(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】エスプレッソコーヒーマシンにおける水を監視及び濾過するためのアクティブシステム、並びに関連するエスプレッソコーヒーマシン
(51)【国際特許分類】
A47J 31/34 20060101AFI20220106BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20220106BHJP
A47J 31/36 20060101ALI20220106BHJP
A47J 31/46 20060101ALI20220106BHJP
A47J 31/44 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A47J31/34
G01N33/18 C
G01N33/18 Z
A47J31/36 120
A47J31/46 100
A47J31/44 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521425
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079672
(87)【国際公開番号】W WO2020089297
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】102018000009919
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512102391
【氏名又は名称】ラ マルゾッコ エス アール エル
【氏名又は名称原語表記】LA MARZOCCO S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ビアンチ
(72)【発明者】
【氏名】リカルド ガッティ
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ ウーム
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ フランチーニ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ イノセンティ
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA16
4B104AA19
4B104BA14
4B104CA01
4B104EA30
(57)【要約】
エスプレッソコーヒーマシンが記載されている。このマシンは、給水部と、水を加熱するボイラと、ポンプと、コーヒー粉末パック付きフィルタバスケットを有するポータフィルタと協働するように構成される吐出グループと、エスプレッソコーヒーの調製に使用される水の少なくとも1つのパラメータを監視するための水監視システムと、を備え、加圧水をコーヒー粉末パックに供給してエスプレッソコーヒーを吐出するように構成される。好ましくは、監視システムは、水の導電率及び温度に関する情報から導出される水の硬度値を連続的かつリアルタイムに提供する導電率及び温度プローブを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスプレッソコーヒーを調製及び吐出するマシン(10)であって、前記マシンが、
・給水部と、
・水を加熱するボイラと、
・ポンプと、
・コーヒー粉末パック付きフィルタバスケットを有するポータブルフィルタ(13)と協働するように構成される吐出グループ(10)と、
前記エスプレッソコーヒーの調製に使用される前記水の少なくとも1つのパラメータを監視する水監視システム(50)と、
を備え、加圧水を前記コーヒー粉末パックに供給してエスプレッソコーヒーを吐出するように構成され、
前記水監視システム(50)が、前記水の導電率及び温度に関する情報から導出される水の硬度値を連続的かつリアルタイムに提供する導電率及び温度プローブ(37)を備える、マシン(10)。
【請求項2】
検出されるパラメータのうち、所与の範囲内に入らない少なくとも1つのパラメータを補正するように構成される補正器(36)を更に備える、請求項1に記載のマシン(10)。
【請求項3】
前記補正器(36)が、再石灰化カートリッジを備える、請求項2に記載のマシン(10)。
【請求項4】
絞り装置(35)を更に備え、
前記絞り装置(35)が前記補正器(36)の上流側で水を受け取り、測定装置(37)に水を供給するように構成され、
前記測定装置(37)が前記補正器(36)を通過した水の一部と、前記補正器(36)によって補正されていない水の一部とを受け取る、請求項2又は3に記載のマシン(10)。
【請求項5】
前記絞り装置が、比例弁(35)を備える、請求項4に記載のマシン(10)。
【請求項6】
前記水監視システム(50)が、測定装置(37)の上流側に、前記水中に存在し得る固体粒子を除去するために、流入水(IN)の予備濾過を実施する予備濾過部材(30)を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のマシン(10)。
【請求項7】
補正器(36)が前記予備濾過部材(30)の下流側に設けられる、請求項6に記載のマシン(10)。
【請求項8】
導電率の測定値が、水の硬度値に対して実質的に線形関係で正比例する、請求項1~7のいずれか一項に記載のマシン(10)。
【請求項9】
前記システム(50)が、前記導出される水の硬度値を遠隔受信機に送信する、及び/又は前記導出される水の硬度値を表示する送信機及び/又はディスプレイを備える、請求項8に記載のマシン(10)。
【請求項10】
逆浸透又は塩水軟化剤のいずれかに基づく水処理装置を更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のマシン(10)。
【請求項11】
前記システムが、測定値の少なくとも一部を処理する処理ユニット(38)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のマシン(10)。
【請求項12】
前記水監視システム(50)が、前記給水部の上流側、又はコーヒーボイラ若しくは蒸気ボイラの上流側に配置される、請求項1~11のいずれか一項に記載のマシン。
【請求項13】
エスプレッソコーヒーを調製及び吐出するマシン(10)において、エスプレッソコーヒーの調製に使用される水の少なくとも1つのパラメータを監視する方法であって、前記マシンが、
・ 給水部と、
・ 水を加熱するボイラと、
・ ポンプと、
・ コーヒー粉体パック付きフィルタバスケットを有するポータブルフィルタと協働するように構成される吐出グループと、
を備え、加圧水を前記コーヒー粉体パックに供給してエスプレッソコーヒーを吐出するように構成され、
前記方法が、前記水の導電率及び温度に関する情報から導出される水の硬度値を連続的かつリアルタイムに取得するステップを含む、方法。
【請求項14】
水の硬度が所与の範囲内に入らない場合に、水の硬度を補正するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
絞り装置(35)を提供するステップを更に含み、
前記絞り装置(35)が、補正器(36)の上流側で水を受け取り、測定装置(37)に水を供給するように構成され、
前記測定装置(37)が、前記補正器(36)を通過した水の一部と、前記補正器(36)によって補正されていない水の一部とを受け取る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
測定された導電率値が、水の硬度値に対して実質的に線形関係で正比例する、請求項13、14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、飲料調製マシンの分野に関する。より詳細には、本発明は、エスプレッソコーヒーマシンにおける水を監視及び濾過するためのアクティブシステムに関する。また、本発明は、このようなシステムを備えるエスプレッソコーヒーマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
水は、エスプレッソコーヒーにおいて質的に最も重要な成分、すなわち、コーヒーを味わう際に飲料の味覚に最も影響を与える成分である。
【0003】
飲料を得るための異なるタイプの工程はさておき、一次製品(コーヒー)と並んで最も重要な要素は「抽出液」である。エスプレッソコーヒー、フィルターコーヒー、モカ及び煎じた飲料のいずれにおいても、コーヒー1杯における成分の95~98%が水であることは偶然ではない。この重要な要素は、飲料の最終結果を香り及び味の点で変えることができる様々な物質を含有することがある。実際に水は、不活性で無色、無味無臭の溶媒であるだけでなく、最終品質のための基本的な材料であると考えられる。
【0004】
典型的に、給水システムを管理して水を供給する企業では、塩素系物質が使用されている。実際、塩素は消毒剤として重要な役割を果たす。しかし、塩素は細菌学的観点から消費者を保護する一方、コーヒーの最終品質に対しては極めて悪影響を及ぼす。更に、特に高温環境下で形成される塩素化合物は強い酸化力を有し、コーヒーに含まれる「脂肪」に作用するため、クリームの形成にも悪影響を及ぼす。
【0005】
コーヒー焙煎機及び/又はコーヒーマシンの製造業者には、様々な区域に供給される水に関する一般的な情報、特に塩素の存在及びフランス度(F)という測定単位で表される硬度に関する情報を収集している業者も含まれる。
【0006】
一方、コーヒーの香り、口内に残る風味、味、泡の品質及び粘稠度、並びに官能特性を高める能力等の感覚的側面に関する最近の分析では、いくつかのミネラル塩、特にカルシウム塩の重要性が実証されている。そのような観点から、所与の硬度を有する水は、品質のより良い飲料、こくのある特徴及びシロップの粘稠度を提供し、また、しなやかで安定したクリームを生成するので、オリゴミネラル水を使用することは逆効果であろう。
【0007】
本出願人は、現在コーヒーマシンに供給される水の化学組成が、同じ国内の様々な場所と、更には異なる国との両方を考慮すると、非常に大きなバラツキがあることに着目した。
【0008】
公共水道により供給される水には、例えばカルシウム及びマグネシウムイオンのような様々な量のイオンが含まれており(硬水の場合)、そのようなイオンが適切に処理されない場合、非常に短時間でエスプレッソコーヒー製造マシン内に許容できない堆積物が形成される場合がある。これは、例えば炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムのような不溶性塩の沈殿によって生じる。
【0009】
現在、水を軟化させることでこの欠点を克服することが知られている。特に、ナトリウムイオンは硬度の原因となるイオンを置換し、石灰質(炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム)の析出を防止する。しかし、本出願人は、この方策が飲料のpHも変化させるため、エスプレッソコーヒーの感覚的特徴に影響を及ぼすことに着目した。
【0010】
また、本出願人は、ナトリウムと共に炭酸塩及び重炭酸塩が存在するとコーヒーの浸透が妨げられ、飲料の抽出時間が長くなることにも着目した。このイオンの組み合わせは、(特にマンナン及びセルロースのような不溶性多糖類に関して)コーヒー粉末の膨潤を引き起こし、これはコーヒー粉末パックの開孔率を減少させ、浸透時間を約50%増加させる。更に、重炭酸塩及びナトリウムが存在すると、カップ中のクリームの量が増加する。
【0011】
更に、ナトリウムイオンは、カフェイン及びトリゴネリンのような苦みのある揮発性芳香族化合物を多く抽出する能力を有する。
【0012】
軟水化させるための逆の方策は、脱塩水を使用して注入することである。しかし、このタイプの水は、加熱されて空気に触れるとコーヒーマシンに対して攻撃的になり、更に、飲料に感覚的価値を与える香り及び物質を抽出する能力を低くさせることがある。
【0013】
特許文献1は、飲料の製造を意図した器具用の水を濾過するシステムを開示している。この濾過システムには、配管システムに沿って循環する水の導電率を検出する装置を設けることができる。導電率計からなるこの検出システムは、濾過システムによって生成される水の導電率を、その中に溶解しているミネラル塩に応じて制御するように動作する。
【0014】
特許文献2は、飲料マシンに液体を供給する装置及びその使用方法を開示している。少なくとも1つの充填レベルセンサは、充填レベルの到達に関して制御装置に信号を出力するだけでなく、タンク水の硬度を決定するように追加的に設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2316796号明細書
【特許文献2】米国特許第9986870号明細書
【発明の概要】
【0016】
本発明の目標は、エスプレッソコーヒーの品質を更に向上させる目的で、流入水(最良の濾過オプションを定義するために)及びフィルタによって処理された水(その効率を経時的に監視するために)を診断するシステムを提供することである。したがって、具体的なエスプレッソコーヒーマシンに対して(具体的な場所及び具体的な時間に)供給される水の組成に関する特定の化学的パラメータを決定することが不可欠である。これらのパラメータ(全硬度、一時的硬度、塩素、塩化物、pH、アルカリ度、TDS(全固形分)、鉄等)が測定されると、水中におけるこれらパラメータの組成を減少させるか、又はいかなる場合にも変更することができる濾過システムを使用することができる。
【0017】
当該分野における技術水準の現在の限界は、測定及びシステムの両者が受動的であることである。本出願人は、エスプレッソコーヒーマシンのユーザ及び技術者の意識を高めるために、社内的な専門講座を開催するほか、コーヒーマシンと共に水分析キットを提供している。
【0018】
本発明の目的は、コーヒーマシンの水入口に直列に挿入される機器を提供することである。この機器によれば、流入水の品質に関する重要な情報を提供し得る多数の重要な化学パラメータをリアルタイムに測定することができる。このようにして、水を適切な技術で処理することができる。代替的に、又は付加的に、カップ内の飲料の品質を最大限に確保するとともに前記コーヒーマシンの品質及び効率を維持するために、システムが所定の範囲内にない値を検出した場合には、警報又は発光信号又は音響信号を使用することができる。
【0019】
有利には、この機器は、視覚的メッセージ(例えばディスプレイ等)及び/又は発光信号及び/又は音響信号によって、エスプレッソコーヒーマシンのユーザに自動的かつ明確に情報を提供することができる。
【0020】
水のパラメータのうち以下の1つ以上が検出及び監視されなければならない。
・pH
・アルカリ度[ppm]
・温度[°C/°F]
・TDS(全固形分)[ppm]
・全硬度[ppm]
・全鉄(Fe+2/Fe+3)[ppm]
・全塩化物(Cl-)[ppm]
・遊離塩素(Cl2)[ppm]
・全塩素(C12)[ppm]
・ランゲリア指数演算LSI
【0021】
出願人は、以下の点に着目した。
【0022】
(a)前述のパラメータのいくつかは、典型的には、連続使用ができない技術を使用する示差測定法によって決定及び評価されている。
【0023】
(b)前述のパラメータのいくつかは、測定中に望ましくないイオンを放出することがある。例えば、単純な複合電極を使用するpHの測定では、水中にイオンを放出することがあり、長期間水中に浸しておくことはできない。
【0024】
本発明において、前述のパラメータは2つのグループに分けることができる。第1のグループは、設置及び保守作業を行う人員によって測定されるパラメータを含む。一方、第2のグループは、遠隔で連続的に監視することができるパラメータを含む。
【0025】
本出願人は、水の硬度と導電率に直接的な関係があることを見出した。すなわち、本発明によれば、導電率測定に基づいて、水の全硬度に関する情報を、連続的かつ必要に応じて遠隔地から導出することが可能である。
【0026】
第1の態様によれば、本発明は、エスプレッソコーヒーを調製及び吐出するマシンを提供する。このマシンは、
・給水部と、
・水を加熱するボイラと、
・ポンプと、
・コーヒー粉末パック付きフィルタバスケットを有するポートフィルタ(フィルタホルダ)と協働するように構成される吐出グループと、
・エスプレッソコーヒーの調製に使用される水の少なくとも1つのパラメータを監視する水監視システムと、
を備え、加圧水を前記コーヒー粉末パックに供給してエスプレッソコーヒーを吐出するように構成され、
前記監視システムは、水の導電率及び温度に関する情報(値)から導出される水の硬度値を連続的かつリアルタイムに提供する導電率及び温度プローブを備える。
【0027】
マシンは、検出されるパラメータのうちの所与の範囲内に入らない少なくとも1つを補正するように構成される補正器を備えることができる。実施形態によれば、補正器は、交換可能であり得る再石灰化カートリッジを備える。
【0028】
実施形態では、マシンは絞り装置を更に備え、前記絞り装置は補正器の上流側で水を受け取り、測定装置に水を供給するように構成され、測定装置は、補正器を通過した水の一部と、補正器によって補正されていない水の一部とを受け取る。
【0029】
絞り装置は、比例弁を備えることができる。
【0030】
実施形態では、水監視システムは、測定装置の上流側に、水中に存在し得る設定サイズの固体粒子を除去するために、流入水の予備濾過を実施する予備濾過部材を更に備える。
【0031】
補正器は、予備濾過部材の下流側に設けることができる。
【0032】
実施形態によれば、導電率の測定値は水の硬度値に対して実質的に線形関係で正比例する。
【0033】
実施形態によれば、システムは、前記導出される水の硬度値を遠隔受信機に送信する、及び/又は前記導出される水の硬度値を表示する、送信機及び/又はディスプレイを備える。
【0034】
実施形態によれば、マシンは、逆浸透又は塩水軟化剤のいずれかに基づく水処理装置を更に備える。
【0035】
実施形態によれば、システムは、測定値の少なくとも一部を処理する処理ユニットを備える。
【0036】
実施形態によれば、水監視システムは、前記給水部の上流側、又は前記コーヒーボイラ若しくは蒸気ボイラの上流側に配置される。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、エスプレッソコーヒーを調製及び吐出するマシンにおいて、エスプレッソコーヒーの調製に使用される水の少なくとも1つのパラメータを監視する方法を提供する。この方法において、マシンは、
・給水部と、
・水を加熱するボイラと、
・ポンプと、
・コーヒー粉末パック付きフィルタバスケットを備えたポータブルフィルタ(フィルタホルダ)と協働するように構成される吐出グループと、
を備え、加圧水を前記コーヒー粉末パックに供給してエスプレッソコーヒーを吐出するように構成されている。
本方法は、水の導電率及び温度に関する情報から導出される水の硬度値を連続的かつリアルタイムに取得するステップを含む。
【0038】
実施形態によれば、本方法は、水の硬度が所与の範囲内に入らない場合に、水の硬度を補正するステップを更に含む。
【0039】
実施形態によれば、本方法は絞り装置を提供するステップを更に含み、前記絞り装置は、補正器の上流側で水を受け取り、測定装置に水を供給するように構成され、測定装置は、補正器を通過した水の一部と、補正器によって補正されていない水の一部とを受け取る。
【0040】
実施形態によれば、測定された導電率値は、水の硬度値に対して実質的に線形関係で正比例する。
【0041】
実施形態によれば、本方法は、測定装置の上流側で、水中に存在し得る特定のサイズの固体粒子を除去するために、流入水の予備濾過を実施するステップを更に含む。
【0042】
実施形態によれば、補正ステップは、予備濾過ステップの下流側で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明によるシステムを備えるエスプレッソコーヒーマシンの説明図である。
【
図2】導電率対水の硬度をプロットしたグラフである。
【
図3-1】本発明の第1の実施形態によるシステムの簡略図である
【
図3-2】本発明の第2の実施形態によるシステムの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、非限定的な例として提供され、かつ、添付図面を参照して読まれるべき以下の詳細な説明から完全に明らかになる。
【0045】
図1は、単に例として、全体を符号10で示すエスプレッソコーヒーマシンを示す。マシン10は、マシンの主要構成要素を収容する実質的に閉じたマシン本体11を備えており、その一部については後述する。マシン10の頂部において、好ましくは、カップを置くことができる表面12を備える。表面12上のカップを加熱する電気抵抗(図示せず)又は他の加熱システムを設けることもできる。
【0046】
マシン10は、エスプレッソコーヒーを吐出する少なくとも1つの吐出グループ13を備える。好ましくは、マシン10は、複数の吐出グループ13、例えば
図1に例示したマシンのように3つのグループを備える。また、2つ、4つ又はそれ以上のグループもあり得る。ドリップトレイ14は、好ましくはグリル15によって頂部が部分的に閉じられており、好ましくは吐出グループ13の下に存在する。典型的には、コーヒーカップは、エスプレッソコーヒーの吐出中にグリル15上に置かれる。
【0047】
コーヒー粉末パックに対してフィルタバスケットを支持するポータブルフィルタは、各吐出グループ13に取り外し可能に接続することができる。
【0048】
好ましくは、マシン10は、例えばマシンのオン/オフを切り替える、及び/又は吐出を開始/終了する、1つ以上のディスプレイ16及び押しボタンを備えることができる。
【0049】
また、
図1に示すマシン10は、各吐出グループ13に対して、エスプレッソコーヒーの吐出を開始/終了する、及び/又はエスプレッソコーヒーの吐出中に吐出圧力を変更するレバー18(又は図示しない押しボタン)を備える。
【0050】
また、本発明によれば、マシン10は、マシンに入る水及び/又はマシン10によって処理される水に関する少なくとも1つのパラメータを監視するように構成されるシステム50を備える。
【0051】
水の導電率は、その中に溶解している全ての塩の量に関係することが知られており、塩の量が多いほど導電率が高くなる。
【0052】
水の硬度は、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩の存在に起因し、主に重炭酸塩に起因するいわゆる「一時的硬度」と、主に硫酸塩及び塩化物に起因する「永久的硬度」とを合計した結果であることも知られている。
【0053】
これらのパラメータは両方とも、温度の影響を強く受ける。特に、温度が上昇するとき導電率は増加する傾向にあるが、一方で一時的硬度は減少し、永久的硬度はあまり影響を受けない。
【0054】
したがって、導電率は水中に溶解している任意のイオン種に関係するが、硬度は特にMg+及びCa+に関係する。
【0055】
したがって、本出願人は、導電率測定から硬度値をリアルタイムで連続的に提供できる装置を提供するという課題に直面した。
【0056】
本出願人は、一連の実験室試験及びマシンの実際の動作中試験を実施した。広範な試験の結果、出願人は、検査した水の硬度と導電性に直接的な関係があるという驚くべき事実を見出した。次に、当技術分野で知られている硬度測定とは対照的に、導電率測定は、連続的に又は遠隔的にも実施できる測定である。
【0057】
このような測定は、エスプレッソコーヒーマシンの上流側又はマシンの油圧回路内で(例えば、コーヒーボイラ又は蒸気ボイラの上流側で)実施することができ、したがって、温度の異なる水に対しても、測定される導電率と推定される硬度に信頼性のある相関関係を提供する。
【0058】
最初の実験的測定は、飲料水の導電率と硬度の直接的な相関関係の評価に関する。
図2は、導電率に応じて、いくつかの例示的な水の硬度と導電率の実質的な線形関係を示すグラフである。第1の曲線(グラフ中の菱形の点)は、動作状態(ボイラを通過した後)でセンサを使用して出願人が直接測定したプロセス水に関する。第2の曲線(グラフ中の正方形の点)は、導電率計を用いて実験室で試験した鉱水に関する。
【0059】
プロセス水は、本出願人によってボイラを通過した後に収集され、様々な導電率値及び硬度が測定された。
【0060】
図2に図示する結果は、異なる器具を用いて測定した硬度と導電率との間に実質的な線形性が存在することを示している。いずれの場合も、線形相関係数は高く、達成した結果の妥当性を確認した。
【0061】
非限定的な例として、以下に2つの直線の方程式を示す。第1の式(I)は、プロセス水に対して実際の条件で実施された試験から導出されたものである。第2の式(II)は、鉱水に関する試験から実験的に得られたものである。
【0062】
[数1]
y = - 156.57 + 51.714x R2= 0.98183 (I)
y = - 104.31 + 39.343x R2 = 0.97263 (II)
【0063】
上に示したように、データのバラツキと使用した統計モデルの正しさとの比率を表す決定係数R2は非常に1に近い。これは、モデルがデータをほぼ完全に説明することを示す。
【0064】
より一般的には、硬度と導電率との関係は、約30と約60の間、好ましくは約35と約55の間、より好ましくは約40と約50の間の勾配を持つ線形関係であると考えることができる。
【0065】
プローブを使用して導電率を連続的に測定することができる。
【0066】
例えば、ドイツ国ケーニッヒスドルフ所在のAVS Ing. J.C. Romer GmbH社により販売されている導電率計、モデル:CS-958P3-6FF-S8(L=0.2-20mSできる。
図3-1を参照すると、システム50は、エスプレッソコーヒーマシン10の上流側又はマシン10の油圧回路内に(例えば、コーヒーボイラ又は蒸気ボイラの上流側に)配置される測定装置37を備える。典型的には、測定装置37は予備濾過部材30の下流側に位置し、予備濾過部材30は次に、主給水管から又は他の任意の水源(若しくは貯蔵タンク)から水を受け取る。
【0067】
測定装置37は、水の以下のパラメータのうち少なくとも1つを検出することができる。
- pH
- アルカリ度[ppm]
- 温度[°C/°F]
- TDS(全固形分)[ppm]
- 全硬度[ppm]
- 全鉄(Fe+2/Fe+3)[ppm]
- 全塩化物(Cl-)[ppm]
- 遊離塩素(Cl2)[ppm]
- 全塩素(C12)[ppm]
【0068】
測定装置37は、例えば、水の導電率に関する情報から導出される水の硬度測定値を提供する、前述のタイプの導電率計を備えることができる。測定値は、好ましくはリアルタイムで提供される。有利には、測定装置は、水の温度を測定する温度センサを備えることもできる。水導電率計と水温センサは、単一の装置に統合してもよく、又は相互接続してもよい。
【0069】
測定装置37によって検出されるパラメータに関する情報は、処理ユニット38に供給される。処理ユニット38によって、検出される情報を、ディスプレイ、例えばエスプレッソコーヒーマシン10のディスプレイ又は装置50のディスプレイに表示することができる。加えて、又は代替的に、検出される情報を、例えばボード(例えば、処理ユニット38も搭載されるボード)上に設けられるメモリユニットに格納することができる。加えて、又は代替的に、検出される情報を、任意の伝送システム及び任意の手段(例えば、ケーブル又は無線)によって、別の装置又はサーバに伝送することができる。既知のように、安全な短距離無線周波数を介して異なる装置間で情報を交換する標準的な方法を提供する、Bluetooth規格を使用することが可能である。加えて、又は代替的に、マシン10には、測定装置37で検出される情報についてユーザに警告するために、警告ランプ及び/又は音響警報を設けることができる。例えば、水のpHが許容可能であると考えられる所定の範囲内にないことをバーテンダーに警告するために、警告ランプを設けることができる。
【0070】
図3-2は、上述のような測定装置37を備える別のシステム50を示す。
図3-2によるシステム50は、検出されるパラメータの少なくともいくつかを調整して、これらの値が一定範囲内にないことが検出された場合に、それらを補正値にリセットするように構成されるアクティブシステムである。
【0071】
また、
図3-2によるシステム50は、好ましくは、測定装置37の上流側に、流入水(IN)の予備濾過を実施する予備濾過部材30を備える。予備濾過部材(30)の目的は、水中に存在し得る固体粒子(例えば、約5ミクロンより大きいサイズのもの)を除去することである。水を処理する装置33及び補正器/統合部材36は、好ましくは予備濾過部材30の下流側に設けられる。水処理装置33は、任意の既知の浄化器、例えば逆浸透に基づく浄化器又は塩水軟化器を備えることができる。補正器/統合器36は、検出されるパラメータのうち、一定範囲内に入らない少なくともいくつかを補正する(任意に統合する)ように構成される。補正器36は、例えば交換可能な再石灰化カートリッジを備えることができる。
【0072】
好ましくは、絞り装置35を設けることもできる。前記装置は、補正器36の上流側で水を受け取り、測定装置37に水を供給する。このようにして測定装置37は、補正器36を通過した水の一部と、補正器によって補正及び/又は統合されていない水の一部とを受け取る。絞り装置は、例えば比例弁35とすることができる。
【0073】
好ましくは、システム50は、1つ以上の流量測定装置を備える。例えば、第1の流量計31を水処理装置33の上流側に設け、第2の流量計を絞り装置の上流側に設けることができる。第3の流量計32を設けて水処理装置33からの排出水流を監視することもできる。
【0074】
本発明によれば、処理ユニット38は、測定装置37に接続され、水パラメータに関して受信した情報を処理する。処理ユニット38は、絞り装置35にも接続されている。処理ユニット38は、測定装置37が受信した情報に基づいて、測定装置の入力部に異なる量の水を供給するように絞り装置35の動作を制御する。例えば、測定装置が設定されたパラメータと一致しない少量のミネラルを検出した場合、絞り装置35はそれに対応して水流路を絞り、より多量の水が補正器36を通過するようにする。しかし、測定装置37が過剰のミネラル物質を検出した場合には、絞り装置35はそれに対応して水流路を開き、補正器36を通過する水をより少量にする。好ましくは、処理ユニット3は、前述の流量測定装置31、32及び34の1つ以上にも接続される。
【0075】
このようにして、アクティブな監視及び補正システムが提供される。前記システムは、コーヒーマシン10に供給される水が、確立され最適であると考えられるパラメータと一致するパラメータを有するように、水の1つ以上のパラメータを連続的に監視及び補正する。
【0076】
表1は、エスプレッソコーヒーの製造に使用される水のいくつかのパラメータについて、最適値の範囲を示す。
【0077】
【0078】
本発明によれば、エスプレッソコーヒーマシンで使用される水を処理する方法も提供される。この方法は、水の導電率を測定し、これらの導電率測定値から水の硬度測定値を導出することを想定している。
【0079】
この導電率情報に基づいて、及び/又は導出される硬度測定値に基づいて、及び/又は考慮される水に対して実施される他の測定に基づいて、水は(例えば、逆浸透に基づく浄水器又は塩水軟化器を使用して)少なくとも部分的に処理され、及び/又は検出されるパラメータのうち、一定範囲内に入らない少なくともいくつかを補正する(必要であれば、予め定義された量の所定の物質と統合する)ように、補正/統合される。この補正は、例えば交換可能な再石灰化カートリッジを使用して行うことができる。
【0080】
好ましくは、絞りステップも想定される(例えば、補正器36の上流側で水を受け取って測定装置37に水を供給する絞り装置35によって行われる)。このようにして測定装置37は、補正器36を通過した水の一部と、補正器によって補正及び/又は統合されていない水の一部とを受け取る。絞り装置は、例えば比例弁35とすることができる。
【0081】
本発明によれば、測定値は処理ユニット38によって処理される。処理ユニット38は、絞り装置35にも接続されている。処理ユニット38は、測定装置37が受信した情報に基づいて、測定装置の入力部に異なる量の水を供給するように絞り装置35の動作を制御する。例えば、設定されたパラメータと一致しない少量のミネラルを検出した場合、絞り装置35はそれに対応して水流路を絞り、より多量の水が補正器36を通過するようにする。しかし、測定装置37が過剰なミネラル物質を検出した場合には、絞り装置35はそれに対応して水流路を開き、統合器/補正器36を通過する水をより少量にする。
【0082】
このようにして、アクティブな監視及び補正システムが提供される。このシステムは、コーヒーマシン10に供給される水が、確立され最適であると考えられるパラメータと一致するパラメータを有するように、水の1つ以上のパラメータを連続的に監視及び補正する。
【国際調査報告】