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特表2022-505480レドックスフロー電池の性能を変更する方法とシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池の性能を変更する方法とシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20220106BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220106BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20220106BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 Z
H01M8/04858
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521526
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 US2019056471
(87)【国際公開番号】W WO2020086349
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】16/171,542
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ハマド,アーマド ディー
(72)【発明者】
【氏名】ソウエンティ,スタマティオス
(72)【発明者】
【氏名】アルスハイバニ,アブドゥルラフマーン
(72)【発明者】
【氏名】アムル,イッサム ティー
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB10
5H126GG02
5H126GG11
5H126GG17
5H126JJ02
5H126JJ06
5H126RR01
5H127AA10
5H127AB29
5H127BA01
5H127BB03
5H127DC43
(57)【要約】
レドックスフロー電池とレドックスフロー電池を動作させる方法である。レドックスフロー電池は、イオン伝導性セパレータと、作用側流動電解質と、作用電極と、対電極と、補助電極と、を含む。補助電極は、作用電極にイオン接触しており、電気絶縁周縁間隙が作用電極から補助電極を分離している。補助電力源は、補助電極電圧が作用側流動電解質の電気化学窓内にあるように補助電極電圧を制御するように、対電極の端子と補助電極の端子との間に補助回路電圧差を確立するように、また作用電極端子と補助電極端子との間に電圧差を確立するように、構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池であって、
作用側および反対側を備えるイオン伝導性セパレータと、
作用側流動電解質と、
前記イオン伝導性セパレータの前記作用側および前記作用側流動電解質にイオン接触する作用電極と、
反対側流動電解質と、
前記イオン伝導性セパレータの前記反対側および前記反対側流動電解質にイオン接触する対電極と、
前記フロー電池の共通層において前記作用電極と周縁で外接している補助電極であって、前記作用電極、前記作用側流動電解質、および前記イオン伝導性セパレータの前記作用側にイオン接触している、補助電極と、
前記作用電極から前記補助電極を分離する電気絶縁周縁間隙と、
前記作用電極に伝導結合された作用電極端子と、
前記補助電極に伝導結合された補助電極端子と、
前記対電極に伝導結合された対電極端子と、
前記補助電極端子および前記対電極端子に電気接続された補助電力源であって、前記補助電力源が、
前記対電極端子と前記補助電極端子との間に補助回路電圧差を確立することと、
補助電極電圧が前記作用側流動電解質の電気化学窓内であるように前記補助電極電圧を制御することと、
前記作用電極端子と前記補助電極端子との間に電圧差を確立することと、を行うように構成されている、補助電力源と、
を備える、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記作用側流動電解質が、酸性水溶液を含み、前記補助電極電圧が、標準水素電極(SHE)に対して1.23ボルト(V)を下回る、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記補助電力源が有効になっている場合のいずれかで、(a)補助回路電流に対する昇圧電力回路電流-従来型電力回路電流の比が1:1よりも大きい、および(b)補助回路電力に対する昇圧電力回路電力-従来型電力回路電力の比が1:1よりも大きい、のうちの少なくとも1つであるように、前記補助電力源が構成されている、請求項1または2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記補助電力源が有効になっている場合、補助回路電流に対するそれぞれの昇圧電力回路電流-従来型電力回路電流の比、または補助回路電力に対するそれぞれの昇圧電力回路電力-従来型電力回路電力の比が、10:1よりも大きいように前記補助電力源が構成されている、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記作用電極には金属系電子触媒を実質的に含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記イオン伝導性セパレータ、前記作用電極、前記対電極、および前記補助電極が、すべて、(a)実質的に平らな外形または(b)実質的に円筒状の外形を備えるように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記作用電極と前記補助電極とのそれぞれの総表面積が、5:1~100:1の作用電極対補助電極表面積比を定義する、請求項1~6のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記作用側流動電解質には、1センチメートル当たり少なくとも0.045ジーメンスの伝導率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記作用側流動電解質が、バナジウム、鉄、クロム、臭素、塩素、硫酸、塩酸、レドックス活性有機化学物質、亜鉛、リチウム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記作用側流動電解質が塩化バナジウムおよび塩酸を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
前記反対側流動電解質が、バナジウム、鉄、クロム、臭素、塩素、硫酸、塩酸、レドックス活性有機化学物質、亜鉛、リチウム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記反対側流動電解質が塩化鉄および塩酸を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
前記レドックスフロー電池が、前記作用側流動電解質と前記反対側流動電解質とが前記イオン伝導性セパレータを通してイオン連通でのみ連通するように、構造上構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項14】
前記作用電極が、作用電極内径、作用電極外径、および前記作用電極内径と前記作用電極外径との間に画定される作用電極表面積を含む円形状の外形を画定し、
前記補助電極が、補助電極表面積に外接する補助電極外径を含む円形状の外形を画定し、
前記電気絶縁周縁間隙が、前記作用電極内径と前記補助電極外径との間の環状領域を含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項15】
レドックスフロー電池を動作させる方法であって、前記レドックスフロー電池が、
作用側流動電解質と、
前記イオン伝導性セパレータの前記作用側および前記作用側流動電解質にイオン接触する作用電極と、
反対側流動電解質と、
前記イオン伝導性セパレータの前記反対側および前記反対側流動電解質にイオン接触する対電極と、
前記フロー電池の共通層において前記作用電極と周縁で外接している補助電極であって、前記作用電極、前記作用側流動電解質、および前記イオン伝導性セパレータの前記作用側にイオン接触している、補助電極と、
前記作用電極から前記補助電極を分離する電気絶縁周縁間隙と、
前記作用電極に伝導結合された作用電極端子と、
前記補助電極に伝導結合された補助電極端子と、
前記対電極に伝導結合された対電極端子と、
前記作用電極端子と前記対電極端子との間に電気接続をもたらすように構造化された作用電気回路と、
前記補助電極端子と前記対電極端子との間に電気接続をもたらすように構造化された補助回路と、
前記補助回路の両端にサブスレッショルド電圧を印加するように構成された補助電力源と、
を備え、前記方法が、
前記作用電極および前記補助電極にわたり前記作用側流動電解質を通すことと、
前記対電極にわたり前記反対側流動電解質を通すことと、
前記補助電極における電位が、前記作用側流動電解質の電気化学窓内であり、
前記補助電力が有効である場合に、補助回路電力に対する電力回路電流上昇の比が少なくとも5:1であるように、前記補助回路の両端の電圧を制御することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年10月26日に出願された米国出願第16/171,542号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、レドックスフロー電池に関し、より具体的には、3電極制御電位レドックスフロー電池およびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レドックスフロー電池は、電極のうちの1つで過度の過電位を被る傾向がある。この過度の過電位は、効率の低下および有効なエネルギ保存容量の低下につながる。したがって、本発明者らは、1つ以上のレドックスフロー電池電極の効率を改善し得るレドックスフロー電池の設計の必要性を認識した。本開示の一実施形態によれば、作用電極の電位を制御するために補助電極を利用する3電極レドックスフロー電池の設計は、レドックスフロー電池電極の過電位要件を低減するのに適している可能性がある。現在説明されているレドックスフロー電池の設計は、補助電極で有意なファラデー活動を行うことなく、作用電極と対電極の過電圧要件を低減する。このような設計は、補助電極で必要とされる電流と比較して、作用電極で73:1の電流の増加をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施形態によれば、イオン伝導性セパレータと、作動側流動電解質と、イオン伝導性セパレータの作動側と作動側流動電解質とにイオン接触する作動電極と、対電極と、フロー電池の共通層において作動電極に外接する補助電極と、を備えるレドックスフロー電池が提供される。補助電極は作用電極とイオン接触しており、電気絶縁周縁間隙が補助電極を作用電極から分離している。作用電極端子は作用電極に導電結合され、補助電極端子は補助電極に導電結合され、対電極端子は対電極に導電結合される。補助電源は、対電極端子と補助電極端子との間に補助回路の電圧差を設け、補助電極電圧が作用側流動電解質の電気化学窓内に入るように補助電極電圧を制御し、作用電極端子と補助電極端子との間に電圧差を設けるように構成されている。
【0005】
本開示の別の実施形態によれば、補助電源は、補助電源が有効になったときに、昇圧型電力回路電流から従来型電力回路電流を引いたものと補助回路電流との比が1:1よりも大きくなるように構成されている。作用電極と補助電極のそれぞれの総表面積は、作用電極と補助電極の表面積の比が少なくとも5:1になるように規定されている。
【0006】
本開示のさらに別の実施形態によれば、レドックスフロー電池を動作させる方法は、作用側流動電解質を作用電極および補助電極に通過させることと、反対側流動電解質を対電極に通過させることと、補助回路にかかる電圧を制御することと、を含む。補助回路の両端の電圧は、補助電極の電位が作用側流動電解質の電気化学窓内にあり、補助電源が有効になっているときの補助回路電力に対する電源回路電流増加の比が少なくとも5:1になるように制御される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと、最もよく理解され得る。
【0008】
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、レドックスフロー電池の分解概略図である。
図2】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、レドックスフロー電池の対電極の上から見下ろした斜視図である。
図3】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、レドックスフロー電池の作用電極および補助電極の上から見下ろした斜視図である。
図4】本開示の一実施形態による、補助回路電流対時間のグラフ描写である。
図5】本開示の実施形態による、補助回路電位の印加の効果を示す、放電電流対時間のグラフ描写である。
図6】本開示の実施形態による、補助回路電位の印加の効果を示す、放電電圧対時間のグラフ描写である。
図7】本開示の実施形態による、補助回路電位の印加の効果を示す、放電電力対時間のグラフ描写である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、作用側102と反対側104からなるイオン伝導性セパレータ101、作用側流動電解質103、および反対側流動電解質105からなるレドックスフロー電池100を示している。レドックスフロー電池100は、さらに、作用電極106、対電極108、および補助電極110を備えている。作用電極106は、イオン伝導性セパレータ101の作用側102と作用側流動電解質103にイオン接触している。対電極108は、イオン伝導性セパレータ101の反対側104と反対側流動電解質にイオン接触している。補助電極110は、レドックスフロー電池100の共通層において作用電極106によって周縁に外接している。
【0010】
補助電極110は、作用電極106、作用側流動電解質103、およびイオン伝導性セパレータの作用側102とイオン接触し得る。電気絶縁周縁間隙112は、補助電極110を作用電極106から分離し得る。
【0011】
レドックスフロー電池100は、対電極108に伝導結合された対電極端子114と、作用電極106に伝導結合された作用電極端子116と、補助電極110に伝導結合された補助電極端子118と、をさらに備え得る。対電極端子114、作用電極端子116、補助電極端子118はそれぞれ、電気抵抗を最小にして電気エネルギをそれぞれの電極に伝達するように構造化されている。
【0012】
補助電力源120は、補助電極端子118および対電極端子114に電気接続され得る。
【0013】
補助電力源120は、対電極端子114と補助電極端子118との間に補助回路122の電圧差を確立するように構成され得る。補助電力源120は、補助電極110の電圧が作用側流動電解質103の電気化学窓内に入るように、補助電極110の電圧を制御するように構成され得る。補助電力源120は、作用電極端子116と補助電極端子118との間に電圧差を確立するように構成され得る。
【0014】
補助回路122は、電圧差を確立するために、作用電極端子116に接続する必要はないことを理解されたい。物質の電気化学窓とは、その物質が酸化も還元もされない電圧範囲として定義される。例えば、白金上での水の電気化学窓は、標準水素電極(SHE:Standard Hydrogen electrode)に対して0.00ボルト(V)~1.23ボルト(V)である。補助電極110の電位を作用側流動電解質103の電気化学窓内に制御することで、作用側流動電解質103の電気分解と、そのような反応に関連するエネルギの散逸を防ぐことができると考えられる。理論に限定されることなく、電流ではなく補助回路122の電圧を制御することで、作用電極106の電圧を最大化しつつ、補助回路122に関連するエネルギ損失を低減することができると考えられている。
【0015】
作用側流動電解質103は、作用側電解質導管126を介して1つ以上の作用側チャネルと流体連通している作用側流動電解質チャンバ124に少なくとも部分的に含まれ得る。反対側流動電解質105は、反対側電解質導管130を介して1つ以上の反対側チャネルと流体連通している反対側流動電解質チャンバ128に少なくとも部分的に含まれ得る。作用側流動電解質103と反対側流動電解質105の混合は、レドックスフロー電池100の損失の原因となるため、可能な限り防止することが望ましい。
【0016】
補助電力源120には、実質的に一定のまたは可変制御可能な電力源が含まれ得る。制御された電圧を維持するのに適したいずれのシステムも補助電力源に活かされ得る。例えば、補助電力源120選択肢には、ポテンショスタット、電池、レドックスフロー電池100からの電気エネルギ、地方送電網からの電気エネルギ、または他のいずれの電気エネルギ源も含まれ得る。補助電力源は、化学反応、抵抗体などのパワーエレクトロニクス、またはその両方に基づき望ましい電圧を得ることができる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、作用側流動電解質103は、酸性水溶液を含み得、補助電極110は、1.23V対SHEよりも小さい場合がある。0~1.23V対SHEは、水溶液に使用可能な最も小さい電気化学窓であり、したがって、この窓内に留まることにより、水性作用側流動電解質103の酸化を防ぐことができる。作用側流動電解質103の電気分解によって電力回路によって生成される電力が増えることがある一方、補助回路122によって消費される電力も増えることもあるので、電池によって生成される正味電力が減る可能性があると、考えられる。
【0018】
電圧が相対数であることから、電圧が本開示で規定される際、電圧は、標準水素電極(SHE:Standard Hydrogen Electrode)基準との関係で与えられる。電圧が回路に合わせてまたは2つの端子にわたって規定される場合、相対電圧が与えられ、基準は必要ない。
【0019】
補助電極110電圧は、0.40V~1.22V対SHEであり得る。例えば、補助電極110電圧は、0.4V~0.5V、0.5V~0.6V、0.7V~0.8V、0.8V~0.9V、0.9V~1.0V、1.0V~1.1V、もしくは1.1V~1.2V、またはそれらのいずれの組合せでもあり得る。
【0020】
補助電力源120は、補助電力源が有効である場合に、昇圧型電力回路電流(BPCC:Boosted Power Circuit Current)-従来型電力回路電流(CPCC:Conventional Power Circuit Current)対補助回路電流(ACC:Auxiliary Circuit Current)が10:1よりも大きいように構成されている。上記の関係は、式(BPCC-CPCC):ACCによって表され得る。例えば、(BPCC-CPCC):ACCの比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、120:1、140:1、160:1、180:1、200:1、220:1、240:1、260:1、または280:1よりも大きい場合がある。
【0021】
補助電力源120は、補助電力源が有効である場合、昇圧型電力回路電流-従来型電力回路電流対補助回路電流の比が10:1よりも大きいように構成され得る。
【0022】
補助電力源120は、補助電力源120が有効である場合、昇圧型電力回路電流-従来型電力回路電流対補助回路電流の比が1:1よりも大きいように構成され得る。
【0023】
補助電力源120は、補助電力源が有効である場合、昇圧型電力回路電力(BPCP:Boosted Power Circuit Power)-従来型電力回路電力(CPCP:Conventional Power Circuit Power)対補助回路電力(ACP:Auxiliary Circuit Power)の比が1:1よりも大きいように構成され得る。上記の関係は、式(BPCP-CPCP):ACPによって表され得る。例えば、(BPCP-CPCP):ACPの比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、120:1、140:1、160:1、180:1、200:1、220:1、240:1、260:1、280:1、300:1、350:1、400:1、450:1、500:1、550:1、600:1、または600:1よりも大きい場合がある。
【0024】
電力回路132とは、作用電極と対電極との接続を指す。昇圧型電力回路電流とは、補助電力源120が有効になっているときに電力回路132を流れる電流を指す。従来型電力回路電流とは、補助電力源120が無効になっているまたは欠如しているときに電力回路132を流れる電流を指す。
【0025】
これは普通ではないが、ある条件下では、(BPCC-CPCC):ACCの比が10:1よりも大きい可能性が受け入れられている。例えば、図4に示すデータを参照すると、最初の1時間にわたる平均補助電流は、0.19ミリアンペア(mA)であり、図5に示すデータを参照すると、最初の1時間にわたる平均BPCC-CPCCは、49.5mAhである。これは、約265:1の(BPCC-CPCC):ACCの比に対応する。
【0026】
作用電極106は、カーボンフェルトを含み得るか、または作用電極106は、微小孔表面のないカーボン紙を含み得る。理論に限定されない限り、燃料電池反応に対して、レドックスフロー電池反応が、イオン伝導性セパレータからさらに起こるので、高表面積の電極が望ましいと考えられる。電極上の微小孔層の欠如は、それが、イオン伝導性セパレータの作用側102への作用側流動電解質103の質量移行を高めることから、望ましいと考えられる。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、作用電極106は、金属電子触媒を実質的に含まなくてもよい。通常、燃料電池に対するレドックスフロー電池の重量な利点の1つは、レドックスフロー電池には金属電子触媒がなくてもよい点である。
【0028】
イオン伝導性セパレータ、作用電極106、対電極108、および補助電極110は、実質的に平らな幾何学形状であり得る。代替として、イオン伝導性セパレータ、作用電極106、対電極108、および補助電極110は、実質的に円筒形の幾何学形状であり得る。また、イオン伝導性セパレータ、作用電極106、対電極108、および補助電極110は、レドックスフロー電池に適した幾何学形状のいずれであってもよい。
【0029】
レドックスフロー電池100は、作用側エンドプレートおよび反対側エンドプレートを備え得る。エンドプレートは、レドックスフロー電池100に強度、剛性、および圧縮を与えるように働くことができる。エンドプレートは、電解質導管から電解質チャネルに流れる電解質を運ぶマニホールドとして働くことができる。エンドプレートは、銅、金、鋼、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、またはその組合せ、またはその層を含み得る。
【0030】
レドックスフロー電池100は、1つ以上の流体シールを備え得る。流体シールは、イオン伝導性セパレータ101の周縁にわたって配設され得、作用側流動電解質103および反対側流動電解質105の漏れを防ぐように構成され得る。流体シールは、テフロン(登録商標)、弾性材料、ゴム、金属、またはそれらの組合せを含み得る。流体シールは、作用側エンドプレート、反対側エンドプレート、またはその両方上のチャネルに配設され得る。流体シールは、実質的に平らな円筒状または環状体の幾何学形状であり得る。
【0031】
図2、3を参照すると、対電極108は、作用電極106と外装サイズおよび形状が同様な円形状の外形を画定し得る。対電極には、外径202があり得る。
【0032】
図3を参照すると、作用電極106は、作用電極内径302、作用電極外径304、および作用電極内径と作用電極外径との間に画定される作用電極表面積を画定し得る。補助電極110は、補助電極表面積に外接する補助電極外径306を含む円形幾何学定形状を画定し得る。電気絶縁周縁間隙112は、作用電極内径302と補助電極外径306との間の環状領域を含み得る。
【0033】
作用電極106と補助電極110とのそれぞれの総表面積は、少なくとも5:1の作用電極106対補助電極110表面積比を定義し得る。例えば、この比は、5:1~10:1、10:1~20:1、20:1~30:1、30:1~40:1、50:1~60:1、60:1~70:1、70:1~80:1、80:1~90:1、90:1~100:1、または100:1よりも大きい、またはそれらの任意の組合せであり得る。20:1~100:1などの複数の部分範囲を網羅する実施形態の可能性が受け入れられている。理論に限定されない限り、補助電極表面積に対する作用電極表面積の比を最大限にすることにより、ファラデー反応が補助電極で起こる機会を減らすことによって、ネットセル性能の最大の向上がもたらされ得ると考えられる。
【0034】
作用電極106と補助電極110とのそれぞれの総表面積は、5:1~100:1の作用電極106対補助電極110表面積比を定義し得る。
【0035】
作用電極106と補助電極110とのそれぞれの総表面積は、8:1の作用電極106対補助電極110表面積比を定義し得る。
【0036】
電気絶縁境界間隙は、5mm~0.001mmの厚さであり得る。例えば、電気絶縁境界間隙は、5~4、または4~3、または3~2、または2~1、または1~0.75、または0.75~0.5、または0.5~0.25、または0.25~0.1、または0.1~0.05、または0.05~0.001mm、またはそれらのいずれの組合せでもあり得る。理論に限定されない限り、電気絶縁境界間隙の厚さを最小限に抑えることにより、最大のセル性能がもたらされると考えられる。これは、作用電極電位に対する補助電極電位の影響を強くすることによってもたらされると考えられる。電気絶縁境界間隙は、電気絶縁材料を含み得る。例えば、限定ではなく、プロトン交換膜、ゴム、「テフロン」、または他の絶縁材料などの空気、真空、膜材料である。
【0037】
作用側流動電解質103は、酸性水溶液を含み得る。作用側流動電解質103には、センチメートル当たり少なくとも0.045ジーメンス(S/cm)の伝導率を有し得る。例えば、作用側流動電解質103には、少なくとも0.0005S/cm、0.0001S/cm、0.0002S/cm、0.004S/cm、0.008S/cm、0.01S/cm、0.02S/cm、0.04S/cm、0.08S/cm、0.1S/cm、0.2S/cm、0.4S/cm、0.6S/cm、0.8S/cm、1S/cm、2S/cm、4S/cm、6S/cm、8S/cm、10S/cm、20S/cm、40S/cm、60S/cm、もしくは60S/cmよりも大きい、またはそれらの組み合わせの伝導率を有しり得る。
【0038】
作用側流動電解質103は、バナジウム、鉄、クロム、臭素、塩素、硫酸、塩酸、レドックス活性有機化学物質、亜鉛、リチウム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態によれば、作用側流動電解質103は、塩化バナジウムおよび塩酸を含み得る。
【0039】
反対側流動電解質105は、バナジウム、鉄、クロム、臭素、塩素、硫酸、塩酸、レドックス活性有機化学物質、亜鉛、リチウム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含み得る。反対側流動電解質105は、塩化鉄および塩酸を含み得る。
【0040】
作用側流動電解質103と反対側流動電解質105とは、別々の流路に含まれ得る。図1を再び参照すると、作用側流動電解質103は、作用側フローチャネル、作用側電解質導管126、および作用側流動電解質チャンバ124に含まれ得る。反対側流動電解質105は、反対側流動電解質チャンバ128、反対側フローチャネル、および反対側電解質導管130に含まれ得る。
【0041】
レドックスフロー電池100は、作用側流動電解質103および反対側流動電解質105がイオン伝導セパレータ101を通してイオン連通でのみ連通するように、構造的に構成され得る。
【0042】
イオン伝導性セパレータ101は、プロトン交換膜を含み得る。例として、限定としてではなく、プロトン交換膜がNafion(登録商標)膜などのスルホン酸膜である可能性が受け入れられている。
【0043】
イオン伝導性セパレータ101は、陰イオン交換膜を含み得る。例として、限定としてではなく、陰イオン交換膜がFumasepまたは第四級アンモニウム系膜であり得る可能性が受け入れられている。
【0044】
イオン伝導性セパレータ101は、サイズ排除膜を含み得る。例えば、イオン伝導性セパレータ101は、ゼオライト、ナノスケール厚金膜、アスペスト膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、高分子膜、または炭化水素膜であってもよい。
【0045】
方法は、作用電極106および補助電極110にわたり作用側流動電解質103を通すことと、対電極108にわたり反対側流動電解質105を通すことと、補助電極110における電位が、作用側流動電解質103の電気化学窓内であり、補助電力源120が有効である場合に、補助回路122電力に対する電力回路132電流上昇の比が少なくとも5:1であるように、補助回路の両端の電圧を制御することと、を含み得る。
【実施例
【0046】
1つの代表的な実施形態において、電池は、3.9cm2炭素フェルト作用電極、106、0.25cm2炭素フェルト補助電極110、および4.4cm2炭素フェルト作用電極108で、図1~3に描写のように構築されている。作用側流動電解質103は、1.5M FeCl2および3M HClの溶媒であった。反対側流動電解質105は、1.5M VCl3および3M HClの溶媒であった。NAFION117プロトン交換膜は、イオン伝導性セパレータ101として使用された。電池は、作用電極端子116を対電極端子114に接続する10オーム抵抗体で構成され、自由に放電できるようにされていた。
【0047】
セルは、0.9Vの補助回路122の両端の電位で構成された。図4は、補助回路電流(ACC)402を示す。x軸は、数時間単位で与えられ、y軸は数ミリアンペア単位で与えられている。図4で分かるように、約0mAの電流平均値は、最初の1時間工程では2mAを超えない。
【0048】
図5は、昇圧型電力回路電流502および従来型電力回路電流504を示す。x軸は、数時間単位で与えられ、y軸は数ミリアンペア単位で与えられている。1時間の放電時点で、昇圧型電力回路電流502は、従来型電力回路電流504に対して23%高くなっている。これは、71:1のBPCC-CPCC:ACC比である。
【0049】
図6は、昇圧型電力回路電圧(BPCV)602および従来型電力回路電圧(CPCV)604を示す。x軸は、数時間単位で与えられ、y軸は数ミリアンペア単位で与えられている。1時間の放電時点で、昇圧電力回路電圧602が従来型電力回路電圧604に対して16.2%高くなっている。
【0050】
図7は、昇圧型電力回路電力(BPCP)702、従来型電力回路電力(CPCP)704、および補助回路電力(ACP)706を示す。x軸が数時間単位で与えられ、y軸が数ワット単位で与えられている。1時間の放電時点で、BPCP702は、CPCP704に対し25.8%高くなっている。これは、560:1のBPCP-CPC:ACP比である。
【0051】
特定の性質を具現化するように、または特定の方式で機能するように特別に「構成」されている本開示の構成要素の本明細書での記述が、意図した使用の記述とは対照的に構造的記述であることが分かる。より具体的には、本明細書における構成要素が構成されている方式へ触れることによって、その構成要素の既存の物理的状態が、このように、構成要素の構造上の特性の明確な記述と見なされるべきであることを示す。
【0052】
本発明を記述し、定義する目的で、「実質的に」と言う用語が、本明細書では、任意の数量的な比較、値、測定値、または他の表現に付随し得る固有の不確かさ程度を表すことが分かる。「実質的に」と言う用語は、本明細書ではまた、問題になっている本発明の対象の基本的機能の変更をもたらすことなく、数量的表現が表示基準とは異なり得る程度を表すのに使用される。
【0053】
本開示の発明の対象を詳細に、またその具体的な実施形態に触れて、説明してきたが、本発明の説明が伴う図面のそれぞれに特定の要素が示されている場合でも、これらの細目が本明細書に記載の様々な実施形態の不可欠な構成要素である要素を指すことを意味していると、本明細書に開示の様々な細目が見なされるべきではないことが分かる。また、添付の特許請求の範囲で定義された実施形態を含むがそれに限定されるわけではない、本開示の範囲を逸脱しない限り、修正形態および変形形態があり得ることが明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様が本明細書では好ましいまたは特別な利点と見なされているが、本開示がこれらの態様に必ずしも限定されるわけではない可能性が受け入れられている。
【0054】
以下の請求項のうちの1つ以上では、「この場合(wherein)」と言う用語を移行句として使用していることが分かる。本発明を定義する目的で、この用語が、構造体の一連の特性の記述を導入するのに使用される制約のない移行句として請求項に導入され、より一般的に使用される制約のないプリアンブル用語「備える(comprising)」と同じように解釈されるべきであることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】