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特表2022-505489弾道学的な単極双安定式アクチュエータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】弾道学的な単極双安定式アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/122 20060101AFI20220106BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01F7/122 A
H02K33/16 A
H01F7/122 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521749
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 FR2019052441
(87)【国際公開番号】W WO2020084220
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】1859948
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501377391
【氏名又は名称】ムービング マグネット テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ルセール,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ビヴェルシ,ステファヌ
【テーマコード(参考)】
5E048
5H633
【Fターム(参考)】
5E048AC05
5E048AD02
5H633BB08
5H633BB10
5H633GG02
5H633GG09
5H633GG18
5H633HH03
5H633HH05
5H633HH09
5H633HH13
5H633HH15
(57)【要約】
本発明は、パルス的な電気制御部を用い、2つの安定位置の間での素子移動を極性変更無しに制御するアクチュエータであって、強磁性の可動ブロック(2)と、可動ブロック(2)に相対して固定され、電気的に制御される少なくとも1つのワイヤコイル(6、6a、6b)と、可動ブロック(2)に相対して固定され、可動ブロック(2)の両側に存在する少なくとも2つの強磁性磁極(15a、15b)と、を備えるアクチュエータに関する。アクチュエータは、2つの安定位置への到達のために可動ブロック(2)を引き付ける少なくとも1つの永久磁石(3a、3b)を備える。可動ブロック(2)は、当該可動機構の移動過程において強磁性磁極(15a、15b)と共同で少なくとも2つの可変の空気間隙(11a、11b、12a、12b)を規定する。可動ブロック(2)の位置にかかわらず、永久磁石(3a、3b)の磁束は、少なくとも1つのコイル(6、6a、6b)により生成される磁束に対向する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストローク末端における2つの無電流時安定位置の間での部材移動を制御するアクチュエータであって、
一方の安定位置から他方の安定位置への通行を制御するパルス的な電気制御部と、
強磁性の可動ブロック(2)と、
前記可動ブロック(2)に相対して固定され電気的に制御される少なくとも1つのワイヤコイル(6、6a、6b)を、含むステータと、
前記可動ブロック(2)に相対して固定され前記可動ブロック(2)の両側に存在する、少なくとも2つの強磁性磁極(15a、15b)と、を備え、
前記2つの安定位置への到達のために前記可動ブロック(2)を引き付ける少なくとも1つの永久磁石(3a、3b)を更に備え、
前記可動ブロック(2)は、当該可動ブロックの移動過程において前記強磁性磁極(15a、15b)と共同で少なくとも2つの可変の空気間隙(11a、11b、12a、12b)を規定し、
前記電気制御部は、前記コイル内において単一方向(一方向/単向)の磁束が生成されるように極性が変化しないパルス型であり、
前記可動ブロック、前記少なくとも1つのコイル、前記強磁性磁極及び前記少なくとも1つの磁石が磁気回路を構成し、当該磁気回路において、前記可動ブロック(2)の位置にかかわらず、前記永久磁石(3a、3b)の磁束が、前記少なくとも1つのコイル(6、6a、6b)により生成される磁束に対向する、
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記可動ブロック(2)の移動を制限する2つのストッパを備え、
前記ストッパは、前記磁石(3a、3b)及び前記コイル(6、6a、6b)の磁束をチャネリングする軟質の強磁性材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項3】
電子回路(ECU)と連動し、
前記電子回路(ECU)は、前記可動ブロック(2)の位置を前記2つの安定位置のいずれか1つから反対側の安定位置に変更するために、前記可動機構の元位置とその反対側の位置との間での前記可動機構の移動時間よりも短い持続期間及び不変の極性を有する、前記コイル(2)へ供給する電気的パルスを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項4】
好ましくは、前記少なくとも2つの空気間隙(11a、11b、12a、12b)は、前記可動ブロック(2)が当該可動ブロックのストローク中立位置に存在するとき、前記コイル(6)の中央に対して対称に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項5】
相互に結合し且つ逆方向の磁束を形成する2つの同軸コイル(6a、6b)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項6】
前記磁石(3a、3b)は前記可動機構又は前記ステータ上に保持されている、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項7】
電源の電圧の関数であるテーブルからの電気的パルスの持続期間を制御する電子回路を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項8】
周囲温度の関数であるテーブルからの電気的パルスの持続期間を制御する電子回路を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項9】
位置センサからのフィードバックの関数のように電気的パルスの持続期間を制御する電子回路を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項10】
前記フィードバックは、補助コイルによって測定された逆起電力、又は、供給コイルを通じて得られた電流準位に由来する、ことを特徴とする請求項9に記載の双安定式アクチュエータ。
【請求項11】
前記フィードバックは、前記磁石(3a、3b)によって放出された磁場の強度又は方向を検出する磁気感応センサ(14)に由来する、ことを特徴とする請求項9に記載の双安定式アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電流の場合における安定位置を2つ有するアクチュエータの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁アクチュエータは、一般に単安定型として製造される。すなわち、アクチュエータの磁気電機子は、エネルギーが供給されないとき、単一の無電流時安定位置を有する。この安定位置は一般に、バネの戻り力によって規定される。その一方で、単循環方向のみの電流を必要とするいわゆる「単極」電源に応じて電磁石の磁気コイル又は励磁巻線を励起することにより、ストローク上の切り替え位置と呼ばれる他方の末端位置への移動を成している。上記のことは、特に自動車の電気ネットワークにおいては、初歩的、経済的かつ取扱い容易な電子的装置によって実現され得る。
【0003】
磁気電機子を切り替え位置に保持するために、機械的仕事が一切無く、磁気コイルに連続に給電しなければならない。その結果、エネルギーの消費及びアクチュエータの発熱を招来する。
【0004】
上記の欠点を回避するために、双安定式アクチュエータを採用するという解決策がよく知られている。双安定式アクチュエータでは、一般的に、永久磁石を利用してエネルギー入力無しに磁気電機子を2つの末端位置のいずれか一方に常に保持するが、磁気電機子は、磁気コイルへの一時的な給電により他方の末端位置に移動すると、コイルが励起されることなく当該他方の末端位置に保持される。エネルギーは、磁気電機子を2つの末端位置のいずれか一方に移動させる際のみに必要とされ、その大部分が機械的仕事へと変換される。しかし、上記のような解決策では、双極型電源、すなわち、第1安定位置から第2安定位置への移動が所望されるか、第2安定位置から第1安定位置への移動が所望されるかによって電流方向が異なる電源が必要である。ところが、この電流双極性では、複数のスイッチングトランジスタ(通常「Hブリッジ」と呼ばれるアセンブリによる)の統合化が一般に要求されるため、単極の場合よりも複雑で且つ高価な電気的アーキテクチャが要求される。これらのアーキテクチャの利用可能性は、自動車の電気ネットワークにおいては、特に、機能の多様化を必要とする電気ネットワーク及びそれに関するアーキテクチャ利用可能性においては、まだ疑問が残っている。
【0005】
(従来技術の状況)
従来技術として、本出願人による欧州特許EP1875480が知られている。この技術は、可動アセンブリと、固定された強磁性ステータアセンブリとを備え、強磁性ステータアセンブリは、少なくとも1つの電気励起コイル及び少なくとも1つの永久磁石を備え、永久磁石はそのストローク末端に2つの無電流時安定平衡位置を有する、電磁アクチュエータであって、可動アセンブリは、ステータアセンブリの両側に分布されて前記ステータアセンブリと共同で少なくとも1つの磁気回路を構成する2つの別個の強磁性電機子を有し、永久磁石は、保持電流無しに、ストローク末端の安定平衡位置において、一方又は他方の可動強磁性部分と磁気的に協働可能であることを特徴とする電磁アクチュエータに関する。また、当該従来の解決策では、その変形例によれば、第1コイルから生成される磁束が第1特異磁気回路の無電流時磁束によりカットされるとともに、第2コイルから生成される磁束が第2特異磁気回路の無電流時磁束へ相加されるように、コイルの整合を電気の位相にて行っている。アクチュエータは、双極電流を用いて制御できる。したがって、アクチュエータは単相で、双極電流が流れる。
【0006】
このようなアクチュエータは、実際に2つの無電流時安定位置を有するものの、一方の位置から他方の位置への切り替えのために、制御電流の方向反転が要求される。このことは、複数のパワートランジスタを実現した電子回路が用いられていることを意味する。
【0007】
アクチュエータに対し、例えば特許出願のUS20020149456、又は、つい最近の特許出願のDE102014216274に掲載されているように、単極電源での作動及び2つの安定位置の達成が提案されている。これらの技術は特に、無電流消費時の2つの安定位置を確保するとともに、簡単な単極電源を残し、且つソレノイド型電動アクチュエータのコイルにどの方向の電流を流してもストロークの各半分において単方向のみの力を生じさせる構成を維持するという課題の解決が要される。したがって、これらのアクチュエータは、弾道学的な方法、すなわち、時間的に制限される力を与えるとともに、反対側の安定位置への到達のために移動体に伝達した運動エネルギーを計算することにより、制御しなければならない。
【0008】
上記の特許出願では、安定位置に到達するために、作用方向に応じて特定の正又は負の機械的仕事を行ういわゆる「スナップ」バネ方式の機械的素子、又は、「弾性プランジャ」タイプのスロットにボールをくさび留めする方式の機械的素子を使用することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の文献では、2つの無電流時安定位置を有し且つ単極性の電流で制御可能なアクチュエータを得る際の一般的課題を解決している。しかしながら、これら全ての解決策は、上記安定位置の形成に用いられる機械システム、又は極性反転が可能な電源を必要とするシステムの根本的原理においては、固有の欠陥が存在する。
【0010】
実際に、第1の欠点は、アクチュエータのアセンブリの難しさ、特に、一方側のソレノイド型アクチュエータと他方側の機械的安定部材(バネ及び/又はボール)との間における必要な指標付けの難しさにある。短いストローク、典型的には数十ミリメートルから数ミリメートルの短いストロークを考える場合、可動部材と機械的安定性部材との間における指標付けの誤りは、弾道学的な機能性を妨げ得る、アクチュエータの非対称性を意味する。製造公差を考慮した工業的生産を想定する実施形態では、精巧な公差を確保するために必要なコストが高騰し、また、アクチュエータの使用の利点が最小となることは分かる。
【0011】
さらに、従来の解決策では、ある程度のコンパクト性を示すが、異なる機能に関する上手い統合が保証されておらず各機能が分離しているという欠点が、依然として存在する。例えば、ソレノイドアクチュエータが初期の移動のみを担当し、その後、安定位置への到達及びその維持を担当するのはただ機械的安定部材(バネ及び/又はボール)である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のように、本発明の一目的は、よりコンパクト化、より統合化、アセンブリ公差の制限がより緩い解決策をもって、双方向移動の達成という需要を依然として満たしつつ、2つのストローク末端安定位置を確保し、1つの単極電源の使用を維持し、従来の解決策を顕著に改良したアクチュエータを提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、少なくとも1つの永久磁石が賢明に統合されており、安定位置を維持及び解除する機能を前記永久磁石が少なくとも部分的に行う、アクチュエータを提供することである。
【0014】
これらの技術的課題に対処するために、本発明は、最も一般的な概念において、一方の安定位置から他方の安定位置への通行を極性変更なしに制御するパルス的な電気制御部を用い、ストローク末端における2つの無電流時安定位置の間での部材移動を制御するアクチュエータであって、強磁性の可動ブロックと、前記可動ブロックに相対して固定され電気的に制御される少なくとも1つのワイヤコイルを、含むステータと、前記可動ブロックに相対して固定され前記可動ブロックの両側に存在する、少なくとも2つの強磁性磁極と、を備え、前記2つの安定位置への到達のために前記可動ブロックを引き付ける少なくとも1つの永久磁石を更に備え、前記可動ブロックは、当該可動ブロックの移動過程において、前記強磁性磁極と共同で少なくとも2つの可変の空気間隙を規定し、前記電気制御部は、前記コイル内において単一方向(一方向/単向)の磁束が生成されるように、前記少なくとも1つのコイルを制御し、前記可動ブロック、前記少なくとも1つのコイル、前記強磁性極及び前記少なくとも1つの磁石が磁気回路を構成し、当該磁気回路において、前記可動ブロックの位置にかかわらず、前記永久磁石の磁束が、前記少なくとも1つのコイルにより生成される磁束に対向する、アクチュエータに関する。
【0015】
好ましくは、前記アクチュエータは、前記可動ブロックの移動を制限する2つのストッパを備え、前記ストッパは、前記磁石及び前記コイルの磁束をチャネリングする軟質の強磁性材料からなる。好ましくは、前記少なくとも2つの空気間隙は、前記可動ブロックが当該可動ブロックのストローク中立位置に存在とするとき、前記コイルの中央に対して対称に配置される。
【0016】
また、好ましくは、アクチュエータは電子回路と連動し、前記電子回路は、前記可動ブロックの位置を前記2つの安定位置のいずれか1つから反対側の安定位置に変更するために、前記可動機構の元位置とその反対側の位置との間での前記可動機構の移動時間よりも短い持続期間及び不変の極性を有する、前記コイルへ供給する電気的パルスを生成する。
【0017】
特定の実施形態において、アクチュエータは、相互に結合し且つ逆方向の磁束を形成する2つの同軸コイルを備える。
【0018】
好ましくは、前記磁石は、前記可動機構又は前記ステータ上に保持されている。
【0019】
好適には、アクチュエータは、電源の電圧の関数及び/又は周囲温度の関数であるテーブルからの電気的パルスの持続期間を制御する電子回路をさらに備える。前記電気的パルスの持続期間は、位置センサからのフィードバックの関数であってもよい。
【0020】
前記フィードバックは、例えば、補助コイルによって測定された逆起電力、又は、供給コイルを通じて得られた電流準位に由来してもよい。また、前記フィードバックは、前記磁石によって放出された磁場の強度又は方向を検出する磁気感受性センサに由来してもよい。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の各図面を参照して詳細な実施形態を読むことによって明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】1a及び1bは、単一のコイルを有する本発明の第1実施形態による装置の上面図及び縦断面図であり、1c及び1dは、1bに示す装置における2つの末端安定位置を示す縦断面図である。
図2】2a~2dは、図1の装置の代替形態の縦断面図である。
図3】2つのコイルを有する本発明の別の実施形態の縦断面図である。
図4】本発明に係る装置によって生成される力の異なる成分の典型的展開を示すグラフである。
図5】本発明に係る装置に印加する制御電圧及びその対応する電流の典型的変化を示すグラフである。
図6】回転ストロークを有する本発明に係る装置の実施形態の斜視図である。
図7】7a、7bは、直線ストロークを有する本発明に係る装置の2つの他の実施形態の各縦断面図である。
図8】直線ストロークを有する本発明に係る装置の別の実施形態の部分的斜視図である。
図9】本発明に係るアクチュエータの制御アーキテクチャの模式図である。
図10】10a、10b及び10cは、本発明に係るアクチュエータの3つの代替形態の各断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る装置の一例を図1a~図1dに示す。図1b~図1dは、図1aに示す平面に沿った断面図である。本実施形態では、当該装置は軸対称形状の線形アクチュエータとなっているが、その形状は限定されない。例えば、直方体状、又は図6に示すような環状の構成も挙げられる。
【0024】
本明細書において説明される装置は、軸対称形状に相対して線形に且つ軸方向に移動する軸(1)を備える。図1bでは、当該軸が可動ブロック(2)に保持され、可動ブロック(2)の両側には永久磁石(3a、3b)が軸方向に配置されている。軸(1)と可動ブロック(2)と永久磁石(3a、3b)とからなるアセンブリは、第1位置から第2位置へ、又は第2位置から第1位置へと、軸方向に並進移動が可能な機構を構成する。この可動機構によって規定される2つの末端位置を図1c及び1dに示す。該2つの位置はいわゆる安定位置である。すなわち、2つの位置は、装置が受けた外部負荷又は加速度に対抗する永久磁石(3a、3b)により、電流なく保持される。
【0025】
可動機構は、強磁性のシース(4)及びフランジ(5)と、銅又はアルミニウムのような導電性材料からなるワイヤコイル(6)とによって形成されたステータアセンブリに相対して移動する。シース(4)及びフランジ(5)は、コイル(6)が給電されたときにコイル(6)から生成された磁場と、磁石(3a、3b)から生成された磁場の少なくとも一部とをチャネリングするように、コイル(6)を取り囲んでいる。したがって、可動機構は、可動ブロック(2)の両側において2つの軸受(7)に対して摺動することで、ステータアセンブリに相対して移動する。ステータアセンブリは、可動ブロック(2)の両側の2つの強磁性極(15a、15b)を構成することにより、軸方向における2つの空気間隙(11a、11b)及び半径方向における2つの空気間隙(12a、12b)を構成する。好ましくは、アクチュエータは、一方側の空気間隙(11a、12a)及び他方側の空気間隙(11b、12b)が可動ブロック(2)のストローク中央位置に対して互いに恒等である対称性を有する。
【0026】
軸受(7)及び軸(1)は、非磁性材料で作られることが好ましい。但し、アクチュエータにおける力の法則を局所的に調節する必要性、又は、材料の機械的強度という理由から、当該素子を強磁性材料から作ることも考えられる。本開示では、磁石に対する機械的衝撃を最小化するために、非限定的な手法にて、可動ブロック(2)と軸受(7)とが、互いの接触ゾーン(10)(図1c及び1d参照)で接触することにより、機械的停止を作り出す構成を提案する。本開示では、充填された電線をコイル(6)から長手方向に引き出すための開口部(9)を提案するが、開口部(9)は任意である。電線は、シース(4)から半径方向に引き出してもよい。
【0027】
図1bでは、点線の矢印は、電力が供給されたときにコイル(6)が生成した磁束の循環方向を示す。実線の矢印は、磁石(3a、3b)が生成した磁束の配置方向を示す。本発明に係る装置の全ての実施形態において、磁石が生成した磁束の循環方向は、可動機構の位置にかかわらず、コイル(6)から生成された磁束とは逆方向であることが不可欠である。従って、本発明にとって、この磁束の循環に従って単一の巻線方向、及びコイル(6)への電圧もしくは電流の印加方向を設定、選択することが重要である。この第1実施形態では、永久磁石(3a、3b)の磁束は付加のものである。すなわち、矢印の方向を軸方向において一致させることにより、磁石(3a、3b)の磁束方向とコイル(6)の磁束方向とを対向させる。
【0028】
実際、可動機構が第1安定位置(図1c)であるにせよ、第2安定位置(図1d)であるにせよ、コイル(6)の磁束は常に磁石(3a、3b)の磁束に対向する。これは本発明の一目的である。この場合、コイル(6)の磁束と磁石(3a、3b)の磁束との相互作用に起因し磁石(3a、3b)の残留磁束及びコイル(6)の内部電流に比例する力が、形成される。なお、この力は、コイルの可変磁気抵抗により形成された力へ相加される。こうして、可動機構を安定位置から中央位置の方向へ離脱させるように付勢する。その結果、当該比例する力は、可変の磁気抵抗力と同様にストロークの途中で相殺される。
【0029】
なお、本明細書において、「磁石とコイルとで対向する磁束」という表現とは、可動ブロック(2)の位置がどうであれ、コイル(6)を巡回する磁石(3a、3b)の磁束、すなわち上記比例する力の起点にある磁束が、給電されたときのコイルの磁束と対向することを意味する。
【0030】
図1cにおいて、可動ブロック(2)による仮定の第1無電流時安定位置が示される。軸方向における空気間隙(11a)は最小化され、ゼロ間隔又は薄いエアナイフとなるように低減され、その一方、軸方向における空気間隙(11b)は最大化される。電流がコイル(6)を通過すると、磁石(3a、3b)によって生成される磁束とコイル(6)によって生成される磁束とが、この2つの空気間隙において対向する。空気間隙の不均衡及び磁気抵抗により、可動ブロック(2)は駆動されてその安定位置から離れる。
【0031】
図1dにおいて、可動ブロック(2)による仮定の第2無電流時安定位置が示される。軸方向における空気間隙(11a)は最大化され、その一方、軸方向における空気間隙(11b)は最小化され、ゼロ間隔又は薄いエアナイフとなるように低減される。電流がコイル(6)を通過すると、磁石(3a、3b)によって生成される磁束と、コイル(6)によって生成される磁束とが、この2つの空気間隙において対向する。空気間隙の不均衡及び磁気抵抗により、可動ブロック(2)は駆動されてその安定位置から離れる。
【0032】
本発明の別の目的は、可動ブロック(2)、シース(4)及びフランジ(5)の三者間の可変の磁気抵抗を利用し、コイル(6)の単一作用によって生成される力に比例する力を与えることにある。これらの素子の寸法は、可動機構が中央位置、又は図1bに示すストロークの途中に存在するときに、一方側の可動ブロック(2)と他方側のシース(4)及びフランジ(5)との間に存在する軸方向の空気間隙(11a、11b)及び半径方向の空気間隙(12a、12b)が可動ブロック(2)の両側において恒等となるように、設定されていることが好ましい。なお、磁束のチャネリングが強磁性によって行われる限り、シース(4)及びフランジ(5)の使用は特に必須ではないと明記しておく。また、アクチュエータに非対称な挙動をさせる場合、中央位置に対して非対称な各種の空気間隙も考えられると明記しておく。
【0033】
安定位置という機能、及び安定位置の押し力若しくは引き力を達成するための永久磁石の使用により、本発明に係る装置は、アクチュエータのサイズ、アセンブリ設計の容易さ及び効率において、顕著な改良を実現している。
【0034】
図2aから2dは、代替実施形態の一例であり、可動ブロック(2)、コイル(6)、軸(1)及び軸受(7)に関しては図1bに示す装置と同様であるが、永久磁石(3a、3b)の位置に関しては異なる。
【0035】
図2aでは、永久磁石(3a、3b)は、可動機構上に配置されず、ステータアセンブリ上に配置され、一方側のフランジ(5)及び他方側のシース(4)に保持されている。
【0036】
図2bでは、永久磁石(3a、3b)は、例えば環状の磁石、好ましくは半径方向に磁化された磁石の形態で、フランジ(5)及びシース(4)に一体的に配置されている。この単一コイルの実施形態において、本発明によれば、永久磁石(3a、3b)は、磁束が相加されるように磁化されなければならない。すなわち、一方の磁石(3a)の、半径方向における内向き磁性と、他方の磁石(3b)の、半径方向における外向き磁性とにより、磁束が相加される。このようにして、磁石(3a、3b)の磁束は常にコイル(6)の磁束に対向する。図2bでは、フランジが存在せず、シース(4)がステータの強磁性部分の全てを成している。さらに、ワイヤを軸方向に沿って引き出すための例えば半径方向に設けた開口(ここでは図示せず)は存在しない。
【0037】
図2cでは、磁石(3a、3b)は、例えば、シース(4)の2つのパーツの間に存在する環又は角度を有する扇形という形態で、アクチュエータの外側においてシース(4)上に配置される。この実施形態は、特に、より大きな体積の磁石が使用できるため、より大きな潜在力を利用することが可能となる。磁石(3a、3b)によって生成される磁束の方向は、コイル(4)が給電されたときにコイル(4)から生成される磁束の方向とは、依然として逆である。
【0038】
図2dでは、永久磁石は、可動ブロック(2)の内部に配置されて且つ軸方向に磁化された単一の環状磁石(3a)という形態である。例えば、当該永久磁石は、可動ブロック(2)の2つ半分パーツの間に介在する材料層として、給電されたときのコイル(6)の磁束とは常に対向する。
【0039】
なお、第1実施形態に代替する上記の実施形態は、限定ではなく、単に一例として記載されていることを明記しておく。
【0040】
(第2実施形態の詳細な説明)
図3は、2本のみの電力線を用いて互いに直列又は並列接続させた2つの同軸コイル(6a、6b)を備える代替の実施形態を示す。これらのコイル(6a、6b)は、磁気シース(4)の内側において、強磁性の磁極片(8)の両側にそれぞれ位置している。コイル(6a、6b)の大部分の磁場の循環方向を点線の矢印のような方向とするために、コイル(6a、6b)の巻線方向は、2つのコイル(6a、6b)により生成される磁束が互いに逆方向となるよう、コイル同士で互い違いに設定されている。磁石(3a)の磁性方向が上記とは逆の場合、上記の循環方向を逆にしてもよい。
【0041】
本実施形態では、磁極片(8)は、実際に半径方向に延在し、且つ、例えば半径方向において出磁又は再入磁するコイル(6a、6b)の磁束と常に対向するように磁化された環の形態であり、磁石(3a)により内蔵されている。なお、当該環は、全体上の再入磁又は出磁を形成するために、部分的に単方向磁化されたタイル又は角柱のアセンブリと置換してもよいことを明記しておく。
【0042】
(本発明に係る装置の動作原理)
図4は、可動ブロック(2)の位置(ミリメートル[mm])関数として、本発明に係るアクチュエータにより生成される典型的な力(ニュートン[N])曲線(形状及び大きさは限定しない)を示す。コイル(6)に電流がない場合、可動ブロック(2)に加わる力(F0)は、グラフの左側では負、グラフの右側では正であり、それぞれは2つの無電流時安定位置を表す。電流を流して可動ブロック(2)に加わる力を崩した場合、磁石(3a、3b)の作用及びコイル(6)に注入された電流による作用に比例する第1成分(Fnl)、及び、電流の単独作用下における、シース(4)とフランジ(5)と可動ブロック(5)との間の可変磁気抵抗による作用に相当する第2成分(Fnl)が、存在する。この2つの曲線は、似た推移を示している。それゆえ、その共同作用は、グラフ左側の正の力及びグラフ右側の負の力を与える。この力は、力が次第に減少して互いに打ち消されるストローク中央位置へ可動機構を向かわせるために可動機構を安定位置から離脱させる、向上した能力を意味する。
【0043】
従って、本発明では、コイル(6)に注入する電圧又は電流を、可動ブロック(2)の移動に同期するように制御するために、アクチュエータを電子装置と連動させることが重要である。理想的には、以下に説明するように、閉ループを用い、アクチュエータ外部のセンサ、又はアクチュエータと統合されたセンサ(図示せず)が実行する位置検出により、コイルへの給電停止を制御してもよい。また、例えば、供給電圧、及び負荷や温度のような外部条件の変動を考慮に入れた幾つかの要素を有するテーブルに基づく開ループを用い、給電を停止してもよい。
【0044】
一例として、図5は、2つの異なる制御電圧準位(ボルト[V])について、コイル(6)への給電の持続期間(ミリ秒[ms])が可変であることを示す。9ボルトの場合、当該持続期間は、16ボルトの制御電圧の場合に必要な持続期間よりも長い。その結果、両者間の非一様の条件(速度、ピーク電流準位など)を厳密、均等に仮定しないとして、たとえ最終的に同様の機械的エネルギーになるとしても、アンペア数としての電流([A])態様が異なる。
【0045】
位置情報、又は電流閾値に関して閉ループを利用する場合、本発明に係る装置は、好適には、電流閾値を検出するか、コイル(6a、6b)自体、もしくはコイル(6a、6b)に隣接し電圧が供給されない1つ又は複数の別の検出用コイルに起因する誘起電圧を検出する機能が統合されていてもよい。例えば、位置の検出は、これらの検出用コイルで誘起された電圧が閾値に達したときに行ってもよい。また、制御コイル(6a、6b)内の電流が所定値に達すると、検出を行ってもよい。
【0046】
図7a、図7b、図8は他の実施形態における線形アクチュエータである。図7a及び7bは、磁石(3a、3b)の磁化配向で区別される2つの類似する実施形態を示す。図7aでは、磁化は半径方向において出磁、又は再入磁される。図7bでは、磁化は移動軸に対して角度をなす配向となる。ここでいう角度は45°に近いが、この値は限定的なものではなく、ストローク両側の安定性を最大にするために磁石力を特に増加させる役割を果たす。ステータ構造は、フランジが存在せず単一のシース(4)から構成され、軸方向の空気間隙が存在せず、半径方向の空気間隙(12a、12b)のみを有するという点で、上述した構成とは異なる。フランジ無しにシース(4)単独で構成された強磁性磁極(15a、15b)は、上記空気間隙(12a、12b)を形成するとともに、自軸方向の延在領域において磁石(3a、3b)を受け入れる役割を果たす。磁石(3a、3b)の磁化配向は、磁石(3a、3b)から生成される磁束が、可動ブロック(2)の位置に関係なく常にコイル(6)の磁束と対向するようになっている。
【0047】
図7bには、例えばホール効果を利用し、所定箇所の磁気誘導を検知する磁気感応センサ(14)が示されている。磁気感応センサ(14)の位置は、信号最適化のために調節することが可能である。また、磁気感応センサ(14)の強度又は方向は、可動ブロック(2)の位置に応じてスケーラブルである。なお、このようなセンサを本明細書に開示の他の任意の態様に使用可能であることを明記しておく。
【0048】
図8は、環状磁石の代わりに扇形磁石(3a1、3a2、3b2)のみを使用した、よりコンパクトな実施形態を示す。このように、扇形磁石(3a1、3a2、3b2)は、シース(4)の両磁極(4a、4b)の間においてシース(4)に埋入している。
【0049】
以上に開示した例の全てが、線形アクチュエータに関するものであるが、上記の開示された教示を適用することにより、回転型又は曲線型のアクチュエータも本発明として完全に考えられる、ということを明記しておく。
【0050】
例として、図6はこのような回転型のアクチュエータが示されている。図中の点線は可動ブロック(2)が追従する経路を示す。図示では、可動ブロック(2)に磁石(3a、3b)が固定されている。上記線形の場合と同じ素子及び機能を有するが、最大の違いは、シース(4)及びフランジ(5)の代わりに、強磁性材料から作られたステータ(13)が用いられることである。但し、ステータ(13)は、直接もしくは間接的に軸受を介して磁束の遮断及びチャネリングを確保する機械的及び磁気的機能を、上記と同様に持っている。
【0051】
図9は、本発明に係るアクチュエータの制御に用いることが可能な制御アーキテクチャを示す模式図である。このアーキテクチャは、電子制御回路(ECU)に信号を送る位置センサ(SENS)と連動可能なアクチュエータ(ACT)を備える。アクチュエータ(ACT)へ送信されるパルスの持続期間を最良に較正するために、電子回路(ECU)は、バッテリ出力電圧(BAT)及び周囲温度(TEMP)の情報から当該パルス持続期間を計算するためのテーブル(TAB)を備える。
【0052】
図10a、10b及び10cは、本発明に係るアクチュエータの3つの代替形態の3つの断面図を示す。図10a、10b、10cに示すこれら例のうちの一方又は他方のアクチュエータの採用は、生産コストと所望の性能との折衷により決定されるのであろう。
【0053】
図10a、10b及び10cに示されるアクチュエータは、共通の要素を有し、特に、永久磁石(3)を間に挟んだ2つの可動ブロック(2a、2b)上に保持されているとともに2つの軸受(17)内をカイド摺動する軸(1)を有する。この可動機構は、シース(4)上にそれぞれ保持された上下2つのフランジ(5a、5b)により画定された2つのストローク末端安定位置の間を移動する。可動ブロック体(2a、2b)、フランジ(5a、5b)及びシース(4)は、磁石(3)及びコイル(6、6a、6b、6c)の磁場をチャネリングするために、軟質の強磁性材料から作られている。コイルの数は、3つの図に示される相違に応じて異なる。ストローク末端は、可動ブロック(2a、2b)とフランジ(5a、5b)との接触、又は、可動ブロック(2a、2b)とガイド軸受(17)との接触によって体現される。
【0054】
図10aでは、コイル胴体(16)上に固定されて且つアクチュエータの中央横断面の近傍に位置する1つだけのコイル(6)が存在する。これにより、コイル(6)は、一方又は他方のストローク末端位置に存在するときの可動ブロック(2a、2b)とは半径方向において対向する。例えば、図10aでは、「上部」のストローク末端位置が図示され、可動ブロック(2b)がコイル(6)とは半径方向において対向している。
【0055】
図10bでは、コイル胴体(16)上に固定されて且つアクチュエータの中央横断面の両側に位置する2つのコイル(6a、6b)が存在する。これにより、コイル(6a、6b)は、一方又は他方のストローク末端位置に存在するときの可動ブロック(2a、2b)とは半径方向において対面する。例えば、図10bでは、「底部」のストローク末端位置が図示され、可動ブロック(2b)が底部のコイル(6b)とは半径方向において対向している。
【0056】
図10cでは、コイル胴体(16)上に固定された3つのコイル(6a、6b、6c)が存在する。アクチュエータの中央横断面の近傍にはコイル(6c)、前記中央横断面の両側にはコイル(6a、6b)が配置されている。これにより、これらのコイル(6a、6b、6c)は、一方又は他方のストローク末端位置に存在するときの可動ブロック(2a、2b)とは半径方向において対面する。例えば、図10cでは、ストローク中央位置が図示されているが、読者は、「上部」のストローク末端位置ではコイル(6a、6c)がそれぞれ可動ブロック(2a、2b)に対面し、「底部」のストローク末端位置ではコイル(6c、6b)がそれぞれ可動ブロック(2a、2b)に対向するようになることを理解できる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7a-7b】
図8
図9
図10a-10b】
図10c
【国際調査報告】