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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】新規化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/06
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/00
A61P9/00
A61P25/14
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/32
A61P25/34
A61P25/36
A61P29/00
A61P1/02
A61P19/00
A61P19/02
A61K31/517
A61P3/04
A61P1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522032
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 US2019057549
(87)【国際公開番号】W WO2020086650
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/749,518
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ハイリン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF02
4C050GG01
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA11
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA67
4C086ZA69
4C086ZA70
4C086ZA94
4C086ZC39
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、本明細書に記載されている式Iで示される新規PDE2阻害化合物、薬剤としてのそれらの使用、およびそれらを含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1およびR2は窒素原子と一緒になってヘテロC3-7シクロアルキルを形成し(例えば、アゼチジン-1-イルを形成し);
(ii) R3は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(iii) R4は、ヘテロアリール、ハロ(例えば、クロロ)、シアノ、またはC1-4アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル、例えば、イソプロピル)、C3-7シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)、C1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)およびハロC1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(iv) R5は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(v) R6は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)である]
で示される化合物。
【請求項2】
1およびR2が窒素原子と一緒になってアゼチジン-1-イルを形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
3がC1-4アルキル(例えば、メチル)である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
4が、C1-4アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル、例えば、イソプロピル)、C3-7シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)、C1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)およびハロC1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)から選択される1個以上の基で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、上記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
4が、C1-4アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル、例えば、イソプロピル)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、上記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
4が、C3-7シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、上記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
4が、C1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、上記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
4が、ハロC1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、上記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
5およびR6がHである、上記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
化合物が、遊離形態または塩形態の、
8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-5-(p-トリル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-3,5-ジメチル-1-(1-メチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-イソプロピルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-エチルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピラジン
からなる群から選択される、上記式のいずれか。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随して含む医薬組成物。
【請求項12】
PDE2媒介障害の治療方法であって、それを必要とする対象体に、請求項1~10のいずれかに記載の化合物の有効量または請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
障害が、神経学的障害(例えば、片頭痛;癲癇;アルツハイマー病;パーキンソン病;脳損傷;脳卒中;脳血管疾患(脳動脈硬化症、脳アミロイド血管症、遺伝性脳出血、および低酸素性虚血性脳症を含む);脊髄性筋萎縮症;側索硬化症;多発性硬化症;認知障害(健忘症、老人性認知症、HIV関連認知症、アルツハイマー病関連認知症、ハンチントン病関連認知症、レビー小体病関連認知症、血管性認知症、薬物関連認知症、せん妄、および軽度認知障害を含む);パーキンソン病およびうつ病関連認知機能障害;精神発達遅延(ダウン症候群および脆弱X症候群を含む);睡眠障害(過眠、概日リズム睡眠障害、不眠症、睡眠時随伴症、および睡眠遮断を含む);精神障害(例えば、不安(急性ストレス障害、全般不安症、社交不安症、パニック症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害、限局性恐怖症、社会恐怖症、慢性不安障害および強迫性障害を含む);作為症(急性幻覚性躁病を含む);衝動制御障害(病的賭博、病的放火、病的窃盗および間欠爆発症を含む);気分障害(双極I型障害、双極II型障害、躁病、混合型情動状態、大うつ病、慢性うつ病、季節性うつ病、精神病性うつ病および産後うつ病を含む);精神運動障害(錐体外路系運動障害、例えば、パーキンソニズム、レビー小体病、振戦、薬物誘発性振戦、薬物誘発性遅発性ジスキネジア、Lドパ誘発性ジスキネジアおよび下肢静止不能症候群);精神病性障害(統合失調症(例えば、持続性または突発性、妄想型、破瓜型、緊張型、未分化および残遺型統合失調症)、統合失調感情障害、統合失調症様障害、および妄想性障害を含む);薬物依存症(麻薬依存症、アルコール依存症、アンフェタミン依存症、コカイン中毒、ニコチン依存症、および薬物禁断症候群を含む);摂食障害(食欲不振、過食症、過食性障害、食欲過剰、および氷食症を含む);小児精神障害(注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、素行障害(例えば、チック障害、例えば一過性チック障害、慢性チック障害、運動性チック障害または音声性チック障害)、自閉症および自閉症スペクトラム症(ASD)を含む);向精神薬使用に起因する精神および行動障害;心血管障害(例えば、肺高血圧症および肺動脈性肺高血圧症);ならびに疼痛(例えば、骨および関節痛(変形性関節症)、反復動作による疼痛、歯痛、癌性疼痛、筋筋膜痛(筋損傷、線維筋痛症)、周術期疼痛(一般外科、婦人科)、慢性疼痛および神経障害性疼痛)からなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
障害が、不安、うつ病、自閉症スペクトラム症、統合失調症、自閉症および/または統合失調症の患者における不安および/またはうつ病、ならびに統合失調症または認知症に関連する認知障害から選択される、請求項12記載の方法.
【請求項15】
請求項12~14いずれか1項記載の疾患、障害または状態の治療または予防的処置のための(医薬の製造において用いるための)遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、請求項1~10のいずれかに記載の化合物、または請求項10記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項12~14いずれか1項記載の疾患、障害または状態の治療または予防的処置のための(医薬の製造における)使用のための遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、請求項1~10のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項17】
医薬としての使用のための、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、請求項1~10のいずれかに記載の化合物を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、2018年10月23日に出願された米国仮出願第62/749,518号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)の優先権および利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、下記式Iで示されるPDE2阻害化合物、薬剤としてのそれらの使用およびそれらを含む医薬組成物に関する。これらの化合物は、例えば不安、うつ病、自閉症スペクトラム症(ASD)、統合失調症および認知障害などのPDE2媒介障害の治療に、有用である。
【背景技術】
【0003】
PDE2は、脳(海馬、線条体および前頭前野を含む)、心臓、血小板、内皮細胞、副腎球状帯細胞(adrenal glomerulosa cells)およびマクロファージを含む多種多様な組織および細胞型において発現する105-KDaのホモダイマーである。cGMPは、この酵素に対する好ましい基質およびエフェクター分子であるが、PDE2は、環状アデノシン一リン酸(cAMP)および環状グアノシン一リン酸(cGMP)の両方を加水分解し、いくつかの生理学的プロセスに関与していると考えられている。具体的には、cGMPシグナル伝達を低下させる一酸化窒素シンターゼ(NOS)の阻害が、抗不安化合物であるベンゾジアゼピンクロルジアゼポキシドの行動効果を弱めることが示されている。また、Bay 60-7550などの市販されているPDE2のツール阻害剤は、脳内の環状ヌクレオチドレベルを上昇させ、正常な齧歯動物およびストレス状態にある齧歯動物において有意な抗不安効果および抗うつ効果を有することが示されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。Bay 60-7550によるPDE2の阻害は、刺激を受けた初代神経細胞培養においてcGMPレベルおよびcAMPレベルを用量反応的に上昇させること;電気刺激に反応して海馬スライス標本において長期増強(LTP)を強化すること;新規物体認識動物モデルにおける学習およびラットにおける社会的認識タスクを強化すること;加齢障害ラットにおける新規物体記憶の獲得段階および固定段階を改善すること;トレーニング後に投与した場合に物体の位置および認識タスクのパフォーマンスを改善することが示されている。非特許文献5。Bay 60-7550は、脳内の神経型NOS活性を高めることにより、ラットの認知機能および記憶機能を改善することも示されている。(非特許文献6)。したがって、PDE2は効果的な行動および認知機能において重要な役割を果たす。
【0004】
効果的な行動および認知機能に加え、内皮細胞において、PDE2A mRNAおよび活性は、インビトロでの腫瘍壊死因子-α刺激に反応して高度に誘導されることが観察されている。9-(6-フェニル-2-オキソヘキサ-3-イル)-2-(3,4-ジメトキシベンジル)-プリン-6-オン(PDP)によるPDE2活性の選択的阻害は、内皮細胞のバリア機能を大きく変化させ、これは、PDE2が病理学的条件下で循環系の体液およびタンパク質のインテグリティの調節において重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。したがって、PDE2は、敗血症またはより局所的な炎症反応の優れた薬理学的標的となる可能性がある。
【0005】
最近の研究では、PDE2阻害はまた、肺拡張を誘発し、肺血管リモデリングを防止し、肺高血圧症に特徴的な右心室肥大を減少させることが示されており、これは、肺高血圧症におけるPDE2阻害の治療可能性を示唆している。非特許文献7。
【0006】
有望な前臨床データおよび有望な薬物標的としてのPDE2の同定にもかかわらず、既存のPDE2化合物の代謝安定性が低く、血液脳関門を通過できず、したがって、脳へ浸透性が低いことため、現在、臨床試験下にあるPDE2阻害剤は知られていない。したがって、優れた生物物理学的および物理化学的特性を示しながら、PDE2活性を選択的に阻害する化合物が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Xu et al., Eur. J. Pharmacol. (2005) 518:40-46
【非特許文献2】Masood et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. (2008) 326:369-379
【非特許文献3】Masood et al., JPET (2009) 331:690-699
【非特許文献4】Xu et al., Intl. J. Neuropsychopharmacol. (2013) 16:835-847
【非特許文献5】Gomez et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2013) 23:6522-6527
【非特許文献6】Domek-Lopacinska et al. (2008) Brain Res. 1216:68-77
【非特許文献7】Bubb et al., “Inhibition of Phosphodiesterase 2 Augments cGMP and cAMP Signaling to Ameliorate Pulmonary Hypertension”, Circulation, August 5, 2014, p. 496-507, DOI:10.1161/CIRCULATIONAHA.114.009751
【発明の概要】
【0008】
開示の概要
本開示は、改善された経口利用能および脳アクセスを有する強力かつ選択的なPDE2阻害特性を有する新規化合物を提供する。したがって、第1の態様では、本開示は、遊離形態または塩形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1およびR2は窒素原子と一緒になってヘテロC3-7シクロアルキルを形成し(例えば、アゼチジン-1-イルを形成し);
(ii) R3は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(iii) R4は、ヘテロアリール、ハロ(例えば、クロロ)、シアノ、またはC1-4アルキル(例えば、エチル)、C3-7シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)、C1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)およびハロC1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(iv) R5は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(v) R6は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)である]
で示される化合物を提供する。
【0009】
本開示は、さらに、以下のとおりの式Iで示される化合物を提供する:
【0010】
1.1 R1およびR2が窒素原子と一緒になってヘテロC3-6シクロアルキル(例えば、アゼチジン-1-イル)を形成する、式I。
【0011】
1.2 R1およびR2が窒素原子と一緒になってアゼチジン-1-イルを形成する、上記式のいずれか。
【0012】
1.3 R3がC1-4アルキル(例えば、メチル)である、上記式のいずれか。
【0013】
1.4 R3がメチルである、上記式のいずれか。
【0014】
1.5 R4が、C1-4アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル、例えば、イソプロピル)、C3-7シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)、C1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)およびハロC1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)から選択される1個以上の基で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、上記式のいずれか。
【0015】
1.6 R4が、C1-4アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル、例えば、イソプロピル)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、式Iまたは式1.1~1.5のいずれか。
【0016】
1.7 R4が、C3-7シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、式Iまたは式1.1~1.5のいずれか。
【0017】
1.8 R4が、C1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、式Iまたは式1.1~1.5のいずれか。
【0018】
1.9 R4が、ハロC1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されているアリール(例えば、フェニル)である、式Iまたは式1.1~1.5のいずれか。
【0019】
1.10 R5がHである、上記式のいずれか。
【0020】
1.11 R5がC1-4アルキル(例えば、メチル)である、式Iまたは式1.1~1.9のいずれか。
【0021】
1.12 R6がHである、上記式のいずれか。
【0022】
1.13 R6がC1-4アルキル(例えば、メチル)である、式I、または式1.1~1.11のいずれか。
【0023】
1.14 化合物が、遊離形態または塩形態の、
8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-5-(p-トリル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-3,5-ジメチル-1-(1-メチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-イソプロピルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-エチルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン、
8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピラジン
からなる群から選択される、上記式のいずれか。
【0024】
1.15 化合物が、例えば1μM未満、例えば250nM以下、例えば50nM以下のIC50をもって、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE2媒介)加水分解を阻害する、上記式のいずれか。
【0025】
1.16 化合物が、生物物理学的および物理化学的な抗うつ活性および/または抗不安活性が改善された、ホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE2媒介)を阻害する、上記式のいずれか。
【0026】
第2の態様では、本開示は、本開示化合物、すなわち、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随して含む医薬組成物を提供する。
【0027】
本開示は、また、PDE2媒介障害、例えば以下に記載される障害の治療(特に、不安、うつ病、自閉症スペクトラム症(ASD)、統合失調症、認知障害の治療)のための本開示化合物の使用方法を提供する。このリストは、網羅的であることを意図したものではなく、以下に記載するような他の疾患および障害を含み得る。
【0028】
したがって、第3の態様では、本開示は、PDE2媒介障害の治療方法であって、それを必要とする対象体に、本明細書に開示されている本開示化合物、すなわち、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物の治療有効量、または本明細書に開示されている医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0029】
第3の態様のさらなる実施態様では、本開示は、対象体、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトにおける、以下の障害:
神経学的障害(例えば、片頭痛;癲癇;アルツハイマー病;パーキンソン病;脳損傷;脳卒中;脳血管疾患(脳動脈硬化症、脳アミロイド血管症、遺伝性脳出血、および低酸素性虚血性脳症を含む);脊髄性筋萎縮症;側索硬化症;多発性硬化症;
認知障害(健忘症、老人性認知症、HIV関連認知症、アルツハイマー病関連認知症、ハンチントン病関連認知症、レビー小体病関連認知症、血管性認知症、薬物関連認知症、せん妄、および軽度認知障害を含む);パーキンソン病およびうつ病関連認知機能障害;
精神発達遅延(ダウン症候群および脆弱X症候群を含む);
睡眠障害(過眠、概日リズム睡眠障害、不眠症、睡眠時随伴症、および睡眠遮断を含む);
精神障害(例えば、不安(急性ストレス障害、全般不安症、社交不安症、パニック症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害、限局性恐怖症、社会恐怖症、慢性不安障害および強迫性障害を含む);作為症(急性幻覚性躁病を含む);
衝動制御障害(病的賭博、病的放火、病的窃盗および間欠爆発症を含む);
気分障害(双極I型障害、双極II型障害、躁病、混合型情動状態、大うつ病、慢性うつ病、季節性うつ病、精神病性うつ病および産後うつ病を含む);
精神運動障害(錐体外路系運動障害、例えば、パーキンソニズム、レビー小体病、振戦、薬物誘発性振戦、薬物誘発性遅発性ジスキネジア、Lドパ誘発性ジスキネジアおよび下肢静止不能症候群);
精神病性障害(統合失調症(例えば、持続性または突発性の、妄想型統合失調症、破瓜型統合失調症、緊張型統合失調症、未分化統合失調症および残遺型統合失調症を含む)、統合失調感情障害、統合失調症様障害および妄想性障害);
薬物依存症(麻薬依存症、アルコール依存症、アンフェタミン依存症、コカイン中毒、ニコチン依存症、および薬物禁断症候群を含む);
摂食障害(食欲不振、過食症、過食性障害、食欲過剰、および氷食症を含む);
小児精神障害(注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、素行障害(例えば、チック障害、例えば一過性チック障害、慢性チック障害、運動性チック障害または音声性チック障害)、自閉症および自閉症スペクトラム症(ASD)を含む);
向精神薬使用に起因する精神および行動障害;
心血管障害(例えば、肺高血圧症および肺動脈性肺高血圧症);ならびに
疼痛(例えば、骨および関節痛(変形性関節症)、反復動作による疼痛、歯痛、癌性疼痛、筋筋膜痛(筋損傷、線維筋痛症)、周術期疼痛(一般外科、婦人科)、慢性疼痛および神経障害性疼痛)
の治療方法であって、該対象体に、本明細書に開示されている本開示化合物、すなわち、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物の治療有効量、または本明細書に開示されている医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0030】
一の実施態様では、該疾患または障害は、不安、うつ病、自閉症スペクトラム症および統合失調症からなる群から選択され、例えば自閉症および/または統合失調症の患者における不安および/またはうつ病である。別の実施態様では、該疾患または障害は、統合失調症または認知症に関連する認知障害である。
【0031】
第4の態様では、本開示は、本明細書に開示されているPDE2媒介障害の治療のための(医薬の製造において用いるための)、本明細書に開示されている本開示化合物、すなわち、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物を提供する。
【0032】
第5の態様では、本開示は、本明細書に開示されている本開示化合物、すなわち、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随して含む、本明細書に開示されているPDE2媒介障害の治療において用いるための医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
開示の詳細な説明
別段の定めがないかまたは文脈から明らかではない場合、本明細書における以下の用語は以下の意味を有する:
【0034】
(a) 「アルキル」は、本明細書で用いる場合、飽和または不飽和の炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、好ましくは1~4個の炭素原子を有しており、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、一置換、二置換または三置換されていてもよい。
【0035】
(b) 「アリール」は、本明細書で用いる場合、単環式または二環式芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)またはヒドロキシで、置換されていてもよい。
【0036】
(c) 「ヘテロアリール」は、本明細書で用いる場合、芳香環を構成する原子の1個以上が炭素ではなく硫黄または窒素である芳香族部分、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキルまたはヒドロキシで、置換されていてもよい。
【0037】
本開示化合物、例えば、式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として存在し得る。本明細書では特記しない限り、「本開示化合物」などの語は、あらゆる形態、例えば遊離形態または酸付加塩形態、または該化合物が酸性置換基を含有する場合には塩基性付加塩形態の化合物を包含すると解されるべきである。本開示化合物は、医薬品としての使用を目的としているため、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば、遊離の本開示化合物またはその薬学的に許容される塩の単離または精製に有用であり得、したがって、含まれる。本開示化合物は、場合によってはプロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本開示化合物に変換される化合物である。例えば、本開示化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含む場合、これらの置換基は生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理的条件下で加水分解されて酸(ヒドロキシ置換基を有する本開示化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本開示化合物の場合)を生じ、投与される用量でそれ自体が生理的に許容される、本開示化合物のエステルをいう。したがって、本開示化合物がヒドロキシ基を含む場合、例えば、化合物-OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本開示化合物がカルボン酸を含む場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、該用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0038】
本開示化合物は、本明細書では、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および複合体を含む。本開示の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本開示における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。さらに、本開示の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得る。本開示は、光学的に純粋な立体異性体のいずれか、および該立体異性体の任意の組み合わせの使用を含む。
【0039】
また、本開示化合物は、その安定同位体および不安定同位体を包含することが意図されている。安定同位体は、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、1つの追加の中性子を含む非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は維持されると考えられ、そのような化合物は非同位体アナログの薬物動態の測定に対する有用性も有する。例えば、本開示化合物の特定の位置にある水素原子を重水素(非放射性の安定同位体)に置き換えてもよい。既知の安定同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して追加の中性子を含む放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18FがI、C、Fの対応する豊富な種に取って代わることができる。本開示の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本開示の化合物の放射性画像化および/または薬物動態研究に有用である。同位体標識された式Iで示される化合物は、一般に、非同位体標識された試薬の代わりに同位体標識された試薬を用いることによって実施することにより調製することができる。
【0040】
語句「本開示化合物」または「本開示PDE2阻害剤」は、本明細書に開示されている化合物、例えば、遊離形態または塩形態の、上記式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物の全てを包含する。
【0041】
用語「治療」および「治療すること」とは、したがって、疾患の症状の治療または改善および疾患の原因の治療を包含するものとして理解されるべきである。一の実施態様では、本開示は、本明細書に開示されている疾患または障害の治療方法を提供する。別の実施態様では、本開示は、本明細書に開示されている疾患または障害の予防方法を提供する。
【0042】
治療方法については、用語「有効量」とは、特定の疾患または障害を治療するための治療有効量を包含することを意図している。
【0043】
用語「肺高血圧症」とは、肺動脈性肺高血圧症を包含することを意図している。
【0044】
用語「対象体」は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)を含む。特定の実施態様では、本開示は、ヒトおよび非ヒトの両方を包含する。別の実施態様では本開示は、非ヒトを包含する。他の実施態様では、該用語はヒトを本願する。
【0045】
用語「含む」は、本開示で用いる場合、制限が無いことを意図しており、言及されていない追加の要素または方法ステップを除外するものではない。
【0046】
用語「認知障害」とは、認知欠損(すなわち、同じ一般的な年齢の集団内の他の個人と比較して、個人の記憶、知力、学習、論理、注意または実行機能(作業記憶)などのうち1つ以上の認知的側面における機能が亜正常または最適以下である)の症状を含むあらゆる障害をいう。したがって、認知障害としては、健忘症、老人性認知症、HIV関連認知症、アルツハイマー病関連認知症、ハンチントン病関連認知症、レビー小体病関連認知症、血管性認知症、薬物関連認知症、せん妄、および軽度認知障害が挙げられるが、これらに限定されない。認知障害はまた、精神病(統合失調症)、気分障害、双極性障害、脳卒中、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、脳外傷および薬物乱用、アスペルガー症候群および加齢性記憶障害に主に関連するが排他的ではない障害であり得る。
【0047】
本開示化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記の式I、または式1.1~1.16のいずれかによって示される化合物は、唯一の治療薬として使用することができるが、他の活性薬剤と組み合わせて、またはそれとの共投与のために使用することもできる。
【0048】
本開示を実施する際に使用される投与量は、もちろん、例えば、治療されるべき特定の疾患または状態、使用される特定の本開示化合物、投与様式、および所望の治療に応じて変化する。本開示化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む好適な経路で投与することができるが、好ましくは経口で投与される。一般的に、例えば上記のような疾患の治療のための、満足のいく結果は、約0.01~2.0mg/kgのオーダーの用量での経口投与で得られることが示されている。したがって、大型哺乳動物、例えばヒトでは、経口投与のための示された1日用量は、約0.75~150mgの範囲内であり、毎日または徐放性形態で、便宜的には1回投与されるか、または2~4回の分割用量で投与される。したがって、経口投与用の単位剤形は、例えば、そのための薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に本開示化合物約0.2~75または150mg、例えば約0.2または2.0~50、75または100mgを含み得る。
【0049】
本開示化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、およびガレノス製剤技術分野で知られる技術を用いて調製され得る。薬学的に許容される担体は、慣用の薬学的担体または賦形剤を含み得る。適切な薬学的担体としては、不活性な希釈剤または充填剤、水および様々な有機溶媒(水和物および溶媒和物など)が挙げられる。当該医薬組成物は、必要に応じて、矯味矯臭剤、結合剤、賦形剤などの追加成分を含み得る。したがって、経口投与の場合、クエン酸などの種々の賦形剤を含む錠剤を、デンプン、アルギン酸および特定の複合ケイ酸塩などの種々の崩壊剤、ならびにシュークロース、ゼラチンおよびアカシアなどの結合剤と一緒に用いることができる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤は、打錠の目的でしばしば有用である。同様のタイプの固体組成物は、ソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル剤にも使用され得る。したがって、材料の非限定的な例としては、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液またはエリキシル剤が経口投与のために望まれる場合、そこに含まれる活性化合物は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組み合わせなどの希釈剤とともに、様々な甘味料または矯味矯臭剤、着色料または染料、および必要に応じて乳化剤または懸濁化剤と組み合わせることができる。該医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、徐放性製剤、液剤もしくは懸濁剤としての経口投与に適した形態、無菌液剤、懸濁剤もしくは乳剤としての非経口注射に適した形態、軟膏剤もしくはクリーム剤としての局所投与に適した形態、または坐薬としての直腸投与に適した形態であり得る。
【0050】
本明細書の開示化合物およびその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載および例示されている方法を使用し、およびそれに類似した方法によって、ならびに化学技術分野で知られている方法によって製造することができる。そのような方法には、以下に記載するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのプロセスの出発材料は、市販されていない場合は、既知の化合物の合成と同様または類似の技術を用いて化学技術から選択される手順によって作製され得る。本明細書で引用されているすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。
【実施例
【0051】
実施例1: 8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジンの合成
標記化合物は以下に示すスキーム1に従って合成される。
【化2】
【0052】
(2): N-((3-クロロピラジン-2-イル)メチル)アセトアミド(R1=H)。
(3-クロロピラジン-2-イル)メタナミン・塩酸塩(500mg、2.78mmol)の酢酸エチル(10mL)中撹拌懸濁液に無水酢酸(315μL、3.33mmol)を滴下し、次いで、トリエチルアミン(1.16mL、8.34mmol)を添加した。該混合物を室温で1時間撹拌し、溶媒を減圧除去した。得られた残留物を塩化メチレン(150mL)に溶解し、飽和NaHCO3(2×25mL)で洗浄した。有機相を減圧したにて蒸発させ、高真空下にてさらに乾燥させて、標記化合物をベージュ色の固体として得(376mg、収率72.9%)、さらなる精製を行わずにそのまま次反応のために使用した。MS (ESI) m/z 186.0507 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.5 (d, J = 2.51 Hz, 1H), 8.3 (d, J = 2.55 Hz, 1H), 4.7 - 4.7 (m, 2H), 2.1 (s, 3H))。
【0053】
(3): 8-クロロ-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(R1=H)。
N-[(3-クロロピラジン-2-イル)メチル]アセトアミド(340mg、1.83mmol)のアセトニトリル(4mL)中撹拌懸濁液にPOCl3(850μL、9.14mmol)を滴下し、次いで、DMF 2滴を添加した。該混合物を60℃で1.5時間撹拌し、溶媒を減圧除去した。得られた残留物を酢酸エチル(100mL)に溶解し、飽和Na2CO3(2×25mL)およびブライン(25mL)で連続して洗浄した。有機相を減圧下にて蒸発させ、高真空下にてさらに乾燥させて、標記化合物をベージュ色の固体として得(329mg、収率107%、該粗生成物は塩を含み得る)、さらなる精製を行わずにそのまま次反応のために使用した。MS (ESI) m/z 168.0475 [M + H]+.
【0054】
(4): 8-クロロ-1-ヨード-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(R1=H)。
8-クロロ-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(270mg、1.61mmol)およびN-ヨードスクシンイミド(506mg、2.25mmol)の無水DMF(1.5mL)中溶液をアルゴンで2回脱気し、次いで、110℃で24時間撹拌した。別のバッチのヨードスクシンイミド(506mg、2.25mmol)を添加した。該反応混合物を70℃で12時間撹拌し続け、溶媒を減圧除去した。得られた粗生成物を、溶離液としてヘキサン中0~100%酢酸エチル勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物を明るい橙色(light orange)の固体として得た(414mg、収率88%)。MS (ESI) m/z 293.9383 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.6 - 7.5 (m, 1H), 7.4 - 7.3 (m, 1H), 2.8 (s, 3H)。
【0055】
(5): 8-(アゼチジン-1-イル)-1-ヨード-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(R1=H)。
8-クロロ-1-ヨード-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(209mg、0.71mmol)、アゼチジン・塩酸塩(140mg、1.49mmol)、およびトリエチルアミン(400μL、2.87mmol)の無水DMF(2mL)中混合物を室温で一夜撹拌した。溶媒を減圧除去し残留物を酢酸エチル(150mL)に溶解した。得られた溶液を1N NaOH(3×40mL)で洗浄し、有機相を蒸発乾固させ、得られた残留物を高真空下にてさらに乾燥させて、標記化合物を青白い(pale)固体として得(137mg、収率61%)、さらなる精製を行わずにそのまま次反応のために使用した。MS (ESI) m/z 315.0381 [M + H]+
【0056】
(6): 8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン(R1=H)。
8-(アゼチジン-1-イル)-1-ヨード-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(500mg、1.59mmol)、(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸(401mg、3.183mmol)、炭酸カリウム(659mg、4.78mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(185mg、0.16mmol)の、NMP(1mL)、EtOH(4mL)および水(0.15mL)の混合物中混合物をアルゴンで2回脱気し、次いで、マイクロ波によって100℃3時間加熱した。溶媒を減圧除去し残留物を酢酸エチル(50mL)に溶解した。得られた溶液を1N NaOH(2×4mL)で洗浄し、蒸発乾固させた。残留物をヘキサン中0~100%酢酸エチルの勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、標記生成物をチョコレート色の油として得た(200mg、収率47%)。MS (ESI) m/z 269.1748 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.7 (s, 1H), 7.7 (s, 1H), 7.1 (d, J = 5.11 Hz, 1H), 7.1 (d, J = 5.10 Hz, 1H), 4.0 (s, 4H), 2.6 (s, 3H), 2.3 - 2.2 (m, 2H)。
【0057】
(7): 8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-5-(p-トリル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン(R1=H、R2=Me)。
【化3】
8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン(58mg、0.224mmol)、1-ブロモ-4-メチルベンゼン(33μL、0.268mmol)、ピバル酸(11mg、0.112mmol)および炭酸カリウム(93mg、0.672mmol)のトルエン(1mL)中懸濁液をアルゴンで脱気し、ジ(アダマンタン-1-イル)(ブチル)ホスフィン(19mg、0.054mmol)および酢酸パラジウム(13mg、0.045mmol)を添加した。該混合物を再度アルゴンで脱気し、次いで、125℃で24時間加熱した。溶媒を減圧除去した後、残留物を、0.1%ギ酸含有水中0~18%アセトニトリルの勾配液を使用して半分取HPLCシステムで16分間精製して、標記化合物をオフホワイト色の固体として得た(28mg、収率35%)。MS (ESI) m/z 359.2108 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.67 (s, 1H), 7.31 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.22 - 7.19 (m, 2H), 7.15 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.08 - 6.99 (m, 2H), 4.60 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.93 (s, 1H), 3.90 (s, 3H), 3.70 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 3.61 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 2.64 (s, 2H), 2.60 (s, 1H), 2.46 (s, 1H), 2.38 (s, 2H), 2.37 - 2.30 (m, 2H)。
【0058】
実施例1の合成ステップ7に記載した手順に従って類似の方法で実施例2~6を調製した。
【0059】
実施例2: 8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-エチルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチルイミダゾ[1,5-a]ピラジン(8、R1=H、R2=Et)。
【化4】
MS (ESI) m/z 373.2778 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.6 (s, 1H), 7.3 (d, J = 8.17 Hz, 2H), 7.2 - 7.2 (m, 2H), 7.1 (d, J = 5.07 Hz, 1H), 7.0 (d, J = 5.05 Hz, 1H), 3.9 (s, 3H), 3.9 - 3.8 (m, 4H), 2.7 - 2.6 (m, 2H), 2.6 (s, 3H), 2.2 - 2.1 (m, 2H), 1.2 (t, J = 7.61 Hz, 3H)。
【0060】
実施例3: 8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-イソプロピルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピラジン(9、R1=H、R2=iPr)。
【化5】
MS (ESI) m/z 387.3552 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.6 (s, 1H), 7.3 (d, J = 8.17 Hz, 2H), 7.2 (d, J = 8.14 Hz, 2H), 7.1 (d, J = 5.02 Hz, 1H), 7.0 (d, J = 5.01 Hz, 1H), 3.9 (s, 3H), 3.8 (s, 4H), 2.9 - 2.8 (m, 1H), 2.6 (s, 3H), 2.3 - 2.1 (m, 2H), 1.2 - 1.2 (m, 6H)。
【0061】
実施例4: 8-(アゼチジン-1-イル)-1-(5-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピラジン(10、R1=H、R2=シクロプロピル)。
【化6】
MS (ESI) m/z 385.2129 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.9 (s, 1H), 7.2 (d, J = 8.23 Hz, 2H), 7.1 (d, J = 8.35 Hz, 2H), 6.2 (s, 1H), 5.6 (s, 1H), 4.7 - 4.6 (m, 1H), 3.9 (s, 3H), 3.8 - 3.7 (m, 1H), 3.7 - 3.5 (m, 2H), 2.7 (s, 3H), 2.0 - 2.0 (m, 2H), 1.3 - 1.2 (m, 1H), 1.1 - 1.0 (m, 2H), 0.9 - 0.8 (m, 2H)。
【0062】
実施例5: 8-(アゼチジン-1-イル)-3-メチル-1-(1-メチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン(11、R1=H、R2=トリフルオロメチル)。
【化7】
MS (ESI) m/z 413.1313 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.7 (d, J = 2.12 Hz, 2H), 7.6 (s, 1H), 7.6 - 7.5 (m, 2H), 7.1 (d, J = 5.30 Hz, 1H), 7.0 (d, J = 5.32 Hz, 1H), 4.0 (s, 4H), 3.9 (s, 3H), 2.6 (s, 3H), 2.3 (t, J = 7.80 Hz, 2H)。
【0063】
実施例6: 8-(アゼチジン-1-イル)-3,5-ジメチル-1-(1-メチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-イル)イミダゾ[1,5-a]ピラジン(12、R1=Me、R2=トリフルオロメチル)。
【化8】
MS (ESI) m/z 427.2861 [M + H]+1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.8 (dd, J = 7.91, 14.49 Hz, 2H), 7.7 (d, J = 7.41 Hz, 1H), 7.7 (d, J = 7.96 Hz, 1H), 7.6 (d, J = 8.02 Hz, 1H), 7.0 (s, 1H), 4.9 (d, J = 97.14 Hz, 2H), 3.9 (s, 3H), 3.6 (d, J = 49.04 Hz, 2H), 2.5 (d, J = 16.41 Hz, 3H), 2.4 (s, 3H), 2.0 (d, J = 37.87 Hz, 2H)。
【0064】
実施例7: インビトロでのPDE2阻害の測定
r-hPDE2A(受入番号第NM_002599、ホモサピエンスホスホジエステラーゼ2A、cGMP刺激、転写物バリアント1)該遺伝子の組換えcDNAコピーを持つ哺乳動物発現クローニングベクターをOrigeneから購入する。HEK293細胞の一過性トランスフェクションによってタンパク質を発現させる。トランスフェクションから48時間後に細胞を回収し、TBS緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl)で1回洗浄し、次いで、冷均質化緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5、5mM MgCl2、1Xプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で超音波処理して溶解する。該ホモジネートを15,000gで4℃にて30分間遠心分離して、可溶性の細胞質ゾル画分を得る。標準としてウシ血清アルブミンを用いたBCA Protein Assay Kit(Pierce)を使用して、該細胞質ゾルのタンパク質濃度を決定する。
【0065】
アッセイ: PDE2Aは基質としてFL-cAMPを用いてアッセイされる。PDEの作業濃度を決定するために、まず酵素滴定を行う。阻害剤の非存在下で100ΔmPの活性を与える酵素の濃度がPDEの適切な作業濃度とみなされる。
【0066】
PDE酵素は、滴定曲線に従って標準反応緩衝液(10mM Tris-HCl pH7.2、10mM MgCl2、0.1%BSA、0.05%NaN3)で希釈される。PDE2のアッセイでは、反応緩衝液に1μM cGMPを加えて、酵素を完全に活性化する。平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに希釈した酵素溶液99μlを加え、次いで、100%DMSOに溶解した試験化合物を約1μl加える。化合物を混合し、室温で10分間、酵素とプレインキュベートする。
【0067】
FL-cNMP変換反応は、基質(最終的に45nM)の添加によって開始される。酵素と阻害剤の混合物(16μl)および基質溶液(0.225μMの4μl)を384ウェルマイクロタイタープレートで混合する。反応物を暗所にて室温で15分間インキュベートする。384ウェルプレートの各ウェルに結合試薬(1:1800希釈の消泡剤を加えた結合緩衝液で1:400希釈のIMAPビーズ)60μlを加えて反応を停止する。プレートを室温で1時間インキュベートして、IMAP結合を完了まで進行させ、次いで、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れて、蛍光偏光(Δmp)を測定する。
【0068】
Δmpの減少として測定されるcAMP濃度の減少は、PDE活性の阻害を示す。IC50値は、0.00037nM~80,000nMの範囲の8~16種類の濃度の化合物の存在下で酵素活性を測定し、次いで、薬物濃度対ΔmPをプロットすることによって決定される。テストウェルの値は、同じプレートで実施した対照反応に対して正規化される(値は対照の%に変換される)。IC50値は、非線形回帰ソフトウェアを用いて、4パラメータ1サイト用量反応モデル(four-parameter one-site dose-response model)(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)に当てはめて推定した。曲線の下端はコントロールの0%に固定されている。
【0069】
品質管理: 阻害剤のIC50を決定するために、100~200ミリ偏光単位の最適な信号範囲を与えた酵素濃度を選択する。各サンプルウェルの総蛍光強度を測定して、平均値および標準偏差を算出する。サンプルウェルの総蛍光強度が平均±3SDの範囲内にない場合、そのウェルのmp値は破棄される。
【0070】
上記または同様に記載されたIMAP手順を用いて、PDEに焦点を当てた独自の化合物ライブラリーをスクリーニングして、ナノモルのPDE2阻害活性を有する新規化合物を同定した。本開示の例示的な化合物(例えば、実施例1の化合物)が試験され、例えば以下のように、ナノモル濃度で活性があることが示される:上記実施例1の化合物(すなわち、式1)について算出されたIC50を、以下の表1に示す。各アイソフォームのPDE2との比率を用いて特異性を決定する。
【表1】
【表2】
【0071】
比較陽性対照として、市販の阻害性Bay7550を使用する。Bay-7550に同様のアッセイを行い、化合物1は、既知のPDE2阻害剤であるBay-7550よりもはるかに高いPDE2選択性を示すことがわかった。
【0072】
実施例8: マウスにおける薬物動態研究
マウスに試験する化合物を単回経口投与し(10mg/kg、PO)、血漿および脳内の利用可能性を、Zhao et al., J. Chromatogr. B. Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. (2005) 819(1):73-80およびAppels, N.M., et al., Rapid Commun. Mass Spec. 2005. 19(15): p. 2187-92に記載されている方法と類似した方法でHPLCおよびLC-MSを使用して測定する(0.25~4時間)。以下の表3に示すように、化合物1は、BAY-7550と比較して、34nMの強力なIC50を示し、血液脳関門通過性および脳への浸透性が著しく優れていた。
【表3】
【0073】
実施例9: 海馬細胞および脳内におけるcGMPシグナル伝達に対する式1で示される新規PDE2A阻害剤の効果の評価。
化合物1(すなわち、上記実施例1で合成した化合物)を、HT-22(海馬様)細胞におけるcGMPおよびcAMPレベルを増加させる能力について試験した。該化合物は、15分間のインキュベーション期間中、NMDA(20μM)で刺激されたcGMPレベルの用量依存的な増加を示し、0.01μMの濃度で最大の効果が見られた。同様に、ノルアドレナリンアゴニスト(cAMPアクチベーター)であるイソプロテレノール(ISO、10nM)で刺激したHT22細胞におけるcAMPレベルの用量依存的な上昇が観察され、0.01μMの化合物1で最大レベルに達した。化合物1は、0.01μMの濃度で、24時間後でも観察可能であったHT22細胞のcGMPおよびcAMPレベルの長時間にわたる上昇を誘発した。これらのアッセイにおけるcGMPレベルおよびcAMPレベルの両方の刺激に最適な用量は10nMであり、これはインビトロアッセイにおける式1化合物の計算されたPDE2A IC50値に匹敵し(PDE2A IC50は35nM)、目的のターゲットに対する化合物1の親和性と、その結果として生じるcNTレベルの調節とがよく一致していることを示している。
【0074】
化合物1はまた、cGMPおよび/またはcAMPシグナル伝達経路の制御下でエフェクタータンパク質のリン酸化状態を上昇させる能力についても試験された。該化合物は、環状ヌクレオチドシグナル伝達カスケードによって制御されていることが知られている3つの基質のリン酸化、すなわちVASP(血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質)およびCREB(cAMP応答エレメント結合タンパク質)のリン酸化の濃度依存的な増加を誘発し、成長因子BDNFの発現を増加させた。ホスホ-VASP、ホスホ-CREB、およびBDNF発現のピーク増加は、細胞内のcNTレベルの最大上昇およびインビトロでのPDE2Aの選択的阻害をもたらすことが観察された濃度とほぼ同じ薬物濃度(0.01μM)で観察された。
【0075】
実施例10: うつ病様および不安様行動に対する新規PDE2A阻害剤の効果の評価。
化合物1は、マウスの強制水泳パラダイムおよび尾部懸垂パラダイムを用いて、急性抗うつ様活性を評価した。これらの試験では、PDE2A阻害剤であるBAY-7550と抗うつ薬であるデシプラミンを比較対照薬として用いた。デシプラミンは抗うつ剤様活性の兆候を誘発し、BAY-7550は全てのアッセイにおいて有意性に達しなかった概ね小さい効果を示した。一方、化合物1は、両方の試験において、不動時間を有意に短縮した(すなわち、抗うつ様活性があった)。
【0076】
式1の化合物(1、2および5mg/kg,i.p.)を、マウスにおいて高架式十字迷路パラダイムおよびホールボードパラダイムを用いて急性抗不安活性について評価した。ジアゼパム(0.5mg/kg、i.p.)は、両パラダイムにおいて抗不安活性の兆候を誘発した(例えば、高架式十字迷路ではオープンアームへの進入が増加し、ホールドボードテストでは探索回数が増加した)。市販のPDE2阻害剤はこれらの実験で統計的に有意な効果を示さなかったが、予想外にも、式1の化合物は、オープンアームへの進入(高架式十字迷路)を有意に増加させ、ホールボードテストでの探索を用量依存的に増加させた。重要なことに、抗不安活性を増加させたのと同じ用量レベルの該化合物とジアゼパムは、マウスの自発運動活性には有意な影響を与えなかった。これは、これらの効果が非選択的精神運動作用によるものではなかったことを示唆している。
【0077】
化合物1はまた、マウスにおいて高架式十字迷路パラダイムおよびホールボードパラダイムを用いて、急性抗不安活性について評価された。これらの試験では、PDE2A阻害剤であるBAY-7550と抗不安薬であるジアゼパムを比較対照薬として用いた。ジアゼパムは、両パラダイムにおいて抗不安活性の兆候を誘発した(例えば、高架式十字迷路ではオープンアームへの進入が増加し、ホールドボードテストでは探索回数が増加した)。BAY-7550は、統計的優位性を達成しなかったこれらのアッセイの小さな傾向をもたらした。しかしながら、化合物1は、オープンアームへの進入(高架式十字迷路)を有意に増加させ、ホールボードテストでの探索を用量依存的に増加させた。重要なことに、抗不安作用を増加させたのと同じ用量レベルの化合物1とジアゼパムは、マウスの自発的運動活性に有意な影響を与えなかった。これは、これらの効果が非選択的精神運動作用によるものではなかったことを示唆している。
【0078】
最後に、抗不安様活性の検出のためのパラダイムにおいて有効な比較対照化合物に加えて、化合物1の用量レベルを、マウスの脳におけるcGMPおよびcAMPのインビボレベルに対する効果について試験した。これらの試験では、各薬物/用量の注射の30分後にマウスを殺し、海馬を単離し、環状ヌクレオチドの測定に使用した。該化合物は、海馬におけるcGMPレベルおよびcAMPレベルの両方の有意な増加を誘発した。
【国際調査報告】