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特表2022-505513一核体菌糸体材料および関連する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】一核体菌糸体材料および関連する製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20220106BHJP
   A01G 18/22 20180101ALI20220106BHJP
   A01G 18/69 20180101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N1/14 A
A01G18/22
A01G18/69
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521783
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 US2019057955
(87)【国際公開番号】W WO2020086907
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/749,717
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520032516
【氏名又は名称】マイコワークス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ロス フィリップ
【テーマコード(参考)】
2B011
4B065
【Fターム(参考)】
2B011AA07
2B011BA13
2B011BA17
2B011GA03
2B011GA08
2B011GA09
2B011GA10
4B065AA57X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BC42
4B065BC50
4B065CA60
(57)【要約】
一核体菌糸体材料のシートを作出するための一核体菌糸体シートの製造システム。菌糸体シートの製造システムは、培養ユニット、胞子ストックユニット、プレーティングユニット、区分ユニット、サブプレーティングユニット、拡張ユニットおよびコロニー形成ユニットを含む。培養ユニットは、一核体培養物を調製する。胞子ストックユニットは、無菌実験室条件下で複数の子実体を成長させて、胞子ストックを作出する。プレーティングユニットは、過酸化物ベースの胞子レスキューおよびプレーティングプロセスを行う。区分ユニットは、頑強な菌糸を区分するために適応可能である。サブプレーティングユニットは、生じた子実マスター上に頑強な菌糸をサブプレーティングおよび拡張する。拡張ユニットは、その後、生じた子実マスターを生じた体積の適切な製造に拡張する。コロニー形成ユニットは、菌糸体基材のその後のコロニー形成を行うために適応可能であり、それによって、実質的に欠陥のない菌糸体のシートを作出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一核体菌糸塊の製造システムであって、
運搬プラットフォームを有するトレイ、および運搬プラットフォームに配置された複数の細孔を有する透過性膜を含む成長空間;
透過性膜に配置された真菌株を接種された基材;
基材の上に配置された多孔質材料;
前記成長空間内で成長する菌糸体の塊であって、塊が、表面の10%未満が子実体の形成を示す前記表面を有する、菌糸体の塊
を含む、一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項2】
成長空間の環境が、トレイの空の空間の体積に対する基材質量の比が、0.5~5.0g/ccであり、基材体積に対するトレイの空の空間の体積が、0.01~1.0であり、基材面積に対するトレイの空の空間の体積が、0.5~5.0cc/cm2であるようなものであり、CO2濃度が、定常状態条件下で3%超に維持され、相対湿度が、定常状態条件下で40%超に維持され、O2濃度が、定常状態条件下で20%未満に維持されて、子実体なしで菌糸体の成長を促進する、請求項1に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項3】
前記表面の5%未満が、子実体の形成を示す、請求項1に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項4】
成長空間の環境が、トレイの空の空間の体積に対する基材質量の比が、0.5~5.0g/ccであり、基材体積に対するトレイの空の空間の体積が、0.01~1.0であり、基材面積に対するトレイの空の空間の体積が、0.5~5.0cc/cm2であるようなものであり、CO2濃度が、定常状態条件下で3%超に維持され、相対湿度が、定常状態条件下で40%超に維持され、O2濃度が、定常状態条件下で20%未満に維持されて、子実体なしで菌糸体の成長を促進する、請求項3に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項5】
前記表面の1%未満が、子実体の形成を示す、請求項1に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項6】
成長空間の環境が、トレイの空の空間の体積に対する基材質量の比が、0.5~5.0g/ccであり、基材体積に対するトレイの空の空間の体積が、0.01~1.0であり、基材面積に対するトレイの空の空間の体積が、0.5~5.0cc/cm2であり、CO2濃度が、定常状態条件下で3%超に維持され、相対湿度が、定常状態条件下で40%超に維持され、O2濃度が、定常状態条件下で20%未満に維持されて、子実体なしで菌糸体の成長を促進する、請求項5に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項7】
一核体菌糸塊の製造システムであって、
一核体培養物を調製するための培養ユニット;
胞子ストックを作出するための胞子ストックユニット;
胞子レスキューおよびプレーティングプロセスを行うためのプレーティングユニット;
頑強な菌糸を区分するための区分ユニット;
頑強な菌糸を、生じた子実マスター上にサブプレーティングするため、および拡張するためのサブプレーティングユニット;
その後、生じた子実マスターを生じた体積の適切な製造に拡張するための拡張ユニット;ならびに
菌糸体の塊を作出するためのコロニー形成ユニット
を含む、一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項8】
一核体培養物が、表面積の5%未満が子実体の形成を示す前記表面積を有する実質的に欠陥のない菌糸体の塊を調製するために適応可能である、請求項7に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項9】
一核体培養物が、表面積の1%未満が子実体の形成を示す前記表面積を有する実質的に欠陥のない菌糸体の塊を調製するために適応可能である、請求項7に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項10】
培養ユニットが、真菌材料の生きている培養試料を利用して一核体培養物を調製する、請求項7に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項11】
胞子ストックユニットが、胞子ストックを作出するために、無菌条件下で複数の子実体を成長させるように設計される、請求項7に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項12】
プレーティングユニットによって行われる胞子レスキュープロセスが、過酸化物ベースである、請求項7に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項13】
プレーティングユニットが、胞子レスキューおよびプレーティングプロセスを行うために、複数の子実体を利用する、請求項12に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項14】
コロニー形成ユニットが、菌糸体基材のその後のコロニー形成を行うために適応可能であり、それによって、菌糸体のシートを作出する、請求項7に記載の一核体菌糸塊の製造システム。
【請求項15】
菌糸塊を製造するための方法であって、
培養ユニット、胞子ストックユニット、プレーティングユニット、区分ユニット、サブプレーティングユニット、拡張ユニットおよびコロニー形成ユニットを有する菌糸塊の製造システムを準備する工程;
培養ユニットで、真菌の生きている培養試料を得て、一核体培養物を調製する工程;
胞子ストックユニットで、無菌条件下で複数の子実体を成長させて、胞子ストックを作出する工程;
プレーティングユニットで、過酸化物ベースの胞子レスキューおよびプレーティングプロセスを行う工程;
区分ユニットで、過酸化物ベースの胞子の成功した発芽の際に、頑強な菌糸を区分する工程;
サブプレーティングユニットで、生じた子実マスター上に頑強な菌糸をサブプレーティングおよび拡張する工程;
その後、拡張ユニットで、生じた子実マスターを生じた体積の適切な製造に拡張する工程;ならびに
コロニー形成ユニットで、菌糸体基材のその後のコロニー形成を行い、それによって、実質的に欠陥のない菌糸体の塊を作出する工程
を含む、方法。
【請求項16】
欠陥のない菌糸体の塊が、表面積の5%未満が子実体の形成を示す前記表面積を有する、請求項15に記載の菌糸塊を製造するための方法。
【請求項17】
欠陥のない菌糸体の塊が、表面積の1%未満が子実体の形成を示す前記表面積を有する、請求項15に記載の菌糸塊を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年10月24日に出願された米国仮特許出願第62/749717号の利益を主張し、その開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
本実施形態は、一般に、一核体株の開発に関し、より具体的に、一核体菌糸体物質を利用する菌糸体のシート、およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌のライフサイクルにおいて、真菌の胞子は、同核状態の菌糸体に発芽する。「同核状態の」という用語は、一般に、核が一般に同一である多核細胞を指し、実際には、真菌の胞子の発芽に関して、これらの多核細胞は、互いに厳密に類似しない。十分に理解されるように、同核状態の菌糸体は、接合し、性的に繁殖して、菌糸塊における遺伝的多様性の増加を生じ得る。
単一の担子胞子が発芽して、一核体菌糸フィラメントの塊を生じ、ここで、そのそれぞれの細胞は、単一の一倍体核を含有する。単一の胞子から生じる分岐した菌糸の複雑に織り合わされたマットは、菌糸体と呼ばれる。菌糸体の一部は、真菌が成長している培地内に沈んで成長するが、気中菌糸が存在し、かつ発芽して無性生殖サイクルを完了することができる豊富な単一核の半数体胞子(分裂子)を生成する。菌糸体は、それが別の真菌由来の菌糸と出会うまで、一核体として成長を続ける。この時点で、2つの別々の真菌由来の菌糸は融合し、仲間が性的に適合性であるか否かの決定は、細胞内で起こる。2つの真菌が適合性である場合、相互の核移動が、細胞融合後に起こる。
【0003】
二核体の形態は、いくつかの点で一核体の形態と異なるが、最も特徴的には、二核体の細胞は、かすがい連結の形成を含む複雑な形態の細胞分裂を受けて、すべての二核体細胞内のそれぞれの半数体核の1つのコピーを保存する。対照的に、一核体細胞は、正常な生殖プロセスを経由せず、したがって、いかなる段階でも子実体を生じない。
真菌組織の成長が、生じる菌糸体組織がさまざまな産業における実用性を有するように、方向づけおよび制御され得る。一部の場合において、菌糸体のバイオテキスタイルのシートは、これらの産業プロセスの結果であり、回収の際に、硬化および仕上げを行って、プラスチック、フォームおよび獣皮に質感、外観ならびに性能が類似している品質を呈することができる。これらの材料のための一般的な使用は、皮革が従来使用されていたであろう産業を含む。これらの産業において、皮革様材料の均一性は、多くの場合、価値がある。真菌は、それらの環境において刺激に対して非常に感受性であり、重力屈性、熱互変性、接触屈性、屈光性、(屈化性)および屈水性の刺激に応答して、拡張する菌糸の成長の方向および成長力を変える能力を有する。これらの成長因子は、最終製品における変動性を低減するために、操作されてもよいことが理解される。
【0004】
したがって、より少ない資源を利用し、かつ環境への影響が低い、大量の一核体材料を作出するための効率的で信頼性の高いシステムおよび方法に対する必要性が存在する。このような一核体菌糸体材料の製造システムは、後処理の量なしで菌糸体組織生成物を精製し、かつ遺伝的多様性、傷および子実体を減少させるであろう。このようなシステムは、厚さおよび外観における高度の均一性、ならびにバッチ間で高度の不変性を有する菌糸体材料を製造するであろう。また、このようなシステムは、変動性および傷を最小化することに関連する最小限の時間、コストおよび複雑さを利用して、菌糸体材料を製造するであろう。本実施形態は、これらの目的を成し遂げる。
【発明の概要】
【0005】
先行技術において見出される限界を最小化するため、および本明細書を読む際に明らかになる他の限界を最小化するために、本開示は、欠陥がないか、または実質的に欠陥がない、一核体菌糸体シートを提供する。好ましくは、一核体培養物は、それらの遺伝子材料の半分を欠き、かつ子実形成の発達挙動を推進する生殖細胞のシグナル経路も欠く。したがって、生じる菌糸体材料中に存在する欠陥は、実質的に低減される。好ましい実施形態において、レイシ(G.lingzhi)および他の真菌の一核体株が、子実体形成に関連する組織を発現しない菌糸体皮革の製造において使用される。しかしながら、一核体成長できる任意の適切な真菌を利用し得る。さらに他の実施形態において、ハイブリッド一核体株が作出され得る。
本開示は、真菌材料の生きている培養試料を利用して一核体培養物を調製するための培養ユニットを含む菌糸体シートの製造システムも提供する。システムは、胞子ストックユニット、プレーティングユニット、区分ユニット、サブプレーティングユニット、拡張ユニットおよびコロニー形成ユニットをさらに含む。好ましい実施形態において、胞子ストックユニットは、無菌実験室条件下で複数の子実体を成長させて、胞子ストックを作出するように設計される。プレーティングユニットは、過酸化物ベースの胞子レスキューおよびプレーティングプロセスを行う。区分ユニットは、頑強な菌糸を区分するために適応可能である。好ましくは、サブプレーティングユニットは、生じた子実マスター上に頑強な菌糸をサブプレーティングおよび拡張する。拡張ユニットは、その後、生じた子実マスターを生じた体積の適切な製造に拡張する。コロニー形成ユニットは、基材のその後のコロニー形成を行うために適応可能であり、それによって、菌糸体のシートを作出する。
【0006】
好ましい実施形態は、一核体菌糸体シートを製造するための方法をさらに提供する。方法は、菌糸体シートの製造システムを準備することによって開始する。次に、一核体培養物は、真菌の生きている培養試料を利用して、培養ユニットで調製される。次いで、複数の子実体を、胞子ストックユニットで、無菌条件下で成長させ、胞子ストックを作出する。その後、過酸化物ベースの胞子レスキューおよびプレーティングプロセスは、プレーティングユニットで行われる。過酸化物ベースの胞子の成功した発芽の際に、頑強な菌糸は、区分ユニットで区分される。次に、頑強な菌糸は、サブプレーティングユニットで、生じた子実マスター上にサブプレーティングおよび拡張される。次いで、生じた子実マスターは、その後、拡張ユニットで、生じた体積の適切な製造に拡張される。最後に、基材のその後のコロニー形成が行われ、それによって、コロニー形成ユニットで菌糸体のシートを作出する。
【0007】
本発明の第1の目的は、一核体菌糸体シートの製造システム、および大量の実質的または完全に純粋な一核体材料を作出するための方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、重度の後処理なしで菌糸体組織生成物を精製し、かつ天然に見出される任意のシートと比較して、低減された遺伝的多様性、傷および子実体を有するシートを製造する、一核体菌糸体シートの製造システムを提供することである。
本発明の第3の目的は、厚さおよび外観における高度の均一性、ならびにバッチ間で高度の不変性も有する菌糸体材料を回収するための一核体菌糸体シートの製造システムを提供することである。
本発明の第4の目的は、変動性および傷を最小化することに関連する最小限の時間、コストおよび複雑さを利用して、菌糸体材料を製造する一核体菌糸体シートの製造システムを提供することである。
本発明のこれらおよび他の利点ならびに特徴は、本発明を当業者に理解可能にするために、具体的に記載される。
【0008】
図面中の要素は、それらの明瞭さを増強し、本発明のこれらのさまざまな要素および実施形態の理解を改善するために、必ずしも、一定の縮尺で描かれるわけではない。さらにまた、一般に公知であり、かつ当業者に十分に理解される要素は、本発明のさまざまな実施形態の明確な図を提供するため表されず、そのため、図は、明瞭さおよび簡潔さの利益のために形式上一般化される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発明の好ましい実施形態による一核体菌糸体シートの製造システムの略図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による2つの発芽した胞子から成長する2つの一核体を図示する概略図である。
図3】本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床において成長する一核体菌糸の透視図である。
図4】本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床における成長後に平らにされた一核体菌糸の透視図である。
図5】本発明の好ましい実施形態による一核体菌糸体シートを製造するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の多くの実施形態および適用に対処する以下の議論において、本明細書の一部を形成し、本発明が実施され得る特定の実施形態を例として示す添付の図面を参照する。他の実施形態が利用されてもよいこと、および本発明の範囲から逸脱することなく変更を行ってもよいことが理解されるべきである。
互いに独立して、または他の特徴と組み合わせて、それぞれ使用することができるさまざまな発明特徴を下記に記載する。しかしながら、任意の単一の発明特徴は、上記で議論された課題のいずれかに対処しない場合があり、または上記で議論された課題の1つのみに対処する場合がある。さらに、上記で議論された1つまたは複数の課題は、下記に記載の特徴のいずれかによって、完全に対処されない場合がある。
【0011】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数形を含む。「および」は、本明細書で使用される場合、他に明示的に言及されない限り、「または」と互換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、列挙されたパラメーターの+/-5%を意味する。本発明のすべての実施形態の任意の態様は、文脈が明確に他を指示しない限り、組み合わせて使用することができる。
文脈が明確に他を必要としない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などの語は、排他的または網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち、「含むが、それに限定されない」という意味で解釈されるべきである。単数または複数で使用される語は、それぞれ、複数および単数も含む。加えて、「本明細書において」、「ここで」、「である一方で」、「上記」および「下記」という語、ならびに同様の意味の語は、本出願において使用される場合、本出願の任意の特定の部分ではなく、全体として、本出願に言及するものとする。
【0012】
本開示の実施形態の記載は、網羅的であること、または本開示を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。本開示の特定の実施形態および例が、例示的な目的のために本明細書に記載されるが、関連する技術の当業者が認識するように、さまざまな等価な改変が、本開示の範囲内で可能である。
図1を参照すると、一核体菌糸体材料のシートを作出するための一核体菌糸体シートの製造システム10が図示される。菌糸体シートの製造システム10は、真菌材料の生きている培養試料を利用して一核体培養物を調製するための培養ユニット20を含む。一核体培養物は、実質的に欠陥のない菌糸体のシートまたは塊を調製するために適応可能である。好ましい実施形態において、レイシおよび他の真菌の一核体株が、子実体形成に関連する組織を発現しない菌糸体皮革の製造において使用される。しかしながら、一核体成長できる任意の適切な真菌を利用し得る。さらに他の実施形態において、ハイブリッド一核体株が作出され得る。
【0013】
菌糸体シートの製造システム10は、胞子ストックユニット30、プレーティングユニット40、区分ユニット50、サブプレーティングユニット60、拡張ユニット70およびコロニー形成ユニット80をさらに含む。胞子ストックユニット30は、無菌実験室条件下で複数の子実体を成長させて、胞子ストックを作出するように設計される。プレーティングユニット40は、過酸化物ベースの胞子レスキューおよびプレーティングプロセスを行う。区分ユニット50は、頑強な菌糸を区分するために適応可能である。サブプレーティングユニット60は、生じた子実マスター上に頑強な菌糸をサブプレーティングおよび拡張する。拡張ユニット70は、その後、生じた子実マスターを生じた体積の適切な製造に拡張する。1つの実施形態において、生じた体積は、約20リットルであるが、しかしながら、他の実施形態において、体積は、20リットルより多くてもよく、またはそれよりも少なくてもよい。コロニー形成ユニット80は、菌糸体基材のその後のコロニー形成を行うために適応可能であり、それによって、実質的または完全に欠陥のない菌糸体のシートまたは塊を作出する。
【0014】
図2は、2つの発芽した胞子102から成長する2つの一核体100を図示する概略図である。菌糸体シートの製造システム10は、二核体段階104、およびかすがい連結108を有する細胞質融合段階106を許容しない。好ましい実施形態において、真菌の一核体培養物は、出来上がった菌糸体ベースの材料に特定の材料品質および機械的特性を付与する可能性があるマンネンタケ属(Ganoderma)組織に関連するかすがい連結108を欠く。加えて、細胞の発現およびそれらの構成の生化学は、天然に見出されるものから変化し、これは、硬化および仕上げプロセスを変えることができる。さらに、一核体培養物は、それらの遺伝子材料の半分を欠き、かつ子実形成の発達挙動を推進する生殖細胞のシグナル経路も欠く。これに起因して、生じる菌糸体材料中に存在する欠陥は、実質的に低減される。好ましい実施形態において、菌糸体材料の表面の10%未満は、子実体の形成を示し、菌糸体材料の細胞は、一核体である。他の実施形態において、表面の5%未満が、子実体の形成を示し、さらに他の実施形態において、表面の1%未満が、子実体の形成を示す。注目すべきは、生物体は、このプロセスの間に、遺伝子改変されていない。
【0015】
1つの実施形態において、一核体菌糸シートの製造システムは、運搬プラットフォームを有するトレイ、および運搬プラットフォームに配置された複数の細孔を有する透過性膜を含む成長空間;透過性膜に配置された真菌株を接種された基材;基材の上に配置された多孔質材料;ならびに前記成長空間内で成長する菌糸体の塊であって、塊が、表面の10%未満が子実体の形成を示す前記表面を有する、菌糸体の塊を提供する。この実施形態または他の実施形態において、システムは、トレイの空の空間の体積に対する基材質量の比が、0.5~5.0g/ccであり、基材体積に対するトレイの空の空間の体積が、0.01~1.0であり、基材面積に対するトレイの空の空間の体積が、0.5~5.0cc/cm2であり、CO2濃度が、定常状態条件下で3%超に維持され、相対湿度が、定常状態条件下で40%超に維持され、O2濃度が、定常状態条件下で20%未満に維持されて、子実体なしで菌糸体の成長を促進するように、最適化され得る。
【0016】
菌糸体ベースの皮革様材料は、現在、多くの市場において大きな興味を集めているので、厚さおよび外観における高度の均一性、ならびにバッチ間で高度の不変性を有するこのような材料を回収する改善された方法が必要とされている。そのため、図3および4に示されるように、菌糸体成長床124において一核体菌糸120を成長させ、回収することが非常に推奨される。図3は、菌糸体成長床124において、菌糸体基材122から成長した一核体菌糸120を示す。菌糸体成長床124は、菌糸体基材122からの菌糸120を均一に離し、それによって菌糸体物質の均一な発現を提供する。菌糸体のシートは、菌糸体成長床124における回収の際に、硬化および仕上げを行って、プラスチック、フォームおよび獣皮に質感、外観ならびに性能が類似している品質を呈することができる。菌糸体材料は、異なるパターンに、物理的に操作されてもよい。図4は、操作目的のために平らにされた段階の一核体菌糸120を示す。一貫性のあるパターン化された操作により、真菌材料は、所定の配置の真菌組織を有する層状構造に形成され得る。真菌材料のこのような物理的操作に起因して、菌糸は、それらが直交構造、格子、ならびに他の二次元および三次元組織に配置することができるように、特定および所定の方向に成長させることができる。
【0017】
図5は、一核体菌糸体シートを製造するための方法のフローチャートである。方法は、ブロック130に示されるように、菌糸体シートの製造システムを準備することによって開始する。次に、一核体培養物は、ブロック132に示されるように、真菌の生きている培養試料を利用して、培養ユニットで調製される。次いで、複数の子実体を、ブロック134に示されるように、胞子ストックユニットで、無菌条件下で成長させて、胞子ストックを作出する。その後、過酸化物ベースの胞子レスキューおよびプレーティングプロセスは、ブロック136で指示されるように、プレーティングユニットで行われる。過酸化物ベースの胞子の成功した発芽の際に、頑強な菌糸は、ブロック138に示されるように、区分ユニットで区分される。次に、頑強な菌糸は、ブロック140で指示されるように、サブプレーティングユニットで、生じた子実マスター上にサブプレーティングおよび拡張される。次いで、生じた子実マスターは、ブロック142に示されるように、その後、拡張ユニットで、生じた体積の適切な製造に拡張される。最後に、ブロック144に示されるように、コロニー形成ユニットで、菌糸体基材のその後のコロニー形成が行われ、それによって、菌糸体のシートを作出する。
【0018】
前述の本発明の好ましい実施形態の説明は、例示および説明の目的で提示される。網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。多くの改変および変形は、上記の教示を考慮して可能である。本発明の範囲が、この詳細な説明によって限定されるべきではないが、本明細書に添付される特許請求の範囲および特許請求の範囲に対する均等物によって限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】