凝縮器、および温度計を備えた2000mlの3つ口フラスコに入れた。混合物を70℃まで加熱し、そして70℃で2時間保持した。その後、形成されたメタノールを150℃、20ミリバールで除去した。残りの物質は、ろ過助剤として1%セルロース(Vitacel(登録商標)L20)を用いたSeitzディープフィルター(Supra(登録商標)300)を使用してろ過した。収量:1モーラーの塩酸で滴定により測定して、アミン含有量が0.92ミリモルN/グラムの中粘度アミノ官能性ポリシロキサン(AFP-4)700グラム)。生成物AFP-4の以下の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化62】

ここでジメチルシロキシおよびジフェニルシロキシ単位はランダムに配置され、そしてn1は約5から約10であり、そしてn2は約2から約6である。
【0132】
アミノ官能性ポリシロキサンAFP-4(500グラム、0.5モルのアミノ基)を、攪拌機、凝縮器、温度計、および滴下漏斗を備えた2000mlの4つ口フラスコに入れた。ジエチルマレエート(80グラム、0.5モル)を滴下漏斗から上記のアミノ官能性ポリシロキサンに4時間の期間で滴下し、反応温度を20-30℃に維持した。その後、フラスコの温度を80℃に上げ、そして反応混合物をこの温度で4時間維持した。最後に、反応混合物を室温に冷却し、さらに精製することなくさらなる実験に使用した。生成物の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化63】

ここでジメチルシロキシおよびジフェニルシロキシ単位はランダムに配置され、そしてn1は約5から約10であり、そしてn2は約2から約6である。
【0133】
例4.アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン(AEAFP-5)の合成
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(206,2グラム、1.15モル、MomentiveからSilquest * A-1110シランの商品名で入手)およびヒドロキシ末端混合ジメチル-ジフェニルポリシロキサン(681グラム、OH含有量1.5ミリモル/グラムまたは1.0molのOH)を、攪拌機、凝縮器、および温度計を備えた2000mlの3つ口フラスコに入れた。混合物を70℃まで加熱し、そして70℃で2時間保持した。その後、形成されたメタノールを150℃、20ミリバールで除去した。残りの物質は、ろ過助剤として1%セルロース(Vitacel(登録商標)L20)を用いたSeitzディープフィルター(Supra(登録商標)300)を使用してろ過した。収量:1モーラーの塩酸での滴定により測定して、アミン含有量が1.06ミリモルN/グラムである中粘度のアミノ官能性ポリシロキサン(AFP-5)700グラム)。生成物AFP-5の以下の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化64】

ここでジメチルシロキシおよびジフェニルシロキシ単位はランダムに配置されており、そしてn1は約5から約10であり、そしてn2は約2から約6である。
【0134】
アミノ官能性ポリシロキサンAFP-5(500グラム、0.53モルのアミノ基)を、攪拌機、凝縮器、温度計、および滴下漏斗を備えた2000mlの4つ口フラスコに入れた。ジエチルマレエート(91.3グラム、0.53モル)を滴下漏斗からアミノ官能性ポリシロキサンに4時間の期間で滴下し、反応温度を20-30℃に維持した。その後、フラスコの温度を80℃に上げ、そして反応混合物をこの温度で4時間維持した。最後に、反応混合物を室温に冷却し、さらに精製することなくさらなる実験に使用した。生成物の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化65】

ここでジメチルシロキシおよびジフェニルシロキシ単位はランダムに配置されており、そしてn1は約5から約10であり、そしてn2は約2から約6である。
【0135】
例5.ポットライフの試験
ポットライフを試験するため、異なるアミノ官能性ポリシロキサンと脂肪族ポリイソシアネートDesmodur N3390の組み合わせが調査された。実験では、ポットライフは、両方の成分を混合した後、混合物が完全にゲル化するのに必要な合計時間として特徴付けられた。実験で混合した材料の量は、下の表の括弧(10グラム)と(1グラム)に示されている。混合物がもはや攪拌できなくなった点で、ゲル化を視覚的にチェックした。調査結果は表1にまとめられている。
【表1】
【0136】
例5の実験結果は、アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンが、ポリイソシアネートを有する二成分系の配合物に使用できることを実証している。このような系は、周囲温度で硬化することになる。さらに、ポリシロキサンの構造に立体障害のあるアミノシランを組み込む、またはポリシロキサンの構造に立体的に嵩高いフェニル基を組み込むことにより、硬化性組成物のポットライフを延ばすことができることになる。
【0137】
例6および7ならびに比較例II.機械的および物理的特性の調査
アスパラギン酸エステル修飾アミノ官能性ポリシロキサンがポリウレア複合材料の機械的および物理的特性に及ぼす影響を試験するために、いくつかの二成分ポリアミン-ポリイソシアネート混合物を調製して分析した。調査結果は表2にまとめられている。
【表2】
【0138】
例6および7の実験結果は、アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンが、非シロキサン系ポリアスパラギン酸樹脂を使用する比較実施例IIと比較した場合、ポリウレア組成物の弾性を改善することを実証している。
【0139】
例8および比較例III.二成分ポリウレア直接金属トップコートシステムにおけるアスパラギン酸エステル修飾アミノ官能性ポリシロキサンの調査
ポリウレアコーティングシステムの配合
異なるポリアミン直接金属トップコートシステムの配合は、表3に要約されている一般的な製法に従って実行された。このため、位置(ポジション)1-4を、300rpmの攪拌下で、カウルブレード分散ミキサーを備えたダブルジャケット混合容器に穏やかに入れた。入れた後、顔料混合物を1500rpmで45分間分散させた。混合および分散プロセスの間、混合容器は35から55℃に冷却された。得られた二酸化チタン分散液を1リットルのプラスチック容器に集めた(部分A1)。位置5-15は、300rpmで攪拌しながら、カウルブレード分散ミキサーを備えたダブルジャケット混合容器に穏やかに入れた。入れた後、混合物を500rpmで30分間分散させた。その後、得られたプレミックスに1キログラムのZrビーズ(直径1,2-1,4mm)を入れ、1500rpmで45分間粉砕した。混合および粉砕プロセスの間、混合容器は35-55℃に冷却された。プロセスが完了した後、得られた混合物の液相をZrビーズから分離し、得られた樹脂バインダー(部分A2)を1リットルのプラスチック容器に集めた。配合物のトップコート部分の調製は、二酸化チタン分散液(配合物の部分A1)を機能性樹脂バインダー(配合物の部分A2)と混合することによって実施された。得られた白色トップコートを150-300rpmで2時間撹拌し、注意深く収集し、さらに使用するまで保存した。白色トップコートとは別に、位置17-19を、機械的攪拌機と窒素入口を備えた3つ口ガラスフラスコ内で攪拌することにより窒素下で混合した。得られたポリイソシアネート架橋剤(部分B)を、さらに使用するまで、暗く乾燥した場所で窒素下で保存した。
【表3】
【0140】
二成分ポリウレアコーティングの調製と適用
試験コーティングシステムの調製は、配合物の部分A1、A2およびB(表3)を、150-300rpmで機械的攪拌機を用いて攪拌しながら5分間混合することによって実施された。混合後、得られた塗料システムを、1.6mmのスプレーノズルを備えた空気圧式の従来の手動重力供給スプレーガンに移した。スプレー圧力は2.0-2.5バールに調整された。コーティングシステムのウェットフィルムビルドは、ラボのウェットフィルムゲージで制御された。トップコートシステムは、冷間圧延鋼基材パネル(Gardobond(登録商標)OC)にスプレーされた。スプレーする前に、キシレンに浸した紙布を使用し、次にイソプロピルアルコールに浸した紙布を使用して、試験パネル(基材)を洗浄した。スプレー後、液体コーティングフィルムを室温で15分間フラッシュオフして乾燥させた後、実験用オーブンで65℃で30分間ベークした。コーティングされた試験サンプルの総乾燥膜厚は、65から75ミクロンの範囲であった。
【0141】
上記コーティングの機械的性質と耐薬品性の調査
実験的コーティングシステムの機械的、化学的および物理的特性の評価は、以下の試験方法および手順を使用して実施された:(i)DIN EN ISO 2409 2409に準拠したクロスハッチ接着(ランキングは以下の通りである。Gt0:カットされたエッジは完全に平坦で、部分的な剥離がない;Gt1:クロスカッティングの点で、破片は見られない、剥離領域は約5%;Gt2:コーティングは切断線または/および断面に沿って剥離され、剥離領域は切断の約15%である;Gt3:コーティングは、部分的に完全なストライプで切断線に沿って部分的または全体的に剥離され、剥離領域は約35%である;Gt4:コーティングは完全なストライプおよび/または完全なセグメントで剥離し、剥離面積は約35%である;(ii)DIN EN ISO6860に準拠した円筒形マンドレル曲げ試験;(iii)DIN ENISO6272に準拠した直接および逆衝撃試験;(iv)耐薬品性試験は0.5M硫酸溶液を使用して実施した。試験では、実験的なコーティングフィルムは、50℃で硫酸溶液(1滴)により30、60、および90分エッチングにさらされた。さらした後、液滴を除去し、試験表面を脱塩水ですすぎ、欠陥について検査した。性能の結果として与えられた試験評価スコアは、以下のように分類された:R10-目に見えるエッチングマーク無し;R9-小さなマーク、指先で感じる突起無し;R8-マーク、感じる突起;R6-マーク、マットホワイトの光沢のあるスポット(かすんだ);R4-劣化の開始、白色スポット、コーティングへの明らかな損傷;R2-膨れたもりあがり;R0-コーティングの剥離。最終的な評価スコアは、30、60、および90分に得られた合計ΣRとして計算された。比較例IIIおよび例8の実験的試験コーティングの調査結果を表4および図1にまとめる。
【表4】
【0142】
比較例IVおよび例9および10.二成分ポリウレタントップコートシステムにおけるアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンの調査
ポリウレタンコーティングシステムの配合
表5に要約されている一般的な製法に従って、異なるポリウレタントップコートシステムの配合を実施した。このため、位置1-4を、300rpmでの攪拌下で、カウルブレード分散ミキサーを備えたダブルジャケット混合容器に穏やかに入れた。入れた後、顔料混合物を1500rpmで45分間分散させた。混合および分散プロセスの間、混合容器は35-55℃に冷却された。得られた二酸化チタン分散液を1リットルのプラスチック容器に集めた(部分A1)。位置5-12は、300rpmでの攪拌下でプラスチックポット内にて穏やかに混合された。入れた後、混合物をさらに300rpmで30分間撹拌し、得られた樹脂バインダー(部分A2)を1リットルのプラスチック容器に集めた。配合物のトップコート部分の調製は、二酸化チタン分散液(配合物の部分A1)を樹脂バインダー(配合物の部分A2)と混合することによって実施された。得られた白色トップコートを150-300rpmで2時間撹拌し、注意深く収集し、そしてさらに使用するまで保存した。白色トップコートとは別に、位置13-15を、機械的攪拌機と窒素入口を備えた三つ口ガラスフラスコ内で攪拌することにより窒素下で混合した。得られたポリイソシアネート架橋剤(部分B)を、さらに使用するまで、暗く乾燥した場所で窒素下で保存した。
【表5】
【0143】
二成分ポリウレタンコーティングの調製と適用
試験コーティングシステムの調製は、配合物の部分A1、A2およびB(表5)を、150-300rpmで機械的攪拌機を用いて攪拌しながら5分間混合することによって実施された。混合後、得られた塗料システム、1.6mmのスプレーノズルを備えた空気圧式の従来の手動重力供給スプレーガンに移した。スプレー圧力は2.0-2.5バールに調整された。コーティングシステムのウェットフィルムビルドは、ラボのウェットフィルムゲージで制御された。トップコートシステムは、陰極電着プライマーでコーティングされたスチールパネル上にスプレーされた。スプレーする前に、イソプロピルアルコールに浸した紙布を使用して試験基材パネルを洗浄した。スプレーした後、液体コーティングフィルムを室温で15分間フラッシュオフすることにより乾燥させ、続いてラボのオーブン内にて65℃で30分間ベークした。コーティングされた試験サンプルの総乾燥膜厚は、65から75ミクロンの範囲であった。
【0144】
ポリウレタンコーティングの機械的特性と耐薬品性の調査
実験的コーティングシステムの機械的、化学的および物理的特性の評価は、例9および10と同じ試験方法を使用して実施された。比較例IVおよび例9および10からの実験的試験コーティングの調査の結果を表6に要約する。
【表6】
【0145】
例11および12.適合性の調査
アスパラギン酸エステル修飾ポリシロキサンとポリアクリル系透明バインダーとの適合性を、例1(AEAFP-1)のアスパラギン酸エステル修飾ポリシロキサン(下記の例11の配合を参照)または例3(AEAFP-4)(下記の例12の配合を参照)のいずれかを比較例IVのポリアクリル性透明バインダー部分A2と混合することにより、調査した。成分の適合性は視覚的に評価された。評価結果は表7に要約されている。
【表7】
【0146】
例8、9および10の実験結果は、アスパラギン酸エステル修飾ポリシロキサンをポリウレア(例8を参照)またはポリウレタン(例9および10を参照)系のコーティングシステムに導入すると、コーティング仕上げの柔軟性、耐衝撃性、および耐薬品性を向上させることができることを実証している。さらに、例11および12の実験結果は、フェニルシロキサン基を含むアスパラギン酸エステル修飾ポリシロキサンAEAFP-4が、ポリアクリル系のコーティングシステムとのより良好な適合性を提供することを実証している。(配合により、より頻繁に透明な溶液が得られる)。
【0147】
比較例V.非加水分解性アスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサン(AEAFP-13)の合成
Momentive Performance Materials Inc.(CAS番号:106214-84-0)のビスアミノプロピル末端ポリシロキサンのようなアミノ官能性ポリシロキサン(アミノ基2.12モルに相当の1000グラム)を、撹拌機、凝縮器、温度計および滴下漏斗を備えた2000mlの4つ口フラスコに入れた。ジエチルマレエート(376グラム、2.12モル)を滴下漏斗からアミノ官能性ポリシロキサンに4時間滴下し、反応温度を20-30℃に維持した。その後、フラスコの温度を80℃に上げ、反応混合物をこの温度で8時間維持した。最後に、反応混合物を室温に冷却し、さらに精製することなくさらなる実験に使用した。以下の生成物(AEAFP-13)の構造は、Hおよび29SiNMR分析によって確認された。
【化66】

ここでn1は約4から約8である。
【0148】
架橋フィルムを形成するための反応性の試験
架橋フィルムを形成するアスパラギン酸エステルポリシロキサンの反応性を比較するため、本発明の例2(AEAFP-2)および比較例V(AEAFP-13)のアスパラギン酸エステルポリシロキサンを、1.0重量%のジブチルスズジラウレート触媒と別々に混合し、ペトリ皿にキャストし、ラボの対流オーブンで60℃12時間硬化させた。硬化後の結果は表8に要約されている。
【表8】
【0149】
メチル-Si(≡Si-CH)官能基を含むアスパラギン酸エステルポリシロキサンAEAFP-13とは異なり、加水分解性アルコキシ-(≡Si-OC)官能基を含むアスパラギン酸エステルポリシロキサンAEAFP-2は、ポリシロキサンポリマー組成物の非常により高い自己架橋反応性をもたらすことを、実験試験の結果は示している。
【0150】
例13および比較例VI.二成分ポリウレアプライマーコーティングシステムにおけるアスパラギン酸エステル官能性ポリシロキサンの調査
ポリウレアコーティングシステムの配合
異なるポリウレアプライマーシステムの配合は、表9に要約されている一般的な製法に従って実行された。このため、位置1-14を、300rpmで攪拌しながら、カウルブレード分散ミキサーを備えたダブルジャケット混合容器に穏やかに入れた。入れた後、混合物を1500rpmで45分間分散させ、続いて実験用ビーズミルで45分間粉砕した。混合、分散および粉砕プロセスの間、混合容器は35-55℃に冷却された。得られた液体コーティングシステム(部分A)を注意深くろ過し、収集し、さらに使用するまで保管した。プライマーコーティングシステムとは別に、位置15-17を、機械的攪拌機と窒素注入口を備えた3つ口ガラスフラスコ内で攪拌することにより窒素下で混合した。得られたポリイソシアネート架橋剤(部分B)を、さらに使用するまで、暗く乾燥した場所にて窒素下で保存した。
【表9】
【0151】
二成分ポリウレアプライマーコーティングシステムの調製および適用
試験コーティングシステムの調製は、配合物の部分AおよびB(表9)を、150-300rpmで機械的攪拌機を用いて攪拌しながら5分間混合することによって実施された。得られた塗料システムを混合した後、1.6mmのスプレーノズルを備えた空気圧式の従来の手動重力供給スプレーガンに移した。スプレー圧力は2.0-2.5バールに調整された。コーティングシステムのウェットフィルムビルドは、ラボのウェットフィルムゲージで制御された。トップコートシステムは、溶融亜鉛めっき基材パネルにスプレーされた。スプレーする前に、キシレンに浸した紙布を使用し、次にイソプロピルアルコールに浸した紙布を使用して、試験パネル(基材)を洗浄した。スプレーした後、液体コーティングフィルムを室温で48時間乾燥させた。コーティングされた試験サンプルの総乾燥フィルム厚は、35-45ミクロンの範囲であった。
【0152】
二成分ポリウレアプライマーコーティングシステムの耐食性の調査
実験的コーティングシステムの耐食性の評価は、DIN EN ISO9227試験基準に従って中性塩水噴霧手順を使用して実施された。試験パネルは、塩水噴霧キャビネット内の塩霧に480時間さらされた後、スクライブでの腐食クリープについて評価された。中性塩水噴霧調査の結果は表10に要約されている。
【表10】
【0153】
2Kポリウレア対照プライマー、およびメチル-(≡Si-CH)官能基を含むアスパラギン酸エステルポリシロキサンAEAFP-13(非発明)で修飾された2Kポリ尿素プライマーとは異なり、加水分解性アルコキシ-(≡Si-OC)官能基を含むアスパラギン酸エステルポリシロキサンAEAFP-2(発明)で修飾された2Kポリウレアプライマーが、中性塩水噴霧試験への暴露後に著しく優れた防食特性をもたらすことを、試験実験の結果は示している。

図1
【国際調査報告】