(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】TREG細胞を誘導する酵母由来多糖体の構造及び機能特性
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20220106BHJP
A61K 31/736 20060101ALI20220106BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220106BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220106BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20220106BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220106BHJP
【FI】
C08B37/00
A61K31/736
A61P37/02
A61K35/17 Z
A23L33/125
C12N5/0783 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521531
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(85)【翻訳文提出日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2019009422
(87)【国際公開番号】W WO2020080653
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123814
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519444052
【氏名又は名称】インスティチュート フォー ベーシック サイエンス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR BASIC SCIENCE
(71)【出願人】
【識別番号】506376458
【氏名又は名称】ポステック アカデミー-インダストリー ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】イン シンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】べルマ ラビ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャンホン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C086
4C087
4C090
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
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4C086AA01
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4C090BB52
4C090BC17
4C090BD50
4C090CA09
4C090DA22
(57)【要約】
本発明は、Treg細胞を誘導する酵母由来多糖体及びその用途に関し、詳しくは、マンナン(mannan)及びβ-グルカン(β-glucan)を含む多糖体、該多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用医薬組成物又は食品、前記多糖体を用いた調節T細胞の製造方法、該製造方法で製造された調節T細胞を有効成分として含有する細胞治療剤及びこれを用いた治療方法に関する。本発明に係る新規な多糖体は、低い容量でも、多糖体が持つβ-グルカン及びマンナン(mannan)構造によって免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)を生成し、これによって抗原特異的な調節T細胞(Treg細胞)の分化又は生成を誘導し、少ない副作用で目標とする免疫体系を調節することができる。したがって、MGCP及び前記多糖体によって誘導されたTreg細胞は、免疫疾患又は炎症性疾患の予防及び治療に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンナン(mannan)及びβ-グルカン(β-glucan)を含む多糖体。
【請求項2】
前記多糖体は、α-1,6-結合(α-1,6-linked)で連結されたマンノース骨格(mannose back bone)を有するマンナン(mannan)とβ-1,6-結合(β-1,6-linked)で結合されたグルコース骨格(glucose back bone)を有するβ-グルカン(β-glucan)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項3】
前記マンナン(mannan)は、
i)α-1,6-結合(α-1,6-linked)で連結されたマンノース骨格(mannose back bone);及び
ii)α-1,3-結合又はα-1,2-結合で連結された単一マンノース(single mannose)、2ユニットマンノース(two unit mannose)及び3ユニットマンノース(three unit mannose)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の側鎖を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項4】
前記多糖体は、単一マンノース側鎖20%~40%:2ユニットマンノース側鎖10%~30%:3ユニットマンノース側鎖20%~40%:側鎖のないマンノース骨格20%~40%の含量比で含むことを特徴とする、請求項3に記載の多糖体。
【請求項5】
前記多糖体は、分子量が4kDa~60kDaであることを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項6】
前記β-グルカン(β-glucan)は、
i)β-1,6-結合(β-1,6-linked)で結合されたグルコース骨格、及び
ii)β-1,3-結合(β-1,3-link)で連結された単一ユニットグルコース側鎖を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項7】
前記β-1,3-結合で連結された単一ユニットグルコース側鎖は、全グルコースに対してβ-1,3-結合グルコース側鎖が10%~30%の比率で含まれていることを特徴とする、請求項6に記載の多糖体。
【請求項8】
マンノース70%~90%:グルコース10%~30%の含量比で含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項9】
調節T細胞(Treg細胞)を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項10】
前記調節T細胞(Treg細胞)は、CD4+Foxp3+調節T細胞であることを特徴とする、請求項9に記載の多糖体。
【請求項11】
酵母(yeast)由来であることを特徴とする、請求項1に記載の多糖体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は改善用食品。
【請求項15】
次の段階を含む調節T細胞(Treg細胞)の製造方法:
(a)抗原提示細胞(antigen presenting cell)に請求項1~11のいずれか一項に記載の多糖体を処理して免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)を得る段階;及び
(b)前記免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)をCD4+ T細胞と共培養(co-incubation)して調節T細胞(Treg細胞)を誘導する段階。
【請求項16】
前記抗原提示細胞は、樹状細胞(Dendritic cell;DC)であることを特徴とする、請求項15に記載の調節T細胞(Treg細胞)の製造方法。
【請求項17】
前記抗原提示細胞は、パターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)を発現することを特徴とする、請求項15に記載の調節T細胞(Treg細胞)の製造方法。
【請求項18】
前記パターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)は、Dectin1、Dectin2、TLR2、TLR4及びTLR6からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項17に記載の調節T細胞(Treg細胞)の製造方法。
【請求項19】
前記免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)は、IL-10、Cd274、インドールアミン2,3-デオキシゲナーゼ(IDO)、Tgfβ1及びCox2からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を過発現することを特徴とする、請求項15に記載の調節T細胞(Treg細胞)の製造方法。
【請求項20】
請求項15~19のいずれか一項に記載の製造方法で製造された調節T細胞(Treg細胞)を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用細胞治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Treg細胞を誘導する酵母由来多糖体及びその用途に関し、詳しくは、マンナン(mannan)及びβ-グルカン(β-glucan)を含む多糖体、該多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用医薬組成物又は食品、前記多糖体を用いた調節T細胞の製造方法、該製造方法で製造された調節T細胞を有効成分として含有する細胞治療剤及びこれを投与する段階を含む免疫疾患又は炎症性疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類は免疫システムと絶えず相互作用する一連の微生物を保有している。共生微生物は宿主と共生関係を結び、消化、行動、免疫システムの成熟のような様々な過程で宿主と相互作用する(Cerf-Bensussan N,Gaboriau-Routhiau V.The immune system and the gut microbiota:friends or foes? Nat Rev Immunol 2010;10(10):735-44.)。同様に、かびは人体に存在し、宿主の免疫システムに影響を与える(Wheeler ML,Limon JJ,Underhill DM.Immunity to Commensal Fungi:Detente and Disease.Annu Rev Pathol 2017;12:359-85.)。先天性免疫細胞は、Toll様受容体(Toll-like receptors,TLRs)のようなパターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)を用いて、多糖類を含むかび細胞表面の様々な病原菌関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns,PAMPs)を検出する。信号を探知すれば先天性免疫細胞が遺伝子発現プロファイルを変更し、後天的免疫を調律するためにサイトカインのような免疫信号分子を生産する(Iliev ID,Leonardi I.Nat Rev Immunol 2017;17(10):635-46.,Underhill DM,Iliev ID.Nat Rev Immunol 2014;14(6):405-16.及びBrubaker SW,Bonham KS,Zanoni I,et al.Annu Rev Immunol 2015;33:257-90.)。
【0003】
このような共生微生物は、Tヘルパー17細胞(Th17)又は調節T細胞(Treg細胞)のようなCD4細胞の特定系統の発達と分化を調節する。Treg細胞は、免疫抑制機能を持つCD4+細胞の下位集合であり、転写因子Foxp3の発現を特徴とする。Treg細胞は、大きく生成位置によって、胸腺由来細胞(nTreg細胞)及び非胸腺細胞に分けられ、2次免疫器官においてCD4+ T naiveから誘導されたTreg細胞(iTreg又はpTreg)に分けられる。生体内Treg細胞の強化は、自己免疫及びアレルギー疾患のような様々な過免疫疾患を調節することができる。このようなTreg細胞生成の基本分子メカニズムは明らかにされたものがなく、様々な研究によれば、バクテリアが生産した代謝産物又は特定化学構造を有する細胞壁由来多糖体がTreg細胞の分化を促進できるとされている。例えば、ブチレートはクロストリディアによって結腸Treg細胞を誘導する主要効果分子として報告された(Furusawa et al.,Nature 504:446-450,2013)。B.fragilisの双性イオン多糖類である多糖類A(PSA)は、Treg細胞を生産するIL-10誘導に重要な効果免疫調節剤として確認された(Mazmanian et al.,Cell 122:107-118,2005;Ochoa-Reparaz et al.,The Journal of Immunology 185:4101-4108,2010)。また、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)由来細胞表面多糖体であるCSGGなどがTreg細胞を誘導できると報告されたことがある(Ravi Verma et al.,Science immunology 3(28)、eaat6975)。
【0004】
このような微生物又はその代謝産物などを患者の治療に用いるために、一部の患者は過剰活性化された免疫反応(すなわち、アレルギー又は自己免疫疾患)を抑制しなければならないが、一部の患者では免疫系を強化(すなわち、癌又はウイルス感染)させる必要がある。例えば、Th17-誘導プロバイオティクス菌であるビフィドバクテリウムをリウマチ性関節炎動物モデルに投与したとき、関節炎症状を悪化させた(Tze Guan Tan,113(50):E8141-E8150,2016)。したがって、有益な微生物の同定及びその作用因子のメカニズムを明らかにすることは治療学的に非常に重要である。
【0005】
一方、酵母由来多糖類は免疫調節機能を有しており、免疫システムを活性化又は抑制するための治療剤として用いられる(Tzianabos AO.Clin Microbiol Rev 2000;13(4):523-33.)β-グルカンは複雑で様々な構造を持つかび細胞壁の最も豊富な多糖類である(Camilli G,Tabouret G,Quintin J.The Complexity of Fungal beta-Glucan in Health and Disease:Effects on the Mononuclear Phagocyte System.)。それらは免疫反応に影響を及ぼす生物学的反応を調節するものと知られている(Silva VdO,de Moura NO,de Oliveira LJR,et al.Promising Effects of Beta-Glucans on Metabolism and on the Immune Responses:Review Article.)。
【0006】
一般に、研究者らはβ-グルカンを伝染病治療剤又は癌治療剤の補助剤として使用してきた(Sun B,Yu S,Zhao D,et al.Vaccine 2018;36(35):5226-34.及びNovak M,Vetvicka V.J Immunotoxicol 2008;5(1):47-57.)。一方、いくつかのの研究では、β-グルカンを抗炎症性機能を有するものと報告している(Dalonso N,Goldman GH,Gern RM.Appl Microbiol Biotechnol 2015;99(19):7893-906.及びLee KH,Park M,Ji KY,et al.Bacterial beta-(1,3)-glucan prevents DSS-induced IBD by restoring the reduced population of regulatory T cells.)。かびのβ-グルカンと類似に、かびのマンナンも免疫調節機能を担うものと報告された(Saijo S,Ikeda S,Yamabe K,et al.Dectin-2 recognition of alpha-mannans and induction of Th17 cell differentiation is essential for host defense against Candida albicans.)。しかしながら、免疫調節因子としての多糖類の役割が報告されているにもかかわらず、多糖類が免疫系を調節する正確な要素及びメカニズムは未だ明らかにされていない。特に、多糖体の構造と分子量によって個別に起きる免疫反応(免疫増強又は過敏免疫抑制反応)については正確に規定されたものがない。これを糾明することは、特定疾患から観察される、誤った免疫反応を所望の方向に再設計する上で非常に重要であり、疾患治療剤の開発にも適用可能である。
【0007】
ザイモサン(zymosan)は酵母の幽霊細胞(ghost cell,Saccharomyces cerevisiae)であり、大部分の酵母は類似の細胞壁成分を有している。酵母(イースト)細胞壁は、マンナンで構成された外膜と、β-1,6-グルカンで連結された複数層のβ-1,3-linkedグルカンの複雑な構造を持つグルカンで構成された内膜とに区分される2層構造を有する(Gow NAR,Latge JP,Munro CA.The Fungal Cell Wall:Structure,Biosynthesis,and Function.Microbiol Spectr 2017;5(3))。ザイモサンの多糖類は、主に、構造的にイーストと類似なβ-グルカンとマンナンで構成される。その他多くの研究でかび多糖類の免疫システムへの役割を研究するためにザイモサンを活用したが、このような研究結果は論難の余地がある。一部の研究によれば、ザイモサンが免疫システムを活性化させて炎症性疾患を悪化させることが知られており(Sanguedolce MV,Capo C,Bongrand P,et al.Zymosan-stimulated tumor necrosis factor-alpha production by human monocytes及びGantner BN,Simmons RM,Canavera SJ,et al.J Exp Med 2003;197(9):1107-17)、自己免疫疾患を緩和させるために抗原特異的T細胞反応を抑制するIL-10生成免疫寛容性抗原提示細胞を誘導することによって免疫学的に耐性を誘導できることを証明する他の研究もある(Karumuthil-Melethil S,et al.Diabetes 2015;64(4):1341-57.及びDillon S,Agrawal S,Banerjee K,et al.J Clin Invest 2006;116(4):916-28.)。
【0008】
このような技術的背景下で、本発明者らは酵母由来の多糖体において免疫調節機能を有する正確な要素及びメカニズムを明らかにし、これにより、低い容量でも効率的にTregの分化又は生成を誘導できる物質を見出すために鋭意努力した結果、酵母細胞壁から新規な多糖体を精製し、MGCP(mannan/beta-glucan containing polysaccharides)と命名した。また。in vitro及びin vivoで前記MGCPによってTreg細胞の誘導が可能であり、MGCPによるTreg細胞の誘導にβ-1,6-グルカンが必須であることを確認し、MGCP又はMGCPによって誘導されたTreg細胞の投与は大膓炎を抑制できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本背景技術の部分に記載された前記情報は、単に本発明の背景に関する理解を向上させるためのものであり、したがって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に既に知られた先行技術を形成する情報を含まなくてもよい。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、マンナン(mannan)及びβ-グルカン(β-glucan)を含む新規な多糖体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防、治療用医薬組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防、改善用食品を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記多糖体を有効成分として含有する組成物を投与することを含む免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための前記多糖体を有効成分として含有する組成物の用途を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記多糖体を用いた調節T細胞(Treg細胞)の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、前記方法で製造された調節T細胞(Treg細胞)を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防、治療又は改善用細胞治療剤を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、前記細胞治療剤を投与することを含む免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための前記細胞治療剤の用途を提供することにある。
【0020】
前記目的を達成するために、本発明は、マンナン(mannan)及びβ-グルカン(β-glucan)を含む多糖体を提供する。
【0021】
本発明はまた、多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物を提供する。
【0022】
本発明はまた、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防、治療用医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明はまた、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防、改善用食品を提供する。
【0024】
本発明はまた、前記多糖体を有効成分として含有する組成物を投与することを含む免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための前記多糖体を有効成分として含有する組成物の用途を提供する。
【0026】
本発明はまた、抗原提示細胞(antigen presenting cell)に前記多糖体を処理して免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)を得る段階;及び前記免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)をCD4+ T細胞と共培養(co-incubation)して調節T細胞(Treg細胞)を誘導する段階を含む、調節T細胞(Treg細胞)の製造方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、前記方法で製造された調節T細胞(Treg細胞)を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防、治療又は改善用細胞治療剤を提供する。
【0028】
本発明はまた、前記細胞治療剤を投与することを含む免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0029】
本発明はまた、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための前記細胞治療剤の用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1は、ザイモサン由来の多糖体成分がin vitroでTreg細胞の生成に差別的な影響を及ぼすことに関するものである。脾臓CD11c+ DCを、標識された容量のザイモサンで刺激させた後、未分化CD4T細胞(naive CD4+ T cell)と共に培養した。流動細胞計測プロット(Flow cytometry plots)は、3回の独立実験を代表する。全てのグラフはmean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【0031】
図1Aは、様々な濃度のザイモサンによって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0032】
標識されたザイモサンの量を、標識された切断酵素で分解した後、脾臓CD11c+ DCはnaive CD4 T細胞の添加前に切断されたザイモサンでプライミングした(
図1B、
図1C)。
【0033】
図1Bは、β-1,3-グルカナーゼ(β-1,3-glucanase)処理されたザイモサンによって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0034】
図1Cは、標識された酵素と切断されたザイモサンによるCD4+Foxp3+ T細胞の誘導を示すものである。
【0035】
図2は、ザイモサンの多糖体の免疫反応に対する役割に関するものである。
【0036】
脾臓CD11c+ DCは、異なる容量のザイモサンで刺激された後、Th1及びTh17細胞方向への準最適の(sub-optimal)非対称(skewing)条件(condition)下でnaive CD4 T細胞と共に培養された。全てのグラフはmean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【0037】
図2Aは、Th1及びTh17細胞方向への最適の(optimal)非対称(skewing)条件下でT-bet又はRORγtの流動細胞計測プロット及びMFIを示すものである。
【0038】
脾臓DCを刺激する前に同種の切断酵素を処理し、標識された容量のザイモサンから特定多糖類を除去した。変形されたザイモサンをTh1又はTh17走行環境においてnaive CD4 T細胞と共に培養したDCに処理した。
【0039】
図2Bは、β-1,3-グルカン除去されたザイモサンによるT-bet又はRORγtのMFIを示すものである。
【0040】
図2Cは、マンノシダーゼ又はβ-1,6-グルカナーゼ処理されたザイモサンによるT-bet又はRORγtのMFIを示すものである。
【0041】
図3は、MGCPの化学的組成及び機能的特性に関するものである。
【0042】
【0043】
naive CD4 T細胞と共に培養される前に、脾臓DCは標識された多糖類によって刺激された。
【0044】
図3Bは、マンナン又はカードラン(β-1,3-グルカン)によって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0045】
図3Cは、プスツラン(線形β-1,6-グルカン)によって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0046】
図3Dは、様々な濃度のD-(+)マンノースによって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0047】
図3Eは、非損傷イースト細胞壁又はβ-1,3-グルカンが除去されたイースト細胞壁から精製されたMGCPによって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0048】
全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【0049】
図4は、MGCPの組成を分析した結果を示す表である。
【0050】
図5は、MGCPによるTreg細胞の分化においてβ-1,6-グルカンの役割を示すものである。
【0051】
図5Aは、MGCPの陽性子NMRスペクトルを示すものである。
【0052】
【0053】
図5Cは、MGCPのβ-1,6-グルカン部分の化学的構造を示すものである。
【0054】
図1と同様に、脾臓CD11c+ DCはnaive CD4 T細胞と培養される前に、標識された分子で処理した(
図5D及び
図5E)。
【0055】
図5Dは、MGCPによって誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0056】
図5Eは、標識された酵素で切断されたMGCPによるTreg細胞の誘導を示すものである。
【0057】
流動細胞計測プロットは、類似の結果を有する3回の独立実験を代表する。全てのグラフプロットは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001(スチューデントtテスト)。
【0058】
図6は、HPLCを用いて全体MGCPを分析した結果である。HPLC分析条件は、TSK G-5000PWXLサイズ排除カラムを使用し、溶離剤はアンモニウム重炭酸塩(ammonium bicarbonate)50mM、流速は0.8ml/minである。分析結果は示差屈折率検出器(refractive index detector)と206nm波長のUV検出器を用いて確認した。分子量確認のために用いたstandard物質は、dextran standardを使用し、それに関する情報は表2に示す。A、B、Cは、HPLC分析結果に基づいて分画した3つの分画を示す。
【0059】
図7は、
図6におけるMGCPのA、B、C分画をHPLC分析した結果である。分析条件は
図6と同一にした。分子量確認のために使用したstandard物質はdextran standardを使用し、それに関する情報は表2に示す。
【0060】
図8は、MGCPで誘導されたTreg細胞の炎症性免疫反応の抑制に関するものである(in vivo)。iTreg細胞はin vitroにおいて脾臓DCと類遺伝子形に(congenically)標識されたnaive CD4 T細胞(CD45.1+CD4+Foxp3EGFP-CD44loCD62Lhi)と脾臓DCの共同培養によって生成された。iTreg細胞(CD45.1+CD4+Foxp3EGFP+)は、選別されたFACsであり、Rag1-/-マウスに米接触CD4 T細胞(CD45.1-CD4+Foxp3Thy1.1CD44loCD62Lhi)と共に養子移入された。マウスをエンドポイント(endpoint)で分析した。各点は個々のマウスを示し、全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
図8Dは、大膓炎の組織病理学スコアを示すものである。
【0065】
図8Eは、ドナー米接触CD4 T細胞(CD45.1-)におけるIFN-γ生産を示すものである。
【0066】
図9は、in vivoにおいてMGCPの補充がTreg細胞の新規な生成を促進することを示すものである。マウス(CD45.1-)を2週間毎日mock又は200μgのMGCPで処理した後、類遺伝子形に(congenically)標識されたnaive CD4 T細胞(CD45.1+CD4+Foxp3EGFP-CD44loCD62Lhi)を取り込んだ。MGCPは、細胞の伝達後に1週間さらに投与された。CD4 T細胞を受容者マウスの結腸粘膜固有層(colonic lamina propria)で分析した。各点は個々のマウスを示す。流動細胞計測プロットは独立実験を代表する。全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である(スチューデントtテスト)。
【0067】
図9Aは、供与者細胞由来のTreg細胞(CD45.1+CD4+Foxp3EGFP+)の頻度を示すものである。
【0068】
図9Bは、供与者細胞(CD45.1+)由来のCD4+Foxp3EGFP-及びCD4+Foxp3EGFP+ CD4 T細胞におけるCTLA-4のMFIを示すものである。
【0069】
図9Cは、受容者由来細胞(CD45.1-CD4+Foxp3EGFP+)のTreg細胞頻度を示すものである。
【0070】
図9Dは、ホスト(CD45.1-)由来CD4+Foxp3-細胞及びCD4+Foxp3+細胞においてCTLA-4の発現を示すものである。
【0071】
図9Eは、結腸粘膜固有層(colonic lamina propria)において受容者由来のTreg細胞の数を示すものである。
【0072】
図9Fは、ホスト由来のTreg細胞(CD45.1-CD4+Foxp3EGFP+Helios-)において末梢Treg細胞(peripheral Treg cells)の頻度を示すものである。
【0073】
図9Gは、結腸Treg細胞(CD4+Foxp3EGFP+)からIL-10の生産を示すものである。
【0074】
図9Hは、エフェクターCD4 T細胞(CD4+Foxp3EGFP-)においてIFN-γ及びIL-17Aの量を示すものである。
【0075】
図10は、MGCPの補充が小腸においてTreg細胞を誘導し、リンパ節組織では誘導しないことを示すものである。
図9と同じ方法で、MGCP(200μg)を毎日2週間投与した後、類遺伝子形に(congenically)標識されたnaive CD4 T細胞を取り込んだ。MGCPの補充は1週間さらに継続した。小腸の粘膜固有層のCD4 T細胞を評価した(A~H)。各点は個別マウスを代表する。流動細胞計測プロットは、類似結果を有する3回の独立実験を代表する。全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である(スチューデントtテスト)。
【0076】
図10Aは、ドナー細胞からのCD4+Foxp3+ T細胞への分化を示すものである。
【0077】
図10Bは、ドナー由来CD4 T細胞からのCTLA-4発現を示すものである。
【0078】
図10Cは、受容体細胞においてCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0079】
図10Dは、ホスト由来CD4 T細胞においてCTLA-4のMFIを示すものである。
【0080】
図10Eは、マウス結腸においてCD4+Foxp3+ T細胞の数を示すものである。
【0081】
図10Fは、受容者由来のCD4+Foxp3+ T細胞において誘導性Treg細胞の比率を示すものである。
【0082】
図10Gは、CD4+Foxp3+ T細胞においてIL-10の生産を示すものである。
【0083】
図10Hは、エフェクターCD4 T細胞(CD4+Foxp3-)においてIFN-γ及びIL-17Aの生産を示すものである。
【0084】
図10Iは、mLNにおいて受容者及び供与者細胞に由来するCD4+Foxp3+ T細胞を示すものである。
【0085】
図10Jは、脾臓において受容者及び供与者細胞に由来するCD4+Foxp3+ T細胞を示すものである。
【0086】
図11は、MGCPの投与が抗原-反応性Treg細胞を誘導し、実験性大膓炎を緩和することを示すものである。CBirマウスから分離したNaive CD4 T cells(CD4+Foxp3EGFP-CD44loCD62Lhi)を、Rag1欠乏マウスに養子移入した。全実験期間にわたって細胞養子移入の前日から隔日でDW(mock)又は200μgのMGCPを補充した。受容体はエンドポイントで分析された。各点は個々のマウスを示す。データは3回の独立実験を代表する。全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である(スチューデントtテスト)。
【0087】
【0088】
【0089】
図11Cは、初期体重で正常の結腸長さを示すものである。
【0090】
図11Dは、H&E染色された結腸を示す写真である。
【0091】
図11Eは、大膓炎の組織病理学スコアを示すものである。
【0092】
図11Fは、体重減少初期段階で結腸粘膜固有層(colonic lamina propria)からのCD4+Foxp3+ T細胞誘導を分析したものである。
【0093】
図11Gは、実験のエンドポイントにおいて結腸CD4 T細胞(CD4+Foxp3EGFP-)からIFN-γの生産を示すものである。
【0094】
図12は、大膓炎状態下の免疫に対するMGCP投与の影響を示すものである。
【0095】
図12Aは、体重減少前、mock及びMGCP投与及びCBir naive CD4 T細胞授与されたRag1欠乏マウスの結腸CD4+Foxp3+ T細胞におけるCD103及びCTLA-4の発現量を示すものである。
【0096】
図12Bは、実験終結段階で結腸粘膜固有層に由来したCD4 T細胞のIL-17Aの生産を示すものである。
【0097】
全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である(スチューデントtテスト)。
【0098】
図13は、MGCPが調節表現型に対するDCの転写体形態(transcriptomic configuration)を調節することを示すものである。DCサブセット(MHCII+CD11c+)は、CD103及びCD11bの発現によって小腸から分類されたFACsであり、
図1と同じ実験手順によってMGCPによるTreg細胞誘導能力を試験した。データは、類似の結果を有する3回の独立実験を代表し、全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【0099】
図13Aは、各DCサブセットにおいてMGCP媒介のCD4+Foxp3+ T細胞の誘導のデータを示すものである。
【0100】
GFマウス(n=6)にmock又はMGCPを2週間投与した転写体は、結腸CD11c+ DCから精製した。
【0101】
図13Bは、mock及びMGCP投与されたGFマウス結腸DCの免疫抑制関連マーカーを示すものである。
【0102】
図13Cは、結腸DCにおいて免疫寛容性DCマーカーの発現を示すものである。
【0103】
Cox2は、MGCP処理前脾臓DCにおいて抑制され、Naive CD4 T細胞はCox2選択的阻害剤であるセレコキシブ(Celecoxib)の存在下に前記DCと共に72時間培養された。
【0104】
図13Dは、CD4+Foxp3+ T細胞の流動細胞計測プロットを示すものである。
【0105】
図13Eは、mock又はMGCP処理されたセレコキシブの存在/不在下に誘導されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0106】
図14は、MGCPによるTreg細胞の生成において、腸大食細胞の影響に関するものである。精製された場内大食細胞(MHCII+CD11c+CD11b+F4/80+CD103-)FACsは、naive CD4 T細胞と共に培養される前にMGCPで刺激された。流動細胞計測プロットは、類似の結果を有する2回の独立的実験を代表するものである。
【0107】
図15は、様々なPRRのMGCPで誘導されたTreg細胞の生成との関連性を示すものである。
図1と類似の方法により、特定の先天的免疫受容体欠乏マウスから精製された脾臓DCをMGCPで処理した。Naive CD4 T細胞はMGCP刺激されたDCと共に培養された。
【0108】
図15Aは、各受容体欠乏DCにおいてMGCP又はmockを処理した場合にCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0109】
図15Bは、MyD88信号伝達体系欠乏DCにおいてMGCP又はmockを処理した場合にCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0110】
図15Cは、生成されたCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
図15Cでは、MGCPを脾臓DCに処理する前に特定CLRを拮抗剤(antagonist)で遮断した。残っている拮抗剤及びMGCPを洗い落とした後、DCはNaive CD4 T細胞と共に培養された。
【0111】
全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である(スチューデントtテスト)。
【0112】
図16は、Dectin1がMGCPによるTreg細胞の誘導に及ぼす影響に関するものである。Dectin1豊富/欠乏マウスの腸間膜リンパ節CD11c+DCをMGCPで8時間刺激した。Dectin1損傷/非損傷したマウスに200μgのMGCPを毎日2週間補充し、類遺伝子形に(congenically)標識されたOT-II naive CD4 T細胞(Thy1.1+Vα2+CD4+Foxp3EGFP-CD44loCD62Lhi)を授与した。受容者は細胞を移す1日前から始めてOVAタンパク質(20mg)を隔日で投与し、同時にMGCPは1週間毎日さらに投与した。
【0113】
図16Aは、mock又はMGCPで処理されたDCにおいてCox2転写体の発現を示すものである。
【0114】
図16Bは、小腸の粘膜固有層(lamina propria)において供与者OT-II CD4 T細胞由来のTreg細胞の流動細胞計測プロットを示すものである。
【0115】
図16Cは、小腸の粘膜固有層(lamina propria)において供与者OT-II CD4 T細胞由来のTreg細胞の頻度を示すものである。
【0116】
図16Dは、小腸において受容者細胞から分化した誘導性Treg細胞比率の流動細胞計測プロットを示すものである。
【0117】
図16Eは、小腸において受容者細胞から分化した誘導性Treg細胞比率の頻度を示すものである。
【0118】
データは、類似の結果を有する3回の独立実験を代表し、全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【0119】
図17は、Dectin1がMGCPを認識し、Treg細胞の生成を誘導することを示すものである。Dectin1豊富/欠乏マウスの腸間膜リンパ節CD11c+DCを8時間刺激させた。
図17B~
図15Dの場合、OT-II naive CD4 T細胞(Thy1.1+Vα2+CD4+Foxp3EGFP-CD44loCD62Lhi)を授与する前に、Dectin1損傷/非損傷マウスに2週間毎日200μgのMGCPを補充した。OVAタンパク質(20mg/マウス)を隔日で投与しながら1週間MGCPをさらに投与した。
【0120】
図17Aは、標識された免疫寛容性DC関連転写体の発現レベルを示すものである。
【0121】
図17Bは、小腸において受容者由来のCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0122】
図17Cは、小腸において受容者由来のCD4+Foxp3+ T細胞の数を示すものである。
【0123】
図17Dは、腸間膜リンパ節において供与者由来のOVA-反応性CD4+Foxp3+ T細胞の頻度を示すものである。
【0124】
各点は個々のマウスを示す。データは、類似の結果の3回の独立実験を代表する。全てのバーグラフは、mean±SEM値である。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001である(スチューデントtテスト)。
【発明を実施するための形態】
【0125】
別に断りのない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0126】
多くの研究において、ザイモサンは炎症前に免疫反応を刺激することができ、いくつかの結果は、免疫減少の役割を担うことが報告された。しかし、免疫反応を決定する酵母の正確な多糖体の構造ついては依然として知られたところがない。
【0127】
本発明の一実施例において、ザイモサンの実験データは、多い量(500μg/mL)がTreg細胞の分化を促進させることを示したが、低い容量(50μg/mL)ではむしろRORγtの発現を促進し、Tregの分化を促進できないことを示した。また、多糖体の構成のうち、β-1,6-グルカン及びマンナンがTreg細胞の分化を促進し、β-1,3-グルカンはTreg細胞の分化を抑制することを確認した。
【0128】
本発明の他の実施例において、酵母の細胞壁から、本発明者が、上記の実施例から明らかにしたTreg細胞誘導成分であるマンナン及びβ-グルカンを含有する新規な多糖体を精製し、これをMGCP(Mannan/β-Glucan Containing Polysaccharides)と命名し、in vitro及びin vivoにおいて前記多糖体の低い濃度の処理又は投与によっても効果的にTreg細胞が誘導され得ることを確認した。これによって、酵母細胞壁由来の新規な多糖体の構成及び構造によるTreg細胞分化メカニズムを受容体、遺伝子転写体形態変化及びサイトカイン発現レベルまで確立し、前記多糖体又はこれによって誘導されたTreg細胞の投与はin vivoにおいて効果的に大膓炎を抑制できることを確認した。
【0129】
したがって、本発明は、一観点において、マンナン(mannan)及びβ-グルカン(β-glucan)を含む多糖体に関する。
【0130】
本発明において、前記多糖体は、α-1,6-結合(α-1,6-linked mannose)で連結されたマンノース骨格(back bone)を有するマンナン(mannan)と、β-1,6-結合(β-1,6-linked)で結合されたグルコース骨格(back bone)を有すβ-グルカン(β-glucan)とが結合していることを特徴とし得る。
【0131】
本発明の一実施例において、酵母由来の新規な多糖体(MGCP)を構造的/機能的に分析した結果、マンナン及びβ-グルカンの具体的な結合構造を確認し、β-1,6-グルカンバックボーン及びマンナンがTreg細胞の分化を促進し、β-1,3-グルカンはTreg細胞の分化を抑制することを確認した。
【0132】
本発明の一実施例において、多糖体は、マンノース(80.6%):グルコース(14.9%):ガラクトース(4.5%)の組成比を有することを確認した。マンナンユニットの詳細な構造は、α-1,6-結合マンノースバックボーンを有していることが確認され、α-1,2-結合又はα-1,3-結合で連結された単一ユニットマンノース(30%)、2ユニットマンノース(16.8%)又は3ユニットマンノース(28.4%)を側鎖(side chain)としてそれぞれ連結されていること(側鎖のないマンノース(24.8%))を確認した(
図5B)。
【0133】
本発明において、前記多糖体は、マンノース(mannose)、グルコース(glucose)及びガラクトース(galactose)の含量比がマンノース(80.5%):グルコース(15.0%):ガラクトース(4.5%)の組成を有することを特徴とし、具体的にマンノース(80.6%):グルコース(14.9%):ガラクトース(4.5%)、より具体的にマンノース(79.4%):グルコース(14.7%):ガラクトース(4.4%)の組成を有することができるが、これに限定されない。
【0134】
したがって、本発明において、前記多糖体は、マンノース及びグルコースの含量比がマンノース70%~90%:グルコース10%~30%であることを特徴とし、場合によって、0%超過10%未満のガラクトースをさらに含むことができる。
【0135】
本発明において、前記マンナン(mannan)は、i)α-1,6-結合(α-1,6-linked mannose)で連結されたマンノース骨格(back bone)及びii)α-1,2-結合又はα-1,3-結合で連結された単一マンノース(single mannose)、2ユニットマンノース(two unit mannose)及び3ユニットマンノース(three unit mannose)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を側鎖として含むこと特徴とし得る。具体的に、前記マンナンは、i)α-1,6-結合(α-1,6-linked mannose)で連結されたマンノース骨格(back bone)及びii)α-1,2-結合又はα-1,3-結合で連結された単一マンノース(single mannose)、2ユニットマンノース(two unit mannose)及び3ユニットマンノース(three unit mannose)を側鎖として含むことができる。
【0136】
本発明において、前記多糖体は、単一マンノース側鎖20%~40%:2ユニットマンノース側鎖10%~30%:3ユニットマンノース側鎖20%~40%:側鎖のないマンノース骨格20%~40%の含量比で含むことを特徴とし得る。
【0137】
具体的に、前記多糖体のマンナンは、単一ユニットマンノース30%:2ユニットマンノース17.0%:3ユニットマンノース28.5%でよく、具体的に、単一ユニットマンノース30%:2ユニットマンノース16.8%:3ユニットマンノース28.4%、より具体的に、単一ユニットマンノース25.7%:2ユニットマンノース22.6%:3ユニットマンノース27.0%でよいが、これに限定されない。
【0138】
本発明の一実施例において、前記マンナンは、単一マンノース(30%):2ユニットマンノース(16.8%):3ユニットマンノース(28.4%)の組成で含んでいることを確認した。
【0139】
また、本発明において、前記β-グルカン(β-glucan)は、β-1,6-結合(β-1,6-linked)で結合されたグルコース骨格及びβ-1,3-結合(β-1,3-link)で連結された単一ユニットグルコースを側鎖として含むことを特徴とし得る。好ましくは、全グルコースに対してβ-1,3-結合グルコース側鎖の含量比は20.0%、具体的に18.0%でよく、これに限定されない。本発明の一実施例において、全体グルコースに対して18%のβ-1,3-結合グルコース側鎖を含むことが確認された。
【0140】
本発明において、多糖体の構成のうち、β-1,6-グルカン及びマンナンがTreg細胞の分化を促進し、β-1,3-グルカンはTreg細胞の分化を抑制することを確認した。したがって、前記β-グルカンは、β-1,3-結合グルコースが除去され、β-1,6-結合グルコースだけで構成されたことを特徴とし得る。
【0141】
本発明の一実施例において、酵母由来の新規な多糖体(MGCP)の分子量を確認した結果、大きく、2つのピークを確認することができ、多糖体の分子量が約4kDa~60kDaであることを確認した。全体多糖体を大きく3分画に分けて確認した結果もまた、約3.5kDa~60kDaの分子量を有することを確認した。また、多糖体の分子量が小さくなるほど、好ましくは20kDa以下である場合においてTreg誘導活性に優れ、100kDa以上の大きい分子量を有する場合にはTreg誘導活性に劣ることが見られた。
【0142】
したがって、本発明において、前記多糖体は、分子量が3.5kDa~60kDaであることを特徴とし、好ましくは、4kDa~20kDaである分子量を有することを特徴とし得る。
【0143】
本発明において、前記多糖体は、調節T細胞(Treg)を誘導することを特徴とし、前記調節T細胞はCD4+Foxp3+調節T細胞であることが好ましいが、これに限定されない。
【0144】
本発明の用語“調節T細胞(Treg)”とは、分化したT細胞の一種類であり、免疫作用を抑制する役割を担って自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾病の発病を抑制する。調節T細胞は一般に、IL-10などの免疫抑制性サイトカインを発現し、エフェクターT細胞の誘導と拡散を抑制する。
【0145】
本発明の用語“誘導”とは、目的とする細胞の分化又は生成を誘導することを意味し、本発明では未接触T細胞などから調節T細胞に分化させることを意味する。
【0146】
本発明において“誘導”とは、“分化”、“生成”又は“生産”などと同じ意味で使われてよい。
【0147】
本発明における用語“未接触T細胞(naive T cell)”とは、骨髄におけるprogenitor T cellが胸腺において成熟した分化前のT細胞を意味する。未接触T細胞は、IL-2、IL-4、TGF-βなどの刺激を受けてエフェクターT細胞、ヘルパーT細胞(Th)、調節T細胞(Treg)などに分化可能である。
【0148】
本発明において、前記調節T細胞の誘導は、DC(Dendritic Cell)によって媒介されることを特徴とし、前記DCはパターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)を発現することを特徴とし得る。前記パターン認識受容体は、好ましくは、Dectin1、Dectin2、TLR2、TLR4及びTLR6からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であり得るが、これに限定されない。
【0149】
本発明において、前記DCによって媒介は前記多糖体の処理で刺激され、免疫寛容性DCに転写体地形が変形されてTreg細胞の誘導を媒介することを特徴とし、好ましくは、前記転写体地形の変形は、IL-10、Cd274、インドールアミン2,3-デオキシゲナーゼ(IDO)、Tgfβ1及びCox2(シクロオキシゲナーゼコーディング遺伝子、Ptgs2)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を過発現させるものでよいが、これに限定されない。
【0150】
また、本発明において、前記多糖体は、Tregからヘリオス(Helios)、IL-10及びCTLA-4の発現を増加させることを特徴とし、エフェクターT細胞のIFN-γを減少させることを特徴とし得る。
【0151】
本発明の一実施例において、新規な多糖体は酵母抽出物に由来し、具体的には、酵母の細胞壁から分離された。β-1,3-グルカンが除去された酵母細胞壁に由来したマンナン/β-グルカン含有多糖体(MGCP)の場合、増加したTreg細胞誘導能を示した。
【0152】
本発明において、前記多糖体は酵母(yeast)由来であることを特徴とし、好ましくは酵母細胞壁由来であり、より好ましくは、β-1,3-グルカンが除去された酵母の細胞壁由来であることを特徴とし得る。
【0153】
本発明において、前記多糖体は、抗炎症機能又は免疫機能調節活性を有することが好ましく、より好ましくは免疫抑制活性のものであるが、これに限定されない。例えば、腸出血などの腸内傷がある人の場合、プロバイオティックスを誤って服用すれば副作用が発生することがあるが、その場合、多糖体を投与して治療効果を奏することができる。
【0154】
本発明は、他の観点において、前記多糖体を有効成分として含有する免疫調節用組成物に関する。
【0155】
本発明における用語“免疫調節”とは、血液内免疫アンバランスを解消し、免疫恒常性を維持することを意味する。免疫恒常性の維持は、免疫を抑制させる免疫寛容(tolerance)と免疫を増進する免疫反応(immunity)間のバランスが取れている状態を指し、このような状態の維持は、免疫疾患治療、特に自己免疫疾患の治療において必須の要素である。
【0156】
前記免疫調節用組成物は、免疫活性の調節及び免疫疾患の予防、改善又は治療のための目的で医薬組成物又は健康機能食品などに用いることができ、このとき、使用量及び使用形態は目的によって適切に調節することができる。
【0157】
本発明の一実施例において、MGCPの経口投与は、結腸Treg細胞の誘導を増加させることが確認された。これに加えて、MGCPの経口投与はTreg細胞のCTLA-4及びIL-10の発現を有意に増加させ、エフェクターT細胞のIFN-γ発現を顕著に減少させた。
【0158】
本発明の他の実施例において、MGCPを給与した微生物フラジェリン反応性CD4 T細胞を保有したマウスにおいて体重減少及び結腸長さの短縮を顕著に減少させ、上皮細胞の増殖及びリンパ球の結腸内侵入も効果的に抑制した。組織病理学スコアリング結果もmock投与マウスに比べて顕著に緩和された結果を示した。
【0159】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0160】
本発明の用語“免疫疾患”とは、免疫体系の異常が直接な原因となって発病し得る疾患を意味し、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛(fibromyalgia)、腱鞘炎、1型糖尿病、強皮症(scleroderma)、退行性神経疾患、2型糖尿病、珪肺症、粥状動脈硬化症、白斑症、結膜炎及び自己免疫疾患からなる群から選ばれるいずれか一つに該当し得るが、これに制限されない。
【0161】
本発明における用語“自己免疫疾患”とは、生体内の免疫細胞が外部侵入抗原ではなく生体自体の組織又は細胞を抗原として認識して攻撃して発生する疾患であり、リウマチ性関節炎、全身性強皮症(scleroderma)、アトピー皮膚炎、乾癬、喘息、ギランバレー症候群(Guillian-Barre syndrome)、重症筋無力症、皮膚筋炎(dermatomyositis)、多発性筋炎(polymyositis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、自己免疫性脳脊髓炎、結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodosa)、側頭動脈炎(temporal arteritis)、小児期糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ口内炎、クローン病及びベーチェット病からなる群から選ばれるいずれか一つに該当し得るが、これに制限されない。
【0162】
本発明の用語“炎症性疾患”は、炎症を主病変とする疾病を総称するものであり、むくみ、アレルギー、喘息、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、片道炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大膓炎、痔疾、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ性熱、ループス、線維筋痛(fibromyalgia)、乾癬関節炎、骨関節炎、リウマチ性関節炎、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(sjogren’s syndrome)、重症筋無力症及び多発性硬化症から構成される群から選ばれるいずれか一つに該当し得るが、これに制限されない。
【0163】
本発明で使われる用語“予防”とは、本発明に係る医薬組成物の投与によって免疫疾患又は炎症性疾患を抑制させたり或いは発病を遅延させる全ての行為を意味する。
【0164】
本発明で使われる用語“治療”とは、本発明に係る医薬組成物の投与によって免疫疾患又は炎症性疾患に対する症状が好転したり或いは有益に変更される全ての行為を意味する。
【0165】
本発明の医薬組成物は、その有効成分の上述した免疫増進効果、又は免疫過剰抑制効果を用いて様々な免疫疾患に対する予防又は治療及び抗炎症効果を奏する。
【0166】
前記医薬組成物は、前記多糖体を含有する他にも、一般に医薬組成物に用いられる適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0167】
前記組成物に含まれてよい担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などがある。前記組成物を製剤化する場合には、一般に用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。
【0168】
本発明に係る医薬組成物は、通常の方法によって様々な形態に剤形化して使用可能である。適合な剤形には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、硬質又は軟質のカプセル剤、溶液剤、懸濁剤又は乳化液剤、注射剤、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液などがあるが、これに限定されない。
【0169】
本発明に係る医薬組成物は、薬学的に不活性である有機又は無機担体を用いて適合な剤形に製造できる。すなわち、剤形が錠剤、コーティングされた錠剤、糖衣錠及び硬質カプセル剤である場合、ラクトース、スクロース、澱粉又はその誘導体、タルク、カルシウムカーボネート、ゼラチン、ステアリン酸又はその塩を含むことができる。また、剤形が軟質カプセル剤である場合には、植物性オイル、ワックス、脂肪、半固体及び液体のポリオールを含むことができる。また、剤形が溶液又はシロップの形態である場合、水、ポリオール、グリセロール、及び植物性オイルなどを含むことができる。
【0170】
本発明に係る医薬組成物は、前記の担体の他にも、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、溶解剤、甘味剤、着色剤、浸透圧調節剤、酸化防止剤などをさらに含むことができる。
【0171】
本発明に係る医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、“薬学的に有効な量”は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定可能である。本発明に係る医薬組成物は、個別治療剤として投与したり、或いは他の治療剤と併用して投与可能であり、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与でき、また、1回又は多回投与できる。上記の要素を全て考慮し、副作用無しで最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者にとって容易に決定可能である。
【0172】
本発明の組成物は、免疫、特に自己免疫又はアレルギー関連タンパク質と共に投与可能である。具体的なタンパク質には、自己免疫疾患に関与する自己抗原、例えば、リウマチ関節炎は、熱ショックタンパク質(heat shock proteins;HSPs)、シトルリン化フィラグリン(citrullinated filaggrin)、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(glucose-6-phosphate isomerase)、p205、コラーゲンなどを含むことができ、1型糖尿病は、インスリン(insulin)、亜鉛トランスポーター8タンパク質(Zinc transporter 8 protein;ZnT8)、膵臓及び十二指腸のホメオボックス1(Pancreatic and duodenal homeobox 1;PDX1)、クロモグラニンA(Chromogranin A;CHGA)、膵島アミロイドポリペプチド(Islet amyloid polypeptide;IAPP)を含むことができ、重症筋無力症に関連した自己抗原であるアセチルコリン受容体を含むことができる。また、このような自己免疫疾患に知られたあらゆる種類の自己抗原だけでなく、食品アレルギーを起こすものと知られている様々なアレルギー誘導物質であるピーナッツ、牛乳、卵、ナッツ類(Tree nuts)、豆、海老などの甲殻類、魚由来物質なども含むことができる。
【0173】
本発明の医薬組成物は、個体に様々な経路で投与可能である。投与の方式は、例えば、皮下、静脈、筋肉又は子宮内硬膜又は脳血管内注射によって投与できる。本発明の医薬組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0174】
本発明に係る医薬組成物の投与方法は剤形によって容易に選択可能であり、経口又は非経口投与できる。投与量は、患者の年齢、性別、体重、病症の程度、投与経路によって変更可能である。
【0175】
本発明は、さらに他の観点において、本発明の多糖体又は前記多糖体を有効成分として含有する医薬組成物を投与することを含む免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療方法に関する。
【0176】
本発明は、さらに他の観点において、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための本発明の多糖体又は前記多糖体を有効成分として含有する組成物の用途に関する。
【0177】
本発明は、さらに他の観点において、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用薬剤の製造のための本発明の多糖体の使用に関する。
【0178】
本発明に係る医薬組成物は、優れた免疫増強及び免疫過剰抑制効果を提供する他、薬物による毒性及び副作用もほとんどないので、免疫疾患の治療又は予防の目的で長期間服用することができる。
【0179】
本発明は、さらに他の観点において、前記多糖体を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は改善用食品に関する。
【0180】
前記免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は改善用食品は、免疫活性を増強させたり或いは過剰免疫を抑制又は改善して免疫機能の恒常性を維持する活性を有する健康機能食品であることを特徴とし得る。
【0181】
本発明の用語“食品”とは、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能食品及び健康食品などがあり、通常の意味におけるいかなる食品も含む。
【0182】
前記健康機能(性)食品(functional food)とは、特定の保健用食品(food for special health use;FoSHU)と同じ意味の用語であり、栄養供給の他にも生体調節機能を効率的に呈するように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。ここで、“機能(性)”とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節したり、又は生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の食品は、当業界で通常用いられる方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。また、前記食品の剤形また食品として認められる剤形であればいずれも製造可能であり、本発明に係る健康機能食品は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル又は飲料の形態でよい。
【0183】
前記健康食品(health food)は一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)は健康補助目的の食品を意味する。場合によって、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は同じ意味で使われる。
【0184】
前記食品組成物は生理学的に許容可能な担体をさらに含むことができるが、担体の種類は特に制限されず、当該技術分野に通常用いられる担体であればいずれも使用可能である。
【0185】
また、前記組成物は食品組成物に通常用いられて匂い、味、視覚などを向上させ得る追加成分を含むことができる。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、ホレート(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含むことができる。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロミウム(Cr)などのミネラルを含むことができる。また、リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含むことができる。
【0186】
また、前記組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、ベンゾ酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(さらし粉と高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニゾール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(MSGなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基礎剤、気泡抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を含むことができる。前記添加物は、食品の種類によって選別し、適度の量を使用することができる。
【0187】
本発明の前記多糖体に加えて、食品学的に許容可能な食品補助添加剤をさらに含むことができ、他の食品又は食品成分と共に使用可能であり、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康又は治療的処置)によって適切に決定することができる。
【0188】
本発明の一実施例において、in vivo及びin vitroを問わずにMGCPが結腸Treg細胞を誘導し、Treg細胞におけるIL-10及びCTLA-4の発現を増加させており、また、エフェクターT細胞においてIFN-γの発現を抑制することによって、免疫作用を抑制することを確認した。
【0189】
本発明の他の実施例において、前記多糖体はDCを媒介してTreg細胞を誘導することを確認した。具体的に、DCのDectin1、Dectin2、TLR2、TLR4及びTLR6が欠乏している場合、Tregの細胞分化が減少することを確認したが、特に、Dectin1及びTLR4が欠乏している場合にその減少幅が顕著であった。また、MyD88信号伝達体系が欠乏している場合にもTreg細胞の誘導が減少することを確認した。
【0190】
本発明のさらに他の実施例において、このようなPRRを用いた多糖体の認識は、IL-10、Cd274、インドールアミン2,3-デオキシゲナーゼ(IDO)、Tgfβ1及びCox2などのDCの転写体地形(transcriptome landscape)を免疫寛容性(tolerogenic)DCの表現型に変形させ、特に、セレコキシブを処理して実験した結果、Cox2が過発現することにより、Treg細胞を誘導することが分かった。樹状細胞の他にも、Treg細胞は抗原を認識し提示する如何なる細胞によっても誘導可能である。
【0191】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、抗原提示細胞(antigen presenting cell)に上記の多糖体を処理して免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)を得る段階;及び前記免疫寛容性抗原提示細胞をCD4+ T細胞と共培養(co-incubation)して調節T細胞(Treg細胞)を誘導する段階を含む調節T細胞(Treg)の製造方法に関する。
【0192】
本発明の用語“抗原提示細胞”とは、抗原を取り込んで処理した後、抗原由来断片をMHC class II分子のような抗原提示分子と共にT細胞に提示して分化を誘導する細胞を意味する。例えば、前記抗原提示細胞は、大食細胞、B細胞、樹状細胞(dendritice cell;DC)、ランゲルハンス細胞などがあるが、これに限定されない。
【0193】
本発明の用語“免疫寛容性抗原提示細胞”とは、様々な抑制抗原に対して免疫系を免疫耐性(tolerogenic)状態にさせる免疫抑制性を有する抗原提示細胞の一種である。免疫寛容性抗原提示細胞は主に、T細胞のアネルギー化及び死滅誘導、Tregの誘導のようなT細胞調節によって免疫環境に影響を及ぼす。このような免疫抑制的特性から、アレルギー疾患、自己免疫疾患などにおいて細胞治療剤の候補物質として脚光を浴びている。免疫寛容性抗原提示細胞は、例えば、免疫寛容性大食細胞、免疫寛容性樹状細胞(tolerogenic DC)又は免疫寛容性B細胞であり得るが、これに限定されない。
【0194】
本発明において、前記抗原提示細胞は、パターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)を発現することを特徴とし得る。前記パターン認識受容体は、好ましくは、Dectin1、Dectin2、TLR2、TLR4及びTLR6からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であり得るが、これに限定されない。
【0195】
本発明において、前記免疫抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)は、IL-10、Cd274、インドールアミン2、3-デオキシゲナーゼ(IDO)、Tgfβ1及びCox2からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を過発現することを特徴とし得るが、これに限定されない。
【0196】
本発明において、前記調節T細胞は、CD4+Foxp3+調節T細胞であることが好ましいが、これに限定されない。
【0197】
また、本発明において、前記多糖体はTreg細胞からヘリオス(Helios)、IL-10及びCTLA-4の発現を増加させることを特徴とし、エフェクターT細胞のIFN-γを減少させることを特徴とし得る。
【0198】
本発明の一実施例において、MGCPで誘導されたTreg細胞がin vivoで機能的活性を持って大膓炎を緩和させ得るかとうかを確認するために、MGCP処理されたDCによって生成されたTreg細胞(CD45+)を未接触CD4+ T細胞と共にマウスに養子移入した。受容体マウスの体重減少及び結腸長さの短縮は、MGCP-Treg受容マウスにおいて有意に減少し、結腸組織の上皮細胞構造破壊を予防し、組織病理学スコアから見られるように、結腸粘膜固有層に対するリンパ球の侵入を抑制した。また、ドナー未接触CD4+ T細胞のIFN-γ生産数値を顕著に減少させた。
【0199】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、前記方法で製造された調節T細胞(Treg)を有効成分として含有する免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用細胞治療剤に関する。
【0200】
本発明は、さらに他の観点において、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための前記方法で製造された調節T細胞(Treg)を有効成分として含有する細胞治療剤の用途に関する。
【0201】
本発明において、前記調節T細胞は、CD4+Foxp3+調節T細胞であることが好ましいが、これに限定されない。
【0202】
本発明は、さらに他の観点において、免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用薬剤製造のための前記多糖体又は細胞治療剤の使用に関する。
【0203】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものとして解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0204】
材料及び方法
1.マウス
マウスは、ポステック生命工学センター(POSTECH Biotech Center)の動物施設で飼育された。全ての実験手順はポステック研究所動物管理及び使用委員会の承認下で進行した。C57BL/6マウスは、ポステックで同種繁殖で保持された。Foxp3-eGFP、Tlr2-/-、Tlr4-/-、Tlr6-/-及びMyD88-/-マウスを、Jackson Labortoryから得た。CD45a-Rag1-/-TCR OT-II(Rag1-/-OTII TCR形質転換体)及びRag1-/-マウスは、Taconicから得た。Dectin1-/-及びDectin2-/-動物は、Yoichiro Iwakura博士(Tokyo University of Science,Japan)から提供された。無菌(Germ-Free,GF)C57BL/6マウスコロニーがAndrew Macpherson博士(Bern Univ.,Switzerland)及びDavid Artis博士(Then at Univ.Pennsylvania,currently at Cornell Univ.,USA)の助力でブリーダーによって確立された。GFマウスは無菌軟性膜アイソレータ(sterile flexible film isolators,Class Biological Clean Ltd.,USA)で維持された。CBirマウスはバーミンガムのアラバマ大学のCharles O.Elsonから提供された。生後6~12週齢の性別及び年齢に合うマウスを使用した。
【0205】
2.酵母細胞壁からMGCPの精製
酵母抽出物(teast extract,BD Biosciences)20g、ポリソルベート80(Polysorbate 80,Sigma-Aldrich)2g、クエン酸アンモニウム(Ammonium Citrate,Sigma-Aldrich)4g、酢酸ナトリウム(Sodium Acetate,Sigma-Aldrich)10g、硫酸マグネシウム(Magnesium sulfate,Sigma-Aldrich)、0.1gのマンガン硫酸塩(Manganese sulfate,Sigma-Aldrich)及び4gのリン酸二カリウム(Dipotassium phosphate,Sigma-Aldrich)を2Lの蒸留水に溶解させた。該溶液をオートクレーブ(auto clave)し室温で冷却させた。トリクロロ酢酸(TCA,Sigma Aldrich)を最終濃度0.4%となるように前記溶液に処理し、一晩自己撹拌しながら4℃で培養した。TCA処理された溶液を、冷却された3滴(3Volume)のエタノールと共に一晩-20℃で培養した。培養された溶液を遠心分離した後、上澄液の除去、及びペレットを乾燥して、残っているエタノールを除去し、20mM MgCl2、20mM CaCl2(pH 7.5)を含む10mM Trisバッファーで懸濁させた。懸濁された溶液をRNase(Sigma-Aldrich)及びDNase(Roche)で最終濃度0.4mg/mlとなるように処理し、37℃で一晩培養した。その後、アジ化ナトリウム(sodium azide)で最終濃度0.05%となるように処理し、37℃で30分間培養した。培養後、プロナーゼ(pronase)(Protease、Streptomyces griseus、Sigma-Aldrich)溶液を0.3mg/mlで処理し、一晩37℃で培養した。最終濃度が0.3mg/mLとなるようにプロナーゼを1回さらに追加し、2時間さらに培養した。最終濃度0.4%となるようにTCAを添加し、37℃で2時間培養した。溶液を遠心分離し、上澄液を3滴の冷却されたエタノールに移し、一晩-20℃で培養した。遠心分離後、上澄液を除去し、ペレットを乾燥させて残留エタノールを除去した。ペレットを100mM Trisバッファー(pH 7.5)で懸濁し、同一量のフェノールを処理して数回ひっくり返してよく混ぜた。溶液を遠心分離し、上位チューブを新しいチューブに移し、フェノールを繰り返し処理した。溶液を遠心分離し、上澄液を新しいチューブに移し、同一量のイソアミルアルコール(isomyl Alcohol):クロロホルム(Chloroform)1:29(v:v)溶液を処理してよく混ぜた。遠心分離した後に上澄液を移し、これを1回さらに反復した。多糖類を蒸留水で3日間透析し、凍結乾燥させて得た。多糖類の濃度は酸性フェノール分析で測定した。
【0206】
3.リンパ球の分離及び流動細胞計測分析(flow cytometry analysis)
未接触CD4 T細胞(Naive CD4 T cell)は、FACs分流器(FACs sorter,Astrios,Beckman Coulter)又はEasySepTMマウスNaive(登録商標) CD4+ T細胞分離キット(STEMCELL Technology)を用いてpLN、mLN及び脾臓からメーカーのプロトコルにしたがって分離された。大腸及び小腸からの分離において、腸を縦に切開し、PBSで洗浄して粘液と糞便を除去した。腸を小さい切片に切り、10mM EDTA、20mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム及び3% FBSを含むPBSと共に磁石棒で撹拌しながら37℃で20分間培養した。組織を粉砕し、37℃で45分間3% FBS、20mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、0.5mg/mlコラゲナーゼD(Roche)及びDNase I(Sigma-Aldrich)が添加されたRPMI 1640培地で培養した。組織を10mM EDTA下で5分間さらに培養した。上澄液を100mmセルストレーナー(cell strainer)で濾過し、冷却されたPBSに移し、残った酵素及びEDTAを除去した。細胞をPercollTM(GE Healthcare)グラジエントに40%及び75%でロードした。リンパ球をpercollグラジエント膜の表面から収穫し、1% FBS、1%ペニシリン/ストレプトシンが添加されたDMEM培地で洗浄した。サイトカインの分析のために、10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸及び0.1%β-ME(v/v)を含有する完全なRPMI培地において37℃で4~5時間Golgistop(BD Biosciences)の存在下にPMA(Calbiochem)及びイオノマイシン(Calbiochem)で細胞を刺激した。細胞は、流動細胞計測分析のためにメーカーのプロトコルにしたがって染色された。
【0207】
細胞の染色には下記の試薬が用いられた:
Live/DEAD固定可能染料(Life Technologies)、固定/透過バッファー(eBioscience)、透過バッファー(eBioscience)、IC固定バッファー(eBioscience)及び抗体。
【0208】
前記実験には下記の抗体クローンが用いられた:
CD4(RM4-5)、CD44(IM7)、CD62L(MEL-14)、CD45.1(A20)、CD103(2E7)、Foxp3(FJK-16s)、CTLA4(UC10-4B9)、Nrp1(3E12)、IL-10(JES5-16E3)、IFN-γ(XMG1.2)、IL-17A(17B7)、CD11c(N418)、CD11b(M1/70)、F4/80(BM8)、MHCII(M5/114.15.2)。
【0209】
4.In vitroで抗原提示細胞依存的T細胞分化
2×104個の標識組織(indicated tissues)由来のCD11c+ DCを、標識された多糖類又はMGCPで処理し、10ng/mLのGM-CSF(Perprotech)の存在下に14時間RPMI1640完全培地で培養した。MGCPを処理してDCを刺激する場合に、DCはMGCP濃度が別途記載された場合以外は、大部分のin vitro実験において50μg/mLのMGCPで刺激された。刺激されたDCを洗浄し、2×105未接触CD4 T細胞と共に3日間共同培養した。大部分の実験は、0.1μg/mlのanti-CD3(BioXcell)、100U/mlのIL-2、0.1又は0.05ng/mlのTGF-ベータ1(Miltenyi Biotech)及び10ng/mlのGM-CSFを含む準最適Treg細胞分化(skewing)条件で行われた。準最適Th1走行環境のために、0.1μg/mLの抗CD3、100U/mlのIL-2、2.5ng/mlのIL-12、10ng/mlのGM-CSF及び10μg/mlの抗IL-4存在下で細胞を培養した。3日の培養後に、細胞を上記の流動細胞計測法で分析した。いくつかの実験において拮抗剤は、MGCPの刺激に先立って脾臓DCに処理された。多糖類分解酵素を使用する実験手順の場合、脾臓DCに処理する前にザイモサン又はMGCPをメーカーのプロトコルにしたがって同一の酵素で分解し、未接触CD4 T細胞と共に培養した。セレコキシブを使用した実験において、抑制剤は、MGCPを用いて脾臓DCを刺激する前に30分間処理され、その後、セレコキシブの存在条件下に未接触CD4 T細胞と共に培養した。
【0210】
前記実験には下記の試薬が用いられた:
α-(1-6)core mannosidase(QAbio)、pustulanase(Prokazyme)、zymolyase(MPbio)、Mincle単一クローン抗体(anti-Mincle mAb,MBL)、DC-SIGN抗体(anti-DC-SIGN Ab,Abcam)、組換えマウスMMRタンパク質(R&D systems)
【0211】
5.CD4 T細胞伝達を用いた実験性大膓炎(experimental colitis)の誘導
実験性大膓炎は、過去知られた方法によって誘導された(Powrie F,Leach MW,Mauze S,et al.Immunity 1994;1(7):553-62.及びLeach MW,Bean AG,Mauze S,et al.Am J Pathol 1996;148(5):1503-15.)。具体的に、類遺伝子型(congenic,CD45.1+)Foxp3-EGFPマウス又はCBirマウスから分類されたCD4+Foxp3GFP-CD44loCD62Lhi未接触T細胞(1X106)FACsがRag1欠乏マウスに伝達された。In vitroにおいて生成されたMGCPで誘導されたTreg細胞の効能を評価するために、未接触CD4 T細胞を、標識されたTreg細胞(2×105)と同時に養子移入(adoptively transferred)した。CBirマウス由来の未接触CD4 T細胞を用いて大膓炎を誘導するために、受容体は、全実験期間にわたってmock又はMGCPが隔日で経口投与された。週に2回体重を測定して大膓炎の進行をモニタリングし、マウスは体重が約20%減少すると犧牲にさせた。疾病の重症度は、結腸の長さ、組織学的評価及びドナー未接触CD4 T細胞からのサイトカイン生成を測定して分析した。
【0212】
6.In vivo養子移入
未接触CD4 T細胞を伝達させる前に、200μgのMGCPをC57BL/6又はDectin1-/-マウスに毎日2週間経口投与した。類遺伝子対立形質(congenic allele)を保有するFoxp3-EGFP又はOT-IIマウスから分離されたCD4+Foxp3EGFP-CD44loCD62Lhi未接触T細胞(精製>99%、1.5~2×106)を、MGCPが投与された欠乏マウスに静脈投与によって移し、MGCPを1週間毎日さらに投与した。OT-II未接触CD4 T細胞が授与されたマウスには、20mgのOVAタンパク質を細胞伝達前日から実験が終わるまで1週間隔日で補充した。
【0213】
7.RNA塩基配列分析(RNA sequencing)
GFマウスにmock及びMGCPを2週間毎日投与した。mock及びMGCPが補充されたGFマウス由来の結腸CD11c+ DCは、マイクロビーズを用いてメーカーのプロトコルにしたがって結腸粘膜固有層全細胞から分離された。全RNAはmock又はMGCP給与マウスの結腸DCから精製された。リボスピンTMII(RibospinTMII,GeneAll biotechnology)が全RNAの分離に使用された。TruSeq Stranded mRNAサンプル準備キット(Illumina,San Diego,CA)をライブラリー準備に使用した。RNA塩基配列分析は、NextSeq 500 Sequencing platformで行われた。RNA塩基配列データはGene Expression Omnibus(NCBI)データ保存所に寄託された(登録番号GEO:RNA-seq data:GSE126937)。
【0214】
8.定量逆転写重合酵素PCR(QrtPCR)
全転写体はmock及びMGCP補充GFマウス由来の結腸CD11c+ DCから精製された。細胞を収穫した後、TRIzol試薬に溶解させた。総RNAはメーカーのプロトコルにしたがって精製された。精製された総RNAは、M-MLV逆転写酵素(promega)を用いてcDNAに合成された。標識されたマーカーの発現量は、下記表のプライマー対及び前記方法で製造されたcDNAを用いて分析した。全てのデータはHPRT(hypoxanthine-guanine phosphoribosyl transferase)の発現レベルに正常化(normalized)された。結果は、mock対照群の発現レベルに対する相対的な発現レベルとしてさらに分析された。
【0215】
【0216】
9.組織学的分析
実験性大膓炎の臨床学的点数は、H&E染色を用いた組織学的分析で測定した。簡単にいえば、コロン1cmを10%ホルムアルデヒドに固定させ、パラフィン片に埋めた。パラフィン片を3μm厚に切断し、ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)及びエオシン(Sigma-Aldrich)で染色した。
【0217】
10.統計分析
統計分析は、グラフパッドプリズムソフトウェア(Graphpad Prism software,La Jolla,USA)を用いて行った。対照群と実験群における差異は、両側のアンペアード-スチューデントt-テストを用いて評価した。データは、平均±SEMで示した。
【0218】
実施例1:ザイモサン(zymosan)のTreg細胞誘導能力確認
免疫システムにおいてイースト多糖類の免疫調節機能を研究するために、ザイモサンをDCに処理した後、未接触CD4 T細胞と共に培養した。ザイモサン処理されたDCは濃度依存的にTreg細胞の誘導を促進し、ザイモサンは500μg/mLで最高の誘導性能を示した(
図1A)。次に、ザイモサンがエフェクターT細胞を誘導するのに類似の濃度依存効果を示すかどうか確認した。ザイモサンは、最低の濃度でRORγtの発現を誘導するが、T-betの発現には影響を及ぼさなかった(
図2A)。驚くべきことに、エフェクターT細胞においてT-bet及びRORγtの発現はザイモサンの濃度が増加するにつれて抑制された(
図2A)。
【0219】
また、Treg細胞の誘導に関与する正確なザイモサン由来の多糖体を確認するために、切断酵素を用いて異なる構造の多糖体を切断した。ザイモサンにおいて、β-1,3-グルカンを除去すればTreg細胞の誘導が劇的に増加する(
図1B)。一方、ザイモサンのβ-1,6-グルカン及びマンナンの切断はTreg細胞の誘導を抑制し、対照的な効果を示す(
図1C)。β-1,3-グルカン及びβ-1,6-グルカンの切断は、ザイモサン媒介RORγt抑制の補償と別個に処理しなかった対照群に比べて、RORγtの発現増加を示した(
図2B及び
図2C)。前記結果は、ザイモサンの特定多糖体構造の免疫学的効果を示す。前記結果から、β-1,6-グルカン及びマンナンはTreg細胞の生成に必須であるのに対し、β-1,3-グルカンはTh1免疫反応を誘導し、Treg細胞の生成を抑制することが分かる。
【0220】
実施例2:MGCPの精製及び構造及び機能的特性分析
材料及び方法において、上記のような方法で酵母細胞壁から多糖体を精製した後、構造的特性及び免疫機能的関連性を確認した。酵母由来多糖体の組成分析結果は、マンノース(mannose,80.6%)、グルコース(glucose,14.9%)及びガラクトース(galactose,4.5%)で構成されていることを確認した(
図3A及び
図4)。陽性子核磁気共鳴(NMR)分光学を用いた多糖類構造及び形態の追加的分析は、マンナン及びβ-1,6-グルカンを主成分とするということを裏付ける(
図5A)。マンナンユニットの詳細な構造はα-1,6-結合マンノースバックボーンを有していることが見つけられ、α-1,2-結合又はα-1,3-結合で連結された単一ユニットマンノース(30%)、2ユニットマンノース(16.8%)又は3ユニットマンノース(28.4%)を側鎖としてそれぞれ連結されていること(側鎖のないマンノース(24.8%))を確認した(
図5B)。マンナン成分の構造は、S.cerevisiaeの細胞壁から発見される典型的なマンナン構造に似ていた。β-1,6-グルカンはβ-1,6-結合グルコース骨格を中心に構成され、骨格のグルコースのうち18%は、β-1,3-結合された単一ユニットグルコースを側鎖とする(
図5C)。このような構造を有する酵母由来の多糖体は新規なものであり、精製された多糖体をMGCP(Mannan/β-Glucan Containing Polysaccharides)と命名した。
【0221】
MGCPの分子量を確認するために、本技術分野に知られた方法で、HPLCを用いて分析した。TSK G-G5000PWXLサイズ排除カラムを使用し、溶離剤(Eluent)は50mMのアンモニウム重炭酸塩(ammonium bicarbonate)を0.8ml/minの流速で流した。分析結果は、時差屈折分析器(refractive index detector)と206nm波長の紫外線分析器(UV detector)を用いて確認した。分子量の確認のために使用した基準物質は、Dextran standardを使用し、これに関する情報は、下記表2の通りである。
【0222】
【0223】
HPLCの結果、大きく2つのピークを確認し、MGCPの分子量は4kDa~60kDaであることを確認した(
図6及び下記表3)。MGCP全体のHPLC分析結果に基づいて、
図6に示すように、全体MGCPをA、B、Cの3部分に分画し、各分画の分子量をHPLCによって確認した(
図7及び下記表3)。
【0224】
【0225】
MGCPの免疫機能的関連性を分析し、具体的に、Treg細胞誘導能力を確認した。MGCPが処理された脾臓DCは、Treg細胞を容量依存的に誘導した(
図5D)。MGCPの各構造のTreg細胞誘導関連性を分析するために、まず、一般に入手可能なマンナン、β-1,6-グルカン(Pustulan)又はβ-1,3-グルカン(curdlan)を独立に処理した結果、これらのいずれも独立的にはTreg細胞を誘導することができなかった(
図3B及び
図3C)。これに対し、以前の報告のように、D-(+)マンノースはTreg細胞を誘導できることを確認した(
図3D)。Treg細胞分化の誘導を担当するGMCPの必須部位を決定するために、マンナン、β-1,6-グルカン及びβ-1,3-グルカンのそれぞれを切断する酵素で構造を切断して実験した。MGCPにおいてβ-1,6-グルカンを切断すればTreg細胞の生成が顕著に減少し、マンナンの切断は、減少したTreg細胞の分化を示すが、有意の値ではなかった(
図5E)。また、両多糖類の同時除去は、Treg細胞誘導においてβ-1,6-グルカンを単独で切断したのと類似に現れ、これは、Treg細胞の誘導がβ-1,6-グルカンに主に依存するということを意味する(
図5E)。興味深いことに、β-1,3-グルカン除去イースト細胞壁から精製された多糖類は、損傷していないイースト細胞壁から精製されたMGCPと比較してより多いTreg細胞の生成を示した(
図3E)。このような結果は、MGCPの構成がいずれもTreg細胞を誘導する決定的な要素であることを示唆する。β-1,3-連結単一グルコースを側鎖として含むβ-1,6-グルカン部位は、MGCPによるTreg細胞誘導能力において必須であり、一方、β-1,3-グルカン部位はTreg細胞を抑制する。
【0226】
図示してはいないが、多糖体の分子量が大きくなる場合、特に100kDa以上になる場合には、Treg細胞の誘導活性が低下することが見られた。
【0227】
実施例3:In vivoにおいてMGCPで誘導されたTreg細胞の炎症性大膓炎緩和効能確認
MGCPがTreg細胞の分化を促進することを確認したところ、in vitroにおいて分化したTreg細胞が大膓炎の発病したマウス(in vivo)において緩和効果を示すかどうか確認した。類遺伝子型(congenic)マーカー(CD45.1+)を有するTreg細胞は、DCにMGCPを処理してin vitroで生成され、未接触CD4 T細胞と同時に受容マウスに養子移入され(adoptively transferred)、MGCPで誘導されたTreg細胞の免疫抑制機能を確認した。その結果、MGCPで誘導されたTreg細胞は大膓炎の進行を妨害することが確認された。具体的に、体重減少及び結腸長さの短縮は、MGCP-Treg細胞受容マウスで有意に減少した(
図8A及び
図6B)。大膓炎の臨床的症状と関連して、MGCPで誘導されたTreg細胞の転移は、結腸組織の上皮細胞構造の破壊を予防し、組織病理学スコアで表示された結腸粘膜固有層(colonic lamina propria)にリンパ球の侵入を抑制した(
図8C及び
図6D)。大膓炎の発病機転においてIFN-γが重要な役割を担うことが知られているので、結腸粘膜固有層のCD4 T細胞から病原性サイトカイン(cytokine)であるIFN-γの生産を評価した。ドナー未接触CD4 T細胞のIFN-γの生産レベルは、単に未接触CD4 T細胞だけが授与された個体に比べてMGCP-Treg細胞授与個体において劇的に減少した(
図8E)。前記結果は、MGCPで誘導されたTreg細胞が炎症サイトカインの生成を抑制し、炎症性大膓炎を改善させることを示す。
【0228】
実施例4:MGCPの経口投与を用いた結腸Treg細胞の生成誘導
In vitroにおいて、MGCPは、in vivoにおいて機能的に活性を有するTreg細胞の誘導を促進した。MGCPがin vivoにおいてもTreg細胞を生成できるかどうか確認するために、MGCPをマウスに口腔内投与した後、結腸未接触CD4 T細胞(CD45.1+)を伝達(transfer)させた。興味深いことに、MGCPの投与は、対照群よりも結腸においてドナーCD4 T細胞から非常に高い頻度(frequency)のTreg細胞を生成させた(
図9A)。前記Treg細胞は、Treg細胞の抑制性を示す重要な指標であるCTLA-4を発現させる(
図9B)。小腸からも、ドナー細胞のうちTreg細胞頻度の類似の増加が観察され、それらもCTLA-4を発現させた(
図10A及び
図8B)。一方、受容体由来のTreg細胞の頻度及びホストTreg細胞のCTLA-4発現量は、結腸及び小腸において対照群と類似に現れた(
図9C、
図7D、
図8C及び
図8D)。MGCPを処理したマウスの結腸Treg細胞の絶対的な数字は結腸において増加を示したが、有意の値ではなかった(
図9E及び
図8E)。MGCP投与マウスの腸全体の受容体Treg細胞のうち、ヘリオス(Helios)を発現する細胞が増加したことが観察された(
図9F及び
図8F)。機能的に、MGCPの投与は、単に結腸粘膜固有層のTreg細胞のIL-10生産を有意に増加させ、小腸では増加させなかった(
図9G及び
図8G)。結腸粘膜固有層においてエフェクターT細胞のIFN-γの生産はMGCP処理後に減少したが、IL-17Aのレベルは変わらなかった(
図9H)。これに対し、小腸CD4 T細胞のIFN-γ及びIL-17Aの発現は、mockとMGCP処理マウスの両方で類似に示された(
図10H)。MGCPの投与は、腸においでドナーCD4 T細胞からTreg細胞の分化を誘導するが、MGCPの処理は、脾臓又はmLNにおいてホスト又はドナー由来のCD4 T細胞からTreg細胞の分化を誘導できなかった(
図10I及び
図8J)。要するに、in vivoにおいて、MGCPは結腸エフェクターCD4 T細胞において炎症性サイトカインであるIFN-γを減少させるだけでなく、IL-10生産が向上した機能性結腸Treg細胞の新しい生成を促進した。この結果は、MGCPが恒常性条件下の結腸の免疫調節環境に影響を及ぼし得ることを示す。
【0229】
実施例5:MGCPで誘導された微生物叢(microbiota)-特異的Treg細胞の大膓炎改善
MGCPが微生物抗原特異的Treg細胞を誘導し、生体内炎症性免疫反応を抑制するか否かを確認するために、微生物フラジェリン-反応性CD4 T細胞(microbial flagellin-reactive CD4 T cells)を保有したCBirマウスを使用した。CBirマウスの未接触CD4 T細胞をRag1-/-マウスに移し、経口投与によってmock(DW)又はMGCPを毎日投与した。免疫の弱化したマウスに微生物反応性未接触CD4 T細胞(microbe responsive naive CD4 T cells)を養子移入(adoptive transfer)することは、共生微生物叢に対する過度な免疫反応による実験性大膓炎を誘発するという報告がある(
図11A)。しかし、MGCPの補充は、体重減少に顕著な抵抗性を示した(
図11A)。体重変化に対する効果に加えて、結腸長さの短縮もMGCPの投与で予防された(
図11B及び
図9C)。臨床的徴候とも一致するように、MGCP投与マウスは上皮細胞の増殖及びリンパ球の結腸内侵入を抑制した(
図11D)。また、組織病理学スコアはmock処理されたマウスに比べて緩和されたことが見られた(
図11E)。これらの結果は、MGCPが機能性Treg細胞の新しい生成を促進し、炎症前環境において病原性サイトカインの生産を抑制できることを示唆する(
図8及び
図9)。
【0230】
したがって、MGCPの処理がTreg細胞の生成を促進しながらも、受容マウスの共生抗原特異的CD4 T細胞から有害サイトカインの生産を抑制できるか否かを確認した。MGCP投与されたマウスは、mock処理されたマウスに比較して、ドナー未接触CD4 T細胞から微生物反応性Treg細胞(microbe-reactive Treg細胞cell)の分化を増加させ(
図11F)、Treg細胞の安定性と機能に重要な分子であるCD103及びCTLA-4の発現は、MGCP処理されたマウス及びmock処理されたマウスのTreg細胞において類似に現れた(
図12A)。大膓炎の臨床的徴候と一致し、ドナーCD4 T細胞からIFN-γの生産は、mock処理されたマウスに比べてMGCP投与されたマウスにおいて実質的に抑制されたが(
図11G)、IL-17A数値は、結腸粘膜固有層において類似に現れた(
図12B)。要するに、前記結果は、MGCPで誘導されたTreg細胞の転移だけでなく、MGCPの投与も、共生抗原に反応するTreg細胞の生成を促進し、炎症性大膓炎の発達及びIFN-γの生産を抑制するということを示す。
【0231】
実施例6:腸CD103
+CD11b
+DCによるMGCP媒介Treg細胞の誘導においてCox2の必要性
MGCPが抗原提示細胞によってTreg細胞を誘導するメカニズムを確立するためにMGCP刺激によるTreg細胞の分化を誘導するDCサブセット及び大食細胞の能力を評価した。DCは、腸においてCD11b及びCD103の発現によって区別される。各章のDCサブセット及び大食細胞をMGCPで刺激した後、未接触CD4 T細胞と共に培養した。MGCPを処理した腸CD103
+CD11b
+ DCは、mockを処理した場合に比べて約10倍のTreg細胞の生成増加を誘導した(
図13A)。CD103
+CD11b
-DC及び大食細胞は、MGCP刺激後にTreg細胞のレベルは増加しなかったが、MGCP処理されなかった場合にも、Treg細胞を効率的に誘導した(
図13A及び
図14)。MGCPがDCを刺激してDCがTreg細胞を誘導し、微生物刺激剤(microbial stimulants)によるDC活性化機能を抑制するメカニズムを確立するために、無菌マウス(Germ Free mice,GF)にDW(mock)又はMGCPを2週間毎日経口投与した。転写体形態分析(analyze transcriptomic configuration)のために、CD11c
+ DCをmock又はMGCP処理マウスの結腸から分離した。MGCPの投与は、Il10、Cd274(PD-L1コーディング遺伝子)、インドールアミン2,3-デオキシゲナーゼ(Indoleamine2,3-dioxygenase,IDO)及びTgfβ1などの免疫寛容性(tolerogenic)DC関連マーカーの発現を増進させた(
図13B及び
図11C)。興味深いことに、MGCP処理されたマウスのDCは、mock(DW)処理されたマウスのDCに比較してPtgs2(シクロオキシゲナーゼ-2コーディング遺伝子、Cox2)の発現を約20倍増加させた(
図13B及び
図11C)。Cox2は、腫瘍環境でTreg細胞を誘導するものと既に知られていたため、MGCPによるTreg細胞分化に対するCox2の役割を評価した。脾臓DCはMGCPで刺激され、Cox2選択的抑制剤であるCelcecoxibの存在下に未接触CD4 T細胞と共に培養した。MGCPによるTreg細胞の誘導は、Cox2を抑制することによって相当減少した(
図13D及び
図11E)。前記結果は、MGCPで誘導されたTreg細胞の増加がCox2依存的にCD103+CD11b+腸DCサブセットによって特異的に媒介されるということを示唆する。また、MGCPは、DC転写体地形(transcriptome landscape)を免疫寛容性DCの表現型で現れるように変形させた。
【0232】
実施例7:MGCPで誘導されたTreg細胞の生成メカニズムにおいてパターン認識受容体の重要性
DCは、パターン認識受容体(pattern recognition receptors,PRRs)を発現させ、場内に存在する多糖類を含む微生物抗原を認識する。MGCP媒介免疫調節において多糖類認識受容体の役割を調べるために、特定の受容体が損傷したマウスのDCを用いてTreg細胞の分化を確認した。Dectin1が欠乏した脾臓DCは、MGCPによるTreg細胞の生成を有意に減少させたが、Dectin2の欠乏は、Treg細胞の分化を比較的少なく減少させた(
図15A)。また、TLR2、TLR4及びTLR6がそれぞれ欠乏したDCは、WT DCと比較してMGCPによるTreg細胞分化を減少させ、TLR4は最も顕著な効果を示した(
図15A)。DCにおいてTLR欠乏によるTreg細胞生成減少と一致し、MyD88信号伝達が損傷したDCは、Treg細胞分化が顕著に減少することが見られた(
図15B)。その上、異なるC-typeレクチン受容体の可能な役割を研究するために、DC-SIGN、Mincle及びマンノース受容体のそれぞれの拮抗的遮断抗体を用いた。DCにおいてDC-SIGN信号の遮断は、MGCPによるTreg細胞分化の部分的減少を示したが、他の受容体の場合、いかなる有意の効果も示さなかった(
図15C)。要するに、前記結果は、Dectin1及びTLR4がMGCPによるTreg細胞の誘導に重要な役割を担うことを示唆し、その他にもMGCPは様々な先天的受容体によってTreg細胞を誘導する。
【0233】
実施例8:MGCPによるTreg細胞誘導においてDectin1の重要性確認
MGCPで誘導されたTreg細胞生成におけるDectin1の役割を確認するために、Dectin1が完全であるか或いは欠乏しているマウスのmLN DCをmock又はMGCPで刺激した。Dectin1豊富DCは、MGCP刺激後にCox2及び他の調節マーカーの発現増加を示したが、Dectin1欠乏DCでは、MGCPがCox2の発現を促進させることができなかった(
図16A及び
図15A)。MGCP処理後のCox2発現に対するDectin1の役割とも一致するように、Ido及びTgfβ1転写体はDectin1豊富DCにおいてMGCP刺激によって特異的に増加したが、損傷したDCではそうでないことが見られた(
図17A)。驚くべきことに、Dectin1の不在は、Il10及びCd274のような他の調節DCマーカーのMGCP媒介された発現増加において変化を起こさなかった(
図17A)。MGCPで誘導されたTreg細胞生成に対するDectin1の必須な役割を裏付けるために、Dectin1欠乏マウスにおいてMGCPの効果を試験した。OT-IIマウスから未接触CD4 T細胞が授与されたマウスにMGCPを投与し、隔日でオボアルブミン(ovalbumin)を補充した。MGCPは、実験全体にわたって受容体ネズミに投与された。興味深いことに、MGCPの投与は、Dectin1豊富受容体の小腸においてオボアルブミン活性Treg細胞の分化を劇的に増加させたが、Dectin1欠乏ネズミにおけるMGCPのTreg細胞分化誘導効果は減少した(
図16B及び
図14C)。一方、Dectin1欠乏又は豊富受容体において受容体由来の細胞のうちTreg細胞の頻度は、mock及びMGCP処理された場合が類似に現れた(
図17B)。MGCP処理したDectin1非損傷マウスのホスト細胞に由来したTreg細胞の頻度は、mock処理されたマウスのものと類似に現れたが、MGCP下でDectin1豊富マウスだけがTreg細胞の数が相当増加し、Dectin1欠乏マウスではそうでなかった(
図17C)。興味深いことに、MGCP投与は、Dectin1豊富マウスにおいて受容体由来細胞のうち誘導性Treg細胞(inducible Treg細胞cell)の頻度を増加させたが、Dectin1ノックアウトマウスではそうでなかった(
図16D及び
図14E)。また、MGCPがそれらのマウスの腸間膜リンパ節(mesenteric lymph node)においてTreg細胞の誘導に影響を与えるかどうか評価した。Dectin1非損傷(intact)マウスにおいてTreg細胞分化の頻度が増加したが、Dectin1ノックアウトマウスではMGCPの影響が無視できた(
図17D)。要するに、MGCPによるin vivo Treg細胞誘導分子メカニズムがDCのCox2上向き調節によって媒介されるDectin1に依存することを示唆する。
【0234】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的技術は単に好ましい実施態様であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明に係る新規な多糖体は、低い容量でも、多糖体が持つβ-グルカン及びマンナン(mannan)構造によって免疫寛容性抗原提示細胞(tolerogenic antigen presenting cell)を生成し、これによって抗原特異的な調節T細胞(Treg細胞)の分化又は生成を誘導し、少ない副作用で目標とする免疫体系を調節することができる。したがって、MGCP及び前記多糖体によって誘導されたTreg細胞は、免疫疾患又は炎症性疾患の予防及び治療に有用である。
【配列表】
【国際調査報告】