(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】液体スパッタターゲット
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220106BHJP
H01L 21/203 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/34 A
H01L21/203 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521813
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2019078675
(87)【国際公開番号】W WO2020083882
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518031387
【氏名又は名称】エヴァテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・イェーガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・チルキー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・レヒシュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・フェルツァー
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート・ロアマン
【テーマコード(参考)】
4K029
5F103
【Fターム(参考)】
4K029BA58
4K029CA06
4K029CA13
4K029DA06
4K029DA08
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC12
4K029DC33
4K029DC39
5F103AA08
5F103BB22
5F103DD03
(57)【要約】
液体ターゲットをスパッタするためのスパッタリング装置は、液体ターゲット材料を受け入れるための槽を備え、装置は、液体ターゲット材料を掻き混ぜまたは攪拌するための手段を備え、その手段は、液体ターゲット材料からガス抜きする、ターゲットの表面における固体の粒子もしくは島を消散させる、このような粒子もしくは島を活性面領域(SA)から不活性面領域(SP)へと移動させる、および/または、その逆で移動させるように構成され、不活性面領域(SP)は、活性面領域(SA)より少なくとも50%少なくスパッタリングに曝されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ターゲットをスパッタするためのスパッタリング装置であって、液体ターゲット材料を受け入れるための槽を備え、前記装置は、前記液体ターゲット材料を掻き混ぜ、攪拌すること、前記液体ターゲット材料からガス抜きすること、前記ターゲットの表面における固体の粒子または島を消散させること、および、このような粒子または島を、活性面領域(S
A)から不活性面領域(S
P)へと、またはその逆で移動させることのうちの少なくとも1つをもたらすように構成される手段を備え、前記不活性面領域(S
P)は、前記活性面領域(S
A)より少なくとも50%少なくスパッタリングに曝され、前記手段は、反対の極性を有し、前記槽の反対側において、または、前記ターゲットの液面の下方で前記槽の底において、凹まされて搭載される少なくとも外側および内側の磁石を伴う平面状のマグネトロンシステムを備え、前記平面状のマグネトロンシステムは、スパッタリングの間、前記液体ターゲット材料の水平方向および鉛直方向の対流を可能にするように設計される、スパッタリング装置。
【請求項2】
前記ターゲットは、DC/RF混合、DC/パルスDC混合、RF/パルスDC混合、もしくはDC/RF/パルスDC混合のうちの1つをそれぞれ提供するDC電力供給部の陰極、パルスDC電力供給部の陰極、または1つもしくはいくつかの電力供給部のうちの1つに電気的に接続され得ることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記液体ターゲットから電気的に隔離された陽極を備え、前記陽極は、前記ターゲットの周りで周辺に、または/および、前記ターゲットの中心領域に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記不活性面領域(S
P)の少なくとも一部は、暗室遮蔽体によって投影され、前記ターゲットから電気的に隔離されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記槽の底が、少なくとも周囲領域において、凹状または凸状に形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
掻き混ぜるための前記手段は、前記液体ターゲット材料に位置決めされる掻き混ぜ体と、前記槽の反対側またはその近くに搭載される駆動部とを備える掻き混ぜユニットを備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記掻き混ぜ体は、ロッド式、円板式、パドル式、または羽根車のうちの1つであることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記駆動部および前記掻き混ぜ体は伝達軸によって接続されることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記駆動部は、回転する電界を作り出すように構成される磁気ユニットを備え、前記掻き混ぜ体は、磁気棒を備える、または、磁気掻き混ぜ棒であることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項10】
前記液体ターゲットを攪拌するための前記手段は、内側攪拌用電極および外側攪拌用電極を有する攪拌ユニットと、磁石システムとを備え、少なくとも前記内側攪拌用電極は前記ターゲット材料の液面の下方に少なくとも一部あり、少なくとも前記内側攪拌用電極は、DC電流源、パルスDC電流源、または低周波AC電流源に接続されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記外側攪拌用電極は前記ターゲット材料の液面の下方に少なくとも一部あることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記外側攪拌用電極は前記陽極であることを特徴とする、請求項4との組合せでの請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記内側攪拌用電極は、前記液体ターゲットと接触している前記槽の内面の少なくとも一部であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記内側攪拌用電極は、前記液体ターゲットと接触している前記槽の前記内面であることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記液体ターゲット材料は、以下の材料、すなわち、Ga、GaAs、GaIn、GaAl、InAl、TiGa、Hg、HgAg、HgAu、HgCu、HgIn、HgSn、HgZnのうちの少なくとも1つ、またはそれらのうちの1つの合金であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記ターゲットを加熱する手段、冷却する手段、または、加熱および冷却する手段を備えることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記槽の材料はステンレス鋼、モリブデン、モリブデン合金、または黒鉛であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
スパッタガス入口と真空ポンプとを備えることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のスパッタリング装置を備える真空被覆システム。
【請求項19】
反応ガスのための入口を備えることを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記スパッタガス入口および反応ガスのための前記入口は異なる入口を備え、前記スパッタガス入口は前記ターゲット面に近接しており、反応ガスのための前記入口は、被覆される表面の近くにあることを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記システム(10)は、スパッタ電圧を測定するための測定装置(47)と、コンパレータ(49)を備える電子装置(48)とを備え、前記電子装置(48)の1つの入力I
Vは、前記測定装置(47)の出力信号または変換された出力信号S1および前記コンパレータ(49)の一方の入力と接続され、前記コンパレータの他方の入力は、信号S1と電子ベンチマークデータベース(50)からの信号S2とを比較して前記電子装置(48)の出力Oにおいて液面信号SLLを生成するために、前記電子ベンチマークデータベース(50)からの出力と接続されることを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記出力Oは、前記システムの液面指示装置(52)および/または再充填装置(53)に接続される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
膜を基板に堆積させるための方法であって、少なくとも1つの第1の成分が、ターゲット槽に配置され、被覆される基板の表面に前記ターゲットからスパッタされる液体金属ターゲット材料を備えるスパッタリング装置によってスパッタされ、前記ターゲットは、スパッタイオンに曝される活性面領域(S
A)と、前記活性面領域(S
A)より少なくとも50%少なくスパッタリングに曝される不活性面領域(S
P)とを少なくとも備え、
前記方法は、前記液体ターゲット材料からガス抜きするために、固体の粒子もしくは島を消散させるために、または/および、固体の粒子もしくは島を、前記活性面領域(S
A)から前記不活性面領域(S
P)へと、もしくはその逆で移動させるために、前記液体ターゲットの攪拌を含み、攪拌は、スパッタリングの間に前記液体ターゲットにおいて水平方向および鉛直方向の対流を強いることを特徴とする、方法。
【請求項24】
前記膜は、金属、合金、または化合物の膜であり、少なくとも1つの第1の金属の成分が、前記ターゲットから、被覆される前記基板の表面へとスパッタされ、化合物の膜の場合、前記化合物の少なくとも1つの第2の成分が、前記化合物を、気相で、または/ならびに、前記基板の表面および/もしくは前記膜の表面に形成するために、反応ガスとして導入されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記不活性面領域(S
P)は、前記液体ターゲットの表面の周囲または/および中心領域にあることを特徴とする、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記不活性面領域(S
P)の少なくとも一部は、前記領域(S
P)をスパッタリングまたは他のグロー放電現象から遮蔽するために、暗室遮蔽体によって投影され、前記ターゲットから電気的に隔離されることを特徴とする、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記暗室遮蔽体は前記ターゲットの対電極を形成することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記スパッタリング装置は、マグネトロン磁石システムと、DC電力供給部またはパルスDC電力供給部とを備えるマグネトロンであることを特徴とする、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記液体ターゲットの前記攪拌は、機械的な掻き混ぜによって、電流によって引き起こされる掻き混ぜによって、超音波を前記液体ターゲットに加えることで、または、掻き混ぜと超音波を加えることとの組合せで実施されることを特徴とする、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記掻き混ぜは、掻き混ぜ体と、前記槽の反対側またはその近くに搭載される駆動部とを備える掻き混ぜユニットによって実施されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
駆動部と掻き混ぜ体との間の動力伝達は機械的または磁気的に実施されることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記攪拌は、DC電流源に両方とも接続される内側攪拌用電極および外側攪拌用電極を備える攪拌ユニットによって実施され、少なくとも前記攪拌用電極同士の間に前記ターゲットの液体の循環移動を発生させるために、DC電流が前記攪拌用電極同士の間に加えられることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記ターゲット材料は、液体金属、または、融点TM≦300℃、TM≦70℃、もしくはTM≦40℃を有する少なくとも2つの金属の合金であることを特徴とする、請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ターゲット材料は、Ga、GaAs、GaIn、GaAl、InAl、TiGa、Hg、HgAg、HgAu、HgCu、HgIn、HgSn、HgZnのうちの1つであることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物は、窒化物、炭窒化物、炭化物、酸化物、ホウ化物、液体ターゲット材料の合金、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項24から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物は、Ga、GaAs、GaIn、GaAl、InAl、TiGaのうちの1つの窒化物であることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
異なる材料からのさらなるターゲットが前記基板の表面において化合物を堆積させるために使用されることを特徴とする、請求項23から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記液体ターゲットの液面からのスパッタ電圧、スパッタ電流、またはスパッタ電力の電気の値のうちの1つの依存性が、値V1または変換された値の信号S1を測定し、それを、ベンチマークの値V2、または、定められた液面に対応するそれぞれ変換された値の信号S2と比較することで、液面信号SLLを生成するために使用されることを特徴とする、請求項23から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記液面信号は、液面指示装置を駆動するために、および/または、前記システムのターゲット液体再充填装置を制御するために使用されることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項23から37のいずれか一項に記載の方法が使用されることを特徴とする、半導体装置を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による液体ターゲットをスパッタするスパッタ装置と、請求項12によるこのような装置を備える真空システムと、請求項20による液体ターゲットをスパッタすることによって膜を堆積させるための方法と、請求項35による半導体装置の製造の一部である方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から知られているようなスパッタ装置1’を備える真空被覆システム10の構想が、
図1に例示の方法で示されている。システムは、システムの真空室38を形成する側壁12、カバー11、および底部を備える。システムは、実質的に平坦な基板14を液体ターゲット3のターゲット面4への視線において下を向くように位置決めして基板表面をスパッタプラズマに曝すために、少なくとも1つの基板保持体15がカバー11に搭載されていることを意味するフェイスダウンシステムであり、スパッタプラズマは、液体ターゲット3を含むターゲット槽2の下面に搭載されている不平衡マグネトロン磁石システム5によって発生させられる磁界6によって閉じ込めおよび方向付けされる。液体ターゲット材料3はガリウム(Ga)であり得る。不平衡マグネトロン磁石5は、基板14の表面の近くでのより大きいプラズマ密度を増進する。槽2は、DC電力供給部が使用されるときにはスパッタ電力供給部23の陰極(+)へと、または、RF電力供給部の極(≒)へと、真空密のフィードスルーを介して電気的に接続される。代替で、DC成分とRF成分とを送る混合した電力供給部が使用されてもよい。電力供給部の第2の極は接地される。スパッタ処理からの過剰な熱を消散させるために、槽は、留め具9’、ねじ、または同様のものによって、冷却装置9の冷却面に固定される。上面、槽2のそれぞれの側壁の外側、接地された陽極7、それぞれの陽極遮蔽体37を覆うものが、加えられる処理圧力に応じた暗室距離で、槽から電気的に隔離されて搭載されている。真空ポンプ19が、ポンプ弁20’によって開閉させられ得るポンプポート20に搭載されている。基板は、独立システム、または、連続する処理の間もしくは移送室同士の間において異なる圧力レベルで動作させられる多室システムのためのロードロックであり得る基板ポート13によって、システム10の中または外へ移送され得る。最後に、ガス入口21が、スパッタガスとしてのアルゴンと反応ガスとしての窒素とを導入して基板14の表面にGaN層を堆積させるために提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
代替のスパッタ装置および真空システムと、半導体装置を製造するために特に適合される、液体ターゲットをスパッタすることによって膜を堆積させるための方法とを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば、本発明は、液体ターゲット材料を受け入れるための槽を備え、液体ターゲットをスパッタするためのスパッタリング装置に向けられており、装置は、液体ターゲット材料を掻き混ぜまたは攪拌するための手段をさらに備え、その手段は、液体ターゲット材料からガス抜きする、ターゲットの表面における固体の粒子もしくは島を消散させる、このような粒子もしくは島を活性面領域SAから不活性面領域SPへと移動させる、および/または、このような粒子もしくは島を不活性面領域から活性面領域へと移動させるように構成される。これによって、活性面領域SAが、スパッタリングが実施されるときにターゲット原子が遠くへスパッタされ得る表面領域であり、一方で不活性面領域SPでは、スパッタリングは、活性領域においてほど強力に進行しない、または、完全に回避されることが理解される。活性面領域SAを基準とすると、不活性面領域SPの表面スパッタリングは、活性面領域SAの少なくとも50%、少なくとも20%、またはさらには10%以下のスパッタの割合に低減される。言及したように、粒子または島は、例として化合物の粒子である可能性があり、合金の化合物を含む可能性もある。僅かな合金では、または、表面配合を含む反応性スパッタリング処理によって引き起こされるそれぞれの島では、それらは、液体ターゲットの表面の合金化を含む可能性もある。スパッタリングが不活性面領域SPの方向へと下る間において、または、その逆において、遷移表面領域が起こる可能性もある。本発明のスパッタリング装置は、本質的に平面状のマグネトロンシステムにおいて構成される磁石、または、槽の反対側において、もしくは、ターゲットの液面の下方で槽の底において、好ましくは凹まされる磁石をさらに備え得る。磁界を発生させるために、前記マグネトロンシステムは、磁気軸MAを伴うターゲット面に対して本質的に垂直であり、ターゲットの中心領域に配置され、磁気軸MAを伴って鉛直に配向される反対の極性の内側磁石を包囲する外側閉磁石ループを含む。外側磁石が、全体の磁界をさらに設計するために、中心鉛直軸に向けて、または、中心鉛直軸に対して、例えば5°から15°の間などで傾けられる若干斜めの磁気軸MAを有して配置されてもよいことは言及しておかなければならない。外側磁石は、例えば、環状の磁石であり得る、または、それぞれ配置されたより小さい磁石であり得る。内側磁石は、2つ以上の磁石が使用される場合、線形に配置され得るか、長方形もしくは他の細長いターゲットのために、例えば線形区域および/もしくは湾曲区域を含んで、ここでも閉ループとして配置され得るか、または、正方形もしくは円形のターゲットのために中心の極として配置されてもよく、すべての種類で、外側磁石ループの磁気軸MAと本質的に平行であるが反対とされる。本質的に表面と平行な磁界および活性面領域SAによって、いわゆる「レーストラック」が、ターゲット面における磁石同士の上方の極の投影の間を意味する異なる極性の磁石の間に形成され、一方で不活性面領域SPは、例えば磁界の線がターゲット面と鉛直または少なくとも一部で鉛直に交差するといった、レーストラックの外側において、マグネトロンシステムの周辺またはマグネトロンシステムの中心領域にある。大きな磁界強度のため、例えばNdFeB合金、CoSm合金、AlNiCo合金、およびFeCoCr合金などの永久磁石が使用されてきたが、電磁石がマグネトロンシステムの全体の界を変調させるために適用され得る。槽の反対側において、または、液体ターゲットへとさえ凹まされる、永久磁石のターゲット面の近くの位置は、液体が槽において例えば少なくとも6mmまたは8mmといった十分な深さで提供される限り、スパッタリングの間に液体ターゲット材料の効果的な水平方向の対流および鉛直方向の対流を可能にする。前記活性領域内の磁界の成分が、例えば50%超、60%超、または80%超といった主に水平方向である場合、前記不活性領域にある磁界の成分は、例えば50%超、60%超、または80%超といった主に鉛直方向となる。水平方向の磁界または鉛直方向の磁界のそれぞれの領域は両方とも、液体表面の下方で、および、少なくとも表面の上方近くで、例えば、下方および上方で3mm、5mm、10mm、またはさらに大きくといった、ターゲット内のそれぞれの界の配向の領域も含む。また、非マグネトロンスパッタ装置について、不活性面領域SPは、暗室遮蔽体によって、または、暗室遮蔽体として形成された陽極によって提供されてもよく、それによって、このような遮蔽された表面を、スパッタリングまたは他の種類の例えば寄生グロー放電に対して保護する。掻き混ぜおよび攪拌、または、掻き混ぜることおよび攪拌することは、例えば回すといった液体を混合または移動させる通常の同一の意味において以下で使用されていることは言及しておかなければならず、掻き混ぜユニットという用語は、超音波手段も備える機械的手段によって液体を混合または移動させるためのユニットに使用され、攪拌ユニットという用語は、磁気電気現象であるローレンツ力の使用によって液体を混合または移動させるためのユニットに使用される。ローレンツ力の現象は、とりわけ、粒子の移動の方向に対して直交する磁界において、電気的に帯電した粒子を移動させることを生じさせ、これは、正に帯電した粒子については左手の法則に従って、または、負に帯電した粒子については右手の法則に従って、それぞれの粒子の側方への転換をもたらす。
【0005】
本明細書におけるガス抜きとは、言葉の一般的な意味から離れて、例えばプロセスガスを含むことによる、液体ターゲット材料において気泡の形成を回避すること、または、少なくとも、スパッタ処理の間に気泡の破裂を防止することも意味する。
【0006】
本明細書における対流は、例えばローレンツ力または機械的な掻き混ぜの効果の文脈において、外部から強いられる流体の移動の一般的な意味の中で使用される。
【0007】
金属または合金は、1つまたは少なくとも2つの金属元素から成る材料であるが、本発明の意味において、約1at%または少なくとも0.5at%の濃度までで1つまたは複数のドーパントを含む金属または合金も、金属と称されている。このようなドーパントは、金属ガリウム(Ga)についての例として、Al、Ag、Au、Cu、Hg、In、Sn、Zn、またはCであり得る。
【0008】
ターゲットは、DC/RF混合、DC/パルスDC混合、もしくはDC/RF/パルスDC混合をそれぞれ提供するDC電力供給部の陰極、パルスDC電力供給部の陰極、RF電力供給部の1つの極、または1つもしくはいくつかの電力供給部に電気的に接続され得る。
【0009】
スパッタリング装置は、液体ターゲットから電気的に隔離された陽極を備えてもよく、陽極は、ターゲットの周りで周辺に、および/または、特別な場合にはターゲットの中心領域に、通常は配置される。
【0010】
不活性面領域(SP)の少なくとも一部は、例えば、シース幅内で搭載される接地遮蔽体または陽極遮蔽体といった暗室遮蔽体によって投影され、ターゲットから電気的に隔離されてもよい。それによって、投影する遮蔽体/陽極とターゲット面との間の暗室距離は、スパッタ暗室のシース幅内になるように選択され、つまり、約1×10-5mbarから1×10-2mbarの処理圧力を有する通常のスパッタ処理について0.5~12mmまたは0.5~6mmである。
【0011】
槽の底は、液体金属の大きな表面張力を相殺するために、液体材料を中心付けるために、および、大きな平坦のターゲット領域を作り出すために、少なくとも周囲領域において少なくとも一部で凹状に形成され得る。代替で、槽の底は、より多くの材料を活性領域またはレーストラックに提供するために、少なくとも周囲領域において少なくとも一部で凸状に形成されてもよい。
【0012】
掻き混ぜるための手段は、液体ターゲット材料に位置決めされる掻き混ぜ体と、例えば液体ターゲットの水平方向の投影の中心領域においてといった、槽の反対側またはその近くに搭載される駆動部とを備える掻き混ぜユニットを備え得る。掻き混ぜ体は、掻き混ぜ体の材料による被覆の合金化またはドーピングが回避されるべきである場合、液体ターゲット材料によって完全に覆われるべきである。掻き混ぜ体は、ロッド式、円板式、パドル式、または羽根車のうちの1つとでき、伝達軸によって駆動部に接続できる。伝達軸は、液体ターゲット材料の漏れに対する封止部を備え、駆動部が雰囲気に位置決めされる場合には真空シールを備える。
【0013】
代替で、駆動部は、回転する電界を作り出すように構成される磁気ユニットを備えてもよく、掻き混ぜ体は、磁気棒を備える、または、磁気掻き混ぜ棒である。
【0014】
代替の実施形態では、掻き混ぜユニットは超音波発生源を備え得る。
【0015】
液体ターゲットを攪拌するための機械的な掻き混ぜ手段の代替で、装置は、内側攪拌用電極および外側攪拌用電極を有する攪拌ユニットと、マグネトロンシステム、または、他の磁石との組合せでのマグネトロンシステムであり得る磁石システムとを備えてもよく、少なくとも内側攪拌用電極はターゲット材料の液面の下方にあり、少なくとも内側攪拌用電極はDC電流源または低周波AC電流源に接続される。それによって、先に説明したようなローレンツ力によって少なくとも攪拌用電極同士の間にターゲットの液体の循環移動を発生させるために、DC電流が攪拌用電極同士の間に加えられ得る。代替で、例えば磁界が(ターゲットの下方または中で)内側の極と外側の極との間において一部で閉じたループになり、プラズマ電流がターゲット面に対して直交するといった、マグネトロン磁石の磁界は、プラズマを通じてターゲットへと流れるかまたはターゲットにおいて流れる電流により十分なローレンツ力をもたらすような方法で設定され得る。代替で、定在波が低周波(1~100Hz)のAC電流を適用することで発生させられる可能性があり、これは例としてガス抜きに有用であり得る。
【0016】
少なくとも1つの攪拌用電極がスパッタ用電極(例えば、ターゲットの陽極および陰極)から電気的に分離されるとき、さらなるDC電流源または言及したような低周波AC電流源が使用される必要があり、少なくとも内側攪拌用電極、両方の攪拌用電極、または、特別な場合には外側攪拌用電極だけが、ターゲット材料の液面の下方に少なくとも一部ある。分離されている攪拌用電極の材料による被覆の合金化またはドーピングが回避されるべきである場合、攪拌用電極は、電極材料がターゲット材料と一緒にスパッタされることを回避するために、ターゲット液体に完全に浸されてもよい。しかしながら、ドーパント材料を含むかまたはドーパント材料から作られる攪拌用電極の一部をスパッタプラズマに曝すことで、このような電極は、液体ターゲットで作られる被覆をドープさせるための材料供給源として使用され得る。
【0017】
攪拌用電極の形状に関して、外側電極は、液体ターゲット材料の活性領域SAの外側周辺の近くとできる、または、外側周辺をターゲットの外側の不活性面領域SPに対して閉じ込めることができ、内側電極は、液体ターゲットの中心領域における線形もしくは点状の電極とできる、または、液体ターゲット材料の活性領域SAを中心の不活性面領域SPに対して閉じ込めることができ、代替で、電極は、液体ターゲット材料の表面の下方において、マグネトロンレーストラックの外側および/もしくは内側に沿って、ならびに/または、内側および/もしくは外側の不活性面領域SPを閉じ込めて、配置できる。電気的に分離された攪拌用電極およびスパッタ用電極のこのような配置であれば、例として、スパッタリングはRFスパッタリングによって行うことができ、その間、液体材料の攪拌は、攪拌用電極によって提供されるDC電流によって実施され得る。外側攪拌用電極と内側攪拌用電極とは、異なる電位に設定され、例えば閉ループまたは線形電極の形態で、それぞれ連続的な電極として形成され得る、または、代替で、同じ形状もしくは異なる形状のいくつかの単独の電極から成ってそれぞれ配置された内側電極配列および/または外側電極配列として提供され得る。
【0018】
しかしながら、より簡単な配置では、驚くべきことに、DC攪拌電流が、例えば液体ターゲットに加えられるRFスパッタ電圧またはパルスDCスパッタ電圧といったHFスパッタ電圧に重畳されたとき、たった1つの攪拌用電極が十分であることを立証した。この場合、スパッタ陽極は、中心攪拌用電極の外側の対電極としても供する。さらに驚くべきことに、このような効果は、DC電力供給部だけによってスパッタ用電極を駆動することでも作り出せる。
【0019】
このような効果は、液体ターゲット材料を含み、スパッタ電力供給部の陰極に接続されているポット形状ターゲット電極(槽)を備えるスパッタ用電極と、ターゲットおよびそれぞれのターゲット電極から電気的に隔離されており、暗室遮蔽体と同様にポット形状ターゲット電極の周辺領域を少なくとも覆うスパッタ陽極である接地された対電極とでも達成でき、暗室遮蔽体はターゲットから0.5~20mmの距離にある。それによって、ターゲットがDC駆動またはRF駆動およびDC重畳であるとき、陽極は同時に外側攪拌用電極であり、陰極(ここでは、槽を形成するポット形状ターゲット電極)は同時に内側攪拌用電極である。DC重畳の動作の場合、陽極と陰極との反転が可能であり、流れの方向も反転させることができる。
【0020】
液体ターゲット材料は、以下の材料、すなわち、Ga、GaAs、GaIn、GaAl、InAl、TiGa、Hg、またはHgAg、HgAu、HgCu、HgIn、HgSn、HgZnなどのアマルガムのうちの少なくとも1つ、またはそれらのうちの1つの合金であり得る。
【0021】
さらに、装置は、ターゲットを加熱する手段、冷却する手段、または、加熱および冷却する手段を備え得る。このような手段は、ポット形状ターゲット電極自体、または、例えば、ねじ、留め具、もしくは同様のものによって、ターゲット電極がしっかりと伝熱的に取り付けられる加熱/冷却の板の中での液体の冷却および/または加熱の循環を含み得る。それによって、特定のターゲット材料が、融解温度以上まで加熱され得る、または、スパッタリング処理の初期の局面の前または最中に、より効率的にガス抜きされ得、次に、処理の必要性に応じて切り替えできる装置によって加熱および冷却の循環が提供される場合、スパッタリングの間に冷却できる。代替で、加熱は、放射ランプ、他の放射装置(例えば、カーボンヒータ)、プラズマ自体、または、ターゲット材料の表面の電子衝撃によって提供されてもよい。
【0022】
槽の材料は、例えば、316英国規格または2343スウェーデン規格といったステンレス鋼、モリブデン(Mo)、モリブデン合金、または黒鉛であり得る。
【0023】
第2の態様によれば、本発明は、前述したようなスパッタリング装置を備える真空被覆システムに向けられており、システムは、不活性ガスのためのスパッタガス入口と真空ポンプとを少なくともさらに備える。また、反応ガスのための入口が提供され得、反応ガスのための入口は、例えば被覆される表面の近くで、異なる入口を備えることができ、一方でスパッタガス入口はターゲット面に近接している。
【0024】
第3の態様によれば、本発明は、基板において膜を堆積させるための方法に向けられており、少なくとも1つの第1の液体成分が、前述したようなスパッタリング装置によってスパッタされる。スパッタリング装置は、ターゲット槽に配置され、被覆される基板の表面にターゲットからスパッタされる液体金属ターゲット材料を備える。基板は、被覆される表面がターゲットの活性面領域SAへの視線にある状態で、スパッタリング装置の上方でスパッタリング装置の反対に搭載され、ターゲットは少なくとも、スパッタイオンに曝される活性面領域SAと、活性面領域SAより少なくとも50%少なくスパッタリングに曝される不活性面領域SPとを備える。さらに、方法は、液体ターゲット材料からガス抜きするために、固体の粒子もしくは島を消散させるために、または/および、固体の粒子もしくは島を、活性面領域SAから不活性面領域SPへと、もしくはその逆で移動させるために、液体ターゲットの攪拌を含む。
【0025】
方法は、金属、合金、または化合物の膜である膜の形成をさらに含んでもよく、少なくとも1つの第1の成分が、液体ターゲットから、被覆される基板の表面へとスパッタされ、化合物の場合、化合物の少なくとも1つの第2の成分が、化合物を、気相で、または/および、基板の表面に形成するために、反応ガスとして導入される。それによって、化合物または合金は、液体成分より高い融点を有し、ターゲットの表面に固体の粒子または島を形成する傾向があり得る。
【0026】
スパッタリング処理の不具合または中断を回避するために、不活性面領域SPが液体ターゲット面の周囲または/および中心領域に提供されるべきである。不活性面領域SPの少なくとも一部は、領域SPをスパッタリングまたは他のグロー放電現象から遮蔽するために、暗室遮蔽体によって投影され、ターゲットから電気的に隔離され得る。
【0027】
それによって、遮蔽体は、遮蔽体を接地することで形成され得る、例えばターゲットの陽極といった対電極を形成できる。
【0028】
スパッタリング装置は、マグネトロン磁石システムと、DC電力供給部および/またはRF電力供給部とを備えるマグネトロンであり得る。
【0029】
液体ターゲットの攪拌は、機械的な掻き混ぜによって、電流および電流に対して少なくとも一部で直交する磁界によって引き起こされる掻き混ぜによって、ならびに/または、例えば、槽の底もしくは側壁に一体化されるもしくは取り付けられる1つもしくはいくつかの超音波発生源によって生成され得る、超音波を液体ターゲットに加えることで、もしくは、掻き混ぜと超音波を加えることとの組合せで、実施され得る。掻き混ぜが、電流と、前述したような一部で直交する磁界とによって生成されるとき、電流は、スパッタ電圧に重畳されるか、スパッタ電圧によってターゲットにおいて直接的に誘導されるか、またはそれらの組合せとして発生させることができ、磁界は、マグネトロンシステムによって、または、マグネトロンシステムと、例えば側面磁石といったさらなる磁石とによって、発生させられ得る。
【0030】
掻き混ぜが掻き混ぜユニットによって実施されるとき、ユニットは、掻き混ぜ体と、槽の反対側またはその近くに搭載される駆動部とを備え得る。それによって、駆動部と掻き混ぜ体との間の動力伝達は、例えば、駆動部と掻き混ぜ体とを接続する伝達軸によって、機械的に実施され得る、または、例えば、両方とも回転する電界を作り出すことができる、回転する磁気ユニット、もしくは、駆動部におけるそれぞれ制御可能な電磁石と、少なくとも1つの磁気棒を備えるかもしくは磁気掻き混ぜ棒である磁気掻き混ぜ体とによって、磁気的に実施され得る。
【0031】
さらに、攪拌または掻き混ぜは、代替で、DC電流源に両方とも接続される内側攪拌用電極および外側攪拌用電極を備える攪拌ユニットによって実施でき、電流および磁界の直交性から生じるローレンツ力によって少なくとも攪拌用電極同士の間にターゲット液体の循環する移動を発生させるために、DC電流が攪拌用電極同士の間に加えられ、そのDC電流は、例えば、マグネトロン磁石または/および他の磁石によって、外部から加えることができ、または/および、プラズマ電流のDC成分によって誘導される。本発明の特別な構造的に単純な実施形態では、スパッタ電力供給源との組合せでの不平衡なマグネトロンシステムが、スパッタ処理の間に永久的にガス抜きするために、および、気泡を破裂させることによる跳ねを回避するために、液体ターゲットの十分な攪拌を可能にするだけの高さの磁界を提供する電流を液体ターゲットに生成するために使用され得る。他の実施形態では、内側攪拌用電極、外側攪拌用電極、または両方が、例えば、電極材料とのドーピングを回避するために液体ターゲットの液面の下方で、または、電極材料によるドーピングが望まれる場合には一部でターゲットの液面の上方で、ターゲットの液体の中に位置決めされ得る。
【0032】
ターゲット材料は、液体金属、または、融点TM≦300℃、TM≦70℃、もしくはTM≦40℃を有する少なくとも2つの金属の合金であり得る。明確には、ターゲット材料は、Ga、GaAs、GaIn、GaAl、InAl、TiGa、Hg、HgAg、HgAu、HgCu、HgIn、HgSn、HgZnのうちの1つであり得る。
【0033】
基板に堆積させられる層は、例えば、本質的に(ターゲットの組成の±10%内または±5%内を意味する)ターゲット材料と同じ組成を有する金属層、または、例えば、それぞれが液体ターゲット材料もしくはそれらの混合物との窒化物、炭窒化物、炭化物、酸化物、ホウ化物、または合金といった化合物層であり得る。ここでも、金属元素の割合はターゲット材料における割合と本質的に同じとなる。明確には、化合物は、Ga、GaAs、GaIn、GaAl、InAl、TiGaのうちの1つの窒化物であり得る。
【0034】
代替または追加で、例えば固体のターゲットといった異なる材料からのさらなるターゲットが、共スパッタリングによって基板表面に化合物を堆積させるために使用され得る。
【0035】
以下の記載は、液体ターゲットについての一般的な原理を記載しており、そのため、液体ターゲット材料をスパッタするための最先端の方法およびシステムにも適用できる。しかしながら、異なる液面におけるスパッタ放電の電流-電圧の特性の比較によって驚くべきことに見出されたこの原理は、例えば、液体ターゲットの液面LLを指示するための方法、液体ターゲットを再充填する方法、ならびに、それぞれの液体ターゲットのための液面指示および/もしくは液体再充填システムを有する液体スパッタ装置、または液体スパッタ装置を備えるシステムを含むことにより、本発明のさらなる実施形態においても都合よく使用され得る。
【0036】
そのため、値V1を測定し、それを、定められた液面に対応するベンチマークの値V2と比較することで、液面信号SLLを生成するために、液体ターゲットの液面からのスパッタ電圧、スパッタ電流、またはスパッタ電力の電気の値のうちの1つの依存性を使用する方法が開示されており、値の信号S1およびS2は、それぞれの測定された値V1またはV2に、または、それぞれの変換された値に対応することができる。変換は、例えば、より小さい電圧、電流、電力、または、通常のデータを処理するシステムのためのデジタル値への変換といった、同じ電気的品質の他の値に変換することを含み得る。液面信号SLLは、例えば、スパッタ電力がオフであるときに堆積処理同士の間に、自動的にまたは運転スタッフによって作動させられ得る自動的な液体再充填システムのための液面の指示および/または信号のために使用されてもよい。
【0037】
さらに、スパッタの値を測定するための測定装置と、コンパレータを伴う電子装置とを備える液体スパッタ装置またはシステムが開示されており、電子装置の1つの入力IVは、測定装置の出力信号または変換された出力信号およびコンパレータと接続され、コンパレータの他方の入力は、信号S1と信号S2とを比較して電子装置の出力Oにおいて液面信号SLLを生成するために、電子ベンチマークデータベースからの出力と接続される。このようなスパッタ装置またはシステムのさらなる実施形態では、電子装置の出力は、システムの液面指示装置および/または再充填装置に接続され得る。
【0038】
このような比較の測定について、異なる液面についてのベンチマークの値V2およびそれぞれの出力信号S2は、出力信号S1をそれぞれのベンチマークの信号S2に割り当てるために、および、正確な液面信号SLLを出力するために、ルックアップテーブルおよび/またはコンピュータで実施されるアルゴリズムとして電子的に保存される、例えば形状といったあらゆる槽の構成について、先のステップにおいて一定の電流、電圧、または電力の条件の下で決定される必要がある。
【0039】
電子的なコンパレータが、ルックアップテーブルおよび/またはアルゴリズムを含む制御装置、コンピュータ、または他の電子装置の中のそれぞれの値の信号を比較して、例えばデジタル変換の後、ベンチマークとスパッタ電圧とを比較するために、使用され得る。スパッタリングに関連する電気の値を測定するための例として、測定装置は、スパッタ電圧を測定するために陰極の槽と接地の電位との間で電気的に接続させることができ、一方で、スパッタ電流または少なくともスパッタ電流の等価は、スパッタ電力供給部の回路内で測定でき、スパッタ電力は通常、電力供給部で一定に設定され得る電気量である。実用的な理由のために、通常、液面検出は一定の電力で実施され、電圧値または電流値の一方が変化させられ、他方がそれに依存して測定および/または計算されることになる。
【0040】
ここで、本発明は図の助けを借りてさらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】先行技術によるスパッタ装置を備える真空システムの図である。
【
図3】磁気掻き混ぜ体を伴う本発明のスパッタ装置の図である。
【
図4】ローレンツ力の掻き混ぜを伴う本発明のスパッタ装置の図である。
【
図5】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図6a】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図6b】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図6c】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図7a】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図7b】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図7c】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図8】ローレンツ力の掻き混ぜを伴うさらなる本発明のスパッタ装置の図である。
【
図9】液体再充填システムを備える本発明の装置およびシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図2は、軸26を介して駆動部28によって駆動される機械的な掻き混ぜ体25を備える本発明のスパッタ装置の概略図を示している。軸26は、液密部によって案内されており、槽の底が真空室の底の一部を形成する場合、ターゲット槽2の底における真空密なフィードスルー27によっても案内されている。そうでない場合、当業者には明らかなように、それぞれの真空密なフィードスルーがシステムの真空室の底に設けられる必要がある。掻き混ぜ体を働かせるように設定することで、ターゲットの液体材料は掻き混ぜられ、液体の静的な表面4は、その波形によって象徴されている動的な表面4’になる。しかしながら、実際の動的な表面4’は、少なくとも
図2および
図3において起草されているような実施形態では、どちらかと言えば渦のように形成されることになる。槽24の底は、図に示されているように凹状に形成されてもよく、または、少なくとも槽の底の境界領域において、前述し点線24’によって象徴されているように凸状に形成されてもよく、または、点線24”によって象徴されているように完全に凹状であってもよく、または、そうでない場合に、槽の周辺の内側の縁およびその近くに濡れることのできない表面領域をもたらし得、それによって液体表面の下にブローホールを形成し、スパッタ処理の間にガスブレイクスルーをもたらし得る液体金属の大きな表面張力を相殺するために、完全に凸状であってもよい。より良好な熱消散のために、液体回路36が、槽の底へ直接的に実施されてもよく、例えば閉サイクル冷却システムと組み合わされてもよい。代替で、組み合わされた加熱および冷却システムは、スパッタ処理が行われる間および/または前に、ターゲット材料を加減するために使用されてもよく、これは、例えば室温を上回るといったより高い融点を有するターゲット材料が、スパッタリングが行われる前に液化され、それによって、例えばターゲットの表面において、スパッタ処理の間に局所的で臨界的な相転移を回避できるという便益を有する。例えば、スパッタ電力に依存して、または、槽の側壁に配置され得る、図示されていない温度測定装置の温度出力に依存してのスパッタ処理の開始の前または開始において、加熱および冷却のシステムは加熱から冷却へと切り替えられ得る。陽極7は、例えば液体ターゲット3の周辺の境界領域といった境界領域の上方へ突出し、それによって不活性面領域S
Pを形成してもよい。自在軸受で搭載されたシャッタ45は、例えば液体ターゲットを浄化またはガス抜きするための初期のスパッタリングの間といった、意図しない被覆に対して基板表面を保護するのを容易にしている。このようなシャッタは、絞りホイールまたはスライドシャッタとして実現されてもよい。
【0043】
前述したようなシャッタ、凹状または凸状の槽の底24’、24”、液体回路36、加熱および冷却のシステムの提供などの言及したような特徴は、明示的な言及が行われない場合であっても、本発明の任意の実施形態にとって有用であり得る。
【0044】
同じことは、本発明のスパッタ装置を備える堆積処理をさらにより効率的に行うために真空被覆システム1に適用され得る特定の追加の特徴にも言える。容易な使用のために
図1における真空システムに重ねられたこのような特徴は、真空室のカバー11における別体の反応ガス入口22、基板保持体にバイアスを加えるための手段17、18、ならびに、基板保持体、それぞれ基板を冷却および/または加熱するための手段16である。このような特徴が、液体スパッタリングとの組合せと一緒に、先行技術の文献によって開示されていると分かっていないことは言及しておかなければならない。
【0045】
基板14の表面の近くでの別体の反応ガス入口22の使用によって、反応ガスの分圧が低減でき、ガス入口21は、不活性ガス入口としてのみ使用され、ターゲット面4、4’の高さに配置でき、面4、4’のより良好なフラッシング、または、反応ガスからの面4、4’のより良好な保護を可能にする。両方の処置によって、ターゲット面4、4’の活性面SAにおいて、ターゲット中毒、および、固体の粒子または島の形成をさらに低減することができる。また、ガスシャワーが、反応ガス入口22のために基板保持体15の周辺に沿って、および/または、スパッタガス入口21のためにターゲットの周辺に沿って使用されてもよい。
【0046】
基板保持体へバイアスを加えるための手段は、ここでもDC(-)であり得るが、通常は少なくとも非導電性基板材料については、電力線18およびフィードスルーを通じて基板保持体15に接続される、例えば無線周波数(RF)電力供給部といった高周波(HF)となるバイアス電力供給部17を備え得る。他方で、保持体15は、冷却の手段または冷却および加熱の手段をそれぞれ伴う冷却のための保持回路または冷却および加熱のための保持回路を備え得る。静電チャック(ESC)の締め付けの使用によって、基板14の表面の特定の領域のシャドーイングが回避できる。
【0047】
図1に示されて記載されている磁石システム5としての先行技術のスパッタ装置1’、電力供給部23、電力線8などの必須の特徴は、図面の明瞭性を保つために明示的に図示または言及されていない場合でも、
図2~
図5でも存在すると見なされる必要がある。
【0048】
図3は、軸31における磁気掻き混ぜ体30によって駆動される液体ターゲット3に位置決めされる2つの磁気棒29を示すさらなる種類の機械的な掻き混ぜを示している。このような掻き混ぜ体30は、さらなる回転する磁石の代わりに回転する電界を使用する掻き混ぜ体によって知られている方法で置き換えることができる。このような磁気掻き混ぜ手段30、31は、例えばマグネトロンターゲットのレーストラックの中などに配置され得る。液体ターゲット材料のさらなる支援の攪拌または独立した攪拌が、槽2の側壁および/または底に搭載された超音波発生源32によって提供されてもよい(
図4参照)。
【0049】
図4および
図5は、液体ターゲットを掻き混ぜまたは攪拌するための異なる原理を示しており、本発明の概要において説明されているようなローレンツ力現象を使用する。それによって、
図4は、円形、正方形、長方形、または他の細長い形であり得るターゲットの形状に依存して、例えば円形もしくは線形といった中心の二次元の電極33で、または、例えば棒もしくは壁状といった三次元の電極33’(点線)での単純な設定を示している。電極は、別体の電極電流供給部34によって給電され、槽から電気的に隔離されたフィードスルーである。電流はDC電流またはパルスDC電流であり得る。この配置であれば、陽極は、攪拌電流が内側攪拌用電極から液体ターゲットおよび導電性プラズマを介して陽極へと流れる状態で、外側攪拌用電極の機能を有することができる。電極のDC電位は、通常は接地である陽極の電位と、少なくとも-100kVから約-4kVの間であり得るスパッタターゲットの陰極の電位との間で設定され得る。そのため、攪拌用電極のDC電位は、通常のスパッタ処理について、-10kVから約-3.9kVまでで設定され得る。マグネトロン磁石5、5’、5”に追加して、さらなる磁石44が、液体ターゲット材料の中での鉛直方向の磁界成分を強化するために、例えば槽の周辺における側面磁石として、提供されてもよい。このような磁石は、固体の永久磁石、または、磁力が適用された電流によって制御され得る電磁石であり得る。このような磁石は環として(または、磁石の所与の配列として)配置され得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態が
図5に示されており、内側のここでは水平方向に線形の攪拌用電極33”と外側攪拌用電極35とが、ここでは、点線で重ねられた鉛直方向の区域で示されているように、閉ループの形態になっている。内側電極33”および外側電極35は、
図4に記載されている接続と同様に、電極電流供給部34の異なる極に接続されている。このような攪拌用電極は、点線の矢印40によって象徴されているようなレーストラックに沿っての円形または回転の移動を提供するために、ターゲットレーストラックと平行に位置決めされ得る。外側マグネトロン磁石の極性と内側マグネトロン磁石の極性とが反対にされる場合、回転方向が反対にされ得ることは言及しておかなければならない。攪拌用電極33、33’、33”、および35は、一体品の電極として、または、いくつかの電極区域もしくは部分電極を備える分割した電極として設計できる。他の実施形態では、このような電極は、自在軸受で、または移動可能に搭載され、ターゲットの液体に沈めることができるように設計され得る(図示されていない)。このような実施形態および機械的な掻き混ぜは、例えば、スパッタ処理が開始される前に攪拌が実施されるべきである場合、または、スパッタ用電極によって引き起こされる攪拌が十分でない場合に使用できる。
【0051】
図6~
図7は、液体ターゲット3を掻き混ぜるために、マグネトロン磁界6とDCまたはパルスDCターゲット電流42とを使用するローレンツ力の掻き混ぜで動作可能な本発明のスパッタ装置に言及している。そのため、別体の攪拌用電極33、35は必要とされない。それでもなお、例えば先に示した例と同様に、1つまたはさらなる別体の攪拌用電極を追加することは有用であり得る。
図3~
図5と同様に、示された実施形態またはこの処理の理解のために必須の特徴だけが示されており、スパッタ動作を実施するために必要である他の特徴、同様の電力線および供給部、基板保持体、ポンプシステムなどについては、
図1およびそれぞれの記載が参照される。
【0052】
図6a~
図7cでは、鉛直方向の対流によって引き起こされる電流の単純化された説明が、円形の矢印39によって象徴されている。このような鉛直方向の対流が、槽における液体の特定の最小深さを必要とし、それは少なくとも6mmであるべきであるが、8mmまたは10mmより深い方が良好となることは言及しておかなければならない。
図6aは、
図5に示されているようなレーストラックにおける円形の移動40と重なる鉛直方向の対流39および水平方向の対流を許容する寸法とされた槽2を有する動作中の本発明のスパッタ装置1を示している。両方の種類の対流は、全体の対流の鉛直方向の成分と水平方向の成分とを象徴しているだけであり、そのため両方とも液体ターゲット2に加えられる電流および磁界に起源を有する。以下の説明の情報の一部は証明された理論に基づいておらず、実験的な結果および一般的な物理の知識からの最初の推測として推論されているだけであり、さらなる改良を必要とする可能性があり得ることは言及しておかなければならない。矢印41によって象徴されているように、パルスまたは静的のDC駆動されるスパッタマグネトロン放電のプラズマ電流は、磁界6の磁気トンネルの下方で表面に対してほぼ垂直にターゲットに入る。矢印41は、ターゲット面に形成されるいわゆるレーストラックの中間にほぼ対応する最も大きな電流密度の場所を象徴している。液体ターゲット3と槽2との両方が、金属材料または黒鉛などの炭素材料について、均一に分配された例えば少なくとも0.1MS/mの導電性を各々の場合で提供するという仮定の下において、
図7aを見ると、矢印42によって象徴されているような電流が結果生じることになる。液体ターゲット3の内部電流は、スパッタ装置1の磁石システム5からの磁界41と共に、電流で引き起こされる鉛直方向の対流39を作り出すことになる。磁石システム5によって提供される磁界41は、当然ながら液体ターゲット3の中にも存在するが、図面に負担を掛けるのを回避するために示されていないことは言及しておかなければならない。
【0053】
誘導された電流が小さい場合、または、少なくともスパッタ処理の開始において、液体表面における本質的に線形で水平方向の移動が生じる、主にこのような鉛直方向の対流39が達成され得ることは、さらに留意される必要がある。しかしながら、このような鉛直方向の移動は、より大きな電流でも続くことになり、液体が槽において十分な深さで提供される限り、液体の効果的な攪拌を提供するために水平方向の移動に重なることになる。それによって、表面における液体は、例えば反応性スパッタ処理の間に表面に形成されるGaNなどの化合物といった可及的な汚染物または表面の島と共に、両側からレーストラックに向けて本質的に垂直に移動させられる。このような攪拌は、小さいスパッタ電力で、液体ターゲットに小さいスパッタ電流をもたらす最初のスパッタステップにおいて、閉じたシャッタ45の下でターゲットを浄化することができ、それによって、
図2を参照して、シャッタ45を開けることで浄化が完了した後だけ堆積処理を開始させることができる。さらに、基板を被覆するために液体ターゲットをスパッタするときに通常モードである反応性スパッタ処理が適用されるべきとき、スパッタ電力、および、例えば窒素、酸素、または、メタンなどの炭素を含むガスといった反応ガスの分圧などの被覆パラメータは、ターゲット面または少なくともレーストラックが、液体ターゲットにおいて浮遊する臨界サイズの分布する固体化合物のないように、変更され得る。このような粒子は、被覆される基板表面に厄介な粒子をもたらす処理の不規則性をもたらし得る。
【0054】
例えば反応ガスのより大きな流れと共に、より大きなスパッタ電力を加えることが、堆積のためにシャッタを開ける直前に実施され得る。より大きなスパッタ電力と、結果生じる電流とによって、ローレンツ動力の水平方向成分は、少なくともレーストラックの領域内において、ターゲット液体の回転移動も強いるだけの強さとなる。ターゲット液体におけるこのような重ねられた水平方向の移動と鉛直方向の移動とは、臨界直前の小さい固体化合物粒子を、最も活性面領域SAであるレーストラックへと与えるために使用でき、それら粒子は、基板表面において有害な粒子を形成することなく、スパッタされる。それによって、臨界を超えた大きさの粒子または固体の島の形成が、少なくとも活性面領域内において効果的に回避され得る。
【0055】
図6bおよび
図6cでは、本発明のスパッタ装置1のさらなる実施形態は、その磁石システム5’が槽底24の上側におけるそれぞれの凹部に搭載されて示されている。このような実施形態は、サービスのための磁石システムへのより良好なアクセスを可能にする。それによって、別の磁石システムが、槽全体を被覆システム10から取り外す必要なく、例えば別の種類の液体ターゲット材料をスパッタするためにといった、他のスパッタ処理に向けてより容易に実施され得る。さらに、このような実施形態は、磁石のより高い位置によるより高い液面を可能にし、これは、材料供給のためのサービス時間を短縮することを可能にする。このようなサービスの間隔を延ばすための代替として、液体ターゲット材料の供給が予測されてもよく、例えば、液体ターゲットへとそれぞれの材料(Ga、In、またはそれぞれに適合された合金)のワイヤを送り込むことで、または、真空被覆システムの内側または外側に位置決めされる材料供給部からの供給管を介して、新たなターゲット材料を送り込むことを可能にし、送り込み入口がターゲットの高さの表面の下にあり得る。以下における
図6a~
図6c、
図7a、および
図8に示されているような変形の場合、本質的に、スパッタ供給部の陰極に電気的に接続される槽内面全体は、液体ターゲットと電気的に接触してもおり、それによって内側攪拌用電極として使用される。これは、槽の底における磁石5’が導電性であり、そのため電極表面としても作用するため、磁石5’にも当てはまる。
図6cに示されているような流れ設備46が、攪拌用電極からの流れパターンをより速くするように発展させるのを助けるために、または、その流れパターンを変化させるのを助けるために提供され得る。このような設備は、図示したように置かれ得る、または、内側の槽の底または側壁に形成され得る。これらの設備46は、
図7bおよび
図7cで以下において説明されるように、槽の表面のように同じく導電性とできる、または、流れパターンに影響を与えるためにさらなるパラメータを提供する絶縁材料から作られ得るかもしくは絶縁材料で被覆され得る。
図6cに示されているような側面磁石44は、磁界および液体移動の流れパターンに影響を与えるためにさらなるパラメータを提供する。
【0056】
図7bおよび
図7cは、
図7aと比較して液体ターゲット材料3の中に異なる電流の案内を伴うスパッタ装置を示している。
図7bおよび
図7cであれば、液体ターゲットと接触している槽の内面の一部分だけが内側攪拌用電極として使用される。そのため、例えば液体ターゲット材料に対して不活性であるテフロン(登録商標)といった電気的に絶縁の材料43’、43”が、槽における特定の表面領域においてカバーまたは被覆として配置され得る。それによって、電流は、矢印42’および42”によって象徴されるようにターゲット材料において変化させられ、液体とターゲット3の表面とにおける液体の移動39’、39”である、異なる流れパターンを提供もする。これは、実際の処理の必要性に応じて、ターゲット内の攪拌および流れ設計を容易に適合および最適化させることができる。代替であるが、より柔軟性がなく、より高価な実施形態は、電気的に絶縁する槽本体を取り入れ、その内面においてそれぞれの接触または接触領域を提供することになる。電気的に絶縁する材料43’、43”のこのような使用は、例えば
図1、
図4、
図5、
図6b、
図6c、および
図8に示されているように、他の実施形態と追加的に組み合わされてもよい。
【0057】
不活性のスパッタ条件および反応性のスパッタ条件の下でガリウムをスパッタするためのスパッタリング試験が、内径が200mmで深さが15mmのステンレス鋼(AISI 1.4301)の槽の周りで冷却される水において実施されている。内周の10mm内では、ステンレス鋼におけるガリウムの大きな表面張力を相殺し、それによってこの領域内でのGa表面を平らにするために、底から最大で5mmの高さの凹状の境界領域が底に提供されている。1.5~3kgのGaが約8~14mmの高さまで槽へ満たされた。使用された磁石システム5”は、槽底24の下方(反対)側におけるそれぞれの凹部に搭載された不平衡マグネトロンシステムであり、内側磁石および外側磁石の磁気軸M
Aは、
図8に示されているように、鉛直であるが、反対に配向されている。それによって、磁石、磁石のそれぞれの極は、液体表面領域の近く、つまり、最大で17~35mmの距離で配置でき、掻き混ぜられていないターゲットの表面への大きな磁束および磁界の平行性が提供され得る。磁束密度が、Ga表面の上方約5mmにおいて槽中心から75mmの半径におけるレーストラック領域内で測定され、水平方向の成分B
xは約0.038Tであり、鉛直方向の成分は約0.013Tであり、約0.05Tの全体の磁束|B|を与えた。そのため、磁界の約75%のこの場所は、水平方向で本質的に表面と平行な成分B
xによって寄与され、約25%だけがそれぞれの鉛直方向の成分B
yによって寄与される。静止した液体表面から少なくとも5~10mmの距離内で上方にあるそれぞれのレーストラック投影の領域内で、レーストラック内の少なくとも60%、または、さらにより良好には70%以上の水平方向の成分B
xを有する磁界が、液体をより効率的に攪拌するのを助けることができることが示され得る。同様の強く表面と平行な磁界が、例えば
図6bおよび
図6cに示されているような構成で提供されてもよく、槽内でのそれらの位置のため、磁石は液体表面の近くにある。側面磁石44が、このような界特性を提供するのを助けることができるが、前提ではないことは言及しておかなければならない。
【0058】
液体ガリウムターゲット内において、少なくともその表面のすぐ上方における磁界の平行性を向上させるために使用できるさらなる変形は、
図8において点線で示されているようなターゲットの中央において500℃を超えるキュリー温度を有する磁化可能材料から作られる中心ヨーク5’’’を提供することであり得る。このようなヨークは、磁力線をより表面と平行な形で設計するように、磁石5”と協働することができる。
【0059】
ターゲットの中心に対して内側または中心の磁石と外側の磁石とを備える磁気システム5、5’、5”(5’’’)であれば、通常、特に円形のターゲットの設計に関して、より多くの数の周囲磁石のため、または、環状の磁石が使用される場合には、より大きい周囲磁石のため、大きく不平衡な磁界が生じることになることは言及しておかなければならない。それでもなお、液体ターゲット内でその表面の近くでは、ほとんど対称の平行な磁界が、図示されているような磁気システムのそれぞれの設計によって適用できる。
【0060】
処理は2つの処理ステップに分割されており、第1のステップは、前述のような本質的に線形の水平方向での移動によって液体ターゲットを条件付けるために、不活性ガスの下での小さいスパッタ電力での閉じたシャッタにおいてであり、続く第2のステップは、不活性ガスと反応ガスの混合物の下でのより大きいスパッタ電力においてであり、シャッタは、化合物層を研磨されたウェーハ基板に堆積させるために数秒間の後に開けられた。以下のパラメータが、ウェーハ表面における無傷の化合物(GaN)層を生成するために適用された。
【0061】
第1のステップ-ターゲット条件付けのための線形の表面移動:
流れAr: 20sccm
流れN2: 0sccm
全圧: 0.29Pa
スパッタ電力(DC): 50W
スパッタ電流: 0.19A
スパッタ電圧: 268V
【0062】
第2のステップ-被覆のための回転表面移動
流れAr: 20sccm
流れN2: 10sccm
全圧: 0.37Pa
スパッタ電力(DC): 600W
スパッタ電流: 1.71A
スパッタ電圧: 350V
【0063】
代替で、以下のステップが適用された。
【0064】
第1のステップ-ターゲットの条件付けが、例えば線形の表面移動と比較して、液体ガリウムの非常に効果的なガス抜きを両方とももたらす高い操作性および熱を提供する大きなスパッタ電力で実施される。ダミーウェーハがこの条件付けステップで使用された。
流れAr: 30sccm
流れN2: 60sccm
全圧: 0.33Pa
スパッタ電力(DC): 1700W
スパッタ電流: 3.7A
スパッタ電圧: 460V
【0065】
第2のステップ-被覆のための回転表面移動
流れAr: 14sccm
流れN2: 72sccm
全圧: 0.36Pa
スパッタ電力(DC): 500W
スパッタ電流: 1.33A
スパッタ電圧: 376V
【0066】
適用可能である以下の標準的な範囲と、GaN被覆についての非常に良好な結果を提供した範囲とは、被覆処理のパラメータごとに提供される。
流れAr: 5~70sccm、8~14sccm
流れN2: 0~100sccm、5~80sccm
全圧: 0.1~0.8Pa、0.2~0.6Pa
スパッタ電力(DC): 10~600W、20~500W
スパッタ電流: 0.05~10A、0.08~8.38A
スパッタ電圧: 200V~800V、261V~538V
【0067】
良好で再現可能な方法でローレンツ力を用いて液体のターゲット槽2を攪拌するための限界最小寸法は、例えば、攪拌または充填の間にターゲット液体の流出を回避するための少なくとも8mmまたは10mmの突出する縁を伴って、少なくとも55mmまたは60mmの長方形の槽の丸いまたは内側のより小さい側の内径、および、少なくとも4mmまたは6mmの液面を許容する深さであると思われることは言及しておかなければならない。限界最大寸法について、2000mmの大きさが合理的な試みでなおも管理可能であると思われる。より大きな材料容器について、最大で20mmまたは30mmの液面が、例えば、液体表面から管理可能な距離を確保するために槽の底の上側においてまたはその上側の中で、それぞれの磁石システムで管理可能であると思われる。
【0068】
対称的な設定およびそれぞれの流体の移動のため、丸いターゲットが、特には200mmから800mmといった100mmから1000mmの槽内径にとって良好な解決策となることが分かっている。
【0069】
図10は、
図8で描写されたような液面のターゲットについての2つの典型的な電流-電圧の特性を示している。任意選択の中心ヨーク5’’’は使用されていない。下側の曲線は、槽の底の上方約8mmの高さを指す槽2における低い液体Gaの高さで取られている。上側の曲線は、槽の底の上方約13mmの高さを指す高い液体Gaの高さで槽を再充填した後に取られている。驚くべきことに、2つの特性の曲線の間のスパッタ電圧のずれは、約68.70Vの特性一定のずれを常に有することが示されており、より高い液面でのスパッタリングは、スパッタ電流が一定に保たれている限り、より大きなスパッタ電圧および電力をもたらす。代わりに、例えば電力制御がターゲット用電力供給部23を制御するために使用されるときといった、スパッタ電力が一定に保たれるとき、ターゲット電流は、低い液面を有するターゲットにおいてよりも、新たに再充填された高い液面のターゲットにおいて小さくなる。
【0070】
現在までにその証拠を提供することはできないが、この効果は、スパッタ電流へのより大きな電気抵抗を引き起こすより大きな回転ターゲット質量のより顕著な「ダイナモ効果」によると考えられる。このような発見は、ターゲット槽における液面を連続的に監視し、再充填する必要性を操作者に指示するように、および/または、堆積処理同士の間に低い液面のターゲットの自動的な再充填を開始させるように、方法および装置を推定するために発明者によって使用され得る。
【0071】
図11およびルックアップテーブルの以下の例では、単純な線形の構想が、
図10からの1アンペアにおける低い(「充填前」)ターゲット電圧値から高い(「充填後」)ターゲット電圧値までで外挿されている。
【0072】
【0073】
いくつかの異なるターゲット電流と、それに伴う異なるターゲット電力高さとについて行われたこのような構想は、液面再充填装置を制御するように、液体ガリウム液面の高さを指示し、制御信号SLLを出力するために、データベースとして供する電子的なルックアップテーブルで使用され得る。充填は、ターゲット槽に残された約1.5kgのガリウムで開始され、それに1kgの液体のガリウムが追加され、全体で2.5kgのターゲット液体とされた。
【0074】
液面再充填装置53を動作させ、ターゲット槽2における液面を監視するための論理的構想が
図9に示されている。ここでは接地電圧へのターゲットを監視するための測定装置47が、陰極の槽と接地電位との間に電気的に接続されており、通常はデジタル変換された電圧信号となる電圧信号S1を、コンパレータ49の一方の入力に接続される電子装置48の一方の入力I
Vに送る。電子装置48は、再充填装置53、または、被覆システムのシステム制御内の制御回路を動作させるための別体の制御装置またはコンピュータであり得る。第2の信号S2がコンパレータ49の他方の入力に適用される。第2の信号S2は、現在の電流についてそれぞれのルックアップテーブル50を選択するために、ターゲット用電力供給部23の回路内で測定され、電子装置48の入力I
C/Pに電流信号SCとして提供されるそれぞれのターゲット電流の高さまたは範囲に応じて選択される電子的なルックアップテーブル50によって生成される。代替で、ルックアップテーブルは、供給部23の一定の電力の高さまたは範囲について予測されてもよい。この場合、ここでも通常はデジタル変換された信号となる電力信号SPが、それぞれのルックアップテーブルを選択するために使用され得る。ルックアップテーブル50は、液面検出の必要な精度に応じて、いくつかの値S2.1、S2.2・・・S2.nを含む。このような値は、S1が変更されていない1つのコンパレータに連続的に、または、図示されているようなそれぞれの一連のコンパレータと並列に提供され得る。各々の信号S2.nであれば、それぞれの液面の値SLL.nは、コンパレータ49の出力信号がS1=S2を参照するときのみ、それぞれの値SLLを指示装置52および再充填装置53に送る論理要素51に提供される。それによって、レベルメータ52による液面の表示と再充填システム53の動作とが制御され得る。再充填システム53は、例えば槽を通じて横からといった液体表面4の下方で、または、例えば不活性面領域といった周辺において、ターゲット液体を充填するための再充填通路54を備える。ルックアップテーブルの代わりに、アルゴリズム、または、ルックアップテーブルおよびアルゴリズムの組合せが、基本的に測定または変換された電圧信号S1および電流信号SCまたは電力信号SPから、それぞれのSLL信号を計算するために使用され得ることは言及しておかなければならない。
【0075】
先の記載の共通の部分において言及したように、スパッタ電圧、スパッタ電流、またはスパッタ電力などの電気の値のいずれも、信号S1を生成または推定するために使用でき、残りの値のうちの1つは一定に保たれ、最後の値は、異なる液面のための比較のベンチマーク信号S2を生成するように、それぞれのルックアップテーブルを生成するために、または、それぞれのターゲットの形状およびプラズマ領域に当てはまるアルゴリズムを見つけ出すために変化させられる。
【0076】
前述の記載において、本発明が様々な実施形態を用いて示されているが、一実施形態で開示されているような特徴は、当業者にとってそのような特徴がそれぞれの実施形態の他の特徴と明らかに矛盾していない限り、または、食い違っていない限り、任意の他の実施形態と共に開示されると仮定されている。
【符号の説明】
【0077】
1、1’ スパッタ装置
2 ターゲット槽
3 液体ターゲット
4 静的な表面
4’ 動的な表面
5、5’ 磁石システム
6 磁界
7 陽極
8 電力線ターゲット供給部
9 冷却装置
9’ 留め具
10 真空被覆システム
11 カバー
12 側壁
13 基板ポート
14 基板、ウェーハ
15 基板保持体
16 冷却および/または加熱する手段
17 バイアス電力供給部
18 電力線バイアス供給部
19 真空ポンプ
20 ポンプポート
20’ ポンプ弁
22 ガス入口
23 スパッタ電力供給部
24 槽の底
24’ 槽の一部凹状の底
24” 槽の完全に凹状の底
25 機械的な掻き混ぜ体
26 軸
27 フィードスルー
28 駆動部
29 磁気棒
30 掻き混ぜ体
31 掻き混ぜ体の軸
32 超音波発生源
33 中心攪拌用電極
34 別体の電極電流供給部
35 外側攪拌用電極
36 液体回路
37 遮蔽体
38 真空室
39 鉛直方向の電流が引き起こす液体移動
40 水平方向の電流が引き起こす液体移動
41 スパッタプラズマにおける電流
42、42’、42” 液体ターゲットにおける電流
43’、43” 絶縁のカバーまたは被覆
44 側面磁石
45 シャッタ
46 流れ設備
47 測定装置
48 電子装置
49 コンパレータ
50 ルックアップテーブル
51 論理要素
52 液面指示装置
53 液面再充填装置
【国際調査報告】