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特表2022-505327SYT11抑制剤を有効成分として含む胃癌治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】SYT11抑制剤を有効成分として含む胃癌治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/7105
A61K31/7088
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521300
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(85)【翻訳文提出日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 KR2019013686
(87)【国際公開番号】W WO2020080861
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】10-2018-0125073
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】515276624
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(71)【出願人】
【識別番号】507175175
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼ・ホ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ソン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ボ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・スン・バン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・チャン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・イル・ヨム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を有効成分として含む胃癌治療用組成物およびSYT11の発現測定を含む幹型胃癌の診断方法に関する。本発明によるSYT11抑制剤を含む組成物は、胃癌胞の移動および浸潤を抑制し、細胞外基質に対する付着能を抑制し、各種癌転移関連サイトカインの分泌を抑制し、胃癌細胞の増殖を抑制することで、胃癌の転移抑制、胃癌の予防または治療用組成物として優れた効果を示す。また、本発明では、SYT11の発現と幹型胃癌との相関関係を確認したところ、SYT11の発現水準を測定することで、幹型胃癌の診断に優れた効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を有効成分として含む、胃癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤は、siRNA、shRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1に記載の胃癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記siRNAは、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択される塩基配列を有する、請求項2に記載の胃癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記shRNAは、配列番号6、配列番号15、配列番号16、および配列番号17からなる群から選択される塩基配列を有する、請求項2に記載の胃癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記アンチセンスヌクレオチドは、配列番号18および配列番号19からなる群から選択される塩基配列を有する、請求項2に記載の胃癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記胃癌は、幹型または混合型の亜型を有する胃癌である、請求項1に記載の胃癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
SYT11(Synaptotagmin 11)の発現水準を測定する製剤を含む、幹型胃癌の診断用組成物。
【請求項8】
前記SYT11 mRNA水準を測定する製剤は、SYT11遺伝子に特異的なプライマー(primer)対、プローブ(probe)、またはアンチセンスヌクレオチド(antisense nucleotide)であるか、
前記SYT11タンパク質水準を測定する製剤は、SYT11タンパク質に特異的な抗体である、請求項7に記載の幹型胃癌の診断用組成物。
【請求項9】
(a)分離した生物学的胃組織試料からSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、
(b)前記発現水準を正常対照群試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準と比較するステップと、
(c)前記生物学的胃組織試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が正常対照群のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準より高い場合、幹型胃癌として判定するステップとを含む、幹型胃癌診断のための情報を提供する方法。
【請求項10】
(a)SYT11(Synaptotagmin 11)を発現する分離した胃癌細胞に胃癌治療候補物質を処理するステップと、
(b)前記候補物質が処理された分離した胃癌細胞でSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、
(c)前記(b)ステップで測定されたSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が候補物質が処理されていない分離した胃癌細胞に比べて低い水準を示す場合、前記候補物質を胃癌治療用製剤として使用可能であると判定するステップとを含む、胃癌の治療用製剤のスクリーニング方法。
【請求項11】
SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を含む組成物を個体に投与するステップを含む、胃癌の予防または治療方法。
【請求項12】
前記SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤は、siRNA、shRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項11に記載の胃癌の予防または治療方法。
【請求項13】
SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を含む組成物の胃癌の予防または治療用途。
【請求項14】
前記SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤は、siRNA、shRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項13に記載の胃癌の予防または治療用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月19日付けで出願された韓国特許出願第10‐2018‐0125073号を優先権として主張し、前記明細書の全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、SYT11発現抑制剤を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物、SYT11の発現水準を測定する製剤を含む胃癌診断用組成物、SYT11の発現水準を測定するステップを含む胃癌診断のための情報を提供する方法および胃癌の治療用製剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、世界的に高い死亡率を示しており、西欧社会では、心血管疾患の次に最も一般的な死亡原因である。特に、人口の高齢化、食生活の西欧化による高脂肪食の摂取の一般化、環境汚染物質の急激な増加、飲酒量の増加などによって、大腸癌、乳癌、前立腺癌などが増加し続ける傾向にある。かかる状況で、癌の早期予防および治療を可能とし、ヒトの健康の増進、健康な生活の質の向上および人類保健の増進に寄与することができる抗癌物質の創出が切実に求められている。
【0004】
中でも、胃癌は、特に、アジアで高い発生頻度を示し、癌関連死亡の主な原因になっている。韓国では、癌患者の16.2%(男性癌患者の20.3%および女性癌患者の11.2%)が胃癌患者であると推定される。胃癌の症状は、全く症状がない場合から激しい痛みに至るまで様々な様相を示しており、胃癌の症状がある特性を有するのではなく、一般的な消化器症状を示し、胃癌の初期は症状がない場合がほとんどであり、症状があるとしても比較的軽微で、若干の消化不良や上腹部の違和感を感じる程度であり、ほとんどのヒトがこれを見逃しやすく、胃癌の死亡率を高める原因になることがある。
【0005】
胃癌組織の分類には、様々な基準が知られている。例えば、Lauren classificationにより胃癌の種類が分類され得る。Lauren classificationによると、胃癌のほとんどを占める腺癌を腸型(intestinal type)とびまん型(diffuse type)とに分ける。ヘリコバクターピロリ菌の感染が長く進行した萎縮性胃炎がある場合に特に腸型胃癌がよく発生するが、これは潰瘍をよく形成し、粘着力のある腫瘍細胞が集まって特徴的な管状構造をなす。一方、びまん型は、腫瘍細胞の粘着力が低くて明確な腫塊の形成なしに個別細胞が胃壁を浸潤する類型であり、若い層で多く発生し、予後が良くないという問題がある。かかるびまん型胃癌の患者の多数は、成人になってから初めてヘリコバクターに感染し、宿主の強い拒絶反応によってびまん型胃癌に進行した結果現れる患者である。かかる反応は、萎縮性胃炎が少ない若い女性であるほど過剰に現れ、結局、急性感染が治ることができず、胃粘膜の浮腫性および結節性変化が続き、予後が非常に良くないびまん型胃癌に進行する。したがって、同じ胃癌患者であってもびまん型胃癌に診断された若い成人であるほど完治可能性が非常に低く、結局数年内に死亡するようになる。前記のようにびまん型胃癌は、臨床的にその迅速な確認が難しく、これによって実際治療が遅くなるか治療に入っても十分な治療効果を示す治療剤がなく、上記の問題が継続している。
【0006】
最近、胃癌患者組織のマイクロアレイ(Microarray)分析で遺伝子の発現パターンの特徴によって、腸型(intestinal)、幹型(stem-like)、混合型(mixed stromal)、炎症型(inflammatory)に分子亜型を分類することができることが確認され、上記で言及しているように、腸型は、幹型、混合型および炎症型に比べて治療が容易な胃癌として知られており、幹型は、治療が難しく、予後が非常に悪い胃癌群に属すると報告されている[Nature Medicine 2015;21:449‐456 Molecular analysis of gastric cancer identifies subtypes associated with distinct clinical outcomes]。
【0007】
かかる背景の下で、上記のように診断が難しい特定の癌を迅速に診断し、これを治療することができる新たな技術に関する研究開発が至急必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明者らは、人体に副作用を引き起こさず胃癌の治療に優れた効果を示すことができる抗癌製剤を開発すべく鋭意努力を重ねた結果、SYT11発現抑制剤が、毒性のない範囲内で胃癌の治療に優れた効果を示し、診断目的としても有用に用いられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の一つの目的は、SYT11(Synaptotagmin 11)発現抑制剤を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の一つの目的は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現水準を測定する製剤を含む、幹型胃癌の診断用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の一つの目的は、(a)分離した生物学的胃組織試料からSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、(b)前記発現水準を正常対照群試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準と比較するステップと、(c)前記生物学的胃組織試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が正常対照群のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準より高い場合、幹型胃癌として判定するステップとを含む、幹型胃癌診断のための情報を提供する方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の一つの目的は、(a)SYT11(Synaptotagmin 11)を発現する分離した胃癌細胞に胃癌治療候補物質を処理するステップと、(b)前記候補物質が処理された分離した胃癌細胞でSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、(c)前記(b)ステップで測定されたSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が候補物質が処理されていない分離した胃癌細胞に比べて低い水準を示す場合、前記候補物質を胃癌治療用製剤として使用可能であると判定するステップとを含む、胃癌の治療用製剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現抑制剤を含む組成物を個体に投与するステップを含む胃癌の予防または治療方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現抑制剤を含む組成物を個体に投与するステップを含む胃癌の予防または治療用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一側面は、SYT11(Synaptotagmin 11)発現抑制剤を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0016】
また、本発明の他の側面は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現水準を測定する製剤を含む、幹型胃癌の診断用組成物を提供する。
【0017】
また、本発明のさらに他の側面は、(a)分離した生物学的胃組織試料からSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、(b)前記発現水準を正常対照群試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準と比較するステップと、(c)前記生物学的胃組織試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が正常対照群のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準より高い場合、幹型胃癌として判定するステップとを含む、幹型胃癌診断のための情報を提供する方法を提供する。
【0018】
また、本発明のさらに他の側面は、(a)SYT11(Synaptotagmin 11)を発現する分離した胃癌細胞に胃癌治療候補物質を処理するステップと、(b)前記候補物質が処理された分離した胃癌細胞でSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、(c)前記(b)ステップで測定されたSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が候補物質が処理されていない分離した胃癌細胞に比べて低い水準を示す場合、前記候補物質を胃癌治療用製剤として使用可能であると判定するステップとを含む、胃癌の治療用製剤のスクリーニング方法を提供する。
【0019】
また、本発明のさらに他の側面は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現抑制剤を含む組成物を個体に投与するステップを含む胃癌の予防または治療方法を提供する。
【0020】
また、本発明のさらに他の側面は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現抑制剤を含む組成物を個体に投与するステップを含む胃癌の予防または治療用途を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるSYT11抑制剤を含む組成物は、胃癌細胞の移動および浸潤を抑制し、細胞外基質に対する付着能を抑制し、各種の癌転移関連サイトカインの分泌を抑制し、胃癌細胞の増殖を抑制することで、癌の転移の抑制、癌の予防または治療用組成物として優れた効果を示す。
【0022】
また、本発明では、SYT11の発現と幹型胃癌との相関関係を確認したところ、SYT11の発現水準を測定することで、幹型胃癌の診断に優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】intestinal、stem-like、mixed、inflammatory subtypeを有する胃癌細胞株の中で、stem-like subtype胃癌細胞株でSYT11発現増進を確認した結果を示す図である。
図2】胃癌細胞株でSYT11発現の減少による胃癌細胞株の移動抑制を確認した結果を示す図である。
図3】胃癌細胞株でSYT11発現の減少による胃癌細胞株の浸潤抑制を確認した結果を示す図である。
図4】胃癌細胞株でSYT11発現の減少による細胞外基質に対する付着能の抑制を確認した結果を示す図である。
図5】胃癌細胞株でSYT11発現の減少による癌転移関連成長因子およびサイトカイン分泌抑制を確認した結果を示す図である。
図6】マウス動物モデルでSYT11発現の減少による腫瘍減少効果を確認した結果を示す図である。
図7】胃癌細胞株でSYT11発現の減少による癌転移関連成長因子およびサイトカイン分泌抑制を確認した結果と、マウス動物モデルからの腫瘍組織でSYT11抑制による癌転移関連成長因子およびサイトカイン分泌抑制を確認した結果を示す図である。
図8】胃癌細胞株で様々なsiRNAを用いたSYT11発現抑制による細胞増殖抑制を確認した結果を示す図である。
図9】胃癌細胞株でSYT11アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた癌細胞増殖抑制を確認した結果を示す図である。
図10】胃癌細胞株でSYT familyの発現抑制による細胞成長抑制を比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記目的を達成するための本発明の一つの様態は、SYT11(Synaptotagmin 11)発現抑制剤を有効成分として含む胃癌の予防または治療用薬学組成物である。
【0025】
本発明において、用語「SYT11(Synaptotagmin 11,NM_152280.4)」は、シナプトタグミン(Synaptotagmin)遺伝子ファミリの一つであり、カルシウムセンサ(calcium sensors)として知られた他のファミリメンバーと類似のタンパク質を暗号化し、シナプス伝達(synaptic transmission)で膜輸送のカルシウム依存的調節を調整する。暗号化したタンパク質は、ubiquitin-E3-ligase parkinの基質として知られている。前記のSYT11は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0026】
本発明の具体的な一実施形態では、ヒト胃癌細胞株の分析により癌細胞株の分子亜型をintestinal、stem-like、mixed、inflammatoryに分類し、分類したヒト胃癌細胞株のうちstem-like亜型でSYT11の発現が増加することを確認した。
【0027】
本発明の他の具体的な一実施形態では、SYT11発現抑制による細胞の転移変化、すなわち、移動および浸潤能力変化との相関関係を確認するために、胃癌細胞でSYT11を抑制したときに、浸潤能および移動能が著しく減少することを確認した。
【0028】
本発明のさらに他の具体的な一実施形態では、SYT11発現抑制による癌細胞の細胞外基質に対する付着能変化との相関関係を確認するために、胃癌細胞でSYT11発現を抑制したときに細胞外基質に対する付着能が著しく減少することを確認した。
【0029】
本発明のさらに他の具体的な一実施形態では、SYT11発現抑制による癌細胞転移と関連する成長因子(Growth factor)またはサイトカイン(cytockine)の変化との相関関係を確認するために、胃癌細胞でSYT11発現を抑制したときに癌細胞転移と関連するPDGF-AA、VEGF、HGF、IGFBP-2、IL-17A、IL-8、angiopoietin-1、angiopoietin-2などが減少することを確認した。
【0030】
本発明のさらに他の具体的な実施形態では、マウス動物モデルでSYT11発現抑制による腫瘍の減少を確認した。
【0031】
本発明のさらに他の具体的な一実施形態では、SYT11抑制による腫瘍細胞の増殖抑制を確認した。
【0032】
本発明において、用語「SYT11抑制剤」は、SYT11の発現または活性を減少させる製剤をすべて通称する意味として使用され、具体的には、SYT11の発現減少に影響を与えるかSYT11に直接作用するか、そのリガンドに間接作用するなどの方式で、SYT11の発現量を転写(transcription)、mRNA水準、または移行(translation)水準で減少させるか、SYT11活性を邪魔することで、SYT11の活性を減少させるすべての製剤を含むことができる。
【0033】
前記SYT11の抑制剤は、SYT11の発現またはSYT11を標的にして活性を抑制することができる化合物、核酸、ペプチド、ウイルスまたは前記核酸を含むベクターなどその形態に制限なく使用可能である。前記SYT11抑制剤は、これに制限されないが、SYT11遺伝子のmRNAを分解させるsiRNAまたはshRNA、SYT11タンパク質の発現を減少させるアンチセンスオリゴヌクレオチドがある。また、SYT11タンパク質に結合して機能を抑制するSYT11抑制剤として、アプタマー(aptamer)または低分子化合物であり得る。
【0034】
例示的な一具現例において、前記siRNAは、配列番号2、3、4および5から選択される塩基配列を有し得る。
【0035】
【表1】
【0036】
例示的な一具現例において、前記shRNAは、配列番号6、15、16および17から選択される塩基配列を有するshRNAおよびその同族体、同種型、変異体、誘導体、断片などの合成、変形されたものであってもよく、例えば、配列番号6、15~17から選択される塩基配列において中央に存在するloop sequence(下記の表2の下線)が変形されたものであってもよい。
【0037】
【表2】
【0038】
例示的な一具現例において、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号18および19から選択されるいずれか一つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその誘導体であってもよく、前記誘導体は、配列番号18および19から選択される一つ以上のオリゴヌクレオチドにおいてphosphorothioate修飾および/または2´-O-メチル化修飾を有し得る。
【0039】
【表3】
【0040】
本発明において、用語「治療」は、治療しようとする個々人または細胞の天然過程を変更させるために臨床的に介入することを指し、これは、臨床病理状態が進行する間にまたはこれを予防するために行うことができる。目的とする治療効果には、疾病の発生または再発を予防し、症状を緩和させ、疾病によるすべての直接または間接的な病理学的結果を低下させ、転移を予防し、疾病進行速度を減少させ、疾病状態を軽減または一時的に緩和させ、好転させるか予後を改善させることが含まれる。好ましくは、本発明では、SYT11を抑制する物質を含む組成物の投与によって胃癌の経過を好転させるすべての行為を含む。また、「予防」は、本発明によるSYT11を抑制する物質を含む組成物の投与によって前記胃癌の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0041】
本発明において、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、特定のmRNAの配列に相補的な核酸配列を含んでいるDNA、RNAまたはこれらの誘導体として、mRNA内の相補的な配列に結合し、mRNAのタンパク質への翻訳を阻害する働きをする。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、前記SYT11 mRNAに相補的で前記mRNAに結合することができるDNAまたはRNA配列を意味する。これは、前記SYT11 mRNAの翻訳、細胞質内への転位(translocation)、成熟(maturation)または他のすべての全体的な生物学的機能に対する必須の活性を阻害することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、6~100塩基、好ましくは8~60塩基、より好ましくは10~40塩基であり得る。前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常の方法で試験管内で合成されて生体内に投与するか生体内でアンチセンスオリゴヌクレオチドが合成されるようにすることができる。試験管内でアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成する一つの例は、RNA重合酵素Iを用いることである。生体内でアンチセンスRNAが合成されるようにする一つの例は、多重クローニング部位(MCS)の起源が逆方向にあるベクターを使用してアンチセンスRNAが転写されるようにすることである。前記アンチセンスRNAは、配列内に翻訳中止コドンが存在するようにして、ペプチド配列に翻訳されないようにすることが好ましい。本発明で利用可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドのデザインは、SYT11の塩基配列を参照し、当業界において公知の方法にしたがって作製することができる。
【0042】
具体的には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号18または19のオリゴヌクレオチドであってもよいが、これに制限されない。
【0043】
また、前記配列番号18または19のオリゴヌクレオチドは、前記配列番号18または19のオリゴヌクレオチドと実質的に同じ塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよびその誘導体を含む。前記実質的に同じ塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとは、前記配列番号18または19の塩基配列と、それぞれ75%以上、80%以上、90%以上、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを意味する。前記誘導体は、配列番号18および19から選択される一つ以上のオリゴヌクレオチドにおいてphosphorothioate修飾および/または2´‐O‐メチル化修飾を有するものであってもよいが、これに制限されない。
【0044】
本発明において、用語「アプタマー(aptamer)」は、一本鎖オリゴヌクレオチドとして、20~60ヌクレオチド程度のサイズであり、所定の標的分子に対する結合活性を有する核酸分子を指す。配列によって様々な3次元構造を有し、抗原‐抗体反応のように特定の物質と高い親和力を有することができる。アプタマーは、所定の標的分子に対して結合することで、所定の標的分子の活性を阻害することができる。本発明のアプタマーは、RNA、DNA、修飾された(modified)核酸またはこれらの混合物であってもよく、また、直鎖状または環状の形態であってもよい。好ましくは、前記アプタマーは、SYT11に結合してSYT11の活性を阻害する役割を果たすことができる。かかるアプタマーは、SYT11の配列から当業者が公知の方法にしたがって製造することができる。
【0045】
本発明において、用語「siRNA」および「shRNA」は、RNA妨害または遺伝子サイレンシング(silencing)を媒介することができる核酸分子として、標的遺伝子の発現を抑制できることから、効率的な遺伝子ノックダウン(knock down)方法または遺伝子治療方法として使用される。shRNAは、一本鎖のオリゴヌクレオチド内で相補的な配列間の結合によってヘアピン(hairpin)構造を形成したものであり、生体内で前記shRNAは、ダイサー(dicer)によって切断されて21~25ヌクレオチドサイズの小さなRNA断片で二本鎖のオリゴヌクレオチドであるsiRNAになり、相補的な配列を有するmRNAに特異的に結合して発現を抑制することができる。したがって、shRNAおよびsiRNAのうちいずれの手段を利用するかは、当業者の選択によって決定され得、これらを標的とするmRNA配列が同じ場合であれば、類似の発現減少の効果を期待することができる。本発明の目的上、SYT11に特異的に作用してSYT11 mRNA分子を切断し、RNA干渉(RNAi、RNA interference)現象を誘導することで、前記SYT11を抑制することができる。siRNAは、化学的にまたは酵素学的に合成され得る。siRNAの製造方法は、特に限定されず、当業界において公知の方法を使用することができる。例えば、siRNAを直接化学的に合成する方法、試験管内(in vitro)転写を用いたsiRNAの合成法、試験管内(in vitro)転写によって合成された長い二本鎖RNAを酵素を用いて切断する方法、shRNA発現プラスミドやウイルス性ベクターの細胞内伝達による発現法およびPCR(polymerase chain reaction)誘導siRNA発現カセット(cassette)の細胞内伝達による発現法などがあるが、これに限定されるものではない。
【0046】
具体的には、本発明のSYT11に対するsiRNAは、配列番号2、3、4および5から選択される塩基配列を有するsiRNAおよびその相補的な配列を有するsiRNAの二本鎖からなってもよいが、これに制限されない。
【0047】
本発明のSYT11に対するshRNAは、配列番号6、15、16および17から選択される塩基配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0048】
本発明の目的上、前記抗体は、SYT11またはSYT11のリガンドタンパク質と結合してSYT11の活性を抑制することができる抗体であり得る。
【0049】
本発明において、用語「リガンド」は、生体分子(biomolecule)と複合体を形成して生物学的反応をもたらす物質を意味し、「SYT11のリガンドタンパク質」または「SYT11に対するリガンドタンパク質」は、SYT11と結合してSYT11を活性化させるか活性を増加させるタンパク質であり得る。
【0050】
本発明において、用語「胃癌」は、胃で細胞が過剰増殖することから生じる疾病を称する。かかる非正常的な過剰増殖細胞は、場合によって、周りの組織および臓器に侵入して腫塊を形成し、胃の正常な構造を破壊または変形させるが、かかる状態を胃癌と言う。一般的に腫瘍(tumor)といえば、身体組織の自律的な過剰増殖によって非正常的に成長した塊を胃意味し、良性腫瘍(benign tumor)と悪性腫瘍(malignant tumor)とに区分することができる。悪性腫瘍は、良性腫瘍に比べて増殖速度が非常に速く、周辺組織に浸潤しながら転移(metastasis)が起こり生命を脅威する。本発明において、胃癌は、好ましくは、幹型亜型および/または混合型亜型、より好ましく幹型亜型である。
【0051】
本発明において、用語「転移(metastasis)」は、悪性腫瘍が発病した臓器から離れた他の組織に伝播した状態を言う。一つの臓器から始まった悪性腫瘍が進行するに伴い、最初に発生した原発部位である臓器から他の組織に広がって行くが、このように原発部位から他の組織に広がって行くことを転移と言える。転移は、悪性腫瘍の進行に伴われる現象と言えるが、悪性腫瘍細胞が増殖し、癌が進行するにつれて新たな遺伝形質を獲得して転移が起こり得る。新たな遺伝形質を獲得した腫瘍細胞が血管とリンパ腺に侵入し、血液とリンパに沿って循環しながら他の組織に定着、増殖すると、転移が生じ得る。
【0052】
転移が発生する組織によって、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、膵臓癌など各種の癌疾患が誘発され得る。本発明の組成物は、転移を抑制して癌が広がることを予防および治療することができる。
【0053】
本発明において、用語「抑制」は、本発明による組成物の投与によって前記癌転移を抑制するすべての行為を指す。
【0054】
胃癌は、分子亜型によって分類され得る。例えば、胃癌検体で全ゲノム水準のmRNA発現をマイクロアレイ(Microarray)技法で調査し、群集分析により胃癌に内在的な亜型(subtype)を確認した後、各亜型に特異的な遺伝子を統計的検証により選別することができる。このように選別された遺伝子発現量に基づいて上皮細胞特徴的な遺伝子発現が高い亜型を腸型(intestinal subtype)、発生段階シグナル伝達(EMT)および間質(stroma)由来遺伝子発現が高い亜型を幹型(stem-like subtype)、腸型および幹型の特徴をすべて発現する混合型(mixed stromal subtype)、また、免疫調節関連遺伝子発現が高い炎症型(inflammatory subtype)に分類することができる。それぞれの亜型は、既存によく明かされた臨床および病理組織学的所見と関連する差別的な特性を有していることが確認された。
【0055】
具体的には、腸型の場合、胃の下部に主に位置し、組織学的分化度が良い特徴を示す。Lauren分類上、intestinal typeとindeterminate typeが多く分布している。
【0056】
一方、幹型の場合、60歳未満の比較的若い年齢層によく発生し、胃の体部と上部に位置し、組織学的分化度が不良である。特に、印環細胞型(Signet ring cell type)が全組織型の20%を占める特徴があり、lauren分類上、diffuse typeの分布が多い。幹型の場合、非常に不良な予後を示す臨床的特徴がある。
【0057】
混合型は、腸型と幹型の特徴を共有している。
【0058】
炎症型は、他の亜型に比べて、特徴的に胃‐食道接合部を含む噴門部(cardia)に位置する場合が多く、組織学的には分化度が良くない類型である。しかし、lauren分類上、intestinal typeとindeterminate typeが多く、幹型よりは腸型の特徴に近い。予後的観点で、腸型と混合型は、中間程度の予後を示し、炎症型の場合、予後が最も良好である。
【0059】
本発明の薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤され得る。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ得、かかる固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤され得る。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用され得る。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤などが相当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれ得る。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としてはウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0060】
また、本発明の薬学組成物は、これに制限されないが、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有することができる。
【0061】
前記目的を達成するための本発明の他の様態は、SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を有効成分として含む薬学組成物を個体に投与するステップを含む胃癌の治療方法を提供することである。
【0062】
本発明において、用語「個体」は、本発明の胃癌疾患を有するかまたは発病した、ヒトを含むすべての動物を意味し、ヒト以外の個体であってもよい。本発明の薬学組成物を個体に投与することで、胃癌の治療に優れた効果を示し、また、胃癌の転移を抑制することができる。
【0063】
前記本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。
【0064】
本発明において、用語「投与」は、ある適切な方法で対象に本発明の薬学組成物を導入することを意味し、投与経路は、目的組織に逹することができる限り、経口または非経口の様々な経路を介して投与され得る。
【0065】
前記薬学組成物は目的または必要に応じて、当業界において使用される通常の方法、投与経路、投与量に応じて個体に適宜投与され得る。投与経路の例として、経口、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内に投与され得、非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が含まれる。また、当業界において公知の方法にしたがって適切な投与量および投与回数が選択され得、実際に投与される本発明の薬学組成物の量および投与回数は、治療しようとする症状の種類、投与経路、性別、健康状態、食餌、個体の年齢および体重、および疾患の重症度のような様々な因子によって適切に決定され得る。
【0066】
本発明において、用語「薬学的に有効な量」は、医学的用途に適用可能な合理的な割合で疾患を抑制または緩和するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出の割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素によって決定され得る。本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか他の治療剤と併用して投与され得、従来の治療剤とは順次または同時に投与され得る。また、単一または多重投与され得る。前記要素をすべて考慮して、副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定され得る。例えば、薬学的に有効な量は、0.5~1000mg/day/体重kg、好ましくは0.5~500mg/day/体重kgである。
【0067】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の様態は、胃癌治療のための薬剤の製造において、SYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を含む組成物の用途を提供することである。
【0068】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の様態は、胃癌治療に使用するためのSYT11(Synaptotagmin 11)抑制剤を含む組成物を提供することである。
【0069】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の様態は、SYT11(Synaptotagmin 11)の発現水準を測定する製剤を含む、幹型胃癌の診断用組成物を提供することである。例えば、配列番号7および配列番号8の塩基配列がSYT11(Synaptotagmin 11)の発現水準を測定する製剤として使用され得る。
【0070】
本発明のさらに他の一つの目的は、(a)分離した生物学的胃組織試料からSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、(b)前記発現水準を正常対照群試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準と比較するステップと、(c)前記生物学的胃組織試料のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が正常対照群のSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準より高い場合、幹型胃癌として判定するステップとを含む、幹型胃癌診断のための情報を提供する方法を提供することにある。
【0071】
本発明において、用語「診断」は、生物学的組織試料または組織サンプルにおいて本発明のSYT11の存在または不在を測定することで、幹型胃癌疾患の存在または特徴を確認することを意味する。また、「マーカーまたは診断マーカー(diagnosis marker)」とは、幹型胃癌細胞または幹型胃癌疾患を有する個体を正常細胞または正常個体と区分して診断することができる物質であり、正常細胞に比べて幹型胃癌を有する細胞または個体において増加または減少を示すポリペプチド、タンパク質または核酸(例:mRNAなど)、脂質、糖脂質、糖蛋白質または糖(単糖類、二糖類、オリゴ糖類など)などの有機生体分子を含む。本発明の目的上、本発明の幹型胃癌診断マーカーは、正常細胞または組織の細胞に比べて、幹型胃癌細胞において特異的に高い水準の発現を示すSYT11である。
【0072】
本発明において、用語「分離した生物学的胃癌組織試料」は、診断しようとする個体の組織から分離した試料を指し、具体的には、胃の組織である。
【0073】
本発明において、SYT11発現水準を測定することは、SYT11のmRNA発現水準を測定するか、SYT11タンパク質発現水準を測定することであり得る。
【0074】
前記「mRNA発現水準測定」とは、幹型胃癌を診断するために生物学的組織試料で幹型胃癌マーカー遺伝子のmRNA存在可否と発現程度を確認する過程であり、mRNAの量を測定することで知ることができる。このための分析方法としては、RT-PCR、競合的RT-PCR(competitive RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロット(Northern blotting)、DNAチップなどがあるがこれに制限されるものではない。
【0075】
前記「タンパク質発現水準測定」とは、幹性胃癌を診断するために生物学的胃組織試料での幹性胃癌マーカー遺伝子で発現したタンパク質の存在可否と発現程度を確認する過程であり、前記遺伝子のタンパク質に対して特異的に結合する抗体を用いてタンパク質の量を確認する。このための分析方法としては、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オークタロニ(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(complement fixation assay)、FACS、タンパク質チップ(protein chip)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0076】
一例として、前記mRNA水準を測定する製剤は、本発明のSYT11のmRNAに対するプライマー(primer)対、プローブ(probe)、またはアンチセンスヌクレオチド(anti-sense nucleotide)であってもよく、本発明のSYT11のポリヌクレオチド配列によって、当業者が、プライマー、プローブ、またはアンチセンスヌクレオチド配列を容易にデザインすることができる。他の一例として、前記タンパク質水準を測定する製剤は、抗体であってもよい。
【0077】
本発明においては、SYT11の幹性胃癌診断マーカーとしての可能性を確認することで、SYT11の水準を測定し、幹性胃癌を診断することができる効果を確認した。
【0078】
本発明のさらに他の一つの目的は、(a)SYT11(Synaptotagmin 11)を発現する分離した胃癌細胞に胃癌治療候補物質を処理するステップと、(b)前記候補物質が処理された分離した胃癌細胞でSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準を測定するステップと、(c)前記(b)ステップで測定されたSYT11(Synaptotagmin 11)発現水準が候補物質が処理されていない分離した胃癌細胞に比べて低い水準を示す場合、前記候補物質を胃癌治療用製剤として使用可能であると判定するステップとを含む、胃癌の治療用製剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【0079】
胃癌を治療することができる候補物質の不在の下で細胞での本発明の前記遺伝子の発現水準または前記遺伝子がコードするタンパク質の水準を測定し、また、前記候補物質の存在の下で本発明の前記遺伝子の発現水準または前記遺伝子がコードするタンパク質の水準を測定し、両者を比較した後、前記候補物質が存在する時の本発明の前記遺伝子の発現水準または前記遺伝子がコードするタンパク質の水準が前記候補物質の不在の下での水準より減少させる物質を胃癌の治療用製剤として予測することができる。
【0080】
前記スクリーニング方法は、生体内(in vivo)または試験管内(in vitro)で行われ得、特に制限されない。候補物質は、公知の物質または新規物質であってもよく、例えば、植物抽出物またはケミカルライブラリ(chemical library)を通じて大規模でスクリーニングを行うことができる。これにより、SYT11の発現または活性を抑制し、胃癌、特に幹型亜型胃癌を抑制することができる製剤を見い出すことができる。
【0081】
以下、本発明の理解を容易にするために、好ましい実施例および製剤例を提示する。しかし、下記の実施例および製剤例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであって、実施例または製剤例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0082】
<実施例1>幹型(Stem-like subtype)胃癌細胞株でSYT11発現変化の確認
25個のヒト胃癌細胞株でマイクロアレイ(Microarray)分析により癌細胞株の分子亜型をintestinal、stem-like、mixed、inflammatoryに分類した。また、代表的な11種の胃癌細胞株を用いて、ウェスタンブロットおよびRT-PCR技法によりSYT11発現の差を確認した。
【0083】
ウェスタンブロット(Western blotting)実験のために細胞株からRIPA溶液(RIPA buffer、millipore社製)を用いてタンパク質を抽出し、ポリアクリルアミドゲルから電気泳動で分離した後、ゲルからポリビニリデンフルオライド膜にタンパク質を移動させた。膜に移動されたタンパク質は、SYT11抗体を用いて基質との反応で確認した。
【0084】
細胞株からRNA抽出溶液(Trizol、Invitrogen社製)を用いてmRNAを分離し、RT-PCRとマイクロアレイ(Microarray)を行った。mRNAからRT transcript(enzynomics社製)を用いて相補的DNAを合成した。相補的DNAから合成されたSYT11プライマーを用いてPCRを行った。また、対照群遺伝子としては、RPL13Aプライマーを使用した。実験に使用されたプライマー配列情報は、表2に示した。PCRが終了した後、サンプルを臭化エチジウム(etidium bromide)が含まれたアガローズゲルに電気泳動し、UVを照射し、バンドを確認した。
【0085】
【表4】
【0086】
マイクロアレイは、抽出されたRNAから相補的に結合することができるオリゴ塩基が内蔵されたチップ(illumina社製、San Diego、CA、USA)を使用して各遺伝子の発現程度を測定した。
【0087】
その結果を図1のAおよび図1のBに示した。
【0088】
図1のAは、25個のヒト胃癌細胞株でのマイクロアレイ(Microarray)分析結果を示し、SYT11のmRNA発現が幹型胃癌亜型で著しく増加することが確認された。
【0089】
図1のBは、各分子亜型の代表的な細胞株でウェスタンブロットおよびRT-PCRによりSYT11の発現を確認した結果を示す。図1のBから確認されるように、幹型胃癌亜型細胞株として確認されるMKN1、SK4、SNU484およびSNU638細胞株(胃癌の幹型亜型の特性を有する細胞株に相当する)のすべてにおいて、SYT11の発現がウェスタンブロットおよびRT-PCR結果のすべてにおいて大きく増加することが確認された。
【0090】
<実施例2>胃癌細胞株でSYT11抑制による移動/浸潤抑制の確認
siSYT11の胃癌細胞移動能抑制を確認するために、胃の細胞株のうちSNU484細胞を使用して実験を行った。具体的には、siSYT11(配列番号2)および対照群としてsiSC(配列番号11)をトランスフェクション(transfection)したSNU484細胞を96 well‐Image Loc plateで接種し、24時間育てた後、wound makerでスクラッチ(scratch)し、リアルタイム細胞分析システム(Incucyte)を用いて細胞の移動を0時間、20時間、および40時間ごとに創傷治癒アッセイ(wound healing assay)で確認した。
【0091】
上記の実験結果を図2に示した。
【0092】
図2のAは、SNU484細胞にsiRNA(SYT11)(配列番号3、4または5)またはsiSC(配列番号11)をウェスタンブロットによりSYT11の抑制を確認した結果である。
【0093】
図2のBは、時間経過による創傷治癒アッセイ(wound healing assay)の結果を示す図である。図2から確認されるように、胃癌細胞株にsiSYT11を処理した結果、胃癌細胞の移動能力が著しく減少することが確認された。
【0094】
また、siSYT11の胃癌細胞浸潤抑制を確認するために、浸潤アッセイ(Invasion assay)を行った。具体的には、24‐well plate細胞培養用insertを使用して実験を行っており、上記のようにsiSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)したSNU484細胞をマトリゲル(matrigel)でコードしたinsertに接種し、24時間後、insertの下に移動した細胞をスルホロダミンB(Sulforhodamine B;SRB)溶液で染色し、吸光度を測定した。
【0095】
その結果を図3に示した。
【0096】
図3から確認されるように、図3のAは、浸潤アッセイ(Invasion assay)による細胞浸潤を確認した結果を示し、図3のBは、これを図式化した結果を示す。図3から確認されるように、SYT11抑制は、対照群(control)に比べて癌細胞浸潤を約40%程度減少させることが確認された。
【0097】
<実施例3>胃癌細胞株でSYT11抑制による細胞外基質に対する付着能の抑制の確認
細胞外基質(extracellular matrix、ECM)は、細胞の外部を囲んでいるタンパク質と多糖類からなる基質として、細胞が正常な機能を果たすことができる環境を提供する。インテグリン(Integrin)は、細胞膜に存在し、cell-cellまたはcell-matrix間の結合により、接着斑(focal adhesion)と関連するシグナル伝達に関与し、癌細胞転移過程においてインテグリン(integrin)は、細胞外基質内のfibronectin、collagen、lamininなどと結合し、cell-matrix間の結合により癌細胞の移動時に細胞付着機能を誘導する働きをする。
【0098】
これにより、SYT11が癌細胞付着能に及ぼす影響を確認するために、BSA、collagen、fibronectinでコーティングした96 well plateに前記の実施例2と同様、siSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)したSNU484細胞を接種してから1時間後、PBSで洗浄し、plateに付いていない細胞を除去した。Plateに付いた細胞をSRB溶液で染色し、吸光度を測定した。また、SNU484細胞をsiSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)してから48時間後、タンパク質を抽出し、電気泳動後、ウェスタンブロット(Western blot)を行ってインテグリン(integrin)タンパク質の発現変化を確認した。
【0099】
その結果を図4に示した。
【0100】
図4のAは、接着アッセイ(Adhesion assay)の結果を示す。図4のAから確認されるように、コラーゲン(collagen)やフィブロネクチン(fibronectin)に結合した細胞は、SYT11抑制によってAdhesionが減少することが確認された。
【0101】
図4のBは、インテグリン(integrin)タンパク質の発現変化を確認した結果を示す。図4のBから確認されるように、SYT11抑制によって様々なインテグリン(integrin)タンパク質発現が阻害されることが確認された。
【0102】
<実施例4>胃癌細胞株でSYT11抑制による癌転移関連サイトカイン分泌抑制の確認
SYT11抑制が癌細胞転移と関連する成長因子(growth factor)やサイトカイン(cytokine)の分泌に影響を及ぼすかを確認するために、cytokine array(R&D system社製、proteome profiler antibody arrays)を行った。具体的には、SNU484細胞を実施例2と同様、siSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)して24時間後、血清がない培地に交替し、低酸素(hypoxia)状態(2%O)で24時間培養後、細胞培養液を用いて、PDGF-AA、VEGF、HGF、IGFBP-2、IL-17A、IL-8、angiopoietin-1、angiopoietin-2のサイトカイン(cytokine)を確認した。
【0103】
また細胞は収去してRNAを抽出し、mRNAからRT transcript(enzynomics社製)を用いて相補的DNAを合成した。次に、real-time PCR pre mix(solgent社製)を用いて、VEGFA、HGF、IL-8、angiopoietin-1のプライマー(bioneer社製)でqPCRを行った。
【0104】
前記実験結果を図5に示した。
【0105】
図5のAは、Proteome profile-cytokine assayを行った結果を示す。図5から確認されるように、siSYT11処理によって癌細胞転移と関連する成長因子(growth factor)やサイトカイン(cytokine)の分泌が大きく減少した。
【0106】
また、5のBは、qPCR結果を図式化した結果を示す。図5から確認されるように、酸素正常状態(Normoxia)および低酸素状態(Hypoxia)条件の両方で癌細胞転移と関連する成長因子(growth factor)やサイトカイン(cytokine)と関連するmRNA発現が大きく減少することが確認された。
【0107】
<実施例5>動物モデルでSYT11抑制による癌治療効果の確認
胃癌細胞株SNU484にshSYT11‐Lentivirusを感染(infection)させてノックダウン(knockdown)した細胞またはshControl-Lentivirus infectionした細胞をヌードマウスに注射し、2~3日間隔で腫瘍のサイズを測定し、その質量および体積の変化を確認した。
【0108】
ここで、shSTY11(sigma社製)で示したshRNAは、配列番号6、shControl(CTRL)(sigma社製)で示したshRNAは、配列番号12の塩基配列を有する。
【0109】
上記の結果を図6に示した。図6のAは、日付けによる腫瘍サイズの変化を確認した結果であり、図6のBは、16日目にマウスを殺して腫瘍の重量を確認した結果を示し、図6のCは、生成された腫瘍の写真を示すものである。図6の結果から確認されるように、shSYT11が抑制された場合、shControlに比べて腫瘍の形成が抑制されることが確認された。
【0110】
また、上記の動物モデルの組織を取り、qPCRにより癌細胞転移と関連する成長因子(growth factor)やサイトカイン(cytokine)の発現変化、インテグリン(Intergrin)の発現変化、tumor-specific endothelial markerであるANTXR1を実施例4と同じ方法で確認した。
【0111】
これと共に、SNU484細胞でも実施例2と同様、siSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)し、RT-PCRにより遺伝子発現変化を確認した。
【0112】
上記の結果を図7に示した。
【0113】
図7のAのSNU484細胞から確認されるように、siSYT11処理によってangiopoietin-1、angiopoietin-2、Intergrin-β1、ANTXR1のいずれも減少することが確認された。
【0114】
また、図7のBのin vivoモデルから確認した結果もangiopoietin-1、angiopoietin-2、Intergrin-β1、ANTXR1のいずれもSYT11処理によって減少することが確認された。
【0115】
<実施例6>SYT11抑制による癌細胞増殖抑制の確認
<6-1>siRNA配列を用いた癌細胞増殖抑制の確認
SNU484細胞に実施例2と同様、siSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)し、リアルタイム細胞分析システム(InCucyte)を用いて4日間細胞増殖を確認した。
【0116】
また、これと同様、他のsiRNA配列を有するsiSYT11(配列番号2、3、4または5)で上記の実施例2と同様にsiSYT11またはsiSCをトランスフェクション(transfection)し、72時間後、スルホロダミンB(Sulforhodamine B;SRB)溶液で染色して吸光度を測定し、細胞生存率を確認した。
【0117】
その結果を図8に示した。
【0118】
図8のAは、ウェスタンブロットによりSYT11の発現減少を確認した結果を示し、図8のBは、時間変化による癌細胞増殖を確認した結果を示す。
【0119】
図8のAおよびBから確認されるように、SYT11の発現減少に伴い癌細胞の増殖が阻害されることが確認された。
【0120】
また、図8のCは、SNU484細胞にsiRNA(SYT11)(配列番号3、4または5)またはsiSC(配列番号11)をウェスタンブロットによりSYT11の抑制を確認した結果であり、図8のDは、細胞増殖率を確認した結果であり、細胞増殖は、配列番号2、3、4または5を有するsiRNAによってすべて抑制されることを確認した。
【0121】
<6-2>アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた癌細胞増殖抑制の確認
SNU484細胞に実施例6-1のようにアンチセンスオリゴヌクレオチドAS-SYT11(配列番号18または19)、または陰性対照群AS-NC(配列番号20)をトランスフェクション(transfection)し、リアルタイム細胞分析システム(InCucyte)を用いて3日間細胞増殖を確認した。
【0122】
また、上記の実施例6-1と同様、アンチセンスオリゴヌクレオチドAS-SYT11(配列番号18または19)または陰性対照群AS-NC(配列番号20)をトランスフェクション(transfection)し、72時間後、スルホロダミンB(Sulforhodamine B;SRB)溶液で染色して吸光度を測定し、細胞生存率を確認した。
【0123】
その結果を図9に示した。
【0124】
図9から確認されるように、SYT11の抑制剤としてアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用した場合にも、実施例<6-1>のsiRNAを使用した実験と同様、SYT11の抑制に伴い癌細胞の増殖が阻害されることが確認された。一方、陰性対照群(配列番号20)を処理した場合は、細胞増殖に影響を及ぼさなかった。
【0125】
前記結果からSYT11が幹型胃癌に対する診断因子として使用可能であることが確認された。また、SYT11に対する抑制剤が胃癌細胞の移動および浸潤を抑制し、細胞外基質に対する付着能を抑制し、各種癌転移関連サイトカインの分泌を抑制し、胃癌細胞の増殖を抑制することを確認することで、胃癌治療用組成物として優れた効果があることを確認した。
【0126】
<実施例7>SYT11選択的な癌細胞増殖抑制の確認
SNU484細胞に実施例2と同様、siSC、siSYT11、SYT familyの他の遺伝子でSYT4を抑制するsiSYT4(配列番号13)、またはSYT7を抑制するsiSYT7(配列番号14)をトランスフェクション(transfection)し、72時間後、スルホロダミンB(Sulforhodamine B;SRB)溶液で染色して吸光度を測定し、細胞生存率を確認した。
【0127】
前記結果を図10に示した。
【0128】
図10から確認されたように、S N U484細胞増殖は、SYT11 knockdown選択的に抑制され、他のSYT familyであるSYT4、SYT7などによっては影響を受けないことを確認した。
【0129】
上記の結果から、SYT11のみが、胃癌、特に、幹型亜型胃癌に対して特異的に治療効果があることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】