IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーションの特許一覧

特表2022-505159骨髄由来サプレッサー細胞に対する標的化療法のための細胞外小胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】骨髄由来サプレッサー細胞に対する標的化療法のための細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220106BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220106BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220106BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61K31/519
A61P35/00
A61P37/04
A61K9/127
A61K47/42
A61K47/24
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C07K14/47
C12N5/10
C12N5/071
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521099
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019057043
(87)【国際公開番号】W WO2020082005
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/747,982
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャレゴ-ペレス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアルテ サンミゲール,シルビア
(72)【発明者】
【氏名】イギータ-カストロ,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】カーソン,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC26
4C076DD63H
4C076EE41H
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA24
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB261
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
治療用カーゴを装填したMDSC標的化細胞外小胞(EV)、ならびにそれらを作製するための組成物、システム、および方法が本明細書に開示される。MDSC標的化部分を含有する融合タンパク質などのMDSC標的化リガンドもまた本明細書に開示される。本開示の融合タンパク質を含有するEVもまた開示される。いくつかの実施形態では、EVは、また治療用カーゴを装填される。開示されたEVを産生するように操作されたEV産生細胞もまた開示される。また、開示されたEV産生細胞を、EVを産生するのに好適な条件下で培養することを含む、開示されたEVを作製するための方法もまた開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICAM-1と、エクソソームまたはリソソーム膜貫通タンパク質とを含む融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質を含む細胞外小胞。
【請求項3】
治療用カーゴをさらに含む、請求項2に記載の細胞外小胞。
【請求項4】
前記治療用カーゴがmiR146aを含む、請求項3に記載の細胞外小胞。
【請求項5】
前記治療用カーゴがイブルチニブを含む、請求項3または4に記載の細胞外小胞。
【請求項6】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含む細胞。
【請求項7】
治療用RNAをコードする核酸をさらに含む、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
細胞外小胞を産生する方法であって、請求項6または7に記載の細胞を、小胞分泌に好適な条件下で培養することと、前記細胞によって分泌された細胞外小胞を単離することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記細胞外小胞に治療薬を装填することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象におけるがんを治療する方法であって、治療有効量の請求項3~5のいずれか一項に記載の細胞外小胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記対象が循環骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を有する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月19日に出願された米国仮出願第62/747,982号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、2019年10月16日に作成された「321501-2360 Sequence Listing_ST25」と題されるASCII.txtファイルとして電子形態で出願される配列表を含む。配列表の内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、がん、創傷治癒、および組織修復を含むいくつかの生理学的および病理学的プロセスにおいて根本的な役割を果たす。MDSCは、例えば、宿主の免疫系および/または抗がん療法から腫瘍細胞を遮蔽することによって、ならびに腫瘍細胞の転移/拡散を促進することによって、腫瘍/がんの進行を可能にする。したがって、MDSCを選択的に標的とし、それらの活性を調節するために、治療アプローチを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MDSCを効果的に標的とし、治療用カーゴを送達するためのナノキャリアシステムが本明細書に開示される。これらのナノキャリアは、本質的に、自己(すなわち、同じ患者の細胞に由来する)または同種異系(すなわち、ドナーの細胞に由来する)であり得るデザイナー細胞外小胞(EV)に基づく。細胞は、自然にEVを産生する。しかし、免疫応答を回避するために、抗原提示細胞(例えば樹状細胞)またはマクロファージなどの免疫系由来の細胞を使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のICAMで装飾されたEVを使用して、がんおよび自己免疫疾患などの多くの異なる状態で骨髄細胞を標的にすることができる。いくつかの実施形態では、装飾は、ICAM発現ベクターを「ドナー」細胞または組織にトランスフェクトすることによって達成される。あるいは、本質的に高レベルのICAM発現を有するドナー細胞および組織を使用することができる。
【0006】
したがって、デザイナーEVは、異なるトランスフェクション技術(例えば、バルクエレクトロポレーション、ナノエレクトロポレーション、組織ナノトランスフェクション、ウイルストランスフェクション、ソノポレーション、ナノ粒子、微粒子、化学トランスフェクション)を使用して、細胞をインビトロで、または組織をインビボでトランスフェクションした後に得ることができる。治療用カーゴの装填および/またはMDSC標的化リガンドの装飾は、細胞を、例えば、ICAM-1をコードするプラスミドDNAでトランスフェクトすることによって達成することができる。ICAM-1ベースの標的化により、数分以内にMDSCへの選択的EV/カーゴ送達が可能になる。
【0007】
収集されると、これらのEVは、さらに、エレクトロポレーション(より多くのカーゴを添加するため)、(診断のための)造影剤を含むように生化学的もしくは化学的機能化、またはタンパク質/元素のさらなる標的化もしくは追跡により修飾され得る。EVはまた、さらに、カーゴをさらに修飾するように(例えば、遺伝子カーゴに加えて薬理学的薬剤を添加するように)濃度勾配を介してEVに入ることができる脂質透過性薬物/化学物質で修飾することができる。
【0008】
治療用カーゴは、治療される状態に応じて、骨髄抑制剤活性を増強するべきか、または抑制すべきかに応じて変えることができる。例えば、ICAM-1で装飾されたEVにmiR146aを装填することは、例えば、腫瘍ニッチ内のMDSC活性に対抗するために使用され得る。核酸ベースの治療用カーゴに加えて、ICAM-1で装飾されたEVは、膜透過性薬理化合物(例えば、イブルチニブ)を装填されることができ、これは濃度勾配を介してEV中に拡散することができる。いくつかの実施形態では、カーゴは、画像診断のための造影剤などのイメージング剤である。
【0009】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】MDSCを標的にするICAM-1で装飾されたEVの産生の概略図である。EVは、ICAM-1をコードするプラスミドおよび治療用カーゴ(核酸ベースの治療薬用)を自己細胞または同種異系細胞(インビトロまたはインビボ)に送達することによって作製される。次いで、細胞内機構は、ICAM-1で装飾され、目的の核酸を装填されたデザイナーEVの産生を可能にするようにこれらのプラスミドを処理する。
図2】薬物治療用カーゴ、例えば、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)を阻害する膜透過性薬理化合物であるイブルチニブを装填した表面装飾されたEVの概略図である。
図3】ICAM-1で装飾されたEVを使用して、腫瘍微小環境内のMDSCおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的にして、それらの免疫抑制活性に対抗し、腫瘍の治療を容易にすることができることを例示する。
図4A-B】15分間のインキュベーション後に、ICAM-1で装飾されたEVがMDSCまたはマクロファージ(例えば、TAM)によって優先的に内部移行されたが、がん細胞(A549)ではされなかったことを示す(EVを緑色蛍光色素で標識した)。図4Bは、装飾されたEVにおけるmiR-146aの装填を示す。Scr-CTは、スクランブルプラスミドで細胞をトランスフェクトすることによって作製された対照(CT)EVである。
図5】EVベ-スの治療が腫瘍増殖を妨げることを示す棒グラフである。
図6A-B】EVベースの治療が腫瘍の免疫細胞構成に影響を与え(図6A)、MDSCを低減する(図6B)ことを示す棒グラフである。
図7】操作されたEVを確認する実験を例示する。
図8A-B】対照EVと比較して、装填されたEV中に見られるmiR146aのレベルが約400倍増加し(図8A)、GLUT-1のレベルが約3000倍増加した(図8B)ことを示す。
図8C】EVがICAM-1で装飾されたことを示すウェスタンブロットである。
図9A】ICAMで装飾されたEVがMDSCを標的にすることを示す。MDCSとがん細胞を共培養し、72時間の間にEEVで処理した。
図9B】MDSCが炎症誘発性表現型に切り替わったことを示す。
図10】操作されたEVが乳がん(PyMT)のマウスモデルにおける腫瘍進行を低減することを示す。
図11A-B】操作されたEVが免疫調節活性を呈することを示す。操作されたEVを注入された腫瘍は、ベースラインと比較して単球MDSCが少なかった(図11)が、マクロファージに変化はなかった(図11B)。
図12A-B】操作されたEVがT細胞浸潤を増加させたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示がより詳細に説明される前に、本開示は、記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、当然ながら変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0012】
値の範囲が提供される場合、文脈が別段明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値、その記載の範囲内の任意の他の記載の値または介在値が本開示の範囲内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてよく、記載の範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本開示内にも包含される。記載の範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の片方または両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0013】
特に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料も本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料はこれから説明される。
【0014】
本明細書に引用されたすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用されるのと関連した方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。いずれかの刊行物の引用は、本出願日前のその開示のためであり、本開示が先行開示によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されないものとする。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0015】
本開示を読むと当業者には明らかになるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはそれらと組み合わされ得る別々の成分および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙されたイベントの順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0016】
本開示の実施形態は、別途示されない限り、当技術分野内の化学、生物学などの技術を採用する。
【0017】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で開示および特許請求されるプローブの実行および使用する方法についての完全な開示および説明を提供するように提示される。数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保する努力がなされてきたが、ある程度の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い。標準温度および圧力は、20℃および1気圧と定義される。
【0018】
本開示の実施形態が詳細に記載される前に、別段の指示がない限り、本開示は、特定の材料、試薬、反応材料、製造プロセスなどに限定されるものではなく、したがって変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定することを意図するものではないことも理解されたい。また、本開示において、ステップが論理的に可能な場合、異なる順序で実行され得ることも可能である。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の参照物を含むことに留意されたい。
【0020】
治療用カーゴを装填したMDSC標的化細胞外小胞(EV)、ならびにそれらを作製するための組成物、システム、および方法が開示される。MDSC標的化部分を含有する融合タンパク質のようなMDSC標的化リガンドもまた本明細書に開示される。本開示の融合タンパク質を含有するEVもまた開示される。いくつかの実施形態では、EVはまた、治療用カーゴを装填される。また、開示されるEVを産生するように操作されたEV産生細胞も開示される。また、開示されたEV産生細胞を、EVを産生するのに好適な条件下で培養することを含む、開示されたEVを作製するための方法も開示する。方法は、細胞からEVを精製することをさらに含むことができる。
【0021】
本開示がより詳細に記載される前に、本開示は、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、当然ながら変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0022】
値の範囲が提供される場合、文脈が別段明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値、その記載の範囲内の任意の他の記載の値または介在値が本開示の範囲内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてよく、記載の範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本開示内にも包含される。記載の範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の片方または両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0023】
特に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料も本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料はこれから説明される。
【0024】
本明細書に引用されたすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用されるのと関連した方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。いずれかの刊行物の引用は、本出願日前のその開示のためであり、本開示が先行開示によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されないものとする。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0025】
本開示を読むと当業者には明らかになるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはそれらと組み合わされ得る別々の成分および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙されたイベントの順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0026】
本開示の実施形態は、別途示されない限り、当技術分野内の化学、生物学などの技術を採用する。
【0027】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で開示および特許請求されるプローブの実行および使用する方法についての完全な開示および説明を提供するように提示される。数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保する努力がなされてきたが、ある程度の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い。標準温度および圧力は、20℃および1気圧と定義される。
【0028】
本開示の実施形態が詳細に記載される前に、別段の指示がない限り、本開示は、特定の材料、試薬、反応材料、製造プロセスなどに限定されるものではなく、したがって変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定することを意図するものではないことも理解されたい。また、本開示において、ステップが論理的に可能な場合、異なる順序で実行され得ることも可能である。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の参照物を含むことに留意されたい。
【0030】
細胞外ビヒクル(EV)
開示されるEVは、いくつかの実施形態では、細胞によって分泌され得るいずれの小胞であり得る。細胞は、アポトーシス体(1~5μm)、微少胞(100~1000nmのサイズ)、およびエクソソーム(50~150nm)として知られるエンドソーム起源の小胞を含む広範囲の直径および機能を有する細胞外小胞(EV)を分泌する。
【0031】
本開示の細胞外小胞は、当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。例えば、本開示の細胞外小胞は、細胞標的化リガンドをコードするmRNAを真核細胞内で発現させることによって調製され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、治療用カーゴをコードするmRNAも発現する。細胞標的化リガンドおよび治療用カーゴのためのmRNAは、開示されるEVを産生するために好適な産生細胞にトランスフェクトされるベクターから発現され得る。細胞標的化リガンドおよび治療用カーゴのためのmRNAは、同じベクターから発現させてもよく(例えば、ベクターが、細胞標的化リガンドおよび別個のプロモーターからの治療用カーゴのためのmRNAを発現する場合)、または細胞標的化リガンドおよび治療用カーゴのためのmRNAは、別個のベクターから発現させてもよい。細胞標的化リガンドおよび治療用カーゴのためのmRNAを発現させるための1つ以上のベクターは、開示される細胞外小胞を調製するように設計されたキットにパッケージ化され得る。
【0032】
開示された標的化リガンドを含有するEVを含む組成物も開示される。いくつかの実施形態では、EVは、開示された治療用カーゴを装填される。開示されたEVを分泌するように操作されたEV産生細胞もまた開示される。
【0033】
EV、例えばエクソソームは、Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞(DC)、およびほとんどの細胞などの免疫細胞を含む多くの異なる種類の細胞によって産生される。EVはまた、例えば、神経膠腫細胞、血小板、網状赤血球、神経細胞、腸上皮細胞、および腫瘍細胞によって産生される。開示される組成物および方法で使用されるEVは、上記で特定された細胞を含む任意の好適な細胞に由来し得る。量産に好適なEV産生細胞の非限定的な例としては、樹状細胞(例えば、未成熟樹状細胞)、ヒト胚腎臓293(HEK)細胞、293T細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、およびヒトESC由来間葉系幹細胞が挙げられる。EVはまた、エクソソームが送達される患者における免疫応答の発生を低減または回避するように、自己患者由来の異種ハプロタイプが一致した幹細胞または異種幹細胞から得ることもできる。任意のEV産生細胞がこの目的に使用できる。
【0034】
また、開示されたEVを分泌するように操作された開示されたEV産生細胞を培養することを含む治療用カーゴを装填した開示されたEVを作製する方法も開示される。本方法は、細胞からEVを精製することをさらに含むことができる。
【0035】
細胞から産生されたEVは、任意の好適な方法によって培地から収集することができる。一般的には、EVの調製は、遠心分離、濾過、またはこれらの方法の組み合わせによって、細胞培養または組織上清から調製され得る。例えば、EVは、差動遠心分離、すなわち、より大きな粒子を小球形にするための低速(<20000g)遠心分離、続いてEVを小球形にするための高速(>100000g)遠心分離、適切なフィルターによるサイズ濾過、勾配超遠心分離(例えば、スクロース勾配によって)、またはこれらの方法の組み合わせによって調製することができる。
【0036】
MDSC標的化リガンド
開示されるEVは、EVの表面で、MDSCの表面で発現される細胞表面部分に結合する標的化部分を発現することによってMDSCを標的とすることができる。好適な標的化部分の例は、標的化部分がエクソソームの表面で発現され得る限り、短いペプチド、scFv、および完全なタンパク質がある。ペプチド標的化部分は、一般的には、100アミノ酸長未満、例えば50アミノ酸長未満、30アミノ酸長未満、または10、5、または3アミノ酸の最小長であり得る。
【0037】
例えば、いくつかの実施形態では、細胞標的化リガンドは、ICAM-1である。ICAM-1ベースの標的化により、数分以内のMDSCへの選択的EV/カーゴ送達が可能になる。いくつかの実施形態において、標的化リガンドは、ICAM-1であり、アミノ酸配列:MASTRAKPTLPLLLALVTVVIPGPGDAQVSIHPREAFLPQGGSVQVNCSSSCKEDLSLGLETQWLKDELESGPNWKLFELSEIGEDSSPLCFENCGTVQSSASATITVYSFPESVELRPLPAWQQVGKDLTLRCHVDGGAPRTQLSAVLLRGEEILSRQPVGGHPKDPKEITFTVLASRGDHGANFSCRTELDLRPQGLALFSNVSEARSLRTFDLPATIPKLDTPDLLEVGTQQKLFCSLEGLFPASEARIYLELGGQMPTQESTNSSDSVSATALVEVTEEFDRTLPLRCVLELADQILETQRTLTVYNFSAPVLTLSQLEVSEGSQVTVKCEAHSGSKVVLLSGVEPRPPTPQVQFTLNASSEDHKRSFFCSAALEVAGKFLFKNQTLELHVLYGPRLDETDCLGNWTWQEGSQQTLKCQAWGNPSPKMTCRRKADGALLPIGVVKSVKQEMNGTYVCHAFSSHGNVTRNVYLTVLYHSQNNWTIIILVPVLLVIVGLVMAASYVYNRQRKIRIYKLQKAQEEAIKLKGQAPPP(配列番号1)、またはMDSC上の分子を標的にすることができる配列番号1と少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する、その変異体および/もしくはフラグメントを有する。例えば、標的化リガンドは、アミノ酸配列LYQAKRFKV(配列番号2)に結合することができる配列番号1のフラグメントおよび/または変異体であり得、これは、いくつかの実施形態では、ICAM-1結合部位を定義することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、標的化リガンドは、配列番号1またはその変異体の少なくとも100、110、120、130、140、141、142、143、144、145、156、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、420、430、440、441、442、443、444、445、456、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、もしくは537個の連続したアミノ酸を含むICAM-1のフラグメントである。
【0039】
ICAM-1における結合部位は、例えば、Diamond MS,et al.Cell 1991 65:961-971、ならびにHermand P,et al.J Biol Chem 2000 275(34):26002-26010に記載されており、これらの結合ドメインの教示について参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、細胞標的化リガンドは、それをエクソソームまたはリソソーム膜貫通タンパク質との融合タンパク質として発現させることによってEVの表面で発現させることができる。
【0041】
治療用カーゴ
開示される細胞外小胞は、治療剤をさらに装填されてもよく、細胞外小胞は、標的細胞に薬剤を送達する。好適な治療剤としては、治療薬(例えば、低分子薬)、治療用タンパク質、および治療用核酸(例えば、治療用RNA)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、開示される細胞外小胞は、治療用RNA(本明細書では「カーゴRNA」とも称される)を含む。
【0042】
例えば、いくつかの実施形態では、細胞標的化モチーフを含有する融合タンパク質は、細胞外小胞が細胞から分泌される前に、カーゴRNAを細胞外小胞にパッケージするために、カーゴRNA内に存在する1つ以上のRNAモチーフに結合するRNAドメイン(例えば、融合タンパク質のサイトゾルC末端に)も含む。したがって、融合タンパク質は、「細胞標的化タンパク質」および「パッケージングタンパク質」の両方として機能し得る。いくつかの実施形態では、パッケージングタンパク質は、細胞外小胞装填タンパク質または「EV装填タンパク質」と称され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、カーゴRNAは、miRNA、shRNA、mRNA、ncRNA、sgRNA、またはこれらの任意の組み合わせである。例えば、いくつかの実施形態では、抗炎症剤は、マイクロRNA146aである。他のmiRNAは、解糖代謝に好都合なM1に関与する主要分子(例えば、mRr9、miR127およびmiR155)の発現を制御することが報告されている。
【0044】
開示される細胞外小胞のカーゴRNAは、任意の好適な長さであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、カーゴRNAは、少なくとも約10nt、20nt、30nt、40nt、50nt、100nt、200nt、500nt、1000nt、2000nt、5000nt以上のヌクレオチド長を有し得る。他の実施形態では、カーゴRNAは、約5000nt、2000nt、1000nt、500nt、200nt、100nt、50nt、40nt、30nt、20nt、または10nt以下のヌクレオチド長を有し得る。さらにさらなる実施形態では、カーゴRNAは、これらの想定されるヌクレオチド長の範囲内のヌクレオチド長、例えば、約10nt~5000ntの範囲、または他の範囲のヌクレオチド長を有し得る。開示される細胞外小胞のカーゴRNAは、例えば、カーゴRNAがmRNAまたは別の比較的長いRNAを含む場合、比較的長くてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、治療用カーゴは、細胞によって分泌された後にEVに装填される膜透過性薬理化合物である。いくつかの実施形態では、カーゴは、標的化腫瘍細胞のアポトーシスまたはピロトーシスを引き起こし得る抗がん剤である。いくつかの実施形態では、抗がん剤は、低分子薬である。例えば、いくつかの実施形態では、カーゴはイブルチニブである。本明細書に記載される腫瘍標的化ペプチドに付着する抗がん剤または抗悪性腫瘍薬のさらなる例としては、アクラルビシン、アルトレタミン、アミノプテリン、アムルビシン、アザシチジン、アザチオプリン、ベロテカン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルモファー、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、デシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フロキサリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ネダプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピラルビシン、ピキサントロン、プロカルバジン、ピリメタミン ラルチトレキセド、ルビテカン、サトラプラチン、ストレプトゾシン、チオグアニン、トリプラチンテトラニトラート、テニポシド、トポテカン、テガフール、トリメトプリム、ウラムスチン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、およびゾルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
EVへのスモールRNAの装填を達成するために、トランスフェクションベースのアプローチが提案されている。他の報告は、細胞内のスモールRNAのベクター誘導発現を使用して、EVへのスモールRNA装填を達成することができることを示している。あるいは、EVドナー細胞は、スモールRNAで直接トランスフェクトされ得る。化学療法薬とともに腫瘍細胞のインキュベーションもまた、薬物をEVにパッケージするための別の方法である。薬物装填EVの形成を刺激するために、細胞を紫外線照射してアポトーシスを誘導する。膜融合性リポソームなどの代替アプローチも、EVへの薬物装填をもたらす。
【0047】
いくつかの実施形態では、治療用カーゴは、濃度勾配を介した拡散によってEVに装填される。
【0048】
方法
開示されるEVを使用するための方法も本明細書で企図される。例えば、開示の細胞外小胞は、開示の治療用カーゴを骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)に送達するために使用することができ、その方法は、標的細胞を開示のEVと接触させることを含む。
【0049】
MDSCは、がん、創傷治癒、および組織修復を含むいくつかの生理学的および病理学的プロセスにおいて根本的な役割を果たす。開示されるEVは、MDSCに関わる疾患または障害を治療するための医薬組成物の一部として製剤化され得、医薬組成物は、疾患または障害を治療するために、カーゴを標的MDSCに送達するために医薬組成物を必要とする患者に投与され得る。本明細書にも開示される前述は、対象においてMDSCに関わる疾患を治療する方法であり、この方法は、治療有効量の本明細書に開示されるカーゴ装填MDSC標的化EVを含有する組成物を対象に投与することを伴う。いくつかの実施形態では、対象は、がんを有する。いくつかの実施形態では、対象は、循環型MDSCを検出できる。最近の研究では、MDSCが、細菌感染症、ウイルス感染症および寄生虫感染症、外傷性ストレス、敗血症、急性炎症、移植片対宿主病、ならびに糖尿病、脳脊髄炎および大腸炎などの異なる自己免疫疾患などの多くの病的状態に関与し得ることが実証されている。
【0050】
開示されるEVは、任意の好適な手段によって対象に投与されることができる。ヒトまたは動物の対象への投与は、非経口投与、筋肉内投与、脳内投与、血管内投与、皮下投与、または経皮投与から選択され得る。通常、送達方法は、注射によって行われる。好ましくは、注射は、筋肉内または血管内(例えば、静脈内)である。医師は、各特定の患者に対して必要な投与経路を決定することができる。
【0051】
EVは、好ましくは組成物として送達される。本組成物は、非経口、筋肉内、脳内、血管内(静脈内を含む)、皮下、または経皮投与用に製剤化することができる。非経口投与用の組成物は、緩衝液、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有し得る無菌水溶液を含んでもよい。EVは、薬学的に許容される担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、防腐剤、ならびにEVに加えて他の薬学的に許容される担体または賦形剤などを含み得る医薬組成物に製剤化され得る。
【0052】
非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内、または静脈内などの注射によって特徴付けられる。非経口投与のための調製物としては、注射用に準備された無菌溶液、皮下注射用錠剤などの使用直前に溶媒と組み合わせるよう準備された凍結乾燥粉末などの無菌乾燥可溶性生成物、注射できるよう準備された無菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わせるよう準備された無菌乾燥不溶性生成物、および無菌エマルジョンが挙げられる。溶液は、水性または非水性のいずれであってもよい。
【0053】
静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール、ならびにそれらの混合物を含有する溶液が挙げられる。非経口調製物で使用される薬学的に許容される担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁化剤および分散化剤、乳化剤、隔離剤またはキレート化剤、ならびに他の薬学的に許容される物質が挙げられる。水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射、リンガー注射、等張デキストロース注射、滅菌水注射、デキストロース注射、および乳酸リンガー注射が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、およびピーナッツ油が挙げられる。静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤は、複数回投与容器にパッケージされた非経口調製物に添加する必要があり、これらとしては、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張剤としては、塩化ナトリウムおよびデキストロースが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、硫酸水素ナトリウムが挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤および分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0054】
乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの隔離剤またはキレート剤としては、EDTAが挙げられる。また、医薬担体としては、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびにpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸が挙げられる。薬学的に活性な化合物の濃度は、注射が所望の薬理効果を生じさせるのに有効量を提供するように調節される。正確な用量は、当該技術分野で知られているように、患者または動物の年齢、体重、および状態に依存する。
【0055】
単位用量の非経口調製物は、アンプル、バイアル、または針を有するシリンジ内にパッケージされ得る。非経口投与のためのすべての調製物は、当技術分野で知られているように、また実行されているように、無菌性であるべきである。
【0056】
治療有効量の組成物が投与される。用量は、様々なパラメータに従って、特に、治療される患者の状態の重症度、年齢、および体重、投与経路、ならびに必要なレジメンに従って決定され得る。医師は、いかなる特定の患者のための必要な投与経路および用量を決定することができる。最適な投与量は、個々の構築物の相対的効力に応じて変わることがあり、一般に、インビトロおよびインビボ動物モデルで有効であることが明らかになったEC50に基づいて推定することができる。一般に、投与量は、体重1kg当たり0.01mg~100mgである。一般的な1日用量は、具体的な構築物の効力、治療する対象の年齢、体重および状態、疾患の重症度、ならびに投与頻度および経路に応じて、体重1kg当たり約0.1mg~50mg、好ましくは体重1kg当たり約0.1mg~10mgである。異なる用量の構築物は、投与が筋肉内注射または全身(静脈内または皮下)注射によるかに応じて投与され得る。
【0057】
好ましくは、単回筋肉内注射の用量は、約5~20μgの範囲である。好ましくは、単回または複数回の全身注射の用量は、体重1kg当たり10~100mgの範囲である。
【0058】
構築物クリアランス(および任意の標的分子の分解)のために、患者は、繰り返し、例えば、1日に、1週間に、1ヵ月に、または1年に1回またはそれ以上治療されなければならない場合がある。当業者であれば、体液または組織中の測定された滞留時間および構築物の濃度に基づいて、投薬の繰り返し速度を容易に推定することができる。治療の成功後、患者に維持療法を受けることが望ましい場合があり、この構築物は、体重1kg当たり0.01mg~100mgの範囲の維持量で、1日1回以上~20年に1回投与される。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な改変を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な改変を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【実施例
【0061】
実施例1:
DCを、miR146aのためのプラスミドでナノトランスフェクトした。EVを、ExoQuickを使用して培地から単離した。インビトロ有効性を評価するために、インビトロ単培養物を、がん細胞ではなくMDSCまたはマクロファージとともに使用した(A549)。細胞をカーゴEVで処理した。図4Aは、15分間のインキュベーション後に、ICAM-1で装飾されたEVがMDSCまたはマクロファージ(例えば、TAM)によって優先的に内部移行されたが、がん細胞(A549)ではされなかったことを示す(EVを緑色蛍光色素で標識した)。miR146aのrq-PCRを行った。図4Bは、装飾されたEVにおけるmiR-146aの装填を示す。Scr-CTは、スクランブルプラスミドで細胞をトランスフェクトすることによって作製された対照(CT)EVである。+
【0062】
実施例2:
骨髄由来サプレッサー細胞に対する標的療法のためのデザイナーEVは、腫瘍増殖を妨げる(図5)。図6Aおよび6Bに示すように、EVベースの治療は、CD4およびCD8細胞を増加させ、MDSCを低減させることによって、腫瘍の免疫細胞構成に影響を与える(図6B)。
【0063】
実施例3:
腫瘍環境の免疫調節を促進するためにTNTによって生成されたEVの直接注射。EVが実際に腫瘍進行の減少に関与していることを示すために、ナノ電気泳動を使用してEVをインビトロで生成し、次いで「操作されたEV」と称されるmiR146a、GLUT-1、およびICAM-1を装填した(図7)。操作されたEVは、皮膚モデルとして胚線維芽細胞から産生された。
【0064】
操作されたEVに目的のカーゴを装填したとき、対照EVと比較して、装填されたEV中に見られるmiR146aのレベルは、約400倍増加し、GLUT-1のレベルは約3000倍増加した(図8Aおよび図8B)。図8Cは、EVがICAM-1で装飾されたことを示すウェスタンブロットである。
【0065】
EEVがMDSCを標的とするかどうかを試験するために、MDCSおよびがん細胞を共培養し、72時間の間に操作されたEVで処理した。EVが装飾されていないとき、それらはMDSCおよび腫瘍細胞の両方によって採取された。しかし、装飾された操作されたEVは、腫瘍細胞ではなくMDSCを選択的に標的とした(図9A)。加えて、MDSCは炎症誘発性表現型に切り替えた:炎症誘発性マーカーのレベルの増加、ならびに抗炎症または腫瘍保護マーカーのレベルの低下があった(図9B)。
【0066】
機能操作されたEVを、乳がん(PyMT)のマウスモデルの腫瘍に直接注入し、処置動物において腫瘍進行を低減させた(図10)。図11Aおよび図11Bに示すように、操作されたEVを注入した腫瘍は、ベースラインと比較して単球MDSCが少なかった(図11A)。これらの結果は、操作されたEVを使用して、腫瘍における炎症誘発性骨髄細胞の割合を増加させることができることを示唆する。
【0067】
最終的に、操作されたEVの注入により、対照と比較して細胞傷害性T細胞による浸潤の増加が明らかに促進された(図12Aおよび12B)。まとめると、これらの結果から、EVが注入されると腫瘍がより「熱く」またはより炎症誘発性になりやすくなることが認められる。
【0068】
特に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書で引用した刊行物およびそれらに引用されている材料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0069】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または日常的な実験だけを使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲によって包含されるよう意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A-B】
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
【配列表】
2022505159000001.app
【国際調査報告】