(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】セキュリティ文書印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/30 20140101AFI20220106BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20220106BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20220106BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B42D25/30 100
B41M3/14
B41J5/30 Z
G06F3/12 338
G06F3/12 322
G06F3/12 324
G06F3/12 343
G06F3/12 378
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521851
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 GB2019053039
(87)【国際公開番号】W WO2020084320
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513123861
【氏名又は名称】デ・ラ・ルー・インターナショナル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パラブ、ニキール
(72)【発明者】
【氏名】ウォリス、アンドリュー フランシス
(72)【発明者】
【氏名】バノン、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アウグスト ダ シルバ モウラ、ミゲル
【テーマコード(参考)】
2C005
2C187
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB03
2C005HB10
2C005JB22
2C187AC07
2C187AC08
2C187AE07
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2C187BF34
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2C187GD04
2H113AA01
2H113AA06
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2H113EA06
2H113EA07
2H113EA10
2H113EA15
2H113FA10
2H113FA44
(57)【要約】
デジタル印刷されるセキュリティ文書が提供される。デジタル印刷されるセキュリティ文書は、セキュリティ文書の基材と、基材の第1の表面の第1の領域の、第1のデジタル印刷される印刷ワークであって、第1の印刷ワークは、第1のピッチを有する格子点の第1のグリッドに従って配置される、印刷される要素の第1の配列を有する、第1のデジタル印刷される印刷ワークと、基材の第1の表面の第2の領域の、第2のデジタル印刷される印刷ワークであって、第2の印刷ワークは、第1のピッチとは異なる第2のピッチを有する格子点の第2のグリッドにわたって配置される、印刷される要素の第2の配列を有する、第2のデジタル印刷される印刷ワークとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル印刷されるセキュリティ文書であって、
セキュリティ文書の基材と、
前記基材の第1の表面の第1の領域の、第1のデジタル印刷される印刷ワークであって、前記第1の印刷ワークは、第1のピッチを有する格子点の第1のグリッドに従って配置された、印刷される要素の第1の配列を有する第1のデジタル印刷される印刷ワークと、
前記基材の前記第1の表面の第2の領域の、第2のデジタル印刷される印刷ワークであって、前記第2の印刷ワークは、前記第1のピッチとは異なる第2のピッチを有する、格子点の第2のグリッドにわたって配置された、印刷される要素の第2の配列を有する第2のデジタル印刷される印刷ワークと
を備える、デジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項2】
格子点の前記第1のグリッドは、第1のユニット・セルで画定される格子点の2次元グリッドであり、格子点の前記第2のグリッドは、第2のユニット・セルで画定される格子点の2次元グリッドであり、前記第1のユニット・セル及び前記第2のユニット・セルは、互いに異なる、請求項1に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項3】
前記第1のグリッド及び前記第2のグリッドは、それぞれ規則的な、格子点の正方形のグリッド、又は格子点の長方形のグリッドである、請求項1又は2に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項4】
格子点の前記第1のグリッドは、2つの直交する方向のそれぞれにピッチを有し、格子点の前記第2のグリッドは、2つの直交する方向のそれぞれにピッチを有し、格子点の前記第1のグリッドの各ピッチは、好ましくは、格子点の前記第2のグリッドの両方のピッチと異なる、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項5】
印刷される要素の前記第1の配列の、前記印刷される要素の少なくとも一部は、印刷される要素の前記第2の配列の、前記印刷される要素の最小横方向の寸法よりも小さい、好ましくは25%小さい、より好ましくは50%小さい、最小横方向寸法を有し、且つ/又は印刷される要素の前記第2の配列の、前記印刷される要素の少なくとも一部は、印刷される要素の前記第1の配列の、前記印刷される要素の最小横方向の寸法よりも大きい、好ましくは50%大きい、より好ましくは100%大きい、最小横方向寸法を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項6】
格子点の前記第1のグリッドの前記ピッチは、少なくとも1方向で、少なくとも600DPI、好ましくは少なくとも900DPI、より好ましくは少なくとも1200DPIの印刷解像度に相当する、請求項1から5までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項7】
印刷される要素の前記第1の配列の、前記印刷される要素の少なくとも一部は、最大200マイクロメートル、好ましくは最大100マイクロメートル、より好ましくは最大50マイクロメートル、最も好ましくは最大20マイクロメートルの、最小横方向寸法を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項8】
格子点の前記第2のグリッドの前記ピッチは、少なくとも1つの方向で、最大600DPI、好ましくは最大360DPI、より一層好ましくは最大200DPIの印刷解像度に相当する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項9】
印刷される要素の前記第2の配列の、前記印刷される要素の少なくとも一部は、少なくとも20マイクロメートル、好ましくは少なくとも50マイクロメートル、より好ましくは少なくとも100マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも200マイクロメートルの、最小横方向寸法を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項10】
前記第1の印刷ワーク及び前記第2の印刷ワークが、前記基材の前記第1の表面上で少なくとも部分的に重なり合うように、前記第1の領域及び前記第2の領域は、少なくとも部分的に重なり合う、請求項1から9までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項11】
前記第1の印刷ワークは、前記第1の領域の少なくとも部分的領域にわたる格子点の前記第1のグリッドの、各格子点上に印刷される要素を有し、その結果、印刷される要素の前記第1の配列は、前記部分的領域にわたる前記第1のピッチを有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項12】
前記第2の印刷ワークは、前記第2の領域の少なくとも部分的領域にわたる格子点の前記第2のグリッドの、各格子点上に印刷される要素を有し、その結果、印刷される要素の前記第2の配列は、前記第2の部分的領域にわたる前記第2のピッチを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項13】
前記第1の印刷ワークは、第1の材料、好ましくは第1のインクで印刷され、前記第2の印刷ワークは、前記第1の材料とは異なる第2の材料、好ましくは第2のインクで印刷される、請求項1から12までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項14】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、相異なる光学特性を有する、請求項13に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項15】
前記第1の材料及び前記第2の材料のうちの少なくとも一方は、カラーシフト・インク、金属インク、発光インク、蛍光インク、燐光インク、赤外線吸収インク、熱変色性インク、又は光変色性インクである、請求項13又は14に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項16】
前記第1の印刷ワークは、第1の色で印刷され、前記第2の印刷ワークは、前記第1の色とは異なる第2の色で印刷される、請求項1から12までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項17】
前記第1の印刷ワーク及び前記第2の印刷ワークは、同じ色で印刷される、請求項1から15までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項18】
前記第1の印刷ワークの1つ又は複数の印刷される要素は、前記印刷される要素が複合印刷要素を作るように、前記第2の印刷ワークの1つ又は複数の印刷される要素の近傍に形成される、請求項1から17までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項19】
前記基材の前記第1の表面にわたって、複数の複合印刷要素が形成される、請求項18に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項20】
前記複数の複合印刷要素は、印刷される要素の前記第1の配列及び/若しくは前記第2の配列の、印刷される要素数、印刷される要素の前記第1の配列及び/若しくは前記第2の配列の、前記印刷される要素の配置、印刷される要素の前記第1の配列及び/若しくは前記第2の配列の、前記印刷される要素のサイズ、並びに/又は印刷される要素の前記第1の配列及び/若しくは前記第2の配列の、前記印刷される要素の間隔の変化によって、前記基材の前記第1の表面全体で、1つ又は複数の前記複合印刷要素のサイズ及び/又は形状が様々である、請求項19に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項21】
前記複数の複合印刷要素は、前記基材の前記第1の表面全体で、前記複数の複合印刷要素のサイズ及び/又は形状が様々であり、それにより前記複数の複合印刷要素が、マルチトーン画像、好ましくはハーフトーン画像を画定する、相異なる階調の領域を形成する、請求項20に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項22】
前記複数の複合印刷要素は、前記基材の前記第1の表面全体で、前記第1の印刷ワークの印刷される要素及び前記第2の印刷ワークの印刷される要素の比率構成が変化する、請求項19から21までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項23】
前記複数の複合印刷要素は、前記複数の複合印刷要素が、印刷される画像を画定する相異なる見た目の領域を形成するように、好ましくは、多色の印刷される画像を画定する相異なる色の領域を形成するように、前記基材の前記第1の表面全体で、前記第1の印刷ワークの印刷される要素及び前記第2の印刷ワークの印刷される要素の比率構成が様々である、請求項22に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項24】
1つ又は複数の複合印刷要素は、英数字、記号、又はロゴの形で形成される、請求項18から23までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項25】
前記基材の前記第1の表面の第3の領域に、第3のデジタル印刷される印刷ワークをさらに有し、前記第3の印刷ワークは、格子点の第3のグリッドにわたって配置される、印刷される要素の第3の配列を有する、請求項1から24までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項26】
格子点の前記第3のグリッドは、前記第1のピッチ及び/又は前記第2のピッチとは異なる第3のピッチを有する、請求項25に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項27】
前記第3の領域は、前記第1の領域及び/又は前記第2の領域と、少なくとも部分的に重なる、請求項25又は26に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項28】
前記第3の印刷ワークは、前記第1の色及び/又は前記第2の色とは異なる、第3の色で印刷される、請求項16又は17に従属する場合に、請求項25から27までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項29】
1つ又は複数の前記複合印刷要素が追加で、前記第3の印刷ワークの1つ又は複数の印刷される要素によって作られ、前記第1、前記第2、及び前記第3の印刷ワークの印刷される要素の前記比率構成は、前記印刷される画像の少なくとも3つの相異なる色の領域を画定するように、前記基材の前記第1の表面全体で変化する、請求項23に従属する場合に、請求項28に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項30】
前記第1、前記第2、及び第3の色のうちの少なくとも1色は、CMYKのうちの1色ではなく、好ましくは、前記第1、前記第2、及び前記第3の色のうちの少なくとも1色は、前記CMYKの色域の外側にある、少なくとも請求項16又は17に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項31】
前記第1の印刷ワークの前記印刷される要素の少なくとも1つは、前記セキュリティ文書の基材の前記表面に垂直な方向に、第1の要素の厚さを有し、前記第2の印刷ワークの前記印刷される要素の少なくとも1つは、前記セキュリティ文書の基材の前記表面に垂直な前記方向に、第2の要素の厚さを有し、前記第2の要素の厚さは前記第1の要素の厚さよりも厚い、請求項1から30までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項32】
前記デジタル印刷されるセキュリティ文書は、紙幣、ポリマー紙幣、小切手、パスポート、身分証明書、鑑定書、印紙、免許証、識別文書、及びビザのうちの1つである、請求項1から31までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項33】
前記第1の印刷ワーク及び/又は前記第2の印刷ワークは、それぞれが固定コンテンツと可変コンテンツとを有する複数のセキュリティ文書を形成し、前記固定コンテンツは、前記複数のセキュリティ文書のそれぞれについて同じであり、前記可変コンテンツは、前記複数のセキュリティ文書の少なくとも一部間で変化し、前記可変コンテンツは、好ましくは、前記複数のセキュリティ文書のそれぞれに唯一的である、それぞれが請求項1から32までのいずれか一項に記載の複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項34】
セキュリティ文書をデジタル印刷する方法であって、前記方法は、セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域に、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、第1の印刷ワークは、第1のピッチを有する格子点の第1のグリッドに従って配置される、印刷される要素の第1の配列を有するステップと、前記基材の前記第1の表面の第2の領域に、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、前記第2の印刷ワークは、前記第1のピッチとは異なる第2のピッチを有する格子点の第2のグリッドにわたって配置される、印刷される要素の第2の配列を有するステップとを含む、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法。
【請求項35】
請求項1から32までのいずれか一項に記載のセキュリティ文書をデジタル印刷するよう適合されるか、又は請求項33に記載の複数のセキュリティ文書を印刷するよう適合される、請求項34に記載のセキュリティ文書をデジタル印刷する方法。
【請求項36】
セキュリティ文書をデジタル印刷する方法であって、前記方法は、
セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域に、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、前記第1の印刷ワークは、第1の色の材料で印刷される要素の第1の配列を有するステップと、
前記基材の前記第1の表面の第2の領域に、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、前記第2の印刷ワークは、第2の色の材料で印刷される要素の第2の配列を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域は、少なくとも部分的に重なり合い、その結果前記第1の配列及び前記第2の配列の重なりが組み合わされた色を示すステップと
を含み、少なくとも前記第1の色は、CMYKのうちの1色ではない、方法。
【請求項37】
少なくとも前記第1の色は、前記CMYKの色域の外側にある、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記示された組み合わされた色は、前記CMYKの色域の外側にある、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも前記第1の色は、CMYKOGのうちの1色ではない、請求項36から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記示された組み合わされた色は、前記CMYKOGの色域の外側にある、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の領域の少なくとも一部分が、前記第2の領域と重ならないようにして、これにより前記第1の色が、前記第1の領域の前記一部分に示される、請求項36から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
CMYKのうちの少なくとも1色、好ましくはCMYのうちの少なくとも1色が使用されない、請求項36から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
デジタル印刷されるセキュリティ文書であって、
セキュリティ文書の基材と、
前記セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域の、第1のデジタル印刷される印刷ワークであって、前記第1の印刷ワークは、第1の色の材料で印刷される要素の第1の配列を有する、第1のデジタル印刷される印刷ワークと、
前記セキュリティ文書の基材の前記第1の表面の第2の領域の、第2のデジタル印刷される印刷ワークであって、前記第2の印刷ワークは、第2の色の材料で印刷される要素の第2の配列を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域は、少なくとも部分的に重なり合い、その結果前記第1及び前記第2の配列の重なりが組み合わされた色を示す、第2のデジタル印刷される印刷ワークと
を備え、少なくとも前記第1の色は、CMYKのうちの1色ではない、デジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項44】
少なくとも前記第1の色は、前記CMYKの色域の外側にある、請求項43に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項45】
前記示された組み合わされた色は、前記CMYKの色域の外側にある、請求項44に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項46】
少なくとも前記第1の色は、CMYKOGのうちの1色ではない、請求項43から45までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項47】
前記示された組み合わされた色は、前記CMYKOGの色域の外側にある、請求項46に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項48】
前記第1の領域の少なくとも一部分が、前記第2の領域と重ならないようにして、これにより前記第1の色が、前記第1の領域の前記一部分に示される、請求項43から47までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項49】
CMYKのうちの少なくとも1色、好ましくはCMYのうちの少なくとも1色が使用されない、請求項43から48までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項50】
前記セキュリティ文書は、紙幣、ポリマー紙幣、小切手、パスポート、身分証明書、鑑定書、印紙、免許証、識別文書、及びビザのうちの1つである、請求項43から49までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項51】
デジタル印刷されるセキュリティ文書であって
セキュリティ文書の基材と、
前記基材の第1の表面の第1の領域の、第1のデジタル印刷される印刷ワークであって、前記第1の印刷ワークは、印刷される要素の第1の配列を有し、前記要素の少なくとも1つは、前記セキュリティ文書の基材の前記表面に垂直な方向に、第1の要素の厚さを有する、第1のデジタル印刷される印刷ワークと、
前記基材の前記第1の表面の第2の領域の、第2のデジタル印刷される印刷ワークであって、前記第2の印刷ワークは、印刷される要素の第2の配列を有し、前記要素の少なくとも1つは、前記セキュリティ文書の基材の前記表面に垂直な前記方向に、第2の要素の厚さを有し、前記第2の要素の厚さは前記第1の要素の厚さよりも厚い、第2のデジタル印刷される印刷ワークと
を備える、デジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項52】
前記第1の要素の厚さは、最大30μm、好ましくは最大25μm、より一層好ましくは最大20μm、最も好ましくは5から15μmの範囲であり、前記第2の要素の厚さは、少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、より一層好ましくは少なくとも25μm、最も好ましくは25から35μmの範囲である、請求項51に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項53】
前記第2の要素の厚さは、前記第1の要素の厚さより少なくとも10%厚く、好ましくは少なくとも25%厚く、より好ましくは少なくとも50%厚く、最も好ましくは前記第1の要素の厚さより少なくとも100%厚い、請求項51又は52に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項54】
前記第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第2の配列の1つ又は複数の要素は、ほぼ同じ光学特性を有する材料、好ましくは同じ材料の、少なくとも2つの重ねられた層によって形成される、請求項51から53までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項55】
前記第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第2の配列の前記1つ又は複数の要素のそれぞれは、前記セキュリティ文書の基材上に配置された第1の層と、前記第1の層上に配置された第2の層とを備え、前記第2の層は、好ましくは、前記第1の層よりも小さい横方向の寸法を有するか、又は前記第2の層は、好ましくは、前記第1の層よりも大きい横方向の寸法を有する、請求項54に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項56】
前記第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第2の配列の少なくともいくつかの要素は、最小横方向寸法を有し、前記第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第1の配列の前記要素の最小横方向寸法よりも100%以下だけ大きい、好ましくは50%以下だけ大きい、より好ましくは25%以下だけ大きい、最も好ましくは、前記第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第1の配列の前記要素の前記最小横方向寸法よりも10%以下だけ大きい、請求項51から55までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項57】
前記第1の領域及び前記第2の領域は、少なくとも部分的に重なり合い、そのために、前記第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第1の配列の少なくとも1つの要素は、前記第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第2の配列の少なくとも1つの要素と隣り合って形成される、請求項51から56までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項58】
前記第1の印刷ワークは、第1の材料、好ましくは第1のインクで印刷され、前記第2の印刷ワークは、前記第1の材料とは異なる第2の材料、好ましくは第2のインクで印刷される、請求項51から57までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項59】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、相異なる光学特性を有する、請求項58に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項60】
前記第1の印刷ワークは、第1の色で印刷され、前記第2の印刷ワークは、前記第1の色とは異なる第2の色で印刷される、請求項51から59までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項61】
前記デジタル印刷されるセキュリティ文書は、紙幣、ポリマー紙幣、小切手、パスポート、身分証明書、鑑定書、印紙、免許証、識別文書、及びビザのうちの1つである、請求項51から60までのいずれか一項に記載のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項62】
前記第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第1の配列の前記要素又は各要素が、複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書のそれぞれで、前記第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、前記第2の配列の前記要素又は各要素に対して同じ位置にある、請求項51から61までのいずれか一項に記載の複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項63】
前記第1の印刷ワーク及び/又は前記第2の印刷ワークは、それぞれが固定コンテンツと可変コンテンツとを有する複数のセキュリティ文書を形成し、前記固定コンテンツは、前記複数のセキュリティ文書のそれぞれについて同じであり、前記可変コンテンツは、前記複数のセキュリティ文書の少なくとも一部間で変化し、前記可変コンテンツは、好ましくは、前記複数のセキュリティ文書のそれぞれに唯一的である、請求項51から61までのいずれか一項に記載の複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項64】
前記複数のセキュリティ文書のそれぞれの前記可変コンテンツは、前記第2の厚さを有する印刷される要素の、前記第2の配列の前記少なくとも1つの要素によって少なくとも部分的に画定され、且つ/又は前記第1の厚さを有する印刷される要素の、前記第1の配列の前記少なくとも1つの要素によって少なくとも部分的に画定される、請求項63に記載の複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書。
【請求項65】
セキュリティ文書をデジタル印刷する方法であって、前記方法は、
セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域に、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、そのため前記第1の印刷ワークは、印刷される要素の第1の配列を有し、前記要素の少なくとも1つは、前記セキュリティ文書の基材の前記表面に垂直な方向に、第1の要素の厚さを有するステップと、
前記基材の前記第1の表面の第2の領域に、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、そのため前記第2の印刷ワークは、印刷される要素の第2の配列を有し、前記要素の少なくとも1つは、前記セキュリティ文書の基材の前記表面に垂直な前記方向に、第2の要素の厚さを有し、前記第2の要素の厚さは前記第1の要素の厚さよりも厚いステップと
を含む、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法。
【請求項66】
前記第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップは、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って前記第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップを含み、前記第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップは、前記第1のデジタル・プリント・ヘッドとは異なる第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップを含む、請求項65に記載のセキュリティ文書をデジタル印刷する方法。
【請求項67】
前記第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップは、前記第2のプリント・ヘッドを使って、第2の材料で要素の配列をデジタル印刷するステップを含み、さらに、前記第2の厚さを有する要素の、前記第2の配列の前記要素を作るために、前記第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される要素の、前記配列の1つ又は複数の上に、第3のデジタル・プリント・ヘッドを使って、第3の材料でデジタル印刷するステップを含み、前記第3の材料は、前記第2の材料とほぼ同じ光学特性を有し、好ましくは前記第3の材料は、前記第2の材料と同じである、請求項66に記載のセキュリティ文書をデジタル印刷する方法。
【請求項68】
前記第2の材料は硬化性材料であり、前記方法は、前記第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される要素の前記配列の1つ又は複数の上に、第3のデジタル・プリント・ヘッドを使って前記第3の材料でデジタル印刷するステップの前に、少なくとも部分的に前記第2の材料を硬化させるステップをさらに含む、請求項67に記載のセキュリティ文書をデジタル印刷する方法。
【請求項69】
請求項51から61までのいずれか一項に記載のセキュリティ文書をデジタル印刷するよう適合されるか、又は請求項62から64までのいずれか一項に記載の複数のセキュリティ文書をデジタル印刷するよう適合される、請求項65から68までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル印刷されるセキュリティ文書、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法、セキュリティ文書を印刷するデジタル印刷機、及びセキュリティ文書をデジタル印刷するための印刷命令を生成する、コンピュータで実施される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷システムが広く利用可能であるため、デジタル印刷されるセキュリティ文書は、偽造品があまりにも広く作成され、本物の文書を比較的納得がいく複製レベルで作成される可能性があると考えられるので、一般に実現し得ないと見られる。しかし、デジタル印刷には、セキュリティ印刷業界で利用することが望ましいはずである、いくつかの利点がある。具体的には、デジタル印刷は、事前に作成される印刷プレートに頼らないため、短時間で印刷を実行し、また印刷された各セキュリティ文書間で異なり得る紙幣のシリアル番号又はパスポート識別データなど、可変データを提供する場合に特に有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G.Sharma編、「Digital Color Imaging Handbook」、1.7.2版、CRC Press、ISBN0-8493-0900-X、30から32頁、2003年
【非特許文献2】Akira Asai等、「Impact of an Ink Drop on Paper」、Journal of Imaging Science and Technology、37、1993年、205~207頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタル印刷技法のセキュリティに関する懸念に対処し、それによってセキュリティ印刷業界におけるデジタル印刷の利点の利用を可能にするために、従来のセキュリティ印刷技法が享受する高レベルのセキュリティを損なうことなく、デジタル印刷方法を使用してセキュリティ文書を作成できるように、セキュリティが向上したデジタル印刷を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
デジタル印刷されるセキュリティ文書のセキュリティは、市販のデジタル・プリンタの機能を超えている、文書の印刷に使用されるデジタル印刷機の機能に、かなりの程度まで依存しているであろう。デジタル印刷されるセキュリティ文書は、そうしたデジタル印刷機能なしで作成された偽造品と区別するために、認証用フィーチャであるそうした機能を提示することで、安全にすることができる。よって、本発明のデジタル印刷されるセキュリティ文書を理解するために、本発明による文書を作るために使用するのに好適な、デジタル印刷機の実例を、最初に説明することにする。セキュリティ文書を印刷するデジタル印刷機は、以下を備え得る。第1のデジタル・プリント・ヘッドと、第2のデジタル・プリント・ヘッドと(典型的には、第1のデジタル・プリント・ヘッドとは異なる)、任意選択で、1つ又は複数のオフセット印刷面を有するオフセット印刷ユニットであって、1つ又は複数のオフセット印刷面の印刷エリアを搬送して、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを順次通過させ、続いて第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドから受け取った印刷をセキュリティ文書の基材に転写するよう適合されるオフセット印刷ユニットと、デジタル印刷機を通って搬送経路に沿ってセキュリティ文書の基材を搬送するよう適合された搬送システムであって、搬送経路は、セキュリティ文書を運んで、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを給紙方向に順次通過させるか、又は搬送経路は、セキュリティ文書の基材を運んで、設けられている場合は、オフセット印刷ユニットを給紙方向に通過させる、搬送システムと、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドの両方を制御し、搬送システムによって第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを通過して搬送される、セキュリティ文書の基材に印刷するか、又はオフセット印刷ユニットによって第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを通過して搬送される、1つ又は複数のオフセット印刷面の印刷エリアに印刷するために(且つオフセット印刷の印刷エリアで受け取った印刷を、セキュリティ文書の基材に転写するために)、1組の印刷命令を実行するよう適合されたコントローラであって、1組の印刷命令は、第1のデジタル・プリント・ヘッドの第1の解像度で、第1の印刷ワークを印刷するための印刷命令、及び第2のデジタル・プリント・ヘッドの、第1の解像度とは異なる第2の解像度で、第2の印刷ワークを印刷するための印刷命令を含むコントローラ。ここで、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の解像度で印刷するよう構成され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第2の解像度で印刷するよう構成される。下記で論じられるすべての好ましいフィーチャは、開示されたデジタル印刷機に関して論じられており、このデジタル・プレスを使用して、本発明によるセキュリティ文書を作ることができる。
【0007】
相異なる解像度で印刷するよう構成された第1及び第2のプリント・ヘッドを備えるデジタル印刷機を提供することにより、デジタル印刷機を使用して印刷されたセキュリティ文書は、相異なるプリント・ヘッドを使って印刷されたワーク間の、印刷される要素、たとえば、印刷されるドットの間隔の特徴的な変化を示すように作製され得る。これは、閲覧者が2つの相異なるワーク間に相異なる間隔が存在することを確認するように、印刷ワークを綿密に検査することにより、デジタル印刷されたセキュリティ文書を認証できることを意味する。偽造者が従来のデジタル・プリンタを使用してセキュリティ文書の偽造品をスキャンして印刷しようとした場合、従来のデジタル・プリンタは、相異なるプリント・ヘッドからの相異なる色間で印刷の均一性を目指しているため、均一の解像度を有するプリント・ヘッドを備えているので、結果として得られるセキュリティ文書には解像度の必要な変化がない。
【0008】
この説明全体で使用される「解像度」という用語は、印刷に適用されるとき、2次元で印刷された要素の間隔を指し、各方向の間隔は通常、2.54cm(1インチ)当りのドット数(DPI:dots per inch)で測定される。各解像度は通常、横送り方向解像度及び給紙方向解像度で構成される。詳細には、第1の解像度は、第1の横送り方向解像度及び第1の給紙方向解像度で構成され、第1の横送り方向解像度は、第1の給紙方向解像度と同じであっても、又は異なっていてもよい。同様に、第2の解像度は、第2の横送り方向解像度及び第2の給紙方向解像度で構成され、第2の横送り方向解像度は、第2の給紙方向解像度と同じであっても、又は異なっていてもよい。横送り方向と給紙方向とで解像度が異なる場合は、最終の印刷されたセキュリティ文書がさらに複雑になり、閲覧者が信憑性を判断できる別の手段が提供される。具体的には、従来のデジタル・プリンタの大部分は、給紙方向と横送り方向との両方で均一の見た目の印刷を提供するために、給紙方向と横送り方向との両方に同じ解像度で印刷するよう構成される。別法として、実例が、各印刷ワークの給紙方向と横送り方向との両方で同じ解像度を維持し、これによりワーク間のピッチの違いをより容易に識別できるようにすることが望ましい場合がある。
【0009】
相異なる解像度が、同じデジタル印刷機のデジタル・プリント・ヘッド、たとえば、デジタル印刷機の同じフレームに搭載された第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って提供されるという事実によって、さらなる利点がもたらされる。同じデジタル印刷機に相異なる解像度のデジタル・プリント・ヘッドを設けることにより、印刷された相異なるワークが、正確な位置合せを示すようになる。たとえばワークは、デジタル印刷機を使用して印刷される複数のセキュリティ文書のそれぞれで、同じ相対位置を有するようになる。これは、基材が、第1のデジタル印刷機で第1のワークが印刷され、第2のデジタル印刷機の第2のデジタル・プリント・ヘッドによって第2のワークが印刷される場合には、実現させることは不可能であろう。具体的には、印刷されるワークは、マイクロ文字又は精細な線のパターンなど、互いに完全に位置合せされたセキュリティ用フィーチャを提供できる。
【0010】
さらに別の利点は、セキュリティ文書を偽造しようとすると、様々な解像度で完全に位置合せされた、印刷されたワークをスキャンすることが、はるかに困難なことである。すなわち、デジタル印刷が様々な解像度で行われるため、たとえば、リソグラフィで印刷されたセキュリティ文書を偽造する場合に使用されている可変周波数行間隔技法(variable frequency line spacing technique)を使用して、セキュリティ文書のフィーチャを模倣することは不可能であろう。これにより、デジタル印刷機を使用して印刷されたセキュリティ文書に、セキュリティ上のさらに固有の改良が加えられる。
【0011】
本開示によるデジタル印刷機は、セキュリティ文書の基材に直接印刷するよう構成され得るか、又は1つ又は複数のオフセット印刷面に印刷できる。たとえば、デジタル・プリント・ヘッドは、オフセット・シリンダに印刷できる。別法として、第1のプリント・ヘッドは、第1のシリンダに印刷でき、次いで、ワークを第2のシリンダに転写し、第2のプリント・ヘッドは、第2のシリンダの第1のワークの上に印刷する。次いで、最終のオフセット・シリンダは、両方の印刷ワークを、セキュリティ文書の基材に同時に転写できる。これは、印刷ワークをセキュリティ文書の基材に直接、又は1つ若しくは複数の中間オフセット印刷面、たとえば、別のオフセット印刷シリンダを経由して間接的に、転写することによって行われ得る。このように、オフセット印刷ユニットを任意選択で使用することは、本明細書に開示されるすべての印刷機及び方法に適用される。
【0012】
本発明によるデジタル印刷機は、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドの相異なるノズル直径のプリント・ノズルも備える。これは、セキュリティ文書の印刷において重要である。というのは、こうした種類の文書は通常、紙幣の様々なフィーチャに使用されるべき著しく相異なる特性を有するインクを必要とするからである。たとえば、デジタル印刷されるマイクロ文字のフィーチャには、文書に金属のセキュリティ用フィーチャを印刷するために使用される金属インクとは著しく異なるインクが必要な場合がある。デジタル・プリント・ヘッドが使用できるインクの種類は、とりわけ、デジタル・プリント・ヘッドのノズル直径に直接関係している。好ましくは、第1及び/又は第2のノズル直径は、1から100ミクロンの範囲内、好ましくは6から80ミクロンの範囲内であり、好ましくは、第1及び第2のノズル直径のうちの一方は、1から40ミクロンの範囲内、好ましくは、6から20ミクロンの範囲内であり、他方は、40から100ミクロンの範囲内、好ましくは60から80ミクロンの範囲内である。一方、従来のデジタル印刷機では通常、インクが、多色画像を作り出すために通常色しか異ならないので、同じサイズのノズルを使用することになる。本明細書に開示される他のデジタル印刷機は、相異なるノズルサイズを有するプリント・ヘッドの使用を必要としない場合があることに留意されたい。
【0013】
本発明によるデジタル印刷機は、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドがそれぞれの印刷命令を実行している間、搬送経路又はオフセット印刷ユニットに対して静止したままであるように構成されるか、又はコントローラによって制御される、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドも備える。すなわち、デジタル・プリント・ヘッドは非スキャン型である。セキュリティ文書の印刷では、インクを非常に正確に配置できることが重要である。これは、セキュリティ文書の見た目を互いに非常に類似した状態に保ち、印刷された様々なフィーチャ間で、高度な位置合せを実現させる助けとなる。これらは両方とも、デジタル手段で印刷された偽造セキュリティ文書を識別できるようにするために重要である。さらに、非スキャン型プリント・ヘッドを使用することで、確実に高スループットが実現可能となり、高スループットは、どんな1回の印刷実行でも数千枚の文書が必要になる場合に重要である。本明細書に開示される他のデジタル印刷機は、非スキャン型デジタル・プリント・ヘッドの使用を必要としない場合があることに留意されたい。
【0014】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第1の横送り方向解像度を有し、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の横送り方向解像度とは異なる第2の横送り方向解像度を有し、第1のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令は、第1の横送り方向解像度に相当する解像度でのものであり、第2のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令は、第2の横送り方向解像度に相当する解像度でのものである。横送り方向解像度は通常、デジタル・プリント・ヘッド自体の物理パラメータによって確立されるため、印刷機が作製されるときに解像度の差が設定され得る。たとえば、インクジェット・プリント・ヘッドの横送り方向解像度は、印刷されるワークを構成するインクの液滴を吐出するインク・ノズルの物理的な間隔で決まることになる。一方、電子写真、たとえばレーザ・プリンタ(トナー・プリンタとしても知られる)の横送り方向解像度は、レーザが感光体ドラムを横切ってスキャンするときの、レーザの物理的なステップ・サイズで決まる。
【0015】
代替的又は追加的に、コントローラは、第1のプリント・ヘッドを第1の給紙方向解像度で印刷するように制御し、第2のプリント・ヘッドを第1の給紙方向解像度とは異なる第2の給紙方向解像度で印刷するように制御するよう適合され得、第1のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令は、第1の給紙方向解像度に相当する解像度でのものであり、第2のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令は、第2の給紙方向解像度に相当する解像度でのものである。前述のように、特にインクジェット印刷では、給紙方向解像度はコントローラによって制御され得る。インクジェット印刷では、給紙方向解像度は、紙がデジタル印刷機を通って供給されるスピード、及びインクジェット・ノズルにインクの液滴を吐出させる速度などの要因で決まる。これは、デジタル印刷機が、相異なるデジタル・プリント・ヘッドを使ってもたらされる特定の解像度の違いを、実現させるよう構成され得る手法を提供する。
【0016】
上記から、各プリント・ヘッドは、プリント・ヘッドが動作する2つの直交する方向のそれぞれにおいて、相異なる特定の解像度を有し得ることが理解されよう。当技術分野では、デジタル・プリント・ヘッドの固有の解像度は、デジタル・プリント・ヘッドが動作するよう構成されている解像度であると解釈される。したがって、本発明は、相異なる固有の解像度を有する少なくとも2つのデジタル・プリント・ヘッドを備える、デジタル印刷機を提供するものと解釈され得る。
【0017】
前述のように、好ましい種類のデジタル・プリント・ヘッドは、インクジェット・プリント・ヘッドであるため、好ましくは、第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドはインクジェット・プリント・ヘッドである。インクジェット・プリント・ヘッドが好ましいが、レーザ・プリント・ヘッドなど、他のデジタル・プリント・ヘッドを使用することもできる。実際、場合によっては、デジタル印刷機に様々な種類のデジタル・プリント・ヘッドを備えることにより、セキュリティが強化され得る。たとえば、1つ又は複数のプリント・ヘッドは、レーザ・プリント・ヘッドとして提供されている1つ又は複数の追加のプリント・ヘッドを含む、インクジェット・プリント・ヘッドであり得る。
【0018】
単純な種類のデジタル・プリント・ヘッドは、単一のドット・サイズを印刷し得る。通常、より高解像度のプリント・ヘッドは、より低解像度のプリント・ヘッドよりも小さいドット・サイズを印刷することになる。いくつかの実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第2のデジタル・プリント・ヘッドより高解像度であり、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能なドット・サイズより大きいドット・サイズを印刷するよう構成される。この相異なるドット・サイズを使用することにより、閲覧者が信憑性を確認するときにチェックできる、別の特性を提供できる。単一のドット・サイズを使用できる一方で、第1のデジタル・プリント・ヘッドが複数種類の相異なるドット・サイズを印刷するよう構成され、且つ/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドが複数種類の相異なるドット・サイズを印刷するように構成されるのを可能にすることによって、セキュリティを強化できる。たとえば、デジタル・プリント・ヘッドがインクジェット・プリント・ヘッドである場合、デジタル・プリント・ヘッドは、相異なるサイズの印刷されるドットを作り出す、複数の相異なる液滴サイズを吐出するよう構成され得る。通常、より高解像度のプリント・ヘッドは、より低解像度のデジタル・プリント・ヘッドよりも小さい液滴サイズの範囲を印刷することになる。第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な複数種類の相異なるドット・サイズは、好ましくは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な複数種類の相異なるドット・サイズとは異なっている。
【0019】
特定の実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な最小ドット・サイズより小さい、好ましくは少なくとも25%小さい、より好ましくは50%小さい、少なくとも1種類のドット・サイズを印刷するよう構成されるか、且つ/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な最大ドット・サイズより大きい、好ましくは50%大きい、より好ましくは100%大きい、少なくとも1種類のドット・サイズを印刷するよう構成される。相異なるワークのドット・サイズ間に、かかる著しい違いを設けることにより、安全なデジタル印刷機を使用して印刷された印刷物は、ドット・サイズが互いに非常に類似することになる従来のデジタル・プリンタが元となった印刷物と、容易に区別できる。
【0020】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第2のデジタル・プリント・ヘッドよりも高解像度である。いくつかの特定の実例では、第1の解像度は、給紙方向及び横送り方向のいずれか又は両方において、少なくとも600DPI、好ましくは少なくとも900DPI、より好ましくは少なくとも1200DPIである。前述のように、より高解像度のプリント・ヘッドは通常、より小さなドット・サイズで印刷するため、好ましくは、第1のデジタル・プリント・ヘッドはインクジェット・プリント・ヘッドであり、最大50ピコリットル、好ましくは最大30ピコリットル、より好ましくは最大10ピコリットル、最も好ましくは最大5ピコリットルでのうちの少なくとも1種類の液滴サイズで印刷するよう構成される。第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な最大の液滴サイズは、好ましくは、最大100ピコリットル、より好ましくは最大50ピコリットル、最も好ましくは最大30ピコリットルでのものである。同様に、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第1のデジタル・プリント・ヘッドよりも低解像度である。いくつかの特定の実例では、第2の解像度は、給紙方向及び横送り方向のいずれか又は両方において、最大600DPI、好ましくは最大360DPI、より一層好ましくは最大200DPIである。この低解像度のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくはインクジェット・プリント・ヘッドであり、少なくとも10ピコリットル、好ましくは少なくとも30ピコリットル、より好ましくは少なくとも50ピコリットル、最も好ましくは少なくとも100ピコリットルでのうちの少なくとも1種類の液滴サイズで印刷するよう構成される。好ましくは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な最少の液滴サイズは、少なくとも6ピコリットル、より好ましくは少なくとも10ピコリットル、最も好ましくは少なくとも20ピコリットルでのものである。いくつかの具体的な好ましい組合せは、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも600DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大360DPI、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも600DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大200DPI、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも900DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大600DPI、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも1200DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大600DPI、並びに第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも900DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大で360DPIを含む。
【0021】
多くの実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の色で印刷するよう構成され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の色とは異なる第2の色で印刷するよう構成される。好ましくは、第1の色と第2の色との両方が色相である(すなわち、黒、白、又は灰色ではない)。相異なる色でワークを提供することにより、閲覧者は確実に、1つのワークを別のワークと容易に区別できるので、文書を認証するためにワークの相異なる解像度を容易に識別できる。さらに印刷ワークは、好ましくは、セキュリティ文書上の多色(すなわち、グレースケールではない)イメージに寄与するように使用される。しかし、別法として、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのうちの一方は、相異なる閲覧条件下で相異なる見た目を有する材料を印刷してもよい。たとえば、プリント・ヘッドの一方が、蛍光インクを印刷してもよい。各プリント・ヘッドは、ある単色だけで印刷することは可能であるが、1つ又は複数のデジタル・プリント・ヘッドが複数色で印刷するよう構成されている場合もある。たとえば、インクジェット・プリント・ヘッドは、第1の色のインクの液滴を印刷するノズルの第1の配列と、たとえば同じ解像度で、第2の色のインクの液滴を印刷するノズルの第2の配列とを備えることができ、したがって、そうした色の組合せも、プロセス・カラーとして、このデジタル・プリント・ヘッドで直接印刷可能である。これは、下記の実例のすべてに当てはまり、本発明のすべての態様にわたって使用され得る。すなわち、各デジタル・プリント・ヘッドは、複数色で印刷できる。
【0022】
上記の議論では2つのデジタル・プリント・ヘッドの使用に着目してきたが、実際には、1つ又は複数のさらなるプリント・ヘッドを使用できる。たとえば、デジタル印刷機は、好ましくは、第3のデジタル・プリント・ヘッドを備えてもよく、搬送システムは、セキュリティ文書の基材を搬送して、第1、第2、及び第3のデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを給紙方向に順次通過させるよう適合され、コントローラは、セキュリティ文書の基材に印刷するために、デジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを制御して、1組の印刷命令を実行するよう適合され、1組の印刷命令は、第3のデジタル・プリント・ヘッドが第3の解像度で第3の印刷ワークを印刷するための印刷命令を含み、第3のデジタル・プリント・ヘッドは、第3の解像度で印刷するよう構成される。「解像度」という用語の構成、すなわち給紙方向及び横送り方向の成分に関する上記の議論は、この第3の解像度に適用される。第3のデジタル・プリント・ヘッドを提供することにより、より複雑な印刷イメージを作製できるだけでなく、文書を認証しようとする閲覧者に別の参照する箇所を提供できる。実際、デジタル印刷機はモジュール式であってもよく、たとえば、自由に選択可能な数のデジタル・プリント・ヘッド機構を備え、デジタル・プリント・ヘッド機構はそれぞれ、目前の印刷ジョブに応じて、所望のデジタル・プリント・ヘッドが選択的に提供される場合があることが予想される。2つ以上の、いくつのデジタル・プリント・ヘッド機構でも備えられ得る。デジタル・プリント・ヘッドの数が増えると、印刷デザインの柔軟性が高まり、セキュリティが向上するため、典型的には、4つ以上のデジタル・プリント・ヘッドが使用されることが予想される。
【0023】
第3の解像度は、好ましくは、第1又は第2の解像度とは異なり、最も好ましくは、第3の解像度は、両方の解像度と異なる。解像度は、好ましくは、同じところで互いに異なる。これは、たとえば、3種類の解像度すべてが、相異なる横送り方向解像度であるか、又は相異なる給紙方向解像度であることを意味する。これにより、最終の印刷ワーク間を最も簡単に比較できる。しかし、たとえば、2種類の解像度が横送り方向で互いに異なり、一方第3の解像度は、給紙方向で異なることも可能である。
【0024】
第3のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第3の色で印刷するよう構成され、第3の色は、好ましくは、第1又は第2の色と異なり、より好ましくは、第1及び第2の色の両方と異なる。第3の色は、やはり、好ましくは色相である。
【0025】
上記のすべての実例において、好ましくは、第1、第2、及び第3の色のうちの少なくとも1色は、CMYKのうちの1色ではなく、さらに好ましくは、第1、第2、及び第3の色のうちの少なくとも1色は、CMYKの色域の外側にある。CMYKの色は、本発明の第3の態様に関連して下記でさらに説明されるように、従来のCMYKの印刷で使用される色と考えられる。非標準色、特にCMYK色域の外側の色で印刷すると、印刷されたセキュリティ文書の見た目を従来のCMYKプリンタで正確に複製することが、確実に、より困難になる。たとえば、使用されているインクがすべてCMYK色域内にあるが、CMYK色域の全範囲を提供していない場合、これによりスキャナがスキャンされた色を調整して、検出された色のエラーとして認識するものを補正する可能性がある。これにより、偽造する試みでの色の複製が不適切になり得る。別法として、1色又は複数色がCMYK色域の外側にある場合、印刷されたセキュリティ文書は、従来のCMYKプリンタで使用可能なインクでは単純に複製できない色を含むことができる。CMYK以外の色と印刷されたワークの相異なる解像度との組合せは、綿密に検査されたときに、閲覧者に文書の信憑性を明確に示す、印刷されたワークの非常に目立つ見た目を提供し得る。CMYK以外の色のさらに好ましい実施態様、及びCMYKの従来例のさらなる説明を、本発明の第3の態様に関連して下記に述べる。これらの好ましい実施態様はまた、本発明による任意のセキュリティ文書の一部としても使用され得ることが理解されよう。
【0026】
色のうちの1色がCMYKのうちの1色ではないことが好ましいだけでなく、代替的又は追加的に、CMYKのうちの少なくとも1色、より好ましくはCMYのうちの少なくとも1色が意図的に使用されない、すなわちこれらの標準色のうちの1色が、印刷機のデジタル・プリント・ヘッドから完全に除外されていることが好ましい。従来のデジタル印刷機は、顧客が望む任意の色を再現することを目的としているが、これはセキュリティ文書用のデジタル印刷機において、関心事ではない。というのは、デザイナは、使用されるべきデジタル印刷機の特定の制約に合わせて設計するのが通常であり、具体的には紙幣などのセキュリティ文書は、色の変化が比較的少ない、すなわち完全なCMYK色域と比較して大幅に狭い色域内にあることが、非常に一般的だからである。これは実際に、スキャナがスキャンした画像をCMYK色域に合わせようとして、その結果スキャンした画像を歪ませる場合があるため、印刷されたセキュリティ文書の色域が狭くなると、印刷された文書をスキャンしようとしたときにエラーを生じる可能性があるので、セキュリティも向上させ得る。
【0027】
多くの好ましい実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッド、第2のデジタル・プリント・ヘッド、及び搬送システムは、第1のデジタル・プリントが、基材の第1の領域に第1の印刷ワークを印刷するよう制御可能であり、且つ第2のデジタル・プリントが、基材の第2の領域に第2の印刷ワークを印刷するよう制御可能であり、第1及び第2の領域は、少なくとも部分的に互いに重なり合うよう構成される。第1及び第2(及び好ましくは第3)のワークの重なりにより、これらのワークの解像度及び印刷された要素のサイズの、非常に簡単な比較が可能となり、したがって、信憑性をより容易に識別可能となる。さらに、ワークの重なりは、ワークが組み合わされた色を示すので、印刷されたセキュリティ文書にさらなる色の変化をもたらし得る。このさらなる色の変化は、上記で説明したように、色の1色又は複数色がCMYK以外の色である場合に、特に高い効果がある。
【0028】
いくつかの実例では、デジタル印刷機は、基材材料の印刷用紙に印刷するよう構成される。搬送システムは、具体的には、基材の印刷用紙を搬送してデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを通過させるよう適合され得、セキュリティ文書の基材は、基材の印刷用紙の一部である。別法として、デジタル印刷機は、枚葉システムであり得る。詳細には、搬送システムは、セキュリティ文書の基材の個々のシートを搬送してデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを通過させるよう適合され得、セキュリティ文書の基材は、搬送システムによって搬送されるシート又はシートの一部のいずれかである。デジタル・プリント・ヘッドは、典型的には、基材が各デジタル・プリント・ヘッドを直ちに順に通過するように、互いに並んで設けられることになる。しかしこの枚葉式の実例では、シートは、搬送システムによって、第1のデジタル・プリント・ヘッドの後で、単一にされて第2のデジタル・プリント・ヘッドを通過するよう供給される前に、再度積み重ねることが可能である。
【0029】
搬送システムは、好ましくは、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドがセキュリティ文書の基材の第1の表面に印刷するように、セキュリティ文書の基材を搬送して第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを順次通過させるよう適合される。これは好ましいが、必須ではなく、たとえば、第1及び第2の印刷ワークが基材の反対側に印刷され、それでもなお直接比較できるように、基材は透明であってもよい。
【0030】
上記のすべての実例において、プリント・ヘッドは、横送り方向に単一の固定解像度を有するものとして説明しているが、これは必須ではない。いくつかの実例では、第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、プリント・ヘッドの第1の部分及びプリント・ヘッドの第2の部分を備え、第1及び第2の部分は、横送り方向にオフセットされており、第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、プリント・ヘッドの第1の部分の解像度がプリント・ヘッドの第2の部分の解像度と異なるように構成され、対応する第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令は、対応する解像度での命令の対応する部分を含む。同様に、色については、第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、プリント・ヘッドの第1の部分及びプリント・ヘッドの第2の部分を備えることができ、第1及び第2の部分は、横送り方向にオフセットされており、プリント・ヘッドの第1の部分は、第1の色で印刷するよう構成され、プリント・ヘッドの第2の部分は、第1の色とは異なる第2の色で印刷するよう構成される。これらの色は、やはり、好ましくは色相であり、好ましくはCMYK以外の色である。明確に相異なる特性を有する部分を備えたデジタル・プリント・ヘッドを使用することにより、セキュリティをさらに向上させることができる。というのは、こうした特性が同じ印刷ヘッドの相異なる部分を使って提供されるという事実のおかげで、こうした特性を同じワークの相異なる領域にもたらすことができ、その結果こうした特性が一体的に、互いに正確に、すなわち、単一の印刷されるドットのサイズまで位置合せされるからである。
【0031】
相異なる解像度の第1及び第2の部分を具備するデジタル・プリント・ヘッドの実例では、プリント・ヘッドの第1の部分の横送り方向解像度は、好ましくは、プリント・ヘッドの第2の部分の横送り方向解像度とは異なる。代替的又は追加的に、コントローラは、プリント・ヘッドの第1の部分の給紙方向解像度がプリント・ヘッドの第2の部分の給紙方向解像度と異なるように、プリント・ヘッドの第1及び第2の部分を制御するよう適合され得る。
【0032】
多くの場合、プリント・ノズルの第1の配列は、搬送経路を横切る方向に第1のピッチを有し、プリント・ノズルの第2の配列は、搬送経路を横切る方向に第2のピッチを有し、第2のピッチは、第1のピッチとは異なっている。第1及び第2のピッチのうちの一方は、好ましくは、他方の非整数倍である。一部のデジタル・プリント・ヘッドは、デジタル・プリント・ヘッドのプリント・ノズルを選択的に使用するだけで、相異なる解像度で印刷できるが、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドは、使用可能な状態でデジタル・プリント・ヘッドが備えるノズルの数が物理的に異なることが好ましい。これは、デジタル・プリント・ヘッドが様々な解像度に特化していること、すなわち、デジタル・プリント・ヘッドが相異なる固有の解像度を有するため、こうした様々な解像度で、高品質で印刷できることを意味するであろう。さらに、一方のピッチが他方のピッチの非整数倍である(たとえば、第1のデジタル・プリント・ヘッドのピッチが第2のピッチの2.1倍である)ことは、偽造者が、より小さいピッチのデジタル・プリント・ヘッドと同じピッチを有する2つのデジタル・プリント・ヘッドを使用し、ノズルの一部分だけを使用することにより、より大きいピッチのプリント・ヘッドを模倣することは、物理的に不可能であることを意味する。第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドに好適なピッチは、300ミクロンから10ミクロンの間である。上記から明らかとなるように、第1の解像度は、典型的には、プリント・ノズルの第1の配列の第1のピッチに相当し、第2の解像度は、プリント・ノズルの第2の配列の第2のピッチに相当し、その結果、第1のプリント・ヘッドは、第1の横送り方向解像度を有する第1の印刷ワークを印刷するよう制御され、第2のプリント・ヘッドは、第1の横送り方向解像度とは異なる第2の横送り方向解像度を有する第2の印刷ワークを印刷するよう制御される。
【0033】
本発明によるデジタル印刷機は非スキャン型であるため、好ましくは、第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、搬送経路又は1つ若しくは複数のオフセット印刷面の全幅にわたって延在する。これにより、印刷機は、セキュリティ文書上の端から端まで印刷できる。別法として、印刷機は、セキュリティ文書の一部だけしか印刷できない。すなわち、1つ又は複数のプリント・ヘッドは、搬送経路又は1つ若しくは複数のオフセット印刷面の全幅にわたっては延在できない。たとえば、印刷機は、セキュリティ文書のセキュリティ用万線(stripe)領域のみを印刷するよう構成され得る。
【0034】
コントローラは、好ましくは、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドの両方を制御して、セキュリティ文書の基材に、単回通過して印刷するよう構成される。単回通過式デジタル印刷機は、印刷されたフィーチャ間の高度な位置合せを実現させ、高いスループットを維持するため有益である。
【0035】
ノズルのピッチが非整数倍の関係を有することが好ましいのとまさに同様に、第1及び第2の解像度の一方は、好ましくは、他方の非整数倍であり、第1及び第2の解像度の一方の横送り方向解像度は、好ましくは、他方の横送り方向解像度の非整数倍である。これにより、やはり、偽造者が同一のデジタル・プリント・ヘッドを使用して印刷された文書を偽造することは、より困難になる。
【0036】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、コントローラによって、1種類又は複数種類の液滴サイズで印刷するよう構成されるか又は制御可能であり、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、コントローラによって、1種類又は複数種類の液滴サイズで印刷するよう構成されるか又は制御可能であり、第1のデジタル・プリント・ヘッドの1種類又は複数種類の液滴サイズは、第2のデジタル・プリント・ヘッドの1種類又は複数種類の液滴サイズとは異なる。様々な液滴サイズは、様々な効果を生み出すのに特に有用である。たとえば、マイクロ文字は、比較的小さな液滴サイズを必要とする場合があり、印刷される金属インクは、比較的大きな液滴サイズを必要とする場合がある。相異なるインクに相異なる液滴サイズを使用することにより、セキュリティ文書の閲覧者が信憑性をチェックできる別の手法が提供される。
【0037】
セキュリティ文書の印刷では、コロナによる前処理が必要であることが多い。有利なことに、コロナによる前処理をデジタル印刷機に設け、製造を合理化し、基材に複数の別々の処理を施すことによって、基材の劣化を防止できる。したがって、デジタル印刷機は、好ましくは、セキュリティ文書の基材の表面にコロナ処理を実行するよう構成された、コロナ処理ユニットをさらに備え、搬送システムの搬送経路は、セキュリティ文書の基材を運んで、デジタル・プリント・ヘッド及び/又はオフセット印刷ユニットの上流の、コロナ処理ユニットを通過させる。
【0038】
同様に、印刷されたセキュリティ文書では、紙幣の印刷への損傷及び劣化を防止するために、ワニスの保護コーティングが必要となることが多い。これは別個の処理で実行できるが、有利なことに、ワニスの保護コーティングをデジタル印刷機に設け、製造を合理化し、基材に複数の別々の処理を施すことによって、基材の劣化を防止できる。したがって、デジタル印刷機は、好ましくは、仕上げ用デジタル・プリント・ヘッドをさらに備え、仕上げ用デジタル・プリント・ヘッドは、ワニスのコーティングをセキュリティ文書の基材に印刷するよう構成され、好ましくは、搬送システムの搬送経路は、セキュリティ文書の基材を運んで、仕上げ用デジタル・プリント・ヘッドを通過させるか、又はデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷されたワニスのコーティングをセキュリティ文書の基材に転写するよう適合された、デジタル・プリント・ヘッド及び/又はオフセット印刷ユニットの下流の、オフセット仕上げ用ユニットを通過させる。
【0039】
また、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法についても、説明することにする。セキュリティ文書をデジタル印刷する方法は、セキュリティ文書に関する1組の印刷命令を受信するステップと、第1の印刷ワークを印刷するように第1のデジタル・プリント・ヘッドを制御するステップであって、第1の印刷ワークは、1組の印刷命令に従って、セキュリティ文書の基材の第1の領域で受け取られるステップと、第2の印刷ワークを印刷するように第2のデジタル・プリント・ヘッドを制御するステップであって、第2の印刷ワークは、1組の印刷命令に従って、セキュリティ文書の基材の第2の領域で受け取られるステップとを含む場合があり、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドは、セキュリティ文書の基材に直接印刷するか、又はオフセット印刷ユニットの1つ又は複数のオフセット印刷面の印刷エリアに印刷するよう構成され、1つ又は複数のオフセット印刷面は、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドから受け取った印刷を、続いてセキュリティ文書の基材に転写し、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の解像度で印刷するように制御され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の解像度とは異なる第2の解像度で印刷するように制御され、これにより、印刷されたセキュリティ文書の第1の印刷ワークは、第1の解像度に相当する格子点の第1のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第1の配列を有し、印刷されたセキュリティ文書の第2の印刷ワークは、第2の解像度に相当する格子点の第2のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第2の配列を有する。
【0040】
これらの方法は、概ね、上記で説明した印刷機を使用して印刷する方法に対応する。したがって、上記の議論は、本方法にも等しく当てはまる。
【0041】
上記のように、この印刷方法は、結果的に、第1の印刷ワークが、第1の解像度に相当する格子点の第1のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第1の配列を有し、印刷されたセキュリティ文書上の第2の印刷ワークが、第2の解像度に相当する格子点の第2のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第2の配列を有する。たとえば、第1のデジタル・プリント・ヘッドが両方向に600DPIで印刷するよう構成されていた場合、横送り方向のあらゆるインチに沿って600箇所の可能な印刷位置、すなわち格子点があり、給紙方向のあらゆるインチに沿って600箇所の可能な印刷位置、すなわち格子点があることになる。しかし、理解されるように、あらゆる可能な印刷位置がインクのドットによって占められるわけではない。インクのドットをまさに受け取る位置は、作成されている画像に基づいて決定されることになる。しかし、印刷ワークの解像度は、それでもなお、ワーク全体のドット数の間隔に基づいて決定可能であろう。
【0042】
第1の領域及び第2の領域は、好ましくは、少なくとも部分的に重なっている。したがって、1つの印刷ワークを別の印刷ワークと直接比較して、相異なる解像度をチェックし、それによってデジタル印刷されたセキュリティ文書を認証できる。
【0043】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第1の解像度で印刷するように制御され、第1の解像度は、第1の横送り方向解像度及び第1の給紙方向解像度で構成され、第1の横送り方向解像度は、第1の給紙方向解像度と同じであるか又は第1の給紙方向解像度とは異なり、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第2の解像度で印刷するように制御され、第2の解像度は、第2の横送り方向解像度及び第2の給紙方向解像度で構成され、第2の横送り方向解像度は、第2の給紙方向解像度と同じであるか又は第2の給紙方向解像度とは異なる。さらに好ましくは、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の給紙方向解像度で印刷するように制御され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の給紙方向解像度とは異なる第2の給紙方向解像度で印刷するように制御される。代替的又は追加的に、第1のデジタル・プリント・ヘッドは第1の横送り方向解像度を有し、第2のデジタル・プリント・ヘッドは第1の横送り方向解像度とは異なる第2の横送り方向解像度を有し、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の横送り方向解像度で印刷するように制御され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第2の横送り方向解像度で印刷するように制御される。これらの解像度の変化の選択肢の利点については、開示されたデジタル印刷機に関連して上記で論じられている。
【0044】
多くの実例では、上記のように、第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、インクジェット・プリント・ヘッドである。しかし、上記のように、他の種類のデジタル・プリント・ヘッドも使用できる。
【0045】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、複数種類の相異なるドット・サイズを印刷するように制御され、且つ/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、複数種類の相異なるドット・サイズを印刷するように制御される。第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される複数種類の相異なるドット・サイズは、好ましくは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される複数種類の相異なるドット・サイズとは異なっている。いくつかの実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される最小ドット・サイズより小さい、好ましくは少なくとも25%小さい、より好ましくは50%小さい、少なくとも1種類のドット・サイズを印刷するよう制御されるか、且つ/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される最大ドット・サイズより大きい、好ましくは50%大きい、より好ましくは100%大きい、少なくとも1種類のドット・サイズを印刷するように構成される。ドット・サイズの変化は、開示されたデジタル印刷機に関して上記で説明した理由により、結果的に得られる印刷されたセキュリティ文書の認証可能性に寄与する。
【0046】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第2のデジタル・プリント・ヘッドよりも高解像度である。いくつかの特定の実例では、第1の解像度は、給紙方向及び横送り方向のいずれか又は両方において、少なくとも600DPI、好ましくは少なくとも900DPI、より好ましくは少なくとも1200DPIである。前述のように、より高解像度のプリント・ヘッドは通常、より小さなドット・サイズで印刷するため、好ましくは、第1のデジタル・プリント・ヘッドはインクジェット・プリント・ヘッドであり、最大50ピコリットル、好ましくは最大30ピコリットル、より好ましくは最大10ピコリットル、最も好ましくは最大5ピコリットルでのうちの少なくとも1種類の液滴サイズで印刷するよう構成される。同様に、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第1のデジタル・プリント・ヘッドよりも低解像度である。いくつかの特定の実例では、第2の解像度は、給紙方向及び横送り方向のいずれか又は両方において、最大600DPI、好ましくは最大360DPI、より一層好ましくは最大200DPIである。この低解像度のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくはインクジェット・プリント・ヘッドであり、少なくとも10ピコリットル、好ましくは少なくとも30ピコリットル、より好ましくは少なくとも50ピコリットル、最も好ましくは少なくとも100ピコリットルでのうちの少なくとも1種類の液滴サイズで印刷するよう構成される。いくつかの具体的な好ましい組合せは、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも600DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大360DPI、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも600DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大200DPI、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも900DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大600DPI、第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも1200DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大600DPI、並びに第1のデジタル・プリント・ヘッドが少なくとも900DPI且つ第2のデジタル・プリント・ヘッドが最大360DPIを含む。
【0047】
この方法の多くの実例では、3つ以上の印刷ワークが印刷されることになる。この方法は、好ましくは、第3の解像度で基材の第3の領域に第3の印刷ワークを印刷するように、第3のデジタル・プリント・ヘッドを制御するステップをさらに含み、これにより、印刷されたセキュリティ文書上の第3の印刷ワークは、第3の解像度に相当する格子点の第3のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第3の配列を有する。第3の解像度は、好ましくは、第1及び/又は第2の解像度とは異なる。第4以降の印刷ワークは、必要に応じて、対応するプリント・ヘッドを使って印刷することもできる。
【0048】
第1のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第1の色で印刷するよう構成され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の色とは異なる第2の色で印刷するよう構成される。第3のワークが形成される場合、好ましくは、第3のデジタル・プリント・ヘッドは、第3の色で印刷するよう構成され、第3の色は、好ましくは、第1及び/又は第2の色とは異なる。いずれの場合も、好ましくは、第1、第2、及び第3の色のうちの少なくとも1色は、CMYKのうちの1色ではなく、さらに好ましくは、第1、第2、及び第3の色のうちの少なくとも1色は、CMYK色域の外側にある。相異なる色の変化に伴う利点については、デジタル印刷機に関連して上記で説明されている。
【0049】
上記のように、第1及び第2の領域は、好ましくは、第1及び第2の印刷ワークが基材上で少なくとも部分的に重なり合うように、第1及び第2の領域が少なくとも部分的に重なり合うよう配置される。第3のワークが第3の領域に印刷される場合、好ましくは、第3の領域が第1及び/又は第2の領域と少なくとも部分的に重なり、より好ましくは、3つすべてが1つの部分的領域で重なり、その結果、第3の印刷ワークが、少なくとも部分的に、基材上で第1及び/又は第2の印刷ワークと重なる。
【0050】
上記のデジタル印刷機と同様に、好ましくは、第1及び/又は第2のノズル直径は、1から100ミクロンの範囲内、好ましくは6から80ミクロンの範囲内であり、好ましくは、第1及び第2のノズル直径のうちの一方は、1から40ミクロンの範囲内、好ましくは、6から20ミクロンの範囲内であり、他方は、40から100ミクロンの範囲内、好ましくは60から80ミクロンの範囲内である。ただし、特定のセキュリティ文書の要件に応じて、他のノズル直径を使用することもできる。
【0051】
第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、第1及び第2の印刷ワークをそれぞれ印刷している間、静止状態に保たれる。これは、印刷の精度を向上させ、印刷されるセキュリティ文書の均一性を向上させ、高度な位置合せを実現させ、結果として得られる文書のセキュリティを向上させる助けとなる。
【0052】
多くの実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、セキュリティ文書の基材又はオフセット印刷の基材の印刷エリアが、搬送されて第1のデジタル・プリントを通過する方向を横切る方向に第1のピッチを有する、プリント・ノズルの第1の配列を備え、プリント・ノズルの第2の配列は、セキュリティ文書の基材又はオフセット印刷の基材の印刷エリアが、搬送されて第2のデジタル・プリント・ヘッドを通過する方向を横切る方向に第2のピッチを有し、第2のピッチは第1のピッチとは異なっている。第1及び第2のピッチは、好ましくは、300ミクロンから10ミクロンの間である。上記のように、ノズル間隔が物理的に異なる、すなわち相異なる固有の解像度を有するデジタル・プリント・ヘッドは、これらの相異なる解像度で有利に印刷し、それによって、より高品質で、したがってより安全な、印刷される文書を実現させるであろう。第1及び第2のピッチのうちの一方は、好ましくは、他方の非整数倍であるため、同一のプリント・ヘッドを使って相異なる解像度を模倣することはより困難である。明らかとなるように、典型的には、第1の解像度は、プリント・ノズルの第1の配列の第1のピッチに相当し、第2の解像度は、プリント・ノズルの第2の配列の第2のピッチに相当し、その結果、第1のプリント・ヘッドは、第1の横送り方向解像度を有する第1の印刷ワークを印刷するよう制御され、第2のプリント・ヘッドは、第1の横送り方向解像度とは異なる、第2の横送り方向解像度を有する第2の印刷ワークを印刷するよう制御される。第1及び第2の解像度の一方は、好ましくは、他方の非整数倍であり、第1及び第2の解像度の一方の横送り方向解像度は、好ましくは、他方の横送り方向解像度の非整数倍である。これは、デジタル・プリント・ヘッドに相異なるピッチを使用することで実現できる。
【0053】
第1及び/又は第2のデジタル・プリント・ヘッドは、好ましくは、セキュリティ文書の基材の横送り方向の幅に相当する幅にわたって延在するため、端から端まで印刷できる。しかし上記の通り、これは必須ではない。
【0054】
高度な位置合せを実現させるために、第1及び第2の印刷ワークは、好ましくは、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッド又はオフセット印刷ユニットを単回通過して印刷される。これにより、印刷されたセキュリティ文書のセキュリティが向上する。
【0055】
この方法は、好ましくは、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って、1種類又は複数種類の液滴サイズで印刷するステップと、第2のデジタル・プリントを使って、1種類又は複数種類の液滴サイズで印刷するステップとを含み、第1のデジタル・プリント・ヘッドの1種類又は複数種類の液滴サイズは、第2のデジタル・プリント・ヘッドの1種類又は複数種類の液滴サイズとは異なる。上記のように、これは、閲覧者が2つの印刷されたワーク間を区別するのに役立ち、文書を認証するのに役立つ。
【0056】
実行され得る追加の方法のステップは、セキュリティ文書の基材に第1及び第2の印刷ワークを印刷するステップの前に、セキュリティ文書の基材の表面にコロナ処理を実行するステップ、及び/又はセキュリティ文書の基材に第1及び第2の印刷ワークを印刷するステップの後に、セキュリティ文書の基材にワニスのコーティングを印刷するステップを含む。
【0057】
上記の方法はデジタル印刷のステップだけを説明してきたが、従来の印刷ステップ、たとえば、リソグラフィ、フレキソ、凹版、及び/又はグラビア印刷のステップもまた、この方法の間の任意の段階で使用できる。しかし好ましくは、すべてのデジタル印刷のステップが実行される前又は後に使用できることが理解されよう。たとえば、最初に第1のデジタル・プリント・ヘッドに供給される基材は、非デジタル印刷プロセスを使用してすでに印刷されている場合がある。たとえば背景印刷が、従来の技術を使用して施されている場合がある。別法として、たとえば、基材及び任意の下塗り塗料又は不透明コーティングなどを含む、第1及び第2のワークをデジタル印刷される未印刷基材を、非デジタル印刷プロセスを使用して重ね刷りされる前に、デジタル・プリント・ヘッドに供給できる。このように2つの相異なる印刷技術を組み合わせることにより、結果として得られるセキュリティ文書のセキュリティが著しく向上するであろう。非デジタル技法を使用する事前印刷又は事後印刷は、本明細書に開示される本発明の態様のいずれにも組み込まれ得ることが理解されよう。
【0058】
本発明の第1の態様によって、セキュリティ文書の基材と、基材の第1の領域の第1の表面上の、第1のデジタル印刷された印刷ワークであって、第1の印刷ワークは、第1のピッチを有する格子点の第1のグリッドに従って配置される、印刷された要素の第1の配列を有する、第1の印刷ワークと、基材の第2の領域の第1の表面上の、第2のデジタル印刷された印刷ワークであって、第2の印刷ワークは、第1のピッチとは異なる第2のピッチを有する格子点の第2のグリッドにわたって配置される、印刷される要素の第2の配列を有する、第2の印刷ワークとを有する、デジタル印刷されたセキュリティ文書が提供される。
【0059】
この印刷されるセキュリティ文書は、上記の印刷機で、且つ/又は上記の方法によって印刷できる。有利なフィーチャ及びそうしたフィーチャの効果についての上記の説明は、本発明のこの第1の態様によるセキュリティ文書に等しく当てはまった。
【0060】
上記のように、印刷機の解像度は、2つの直交する方向の解像度で構成される。したがって、セキュリティ文書は、第1のユニット・セルで画定される格子点の2次元グリッドである格子点のグリッド、及び第2のユニット・セルで画定される格子点の2次元グリッドである格子点の第2のグリッドを有し得る。第1及び第2のユニット・セルは、互いに異なる。ここでもやはり、ユニット・セルが、可能な印刷される要素の場所を画定し、あらゆる場所に印刷される要素を形成する必要はないという事実に言及しておく。かかるユニット・セルが好ましいが、格子点のグリッドが規則的であることが必須ではないことに留意されたい。たとえば、セキュリティ文書を作成するために使用されるデジタル・プリント・ヘッドは、不規則な間隔のノズルを備えていてもよく、これは、同様に不規則な格子点の配列を有するセキュリティ文書をもたらすことになる。しかし、すべての態様のすべての実施例において、印刷された要素の解像度又は間隔は規則的であることが好ましい。
【0061】
第1及び第2のグリッドは、好ましくは、それぞれ規則的な、格子点の正方形のグリッド、又は格子点の長方形のグリッドである。大多数のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷されるグリッドは、これらの種類である。格子点の第1のグリッドは、好ましくは、2つの直交する方向のそれぞれにピッチを有し、格子点の第2のグリッドは、2つの直交する方向のそれぞれにピッチを有する。任意選択で、格子点の第1のグリッドの各ピッチは、格子点の第2のグリッドの両方のピッチとは異なる。印刷機のデジタル・プリント・ヘッドと同様に、格子点のグリッドの第1及び第2のピッチのうちの一方は、好ましくは、他方の非整数倍である。この効果は、特注のデジタル印刷機なしでは、複製がより困難である。
【0062】
上記のように、セキュリティ文書を印刷するために使用される相異なるプリント・ヘッドは、典型的には、相異なるドット・サイズで印刷することになるため、好ましくは、印刷される要素の第1の配列の、印刷される要素の少なくとも一部は、印刷される要素の第2の配列の、印刷される要素の横方向の最小寸法よりも短い、好ましくは25%短い、より好ましくは50%短い、横方向の最小寸法を有し、且つ/又は印刷される要素の第2の配列の、印刷される要素の少なくとも一部は、印刷される要素の第2第1の、印刷される要素の横方向の最小寸法よりも長い、好ましくは50%長い、より好ましくは100%長い、横方向の最小寸法を有する。
【0063】
第1のワークは、好ましくは第2のワークよりも高解像度であり、したがって、格子点の第1のグリッドのピッチは、好ましくは、少なくとも1方向で、少なくとも600DPI、好ましくは少なくとも900DPI、より好ましくは少なくとも1200DPIの印刷解像度に相当する。この高解像度のワークでは、好ましくは、印刷される要素の第1の配列の、印刷される要素の少なくとも一部は、最大200マイクロメートル、好ましくは最大100マイクロメートル、より好ましくは最大50マイクロメートル、最も好ましくは最大20マイクロメートルの、横方向の最小寸法を有する。第2のワークはまた、好ましくは第1のワークよりも低解像度であり、したがって、格子点の第2のグリッドのピッチは、好ましくは、少なくとも1方向で、最大で600DPI、好ましくは最大で360DPI、さらに好ましくは最大で200DPIの印刷解像度に相当する。この低解像度のワークでは、好ましくは、印刷される要素の第2の配列の、印刷される要素の少なくとも一部は、少なくとも20マイクロメートル、好ましくは少なくとも50マイクロメートル、より好ましくは少なくとも100マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも200マイクロメートルの、横方向の最小寸法を有する。
【0064】
好ましくは、第1及び第2の印刷ワークが、基材の第1の表面上で少なくとも部分的に重なり合うように、第1及び第2の領域は、少なくとも部分的に互いに重なり合う。これにより、2つのワークを直接比較できる。
【0065】
各ワークの解像度を非常に明確に示すことが好ましく、したがって、第1の印刷ワークは、好ましくは、第1の領域の少なくとも部分的領域にわたる格子点の第1のグリッドの、各格子点上に印刷された要素を有し、その結果、印刷された要素の第1の配列は、該部分的領域全体に第1のピッチを有する。同様に、第2の印刷ワークは、好ましくは、第2の領域の少なくとも部分的領域にわたる格子点の第2のグリッドの、各格子点上に印刷された要素を有し、その結果、印刷された要素の第2の配列は、第2の部分的領域全体に第2のピッチを有する。好ましくは、これらの部分的領域は重なっている。次いで、認証者は、文書の信憑性に関する明確な指標について、セキュリティ文書のどのエリアを検査すべきかを知ることができる。
【0066】
多くの実施例では、第1の印刷ワークは、第1の材料、好ましくは第1のインクで印刷され、第2の印刷ワークは、第1の材料とは異なる第2の材料、好ましくは第2のインクで印刷される。これにより、第1及び第2の材料に相異なる光学特性を与えることができるため、セキュリティ文書上で、相異なる解像度が、非常に明確に認識できる。材料は、たとえば上記のように、相異なる色を有し得る。たとえば、ワークは、相異なる色のインクで印刷され得る。代替的又は追加的に、第1及び第2の材料は、顕在的な又は隠れた、相異なる光学的効果を有し得る。たとえば、一方又は両方の材料は、カラーシフト・インク、金属インク、発光インク、蛍光インク、燐光インク、赤外線吸収インク、熱変色性インク、又は光変色性インクから選択できる。隠れた特質を有する好適なインクジェット・インクには、Luminescence Sun Chemical Security、The Fairway、Harlow、Essex、CM18 6NG、英国、又はKao Collins Inc.、1201Edison Drive、Cincinnati、OH45216、米国から販売されているものが含まれる。具体的には、材料のうちの1つが隠れ効果を有する場合、又は材料が相異なる隠れ効果を有する場合に、材料は、ほぼ同じ色、すなわち標準照明条件下で同じ可視色を有する場合があり、その結果、相異なる解像度が、隠れた認証手順の一部となる。これは、最も洗練されたCMYKスキャナ・コピー機からでさえも、材料の隠れた光学特性を複製できないので安全であることに、気づくであろう。
【0067】
第1の印刷ワークの1つ又は複数の印刷される要素は、該印刷される要素が複合印刷要素を作るように、第2の印刷ワークの1つ又は複数の印刷される要素の近傍に形成され得る。複合印刷要素は、各複合要素を作るために使用される材料が同じであるか、又は異なる場合に使用できる。材料が異なる場合、材料は、色、すなわち標準的な照明条件下での可視色が異なり得るか、又は標準的な照明条件下で同じ色に見え、上記のものなどの、顕在的な又は隠れた光学的効果によって異なり得る。
【0068】
材料が同じであるか、又は少なくとも同じ可視色である場合、これは、複合印刷要素に、閲覧者にとっての、単一の印刷される要素の見た目をもたらす可能性があるが、見た目は、実際には、2つの相異なるワークの組み合わされた効果によって生成される。複合要素は、記号、しるし、英数字、又はロゴなどの見た目を有し得る。
【0069】
好ましくは、複数の、複合の印刷される要素が、基材の第1の表面にわたって形成される。複数の複合要素のそれぞれは、2つの相異なるワークの組合せによって作られることになる。ここでは、相異なる解像度を有する複数の相異なるデジタル印刷ワークを効果的に使用し、まとめて、スクリーニング要素(screen element)の単一の配列を画定している。こうしたスクリーニング要素、すなわち複合要素は、従来のデジタル・プリンタで複製するのが非常に困難な相異なる解像度を有する、印刷される要素で実際に構成されていることを確認するために、綿密に検査され得る。印刷されるワークの一方又は他方だけで作られる、追加のスクリーニング要素、すなわち同じスクリーニングの一部のように見えるスクリーニング要素が形成され得ることが理解されよう。
【0070】
特に好ましい実施例では、複数の複合印刷要素は、印刷される要素の第1及び/又は第2の配列の、印刷される要素数、印刷される要素の配置、印刷される要素のサイズ、及び/又は印刷される要素の間隔の変化によって、基材の第1の表面全体で、1つ又は複数の要素のサイズ及び/又は形状が様々である。すなわち、複合要素の見た目を変えるために、ドット数、ドット・サイズ、及びドットが印刷される格子点は、基材の様々な領域で、ワーク間で相対的に変えられ得る。
【0071】
複合印刷要素のサイズ及び/又は形状の変形例は、たとえば、様々なしるし、英数字、記号、又はロゴを画定する、様々な複合要素の形成を含み得る。複合要素を使用して、たとえば、単語内の相異なる文字を画定できる。異なるサイズ及び/又は形状を使用すると、この場合、認証プロセスが、複合要素の期待される形状及び/又はサイズのチェックを必要とする場合があるので、本質的にセキュリティが向上する。
【0072】
さらに、複数の複合印刷要素は、基材の第1の表面全体で、複合印刷要素のサイズ及び/又は形状が様々であり得、それによりマルチトーン画像、好ましくはハーフトーン画像を画定する、相異なる階調の領域を形成する。マルチトーン画像の形成はまた、間隔が様々な複合要素を有し得る。こうした実施例では、複合要素の様々なサイズ、形状、及び間隔により、基材の第1の表面上の材料の密度が変化し、複数の階調、すなわち、相異なる材料の密度を有する領域が生じる。複数の階調の形成は、同じ色相の複数の階調に限定されると見なされるべきではないことに留意されたい。上記で説明したように、複合要素は、相異なる色で印刷される個別の要素を有し得る。実際下記で説明するように、色相は、複合要素を構成する相異なる材料の比率を変えることにより、意図的に変えることもできる。
【0073】
いくつかの実施例では、複数の複合印刷要素は、基材の第1の表面全体で、第1の印刷ワークの印刷される要素及び第2の印刷ワークの印刷される要素の、比率構成(proportional composition)が変化する。ここで、比率構成とは、第1及び第2の材料のそれぞれの、印刷密度を指す。たとえば、ドット・サイズがワークごとに一定のままである場合、2つのワークのドットの割合が変化すると、複合要素の比率構成が変化することになる。
【0074】
複数の複合印刷要素は、印刷される画像を画定する、相異なる見た目の領域を形成するように、基材の第1の表面にわたって、第1の印刷ワークの印刷される要素及び第2の印刷ワークの印刷される要素の、比率構成が様々であり得る。たとえば、相異なる色の材料で作られた要素の比率構成を変えることにより、多色で印刷される画像を画定する、相異なる色の領域が形成できる。これにより、複合印刷要素の形状、サイズ、又は間隔のどんな変更もなしに、相異なる色を形成できる。たとえば、複合要素は、徐々に色を変化させるために、基材にわたって、主に赤インクで印刷されるものから、主に青インクで印刷されるものへ変化し得る。しかし、任意の特定の色相内での階調制御を可能にするために、好ましくは、第1及び第2の印刷ワークの印刷される要素の比率構成の変更は同時に、複合印刷要素のサイズ、形状、及び/又は間隔の変更が伴うであろう。複合要素のサイズ、形状、及び間隔による階調の制御、並びに複合要素の比率構成の制御による色相の制御の組合せによって、スクリーニング要素の正確な色制御、及び安全性の高いパターンが可能となる。
【0075】
一方の材料が隠れた光学特性を有する場合、又は両方の材料が相異なる隠れた光学特性を有する場合、複合要素の比率構成を変えることにより、印刷ワークの相異なる領域で、材料の隠れた効果が相異なるレベルでもたらされ得る。たとえば、両方の材料が赤外線を吸収するが、程度が異なる場合、スクリーニング要素の配列は、複合要素の比率構成に応じて、相異なる領域で相異なる赤外線応答特性を有するであろう。次いで、認証では、様々な領域での正しい応答レベルをチェックするために、領域の検査が必要となり得る。
【0076】
複合印刷要素が形成される実施例では、第1及び第2のピッチの一方が、他方の相互倍数であることが好ましい場合がある。すなわち、2つのワークの印刷される要素が配置されている格子点のグリッドが、整数倍の関係を共有している。これは、ドットを調整して複合印刷要素を作ろうとするときに役立つ。
【0077】
上記のように、典型的には、少なくとも第3のワークが形成され、その結果好ましくは、文書は、基材の第3の領域の第1の表面上に第3のデジタル印刷された印刷ワークをさらに有し、第3の印刷ワークは、格子点の第3のグリッド全体に配置された、印刷された要素の第3の配列を有する。格子点の第3のグリッドは、好ましくは、第1及び/又は第2のピッチとは異なる第3のピッチを有する。
【0078】
第3のワークが形成される場合、これはまた、複合要素の複雑度を高めるために、1つ又は複数の複合要素に寄与することもできるが、これはまた、追加の色制御を可能にするためにも使用され得る。すなわち、1つ又は複数の複合印刷要素は追加で、第3の印刷ワークの1つ又は複数の印刷される要素で作られ得、第1、第2、及び第3の印刷ワークの印刷される要素の比率構成は、印刷される画像の少なくとも3つの相異なる色の領域を画定するように、基材の第1の表面全体で変化する。たとえば、3つのワークはそれぞれ赤、青、及び緑、又はシアン、マゼンタ、及び黄で印刷でき、比率構成は、スクリーニング要素の単一の配列、すなわち各ワークからの要素によって作られる複合要素の配列の、フル・カラー印刷を可能にするために、配列全体で変化した。たとえば、所望の領域がマゼンタの寄与を必要としない場合、又は画像のシアン領域など、単色しか必要としない場合に、やはり、必要に応じて、ただ1つ又は2つの印刷ワークからの要素しか含まない、いくつかのスクリーニング要素が形成され得る。この実例では、この開示の他のところで特定されているという理由から、3つの相異なるワークにCMYの色を使用して説明されているが、従来の印刷技法で色パターンを複製する困難さが増すように、非標準色(すなわち、少なくとも1色がCMYKのうちの1色ではなく、好ましくは、CMYK色空間の外側にある)を使用することが好ましい。
【0079】
本発明の第5の態様に関連して、下記でより詳細に説明されるように、相異なるワークの印刷される要素が、相異なる厚さを有することも好ましい。これにより、セキュリティ文書を認証するために、すなわち、セキュリティ文書が、安全なデジタル印刷技法で印刷されたことを確認するためにチェックできる、印刷される文書の別のフィーチャが提供される。たとえば、これは、厚さの差のサイズに応じて、触ることによって、又はデジタル印刷される要素の拡大検査によって、チェックできる。より詳細には、好ましくは、第1の印刷ワークの印刷される要素の少なくとも1つの要素が、セキュリティ文書の基材の表面に垂直な方向に、第1の要素の厚さを有し、第2の印刷ワークの印刷される要素の少なくとも1つの要素が、セキュリティ文書の基材の表面に垂直な方向に、第2の要素の厚さを有し、第2の要素の厚さは第1の要素の厚さよりも厚い。印刷される要素のこうした相異なる厚さは、同じドット・サイズ、ひいてはほぼ同じ要素の厚さで3種類のインクすべてを印刷する、従来のデジタル・プリンタでは複製できない。
【0080】
上記のように、相異なる厚さの印刷される要素を実現できる、いくつかの好ましい手法がある。該手法は、本発明の第5の態様に関連して、以下で詳細に説明される。そうした好ましいフィーチャのいずれも、本発明のこの態様に組み込むことができる。
【0081】
本発明によれば、任意の種類のセキュリティ文書を形成できる。好ましいセキュリティ文書には、紙幣、ポリマー紙幣、小切手、パスポート、身分証明書、鑑定書、印紙、免許証、識別文書、及びビザが含まれる。セキュリティ文書は、2軸延伸ポリプロピレン(BOPP:biaxially-oriented polypropylene)などのポリマー基材上、又は必要に応じて紙の基材上で作られ得る。基材と印刷されるワークとの間に、1つ又は複数の層を設けることができる。たとえば、基材がポリマー基材である場合、不透明化層をポリマー基材の表面にわたって配置し、好ましくは、印刷されるワークに対して白の背景を形成できる。事前に印刷する層の他の実例には、下塗り塗料層、帯電防止層、及びインク受容性コーティングが含まれる。実際に、印刷ワークは、好ましくは、印刷されるワークの優れた視認性が実現されるように、基材に加えられる最外層の1つである。
【0082】
上記のように、デジタル印刷の利点の1つは、印刷されるパターンをある文書から次の文書に対して変更可能なことである。好ましくは、複数の印刷されたセキュリティ文書が形成され、第1及び/又は第2の印刷ワークは、複数のセキュリティ文書のそれぞれに固定コンテンツと可変コンテンツとを形成し、固定コンテンツは、複数のセキュリティ文書のそれぞれについて同じであり、可変コンテンツは、該複数のセキュリティ文書の少なくとも一部間で変化し、可変コンテンツは、好ましくは、該複数のセキュリティ文書のそれぞれに唯一的である。好適な固定コンテンツは、紙幣の通貨単位名及び値であり得るが、一方可変コンテンツには、シリアル番号が含まれ得る。
【0083】
本発明の第2の態様によれば、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法が提供され、該方法は、セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域に、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、第1の印刷ワークは、第1のピッチを有する格子点の第1のグリッドに従って配置される、印刷される要素の第1の配列を有するステップと、基材の第1の表面の第2の領域に、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、第2の印刷ワークは、第1のピッチとは異なる第2のピッチを有する格子点の第2のグリッドにわたって配置される、印刷される要素の第2の配列を有するステップとを含む。この方法は、第1の態様による、セキュリティ文書を印刷する方法に対応する。この方法は、上記のデジタル印刷されるセキュリティ文書の、好ましいフィーチャのいずれか1つ又は複数を提供するよう適合され得る。
【0084】
本明細書において、印刷されるべき元画像を、第1の色で、第1の解像度で印刷するよう構成された第1のデジタル・プリント・ヘッドと、第2の色で、第1の解像度よりも低い第2の解像度で印刷するよう構成された第2のデジタル・プリント・ヘッドとを備える、デジタル印刷機で実行するための1組の印刷命令に変換する、コンピュータで実施される方法もまた開示され、この方法は、印刷されるべき元画像を受信するステップと、元画像の複数の画像の層を識別するステップと、複数の画像の層のそれぞれについて、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのうちの少なくとも一方を該画像の層に関連づけるステップと、複数の画像の層のそれぞれについて、対応する関連づけられた第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのうちの少なくとも一方に向けた印刷命令を生成するステップとを含み、複数の画像の層に関連する、結果として生成される1組の印刷命令には、第1のデジタル・プリント・ヘッド及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれについて、対応する第1又は第2の解像度で、画像の層の少なくとも一部又は画像の層の少なくとも一部の色成分を印刷することに関する印刷命令が含まれる。
【0085】
この方法は、上記で説明した、デジタル印刷機に向けた印刷命令を生成する方法に対応する。したがって、この技法は、本発明の任意の態様によるセキュリティ文書をデジタル印刷するために使用できる。したがって、上記のいずれかに関して、上記で有益であると説明されたフィーチャには、このコンピュータで実施される方法に対応する、有益な実施態様があろう。
【0086】
印刷されるセキュリティ文書を生成するには、通常、デザイナがセキュリティ文書上で複製する印刷デザインを、デジタルで作成する必要があろう。元画像と呼ばれるデザインは、通常、複数の層を有し、それぞれが最終の印刷されたデザインの相異なる要素を担持する。結果として得られた、印刷されたセキュリティ文書は、相異なる画像の層が、相異なるデジタル・プリント・ヘッドを使って相異なる解像度で印刷されるのを可能にすることによって、本発明に従ってセキュリティが保証される。したがって、コンピュータで実施される本方法は、入力として元画像を有し、元画像の複数の層を識別し、次いで、デジタル・プリント・ヘッドのそれぞれ固有の解像度で元画像の層を印刷するための印刷命令を生成する前に、元画像の様々な層を、相異なるデジタル・プリント・ヘッドに関連づける。ここで、層が識別されてデジタル・プリント・ヘッドに関連づけられる前に、元画像に対して実行される様々な前処理ステップがあり得ることに留意されたい。たとえば、固定コンテンツと可変コンテンツとが単一の層内に組み合わされているなど、いくつかの層が互いに組み合わされている場合がある。別法として、元画像は、前処理ステップとしてラスタ化され得る、ベクトル画像コンテンツを含み得る。
【0087】
印刷されるべき元画像を、第1の解像度で印刷するよう構成された第1のデジタル・プリント・ヘッドであって、第1の色で印刷するよう構成されている第1のデジタル・プリント・ヘッドと、第1の解像度よりも低い第2の解像度で印刷するよう構成された第2のデジタル・プリント・ヘッドであって、第1の色とは異なる第2の色で印刷するよう構成されている第2のデジタル・プリント・ヘッドとを備える、デジタル印刷機によって実行するための1組の印刷命令に変換する、コンピュータで実施される方法もまた開示され、この方法は、元画像を受信するステップと、元画像の、画像の層を識別するステップであって、画像の層は、第1の解像度以上の解像度を有し、且つ各画素が、それぞれの理想の色(すなわち、第1及び第2のプリント・ヘッドを使って供給可能な色及び強度に基づいて得ることができるものと、完全には一致しない場合がある、対応する画素のデザイン色)を有する、画素の配列を有するステップと、画像の層の各画素の理想の色に基づいて、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って、第1の解像度で、第1の色で印刷するために、第1の色成分画像の対応する画素の配列を識別するステップと、画像の層の各画素の理想の色に基づいて、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って、第2の解像度で、第2の色で印刷するために、第2の色成分画像の対応する画素の配列を識別するステップと、第1の色成分画像に基づいて第1のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令を生成するステップ、及び第2の色成分画像に基づいて第2のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令を生成するステップとを含む。
【0088】
上記のように、本発明によるデジタル印刷機は、相異なる解像度を有するデジタル・プリント・ヘッドを備え、これにより、元画像が、2種類の相異なる解像度で供給される、2色の相異なる色を使用して印刷される必要がある、少なくとも1つの層を有する場合、元画像を印刷命令に変換する方法が、好ましくは、この機能を実現する。1つの画像の層を処理する本方法は、上記のコンピュータで実施される方法に組み込まれ得ることが理解されよう。
【0089】
印刷されるべき元画像を、第1の解像度で印刷するよう構成された第1のデジタル・プリント・ヘッドであって、第1の色で印刷するよう構成されている第1のデジタル・プリント・ヘッドと、第1の解像度よりも低い第2の解像度で印刷するよう構成された第2のデジタル・プリント・ヘッドであって、第1の色とは異なる第2の色で印刷するよう構成されている第2のデジタル・プリント・ヘッドとを備える、デジタル印刷機によって実行するための1組の印刷命令に変換する、コンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体もまた開示され、コンピュータで実行可能な命令は、元画像を受信することと、元画像の、画像の層を識別することであって、画像の層は、第1の解像度以上の解像度を有し、且つ各画素が、それぞれの理想の色を有する、画素の配列を有することと、画像の層の各画素の理想の色に基づいて、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って、第1の解像度で、第1の色で印刷するために、第1の色成分画像の対応する画素の配列を識別することと、画像の層の各画素の理想の色に基づいて、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って、第2の解像度で、第2の色で印刷するために、第2の色成分画像の対応する画素の配列を識別することと、第1の色成分画像に基づいて第1のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令を生成すること、及び第2の色成分画像に基づいて第2のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令を生成することとを含む。やはりこれは、基本的に、上記で説明されたコンピュータで実施される方法を実行するための命令を有する、コンピュータ可読媒体に対応する。
【0090】
セキュリティ文書を印刷する別のデジタル印刷機もまた開示され、デジタル印刷機は、第1のデジタル・プリント・ヘッドと、第2のデジタル・プリント・ヘッドであって、第1のデジタル・プリント・ヘッドから、横送り方向にオフセットされている第2のデジタル・プリント・ヘッドと、任意選択で、1つ又は複数のオフセット印刷面を有するオフセット印刷ユニットであって、1つ又は複数のオフセット印刷面の印刷エリアを搬送して、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのそれぞれを通過させ、続いて第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドから受け取った印刷をセキュリティ文書の基材に転写するよう適合されたオフセット印刷ユニットと、デジタル印刷機を通って搬送経路に沿ってセキュリティ文書の基材を搬送するよう適合された搬送システムであって、搬送経路は、セキュリティ文書を運んで、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを給紙方向に通過させるか、又は搬送経路は、セキュリティ文書の基材を運んで、設けられている場合は、オフセット印刷ユニットを給紙方向に通過させる、搬送システムと、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドの両方を制御し、搬送システムによって第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを通過して搬送される、セキュリティ文書の基材に印刷するか、又は第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを通過して搬送される、1つ又は複数のオフセット印刷面の印刷エリアに印刷するための、1組の印刷命令を実行するよう適合されたコントローラであって、1組の印刷命令は、第1のデジタル・プリント・ヘッドが第1の解像度で、第1の印刷ワークを印刷するための印刷命令、及び第2のデジタル・プリント・ヘッドが第1の解像度とは異なる第2の解像度で、第2の印刷ワークを印刷するための印刷命令を含み、第1の印刷ワークは、セキュリティ文書の基材の第1の領域に印刷され、第2の印刷ワークは、横送り方向に相当する方向に第1の領域からオフセットされた、セキュリティ文書の基材の第2の領域に印刷される、コントローラとを備え、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の解像度で印刷するよう構成され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第2の解像度で印刷するよう構成される。
【0091】
デジタル印刷機は、上記で説明したものと類似しているが、詳細には、セキュリティ文書の相異なる横方向領域において、相異なる解像度で印刷するよう構成されている。これにより、認証プロセスの一部として文書の様々な領域を検査することで、解像度の違いを識別できる。こうした横方向にオフセットされた領域は、配列の重なりによるどんな視覚的混乱もなしに検査でき、これは、たとえば、配列が類似の色又はドット・サイズである場合に役立ち得る。
【0092】
セキュリティ文書をデジタル印刷する方法もまた開示され、この方法は、セキュリティ文書に関する1組の印刷命令を受信するステップと、第1の印刷ワークを印刷するように第1のデジタル・プリント・ヘッドを制御するステップであって、第1の印刷ワークは、1組の印刷命令に従って、セキュリティ文書の基材の第1の領域で受け取られるステップと、第2の印刷ワークを印刷するように第2のデジタル・プリント・ヘッドを制御するステップであって、第2の印刷ワークは、1組の印刷命令に従って、セキュリティ文書の基材の第2の領域で受け取られ、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、横送り方向に、第1のデジタル・プリント・ヘッドから横方向にオフセットされ、したがって第2の領域は、横送り方向に相当する方向に、第1の領域から横方向にオフセットされるステップとを含み、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドは、セキュリティ文書の基材に直接印刷するか、又はオフセット印刷ユニットの1つ又は複数のオフセット印刷面の印刷エリアに印刷するよう構成され、1つ又は複数のオフセット印刷面は、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドから受け取った印刷を、続いてセキュリティ文書の基材に転写し、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の解像度で印刷するように制御され、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の解像度とは異なる第2の解像度で印刷するように制御され、これにより、印刷されたセキュリティ文書上の第1の印刷ワークは、第1の解像度に相当する格子点の第1のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第1の配列を有し、印刷されたセキュリティ文書上の第2の印刷ワークは、第2の解像度に相当する格子点の第2のグリッドに従って配置された、印刷された要素の第2の配列を有する。
【0093】
この方法は、上記で説明されたデジタル印刷機を使用して実行できる。印刷機の上記の好ましい特徴のそれぞれは、この方法に関連して対応する特徴を有する。
【0094】
上記のように、非標準の色を使用することにより、セキュリティ文書のセキュリティが向上し、これは、相異なるワーク間の解像度の違いに依存しない。したがって、本発目の第3の態様によれば、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法が提供され、この方法は、セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域に、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、第1の印刷ワークは、第1の色の材料で印刷される要素の第1の配列を有するステップと、基材の第1の表面の第2の領域に、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、第2の印刷ワークは、第2の色の材料で印刷される要素の第2の配列を有するステップとを含み、第1及び第2の領域は、少なくとも部分的に重なり合い、その結果第1の配列と第2の配列との重なりは、組み合わされた色を示し、少なくとも第1の色は、CMYKのうちの1色ではない。好ましくは、第1の色及び第2の色のどちらも、CMYKのうちの1色ではない。少なくとも第1の色は、好ましくは、CMYのうちの1色ではない色相である。
【0095】
CMYKの色は、下記でより詳細に説明するように、従来のCMYKの印刷で使用される色と考えられる。非標準色、特にCMYK色域の外側の色で印刷すると、結果的に作成された、印刷されたセキュリティ文書の見た目を、従来のCMYKプリンタで正確に複製することが、確実に、より困難になる。たとえば、使用されているインクがすべてCMYK色域内にあるが、CMYK色域の全範囲を提供してはいない場合、これにより、スキャナがスキャンされた色を調整して、検出された色のエラーとして認識するものを補正する可能性がある。これにより、偽造する試みでの、色の複製が不適切になり得る。別法として、使用するインクが標準CMYKでない場合に、本物のセキュリティ文書のエリアが、1つのワークしか使用していない可能性があり、一方CMYKを使用して作成された偽造品は、その色を再現するために2つのワークの色を混合する必要があり、したがって偽造品を検出する手段を提供できる。
【0096】
CMYK値に関する詳細情報は、ISO12647規格で見ることができる。具体的には、ISO12647-7規格は、「デジタルデータから直接作業する照査プロセス」を詳細に取り扱っている。この規格に述べられているように、使用される色と、CIELAB色空間(すなわち、CIE1976L
*a
*b
*色空間)のCMYKのうちの任意の1色との間のユークリッド距離ΔE
*
ab(「デルタE」と呼ばれることが多い)が5以下の場合、色はCMYKのうちの1色と見なされるであろう。ΔE
*
abの値は、式
を使用して測定される。
ここで、ΔL
*、Δa
*、及びΔb
*は、それぞれL
*軸、a
*軸、及びb
*軸に沿った2色の色間の距離である(G.Sharma編、「Digital Color Imaging Handbook」、1.7.2版、CRC Press、ISBN0-8493-0900-X、30から32頁、2003年参照)。色の違いΔE
*
abは、米国Virginia州RestonにあるHunterlabから入手可能なものなどの、任意の市販の分光光度計を使用して測定できる。CMYKの色がΔE
*
abによって定義されている場合、CMYKの色域は、ΔE
*
ab=5以下のCMYKのすべての可能な組合せによって生成可能な色の範囲と解釈されよう。
【0097】
この態様で、第1の色が第2の色と重なって、組み合わされた色を示すことに気づくであろう。言い換えれば、第1の色は「スポット・カラー」ではなく、いわゆる「プロセス・カラー」に類似している。CMYK印刷は、多くの場合、1つの特定の色、たとえば、会社のブランドに関連する印刷物のブランド・カラーを提供する、「スポット・カラー」で補完されている。スポット・カラーは、組み合わされた色を生成する色成分として、一般的に使用されないという点で、プロセス・カラーとは異なる。標準のプロセス・カラーは、互いに重ね刷りされ、CMYKの全色域の利用を可能にする。たとえば、シアン及び黄が重ね刷りされて、緑を提示する。
【0098】
最も好ましくは、色のうち少なくとも1色がCMYK色域の外側にあり、この場合、印刷されたセキュリティ文書は、従来のCMYKプリンタで使用可能なインクでは単純に複製できない色を含むことができる。この場合好ましくは、提示された、組み合わされた色も、CMYKの色域の外側にあり、その結果、従来のCMYK印刷は、第1及び第2の色の組合せも複製できない。
【0099】
いくつかの従来の印刷技法は、拡張された色域の一部として橙及び緑などの追加のインクを利用する。この方法は、好ましくは、これらの色も同様に避けるので、こうしたより稀な従来のデジタル・プリンタも、セキュリティ文書を正確に複製することができない。すなわち、好ましくは、少なくとも第1の色は、CMYKOGのうちの1色ではなく、好ましくは、CMYKOGの色域の外側にある。「ヘキサクローム」システムとしても知られるCMYKOGは、米国特許第5734800A号で説明されている。この好ましい実例では、好ましくは、提示される組み合わされた色は、同様に、CMYKOGの色域の外側にある。
【0100】
非標準の第1の色が認証手段としてはっきりと見えるように、好ましくは、第1の領域の少なくとも一部分が、第2の領域と重ならないようにして、これにより第1の色が、第1の領域の該部分に示される。上記のように、非標準の色を使用して印刷することが好ましいだけでなく、標準色のうちの1色が、印刷プロセスから完全に省かれることが好ましい。すなわち、好ましくは、CMYKのうちの少なくとも1色、より好ましくはCMYのうちの少なくとも1色は使用されない。これにより、印刷された紙幣の色域が狭くなり、印刷された文書をスキャンしようとしたときにエラーを生じ得る。
【0101】
上記の、CMYK以外の色の好ましい実施態様は、本発明の他の態様のいずれでも使用され得ることが理解されよう。
【0102】
本発明の第4の態様によれば、セキュリティ文書の基材と、セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域の、第1のデジタル印刷される印刷ワークであって、第1の印刷ワークは、第1の色の材料で印刷される要素の第1の配列を有する、第1のデジタル印刷される印刷ワークと、セキュリティ文書の基材の第1の表面の第2の領域の、第2のデジタル印刷される印刷ワークであって、第2の印刷ワークは、第2の色の材料で印刷される要素の第2の配列を有する、第2のデジタル印刷される印刷ワークとを備える、デジタル印刷されるセキュリティ文書が提供され、第1及び第2の領域は、少なくとも部分的に重なり合い、その結果第1の配列と第2の配列との重なりは、組み合わされた色を示し、少なくとも第1の色は、CMYKのうちの1色ではない。
【0103】
これは、本発明の第3の態様による方法を使用して印刷される、セキュリティ文書に対応する。第3の態様に関連して上記で論じられた好ましいフィーチャは、本発明のこの態様にも同様に当てはまる。
【0104】
セキュリティ文書は、好ましくは、紙幣、ポリマー紙幣、小切手、パスポート、身分証明書、鑑定書、印紙、免許証、識別文書、及びビザのうちの1つである。
【0105】
本発明の第5の態様によれば、セキュリティ文書の基材と、基材の第1の表面の第1の領域の、第1のデジタル印刷される印刷ワークであって、第1の印刷ワークは、印刷される要素の第1の配列を有し、要素の少なくとも1つは、セキュリティ文書の基材の表面に垂直な方向に第1の要素の厚さを有する、第1のデジタル印刷される印刷ワークと、基材の第1の表面の第2の領域の、第2のデジタル印刷される印刷ワークであって、第2の印刷ワークは、印刷される要素の第2の配列を有し、要素の少なくとも1つは、セキュリティ文書の基材の表面に垂直な方向に第2の要素の厚さを有し、第2の要素の厚さは、第1の要素の厚さよりも厚い、第2のデジタル印刷される印刷ワークとを備える、デジタル印刷されるセキュリティ文書が提供される。
【0106】
本発明のこの第5の態様は、相異なるワーク内の相異なる印刷される要素が、相異なる厚さを有することを必要とすることにより、デジタル印刷されるセキュリティ文書のセキュリティを高める。本発明の第1の態様に関連してこの概念が導入されたときに前述したように、これにより、セキュリティ文書を認証するために、すなわち、セキュリティ文書が、安全なデジタル印刷技法で印刷されたことを確認するためにチェックできる、印刷される文書のフィーチャが提供される。印刷される要素のこうした相異なる厚さは、同じドット・サイズ、ひいてはほぼ同じ要素の厚さで3種類のインクすべてを印刷する、従来のデジタル・プリンタでは複製できない。
【0107】
この技法では、印刷されるワークが、相異なる解像度である必要はない、すなわち、印刷可能な要素の位置を表す格子点の相異なるグリッドを、有する必要がないことに気づくであろう。しかし、相異なる解像度と相異なる要素の厚さとの組合せはまさに、特に安全な組合せを提供し、したがって、本発明のこの態様に関して下記で論じられるすべてのフィーチャが、第1の態様のセキュリティ文書にも適用され得る。
【0108】
本発明のこの態様による文書は、第1のより薄い厚さを有する第1のワークの単一の要素だけを、若しくは第2のより厚い厚さを有する第2のワークの単一の要素だけを、又は両方の要素を有し得ることに留意されたい。たとえば、他のすべての要素は、互いに同じ厚さを有することができる。次いで、かかる文書は、たとえば、顕微鏡を使って、セキュリティ文書の所定の場所を検査し、相異なる厚さを有する、こうした変則的な印刷される要素があることを検証することによって、認証できる。しかし、大多数の場合において、各ワークの複数の要素が、それぞれに第1及び第2の厚さを有することが好ましいであろう。実際、印刷される要素の第1の配列又は第1の印刷ワークにおける、各印刷される要素は、第1の厚さを有し、印刷される要素の第2の配列又は第2の印刷ワークにおける、各印刷される要素は、第2の厚さを有することが好ましい場合がある。かかる文書を偽造するためには、文書全体の様々な位置で、又は印刷される文書全体にわたってでも、印刷される要素の必要な厚さの変化を実現させる必要があろう。
【0109】
要素の厚さは、いくつかの要因の影響を受けるであろう。具体的には、インクの液滴サイズ、衝突速度(したがって、ノズルの噴射速度)、インクの濃度及び粘度、並びにインクの表面張力は、デジタルで、すなわちインクジェットで印刷される要素の厚さに、影響を与えるであろう。これらの要因が、要素の厚さにどのように影響するかについてのより詳しい情報は、「Impact of an Ink Drop on Paper」、Akira Asai等、Journal of Imaging Science and Technology、37、205~207頁、1993年に見られ得る。要素の厚さを増やす簡単な手法は、同様の濃度、粘度、及び表面張力を有する相異なるインクを使用し、同様の衝突速度を使用するが、ワーク間のインクの液滴サイズを増加させることであろう。別法として、第2のワークを印刷するのに、より粘性があり、より大きい表面張力を有するインクを使用することが望ましい場合がある。
【0110】
好ましくは、第1の要素の厚さは、最大30μm、好ましくは最大25μm、より一層好ましくは最大20μm、最も好ましくは5から15μmの範囲であり、第2の要素の厚さは、少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、より一層好ましくは少なくとも25μm、最も好ましくは25から35μmの範囲である。選択されるサイズは、必要なデザインの種類によって変わるであろう。たとえば、粗い印刷ワーク用に大きな印刷要素が必要な場合、たとえばこの変化する厚さの効果が容易に区別可能となるように、第1の要素の厚さは30μmまで厚くすることができ、この場合、第2の要素の厚さは、たとえば60μmと、さらにより厚くなるであろう。一方、この効果を、肉眼では認識不可能にすることが望まれる場合は、第2の要素を15μmまで薄くすることができ、この場合、第1の要素は、たとえば5μmと、さらに薄くする必要がある。いくつかの好ましい相対的な厚さを、下記に示す。
【0111】
好ましくは、第2の要素の厚さは、第1の要素の厚さより少なくとも10%厚く、好ましくは少なくとも25%厚く、より好ましくは少なくとも50%厚く、最も好ましくは第1の要素の厚さより少なくとも100%厚い。実際には、第2の要素の厚さは、第1の要素の厚さの2倍を超える場合があり、この関係は、たとえば、第2の要素の厚さが、第1の要素の厚さより150%厚い状態になる場合がある。印刷ワークのこの特質を明確に識別できるように、大幅に異なる厚さの変化が好ましいことは明らかであろう。すなわち、厚さの差がより大きいほど、ドットの厚さの検査により文書を認証することが一層容易になろう。実際に、厚さがより厚いことにより、触ることによって、たとえば、完全に又は主に第2の印刷ワークの要素を含む領域の感触を、完全に又は主に第1の印刷ワークの要素を含む領域と比較することによって、認証可能であり得る。既知の触覚フィーチャとは対照的に、こうした印刷される要素は、2つのデジタル印刷されるワークに直接統合され、画像をデジタル印刷するために使用され得る。ユーザは、様々なレベルの触覚が、様々な見た目、たとえば触覚と互いに関係がある様々な色を有し得る、組み合わされた、デジタル印刷される画像の様々な領域に対応することを、チェックできるであろう。一方、厚さの差がより小さいほど、たとえば、検出するのに顕微鏡が必要であり、文書を偽造しようとする人が、複製されるべきフィーチャとして識別さえし得ない、より一層隠れた認証フィーチャを提供できる。
【0112】
第1のワークの要素よりも厚さが厚い、第2のワークの要素を生成するための1つの選択肢は、付着される材料の量を増やすために、より大きい液滴サイズで第2のワークを印刷することである。付着される材料の特質、たとえば、2つのワークに使用されるインクの粘度と組み合わせ、且つノズル・ジェット速度などの印刷パラメータと組み合わせて、付着される材料の量を制御することで、より大きい液滴サイズによって、印刷される要素の厚さが著しく異なるという結果が、確実に得られ得る。ただし、より大きい液滴サイズを使用すると、通常、厚さの増加と共にドット・サイズが大幅に増加することになる。特定の状況では、2つのワークのドット・サイズを同等に維持しながらも、依然として著しい厚さの変化を得ることが好ましい場合がある。これは、美的観点から役立ち得るだけでなく、印刷される要素の様々な厚さを複製しようとする偽造者が、ワーク間でドット・サイズを一定に維持するという課題に同時に直面した場合に、問題を引き起こし得る。本発明者が発見した、厚さを増やすことができる1つの手法は、第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、第2の配列の1つ又は複数の要素が、ほぼ同じ光学特性を有する材料、好ましくは同じ材料、たとえば同じインクの、少なくとも2つの重ねられた層によって形成されるのを可能にすることである。たとえば、1つ又は複数の要素は、第1の要素の層、たとえば第1のドットを、デジタル・プリント・ヘッドを使って印刷し、ドットを乾燥させ、次いで第2の要素の層を第1上に直接印刷する、すなわち第2のドットを第1のドット上に直接印刷することによって、作られ得る。別法として、下記で説明されるように、第1の層は、硬化性添加剤を含む材料、たとえば、硬化性インクで印刷されてもよく、第2の層は、硬化性材料(たとえば、同じ硬化性インク)を含むか、又は硬化性添加剤を含まない、同じ光学特性を有する材料で印刷されてもよい。これは、印刷される要素の横方向の寸法を大幅に増やすことなく、印刷される要素の厚さを大幅に増加させることが判明している。第2の厚さを有する要素を作るこの手法を、下記でより詳細に説明することにする。
【0113】
2つの重ねられた層によって第2の厚さを有する要素が作られる実施例では、好ましくは、第2の要素の厚さを有する印刷される要素の第2の配列の、1つ又は複数の要素のそれぞれは、セキュリティ文書の基材上に配置された第1の層と、第1の層上に配置された第2の層とを備え、第2の層は、好ましくは、第1の層よりも小さい横方向の寸法を有するか、又は第2の層は、好ましくは、第1の層よりも大きい横方向の寸法を有する。第1のドット上に印刷される第2のドットは、同一、たとえば同じ液滴サイズ及び同じ噴射速度などであり得るが、第1のドットの上に印刷されることになる第2のドットのパラメータを調節して、第2のワークのより厚い要素を作ることが好ましい場合がある。たとえば、第2の層が第1の層の液滴サイズよりも小さい液滴サイズで印刷される場合、要素の横方向の寸法を増加させることなく高さを増加させるために、より広い位置合せの許容範囲をもたらし得る。たとえば、同じサイズのドットの場合、どんな位置ずれによっても、ドットの部分的な重なりが生じるであろう。これにより高さが増加するが、横方向の寸法も増加するであろう。第2のドットがより小さい場合、第2のドットが落ちて第1のドット内に完全に留まり、下側の第1の層を作ることができる、位置の範囲がある。別法として、第1のドットの上に印刷される第2のドットのパラメータを調節して、第2のワークのより厚い要素を作り、その結果第2のワークが、より大きい横方向の寸法を有する、たとえばより大きい液滴サイズで印刷されることが望ましい場合がある。これは、ドット間の位置ずれを不顕在化するための第2の手法である。この場合は、第2を後で作る第2のドットが、第1の層を作る第1のドットを包み込むようになる。最終の横方向の寸法は、大部分が、第2のドットのパラメータによって事前に決まることになる。第2のドットに対する第1のドットの位置は、大部分が、第2のドットの包囲する性質によって認識不可能となろう。
【0114】
具体的には、第2の厚さを有する要素が第2の材料の2つの重ねられた層によって作られる実施例では、印刷される要素の均一な横方向の寸法を実現させることが可能である。第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、第2の配列の少なくともいくつかの要素は、好ましくは、最小横方向寸法を有し、第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、第1の配列の要素の最小横方向寸法よりも100%以下だけ大きい、好ましくは50%以下だけ大きい、より好ましくは25%以下だけ大きい、最も好ましくは、第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、第1の配列の要素の最小横方向寸法よりも10%以下だけ大きい。実際、いくつかの実施例では、第1及び第2の厚さを有する要素の最小横方向寸法は、ほぼ同じであり得る。こうした同等の横方向の寸法を形成するための好ましい手法は、第2の印刷される要素の2重の層によることであり得るが、印刷される材料の特質を制御すること、たとえば、第2の印刷ワーク用に、より粘性の高いインクを使用すること、及び/又は印刷パラメータを制御すること、たとえば、第2の印刷ワーク用に、より低いノズル速度を使用することによって、同様の結果を実現させることも可能であろう。
【0115】
上記のように、第1及び第2の領域は、好ましくは、少なくとも部分的に重なり合い、そのために、第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、第1の配列の少なくとも1つの要素は、第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、第2の配列の少なくとも1つの要素と隣り合って形成される。これにより、2つの要素の厚さを直接比較できる。いくつかの実施例では、第1及び第2の領域は、相異なる厚さを有する要素が互いに隣り合うことなく重なり得るが、それでもなお相異なる厚さの要素が互いにより近くなるので、やはりこれにより、デバイスがより容易に認証可能となろう。さらに、ワークの重なりが、相異なるワークを印刷するために別々のプリンタを使用した、たとえば、様々な種類のプリンタを使用して、相異なる要素の厚さを模倣しようとする偽造品での、どんな位置ずれをも顕わにするであろう。
【0116】
上記のように、第1の印刷ワークは、典型的には第1の材料、好ましくは第1のインクで印刷され、第2の印刷ワークは、第1の材料とは異なる第2の材料、好ましくは第2のインクで印刷される。ただし、所望であれば、2つのワークを同じ材料で印刷することも可能であろう。
【0117】
第1及び第2の材料は、好ましくは、相異なる光学特性を有する。光学特性には、材料の色ばかりでなく、材料の不透明度若しくは半透明度などの他の光学的特質、又は材料に反射粒子、たとえば金属インクが含まれているかどうか、が含まれる。光学特性のより大きな違いにより、2つの相異なるワークの判別性が向上する。どのように材料が異なり得るかに関して、実例が上記で示されており、たとえば、材料は、カラーシフト・インク、金属インク、発光インク、蛍光インク、燐光インク、赤外線吸収インク、熱変色性インク、又は光変色性インクのリストから選択できる。
【0118】
デジタル印刷されるセキュリティ文書は、やはり好ましくは、紙幣、ポリマー紙幣、小切手、パスポート、身分証明書、鑑定書、印紙、免許証、識別文書、及びビザのうちの1つである。
【0119】
典型的には、この種類の複数のセキュリティ文書が形成されることになり、そうするためのいくつかの有利な手法を、ここで説明することにする。
【0120】
第1の要素の厚さを有する印刷される要素の、第1の配列の要素又は各要素が、複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書のそれぞれで、第2の要素の厚さを有する印刷される要素の、第2の配列の要素又は各要素に対して同じ位置にある、第5の態様による複数のデジタル印刷されるセキュリティ文書が形成され得る。言い換えれば、相異なる高さを有する要素が、それぞれの札の同じ相対位置に現れ得る。これにより、閲覧者は、相異なる高さを有する要素を見つけるために文書上のどこを見ればよいかを、確実に知ることができる。たとえば、肖像画などの画像を画定するワークが形成される場合、閲覧者は、肖像画の特定の領域の要素が、第1及び第2の厚さを有する要素の混在を含んでいる必要があることを、知ることができる。これは好ましいことである一方で、デジタル印刷されるワークにわたって、相異なる厚さを有する要素を不規則に形成することも可能であろう。この場合、文書は互いに異なるようになる。
【0121】
別の実例では、第5の態様による、複数の印刷されるセキュリティ文書が提供され、第1及び/又は第2の印刷ワークは、それぞれが固定コンテンツと可変コンテンツとを有する複数のセキュリティ文書を形成し、固定コンテンツは、複数のセキュリティ文書のそれぞれについて同じであり、可変コンテンツは、該複数のセキュリティ文書の少なくとも一部間で変化し、可変コンテンツは、好ましくは、該複数のセキュリティ文書のそれぞれに唯一的である。相異なる厚さの要素を形成するために使用できる他の印刷技法、たとえば、触覚セキュリティのフィーチャ、たとえば刻印プレートを使用したフレキソ印刷では、通常、可変コンテンツを生成できない。しかし、安全なデジタル印刷を使用することにより、2つのデジタル印刷ワークが高さの相異なる要素を形成し、同時に、可変コンテンツを含むセキュリティ文書の印刷されるコンテンツを画定できる。複数のセキュリティ文書のそれぞれの可変コンテンツは、好ましくは、第2の厚さを有する印刷される要素の、第2の配列の少なくとも1つの要素(典型的には、複数の要素)によって、少なくとも部分的に画定され、且つ/又は第1の厚さを有する印刷される要素の、第1の配列の少なくとも1つの要素(典型的には、複数の要素)によって、少なくとも部分的に画定される。可変コンテンツを画定するために、最も好ましくは、第1の厚さを有する第1のワークからの要素と、第2の厚さを有する第2のワークからの要素との、組合せが使用されるであろう。ここで、使用した印刷技法は、必要に応じて様々な位置で様々な厚さを有する様々な要素を印刷できたことを明確に示すために、可変コンテンツの様々な厚さの要素を意図的に実現している。偽造者は、こうした機能を、従来の手段を用いて納得がいくように複製することは非常に困難であることを知るであろう。
【0122】
本発明の第6の態様によれば、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法が提供され、この方法は、セキュリティ文書の基材の第1の表面の第1の領域の、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、その結果第1の印刷ワークは、印刷される要素の第1の配列を有し、要素の少なくとも1つは、セキュリティ文書の基材の表面に垂直な方向に第1の要素の厚さを有するステップと、基材の第1の表面の第2の領域の、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップであって、その結果第2の印刷ワークは、印刷される要素の第2の配列を有し、要素の少なくとも1つは、セキュリティ文書の基材の表面に垂直な方向に第2の要素の厚さを有し、第2の要素の厚さは、第1の要素の厚さよりも厚いステップとを含む。この方法は、本発明の第5の態様による、セキュリティ文書をデジタル印刷する方法に対応する。したがって、この方法は、この態様に関する上記の好ましいフィーチャのいずれかを形成するよう適合され得る。
【0123】
好ましくは、第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップは、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って第1の印刷ワークをデジタル印刷するステップを含み、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップは、第1のデジタル・プリント・ヘッドとは異なる第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップを含む。デジタル印刷機の様々な種類のプリント・ヘッドの使用については、上記で説明してきた。これにより、第1及び第2のワークを印刷するために、著しく相異なる材料、すなわち著しく相異なるインクを、相異なるプリント・ヘッドで使用できる。上記で説明してきたように、インクの特性を変化させることが、デジタル・プリント・ヘッドの噴射速度及び液滴サイズと共に、デジタル印刷される要素の厚さを制御するために使用できる。したがって、相異なるヘッドの使用が、こうしたセキュリティ文書の印刷を可能にするために、非常に有用である。
【0124】
上記で説明したように、印刷される要素をより厚くすることができる1つの手法は、同じ材料の2つの層を重ねること、すなわちドットを2重に印刷することによる。これは、1つの同じプリント・ヘッドで実行できる。すなわち、同じノズルで、同じ印刷される要素の両方の層を印刷できるが、印刷される要素の第1の層が、第2の層と重ね刷りされる前に、乾燥される必要があるので、デジタル印刷プロセスが著しく遅くなることが予想される。したがって、第2の印刷ワークをデジタル印刷するステップは、好ましくは、第2のプリント・ヘッドを使って、第2の材料の要素の配列をデジタル印刷するステップを含み、さらに、第2の厚さを有する要素の、第2の配列の要素を作るために、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される要素の配列の1つ又は複数の上に、第3のデジタル・プリント・ヘッドを使って、第3の材料でデジタル印刷するステップを含み、第3の材料は、第2の材料とほぼ同じ光学特性を有し、好ましくは第3の材料は、第2の材料と同じである。ここで、第3のデジタル・プリント・ヘッドは、典型的には、第2のデジタル・プリント・ヘッドと同じであろう。これにより、第3のデジタル・プリント・ヘッドは、第2のデジタル・プリント・ヘッドと同じ(又は類似の)インクで印刷でき、且つ第2の層、すなわち第2のドットを、同じサイズで同じ位置に、すなわち、格子点の同じグリッド上に印刷できるようになる。第3のプリント・ヘッドが、第2のプリント・ヘッドによってすでに印刷されたドットの上に、第3のプリント・ヘッドのドットを正確に印刷できるように、第2及び第3のデジタル・プリント・ヘッドの印刷を位置合せすることが重要となろう。かかる位置合せは、枚葉システムではなく印刷用紙ベースのシステムを使用することによって、且つ検出可能な位置合せマークなど、デジタル印刷用の従来の位置合せ技法を使用することによって、容易となり得る。また、各要素の第2の層を作る液滴のサイズを調節することにより、位置合せの許容範囲を改善する手法も、下記でさらに開示する。
【0125】
いくつかの実施例では、第2の材料は硬化性材料であり、この方法は、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される要素の配列の1つ又は複数の上に、第3のデジタル・プリント・ヘッドを使って第3の材料でデジタル印刷する前に、少なくとも部分的に第2の材料を硬化させるステップをさらに含む。この実施例では、第3の材料は硬化可能であってもよく、又は硬化可能でなくてもよい。たとえば、第3の材料は、まったく同じ硬化性インクであってもよく、又は硬化性添加剤がなくてもよい。硬化性材料である第2の材料を準備し、重ね刷りする前に硬化させることにより、確実に、第1の印刷されるドットが硬くなり、第3のプリント・ヘッドが第3のプリント・ヘッドのドットを印刷できる、硬い表面が形成される。
【0126】
次に、本発明を、以下の添付の図を参照して説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図2A】
図1Aに示されるプリント・ヘッドのプリント・ヘッドの、概略的な正面図である。
【
図2B】
図1Aに示されるプリント・ヘッドのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図3A】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な正面図である。
【
図3B】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図3C】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図3D】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図4A】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な正面図である。
【
図4B】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図4C】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図4D】インクの3種類の相異なる液滴を吐出中の、別のプリント・バーのプリント・ヘッドの、概略的な断面図である。
【
図5】
図1Aの印刷機を使用して印刷できる3つの相異なる印刷されたワーク、及び印刷されたワークを組み合わせた見た目を示す図である。
【
図6】3つの相異なる印刷されたワークの拡大部分、及び印刷されたドットが配置されている格子点のグリッドを示す図である。
【
図7A】
図5のワークの印刷されたドットが配置されている、格子点のグリッドのさらに拡大された部分を示す図である。
【
図7B】
図5のワークの印刷されたドットが配置されている、格子点のグリッドのさらに拡大された部分を示す図である。
【
図7C】
図5のワークの印刷されたドットが配置されている、格子点のグリッドのさらに拡大された部分を示す図である。
【
図8】別の実例によるプリント・ヘッドの、概略的な正面図である。
【
図9】
図8のプリント・ヘッドを使用して印刷できる、印刷されたセキュリティ文書を概略的に示す図である。
【
図10】元画像を
図1Aのデジタル印刷機に向けた印刷命令に変換する、流れ図である。
【
図11B】多色画像の層のいくつかの画素を示す図である。
【
図12A】画像の層の第1の色成分を示す図である。
【
図12B】第1の色成分画像の印刷されたワークを示す図である。
【
図13B】第2の色成分画像の、ダウンサンプリングされた版を示す図である。
【
図13C】ダウンサンプリングされた色成分画像の、印刷されたワークを示す図である。
【
図15A】本発明の実施例による印刷されたセキュリティ文書の一部を示す図である。
【
図16】デジタル印刷機
図1Aの、1つの特定の構成を示す図である。
【
図17A】本発明の実施例による、印刷されるセキュリティ文書の一部を示す図である。
【
図17B】本発明の実施例による、印刷されるセキュリティ文書の一部を示す、
図17Aの拡大部分を示す図である。
【
図18A】本発明の実施例による、印刷されるセキュリティ文書の一部を示す図である。
【
図18B】本発明の実施例による、印刷されるセキュリティ文書の一部を示す、
図18Aの様々な拡大部分を示す図である。
【
図18C】本発明の実施例による、印刷されるセキュリティ文書の一部を示す、
図18Aの様々な拡大部分を示す図である。
【
図19】別の実施例による、セキュリティ文書を印刷するために使用され得る、印刷される複合要素を示す図である。
【
図20A】デジタル印刷機を概略的に示す図である。
【
図20B】デジタル印刷機の、1つの特定の構成を概略的に示す図である。
【
図21A】他の実施例による、セキュリティ文書を印刷するために使用され得る、相異なる印刷の配置構成を概略的に示す図である。
【
図21B】他の実施例による、セキュリティ文書を印刷するために使用され得る、相異なる印刷の配置構成を概略的に示す図である。
【
図21C】他の実施例による、セキュリティ文書を印刷するために使用され得る、相異なる印刷の配置構成を概略的に示す図である。
【
図21D】他の実施例による、セキュリティ文書を印刷するために使用され得る、相異なる印刷の配置構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0128】
ここで、
図1Aから
図7Cを参照して、第1の印刷機及びセキュリティ文書を印刷する方法について説明することにする。
【0129】
図1Aは、デジタル印刷機を示す。デジタル印刷機は、プリント・バー保持器10aから10jの配列を備える。それぞれのプリント・バー保持器は、基材100の上でそれぞれのデジタル・プリント・バーを収容し、支持できる。
図1Aでは、第1から第3のプリント・バー保持器10aから10cだけが、それぞれのプリント・バー11aから11cを保持するものとして示されている。実際には、より多くのプリント・バーが、プリント・バー保持器10aから10jのそれぞれに、図示の機械で許容される最大10個まで備えられ得る。
【0130】
デジタル印刷機1は、搬送システム20を備える。搬送システム20は、基材100の印刷用紙を、印刷前スプール21から印刷後スプール22に供給する。印刷前スプール21と印刷後スプール22との間で、基材100の印刷用紙は、デジタル・プリント・バーのデジタル・プリント・ヘッドが、基材材料100の印刷用紙の第1の表面(上面)への印刷が可能となるように、それぞれのプリント・バー保持器10aから10jによって支持された各プリント・バーを通過して、順次供給される。基材材料の印刷用紙100は、デジタル印刷機1を通過するときに、基材の印刷用紙100を誘導及び支持するよう作用する複数のローラ23によって、印刷前スプール21と印刷後スプール22との間に供給される。
【0131】
第1のプリント・バー11aは、プリント・バー11aの底部に位置する第1のデジタル・プリント・ヘッド12aを備える。同様に、第2のプリント・バー11b及び第3のプリント・バー11cは、プリント・バー11b、11cの底部に位置する、それぞれの第2のデジタル・プリント・ヘッド12b及び第3のデジタル・プリント・ヘッド12cを備える。デジタル・プリント・ヘッド12aから12cは、基材の印刷用紙100がデジタル印刷機1を通って運ばれるときに、それぞれのデジタル・プリント・バーの下で順次、基材の印刷用紙100の上方に向く表面に印刷できるように、下方に向いている。
【0132】
システムには従来のプリント・バーを取り付けることができ、ここでいくつかの実例を提示することにする。デジタル・プリント機に備えられ得るプリント・バーの1つは、富士フイルムDimatrix製のDimatrix Samba G3Lであり、これは、1200DPIの解像度及び2.4から13ピコリットルでの液滴サイズで印刷し、赤で、水性又はUVインクを使用して印刷するよう構成され得、セキュリティ文書の基材に精細な線のパターン又はマイクロ文字を印刷できる。別の実例は、コニカミノルタ製のKM1800iであり、これは、600DPIで、3.5から18ピコリットルでの液滴サイズで印刷し、緑又は橙で、水性、溶剤、UV、及び特殊インクを使用して印刷でき、肖像画又は背景などの、印刷されるセキュリティ文書のより一般的なデザイン要素の印刷に好適である。別の実例は、富士フイルムDimatrix製のSaffire QS256であり、これは、100DPIで、10、30、及び80ピコリットルでの液滴サイズで印刷し、たとえば、UV、水性、熱変色性、MICR、及び導電性インクを使用できる。使用できる別のプリント・バーは、コニカミノルタ製のKM1024であり、これは、360DPIで、6、14、及び42ピコリットルでの液滴サイズで印刷し、水性、溶剤、UV、及び特殊インクを使用できる。下記で説明するように、デジタル印刷機は、相異なるプリント・ヘッドが明確に相異なる解像度及びドット・サイズで印刷するように構成されているため、実際には、通常、相異なるプリント・バーが混在してデジタル印刷機に装着されることになる。
【0133】
図16が含まれ、これは
図1Aのデジタル印刷機の1つの特定の構成を示す。この実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aは、1200DPIの解像度、2.4から13plまででの液滴サイズ、及び紫色で印刷するよう構成される。このプリント・ヘッドのノズルのサイズは、5ミクロンであり得る。この高解像度プリント・ヘッドは、第1のワーク51を基材100の表面に印刷するよう構成される。このワークは、たとえば、精細な線のパターンであり得る。第2のデジタル・プリント・ヘッド12bは、600DPIの解像度、3.5から18plまででの液滴サイズ、及び橙色で印刷するよう構成されている。このプリント・ヘッドのノズルのサイズは、20ミクロンであり得る。これは、肖像画などの一般的な要素を含むワーク52をセキュリティ文書に印刷できる。第3のデジタル・プリント・ヘッド12cは、100DPIの解像度、10、30、及び80plでの液滴サイズ、並びに緑色で印刷するよう構成されている。このプリント・ヘッドのノズルのサイズは、80ミクロンであり得る。これは、たとえば、可視的にスクリーニングされる背景、すなわち、大きな印刷されるドットを含む、ワーク53を文書に印刷できる。最後に、第4のプリント・バー保持器10d内のデジタル・プリント・バーの一部として備えられ得る、第4のデジタル・プリント・ヘッド12dは、360DPIの解像度で、6、14、及び42plでの液滴サイズで、黒色で印刷するよう構成される。このプリント・ヘッドのノズルのサイズは、40ミクロンであり得る。これは、別のスクリーニングされるワーク54を文書の表面に印刷できる。
図16では、各印刷されたワークを完全な層として示しており、それぞれが以前に印刷されたすべてのワークと重なっているが、これはワークを模式的に表すことだけを目的としていることが理解されよう。ワークは、それぞれ通常、ワークのそれぞれの印刷されるパターンに従って間隙及び変化があり、完全に印刷されたセキュリティ文書を構築するために要望通りに、そして必要に応じて、ワークの相異なるものがセキュリティ文書の相異なる領域に形成される場合があり、また重なり合うか又は部分的に重なり合う場合がある。上記のプリント・ヘッドのノズル・ピッチは、プリント・ヘッドが印刷するよう構成されている解像度に等しいことに留意されたい。100及び360DPIは、非整数の倍数の関係を共有するノズル・ピッチを有するプリント・ヘッドの実例である。結果として得られる印刷された解像度は、同様に非整数の倍数の関係を共有することになる。この実例では、各デジタル・プリント・ヘッドは、文書の表面全体に印刷できるように、搬送経路の全幅に延在する。
【0134】
図1Aに示されるデジタル印刷機はまた、プリント・バー保持器10aから10j内に装着された様々なプリント・バーを制御するよう適合されたコントローラ30も備える。コントローラは、具体的には、下記で説明する方法に従って印刷するように、プリント・バーを制御する。
【0135】
図1Bは、代替形態のデジタル印刷機を示す。このプリント機は、コロナ処理ユニット25、及び最終のプリント・バー保持器10j内に仕上げ用デジタル・プリント・バー11jを備えているという点を除いて、
図1Aに示されているものと同じである。コロナ処理ユニットは、印刷前に基材にコロナ処理を施すよう構成され、仕上げ用デジタル・プリント・バー11jは、印刷後にワニスのコーティングをセキュリティ文書の基材に印刷するよう構成される。仕上げ用デジタル・プリント・バーは、最終のプリント・バー保持器内に図示されているが、どのプリント・バー保持器内に備えることもできる。ただし、最後の印刷ステップである必要がある。
【0136】
図1Cは、別の代替形態のデジタル印刷機を示す。この印刷機は、オフセット印刷ユニット40を備えるという点を除いて、やはり
図1Aに示されているものと同一である。各デジタル・プリント・ヘッド11a、11b及び11cが、セキュリティ文書の基材の印刷用紙100に直接印刷するのではなくて、一連のオフセット印刷シリンダ41aから41dが、プリント・ヘッドと基材の印刷用紙との間に設けられる。第1のデジタル・プリント・ヘッド12aは、第1のデジタル・プリント・ヘッドの印刷ワークを、第1のオフセット印刷シリンダ41aに印刷する。第1のオフセット印刷シリンダ41aは回転し、この印刷ワークを、中間オフセット印刷シリンダ42aを経由して、第2のオフセット印刷シリンダ41bに転写する。印刷ワークが第2のデジタル・プリント・ヘッド12bの下を通過するとき、第2のデジタル・プリント・ヘッドは、第2のオフセット印刷シリンダ41b上の第1の印刷ワークの上に、第2の印刷ワークを印刷する。第2のオフセット印刷シリンダ41bは回転し、この印刷ワークを、第2の中間オフセット印刷シリンダ42bを経由して、第3のオフセット印刷シリンダ41cに転写する。2つの印刷ワークが第3のデジタル・プリント・ヘッド12cの下を通過するとき、第3のデジタル・プリント・ヘッドは、第3のオフセット印刷シリンダ41c上の第1及び第2の印刷ワークの上に、第3の印刷ワークを印刷する。第3のオフセット印刷シリンダ41bは回転し、この印刷ワークを、最終の中間オフセット印刷シリンダ42cに転写し、最終の中間オフセット印刷シリンダは回転して、3つのワークすべてを、セキュリティ文書の基材の印刷用紙100に転写する。
【0137】
図2A及び
図2Bは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの構造を概略的に示す。
図2Aは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aが、印刷機の横送り方向に沿って配置されたノズル13の配置構成を有することを示している。すなわち、ノズル13の配列は、基材の印刷用紙100がデジタル印刷機1を通って搬送される方向に垂直な方向に延在する。横送り方向に沿ったノズル13の配置構成により、ノズルの、基材の印刷用紙100の全幅にわたる印刷が可能である。ここで、横送り方向に沿ったノズル13の配置構成が、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの横送り方向解像度を決定することに留意されたい。すなわち、ノズル13の配置構成は、横送り方向における、基材100の表面上の印刷されるドット間の距離を決定する。ここで、
図2Aでは、横送り方向に沿って延在する5つのノズル13しか図示されていないが、これは単に概略を図示しているためであることに留意されたい。実際には、たとえば、基材の印刷用紙100の全幅にわたって所望のDPIを提供するのに十分である、より多くのノズルが備えられるであろう。
【0138】
図2Bは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの一部を貫く断面図を示す。これは、デジタル・プリント・ヘッド12aが、ノズル13ごとに、プリント・ノズル13を通って印刷されるべきインクを保持する、対応するインク・チャンバ15を備え、インク・チャンバがプリント・ノズル13と流体連絡していることを示す。この実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの各インク・チャンバ15は、第1の色のインクを格納し、第1の色は、好ましくは、標準CMYK印刷で使用される色ではない。流体チャンバ15に隣接して、圧電素子14がある。素子14は、それぞれのノズル13を通してインクの液滴D
1を圧するように、コントローラで制御可能である。デジタル・プリント・ヘッド12aの各ノズル13は、ノズル自体のそれぞれのチャンバ15及び圧電素子14を備え、その結果、各ノズル13は、インクの液滴D
1を吐出するように別々に作動され、これにより、サイズS
1を有するドットを基材100に印刷できる。この場合、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aは、比較的低い解像度、たとえば、横送り方向に200DPIを有し、単一の比較的大きな液滴サイズ、たとえば、40ピコリットルを印刷するように制御可能である。
【0139】
図3Aから
図3Dは、第2のプリント・バー保持器10b内に装着された第2のプリント・バー11bが備える、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bを概略的に示す。
【0140】
この第2のデジタル・プリント・ヘッド12bはやはり、デジタル・プリント・ヘッドの横送り方向に沿って延在するノズル13の配列を備える。
図3は、8つのノズルだけを図示しているが、基材100の全幅にわたって所望の解像度を実現させるために、通常、より多くのノズルが設けられることが理解されよう。この実例では、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bは、たとえば、600DPIの第2の横送り方向解像度を有し、設けられ得る。
【0141】
図3Bから
図3Dはそれぞれ、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bの一部を貫く断面図を示す。
図3Bから
図3Dは、3種類の相異なる液滴サイズD
1からD
3のそれぞれを吐出するノズル13を図示している。
図3Bから
図3Dは、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bが第1のデジタル・プリント・ヘッド12aと同じ一般的な構造を有することを示している。すなわち、各ノズル13は、それぞれのインク・チャンバ15から供給され、それぞれの圧電素子14によって、インクの液滴を吐出させられる。この実例では、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bの各インク・チャンバ15は、第2の色のインクを格納し、第2の色は、第1の色とは異なり、好ましくはCMYK印刷で使用されるインクではない。
図3Bは、第1のドット・サイズS
1を有するドットを印刷するために、5ピコリットルであり得る第1の液滴サイズD
1を印刷する、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bの1つのノズル13を示す。この第1の液滴サイズは、コントローラが、圧電素子を第1の所定の作動プロファイルに従わせることによって、供給される。
図3Cは、コントローラが、圧電素子を第2の異なる作動プロファイルに従わせることによって、第2の液滴サイズD
2を吐出させるノズル13を示す。これにより、ノズルは、第1のドット・サイズS
1よりも大きいドット・サイズS
2を有するドットを印刷するように、たとえば10ピコリットルでの液滴サイズを吐出できる。最後に、
図3Dは、コントローラが、圧電素子14を第3の作動プロファイルに従わせることによって、第3の液滴サイズD
3を吐出させるノズル13を示す。これにより、ノズルは、第1又は第2のドット・サイズS
1及びS
2のいずれよりも大きい第3のドット・サイズS
3を有するドットを生成するように、たとえば20ピコリットルでの液滴サイズを吐出できる。こうした印刷されるドットのそれぞれは、液滴サイズに応じて厚さが変化し、このドットの厚さは、
図2Bに示されるプリント・ヘッドを使って印刷されるドットのドット厚さとは、異なるように選択され得ることに気づくであろう。正確なドットの厚さは、液滴サイズだけでなく、噴射速度、及びインクの特性、すなわち濃度、粘度、及び表面張力によっても変わるであろう。ドットの厚さの差を大きくするために、第2のデジタル・プリント・ヘッドのインクは、たとえば、第1のデジタル・プリント・ヘッドで使用されるインクよりも粘度が低く、より低い表面張力を有するように選択され得る。
【0142】
図4Aは、第3のデジタル・プリント・バー保持器10c内に設けられた第3のデジタル・プリント・バー11cに備えられる、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cを概略的に示す。
図4Aに示すように、この第3のデジタル・プリント・ヘッドは、やはりノズル13の配列を備え、今回は、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッド12a及び12bのいずれで提供されるより高い、第3の横送り方向解像度を可能にする。第3の横送り方向解像度は、たとえば、900DPIであり得る。
図4Aでは、やはり、横送り方向に沿って延在する11個だけのノズル13が示されているが、基材100の全幅にわたって所望の横送り方向解像度を実現させるために、通常、より多くのノズルが設けられることが理解されよう。
【0143】
図4Bから
図4Dは、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cの一部を貫く別の断面図を示し、プリント・ヘッドは、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッド12a及び12bに関して説明したものと概ね同じ構造を有することを示している。この実例では、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cの各インク・チャンバ15は、第1及び第2の色とは異なる第3の色のインクを格納し、第3の色は、やはり好ましくは、標準CMYK印刷で使用される色ではない。これらの図はやはり、このデジタル・プリント・ヘッドが、圧電素子14の特定の作動プロファイルによって、3種類の相異なる液滴サイズD
1、D
2、及びD
3を吐出するように構成されていることを示している。この実例では、3種類の液滴サイズは、たとえば、3.5ピコリットル、7ピコリットル、及び13ピコリットルであり得る。これらの3種類の相異なる液滴サイズD
1からD
3は、結果的に、3種類の相異なるドット・サイズS
1からS
3で印刷されるドットをもたらすことになる。こうしたドットの厚さは、
図3Bから
図3Dに示されているものよりも薄い場合がある。上記のように、インクは、より小さい液滴サイズと組み合わせて、たとえば、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷されるドットに比べて厚さの差を増大させるために、より低い粘度及びより低い表面張力を有するように選択され得る。
【0144】
図5から
図7Cは、第1、第2、及び第3のデジタル・プリント・ヘッド12aから12cのそれぞれによって形作られ得る印刷ワーク、及び印刷ワークがどのように組み合わさって最終画像を生成するかを示している。
【0145】
図5は、第1から第3のデジタル・プリント・ヘッド12aから12cによってそれぞれ印刷された、3つの印刷されたワーク51、52、及び53の組合せによって生成される、最終的に印刷された画像50を示す。
【0146】
より詳細には、第1の印刷ワーク51は、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aによって印刷されることになる、最終的に印刷される紙幣の一部を有する。この印刷ワークは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの解像度に一致する、第1の解像度で印刷されることになる。上記で説明してきたように、横送り方向の第1のデジタル・プリント・ヘッドの解像度は、プリント・ノズル13の間隔によって設定され、一方、給紙方向解像度は、基材100が第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの下を通過するスピード、及び圧電素子14を作動させてインクの液滴を吐出させる速度を制御する、コントローラによって決まる。プリント・ヘッドは、典型的には、給紙方向解像度がノズルの間隔によって設定された横送り方向解像度と同じになるように制御されることになる。ただし、これは必須ではない。第1の解像度で印刷される第1のワーク51は、やはり、第1のデジタル・プリント・ヘッド12a内に格納されたインクの色である、第1の色で印刷される。
【0147】
第2の印刷ワーク52は、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bを使って印刷される、最終的に印刷される紙幣の一部である。第2のデジタル・プリント・ヘッド12bは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aとは異なる解像度で印刷するよう構成されているので、この第2の印刷ワークは、やはり、第1の解像度とは異なる第2の解像度となろう。さらに、第2の印刷ワーク52は、第2のデジタル・プリント・ヘッド内に格納されたインクの色である、第2の色で印刷されることになる。
【0148】
最後に、第3のワーク53は、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cによって印刷される。第3の印刷ワーク53は、第3のデジタル・プリント・ヘッドの解像度によって決まる第3の解像度で印刷される。したがって、第3のワーク53は、第1及び第2の印刷ワーク51及び52とは異なる解像度を有する。第3の印刷ワーク53は、やはり、第3のデジタル・プリント・ヘッド12c内に備えられたインクの色である、第3の色で印刷されることになる。
【0149】
上記のように、第1、第2、及び第3の色のうちの1色又は複数色は、好ましくは、標準CMYK色ではない。さらに好ましくは、この1色又は複数色は、CMYKの色域の外側にある。したがって、最終の印刷される画像には、従来のCMYKプリンタを使用しても正確に複製することができない、CMYK以外の成分が含まれることになる。
【0150】
図6は、第1から第3の印刷ワーク51から53のそれぞれの、ほんの一部を示している。詳細には、
図6は、第1のグリッド151を示し、第1のグリッドは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aがインクのドットを印刷できる、すべての可能な場所を表している。これは、これらの位置の一部だけに、第1の印刷ワーク51によって構築されている全体的な印刷された画像の要素に応じて、サイズS
1のインクのドットが形成されることを示している。この図はまた、第2のデジタル・プリント・ヘッドがインクのドットを印刷できる、可能な位置のグリッド152を示している。これはやはり、こうした可能な印刷位置のそれぞれ1点に、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bによって印刷され得る、相異なるサイズのインクのドットS
1、S
2及びS
3を示している。最後に、グリッド153は、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cがインクのドットを印刷できる、すべての可能な場所を表している。これはやはり、特定の場所に、3種類の可能なドット・サイズS
1、S
2、及びS
3のうちのいずれかで印刷されることを示している。
【0151】
図6はまた、3種類の印刷ワークの組合せ150を示し、相異なるサイズ及び色のドットが、重なり合い、一体となって、紙幣上に完全な印刷された画像を構築するのに寄与できることも示している。ユーザは、セキュリティ文書の印刷ワークを綿密に検査し、相異なる色の印刷ワークのそれぞれについて、期待されるドット・サイズ及び間隔の変化が備えられていることを確認できるので、その結果、デジタル印刷されたセキュリティ文書のセキュリティが向上する。従来のデジタル・プリンタを使用してデジタル印刷されたセキュリティ文書の、どのように試みられた偽造品も、最終画像50の複製において、必要なドット・サイズ及び間隔を正確に複製していないであろう。さらに、CMYK以外の色を使用することにより、本物のセキュリティ文書と、さらに従来の印刷技法を使用して偽造された文書との間に、視覚的な色の違いがもたらされ得る。
【0152】
図7Aから
図7Cは、可能な印刷位置151から153のこうしたグリッドを、より詳細に示している。
図7Aは、拡大した第1のグリッド151の一部を示している。
図7Aを見てわかるように、可能な印刷場所の規則的な正方形のグリッドが提供され、可能な印刷場所は、明細書内の他の場所では、格子点と呼ばれる。こうした格子点Lは、前述のように、プリント・ノズル13の配置によって決定される横送り方向の間隔と、コントローラによって決定される給紙方向の間隔とを有する。結果として、横送り方向のピッチP
Cと給紙方向のピッチP
fとを有する、格子点Lの配列となる。第1のデジタル・プリント・ヘッドは、給紙方向と横送り方向との両方に200DPIの解像度で印刷するよう構成されていたので、格子点Lのグリッド152の両方のピッチが200DPIとなろう。同様に、
図7Bは、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bのワークに対応する、第2のグリッド152の拡大部分を示している。このグリッドはまた、可能な印刷場所の規則的な正方形のグリッド、又は格子点Lを有し、グリッドは、横送り方向のピッチP
Cと給紙方向のピッチP
fとを有する。第2のデジタル・プリント・ヘッドは、給紙方向と横送り方向との両方に600DPIの解像度で印刷するよう構成されていたので、格子点Lのグリッド152の両方のピッチが600DPIとなろう。最後に、
図7Cは、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cのワークに対応する、第3のグリッド153の拡大部分を示している。このグリッドはまた、可能な印刷場所の規則的な正方形のグリッド、又は格子点Lを有し、グリッドは、横送り方向のピッチP
Cと給紙方向のピッチP
fとを有する。第3のデジタル・プリント・ヘッドは、給紙方向と横送り方向との両方に900DPIの解像度で印刷するよう構成されていたので、格子点Lのグリッド153の両方のピッチが900DPIとなろう。
【0153】
次に、
図1Aから
図1Cに示されたデジタル印刷機を使用して、セキュリティ文書を印刷する方法を説明することにする。
【0154】
最初に、1巻の基材の印刷用紙を、デジタル印刷機の搬送システム20に装着する。基材の印刷用紙は、ポリマー紙幣を作るのに好適なBOPPなどのポリマー基材の印刷用紙であってもよく、又は紙の紙幣を作るのに好適な紙基材の印刷用紙であってもよい。基材の印刷用紙がポリマー基材の印刷用紙である場合、好ましくは、ポリマー基材を不透明化層でコーティングして、デジタル・プリント・ヘッドを使って複数の印刷ワークを印刷できる、好ましくは白の背景を形成する。基材材料の印刷用紙は、印刷前スプール21が未印刷の基材材料を保持するように、また基材の印刷用紙がデジタル印刷機を通って印刷後スプール22まで延在するように装着され、基材の印刷用紙をデジタル・プリント・ヘッドの下流で印刷後スプール上に巻き直す。
【0155】
次いで、搬送システム20は、デジタル印刷機のコントローラによって駆動され、基材材料100を、プリント・バー保持器10aから10j内に装着されたそれぞれのデジタル・プリント・ヘッドの下に順次移動させる。コントローラは、それぞれのデジタル・プリント・ヘッド12aから12cに関する、1組の印刷命令を受信する。1組の印刷命令は、それぞれのデジタル・プリント・ヘッド12aから12cを使って基材100上に印刷されることになるワークを定義する。印刷されるべき元画像に基づいて印刷命令を生成するプロセスについて、下記でより詳細に説明することにする。
【0156】
基材の印刷用紙100が最初に第1のデジタル・プリント・ヘッド12aの下に搬送されると、該第1のデジタル・プリント・ヘッドは、第1の印刷ワーク51を基材100の表面に印刷するように制御される。印刷命令で定義されるように、第1の印刷ワーク51は、格子点L(第1の印刷ワークのドットの可能な印刷位置を表す)のグリッド151全体に配置される、サイズS1(40ピコリットルでの液滴サイズで生成される)のドットの配列で構築される。上記で説明したように、第1のワーク向けの格子点Lは、200DPIの解像度を有するように、給紙方向と横送り方向との両方で、互いに間隔をあけて配置されている。第1のデジタル・プリント・ヘッド12aは、基材100上で第1の印刷ワーク51の版を繰り返し印刷し、複数の紙幣を作る。
【0157】
次いで、第1の印刷ワーク51が印刷された基材100の領域は、第2のプリント・バー保持器10b内に装着された第2のデジタル・プリント・ヘッド12bまで搬送される。1組の印刷命令はやはり、基材100の表面に、第1のデジタル印刷ワーク51の上に第2のワーク52を印刷するための、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bに向けられた印刷命令を含む。第2の印刷ワーク52は、可能なドット位置(格子点L)のグリッド152全体に、3種類の可能なサイズS1、S2、及びS3(液滴サイズ5、10、及び20ピコリットルに対応する)のうちの1種類を有するドットを印刷することによって形作られ、格子点はやはり、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bの解像度に一致する、600DPIの、給紙方向と横送り方向との両方のピッチを有する。
【0158】
第2のワーク52が第1のワーク51の上に印刷されると、基材100は、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cまで進み、第3のデジタル・プリント・ヘッドは、第3の印刷ワーク53を第1及び第2の印刷ワーク51及び52の上に印刷する。第3の印刷ワーク53はやはり、可能なドット位置Lのグリッド153全体に、3種類の相異なるサイズS1、S2、及びS3(液滴サイズ3.5、7、及び13ピコリットルに対応する)のドットを印刷することによって形作られる。格子点Lの配列は、第3のデジタル・プリント・ヘッド12cの解像度に一致する、900DPIの、給紙方向と横送り方向との両方のピッチを有する。
【0159】
上記の3つの印刷プロセスの結果、最終画像50は、上記で説明してきたように、3種類の相異なる解像度及び3色の相異なる色での、3つの別個の印刷ワーク51、52及び53からなる。
【0160】
上記で説明したように、結果として得られるデジタル印刷されたセキュリティ文書は、
図6の組み合わされたグリッド150を見てわかるように、様々な特徴的なドット・サイズ及び間隔を有する、印刷されたドットの3種類の相異なる配列で構成される。
【0161】
上記に従ってセキュリティ文書を印刷する特に有益な手法を、
図15A及び
図15Bに示す。ここでは、基材100に、印刷される要素101の配列が印刷されている。
図15Bを見てわかるように、各印刷された要素101は、実際には、デジタル・プリント・ヘッドを使って印刷された複数個のドットの複合物である。この実施例では、各印刷された要素101は、印刷された要素101の中心に位置する大きなドット101bと、大きな中央ドット101bに部分的に重なり、大きなドット101bの周囲に等間隔に配置された、4つのより小さなドット101aとを有する。小さなドット101aは、第1のデジタル・プリント・ヘッド12aを使って印刷され、大きなドット101bは、第2のデジタル・プリント・ヘッド12bを使って印刷される。この実施例では、ドットは同じ色で印刷され、継ぎ目のない複合要素101をもたらす。ただし、相異なる色を使用して複合要素を作り出すこともできる。
図15Aを見てわかるように、複合印刷要素101の配列は、セキュリティ文書全体で、複合印刷要素のサイズが変わる。これは、ドット101a及び101bのサイズを変化させ、複合要素ごとの間隔を変化させることによって実現する。これは、第1及び第2のデジタル・プリント・ヘッド12a、12bに好適なドット・サイズ及び好適な解像度を可能にすることによって、制御され得る。すなわち、可能な位置の格子点が、ドットが複数種類の相異なる量だけ間隔をあけて配置されることを可能にするように、そして、生成されるべき複合要素の相異なるサイズに対して、十分に様々なドット・サイズがあるように、制御され得る。
【0162】
複合印刷要素の配列を印刷されるセキュリティ文書の、別の実例を
図17A及び
図17Bに示す。この図を見てわかるように、ここでは、それぞれが文字「D」の形である、複数の複合要素が形成されている。
図17Bに最も明確に示されるように、各複合要素101は、より大きい、印刷される緑のドット101bの配列と組み合わされた、より小さい、印刷される赤いドット101aの配列によって作られる。この実施例では、赤のドットのピッチは、緑のドットのピッチの3倍であり、その結果、1つの印刷される緑のドットのエリアは、赤のドットの9×9の配置構成に相当する。これらのドットは、両方が各複合要素101の文字「D」の輪郭を表すように配置され、重ね刷りされている。
【0163】
複合要素はまた、セキュリティ文書の基材100全体で、複合要素の形状及びサイズが変化するように作製されている。この実施例では、複合要素は、相異なるサイズの文字「D」を示す。ここでは、文字「D」の様々なサイズを使用して、印刷されるワークの組合せの色調を変化させている。すなわち、これは、組み合わされたデジタル印刷ワークに、効果的にハーフトーン効果をもたらす。印刷される画像を作るアートワークの小さなエリアを示す
図17Aを見てわかるように、複合印刷要素は、画像の左側から右側に向かってサイズが小さくなり、徐々に変化する階調を形成する。
【0164】
複合印刷要素の配列を印刷されるセキュリティ文書の、さらなる実例を
図18Aから
図18Cに示す。この場合も、この文書は、それぞれがやはり文字「D」の形である複数の複合要素101を印刷されている。印刷される画像の大部分が、
図18で確認でき、画像の左側の主として緑から、画像の右側の主として赤まで変化する、楕円形を構成する。複合要素のサイズも画像全体で左から右に減少するため、階調ばかりでなく色相も、画像全体で変化する。
【0165】
図18Bは、
図18Aに示されている画像の左側から得られた2つの複合要素を示している。
図18Bを見てわかるように、各複合要素101は、より小さいドット・サイズ及びより高解像度で印刷される、印刷される赤いドット101aの配列と、より大きいドット・サイズ及びより低解像度で印刷される、印刷される緑のドット101bの配列とで構成される。
図18Bに示されるように、画像の左側にある各複合要素101は、主として、より大きな緑色のドット101bで組み立てられている。これにより、
図18Aの画像の左側に、より緑の色相がもたらされる。
【0166】
図18Cは、
図18Aに示されている画像の右側から得られた2つの複合要素101を示している。各複合要素101は、同じ種類の印刷されるドット、すなわち、より小さいドット・サイズ及びより高解像度で印刷される、赤いドット101aと、より大きいドット・サイズ及びより低解像度で印刷される、緑のドット101bとで構成される。しかしここでは、各複合要素はより小さく、主として赤いドット101aで作られている。これにより、
図18Aの画像の右側に、より赤の色相がもたらされる。複合要素のサイズが小さくなると、画像の右側に、より明るい階調ももたらされる。
【0167】
図19は、代替の複合要素の配置構成を示す。この実施例では、印刷される要素は、文字「D」の形で、依然としてスクリーニング要素の配列を画定しているが、各複合要素101は、ここで、3つの相異なるワークの印刷されるドットで構成されている。詳細には、各複合要素101は、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される赤いドット101aの配列、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される緑のドット101bの配列、及び第3のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷される青いドット101cの配列によって作られている。以前の実施例と同様に、赤いドット101aは、緑のドット101bよりも小さく、より高解像度である。青いドットは、この場合、赤いドットと同じサイズ及び解像度であるよう選択されているが、任意のドット・サイズと解像度が選択できた。
図19はやはり、複合要素の比率構成を画像全体で変化させて、画像の様々な領域の色を変え得ることを示している。
図19は、詳細には、3行の複合要素101を示している。一番上の行では、複合要素は、主として第2のワークからの緑のドット101bで作られている。すなわち、印刷されるエリアの大部分は緑のドットで構成されている。この行は、このデザインの複合要素を印刷される画像に、より緑の見た目をもたらすであろう。中央の行は、主として第3のワークからの青のドット101cで作られた、複合要素101を示している。このデザインの複合要素を印刷される画像のエリアは、全体的により青い色になるであろう。最後に、一番下の行は、主として第1のワークからの赤のドット101aで作られた、複合要素101を示している。このデザインの複合要素を印刷される画像のエリアは、全体的により赤い色になるであろう。この説明から、フル・カラー画像では、エリアの複合要素の比率構成に基づいた様々な色を有する画像の様々なエリアを印刷することができ、階調は、複合要素のサイズ、形状、及び間隔によって制御可能であることが理解されよう。これは、様々な解像度及び様々なドット・サイズのワークによってもたらされる、高いセキュリティを維持しながら実現できる。
【0168】
次に、
図8及び
図9を参照して、デジタル印刷機での使用に好適な第2の種類のプリント・ヘッドについて説明することにする。
【0169】
図8は、第4のデジタル・プリント・ヘッド12Dを、概略正面図で示している。このデジタル・プリント・ヘッド12dは、第1の部分12d’と第2の部分12d’’とを備える。ノズルの配列は、デジタル印刷機の横送り方向に沿って延在する。デジタル・プリント・ヘッド12dの第1の部分12d’は、比較的低い解像度で比較的大きなインクの液滴を印刷するのに好適な、第1のサイズ及び間隔を有するノズル13aを備える。デジタル・プリント・ヘッド12dの第2の部分12d’’は、第2のサイズ及び間隔を有する、具体的には、ノズル13Aよりも小さく、ノズル13Aより狭い間隔で配置されているノズル13bを備え、したがって、この第2の部分12d’’は、比較的高い解像度で比較的小さなインクの液滴を印刷するのに好適である。たとえば、プリント・ヘッド12dの第1の部分12d’のノズル13aは、30ピコリットルでのドット・サイズを有する900DPIの解像度で印刷するよう構成され得、一方、プリント・ヘッド12dの第2の部分12d’’のノズル13bは、10ピコリットルでのドット・サイズを有する1200DPIの解像度で印刷するよう構成され得る。
【0170】
図9は、上記のデジタル・プリント・ヘッド12dを使用してデジタル印刷されたセキュリティ文書を示す。セキュリティ文書は、単一の印刷ワーク54が印刷された基材100を備える。ここでは、上記のヘッドの効果を明確に図示するために、単一の印刷ワークが示されており、実際には、より複雑な見た目を構築するために、紙幣全体にさらなるワークが施されることが理解されよう。
図9に示される印刷ワーク54は、比較的低い解像度、すなわち900DPIで印刷された第1の領域54aと、比較的高い解像度、すなわち1200dpiで印刷された第2の領域54bとを有する。第1の領域54aは、デジタル・プリント・ヘッド12dの第1の部分12d’のノズル13aを使って印刷されたワーク54のそうした部分に対応し、一方、印刷ワーク54の第2の領域54bは、デジタル・プリント・ヘッド12Dの第2の部分12d’’のノズル13bを使って印刷されたワークの一部に対応する。
【0171】
この場合、印刷されたセキュリティ文書は紙幣であり、ワークの高解像度部分は、セキュリティ用万線のフィーチャ114を形作る。セキュリティ用万線のフィーチャ114は、万線のフィーチャが、印刷ワーク54の第1の領域54Aに印刷されるセキュリティ文書111、112、及び113の他のフィーチャよりも高解像度であることを確認するために、目視検査され得る。
【0172】
第4のデジタル・プリント・ヘッド12Dを使用して印刷する方法は、低解像度及び高解像度のノズル13a、13bを、基本的に別々のデジタル・プリント・ヘッドとして扱うことによって、別々に制御するステップを含み得る。たとえば、プリント・ヘッドの低解像度部分は、デジタル・プリント・ヘッドの高解像度部分の印刷命令とは別個の印刷命令を受信できる。しかし、同じデジタル・プリント・ヘッド上で2種類の相異なる解像度部分の使用を可能にすることによって、印刷ワーク54の相異なる領域間の、非常に高度な位置合せが保証され得る。
【0173】
上記の議論は、印刷命令を取得し、多重解像度、多色のセキュリティ文書を印刷するプロセスに焦点を当てている。実際には、セキュリティ文書のデザイナは、デジタル印刷機で印刷されるべき元画像をデザインし、次いで元画像は、デジタル印刷機上で実行するためのかかる印刷命令への変換が必要となろう。次に、
図10を参照して、方法、たとえば元画像を取得し、デジタル印刷機に向けた印刷命令を生成する、コンピュータで実施される方法について説明することにする。
【0174】
図10に示されるように、プロセスは、ステップS100での、所定の種類の複数の層を含む元画像の準備から始まる。デザイナは、多くの現場で、画像を印刷することになる印刷機の仕様をあまり考慮せずに印刷される画像をデザインするのに対して、セキュリティ上の目的での、本発明によるセキュリティ文書の印刷は通常、最初から最後まで安全なデジタル印刷機を考慮して実行されるであろう。したがって、
図10に示されるように、デジタル印刷機が4つのデジタル・プリント・ヘッドで構成され、それぞれが所定の相異なる色を有し、少なくともいくつかのプリント・ヘッドの相異なる所定の解像度で印刷する場合、元画像は、デジタル印刷機の特定の制約に合わせてデザインされる場合がある。デザイナは、具体的には、画素数が印刷DPIに印刷面積を掛けたものに正確に一致する元画像をデザインすることが望ましいであろう。たとえば、2400DPIの第1のデジタル・プリント・ヘッドで印刷される約15cm×6cm(6インチ×2.5インチ)の紙幣は、第1のデジタル・プリント・ヘッドをターゲットとする層が14400画素×6000画素(すなわち、それぞれ6×2400及び2.5×2400)、合計86400000画素の画像解像度を有する元画像を使用して、印刷されるであろう。この場合、紙幣に印刷される可能性のある各ドットは、元画像の対応する層の1画素に正確に対応する。これは元画像が通常生成される方法であり得るが、これは必須ではなく、元画像の層が、この1対1の関係を、画像解像度と印刷解像度との間に有していない場合がある。たとえば、デザインした後に、層をアップサンプリング又はダウンサンプリングできる。別法として、下記で説明するように、層は、対応するプリント・ヘッドの解像度にサンプリングされた、ベクトル画像コンテンツを有する場合がある。
【0175】
図10のデジタル印刷機は4つのヘッドを備え、第1のヘッドは、たとえば橙で、150DPIの解像度で動作する。第2のプリント・ヘッドは、たとえば緑で、600DPIの解像度で動作する。最後に、第3及び第4のデジタル・プリント・ヘッドは、たとえばシアン及びマゼンタで、1200DPIの解像度で動作する。セキュリティ文書のデザイナは、様々なデジタル・プリント・ヘッドの色及び解像度を知っており、したがってそれに応じて、セキュリティ文書の印刷画像をデザインできる。この場合、デザイナは、セキュリティ文書に印刷する、基本的に3枚の相異なる画像をデザインする。第1の画像は、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な橙でデザインされ、層L1及びL2によって形成される。第2の画像は、第2のプリント・ヘッドを使って印刷可能な緑でデザインされ、層L3及びL4によって形成される。最後に、層L5及びL6によって形成される多色画像は、第2、第3、及び第4のプリント・ヘッドを使った印刷用にデザインされており、第2から第3のプリント・ヘッドで緑、シアン、及びマゼンタで形成可能な、非標準の色域内でデザインされ得る。
【0176】
ステップS200において、様々な画像の層が、それぞれのプリント・ヘッドに割り当てられる。この実例では、デザイナは、特定のプリント・ヘッドを使って印刷するための層をデザインし、対応するプリント・ヘッドを識別する識別子を使って、各層にタグづけできる。したがって、コントローラは、層L1に関連づけられた識別子を読み取り、層L2を読み取って同じヘッドへの割当てを実行する前に、層L1を第1のプリント・ヘッドに割り当てることができる。層L3及びL4は、同様に、第2のプリント・ヘッドに向けて指示されているものとして識別できる。最後に、層L5及びL6は、第2、第3、及び第4のプリント・ヘッドが、一体になって印刷する多色画像として識別できる。
【0177】
層L1及びL2によって形成される第1の画像は、固定コンテンツ及び可変コンテンツを有する。この場合、層L1は、複数のセキュリティ文書のそれぞれにほぼ同一に印刷されることになる固定コンテンツを提示し、一方、L2は、好ましくは紙幣のシリアル番号などの唯一の識別子である、可変コンテンツを提示する。ステップS300において、固定コンテンツ及び可変コンテンツは、単一の画像の層に組み合わされる。層L3及びL4、並びにL5及びL6は、同様に、固定コンテンツ及び可変コンテンツを提示し、やはり、対応するステップS300でそれぞれ組み合わされる。
【0178】
第1の画像に戻ると、ステップS400において、ここで、必要なあらゆるリッピング及び/又は再サンプリングが、L1及びL2を組み合わせた結果得られる画像の層上で実行される。このステップでは、第1の画像ヘッドの解像度で、各画素が第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な液滴サイズに対応する強度レベルを有する、画像の層を生成するはずである。層L1及びL2は、150DPIの解像度で、印刷可能な強度レベル(すなわち液滴サイズ、この段階が必要ないかもしれない場合を考慮して)で、デザインされ得る。しかし別法として、画像の層は、ラスタ化を必要とするか、又は第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な解像度よりも高解像度であり、再サンプリングを必要とする場合がある、ベクトル画像コンテンツを有することがある。
【0179】
S400で、第1の画像に対するどんな処理も完了すると、結果として、第1のデジタル・プリント・ヘッドにとって適切な解像度及び強度レベルを有するラスタ画像となる。次いで、このラスタ画像は、ステップS700で、デジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令に変換され得る。
【0180】
層L3及びL4の組合せによって形成される第2の画像に目を向けると、第2の画像はやはり、S400でリッピング又は再サンプリング処理され、第2のプリント・ヘッドの解像度で、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷可能な液滴サイズに対応する強度レベルを有する、画像の層を生成できる。
【0181】
層L5及びL6の組合せによって形成される第3の画像は、ここで、処理する必要がある。ここでは、緑、シアン、及びマゼンタの色成分で印刷する必要のある多色画像であり、緑の印刷ワークは、シアン及びマゼンタの印刷ワークとは異なる解像度であろう。ステップS500では、多色、多重解像度のエラー拡散処理ステップが実行され、多色画像の層を、必要な解像度及び強度で3枚の別々の色成分画像に変換する。この処理は、
図11Aから
図14を参照して、下記でより詳細に説明することにする。
【0182】
ステップS500の結果、第2、第3、及び第4のプリント・ヘッドを使って印刷する、3枚の相異なる色成分画像が得られる。第2のプリント・ヘッドに向けた命令が作成され得る前に、第3の画像の色成分を、最初に層L3及びL4によって提示された第2の画像と組み合わせる必要がある。これは、ステップS600で実行され、第2のデジタル・プリント・ヘッドの解像度及び強度レベルで、単一のラスタ画像を出力する。
【0183】
ステップS600での処理に続いて、L3及びL4が元になって生まれた第2の画像と、L5及びL6による第3の画像の緑色成分との組合せを表すラスタ画像は、ステップS700で、第2のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令に変換され得る。同様に、それぞれが第3及び第4のデジタル・プリント・ヘッドに対応する解像度及び強度レベルのラスタ画像である、第3の画像のシアン及びマゼンタの色成分は、第3及び第4のデジタル・プリント・ヘッドに向けた印刷命令に変換され得る。
【0184】
次に、ステップS500で実行される多色、多重解像度のエラー拡散処理を、
図11Aから
図14を参照して説明することにする。
【0185】
図11Aは、相異なる解像度で複数のプリント・ヘッドをターゲットとする多色画像の層である、画像の層L7を示している。この場合の処理については、2色の相異なる色の、2種類の相異なる解像度の、2つの相異なるプリント・ヘッドに関して説明することにする。この実例の第1のデジタル・プリント・ヘッドは、横送り方向及び給紙方向の両方に600DPIで、赤インクで印刷するよう構成され得、一方第2のデジタル・プリント・ヘッドは、横送り方向及び給紙方向の両方に150DPIで、緑インクで印刷するよう構成される。
【0186】
図11Bは、画像層L7の複数の画素Pを示している。各画素は色の値、すなわち理想の色を有し、わずかに変化する多くの様々な色が、画像全体に含まれる場合がある。この場合、層L7は、600DPI、すなわち、第1のデジタル・プリント・ヘッドの解像度で生成されているが、他の実例では、画像は、600DPIへのリッピング又は再サンプリングを必要とする場合がある。
【0187】
画像の層L7を、2種類の相異なる解像度で2色の相異なる色成分に変換する処理は、プリント・ヘッドの解像度、各プリント・ヘッドが使用する強度レベルの数値、及び各プリント・ヘッドで使用されるべきインクの色に関する情報を使用する。第1及び第2のプリント・ヘッドを使って印刷可能な色から得られる、すべての可能な出力画素の色のパレット(すなわち、リスト)、すなわち「フル・カラーのパレット」が生成され、パレットの各エントリは、出力媒体上のインクで生成されることになる色、色を生成するために出力インクごとに使用可能な強度レベル(0、すなわちインクなし、から最大値までの間で、対応するプリント・ヘッドが送達可能な液滴サイズごとに様々な強度値を有する、強度レベル)の関数である。パレットの各エントリは、単一のインク又は(重ね刷りされる)インクの組合せによって生成され得る。(重ね刷りされる)インクの組合せを使用する、そうしたエントリの場合、印刷される画素の色は、実験的に決定できるか、又はソフトウェア・アルゴリズムを使用して予測できる。
【0188】
処理は、2つのデジタル・プリント・ヘッドのより高い解像度、すなわち600DPIの画像の層L7から始まる。画素ごとに、理想の色が識別され、「フル・カラーのパレット」で使用可能な最も近い色が選択される。この使用可能な最も近い色、すなわちターゲット色は、第1のデジタル・プリント・ヘッドの液滴サイズに対応する、第1のインクの関連する強度レベル、及び第2のデジタル・プリント・ヘッドの液滴サイズに対応する、第2のインクの関連する強度レベルを有することになる。本実例では、第1のデジタル・プリント・ヘッドは、単一の液滴サイズしか印刷できないため、利用可能な強度は0及び1である。第2のデジタル・プリント・ヘッドには3種類の相異なる液滴サイズがあるため、強度は0、1、2、及び3である。第2のデジタル・プリント・ヘッドで印刷可能な液滴サイズは、150DPIの解像度で印刷されるが、画像の層L7は600DPIで処理されていることに留意されたい。この解像度の違いは、600DPIの各画素が150DPIの画素の1/16を表すことを意味するので、600DPIの0、1、2、及び3の強度は、150DPIで対応する強度の1/16に相当する強度として処理される。
【0189】
ターゲット色が識別されると、第1の色成分画像R7は、その画素の第1のインクの強度値で更新され、第2の色成分画像G7は、その画素の第2のインクの強度値で更新される。ここで、第2の色成分画像G7が600DPIで生成されていることに気づくであろう。すなわち、画像の層L7の各画素は、第2の色成分画像G7の画素に1対1の関係でマッピングされる。たとえば、
図11Bは、画像の層L7の左上の画素(P
0とラベルづけされた)には、実質的に色が与えられていないことを示している。その結果、
図12Aに示される第1の色成分画像R7の左上の画素(R
0とラベルづけされた)には、強度値0が割り当てられ、
図13Aに示される第2の色成分画像G7の左上の画素(G
0とラベルづけされた)には、強度値0が割り当てられている。
図11BでP
1とラベルづけされた画素は、第1のデジタル・プリント・ヘッドのインクの強度レベル1、及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのインクの強度レベル0で生成される、ターゲット色に一致する色をまさに有する。その結果、
図12Aに示される第1の色成分画像R7の対応する画素R
1には、強度値1が割り当てられ、
図13Aに示される第2の色成分画像G7の対応する画素G
1には、強度値0が割り当てられる。最後の実例として、
図11BでP
2とラベルづけされた画素は、第1のデジタル・プリント・ヘッドのインクの強度レベル1、及び第2のデジタル・プリント・ヘッドのインクの強度レベル2で生成される、ターゲット色に一致する色を有する。すなわち、この色は、対応する強度レベルで両方のインクを重ね刷りすることにより、最も良好に複製される。その結果、
図12Aに示される第1の色成分画像R7の対応する画素R
2には、強度値1が割り当てられ、
図13Aに示される第2の色成分画像G7の対応する画素G
2には、強度値2が割り当てられている。
【0190】
各画素が処理されると、エラーも評価され、エラーは、理想の色と、使用可能なパレットの色から選択されたターゲット色との差である。このエラーは、理想の色を変更して前の画素のエラーを補正するために、画像の層L7の後の画素に分散される。エラーは、たとえば、処理された画素の右の画素及び/又は処理された画素の下の画素に分散され得る。
【0191】
各画素が処理されると、結果的に、600DPIの解像度の第1の色成分画像R7、及びやはり600DPIの解像度の第2の色成分画像G7が得られることになる。第1の色成分画像は、第1のデジタル・プリント・ヘッドの解像度であり、この場合0は印刷されるドットがないことに対応し、1はサイズS
1の印刷されるドットに対応する、第1のプリント・ヘッドによって形成可能な強度を有するので、第1のデジタル・プリント・ヘッド向けの印刷命令に直接変換するのに好適であろう。
図12Bは、第1のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷されることになる印刷ワーク57Rを示し、またワーク57Rと交差する、可能なドット位置(すなわち、格子点)のグリッド157Rも示している。
【0192】
ただし、第2の色成分画像G7は、第2のデジタル・プリント・ヘッド(150DPIで印刷する)を使って印刷可能な解像度よりも高解像度である。したがって、第2の色成分画像に、ダウンサンプリング処理を施さなければならない。
図13Bは、ダウンサンプリングされた第2の色成分画像G7’を示している。この場合、第1の色成分画像G7をダウンサンプリングするために、画素は4×4の領域にグループ化される。第1の色成分画像G7の左上隅の実例を使用すると、画素の4×4領域G
R1は、0から3までの範囲の強度が混在する。この領域G
R1全体の強度が平均化され、その結果、平均強度1が得られる(G
R1のすべての画素の合計強度は16であり、これはこの領域に含まれる16画素全体で平均化される)。したがって、ダウンサンプリングされた第2の色成分画像G7’の第1の画素G
R1’には、強度1が割り当てられる。この処理は、第2の色成分画像G7の画素の4×4領域ごとに繰り返され、150DPIの必要な解像度で、0から3までの範囲の必要な強度で完全にダウンサンプリングされた、第2の色成分画像G7’を生成する。次いで、ダウンサンプリングされた第2の色成分画像G7’は、第2のデジタル・プリント・ヘッドの解像度であり、この場合強度0から3はそれぞれ、印刷されるドットなし及びドット・サイズS
1からS
3に対応する、第2のプリント・ヘッドを使って提供可能な強度を有するので、第2のデジタル・プリント・ヘッド向けの印刷命令に変換するのに好適であろう。
図13Cは、第2のデジタル・プリント・ヘッドを使って印刷されることになる印刷ワーク57Gを示し、またワーク57Rと交差する、可能なドット位置(すなわち、格子点)のグリッド157Gも示している。
【0193】
次いで、これらの印刷ワーク57R(層L7の赤色成分)及び57G(層L7の緑色成分)が基材に印刷され、最初に層L7で提示される多色画像を再現する、印刷画像57を作る。この印刷画像を検査し、この印刷画像が、2種類の相異なる解像度で、相異なるドット・サイズの組を用いたワークの組合せによって形成されていることを検証できる。この印刷された文書を従来のデジタル・プリンタで偽造しようとすると、
図14に示される解像度及びドット・サイズが正確に複製されないであろう。これは、偽造が簡単に検出され得ることを意味する。
【0194】
多色画像を、2種類の相異なる解像度の2種類の相異なるワークに変換する上記の方法は、600DPIの、より高い解像度で第2の色成分画像を生成した後に実行される、ダウンサンプリング処理するステップを含んでいた。しかし、この方法の他の変形形態も同様に実行可能であろう。たとえば、第1の色成分画像は、上記のように、多色画像の層L7を150DPIにダウンサンプリングし、再度処理を実行することによって、第2の色成分画像を生成する前に生成できるが、ここでは、第2の解像度で、第2の色成分画像を150DPIで直接生成する。
【0195】
図20A及び
図20Bは、印刷される要素が相異なる厚さを有するセキュリティ文書を印刷する、デジタル印刷機を示している。
図18Aに示されるデジタル印刷機は、
図1Aに関連して上記で説明されたデジタル印刷機とほぼ同じであるが、プリント・バー保持器10aから10j内に挿入されるプリント・バーが異なる。
【0196】
この実施例では、第1のデジタル・プリント・バー保持器10aは、3.5plでの液滴サイズで、600DPIの解像度で印刷するよう構成された、第1のデジタル・プリント・バー11aを受容する。このデジタル・プリント・バー11aは、光学特性の第1の組を有するインク、この場合は、橙のインクで印刷するよう構成され、該インクは、前述の隠れた光学特性などの、他の光学的特質も有し得る。第2のデジタル・プリント・バー保持器10bは、第2のデジタル・プリント・バー11bを受容する。この場合、第2のデジタル・プリント・バー10bは、第1のデジタル・プリント・バー10aと同じ解像度及び同じ液滴サイズで印刷するよう構成され、同じ種類のデジタル・プリント・バーでさえあり得る。この場合、第2のデジタル・プリント・バー11bは、相異なる光学特性の組を有する第2のインク、この場合は、青のインクで印刷するよう構成されるが、該インクはやはり、隠れた光学特性などの、他の光学的特質を有し得る。
【0197】
第1及び第2のプリント・バーから間隔をあけて配置され、最終のデジタル・プリント・バー保持器10j内に位置する、第3のデジタル・プリント・バー11cがある。このデジタル・プリント・バー11cは、第2のデジタル・プリント・バー11bと同一であり、同じインクで印刷するよう構成されているが、下記で説明されるように、たとえば、相異なる液滴サイズが必要な場合、デジタル・プリント・ヘッドが異なり得る。第3のデジタル・プリント・バー11cは、第2のデジタル・プリント・バー11bから、デジタル印刷機のほぼ全長だけ間隔をあけて配置され、その結果、第2のデジタル・プリント・バー11bを使って印刷されるドットは、基材が第3のデジタル・プリント・バー11cに達するときまでに、少なくとも部分的に乾燥する。これの代替手段として、第2のデジタル・プリント・バーを使って印刷されるインクは、硬化性インク、たとえばUV硬化性インクであってもよく、硬化機構、たとえば、UV光源が、第2のプリント・バーを使って印刷されるインクを少なくとも部分的に硬化させるために、第2のデジタル・プリント・バーと第3のデジタル・プリント・バーとの間に備えられ得る。たとえば
図21Cに示され、下記で論じられる要素を作製するために、第4のデジタル・バー・ヘッドが必要な場合、第4のデジタル・バー・ヘッドは、インクが少なくとも部分的に乾燥することを可能にするために、第3のデジタル・プリント・バー11cから間隔をあけて配置され得るか、又は第3のデジタル・プリント・バーを使って印刷されるインクが硬化可能であり得、且つ硬化機構が第3のデジタル・プリント・バーと第4のデジタル・プリント・バーとの間に挿置される。
【0198】
図20Bに示されるように、このデジタル印刷機は、相異なる厚さの、しかし同様の横方向の寸法である、印刷される要素を有するセキュリティ文書を作製するために使用され得る。第1のデジタル・プリント・バー11aは、基材100上に第1の印刷ワーク51を作るドットを印刷する。基材は、第2のデジタル・プリント・バー11bに到達するまで、デジタル印刷機を通って移動される。次いで、第2のデジタル・プリント・バー11bは、第2の印刷ワーク52の一部を作るドットを印刷する。詳細には、印刷されるドットは、第2の印刷ワーク52内の要素のそれぞれの、第1の層52aを作る。基材は、第3のデジタル・プリント・バー11cに到達するまでデジタル印刷機を通ってさらに移動され、到達するときまでに、ドットの両方の組は、少なくとも部分的に乾燥している。次いで、第3のデジタル・プリント・バーは、ドットの第2の組を、第2の印刷ワーク52内の要素のそれぞれの第1の層52aを作るドットの第1の組、すなわち、第2のデジタル・プリント・バー11bを使って印刷されたドットの上に印刷する。第3のデジタル・プリント・ヘッド11cを使って印刷される各ドットは、第2のワーク52の1つの要素の第1の層52aを作る、対応するドットの上で受け取られ、第2のワーク52の印刷される要素の第2の層52bを作る。この印刷されるドットは、印刷される要素の横方向の寸法に著しい影響を与えることなく、第2のワーク52の要素の高さを増加させる。
【0199】
図21Aから
図21Dは、相異なる高さの印刷されるドットが作られ得る、4つの相異なる手法を示している。
【0200】
図21Aは、第1のデジタル印刷されるワーク51の要素を示し、第2のデジタル印刷されるワーク52の要素と隣り合っている。この実施例では、第1のデジタル印刷されるワーク51の要素は、第1の材料で印刷され、第2のワーク52の要素は、より高い粘度及び表面張力を有する第2の材料で印刷されている。したがって、第2のワーク52の要素は、基材100に衝突するときに遠くまで広がることはなく、したがって、より厚い厚さを保持する。
【0201】
図21Bは、今度は同じ材料の第1及び第2の層52a、52bで作られる第2のデジタル印刷されるワーク52の要素と隣り合う、
図21Aに示されるものと同一である、第1のデジタル印刷されるワーク51の要素を示す。このドットは、同じサイズの2つのドットが重ねて印刷され、第1及び第2の層を作るので、
図20A及び
図20Bに関連して上記で説明された印刷機を使用して生成できる。
【0202】
図21Cは、第2のワーク52の別の相異なる種類のデジタル印刷される要素と隣り合う、第1のデジタル印刷されるワーク51の要素をやはり示している。この場合、第2のワーク52の要素は、3つの層52a、52b、52cが重ねて印刷されることにより、作られている。これらの層は、典型的には、3つの連続するプリント・ヘッドを使って印刷されることになり、プリント・ヘッドは、重ね刷りする前の、ドットが乾燥するまでの時間を取っておくために、デジタル印刷機に沿って互いに間隔をあけて配置され得る。以前の実例では、第1の層及び第2の層を作るドットは同じ液滴サイズで印刷され、ほぼ同じ横方向の寸法を有していたが、この実例では、層ごとに使用される液滴は、前の層よりも連続的に小さくなっている。すなわち、第1の層52aを形成する第1のドットの上に第2のドットとして印刷される第2の層52bは、該第1のドットよりも小さい液滴サイズで印刷される。したがって、この第2の層52bは、第1の層52aよりも横方向の寸法が小さい。第3の層52cは、第1及び第2のドットのいずれよりも小さい液滴サイズで、第1及び第2の層52a、52bを形作る第1及び第2のドットの上に、第3のドットとして印刷される。したがって、この第3の層52cは、第1及び第2の層のいずれよりも横方向の寸法が小さい。これは、第2のワーク52の各要素に、効率的にピラミッド形状をもたらす。
【0203】
最後に、
図21Dは、第2のワーク52の別の相異なる種類のデジタル印刷される要素と隣り合う、第1のデジタル印刷されるワーク51の要素をやはり示している。この実例では、第2のデジタル印刷されるワーク52の要素は、同じ材料の第1及び第2の層52a、52bで作られている。ただし、第1のドットの上に印刷される第2のドットは、該第1のドットよりも大きい液滴サイズで印刷される。したがって、この第2のドットは第1のドットを包み込み、高さがより高く、横方向の寸法がわずかにより大きいドットを形成する。これにより、第2のワーク52の要素が、横方向の寸法を著しくより大きくすることなく、第1のワーク51の要素よりも著しく高い高さを有することが可能となるばかりでなく、第1の層51aと第2の層52bとの間のどんな位置ずれも認識不可能となる。この種類の印刷される要素は、
図20Aに示されるようなデジタル・プレスを使用して印刷でき、第3のデジタル・プリント・バー11cは、第2のプリント・バーの液滴よりわずかに大きい液滴を印刷するよう構成される。たとえば、第2のプリント・バーは、3.5plでの液滴サイズで印刷でき、一方第3のプリント・バーは、4.5plでの液滴サイズで印刷する。
【国際調査報告】