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特表2022-505575統合衝突回避システムのためのリンク16データリンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】統合衝突回避システムのためのリンク16データリンク
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20220106BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20220106BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20220106BHJP
   H04W 4/90 20180101ALI20220106BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H04W72/04 131
H04W92/18
H04W4/42
H04W4/90
H04L12/28 200Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521963
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(85)【翻訳文提出日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 US2019056177
(87)【国際公開番号】W WO2020086320
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】16/166,870
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519100985
【氏名又は名称】ビーエイイー・システムズ・インフォメーション・アンド・エレクトロニック・システムズ・インテグレイション・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チョンゴウシアン、ジョン・エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ラング、ジェームズ・ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
5K033
5K067
【Fターム(参考)】
5K033BA08
5K033CA12
5K033DA19
5K067AA35
5K067BB06
5K067CC04
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE25
(57)【要約】
リンク16ネットワークによってリンクされた航空機間の衝突を回避する自動ICAS準拠システムおよび方法は、10海里未満離れた航空機間にICASデータリンクを確立することを含む。ICASデータリンクモジュールによって生成および処理されたデータリンクメッセージは、専用ICASトランシーバよりもむしろリンク16受信機によって送信および受信される。データリンクメッセージは、リンク16タイムスロットの伝搬遅延部分内に埋め込まれ、それぞれ20Hzまでのデータレートで10機までの近くの航空機間で交換される。各リンク16タイムスロットはリンク16メッセージおよび2つの768ビットICASデータリンクメッセージを含むことができるので、従来のリンク16通信は妨げられない。データリンクメッセージはソフトウェア暗号化することができる。リンク16メッセージは、より少ないプリアンブルパルスを含み、および/またはSTN情報を除外する、拡張されたスループットのリンク16プロトコルを使用してエンコードされることができる。埋め込まれたデータリンクメッセージは、MIDS-JTRS CMN4によって1ワットで送信することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護された航空機と周囲の航空機との間の衝突を回避する方法であって、
前記保護された航空機および前記周囲の航空機のそれぞれに、リンク16トランシーバと、前記リンク16トランシーバとデータ通信する衝突回避データリンクモジュールとを提供することと、
前記保護された航空機が前記周囲の航空機のすべてとリンク16メッセージを交換することを可能にするリンク16ネットワークを確立するように前記リンク16トランシーバを使用し、前記リンク16メッセージはリンク16タイムスロットで送信されることと、
前記保護された航空機に対する前記周囲の航空機のポジションを前記保護された航空機によって決定することと、
前記保護された航空機から10海里内に位置付けられている前記周囲の航空機のすべてを近くの航空機として指定することと、
前記保護された航空機と前記近くの航空機のうちの少なくとも1つとの間に衝突回避データリンクを確立することと、
前記衝突回避データリンク上でデータリンクメッセージを交換し、前記データリンクメッセージは、前記衝突回避データリンクモジュールによって生成および処理され、前記リンク16トランシーバによって送信および受信されることと、
前記交換されたデータリンクメッセージに少なくとも部分的に基づいて、潜在的な衝突脅威を検出および回避することと、を含み、
前記リンク16トランシーバは、前記リンク16タイムスロットの伝搬遅延部分の間に前記データリンクメッセージを送信することによって前記データリンクメッセージを送信および受信し、前記リンク16タイムスロットは、そうでなければ、前記リンク16タイムスロットの間に送信される前記リンク16メッセージの伝搬遅延のために予約され、その伝搬遅延部分に埋め込まれたデータリンクメッセージを含む各リンク16タイムスロットもまた、リンク16メッセージを含むことができる、方法。
【請求項2】
前記保護された航空機は、前記リンク16ネットワークを通して前記周囲の航空機から受信したPPLI情報に少なくとも部分的に基づいて、前記周囲の航空機のポジションを決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衝突回避データリンクは、少なくとも10機の近くの航空機を含むことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つのデータリンクメッセージが、前記リンク16タイムスロットの前記伝搬遅延部分内に埋め込まれることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リンク16トランシーバは、少なくとも200Hzのレートで埋め込まれたデータリンクメッセージを交換することができ、それによって、前記保護された航空機が、近くの航空機当たり20Hzのレートで前記衝突回避データリンク上で10機の近くの航空機とデータリンクメッセージを交換することを可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記データリンクメッセージは、それぞれ長さが少なくとも768ビットである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データリンクメッセージが埋め込まれるリンク16タイムスロットは、せいぜい1ワットの電力レベルで前記リンク16トランシーバによって送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記保護された航空機からの前記近くの航空機の相対距離に少なくとも部分的にしたがって、前記近くの航空機を、前記保護された航空機の前記リンク16トランシーバによって優先順位を付けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記近くの航空機の前記優先順位付けは、前記近くの航空機が前記保護された航空機と共に適切なポジションで接近している推定レートにさらにしたがう、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
10機より多くの近くの航空機がある場合、前記衝突回避データリンクは、前記保護された航空機と、最高優先度を有する前記近くの航空機のうち10機との間で確立される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記周囲の航空機にデータリンクメッセージ送信機会を割り当てるように、前記リンク16ネットワークを介して協働する前記保護された航空機および前記周囲の航空機をさらに備え、それによって、前記周囲の航空機が、それらのポジションが時間とともに変化するにつれて、前記衝突回避データリンクに参加し、そこから離脱することを可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
リンク16メッセージおよびデータリンクメッセージの両方を含むリンク16タイムスロットについて、前記リンク16メッセージは、データリンクメッセージを含まないタイムスロットで送信されるリンク16メッセージ中に含まれるよりも少ないプリアンブルパルスを含む、修正された、拡張スループットリンク16プロトコルを使用してエンコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ソーストラック番号(「STN」)情報は、前記拡張スループットリンク16プロトコルを使用してエンコードされる前記リンク16メッセージ中に含まれない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記データリンクメッセージは、ソフトウェアレベルの暗号化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
リンク16メッセージを含まないが、代わりにデータリンクメッセージで満たされている追加のデータリンクメッセージをリンク16タイムスロットで送信し、それによって、前記衝突回避データリンク上でのデータリンクメッセージ交換のレートを増加させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
データリンクメッセージで満たされた前記リンク16のタイムスロットのそれぞれは、少なくとも7つのデータリンクメッセージを含むことができる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
保護された航空機が周囲の航空機との衝突を回避することを可能にする衝突回避システムであって、
前記周囲の航空機は互換性のある装置を搭載して動作しており、
前記システムは、
リンク16トランシーバと、
前記リンク16トランシーバとデータ通信する衝突回避データリンクモジュールとを備え、
前記リンク16トランシーバは、前記周囲の航空機とリンク16メッセージを交換することが可能であり、それにより、前記周囲の航空機のすべてとリンク16ネットワークを確立し、前記リンク16メッセージはリンク16タイムスロット中に含まれ、
前記リンク16メッセージは、前記交換したリンク16メッセージに基づいて、前記保護された航空機に対する前記周囲の航空機のポジションを決定することが可能であり、それによって、前記保護された航空機から10海里内に位置付けられているすべての周囲の航空機を近くの航空機として指定し、
前記リンク16トランシーバおよびICASデータリンクは、前記保護された航空機と前記近くの航空機のうちの少なくとも1つとを含む衝突回避データリンクを確立することが可能であり、それによって、前記保護された航空機は、前記衝突回避データリンク上で前記少なくとも1つの近くの航空機とデータリンクメッセージを交換することが可能であり、前記データリンクメッセージは、前記衝突回避データリンクモジュールによって生成および処理され、前記リンク16トランシーバによって送信および受信され、
前記衝突回避データリンクモジュールは、前記交換されたデータリンクメッセージに少なくとも部分的に基づいて、潜在的な衝突脅威を検出および回避することが可能であり、
前記リンク16トランシーバは、前記リンク16タイムスロットの伝搬遅延部分の間に前記データリンクメッセージを送信および受信することが可能であり、前記リンク16タイムスロットは、そうでなければ、前記リンク16タイムスロット内に含まれる前記リンク16メッセージの伝搬遅延のために予約され、その伝搬遅延部分に埋め込まれたデータリンクメッセージを含む各リンク16タイムスロットもまた、リンク16メッセージを含むことができる、システム。
【請求項18】
少なくとも2つの768ビットデータリンクメッセージが、前記リンク16タイムスロットの前記伝搬遅延部分内に埋め込まれることができる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記リンク16トランシーバは、前記データリンクメッセージを前記近くの航空機に送信することができる1ワット送信機を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記リンク16トランシーバは、
前記保護された航空機からのそれらの相対的な距離および前記保護された航空機とのそれらの推定された接近速度にしたがって前記近くの航空機を優先順位付けするようにさらに構成され、
10機より多くの近くの航空機がある場合、保護された航空機と最も高い優先度を有する近くの航空機のうちの10機との間にデータリンクを確立する、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記リンク16トランシーバは、従来のリンク16メッセージ中に含まれるよりも少ないプリアンブルパルスを含み、ソーストラック番号(「STN」)情報を含まない、修正された、拡張スループットリンク16プロトコルを使用して、データリンクメッセージも含むタイムスロットの間に送信されるリンク16メッセージをエンコードするように構成される、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
[0001]本開示は、衝突回避システムに関し、より詳細には、戦闘環境における航空機に適用可能な衝突回避システムに関する。
【背景】
【0002】
[0002]航空機を操縦するとき、衝突の回避は常に重要な関心事である。民間および商業飛行のパイロットでさえ、山および放送塔のような地上の危険、ならびに他の商業および民間航空機、熱気球のような飛行中の危険の両方に関して非常に警戒するように教えられている。パイロットの警戒に加えて、航空管制専門家および高度に洗練されたレーダ認識ソフトウェアシステムは、航空機が交通量の多いエリアに位置付けられているときに航空機を監視し、航空機と通信して、衝突に対するさらなる保護を提供する。
【0003】
[0003]当然のことながら、衝突回避の問題は、航空機のスピードがはるかに速い空中戦闘状況では、はるかに深刻であり、航空機は典型的には近接した間隔のグループで飛行し、個々の航空機は、例えば敵対的な地上または空中火災を回避するとき、および/または敵対的な航空機を追跡するときに、迅速な計画外の操縦を行うことが必要な場合がある。このような状況下では、パイロットの注意と集中力に強い要求が課され、高度に熟練し訓練されたパイロットであっても、地上の危険や他の味方の航空機と衝突するリスクを冒す。
【0004】
[0004]航空機と地上および/または空中の危険との潜在的な衝突を自動的に検出および回避することに関して、様々なアプローチが提案および/または実現されている。これらは、典型的には、RADARまたは同様の方法を使用して環境を走査し、潜在的な危険に対する方向および相対距離を決定しようと試みる航空機を含む。このアプローチは、典型的には地上の脅威および敵対的な空中の脅威のケースである、幾分離れた危険を回避するために効果的であることがあるが、このアプローチは、非常に近く、典型的には10海里(Nm)より近くに位置付けられるかもしれない、味方の航空機との衝突を回避するためには不十分であることがある。
【0005】
[0005]味方の航空機間の衝突を回避するための1つのアプローチは、航空機が互いにロケーション、スピード、および方向情報を交換することができるように、航空機のそれぞれが特殊なトランスポンダを装備することである。例は、民間の「交通衝突回避システム」(TCAS)および軍用の「空中衝突回避システム」(ACAS)を含む。もちろん、戦闘環境で使用するためには、トランスポンダ通信は、妨害、なりすまし、および他の敵対的干渉に対して高い耐性を有していなければならない。
【0006】
[0006]より最近では、米国空軍は、自動ICAS(自動統合衝突回避システム)の試験を開始しており、自動ICASは、味方および敵の空中衝突とともに地上の危険との衝突の両方を回避するために、RADARベースの能力を味方の航空機間のメッセージ交換と組み合わせる。味方の航空機間の衝突の回避に関して、自動ICAS仕様は、システムが、互いに10Nmの範囲内に位置付けられて10機までの航空機間で20Hzのレートでそれぞれ768ビットのメッセージ交換を可能にするデータリンクを含まなければならないことを要求する。
【0007】
[0007]ロケーション、スピード、方向、および他の関連情報のリアルタイム交換は、互いに10Nm以内で飛行する味方の航空機間の衝突を回避する際に有効であることがあるが、提案しているインプリメンテーションはすべて、参加する航空機が衝突回避システム専用の特別なトランスポンダを装備することを必要とし、これは「空間、重量、電力、およびコスト」(SWaP-C)の著しい増加につながる。
【0008】
[0008]したがって、必要とされるものは、空間、重量、電力、およびコストの消費を最小限に抑えながら、自動ICAS仕様を満たす戦闘状況における味方航空機間の衝突を回避するシステムおよび方法である。
【概要】
【0009】
[0009]本開示は、空間、重量、電力、およびコストの消費を最小限に抑えながら、互いの10Nmの範囲内にある10機までの航空機間で少なくとも20Hzのレートでリンクごとに768ビットのメッセージ交換レートを可能にするデータリンクを提供する自動ICAS仕様を満たす味方軍用機間の衝突を回避するシステムおよび方法である。衝突回避データリンクは、ここでは「ICAS」データリンクと呼ばれる。しかしながら、当業者は、本開示が米国政府ICASプログラムのみに限定されず、実施形態が米国ICAS仕様の要件のうちのいくつかから逸脱するかもしれないことを理解するであろう。
【0010】
[0010]具体的には、本開示は、実質的にすべての米国軍用機、ならびにNATOおよび他の米国同盟国の多くの軍用機が、リンク16準拠通信システムを使用して互いに相互通信するという事実を利用する。各参加航空機が衝突回避データリンク専用の別個のICASトランスポンダを備えることを必要とするよりもむしろ、本開示は、既存のリンク16ハードウェアをICASデータリンク用のトランシーバハードウェアとして使用する。より具体的には、本開示は、互いに10Nm以内である航空機間の伝搬遅延がほとんどないという事実を利用し、それに基づいて、従来のリンク16通信に干渉することなくICASデータを送信するために各リンク16タイムスロットの終わりに提供される約2ミリ秒の伝搬遅延期間を使用する。
【0011】
[0011]リンク16は、複数のユーザが状況認識データを共有することを可能にするために、米国、NATO、および同盟国における最前線の陸軍、空軍、および海軍のシステムによって使用される広く普及した戦術ワイヤレスネットワーキングシステムである。他の利点の中でもとりわけ、リンク16は、送信セキュリティ対策(擬似ランダム周波数ホッピングのような物理的セキュリティ対策)と(メッセージの暗号化のような)通信セキュリティ対策の両方を備える「セキュアデータユニット」(SDU)機能を含み、それによって、妨害、なりすまし、および他の敵対的干渉に対して高い耐性を有する。
【0012】
[0012]情報は、すべてのフレームまたは「エポック」を繰り返す時分割多元接続(TDMA)タイムスロットにおいてリンク16ネットワーク上で送信される。各タイムスロットは期間が約7.8ミリ秒である。しかしながら、リンク16は300Nmの範囲にわたって相互接続を提供することが要求されるので、データ送信は各タイムスロットにおいて約5.8ミリ秒のみに制限され、各タイムスロットの残り約2ミリ秒は、伝搬遅延を可能にするためにデータがないままである。
【0013】
[0013]各リンク16参加者端末(ノード)は、SDU識別番号(SDU-ID)と、そのノードによる送信および受信のためにどのタイムスロットが使用されるべきかを示すタイムスロット割当てと共に、ソーストラック番号(STN)として知られる一意的な識別子とを用いて初期化される。タイムスロットは、ネットワーク中の指定された中継ノードによる情報の中継のために割り当てることもできる。一般的な通信に加えて、リンク16ネットワーク中のノードは、正確な参加者ロケーションおよび識別(PPLI)メッセージを連続的に交換する。通常のリンク16通信の間に、ノードは、タイムスロットの間に送信されるデータ中にSTN情報およびSDU-IDの両方を含めることによって、ノード自体を互いに識別する。
【0014】
[0014]本開示は、リンク16システムがそれらのリンク16通信デューティを実行する能力を低下させることなく、既存のリンク16ハードウェアが自動ICAS衝突回避データリンク仕様のトランスポンダ要件を満たすことを可能にするリンク16プロトコルの拡張を提供する。実施形態は、リンク16ハードウェアとデータ通信し、修正されたリンク16プロトコルを使用してリンク16ハードウェアによって送信および受信される衝突回避「ICAS」データリンクメッセージを生成および処理する、本ここでは総称的に「ICAS」データリンクモジュールとも呼ばれる専用衝突回避モジュールを含む。いくつかの実施形態では、衝突回避データリンクモジュールは、例えばMIDS-JTRS CMN4であることがあるリンク16無線システムとは別個であるが、他の実施形態では、衝突データリンクモジュールはリンク16無線システムに組み込まれる。実施形態では、ICASメッセージはそれぞれ768ビット長であり、これらの実施形態のいくつかでは、メッセージはソフトウェアレベル暗号化を含む。
【0015】
[0015]リンク16とは異なり、ICAS通信データリンク要件は、互いに10Nm以内に位置付けられている航空機にのみ適用される。互いに10Nm以内に位置付けられている航空機について、伝搬遅延は無視できるほど小さく、リンク16タイムスロット伝搬遅延は役に立たない。本開示は、この事実を利用し、そうでなければ空の伝搬遅延を利用して、ICASデータリンク上の近くの航空機間で交換されるICASメッセージを含む一方で、タイムスロットの先行する5.8ミリ秒が従来のリンク16通信に使用されることを可能にする。
【0016】
[0016]したがって、本開示の衝突回避データリンクは、リンク16ネットワークのタイムスロットと同期される。実施形態では、衝突回避メッセージの周波数ホッピングおよび/またはデータエンコーディングはまた、リンク16ネットワークにおいて実現される周波数ホッピングおよび/またはデータ変調方スキームと同一であるか、または協調される。しかしながら、実施形態は、リンク16ネットワークにおいて実現される周波数ホッピングおよびデータ変調スキームから逸脱し、それらにほとんど無関係であることがある周波数ホッピングパターンおよび/またはデータ変調スキームを組み込むことに留意されたい。
【0017】
[0017]実施形態では、少なくとも2つの768ビットメッセージが各リンク16タイムスロットの各2ミリ秒の伝搬遅延内に交換されることができる。リンク16のタイムスロットはそれぞれ、長さが約7.8msecであり、これは、約256Hzの総ICASメッセージレートを提供し、これは、ノード当たり20Hzのレートで、すなわち200Hzの総メッセージレートで、10個のノードまでメッセージを交換するICASデータリンク指定要件を満たす。
【0018】
[0018]実施形態では、いくつかの航空機が互いにより近くに引き寄せられる一方で、他の航空機が互いに枝分かれすると、リンク16ネットワークのノードは、ノードが衝突回避データリンクに参加し、そこから離脱することを可能にするように、ノードに送信機会を動的に割り当てるように協働し、それによって衝突回避を強化する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、これらの再割り当ては、リンク16タイムスロット再割り振り機能性の強化として実現される。
【0019】
[0019]本開示の第1の一般的な態様は、保護された航空機と周囲の航空機との間の衝突を回避する方法である。方法は、保護された航空機および周囲の航空機のそれぞれに、リンク16トランシーバと、リンク16トランシーバとデータ通信する衝突回避データリンクモジュールとを提供することと、保護された航空機が周囲の航空機のすべてとリンク16メッセージを交換することを可能にするリンク16ネットワークを確立するようにリンク16トランシーバを使用し、リンク16メッセージはリンク16タイムスロットで送信されることと、保護された航空機に対する周囲の航空機のポジションを保護された航空機によって決定することと、保護された航空機から10海里内に位置付けられている周囲の航空機のすべてを近くの航空機として指定することと、保護された航空機と近くの航空機のうちの少なくとも1つとの間に衝突回避データリンクを確立することと、衝突回避データリンク上でデータリンクメッセージを交換し、データリンクメッセージは、衝突回避データリンクモジュールによって生成および処理され、リンク16トランシーバによって送信および受信されることと、交換されたデータリンクメッセージに少なくとも部分的に基づいて、潜在的な衝突脅威を検出および回避することとを含む。
【0020】
[0020] リンク16トランシーバは、リンク16タイムスロットの伝搬遅延部分の間にデータリンクメッセージを送信することによってデータリンクメッセージを送信および受信し、リンク16タイムスロットは、そうでなければ、リンク16タイムスロットの間に送信されるリンク16メッセージの伝搬遅延のために予約され、その伝搬遅延部分に埋め込まれたデータリンクメッセージを含む各リンク16タイムスロットもまた、リンク16メッセージを含むことができる。
【0021】
[0021]実施形態では、保護された航空機は、リンク16ネットワークを通して周囲の航空機から受信したPPLI情報に少なくとも部分的に基づいて、周囲の航空機のポジションを決定する。
【0022】
[0022]上記の実施形態のいずれにおいても、衝突回避データリンクは、少なくとも10機の近くの航空機を含むことができる。
【0023】
[0023]上記の実施形態のいずれも、少なくとも2つのデータリンクメッセージをリンク16タイムスロットの伝搬遅延部分内に埋め込むことが可能であることがある。
【0024】
[0024]上記の実施形態のいずれにおいても、リンク16トランシーバは、少なくとも200Hzのレートで埋め込まれたデータリンクメッセージを交換することができ、それによって、保護された航空機が、近くの航空機当たり20Hzのレートで衝突回避データリンク上で10機の近くの航空機とデータリンクメッセージを交換することを可能にする。
【0025】
[0025]上記の実施形態のいずれかにおいて、データリンクメッセージは、それぞれ長さが少なくとも768ビットであることがある。
【0026】
[0026]上記の実施形態のいずれかにおいて、データリンクメッセージが埋め込まれるリンク16タイムスロットは、せいぜい1ワットの電力レベルでリンク16トランシーバによって送信されることができる。
【0027】
[0027]上記の実施形態のいずれかは、保護された航空機からの近くの航空機の相対距離に少なくとも部分的にしたがって、近くの航空機を、保護された航空機のリンク16トランシーバによって優先順位付けすることをさらに含むことができる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、近くの航空機の優先順位付けは、近くの航空機が保護された航空機と共に所定の位置に接近している推定レートにさらにしたがう。また、これらの実施形態のいずれかにおいて、10機より多くの近くの航空機がある場合、衝突回避データリンクは、保護された航空機と最高優先度を有する近くの航空機のうちの10機との間で確立することができる。
【0028】
[0028]上記の実施形態のいずれかは、周囲の航空機にデータリンクメッセージ送信機会を割り当てるように、リンク16ネットワークを介して協働する保護された航空機および周囲の航空機をさらに含むことができ、それによって、周囲の航空機が、それらのポジションが時間とともに変化するにつれて、衝突回避データリンクに参加し、そこから離脱することを可能にする。
【0029】
[0029]上記の実施形態のいずれかは、リンク16メッセージとデータリンクメッセージの両方を含むリンク16タイムスロットについて、データリンクメッセージを含まないタイムスロット中で送信されるリンク16メッセージ中に含まれるよりも少ないプリアンブルパルスを含む、修正された、拡張スループットリンク16プロトコルを使用してリンク16メッセージをエンコードすることをさらに含むことができる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、ソーストラック番号(「STN」)情報は、拡張スループットリンク16プロトコルを使用してエンコードされるリンク16メッセージから除外されることがある。
【0030】
[0030]上記の実施形態のいずれかにおいて、データリンクメッセージは、ソフトウェアレベル暗号化を含むことができる。
【0031】
[0031]上記の実施形態のいずれかは、リンク16メッセージを含まないが、代わりにデータリンクメッセージで満たされている追加のデータリンクメッセージをリンク16タイムスロット中で送信することをさらに含むことができ、それによって、衝突回避データリンク上でのデータリンクメッセージ交換のレートを増加させる。これらの実施形態のいくつかにおいて、データリンクメッセージで満たされるリンク16のタイムスロットのそれぞれは、少なくとも7つのデータリンクメッセージを含むことができる。
【0032】
[0032]本開示の第2の一般的な態様は、保護された航空機が周囲の航空機との衝突を回避することを可能にする衝突回避システムであり、周囲の航空機のそれぞれは、互換性のある装置を搭載して動作している。システムは、リンク16トランシーバと、リンク16トランシーバとデータ通信する衝突回避データリンクモジュールとを含む。リンク16トランシーバは、周囲の航空機とリンク16メッセージを交換することができ、それにより、周囲の航空機のすべてとリンク16ネットワークを確立し、リンク16メッセージはリンク16タイムスロット中に含まれる。リンク16トランシーバは、交換したリンク16メッセージに基づいて、保護された航空機に対する周囲の航空機のポジションを決定することが可能であり、それによって、保護された航空機から10海里内に位置付けられているすべての周囲の航空機を近くの航空機として指定する。リンク16トランシーバおよびICASデータリンクは、保護された航空機と近くの航空機のうちの少なくとも1つとを含む衝突回避データリンクを確立することができ、それによって、保護された航空機は、衝突回避データリンク上で少なくとも1つの近くの航空機とデータリンクメッセージを交換することができ、データリンクメッセージは、衝突回避データリンクモジュールによって生成および処理され、リンク16トランシーバによって送信および受信される。衝突回避データリンクモジュールは、交換されたデータリンクメッセージに少なくとも部分的に基づいて、潜在的な衝突脅威を検出し回避することができる。リンク16トランシーバは、リンク16タイムスロットの伝搬遅延部分の間にデータリンクメッセージを送信および受信することができ、リンク16タイムスロットは、そうでなければリンク16タイムスロット内に含まれるリンク16メッセージの伝搬遅延のために予約され、その伝搬遅延部分に埋め込まれたデータリンクメッセージを含む各リンク16タイムスロットも、リンク16メッセージを含むことができる。
【0033】
[0033]実施形態では、少なくとも2つの768ビットデータリンクメッセージが、リンク16タイムスロットの伝搬遅延部分内に埋め込まれることができる。
【0034】
[0034]上記の実施形態のいずれかにおいて、リンク16トランシーバは、データリンクメッセージを近くの航空機に送信することができる1ワット送信機を含むことができる。
【0035】
[0035]上記の実施形態のいずれかにおいて、リンク16トランシーバは、保護された航空機からのそれらの相対的な距離および保護された航空機とのそれらの推定された接近速度にしたがって近くの航空機に優先順位を付けるようにさらに構成することができ、10機より多くの近くの航空機がある場合、保護された航空機と最も高い優先順位を有する近くの航空機のうちの10機との間にデータリンクを確立する。
【0036】
[0036]上記の実施形態のいずれかにおいて、リンク16トランシーバは、従来のリンク16メッセージ中に含まれるよりも少ないプリアンブルパルスを含み、ソーストラック番号(「STN」)情報を含まない、修正された、拡張スループットリンク16プロトコルを使用して、データリンクメッセージも含むタイムスロットの間に送信されるリンク16メッセージをエンコードするように構成されることができる。
【0037】
[0037]ここで説明される特徴および利点は、包括的ではなく、特に、多くの追加の特徴および利点は、図面、明細書、および特許請求の範囲を考慮して当業者にとって明らかとなるであろう。その上、本明細書において使用される言語は、主に可読性および教示の目的で、および発明の主題事項の範囲を限定しないように、選択されていることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】[0038]図1は、先行技術の典型的なリンク16チャネルアーキテクチャのグラフ図である。
図2】[0039]図2は、先行技術の典型的なリンク16タイムスロットのグラフ図である。
図3】[0040]図3は、本開示の実施形態にしたがう、リンク16トランシーバ、ICASデータリンクモジュール、および航空機制御コンピュータの簡略ブロックダイヤグラムである。
図4】[0041]図4は、味方軍用機間の衝突を回避するために実現される本実例のグラフ図である。
図5】[0042]図5は、2つのICASメッセージがタイムスロットのリンク16伝搬遅延セグメントの間に送信される、本開示の一実施形態における修正されたリンク16タイムスロットのグラフ図である。
図6】[0043]図6は、本開示の方法の実施形態を要約するフローダイヤグラムである。
【詳細な説明】
【0039】
[0044]本開示は、空間、重量、電力、およびコストの消費を最小限に抑えながら、互いの10Nmの範囲内にある10機までの航空機間で少なくとも20Hzのレートでリンクごとに768ビットのメッセージ交換レートを可能にするデータリンクを提供する自動ICAS仕様を満たす味方軍用機間の衝突を回避するシステムおよび方法である。衝突回避データリンクは、ここでは「ICAS」データリンクと呼ばれる。しかしながら、当業者は、本開示が米国政府ICASプログラムのみに限定されず、実施形態が米国ICAS仕様の要件のうちのいくつかから逸脱するかもしれないことを理解するであろう。
【0040】
[0045]具体的には、本開示は、実質的にすべての米国軍用機、ならびにNATOおよび他の米国同盟国の多くの軍用機が、リンク16準拠通信システムを使用して互いに相互通信するという事実を利用する。各参加航空機が衝突回避データリンク専用の別個のICASトランスポンダを備えることを必要とするよりもむしろ、本開示は、既存のリンク16ハードウェアをICASデータリンク用のトランシーバハードウェアとして使用する。
【0041】
[0046]リンク16は、複数のユーザが状況認識データを共有することを可能にするために、米国、NATO、および同盟国における最前線の陸軍、空軍、および海軍のシステムによって使用される広く普及した戦術ワイヤレスネットワーキングシステムである。他の利点の中でもとりわけ、リンク16は、送信セキュリティ対策(擬似ランダム周波数ホッピングのような物理的セキュリティ対策)と(メッセージの暗号化のような)通信セキュリティ対策の両方を備える「セキュアデータユニット」(SDU)機能を含み、それによって、妨害、なりすまし、および他の敵対的干渉に対して高い耐性を有する。
【0042】
[0047]情報は、すべてのフレームまたは「エポック」を繰り返す時分割多元接続(TDMA)タイムスロットにおいてリンク16ネットワーク上で送信される。リンク16ネットワーク中に含まれるタイムスロットの総数は、「サブネット」とも呼ばれる仮想サブネットワークを表すサブセットに分割することができる。各サブネットは、サブネットに属するリンク16タイムスロットのサブセットにしたがって、ならびにタイムスロットのサブセットを共有する参加者によって区別される。リンク16サブネットはまた、それらの周波数ホッピングパターンによって区別される。ネットワーク中の複数のサブネットは、タイムスロットが冗長に使用されることを可能にすることによって、「スタック」または「マルチネット化」されることができ、データは、異なる周波数(FDMA)上で、場合によっては異なるコーディング(CDMA)でも、各ネット中で送信される。
【0043】
[0048]典型的なリンク16ネットワークが図1に示される。リング12内のブロック10はタイムスロットである。各参加者14には、ミッションの開始前にネットワークプランナ(図示せず)による送信および受信タイムスロット割当てが提供される。リング12の右の列16は、リンク16が複数のネット(列16中の積み重ねられたリングとして示されている)上で動作する能力を図示し、ユーザが、周波数分割多元接続(FDMA)を使用して、場合によってはコード分割多元接続(CDMA)も使用して、並行で動作するサブネットワークまたはサブネットワークを形成することを可能にする。
【0044】
[0049]各リンク16参加者端末(ノード)は、SDU識別番号(SDU-ID)と、送信および受信にどのタイムスロットがそのノードによって使用されるべきかを示すタイムスロット割当てとともに、ソーストラック番号(STN)として知られる一意的な識別子で初期化される。タイムスロットを、ネットワーク中の指定された中継ノードによる情報の中継のために割り当てることもできる。一般的な通信に加えて、リンク16ネットワーク中のノードは、正確な参加者ロケーションおよび識別(PPLI)メッセージを連続的に交換する。PPLIメッセージの構造の詳細は、MIL-STD-6016において見出すことができる。通常のリンク16通信の間に、ノードは、タイムスロットの間に送信されるデータ中にSTN情報およびSDU-IDの両方を含めることによって、ノード自体を互いに識別する。
【0045】
[0050]図2を参照すると、各リンク16タイムスロット200は、1秒を128で割った持続時間、すなわち約7.8ミリ秒(正確には7.8125ミリ秒)を有する。しかしながら、リンク16ネットワークの全300Nm範囲にわたる光速伝搬遅延のために、約2ミリ秒続く各タイムスロット200の終わりに伝搬遅延202を含めることが必要である。したがって、リンク16タイムスロット200内で送信されるデータは、タイムスロット200内のわずか約5.8ミリ秒204の初期期間に制限される。約2ミリ秒の最終期間202内には情報は送信されない。
【0046】
[0051]図3を参照すると、本開示は、リンク16システムがそれらの通常の通信義務を実行する能力を低下させることなく、既存のリンク16ハードウェア300が自動ICAS衝突回避データリンク仕様のトランスポンダ要件302を満たすことを可能にするリンク16プロトコルの拡張を提供する。実施形態は、リンク16ハードウェア300とデータ通信し、修正されたリンク16プロトコルを使用してリンク16ハードウェア300によって送信および受信されるICASデータリンクメッセージを生成および処理する、ここでは一般に「ICAS」データリンク304モジュールとも呼ばれる専用衝突回避モジュール304を含む。いくつかの実施形態では、衝突データリンクモジュール304は、リンク16無線システム300とは別個であり、例えば、4チャネル「多機能情報伝達システム 統合戦術無線システム 並行マルチネッティング端末(Concurrent Multi-netting terminal)」(MIDS-JTRS CMN4)であることがあり、他の実施形態では、衝突データリンクモジュール304は、リンク16無線システム300に組み込まれる。
【0047】
[0052]リンク16無線機の送信電力は、典型的には200ワットであり、図4を参照すると、リンク16は、最大400Nm404だけ分離されたノード400、402間の通信のサポートを必要とする。しばしば、JTRS-4のようなリンク16端末は、より遠いノードとの干渉を低減しながら近くのノードと通信するために使用できる1ワット送信機も含む。しかしながら、リンク16とは異なり、ICAS通信データリンク要件は、互いに10Nm408内に位置付けられた航空機406にのみ適用される。
【0048】
[0053]図5を参照すると、互いに10Nm内に位置付けられている航空機406について、伝搬遅延500は非常に小さく(約62μsec.)、リンク16のタイムスロット伝搬遅延202の大部分は何の目的も果たさない。本開示は、この事実を利用し、そうでなければ空の伝搬遅延202を利用して、ICASデータリンク上で近くの航空機間で交換されるICASメッセージ502を含む一方で、従来のリンク16通信のために使用されるタイムスロット200の先行する5.8ミリ秒204を可能にする。実施形態では、ICASメッセージ500はそれぞれ768ビット長であり、これらの実施形態のうちのいくつかでは、メッセージはソフトウェアレベル暗号化を含む。
【0049】
[0054]したがって、本開示の衝突回避データ502は、リンク16ネットワークのタイムスロット200と同期される。実施形態では、衝突回避メッセージ502の周波数ホッピングおよび/またはデータエンコードはまた、リンク16メッセージペイロード204において実現される周波数ホッピングおよび/またはデータ変調スキームと同一であるか、または協調される。しかしながら、実施形態は、リンク16メッセージペイロード204において実現される周波数ホッピングおよびデータ変調スキームから逸脱する周波数ホッピングパターンおよび/またはデータ変調スキームを組み込み、それらとは大きく無関係であることがあることに留意されたい。
【0050】
[0055]実施形態では、図5に図示されるように、少なくとも2つの768ビットメッセージ502は、各リンク16タイムスロット200の各2ミリ秒の伝搬遅延202内で交換できる。リンク16のタイムスロット200はそれぞれ、長さが約7.8ミリ秒であり、これは、ノード当たり20Hzのレートで、すなわち200Hzで、10個までのノードとメッセージ交換のICASデータリンク指定要件を満たす、約256Hzの総ICASメッセージレートを提供する。
【0051】
[0056]実施形態では、再び図3および図4を参照すると、参加航空機400のリンク16トランシーバ300のそれぞれは、受信したリンク16SDU-IDおよびPPLI情報を利用して、周囲航空機402、406、410のうちのどれが10Nm未満の距離408にあるかを決定する。実施形態では、いくつかの航空機400、410が互いにより近くに引き寄せられる一方で、他の航空機400、412が互いから枝分かれすると、リンク16ネットワークのノードは、ノードが衝突回避データリンクに参加し、そこから離脱することを可能にするように、ノードに送信機会を動的に割り当てるように協働し、それによって衝突回避を強化する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、これらの再割り当ては、リンク16タイムスロット再割り振り機能の強化として実現される。
【0052】
[0057]これらの実施形態のうちのいくつかでは、PPLIメッセージは、近くの航空機406、410の概算接近速度を決定するためにさらに使用され、これらの実施形態のうちのいくつかでは、距離および接近速度情報は、近くの航空機406、410を優先順位付けするために使用され、その結果、ICASデータリンクモジュール304は、最大衝突リスクを表す航空機410とのICAS通信を優先順位付けすることができる。10機より多くの航空機が互いに10Nm内に位置付けられているケースでは、この優先順位付けを使用して、任意の所定の時間に、衝突の最大の脅威を呈する航空機410がICASデータリンク中に含まれることを確実にすることができる。
【0053】
[0058]「対象」である近くの航空機410に関するICASデータリンクモジュール304によって決定される情報は、次いで、実施形態では25Hzの1553MUX通信308を介して航空機の中央コンピュータ306に渡される。
【0054】
[0059]図6は、本開示の方法の実施形態を要約するフローダイヤグラムである。開示した方法は、参加ノードのすべてがリンク16トランシーバおよびICASデータリンクモジュールを装備していなければならず600、ここで、修正されたリンク16プロトコルが、開示した方法を実行できるようにリンク16トランシーバ上で実現されることを必要とする。参加航空機のすべてを含むリンク16ネットワークが確立され602、交換したリンク16PPLIメッセージに少なくとも部分的に基づいて、航空機のそれぞれは、他の航空機のすべての相対ポジションを決定する604。次いで、航空機のそれぞれは、近くの航空機の10機までを含むICASデータリンクを確立し606、リンク16タイムスロットの伝播部分内にデータリンクメッセージを埋め込むことによってICASデータリンク内でデータリンクメッセージを交換し608、それによって、リンク16メッセージペイロード204も含むリンク16タイムスロット内でデータリンクメッセージがリンク16トランシーバによって送信および受信されることを可能にする。次いで、航空機は、交換したデータリンクメッセージに少なくとも部分的に基づいて、潜在的な衝突を検出し、それによって衝突を回避することができる610。
【0055】
[0060]実施形態では、本開示は、「ブレード」アンテナ302を使用して送信および受信する4チャネルJTRSまたは「JTRS-4」であることがある、リンク16「統合戦術無線システム」端末300、または「MIDS-JTRS CMN4」上で実現される。いくつかの実施形態では、JTRS1ワット送信モードのようなより低い送信電力が、ICASデータリンクメッセージを送信するために使用される。
【0056】
[0061]実施形態は、ICASデータリンクに参加するノードの近接近をさらに利用するリンク16"パルスコーディングスキームをさらに実現する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、LETコーディングスキームは、現在のリンク16規格によって指定される数と比較して、各リンク16メッセージ中により少ないプリアンブルパルスを含む。実施形態はさらに、15ビットSTN情報をタイムスロットから省略するが、リンク16情報保証がICASデータリンクメッセージに対して維持されることを確実にするように、SDU ID情報をタイムスロット中に含め続ける。
【0057】
[0062]いくつかの実施形態では、追加のICASメッセージは、指定されたICASデータリンク仕様を超え、10より多くのノードと通信するように、およびまたはノード当たり20Hzより多くのデータレートで通信するように、専用タイムスロットで、例えばタイムスロット当たり7つまでのICASメッセージで送信されることができる。
【0058】
[0063]本開示は、衝突回避のためにリンク16および自動ICAS規格を具体的に参照するが、開示される衝突回避方法は、リンク16にも自動ICASにも限定されず、タイムスロットが伝搬遅延部分を含むタイムスロットベース(TDMA)通信ネットワークによってリンクされる航空機間の衝突の回避に一般に適用可能であることが当業者には明らかであろう。
【0059】
[0064]本開示の実施形態の前述の説明は、実例および説明の目的で提示されている。この提出物の各および全ページ、ならびにそのすべての内容は、どれほど特徴付けられようと、識別されようと、または番号付けられようと、この出願内での形式または配置に関わらず、すべての目的でこの出願の実質的部分であると見なされる。この明細書は、網羅的であることを、または開示されたまさにその形態に本開示を限定することを意図されない。この開示を踏まえて、多くの修正およびバリエーションが可能である。
【0060】
[0065]本出願は限られた数の形態で示されているが、本開示の範囲はこれらの形態だけに限定されず、その精神から逸脱することなく様々な変更および修正を受け入れることができる。ここに提示された開示は、本発明の範囲内にある特徴のすべての可能な組み合わせを明示的に開示しない。様々な実施形態に関してここで開示された特徴は、一般に、本発明の範囲から逸脱することなく、自己矛盾しない任意の組み合わせに交換および組み合わされることができる。特に、以下の従属請求項に提示される限定は、従属請求項が互いに論理的に矛盾しない限り、この開示の範囲から逸脱することなく、任意の数および任意の順序でそれらの対応する独立請求項と組み合わされることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】