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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】衝撃からの保護用ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/12 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A42B3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520978
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(85)【翻訳文提出日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2019076385
(87)【国際公開番号】W WO2020078700
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】18200835.9
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512256199
【氏名又は名称】レイザー スポーツ エンフェー
【氏名又は名称原語表記】LAZER SPORT NV
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ゾウジアス ディミトリオス
(72)【発明者】
【氏名】ツカサ フクタ
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハイゼン ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダム フェ
(72)【発明者】
【氏名】デ ブライネ グイド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ウェズ ショーン
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107AA03
3B107CA02
3B107DA03
(57)【要約】
一実施形態によれば、本発明は、着用者の頭(107)を保護するヘルメット(100)であって、ヘルメット(100)が力(105)による衝撃を受けたとき、圧縮によって該力の法線方向成分(102)を吸収し、力の接線方向成分(103)が既定のしきい値を超えたときに破断する(211,212,510,601)よう構成された保護層(106)を有することを特徴とするヘルメット(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭(107)を保護するヘルメット(100)であって、
‐前記ヘルメット(100)が力(105)による衝撃を受けたとき、圧縮によって該力の法線方向成分(102)を吸収し、前記力の接線方向成分(103)が既定のしきい値を超えたときに破断する(211,212,510,601)よう構成された保護層(106)を有する、ヘルメット(100)。
【請求項2】
前記保護層(106)は、前記吸収および前記破断を行うよう構成された独立気泡フォームから成る、請求項1記載のヘルメット(100)。
【請求項3】
前記独立気泡フォームは、発泡性ビーズから成る、請求項2記載のヘルメット(100)。
【請求項4】
前記保護層(106)は、
‐第1の層(200,500)と、
‐前記第1の層(200,500)から延びる突起(202,300,301,400,401,502)とを有し、
前記突起(202,300,301,400,401,502)は、前記既定のしきい値を超えると、前記第1の層(200,500)から破断するよう構成されている、請求項1~3のうちいずれか一に記載のヘルメット(100)。
【請求項5】
前記保護層(106)は、
‐前記突起(202,300,301,400,401)を覆う第2の層(201)をさらに有する、請求項4記載のヘルメット(100)。
【請求項6】
第2の層(201)はまた、前記既定のしきい値を超えると、前記第2の層(201)から破断する(211)よう構成された突起(202,300,301,400,401)を有する、請求項5記載のヘルメット(100)。
【請求項7】
前記第1の層(200)の前記突起(202,300,301,400,401)と前記第2の層(201)の前記突起(202,300,301,400,401)は、互いに向かい合っている、請求項6記載のヘルメット(100)。
【請求項8】
前記第1の層(200)と前記第2の層(201)は、前記突起(202,300,301,400,401)によって互いに連結されている、請求項5~7のうちいずれか一に記載のヘルメット(100)。
【請求項9】
前記第1の層(200)の前記突起(202,300,301,400,401)は、前記第2の層(201)の前記突起と相互に連係されている、請求項7または8記載のヘルメット(100)。
【請求項10】
前記突起(202,300,301,400,401,502)は、
‐管形突起(202)、
‐ビーム形突起、
‐楕円形または多角形ベース(310)を備えた円錐形突起(302)から成る群から選択された少なくとも1つを含む、請求項5~9のうちいずれか一に記載のヘルメット(100)。
【請求項11】
前記保護層(106)は、前記ビーズと第2の粒体の混成物を含む、請求項1~10のうちいずれか一に記載のヘルメット(100)。
【請求項12】
前記保護層(106)は、さらに、前記破断が前記ビーズと前記粒体との間の境界部のところで始まるよう構成されている、請求項11記載のヘルメット(100)。
【請求項13】
前記ビーズおよび前記粒体は、約0.5mm~約5mm、好ましくは約1mm~約3mmの直径を有する、請求項11または12記載のヘルメット(100)。
【請求項14】
前記ビーズは、50~70m-3・kg、好ましくは60m-3・kgの第1の密度を有し、前記粒体は、90~110m-3・kg、好ましくは100m-3・kgの第2の密度を有する第2のビーズに一致している、請求項11~13のうちいずれか一に記載のヘルメット(100)。
【請求項15】
前記混成物は、前記第1の密度を有する前記ビーズの25~75重量パーセント、好ましくは50重量パーセントを占める、請求項11~14のうちいずれか一に記載のヘルメット(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、保護用ヘッドウェアに関する。特に、本発明は、着用者の頭を衝撃から保護するヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
人が例えばスポーツまたは工業環境において自分の頭に衝撃を受ける危険があるときに外傷を防ぎまたは軽減するために衝撃によって生じるエネルギーを吸収し、それにより脳を保護するためにヘルメットが用いられている。例えば、ヘルメットは、サイクリングをしているとき、スキーをしているとき、アイスホッケーをしているとき、または人が自分の頭が地面に当たる恐れがあるとともに/あるいは人に物体、例えばホッケーパックが当たるような任意他の活動を行っているときに習慣的に用いられている。
【0003】
ヘルメットは、典型的には、内側パッドとして、衝撃時にエネルギーを吸収する緩衝材料を有する。一般に、外側ケーシングまたは外側シェルが追加の保護、スムーズな空気力学的特性および美的理由のために内側パッドを覆っている。
【0004】
外側シェルに衝撃を及ぼす力は、現実の状況では、法線方向成分および接線方向成分から成る。次に、これら2つの成分は、内側パッドに伝達される。その結果、法線方向成分は、内側パッドの直線吸収特性および力の大きさに応じて着用者の頭を押すことによって直線衝突を生じさせる。他方、接線方向成分は、方向および同様に力の大きさに応じて頭蓋内の脳の回転運動を生じさせる。
【0005】
回転衝撃により生じる脳の外傷は、直線衝突によって生じる脳の外傷と比べると異なっており、しかも架橋静脈破裂、急性硬膜下血腫、およびびまん性軸索損傷のように重篤なので、ヘルメットは、これに加わる衝撃力の大きさおよび方向または角度に基づいてヘルメットが各様に応動するような仕方で設計される場合がある。
【0006】
国際公開第2015/089646(A1)号パンフレットでは、かかるヘルメットは、衝撃力の法線方向および接線方向成分に対して各様に応動するよう構成された内側パッドを有するものとして開示されている。これまで、内側パッドは、衝撃力の接線方向成分に応動して弾性的に変形するコネクタのアレイに連結されたショックアブソーバとして配置された種々の材料から成る複合構造を有する。それにより、ヘルメットの外側シェルは、接線方向成分が着用者の頭にのみ部分的に伝達され、それにより脳の回転に起因した外傷の恐れを減少させるようにショックアブソーバに対して相対運動することができる。しかしながら、ヘルメットが複合構造に起因して組み立てるのが困難であることが欠点である。
【0007】
別の解決策が米国特許出願公開第2004/0168246(A1)号明細書に開示されており、ここでは、衝撃力の接線方向成分は、ヘルメットの互いに異なる場所、例えばヘルメットの先端に配置された硬質破断手段によって吸収される。破断手段は、ヘルメットの外側シェルを内側シェルに剛結しており、そして力の接線方向成分が外側シェルに当たったときに衝撃力をこれら破断手段に案内することによって破断するよう構成されている。しかしながら、外側シェルが衝撃力をこれら破断手段に効率的に導くためには完全に丸くなければならないということが欠点である。さらに、破断手段が外側シェルを内側層に固定的に取り付けているので、一体形の連結状況がこれら固定箇所のところで生じ、それにより特にこれら連結箇所のところで直線衝撃を吸収する能力が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2015/089646(A1)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0168246(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の欠点を軽減するとともにヘルメットが力によって衝撃を受けたときの脳の回転加速に起因した外傷の恐れを軽減するための改良策を提供することにある。
【0010】
これは、着用者の頭を保護するヘルメットであって、
‐ヘルメットが力による衝撃を受けたとき、圧縮によって該力の法線方向成分を吸収し、力の接線方向成分が既定のしきい値を超えたときに破断するよう構成された保護層を有することを特徴とするヘルメットによって達成される。
【0011】
ヘルメットは、例えばサイクリング、スキーまたはアイスホッケーのようなスポーツ活動の際、ヘルメット着用時に着用者の頭を保護する。ヘルメットは、かくして、頭を、特に着用者の脳を外傷から保護するために着用者によって着用される保護具である。
【0012】
ヘルメットは、保護層をさらに有する。保護層は、着用者の頭を覆い、そして、ヘルメットが用いられるのに適した種類の活動およびヘルメットがこの種の活動に対して提供する快適さの度合いに応じる場合のある、ある特定の厚さを有する。保護層は、その保護特性を制限しないで通気穴をさらに有するのが良い。
【0013】
保護層は、一方において、かくしてヘルメットがその表面に加わる力によって衝撃を受けたときに衝撃力からの法線方向成分を吸収するよう構成されている。法線方向成分は、表面上の衝撃点のところで頭の重心に向いた方向を有する成分である。この力は、例えば、着用者が転んで自分の頭が地面に当たった場合またはヘルメットに当たる物体、例えばホッケーパックに由来する。次に、衝撃力の法線方向成分は、圧縮によって吸収される。換言すると、保護層は、衝撃力の大きさおよび保護層の弾性率に応じて弾性変形または塑性変形を行うことによって法線方向成分から着用者の頭およびかくして着用者の脳を保護する。換言すると、保護層は、接線方向成分を着用者の頭または追加の弾性またはプラスチック層に伝達せず、主として保護層の破断によって接線方向成分を吸収する。
【0014】
さらに、衝撃力は、力が湾曲面に衝撃を与え、そしてこれを保護層に伝達する角度に応じて、接線方向成分をさらに含む場合がある。接線方向成分は、かくして、法線方向成分に垂直な衝撃点のところの接線方向成分である。かくして、他方、保護層は、力の接線方向成分が既定のしきい値を超えたときに破断するよう構成されている。換言すると、力の接線方向成分が既定のしきい値を超えると、保護層は、ちぎれまたは破断する。かくして、保護層は、圧縮ではなく破断することによって接線方向成分を吸収する。別の構成では、衝撃力の接線方向成分に由来するエネルギーは、保護層を破断させる。かくして、斜めの衝撃の際、接線方向成分の効果は、接線方向成分が生じさせる荷重分布下において割れにより軽減される。
【0015】
保護層がその体積全体にわたる除圧によって衝撃力の法線方向成分を吸収するので、硬いこぶ(node)が存在しないことが有利である。硬いこぶは、かかるこぶに力の衝撃が加わったときに着用者の頭に対して有害である。このようにして、着用者の頭が保護され、というのは、圧縮し、それにより着用者の脳への衝撃力の法線方向成分の伝達を制限するのが保護層だからである。
【0016】
さらに、頭蓋内の脳の回転運動もまた阻止され、というのは、接線方向成分の伝達が破断による接線方向成分の吸収に起因して妨げられるからである。さらに、保護層が破断することができるので、接線方向成分を吸収するその能力は、弾性変形またはそれどころか塑性変形と比較して高い。このように、着用者が地面に転びまたは物体によって叩かれたときに頭蓋内の回転運動または加速が阻止される。さらに、接線方向成分は、ヘルメット層の体積全体にわたって吸収可能であり、かかる接線方向成分は、最初に、この成分を吸収することができる任意他の手段に案内される必要はない。
【0017】
加うるに、破断は、ヘルメットがそれ以上使用するのに不適切であることが目に見えやすいという別の利点を有する。このように、ヘルメットの保護特性が著しく損なわれあるいはそれどころかなくなったときに着用者がヘルメットを着用し続けるということが阻止される。別の構成では、衝撃力の接線方向成分への反作用としての連続弾性または塑性変形の結果として、特に材料がしばしば曲げられまたは剪断され、そしてこれからの経時的な劣化がその材料の内部に生じるときにヘルメットの保護特性の低下が生じる一方でこれが着用者に見えないままであり、したがってそれ以上の不適当な使用を阻止しない。他方、破断は、すぐに見えるだけでなく、ヘルメットの保護能力がもはや保証できないときにヘルメットがもはや使用されないようにする。
【0018】
一実施形態によれば、保護層は、吸収および破断を行うよう構成された独立気泡フォームから成る。
【0019】
保護層は、かくして、直線衝撃を吸収するうえで有効な例えばポリエチレンフォームまたはポリスチレンフォームのような固体構造を備えた軽量材料である。さらに、独立気泡フォームを用いることにより、保護層を効率的かつ経済的な仕方で所望の形態に容易に形作ることができる。加うるに、独立気泡フォームにより、衝撃力の接線方向成分に起因して破断したときに輪郭のくっきりしたまたは鋭利なエッジが生じることがない。換言すると、保護層は、有害なまたは危険な箇所を生じさせないで破断することになる。
【0020】
独立気泡フォーム材料は、さらに、所望の形状のほかに、通気穴を提供することができる。最後に、たった1種類の材料を用いて保護層を得ることができ、それにより、製作プロセス中にミスを起こすことが少なくなる。
【0021】
一実施形態によれば、独立気泡フォームは、発泡性ビーズから成る。
【0022】
保護層は、かくして、例えば圧縮して融着させることができる発泡性ビーズを構成するインモールド発泡ポリスチレンである。次に、互いに異なる特性を備えたビーズの混成物を用いて保護層を製作して保護層の異方性強度特性を達成することができる。次に、他のビーズと比較して密度の低いビーズのところで破断を開始させることができる。このように、他のゾーンと比較してより破断しやすい保護層中のゾーンを選択することができ、その結果、ヘルメットは、これが主として用いられる種類の活動に適合させることができる。追加的にまたはそれと同時に、例えば、チームスポーツにおいてヘルメットの色に基づいて選手を識別する必要がある場合、特定の色のまたはそれどころか様々な色のビーズを美的理由でまたは他の理由で用いることができる。このように、保護層を所望の色でさらに塗装する必要がなく、しかも、保護層を当該色で直接製造することができる。
【0023】
一実施形態によれば、保護層は、
‐第1の層と、
‐第1の層から延びる突起とを有し、
突起は、既定のしきい値を超えると、第1の層から破断するよう構成されている。
【0024】
換言すると、第1の層およびこの第1の層から延びる突起は、保護層を形成し、突起は、着用者の脳を衝撃力の接線方向成分が既定のしきい値を超えたときに回転運動または加速に対して保護するために破断するよう構成されるとともに設計されている。さらに、破断を制御することができ、というのは、破断は、層と突起との移行部のところで現れまたは始まるからである。このように、突起の寸法および数により破断特性に対する良好な管理が達成される。
【0025】
突起をヘルメットが着用されたときに着用者の頭の方へ向けることができる。このようにすると、頭は、これら突起のところで保護層と接触関係をなし、それと同時に、空気が突起相互間を流れることができ、その結果、頭は、激しいスポーツ活動中に低温状態のままで、それと同時に、回転運動または加速に対する保護が保証される。
【0026】
突起を着用者の頭から遠ざかる方向に向けることもでき、その結果、頭は、第1の層と直接的接触関係をなす。これはまた、例えば、第1の層を介してヘルメットが快適にかつ安全な仕方で頭を覆う一方で、外部において突起が同様に回転運動または加速に対する保護を保証するよう形作られたときに有益である場合がある。
【0027】
一実施形態によれば、保護層は、突起を覆う第2の層をさらに有する。
【0028】
第2の層は、突起が着用者の頭から遠ざかる方向に向いたときに外部か、突起が着用者の頭の方へ向いたときに内部かのいずれかの突起を覆うことができる。第1の形態では、突起は、外部状況、例えば雨および/または埃から保護される。同様に、ヘルメットを着用したときに第2の層は着用者の頭を覆うと、第2の層は、スポーツ活動中に汗を吸収するのに適しているといえ、かかる第2の層を後で容易に交換することができ、それにより第1の層の突起を清潔な状態に保つことができる。
【0029】
一実施形態によれば、第2の層はまた、既定のしきい値を超えると、第2の層から破断するよう構成された突起を有する。
【0030】
換言すると、回転運動または加速に対する二重の保護が第1の層および第2の層の突起の両方によって提供される。
【0031】
一実施形態によれば、第1の層の突起と第2の層の突起は、互いに向かい合う。
【0032】
第1または第2の層が着用者の頭を覆い、他の層、かくして、着用者の頭を覆っていない層がヘルメットの外側に位置する。2つの層相互間の間に突起が存在し、1つの突起が第1の層から延び、1つの突起が第2の層から延びる。第1および第2の層の突起は、着用者の脳を回転運動または加速から保護する。加うるに、このようにすると、第1および第2の層は、互いに対してさらに相対運動することができ、それにより回転運動または加速に対する追加の保護が得られる。さらに、このようにすると、保護層は、製造するのが容易であり、というのは、その突起を備えた第1の層は、その突起を備えた第2の層上に容易に載ることができるからである。
【0033】
一実施形態では、第1の層と第2の層は、突起によって互いに連結される。
【0034】
換言すると、互いに向かい合った両方の層から延びる突起は、形態または形状が互いに一致するのが良くかつ突起が反対側の突起と留め具で留められることができ、それにより第1の層と第2の層を連結するような仕方でそれぞれの層上に配置されるのが良い。
【0035】
有利には、ヘルメットは、2つの部分、すなわち突起を備えた第1の層および同様に突起を備えた第2の層によって組み立てられるのが良く、このことから、一方は、外側層と見なされ、これは外側に向き、一方の層は、内側層と見なされ、これは着用者の頭を覆う層である。この場合、内側層は、全ての形式のヘルメットについて同一であるのが良く、かくして経済的に製造でき、他方、外側層は、内側層上の留め具のためにかつ後で使用される種類の活動に合わされるのが良い。
【0036】
一実施形態では、第1の層の突起は、第2の層の突起と相互に連係される。
【0037】
好ましくは、第1の層と第2の層は、突起を介して相互に連係されまたは連結される。この場合、保護層は、全体として第1の層および第2の層が突起と接合されまたは相互連係されたものから成る。突起相互間におよびかくして第1の層と第2の層との間にも、空気または別の気体が存在する場合があり、それにより直線衝撃および回転衝撃に対する保護を可能にする軽量化保護層が得られる。このように、保護層およびかくしてヘルメットは、軽量化ヘルメットが例えばタイムトライアル中のようなパフォーマンスをもたらすのに有益なスポーツ活動に適している。さらに、例えば突起相互間の空間を最小限に減少させることによって保護層の厚さを減少させることができる。さらに、保護層を容易に組み立てることができ、というのは、第1の層の突起を第2の層の突起内に容易にカチッと音を立てて押し込むことができるからである。
【0038】
2つの層を相互に連係させることによって、固定された連結部を作り、その結果、ヘルメットが例えばアイスホッケーのような活動している間に、動的にかつ強く動く際に用いられた場合に2つの層が互いに連結状態のままであるようになっていることがさらにもう1つの利点である。
【0039】
一実施形態によれば、突起は、
‐管形突起、
‐ビーム形突起、
‐楕円形または多角形ベースを備えた円錐形突起から成る群から選択された少なくとも1つを含む。
【0040】
突起は、管、ビーム形物またはバーおよび円錐またはピラミッドのように互いに異なる形状を有することができる。このように、接線方向成分を上回ったときに破断に対する突起のこれらの能力に関して突起の特性を適合させることができる。例えば円錐形突起は、基部および頂点を有し、それにより、その基部からその頂点までのテーパ付きまたは円錐形の形態により特性がその漸変する断面によって長手方向に変化する。それゆえ、頂点は、かくして基部の破断に先立って破断しがちとなる。このように、保護層中の専用スポットをこれらが他のスポットと比較してより迅速に破断するよう選択することができる。さらに、基部は、楕円形であっても良くあるいは円形、三角形、長方形または任意他の多角形であっても良い。他のスポット上において、長手方向にわたって強度を等しくするのが好ましく、それにより管形またはビーム形突起が用いられる。かくして、交互パターンをなす突起が、接線方向成分に由来する応力を保護層の専用の位置に集中させるよう生じるとともに構成されるのが良い。
【0041】
別の好ましい実施形態では、保護層は、ビーズと第2の粒体の混成物を含む。
【0042】
変形例として、保護層は、ビーズの混合物の他に、第2の粒体をさらに有しても良い。第2の粒体は、ビーズと比較して異なる組成を有し、これら第2の粒体は、保護層内に配置される。粒体はまた、既定の形状でクラスタとして保護層内に配置されても良い。
【0043】
一実施形態によれば、保護層は、さらに、破断がビーズと粒体との間の境界部のところで始まるよう構成されている。
【0044】
粒体を用いることによって、破断が粒体の境界部のところ、かくしてビーズと粒体との間のインターフェースのところで開始されるのが良い。このように、保護層の専用箇所を選択することができ、この場合、粒体は、保護層内に配置され、その結果、これら境界部またはインターフェースのところにおいて、接線方向成分が既定のしきい値を超えると、破断が開始されるようになっている。さらに、このようにすると、破断の開始が好ましい箇所の良好な管理が得られる。
【0045】
一実施形によれば、ビーズおよび粒体は、約0.5mm~約5mm、好ましくは約1mm~約3mmの直径を有する。
【0046】
換言すると、ビーズおよび粒体は、ビーズおよび粒体を圧縮して融着させることによって保護層を経済的に製造することができるように同一の直径を有するのが良い。さらに、粒体が等しい直径を有するので、ビーズは、圧縮および融着中、粒体によって損傷を受けることはない。
【0047】
一実施形態によれば、ビーズは、50~70m-3・kg、好ましくは60m-3・kgの第1の密度を有し、粒体は、90~110m-3・kg、好ましくは100m-3・kgの第2の密度を有する第2のビーズに一致している。
【0048】
別の構成では、互いに異なる密度、すなわち、好ましくは60m-3・kgの第1の密度および好ましくは100m-3・kgの第2の密度を有するビーズの混合物を用いても保護層を組み立てることができる。次に、ビーズの混合物を圧縮して融着させ、それにより保護層が形作られる。
【0049】
一実施形態によれば、混成物は、第1の密度を有するビーズの25~75重量パーセント、好ましくは50重量パーセントを占める。
【0050】
この場合、第2の密度を備えたビーズの重量パーセントは、第1の密度を備えたビーズの重量パーセントによって定められる。
【0051】
次に、添付の図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】本発明の例示の実施形態に係るヘルメットを示す図である。
図1B図1Aのヘルメットの断面図である。
図2A】第1および第2の層ならびに突起を有する本発明の第1の例示の実施形態に係る保護層を示す図である。
図2B】突起が破断した状態の図2Aの保護層を示す図である。
図3A】第1および第2の層ならびに突起を有する本発明の第2の例示の実施形態に係る保護層を示す図である。
図3B】逆方向に差し向けられた突起を有する図3Aの例示の実施形態と類似した保護層を示す図である。
図4A】第1および第2の層ならびに突起を有する本発明の第3の例示の実施形態に係る保護層を示す図である。
図4B】逆方向に差し向けられた突起を有する図4Aの例示の実施形態と類似した保護層を示す図である。
図5A】第1の層および突起を有する本発明の第5の例示の実施形態に係る保護層を示す図である。
図5B】突起が破断した状態の図5Aの保護層を示す図である。
図6A】本発明の第6の例示の実施形態に係る保護層を示す図である。
図6B】本発明の第6の例示の実施形態に係る保護層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1Aは、本発明の例示の実施形態に係るヘルメットを示し、図1Bは、このヘルメットの断面図である。ヘルメット100は、例えばサイクリングまたはスキーのようなスポーツ活動中に着用されるのに適している。ヘルメット100は着用されると、着用者の頭は、位置107内にある。
【0054】
ヘルメット100は、活動中に頭へのヘルメット100の安全着用を保証するよう着用されると、着用者の顎の周りに巻き付け可能な留め具またはバックル110を有するのが良い。ヘルメット100は、外側シェル101および通気穴111をさらに有するのが良い。外側シェル101は、外部状況、例えば風または雨に対する保護層として機能することができ、通気穴は、着用者の頭の温度調節を管理するとともに/あるいは空気力学的および/または美観の理由で機能することができる。さらに理解されるべきこととして、これら機能110,111は、例示であり、ヘルメットの設計対象でありまたはそれどころかヘルメットの設計対象である種類の活動で様々であって良く、あるいはそれどころかなくても良い。
【0055】
ヘルメット100は、保護層106を有し、保護層106は、図1Bでは断面図120で示されている。保護層106は、外部に設けられた湾曲面112を有し、この保護層は、外側シェル101によってさらに覆われるのが良い。変形例として、保護層106の湾曲面112は、それ自体、ヘルメット100の外側層を構成することができ、このことは、外側シェル101が存在しないことを意味している。
【0056】
活動中、ヘルメット100は、衝撃力105によって示された力によって衝撃を受ける場合がある。この力は、例えば、地面上に転んだことまたは物体で叩かれたことに由来する場合がある。衝撃力105の大きさおよび方向は、先験的には知られてはおらず、これらを法線方向成分102および接線方向成分103から成るベクトル105によって表示可能である。ベクトル105は、さらに、衝撃点を表す点104に向いている。しかしながら、衝撃点はまた、ヘルメット100の着用者が転ぶ際の表面またはヘルメット100に当たる物体の形状および寸法に応じて、衝撃領域またはゾーンを構成する場合があることはさらに理解されるべきである。
【0057】
衝撃力105は、図2Aにさらに示されており、図2Aは、第1のまたは外側の層200および第2のまたは内側の層201を有する保護層106を示している。保護層106は、この第1の例示の実施形態では、両方の層200,201から延びかつ層200,201を互いに連結する突起202をさらに有する。
【0058】
力105は、保護層から見て外部でかくして、湾曲面112のところで保護層106に衝撃を及ぼし、その接線方向成分103は、保護層106の他のゾーンに伝達される。同様に、法線方向成分102は、保護層106の他のゾーンに同様に伝達される。
【0059】
変形例として、ヘルメット100が外側シェル101を有する場合、衝撃力105は、最初に、外側シェル101に衝撃を及ぼし、力105は、その後、保護層106に伝達される。
【0060】
法線方向成分102は、圧縮を介して保護層106によって吸収される。換言すると、保護層106が圧縮し、その結果、外側層200、突起202および内側層201が圧縮中、互いに近づき、その後、衝撃力105がもはや存在しなくなったときに層200,201および突起202がこれらの最初の形状に戻ることができまたは保護層106の弾性率に関して法線方向成分102の大きさに応じて、しかもちぎれずまたは破断しないで、塑性変形可能である。
【0061】
接線方向成分103は、保護層106の本体に伝達され、この伝達の仕方は、矢印210によって示されている。かくして、矢印210は、衝撃力105の接線方向成分103に起因して、突起202および/または内側層201に対する外側層200の相対運動が起こることを示している。
【0062】
接線方向成分103が既定のしきい値を超えると、保護層106の突起202は、破断するよう構成されている。破断は、かくして、衝撃力105の接線方向成分103によって開始され、この破断は、衝撃力105が保護層106に当たる(104)角度およびその大きさで決まる。
【0063】
突起202の破断は、破断部211および破断部212によって示されている。突起202は、この第1の例示の実施形態では、管形またはビーム形突起から成る。このために、突起の強度特性は、これらのそれぞれの長手方向全体にわたって等しいままである。このことは、突起は、断面がもはや既定のしきい値に対して耐性がない箇所で破断することになることを意味している。これは、例えば、破断部211によって示されているように突起の中間部のところまたは突起212によって示されているように端のところに位置する場合がある。この位置は、かくして、衝撃力105の作用場所104および衝撃力が突起202に伝達される(210)仕方によって決まることになる。衝撃力105の大きさおよび方向に応じて、破断はまた、破断部213によって示されているように層200のところで起こる場合がある。
【0064】
破断の結果として、外側層200は、内側層201から離される(203)。突起の一部分だけが破断されることがさらに起こる場合がある。換言すると、衝撃力105、特にその接線方向成分103に由来する回転衝撃または加速は、次に、突起の一部分の破断によって吸収され、他方、他の突起は、無傷状態のままである。
【0065】
突起は、管形またはビーム形の形状と比較して他の形状を取ることも可能である。図3Aおよび図3Bでは、本発明の第2の実施形態が示されており、この第2の例示の実施形態は、円錐形突起300、例えば円錐形302を有する。さらに理解されるべきこととして、円錐は、底辺から頂点まで滑らかにテーパした三次元幾何学的形状であり、この場合、底辺および頂点は、円形であっても良いが、任意他の多角形の形状であっても良い。突起300は、かくして、例えばピラミッド形から成っていても良い。
【0066】
円錐形突起300は、頂点311によって示されているようにこれらのそれぞれの頂点によって外側層200、そしてこれらのそれぞれの底辺、例えば底辺310によって内側層201に連結されている。この形態は逆であっても良く、図3Bの突起301によって示されているように、底辺が外側層200に連結され、頂点が内側層201に連結される。
【0067】
突起300,301のテーパ付き形態に起因して、強度特性は、漸変断面のために変化している。例えば、接線方向成分103が伝達されると、これに由来する応力が円錐形突起の頂点のところに集中する場合があり、その結果、破断がこれら頂点のところで開始される。これは、外側層200のところの破断部312および内側層201のところの破断部313によって示されている。衝撃力105の大きさおよび方向に応じて、破断はまた、破断部314によって示されているように外側層200のところで起こる場合がある。
【0068】
円錐形突起の一様な方向上の構造、例えば、底辺が全て内側層201のところに配置された形態300または頂点が全て内側層201のところに配置された形態301のほかに、円錐形突起は、突起400によって図4Aに示されているように交互のパターンをなして配列されても良い。この第3の実施形態では、テーパ付き形態の方向を変えることができ、この実施形態は、ビーム形および/または管形突起をさらに有することができる。換言すると、突起のパターンは、これが様々な形状、様々な断面および/または構造を有するようになっていても良い。
【0069】
突起400の一部が外側層200からも延びることはでき、他の部分は、内側層201から延び、それにより外側層200と内側層201は、突起によって互いに連結される。両方の層200,201の突起は、保護層106の第4の例示の実施形態によって図4Bに示されているように相互連係されても良い。突起401は、突起が反対側の突起と相互連係しまたは留め具で留められるように形作られている。例えば、外側層200から延びる突起403は、内側層201から延びる突起402と留め具で結合している。その結果、相互連係された突起401のパターンは、内側層201および外側層200と一緒になって、保護層106を形成している。
【0070】
第5の例示の実施形態によれば、保護層106は、図5Aおよび図5Bに示されているように、突起の延びた1つの層を有しても良い。突起502が延びる場所から見て、層500は、ヘルメット100の外側層であっても良く、あるいは、かくして着用者の頭107が着用時に設けられる内側層であっても良い。
【0071】
次に、衝撃力105は、突起502に伝達される(503)か、あるいは、突起502は、力によって直接的に衝撃が及ぼされる。突起502は同様に、衝撃力105の接線方向成分103が既定のしきい値を超えたときに破断するよう構成されている。これは、図5Bの破断510によって示されている。
【0072】
保護層106は、第6の実施形態によれば、全体として1つの形状600を有しても良く、例えば、発泡ビーズおよび粒体602を構成するインモールド発泡ポリスチレンから成っていても良い。粒体602は、接線方向成分103が既定のしきい値を超えたときに破断が粒体602の境界部のところで開始されるよう配置されている。この場合、破断の結果として、保護層106の長さ全体にわたって破断601が生じる場合がある。
【0073】
図6Aに示されているような保護層は、粒体602が設けられていないが、互いに異なる密度を備えたビーズの混成体を含む全体として1つの形状から成っていても良い。例えば、密度が50~70m-3・kg、好ましくは60m-3・kgのビーズの第1の混成体および密度が90~110m-3・kg、好ましくは100m-3・kgのビーズの第2の混成体が設けられる。両方の混成体は、次に、均等に、かくして各々が50重量パーセントに分割されても良く、あるいは、第1の混成体は、25~75重量パーセントを有しても良く、これに対し、結果として、第2の混成体は、第1の混成体の重量パーセントによって定められる重量百分率を有する。
【0074】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述の例示の実施形態の細部には限定されないことおよび本発明をその範囲から逸脱することなく種々の変更および改造を加えて実施できることは当業者には明らかであろう。したがって、上述の実施形態は、あらゆる意味で例示と見なされるべきであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は、上述の説明ではなく、特許請求の範囲の記載によって定められ、したがって、請求項に記載された発明の意味および均等範囲に属するあらゆる変更は、本発明に含まれる。換言すると、基本的な基礎としての原理の範囲に属し、本質的な属性が本願にクレーム請求されている任意かつ全ての改造例、変形例または均等例を含むことが想定される。さらに、本願の読者によって、原文の用語“comprising”または“comprise”(訳文では、「~を有する」としている場合が多い)は、他の要素またはステップを排除するものではないこと、用語“a”または“an”は、複数を排除しないこと、そして単数形の要素、例えばコンピュータシステム、プロセッサ、または任意の一体形ユニットが特許請求の範囲に記載された幾つかの手段の機能を実行できることはさらに理解されよう。原文請求項に記載されている参照符号は、関連のそれぞれの請求項を限定するものと見なされるべきではない。「第1」、「第2」、「第3」、「a」、「b」、「c」などの用語は、本文または特許請求の範囲に用いられた場合、類似の要素またはステップを区別するよう導入され、そして必ずしも場所的なまたは時間的な順序を説明するものではない。同様に、「頂部」、「底部」、「~上」、「~の下」などの用語は、説明の目的のために導入されており、必ずしも、相対位置を示すものではない。理解されるべきこととして、このように用いられた用語は、適切な環境下において互換性があり、本発明の実施形態は、上記において説明しまたは例示した順序または向きとは異なる他の順序、または向きで本発明に従って作用することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】