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特表2022-505184イブジラストを用いて眼疾患/障害または損傷を治療する方法
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  • 特表-イブジラストを用いて眼疾患/障害または損傷を治療する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】イブジラストを用いて眼疾患/障害または損傷を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20220106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P27/02
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521130
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 US2019056948
(87)【国際公開番号】W WO2020081941
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/748,148
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.Span
(71)【出願人】
【識別番号】516020271
【氏名又は名称】メディシノバ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MediciNova, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】松田 和子
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA38
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA33
(57)【要約】
本開示は、イブジラストを使用して、ヒト患者における進行型多発性硬化症などの神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する、眼疾患/障害または損傷を治療する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法であって、前記ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記眼疾患/障害または損傷が、黄斑損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経変性疾患/障害が、進行型多発性硬化症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
進行型多発性硬化症に関連する黄斑体積の損失の減少を必要とするヒト患者において、それを行う方法であって、前記ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
【請求項5】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の前記投与が、前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与なしと比較して、前記ヒト患者における黄斑体積の損失を減少させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記進行型多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症を超えて進行している、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記進行型多発性硬化症が、一次性進行型多発性硬化症である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一次性進行型多発性硬化症が、時折の停滞および一時的なわずかな改善が認められるが、別個の再発ではない、発症からの疾患進行を特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記進行型多発性硬化症が、二次性進行型多発性硬化症である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記二次性進行型多発性硬化症が、初期再発寛解過程として特徴付けられ、その後に進行が続き、時折の再発、軽度の寛解、および停滞を伴うかまたは伴わないことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約12、24、36、48、60、72、84、または96週間投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、経口投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、錠剤、カプセル、またはマイクロビーズの投与剤形で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、液体投与剤形で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、徐放性製剤として製剤化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約0.1mg/日~約
4,000mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約0.1mg/日~約720mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約30mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約30mg/日~約200mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約60mg/日~約600mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約60mg/日~約100mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約100mg/日~約480mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約30mg/日、約60mg/日、約80mg/日、約90mg/日、約100mg/日、約120mg/日、約150mg/日、約180mg/日、約210mg/日、約240mg/日、約270mg/日、約300mg/日、約360mg/日、約400mg/日、約440mg/日、約480mg/日、約520mg/日、約580mg/日、約600mg/日、約620mg/日、約640mg/日、約680mg/日、または約720mg/日の量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約60mg/日、約80mg/日、または約100mg/日の量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1日に投与されるイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の前記量が、1つ、2つ、または3つの分量に分割される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年10月19日に出願された米国仮特許出願第62/748,148号の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援の陳述
本発明は、アメリカ合衆国保健福祉省(Department of Health and Human Services)の機関である国立衛生研究所(National Institutes of Health)との共同研究開発契約の履行において作り出された。米国政府は、本発明における特定の権利を有する。
【0003】
小分子イブジラスト(3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリジン)は、マクロファージ阻害因子(MIF)の阻害剤(Cho et al.,PNAS-USA,2010 June 107:11313-8)であり、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)3A、4、10A1および11A1の選択的阻害剤(Gibson et al.,Eur.J.Pharmacol.,538:39-42,2006)であり、Toll様受容体-4(TLR4)拮抗活性(Yang et al.,Cell Death and Disease(2016)7,e2234;doi:10.1038/cddis.2016.140)を有する。イブジラストは、CNS(Sanftner et al.,Xenobiotica,2009 39:964-977)に良好に分布し、臨床的に関係する血漿濃度またはCNS濃度において、イブジラストはマクロファージ遊走阻害因子(MIF)および二次的に、PDE 3、4、10および11を選択的に阻害する。イブジラストはまた、ロイコトリエンD4拮抗薬、抗炎症薬、PAF拮抗薬、および血管拡張薬として作用する(Thompson Current Drug Reports)。イブジラストは、推定上グリア細胞の活性化を抑制することによって、哺乳類の中枢神経系に神経保護役割を果たすと考えられている(Mizuno et al.,Neuropharmacology 46:404-411,2004)。
【0004】
イブジラストは、虚血性脳卒中または気管支喘息に関連する症状を軽減するために日本で広く使用されてきた。最近の臨床試験では、中枢神経系の炎症性疾患である多発性硬化症(MS)の治療におけるその使用が検討されている(News.Medical.Net;Pharmaceutical News,2 Aug.2005)。本公報において開示されているように、この臨床試験は「再発寛解型MS」を治療することを期待されていた、しかしながら、進行型多発性硬化症に関する記述はない。米国特許第6,395,747号において、イブジラストは、多発性硬化症の治療として開示されており、これは一般的に、進行型多発性硬化症ではなく、再発寛解型多発性硬化症を意味すると理解されている。米国特許出願公開第2006/0160843号は、断続的および短期的な痛みの治療のためのイブジラストを開示しているが、これは進行性神経変性疾患に関係する痛みではない。しかしながら、米国特許第9,314,452号は、イブジラストを、進行性神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症の治療として、開示している。同様に、米国特許第8,138,201号は、一次性進行型多発性硬化症および/または二次性進行型多発性硬化症の治療としてのイブジラストを開示している。
【0005】
進行型多発性硬化症に関連する黄斑損傷の治療のためのイブジラストの使用は、これまでほとんど調査されないままであった。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、眼疾患/障害または損傷は、黄斑損傷である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害は、進行型多発性硬化症である。
【0007】
別の態様では、進行型多発性硬化症に関連する黄斑体積の損失の減少を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与は、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与なしと比較して、ヒト患者における黄斑体積の損失を減少させる。
【0008】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症を超えて進行している。いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症は、一次性進行型多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、一次性進行型多発性硬化症は、時折の停滞および一時的なわずかな改善が認められるが、別個の再発ではない、発症からの疾患進行を特徴とする。
【0009】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症は、二次性進行型多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、二次性進行型多発性硬化症は、初期再発寛解過程として特徴付けられ、その後に進行が続き、時折の再発、軽度の寛解、および停滞を伴うかまたは伴わない。
【0010】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約12、24、36、48、60、72、84、または96週間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約12、24、36、48、60、72、84、または96週間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、経口投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、錠剤、カプセル、またはマイクロビーズの投与剤形で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、液体投与剤形で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、徐放性製剤として製剤化される。
【0012】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約0.1mg/日~約4,000mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約0.1mg/日~約720mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも約30mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30mg/日~約200mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg/日~約600mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg/日~約100mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約100mg/日~約480mg/日の量で投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30mg/日、約60mg/日、約80mg/日、約90mg/日、約100mg/日、約120mg/日、約150mg/日、約180mg/日、約210mg/日、約240mg/日、約270mg/日、約300mg/日、約360mg/日、約400mg/日、約440mg/日、約480mg/日、約520mg/日、約580mg/日、約600mg/日、約620mg/日、約640mg/日、約680mg/日、または約720mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg/日、約80mg/日、または約100mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、1日に投与されるイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の量は、1つ、2つ、または3つの分量に分割される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研究デザインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、進行型多発性硬化症などであるがこれに限定されない神経変性疾患/障害、または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷の治療または軽減に関する。いくつかの実施形態では、進行型の多発性硬化症は、再発/寛解型多発性硬化症を除外している。開示された技術は、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷を有するヒト患者のための、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0016】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、眼疾患/障害または損傷は、黄斑損傷である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害は、進行型多発性硬化症である。
【0017】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害に関連する眼疾患/障害または損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0018】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する網膜損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症に関連する眼疾患/障害または損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症に関連する網膜損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症に関連する黄斑損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0022】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症に関連する黄斑体積の損失の減少を必要とするヒト患者において、それを行う方法が本明細書に提供され、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与は、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与なしと比較して、ヒト患者における黄斑体積の損失を減少させる。
【0023】
本開示の実施は、別途示されていない限り、当業分野の化学、生化学、および薬理学の従来的な方法を採用する。こうした技術は、文献内で完全に説明されている。例えば、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.、current addition)、Morrison and Boyd、Organic Chemistry(Allyn and Bacon,Inc.、current addition)、J.March,Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill、current addition)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro、Ed.、20th Ed.、FDAオレンジブック(FDA’s Orange Book)、Goodman&Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、11th Ed.、2005、The Merck Manual、18th edition、2007、およびThe Merck Manual of Medical Information 2003を参照のこと。
【0024】
インターネット記事、FDAオレンジブック(FDA Orange Book)(FDAのウェブサイトで利用可能)、書物、ハンドブック、ジャーナル記事、特許および特許出願を含む、本明細書に引用されるすべての刊行物は、上記であれ下記であれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
定義
本開示を詳細に説明する前に、本開示は、添付の説明および図面から明らかであるように、特定の投与モード、患者集団などに限定されず、変更可能であることが理解されるべきである。
【0026】
本明細書および意図された特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「薬物」への言及は、単一の薬物だけでなく、同一または異なる薬物のうちの2つ以上を含み、「任意の賦形剤」への言及は、単一の任意の賦形剤だけでなく、同一または異なる任意の賦形剤のうちの2つ以上を指す、などである。
【0027】
本開示の説明および特許請求において、以下の用語は下記の定義に従って使用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」、または「含む(comprises)」という用語は、組成物および方法が、列挙された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図する。「から本質的になる」とは、組成物および方法を定義するために使用される場合、記載された目的のための組み合わせに任意の本質的な有意性がある他の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求される発明の基本的および新規な特性に実質的に影響を与えない他の材料または工程を除外しない。「からなる」は、他の成分の微量以上の要素、および実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。実施形態が、これらの用語の1つ(例えば、「含むこと」)によって定義される場合、本開示は、当該実施形態について「から本質的になる」、「からなる」などの代替的実施形態も含むことが理解されるべきである。
【0029】
「任意の」または「任意に」とは、その後に記載された状況が発生してもよく、発生しなくてもよいことを意味し、そのため記述はその状況が発生している場合とそれが発生しない場合とを含む。
【0030】
「薬学的に許容可能な賦形剤または担体」とは、任意に本開示の組成物に含めることができ、かつ患者に有意な有害な毒性効果をもたらさない賦形剤を指す。
【0031】
「薬学的に許容可能な塩」としては、アミノ酸塩、無機酸で調製された塩類、例えば塩化物塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物塩、および硝酸塩、または、前述のうちの任意の対応する無機酸形態から調整された塩類、例えば塩酸塩など、または有機酸で調整された塩類、例えば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、サリチル酸塩、およびステアリン酸塩、ならびに、エストレート、グルセプテート、およびラクトビオン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、薬学的に許容可能な陽イオンを含有する塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)が含まれるがこれらに限定されない。
【0032】
本明細書に記載される、「活性分子」または「活性薬剤」としては、インビボまたはインビトロで示され得る、何らかの薬理学的な、しばしば有益な、効果を提供する任意の薬剤、薬物、化合物、物質の組成物、または混合物が含まれる。これには、食品、食品サプリメント、栄養素、栄養補助食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン、およびその他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で使用される場合、用語は、患者に局所的または全身的効果をもたらす任意の生理学的または薬理学的活性物質をさらに含む。特定の実施形態では、活性分子または活性薬剤は、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0033】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全体的にまたは完全に、を意味し、例えば、ある所与の数量の95%以上を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」または「本質的に」は、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%を意味する。
【0034】
「対象」、「個体」または「患者」という用語は本明細書では互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物としては、マウス、齧歯類、ラット、サル、ヒト、家畜、イヌ、ネコ、スポーツ動物、およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。本開示では、対象、個体、または患者は、ヒトに関するものである。
【0035】
本明細書に提供される場合、組成物または薬剤の「薬理学的に有効な量」または「治療有効量」という用語は、進行型多発性硬化症の低減または好転など、望ましい応答を提供するための非毒性であるが十分な量の組成物または薬剤を指す。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、治療される状態の重症度、用いられる特定の薬剤または薬剤(複数(drugs))、投与モードなどによって、対象ごとに異なる。本明細書に提供される情報に基づいて、日常的な実験を使用して当業者が、任意の個別の事例で適切な「有効な」量を決定することができる。
【0036】
「約」という用語は当業者によって理解されるものとなり、それが使用される状況に応じてある程度変化するものとなる。当業者にとって明らかではない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考慮すると、「約」とは、特定用語のプラスまたはマイナス10%を意味するものとなる。例えば、いくつかの実施形態では、それは特定用語のプラスまたはマイナス5%を意味するものとなる。特定の範囲は、本明細書では「約」という用語に先導される数値で提示されている。「約」という用語は、本明細書で使用される場合、それが先導するまさにその数値のリテラルサポートを提供するため、ならびに用語が先導する数値の近くまたは近似の数値である数値を提供するために使用される。数値が、特別に記載された数値の近くであるかまたは近似であるかのどちらであるかを判定するにあたり、近くのまたは近似の記載されていない数値は、それが存在する文脈で、特別に記載された数値と実質的等量を提供する数値であり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」という用語は、疾患または状態を阻害すること、すなわち、臨床症状の発現を阻止または抑制することを含む、患者における疾患もしくは状態または関連障害の任意の処置を意味する。また、「治療」または「治療する」は、疾患の症状(複数可)の発現を阻止すること、または疾患の症状(複数可)を好転させることも含む。本開示の様々な態様および実施形態の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果としては、進行型多発性硬化症の1つ以上の兆候または悪影響の低減、軽減、または改善、1つ以上の臨床転帰の改善、硬化症の程度の低下、硬化症進行の遅延または減速、硬化症状態の改善、緩和、または安定化、および本明細書に記載される他の有益な結果が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
いくつかの態様では、治療するという用語は、臨床転帰の改善を指す。「臨床転帰」という用語は、治療に対する患者の反応に関する任意の臨床観察または測定を指す。
【0039】
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、本開示の特定の実施形態を示す一方で、詳細な説明および具体的な実施例は、本開示の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるため、例示のみの方法によって与えられることが理解されるべきである。
【0040】
神経変性疾患/障害
例示的な神経変性疾患/障害としては、アルツハイマー型老年性認知症、もしくはピック病(脳葉萎縮)、多発性硬化症、進行性認知症と他の顕著な神経学的異常とを合併した症候群を含む神経変性疾患、主に成人を冒し、進行性神経変性型のハンチントン病、認知症と運動失調および/またはパーキンソン病の兆候とを合併した多系統萎縮症、進行性核上性麻痺(スティール-リチャードソン・オルスゼフスキー)、びまん性レビー小体病、または皮質歯状核黒質変性症(corticodentatinigral degeneration)を含む進行性神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。追加の対象は、主に若年成人および小児を冒し、ハレルフォルデン・スパッツ病および進行性家族性ミオクローヌス癲癇を含む進行性神経変性疾患、姿勢および運動の異常を徐々に発現する症候群を含む進行性神経変性疾患、振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、捻転ジストニア(捻転痙攣、変形性筋ジストニア)、痙性斜頚および他の限局性ジスキネジア、家族性振戦、またはジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群を含む疾患、進行性運動失調症候群、小脳変性症または脊髄小脳変性症、小脳皮質変性症またはオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、脊髄小脳変性症(フリードライヒ運動失調症および関連疾患)を含む脊髄小脳変性症を含む、進行性神経変性疾患を患っている可能性がある。神経変性疾患/障害としては、中枢自律神経系不全(シャイ・ドレーガー症候群)、感覚の変化を伴わない筋力低下および消耗の症候群(運動ニューロン疾患)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症、乳児脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒ・ホフマン)、若年性脊髄性筋萎縮症(ヴォールファルト-クーゲルベルク-ヴェランダー)、または他の形態の家族性脊髄性筋萎縮症、原発性側索硬化症または遺伝性痙性対麻痺、筋力低下および消耗と感覚の変化とを合併した症候群(進行性神経性筋萎縮症;慢性家族性多発ニューロパチー)、腓骨筋萎縮症(シャルコー・マリー・トゥース)、肥厚性間質性多発ニューロパチー(デジェリン・ソッタス病(Deferine-Sottas))、または種々の形態の慢性進行性ニューロパチー、進行性視力低下症候群を含む進行性神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。神経変性疾患/障害としては、網膜の色素変性(網膜色素変性症)、または遺伝性視神経萎縮症(レーバー病)、運動ニューロン疾患および進行性運動失調;散発性進行性神経変性疾患、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパチー、異常蛋白血症を伴う運動ニューロパチー、運動神経優位型末梢ニューロパチー、オリーブ橋小脳萎縮症、アゾレア(マチャド・ジョセフ)病、家族性筋萎縮性側索硬化症などの家族性進行性神経変性疾患、脊髄性筋萎縮症、家族性痙性対麻痺、遺伝性生化学的障害、先天性多発性関節拘縮症、または若年性進行性球麻痺(ファチオ・ロンド)が挙げられるが、これらに限定されない。遺伝性生化学的障害の例は、スーパーオキシドジスムターゼ欠損症、ヘキソサミニダーゼA/B欠損症、またはアンドロゲン受容体突然変異(ケネディ症候群)である。進行性神経変性疾患には、HTLV-1関連脊髄症、進行性多巣性白質脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、クールー、致死性家族性不眠症、またはアルパース病などのウイルス性疾患およびプリオン病が含まれ得る。
【0041】
「進行性神経変性疾患」は、進行性の(すなわち、ベースラインレベルと比較して悪化している)状態にある、またはそのような進行性の特徴を有する、任意の神経変性疾患を意味する。したがって、進行性の状態は、経時的な症状の悪化であり、急激または緩徐であり得る。進行性神経変性疾患の例としては、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症、アルツハイマー病、および再発寛解型多発性硬化症を除く進行型の多発性硬化症が挙げられる。
【0042】
神経眼科的障害
例示的な神経眼科的障害としては、乳頭浮腫および特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)、前部虚血性視神経症(AION)、視神経炎、眼球運動神経脳ニューロパチー、およびホルネル症候群が挙げられる。
【0043】
進行型多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、主に病因不明の複雑な自己免疫疾患であり、現在世界中で約250万人が罹患している。炎症、脱髄、軸索損傷、および修復機序などのいくつかの病理学的プロセスは、MSの複雑な疾患の兆候に寄与する。MSは通常、散発性の疾患であり、脳および脊髄内で斑状の変性および炎症性変化が生じる神経系の可変進行性疾患として特徴付けられる。変性および炎症性変化は、ニューロンのミエリン鞘の異常な硬化および線維症に部分的に起因する、硬化性プラークの形成と関連する。症状は、振戦から眼振、麻痺、ならびに言語および視覚障まで多岐にわたる。疾患の症状は、特徴的な増悪および寛解を伴い、成人期早期においてしばしば生じる。
【0044】
再発寛解型多発性硬化症(RRMS)が最も一般的なタイプの疾患であり、患者の65%~85%を占める。RRMS患者の大部分は、最終的に疾患の二次性進行(SPMS)型に進行する。再発寛解型多発性硬化症(RRMS)のための薬物療法における近年の改善にもかかわらず、再発の非存在下で進行型MSに有効であると一般的にみなされる療法はない。進行型のMSにおける抗炎症療法の有効性を示す数少ない研究は、療法の抗炎症効果によって促進された可能性が高い。現在、ミトキサントロンは、二次性進行型MSに対する唯一のFDAが承認した療法であるが、心臓損傷および血液癌(例えば、白血病)のリスクのため、一般的には使用されていない。明らかな炎症を伴わない進行型MSを有する患者のための、安全で有効な、かつ便利に投与される療法に対する必要性が大きい。
【0045】
4つのタイプの多発性硬化症が認識されている:(1)再発/寛解型多発性硬化症(RR多発性硬化症)、(2)二次性進行型多発性硬化症(SP多発性硬化症)、(3)進行型再発性多発性硬化症(PR多発性硬化症)、および(4)一次性進行型多発性硬化症(PP多発性硬化症)。RR多発性硬化症は、特許請求の範囲に入るとみなされないが、他の型の多発性硬化症、すなわち、SP多発性硬化症、PR多発性硬化症、およびPP多発性硬化症は、本発明の一態様であるとみなされる。すべてのタイプの進行型MSにおいて、再発にかかわらず経時的に機能喪失がある。
【0046】
「再発/寛解型多発性硬化症(RR多発性硬化症)」は、新たな症状が現れる可能性があり、前の症状が現れるかまたは悪化する再発(増悪としても知られる)を特徴とする。再発に続いて寛解期が続き、寛解期の間、患者は、再発中に得た障害から完全にまたは部分的に回復する。再発は、数日間、数週間、または数か月間持続する可能性があり、回復は、ゆっくりかつ漸進的であり得るか、またはほぼ即時であり得る。多発性硬化症を呈する患者の大多数は、最初に再発/寛解型と診断される。これは典型的には、20代または30代のときであるが、かなり早期または後の診断も知られている。男性の約2倍の数の女性が、この多様性を呈している。
【0047】
「二次性進行型多発性硬化症(SP多発性硬化症)」において、再発/寛解型多発性硬化症を最初に患った患者は、再発の有無に関わらず、神経機能の漸進的な悪化を生じ始める。何年も後に、再発/寛解型多発性硬化症を患った多くの患者が、疾患の二次進行期に入る。これは、再発の間の疾患の漸進的な悪化を特徴とする。二次性進行型MSの早期段階において、患者は、依然として数回の再発を経験する場合があるが、しばらくすると、これらの再発はまとまって一般的な進行になる。多くの場合、患者は、再発後に以前の機能レベルに戻らない。二次性進行型MS患者は、良好および不良な日または週を経験する場合があるが、再発出現後のある程度の寛解は別として、実際のところ回復はない。10年後、再発/寛解型多発性硬化症患者の50%が、二次性進行型を発現する。25~30歳までには、その数字は90%まで上昇している。
【0048】
進行型再発性多発性硬化症(PR多発性硬化症)は、症状が最初に始まったときから障害のレベルの明らかな進行を示すが、急性出現後のある程度の回復と関連しているかまたはしていない可能性がある明らかな再発の出現を伴う。この型の多発性硬化症は、再発によって中断される、発症からの進行性の経過をたどる。再発の直後には顕著に回復するが、再発の間には症状が漸進的に悪化する。
【0049】
一次性進行型多発性硬化症(PP多発性硬化症)は、寛解または再発が全くない、疾患の発症からの漸進的な進行を特徴とする。疾患活動性が横ばい状態になる期間がある場合があり、二次性進行型と同様に、良好および不良の日または週がある場合がある。PP多発性硬化症は、発症が典型的には30代後半または40代前半であり、男性が発症する可能性が女性と同じくらい高く、初期の疾患活動性は、脳ではなく脊髄にあるという点で、再発/寛解型MSおよび二次性進行型MSとは異なる。一次性進行型多発性硬化症は多くの場合、脳内に移動するが、再発/寛解型または二次性進行型よりも脳領域を損傷する可能性は低く、例えば、一次性進行型MS患者は、認知障害を発現する可能性がより低い。
【0050】
いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症を超えて進行している。いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症は、一次性進行型多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、一次性進行型多発性硬化症は、時折の停滞および一時的なわずかな改善が認められるが、別個の再発ではない、発症からの疾患進行を特徴とする。いくつかの実施形態では、進行型多発性硬化症は、二次性進行型多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、二次性進行型多発性硬化症は、初期再発寛解過程として特徴付けられ、その後に進行が続き、時折の再発、軽度の寛解、および停滞を伴うかまたは伴わない。
【0051】
神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、網膜損傷である。いくつかの実施形態では、網膜損傷は、偶発的な原因により発生しない。いくつかの実施形態では、網膜損傷は、疾患または障害に起因して発生する。いくつかの実施形態では、網膜損傷は、黄斑損傷である。
【0052】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、黄斑損傷である。いくつかの実施形態では、黄斑損傷は、偶発的な原因により発生しない。いくつかの実施形態では、黄斑損傷は、疾患または障害に起因して発生する。いくつかの実施形態では、黄斑損傷は、黄斑体積の損失および/または顆粒細胞/内網状層(GCIP)の菲薄化の測定によって評価される。
【0053】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、片側性核間性眼筋麻痺、注視誘発眼振、サッケード測定過大症、前庭動眼反射阻害の欠如、または振子眼振である。
【0054】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、黄斑変性、網膜変性、または糖尿病性網膜症である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、黄斑変性である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、網膜変性である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷は、糖尿病性網膜症である。
【0055】
イブジラスト
本開示の方法は、分子、イブジラストの投与に基づく。イブジラストは、下記の構造を有する小分子薬物(230.3の分子量)である。
【化1】
【0056】
イブジラストはまた、ChemBank ID 3227、CAS # 50847-11-5、およびBeilstein Handbook Reference No.5-24-03-00396に見出される。その分子式はC14H18N2Oに対応する。イブジラストはまた、2-メチル-1-(2-(1-メチルエチル)ピラゾロ(1,5-a)ピリジン-3-イル)1-プロパノン;3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ(1,5-a)ピリジン];および1-(2-イソプロピル-ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)-2-メチル-プロパン-1-オンを含む、様々な化学名で知られている。イブジラストの他の同義語には、Ibudilastum(ラテン語)、BRN 0656579、KC-404、およびMN-166が含まれる。その商標名はKetas(登録商標)である。本明細書において言及されるように、イブジラストは、投与のためのそれの意図された製剤での使用に適切な、あらゆるその薬学的に許容可能な塩形態、プロドラッグ形態(例えば、対応するケタール)、溶媒和物、およびこれに類するものを含むことを意味する。
【0057】
イブジラストは、マクロファージ阻害因子(MIF)の阻害剤である。イブジラストはまた、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)3A、4、10A1および11A1の選択的阻害剤(Gibson et al.,Eur J Pharmacol 538:39-42,2006)であり、またロイコトリエンD4およびPAF拮抗作用を有することが報告されてもいる。そのプロファイルには、他のPDE阻害剤および抗炎症剤と比較して、有効な抗炎症性および独特性が見られる。PDEは、3’-炭素上のリン酸エステル結合の加水分解を触媒して、対応する5’-ヌクレオチドの一リン酸塩を得る。したがって、それらは環状ヌクレオチドの細胞濃度を調節する。多くのホルモンおよび神経トランスミッタの細胞外受容体は第2のメッセンジャーとして環状ヌクレオチドを利用するため、PDEはこれらの細胞外信号に対する細胞性応答も調節する。PDEには少なくとも8つのクラスがある:Ca+/カルモジュリン依存性PDE(PDE1);cGMP-刺激型PDE(PDE2);cGMP-阻害性PDE(PDE3);cAMP-特異的PDE(PDE4);cGMP-結合性PDE(PDE5);光受容体PDE(PDE6);高親和性、cAMP-特異的PDE(PDE7);および高親和性cGMP-特異的PDE(PDE9)。イブジラストは、炎症細胞(例えば、グリア細胞)への作用を介して炎症を抑制する役目を果たし、炎症促進性媒介物質および向神経活性媒介物質の両方の放出の抑制をもたらす。イブジラストは、炎症促進性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)の産生を抑制する場合もあり、抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10)の産生を増強する場合がある。前述に関連する参照文献には以下が含まれる:Obernolte,R.,et al.(1993)“The cDNA of a human lymphocyte cyclic-AMP phosphodiesterase(PDE IV)reveals a multigene family”platelet aggregation in the presence of endothelial cells”Thromb.Res.102:239-246、Souness,J.E.,et al.(1994)“Possible role of cyclic AMP phosphodiesterases in the actions of ibudilast on eosinophil thromboxane generation and airways smooth muscle tone”Br.J.Pharmacol.111:1081-1088、Suzumura,A.,et al.(1999)“Ibudilast suppresses TNF.alpha.production by glial cells functioning mainly as type III phosphodiesterase inhibitor in CNS”Brain Res.837:203-212、Takuma,K.,et al.(2001)“Ibudilast attenuates astrocyte apoptosis via cyclic GMP signaling pathway in an in vitro reperfusion model”Br.J.Pharmacol.133:841~848。イブジラストは、良好なCNS浸透を示す。(Sanftner et al Xenobiotica 2009 39:964-977)。
【0058】
前述したように、任意の1つ以上の本明細書に記載される薬物、特にイブジラストへの言及は、該当する場合、あらゆるエナンチオマー、ラセミ混合物を含むエナンチオマー混合物、プロドラッグ、薬学的に許容可能な塩形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物など)、溶媒和物、異なる物理的形態(例えば、結晶性固体、非晶質固体)、代謝産物などを包含することを意味する。
【0059】
投与方法
イブジラスト投与は、様々な送達様式を介して達成され得る。イブジラストの送達の好ましい方法は、全身送達および局所送達を含む。このような投与経路としては、経口、動脈内、髄腔内、脊髄内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、および吸入経路が挙げられるがこれらに限定されない。
【0060】
より具体的には、本開示のイブジラストは、経口、直腸、鼻腔、局所的(経皮、エアロゾル、口腔および舌下を含む)、膣腔、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、および皮内を含む)、髄腔内、および肺を含むがこれらに限定されない、任意の好適な経路によって治療用に投与され得る。いくつかの実施形態では、イブジラストは、経口投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストは、注射を介して投与される。好ましい経路は、当然のことながら、レシピエントの状態および年齢、治療されている特定の症候群、ならびに用いられる薬物の特定の組み合わせによって変化する。
【0061】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、経口投与される。
【0062】
投与量
治療用量は経験的に決定されることができ、治療される特定の状態、対象、ならびに組成物中に含まれる各活性薬剤の有効性および毒性によって変化する。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全身状態、ならびに治療される状態の重症度、および医療専門家の判断によって異なる。
【0063】
治療有効量は、当業者によって決定され得、それぞれの特定の事例の要件に合わせて調節される。一般的に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、単回投与量として、または複数回投与量としてのいずれかとして投与される、1日の総投与量で、約0.1mg/日~4,000mg/日、約0.1mg~720mg/日、約60~600mg/日、または約100~480mg/日の範囲であり、またはより好ましくは、約1~240mg/日、約30~240mg/日、約30~200mg/日、約30~120mg/日、約1~120mg/日、約50~150mg/日、約60~150mg/日、約60~120mg/日、または約60~100mg/日の量である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30~200mg/日からであり、単回投与量として、または複数回投与量としてのいずれかとして投与される。いくつかの実施形態では、複数回投与量には、1日当たり2回、3回、または4回の用量が含まれる。いくつかの実施形態では、複数回投与量には、1日当たり2回または3回の用量が含まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与量は、約20mg BIDまたはTIDよりも大きい投与量を含む。いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与量は、30mg/日、60mg/日、80mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、および720mg/日、またはそれ以上よりも大きい。
【0065】
いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも30mg/日、少なくとも40mg/日、少なくとも50mg/日、少なくとも60mg/日、少なくとも70mg/日、少なくとも80mg/日、少なくとも90mg/日、少なくとも100mg/日、少なくとも110mg/日、少なくとも120mg/日、少なくとも130mg/日、少なくとも140mg/日、少なくとも150mg/日、少なくとも160mg/日、少なくとも170mg/日、少なくとも180mg/日、少なくとも190mg/日、少なくとも200mg/日、少なくとも225mg/日、少なくとも250mg/日、少なくとも275mg/日、少なくとも300mg/日、少なくとも325mg/日、少なくとも350mg/日、少なくとも375mg/日、少なくとも400mg/日、少なくとも425mg/日、少なくとも450mg/日、少なくとも475mg/日、少なくとも500mg/日、少なくとも525mg/日、少なくとも550mg/日、少なくとも575mg/日、少なくとも600mg/日、少なくとも625mg/日、少なくとも650mg/日、少なくとも675mg/日、少なくとも700mg/日、または少なくとも720mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも60mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも30mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも60mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも80mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、少なくとも100mg/日である。
【0066】
いくつかの実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、約30mg/日、約40mg/日、約50mg/日、約60mg/日、約70mg/日、約80mg/日、約90mg/日、約100mg/日、約110mg/日、約120mg/日、約130mg/日、約140mg/日、約150mg/日、約160mg/日、約170mg/日、約180mg/日、約190mg/日、約200mg/日、約225mg/日、約250mg/日、約275mg/日、約300mg/日、約325mg/日、約350mg/日、約375mg/日、約400mg/日、約425mg/日、約450mg/日、約475mg/日、約500mg/日、約525mg/日、約550mg/日、約575mg/日、約600mg/日、約625mg/日、約650mg/日、約675mg/日、約700mg/日、または約720mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約80mg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、約100mg/日である。
【0067】
投与量、および治療される正確な状態に応じて、投与は、1日から数日、数週、数ヶ月、および数年にもわたる時間経過の間、1日1回、2回、3回、または4回であってもよく、さらには患者の生存期間でさえあり得る。例示的な投与レジメンは、少なくとも約1週間、約1~4週間、約1~8週間、1~12週間、1~16週間、1~20週間、1~24週間、1~36週間、1~48週間、1~52週間、1~60週間、1~72週間、1~84週間、1~96週間、1週間~1年間、1週間~2年間、1週間~3年間、1週間~4年間、1週間~5年間、またはそれ以上の期間継続する。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、少なくとも約12、24、36、48、60、72、84、または96週間の期間である。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、約12、24、36、48、60、72、84、または96週間の期間である。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、少なくとも約1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間の期間である。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、約1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間の期間である。
【0068】
実際には、本開示または活性薬剤の任意の所与の組成物の単位用量は、臨床医の判断、患者のニーズなどに応じて、様々な投与スケジュールで投与できる。特定の投与スケジュールは、当業者に公知であるか、または日常的な方法を使用して実験的に決定することができる。例示的な投与スケジュールとしては、限定されないが、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回の投与などが挙げられる。
【0069】
製剤
イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩などの本明細書に記載される活性薬剤は、以下に記載される1つ以上の追加の成分を任意に含有し得る製剤中で投与されてもよい。
【0070】
一態様では、(a)治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩と、(b)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤および/または担体とを含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる組成物が本明細書に提供される。
【0071】
賦形剤/担体
本開示の組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含み得る。例示的な賦形剤としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG 400、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、硬化ヒマシ油(HCO)、クレモホール、炭水化物、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、無機塩類、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤/充填剤、界面活性剤、滑沢剤(例えば、カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムなど)、タルクなどの流動促進剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝剤、酸、塩基、フィルムコート、その組み合わせ、などが挙げられる。
【0072】
本開示の組成物は、例えば、糖、誘導体化された糖、例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーのうちの1つ以上の炭水化物を含み得る。特定の炭水化物賦形剤には、例えば、単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース、および類似のものなど、二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース、および類似のものなど、多糖類、例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンおよび類似のものなど、ならびにアルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール、および類似のものなどが挙げられる。
【0073】
本開示の組成物における使用に適しているのはまた、デンプングリコール酸ナトリウムおよび直接圧縮可能な改質デンプンなどのジャガイモおよびトウモロコシベースのデンプンである。
【0074】
さらなる代表的な賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム一塩基性、リン酸ナトリウム二塩基性、およびその組み合わせなどの、無機塩または緩衝剤が含まれる。
【0075】
本開示の組成物は、1つ以上の抗酸化剤も含み得る。抗酸化剤を使用して酸化を防ぎ、それによって調製の薬物または他の成分の劣化が防止される。本開示で使用するための適切な抗酸化剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびその組み合わせが含まれる。
【0076】
追加的な例示的賦形剤には、ポリソルベートなどの界面活性剤、例えば「Tween 20」および「Tween 80」、ならびにF68、およびF88など(両方ともBASF、マウントオリーブ、ニュージャージー州から入手可能)のプルロニック、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ならびにホスファチジルエタノールアミン)、脂肪酸および脂肪酸エステル、コレステロールなどのステロイド、ならびにEDTAなどのキレート剤、亜鉛および他のこのような適切な陽イオンがある。
【0077】
さらに、本開示の組成物は、1つ以上の酸または塩基を任意に含み得る。使用され得る酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびその組み合わせからなる群から選択される酸が挙げられる。適切な塩基の非限定的な例としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびその組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられる。
【0078】
組成物中の任意の個別の賦形剤の量は、賦形剤の役割、活性薬剤成分の投与量要件、および組成物の特定のニーズに応じて変化する。典型的には、任意の個別の賦形剤の最適量は、日常的な実験を通して、すなわち、様々な量の賦形剤(低から高の範囲にわたる)を含む組成物を調製すること、安定性およびその他のパラメータを調べること、そして次に最適な性能が有意な悪影響を受けずに達成される範囲を決定することによって、決定される。
【0079】
しかしながら、一般的には、賦形剤は、賦形剤の約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約98重量%、より好ましくは約15重量%~約95重量%の量で組成物中に存在する。一般に、本開示のイブジラスト組成物中に存在する賦形剤の量は、以下から選択される:少なくとも約2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、またはさらに95重量%。
【0080】
他の賦形剤と共にこれらの前述の医薬賦形剤は、“Remington:The Science&Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams&Williams(1995)、“Physician’s Desk Reference”,52.sup.nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3.sup.rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0081】
他の活性物質
本開示による製剤(またはキット)は、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩に加えて、任意に1つ以上の追加の活性薬剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の治療剤は、イブジラストとは異なる作用機序を有する治療剤である。このような活性成分は、FDAオレンジブック、Goodman&Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、11th Ed.、2005、The Merck Manual、18th edition、2007、およびThe Merck Manual of Medical Information 2003に記載されていることを見出し得る。
【0082】
持続的な送達製剤
いくつかの実施形態では、組成物は、好ましくは、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の安定性を改善するために、かつ半減期を延長させるために製剤化される。例えば、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、制御放出または持続放出製剤で送達され得る。制御放出または持続放出製剤は、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を、例えば、リポソーム、非吸収性不浸透性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマーおよびハイトレル(Hytrel)(登録商標)コポリマーなど、膨潤性ポリマー、例えばヒドロゲルなど、または吸収性ポリマー、例えばコラーゲンおよび吸収性縫合糸の作成に利用されるような特定のポリ酸またはポリエステルなどの、担体またはビヒクルに組み込むことによって調製される。さらに、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、カプセルに入れられ得る、粒子状の担体に吸着させ得る、またはそれに関連付けられ得る。粒子状の担体の例としては、ポリメチルメタクリレートポリマー由来のもの、ならびにポリ(ラクチド)および、PLGとして知られるポリ(ラクチド-co-グリコリド)由来の微粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al.,Pharm.Res.(1993)10:362-368、およびMcGee et al.,J.Microencap.(1996)を参照のこと。
【0083】
この目的のために適切な徐放性ポリマーは当業界で公知であり、セルロースエーテルなどの疎水性ポリマーを含む。適切なセルロースエーテルの非限定的な例としては、エチルセルロース、酢酸セルロースなど;ポリビニルエステル、例えば酢酸ポリビニル、ポリアクリル酸エステル、メタクリル系およびアクリレートポリマー(pH独立型)など;高分子量ポリビニルアルコールおよびワックス、例えば脂肪酸およびグリセリド、メタクリル酸エステル中性ポリマー、ポリビニルアルコール-無水マレイン酸コポリマーなど;エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー;アミノアルキルメタクリレートコポリマー;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0084】
送達形態
本明細書に記載される組成物は、すべてのタイプの製剤、特に全身投与または髄腔内投与に適した製剤を包含する。経口投与剤形には、錠剤、ロゼンジ、カプセル、シロップ、経口懸濁剤、乳剤、顆粒、マイクロビーズ、およびペレットが含まれる。いくつかの実施形態では、経口投与剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、またはマイクロビーズ投与剤形である。いくつかの実施形態では、経口投与剤形は錠剤である。いくつかの実施形態では、錠剤は徐放性錠剤である。いくつかの実施形態では、経口投与剤形はカプセルである。いくつかの実施形態では、カプセルは徐放性カプセルである。いくつかの実施形態では、経口投与剤形は、液体投与剤形である。いくつかの実施形態では、経口投与剤形は、徐放性製剤である。
【0085】
代替的製剤には、エアロゾル、経皮パッチ、ゲル、クリーム、軟膏、坐剤、粉末または再構成され得る凍結乾燥物、ならびに液体剤が含まれる。例えば注射の前に固体組成物を再構成するための適切な希釈剤の例としては、注射用静菌水、水中5%のデキストロース、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびその組み合わせを含む。液体医薬組成物に関して、溶液および懸濁液が想定される。好ましくは、本開示のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の組成物は、経口投与に適したものである。
【0086】
ここで経口送達製剤に注目すると、錠剤は圧縮または成形によって、任意に1つ以上の副成分または添加剤を用いて作製できる。圧縮された錠剤は、例えば、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、および/または界面活性剤または分散剤と任意に混合された、粉末または顆粒など自由に流動する形態の活性成分を適切な錠剤成形機で圧縮することによって調製する。
【0087】
成形錠剤は、例えば、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な錠剤成形機で成形することによって作製する。錠剤は任意にコーティングされるか、または刻み目を入れられる場合があり、また望ましい放出プロファイルを提供するために様々な比率で、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、活性成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化され得る。錠剤には任意に、薄膜、糖コーティング、または腸溶性コーティングなどのコーティングが提供され、胃以外の腸の部分に放出を提供することができる。錠剤およびカプセル作製のためのプロセス、装置、およびトール(toll)製造業者は、当該技術分野で周知である。
【0088】
口内の局所投与のための製剤には、一般的にスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの風味付きの基剤中に活性成分を含むロゼンジ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む香錠が含まれる。
【0089】
局所投与のための医薬組成物はまた、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは油として製剤化されてもよい。
【0090】
あるいは、製剤は、パッチ(例えば、経皮パッチ)の形態であってもよく、または活性成分で、および任意に1つ以上の賦形剤または希釈剤で含浸された包帯または絆創膏などの外傷用医薬材料であってもよい。局所製剤はさらに、例えばいくつかの例としては、ジメチルスルホキシド・ビサボロール(dimethylsulfoxidem bisabolol)、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピルおよびD-リモネンなどの、皮膚またはその他の患部を介しての成分の吸収または浸透を強化する化合物を含むことができる。
【0091】
乳剤の場合は、油相は、公知の方法で公知の成分から構成される。この相は単に乳化剤(そうでなければエマルジェントとして知られる)を含み得るが、少なくとも1つの乳化剤の脂肪および/または油との混合物を含むことが望ましい。親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれることが好ましい。全体として、安定剤を伴う、または安定剤を伴わない乳化剤は、いわゆる乳化ろうを構成し、ろうは油および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化剤の軟膏基剤を構成する。例示的なエマルジェントおよび乳化安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0092】
直腸投与のための製剤は、典型的には、例えばカカオ脂またはサリチル酸塩を含む適切な基剤を有する坐薬の形態である。
【0093】
膣投与に適した製剤は一般的に、坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレーの形態を取る。
【0094】
担体が固体である場合の鼻の投与に適した製剤は、例えば約20~約500ミクロンの範囲の粒子サイズを持つ粗い粉末を含む。こうした製剤は、典型的には、例えば鼻に近接して保持されている粉末の容器から、鼻通路を介した急速な吸入によって投与される。あるいは、鼻送達用の製剤は、液体、例えば、鼻のスプレーまたは点鼻液などの液体の形態であってもよい。
【0095】
吸入用のエアロゾル化可能な製剤は、乾燥粉末の形態(例えば、乾燥粉末吸入器による投与に適した)であってもよく、または代替的に、例えばネブライザーで使用するために、液体形態であってもよい。エアロゾル化された溶液を送達するためのネブライザーは、AERx(登録商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)を含む。本開示の組成物はまた、薬学的に不活性な液体推進剤(例えばクロロフルオロカーボンまたはフルオロカーボン)に本明細書に記載される薬物の組み合わせの水溶液、または懸濁液を含有する、加圧式計量式吸入器(MDI)、例えばVentolin(登録商標)計量式吸入器、を使用して送達されてもよい。
【0096】
非経口投与に適した製剤には、注射に適した水性および非水性の等張滅菌溶液、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。
【0097】
本開示の非経口製剤は、単位用量または複数回用量密封容器、例えばアンプルおよびバイアルなど、に任意に含まれ、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用の水、の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥(lyophilized))条件で保存され得る。即時注射溶液および懸濁液は、前述のタイプの滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0098】
本開示の製剤はまた、非徐放性製剤と比較した場合、薬物成分の各々が経時的に徐々に放出または吸収されるように、徐放性製剤であってもよい。徐放性製剤は、活性薬剤のプロドラッグ形態、リポソームまたはポリマーマトリクスなどの遅延放出性薬物送達システム、ヒドロゲル、あるいは、ポリエチレングリコールなどのポリマーの活性薬剤との共有結合を使用し得る。
【0099】
特に上述された成分に加えて、本開示の製剤は、医薬品技術分野において従来的なその他の薬剤、および例えば経口投与形態に用いられる特定のタイプの製剤を任意に含んでもよく、経口投与用組成物はまた、甘味料、増粘剤、または香味剤として追加的な薬剤を含んでもよい。
【0100】
キット
使用説明書を伴う、本開示の少なくとも1つの組成物を含むキットもまた、本明細書に提供される。
【0101】
例えば、薬物自体の各々が、個々の投与剤形または別個の投与剤形として投与される場合、キットは、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を、使用説明書と共に含む。イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩は、投与に関する説明書と共に考慮したときの包装が、薬物成分が投与されるべき方法を明確に示す限り、投与に適した任意の方法で包装され得る。
【0102】
例えば、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を含む例示的キットにおいて、キットは、日毎などの任意の適切な期間によって組織化され得る。一例として、1日目について、代表的なキットは、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の各々の単位投与量を含み得る。薬物が1日2回投与される場合、キットは、1日目に対応して、投与のタイミングに関する説明書と共に、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の2列の単位投与剤形を含み得る。上記による様々な実施形態は、容易に想定され得、また当然ながら、対応する投与剤形、推奨投与量、意図される患者集団などに依存する。包装は、医薬品の包装に一般的に用いられる任意の形態であってもよく、異なる色、包装材料、不正開封防止機構が付いた包装、ブリスターパック、乾燥剤(dessicant)、およびこれに類するものなどの多数の特徴のいずれかを利用してもよい。
【0103】
本開示は、好ましい特定の実施形態と併せて説明されているが、前述の説明ならびに以下の実施例も、本開示の範囲を説明することを意図しており、限定することを意図してはいないことが理解されるべきである。本開示の範囲内の他の態様、利点および修正は、本開示が関連する当業者にとって明らかであろう。
【0104】
任意の特許、公開特許出願、書物、ハンドブック、ジャーナル刊行物、またはFDAオレンジブックを含む、本出願で言及されたすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0105】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を説明する目的に対して与えられており、本開示をいかなる形式にも制限することを意図していない。当業者であれば、本開示は、それら本明細書に固有の目的、目標、および利点だけでなく、目的を実行するように、かつ述べられた目標および利点を取得するように、良好に適合されていることを容易に理解するであろう。本実施例は、本明細書に記載される方法と共に、実施形態を現在代表するものであり、また例示であり、本開示の範囲に対する限界を意図するものではない。特許請求の範囲によって定義される本開示の精神内に包含される変更および他の使用を、当業者は想定するであろう。
【実施例
【0106】
実施例1
これは、一次性または二次性進行型多発性硬化症を有する対象において、96週間にわたって1日2回投与されるイブジラストの安全性、忍容性、および活性を評価するためにデザインされた多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験であった。
【0107】
研究の主要目的は以下のとおりである:
・脳実質分画(BPF)を使用した全脳萎縮に対する定量的磁気共鳴画像(MRI)分析によって測定される、96週の時点のプラセボと比較したイブジラスト(100mg/日)の活性を評価すること、
・一次性および二次性進行型多発性硬化症を患っている対象において経口投与した、プラセボと比較したイブジラスト(100mg/日)の安全性および忍容性を評価すること、ならびに
・進行型MSにおけるイブジラストのSPRINT-MS第II相試験からの黄斑尺度に対するイブジラストの効果を研究すること。
【0108】
主な副次的目的は、以下によって測定される、プラセボと比較した96週の時点のイブジラストの活性を評価することであった:
・下行錐体の白質路における拡散テンソル画像(DTI)、
・正常に見える脳組織における磁化移動率(MTR)画像、
・光干渉断層撮影(OCT)によって測定される網膜神経線維層、および
・皮質縦萎縮検出アルゴリズム(CLADA)によって測定される皮質萎縮。
【0109】
追加の副次的結果は、プラセボと比較した96週の時点のイブジラストの以下に対する活性を測定することであった:
・T1病変容積、T2病変容積、および年間再発率によって測定される炎症性疾患活動性、
・総合障害度評価尺度(EDSS)および多発性硬化症機能評価(MSFC)によって測定される障害、
・記号数字モダリティ検査および選択想起検査によって測定される認知障害、
・多発性硬化症影響スケール(MSIS-29)、EuroQol 5次元(EQ-5D)、およびショートフォーム-36健康調査(SF-36)によって測定される生活の質、ならびに
・簡易疼痛質問票(BPI)によって測定される神経障害痛。
【0110】
三次目的の第1のセットは、以下の一次および二次の画像転帰尺度によって測定される、プラセボと比較した1年の時点のイブジラストの活性を評価することであった:脳実質分画(BPF)を使用した全脳萎縮、下行錐体の白質路における拡散テンソル画像(DTI)、正常に見える脳組織における磁化移動率(MTR)画像、光干渉断層撮影(OCT)によって測定される網膜神経線維層(RNFL)、および皮質縦萎縮検出アルゴリズム(CLADA)によって測定される皮質萎縮。
【0111】
三次目的の第2のセットは、全脳灰白質分画、灰白質における磁化移動率(MTR)、ベースライン以降の新しいT1病変、およびベースライン以降の新しいT2病変によって測定される、プラセボと比較した96週の時点のイブジラスト(MN-166)の活性を評価することであった。
【0112】
探索的目的には、集団PKアプローチを使用したイブジラストの薬物動態(PK)の評価、脳脊髄液(CSF)および血清バイオマーカーと進行性障害の画像および臨床尺度との相関、固有の第2相エンドポイントの特定、ならびに複合MRIスケール(BPF、MTR、およびDTIの組み合わせ)が含まれる。
【0113】
イブジラストおよびその代謝産物6,7-ジヒドロジオール(DHD)の分析のための血液試料を、8、48、および96週目の予定された訪問中に採取した。正確なサンプリング時間および前の投与に関連する時間を症例報告書に記録した。NONMEMプログラム(Icon Development Solution)を使用した集団PKモデリングを使用して、健康な対象およびMSを有する対象におけるイブジラストの薬物動態特性を特徴付けた。集団解析は、選択した共変量を評価して、それらが個人間のPKパラメータ推定値の差に寄与したかどうかを判定した。共変量には、とりわけ、人口統計学的変数(年齢、性別、体重、および人種)、クレアチニンクリアランス(腎機能のマーカーとして)、肝酵素レベル(肝機能のマーカーとして)、血液化学変数、ならびにベースライン時の関連する疾患共変量が含まれた。さらに、イブジラストの薬物動態に対する併用薬の効果も評価した。
【0114】
合計255名の21~65歳の男性および女性の対象を、2つの治療群(イブジラスト100mg/日または対応するプラセボ)のうちの1つに登録した。SPRINT-MSの試験対象集団は、ベースラインで、一次性(53%)と二次性進行型(47%)MSとの混合、平均年齢56歳、および総合障害度評価尺度(EDSS)の中央値=6.0であった。対象の無作為化を、疾患状態(PPMSまたはSPMS)、および免疫賦活療法の状態:「未治療」、グラチラマー酢酸塩(GA)、またはインターフェロン-ベータによって層別化した。対象は、本研究に参加している間、インターフェロン-ベータ(IFN-β)またはグラチラマー酢酸塩の使用を継続することが許可された。研究中、対象は、一方の注射可能な薬剤から他方の薬剤への変更が許可された。ペグ化インターフェロンベータ-1も許可された(FDAにより承認された場合)。吸入ステロイドおよび局所ステロイドは許容される。再発出現が起こった場合、治療を行う神経科医が処方したように、単一コースの全身性コルチコステロイドが許可された。対象は、4、8、12、24、36、48、60、72、84、および96週目に、定期的な追跡訪問のためにクリニックに戻った。
【0115】
研究参加前および研究参加中に以下の薬剤が禁止された:
・スクリーニング前3か月以内の全身性コルチコステロイド治療(吸入ステロイドまたは局所ステロイドは許容される)。
〇臨床的再発の治療には、単一コースの全身性コルチコステロイド治療が許可された
・断続的な全身性コルチコステロイドの進行中の使用(すなわち、月1回または月2回の静脈内メチルプレドニゾロン)
・スクリーニングから6か月以内の経口免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、テリフルノミド[Aubagio(登録商標)])、
・スクリーニングから6か月以内のミトキサントロンまたはナタリズマブ、
・スクリーニングから3か月以内のフィンゴリモドまたはフマル酸ジメチル[Tecfidera(登録商標)]、
・スクリーニングから12か月以内のリツキシマブまたは他のB細胞療法、
・グラチラマー酢酸塩およびインターフェロン-ベータ(任意の製剤)以外の他のMS疾患修飾療法(DMT)の進行中の使用。
【0116】
研究参加中に以下の薬剤が禁止される:シメチジン、シクロスポリン、ドロネダロン、ロピナビル、プロベネシド、キニジン(Neudextaを含む)、ラノラジン、リファンピシン、リトナビル、およびチプラナビル。
【0117】
研究に参加するには、対象は、2010 International Panel Criteriaに従った二次性進行型MS(SPMS)または一次性進行性MS(PPMS)、Swanton’s MRI Criteriaに従った脳MRIにおける典型的なMS病変、および以下のいずれかによって測定される過去2年間の障害進行の臨床的証拠の確定診断を受けていなければならない:
・少なくとも0.5点の全体的なEDSSの悪化(遡及的に評価されてもよいが、臨床的再発中は不可)、または
・25フィート歩行(25-FW)の20%の悪化、または
・両手の9ホールペグテスト(9-HPT)の20%の悪化。
【0118】
二重盲検治療フェーズは、ベースライン訪問およびその後に予定された10回のクリニック訪問からなった。ベースライン訪問は、スクリーニング訪問後45日以内に行われなければならなかった。ベースライン訪問(1日目)において、スクリーニング評価をすべて完了し、適格基準を満たし続けた対象を、1:1の比率で2つの治療群(イブジラスト100mg/日またはプラセボ)のうちの1つに無作為化した。
【0119】
図1は、研究デザインを示す。対象は、ベースライン訪問(1日目)の夜に、初回用量の治験薬(30mgのイブジラストまたはプラセボ)を摂取した。2日目の朝、すべての対象は、14日目までの3カプセルBID投与レジメンを開始した。イブジラストに無作為化された対象は、2日目に60mg/日(30mg BID)から開始し、14日目まで60mg/日を続けた。15日目から、すべての対象は、5カプセルBID投与レジメンに投与量を増加させ、イブジラスト治療群に無作為化された対象は、100mg/日を摂取していた。
【0120】
15日目以降、耐えられない副作用(例えば、悪心、下痢、めまい)を有する対象には、4カプセルを1日2回(イブジラスト摂取の対象は80mg/日)、または3カプセルを1日2回(イブジラスト摂取の対象は60mg/日)のいずれかに用量を低減させた。14日目の終わりに耐えられない副作用(例えば、悪心、下痢、めまい)を有する対象には、治験責任医師の判断で3カプセルを1日2回継続して摂取させた。治験責任医師の判断で、イブジラストの1日用量を、治療の最初の8週間にわたって、3カプセルを1日2回、4カプセルを1日2回、および5カプセルを1日2回の間で調整する可能性があった。治験責任医師の判断で、イブジラストの1日用量を、忍容性を改善するために必要な場合は、1日3回に分割して摂取することができた。治療の最初の8週間の終わりに、対象は、その時点での治験薬の1日用量を維持していなければならない(1日6カプセル、1日8カプセル、または1日10カプセル)。投与間隔は、治験責任医師の判断で、1日2回または1日3回のいずれかであった。また、治験責任医師の判断で、研究全体にわたって投与間隔を1日2回~3回に変更することもできた。
【0121】
対象は、4、8、12、24、36、48、60、72、84、および96週目に、定期的な追跡訪問のためにクリニックに戻った。再発の可能性を示唆する症状を経験した対象は、治験責任医師への通知から3日以内にクリニックに戻り、適切な評価を受けた。治験薬を早期に中止した対象には、研究の終了(96週目)まで半年毎のフォローオフの治験薬を継続するように求めた。
【0122】
選択されたデータは、Fox et al.,The New England Journal of Medicine,2018,846-855に示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。表1は、患者集団を示す。
【0123】
患者は、ベースラインおよび24週毎に、Cirrus(n=183)またはSpectralis(n=61)スペクトルドメインデバイスのいずれかを使用した光干渉断層撮影(OCT)を受けた。黄斑体積および顆粒細胞/内網状層(GCIP)の厚さ(Cirrusのみ)を、2つの独立した認定リーダーによってcentral reading centerで実施し、測定値を平均して最終結果を得た。画像エンドポイントを、線形混合モデルを使用して経時的な試験群間の変化率の差について評価した。分析は、修正された治療意図(ITT)に従い、統計分析にすべての利用可能な値を含んだ。
【0124】
ベースラインでの黄斑測定値を表2に示す。主要なOCT結果は、全患者における経時的なpRNFL変化の治療群間の差であり、イブジラストを用いてpRNFL損失の1年当たり0.305μM(95% CI:-0.1786~0.7893)の減少推定量を示した。1年当たりのpRNFL損失の推定率は、イブジラスト群での0.0424μm(95% CI:-0.3091~0.3939)と比較して、プラセボ群では-0.2630μM(95% CI:-0.5973~0.0714)であった。Spectralis OCTで経過観察された患者において、黄斑体積の推定変化率は、イブジラストについては1年当たり-0.00503mm(95% CI:-0.02693~0.01688)、プラセボ(p=0.044)については1年当たり-0.03659mm(95% CI:-0.05824~0.01494)であった。Cirrus OCTで経過観察された患者において、黄斑体積の推定変化率は、イブジラストについては1年当たり-0.00040mm(95% CI:-0.02167~0.020866)、プラセボ(p=0.1734)については-0.02083(95% CI:-0.04134~-0.00033)であった。黄斑体積の損失率は、Spectralis OCT(1年当たりの群間差0.0316mm、95% CI:0.0008~0.0623)、およびCirrus OCT(1年当たりの群間差0.0204mm、95% CI:-0.0090~0.0499)によって測定したイブジラスト群で低減した。網膜神経節細胞-層内網状層の菲薄化もまた、イブジラストに有利な方向変化を示した(1年当たりの群間差0.4695μM、95% CI:-0.1189~1.0578)。
【0125】
96週間にわたるSpectralis OCTを使用した年間の黄斑体積の損失は、プラセボと比較してイブジラストではより遅かった。Cirrus OCTは、黄斑体積の損失の減少およびGCIP菲薄化に対して好ましい変化を示した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
均等物
本開示は特定の実施形態、および任意の特色によって具体的に開示されているが、本明細書に開示され、実施された本開示の修正、改善、および変形は、当業者によって用いられる場合があること、またかかる修正、改善および変形は、本開示の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。ここに提供される材料、方法、および実施例は、特定の実施形態を代表するものであり、また例示的であり、本開示の範囲に対する限界を意図するものではない。
【0129】
本開示は、本明細書で広く、一般的に説明されている。一般的な開示内に入るより狭い種および亜属の分類のそれぞれも、本開示の一部を形成する。これには、切除された材料が本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、その部類から任意の主題を除去するという条件または否定的な限定を伴う、本開示の一般的な説明が含まれる。
【0130】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群にて記載されている場合には、それによって本開示がまた、マーカッシュ群の任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して記載されていることを、当業者は認識するものとなる。
【0131】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、本開示は代替のみならびに「および/または」を示す定義を指示するけれども、代替のみを示すと明示的に示唆していない限り、または代替が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用される。
【0132】
段落A.神経変性疾患/障害または神経眼科的障害に関連する眼疾患/障害または損傷の治療を必要とするヒト患者において、それを行う方法であって、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
【0133】
段落B.眼疾患/障害または損傷が、黄斑損傷である、段落Aに記載の方法。
【0134】
段落C神経変性疾患/障害が、進行型多発性硬化症である、段落Aまたは段落Bに記載の方法。
【0135】
段落D.進行型多発性硬化症に関連する黄斑体積の損失の減少を必要とするヒト患者において、それを行う方法であって、ヒト患者に、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
【0136】
段落E.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与が、イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の投与なしと比較して、ヒト患者における黄斑体積の損失を減少させる、段落Dに記載の方法。
【0137】
段落F.進行型多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症を超えて進行している、段落C~Eのいずれか1つに記載の方法。
【0138】
段落G.進行型多発性硬化症が、一次性進行型多発性硬化症である、段落C~Eのいずれか1つに記載の方法。
【0139】
段落H.一次性進行型多発性硬化症が、時折の停滞および一時的なわずかな改善が認められるが、別個の再発ではない、発症からの疾患進行を特徴とする、段落Gに記載の方法。
【0140】
段落I.進行型多発性硬化症が、二次性進行型多発性硬化症である、段落C~Eのいずれか1つに記載の方法。
【0141】
段落J.二次性進行型多発性硬化症が、初期再発寛解過程として特徴付けられ、その後に進行が続き、時折の再発、軽度の寛解、および停滞を伴うかまたは伴わない、段落Iに記載の方法。
【0142】
段落K.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約12、24、36、48、60、72、84、または96週間投与される、段落A~Jのいずれか1つに記載の方法。
【0143】
段落L.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間投与される、段落A~Jのいずれか1つに記載の方法。
【0144】
段落M.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、1年間、2年間、3年間、4年間、または5年間投与される、段落A~Jのいずれか1つに記載の方法。
【0145】
段落N.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、経口投与される、段落A~Mのいずれか1つに記載の方法。
【0146】
段落O.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、錠剤、カプセル、またはマイクロビーズの投与剤形で投与される、段落Nに記載の方法。
【0147】
段落P.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、液体投与剤形で投与される、段落Nに記載の方法。
【0148】
段落Q.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、徐放性製剤として製剤化される、段落A~Pのいずれか1つに記載の方法。
【0149】
段落R.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約0.1mg/日~約4,000mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0150】
段落S.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約0.1mg/日~約720mg/日の量で投与される、段落A~Rのいずれか1つに記載の方法。
【0151】
段落T.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、少なくとも約30mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0152】
段落U.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約30mg/日~約200mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0153】
段落V.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約60mg/日~約600mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0154】
段落W.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約60mg/日~約100mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0155】
段落X.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約100mg/日~約480mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0156】
段落Y.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約30mg/日、約60mg/日、約80mg/日、約90mg/日、約100mg/日、約120mg/日、約150mg/日、約180mg/日、約210mg/日、約240mg/日、約270mg/日、約300mg/日、約360mg/日、約400mg/日、約440mg/日、約480mg/日、約520mg/日、約580mg/日、約600mg/日、約620mg/日、約640mg/日、約680mg/日、または約720mg/日の量で投与される、段落A~Qのいずれか1つに記載の方法。
【0157】
段落Z.イブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩が、約60mg/日、約80mg/日、または約100mg/日の量で投与される、段落Yに記載の方法。
【0158】
段落AA.1日に投与されるイブジラストまたはその薬学的に許容可能な塩の前記が、1つ、2つ、または3つの分量に分割される、段落R~Zのいずれか1つに記載の方法。
図1
【国際調査報告】