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特表2022-505599機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法及び光処理機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法及び光処理機
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220106BHJP
   A01G 22/40 20180101ALI20220106BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G22/40
A01G7/00 601Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521997
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2019013943
(87)【国際公開番号】W WO2020085782
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/749,386
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/660,510
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】65-16,Sandan-ro 163 Beon-gil,Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コ, サン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム, セ リョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン ウォン
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB20
2B022DA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物の機能性物質の含量を増加できる植物栽培方法及び植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機に関する。
【解決手段】本発明の実施例に係る機能性物質の含量を増加させる植物の栽培方法は、種子を発芽させ、植物を成長させる段階と、植物に紫外線処理をし、機能性物質であるレスベラトロールの含量を増加させる段階と、植物を収穫する段階とを含む。ここで、機能性物質の含量を増加させる段階において、紫外線処理は、LEDから放出される紫外線を機能性物質に照射することである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子を発芽させ、植物を成長させる段階と、
前記植物に紫外線処理をし、機能性物質の含量を増加させる段階と、
前記植物を収穫する段階と、を含み、
前記機能性物質は、レスベラトロールであって、
前記機能性物質の含量を増加させる段階において、前記紫外線処理は、LEDから放出される紫外線を前記植物に照射することである、機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物を成長させる段階において、
前記種子は、暗条件で水分を供給して発芽させるものである、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項3】
前記機能性物質の含量を増加させる段階において、
前記紫外線処理は、前記植物を収穫する前に24時間にわたって行われることである、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項4】
前記植物を成長させる段階は、
前記種子を0.5時間~6時間にわたって水に浸した後で播種する段階と、
前記種子に7日間20℃~25℃の暗条件で20分ごとに1回ずつ水分を供給する段階と、を含む、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項5】
前記紫外線の光量は10μW/cmである、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項6】
前記紫外線は、UVB及びUVCのうち少なくとも一つである、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項7】
前記紫外線の波長帯は、275nm、285nm及び295nmのうち少なくとも一つである、請求項6に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項8】
前記紫外線波長帯は285nmである、請求項7に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項9】
前記紫外線処理された前記植物の前記機能性物質の含量は、紫外線処理をせずに収穫した植物の2倍以上である、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項10】
前記UVBで紫外線処理された植物の前記機能性物質の含量は、紫外線処理をせずに収穫した植物の2倍以上である、請求項9に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項11】
前記UVCで紫外線処理された植物の前記機能性物質の含量は、紫外線処理をせずに収穫した植物の4倍以上である、請求項9に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項12】
前記植物はピーナッツ新芽である、請求項1に記載の機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法。
【請求項13】
栽培中の植物にUVB及びUVCのうち少なくとも一つの紫外線を収穫前に照射し、前記植物の機能性物質であるレスベラトロールの含量を増加させる、植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【請求項14】
前記紫外線の波長帯は、275nm、285nm及び295nmのうち少なくとも一つである、請求項13に記載の植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【請求項15】
前記紫外線波長帯は285nmである、請求項14に記載の植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【請求項16】
前記光処理機は、前記植物の前記機能性物質の含量を、紫外線処理をしていない植物の2倍以上に増加させる、請求項13に記載の植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【請求項17】
前記光処理機は、前記植物に前記UVBを照射し、前記植物の前記機能性物質の含量を、紫外線処理をせずに収穫した植物の2倍以上に増加させる、請求項16に記載の植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【請求項18】
前記光処理機は、前記植物に前記UVCを照射し、前記植物の前記機能性物質の含量を、紫外線処理をせずに収穫した植物の4倍以上に増加させる、請求項16に記載の植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【請求項19】
前記植物はピーナッツ新芽である、請求項13に記載の植物の機能性物質の含量を増加させる光処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法及び光処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、光エネルギーを用いて二酸化炭素と水から有機物を合成する光合成作用をする。植物は、光合成作用で得られた有機物の化学エネルギーを生長などのための栄養分として使用している。植物は、目的とする対象に対して効力を有する有用物質を含んでいる。
【0003】
植物の機能性物質は、抗酸化、抗癌、抗炎症などの様々な効能を有しており、多くの疾患及び症状の治療に使用されている。近年、植物の機能性物質の含量を増加させるための様々な方法が試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法及び光処理機を提供することにある。
【0005】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、植物の生長が低下することなく、機能性物質の含量を増加できる植物栽培方法及び光処理機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例によると、種子を発芽させ、植物を成長させる段階と、植物に紫外線処理をし、機能性物質であるレスベラトロール(Resveratrol)の含量を増加させる段階と、植物を収穫する段階とを含む機能性物質の含量を増加させる植物栽培方法が提供される。ここで、機能性物質の含量を増加させる段階において、紫外線処理は、LEDから放出される紫外線を植物に照射することである。
【0007】
また、本発明の実施例によると、栽培中の植物にUVB及びUVCのうち少なくとも一つの紫外線を収穫前に照射し、植物の機能性物質であるレスベラトロールの含量を増加させる光処理機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施例によると、植物に紫外線処理をし、植物の機能性物質の含量を増加させることができる。
【0009】
また、本発明の実施例によると、植物の紫外線処理を収獲直前に行って、植物の生長を低下させないと共に機能性物質の含量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】植物を栽培する栽培機を示した例示図である。
図2】本発明の実施例によって栽培された植物の総フェノール含量を示したグラフである。
図3】本発明の実施例によって栽培された植物の抗酸化度を示したグラフである。
図4】本発明の実施例によって栽培された植物のレスベラトロールの含量を示したグラフである。
図5】本発明の実施例によって栽培された植物の乾燥重量を示したグラフである。
図6】紫外線波長帯によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量を示した図である。
図7】紫外線処理時間による機能性物質の含量変化を示したグラフである。
図8】紫外線処理時間による機能性物質の含量変化を示した他のグラフである。
図9】紫外線処理後の保管時間によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量変化を示したグラフである。
図10】紫外線処理後の保管時間によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量変化を示した他のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、添付の各図面を参考にして本発明の各実施例を詳細に説明する。次に紹介する各実施例は、当業者に本発明の思想を十分に伝達するための例示として提供されるものである。よって、本発明は、以下で説明する各実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化されることもある。そして、各図面において、構成要素の幅、長さ、厚さなどは、便宜のために誇張して表現する場合がある。明細書全体にわたって、同一の参照番号は同一の構成要素を示し、類似する参照番号は、対応する類似する構成要素を示す。
【0012】
本発明の実施例によると、植物栽培方法は、種子を発芽させ、植物を成長させる段階と、植物に紫外線処理をする段階と、植物を収穫する段階とを含む。
【0013】
本発明の実施例において、ピーナッツ種子を用いて機能性物質であるレスベラトロールの含量が増加したピーナッツ新芽を栽培した。
【0014】
まず、ピーナッツ種子を一定時間、水に浸してふやかす。例えば、ピーナッツ種子は0.5時間~6時間にわたって水にふやかす。
【0015】
水にふやかしたピーナッツ種子を暗条件で合計7日間栽培する。栽培する間、ピーナッツ種子は発芽し、ピーナッツ新芽に成長する。このとき、栽培温度は20℃~25℃に維持し、20分ごとに1回ずつピーナッツ種子及びピーナッツ新芽に水分を供給する。
【0016】
ピーナッツ種子を播種してから6日が経過すると、24時間にわたってピーナッツ新芽に紫外線処理をする。このとき、ピーナッツ新芽に10μW/cmの光量でUVC又はUVBを24時間にわたって照射する。紫外線処理により、ピーナッツ新芽の機能性物質であるレスベラトロールの含量が増加する。
【0017】
紫外線は、植物の生長を低下させるものとして知られている。ピーナッツ種子に紫外線処理をすると、生長低下の問題によってうまく発芽しないという問題が発生し得る。また、種子が発芽した後でも、ピーナッツ新芽が非常に幼いときに紫外線処理をすると、生長が低下し得る。よって、ピーナッツ新芽の生長及び機能性物質の増加を考慮して紫外線処理時期、紫外線処理時間、紫外線の光量などが定められなければならない。このような点を考慮して、本発明では、収穫する直前に24時間にわたって10μW/cmの光量で紫外線処理が行われる。
【0018】
このように、ピーナッツ新芽に24時間にわたって紫外線処理をし、レスベラトロールの含量を増加させた後、ピーナッツ新芽を収穫する。
【0019】
例えば、ピーナッツ新芽の栽培及び紫外線処理は、いずれも図1の栽培機100で行われてもよい。
【0020】
図1は、植物を栽培する栽培機100の例示を示した図であって、栽培機100の断面図である。
【0021】
図1を参考にすると、栽培機100は、ハウジング110、栽培板120、水分供給機130、光処理機140、ポンプ150及び配管160を含む。
【0022】
ハウジング110は、ピーナッツ新芽が栽培される空間を構成する。ハウジング110の内部空間には、ピーナッツ新芽を栽培するための栽培板120、水分供給機130、光処理機140、ポンプ150及び配管160が配置される。
【0023】
また、ハウジング110は、外部の光を遮断する。すなわち、ハウジング110は、光が透過しない材質で形成され、外部の光が内部空間に進入することを防止する。また、ハウジング110は、光処理機140から放出される紫外線がハウジング110の外部に漏れ出ることを防止する。このようなハウジング110により、ピーナッツ新芽を暗条件で栽培することができる。
【0024】
栽培板120にはピーナッツ種子が播種され、ピーナッツ新芽が栽培される。栽培板120は、ハウジング110の内部の下面から上部方向に離隔して位置する。栽培板120とハウジング110の下面との間の空間には水が貯蔵されている。このとき、栽培板120は、ハウジング110に貯蔵された水とも離隔するように位置する。
【0025】
水分供給機130は、栽培板120に水分を排出し、栽培板120に播種されたピーナッツ種子及び栽培されているピーナッツ新芽に水分を供給する。水分供給機130には、図1に示したように、長い構造に水が排出される排出口が多数形成されていてもよい。例えば、水分供給機130はスプリンクラーであってもよい。水分供給機130は、水分供給時間を制御するための制御装置に接続されてもよい。よって、水分供給機130は、定められた時間に定められた量の水分をピーナッツ新芽に提供することができる。例えば、水分供給機130は、20分ごとに1回ずつピーナッツ新芽に水分を供給することができる。
【0026】
水分供給機130は、ハウジング110の上部に左右方向に回転可能に固定されてもよい。水分供給機130が回転すると、栽培板120の全体領域にさらに均一に水分を供給することができる。
【0027】
ポンプ150は、栽培板120の下部に位置する。ポンプ150と水分供給機130は配管160で連結されている。ポンプ150は、栽培板120の下部に貯蔵されている水を水分供給機130まで移動させる。
【0028】
光処理機140は、植物の機能性物質であるレスベラトロールの含量を増加させる。
【0029】
光処理機140は、栽培板120で栽培されているピーナッツ新芽に紫外線を放出する。例えば、光処理機140は、栽培板120の上部に位置してもよい。
【0030】
光処理機140から放出される紫外線は、UVB及びUVCのうち少なくとも一つであってもよい。光処理機140は、紫外線を放出する少なくとも一つのLED141を含む。例えば、光処理機140は、UVBを放出するLEDを含んでもよく、UVCを放出するLEDを含んでもよい。また、光処理機140は、UVBを放出するLEDとUVCを放出するLEDを全て含んでもよい。ここで、UVBは、295nm波長帯の紫外線であってもよい。また、UVCは、275nm波長帯の紫外線であってもよい。
【0031】
光処理機140に使用されるLED141は、発光構造体、及び発光構造体を含む複数の電極を含んでもよい。
【0032】
発光構造体は、第1半導体層、第2半導体層、及び第1半導体層と第2半導体層との間に形成された活性層を含む。
【0033】
第1半導体層は、第1導電型不純物でドーピングされた窒化物系半導体層であってもよい。例えば、窒化物系半導体層は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInNからなってもよい。また、第1導電型不純物は、p型不純物であって、Mg、Zn、Ca、Sr、Baなどであってもよい。
【0034】
第2半導体層は、第2導電型不純物でドーピングされた窒化物系半導体層であってもよい。例えば、第2導電型不純物は、n型不純物であって、Si、Ge、Se、Te、O、Cなどを含んでもよい。
【0035】
活性層は、第1半導体層から注入された電子(又は正孔)と第2半導体層から注入された正孔(又は電子)とが互いに出合い、活性層のエネルギーバンドのバンドギャップ差によって光を放出する。例えば、活性層225は、III族-V族及びII族-VI族の化合物半導体のうち少なくとも一つからなってもよい。
【0036】
複数の電極は、第1半導体層及び第2半導体層とそれぞれ接続される。例えば、電極は、第1半導体層と接続される第1電極、及び第2半導体層と接続される第2電極を含んでもよい。例えば、電極は、Al、Ti、Cr、Ni、Au、Ag、Sn、W、Cuなどの多様な金属又はこれらの合金からなってもよい。また、電極は、単一層又は多層からなってもよい。
【0037】
電極は、多様な位置で多様な形態で第1半導体層及び第2半導体層と接続され得る。
【0038】
本実施例において、光処理機は、光源として、一般的なランプでなくLED141を使用する。
【0039】
既存のランプは、広い分布のスペクトルを有する光を放出する。よって、ランプの場合、光の波長帯域のうち一部の特定帯域の光を分離することが難しい。すなわち、ランプでは、特定波長の光を選択し、これを試料(植物)に提供することが難しい。
【0040】
しかし、LEDは、特定波長で尖ったピークを有し、既存のランプより狭い半値幅を有する光を放出する。よって、LEDを通じて特定波長帯域の光を試料に提供することが容易になる。
【0041】
また、既存のランプは、試料に光を提供するとき、光量を正確に限定することが難しい。これによって、既存のランプは、試料に十分な光量を提供するために光の照射時間を長く設定しなければならない。
【0042】
しかし、LEDの場合、光量を明確に限定しながら試料に提供することができる。よって、LEDを用いる場合、試料に十分な光量を提供するための光の照射時間を正確に計算することができる。すなわち、LEDを用いると、試料に特定時間の間、特定波長帯の光を正確な光量で提供することができる。
【0043】
また、既存のランプは、電源をオンにした後、最大光量で光が放出されるまで相当な時間を要していた。
【0044】
しかし、LEDは、電源をオンにした後、ほぼ直ぐに最大光量で光を放出する。よって、LEDは、試料に特定波長の光を提供するとき、光の照射時間を明確に制御することができる。
【0045】
光処理機140は、紫外線の光量、紫外線放出時間、紫外線波長などを制御できる制御装置と接続されてもよい。例えば、光処理機140は、ピーナッツ種子を播種してから6日後、24時間にわたって10μW/cmの光量の紫外線をピーナッツ新芽に照射することができる。
【0046】
また、図示してはいないが、栽培機100は温度制御装置をさらに含んでもよい。温度制御装置は、栽培機100の内部空間を予め設定された一定の温度に維持させることができる。よって、栽培機100は、ピーナッツ新芽を一定の温度で成長させることができる。例えば、温度制御装置は、栽培機100の内部空間の温度を20℃~25℃に維持させることができる。
【0047】
図2乃至図5は、本発明の一実施例によって栽培された植物の機能性物質の含量に関する実験結果を示す。
【0048】
ピーナッツ新芽は、0.5時間~6時間にわたって水にふやかした種子を栽培機(図1の100)に播種し、合計7日間栽培された。栽培機(図1の100)は、20℃~25℃の温度に維持した状態で20分ごとに1回ずつピーナッツ新芽に水分を供給した。
【0049】
播種してから6日後、24時間にわたって10μW/cmの光量の紫外線をピーナッツ新芽に照射する紫外線処理を行った。紫外線処理後、ピーナッツ新芽を収穫し、総フェノール含量、抗酸化度及びレスベラトロールの含量を測定した。また、収穫したピーナッツ新芽の乾燥重量を測定した。
【0050】
対照群は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽である。すなわち、対照群は、紫外線処理をせず、合計7日間栽培機(図1の100)で栽培されたピーナッツ新芽である。
【0051】
実験群1は、UVBで紫外線処理をしたピーナッツ新芽であって、実験群2は、UVCで紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。ここで、UVBは295nm波長帯の紫外線であって、UVCは275nm波長帯の紫外線である。
【0052】
図2は、本発明の実施例によって栽培された植物であるピーナッツ新芽の総フェノール含量を示したグラフである。
【0053】
図2を参考にすると、ピーナッツ新芽の総フェノール含量は、対照群を100%としたとき、実験群1の場合は108.3%で、実験群2の場合は106.2%である。すなわち、収獲前に24時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽と紫外線処理をしていないピーナッツ新芽の総フェノール含量は、類似する数値を示している。
【0054】
図3は、本発明の実施例によって栽培された植物であるピーナッツ新芽の抗酸化度を示したグラフである。
【0055】
図3を参考にすると、ピーナッツ新芽の抗酸化度は、対照群を100%としたとき、実験群1の場合は110.9%で、実験群2の場合は103.0%である。すなわち、収獲前に24時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽と紫外線処理をしていないピーナッツ新芽の抗酸化度は、類似する数値を示している。
【0056】
図4は、本発明の実施例によって栽培された植物であるピーナッツ新芽のレスベラトロールの含量を示したグラフである。
【0057】
図4を参考にすると、ピーナッツ新芽のレスベラトロールの含量は、対照群を100%としたとき、実験群1の場合は203.2%で、実験群2の場合は485.7%である。
【0058】
すなわち、収獲前に24時間にわたってUVBで紫外線処理をしたピーナッツ新芽のレスベラトロールの含量は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽のレスベラトロールの含量の2倍以上であることを確認することができる。
【0059】
また、収獲前に24時間にわたってUVCで紫外線処理をしたピーナッツ新芽のレスベラトロールの含量は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽のレスベラトロールの含量の4倍以上であることを確認することができる。
【0060】
図2乃至図4を参考にすると、実験群1及び実験群2は、対照群と比較したとき、総フェノール含量及び抗酸化度の数値が類似するが、レスベラトロールの含量は大きな差を有して増加した。
【0061】
これによって、収獲前にピーナッツ新芽に紫外線処理をすると、機能性物質の総含量には変化がないが、レスベラトロールの含量のみが増加することが分かる。すなわち、収獲前にピーナッツ新芽に行われた紫外線処理は、他の機能性物質に比べてレスベラトロールの含量の増加に大きな影響を与えることが分かる。
【0062】
図5は、本発明の実施例によって栽培された植物であるピーナッツ新芽の乾燥重量を示したグラフである。
【0063】
収穫したピーナッツ新芽を液体窒素で凍結し、生体活動を中断させた状態で乾燥し、その重量を測定した。ピーナッツ新芽の凍結乾燥は、凍結乾燥機を用いて行われた。
【0064】
図5を参考にすると、実験群1は、対照群に比べて乾燥重量が2.1%増加した。また、実験群2は、対照群に比べて乾燥重量が3.3%減少した。すなわち、実験群1及び実験群2の乾燥重量の数値は、対照群と非常に類似している。よって、収獲前に行った紫外線処理は、ピーナッツ新芽の成長に影響を与えなかったことを確認することができる。
【0065】
図4及び図5の実験結果を参考にすると、収獲前に24時間にわたるUVB及びUVCを用いた紫外線処理は、ピーナッツ新芽の成長を低下させないと共に、レスベラトロールの含量を2倍以上増加させることを確認することができる。
【0066】
結果的に、図2乃至図5の実験を通じて、収獲前に24時間にわたって植物に紫外線処理をすると、成長が低下することなく、機能性物質のうちレスベラトロールの含量を増加させることができる。
【0067】
図6は、紫外線波長帯によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量を示した図である。
【0068】
ピーナッツ新芽は、0.5時間~6時間にわたって水にふやかした種子を栽培機(図1の100)に播種して栽培した。栽培機(図1の100)は、26±2℃の温度を維持した状態で20分ごとに1回ずつピーナッツ新芽に水分を供給した。
【0069】
播種してから6日後、24時間にわたって10μW/cmの光量の紫外線をピーナッツ新芽に照射する紫外線処理を行った。紫外線処理後、ピーナッツ新芽を収穫し、機能性物質であるレスベラトロールの含量を測定し、これを対照群と比較した。このとき、実験の正確性のために、ピーナッツ新芽の種皮を除去した後、レスベラトロールの含量を測定した。
【0070】
本実施例において、対照群は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽である。実験群1は、295nm波長帯で紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。実験群2は、285nm波長帯で紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。また、実験群3は、275nm波長帯で紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。
【0071】
図6は、紫外線波長帯によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量を示したグラフである。
【0072】
図6を参考にすると、紫外線処理が行われた実験群1、実験群2及び実験群3は、いずれも対照群に比べてレスベラトロールの含量が大きく増加した。特に、285nm波長帯で紫外線処理をしたピーナッツ新芽(実験群2)においてレスベラトロールの含量が最も多く増加した。
【0073】
図7は、紫外線処理時間による機能性物質の含量変化を示したグラフである。
【0074】
ピーナッツ新芽を播種してから6日後、10μW/cmの光量の紫外線をピーナッツ新芽に照射する紫外線処理を行った。ここで、ピーナッツ新芽を播種及び栽培する方式は、前述の実施例と同一である。
【0075】
紫外線処理後、ピーナッツ新芽を収穫し、機能性物質であるレスベラトロールの含量を測定し、これを対照群と比較した。
【0076】
本実施例において、対照群は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽である。実験群1は、285nm波長帯で24時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。また、実験群2は、285nm波長帯で48時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。
【0077】
図7を参考にすると、実験群1は、対照群に比べて約9倍ほど増加した。また、実験群2は、対照群に比べて約10倍ほど増加した。すなわち、ピーナッツ新芽に紫外線処理をすると、紫外線処理をしていないときに比べてレスベラトロールの含量が大きく増加することが分かる。
【0078】
このとき、48時間にわたって紫外線処理をしたとき、24時間にわたって紫外線処理をしたときに比べてレスベラトロールの含量がさらに増加するが、有意な差は示していない。
【0079】
図8は、紫外線処理時間による機能性物質の含量変化を示した他のグラフである。
【0080】
ピーナッツ新芽を播種してから6日後、10μW/cmの光量の紫外線をピーナッツ新芽に照射する紫外線処理を行った。ここで、ピーナッツ新芽を播種及び栽培する方式は、以前の実施例と同一である。
【0081】
紫外線処理後にピーナッツ新芽を収穫し、機能性物質であるレスベラトロールの含量を測定し、これを対照群と比較した。
【0082】
本実施例において、対照群は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽である。実験群1は、285nm波長帯で1時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。実験群2は、285nm波長帯で3時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。実験群3は、285nm波長帯で6時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。実験群4は、285nm波長帯で12時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。また、実験群5は、285nm波長帯で24時間にわたって紫外線処理をしたピーナッツ新芽である。
【0083】
図8を参考にすると、実験群1、実験群2及び実験群3は、対照群に比べてレスベラトロールの含量が少し低い。しかし、実験群3及び実験群4は、対照群より高いレスベラトロールの含量を有する。特に、実験群4は、実験群3と比較したとき、レスベラトロールの含量の有意な増加を示す。
【0084】
図7及び図8を参考にしたとき、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽に比べてレスベラトロールの含量を有意に増加させるためには、紫外線処理時間は24時間以上にならなければならない。栽培期間を考慮したとき、効率的な紫外線処理時間は24時間になる。
【0085】
下記の表1は、ピーナッツ新芽1個体当たりのレスベラトロールの含量の平均を示したものである。
【0086】
【表1】
【0087】
それぞれ3回の実験を通じて、対照群のレスベラトロールの含量の平均値及び実験群1のレスベラトロールの含量を確認した。ここで、レスベラトロールの含量は、乾物重量1gに含まれたレスベラトロールの含量である。表1を参考にすると、実験群1は、対照群より高い含量のレスベラトロールを含んでいる。
【0088】
一般に、レッドワイン100mgは、300μgのレスベラトロールを含んでいるものとして知られている。
【0089】
ピーナッツ新芽の1個体の乾物重量は約0.8gである。
【0090】
したがって、レッドワイン100mgに該当するレスベラトロール300μgを摂取するためには、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽の場合は約79個体が必要である。
【0091】
しかし、紫外線処理をしたピーナッツ新芽の場合、約4個体でレッドワイン100mgに該当するレスベラトロールを摂取することができる。また、紫外線処理をしたピーナッツ新芽は、レスベラトロールなどの機能性物質の含量が多いので、少ない個体数でも十分な量の機能性物質を摂取することができる。
【0092】
また、ピーナッツ新芽は、ワイン生産期間より栽培期間が短く、栽培が簡便であるという利点を有する。
【0093】
図9は、紫外線処理後の保管時間によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量変化を示したグラフである。
【0094】
ピーナッツ新芽を播種してから6日後、10μW/cmの光量の紫外線を24時間にわたってピーナッツ新芽に照射する紫外線処理を行った。ここで、ピーナッツ新芽を播種及び栽培する方式は、前述の実施例と同一である。ピーナッツ新芽に照射される紫外線は、285nm波長帯の紫外線である。
【0095】
本実施例においては、ピーナッツ新芽を紫外線処理後に4℃で冷蔵保管した。
【0096】
本実施例において、対照群は、紫外線処理をした直後のピーナッツ新芽である。実験群1は、紫外線処理後に1日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。実験群2は、紫外線処理後に2日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。また、実験群3は、紫外線処理後に1日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。
【0097】
図9を参照すると、冷蔵保管した実験群1、実験群2及び実験群3は、いずれも対照群に比べてレスベラトロールの含量が減少した。
【0098】
実験群2は、実験群1と実験群2に比べてレスベラトロールの含量が大きいが、概してピーナッツ新芽を冷蔵保管する時間が長くなるにつれてレスベラトロールの含量が徐々に減少することが分かる。
【0099】
図10は、紫外線処理後の保管時間によるピーナッツ新芽の機能性物質の含量変化を示した他のグラフである。
【0100】
ピーナッツ新芽を播種してから6日後、285nm波長帯の紫外線をピーナッツ新芽に24時間にわたって照射した。詳細な実験方法は、前述の実施例を参照する。
【0101】
本実施例においては、ピーナッツ新芽に紫外線処理をし、6日、8日、10日及び13日間4℃で冷蔵保管した後、レスベラトロールの含量を測定した。
【0102】
対照群は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽である。実験群1は、紫外線処理をした直後のピーナッツ新芽である。実験群2は、紫外線処理後に6日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。実験群3は、紫外線処理後に8日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。実験群4は、紫外線処理後に10日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。また、実験群5は、紫外線処理後に13日間冷蔵保管したピーナッツ新芽である。
【0103】
図10を参考にすると、実験群1乃至実験群5を比較すると、概してピーナッツ新芽の冷蔵保管時間が長くなるほどレスベラトロールの含量が概して減少することが分かる。
【0104】
しかし、実験群1乃至実験群5は、いずれも対照群より有意な水準の高いレスベラトロールの含量を有する。すなわち、長期間にわたって冷蔵保管したとしても、紫外線処理をしたピーナッツ新芽は、紫外線処理をしていないピーナッツ新芽に比べてレスベラトロールの含量が多いことが分かる。
【0105】
以上説明したように、本発明に対する具体的な説明は、添付の図面を参考にした実施例によって行われたが、上述した実施例は、本発明の好適な例を挙げて説明したものに過ぎないので、本発明が実施例にのみ限定されるものと理解してはならず、本発明の権利範囲は、後述する特許請求の範囲及びその等価概念で理解しなければならないだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】