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特表2022-505463抗癌剤としてのホスホニウムイオンを含むアジスロマイシン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】抗癌剤としてのホスホニウムイオンを含むアジスロマイシン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/00 20060101AFI20220106BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220106BHJP
【FI】
C07H17/00 CSP
A61K31/7052
A61P35/00
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521503
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019078372
(87)【国際公開番号】W WO2020079224
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】1817083.7
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516079729
【氏名又は名称】ライジング タイド ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】スパリー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ラトクリフ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ラガス,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】コクレイン,エドワード
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057KK30
4C076CC41
4C076DD63
4C076EE59
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA12
4C086GA13
4C086MA01
4C086NA05
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、癌治療剤として有用な化合物に関する。化合物は、アジスロマイシン大環状分子に係留されたホスホニウムカチオンを有する、アジスロマイシン誘導体を含む。本発明はまた該化合物の使用方法および該化合物を含む医薬製剤にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
〔式中、
は独立してH、C(O)-C-C-アルキルから選択されるかまたはZは構造
【化2】
を有し、

【化3】
から選択される構造を有し;
-L-、-L-、-L-および-L-は各々独立して非置換C-C14-アルキレンから選択され;
1aは各場合独立してC-C-アルキル、C-C-アルキニル、C-C-アルケニル、C-C-ハロアルキル、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)NR、ハロ、シアノ、ニトロ、C(O)R、S(O)OR、S(O)R、S(O)、S(O)NR、OC(O)NRおよびNRC(O)ORから選択され;
1bは各場合独立してC-C-アルキルおよびC-C-シクロアルキルから選択され;
1cは各場合独立してC-C-アルキルであり;
nは各場合独立して0、1、2、3、4および5から選択される整数であり;
mは各場合独立して2および3から選択される整数であり;
2aおよびR2bは各々独立してHおよびC-C-アルキルから選択され;
3aは各々独立してH、C-C-アルキルおよびC(O)-C-C-アルキルから選択され;
3bおよびR3cは各々独立してHおよびC(O)-C-C-アルキルから選択され;
4aおよびR4bは各々独立してH、C-C-アルキルおよびC(O)-C-C-アルキルから選択され;またはR4aおよびR4bは一体となってC(O)を形成し;
は各場合独立してH、C-C-アルキルおよびC-C-ハロアルキルから選択され;
は各場合独立してHおよびC-C-アルキルから選択され;
は各場合独立してH、C-C-アルキル、C(O)C-C-アルキルおよびS(O)-C-C-アルキルから選択される。〕
のイオンを含む化合物またはその薬学的に許容される塩であるが、ただし、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
から選択されない、化合物。
【請求項2】
4aおよびR4bが各Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
3aおよびR3bが各Hである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
2aおよびR2bが各Meである、請求項1~3の何れかに記載の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項1~4の何れかに記載の化合物。
【請求項6】
が構造
【化9】
を有する、請求項1~4の何れかに記載の化合物。
【請求項7】
3cがHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が構造
【化10】
を有する、請求項1~7の何れかに記載の化合物。
【請求項9】
1bが各場合独立してC-C-アルキルおよびC-C-シクロアルキルから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が構造
【化11】
を有する、請求項1~7の何れかに記載の化合物。
【請求項11】
が構造
【化12】
を有する、請求項1~7の何れかに記載の化合物。
【請求項12】
が構造
【化13】
を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が構造
【化14】
を有する、請求項1~7の何れかに記載の化合物。
【請求項14】
式(I)のカチオンが
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
医薬的使用のための、請求項1~14の何れかに記載の化合物。
【請求項16】
癌処置に使用するための、請求項1~14の何れかに記載の化合物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1~14の何れかに記載の化合物を投与することを含む、癌を処置する方法。
【請求項18】
請求項1~14の何れかに記載の化合物および1以上の薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療剤として有用な、細胞代謝、特に癌細胞代謝の攪乱などの細胞機能を攪乱する化合物に関する。本化合物は、アジスロマイシン大環状分子に係留されたホスホニウムカチオンを有する、アジスロマイシン誘導体を含む。本発明はまた、該化合物の使用方法および該化合物を含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
癌は、先進諸国で4番目に高い死亡原因である。2016年には、米国単独で160万をこえる癌の新規症例が診断され、癌は米国人の600,000人近い死亡の原因となると予測された。
【0003】
癌は組織の機能を攪乱する、細胞の制御されない増殖により特徴づけられる。細胞の増殖は、細胞産生の異常増加または細胞死経路攪乱により引き起こされ得る。いずれの事象でも、細胞機能の攪乱物質は、細胞増殖の低減または阻害により、細胞、特に癌細胞の増殖に影響し得る。例えば、癌細胞代謝の調節は、細胞増殖の低減または阻害に至り得る。同様に、本発明の化合物は、癌細胞の成長または増殖を低減、攪乱または阻害し得るかまたは癌細胞死を誘導し得る。すなわち、癌細胞代謝と細胞増殖低減は、癌増殖を攪乱する潜在的標的であり、最終的に癌処置の治療経路である。従って、本発明のある実施態様は、癌細胞代謝を調節するおよび/または細胞増殖を低減する化合物を意図する。細胞増殖低減は、細胞死増加または細胞増殖速度低減のいずれかにより達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗生物質活性を有するある種の化合物が、癌を有する患者に投与したとき、有益な効果を有することが観察されている。本発明者らは、アジスロマイシンに連結させたホスホニウムイオンを有する化合物が、癌細胞株で癌細胞代謝を調節でき、従って、癌を予防および/または処置できることを発見した。
【0005】
癌の「予防」は、原発腫瘍、転移腫瘍または癌発症、耐性もしくは再発に関連する腫瘍を含む、腫瘍形成の予防を含むと解釈され得る。癌の予防はまた癌の進行の予防を包含すると解釈され得る。この状況で、癌の発症予防は、本発明の化合物を使用して処置している腫瘍の「ステージ」(適切な癌病期診断法を使用)の進行の予防により示され得る。癌ステージの進行の予防は、未処置腫瘍の進行との対比または腫瘍が処置されなかった場合の医師により予測される進行程度との対比であり得る。
【0006】
癌の「処置」は、本発明の化合物を受けた対象における癌で達成される、病理、症状または予後の何らかの改善を含むと解釈され得る。処置は、このような徴候の一部改善または完全な改善(例えば本発明の化合物の医学的使用後の癌の消失)により示され得る。
【0007】
従って、上に定義した予防および/または処置は、本発明のある実施態様において意図される目的である。処置または癌の予防の上記定義は、同様に意図される癌の特定の形態にも同様に適用される。
【0008】
癌治療の最近の発展は、ある種の抗生物質化合物が癌処置に有用であり得ることを示唆した。抗生物質アジスロマイシンおよびドキシサイクリンを含むこれら薬剤が、治療効果を発揮する機構は、多種多様な説明を受け入れる余地がある。ある著者らは、これらの薬剤がマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害し、それにより抗炎症性効果が達成されることを示唆し、一方で、他の著者らは、DNA損傷に対する細胞の応答を障害させ、それにより塊腫瘍細胞に対する化学療法または放射線療法の有効性が増加することを示唆している。さらに他の論文では、抗生物質がミトコンドリア機能を標的とすることが示されている。
【0009】
しかしながら、抗生物質の使用は、結腸直腸癌のリスクを高め得ることも報告されている。最近の研究は、抗生物質を使用する期間の延長は、結腸直腸腺腫のリスクの増加と顕著に相関したことを特定した(Cao Y, Wu K, Mehta R, et al, “Long-term use of antibiotics and risk of colorectal adenoma”, Gut, 2017, 0, page 1-7)。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、アジスロマイシンに連結させたホスホニウムイオンを有する化合物がアジスロマイシン自体と比較して、ある癌細胞株に対する活性が増加することを発見した。これは、細胞コンフルエンスアッセイで観察される癌細胞増殖の減少により示される。
【0011】
また提供されるのは、癌の予防および/または処置を必要とする対象における、そのような予防および/または処置の方法であって、本発明の化合物の治療有効量を対象に投与することを含む、方法である。本発明の化合物の治療有効量は、癌細胞または他の機能不全細胞(例えば腫瘍開始細胞、幹様癌細胞、癌幹細胞または腫瘍に存在し、より分化された表現型の腫瘍細胞塊を生じさせる幹細胞様特性を有する細胞の集団)の調節を含む、多様な癌の処置に十分なこのような化合物の量であり得る。癌細胞への言及は、ハイブリッドおよび巨細胞を含む。本発明の化合物の治療有効量は、1回の投与で提供されるかまたは複数回投与を介して累積的に提供されるものであり得ることが認識される。
【0012】
本発明の化合物の医薬使用に関連して記載される処置される癌のタイプおよび処置により提供される利益と同じ考慮が本発明の処置方法にも適用される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の第一の態様において、式(I)
【化1】
〔式中、
は独立してH、C(O)-C-C-アルキルから選択されるかまたはZは構造
【化2】
を有し、

【化3】
から選択される構造を有し;
-L-、-L-、-L-および-L-は各々独立して非置換C-C14-アルキレンから選択され;
1aは各場合独立してC-C-アルキル、C-C-アルキニル、C-C-アルケニル、C-C-ハロアルキル、OR、SR、NR、C(O)OR、C(O)NR、ハロ、シアノ、ニトロ、C(O)R、S(O)OR、S(O)R、S(O)、S(O)NR、OC(O)NRおよびNRC(O)ORから選択され;
1bは各場合独立してC-C-アルキルおよびC-C-シクロアルキルから選択され;
1cは各場合独立してC-C-アルキルであり;
nは各場合独立して0、1、2、3、4および5から選択される整数であり;
mは各場合独立して2および3から選択される整数であり;
2aおよびR2bは各々独立してHおよびC-C-アルキルから選択され;
3aは各々独立してH、C-C-アルキルおよびC(O)-C-C-アルキルから選択され;
3bおよびR3cは各々独立してHおよびC(O)-C-C-アルキルから選択され;
4aおよびR4bは各々独立してH、C-C-アルキルおよびC(O)-C-C-アルキルから選択され;またはR4aおよびR4bは一体となってC(O)を形成し;
は各場合独立してH、C-C-アルキルおよびC-C-ハロアルキルから選択され;
は各場合独立してHおよびC-C-アルキルから選択され;
は各場合独立してH、C-C-アルキル、C(O)C-C-アルキルおよびS(O)-C-C-アルキルから選択される。〕
のイオンを含む化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0014】
好ましくは、化合物は次のものから選択されない。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0015】
ある実施態様において、式(I)のイオンは、式(II)
【化9】
のイオンである。
【0016】
ある実施態様において、式(I)のイオンは式(III)
【化10】
のイオンである。
【0017】
次の記載は、式(I)~(III)の何れかの化合物に当てはまる。これらの記載は独立的であり、かつ置き替え可能である。換言すると、下の説明の何れかに記載の特性の何れかを、(化学的に可能であるならば)1以上の他の下の説明に記載された特性と組み合わせ得る。特に、本明細書で化合物が例示または説明されるならば、その化合物の特性を記載する任意の2以上の下の説明は、どの程度の一般性のレベルで表現されていても、本明細書における本発明の開示の一部を形成することが意図される、主題を表すように組み合わせ売る。
【0018】
ある実施態様において、Z
【化11】
である。
【0019】
ある実施態様において、Z
【化12】
である。
【0020】
ある実施態様において、Z
【化13】
またはHである。
【0021】
ある実施態様において、Z
【化14】
である。
【0022】
ある実施態様において、ZはHである。
【0023】
ある実施態様において、Z
【化15】
であり、ここで、R3cはHである。
【0024】
ある実施態様において、Z
【化16】
であり、ここで、R3cはHである。
【0025】
ある実施態様において、R2aはC-C-アルキルである。ある実施態様において、R2aはメチルである。ある実施態様において、R2bはC-C-アルキルである。ある実施態様において、R2bはメチルである。ある実施態様において、R2aはC-C-アルキルであり、R2bはC-C-アルキルである。ある実施態様において、R2aはメチルであり、R2bはメチルである。
【0026】
ある実施態様において、R3aはHである。ある実施態様において、R3bはHまたはC(O)CHである。ある実施態様において、R3bはHである。ある実施態様において、R3bはC(O)CHである。ある実施態様において、R3cはHである。ある実施態様において、R3aはHであり、R3bはHである。ある実施態様において、R3aはHであり、R3bはC(O)CHである。ある実施態様において、R3aはHであり、R3bはC(O)CHであり、R3cはHである。ある実施態様において、R3aはHであり、R3bはHであり、R3cはHである。
【0027】
ある実施態様において、R4aはHである。ある実施態様において、R4bはHである。ある実施態様において、R4aはHであり、R4bはHである。ある実施態様において、R4aおよびR4bは一体となってC(O)を形成する。
【0028】
ある実施態様において、Z
【化17】
である、R3cはHであり、R2aはC-C-アルキルであり;R2bはC-C-アルキルであり;R3aはHであり、R3bはHである。
【0029】
ある実施態様において、Z
【化18】
である、R3cはHであり、R2aはメチルであり;R2bはメチルであり;R3aはHであり、R3bはHである。
【0030】
ある実施態様において、Z
【化19】
である、R3cはHであり、R2aはC-C-アルキルであり;R2bはC-C-アルキルであり;R3aはHであり;R3bはHであり;R4aはHであり、R4bはHである。
【0031】
ある実施態様において、Z
【化20】
である、R3cはHであり、R2aはメチルであり;R2bはメチルであり;R3aはHであり;R3bはHであり、R4aはHであり、R4bはHである。
【0032】
ある実施態様において、ZはHであり、R2aはC-C-アルキルであり;R2bはC-C-アルキルであり;R3aはHであり、R3bはHである。
【0033】
ある実施態様において、ZはHであり、R2aはメチルであり;R2bはメチルであり;R3aはHであり、R3bはHである。
【0034】
ある実施態様において、ZはHであり、R2aはC-C-アルキルであり;R2bはC-C-アルキルであり;R3aはHであり;R3bはHであり;R4aはHであり、R4bはHである。
【0035】
ある実施態様において、ZはHであり、R2aはメチルであり;R2bはメチルであり;R3aはHであり;R3bはHであり、R4aはHであり、R4bはHである。
【0036】
ある実施態様において、Rは、何らかの特定の場合、Hである。ある実施態様において、Rは、各場合、Hである。
【0037】
ある実施態様において、Rは、何らかの特定の場合、C-C-アルキル、例えばメチルである。ある実施態様において、Rは、各場合、C-C-アルキル、例えばメチルである。
【0038】
ある実施態様において、Rは、何れかの特定の場合、Hである。ある実施態様において、Rは、各場合、Hである。
【0039】
ある実施態様において、Rは、何れかの特定の場合、C-C-アルキル、例えばメチルである。ある実施態様において、Rは、各場合、C-C-アルキル、例えばメチルである。
【0040】
ある実施態様において、Rは、何れかの特定の場合、Hである。ある実施態様において、Rは、各場合、Hである。
【0041】
ある実施態様において、Rは、何れかの特定の場合、C-C-アルキル、例えばメチルである。ある実施態様において、Rは、各場合、C-C-アルキル、例えばメチルである。
【0042】
ある実施態様において、Rは、何れかの特定の場合、C(O)-C-C-アルキル、例えばC(O)-メチルである。ある実施態様において、Rは、各場合、C(O)-C-C-アルキル、例えばC(O)-メチルである。
【0043】
は構造
【化21】
を有し得る。
1bは、各場合、独立してC-C-アルキルおよびC-C-シクロアルキルから選択され得る。R1bは、各場合、独立してC-C-アルキルおよびC-C-シクロアルキルから選択され得る。R1bはC-C-アルキルであり得る。R1bはC-C-アルキルであり得る。R1bはプロピル、例えばイソプロピルであり得る。R1bはブチル、例えばtert-ブチルであり得る。R1bはC-C-シクロアルキルであり得る。R1bはシクロブチルであり得る。
-L-はC-C13-アルキレンであり得る。-L-はC-C14-アルキレンであり得る。-L-はC-C-アルキレンであり得る。
は構造
【化22】
を有し得る。
は構造
【化23】
を有し得る。
-L-はC-C13-アルキレンであり得る。-L-はC-C14-アルキレンであり得る。-L-はC-C-アルキレンであり得る。
nは、各場合、0であり得る。あるいは、nは、各場合、1、2または3であり得る。nは、各場合、1または2であり得る。nは、各場合、2であり得る。
1aは、各場合、C-C-アルキル、C-C-アルキニル、C-C-アルケニル、C-C-ハロアルキル、ORおよびハロから独立して選択され得る。R1aは、各場合、C-C-アルキル、ORおよびハロから独立して選択され得る。R1aは、各場合、独立して、C-C-アルキル、例えばメチルであり得る。
【化24】
は、各場合、
【化25】
であり得る。あるいは、
【化26】
は、各場合、
【化27】
であり得る。
は構造
【化28】
を有し得る。
mは、各場合、3であり得る。mは、各場合、2であり得る。
【化29】
は、各場合、
【化30】
であり得る。
-L-はC-C13-アルキレンであり得る。-L-はC-C14-アルキレンであり得る。-L-はC-C-アルキレンであり得る。
は構造
【化31】
を有し得る。
-L-はC-C13-アルキレンであり得る。-L-はC-C14-アルキレンであり得る。-L-はC-C-アルキレンであり得る。
ある実施態様において、分子のホスホニウム部分は
【化32】
から選択される。
本発明のある実施態様において、式(I)のイオンは、次のものから選択される式である。
【化33】
【化34】
【化35】
【0044】
式(I)のカチオンはアニオン性対イオンと結合し得る。対象への投与のために、式(I)のカチオンを、薬学的に許容されるアニオン性対イオンと結合させ得る。本発明の第一の態様は、それ故に、式(I)のイオンおよび薬学的に許容されるアニオンを含む化合物も提供する。アニオンは、単負電荷を有し得る。例えば、アニオンは、ハロ(例えばCl、BrおよびI)、BF、PF、CFC(O)O、HC(O)O、HCO、(CFSO)N、(C)PF、HSO、C-C15-アルキルO、CHC(O)O、CFSO、Tosyl-O、C(CN)、N(CN)またはタンパク質原性アミノ酸のカルボン酸アニオンから選択され得る。疑いを避けるため、前の文章で挙げた各アニオンは、単負電荷を有する。アニオンは、複数負電荷を有し得て、例えばPO 3-またはCO 2-などである。アニオンは、二または三酸、例えばグルタミン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸に由来し得る。該二または三酸のモノカルボキシレートであり得る。残りのカルボン酸基はプロトン化カルボン酸、C-C12-アルキルエステルの形であってよくまたは同様にカルボキシレートアニオンであり得る。該カルボキシレートアニオンは、各々、薬学的に許容される金属カチオンまたは他の式(I)のカチオンが付随し得る。
【0045】
本発明のカチオンに結合するアニオンは、かなり不安定であり得る。それ故に、本発明のカチオンは、2以上の異なるアニオンと結合し得る。イオン交換工程を使用して、本発明のカチオンと結合するアニオンの特性を制御し得る。
【0046】
ある実施態様において、アニオンはCl、Br、IまたはCFC(O)Oである。
【0047】
本発明のある態様において、本発明の化合物は医薬使用のためである。
【0048】
ある態様において、本発明の第一の態様の化合物は癌の処置において使用するためである。化合物は、癌細胞などの異常細胞の細胞増殖の低減にも使用され得る。
【0049】
ある実施態様において、本発明の第一の態様の化合物は、固形腫瘍および他の癌、例えば固形癌に分類されない癌の処置において使用するためである。本発明の化合物により処置され得る癌は、とりわけ白血病、リンパ腫、肉腫または癌腫である。
【0050】
本発明のさらなる態様において、本発明の第一の態様の化合物の治療有効量の投与を含む、癌を処置する方法が提供される。方法は、癌細胞などの異常細胞の細胞増殖の低減にも使用され得る。
【0051】
ある実施態様において、方法は、固形腫瘍および他の癌、例えば固形癌に分類されない癌の処置のためである。本発明の方法により処置され得る癌は、とりわけ白血病、リンパ腫、肉腫または癌腫である。
【0052】
癌の「処置」は予防を含むと解釈され得る。処置はまた、本発明の化合物を受けた対象における癌で達成される、病理、症状または予後の何らかの改善も含む。処置は、このような徴候の一部改善または完全な改善(例えば本発明の化合物の医薬使用後の癌の消失)により示され得る。
【0053】
癌の「予防」は、新規原発腫瘍または新規転移腫瘍を含む新規腫瘍の形成の予防を含むと解釈され得る。癌の予防はまた癌の進行の予防を包含すると解釈され得る。この状況で、癌の発症予防は、本発明の化合物を使用して処置している腫瘍の「ステージ」(適切な癌病期診断法を使用)の進行の予防により示され得る。癌ステージの進行の予防は、未処置腫瘍の進行との対比または腫瘍が処置されなかった場合の医師により予測される進行程度との対比であり得る。
【0054】
本発明の第一の態様の化合物を、癌細胞死増加または細胞複製阻害などの他の機構による細胞増殖低減のために使用し得る。化合物を、この目的で、インビトロまたはインビボで使用し得る。
【0055】
本発明の化合物は、癌細胞または他の機能不全細胞(例えば腫瘍開始細胞、幹様癌細胞、癌幹細胞または腫瘍に存在し、より分化された表現型の腫瘍細胞塊を生じさせる幹細胞様特性を有する細胞の集団)の調節に使用され得る。従って、癌細胞または他の機能不全細胞を本発明の第一の態様の化合物に曝すことによるインビボまたはインビトロで癌細胞または他の機能不全細胞を調節する方法が提供される。化合物を、有効量、例えば処置またはインビボ方法の方法における場合など治療有効量で癌細胞または他の機能不全細胞に暴露させ得る。
【0056】
本発明の他の態様において、医薬組成物が提供され、ここで、組成物は本発明の化合物および1以上の薬学的に許容される添加物を含む。
【0057】
ある実施態様において、医薬組成物は、1以上の異なる薬学的活性剤を含む組み合わせ製品であり得る。1以上のさらなる薬学的活性剤は、下記抗癌剤であり得る。1以上の薬学的活性剤は、異なる治療剤クラス、例えば抗生物質、抗ウイルス、制吐剤、疼痛管理などから独立して選択され得る。
【0058】
詳細な記載
本明細書で使用する用語の定義を下に示す。ここに定義されないあらゆる用語は、当業者がその用語について理解する通常の意味を有する。
【0059】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子をいう。「ハロ」または「ハロゲン」は、ClおよびFから選択される原子をいい得る。「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素をいい得る。
【0060】
用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。用語「C-Cアルキル」は、1、2、3、4、5、6、7または8炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。用語「C-Cアルキル」は、1、2、3、4、5または6炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。用語「C-Cアルキル」は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルをいう。「アルキル」基は1以上の置換基で置換されていても、非置換でもよい。アルキル基の置換基はハロ(例えばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、OHおよびC-Cアルコキシであり得る。さらに、アルキレン基は直鎖でも分枝鎖でもよく、分子の残りに2か所で結合し得る。
【0061】
用語「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖炭化水素鎖である二価基をいう。「アルキレン」基は二価であるためには、該基は他の基と2つの結合を形成しなければならない。用語「C-C-アルキレン」は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CHCHCHCHCHCH-、-CHCHCHCHCHCHCH-、-CHCHCHCHCHCHCHCH-またはその置換された等価物をいい得る。アルキレン基は非置換でも1以上の置換基により置換されていてもよい。
【0062】
用語「シクロアルキル」は、飽和炭化水素環系をいう。用語「C-Cシクロアルキル」は、3、4、5、6、7または8炭素原子を含む飽和炭化水素環系をいう。環系は単環または二環または三環系であり得る。環系が二環式であるならば、環の一方は、例えばインダンにおけるような芳香環であり得る。用語「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびインダンをいい得る。シクロアルキル基は1以上の置換基で置換されていてよい。
【0063】
用語「ハロアルキル」は、各場合フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から独立して選択される少なくとも1個のハロゲン原子で置換されている直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。例えば、用語「C-Cハロアルキル」は、1、2、3、4、5または6炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。ハロゲン原子は、炭化水素鎖のどの位置を置換してもよい。用語「C-Cハロアルキル」は、例えば、フルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、フルオロエチル、トリフルオロエチル、クロロエチル、トリクロロエチル(例えば1,2,2-トリクロロエチルおよび2,2,2-トリクロロエチル)、フルオロプロピルおよびクロロプロピルをいい得る。ハロアルキル基は1以上の置換基で置換されていてよい。
【0064】
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、少なくとも2個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。用語「C-Cアルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、2、3、4、5または6炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。1以上の二重結合はEまたはZ異性体であり得る。二重結合は、炭化水素鎖の可能な位置のどこかに存在し得る。用語「C-Cアルケニル」は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニルおよびヘキサジエニルをいい得る。アルケニル基は、1以上の置換基で置換されていても非置換でもよい。
【0065】
用語「シクロアルケニル」は、不飽和炭化水素環系をいう。用語「C-Cシクロアルケニル」は、3、4、5、6、7または8炭素原子を含む不飽和炭化水素環系をいう。環は1を超える二重結合を含み得る。用語シクロアルケニルは、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエン、シクロオクテニルおよびシクロオクタジエニルをいい得る。シクロアルケニル基は1以上の置換基で置換されていてよい。
【0066】
用語「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含み、少なくとも2個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。用語「C-Cアルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含み、2、3、4、5または6炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。1以上の三重結合は、炭化水素鎖の可能な位置のどこかに存在し得る。用語「C-Cアルキニル」は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルをいい得る。アルキニル基は非置換でも1以上の置換基により置換されていてもよい。
【0067】
用語「ヘテロアルキル」は、鎖の可能などこかの炭素原子間または鎖末端に位置するN、OおよびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。用語「C-Cヘテロアルキル」は、1、2、3、4、5または6炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素鎖および鎖の可能などこかの炭素原子間または鎖末端に位置するN、OおよびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子をいう。ヘテロアルキルは、ヘテロ原子または炭素原子を介して他の基に結合し得る。用語「C-Cヘテロアルキル」は、例えば、-CHNHCH、-NHCHCHおよび-CHCHNHをいい得る。ヘテロアルキル基は非置換でも1以上の置換基により置換されていてもよい。
【0068】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、N、OおよびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を環系内に含む飽和炭化水素環系をいう。用語「5~8員ヘテロシクロアルキル」は、炭素、N、OおよびSから選択される5、6、7、8、9または10原子を有し、少なくとも1個がヘテロ原子である飽和炭化水素環をいう。「ヘテロシクロアルキル」基は、「3~10員ヘテロシクロアルキル」とも称され、これはまた3、4、5、6、7、8、9または10原子を含み、少なくとも1個がヘテロ原子である環系でもある。環系は単環または二環または三環系であり得る。二環式系はスピロ縮合であってよく、すなわち、環が互いに一炭素原子を介して結合している;隣接して縮合、すなわち環が互いに2個の隣接炭素または窒素原子で結合している;または橋頭を共有し得る、すなわち環は互いに2個の非隣接炭素または窒素原子で結合しているものであり得る。環系が二環式であるならば、環の一方は、例えばクロマンにおけるような、芳香環であり得る。「ヘテロシクロアルキル」は、炭素原子またはヘテロ原子の何れかを介して分子の残りに結合し得る。「ヘテロシクロアルキル」は分子の残りへの、1以上、例えば1個または2個の結合を有し得る:これらの結合は、環の原子の何れかを介し得る。例えば、「ヘテロシクロアルキル」はオキシラン、アジリジン、アゼチジン、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、イミダゾリジン、スクシンイミド、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、テトラヒドロピランおよびクロマンであり得る。
【0069】
用語「ヘテロシクロアルケニル」は、N、OまたはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む不飽和炭化水素環系をいう。用語「C-Cヘテロシクロアルケニル」は、3、4、5、6、7または8炭素原子を含む不飽和炭化水素環系およびN、OまたはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子をいう。1を超える二重結合が存在し得る。二重結合は一般に2炭素原子間であるが、炭素原子と窒素原子の間でもよい。1を超えるヘテロ原子も存在し得る。例えば、1、2または3ヘテロ原子が存在し得る。環系は単環または二環または三環系であり得る。環系が二環式であるならば、環の一方は、例えばインドリンおよびジヒドロベンゾフランにおけるような、芳香環であり得る。ヘテロシクロアルケニルは、炭素またはヘテロ原子の何れかにより他の基に結合し得る。用語ヘテロシクロアルケニルは、例えばテトラヒドロピリジン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ピロリン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェンおよびインドリンをいい得る。ヘテロシクロアルケニル基は1以上の置換基で置換されていてよい。
【0070】
用語「アリール」は、芳香族性についてヒュッケル則を満たす芳香族炭化水素環系または芳香族性についてヒュッケル則を満たす環系を含むものをいう。すなわちアリール基は単環または二環または三環系であり得る。用語「アリール」は、例えば、フェニル、ナフチル、インダン、テトラリンおよびアントラセンをいい得る。アリール基は非置換でも1以上の置換基で置換されていてもよい。任意のアリール基はフェニル環であり得る。
【0071】
用語「ヘテロアリール」は、芳香族性についてヒュッケル則を満たすN、OまたはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族炭化水素環系またはヘテロ原子と芳香族炭化水素環を含む環系をいう。ヘテロアリールは単環系または縮合環系であり得る。用語「5員、6員、9員または10員ヘテロアリール」は、単環または二環式環系の炭素、N、OまたはSから選択される5、6、9または10メンバーの芳香環系をいう。用語ヘテロアリールは、例えば、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、トリアゾール、テトラゾール、チオフェン、フラン、チアントレン、ピロール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン、インドール、イソインドール、キノロンおよびイソキノリンをいい得る。
【0072】
用語「アルコキシ」は、酸素を介して他の基に結合したアルキル基をいう。アルキル基は直鎖でも分枝鎖でもよい。用語「C-Cアルコキシ」は、酸素を介して他の基に結合した1、2、3、4、5または6炭素原子を含むアルキル基をいう。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルであり得る。用語「C-Cアルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシおよびn-ヘキソキシをいい得る。アルキル基は、1以上の置換基で置換されていても非置換でもよい。
【0073】
【化36】
で終わる結合は、該結合が、示していない他の基に結合することを意味する。環状構造の内部で終わり、環構造の原子で終わらない結合は、該結合が原子価により許容される、環構造内の原子の何れかに結合し得ることを表す。
【0074】
基が置換されるとき、化学的に可能であり、かつ原子価要件を満たすならば、基のどの点で置換されてもよい。基は1以上の置換基で置換され得る。例えば、基は1、2、3または4置換基で置換され得る。2以上の置換基があるならば、置換基は同一でも異なってもよい。置換基は、例えば、ハロ、CN、ニトロ、オキソ、C-C-アルキル、C-C-アルキニル、C-C-アルケニル、C-C-ハロアルキル、OR、NR、SR、C(O)OR、C(O)NR、ハロ、シアノ、ニトロ、C(O)R、S(O)OR、S(O)およびS(O)NRであってよく;ここで、Rは各場合独立してHおよびC-C-アルキルから選択され;そしてRは各場合独立してH、C-C-アルキル、C(O)C-C-アルキルおよびS(O)-C-C-アルキルから選択される。
【0075】
化学的に可能であるならば、環状置換基は、スピロ環を形成するような基で置換され得る。
【0076】
置換基は、化学的に可能な位置にしか存在せず、当業者は、どの置換が化学的に可能であり、どれが違うかを、不適切な努力なしに決定できる(実験的にまたは理論的に)。
【0077】
オルト、メタおよびパラ置換は、当分野で十分理解された用語である。疑いを避けるため、「オルト」置換は、隣接炭素が、単純な基、例えば下の例のフルオロ基または
【化37】
で終わる結合により示される分子の他の部分の置換基を有する置換パターンである。
【化38】
【0078】
「メタ」置換は、2個の置換基が互いに1炭素離れた炭素にある、すなわち置換された炭素間に一炭素原子がある置換パターンである。換言すると、他の置換基の原子から二番目に離れた原子に置換基がある。例えば下の基はメタ置換である。
【化39】
【0079】
「パラ」置換は、2個の置換基が互いに2炭素離れた炭素にある、すなわち置換された炭素間に2炭素原子がある置換パターンである。換言すると、他の置換基の原子から三番目に離れた原子に置換基がある。例えば下の基がパラ置換である。
【化40】
【0080】
式(I)のカチオンは、対象への投与のために薬学的に許容されるアニオン性対イオンと結合され得る。それにも関わらず、式(I)のカチオンまたはアニオン性対イオンが塩基性または酸性基を含むとき、これらの基は、それ自体プロトン化または脱プロトン化され得て、適切な対イオンと結合し得る。
【0081】
適当な酸付加塩が、非毒性塩、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩を形成する酸と形成される。
【0082】
適当な塩基塩は、例えばアルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛塩を含む、非毒性塩を形成する塩基から形成される。酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩も形成され得る。適当な塩のレビューは、"Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use" by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)に見ることができる。
【0083】
塩は酸付加塩であり得る。
【0084】
塩はギ酸塩または塩酸塩であり得る。
【0085】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、次の方法の1以上により製造され得る。
(i) 式(I)の化合物と所望の酸または塩基の反応;
(ii) 所望の酸または塩基を使用する、式(I)の化合物の適当な前駆体からの酸または塩基不安定保護基の除去または適当な環状前駆体、例えば、ラクトンまたはラクタムの開環;または
(iii) 適切な酸または塩基との反応または適当なイオン交換カラムの手段による式(I)の化合物のある塩の他の塩への変換。
【0086】
上記反応は一般に溶液中で実施され、得られた塩は析出させ得ておよび濾過により回収し得てまたは溶媒の蒸発により回収し得る。得られた塩のイオン化程度は、完全なイオン化からほぼ非イオン化まで変わり得る。
【0087】
化合物は、溶媒和されていないおよび溶媒和された形態の両者で存在し得る。用語「溶媒和物」は、ここでは、本発明の化合物および化学量論量の1以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えば、エタノールを含む分子複合体を述べるために使用される。用語「水和物」は、該溶媒が水であるとき用いられる。
【0088】
上記溶媒和物と異なり、薬物およびホストが化学量論または非化学量論量で存在する、薬物-ホスト包接複合体であるクラスレートなどの複合体が意図される。化学量論量でも非化学量論量でもよい2以上の有機および/または無機成分を含む薬物の複合体も意図される。得られた複合体はイオン化され、部分的にイオン化されまたは非イオン化であり得る。このような複合体に関する総説は、J Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288 by Haleblian (August 1975)に見られ得る。
【0089】
本明細書に記載する化合物および塩は、同位体標識(または「放射標識」)され得る。従って、1以上の原子は、天然で一般にみられる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられる。包含され得る放射性核種の例は、H(重水素について「D」とも表記)、H(トリチウムについて「T」とも表記)、11C、13C、14C、15O、17O、18O、18Fなどを含む。使用される放射性核種は、その放射標識誘導体の特定の適用による。例えば、インビトロ競合アッセイのために、Hまたは14Cがしばしば有用である。放射造影適用のために、11Cまたは18Fがしばしば有用である。ある実施態様において、放射性核種はHである。ある実施態様において、放射性核種は14Cである。ある実施態様において、放射性核種は11Cである。およびある実施態様において、放射性核種は18Fである。
【0090】
以後、何れかの式の化合物の記載は、その塩、溶媒和物および複合体ならびにその塩の溶媒和物および複合体の記載を含む。
【0091】
化合物は、ここに定義するとおり、多数の式を含み、下に定義する全てのその多形および晶癖、そのプロドラッグおよび異性体(光学、幾何および互変異性異性体を含む)および同位体標識された本発明の化合物を含む。
【0092】
精製前、化合物は使用される合成法によりエナンチオマーの混合物として存在し得る。エナンチオマーは、当分野で知られる慣用技術により分離し得る。故に、化合物は個々のエナンチオマーならびにそれらの混合物を含む。
【0093】
式(I)の化合物の製造方法におけるいくつかの工程で、反応することを望まない反応性である可能性のある官能基を保護し、その後該保護基を開裂する必要があるかもしれない。このような場合、あらゆる適合性の保護ラジカルが使用され得る。T.W. Greene (Protective Groups in Organic Synthesis, A. Wiley- lnterscience Publication, 1981)またはP. J. Kocienski (Protecting groups, Georg Thieme Verlag, 1994)により記載されたもののような保護および脱保護の特定の方法が使用され得る。先の方法で使用される上記反応および新規出発物質の製造は慣用的であり、その実施または製造のための適切な反応材および反応条件ならびに所望の生成物の単離のための方法は、文献の先例ならびにここでの実施例および製造を参照して、当業者には周知である。
【0094】
また、化合物ならびにその製造のための中間体は、例えば結晶化またはクロマトグラフィーなどの種々の周知方法により精製され得る。
【0095】
上に定義する固形腫瘍、白血病、リンパ腫、肉腫または癌腫の処置方法または処置において使用する化合物は、単独の治療剤としてまたはさらなる活性剤との組み合わせ治療として適用され得る。
【0096】
固形腫瘍、白血病、リンパ腫、肉腫または癌腫の処置方法または処置において使用する化合物は、本発明の化合物に加えて、慣用の手術または放射線療法または化学療法を含み得る。このような化学療法は、次のカテゴリーの抗癌剤の1以上を含み得る。
(i) 抗増殖性/抗新生物薬物およびこれらの組み合わせ、例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、ベンダムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミドおよびニトロソウレア);代謝拮抗剤(例えばゲムシタビンおよび抗葉酸剤、例えばフルオロピリミジン、例えば5-フルオロウラシルおよびテガフール、ラルチトレキセド、メトトレキサート、ペメトレキセド、シトシンアラビノシドおよびヒドロキシ尿素);抗生物質(例えばアントラサイクリン、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);有糸分裂阻害剤(例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンおよびタキソイド、例えばタキソールおよびタキソテールおよびポロキナーゼ阻害剤);プロテアソーム阻害剤、例えばカルフィルゾミブおよびボルテゾミブ;インターフェロン治療;およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、ミトキサントロンおよびカンプトテシン);
(ii) 細胞増殖抑制剤、例えば抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびイドキシフェン)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、ロイプロレリンおよびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾールおよびエキセメスタン)および5*-レダクターゼ阻害剤、例えばフィナステリド;
(iii) 抗侵襲剤、例えばダサチニブおよびボスチニブ(SKI-606)およびメタロプロテイナーゼ阻害剤、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクティベーター受容体機能阻害剤またはヘパラナーゼに対する抗体;
(iv) 増殖因子機能阻害剤:例えば、このような阻害剤は増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体、例えば抗erbB2抗体トラスツズマブ[ハーセプチンTM]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗erbB1抗体セツキシマブ、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば上皮細胞増殖因子ファミリー阻害剤(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えばゲフィチニブ、エルロチニブおよび6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(CI 1033)、erbB2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばラパチニブ);肝細胞増殖因子ファミリー阻害剤;インスリン増殖因子ファミリー阻害剤;細胞アポトーシスのタンパク質制御因子のモジュレーター(例えばBcl-2阻害剤);血小板由来増殖因子ファミリー阻害剤、例えばイマチニブおよび/またはニロチニブ(AMN107);セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(例えばRas/Rafシグナル伝達阻害剤、例えばファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばソラフェニブ、ティピファルニブおよびロナファルニブ)、MEKおよび/またはAKTキナーゼを介する細胞シグナル伝達の阻害剤、c-kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、Plt3キナーゼ阻害剤、CSF-1Rキナーゼ阻害剤、IGF受容体、キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤およびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えばCDK2および/またはCDK4阻害剤;
(v) 抗血管新生剤、例えば血管内皮細胞増殖因子の効果を阻害するもの、例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(アバスチンTM);サリドマイド;レナリドマイド;および例えば、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばバンデタニブ、バタラニブ、スニチニブ、アクシチニブおよびパゾパニブ;
(vi) 例えば異常遺伝子、例えば異常p53または異常BRCA1またはBRCA2を置き換えるアプローチを含む遺伝子治療アプローチ;
(vii) 標的のチェックポイント阻害剤を含む免疫治療法、例えばPD-1、PD-L1およびCTCLA-4、例えば抗体治療、例えばアレムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン(登録商標))、ペンブロリズマブおよびオファツムマブ;インターフェロン、例えばインターフェロンα;インターロイキン、例えばIL-2(アルデスロイキン);インターロイキン阻害剤、例えばIRAK4阻害剤;予防および処置ワクチンを含む癌ワクチン、例えばHPVワクチン、例えばガーダシル、サーバリックス、オンコファージおよびシプロイセルT(Provenge);およびトール様受容体モジュレーター例えばTLR-7またはTLR-9アゴニスト;および
(viii) 細胞毒性剤、例えばフルダラビン(フルダラ)、クラドリビン、ペントスタチン(NipentTM);
(ix) ステロイド、例えばグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド、例えばアクロメタゾン、二プロピオン酸アクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、二プロピオン酸ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、クロプレンドノール(cloprednol)、コルチゾン、酢酸コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、デキサメサゾンリン酸ナトリウム、イソニコチン酸デキサメサゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルランドレノロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、吉草酸ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、アイコメタゾンエンブテート、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンパラメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、ピバル酸チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコールおよびそれらの各薬学的に許容される誘導体を含む、コルチコステロイド。ステロイドの組み合わせ、例えば、本段落に記載の2以上のステロイド組み合わせが使用され得る;
(x) 標的化治療、例えばPI3Kd阻害剤、例えばイデラリシブおよびペリホシン。
【0097】
このような組み合わせ処置を、処置の個々の成分の同時の、逐次的なまたは別々の投与の方法により達成し得る。このような組み合わせ製品を、組み合わせが治療有効量を提供するように投与でき、例えば本発明の化合物を、ここに記載する治療有効投与量範囲内で投与してよく、他の薬学的活性剤を承認投与量未満または承認範囲内の量で投与し得る。
【0098】
本発明のさらなる態様により、ここに定義する本発明の第一の態様の化合物またはその薬学的に許容される塩およびさらなる活性剤を含む医薬製品が提供される。さらなる活性剤は、癌の組み合わせ処置について上に定義した癌治療剤であり得る。
【0099】
本発明のさらなる態様により、癌を処置する方法であって、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を、上に定義したさらなる抗癌剤と同時に、逐次的にまたは別々に、それを必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0100】
本発明のさらなる態様により、癌の処置において、先に定義したさらなる抗癌剤と同時に、逐次的にまたは別々に使用するための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0101】
本発明の他の態様により、抗癌剤、例えば上記のものと組み合わせる本発明の化合物の使用が提供される。式(I)の化合物を、さらなる抗癌剤と同時に、逐次的にまたは別々に使用し得る。使用は、本発明の化合物および抗癌剤を含む一つの組み合わせ製品であり得る。さらなる抗癌剤は、本発明の第一の態様のさらなる化合物であり得る。
【0102】
さらなる態様により、組み合わせ製品を提供する方法が提供され、ここで、方法は、本発明の化合物を、上に定義した抗癌剤と同時に、逐次的にまたは別々に提供することを含む。方法は、単一剤形に本発明の化合物および抗癌剤を合わせることを含み得る。あるいは、方法は、抗癌剤を別々の剤形として提供することを含み得る。
【0103】
本発明の化合物は単一結晶形態または複数結晶形態の混合物であってよく、または非晶質であってよい。故に、医薬使用が意図される本発明の化合物を、結晶または非晶質生成物として投与し得る。それらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥または噴霧乾燥または蒸発乾燥などの方法により、例えば、固体プラグ、粉末またはフィルムとして得られ得る。マイクロ波または高周波乾燥をこの目的で使用し得る。
【0104】
上記本発明の化合物について、投与する投与量は、当然用いる化合物、投与方法、所望の処置および指示される障害により変わる。例えば、本発明の化合物が経口で投与されるならば、本発明の化合物の1日投与量は、0.01マイクログラム/キログラム体重(μg/kg)~100ミリグラム/キログラム体重(mg/kg)の範囲であり得る。
【0105】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それ自体で使用できるが、一般に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩が薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と組み合わさった医薬組成物の形で投与され得る。適当な医薬製剤の選択および製造のための慣用法は、例えば、"Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs", M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載される。
【0106】
本発明の化合物の投与方法によって、本発明の化合物の投与に使用される医薬組成物は、好ましくは0.05~99%w(重量パーセント)の本発明の化合物、より好ましくは0.05~80%wの本発明の化合物、なおより好ましくは0.10~70%wの本発明の化合物およびさらにより好ましくは0.10~50%wの本発明の化合物を含み、すべての重量パーセンテージは、総組成物に基づく。
【0107】
医薬組成物は、例えば、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、溶液剤、懸濁液剤の形で、局所的に(例えば皮膚に)または全身性に、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤または顆粒剤の形で経口投与により;または注射用(静脈内、皮下、筋肉内、血管内または点滴を含む)無菌溶液剤、懸濁液剤またはエマルジョン剤の形で非経腸投与により;坐薬の形態で直腸投与により;またはエアロゾルの形態で吸入により投与し得る。
【0108】
経口投与のために、本発明の化合物をアジュバントまたは担体、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンまたはアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン;および/または滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、蝋、パラフィンなどと混合し、次いで錠剤に圧縮し得る。コーティング錠剤が必要であるならば、上記のとおり製造したコアを、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルクおよび二酸化チタンを含み得る、濃縮糖溶液でコーティングし得る。あるいは、錠剤を、容易に揮発する有機溶媒に溶解した適当なポリマーでコーティングし得る。
【0109】
軟ゼラチンカプセルの製造のために、本発明の化合物を、例えば、植物油またはポリエチレングリコールと混合し得る。硬ゼラチンカプセルは、錠剤について上記した添加物のいずれかを使用する化合物の顆粒を含み得る。また本発明の化合物の液体または半固体製剤も硬ゼラチンカプセルに充填させ得る。経口適用のための液体製剤は、シロップまたは懸濁液、例えば、本発明の化合物を含み、残りは糖ならびにエタノール、水、グリセロールおよびプロピレングリコールの混合物である溶液の形であり得る。所望によりこのような液体製剤は、着色剤、風味剤、甘味剤(例えばサッカリン)、防腐剤剤および/または濃化剤としてのカルボキシメチルセルロースまたは当業者に知られる他の添加物を含み得る。
【0110】
静脈内(非経腸)投与のために、本発明の化合物を無菌水性または油性溶液として投与し得る。
【0111】
本発明の化合物の治療目的の用量サイズは、状態の性質および重症度、動物または患者の年齢および性別ならびに投与経路により、医薬の周知原則により変わる。
【0112】
本発明の化合物の投与量レベル、投与頻度および処置期間は、製剤および臨床適応症、患者の年齢および共存する医学的状態により異なると予測される。
【0113】
本明細書および特許請求の範囲の記載をとおして、用語「含む」および「包含する」およびそれらの変形は、「含むが、それらに限定されない」ことを意味し、他の部分、添加物、要素、整数または工程を除外することを意図しない(そしてそうしない)。本明細書および特許請求の範囲の記載をとおして、単数表現は、特に断らない限り、複数表現を含む。特に、不定冠詞が使用されるとき、本明細書は、特に断らない限り、複数ならびに単数を含むと解釈されるべきである。
【0114】
本発明の特定の態様、実施態様または例に関連して記載される特性、整数、特徴、化合物、化学部分または基は、互いに不適合でない限り、ここに記載するあらゆる他の態様、実施態様または例に適用されると解釈されるべきである。本明細書(添付する特許請求の範囲、要約および図面のいずれも含む)に開示する特性全ておよび/またはそのように開示されるあらゆる方法または過程の工程全てを、少なくともこのような特性および/または工程のいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、いかなる組み合わせでも組み合わせ得る。本発明は、あらゆる前記実施態様の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付する特許請求の範囲、要約および図面のいずれも含む)に記載する特性の何らかの新規のものまたは何らかの新規組み合わせまたはそのように開示されるあらゆる方法または過程の何らかの新規のものまたは何らかの新規組み合わせにまで拡大される。
【0115】
本出願に関連して本明細書と同時にまたは前に提出され、本明細書と共に公開された全ての論文および文書に読者は注意を払うべきであり、このような文および文書の内容の全ては、引用により本明細書に包含させる。
【0116】
化合物の合成方法
本発明のあるイオンを、下記一般的スキームに記載の方法に従いまたは準じておよび/他の当業者に知られる他の技術により合成できる。本発明のあるイオンは、実施例に記載する方法に従いまたは準じて合成できる。
【0117】
ある式(I)の化合物は、スキームAにより製造され得る。
【化41】
N-デスメチル-アジスロマイシン(a)およびホスホニウムカルボン酸(b)の間のアミド結合形成により、ホスホニウムアミド(c)がもたらされ得る。反応は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)またはEtNなどの塩基存在下、HATUまたはTATUまたは1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1-クロロ-N,N,2-トリメチルプロペニルアミン(Ghosez試薬)などの標準ペプチドカップリング剤で、かつ必要であればHOAtの存在下、DCMなどの有機溶媒中、25~40℃の温度で達成し得る。ホスホニウムカルボン酸(b)は、ハライド(d)(X=ClまたはBr;L=C-C14-アルキレン)とホスフィンの反応により製造し得る。反応を、MeCNなどの有機溶媒中、50~80℃の温度に加熱することにより達成し得る。
【0118】
ある式(I)の化合物は、スキームBにより製造され得る。
【化42】
(e)を得るためのホスホニウムアミド(c)におけるクラジノシル糖の除去は、MeOHなどの溶媒中、HClなどの鉱酸で、室温で処理することにより達成され得る。
【0119】
実験の部
分析方法
NMRスペクトルは、500 MHz Bruker Avance III HDで得た。
LC-MSは、Waters Acquity QDa質量検出器および方法DまたはWaters SQ質量検出器および方法A、B、Cを使用して得た。
方法A:カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18、1.7μm、2.1×30mm;勾配溶離剤:10mM (NH)CO含有5~95%MeCN/HO;時間:0~3分
方法B:カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18、1.7μm、2.1×30mm;勾配溶離剤:10mM (NH)CO含有5~95%MeCN/HO;時間:0~15分
方法C:カラム:Waters Acquity UPLC CSH C18、1.7μm、2.1×50mm;勾配溶離剤:0.02%HCOOH含有2~98%MeCN/HO;時間:0~4.5分
方法D:カラム:Waters Acquity UPLC CSH C18、1.7μm、2.1×30mm;勾配溶離剤:0.1%HCOOH含有5~95%MeCN/HO;時間:0~15分
【0120】
実施例1 - {14-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-14-オキソテトラデシル}(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムクロライド1
工程(a):4-(ジフェニルホスホニル)-1-メチル-1H-ピラゾール
【化43】
ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)(21.35mL、34.2mmol)を、-78℃で4-ブロモ-1-メチル-1H-ピラゾール(3.21mL、31.1mmol)のトルエン(10mL)溶液に滴下した。得られた反応混合物を0℃に温めた。15分間撹拌後、クロロジフェニルホスフィン(6.33mL、34.2mmol)を滴下し、反応混合物を室温に温めた。1時間撹拌後、反応混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、HO(2×10mL)、続いて塩水(10mL)で洗浄した。得られた有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下除去した。得られた残留物をイソヘキサン中0~50%EtOAcで溶出するクロマトグラフィーにより精製して、4-(ジフェニルホスホニル)-1-メチル-1H-ピラゾール(4.10g)を無色油状物として得て、それを静置より固化させ、次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 267 [M+H]+; RT 1.56分; 31P (202 MHz) NMR -33.86 ppm
【0121】
工程(b):(13-カルボキシトリデシル)(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムアイオダイド
【化44】
14-ブロモテトラデカン酸(200mg、0.65mmol)、4-(ジフェニルホスホニル)-1-メチル-1H-ピラゾール(実施例1 工程(a)に記載のとおり製造)(173mg、0.65mmol)およびNaI(98mg、0.65mmol)のMeCN(10mL)溶液をNの15分間のバブリングで脱気し、次いでN下、85℃で16時間加熱した。室温に冷めたら、溶媒を減圧下除去し、得られた残留物をDCM中0~9%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、(13-カルボキシトリデシル)(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムブロマイド(286mg、67%収率)を無色ガム状物として得て、それを次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 493 [M+]; RT 1.20分; 31P (202 MHz) NMR +13.50 ppm
【0122】
工程(c):{14-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-14-オキソテトラデシル}(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムクロライド1
【化45】
(13-カルボキシトリデシル)(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムブロマイド(実施例1 工程(b)に記載のとおり製造)(286mg、0.46mmol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(17mg、0.13mmol)およびN-デスメチル-アジスロマイシン(308mg、0.42mmol)のDCM(10mL)溶液に、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(98μL、0.63mmol)を加えた。得られた溶液を40℃で16時間加熱した。冷めたら、反応混合物をDCM(10mL)で希釈し、有機層を飽和NHCl水溶液(10mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。得られた残留物をMeOH(10mL)に溶解し、60℃で16時間加熱した。冷めたら、溶媒を減圧下除去し、残留物を0~100%のDCM中(DCM中20%MeOH/7M NH)で溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体を得て、それをMeOH(20mL)に溶解し、Amberlite IRA-400クロライドイオン交換樹脂で濾過した。集めたMeOHをカラムを3回とおし、その後、同体積のMeOHを新たに加えた。合わせたMeOH洗浄液を減圧下濃縮して、表題化合物(100mg、18%収率)を白色固体として得た。
31P (202 MHz) NMR +13.50 ppm;*化合物はUPLCカラム上に保持されず
【0123】
実施例2 - {13-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-13-オキソトリデシル}ジフェニル[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムクロライド2
工程(a):4-(ジフェニルホスホニル)-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール
【化46】
4-ブロモ-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾールを使用して、実施例1 工程(a)の方法により製造した。精製は、ヘキサン中0~30%EtOAcで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 295 [M+H]+; RT 1.67分; 31P (202 MHz) NMR -33.45 ppm
【0124】
工程(b):(12-カルボキシドデシル)ジフェニル[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムアイオダイド
【化47】
13-ブロモトリデカン酸および4-(ジフェニルホスホニル)-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール(実施例2 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例1 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~3%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 507 [M+]; RT 1.24分; 31P (202 MHz) NMR +13.57 ppm
【0125】
工程(c):{13-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-13-オキソトリデシル}ジフェニル[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムクロライド2
【化48】
(12-カルボキシドデシル)ジフェニル[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムアイオダイド(実施例2 工程(bに記載のとおり製造)を使用して、実施例1 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤は80~100%のDCM(DCM中20%MeOH/7M NH)であった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法B) 1244 [M+]; RT 8.52分; 31P (202 MHz) NMR +13.55 ppm
【0126】
実施例3 - (1-tert-ブチル-1H-ピラゾール-4-イル)({12-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-12-オキソドデシル})ジフェニルホスホニウムクロライド3
工程(a):1-tert-ブチル-4-(ジフェニルホスホニル)-1H-ピラゾール
【化49】
4-ブロモ-1-(tert-ブチル)-1H-ピラゾールを使用して、実施例1 工程(a)の方法により製造した。精製は、ヘキサン中0~30%EtOAcで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた白色固体を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 309 [M+H]+; RT 1.82分; 31P (202 MHz) NMR -33.45 ppm
【0127】
工程(b):(1-tert-ブチル-1H-ピラゾール-4-イル)(11-カルボキシウンデシル)ジフェニルホスホニウムブロマイド
【化50】
12-ブロモドデカン酸(453mg、1.62mmol)、1-tert-ブチル-4-(ジフェニルホスホニル)-1H-ピラゾール(実施例3 工程(a)に記載のとおり製造)(500mg、1.62mmol)およびNaI(24mg、0.16mmol)のMeCN(10mL)溶液をNの15分間のバブリングで脱気し、次いでN下、85℃で16時間加熱した。室温に冷却しながら、溶媒を減圧下除去し、得られた残留物をDCM中0~3%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、(1-tert-ブチル-4-1H-ピラゾール-4-イル)(11-カルボキシウンデシル)ジフェニルホスホニウムブロマイド(421mg、42%収率)を無色油状物として得て、それを次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 507 [M+]; RT 1.29分; 31P (202 MHz) NMR +13.54 ppm
【0128】
工程(c):(1-tert-ブチル-1H-ピラゾール-4-イル)({12-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-12-オキソドデシル})ジフェニルホスホニウムクロライド3
【化51】
(1-tert-ブチル-4-1H-ピラゾール-4-イル)(11-カルボキシウンデシル)ジフェニルホスホニウムブロマイド(実施例3 工程(b)に記載のとおり製造)(421mg、0.72mmol)の乾燥DCM(10mL)溶液に、1-クロロ-N,N,2-トリメチル-1-プロペニルアミン(Ghosez試薬)(142μL、1.08mmol)を加えた。室温で10分間撹拌後、得られた溶液を、0℃で撹拌しているN-デスメチル-アジスロマイシン(553mg、0.75mmol)およびEtN(330μL、2.36mmol)の乾燥DCM(10mL)溶液に滴下した。反応混合物を室温に温め、飽和NaHCO水溶液(20mL)で反応停止させた。分離した有機層を飽和NHCl水溶液(3×20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下除去した。得られた残留物をDCM中5~15%MeOH/0.7M NHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体を得て、それをMeOH(5mL)に溶解し、Amberlite IRA-400クロライドイオン交換樹脂で濾過した。集めたMeOHをカラムを3回とおし、その後、同体積のMeOHを新たに加えた。合わせたMeOH洗浄液を減圧下濃縮して、表題化合物(151mg、15%収率)を白色固体として得た。
LC-MS(方法B) 1224 [M+]; RT 8.12分; 31P (202 MHz) NMR +13.52 ppm
【0129】
実施例4 - (1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)({12-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-12-オキソドデシル})ジフェニルホスホニウムクロライド4
工程(a):1-シクロブチル-4-(ジフェニルホスホニル)-1H-ピラゾール
【化52】
4-ブロモ-1-シクロブチル-1H-ピラゾールを使用して、実施例1 工程(a)の方法により製造した。精製は、ヘキサン中0~30%EtOAcで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 307 [M+H]+; RT 1.79分
【0130】
工程(b):(11-カルボキシウンデシル)(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムブロマイド
【化53】
12-ブロモドデカン酸および1-シクロブチル-4-(ジフェニルホスホニル)-1H-ピラゾール(実施例4 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例3 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~3%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 505 [M+]; RT 1.27分; 31P (202 MHz) NMR +13.53 ppm
【0131】
工程(c):(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)({12-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-12-オキソドデシル})ジフェニルホスホニウムクロライド4
【化54】
(11-カルボキシウンデシル)(1-シクロブチル-1H-ピラゾール-4-イル)ジフェニルホスホニウムブロマイド(実施例4 工程(b)に記載のとおり製造)を使用して、実施例3 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤はDCM中5~15%MeOH/0.7M NHであった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法B) 1222 [M+]; RT 7.99分; 31P (202 MHz) NMR +13.51 ppm
【0132】
実施例5 - {8-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-8-オキソオクチル}ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムクロライド5
工程(a):4-[ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニル]-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール
【化55】
4-ブロモ-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾールおよびクロロビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィンを使用して、実施例1 工程(a)の方法により製造した。精製は、ヘキサン中0~30%EtOAcで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 351 [M+H]+; RT 2.02分
【0133】
工程(b):(7-カルボキシヘプチル)ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムブロマイド
【化56】
8-ブロモオクタン酸および4-[ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニル]-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール(実施例5 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例3 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~3%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 493 [M]+; RT 1.29分
【0134】
工程(c):{8-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-8-オキソオクチル}ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムクロライド5
【化57】
(7-カルボキシヘプチル)ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムブロマイド(実施例5 工程(b)に記載のとおり製造)を使用して、実施例3 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤はDCM中5~20%MeOH/0.7M NHであった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法B) 1210 [M+]; RT 7.85分; 31P (202 MHz) NMR +12.82 ppm
【0135】
実施例6 - {7-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-7-オキソヘプチル}ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムクロライド6
工程(a):(6-カルボキシヘキシル)ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムブロマイド
【化58】
7-ブロモヘプタン酸および4-[ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニル]-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール(実施例5 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例3 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~3%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 479 [M]+; RT 1.26分
【0136】
工程(b):{7-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-7-オキソヘプチル}ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムクロライド6
【化59】
(6-カルボキシヘキシル)ビス(3,5-ジメチルフェニル)[1-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ホスホニウムブロマイド(実施例6 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例3 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤はDCM中5~20%MeOH/0.7M NHであった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法B) 1196 [M+]; RT 7.86分; 31P (202 MHz) NMR +12.92 ppm
【0137】
実施例7 - {7-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-7-オキソヘプチル}トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムクロライド7
工程(a):(6-カルボキシヘキシル)トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムアイオダイド
【化60】
7-ブロモヘプタン酸およびトリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィンを使用して、実施例1 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~10%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた白色ガム状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法C) 475 [M+];31P (202 MHz) NMR +23.60 ppm
【0138】
工程(b):{7-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-7-オキソヘプチル}トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムクロライド7
【化61】
(6-カルボキシヘキシル)トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムアイオダイド(実施例7 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例1 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤はDCM中0~20%MeOH/0.7M NHであった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法A) 1192 [M+]; RT 1.34分; 31P (202 MHz) NMR +23.15 ppm
【0139】
実施例8 - {14-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-14-オキソテトラデシル}(オキサン-4-イル)ジフェニルホスホニウムクロライド8
工程(a):(オキサン-4-イル)ジフェニルホスフィン
【化62】
4-ブロモテトラヒドロ-2H-ピランを使用して、実施例1 工程(a)の方法により製造した。精製は、イソヘキサン中0~30%EtOAcで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色油状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 271 [M+H]+; RT 1.67分; 31P (202 MHz) NMR -6.28 ppm
【0140】
工程(b):(13-カルボキシトリデシル)(オキサン-4-イル)ジフェニルホスホニウムアイオダイド
【化63】
(オキサン-4-イル)ジフェニルホスフィン(実施例8 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例1 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~5%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた白色固体を次工程で使用した。
LC-MS(方法A) 497 [M]+; RT 1.20分; 31P (202 MHz) NMR +29.90 ppm
【0141】
工程(c):{14-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-14-オキソテトラデシル}(オキサン-4-イル)ジフェニルホスホニウムクロライド8
【化64】
(13-カルボキシトリデシル)(オキサン-4-イル)ジフェニルホスホニウムアイオダイド(実施例8 工程(b)に記載のとおり製造)を使用して、実施例1 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤はDCM中0~20%MeOH/0.7M NHであった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法A) 1214 [M]+; RT 1.30分; 31P (202 MHz) NMR +29.90 ppm
【0142】
実施例9 - トリシクロペンチル({13-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-13-オキソトリデシル)}ホスホニウムクロライド9
工程(a):(12-カルボキシドデシル)トリシクロペンチルホスホニウムアイオダイド
【化65】
13-ブロモトリデカン酸およびトリシクロペンチルホスフィンを使用して、実施例1 工程(b)の方法により製造した。精製は、DCM中0~10%MeOHで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた無色ガム状物を次工程で使用した。
LC-MS(方法C) 451 [M]+; RT 1.36分; 31P (202 MHz) NMR +38.64 ppm
【0143】
工程(b):トリシクロペンチル({13-[(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)-11-{[(2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシ}-2-エチル-3,4,10-トリヒドロキシ-13-{[(2R,4R,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-4,6-ジメチルオキサン-2-イル]オキシ}-3,5,8,10,12,14-ヘキサメチル-15-オキソ-1-オキサ-6-アザシクロペンタデカン-6-イル]-13-オキソトリデシル})ホスホニウムクロライド9
【化66】
(12-カルボキシドデシル)トリシクロペンチルホスホニウムアイオダイド(実施例9 工程(a)に記載のとおり製造)を使用して、実施例1 工程(c)の方法により製造した。シリカカラムクロマトグラフィーを使用する精製工程において、勾配溶離剤はDCM中0~20%MeOH/0.7M NHであった。表題化合物を白色固体として単離した。
LC-MS(方法D) 1168 [M]+; RT 5.30分; 31P (202 MHz) NMR +39.40 ppm
【0144】
増殖阻害アッセイ
細胞コンフルエンス
コンフルエンス値は、細胞増殖および成長のサロゲートである。値は、細胞により占拠される培養皿表面の分画を表すパーセントコンフルエンスとしてあらわす。皿の細胞数が増殖により経時的に増加するため、表面の被覆率も増加する。細胞培養皿表面の細胞集団およびコンフルエンスの拡大は、プレート表面の細胞が飽和または最大密度に達するまでほぼ直線状である。
コンフルエンスは、画像分析に基づき決定する。画像ベースのソフトウェアは、グレイスケール画像でのピクセル密度変化に基づき、画像フィールド上の物体を同定できる。次いで、ソフトウェアは物体内のこれらピクセルにマスクを割り当てることができる。物体を、サイズおよび形に基づき‘ゲート開閉’できる。細胞コンフルエンスを決定するために、細胞画像がまず物体としてマスクされる。マスクされた画像表面積を測定し、パーセントコンフルエンスを得るために培養皿表面の総表面積と比較する。
【0145】
MDA-231癌細胞をATCCから得た。細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)、2mM Glutamax、1mM 非必須アミノ酸(NEAA)溶液および1mM ピルビン酸ナトリウム添加ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)で培養した。化合物を10mMでDMSOに溶解し、細胞培地で希釈し、10μM(マイクロモル濃度)で試験した。最終DMSO濃度は≦0.1%であった。10倍対物を用いて、細胞培養条件下、3時間毎に4~5日にわたり、IncuCyte Live Cell Imaging顕微鏡(Essen Bioscience)で、画像を得た。IncuCyte内蔵アルゴリズムを使用して、細胞コンフルエンスをウェルあたり1視野から計算した。相対的コンフルエンス値は、各値を各サンプルの0時値に対して正規化することにより得た。
【表1】
【国際調査報告】