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特表2022-505105アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/095 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
C03C3/095
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521014
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2019111445
(87)【国際公開番号】W WO2020078377
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】201811203508.6
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519319819
【氏名又は名称】トンシュー テクノロジー グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TUNGHSU TECHNOLOGY GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1112,Floor 11,101,Floor 1 to Floor 17,Building 4,Yard 2,Sihezhuang Road,Fengtai District Beijing China
(71)【出願人】
【識別番号】518369475
【氏名又は名称】トンシュー グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TUNGHSU GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 369 Zhujiang Road, New & Hi-Tech Industrial Development Zone, Shijiazhuang, Hebei, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン グアンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ウェンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リ ツィヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ ガン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュンヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ドンチェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン リホン
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB06
4G062CC10
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
4G062DE02
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4G062ED02
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4G062EF03
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4G062FJ03
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4G062FK03
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4G062JJ05
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4G062KK01
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4G062KK08
4G062MM12
4G062NN15
4G062NN16
4G062NN29
(57)【要約】
本発明は、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス、その製造方法及び使用に関する。該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、67~74mol%のSiO、10~15mol%のAl、0~5mol%のB、1~10mol%のMgO、1~10mol%のCaO、0~3mol%のSrO、2~8mol%のBaO、0.1~4mol%のZnO、0.1~4mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有し、ここで、REは希土類元素であり、Rはアルカリ金属である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸塩ガラス組成物であって、
該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、67~74mol%のSiO、10~15mol%のAl、0~5mol%のB、1~10mol%のMgO、1~10mol%のCaO、0~3mol%のSrO、2~8mol%のBaO、0.1~4mol%のZnO、0.1~4mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有し、REは希土類元素であり、Rはアルカリ金属である、ことを特徴とするアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項2】
該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、69~72mol%のSiO、12~14mol%のAl、0~2mol%のB、4~7mol%のMgO、4~7mol%のCaO、0~2mol%のSrO、3~6mol%のBaO、0.5~1.5mol%のZnO、0.1~1.5mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項3】
前記REはイットリウム及びランタニド元素であり、前記RはLi、Na及びKであり、
好ましくは、前記REはY、La、及びLuである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項4】
モル百分比率換算で、B/(B+SiO)<0.05である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項5】
モル百分比率換算で、B/(MgO+CaO+SrO+BaO)<0.3である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項6】
モル百分比率換算で、(SrO+BaO)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+Y+La+Lu)>0.3である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項7】
清澄剤をさらに含有し、各成分の全モル量を基準に、前記清澄剤の含有量は0.5mol%以下、好ましくは0.3mol%以下である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物。
【請求項8】
アルミノケイ酸塩ガラスの製造方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物に必要な原材料を混合した混合材料M1を準備し、M1にNHNOを加えて混合材料M2を得て、混合材料M2に対して溶融処理、アニーリング処理、及び機械加工をして、前記アルミノケイ酸塩ガラスを製造するステップを含み、
得られた前記アルミノケイ酸塩ガラスの100gを基準に、前記NHNOの添加量は5~15gである、ことを特徴とするアルミノケイ酸塩ガラスの製造方法。
【請求項9】
機械加工処理により得られた製品に対して二次溶融薄化処理を行うステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載のアルミノケイ酸塩ガラスの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のアルミノケイ酸塩ガラスの製造方法で製造されるアルミノケイ酸塩ガラス。
【請求項11】
酸素イオン濃度Vは0.08mol/cm以上、好ましくは0.084mol/cm以上、さらに好ましくは0.086mol/cm以上である、ことを特徴とする請求項10に記載のアルミノケイ酸塩ガラス。
=[(2*NSi+3*NAl+3*N+NMg+NCa+NSr+NBa+NZn+3*NNH4+3*N+3*NLa+3*NLu)/(NSi+NAl+N+NMg+NCa+NSr+NBa+NZn+N+NLa+NLu)]/(m/ρ)
(ここで、得られた前記アルミノケイ酸塩ガラスの100gを基準に、NSi、NAl、N、NMg、NCa、NSr、NBa、NZn、N、NLa、及びNLuは、それぞれ、混合材料M1中のSiO、Al、B、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y、La、及びLuの物質量を示し、NNH4は、M1に添加されたNHNOの物質量を示し、mは混合材料M2を溶融して得たアルミノケイ酸塩ガラスの質量を示し、単位がgであり、ρは得たアルミノケイ酸塩ガラスの密度を示し、単位がg/cmである。)
【請求項12】
前記アルミノケイ酸塩ガラスの粘度100ポアズに対応する温度T100は1680℃以上であり、
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの歪点Tstは740℃以上であり、
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの液相線温度Tは1240℃以下であり、
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの中で、単体硫黄Sの形で表される硫黄元素の含有量は100ppm未満であり、
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの中で、Feの形で表される鉄酸化物の含有量は150ppm未満であり、
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの中で、Crの形で表されるクロム酸化物の含有量は50ppm未満である、ことを特徴とする請求項10又は11に記載のアルミノケイ酸塩ガラス。
【請求項13】
前記アルミノケイ酸塩ガラスの密度は2.75g/cm以下、好ましくは2.7g/cm未満であり、50~350℃での熱膨張係数は40×10-7/℃未満、好ましくは39.5×10-7/℃未満であり、ヤング率は80GPaより高く、好ましくは83GPaより高く、
好ましくは、粘度100ポアズに対応する温度T100は、1690~1800℃、好ましくは1690~1710℃であり、粘度35000ポアズに対応する温度T35000は、1250~1350℃、好ましくは1265~1310℃であり、歪点Tstは740~765℃、好ましくは750~765℃であり、液相線温度Tは1220℃未満であり、
好ましくは、波長308nmでの透過率は72%以上、好ましくは74%以上であり、波長343nmでの透過率は84%以上、好ましくは86%以上であり、波長550nmでの透過率は91%以上、好ましくは92%以上であり、
好ましくは、600℃/10minの条件での熱収縮率Yは10ppm未満、好ましくは7ppm未満である、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラス組成物又は請求項10~13のいずれか1項に記載のアルミノケイ酸塩ガラスの、ディスプレイデバイス及び/又は太陽電池の製造における使用、好ましくは、フラットディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブル表示製品のガラス基板材料及び/又は表面パッケージガラス材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブル太陽電池のガラス基板材料、安全ガラス、防弾ガラス、スマートカーガラス、高度道路交通システム用表示画面、スマートウィンドウ及びスマートカードやチケット、ならびに高熱安定性、高紫外線透過率及び機械的安定性を必要とするほかのガラス材料の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造の分野に関し、具体的には、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニクス産業の高速発展に伴い、たとえばアクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD)、有機発光ダイオード(OLED)、及び低温ポリシリコン技術によるアクティブマトリックス液晶ディスプレイ(LTPS TFT-LCD)デバイスなど、各種のディスプレイデバイスへの需要がますます高まり、これらのディスプレイデバイスは、すべて薄膜半導体材料を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を生産する技術に基づくものである。主流のシリコンベースTFTは、アモルファスシリコン(a-Si)TFT、ポリシリコン(p-Si)TFT、及び単結晶シリコン(SCS)TFTに分けることができ、これらのうち、アモルファスシリコン(a-Si)TFTは現在の主流TFT-LCDに使用される技術であり、アモルファスシリコン(a-Si)TFT技術では、生産プロセスは300~450℃の処理温度で実施できる。LTPSポリシリコン(p-Si)TFTでは、プロセス過程において高温での複数回の処理が必要とされ、複数回の高温処理過程における基板の変形が避けなければならず、これにより、基板ガラスの性能により高い要件が求められ、好ましくは歪点は650℃よりも高く、より好ましくは670℃、700℃、720℃よりも高く、それにより、パネルプロセスにおける基板の熱収縮をできるだけ小さくする。また、応力や破壊をできるだけ減らすためにガラス基板の膨張係数をシリコンの膨張係数と近くする必要があり、したがって、基板ガラスの好ましい線形熱膨張係数は28~39×10-7/℃の間である。生産し易さから、ディスプレイ基板用のガラスには低液相線温度が必要とされる。
【0003】
フラットディスプレイ用のガラス基板では、スパッタリング、化学気相堆積(CVD)などの技術によって底層の基板ガラスの表面に透明導電性膜、絶縁膜、半導体(ポリシリコン、アモルファスシリコン等)膜及び金属膜を形成し、次に、フォトエッチング(Photo-etching)技術によって各種の回路及びパターンを形成する必要があり、ガラスにアルカリ金属酸化物(NaO、KO、LiO)が含有されると、熱処理過程においてアルカリ金属イオンが拡散して堆積半導体材料に入り、半導体膜の特性を損ない、したがって、ガラスにはアルカリ金属酸化物を含まないようにすべきであり、SiO、Al、B、アルカリ土類金属酸化物RO(RO=Mg、Ca、Sr)などを主成分とするアルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラスは最も好ましい。
【0004】
ガラス基板の加工過程において、基板ガラスは水平に配置されるので、ガラスの自重の作用により、ある程度下がり、下がり程度がガラスの密度に比例し、ガラスの弾性率に反比例する。基板製造の大寸法化、薄型化の発展に伴い、製造中のガラス板の下がりを重視化しなければならない。したがって、できるだけ低い密度及び高い弾性率を基板ガラスに持たせるように組成を設計すべきである。
【0005】
いくつかのフラットディスプレイの製造過程においては、紫外線をエネルギーとしてディスプレイユニットとそれに接触する基板ガラスとを分離する必要がある。分離コストを下げ、成功率を高めるために、ガラス基板に対して、紫外線領域において高くて安定的な透過率が要求され、たとえば、厚さ0.5mmのガラス基板の場合、波長308nm及び/又は343nmでの透過率が60%よりも高く、且つバッチ間の異なるガラス基板同士の透過率のレンジが1%以内であることが求められる。しかし、不可避的な因素により、ガラス基板の製造中、SO、Fe、Crなど紫外線領域に強吸収を有する成分が多かれ少なかれ導入されてしまい、このため、ガラス基板の製造中に各種の不純物成分の含有量を厳格に制御しなければならない。一方、鉄イオンは、原子価が異なると、紫外光への吸収程度が異なり、このため、ガラスの製造中、一定の手段により鉄原子価を制御し、清澄化・均質化処理を行うことは、308nm及び/又は343nmで高透過率を有するガラス基板の製造に寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ディスプレイ基板ガラスの均質化効果が好適ではないこと、及び308nmでの透過率が低いという従来のアルミノケイ酸塩ガラスに存在する欠陥を解決するために、低密度、高弾性率、良好な熱安定性及び低熱収縮率を有し、308nm及び/又は343nmに高透過率を有するアルミノケイ酸塩ガラス、その製造方法及び使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明の第1の態様は、アルミノケイ酸塩ガラス組成物を提供し、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、67~74mol%のSiO、10~15mol%のAl、0~5mol%のB、1~10mol%のMgO、1~10mol%のCaO、0~3mol%のSrO、2~8mol%のBaO、0.1~4mol%のZnO、0.1~4mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有し、REは希土類元素であり、Rはアルカリ金属である。
【0008】
好ましくは、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、69~72mol%のSiO、12~14mol%のAl、0~2mol%のB、4~7mol%のMgO、4~7mol%のCaO、0~2mol%のSrO、3~6mol%のBaO、0.5~1.5mol%のZnO、0.1~1.5mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有する。
【0009】
好ましくは、モル百分比率換算で、B/(B+SiO)<0.05である。
【0010】
好ましくは、モル百分比率換算で、B/(MgO+CaO+SrO+BaO)<0.3である。
【0011】
好ましくは、前記REは、イットリウム及びランタニド元素であり、前記RはLi、Na、及びKである。
好ましくは、前記REは、Y、La及びLuである。
【0012】
好ましくは、モル百分比率換算で、(SrO+BaO)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+Y+La+Lu)>0.3である。
【0013】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、清澄剤をさらに含有し、各成分の全モル量を基準に、前記清澄剤の含有量は0.5mol%以下、より好ましくは0.3mol%以下である。
【0014】
第2の態様によれば、本発明は、前記アルミノケイ酸塩ガラス組成物に必要な原材料を混合した混合材料M1を準備し、M1にNHNOを加えて混合材料M2を得て、混合材料M2に対して溶融処理、アニーリング処理、及び機械加工をして、前記アルミノケイ酸塩ガラスを製造するステップを含み、
得られた前記アルミノケイ酸塩ガラス100gを基準に、前記NHNOの添加量は5~15gであるアルミノケイ酸塩ガラスの製造方法を提供する。
【0015】
第3の態様によれば、本発明は、上記方法で製造されたアルミノケイ酸塩ガラスを提供する。
【0016】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスでは、酸素イオン濃度Vは0.08mol/cm以上、さらに好ましくは0.084mol/cm以上、より好ましくは0.086mol/cm以上である。
=[(2*NSi+3*NAl+3*N+NMg+NCa+NSr+NBa+NZn+3*NNH4+3*N+3*NLa+3*NLu)/(NSi+NAl+N+NMg+NCa+NSr+NBa+NZn+N+NLa+NLu)]/(m/ρ)
(ここで、得られた前記アルミノケイ酸塩ガラス100gを基準に、NSi、NAl、N、NMg、NCa、NSr、NBa、NZn、N、NLa、及びNLuは、それぞれ、混合材料M1中のSiO、Al、B、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y、La、及びLuの物質量を示し、NNH4は、M1に添加されたNHNOの物質量を示し、mは混合材料M2を溶融して得たアルミノケイ酸塩ガラスの質量を示し、単位がgであり、ρは得たアルミノケイ酸塩ガラスの密度を示し、単位がg/cmである。)
【0017】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの粘度100ポアズに対応する温度T100は1680℃以上である。
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの歪点Tstは740℃以上である。
【0018】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの液相線温度Tは1240℃以下である。
【0019】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラス中、単体硫黄Sの形で表される硫黄元素の含有量は100ppm未満である。
【0020】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラス中、Feの形で表される鉄酸化物の含有量は150ppm未満である。
【0021】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラス中、Crの形で表されるクロム酸化物の含有量は50ppm未満である。
【0022】
好ましくは、前記アルミノケイ酸塩ガラスの密度は2.75g/cm以下、さらに好ましくは2.7g/cm未満であり、50~350℃での熱膨張係数は40×10-7/℃未満、さらに好ましくは39.5×10-7/℃未満であり、ヤング率は80GPaより高く、さらに好ましくは83GPaより高い。
【0023】
好ましくは、粘度100ポアズに対応する温度T100は、1690~1800℃、さらに好ましくは1690~1710℃であり、粘度35000ポアズに対応する温度T35000は、1250~1350℃、さらに好ましくは1265~1310℃であり、歪点Tstは740~765℃、さらに好ましくは750~765℃であり、液相線温度Tは1220℃未満である。
【0024】
好ましくは、波長308nmでの透過率は72%以上、さらに好ましくは74%以上であり、波長343nmでの透過率は84%以上、さらに好ましくは86%以上であり、波長550nmでの透過率は91%以上、さらに好ましくは92%以上である。
【0025】
好ましくは、600℃/10minの条件での熱収縮率Yは10ppm未満、さらに好ましくは7ppm未満である。
【0026】
第4の態様によれば、本発明は、本発明の前記アルミノケイ酸塩ガラス組成物又はアルミノケイ酸塩ガラスの、ディスプレイデバイス及び/又は太陽電池の製造における使用、好ましくは、フラットディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブルディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又は表面パッケージガラス材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブル太陽電池のガラス基板材料、安全ガラス、防弾ガラス、スマートカーガラス、高度道路交通システム用表示画面、スマートウィンドウ、及びスマートカードやチケット、ならびに高い熱安定性、高い紫外線透過率及び機械的安定性を必要とするほかのガラス材料の製造における使用を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラスは、高い紫外線透過率及び可視光透過率、高歪点(高耐熱性)などの利点がある。ディスプレイデバイス及び/又は太陽電池の製造、特にフラットディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブルディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又は表面パッケージガラス材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブル太陽電池のガラス基板材料、安全ガラス、防弾ガラス、スマートカーガラス、高度道路交通システム用表示画面、スマートウィンドウ及びスマートカードやチケット、ならびに高熱安定性、高紫外線透過率及び機械的安定性を必要とするほかのガラス材料の製造における使用の分野に適している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の特定実施形態を詳細に説明する。なお、ここで記載の特定実施形態は本発明を説明して解釈するために過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0029】
第1の態様によれば、本発明は、アルミノケイ酸塩ガラス組成物であって、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、67~74mol%のSiO、10~15mol%のAl、0~5mol%のB、1~10mol%のMgO、1~10mol%のCaO、0~3mol%のSrO、2~8mol%のBaO、0.1~4mol%のZnO、0.1~4mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有し、REは希土類元素であり、Rはアルカリ金属であるアルミノケイ酸塩ガラス組成物を提供する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物は、69~72mol%のSiO、12~14mol%のAl、0~2mol%のB、4~7mol%のMgO、4~7mol%のCaO、0~2mol%のSrO、3~6mol%のBaO、0.5~1.5mol%のZnO、0.1~1.5mol%のRE、及び0.05mol%未満のROを含有する。
【0031】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、SiOの含有量は、67~74mol%、好ましくは69~72mol%、具体的には、たとえば67mol%、67.3mol%、67.5mol%、67.7mol%、67.8mol%、68mol%、68.7mol%、69mol%、69.4mol%、70.8mol%、70.9mol%、71.8mol%、72mol%、72.4mol%、73.6mol%、73.9mol%、74mol%、及びこれらの数値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意の数値であってもよい。SiOはガラス形成体であり、SiOの含有量が低すぎると、耐薬品性の向上に不利であり、膨張係数が高すぎ、歪点が低すぎ、ガラスが失透しやすくなり、そして、ガラスの高温抵抗率が少なすぎ、ジュール熱効果が弱まり、自体の発熱量が溶融による要件を満たせなくなる。SiOの含有量が上昇すると、熱膨張係数の減少、歪点向上、耐薬品性強化、高温抵抗率の増大に有利であるが、含有量が高すぎると、ガラスの溶融温度の上昇、溶融性の低下、液相温度の上昇、耐失透性の低下を引き起こす。
【0032】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、前記Alの含有量は、10~15mol%、好ましくは12~14mol%、具体的には、たとえば10mol%、10.3mol%、10.9mol%、11mol%、11.7mol%、12mol%、12.6mol%、13mol%、13.3mol%、13.5mol%、13.6mol%、13.8mol%、13.9mol%、14mol%、14.4mol%、14.5mol%、14.9mol%、15mol%及びこれらの数値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意の数値であってもよい。Alはガラス構造の強度を向上させることができ、Alの含有量が10mol%未満である場合、ガラスは耐熱性の向上が困難であり、また外界の蒸気や化学試薬による侵食を受けやすく、高含有量のA1は、ガラスのアニーリング点温度、機械強度の向上に有利であるが、Alの含有量が15mol%を上回る場合、ガラスは結晶化しやすく、溶解しにくくなる。
【0033】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、Bの含有量は、0~5mol%、好ましくは0~2mol%、具体的には、たとえば0、0.4mol%、0.7mol%、1.4mol%、1.6mol%、1.9mol%、2mol%、2.5mol%、3.5mol%、4mol%、4.3mol%、4.7mol%、5mol%、及びこれらの数値のうちの任意の2つの数値からなる範囲内の任意の数値であってもよい。高アルミナアルカリフリーケイ酸塩ガラス系では、酸化ホウ素Bを使用すると、良好な高温での溶融促進効果を果たすとともに、ガラス耐薬品性の向上に有利である。しかし、低温粘度領域では、Bはガラスのアニーリング点温度を顕著に低下させ、ガラス熱安定性の向上に不利である。
【0034】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、前記MgOの含有量は、1~10mol%、好ましくは4~7mol%、具体的には、たとえば1mol%、1.1mol%、1.2mol%、1.5mol%、1.8mol%、2.8mol%、3mol%、3.6mol%、4.4mol%、4.6mol%、5mol%、5.5mol%、6.4mol%、7mol%、7.4mol%、8mol%、9mol%、10mol%、及びこれらの数値のうちの任意の2つの数値からなる範囲内の任意の数値であってもよい。
【0035】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、前記CaOの含有量は、1~10mol%、好ましくは4~7mol%、具体的には、たとえば1mol%、1.1mol%、1.2mol%、1.5mol%、1.8mol%、2.1mol%、2.5mol%、3.8mol%、4.3mol%、4.9mol%、5.3mol%、5.7mol%、6.6mol%、7mol%、7.4mol%、8mol%、9mol%、10mol%、及びこれらの数値のうちの任意の2つの数値からなる範囲内の任意の数値であってもよい。
【0036】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、前記SrOの含有量は、0~3mol%、好ましくは0~2mol%、具体的には、たとえば0、0.1mol%、0.44mol%、0.8mol%、1mol%、1.4mol%、1.5mol%、1.7mol%、2mol%、2.2mol%、2.6mol%、3mol%及びこれらの数値のうちの任意の2つの数値からなる範囲内の任意の数値であってもよい。
【0037】
本発明では、MgO、CaO及びSrOは、すべてアルカリ土類金属酸化物であり、ガラスの高温粘度を効果的に低下させ、ガラスの溶融性及び成形性を向上させることができ、また、ガラスのアニーリング点温度を向上させ、且つ、MgO、SrOは、化学的安定性及び機械的安定性を向上させる特徴を有し、ただし、その含有量が多すぎると、密度を増大し、クラック、失透、相分離の発生率を高める。
【0038】
本発明のアルカリフリーアルミノケイ酸塩ガラスにおいて、BaOは、フラックス及びガラスの結晶化を防止する成分として機能し、含有量が多すぎると、ガラスの高温体積抵抗率が上昇し、密度が高すぎ、製品の比弾性率が下がる。MgO、CaO、SrO、BaOはすべてアルカリ土類金属酸化物であるものの、実験した結果、各酸化物によるガラス形成安定性への影響には大きな差別があり、BaOの含有量を適切に向上させ、配合比を合理的な範囲に制御すると、形成安定性の向上、抗結晶化性能の向上、全体性能の最適化に有利である。したがって、総合的に考慮すると、該アルカリフリーアルミノケイ酸塩ガラスの全モル量を基準に、酸化物換算で、前記BaOの含有量は2~8mol%、好ましくは3~6mol%、具体的には、たとえば2mol%、2.3mol%、3.2mol%、3.5mol%、4.1mol%、4.9mol%、5.3mol%、5.9mol%、6.3mol%、6.9mol%、7mol%、7.3mol%、8mol%及びこれらの数値のうちの任意の2つの数値からなる範囲内の任意の数値であってもよい。
【0039】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、前記ZnOの含有量は、0.1~4mol%、好ましくは0.5~1.5mol%、具体的には、たとえば0.1mol%、0.14mol%、0.2mol%、0.25mol%、0.3mol%、0.4mol%、0.5mol%、0.6mol%、0.8mol%、0.9mol%、1mol%、1.2mol%、1.5mol%、2mol%、2.5mol%、3mol%、4mol%及びこれらの数値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意の数値であってもよい。ZnOは、ガラスの高温粘度(たとえば1500℃での粘度)を低下させることができ、気泡の解消に有利であり、また、軟化点以下では強度、硬度を向上させ、ガラスの耐薬品性を高め、ガラスの熱膨張係数を下げるという役割を有する。アルカリフリーガラス系に適量のZnOを添加すると、結晶化の抑制に寄与し、結晶化温度を低下させることができる。
【0040】
該アルミノケイ酸塩ガラス組成物の全モル量を基準に、酸化物換算で、前記REの含有量は、0.1~4mol%、好ましくは0.1~1.5mol%であり、前記REはイットリウム及びランタニド元素である。本発明の特定実施形態では、前記REは、Y、La、及びLuである。具体的には、REは、たとえば、0.1mol%、0.24mol%、0.28mol%、0.34mol%、0.4mol%、0.44mol%、0.8mol%、0.94mol%、0.96mol%、1.34mol%、1.4mol%、1.5mol%、2mol%、2.5mol%、3mol%、3.3mol%、3.5mol%、3.9mol%、4mol%及びこれらの数値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意の数値であってもよい。本発明のガラス用組成物では、希土類酸化物REは、ガラスの一部の性能を向上させる点では特有の能力を有し、たとえば、ガラスの曲げ強度、弾性率、歪点などの性能が希土類酸化物の添加に伴い大幅に向上し、それにより、ガラスの脆性が低下し、破断靭性が大幅に高まり、ガラスの高温粘度や高温体積抵抗率が低下でき、ガラスの工業的な量産、特に、ガラスの電気的溶融及び/又は電気的溶融促進に大きな利便性をもたらす。アルカリ土類金属、ZnOなどのネットワーク修飾体がガラスの組成に導入されると、過剰な酸素原子によりガラス構造中の架橋酸素結合が破断して非架橋酸素を生成し、これらの非架橋酸素の存在によってガラスの曲げ強度が顕著に低下する。REの添加によってガラスの内部構造が変わり、生成するSi-O-RE化学結合はガラス中の孤立した島状ネットワークユニットを改めて接続し、それにより、ガラスのネットワーク構造を改善し、ガラスの曲げ強度、弾性率、歪点、化学安定性を大幅に向上させ、高温体積抵抗率などの性能を低下させる。しかし、REをさらに増加すると、調整可能の非架橋酸素の数が減少するため、過量のREによるガラスの上記性能への作用が少ない。
【0041】
熱安定性、高温粘度及びガラス形成安定性を総合的に考慮すると、モル百分比率換算で、B/(B+SiO)<0.05である。
【0042】
熱安定性及び高温粘度を総合的に考慮すると、モル百分比率換算で、B/(MgO+CaO+SrO+BaO)<0.3である。
【0043】
ガラス形成安定性、熱安定性及び機械性能を総合的に考慮すると、モル百分比率換算で、(SrO+BaO)/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+Y+La+Lu)>0.3である。
【0044】
本発明のアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、前記アルミノケイ酸塩ガラス組成物は清澄剤をさらに含有し、各成分の全モル量を基準に、前記清澄剤の含有量は0.5mol%以下、好ましくは0.3mol%以下である。
【0045】
第2の態様によれば、本発明は、
前記アルミノケイ酸塩ガラス組成物に必要な原材料を混合した混合材料M1を準備し、M1にNHNOを加えて混合材料M2を得て、混合材料M2に対して溶融処理、アニーリング処理、及び機械加工をして、前記アルミノケイ酸塩ガラスを製造するステップを含み、
得られた前記アルミノケイ酸塩ガラス100gを基準に、前記NHNOの添加量は5~15gであるアルミノケイ酸塩ガラスの製造方法を提供する。
【0046】
本発明の方法では、好ましくは、前記方法は、機械加工処理により得られた製品に対して二次溶融薄化処理を行うステップをさらに含む。
【0047】
第3の態様によれば、本発明は、上記方法で製造されたアルミノケイ酸塩ガラスを提供する。
【0048】
好ましい場合、前記アルミノケイ酸塩ガラスでは、酸素イオン濃度Vは0.08mol/cm以上、好ましくは0.084mol/cm以上、さらに好ましくは0.086mol/cm以上である。
=[(2*NSi+3*NAl+3*N+NMg+NCa+NSr+NBa+NZn+3*NNH4+3*N+3*NLa+3*NLu)/(NSi+NAl+N+NMg+NCa+NSr+NBa+NZn+N+NLa+NLu)]/(m/ρ)
(ここで、得られた前記アルミノケイ酸塩ガラス100gを基準に、NSi、NAl、N、NMg、NCa、NSr、NBa、NZn、N、NLa、及びNLuは、それぞれ、混合材料M1中のSiO、Al、B、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y、La、及びLuの物質量を示し、NNH4は、M1に添加されたNHNOの物質量を示し、mは混合材料M2を溶融して得たアルミノケイ酸塩ガラスの質量を示し、単位がgであり、ρは得たアルミノケイ酸塩ガラスの密度を示し、単位がg/cmである。)
【0049】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスでは、粘度100ポアズに対応する温度T100は1680℃以上である。
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスの歪点Tstは740℃以上である。
【0050】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスの液相線温度Tは1240℃以下である。
【0051】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスでは、単体硫黄Sの形で表される硫黄元素の含有量は100ppm未満であり、さらに好ましくは、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスでは、単体硫黄Sの形で表される硫黄元素の含有量は50ppm未満である。
【0052】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラス中、Feの形で表される鉄酸化物の含有量は150ppm未満である。
【0053】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラス中、Crの形で表されるクロム酸化物の含有量は50ppm未満である。
【0054】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスの密度は2.75g/cm以下、より好ましくは2.65g/cm未満であり、50~350℃の熱膨張係数は、40×10-7/℃未満、より好ましくは39.5×10-7/℃未満であり、ヤング率は80GPaより高く、より好ましくは83GPaより高い。
【0055】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスでは、粘度100ポアズに対応する温度T100は1690~1800℃、より好ましくは1690~1710℃であり、粘度35000ポアズに対応する温度T35000は1250~1350℃、より好ましくは1265~1310℃であり、歪点Tstは740~765℃、より好ましくは750~765℃であり、液相線温度Tは1220℃未満である。
【0056】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスでは、波長308nmでの透過率は72%以上、より好ましくは74%以上であり、波長343nmでの透過率は84%以上、より好ましくは86%以上であり、波長550nmでの透過率は91%以上、より好ましくは92%以上である。
【0057】
好ましい場合、本発明のアルミノケイ酸塩ガラスでは、600℃/10minの条件での熱収縮率Yは10ppm未満、より好ましくは7ppm未満である。
【0058】
第4の態様によれば、本発明は、本発明の前記アルミノケイ酸塩ガラス組成物又はアルミノケイ酸塩ガラスの、ディスプレイデバイス及び/又は太陽電池の製造における使用、好ましくは、フラットディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブルディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又は表面パッケージガラス材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブル太陽電池のガラス基板材料、安全ガラス、防弾ガラス、スマートカーガラス、高度道路交通システム用表示画面、スマートウィンドウ、及びマートカードやチケット、ならびに高熱安定性、高紫外線透過率及び機械的安定性を必要とする他のガラス材料の製造における使用を提供する。
【0059】
実施例
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、特に断らない限り、使用される各材料は、市販品として入手でき、特に断らない限り、使用する方法は本分野の一般的な方法である。
【0060】
ASTM C-693を参照してガラス密度を測定し、単位がg/cmである。
ASTM E-228を参照して横型膨張計を用い、50~350℃のガラス熱膨張係数を測定し、単位が10-7/℃である。
ASTM C-623を参照してガラスヤング率を測定し、単位がGPaである。
ASTM C-965を参照して回転式高温粘度計を用い、ガラスの高温粘度-温度曲線を測定し、ここで、粘度100Pに対応する温度をT100とし、単位が℃であり;粘度Xポアズに対応する温度をTとし、単位が℃である。
ASTM C-829を参照して温度勾配炉方法を用い、ガラス液相線温度Tを測定し、単位が℃である。
ASTM C-336を参照してアニーリング点歪点テスターを用い、ガラス歪点Tstを測定し、単位が℃である。
島津UV-2600型紫外線-可視分光光度計を用い、ガラス透過率を測定し、ガラスサンプルの厚さは0.5mmであり、それぞれ308nm、343nm、550nmでの透過率を測定し、単位が%である。
JY2000型誘導結合分光計(ICP)を用い、ガラス中の鉄含有量をテストし、Feの形で表し、単位がppmである。
CS-9900型赤外線炭素・硫黄分析装置を用い、ガラス中の硫黄含有量をテストし、Sの形で表し、単位がppmである。
以下の熱処理方法(差分計算法)を用いて熱処理した熱収縮率を測定し、すなわち、ガラスを、25℃(測定初期長さ、Lと記する)から5℃/minの昇温速度で600℃に昇温し、600℃で10min保温し、その後、5℃/minの降温速度で25℃に降温すると、ガラス長さに一定量の収縮が発生し、さらにその長さを測定して、Lと記すれば、熱収縮率Yは、
として表される。
【0061】
実施例1~7
表1に示すように各成分を秤量して均一に混合し、混合材料を高ジルコニウムれんがるつぼ(ZrO>85wt%)に投入し、次に、1650℃の抵抗炉にて48時間加熱し、白金ロジウム合金(80wt%Pt+20wt%Rh)撹拌器を用いて等速で緩やかに撹拌した。溶融ガラスをステンレス製の金型に鋳込んで、所定のブロック状のガラス製品として成形し、次に、ガラス製品をアニーリング炉にて2時間アニーリングし、電源をオフにして25℃に炉冷した。ガラス製品を切断、研削、研磨し、次に、脱イオン水できれいに洗浄してベークし、厚さ0.5mmのガラス完成品を製造した。各ガラス完成品の各性能をそれぞれ測定し、結果を表1に示す。
【0062】
実施例8~15
混合材料成分(ガラス組成に対応する)、及び得られた製品の性能の測定結果が表2に示されるとおりである以外、実施例1の方法と同様であった。
【0063】
比較例1~7
混合材料成分(ガラス組成に対応する)、及び得られた製品の性能の測定結果が表3に示されるとおりである以外、実施例1の方法と同様であった。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
表1~2の実施例と表3の比較例のデータを比較したところ、本発明の方法は、高紫外線透過率、高歪点(高耐熱性)、高粘度を有するガラスを得る課題に対して顕著な効果を有し、本出願のガラス組成物及び低含有量の鉄、低含有量の硫黄を用いる上に、酸化剤を追加する方法によって製造された高粘度ガラスは、紫外線及び可視光透過率が高く、熱安定性が高く、ガラス形成安定性が高く、機械的強度が高いなどの利点を兼ね備えることが分かった。本発明の方法で製造されたガラスは、ディスプレイデバイス及び/又は太陽電池、特にフラットディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブルディスプレイ製品のガラス基板材料及び/又は表面パッケージガラス材料及び/又はスクリーン表面保護用ガラスフィルム材料、フレキシブル太陽電池のガラス基板材料、安全ガラス、防弾ガラス、スマートカーガラス、高度道路交通システム用表示画面、スマートウィンドウ、及びスマートカードやチケット、ならびに、及び高熱安定性、高紫外線透過率、及び機械的安定性を必要とするほかのガラス材料の製造における使用の分野に適用できる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれらに制限されない。本発明の技術的構想の範囲を逸脱することなく、本発明の技術案について、各技術的特徴を他の任意の適切な方式で組み合わせることを含む、さまざまな簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせも、本発明で開示された内容とみなすべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。
【国際調査報告】