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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】バイパス蒸気導入部
(51)【国際特許分類】
   F28B 9/02 20060101AFI20220106BHJP
   F28B 1/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F28B9/02
F28B1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521889
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(85)【翻訳文提出日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2019066192
(87)【国際公開番号】W WO2020007609
(87)【国際公開日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】18181414.6
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ムッシュ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アウゲ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ミヌス,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ペンクナー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェント,シュテッフェン
(57)【要約】
本発明は流れを均等化するための装置(5)に関し、この装置は流れを制限するために形成されているハウジング(8)を備えており、ハウジング(8)は複数の孔(9)を有し、これらの孔を通って流れがジェット流としてハウジング(8)の外側の空間内へ流れ、前記複数の孔(9)の間隔が、2つの隣り合う孔(9)から出る流れの合流が起こりえないような間隔である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギ蒸気の流れを復水器に導入するためのバイパス蒸気系であって、該復水器は流れを均等化するための装置(5)を含み、該装置(5)は流れを制限するために形成されているハウジング(8)を有し、該ハウジング(8)は複数の孔(9)を有し、これらの孔を通って前記流れがジェット流として前記ハウジング(8)の外側の空間内へ流れる、バイパス蒸気系において、
前記複数の孔(9)の間隔Dが、前記ハウジング(8)からの距離Aでは2つの隣り合う孔(9)から出るジェット流の合流が生じないような間隔であり、D=Aであり、2つの隣り合う孔の中心点の間隔Dが少なくともD=50mmである、
ことを特徴とするバイパス蒸気系。
【請求項2】
前記装置(5)が多孔バスケット(6)である、請求項1に記載の装置(5)。
【請求項3】
前記装置(5)がダンプチューブ(10)である、請求項1に記載の装置(5)。
【請求項4】
前記複数の孔(9)が、円形断面とは異なる孔として形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置(5)。
【請求項5】
孔の断面積に対する孔の周囲長の比が最大化されている、請求項4に記載の装置(5)。
【請求項6】
前記孔(9)がクローバの葉のような形状である、請求項4に記載の装置(5)。
【請求項7】
前記複数の孔(9)がラバールノズルの形態で形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置(5)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(5)を有する復水器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギ蒸気の流れを復水器に導入するためのバイパス蒸気系に関し、この復水器は流れを均等化するための装置を備えており、この装置は流れを制限するために形成されたハウジングを有し、このハウジングは複数の孔を有し、これらの孔を通って流れは、このハウジングの外側の空間内でジェット流として流れる。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン設備では、蒸気はいわゆる蒸気発生器内で発生され、パイプラインを介して蒸気タービンに供給される。蒸気の熱エネルギは蒸気タービン内で機械的な回転エネルギへ変換される。この時、蒸気の圧力および温度は低下する。蒸気が蒸気タービンを通って流れた後、この蒸気は比較的低い温度および低い圧力で復水器内へ流入し、そこで、この蒸気は冷たい復水器パイプラインにて凝縮され、再び水に変換される。
【0003】
例えばバイパス駆動のような運転が知られており、そこでは高エネルギ蒸気は直接復水器内へ導かれる。これは、高温および高圧により特徴付けられる高エネルギ蒸気が直接復水器内へ流入することを意味する。従って、復水器で損傷を発生させないための特別な予防措置が必要である。復水器内では、ジェット流の広がりにも繋がる蒸気の後膨張により、バイパス蒸気導入部の後方で、超音速の、または、高低差によっては局所的な極超音速の、流れ場が生じることがある。蒸気の速度は復水器内およびバイパス蒸気導入部内の圧力に依存する。復水器とバイパス蒸気導入部内の圧力の圧力比が大きいほど、最大流速は速くなる。
【0004】
バイパス運転では、基本的に3つの基準が満たされなければならず、それらを用いて、より安全な運転が可能となり、これは更に可能な限り僅かな損傷を導く。第1には、蒸気タービンのロータに蒸気を能動的に流すことなくまたはロータを駆動することなく、蒸気が復水器に供給される、という基準である。第2には、バイパス蒸気導入部が許容できないほど高い蒸気速度を与えることによっては復水器の冷却パイプを損傷させないように、バイパス蒸気導入部は形成されなければならない。最後に、次の基準を守るべきである。すなわち、蒸気は復水器に導入される前に散水によって冷却され、その水は液滴または湿り蒸気の形態で存在し得るので、液滴衝突により復水器内またはタービン内でエロージョン損傷が生じないことも、保証されなければならない。
【0005】
こうして、前述の3つの基準は、以下のような蒸気導入部の設計を導く、すなわち、バイパス蒸気を所与の復水器圧力において可能な限り低い流速で制御された流れ案内下で復水器に供給し、かつ、タービンと復水器との統合性に悪影響を及ぼさない、蒸気導入部の設計を導く。
【0006】
それゆえ、バイパス蒸気を多孔バスケットを通して流すことによって復水器に供給することが知られている。この多孔バスケットは、バイパス蒸気が流れる複数の個々の孔を有するハウジングによって、特徴付けられている。蒸気はその場合多孔バスケットの後方で復水器ドーム部の自由空間内に流れ込み、この復水器ドーム部には、しばしば、異なる幾何学的形状の補強要素が設けられている。
【0007】
多孔バスケットの代替物がいわゆる「ダンプチューブ(Dumptube)」である。これらもバイパス蒸気を復水器に導くように形成されている。ダンプチューブは、パイプに似たハウジングによって、特徴付けられており、このハウジングも同様にバイパス蒸気が復水器内に流入する複数の孔を有している。
【0008】
しかしながら、両方の構成(多孔バスケットおよびダンプチューブ)では、場合によって生じ得る復水器配管およびタービンブレードでの損傷を防止するために、蒸気が復水管の方向にもタービンの方向にも直接流れないことが保証されなければならない。
【0009】
1つの問題はエロージョンである。気体動力学的に引き起こされるジェット流突発に基づいて広い範囲が超音速流と共に発生する可能性があるので、復水器にてエロージョンによって引き起こされる損傷を完全に排除することは常に可能なわけではない。エロージョンは、水滴が高速に加速され、その後内蔵部品に衝突することによって、発生する。この損傷は耐エロージョン性材料の使用によって最小限に抑えることができるが、これは非常に高価であり、これを使用した場合、点検の場合に後にその更新をしなければならない可能性がある。
【0010】
多孔バスケットおよびダンプチューブの従来の構成は、後膨張が生じるようなものであり、この後膨張において、絞り孔と称され得る複数の個々の孔からのジェット流の合流が生じ、その結果、潜在的に損傷の危険が存在する広い連続領域が超音速流と共に生じる。このジェット流の消散は基本的にジェット流の縁部でのみ生じるので、この場合、ジェット流の侵入深さも非常に大きい。多孔バスケットの場合、この領域は反対側の復水器壁まで達し得る。本発明はこの救済策を講じるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、エロージョンの危険性が最小化されている装置を有するバイパス蒸気系を提供することにある。
【0012】
これは複数の孔を最適に配置することによって行われ、それに伴い個々のジェット流の合流を回避することが可能である。
【0013】
その結果、ビームエネルギが消散され得る領域が何倍も拡大され、またしたがって、侵入深さが何倍も減少される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
それゆえこの課題は、高エネルギ蒸気の流れを復水器内へ導入するためのバイパス蒸気系によって解決され、この復水器は流れを均等化するための装置を含み、この装置は流れを制限するために形成されているハウジングを有し、このハウジングは複数の孔を有し、これらの孔を通って前記の流れがジェット流としてこのハウジングの外側の空間内へ流れ、これらの孔の間隔Dは、ハウジングからの距離Aでは2つの隣り合う孔から出るジェット流が合流しないような間隔であり、ここではD=Aであり、2つの隣り合う孔の中心点の間の間隔Dは少なくともD=50mmである。
【0015】
この装置は、1つのケースでは多孔バスケットであり、別のケースではダンプチューブである。2つの隣り合う孔の中心点の間の間隔Dは少なくとも50mmである。これは、経験的に決定された値でありまた最適な値である。この50mmの値では、個々の孔の間の間隔は、どの運転点でもジェット流の合流が生じ得ないような孔パターンである。
【0016】
これにより、エロージョンの危険性が最小限に抑えられる。
【0017】
有利なさらなる展開は従属請求項に記載されている。
【0018】
すなわち、第1の有利な発展形態は、複数の孔が円形断面とは異なる孔として形成されていることによって与えられる。この場合に、孔の周囲長の孔の断面積に対する比が最大化されるとすると、これによってジェット流の縁部も最大になる。
【0019】
有利な1つの発展形態では、この孔はクローバの葉の形に形成されていてもよい。そのような形状では孔の周囲長の孔の断面積に対する比が最大であり、さらなる改善を導く。
【0020】
さらなる有利な展開形態においては、本発明に従い、これらの孔をラバールノズルの形に形成することが提案される。これにより、孔の後方での超音速への膨張が、非制御下或いは非ガイド下では生じない、という効果が得られる。ラバールノズルでは、復水器圧力への制御された膨張が生じる。それによりジェット流の突発が防止され得て、またそれによりジェット流の最大直径は減少され得る。それにより、孔と孔の間で最低限保持されるべき間隔は縮められ得て、また従って、全体的なスペース要求も減少され得る。
【0021】
本発明の上述の特性、特徴、および利点、ならびに、それらがどのように達成されるかの方法は、図面との関連でより詳細に説明される実施例の以下の説明との関連で、より明確かつより明瞭に理解できるであろう。
【0022】
同じ構成部品または同じ機能を有する構成部品には、同じ参照符号が付されている。
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。これらの図面は実施例を決定的に示すものではなく、むしろ、説明に有用な場合には、模式的および/またはわずかに歪んだ形で表されている。これらの図面で直接知ることができる教示の補足に関しては、関連する先行技術を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】復水器の一部の斜視図を示す。
図2図1の一部の拡大図を示す。
図3】本装置の代替的な実施形態の概略図を示す。
図4】本発明に従う装置の拡大図を示す。
図5】本装置の一部の斜視図を示す。
図6】本装置の一部の代替的な実施形態の斜視図を示す。
図7】本装置の一部の断面図を示す。
図8】本装置の一部の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は復水器1を示す。復水器1は復水器ハウジング2および複数の復水器管3を含む。これらの復水器冷却管3を通って冷媒が流れる。復水器冷却管3の表面で、低圧タービンセクションから復水器ハウジング2内に供給された蒸気は、水へと凝縮する。低圧タービンセクションから復水器1への蒸気の供給は図1では詳細には示されていない。
【0026】
バイパス運転では、バイパス蒸気系に関して高エネルギの蒸気がバイパスライン4を介して復水器ハウジング2を通って装置5内へ流れ、この場合はこの装置は多孔バスケット6である。復水器1の内部には複数の補強要素7が配置されている。装置5はハウジング8を含み、当該ハウジング8はバイパスライン4からの流れを制限するために形成されている。
【0027】
ハウジング8は複数の孔9を有する。装置5およびハウジング8は以下のように形成されている、すなわち、バイパスライン4からの蒸気がこれらの孔9を通ってのみ復水器内部空間内へ流入することができるように、かつ、ハウジング8と復水器ハウジング2の間で蒸気が漏れることができないように、形成されている。
【0028】
図3は装置5の代替的な実施形態を示す。図3に図示されている実施形態では、装置5はダンプチューブ10として形成されている。このダンプチューブ10は同様にハウジング8を有し、そこに複数の孔9が配置されている。
【0029】
図6はこの装置の一部の拡大図を示しており、これは多孔バスケット6またはダンプチューブ10として構成され得る。図6にはハウジング8の一部が示されている。さらに、複数の孔9も図示されている。2つの隣り合う孔9の孔中心13は互いに間隔11を置いている。この間隔11は、孔9を通って流れるジェット流が互いに合流しないような間隔である。それゆえ、この間隔11は少なくとも50mmとなることが見込まれる。
【0030】
図5は孔9aの代替的な実施形態を示す。孔9aはクローバの葉として形成されている。この場合、孔の周囲長と孔の断面積の比が最適である。
【0031】
図7は孔9の1つの実施形態を示す。その際孔9はラバールノズルとして形成されている。流れ12は左から右に流れる。
【0032】
図8は隣り合う2つの孔9の間の間隔11の図を示す。孔中心13は十字で印が付されている。見易くするために、4つの孔中心だけに符号13が付されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギ蒸気の流れを復水器に導入するためのバイパス蒸気系用の、流れを均等化するための装置(5)であって、該装置(5)は流れを制限するために形成されているハウジング(8)を有し、該ハウジング(8)は複数の孔(9)を有し、これらの孔を通って前記流れがジェット流として前記ハウジング(8)の外側の空間内へ流れる、装置(5)において、
前記複数の孔(9)の間隔Dが、前記ハウジング(8)からの距離Aでは2つの隣り合う孔(9)から出るジェット流の合流が生じないような間隔であり、D=Aであり、2つの隣り合う孔の中心点の間隔Dが少なくともD=50mmである、
ことを特徴とする装置(5)
【請求項2】
前記装置(5)が多孔バスケット(6)である、請求項1に記載の装置(5)。
【請求項3】
前記装置(5)がダンプチューブ(10)である、請求項1に記載の装置(5)。
【請求項4】
前記複数の孔(9)が、円形断面とは異なる孔として形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置(5)。
【請求項5】
孔の断面積に対する孔の周囲長の比が最大化されている、請求項4に記載の装置(5)。
【請求項6】
前記孔(9)がクローバの葉のような形状である、請求項4に記載の装置(5)。
【請求項7】
前記複数の孔(9)がラバールノズルの形態で形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置(5)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(5)を有する復水器。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(5)を有するバイパス蒸気系。
【国際調査報告】