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特表2022-505372ナノファイバーシートの透明度を高めること
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ナノファイバーシートの透明度を高めること
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20220106BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220106BHJP
【FI】
C01B32/168
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521370
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 US2019053406
(87)【国際公開番号】W WO2020081214
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/747,995
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516124627
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】LINTEC OF AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】15930 S. 48th Street, Suite 110, Phoenix, Arizona 85048, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー ジェア
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AB07
4G146AC30B
4G146AD40
4G146CB01
4G146DA07
4G146DA26
4G146DA43
4G146DA47
(57)【要約】
可視スペクトル内の波長を含む、多くの波長の放射線に対するナノファイバーシートの透明度を高めるための方法が説明される。これらの技術は、ナノファイバーシートの幅を拡大するようにナノファイバーシートに歪みを与えることを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
第1のナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから引き抜くことであって、前記第1のナノファイバーシートが前記ナノファイバーフォレストと一体の固定端及び前記固定端に対向する自由端を有し、前記第1のナノファイバーシートの複数のナノファイバーが、前記第1のナノファイバーシートの引き抜き方向と整列する、前記引き抜くことと、
歪み要素を前記自由端に取り付けることと、
前記ナノファイバーのアライメントに平行ではない方向に前記歪み要素を引き延ばすことによって歪みを前記自由端に印加することと、
前記ナノファイバーシートの前記歪んだ自由端を支持体に取り付けることであって、前記支持体が、前記印加された歪みを前記第1のナノファイバーシートに維持する、前記取り付けることと、
前記第1のナノファイバーシートを前記ナノファイバーフォレストから取り除くことと、
第2のナノファイバーシートを前記第1のナノファイバーシートの上に積み重ねることと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第2のナノファイバーシートを前記ナノファイバーフォレストから引き抜くことであって、前記第2のナノファイバーシートが前記ナノファイバーフォレストと一体の第2の固定端及び前記第2の固定端に対向する第2の自由端を有し、前記第2のナノファイバーシートの複数のナノファイバーが、前記第2のナノファイバーシートの引き抜き方向と整列する、前記引き抜くことと、
前記歪み要素を前記第2の自由端に取り付けることと、
前記ナノファイバーの向きに平行ではない第2の方向に前記歪み要素を引き延ばすことによって歪みを前記第2の自由端に印加することと、
前記第2のナノファイバーシートの歪んだ前記第2の自由端を第2の支持体に取り付けることであって、前記第2の支持体が、前記印加された歪みを前記第2のナノファイバーシートに維持する、前記取り付けることと、
前記第2のナノファイバーシートを前記ナノファイバーフォレストから取り除くことと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歪みの印加に応えて、前記第1のナノファイバーシート及び前記第2のナノファイバーシートの一方または両方に複数のギャップを形成することをさらに含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ギャップの平均ギャップサイズが、一辺で8ミクロンから一辺で45ミクロンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のナノファイバーシート及び前記第2のナノファイバーシートに前記歪みを印加することが、各シートに3倍、歪みを与えることを含み、
可視スペクトルの放射線に対する、前記積み重ねられた第1のナノファイバーシート及び前記第2のナノファイバーシートの透明度が90%である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
550nmの波長を有する放射線に対する、前記第1のナノファイバーシート及び前記第2のナノファイバーシートの前記積み重ねの透明度が72%~88%である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のナノファイバーシート及び前記第2のナノファイバーシートが、互いに平行ではないそれらの対応するナノファイバーアライメント方向に対して積み重ねられる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のナノファイバーシートと前記第2のナノファイバーシートのナノファイバーアライメント方向間の角度が、0°を除く、45°~135°である、請求項1または2のどちらかに記載の方法。
【請求項9】
前記第2のナノファイバーシートが引き抜かれたままの状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のナノファイバーシートを溶媒に曝露することによって前記第2のナノファイバーシートの密度を高め、前記積み重ねの前に前記溶媒を取り除くことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法であって、
ナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから引き抜くことであって、前記ナノファイバーシートが前記ナノファイバーフォレストと一体の固定端及び前記固定端に対向する自由端を有し、前記ナノファイバーシートの複数のナノファイバーが、前記ナノファイバーシートの引き抜き方向に平行な方向に整列する、前記引き抜くことと、
歪み要素を前記自由端に取り付けることと、
前記ナノファイバーのアライメントに平行ではない方向に前記歪み要素を引き延ばすことによって歪みを前記自由端に印加することと、
前記ナノファイバーシートの前記歪んだ自由端を支持体に取り付けることであって、前記支持体が、前記印加された歪みを前記ナノファイバーシートに維持する、前記取り付けることと
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記歪み要素を前記歪んだ自由端から取り除くことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法を、前記ナノファイバーシートの前記固定端に適用することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記歪みを前記固定端に印加した後に前記固定端を前記ナノファイバーフォレストから切断することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記歪みが、前記ナノファイバーシート内の前記ナノファイバーの前記アライメントの方向に対して45°~135°の方向で印加される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノファイバーシートが歪みを与える前の第1の幅、及び歪みを与えた後の第2の幅を有し、前記第2の幅が前記第1の幅よりも大きい、請求項11~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第2の幅が前記第1の幅の2.5倍から3倍である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
550nmの波長を有する放射線に対する透明度が少なくとも80%である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ナノファイバーシートに関する。具体的には、本開示は、ナノファイバーシートの透明度を高めることに関する。
【背景技術】
【0002】
単層ナノチューブ及び多層ナノチューブから成るナノファイバーフォレストは、ナノファイバーリボンまたはナノファイバーシートに引き入れることができる。ナノファイバーフォレストは、その引き抜き前の状態では、互いに平行であり、成長基材の表面に垂直であるナノファイバーの1層(またはいくつかの積み重ねられた層)を含む。ナノファイバーシートに引き入れられると、ナノファイバーの向きは、成長基材の表面に対して垂直から平行に変化する。引き抜かれたナノファイバーシート内のナノチューブは、端から端までの構成で互いに接続して、ナノファイバーの長手方向軸がシートの平面に平行になる(つまり、ナノファイバーシートの第1の主面及び第2の主面の両方に平行になる)連続シートを形成する。ナノファイバーシートは、ナノファイバーシートをナノファイバー糸に紡糸することを含む、さまざまな方法のいずれかで処理できる。
【発明の概要】
【0003】
実施例1は、第1のナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから引き抜くことであって、第1のナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストと一体の固定端及び固定端に対向する自由端を有し、第1のナノファイバーシートの複数のナノファイバーは、第1のナノファイバーシートの引き抜き方向と整列した、引き抜くことと、歪み要素を自由端に取り付けることと、ナノファイバーのアライメントに平行ではない方向に歪み要素を引き延ばすことによって歪みを自由端に印加することと、ナノファイバーシートの歪んだ自由端を支持体に取り付けることであって、支持体は印加された歪みを第1のナノファイバーシートに維持する、取り付けることと、第1のナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから取り除くことと、第2のナノファイバーシートを第1のナノファイバーシートの上に積み重ねることとを含む方法である。
【0004】
実施例2は、実施例1の主題を含み、第2のナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから引き抜くことであって、第2のナノファイバーシートはナノファイバーフォレストと一体の第2の固定端及び第2の固定端と対向する第2の自由端を有し、第2のナノファイバーシートの複数のナノファイバーは、第2のナノファイバーシートの引き抜き方向と整列した、引き抜くことと、歪み要素を第2の自由端に取り付けることと、ナノファイバーの向きと平行ではない第2の方向に歪み要素を引き延ばすことによって歪みを第2の自由端に印加することと、第2のナノファイバーシートの歪んだ第2の自由端を第2の支持体に取り付けることであって、第2の支持体は印加された歪みを第2のナノファイバーシートに維持する、取り付けることと、第2のナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから取り除くこととをさらに含む。
【0005】
実施例3は、実施例1または2のどちらかの主題を含み、歪みの印加に応えて、第1のナノファイバーシート及び第2のナノファイバーシートの一方または両方に複数のギャップを形成することをさらに含む。
【0006】
実施例4は、実施例3の主題を含み、ギャップの平均ギャップサイズは、一辺で8ミクロンから一辺で45ミクロンである。
【0007】
実施例5は、先行実施例のいずれかの主題を含み、第1のナノファイバーシート及び第2のナノファイバーシートに歪みを印加することは、各シートに3倍、歪みを与えることを含み、可視スペクトルの放射線に対する、積み重ねられた第1のナノファイバーシート及び第2のナノファイバーシートの透明度は90%である。
【0008】
実施例6は、先行実施例のいずれかの主題を含み、550nmの波長を有する放射線に対する、第1のナノファイバーシート及び第2のナノファイバーシートの積み重ねの透明度は72%~88%である。
【0009】
実施例7は、先行実施形態のいずれかの主題を含み、第1のナノファイバーシート及び第2のナノファイバーシートは、互いに平行ではないそれらの対応するナノファイバーアライメント方向に対して積み重ねられる。
【0010】
実施例8は、先行実施例のいずれかの主題を含み、第1のナノファイバーシート及び第2のナノファイバーシートのナノファイバーアライメント方向間の角度は、0°を除き、45°~135°である。
【0011】
実施例9は、実施例1の主題を含み、第2のナノファイバーシートは、引き抜かれたままの状態にある。
【0012】
実施例10は、実施例9の主題を含み、第2のナノファイバーシートを溶媒に曝露することによって第2のナノファイバーシートの密度を高め、積み重ねの前に溶媒を取り除くことをさらに含む。
【0013】
実施例11は、ナノファイバーシートをナノファイバーフォレストから引き抜くことであって、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストと一体の固定端及び固定端に対向する自由端を有し、ナノファイバーシートの複数のナノファイバーは、ナノファイバーシートの引き抜き方向に平行な方向に整列した、引き抜くことと、歪み要素を自由端に取り付けることと、ナノファイバーのアライメントに平行ではない方向に歪み要素を引き延ばすことによって歪みを自由端に印加することと、ナノファイバーシートの歪んだ自由端を支持体に取り付けることであって、支持体は印加された歪みをナノファイバーシートに維持する、取り付けることと、を含む方法である。
【0014】
実施例12は、実施例11の主題を含み、歪み要素を歪んだ自由端から取り除くことをさらに含む。
【0015】
実施例13は、実施例11または12のどちらかの主題を含み、請求項11に記載の方法を、ナノファイバーシートの固定端に適用することをさらに含む。
【0016】
実施例14は、実施例11~13のいずれかの主題を含み、歪みを固定端に印加した後に固定端をナノファイバーフォレストから切断することをさらに含む。
【0017】
実施例15は、実施例14の主題を含み、歪みは、ナノファイバーシート内のナノファイバーのアライメントの方向に対して45°~135°の方向に印加される。
【0018】
実施例16は、実施例11~15のいずれかの主題を含み、ナノファイバーシートは歪みを与える前の第1の幅、及び歪みを与えた後の第2の幅を有し、第2の幅は第1の幅よりも大きい。
【0019】
実施例17は、実施例16の主題を含み、第2の幅は、第1の幅の2.5倍から3倍である。
【0020】
実施例18は、実施例16の主題を含み、550nmの波長を有する放射線に対する透明度は少なくとも80%である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態における、基材上のナノファイバーの例示的なフォレストの顕微鏡写真である
図2】一実施形態における、ナノファイバー成長のための例示的な反応器の概略図である。
図3】ある実施形態における、シートの相対的な寸法を識別するナノファイバーシートの図であり、シートの表面に平行な平面で端から端へ整列したシート内のナノファイバーを概略で示す。
図4】ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから横方向に引き抜かれているSEM顕微鏡写真であり、ナノファイバーは概略で端から端まで整列している。
図5】本開示の一例における、ナノファイバーシートの透明度を高めるための例示的な方法の流れ図である。
図6A】本開示の一例において、図5に示す方法を実行することによってナノファイバーシートの透明度を高めるための方法の多様な段階を示す。
図6B】本開示の一例において、図5に示す方法を実行することによってナノファイバーシートの透明度を高めるための方法の多様な段階を示す。
図6C】本開示の一例において、図5に示す方法を実行することによってナノファイバーシートの透明度を高めるための方法の多様な段階を示す。
図6D】本開示の一例において、図5に示す方法を実行することによってナノファイバーシートの透明度を高めるための方法の多様な段階を示す。
図6E】本開示の一例において、図5に示す方法を実行することによってナノファイバーシートの透明度を高めるための方法の多様な段階を示す。
図6F】本開示の一例において、図5に示す方法を実行することによってナノファイバーシートの透明度を高めるための方法の多様な段階を示す。
図7】本開示の一例において、各々が引き抜かれたままのシートの幅の3倍(3X)に引き伸ばされ、個々のナノファイバーの向きが、互いに対して90°であるように積み重ねられた2つのナノファイバーシートの1X画像及び20X画像を示す実験結果を示す。
図8】本開示の一例における、20Xの倍率で図7に示す試料の画像を示す。
図9】本開示の一例において、各々が引き抜かれたままのシートの幅の2.5倍(2.5X)に引き伸ばされ、個々のナノファイバーの向きが互いに対して90°であるように積み重ねられた2つのナノファイバーシートの1X画像及び20X画像を示す実験結果を示す。
図10】本開示の一例における、20Xの倍率で図9に示す試料の画像を示す。
図11】本開示の一例において、各々が引き抜かれたままのシートの幅の2倍(2X)に引き伸ばされ、個々のナノファイバーの向きが互いに対して90°であるように積み重ねられた2つのナノファイバーシートの1X画像及び20X画像を示す実験結果を示す。
図12】本開示の一例における、20Xの倍率で図11に示す試料の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図は、例示だけの目的のために、本開示の多様な実施形態を示す。多くの変形、構成、及び他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態から明らかになる。
【0023】
概要
カーボンナノファイバーシート及びカーボンナノファイバー糸には、大きな技術的な可能性がある。重要なカーボンナノファイバーシートの1つの特徴は、放射線のいくつかの波長に対する透明度と組み合わされたその興味深い電気的特性である。いくつかの用途では、可視放射波長に対する高い透明度が望まれている。しかしながら、いくつかの用途の場合、ナノファイバーフォレストから直接的に引き抜かれたナノファイバーシートには、十分な透明度がない場合がある。本明細書に開示する技術は、可視スペクトル内のそれらの波長を含む、放射線の多くの波長に対するナノファイバーシートの透明度を高めるための方法を含む。
【0024】
本開示の技術を説明する前に、ナノファイバーフォレスト及びナノファイバーシートを説明する。
【0025】
ナノファイバーフォレスト
本明細書に使用される場合、用語「ナノファイバー」は、1μm未満の直径を有する繊維を意味する。本明細書の実施形態は、主にカーボンナノチューブから製作されたとして説明されるが、他の炭素同素体、グラフェン、ミクロン、またはナノスケールのグラファイトファイバー及び/またはプレート、ならびにさらに窒化ホウ素等のナノスケールファイバーの他の組成物が認識される。本明細書に使用される場合、用語「ナノファイバー」及び「カーボンナノチューブ」は、炭素原子が互いに結び付けられて円筒形構造を形成する単層カーボンナノチューブ及び/または多層カーボンナノチューブの両方を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に参照するカーボンナノチューブは、4壁と10壁との間を有する。本明細書に使用される場合、「ナノファイバーシート」または単に「シート」は、延伸プロセス(PCT公開番号第WO2007/015710号に説明され、参照によりその全体が本明細書に援用される)によって整列したナノファイバーのシートを指すので、シートのナノファイバーの長手方向軸は、シートの主面に垂直であるよりもむしろ、シートの主面に平行である(すなわち、多くの場合「フォレスト」と呼ぶシートが成膜されたままの形態になる)。これは、各々、図3及び図4に例示され、示される。
【0026】
カーボンナノチューブの寸法は、使用する生産方法に応じて大きく変わる場合がある。例えば、カーボンナノチューブの直径は、0.4nm~100nmである場合があり、その長さは10μm~55.5cmを超える範囲となる場合がある。また、カーボンナノチューブは、132,000,000:1以上の、非常に高いアスペクト比(長さ対直径の比)を有することも可能である。様々な寸法の可能性を考慮して、カーボンナノチューブの特性は、高度に調節可能または「調整可能」である。カーボンナノチューブの多くの興味深い特性が確認されているが、カーボンナノチューブの特性を実際の用途に利用するには、カーボンナノチューブの特徴を維持または向上することを可能にする、拡張性があり制御可能な生産方法が必要である。
【0027】
カーボンナノチューブはその固有の構造により、カーボンナノチューブを特定の用途に適合させる機械的、電気的、化学的、熱的、及び光学的な特性を有する。特に、カーボンナノチューブは優れた電気伝導度、高い機械的強度、良好な熱安定性を示し、疎水性でもある。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブは、また、有用な光学特性を示し得る。例えば、カーボンナノチューブは、狭く選択された波長で光を放出または検出するために、発光ダイオード(LED)及び光検出器で使用され得る。また、カーボンナノチューブは、光子輸送及び/またはフォノン輸送に有用であることが判明する場合がある。
【0028】
本開示の様々な実施形態によれば、ナノファイバー(カーボンナノチューブを含むが、これに限定されない)は、「フォレスト」と本明細書で呼ぶ構成を含む多様な構成で配列できる。本明細書に使用される場合、ナノファイバーまたはカーボンナノチューブの「フォレスト」は、基材上で互いに実質的に平行に配列されるほぼ同等の寸法を有するナノファイバーのアレイを指す。図1は、基材上のナノファイバーの例示的なフォレストを示す。基材は任意の形状であってよいが、いくつかの実施形態では、基材は、フォレストが集合する平面を有する。図1に見られることができるように、フォレスト内のナノファイバーは、ほぼ等しい高さ及び/または直径であることができる。
【0029】
本明細書に開示されるようなナノファイバーフォレストは、相対的に高密度であることができる。具体的には、開示されたナノファイバーフォレストは、少なくとも10億ナノファイバー/cmの密度を有することができる。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に説明されるようなナノファイバーフォレストは、100億/cm~300億/cmの間の密度を有することができる。他の例では、本明細書に説明されるようなナノファイバーフォレストは、900億ナノファイバー/cmの範囲の密度を有することができる。このフォレストは高密度または低密度の領域を含むことができ、特定の領域はナノファイバーがない場合がある。また、フォレスト内のナノファイバーは、繊維間結合性を示すことができる。例えば、ナノファイバーフォレスト内の隣接するナノファイバーは、ファンデルワールス力によって相互に引き付けられ得る。いずれにせよ、本明細書に説明する技術を適用することによって、フォレスト内のナノファイバーの密度を高めることができる。
【0030】
ナノファイバーフォレストを製作する方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に援用されるPCT第WO2007/015710号に説明されている。
【0031】
ナノファイバー前駆体フォレストを生成するために多様な方法を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノファイバーは、図2に概略で示す高温炉内で成長し得る。いくつかの実施形態では、触媒は、基材上に堆積され、反応器に載置され、次に、反応器に供給される燃料化合物に曝露され得る。基材は800℃またはさらに1000℃よりも高い温度にも耐えることができ、不活性物質であり得る。Siウェハ(例えば、アルミナ、ジルコニア、SiO、ガラスセラミックス)の代わりに他のセラミック基材が使用される場合もあるが、基材は、下にあるシリコン(Si)ウェハ上に配置されたステンレス鋼またはアルミニウムを含み得る。前駆体フォレストのナノファイバーがカーボンナノチューブである例では、アセチレン等の炭素系化合物を燃料化合物として使用し得る。反応器に導入された後、次に、燃料化合物(複数可)は触媒上に蓄積し始め得、基材から上に成長することにより集合して、ナノファイバーのフォレストを形成し得る。反応器は、また、燃料化合物(複数可)及びキャリアガスが反応器に供給され得るガス入口と、消費された燃料化合物及びキャリアガスが反応器から放出され得るガス出口とを含み得る。キャリアガスの例は、水素、アルゴン、及びヘリウムを含む。これらのガス(特に水素)もまた、ナノファイバーフォレストの成長を促進するために反応器に導入されることができる。加えて、ナノファイバーに取り込まれるドーパントをガス流に添加し得る。
【0032】
多層ナノファイバーフォレストを製作するために使用されるプロセスでは、1つのナノファイバーフォレストが基材上に形成され、その後、第1のナノファイバーフォレストと接触する第2のナノファイバーフォレストの成長が続く。多層ナノファイバーフォレストは、第1のナノファイバーフォレストを基材上に形成し、触媒を第1のナノファイバーフォレスト上に堆積させ、次に、追加の燃料化合物を反応器に導入して、第1のナノファイバーフォレスト上に位置付けられる触媒から第2のナノファイバーフォレストの成長を促進することによる等、多くの適切な方法によって形成することができる。適用される成長方法、触媒の種類、及び触媒の場所に応じて、第2のナノファイバー層は第1のナノファイバー層の上で成長し得るか、または例えば水素ガス等で触媒をリフレッシュした後、基材上で直接成長し得るかのいずれかにより、第1のナノファイバー層の下で成長する。いずれにせよ、第2のナノファイバーフォレストは、第1のナノファイバーフォレストのナノファイバーとほぼ端から端まで整列されることができるが、第1のフォレストと第2のフォレストとの間で容易に検出可能な界面がある。多層ナノファイバーフォレストは、任意の数のフォレストを含み得る。例えば、多層前駆体フォレストには、2、3、4、5、またはそれよりも多いフォレストを含み得る。
【0033】
ナノファイバーシート
フォレスト構成での配置に加えて、主題出願のナノファイバーもまたシート構成で配置され得る。本明細書で使用される場合、用語「ナノファイバーシート」、「ナノチューブシート」、または単に「シート」は、ナノファイバーが平面内で端から端へ整列したナノファイバーの配置を指す。例示的なナノファイバーシートの図は、寸法のラベルとともに図3に示される。いくつかの実施形態では、シートは、シートの厚さよりも、100倍より大きい長さ及び/または幅を有する。いくつかの実施形態では、長さ、幅またはその両方は、シートの平均厚さよりも10倍、10倍、または10倍超大きい。ナノファイバーシートは、例えば、約5nmから30μmの間の厚さ、ならびに意図された用途に適している任意の長さ及び幅を有することができる。いくつかの実施形態では、ナノファイバーシートは、1cmから10メートルの間の長さ、及び1cmから1メートルの間の幅を有することができる。これらの長さは、説明のために提供されるに過ぎない。ナノファイバーシートの長さ及び幅は、ナノチューブ、フォレスト、またはナノファイバーシートのうちのいずれかの物理的特性または化学的特性ではなく、製造機器の構成によって制約される。例えば、連続プロセスは、任意の長さのシートを製造することができる。これらのシートは、製造される際に、ロールに巻き付けることができる。
【0034】
図3に示すように、ナノファイバーが端から端へ整列した軸をナノファイバーアライメントの方向と呼ぶ。いくつかの実施形態では、ナノファイバーアライメントの方向は、ナノファイバーシート全体にわたって連続的であり得る。ナノファイバーは必ずしも互いに完全に平行ではなく、ナノファイバーアライメントの方向がナノファイバーのアライメントの方向の平均的または一般的な尺度であることが理解される。
【0035】
ナノファイバーシートは、シートを製造することができる任意のタイプの適切なプロセスを使用して集合させ得る。いくつかの例示的な実施形態では、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き抜かれ得る。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き抜かれる例を図4に示す。
【0036】
図4に示すように、ナノファイバーは、フォレストから横方向に引き抜かれ、次に端から端に整列して(ナノファイバーは重なり合い)、ナノファイバーシートを形成し得る。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き抜かれる実施形態では、フォレストの寸法を制御して、特定の寸法を有するナノファイバーシートを形成し得る。例えば、ナノファイバーシートの幅は、シートが引き抜かれたナノファイバーフォレストの幅にほぼ等しくてもよい。さらに、シートの長さは、例えば、所望のシート長が達成されたときに引き抜きプロセスを終了することなどによって制御されることができる。
【0037】
ナノファイバーシートは、様々な用途に利用されることができる多くの特性を有する。例えば、ナノファイバーシートは、調整可能な不透明度、高い機械的強度及び可撓性、熱伝導度及び電気伝導度を有することができ、そしてまた疎水性を示すことができる。シート内のナノファイバーの高度なアライメントを考慮すると、ナノファイバーシートは極端に薄い可能性がある。いくつかの例では、ナノファイバーシートは約10nmオーダーの厚さであり(通常の測定公差内で測定した場合)、その厚さはほぼ2次元で表される。他の例では、ナノファイバーシートの厚さは、200nmまたは300nmになり得る。そのため、ナノファイバーシートは構成要素に最小限の追加の厚さを加え得る。
【0038】
いくつかの例では、ナノファイバーシートは、後に取り除く溶媒(例えば、トルエン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、水、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、極性溶媒、非極性溶媒)に曝露することができる。曝露及びその後の除去によって、ナノファイバーシート内の構成ナノファイバーは互いに近づけることができる。この「高密度化」によって、(上記に示した値のいずれも含む)ナノファイバーシートの厚さは、(100nm未満の厚さのナノファイバーの場合)10分の1から(100nmよりも厚いナノファイバーシートの場合)1000分の1まで減少する可能性がある。
【0039】
ナノファイバーフォレストと同様に、シートのナノファイバーの表面に化学基または化学元素を追加することによって、ナノファイバーシート中のナノファイバーに処理剤で機能をもたせ得、それはナノファイバー単独とは異なる化学活性を提供する。ナノファイバーシートの機能付与は、以前に機能をもたせたナノファイバーで実行ができる、または以前に機能をもたせていないナノファイバーで実行できる。機能付与は、CVD及び多様なドーピング技法を含むがこれらに限定されない、本明細書に説明する技術のいずれかを使用して実行できる。
【0040】
また、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから延伸されると高純度を有する場合があり、いくつかの例では、90%超、95%超、または99%超のナノファイバーシートの重量パーセントはナノファイバーに起因する。同様に、ナノファイバーシートは、90%超、95%超、99%超、または99.9%超の重量パーセントの炭素を含む場合がある。
【0041】
例示的な方法
ナノファイバーシートの透明度を高めるための例示的な方法500が、図5に示されている。方法500の多様な要素と関連する対応する構造のいくつかは、図6A図6Fに示されている。図5及び図6A図6Fを同時に参照することによって、説明は容易になる。
【0042】
方法500は、図3及び図4との関連で上述したように、ナノファイバーシート(図6A図6Cの604)をナノファイバーフォレスト(図6A図6Cの601)から引き抜くことで始まる(504)。
【0043】
歪み要素は、ナノファイバーフォレストから引き抜かれたナノファイバーシートに取り付けることができる(508)。これは、ナノファイバーフォレスト601から延伸されたナノファイバーシート604の自由端602に取り付けられた歪み要素608として図6Aに示される。ナノファイバーシート604の「固定端」610は、ナノファイバーフォレスト601に取り付けられ、一体である。この接続の側面顕微鏡写真は、図4に示されている。
【0044】
歪み要素608は、歪み要素608の歪み性(strainability)の方向が、ナノファイバーシート内のナノファイバーのアライメントの方向に平行にならないようにナノファイバーシート604の自由端602に取り付けることができる(508)。このナノファイバーアライメントの方向は、図6Aに矢印で示され、これは、ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き出される方向にも一致する。いくつかの例では、歪み要素608は、ナノファイバーシート604内の個々のナノファイバーの端から端へのアライメントの方向に垂直に取り付けることができる(508)。この例は、図6Aに示されている。いくつかの例では、歪み要素608は、シート内のナノファイバーのアライメントの方向に対して、45°~135°である角度αで取り付けることができる(508)。これは、図6Fに示されている。
【0045】
歪み要素608は、例えば接着テープ、硬化接着剤(空気によるのか、放射によるのか、または温度によるのかに関わらず)、圧縮篏合(例えば、クランプまたはナノファイバーシートを歪み要素608に保持する適切に構成されたスリーブ)、またはナノファイバーシート604と歪み要素608との間の物理的な接続を使用し、ナノファイバーシート604の自由端602に取り付けることができる(508)。ただし、方法に関わりなく、取り付けは、破砕または弛緩することなく(以下に説明するように)課される歪みを維持するほど十分である必要がある。いくつかの例では、取り付けは解放可能である。
【0046】
歪み要素608の例は、エラストマー材料または弾性率の低い他の材料のバンド、ロッド、またはシートを含む。歪み要素608に使用できる材料の例は、エラストマーゴム(例えば、ブタジエンゴム、弾性率が1MPa未満、0.5MPa未満、0.1MPa未満、50kPa未満のエラストマー)、低弾性率の塑性変形可能なポリマー(例えば、ポリエチレン等、1Gpa未満もしくは2GPa未満)、または伸長用に構成された鋼のような剛性材料の構造物(例えば、伸縮式鋼棒)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
次に、歪み要素608を歪み方向に引き延ばすことによって、歪みをナノファイバーシート604の自由端602に印加できる(512)。この歪みを与えることは、図6Bに示されている。歪み要素608は、図6Aに示す歪んでいない状態と図6Bに示す歪んだ状態との間で同じであるが、図6Bの歪み要素は、その形状がその元の状態と比較して変化した(つまり、歪みを与えることによって拡大した)ことを示すために608’と示されている。伸長の方向は、歪み要素608’内の両方向矢印で示される。上記に示したように、歪み要素の608から608’への伸長は、塑性歪みまたは弾性歪みのどちらかによって引き起こされる可能性がある。
【0048】
歪みの印加によって図6Bに示す構造が生じ、そこでは引き抜かれたままのナノファイバーシート604の第1の幅W1(つまり、固定端610)が、歪んだ(自由)端602での幅W2に拡大し、W2はW1より大きい。W2は、W1の倍数の以下の範囲、つまりW1の1.1倍(X)~3X、W1の1.5X~3X、W1の2X~3X、W1の1.5X~2.5Xのいずれかの範囲内である場合がある。また、いくつかの例では、2.5Xは、「150%」として示され、3Xは「200%」として示される。
【0049】
次に、歪み要素608’によって自由端602でナノファイバーシート604に課された歪みを維持するように、歪んだ端部(図6B図6Eの自由端602に相当する)を非弾性支持体612に取り付けることができる(516)。これは、図6Cに示されている。非弾性支持体612と、幅W2を有するナノファイバーシート604との間の取り付けは、上述の技術のいずれかを使用する場合もあれば、代わりに永久接着剤を使用する場合もある。歪み要素608’は、支持体612に取り付けられると(516)、上述した接続を逆にするか、または支持体612が歪み要素608とシート604の固定端610との間に配置されている場合には、支持体612と歪み要素608との間のナノファイバーシートを単に切断するかのどちらかによって取り除くことができる(520)。
【0050】
非弾性支持体612の例は、ロッド、ピン、バー、フープ、または日常の取り扱い中に弾性変形に抵抗できる弾性率を有する他の構造物を含む場合がある。また、非弾性支持体612は、ナノファイバーシートの中心部分を支持されないままにしながら、自由端602、固定端610、及び(任意選択で)対向する介在する辺を固定することができるフレームを含む場合もある。とりわけ、非弾性支持体612を形成するために使用できる例の材料は、ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン)、金属(鋼、銅、アルミニウム)、ガラス(シリカガラス、ホウケイ酸ガラス)、シリコンを含むが、これらに限定されない。
【0051】
次に、方法500の上述の要素は、ナノファイバーシート604の固定端610を用いて繰り返すことができる(524)。ナノファイバーシート604の固定端610に対する要素512、516の繰り返しは、図6D図6Eに示されている。(歪みを与える前の)引き抜かれたままのナノファイバーシートの元の幅W1は、図6Eに示されている。端部610と関連する歪み要素は、(その中の両方向矢印で示されるように)その歪んだ状態で示され、歪み要素616’と名前が付けられる。端部610で歪みを維持する非弾性支持体は、非弾性支持体618に示される。
【0052】
第2のナノファイバーシートをナノファイバーフォレスト601から引き抜いて、第2の引き伸ばされたナノファイバーシートを作り出すことによって、方法500を繰り返すことができる(528)。いくつかの例では、方法500は、任意選択で第2のナノファイバーシートを第1のナノファイバーシートの上に積み重ねることによって続行し得る(532)。積み重ねたシート間のナノファイバーアライメントの方向は、互いに対して5°~185°である場合がある。一般に、2つの間のアラインメントは0°ではない(つまり、それらは平行なナノファイバーアライメントを有するように積み重ねられていない)。以下に示す実験の実施例では、2つのシートは、垂直なナノファイバーアライメントを有するように積み重ねられる。積み重ねは、任意の数のナノファイバーシート及び上記の任意の向きのいずれかで繰り返すことができる。
【0053】
以下に説明するように、方法を実行することによって、ナノファイバーシートの放射線に対する透明度を高めることができる。いくつかの場合、透明度の高まりは、歪んだナノファイバーシート内でのギャップの形成によって引き起こされることが観察されている。いくつかの例では、複数の歪んだナノファイバーシートを互いの上に積み重ねることができる。いくつかの場合、複数の歪んだシートを積み重ねることによって、個別のナノファイバーシートと比較して積み重ねの機械的な安定性及び靭性を改善することができる。以下に説明する実験の実施例は、2つのシート間のナノファイバーアライメントの方向が互いに垂直(+/-5°)になるようにシートを積み重ねることを示しているが、積み重ねられたシートは、互いに対して任意の向きに配向できることが理解される。
【0054】
特性
方法500を実行することによって、引き抜かれたままのナノファイバーシートの幅を第1の幅(W1)から第2の幅(歪みを与えた後、W2)に最大3倍まで拡大することができる。言い換えると、引き伸ばされたシートの幅は、3倍(つまり「3X」)拡大する。同等に、これはW2=3*(W1)で表すことができる。他の例では、方法500を実行することによって、以下の範囲、つまり1.1X~2X、1.1X~2.5X、1.5X~2X、2.5X~3X、1.75X~3Xのいずれかのうちで引き抜かれたままのナノファイバーの第1の幅(W1)よりも大きい第2の幅W2を作り出すことができる。
【0055】
いくつかの例では、可視放射スペクトル(例えば、380nm~740nm、400nm~700nm、450nm~550nmの波長を有する)の透明度を、単一ナノファイバーシートについて10%~15%、高めることができる。言い換えると、単一カーボンナノファイバーシート604は、(例えば、W1の幅での)引き伸ばしの前には約80%の可視スペクトルの透明度、及び(例えば、W2の幅への)引き伸ばしの後には少なくとも95%の透明度を有することが可能である。
【0056】
いくつかの例では、引き伸ばし時にギャップがシート内に形成される場合がある。これらのギャップが形成されることは、部分的には、ナノファイバーシートが引き抜かれるナノファイバーフォレストの高さと密度の関数である場合がある。短いフォレスト(例えば、150μm未満の高さ)または低密度のフォレスト(例えば、45~50mg/cm)の場合、シートのギャップは均一な大きさとなり、幅が元のシートの幅の1.5Xに拡大するまで分散される。高いフォレスト(例えば、300μmと500μmの間)または高密度のフォレスト(例えば、60mg/cmよりも大きい)からのシートは、元のシート幅の約1.65Xまでの均一な大きさの分散されたギャップを有する場合がある。
【0057】
表1に、引き伸ばしの範囲に対する透明度の実験結果を以下に表示する。実験結果1~3は、示されている量、引き伸ばされ、互いに対して90°のシート内でのナノファイバー向きで積み重ねられた2つのナノファイバーシートの可視スペクトル放射線のパーセント(%)透過率を説明している。実験結果4は、互いに対して90°で積み重ねられた引き伸ばされていないシートを含み、したがって上述した技術に従って処理された実験結果1~3の基準点としての機能を果たした。図7~12に照らして、以下の表1に提示したギャップ幅の寸法は、(ほぼ矩形の)ギャップの一辺の長さに相当し、ギャップの対角線には相当しないことが理解される。
【0058】
【表1】
【0059】
図7は、本開示の一例において、各々が延伸されたままのシートの幅の3倍に引き伸ばされ、個々のナノファイバーの向きが互いに対して90°であるように積み重ねられた2つのナノファイバーシートの1X画像及び20X画像を示す実験結果を示す。図8は、本開示の一例における、20Xの倍率で図7に示す試料の画像を示す。これらの画像は、表1の試料番号1に対応する。
【0060】
図9は、本開示の一例において、各々が引き抜かれたままのシートの元の幅の2.5倍に引き伸ばされ、個々のナノファイバーの向きが互いに対して90°であるように積み重ねられた2つのナノファイバーシートの1X画像及び20X画像を示す実験結果を示す。図10は、本開示の一例における、20Xの倍率で図9に示す試料の画像を示す。これらの画像は、表1の試料番号2に対応する。
【0061】
図11は、本開示の一例において、各々が引き抜かれたままのシートの元の幅の2倍引き伸ばされ、個々のナノファイバーの向きが互いに対して90°であるように積み重ねられた2つのナノファイバーシートの1X画像及び20X画像を示す実験結果を示す。図12は、本開示の一例における、20Xの倍率で図11に示す試料の画像を示す。これらの画像は、表1の試料番号3に対応する。
【0062】
図7図11の画像は、共焦点顕微鏡を使用して撮影された。画像のいくつかは、明視野顕微鏡技術を使用して撮影され、いくつかは、暗視野顕微鏡技術を使用して撮影された。
【0063】
さらなる考察
本開示の実施形態の前述の説明は、例示の目的で提示されたものであり、網羅的であること、または特許請求の範囲を開示された正確な形態に限定することを意図していない。当業者は、上記の開示を考慮して、多くの修正及び変化が可能であることを認識することができる。
【0064】
本明細書で使用される言葉は、主に読みやすさ及び指示の目的のために選択されており、その言葉は、本発明の主題を記述または制限するために選択されていない場合がある。したがって、本開示の範囲は、この「発明を実施する形態」によってではなく、むしろ本明細書に基づく出願において生じるいずれかの請求項によって制限されることが意図される。したがって、本実施形態の開示は、限定ではないが、以下の「特許請求の範囲」に記載されている本発明の範囲を例示することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】