(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】オゾニドの不均化クエンチの新規方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/34 20060101AFI20220106BHJP
C07C 53/126 20060101ALI20220106BHJP
C07C 55/18 20060101ALI20220106BHJP
C07C 59/01 20060101ALI20220106BHJP
C07C 59/225 20060101ALI20220106BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20220106BHJP
C07C 47/21 20060101ALI20220106BHJP
C07C 45/40 20060101ALI20220106BHJP
C07C 69/716 20060101ALI20220106BHJP
C07C 69/48 20060101ALI20220106BHJP
C07C 67/313 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C07C51/34
C07C53/126
C07C55/18
C07C59/01
C07C59/225
C07C47/02
C07C47/21
C07C45/40
C07C69/716 Z
C07C69/48
C07C67/313
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521268
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 US2019057045
(87)【国際公開番号】W WO2020082007
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517257629
【氏名又は名称】ピー2・サイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】P2 Science, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ケンドール
(72)【発明者】
【氏名】ヨンホア・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・フォリー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC45
4H006AC46
4H006BB17
4H006BB31
4H006BC10
4H006BE11
4H006BQ10
4H006BS10
4H006KA31
(57)【要約】
本開示は、ブレンステッド塩基を用いてオゾニド中間体を非還元的にクエンチして、アルデヒド、ケトンおよび/またはカルボン酸生成物を得ることを含む、アルケンでオゾン分解を実施する改善された方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレンステッド塩基を用いてオゾニドを非還元的にクエンチして、アルデヒド、ケトンおよび/またはカルボン酸生成物を得る方法であって、(a)アルケンをオゾンと反応させて、二次オゾニド中間体を生成する工程、および(b)ブレンステッド塩基を用いてオゾニドをクエンチして、アルデヒド、ケトンおよび/またはカルボン酸生成物を得る工程を含む、方法。
【請求項2】
工程(b)が、還元剤および/または酸化剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)のブレンステッド塩基が、無機ブレンステッド塩基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
無機ブレンステッド塩基が、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムカルボキシレート塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩または酪酸塩)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無機ブレンステッド塩基が、C
2-C
12飽和カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸またはデカン酸)のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
無機ブレンステッド塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属脂肪酸カルボキシレート(すなわち、脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩)である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
脂肪酸カルボキシレートが、C
8-C
26脂肪酸カルボキシレート(例えば、C
8、C
10、C
12、C
14、C
16、C
18、C
20、C
22、C
24またはC
26脂肪酸カルボキシレート)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
脂肪酸カルボキシレートが、飽和脂肪酸カルボキシレート(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸またはセロチン酸)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
脂肪酸カルボキシレートが、不飽和脂肪酸カルボキシレート(例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドラエ酸、エイコセン酸、エルカ酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸)である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
無機ブレンステッド塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
無機ブレンステッド塩基であるカルボキシレート塩が、カルボン酸と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩またはリン酸塩との混合物を用いて工程(b)を実施することによりインサイチュで生成される、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
カルボン酸が不飽和脂肪酸であり、不飽和脂肪酸がオゾニドのアルケン前駆体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カルボン酸が工程(b)の溶媒であり、例えば、該溶媒がC
2-
12飽和カルボン酸またはC
8-
26飽和脂肪酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が、共溶媒として水を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)が30~100℃の温度にて生じ、所望により、該温度が50~90℃または50~80℃である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
クエンチ工程(b)からの、アルデヒド生成物、ケトン生成物、カルボン酸生成物またはその任意の組合せを単離または精製する工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
アルケンが、モノ不飽和脂肪酸またはエステル、例えばC
8-C
26モノ不飽和脂肪酸またはエステルである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
アルケンが、テルペンである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
テルペンが、ピネン、カンフェン、シトロネロール、シトロネラール、イソプレゴール、ロンギホレン、イソツジョンおよびツジョンより選択される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本PCT国際出願は、2018年10月19日出願の米国仮出願第62/748,161号に基づく優先権および利益を主張し、この内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
(発明の分野)
本開示は、アルケンのオゾン分解を実施する方法であって、クエンチが酸化または還元されたフラグメントの両方への中間体二次オゾニドの不均化をもたらすものであり、該方法がブレンステッド塩基でオゾニド中間体を処理する工程を含む、改善された方法に関する。いくつかの実施態様において、アルケンは、脂肪酸または脂肪酸エステルである。
【背景技術】
【0002】
オゾン分解は、オゾンを用いたアルケンの不飽和炭素-炭素結合の酸化を含む、産業的に有用な変換である。報告されているメカニズム(「Criegeeメカニズム」)は、カルボニル化合物およびカルボニルオキシド化合物へ急速に分解する一次オゾニド(1,2,3-トリオキソラン)中間体の初期形成から始まる。このペアの初期中間体が再結合して、ペルオキシドブリッジを特徴とする構造を有する、より安定な二次オゾニド(1,2,4-トリオキソラン)を形成する。
【化1】
【0003】
一次オゾニドまたはカルボニルオキシドより安定であるが、二次オゾニドは、依然として高エネルギー化学種であり、これは、望ましくない副生成物への分解および有機過酸化物形成(ビスペルオキシド、ポリペルオキシドおよびヒドロペルオキシド種)である自動加速熱分解を受ける。したがって、所望のカルボニル生成物を良好な収率で生成するために、更なる反応を注意深く制御しなければならない。
【0004】
二次オゾニドの制御されていない熱分解は、典型的には、過酸化物結合分解の強い駆動力(極めて発熱性)およびラジカル成長などの非選択的な速度論的経路のため、生成物の極めて変化しやすい混合物を生成する。これらの理由から、二次オゾニドは、望ましくない化学生成物であり、その後の化学工程で反応させなければならない。
【化2】
【0005】
伝統的に、二次オゾニド中間体を酸化的または還元的に開裂させて、カルボニル生成物を生成させる。酸化的開裂は、カルボン酸および/またはケトン生成物を生成する。還元的開裂は、ケトンおよび/またはアルデヒド生成物を生成し、これは、第1級または第2級アルコール生成物にさらに還元され得る。伝統的な条件は、通常、カルボン酸(酸化生成物)とアルデヒド(還元生成物)の組合せを生成できない。カルボニル生成物、特にアルデヒドは、極めて望ましいが、その高収率の生成は、これらの化合物がアルコールへ過剰に還元されるため困難である。最も一般的に用いられる還元剤は、二次オゾニドを還元することおよびケトンまたはアルデヒドを還元することの両方が可能であるため、過剰な還元を避けるのに必要である穏やかな還元は、達成困難である。還元条件はまた、公知の化学的不適合性および自己酸化、例えばアルドール縮合からカルボニル生成物を保護しなければならない。
【化3】
【0006】
特定の条件下で、第2級または第3級の二重結合から生成されたオゾニドを1工程でクエンチして、カルボニル(アルデヒドまたはケトン)とカルボン酸の組合せを生成できることが報告されている。したがって、オゾニドの一方の炭素原子は形式的に酸化され、他方は形式的に還元され(不均化)、これは、酸化される炭素原子が他の炭素分子を効果的に還元するためであり、外部から供給される酸化剤または還元剤が不要になる。
【0007】
この反応を熱的に実現することができ、あるいはバナジウムまたは白金などの特定の金属触媒の存在下で進めることができる。例えば、Griesbaumらは、シクロヘキセンおよびシクロオクテンのオゾン分解により生じるオゾニドの熱不均化が、それぞれ6-オキソ-ヘキサノン酸および8-オキソ-オクタン酸を生成することを報告している。J. Org. Chem. 54, 383-89 (1989)(重水素化クロロホルム中60℃での熱分解)。Yoshidaらは同様に、4H-シクロペンタ[def]フェナントレンのオゾン分解により生じるオゾニドの還流トルエン中での熱分解を開示している。Tetrahedron 35, 2237-41 (1979)。酸分解はまた、オゾニドの不均化に影響を及ぼすことも示されている。Miuraらは、ジクロロメタン中のクロロスルホン酸または酢酸を用いた、様々なメチルおよびフェニルで置換されたインデンのオゾン分解により生成されたオゾニドの酸分解を報告している。J. Am. Chem. Soc. 105, 2414-26 (1983)。結果は変わりやすく、複数の不純物および転位副生成物を含み得る。
【0008】
オゾニドをクエンチするための有機および無機塩基の使用は、ある程度の成功を示している。例えば、Honらは、E1cb除去プロセスにおける第3級アミンおよび複素環式アミン塩基を用いて、シクロペンタンのオゾン分解のオゾニド中間体から5-オキソペンタンカルボン酸を高収率で生成するのに成功したことを説明している。Tetrahedron 51(17), 5019-34 (1995); Syn. Comm. 23(11), 1543-53 (1993)。しかしながら、反応条件をスチレンオキシドおよび1-デセンに由来するオゾニドに適用したとき、低収率および複合混合物が得られた。Honは、無機塩基の使用では効率が低いことを具体的に説明している。
【0009】
オゾニド反応流をクエンチして、不均化生成物を生成する迅速で安全な手段が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、ブレンステッド塩基を用いてオゾニドを非還元的にクエンチして、アルデヒド、ケトンおよび/またはカルボン酸生成物を得る方法を提供する。当該方法は、驚くほど簡単で、穏やかで、経済的な方法である。適切なブレンステッド塩基は、水酸化物およびカルボン酸塩基を含む。本発明は、オゾニドクエンチのコストおよび複雑さを極めて低減する。具体的には、オゾニドから直接アルデヒドへの新規な還元剤を用いない経路であって、得られたアルデヒドのアルコールへの過剰還元のリスクを排除する経路を提供するものである。この変換は、生成物の品質を向上させる安価な材料を用いて達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
オゾンでのアルケンの反応から生じたオゾニドをブレンステッド塩基で処理して、完全にクエンチされた(測定可能な過酸化物がない)不均化生成物を穏やかな条件下で生成できることを発見した。カルボン酸塩、例えば酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムおよび/またはノナン酸ナトリウムは、不均化を促進するのに十分な塩基性であることが分かった。さらに、有機酸媒体中で水酸化ナトリウムなどの無機塩基を加えることにより、これらの塩をインサイチュで生成できる。不均化から得られたカルボン酸のpK
aが、ブレンステッド塩基の共役酸の1pK
a単位内である限り、化学量論量のブレンステッド塩基が必要であり(これにより、酸-塩基平衡、K
eqによりブレンステッド塩基の再生成が可能である)、この場合、ブレンステッド塩基の触媒量(典型的に10~20%)で反応を促進できる。このアプローチは、簡単な方法でケトン、アルデヒドおよびカルボン酸を生成できる。
【化4】
【0012】
したがって、第1態様において、本開示は、ブレンステッド塩基を用いてオゾニドを非還元的にクエンチして、アルデヒド、ケトンおよび/またはカルボン酸生成物を得る方法であって、(a)アルケンをオゾンと反応させて、二次オゾニド中間体を生成する工程、および(b)ブレンステッド塩基を用いてオゾニドをクエンチして、アルデヒド、ケトンおよび/またはカルボン酸生成物を得る工程を含む、方法(方法1)を提供する。
【0013】
第1態様の更なる実施態様において、本開示は、以下を提供する:
1.1 工程(b)が、還元剤および/または酸化剤を含まない、方法1。
1.2 工程(b)のブレンステッド塩基が、無機ブレンステッド塩基である、方法1または1.1。
1.3 無機ブレンステッド塩基が、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムカルボキシレート塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩またはブタン酸塩)である、方法1.2。
1.4 無機ブレンステッド塩基が、C2-C12飽和カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸またはデカン酸)のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩である、方法1.3。
1.5 無機ブレンステッド塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属脂肪酸カルボキシレート(すなわち、脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩)である、方法1.3。
1.6 脂肪酸カルボキシレートが、C8-C26脂肪酸カルボキシレート(例えば、C8、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24またはC26脂肪酸カルボキシレート)である、方法1.5。
1.7 脂肪酸カルボキシレートが、飽和脂肪酸カルボキシレート(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸)である、方法1.5または1.6。
1.8 脂肪酸カルボキシレートが、不飽和脂肪酸カルボキシレート(例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドラエ酸、エイコセン酸、エルカ酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸)である、方法1.5または1.6。
1.9 無機ブレンステッド塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)である、方法1.2。
1.10 無機ブレンステッド塩基であるカルボキシレート塩が、カルボン酸と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または硫酸塩との混合物を用いて工程(b)を実施することによりインサイチュで生成される、方法1.3~1.9のいずれか。
1.11 工程(b)が、工程(b)に存在するオゾニドの理論モル量に対して測定した過剰のカルボン酸(例えば、1当量超、1.5当量超、2当量超、3当量超、4当量超、5当量超、10当量超、20当量超または50当量のカルボン酸)を含む、方法1.10。
1.12 カルボン酸が不飽和脂肪酸であり、不飽和脂肪酸がオゾニドのアルケン前駆体である、方法1.10または1.11。
1.13 カルボン酸が工程(b)の溶媒であり、例えば、該溶媒がC2-12飽和カルボン酸またはC8-26飽和脂肪酸である、方法1.11。
1.14 工程(b)が、工程(b)に存在するオゾニドの理論モル量に対して測定した、0.5~3モル当量、例えば1~2当量、1~1.5当量または約1当量の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を含む、方法1.9、1.10または1.11。
1.15 工程(b)が、触媒量のアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、例えば、工程(b)に存在するオゾニドの理論モル量に対して測定した、0.1~0.9モル当量、例えば0.1~0.5当量、0.1~0.3当量、0.1~0.2当量または約0.1当量の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を含む、方法1.9~1.14のいずれか。
1.16 工程(b)が、有機ブレンステッド塩基(例えばトリアルキルアミンまたは複素環式アミン塩基)を含む、方法1または1.1~1.15のいずれか。
1.17 工程(b)が、共溶媒として水を含む、方法1または1.1~1.16のいずれか。
1.18 工程(b)が、30~100℃の温度にて生じる、方法1または1.1~1.17のいずれか。
1.19 該温度が、50~90℃または50~80℃である、方法1.18。
1.20 クエンチ工程(b)からのアルデヒド生成物を単離または精製する工程をさらに含む、方法1または1.1~1.19のいずれか。
1.21 クエンチ工程(b)からのケトン生成物を単離または精製する工程をさらに含む、方法1または1.1~1.19のいずれか。
1.22 クエンチ工程(b)からのカルボン酸生成物を単離または精製する工程をさらに含む、方法1または1.1~1.21のいずれか。
1.23 アルケンが、モノ不飽和脂肪酸またはエステル、例えばC8-C26モノ不飽和脂肪酸またはエステルである、方法1または1.1~1.22のいずれか。
1.24 アルケンが、C10-C20モノ不飽和脂肪酸またはエステルである、方法1.23。
1.25 アルケンが、オレイン酸、リシノール酸またはエルカ酸、またはそのエステルより選択される、方法1.23。
1.26 アルケンが、脂肪酸エステル、例えばC1-6アルキルエステル(例えばメチルまたはエチルエステル)である、方法1.23、1.24または1.25。
1.27 アルケンが、テルペンである、方法1または1.1~1.22のいずれか。
1.28 テルペンが、ピネン、カンフェン、シトロネロール、シトロネラール、イソプレゴール、ロンギホレン、イソツジョンおよびツジョンより選択される、方法1.27。
1.29 アルケンが非環式である(例えば、アルケンが直鎖アルケンである)、前記いずれかの方法。
1.30 アルケンが、二置換または三置換されている二重結合を有する、前記いずれかの方法。
【0014】
第2態様において、本開示は、オゾニドを非還元的にクエンチする方法、例えば方法1または1.1~1.30のいずれかに記載の方法においてブレンステッド塩基の使用を提供する。
【0015】
第3態様において、本開示は、方法1または1.1~1.30のいずれかに従って製造されるアルデヒド、ケトンまたはカルボン酸を提供する。
【0016】
第4態様において、本開示は、方法1または1.1~1.30のいずれかに従って製造されるアルデヒド、ケトンまたはカルボン酸を含む生成物または組成物を提供する。
【0017】
2つのジェミナル官能基を有するオゾニドについて、ブレンステッド塩基の脱プロトン化は、利用可能な水素を有する炭素でのみ生じる。すなわち、不均衡は、三置換オゾニドおよびジェミナル二置換オゾニドに適用されるとき、化学選択的である。例えば、β-ピネンオゾニドの代表的不均化は、ノピノンおよびギ酸のほぼ等モル比をもたらす。隣接二置換アルケンは、5員オゾニド環の炭素中心のいずれか1つにて脱プロトン化を受け得る二次オゾニドを生成し、各炭素からのアルデヒドおよびカルボン酸生成物の混合物をもたらす(C-H結合のpK
aの差異および脱プロトン化の速度に依存する比率)。同様に、一置換オゾニドは、隣接二置換アルケンからのオゾニドと同じ方法で生成物の混合物へ不均化を起こす。したがって、不均化の化学的選択性は、多くの基質について予測できる。最も注目すべきことに、アルデヒドは、還元剤を用いずに本開示の方法により二次オゾニドから直接得ることができる。
【化5】
【0018】
このアプローチを広範囲のオゾニド(一置換、二置換または三置換二次オゾニド)に適用するとき、脂肪酸およびテルペンのオゾニドは、この変換に特に適する。このアプローチを用いて、オレイン酸、リシノール酸、エルカ酸およびそのエステルのオゾニドを容易にクエンチでき、同様に、ピネン、カンフェン、シトロネロール、シトロネラール、イソプレゴール、ロンギホレン、イソツジョンおよびツジョンを含む様々なテルペンのオゾニドをクエンチできる。
【0019】
いくつかの実施態様において、溶媒がC2-C26カルボン酸、例えばC2-12カルボン酸またはC8-26脂肪酸を含む混合物中で、オゾニドが生成される。いくつかの実施態様において、溶媒は、酢酸、プロパン酸またはノナン酸、またはその組合せを含む。いくつかの実施態様において、水は、共溶媒として用いられる。
【0020】
いくつかの実施態様において、クエンチは、30~100℃、好ましくは50~80℃の温度にて実施される。
【0021】
例えば、本方法によるオレイン酸のオゾニドの代表的不均化は、ほぼ等モル比のノナナール、ノナン酸、9-オキソノナン酸およびアゼライン酸をもたらす。同様に、本方法によりクエンチされるエルカ酸のオゾニドは、ほぼ等モル比のノナナール、ノナン酸、13-オキソトリデカン酸およびブラッシル酸をもたらす。
【0022】
本明細書で用いる用語「無機ブレンステッド塩基」は、ブレンステッド酸(共役酸)と中性またはほぼ中性のカチオンとの間で形成される塩基性塩を指す。そのため、「無機ブレンステッド塩基」は、ブレンステッド酸の共役塩基を含むあらゆる塩基性塩を指す。したがって、「無機ブレンステッド塩基」は、水酸化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩およびカルボン酸塩を含むがこれらに限定されない(カルボン酸はしばしば「有機」酸とみなされることには関係なく)。「無機ブレンステッド塩基」は、非イオン性ブレンステッド塩基、例えば有機アルキルアミン(例えばモノ-、ジ-またはトリ-アルキルアミン)または有機複素環塩基(例えばピリジン、ピリミジン)を含まない。
【0023】
本明細書で用いる用語「アルカリ金属」は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびルビジウムを含む。本明細書で用いる用語「アルカリ土類金属」は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムを含む。ナトリウム塩が実用的で効率的であるが、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩およびカルシウム塩も用いることができる。また、水酸化物もまた極めて実用的であるが、炭酸塩およびリン酸塩などの他の塩基を用いて、所望の種を生成することができる。
【実施例】
【0024】
実施例1 オレイン酸のオゾニドのクエンチ
【0025】
新たに調製したオレイン酸メチルエステルのオゾニドの溶液123 g(プロピオン酸中33重量%オレイン酸メチルエステル、1.08 mol/kg)に、水酸化ナトリウムの33重量%水溶液16 gを極めてゆっくり加える。反応混合物はそれ自体発熱して65℃に加熱され、当該温度は、水酸化ナトリウム溶液の添加速度を制御することにより維持される。65℃で60分後、反応混合物は、オゾニドが消費されたことを示すヨウ素滴定により、17 mmol/L未満の過酸化物(オゾニドの95%超の変換)を含有することが分かった。
【0026】
反応混合物の200 mgアリコートをサンプリングし、MeOH 1.5 mLおよびBF
3・MeOH 1.5 mLとともに75℃にて15分間加熱することにより消化させて、GC分析のために酸をエステル化させる。GC分析は、ノナナールジメチルアセタール、ノナン酸メチルエステル、アゼライン酸ジメチルエステルおよびメチル9-オキソノナノエートジメチルアセタールの4つの化合物の比が1:1:1:1であることを示している。
【化6】
【0027】
実施例2 リシノール酸のオゾニドのクエンチ
【0028】
新たに調製したリシノール酸のオゾニドの溶液49 g(プロパン酸中33重量%リシノール酸、1.12 mol/kg)に、水酸化ナトリウムの50重量%水溶液6.3 gを極めてゆっくり加える。反応混合物はそれ自体を70℃に発熱的に加熱し、当該温度は、水酸化ナトリウム溶液の添加速度を制御することにより維持される。70℃で30分後、反応混合物は、オゾニドが消費されたことを示すヨウ素滴定により、19 mmol/L未満の過酸化物(オゾニドの95%超の変換)を含有することが分かった。
【0029】
反応混合物の200 mgアリコートを実施例2に記載のようにGCにより分析した。結果は、トランス-2-ノネナールジメチルアセタール、3-ヒドロキシノナン酸メチルエステル、アゼライン酸ジメチルエステルおよびメチル9-オキソノナノエートジメチルアセタールの4つの生成物の比が1:1:1:1であることを示している。
【化7】
【0030】
本明細書で提供する実施例は、単なる例示であり、いかなる方法によっても本明細書に記載の発明の様々な態様および実施態様を限定することを意図しない。
【国際調査報告】