(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522008
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 US2019057880
(87)【国際公開番号】W WO2020086859
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500295612
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】アミン、ムルタザ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェスマン、ケビン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA30
4C077BB02
4C077CC06
4C077DD01
4C077DD12
4C077DD26
4C077EE04
4C077FF04
4C077KK11
4C077PP07
(57)【要約】
循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置は、拡張可能チャンバと、拡張可能チャンバに結合された剛性チャンバと、拡張可能チャンバおよび剛性チャンバの両方と流体連通する第1の弁と、剛性チャンバおよび埋め込み型装置の外部と流体連通する第2の弁と、浸透流体と、を含む。拡張可能チャンバは、第1の半透膜を含む。剛性チャンバは、ピストンを含む。第1の弁は、拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間の流体の流れを可能にする開位置を有する。第2の弁は、剛性チャンバから埋め込み型装置の外部への流体の流れを可能にする開位置を有する。浸透流体は、体液よりも高い浸透濃度を有する。浸透流体は、第1の半透膜を通して体液から水分を取り込むように設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置であって、
第1の半透膜を含む拡張可能チャンバと、
前記拡張可能チャンバに結合され、ピストンを含む剛性チャンバと、
前記拡張可能チャンバおよび前記剛性チャンバの両方と流体連通している第1の弁であって、前記拡張可能チャンバと前記剛性チャンバとの間の流体の流れを可能にする開位置を有する前記第1の弁と、
前記剛性チャンバおよび前記埋め込み型装置の外部と流体連通している第2の弁であって、前記第2の弁は、第2の半透膜を含み、前記第2の弁は、前記剛性チャンバから前記埋め込み型装置の外部への流体の流れを可能にする開位置を有する、前記第2の弁と、
体液よりも高い浸透濃度を有する浸透流体であって、前記第1の半透膜を通して体液から水分を取り込むように設定された前記浸透流体と、を備える埋め込み型装置。
【請求項2】
ポンプをさらに備え、
前記ポンプは、前記埋め込み型装置の任意の複数の流体内容物を、開位置にある前記第1の弁または開位置にある前記第2の弁を通して移動させるように構成されている、請求項1に記載の埋め込み型装置。
【請求項3】
前記ピストンは、前記拡張可能チャンバの任意の複数の流体内容物を前記剛性チャンバに引き込むために、前記第1の弁が開位置にあるとき、前記剛性チャンバ内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されている、請求項1または2に記載の埋め込み型装置。
【請求項4】
前記ピストンは、前記剛性チャンバ内の任意の複数の流体内容物を押し出して前記埋め込み型装置から透過液を排出するために、前記第2の弁が開位置にあるとき、前記剛性チャンバ内でポンプ駆動された押し出しストロークを実行するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項5】
前記第1の半透膜および前記第2の半透膜のうちの少なくとも1つは、透析膜である、請求項1~4のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項6】
前記浸透流体は、溶解ポリマーの水溶液である、請求項1~5のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項7】
前記第1の半透膜および前記第2の半透膜は、前記溶解ポリマーの水溶液を通過させないように構成されている、請求項6に記載の埋め込み型装置。
【請求項8】
前記埋め込み型装置は、患者の腹膜腔内に埋め込まれるように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項9】
前記埋め込み型装置は、膀胱を通して過剰な水分を除去するために、患者の尿管にシャントされる、請求項8に記載の埋め込み型装置。
【請求項10】
コンパニオン装置の相補型誘導コイルと結合するように構成された誘導コイルをさらに備え、
前記コンパニオン装置は、誘導によって前記埋め込み型装置に充電または電力供給するために、商用電源と接続するように動作可能である、請求項1~9のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項11】
循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置であって、
第1の半透膜を含む第1の拡張可能チャンバと、
第2の半透膜を含む第2の拡張可能チャンバと、
前記拡張可能チャンバに結合され、ピストンを含む剛性チャンバと、
前記第1の拡張可能チャンバおよび前記剛性チャンバの両方と流体連通している第1の弁であって、前記第1の拡張可能チャンバと前記剛性チャンバとの間の流体の流れを可能にする開位置を有する前記第1の弁と、
前記第2の拡張可能チャンバおよび前記剛性チャンバの両方と流体連通している第2の弁であって、前記第2の拡張可能チャンバと前記剛性チャンバとの間の流体の流れを可能にする開位置を有する前記第2の弁と、
前記剛性チャンバおよび前記埋め込み型装置の外部と流体連通している第3の弁および第4の弁であって、前記第3の弁は、第3の半透膜を含み、前記第4の弁は、第4の半透膜を含み、前記第3の弁および前記第4の弁は、前記ピストンによって離間され、前記第3の弁および前記第4の弁の各々は、前記剛性チャンバから前記埋め込み型装置の外部への流体の流れを可能にする開位置を有する、前記第3の弁および前記第4の弁と、
体液よりも高い浸透濃度を有する浸透流体であって、前記第1の半透膜を通して体液から水分を取り込むように設定された前記浸透流体と、を備える埋め込み型装置。
【請求項12】
ポンプをさらに備え、
前記ポンプは、前記埋め込み型装置の任意の複数の流体内容物を、開位置にある前記第1の弁、前記第2の弁、前記第3の弁および前記第4の弁のいずれかを通して移動させるように構成されている、請求項11に記載の埋め込み型装置。
【請求項13】
前記ピストンは、前記第1の拡張可能チャンバの任意の複数の流体内容物を前記剛性チャンバに引き込むために、前記第1の弁が開位置にあるとき、前記剛性チャンバ内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されている、請求項11または12に記載の埋め込み型装置。
【請求項14】
前記ピストンは、前記複数の流体内容物を、開位置にある前記第4の弁を通して前記剛性チャンバから一斉に押し出して前記埋め込み型装置から透過液を排出するように構成されている、請求項13に記載の埋め込み型装置。
【請求項15】
前記ピストンは、前記第2の拡張可能チャンバの任意の複数の流体内容物を前記剛性チャンバに引き込むために、前記第2の弁が開位置にあるとき、前記剛性チャンバ内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されている、請求項11または12に記載の埋め込み型装置。
【請求項16】
前記ピストンは、前記複数の流体内容物を、開位置にある前記第3の弁を通して前記剛性チャンバから一斉に押し出して前記埋め込み型装置から透過液を排出するように構成されている、請求項15に記載の埋め込み型装置。
【請求項17】
前記第1の半透膜、前記第2の半透膜、前記第3の半透膜および前記第4の半透膜のうちの少なくとも1つは、透析膜である、請求項11~16のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項18】
前記第1の半透膜、前記第2の半透膜、前記第3の半透膜および前記第4の半透膜の各々は、透析膜である、請求項11~16のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項19】
前記浸透流体は、溶解ポリマーの水溶液である、請求項11~18のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項20】
前記第1の半透膜、前記第2の半透膜、前記第3の半透膜および前記第4の半透膜は、前記溶解ポリマーの水溶液を通過させないように構成されている、請求項19に記載の埋め込み型装置。
【請求項21】
前記埋め込み型装置は、患者の腹膜腔内に埋め込まれるように構成されている、請求項11~20のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【請求項22】
前記埋め込み型装置は、膀胱を通して過剰な水分を除去するために、患者の尿管にシャントされる、請求項21に記載の埋め込み型装置。
【請求項23】
コンパニオン装置の相補型誘導コイルと結合するように構成された誘導コイルをさらに備え、
前記コンパニオン装置は、誘導によって前記埋め込み型装置に充電または電力供給するために、商用電源と接続するように動作可能である、請求項11~22のいずれか1項に記載の埋め込み型装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
循環血液量過多症(Hypervolemia)、すなわち体液過負荷は、血漿が過剰な量の水分を保持した結果として、血管内区画内の血液量が正常値を超える病状である。体が必要とする量を超える水分を濾過するのに腎臓がもはや効果的ではない慢性腎臓病、特に末期腎疾患(「ESRD(end-stage renal disease)」)などのその進行期に苦しむ患者において水分は蓄積され得る。体が必要とする量を超える水分を濾過するため、腎臓に血液を注入するのに心臓がもはや効果的ではないうっ血性心不全(「CHF(congestive heart failure)」)などの慢性心臓病に苦しむ患者においても、水分は蓄積され得る。正常値を超える血管内区画内の血液量は、腹膜腔および胸膜腔内の体液の蓄積による息切れを引き起こし得、これは生活の質を低下させる。正常値を超える血管内区画内の血液量は、高血圧および心臓へのストレスを引き起こし、これはCHFなどの他の疾患を悪化させて死に至ることさえあり得る。したがって、循環血液量過多症に対処することは、その病状に苦しむ人々にとって重要である。本明細書には、埋め込み型装置、および前述のものに取り組むためのそれらの方法が開示される。
【発明の概要】
【0002】
本明細書には、いくつかの実施形態において、拡張可能チャンバと、拡張可能チャンバに結合された剛性チャンバと、拡張可能チャンバおよび剛性チャンバの両方と流体連通する第1の弁と、剛性チャンバおよび埋め込み型装置の外部と流体連通する第2の弁と、浸透流体と、を含む循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置が開示されている。拡張可能チャンバは、第1の半透膜を含む。剛性チャンバは、ピストンを含む。第1の弁は、拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間の流体の流れを可能にする開位置を有する。第2の弁は、剛性チャンバから埋め込み型装置の外部への流体の流れを可能にする開位置を有する。浸透流体は、体液よりも高い浸透濃度を有する。浸透流体は、第1の半透膜を通して体液から水分を取り込むように設定されている。
【0003】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、ポンプをさらに含む。ポンプは、埋め込み型装置の任意の複数の流体内容物を、開位置にある第1の弁または開位置にある第2の弁を通して移動させるように構成されている。
【0004】
いくつかの実施形態において、ピストンは、拡張可能チャンバの任意の複数の流体内容物を剛性チャンバに引き込むために、第1の弁が開位置にあるときに、剛性チャンバ内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態において、ピストンは、剛性チャンバ内の任意の複数の流体内容物を押し出して埋め込み型装置から透過液を排出するために、第2の弁が開位置にあるときに、剛性チャンバ内でポンプ駆動された押し出しストロークを実行するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態において、第1の半透膜および第2の半透膜のうちの少なくとも1つは、透析膜である。
いくつかの実施形態において、浸透流体は、溶解ポリマーの水溶液である。
【0007】
いくつかの実施形態において、第1の半透膜および第2の半透膜は、溶解ポリマーの水溶液を通過させないように構成されている。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、患者の腹膜腔内に埋め込まれるように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、膀胱を通して過剰な水分を除去するために、患者の尿管にシャントされる。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、コンパニオン装置の相補型誘導コイルと結合するように構成された誘導コイルをさらに備え、コンパニオン装置は、誘導によって埋め込み型装置に充電または電力供給するために、商用電源と接続するように動作可能である。
【0009】
本明細書には、いくつかの実施形態において、拡張可能チャンバと、ピストンを含む剛性チャンバと、拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間の第1の弁と、剛性チャンバと剛性チャンバの外部との間の第2の弁と、埋め込み型装置内の流体と、を含む循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置が開示されている。拡張可能チャンバは、拡張可能チャンバの少なくとも一部分において第1の半透膜を含む。拡張可能チャンバは、流体が拡張可能チャンバ内に配置され、より低い浸透濃度を有する拡張可能チャンバの外側の体液から第1の半透膜を介して水分を浸透によって取り込むときに拡張するように構成されている。拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間の第1の弁は、第1の弁が開いているときに、流体が拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間を流れることを可能にするように構成されている。剛性チャンバと剛性チャンバの外部との間の第2の弁は、第2の弁が開いているときに、流体が剛性チャンバから第2の半透膜に流れて、埋め込み型装置から水分を排出することを可能にするように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、ポンプをさらに含む。ポンプは、第1の弁および第2の弁の両方と協働して動作するように構成されている。ポンプは、第1の弁が開いているときに拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間で流体を移動させるように構成され、第2の弁が開いているときに流体を剛性チャンバから第2の半透膜に移動させるように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態において、ピストンは、流体を拡張可能チャンバから剛性チャンバに引き込むために、第1の弁が開いているときに、剛性チャンバ内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態において、ピストンは、流体を剛性チャンバから第2の半透膜を通して押し出して埋め込み型装置から水分を排出するために、第2の弁が開いているときに、剛性チャンバ内でポンプ駆動された押し出しストロークを実行するように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1の半透膜、第2の半透膜、または両方の半透膜は、透析膜である。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置内の流体は、溶解ポリマーの水溶液である。
【0014】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置内の流体は、第1及び第2の半透膜を通過することから排除された溶解ポリマーの水溶液である。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、患者の腹膜腔内に埋め込まれて患者の必要とする量を超える水分を除去するように構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、膀胱を介して患者が必要とする量を超える水分を除去するために、患者の尿管にシャントされる。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、誘導によって埋め込み型装置に充電または電力供給するために、商用電源と接続するように動作可能であるコンパニオン装置の相補型誘導コイルと結合するように構成された誘導コイルをさらに備える。
【0016】
本明細書には、いくつかの実施形態において、第1の拡張可能チャンバと、第2の拡張可能チャンバと、ピストンを含む剛性チャンバと、複数の弁と、埋め込み型装置内の流体と、を含む循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置が開示されている。第1の拡張可能チャンバは、第1の拡張可能チャンバの少なくとも一部分において第1の半透膜を含む。第2の拡張可能チャンバは、第2の拡張可能チャンバの少なくとも一部分において第2の半透膜を含む。第1および第2の拡張可能チャンバの各拡張可能チャンバは、流体がその内部に配置され、より低い浸透濃度を有する埋め込み型装置の外部の体液からの水分を浸透によって取り込むときに拡張するように構成されている。複数の弁は、第1の拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間の第1の弁と、第2の拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間の第2の弁と、を含む。第1および第2の弁の各弁は、弁が開いているときに、流体が隣接するチャンバ間を流れることを可能にするように構成されている。複数の弁はまた、剛性チャンバと剛性チャンバの外部との間の第3の弁と、剛性チャンバと剛性チャンバの外部との間の第4の弁と、を含み、第3の弁および第4の弁は、ピストンによって互いに離間されている。第3の弁は、第3の弁が開いているときに、流体が剛性チャンバから第3の半透膜に流れて、埋め込み型装置から水分を排出することを可能にするように構成されている。第4の弁は、第4の弁が開いているときに、流体が剛性チャンバから第4の半透膜に流れて、埋め込み型装置から水分を排出することを可能にするように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、ポンプをさらに含む。同様に、ポンプは、複数の弁と協働して動作するように構成されている。ポンプは、第1の弁が開いているときに第1の拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間で流体を移動させ、第4の弁が開いているときに流体を剛性チャンバから第4の半透膜に移動させるように構成されている。ポンプはまた、第2の弁が開いているときに第2の拡張可能チャンバと剛性チャンバとの間で流体を移動させ、第3の弁が開いているときに流体を剛性チャンバから第3の半透膜に移動させるように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、ピストンは、第1および第4の弁が開いているときに、剛性チャンバ内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されて、流体を第1の拡張可能チャンバから剛性チャンバ内に引き込むとともに、流体を第4の半透膜を通して剛性チャンバから押し出して、埋め込み型装置から水分を排出する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ピストンはまた、第2および第3の弁が開いているときに、剛性チャンバ内でポンプ駆動された押し出しストロークを実行するように構成されて、流体を剛性チャンバから第3の半透膜を介して押し出して埋め込み型装置から水を排出するとともに、流体を第2の拡張可能チャンバから剛性チャンバ内に引き込む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、および第4の半透膜の各半透膜は、透析膜である。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置内の流体は、溶解ポリマーの水溶液である。
【0021】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置内の流体は、第1、第2、第3および第4の半透膜を通過することから排除された溶解ポリマーの水溶液である。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、患者の腹膜腔内に埋め込まれて患者の必要とする量を超える水分を除去するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、膀胱を介して患者が必要とする量を超える水分を除去するために、患者の尿管にシャントされる。
いくつかの実施形態において、埋め込み型装置は、誘導によって埋め込み型装置に充電または電力供給するために、商用電源と接続するように動作可能であるコンパニオン装置の相補型誘導コイルと結合するように構成された誘導コイルをさらに備える。
【0023】
また、本明細書において、循環血液量過多症を治療するための方法が開示され、該方法は、循環血液量過多症を治療する埋め込み型装置に関連する本明細書において記載されている1つ以上の機能を含む。
【0024】
本明細書に提供された概念のこれらの特徴および他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に開示する添付の図面および以下の記載の観点から、当業者にはより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】
図1Aは、いくつかの実施形態による動作の第1の段階における循環血液量過多症を治療する装置を示す。
【
図1B】
図1Bは、いくつかの実施形態による動作の第2の段階における循環血液量過多症を治療する装置を示す。
【
図1C】
図1Cは、いくつかの実施形態による動作の第3の段階における循環血液量過多症を治療する装置を示す。
【
図1D】
図1Dは、いくつかの実施形態による動作の第4の段階における循環血液量過多症を治療する装置を示す。
【
図1E】
図1Eは、いくつかの実施形態による動作の第5の段階における循環血液量過多症を治療する装置を示す。
【
図1F】
図1Fは、いくつかの実施形態による動作の第6の段階における循環血液量過多症を治療する装置を示す。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態による循環血液量過多症を治療する別の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提示される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択的に、本明細書に開示される他の複数の実施形態のうちのいずれかの特徴と組み合わせるか、または置換することができる特徴を有し得ることも理解されたい。
【0027】
本明細書に使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態の説明の目的のためであり、それらの用語が本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3など)は、一般に、特徴またはステップの一群内の異なる複数の特徴またはステップを区別または識別するために使用され、連続的な(serial)または数値の限定を供給しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴またはステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「前部」、「後部」、「頂部」、「底部」、などの名称は、便宜上使用され、例えば、特定の任意の固定された位置、配向、または方向を含意することを意図していない。代わりに、そのような名称は、例えば、相対的な位置、配向、または方向を反映するために使用される。単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈で特に明確に指示されなければ、複数形の参照が含まれる。
【0028】
別段の定めがない限り、本明細書に用いるあらゆる技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
上述したように、循環血液量過多症(hypervolemia)、すなわち体液過負荷は、血漿が過剰な量の水分を保持した結果として、血管内区画内の血液量が正常値を超える病状である。体が必要とする量を超える水分を濾過するのに腎臓がもはや効果的ではない慢性腎臓病、特に末期腎疾患(「ESRD(end-stage renal disease)」)などのその進行期に苦しむ患者において水分は蓄積され得る。体が必要とする量を超える水分を濾過するため、腎臓に血液を注入するのに心臓がもはや効果的ではないうっ血性心不全(「CHF(congestive heart failure)」)などの慢性心臓病に苦しむ患者においても、水分は蓄積され得る。正常値を超える血管内区画内の血液量は、腹膜腔および胸膜腔内の体液の蓄積による息切れを引き起こし得、これは生活の質を低下させる。正常値を超える血管内区画内の血液量は、高血圧および心臓へのストレスを引き起こし、これはCHFなどの他の疾患を悪化させて死に至ることさえあり得る。したがって、循環血液量過多症に対処することは、その病状に苦しむ人々にとって重要である。本明細書には、埋め込み型装置(implantable device)、および前述のものに取り組むためのそれらの方法が開示される。
【0029】
図1A~1Fは、いくつかの実施形態による異なる複数の動作段階における循環血液量過多症を治療する装置100を示している。
図示されているように、埋め込み型装置100は、拡張可能チャンバ(expandable chamber)110と、ピストン(piston)122を含む剛性チャンバ120と、拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間の第1の弁(valve)132と、剛性チャンバ120と剛性チャンバ120の外部との間の第2の弁134と、埋め込み型装置100内の流体140と、を含む。
【0030】
拡張可能チャンバ110は、拡張可能チャンバ110の少なくとも一部分において第1の半透膜(semipermeable membrane)112を含む。拡張可能チャンバ110は、流体140が拡張可能チャンバ110内に配置され、流体140よりも低い浸透濃度を有する拡張可能チャンバ110の外側の体液から第1の半透膜112を介して流体140内に水分を浸透によって取り込むときに拡張するように構成されている。
図1Aおよび1Bを参照されたい。
【0031】
拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間の第1の弁132は、第1の弁132が開いているかまたは開位置にあるときに、流体140が拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間を流れることを可能にするかまたはさせる開位置を有するように構成されている。
図1Bおよび1Cを参照されたい。
【0032】
剛性チャンバ120と剛性チャンバ120の外部との間の第2の弁134は、第2の弁134が開いているかまたは開位置にあるときに、流体140が剛性チャンバ120から第2の半透膜124に流れて、埋め込み型装置100から水分を排出することを可能にするかまたはさせる開位置を有するように構成されている。
図1Dおよび1Eを参照されたい。
【0033】
埋め込み型装置100はさらに、(例えば、開位置にあるときに第1の弁132または第2の弁134を介して)埋め込み型装置100において埋め込み型装置の任意の流体内容物を移動させる歯車駆動ピストンポンプ(gear-driven piston pump)などのポンプ(図示せず)を含む。ポンプは、第1の弁132および第2の弁134の両方と協働して動作するように構成される。ポンプは、第1の弁132が開いているときに、拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間で流体140を移動させるように構成されている。また、ポンプは、第2の弁134が開いているときに、流体140を剛性チャンバ120から第2の半透膜124に移動させるように構成されている。
【0034】
ピストン122は、流体140などの流体内容物を拡張可能チャンバ110から剛性チャンバ120内に引き込むために、第1の弁132が開いているとき、剛性チャンバ120内でポンプ駆動された引き込みストローク(pump-actuated pull stroke)を実行するように構成されている。ピストン122はまた、第2の弁134が開いているときに、剛性チャンバ120内でポンプ駆動された押し出しストローク(pump-actuated push stroke)を実行するように構成されて、流体140などの流体内容物を剛性チャンバ120から第2の半透膜124を介して押し出して、(透過液として)水分を埋め込み型装置100から排出し、それによって流体140の保持液(retentate)を生成する。第2の弁134を閉じるかまたは第2の弁を閉位置に戻し、第1の弁132を開くかまたは第1の弁132を開位置に戻すと、ポンプ駆動された押し出しストロークがさらに用いられて、流体140の保持液を剛性チャンバ120から拡張可能チャンバ110内に別のサイクルで押し出すことができる。
【0035】
上述に加えて、上記したポンプ駆動されたストロークは、開位置にあるときに流体140が第1の弁132を介して拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間を前後に循環される、埋め込み型装置100の動作の循環モード(cycling mode)で利用され得る。動作の循環モードは、半透膜124の内側表面近くの流体140の浸透濃度が半透膜124を通る浸透圧に対して十分に高いままであるように、流体140が混合されることを確実にする。埋め込み型装置100が埋め込まれる患者の活動レベルに応じて、埋め込み型装置100の動作の循環モードは必要ではない場合がある。すなわち、患者の活動レベルは、流体140を混合して、半透膜124を通る水の浸透圧に対する半透膜124の内側表面近くの流体140の十分に高い浸透濃度を維持するのに十分である可能性がある。
【0036】
図2は、いくつかの実施形態による循環血液量過多症を治療する別の装置200を示す。
図示されるように、埋め込み型装置200は、第1の拡張可能チャンバ110と、第2の拡張可能チャンバ210と、ピストン122を含む剛性チャンバ120と、複数の弁132,134,232,234と、埋め込み型装置200内の流体140と、を含む。
【0037】
第1の拡張可能チャンバ110は、埋め込み型装置100を参照して説明された拡張可能チャンバ110の少なくとも一部分において第1の半透膜112を含む。同様に、追加の第2の拡張可能チャンバ210は、第2の拡張可能チャンバ210の少なくとも一部分において第2の半透膜212を含む。第1および第2の拡張可能チャンバ110,210の各拡張可能チャンバは、流体140が内部に配置され、埋め込み型装置200の外部の体液からの水分を浸透によって取り込むときに拡張するように構成されている。すなわち、体液が流体140よりも低い浸透濃度を有する場合に、拡張可能チャンバ110内の流体140が拡張可能チャンバ110の外側の体液から第1の半透膜112を通って流体140内に浸透によって水分を取り込むとき、拡張可能チャンバ110は拡張し、体液が流体140よりも低い浸透濃度を有する場合に、拡張可能チャンバ210内の流体140が拡張可能チャンバ210の外側の体液から第2の半透膜212を通って流体140内に浸透によって水分を取り込むとき、拡張可能チャンバ210は拡張する。
【0038】
複数の弁は、第1の拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間の第1の弁132と、第2の拡張可能チャンバ210と剛性チャンバ120との間の第2の弁232と、を含む。第1および第2の弁132,232の各弁は、弁が開いているかまたは開位置にあるときに、流体140が隣接するチャンバ間を流れることを可能にするかまたはさせる開位置を有するように構成されている。すなわち、拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間の第1の弁132は、第1の弁132が開いているときに、流体140が拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間を流れることを可能にするように構成され、拡張可能チャンバ210と剛性チャンバ120との間の第2の弁232は、第2の弁232が開いているときに、流体140が拡張可能チャンバ210と剛性チャンバ220との間を流れることを可能にするように構成されている。複数の弁はまた、剛性チャンバ120と剛性チャンバ120の外部との間の第3の弁134と、剛性チャンバ120と剛性チャンバ120の外部との間の第4の弁234と、を含み、第3の弁134および第4の弁234は、ピストン122によって互いに離間されている。第3の弁134は、第3の弁134が開いているかまたは開位置にあるときに、流体140が剛性チャンバ120から第3の半透膜124に流れて、埋め込み型装置200から水分を排出することを可能にするかまたはさせる開位置を有するように構成されている。第4の弁234は、第4の弁234が開いているかまたは開位置にあるときに、流体140が剛性チャンバ120から第4の半透膜224に流れて、埋め込み型装置200から水分を排出することを可能にするかまたはさせる開位置を有するように構成されている。
【0039】
埋め込み型装置200は、埋め込み型装置100に関して説明したように、ポンプ(図示せず)をさらに含む。同様に、ポンプは、複数の弁132、134、232、234と協働して動作するように構成されている。ポンプは、第1の弁123が開いているときに第1の拡張可能チャンバ110と剛性チャンバ120との間で流体140を移動させ、第4の弁234が開いているときに流体140を剛性チャンバ120から第4の半透膜224に移動させるように構成されている。ポンプはまた、第2の弁232が開いているときに第2の拡張可能チャンバ210と剛性チャンバ120との間で流体140を移動させ、第3の弁134が開いているときに流体140を剛性チャンバ210から第3の半透膜124に移動させるように構成されている。
【0040】
ピストン122は、第1および第4の弁132,234が開いているときに、剛性チャンバ120内でポンプ駆動された引き込みストロークを実行するように構成されて、流体140などの任意の複数の流体内容物を第1の拡張可能チャンバ110から第1の拡張可能チャンバ110に近接する剛性チャンバ120内に引き込むとともに、流体140などの任意の複数の流体内容物を拡張可能チャンバ210に近接する剛性チャンバ120から第4の半透膜224を介して押し出して、埋め込み型装置200から水分を排出する。ピストン122はまた、第2および第3の弁232,134が開いているときに、剛性チャンバ120内でポンプ駆動された押し出しストロークを実行するように構成されて、流体140などの任意の複数の流体内容物を第1の拡張可能チャンバ110に近接する剛性チャンバ120から第3の半透膜124を介して押し出して埋め込み型装置200から水分を排出するとともに、流体140などの任意の複数の流体内容物を第2の拡張可能チャンバ210から第2の拡張可能チャンバ210に近接する剛性チャンバ120内に引き込む。埋め込み型装置100を参照して説明されたポンプ駆動された押し出しストロークと同様に、上述のポンプ駆動されたストロークは、弁を適時に開閉して、流体140の保持液を剛性チャンバ120から拡張可能チャンバ110,210内に追加の循環のために押し出すようにさらに用いられることができる。さらに、上述のポンプ駆動されたストロークは、埋め込み型装置100のもののような動作の循環モードでさらに用いられることができる。
【0041】
埋め込み型装置100、200の第1、第2、第3及び第4の半透膜112,124,212,224の各半透膜は、水分が半透膜を通って透過するのを可能にするが、ポリペプチドまたはタンパク質などのより大きい代謝物、血小板などの細胞断片、または赤血球または白血球などの細胞を透過させない孔径の孔を有する。しかしながら、半透膜の孔はNa+、K+、Ca2+、Mg2+、またはCl-などのイオン、ならびに前述のより大きな代謝物よりも低分子量の尿素またはクレアチニンなどの分子が半透膜を通って透過するのを可能にするような大きさにされることができる。そのような半透膜の一例は、限定するものではないが、透析膜(dialysis membrane)を含む。
【0042】
埋め込み型装置100または200内の流体140、または浸透流体(osmotic fluid)は、ポリ(poly)(エチレングリコール(ethylene glycol))(「PEG」)またはポリアクリル酸ナトリウムなどの溶解ポリマー(dissolved polymer)の水溶液(aqueous solution)であり得、溶解したポリマーは、サイズに基づいて、第1、第2、第3及び第4の半透膜112,124,212,224の任意の半透膜を通過することから除外される。流体140中の溶解ポリマーの初期濃度または基底濃度(basal concentration)は、埋め込まれた装置100または200が患者に埋め込まれている間に、第1の半透膜112または第2の半透膜212を通して、患者が必要とする以上の水分を除去する浸透ポテンシャル(osmotic potential)を生成するのに十分である。すなわち、浸透流体は、体液よりも高い浸透濃度を有し、埋め込まれた装置100または200が患者に埋め込まれている間、浸透流体が第1の半透膜112または第2の半透膜212を介して体液から水分を取り込むことを可能にする。
【0043】
埋め込み型装置100および埋め込み型装置200の各埋め込み型装置は、循環血液量過多症または肝疾患を含む1つ以上の理由により、患者の腹膜腔(peritoneal cavity)内に溜まった水分(腹水として知られる状態)を除去するために、患者の少なくとも腹膜腔内に埋め込むように構成されている。腹膜腔は、患者の動作によって拡張可能チャンバ110,210内の流体140が流体を動かし続けることを可能にし、それによって浸透を促進する濃度勾配を維持する動きを促進するため、埋め込み型装置100,200にとって有利な位置である。さらに、埋め込み型装置100は、患者の膀胱を介して患者が必要とする量を超える水分を除去するために、患者の尿管にシャントされる(shunted)ことができる。
【0044】
埋め込み型装置100及び200は電気的に電力供給される装置であるので、埋め込み型装置100及び埋め込み型装置200の各々は、誘導により埋め込み型装置を充電又は電力供給するために商用電源と接続するように動作可能なベルトのようなコンパニオン装置(companion device)の相補的誘導コイルと結合するように構成された誘導コイル(図示せず)をさらに含む。例えば、ベルトは、患者が休んでいる日中または患者が眠っている夜間においてプラグを差し込んで(plugged in)装着されることができる。
【0045】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示され、特定の実施形態が若干詳細に開示されるが、それらの特定の実施形態が本明細書に提供される概念の範囲を限定する意図はない。追加の適応および/または変更は当業者に明白であり得、より広い態様において、これらの適応および/または変更もまた包含される。したがって、本明細書に提供される概念の範囲から逸脱することなく、特定の実施形態から逸脱がなされる場合がある。
【国際調査報告】