(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】スクロールコンプレッサを制御する方法及びスクロールコンプレッサ用の制御装置
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20220106BHJP
F04C 28/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F04C18/02 311X
F04C28/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521197
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2019077483
(87)【国際公開番号】W WO2020078821
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】102018125999.9
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516382847
【氏名又は名称】オーエーテー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】フランク オブリスト
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039BB21
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC39
3H129AA02
3H129AA17
3H129AB01
3H129BB44
3H129BB51
3H129CC05
3H129CC58
3H129CC62
(57)【要約】
本発明は、スクロールコンプレッサの制御に用いられる方法に関するものであって、そのスクロールコンプレッサは特に、入れ子に配置された第1と第2のスパイラルを有している。その場合に第1のスパイラルは、スクロールコンプレッサの減圧駆動又は圧縮駆動のために第2のスパイラルに対して移動可能である。スクロールコンプレッサのより長い駆動寿命を可能にするために、本方法は以下のステップを有している:第1のスパイラルを駆動するためにモータを駆動し;スクロールコンプレッサへ作用する多数の加速力を測定し、その場合に加速力は第2のスパイラルに対する第1のスパイラルの相対位置及び/又は位置角度に依存し;測定された加速力にしたがってモータのトルク推移を適合させることによって、加速力が減少されるように、モータを駆動する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに入れ子に配置された第1と第2のスパイラルを有するスクロールコンプレッサを制御する方法であって、第1のスパイラルがスクロールコンプレッサの減圧駆動又は圧縮駆動のために第2のスパイラルに対して移動可能である、
ものにおいて、以下のステップ:
-第1のスパイラルを移動させるためにモータを駆動するステップと;
-スクロールコンプレッサへ作用する多数の加速力を測定するステップであって、加速力が第2のスパイラルに対する第1のスパイラルの相対位置及び/又は位置角度に依存する、ステップと;
-測定された加速力にしたがってモータのトルク推移を適合させることによって、加速力が減少されるようにモータを駆動するステップと、
を含むことを特徴とするスクロールコンプレッサを制御する方法。
【請求項2】
モータのトルク推移を適合させることが、以下のステップ:
-モータのトルク位相を第1の方向へシフトさせるステップと;
-複数の加速力を測定するステップであって、
加速力が増大する場合には、モータのトルク位相を、第1の方法とは逆の第2の方向へシフトさせ、
加速力が低下する場合には、モータのトルク位相をその時の方向に、加速力の最小が達成されるまで、さらにシフトさせる、ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モータのトルク推移の適合が、以下のステップ:
-モータのトルク振幅を第1の方向へ変化させるステップと;
-多数の加速度を測定するステップであって、
加速度が増大する場合には、モータのトルク振幅を、第1の方向とは逆の第2の方向へ変化させ、
加速力が減少する場合には、モータのトルク振幅をその時の方向に、加速力の最小が達成されるまで、さらに変化させる、ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
互いに入れ子に配置された第1と第2のスパイラルを有するスクロールコンプレッサのための制御装置において、
制御装置が次のように、すなわち
-スクロールコンプレッサの減圧駆動又は圧縮駆動のために、第1のスパイラルを第2のスパイラルに対して移動させるために、モータを制御し;
-測定値としてスクロールコンプレッサにかかる多数の加速力を検出し、加速力が第2のスパイラルに対する第1のスパイラルの相対位置及び/又は位置角度に依存しており、かつ
-測定された加速力にしたがってモータのトルク推移を適合させることにより、加速力の検出された測定値が減少されるように、モータを駆動するように、
設計されている、ことを特徴とするスクロールコンプレッサのための制御装置。
【請求項5】
制御装置が次のように、すなわち
モータのトルク推移を、モータのトルク位相が第1の方向にシフトされるように、適合させ、
加速力の検出された測定値が増大する場合に、モータのトルク位相が、第1の方向とは逆の第2の方向へシフトし、かつ
加速力の検出された値が減少する場合には、モータのトルク位相がその時の方向に、加速力の最小が達成されるまで、さらにシフトする
ように、設計されている、ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
制御装置が次のように、すなわち
モータのトルク推移を、モータのトルク振幅が第1の方向にシフトされるように、適合させ、
加速力の検出された測定値が増大する場合には、モータのトルク振幅が、第1の方向とは逆の第2の方向へシフトし、かつ
加速力の検出された測定値が減少する場合に、モータのトルク振幅がその時の方向に、加速力の最小値が達成されるまで、さらにシフトするように、
設計されている、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の制御装置を有するスクロールコンプレッサ。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセッサによって実施される場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法を実施させる、記憶されたインストラクションを有するコンピュータ読取り可能なメモリ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールコンプレッサを制御する方法及びスクロールコンプレッサ用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールコンプレッサは、実質的にガス、一般的には流体、をポンプと同様にさらに移送して、付加的に圧縮することができる機械である。そのためにスクロールコンプレッサは、2つの互いに入れ子に配置されたスパイラルを有しており、それらが互いに逆方向に移動することでガスを少しずつ圧縮する。そのために例えば第1のスパイラルが固定的に位置決めされており、第2のスパイラルは特に自己回転なしで円形の軌道上で第1のスパイラルの中心点を中心に移動可能である。第2のスパイラルが第1のスパイラルに対して移動することによって、2つのスパイラルの間に常にチャンバもしくは中空室が形成され、それが移動の回転方向にしたがってスパイラルの中心点へ、あるいは外側へ変位される。通常、スパイラルは、ポンピングすべきガスが外部から吸い込まれ、ポンプの内部で圧縮されて、スパイラル中心の接続端を介して排出されるように、移動される。
【0003】
スクロールコンプレッサは、圧縮又は減圧のプロセスにより、かつ特に円形の軌道にわたって必要とされるトルクが一定でないことに基づいて、加速力を発生させることがあり、それが特にスクロールハウジングへ移転する。それによって強い振動が生じることがあり、その振動が長い間にスクロールコンプレッサのスパイラル及び/又はそのハウジングを損傷し、したがってスクロールコンプレッサの駆動寿命を低下させる。
【0004】
さらに電気的に駆動される車両(内燃機関なし)において、スクロールコンプレッもしくはスクロール圧縮器は、できるだけ振動なしで作動しなければならない。というのは、電気車両における振動は、化石燃料で駆動される車両に比較して根本的に少なく、たとえばスクロールコンプレッサのような、付加的な震動源は望ましくないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、スクロールコンプレッサの駆動寿命を実質的に延長する方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、そのために、請求項1に記載のスクロールコンプレッサを制御する方法が設けられている。この方法は、特に入れ子に配置された第1と第2のスパイラルを有する、スクロールコンプレッサを制御するために用いられる。その場合に第1のスパイラルは、スクロールコンプレッサの減圧駆動又は圧縮駆動のために第2のスパイラルに対して移動可能である。
方法は、以下のステップを有する:
-第1のスパイラルを移動させるためにモータを駆動し;
-スクロールコンプレッサへかかる多数の加速力を測定し、その場合に加速力は第2のスパイラルに対する第1のスパイラルの相対位置及び/又は位置角度に依存し;
-測定された加速力に従ってモータのトルク推移を適合させることにより、加速力が減少されるように、モータを駆動する。
【0007】
この方法は、内部の、もしくは組み込まれたセンサをもたないスクロールコンプレッサをよりよく制御することができる、という利点を有している。それによってすでに知られた電気的に駆動されるスクロールコンプレッサを、新たに考えられて、構成されたスクロールコンプレッサに替える必要がなく、それによってスクロールコンプレッサをしかるべくグレードアップする場合のコストと時間が節約される。
【0008】
振動の少ない駆動によって、スクロールコンプレッサの構成部品、特にスパイラル及びそれと結合された部材がていねいに扱われ、かつ過度の損耗から保護される。同時にそれに伴ってスクロールコンプレッサのより長い駆動寿命を保証することができる。
【0009】
加速力は、好ましくは適切なセンサによって測定され、そのセンサはスクロールコンプレッサの外側に配置することができる。そのほかにおいて、スクロールコンプレッサはその吸い込み圧及び/又はその高圧に関して定め、かつ測定することができる。提供される付加的な情報は、スクロールコンプレッサ及び電気モータのトルク推移もしくは特性曲線ダイアグラムであり、それが必要とされる、もしくは提供されるトルクを角度/位相及び/又は回転数にしたがって記述する。
【0010】
さらに、モータのトルク推移の適合が以下のステップを有していると、好ましいことが明らかにされている:
-モータのトルク位相を第1の方向にシフトさせ;
-多数の加速力を測定し;
加速力が増大する場合には、モータのトルク位相を、第1の方向とは逆の第2の方向へシフトさせ;
加速力が減少する場合には、モータのトルク位相をその時の方向に、加速力の最小が達成されるまで、さらにシフトさせる。
【0011】
これらのステップは、モータによって提供すべき出力が変化せず、したがって付加的な電気的出力を必要としない、という利点を有する。また、振動を減少させるために、モータは維持することができ、かつ出力の強いモータに交換する必要がない。モータによって提供すべきトルクのシフトは、第1のスパイラルに対する第2のスパイラルの角度/位相もしくは位置にしたがって行われる。各電気モータは、特性曲線を有しており、その特性曲線は、提供される電流及び/又は電圧及びモータ軸の角度にしたがってモータのトルクを記述する。モータのトルクが、スクロールコンプレッサの必要とされるトルク特性曲線に実質的に等しく重なるように、位相シフトもしくは角度シフトされるとすぐに、モータによって提供されるトルクとスクロールコンプレッサによって必要とされるトルクの間の差が低下する。その場合に、必要とされるトルクが振幅において提供されるトルクよりも大きくなった場合に初めて、振動が生じる。スクロールコンプレッサのために必要とされるトルクの特性曲線は、360°後に、したがってスパイラルの1周回後に、周期的に繰り返され、かつ唯一の最大しかもたないので、電気モータのトルクの角度シフト/位相シフトによって即座に、振動が減少されるか、及びそのためにどの方向に、特に時計方向あるいは反時計方向に、シフトが行われなければならないかが、認識可能である。
【0012】
同様に、モータのトルク推移の適合は、付加的又は代替的に、好ましくは以下のステップを有する:
-モータのトルク振幅を第1の方向へ変化させ;
-多数の加速力を測定し;
加速力が増大する場合に、モータのトルク振幅を、第1の方向とは逆の第2の方向に変化させ;
加速力が減少する場合には、モータのトルク振幅をその時の方向に、加速力の最小が達成されるまで、さらに変化させる。
【0013】
これらの好ましいステップは、付加的又は代替的にトルク位相をシフトさせるために使用することができる。その場合にトルクの強さもしくは振幅は、振動が最小に達し、かつ/又は振動の変化、特にその減少があらかじめ定められた/所定の値をもはや上回らなくなるまでの間、変化される。同様にトルクの振幅は、振動が再び強くなり始める時点まで、減少させることができる。これらのステップは、スクロールコンプレッサの需要に適合されたエネルギ量を提供し、かつ同時に振動の少ない、エネルギ効率のよい駆動を可能にするために、利点を有している。
【0014】
加速力が減少した場合、もしくはその時には、好ましくはモータのトルク振幅を、加速力の減少変化があらかじめ定められた値に達するまでの間、その時の方向にさらに変化させることが行われる。このステップは、方法を加速させ、かつ予測可能な期間で終了させる。モータが、スクロールコンプレッサによって必要とされる値を上回るトルク振幅を提供する場合でも、さらに振動を測定することができる。トルク振幅変化にもかかわらず、もはや振動変化が減少されなくなるとすぐに、モータの出力増強は無限に増大されず、停止される;それによって特に電気エネルギが節約される。
【0015】
他の好ましい実施形態において、加速力は次のように、すなわち測定された最大値及び/又は測定された値の合計が、第1又は第2のスパイラルの少なくとも1つの周回又は周回セクションにわたって減少されるように、減少される。このステップは、振動が1つの時点及び/又は1つの角度位置の間だけでなく、好ましくは移動可能なスパイラルの1つ又は複数の完全な回転/周回にわたって減少されることを、保証するものである。
【0016】
本発明によれば、同様に、請求項4に記載の制御装置が設けられている。この制御装置は、入れ子に配置された第1と第2のスパイラルを有するスクロールコンプレッサのために設計されている。さらに制御装置は次のように:
-スクロールコンプレッサの減圧駆動又は圧縮駆動のために第1のスパイラルを第2のスパイラルに対して移動させるように、モータを制御し;
-スクロールコンプレッサへかかる多数の加速力を測定値として検出し、その場合に加速力は、第2のスパイラルに対する第1のスパイラルの相対位置及び/又は位置角度に依存しており;かつ
-測定された加速力にしたがってモータのトルク推移を適合させることにより、加速力の検出された測定値が減少されるように、モータを制御する、
ように、設計されている。
【0017】
本発明に係る制御装置は、上述した制御方法と同じ利点を有しており、かつ実質的に、この方法と同じステップを、特に付加的又は代替的に実施し、もしくはスクロールコンプレッサに実装するように、形成されている。逆に、本発明に係る方法が本発明に係る制御装置の特徴、特にその制御ステップを、付加的又は代替的に有することができる。
【0018】
さらに制御装置は、好ましくはモータのトルク推移を次のように、すなわちモータのトルク位相が第1の方向にシフトされ;その場合に、加速力の検出された測定値が増大する場合に、モータのトルク位相を、第1の方向とは逆の第2の方向にシフトさせ、かつ加速力の検出された測定値が減少する場合には、モータのトルク位相を、加速力の最小が達成されるまで、その時の方向にさらにシフトさせるようにして、適合させるように設計されている。
【0019】
好ましくは制御装置は、モータのトルク推移を次のように、すなわちモータのトルク振幅が第1の方向にシフトされ、その場合に、加速力の検出された測定値が増大する場合に、モータのトルク振幅を、第1の方向とは逆の第2の方向へシフトさせ、かつ加速力の検出された測定値が減少する場合には、モータのトルク振幅を、加速力の最小が達成させるまで、その時の方向にさらにシフトさせるようにして、適合させるように、設計されている。
【0020】
他の好ましい実施形態において、制御装置は次のように、すなわち加速力が減少する場合に、モータのトルク振幅を、加速力の減少変化があらかじめ定められた値に達するまでの間、その時の方向に変化させるように、設計されている。
【0021】
同様に制御装置が、測定された最大値及び/又は測定された値の合計が、第1のスパイラルの少なくとも1つの周回又は周回セクションにわたって減少されるようにして、加速力を減少させるように設計されていると、好ましいことが明らかにされている。
【0022】
さらに、本発明に係る制御装置を有するスクロールコンプレッサが設けられ、かつ記憶されたインストラクションを有するコンピュータ読取り可能なメモリ媒体が設けられており、そのインストラクションは、少なくとも1つのプロセッサによって実施される場合に、少なくとも1つのプロセッサに、本発明に係る方法を実施させる。
【0023】
以下で説明する方法は、実質的に本発明に係る制御装置及び本発明に係る方法の好ましい実施例に関するものであって、その場合にこれらの図は本発明を限定するためでなく、実質的に説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、入口と出口の圧力比3/20を有するスクロールコンプレッサのためのトルク特性曲線ダイアグラムを示している。
【
図2】
図2は、入口と出口の圧力比3/25を有するスクロールコンプレッサのためのトルク特性曲線ダイアグラムを示している。
【
図3】
図3は、入口と出口の圧力比4/15を有するスクロールコンプレッサのためのトルク特性曲線ダイアグラムを示している。
【
図4】
図4は、圧力比3/20におけるスクロールコンプレッサの軸回転数ダイアグラムを示している。
【
図5a】
図5aは、スクロールコンプレッサのハウジングを示す側面図である。
【
図5b】
図5bは、
図5aのスクロールコンプレッサの固定点マウント1と固定点マウント2へかかる加速力ダイアグラムを示している。
【
図6】
図6は、30°の位相オフセットを有する圧力比3/20におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。
【
図7】
図7は、60°の位相オフセットを有する圧力比3/20におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。
【
図8】
図8は、10°の位相オフセットを有する圧力比3/20におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。
【
図9】
図9は、圧力比3/20及び振幅エラーもしくは振幅オフセットにおけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。
【
図10】
図10は、圧力比にしたがってスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。
【
図11】
図11は、圧力比に依存するトルク偏差についてのダイアグラムを示している。
【
図12】
図12は、周回軌道角度にしたがって、多数の異なる特性曲線を有するスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、3/20;すなわち3バールの入口圧力と20バールの出口圧力を有するスクロールコンプレッサのためのトルク特性曲線ダイアグラムを示している。上述した圧力比を実現するために、スクロールコンプレッサのために平均的に必要とされるトルクは、約3.2Nm(破線を参照)である。周回軌道角度(英語:orbiting angle)にしたがって実際のトルク(実線を参照)は0度において約2.8Nmで始まり、60度における約2.4Nmの最小まで連続的に下降する。次に必要とされるトルクは、200度における約4.5Nmの最大まで連続的に上昇して、360度における約2.8Nmまで連続的に下降する。この特性曲線が、各周回軌道で繰り返される。
【0026】
図2は、3/25の入口と出口の圧力比を有するスクロールコンプレッサのためのトルク特性曲線ダイアグラムを示している。上述した圧力比を実現するために、スクロールコンプレッサのために平均的に必要とされるトルクは、約3.6Nmである(破線を参照)。周回軌道角度にしたがって実際のトルクは、0度において約3.4Nmで始まり(実線を参照)、70度における約2.5Nmの最小まで連続的に下降する。次に必要とされるトルクは、約230度における約5.3Nmの最大へ連続的に上昇し、かつ360度において約3.4Nmまで連続的に下降する。
図1におけるように、この特性曲線が各周回軌道で繰り返される。
【0027】
図3は、4/15の入口と出口の圧力比を有するスクロールコンプレッサのためのトルク特性曲線ダイアグラムを示している。上述した圧力比を実現するために、スクロールコンプレッサのために必要とされるトルクは、約3.0Nmである(破線を参照)。周回軌道角度にしたがって、実際に必要とされるトルク(実線を参照)は0度における約2.6Nmで始まって、110度における約3.7Nmの最大まで連続的に上昇する。次に、必要とされるトルクは、約360度における約2.6Nmの最小まで連続的に下降する。
図1におけるように、この特性曲線は各周回軌道で繰り返される。
【0028】
図4は、3/20の圧力比におけるスクロールコンプレッサの軸回転数ダイアグラムを示している。平均的な回転数は、分あたり(略:rpm)1500回転である。
図1から3に示すように、必要とされるトルクが異なるので、周回軌道角度にしたがって、もしくは必要とされるトルクがスクロールコンプレッサの平均値の上にあるか、下にあるかにしたがって、軸回転もしくは移動可能なスパイラルの加速又は減速が行われる。
【0029】
図5Aは、スクロールコンプレッサのハウジングの側面図を示しており、そのハウジングは、たとえば車両内に、ハウジングを固定するための固定点マウント1とマウント2を有している。
【0030】
図5Bは、
図5Aのスクロールコンプレッサの固定点マウント1と2にかかる加速力ダイアグラムを示している。スクロールコンプレッサの振動によって、加速力が固定点へ作用し、それをしかるべきセンサによって測定することができる。マウント1における加速力の特性曲線は、マウント2の特性曲線に対して鏡状に逆であり、もしくはX軸において反転する。
【0031】
図6は、30°の位相オフセットもしくは角度オフセットを有する、圧力比3/20におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。この角度オフセットは、必要なトルクの特性曲線(実線を参照、以下では「RT」と略称-required torque)と実際に提供されるトルクの特性曲線(破線を参照、以下では「AT」と略称-actual torque)の間にある。RTの最大とATの最大の間で特徴づけられる角度オフセットが良好に認識できる。RTの値がATの値を上回るとすぐに、振動が増大する(第3の細い実線を参照)。RTとATが交差した場合に、振動は0ニュートンである。振動は15Nの最大の振幅値(最大と最小の間)を有する。
【0032】
図7は、
図6におけるのと同様に、3/20の圧力比におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示しいるが、この場合においては60°の位相オフセットを有する。振動は、28Nの最大の振幅値(最大と最小の間)を有している。
【0033】
図8は、
図6におけるのと同様に、3/20の圧力比におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示しているが、この場合においては10°の位相オフセットを有する。振動は、5Nの最大振幅値(最大と最小の間)を有する。
【0034】
図9は、3/20の圧力比と振幅オフセット(英語:amplitude error)におけるスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。振動は、7Nの最大の振幅値(最大と最小の間)を有している。この場合において特性曲線RTとATは位相が等しく、かつ
図6から8におけるように位相シフトもしくは位相オフセットしていない。これは、最大と最小がそれぞれ等しい周回軌道角度にあること、すなわちこの場合において60度と200度にあることを、意味している。RTとATが交差する場合に、振動もゼロである。
【0035】
図10は、入口圧p
inに対する出口圧p
outの比にしたがってスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示しており、その場合に異なる出口圧について5つの特性曲線が示される。5つすべての特性曲線の最大は、約2.8のp
out対p
inにある。
【0036】
図11は、入口圧p
inに対する出口圧p
outの比にしたがってトルク偏差についてのダイアグラムを示しており、その場合に異なる出口圧について5つの特性曲線が示される。5つすべての特性曲線の最大は、約12のp
out対p
inにある。
【0037】
図12は、0度から360度の周回軌道角度にしたがって、多数の異なる特性曲線を有するスクロールコンプレッサのトルクダイアグラムを示している。種々の特性曲線1から15は、出口圧に対する入口圧の圧縮比を表す。低い方の特性曲線1から4は、大体において変わらない推移を示すが、より高い特性曲線、たとえば11から15においては、必要なトルクに関してきわめてはっきりとした最大と最小の値が見られる。
【国際調査報告】