(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】監視および制御のためのコントローラ付きマグネトロン
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
C23C14/34 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522050
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019078778
(87)【国際公開番号】W WO2020083948
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505360498
【氏名又は名称】ソレラス・アドヴァンスト・コーティングス・ビーヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】デ・ボスヘル,ウィルマート
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・デ・プッテ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】デウィルデ,ニーク
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DA03
4K029DC13
4K029DC25
4K029DC33
4K029DC39
4K029EA00
(57)【要約】
スパッタリング装置で使用するためのマグネトロン構造が説明される。マグネトロン構造は、マグネトロン(100、200、300、401)およびマグネトロン(100、200、300、401)に剛性的に接続されたコントローラ(106、206、301、402)を含む。コントローラ(106、206、301、402)は、スパッタリングユニットの状態および/または機能を少なくとも部分的に制御するために適合される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング装置で使用するためのマグネトロン構造であって、
マグネトロン(100、200、300、401)と、前記マグネトロン(100、200、300、401)に剛性的に接続されたコントローラ(106、206、301、402)と、を含み、前記コントローラ(106、206、301、402)が、前記スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的に制御するように構成されている、マグネトロン構造。
【請求項2】
前記コントローラが、前記スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的にさらに監視するように構成されている、請求項1に記載のマグネトロン構造。
【請求項3】
前記コントローラ(106、206、301、402)が、信号をデータに、またはその逆に処理するためのデータプロセッサ(302)を含む、請求項1または2に記載のマグネトロン構造。
【請求項4】
前記コントローラ(106、206、301、402)が、前記スパッタリング装置の状態および/または機能を前記少なくとも部分的に監視および/または制御することに関連する前記データを記憶するためのデータストレージをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項5】
前記マグネトロンが、円筒形磁石バーおよびスパッタターゲットを支持するために適合されたエンドブロックを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項6】
前記マグネトロン構造が、前記スパッタリング装置またはスパッタリングプロセスに関連するセンサ信号を検知するためのセンサ(207)をさらに含み、前記コントローラ(106、206、301、402)が、前記センサ(207)からの信号を受信および処理するように適合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項7】
前記コントローラ(106、206、301、402)が、前記スパッタリング装置の真空部分の外部のコントローラとデータを交換するための通信構成要素をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項8】
前記通信構成要素が、WIFI通信、Bluetooth通信、光通信、もしくは任意のEM放射線のうちのいずれかを使用して無線通信を実施するために、または光ファイバ通信もしくは電気通信のうちのいずれかを使用して有線通信を実施するために適合されている、請求項7に記載のマグネトロン構造。
【請求項9】
前記マグネトロン(100、200、300、401)が、スパッタリング装置における前記スパッタリングプロセスに関連するパラメータを調整するための少なくとも1つのアクチュエータを制御するためのコントローラをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項10】
前記マグネトロン構造が、前記コントローラに給電するための電源をさらに含み、前記電源が、ターゲットチューブの冷却液流または電力給電から電力を得るように適合されたバッテリまたは電力抽出器のうちの1つである、請求項1~9のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項11】
前記コントローラの給電が、前記スパッタリング装置の外部非真空部分からの有線接続に基づいている、請求項1~9のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項12】
前記マグネトロン(200)が、前記ターゲットを保持するための上部部品(201)と、前記上部部品(201)に取り付け可能な底部部品(202)と、を含み、前記コントローラ(206)が、前記底部部品に剛性的に接続されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項13】
前記構造が、システムの外部にデータを送信するためのアンテナ(109)を含む無線コネクタを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項14】
前記データが、冷却液関連情報、スパッタ電力関連情報、磁気関連情報、マグネトロン状態関連情報、もしくはターゲット駆動関連情報のいずれかであるか、またはそれらの組み合わせである、請求項1~13のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項15】
前記コントローラ(106、206、301、402)が、使用中のメンテナンスを容易にするための情報を提供し、その状態に関する情報および必要な予防メンテナンスの予測時期に関する情報を提供する、請求項1~14のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項16】
前記コントローラ(106、206、301、402)が、履歴データを理解するために、改訂中にメンテナンスを容易にするための情報を提供し、これにより、適切な改訂およびメンテナンスを容易にする、請求項1~15のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項17】
前記コントローラが、マイクロコントローラである、請求項1~16のいずれか一項に記載のマグネトロン構造。
【請求項18】
前記コントローラが、低電圧マイクロコントローラである、請求項17に記載のマグネトロン構造。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のマグネトロン構造と、磁石構成と、を含む、スパッタリング装置。
【請求項20】
スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的に制御するためのマグネトロン構造内のコントローラの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットから材料をスパッタリングして基板を覆うスパッタリングユニットに関する。より具体的には、本発明は、かかるマグネトロン構造を含む、マグネトロン構造またはスパッタリングユニットに関するものであり、これにより、スパッタリングユニットの機能または状態を監視および制御することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
ターゲットから基板を覆うように材料をスパッタリングすることは、集積回路の製造、大面積のガラスコーティング、および最近ではフラットパネルディスプレイのコーティングなど、幅広い技術分野で一般的に実施されている。かかるスパッタリングは、減圧雰囲気下で行われ、スパッタリングガスもしくは反応性ガス、またはそれら両方の混合物が制御されて導入される。磁気的に制限されたレーストラック内でホッピングする自由電子は、ターゲット表面付近のガス原子または分子をイオン化する。これらのイオンは、その後、負にバイアスされたターゲットに向かって加速され、それによってターゲット原子を除去し、ターゲット原子に、基板に到達してコーティングするのに十分な運動エネルギーが与えられる。レーストラックの形状は、スパッタリングされている表面と反対側のターゲット表面付近の静的磁気アレイによって画定される。かかる堆積プロセスは、磁気アレイが存在することから、一般に「マグネトロンスパッタリング」と称される。
【0003】
特定の用途を念頭に置いて、多数の装置が開発、設計、および構築されている。最初の小型マグネトロンスパッタリングユニットでは、静止平面ターゲットを使用していたが、当初は円形の(つまり、スパッタリングされるシリコンウェハと同じ)ターゲットが主流であった。その後、ターゲットの下を通過するより大きな基板をコーティングするための細長い長方形形状も利用可能になった(例えば、特許文献1に記載されている)。かかる細長い平面ターゲットは、現在、液晶ディスプレイ(LCD)およびプラズマスクリーンなどのフラットパネルディスプレイの製造のための専用の「ディスプレイコータ」で一般的に使用されている。これらの平面ターゲットは、通常、装置のアクセスドアに装着され、ターゲット表面は(ドアが開いている状態で)容易にアクセス可能であり、基板幅の長さにわたって、さらには基板幅にわたって延在している。ディスプレイコータでは、覆われる基板を垂直から傾斜角度(7°~15°)で保持し、搬送システムに対して傾けている。均一なコーティングを得るためにターゲットが基板と平行である必要があるため、ターゲットは、実質的に同じ角度で装着する必要がある。
【0004】
静止ターゲットは、(装置に対して静的であるため)冷却および給電が容易であるが、ターゲット材料がレーストラックの下でのみ浸食されるという欠点を有している。したがって、ターゲットの使用可能寿命は、ターゲットが最初に穿刺される直前の時点に限定される。不均一な浸食の問題は、ターゲット表面に対して回転する磁石アレイ(例えば、円形平面マグネトロンについては特許文献2に記載されている)、またはターゲット表面に対して並進する磁石アレイ(例えば、細長い平面マグネトロンについては特許文献3に記載されている)を導入することによって対処することができる。かかる構造は、不均一な浸食の問題を大幅に軽減するものの、システムがより複雑となる。
【0005】
例えば、全ての種類の機能性コーティングを積み重ねた窓ガラスをコーティングするための大面積コータには、通常、回転式の円筒形スパッタリングターゲットが備えられている。本出願における経済的な原動力は、低材料コストおよび良好な品質でのスループットである。回転式の円筒形ターゲットは、大きな幅を有し、長期間使用することができるため、そのための理想的な選択肢である。そのトレードオフとして、ターゲット自体が装置に対して回転していることがある。したがって、複雑かつスペースを占有する「エンドブロック」が必要となり、これは、磁石アレイを内部に保持し、固定または回転可能に構成しながら、回転式ターゲットを担持、回転、給電、冷却、および(冷却剤、空気、および電気から)隔離するものである。例えば、二重の直角エンドブロック、単一の直流形エンドブロック、または単一角エンドブロックなど、いくつかのタイプの配置が存在する。
【0006】
特許文献4および特許文献5に開示されるような二重の直角エンドブロックでは、軸受、回転、給電、冷却、および(空気、冷却剤、および電気からの)隔離のための手段が、ターゲットの両端に位置する2つのブロック間で分割されている。直角とは、エンドブロックが、ターゲットの回転軸に平行な壁部に装着されていることを意味する。これらのエンドブロックは、通常、補助機器を含むトップボックスの底部に装着される。エンドブロックおよび装着ターゲットを備えたトップボックスは、大面積コータから全体を持ち上げることができ、ターゲットの交換およびサービスが容易となる。
特許文献6に開示されるような単一の直流形エンドブロックでは、軸受、回転、給電、冷却、および隔離のための手段が全て1つのエンドブロックに組み込まれ、ターゲットが大面積コータ内で片持ち保持されている。「直流形」とは、ターゲットの回転軸が、エンドブロックが装着される壁部に垂直であることを意味する。エンドブロックから最も遠いターゲットの端部が機械的支持体によって保持される点(その支持体には他の機能は組み込まれていない)で、「セミカンチレバー(半片持ち)」配置も記載されている(特許文献7)。
【0007】
マグネトロンにより提供される(平面ターゲットもしくは円筒形ターゲットとともに使用するための)異なる機能、またはより一般的には、現在のスパッタリングユニットの異なる機能の制御は、典型的には、スパッタリングユニットの外部のコントローラを使用して実施される。したがって、制御は、真空中のマグネトロンに信号送信ケーブルを介して、スパッタリングユニットの外側のコントローラから制御信号を送信することによって実施される。
さらに、スパッタリングユニットの特性を検知するためにセンサを使用することが知られているが、スパッタリングユニットの監視には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,878,085号
【特許文献2】米国特許第4,995,958号
【特許文献3】米国特許第6,322,679号
【特許文献4】米国特許第5,096,562号(
図2、
図6)
【特許文献5】米国特許公開2003/0136672号
【特許文献6】米国特許第5,200,049号(
図1)
【特許文献7】米国特許第5,620,577号
【発明の概要】
【0009】
本発明の実施形態の目的は、マグネトロン構造を提供すること、および/またはかかるマグネトロン構造を含むスパッタリングユニットを提供することにより、スパッタリングユニットまたはかかるユニットによって実施されるスパッタリングプロセスの機能および/または状態の良好な監視および/または制御を可能にすることである。
【0010】
本発明の実施形態の利点は、マグネトロン構造を提供すること、および/またはかかるマグネトロン構造を含むスパッタリングユニットを提供することにより、スパッタリングユニット内の監視および/または制御機能の少なくとも一部が、マグネトロンを設置するときに自動的に設置されるため、設置が容易になることである。
【0011】
本発明の実施形態の利点は、マグネトロン構造を提供すること、および/またはかかるマグネトロン構造を含むスパッタリングユニットを提供することにより、より容易にメンテナンス中のマグネトロン構造を改訂することである。これは、スパッタリングユニットから取り外された場合でも、通常の動作の逸脱を含む動作に関する情報をマグネトロン構造から入手することができるためである。このようにして、例えば、故障動作をより容易に検出することができる。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、例えば、マグネトロンの改訂中に、マグネトロンの構成要素の故障状態を容易に検出することができることである。後者は、有利には、マグネトロンまたはスパッタリングユニットの機能および/または状態の監視データが経時的に利用可能である実施形態で実施することができる。本発明の実施形態では、かかるデータは、マグネトロン自体で有利に利用可能であり得、その結果、データは、マグネトロンの改訂中に容易にアクセス可能である。これにより、とりわけ、構成要素の実際の使用時間を監視することができるため、構成要素の積極的な交換も可能となるか、または構成要素の動作をより長く維持することを可能にする。
【0013】
第1の態様では、スパッタリング装置で使用するためのマグネトロン構造が提供される。マグネトロン構造は、マグネトロンと、集積回路として実装され得るコントローラと、を含み、コントローラは、マグネトロンに剛性的に接続されている。コントローラは、集積回路として実装され得るが、スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的に制御するように構成される(例えば、プログラムされている)。コントローラは、マイクロコントローラであり得る。いくつかの実施形態では、コントローラは、低電圧マイクロコントローラであり得る。本発明の実施形態の利点は、コントローラがデータの処理を実際に実施することができ、その結果、スパッタリング装置の状態または機能をコントローラによって制御し得ることである。
【0014】
コントローラは、加えて、スパッタリング装置の状態および/または機能の監視を少なくとも部分的に実施するためにさらに適合され得る。
【0015】
本発明の実施形態の利点は、データ処理の少なくとも一部をマグネトロン内に統合し得ることである。本発明の実施形態の利点は、データを処理するための人間のインタラクションの必要性がないことである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロン構造のコントローラ、例えば、集積回路は、信号をデータに、またはその逆に処理するためのデータプロセッサを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ、例えば、集積回路は、スパッタリング装置の状態および/または機能の少なくとも部分的な監視および/または制御に関連するデータを記憶するためのデータストレージをさらに含む。
【0018】
実施形態の利点は、経時的なスパッタリング装置の状態および/または機能の監視および/または制御に関連するデータをローカルに記憶し得ることである。本発明の実施形態の利点は、スパッタリング装置の状態または機能に関する情報がマグネトロンに記憶され、これにより、改訂中または誤動作時に、スパッタリング装置の状態または機能を評価し得ることである。本発明の実施形態の利点は、データを記憶し、異なる時間に取得されたデータと比較し、これにより、スパッタリング装置の状態を動的に監視し、長期的なフォローアップおよび状態悪化(例えばシーリングの経年劣化など)の早期検出を可能にすることである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロンは、管状(例えば、円筒形)の磁石バーおよびスパッタターゲットを支持するように適合されたエンドブロックである。
【0020】
いくつかの実施形態では、マグネトロンは、平面ターゲットを装着し、平面ターゲットからスパッタリングするために適合され得る。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロン構造は、スパッタリング装置またはスパッタリングプロセスに関連するセンサ信号を検知するためのセンサをさらに含む。コントローラ、例えば、集積回路は、センサから信号を受信および処理するように適合されている。
【0022】
本発明の実施形態の利点は、プロセス、ターゲット、または任意の他のサブシステム(軸受または冷却システムなど)の状態を、その場で、かつスパッタリング装置の使用中に監視し得ることである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ、例えば、集積回路は、スパッタリング装置の真空部分の外部のコントローラとデータを交換するための通信構成要素をさらに含む。特定の実施形態では、通信構成要素は、(WIFI通信、Bluetooth通信、光通信、または任意の他のタイプのEM放射線のうちのいずれかを使用して)無線通信を実施するために、または(光ファイバ通信または電気通信のいずれかを使用して)有線通信を実施するために適合される。
【0024】
通信構成要素は、スパッタリング装置の外部非真空部分とコントローラ、例えば、集積回路との間でデータを交換するためのコネクタを含んでもよい。
【0025】
本発明の実施形態の利点は、データを読み取るか、もしくはアラームを起動するか、かつ/またはコマンド入力のための読み出しを、マグネトロンと組み合わせて使用し得ることである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロンは、少なくとも1つのアクチュエータを制御するためのコントローラをさらに含み、スパッタリング装置におけるスパッタリングプロセスに関連するパラメータを調整する。
【0027】
本発明の実施形態の利点は、プロセスを自動化し得ることである。
【0028】
さらに、コントローラは、パラメータを調整するために、所望のウィンドウ内で少なくとも1つのアクチュエータを制御するために適合され得る。
【0029】
本発明の実施形態の利点は、プロセッサが、人間のインタラクションの必要性を低減して、ある範囲内のパラメータを自動的に制御し得、これにより、外部との高い独立性を達成し得ることである。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロン構造は、コントローラ、例えば、集積回路に給電するための電源をさらに含む。電源は、バッテリであってもよいか、またはターゲットチューブの冷却液流または電気的給電から電力を得るように適合された電力抽出器であってもよい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ、例えば、集積回路の給電は、スパッタリング装置の外部非真空部分からの有線接続に基づいている。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の利点は、バッテリの使用を回避するため、メンテナンスの必要性が少ないことである。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロンは、ターゲットを保持するための上部部品と、上部部品に取り付け可能な底部部品と、を含む。コントローラ、例えば、集積回路は、底部部品に剛性的に接続され得る。
【0034】
本発明の実施形態の利点は、コントローラ、例えば、集積回路がユニットの外部から容易にアクセス可能であり、容易に設置およびメンテナンスし得ることである。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、マグネトロン構造は、無線コネクタを含み、無線コネクタは、システムの外側にデータを伝達するためのアンテナを含む。
【0036】
本発明の実施形態の利点は、外部制御システム(コンピュータなど)に有線接続する必要がないため、ユニット内またはユニット外のいずれかのデータ伝送のための余分な有線を要さない非常にコンパクトなエンドブロックを取得し得ることである。
【0037】
本発明の実施形態の利点は、単一の接続(例えば、単一の有線接続、またはさらには単一の無線接続)を使用して、コントローラ、例えば、集積回路に給電し、コントローラ、例えば、集積回路との間でデータを交換し、これにより、外部制御および/または電源への接続の量を低減することによって、エンドブロックシステムを簡素化し得ることである。代替的に、異なる接続またはマルチワイヤ接続が使用されてもよい。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、データは、冷却液関連情報、スパッタ電力関連情報、磁気関連情報、マグネトロン状態関連情報、もしくはターゲット駆動関連情報のいずれかであるか、またはそれらの組み合わせである。
【0039】
冷却液関連情報は、冷却液の入射温度、冷却液の出射温度、冷却液の圧力、冷却液の流量、もしくは冷却液の抵抗率のいずれかであるか、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。スパッタ電力関連情報は、ターゲットに向かう電圧、例えば誘導による特定の部品上の電圧、システムを通る電流、スペクトル含有量もしくはインピーダンスのいずれかであるか、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。磁気関連情報は、磁石構成のタイプ、並進もしくは回転位置もしくは移動速度のようなグローバル位置決めなどの磁石構成の位置決め、局所位置決め、温度もしくは磁気強度のいずれかであるか、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。マグネトロン状態関連情報は、ターゲット付近温度、マグネトロンの特定の部分上の温度、システム内の圧力、湿度もしくは冷却液のいずれかであるか、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。ターゲット駆動関連情報は、時間もしくは温度にわたる回転または移動速度、動作寿命、駆動ユニット電流またはトルクレベルのいずれかであるか、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0040】
コントローラ、例えば、集積回路は、使用中のメンテナンスを容易にするための情報を提供し、その状態および必要な予防メンテナンスの予測時期に関する情報を提供し得る。
【0041】
コントローラ、例えば、集積回路は、履歴データを理解するために、改訂中にメンテナンスを容易にするための情報を提供し、これにより、適切な改訂およびメンテナンスを容易にすることができる。
【0042】
第2の態様では、スパッタリング装置が提供され、装置は、第1の態様の任意の実施形態によるマグネトロン構造と、磁石構成と、を含む。
【0043】
第3の態様では、スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的に制御するためのマグネトロン構造内のコントローラ、例えば、集積回路の使用が提供される。コントローラは、スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的に監視するためにさらに構成されてもよい。
【0044】
本発明の実施形態の利点は、処理能力を有する回路をマグネトロンと組み合わせて使用し得ることである。これにより、ソフトウェアのインストール、外部コンピューティングシステムとスパッタリングユニットのセンサからの複数のコネクタとの間の接続などの、セットアップハードルを低減することによって、容易な制御および/または読み出しインターフェースが可能となる。非常にコンパクトで、「スマート」なマグネトロンが得られる。
【0045】
本発明の特定の好ましい態様は、添付の独立および従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴は、単に特許請求の範囲で明示的に述べられるだけではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0046】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に説明される実施形態(複数可)を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の実施形態によるマグネトロン構造を分解図で示しており、モータを含む。
【
図2】本発明の実施形態によるマグネトロン構造を分解図で示しており、冷却(サブ)システムを含む。
【
図3】本発明の実施形態による集積回路を備えたエンドブロックの、ターゲットが取り付けられ得るリングに向けた正面図を示す。
【
図4】より良好な視覚化のために一部を削除したエンドブロックの斜視図を示しており、本発明の実施形態による集積回路を含む統合モジュールの例示的な配置を示す。
【0048】
図面は、単に概略的なものであり、非限定的である。図面では、いくつかの要素のサイズは、例示の目的で誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0049】
請求項におけるあらゆる参照符号は、請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0050】
異なる図面において、同一の参照符号は、同一または類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応していない。
【0052】
さらに、明細書および特許請求の範囲中の「第1」、「第2」などの用語は、必ずしも時間、空間、ランキング、または他の任意の様式のいずれかにおける順序を説明するためではなく、類似の要素を区別するために使用されている。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載または示される以外の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0053】
さらに、説明および特許請求の範囲における上部、下部などの用語は、説明目的で使用されており、必ずしも相対位置を説明するために使用されているわけではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で置き換え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または示される以外の向きで動作することができることを理解されたい。
【0054】
特許請求の範囲で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを除外するものではないことに留意されたい。したがって、述べられた特徴、整数、ステップ、または言及されたような構成要素の存在を指定すると解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップもしくは構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。したがって、「含む」という用語は、記載された特徴のみが存在する状況、ならびにこれらの特徴および1つ以上の他の特徴が存在する状況を包含する。したがって、「手段AおよびBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されると解釈されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素のみが、AおよびBであることを意味する。
【0055】
本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指しているとは限らないが、そうであってもよい。さらに、この開示から当業者には明らかなように、1つ以上の実施形態では、特定の特徴、構造、または特性を任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0056】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解において助けとなる目的で、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられることがあることが理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、特許請求された発明が、各特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴より少ない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、これによってこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、各特許請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0057】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴は含まず、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用され得る。
【0058】
本明細書で提供される説明では、多数の特定の詳細が明記されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施されてもよいことが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、および技術は、詳細には示されていない。
【0059】
本発明の実施形態では、マグネトロン構造に言及している場合、それに剛性的に接続するマグネトロンおよびコントローラ、例えば集積回路にも言及している。集積回路は、マグネトロンの内部に位置決めされ得るか、またはマグネトロン、その特定の部分もしくはそのハウジングに取り付けられ得る。マグネトロンは、ターゲットをその上に装着するための上部部品、ハウジング、およびマグネトロンをスパッタリングユニットの残りの部分に装着するための底部部品を含み得る。それによって、コントローラ、例えば、集積回路は、上部部品、ハウジングもしくは底部部品に剛性的に取り付けられ得るか、またはこれらの構成要素のいずれかの内部に配置され得る。
【0060】
さらに、マグネトロン構造に言及している場合、平面ターゲットとともに使用するためのシステム、ならびに円筒形ターゲットとともに使用するためのシステムに言及し得る。後者の場合、マグネトロン構造はまた、エンドブロック構造と称される場合があり、マグネトロンは、エンドブロックと称される場合がある。いくつかの特定の実施形態では、上部部品は、円筒形ターゲットおよび/または対応する磁石バーを装着するためのエンドブロックヘッドに対応し得る。かかる実施形態では、底部部品はまた、典型的にはエンドブロックをスパッタリング装置の残りの部分に装着するために使用されるベースプレートに対応し得る。
【0061】
マグネトロン構造の上部部品は、プラズマの過酷な環境(例えば、加熱、衝突など)に供され得、定期的な点検またはメンテナンスを必要とするマグネトロン構造の全ての重要な構成要素を含み得る。例えば、摩耗部品(例えば、動的シール、信号または電力を伝達するためのブラシ、摺動および転動部品など)を含み得るか、またはクリーンアップもしくは潤滑、または任意の他の介入を必要とし得る。上部部品は、改訂および高速交換のために容易に取り外しまたは交換され得るサブアセンブリから構成されるか、またはそれらを含み得る。これにより、スパッタリング装置の最小ダウンタイムが可能になり、一方で、サブアセンブリの改訂または更新は、スパッタリング装置の機能に影響を与えることなく(オフサイトで、または必ずしもスパッタリング装置にリンクされていない領域で)別個に行われ得る。
【0062】
底部部品は、スパッタリング装置により剛性的に接続され得、例えば、壁、カバー、蓋、またはスパッタリング装置の一部、例えば真空チャンバの一部上にボルトで固定されてもよい。底部部品は、経年変化の影響を受けにくい場合があり、過酷な環境に供されにくい場合があり、任意の定期的な検査または改訂を優先的に必要としない場合がある。底部部品は、スパッタリングプロセスが動作することを可能にするために上部部品とインターフェースを有する部品であり得るが、ほとんどの場合、スパッタリング装置に属すると見なされる。したがって、マグネトロン構造は、上部部品および底部部品を有する、本明細書に記載の単一の大型構造または複数の構造からなり得る。
【0063】
本発明の実施形態では、スパッタリングユニットに言及している場合、マグネトロン構造および磁石構成(すなわち、円筒形ターゲットのためのシステムの場合には磁石バー)を含むシステムに言及している。スパッタリングユニットは、典型的には、真空チャンバ内に位置決めされており、これにより、スパッタリング装置の一部を形成し得る。かかるスパッタリング装置の他の構成要素は、真空ポンプシステム、基板ホルダなどであり得、当業者によって周知である。
【0064】
本発明の実施形態では、信号の処理またはデータの処理に言及している場合、それに所定のアルゴリズムを変更、改変、計算、適用することなどに言及し得る。実施形態では、通信に言及する場合、これは、送信、記憶、取得することなどを含み得る。
【0065】
第1の態様では、本発明は、スパッタリング装置で使用するためのマグネトロン構造に関連する。マグネトロン構造は、マグネトロンと、集積回路として実装され得るコントローラと、を含み、コントローラは、マグネトロンに剛性的に接続されている。コントローラは、スパッタリング装置の状態および/または機能を制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、コントローラは、スパッタリング装置の状態および/または機能を少なくとも部分的に監視するためにさらに構成され得る。いくつかの特定の実施形態では、コントローラは、信号をデータに、またはその逆に処理するためのデータプロセッサを含み得る。かかるデータは、スパッタリング装置の監視または制御のために記憶および/または使用することができる。コントローラは、例えば、低電圧マイクロコントローラなどのマイクロコントローラであってもよい。
【0066】
本発明の実施形態によるマグネトロン構造は、平坦なターゲットとともに使用するため、ならびに円筒形ターゲットとともに使用するための構造であり得ることに留意されたい。以下では、円筒形ターゲットとともに使用するためのマグネトロン構造がしばしば(かかる場合、エンドブロック構造およびエンドブロックを言及することによって)言及される。これは、本発明の実施形態による監視および制御が有利に使用され得る真空状態下の真空システムで使用されるターゲットの移動の観点から、いくつかの追加の問題を示しているためである。それでもなお、同様の教示は、平坦なターゲットのための構造に準用することができ、そのような構造も想定されている。
【0067】
エンドブロックは、壁に統合されたエンドブロックも想定され得るものの、スパッタリング装置上に単一のユニットとして装着可能であることが好ましい。ターゲットチューブとともに着脱可能な部品、または着脱可能な磁石バーアセンブリは、エンドブロックに属しないと見なされる場合がある。エンドブロックの主な機能は、ターゲットを担持することである。エンドブロックはまた、ターゲットを回転軸の周りで回転させるように構成され得る。スパッタリングは低いガス圧下で実施されるため、エンドブロックを常に気密とする必要があり、回転している場合には、確実に気密とする必要がある。ターゲットのスパッタリングでは、ターゲット表面に大量の熱が発生するため、通常、水または別の好適な冷却剤または冷却液を用いてターゲットを冷却する必要がある。この冷却剤は、エンドブロックを通して供給および排出する必要がある。また、ターゲットを特定の電位以上に維持するために、ターゲットに電流を供給する必要がある。この場合も、この電流はエンドブロックを通過する必要がある。これらの機能を全て組み込むために、エンドブロックには、異なる手段が含まれ得る。
【0068】
A)ターゲットを回転させる駆動手段(例えばドライバ)、例えばワームギアシステム、または円筒形歯車システム、または円錐歯車交差軸システム、またはプーリーベルトシステム、またはターゲットを回転させるための当該技術分野で既知の任意の他の手段。
【0069】
B)ターゲットに電流を提供する電気接点手段(例えば、回転可能接点、コネクタ)。これは、整流子リングと摺動接触しているブラシを備えた電気整流子によって達成され得る。ブラシおよびリングの配置の代わりに、互いに摺動する2つのリングを使用することもできるか、または金属ベルトなどの導電性ベルトタイプの接続を使用することもできる。後者の解決策により、駆動手段は、電気接点手段に半径方向に好都合に組み合わされる。
【0070】
C)軸受とは、例えば、単一の軸受を意味する。ターゲットの重量に応じて、2つ以上の軸受が必要になる場合がある。当業者は、容易に、既知の異なるタイプ、例えばボール軸受、ローラ軸受、プレーン軸受、軸方向軸受、または当業者に既知の任意の他のタイプから適切なそのタイプの軸受を選択するであろう。
【0071】
D)少なくとも1つの冷却剤シール、例えば回転式冷却剤シール。これらの冷却剤シールは、エンドブロックの固定された回転可能な部分が相対的に回転する際に、冷却剤がエンドブロックに漏れないようにするか、または、さらに悪化して真空装置またはスパッタリングチャンバに漏れないようにする。このリスクを低減するために、いくつかの冷却剤シールがカスケード式に導入される。典型的には、リップシールは、当技術分野で周知のように、冷却剤シールとして使用される。ただし、機械式フェイスシールまたはラビリンスシールなどの(網羅的ではないが)他のタイプのシールを除外するものではない。
【0072】
E)最後に、回転式真空シールなどの少なくとも1つの真空シールを含むことができる。これらの真空シールにより、エンドブロックの固定および回転部分が相対的に回転する間、完全な真空が保証される。真空漏れのリスクを低減するために、カスケード式の一連の真空シール(真空を段階的に保護する)が推奨される。また、異なるシールが知られており、そのうちリップシールが最も一般的であるが、磁性流体シールなどの他のタイプのシールももちろん同様に使用することができる。
【0073】
上述のように、マグネトロンは、典型的には上述の異なる手段を収容するマグネトロン上部部品と、マグネトロンをシステムに装着し、スパッタリング装置の真空側と非真空側との間に接続するためのマグネトロン底部部品と、を含み得る。
【0074】
本発明の実施形態によれば、コントローラ、例えば、集積回路は、マグネトロンに、すなわち、上部部品、底部部品、またはハウジングに剛性的に取り付けられている。いくつかの実施形態では、コントローラは、マグネトロンの上部部品またはマグネトロンの底部部品の内部に位置決めされ得る。本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、信号からデータへの処理の少なくとも一部、またはその逆も、コントローラ内で実施される。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、信号、例えば、センサからの信号(センサ信号)をコントローラ内で受信し、スパッタリング装置もしくはその構成要素の状態、またはスパッタリングプロセスの状態を監視または制御するためのデータに処理することができる。データは、さらなるデバイス、例えば真空チャンバの外側でさらに使用、記憶、または通信することができる。したがって、マグネトロン構造はまた、データストレージ手段および/またはデータ通信手段を含んでもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、スパッタリング装置の真空部分の外側から任意選択的に由来する制御データも、マグネトロンまたはスパッタリング装置の構成要素の制御用にマグネトロン内の制御信号を生成するために、コントローラに転送され、コントローラ内で処理され得る。例えば、制御信号は、入力コマンドコンソール(例えば、スパッタリング装置の真空部分の外側)から受信され、処理されてもよい。これらは、記憶することもできる。ユニットまたはスパッタリングプロセスの状態の制御に関連する制御データを使用して、コントローラによって、スパッタリング装置の真空部分内、例えばマグネトロン内のアクチュエータを制御することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、モニタデータおよび制御データの両方を、マグネトロンのコントローラによって取り扱うことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、コントローラは、センサから信号を受信し、処理されたモニタデータを提供し、かかる情報を使用して、制御データを生成することができ、制御データを使用して、人間とのインタラクションの必要性が少ないアクチュエータに、かかる制御データを送信することによって、スパッタリング装置もしくはスパッタリングプロセスを制御、調整、または微調整することができる。このようにして、真空チャンバの外側の空間との通信をほとんど必要としない、自動スパッタリングプロセスを提供することができる。
【0079】
説明のために、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、標準的および任意選択の特徴が、これからさらに図面を参照して説明される。ここでも、円筒形ターゲットのためマグネトロン構造に言及するが、平面ターゲットのためのマグネトロン構造にも準用することができる。
【0080】
図1および
図2は、上部部品101、201および底部部品102、202を含む、異なるタイプのマグネトロン構造100、200の2つの分解図を示す。上部部品101、201は、ターゲットを装着するために使用され、底部部品は、上部部品と、モータ、冷却システムなどのような(典型的には真空システムの外側に位置決めされた)外部サブシステムとの間のリンクとして機能する。
図1のマグネトロン100は、円筒形ターゲットを駆動することができるように駆動機能を提供するマグネトロンである。
図2のマグネトロン200は、ターゲットを冷却するための冷却液を導入するため、およびターゲットをスパッタリング電圧で置くための、冷却および給電機能を提供する。しかしながら、本発明は、これらのタイプのマグネトロンに限定されない。上述のような機能は全て、単一のマグネトロンに集中され得るか、または異なるマグネトロン上で異なるように分割され得る。さらに、底部部品および上部部品は一体となっていてもよい。
【0081】
図1に示すマグネトロンは、底部部品102に取り付けることができる上部部品101を含み、例えば、上部部品101のねじ山ネック103を底部部品102の対応する部分104にねじ込むことによって、取り付けることができる。任意の他の好適な接続システムが使用されてもよい。
図1の例では、モータセット105は、マグネトロン100の上部部品101にモータ105の駆動力を伝達し得る底部部品102に連結可能である。次いで、上部部品101は、上部部品101に取り付けられた回転可能なターゲットを回転させる。本発明のいくつかの実施形態では、モータセットはまた、上部部品と単一の部分に統合されてもよい。
【0082】
本発明の実施形態によれば、任意選択的にプロセッサ(例えば、処理ユニット)を含むコントローラ106は、マグネトロンの上部部品101内に含まれ得る(例えば、静的部分に取り付けられる)。しかしながら、それはまた、底部部品に含まれ得る(例えば、底部部品に取り付けられ得る)。
【0083】
図2の場合、冷却回路203は、冷却液(例えば、水、処理水、任意の他の好適な液体、またはガス)を、入口204を介し上部部品201を通してターゲット中に導入するために、かつ、使用された冷却液を、出口205を介して排出するために、底部部品202に含まれる。この特定の例では、電力線は、入口および出口の上のボルト208に接続され、ベースプレートのピンを通して上部部品201に電力が供給される。プロセッサを含むコントローラ206は、エンドブロックの上部部品または底部部品に取り付けることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、コントローラ206は、マグネトロン構造の真空側に位置決めされてもよく、これにより、ユニットの内部から任意の信号を直接送信することを可能にする。本発明は、この構成に限定されず、集積回路は、例えば、カンチレバーマグネトロンの機能に関連するデータを処理するために、マグネトロン構造の大気側に配置されてもよい。
【0085】
いずれにしても、コントローラはどの場所に取り付けても、スパッタリングプロセスで堆積された材料、プラズマ、冷却液などから有利に保護される。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサまたはアクチュエータ207がマグネトロン自体に含まれてもよく、これにより高度に統合されたマグネトロンが得られる。例えば、センサまたはアクチュエータは、マグネトロンのコントローラの一部であってもよい。例えば、スパッタリング中にその場で監視を行うことができ、これは、さらなる設置または接続を実施するために使用する必要がないコンパクトな方法である。
【0087】
例として、実施形態はこれに限定されるものではないが、マグネトロン構造内のコントローラにおける特定のパラメータの監視および/または制御の例をさらに説明する。
【0088】
監視の例。
電力監視
信号は、例えば、少なくとも1つのセンサ(図示せず)からコントローラ206に提供され得る。少なくとも1つのセンサは、スパッタ電力に関連するパラメータ、例えば、ターゲットに提供される電圧、システムを通る電流、信号のスペクトル含有量(例えば、AC形状、周波数などの変化)、インピーダンスなどを検知し得る。これは、サージ、プロセスの安定性、送電の状態、アークなどのターゲットに関する問題などに関する情報を提供し得る。かかる信号を生成するためのセンサは、例えば、コントローラの一部としてマグネトロンに含まれ得る。例えば、センサは、送電の状態を検出し得る。例えば、ブラシの状態(マグネトロンの静止部からの電力をマグネトロンの回転部に伝送するために使用される)を検知して、(例えば、抵抗を監視することによって)摩耗などを検出することができる。追加的に、または代替的に、センサ信号は、マグネトロン構造の外側から、例えば、真空システム内に提供され得る。
【0089】
抵抗センサ、電圧計、電流センサ、波形検出器などの電気パラメータを検知するためのセンサを使用することができる。これらのパラメータは、ターゲット上もしくはマグネトロン内、またはユニットへの電気信号の入力ポートなどで局所的に測定され得る。通常の電源ではなく、マグネトロン構造上で直接測定することで、より豊富な信号形態が与えられ、より正確な情報を得ることができる。既存のセットアップでは、測定値を得るために長いケーブルを使用する必要があり、その結果、電源での信号はターゲット付近の正確な信号を反映しないものであった。配線は、インピーダンス損失を有し得、これにより、プラズマの実際のインピーダンスが電源で容易に測定できない場合がある。さらに、高周波数の信号は、接続ラインによって減衰され得る。この効果は、信号外乱の調査を困難にする。これらの外乱は、プラズマの振動、またはターゲット仕上げもしくはマグネトロンの電力伝達手段の物理的制限によって引き起こされる可能性があるため、重要な情報源である。本発明の実施形態では、ターゲットの測定により、ケーブルおよび/またはマグネトロン接続システムからの容量性損失または誘導性損失がなく、より高速かつより正確な信号が提供される。
【0090】
コントローラ206は、信号を収集し、そこから処理されたデータを提供し、これにより、スパッタリングプロセスの監視に関連する情報(例えば、給電の安定性)を提供する。
【0091】
冷却液の監視。
別の例では、信号は、例えば、冷却液に関連するパラメータ、例えば、入口204を通る流体の温度、出口205を通る流体の温度(およびそれらの差異)を検知し得る少なくとも1つのセンサ207から、
図2のコントローラ206に提供され得る。これは、冷却プロセスの効率を評価するために使用することができる。代替的に、またはそれに加えて、圧力または流量に関連するパラメータを検知することもでき、圧力の低下や急上昇、さらには漏れの検出にも使用することができる。別のパラメータとして、冷却液の抵抗率があり、これは、冷却液中の塩および他の添加剤の量を監視するのに有用であり得る。
【0092】
これまでと同様に、コントローラ206は、信号を収集し、そこから有利に処理されたデータを提供し、これにより、冷却プロセスの監視に関連する情報を提供する。
【0093】
センサは、例えば、マグネトロンに存在する冷却システムの構成要素の一部として、再びマグネトロンに(例えば、上部部品または底部部品に)含めることができる。例えば、入口および出口における流量センサを使用して、冷却液流量を測定することができ、コントローラは、差動流量を処理および監視することができる。これにより、例えば、漏れを検出することが可能となり得る。追加的に、または代替的に、センサ信号は、他の場所から、例えば、冷却液を受容するターゲットチューブの部分から提供され得る。
【0094】
磁気構成の監視
いくつかの実施形態では、コントローラは、センサ信号を捕捉および処理し得、磁気構成に関連する情報、例えば、磁気に関連するセンサ信号の以下の非網羅的な例のうちの1つ以上を取得し得る。
-磁石構成のタイプ、および/または磁石構成の、例えば、グローバル(並進または回転位置、移動速度などの検知)、かつ/もしくは(例えば、光学センサ、ホールセンサなどの磁気センサからの)ローカルな位置決め。
-磁気源の温度(熱電対、熱電対などから磁場の強度に影響を与える可能性がある)。
-(例えばマグネトロンに沿った複数の点における)磁気強度。
コントローラは、センサ信号を収集し、磁場に関連する処理されたデータを有利に提供する。これを使用して、プラズマレーストラック、イオン衝突、プロセスの効率など、より一般的にはスパッタリングプロセスまたはスパッタリング装置の問題を監視することができる。
【0095】
他のスパッタリング装置の特性の監視
いくつかの実施形態では、コントローラ106、206は、スパッタリングシステムの状態もしくは機能に関連するセンサ信号もしくはアクチュエータ設定の以下の非網羅的な例を捕捉し得るか、または(真空チャンバなどから)スパッタリング装置の残りの部分からも捕捉し得る。
-ターゲット付近(ターゲットのバッキング構造など)の温度。
-マグネトロンの特定の部分(ハウジング、接続部、シールなど)の温度。
-システム内の圧力。例えば、いくつかの部品は、大気であるか、または大気と真空システム内の圧力との間に差圧を有しており、ガス漏れが検出される可能性がある。
-湿度、または例えば、液体漏れをチェックして検出するために、冷却システムの外部もしくはターゲットの外部の冷却液を検出するように特に適合されたセンサ。
【0096】
コントローラは、センサ信号を収集し、有利には、マグネトロンの状態に関連する処理されたデータをそこから提供する。これを使用して、密封などに関連する問題を監視することができる。
【0097】
円筒形ターゲットで使用するためのマグネトロンについて、コントローラはまた、ターゲット駆動に関連する情報、例えば、ターゲット移動速度(例えば、ターゲット回転)、累積回転量に関連する情報を取り扱うことができる。これらは、動作寿命を監視するために処理され得る。電子回路によって実施される処理により、負荷レベル、温度などの他の特性(例えば、コントローラによっても監視される他の特性)を動作寿命の処理のための重み付け係数として考慮し得ることに留意されたい。
【0098】
電流、トルクレベル、およびその履歴情報(例えば、経時的な履歴情報または1回転以内の履歴情報)に関する情報、ならびに駆動ユニットの温度も監視することができる。
【0099】
また、マグネトロン内の駆動手段の状態、および軸受の状態(例えば、軸受上の圧力)は、検知され、コントローラに送信され、モニタデータに処理され得る。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態では、処理されたデータは、さらなる処理、例えばデータ分析などのために、スパッタリング装置の真空部分の外部、例えば読み出し装置(画面、モニタ、色分けされたライトパネルなど)、もしくは外部メモリ、または外部データ処理ユニットに送信することができる。
データ交換のために、マグネトロン構造は、通信のための外部機器へのインターフェースを有し得る。これは、無線(例えば、WIFI、Bluetooth、光学、または任意の他のタイプのEM放射線など)であってもよいか、またはデータを転送するためのコネクタ(電気的コネクタ、光学的コネクタなど)を有する有線であってもよい。
追加的に、または代替的に、処理されたデータは、コントローラに含まれるメモリに記憶され得る。例えば、モニタデータの履歴記録を構築することで、本発明の実施形態によるコントローラによっても識別され得るスパッタリング装置の長期監視およびフォローアップを可能にする。
かかる履歴データに基づいて、損傷が他の部品に及ぶか、またはスパッタリングプロセスが悪化する前に、ユニットの状態の悪化(シールまたは軸受の経年劣化、接触ブラシの摩耗、摩擦またはトルクの増加、温度の上昇、ターゲットの消費もしくは損傷、または任意の他の特性)を早期に検出することができる。
【0101】
本発明の代替または追加の実施形態では、制御データは、マグネトロンのコントローラによって処理することができる。
【0102】
例えば、制御信号をマグネトロンに送信することができ、コントローラは、信号の処理を提供することができる。処理された制御データを使用して、コントローラに接続されたアクチュエータを制御することができる。マグネトロン構造またはその中の電子回路は、プロセッサによって処理される制御データに従ってアクチュエータを制御するために適合され得る。したがって、前述のアクチュエータを制御するために入力コンソールのみが必要であり、これらのアクチュエータを制御するためのスパッタリング装置の真空部分の外側の処理能力(コンピュータ)を必要としない。アクチュエータは、スパッタリング装置(例えば、電源のアクチュエータまたは冷却システムのアクチュエータ)の真空部分の外側にあってもよいか、またはスパッタリング装置(例えば、マグネトロン上、またはガス入口の弁、または駆動システム)内、またはマグネトロン(例えば、冷却システムの入口の弁、または駆動システム)内にあってもよい。
これまでと同様に、制御データを転送するためのインターフェースが提供され得、これは、モニタデータを転送するためのインターフェースと同じであってもよいか、または異なるタイプであってもよい。
【0103】
制御の例
以下に、制御データとしてマグネトロン構造によって処理され得るプロセス制御手段およびそれらに対応するプロセスパラメータの例を列挙する。
-電源:電源に関連するプロセスパラメータは、例えば、システムに印加されるエネルギーに関連する波形または電力レベル、例えば、電圧レベルもしくは電流レベルである。電源レベルは、典型的には、グローバルプロセスパラメータである。すなわち、電源レベルは、1つの場所でのみ変更することはできない。他の堆積パラメータを一定にして電源レベルを上げると、例えば、厚さが増加し得る。スパッタリングプロセスでは、電源は、典型的には、ターゲットに給電するためにマグネトロンに接続される。しかしながら、並行して、例えば、アクティブ陽極システムに給電するため、または例えば、イオン源に給電するために、追加の電源が提供されてもよい。
【0104】
本発明の実施形態では、電源および電源レベルに関連する制御データを処理することができ、これにはイオン源および/またはマグネトロンの電力を制御することが含まれる。
-主ガス供給:主ガス供給に関連するプロセスパラメータは、ガスフローである。ガス分布により、プロセスチャンバ内の場所に依存する部分圧力が判定される。純粋なガス、または様々な混合比率で異なるガスが発生する可能性があるため、ガス分布は複雑なパラメータである。主ガス供給の影響は、プロセスチャンバ内の送達システムのサイズを超えないように制限され得る。
-反応性ガス供給:反応性ガス供給に関するプロセスパラメータは、ガス分布および関与する部分圧力、またはガス流量である。より高い反応性ガス流は、典型的には、より低いスパッタリングレートを生成する。反応性ガスの流れを変化させることにより、堆積される層の厚さを制御することができるが、その組成および性能も影響し得る。
-ターゲット(例えば、回転速度)。アクチュエータは、例えば駆動システムを調節することによって、またはモータを直接調節することによって、マグネトロン構造内に配置されて回転速度を調節し得る。
-磁気構成:マグネトロンに関するプロセスパラメータは、例えば、磁場強度、磁石の移動、または回転速度である。磁石の移動には、磁石バーの向きおよび磁石バーの位置が含まれる。磁石バーの位置により、プラズマ密度、つまりスパッタ速度が判定される。磁石バーがセクションを含む場合、磁石バーの影響は局所的であり得る。局所磁場が強いほど、局所スパッタ速度は高くなる。
-アノード:アノードに関連するプロセスパラメータは、アノードチューニングレベル、例えば、アースレベルに対する抵抗である。
-加熱:加熱に関連するプロセスパラメータは、温度レベルである。異なる場所で異なる温度を適用することができる。
-冷却液:冷却液に関連するプロセスパラメータは、流量、温度であってもよいが、導電性、純度、デブリの量(例えば動的シールを摩耗し得る流体中の粒子)であってもよい。例えば、コントローラを使用して、冷却液特性(例えば、流量など)を制御する(例えば、最適化する)ために、マグネトロン構造の内部に装着されたバルブを操舵および/または制御することができる。
【0105】
制御は外部から提供することができ、例えば、コントローラに信号を送信し、それを処理することで、制御データを得ることができる。本発明は、それらに限定されず、内部で制御を提供することができる。例えば、ターゲットおよび/または磁気構成の制御は、内部で、例えば、監視データに基づいて、マグネトロン構造に含まれるコントローラを使用して行われてもよい。
【0106】
制御データは、これらの列挙されたパラメータのいずれか、またはそれらの組み合わせを含み得る。パラメータは、異なるシステムの異なるアクチュエータを変化させることによって制御され得る。磁石の移動に関連する制御データは、例えば、マグネトロン構造の電子回路で処理され得、コントローラにリンクされたアクチュエータを介して、前述の移動、例えば、バーの向きに影響を与えるために使用され得る。
【0107】
いくつかの追加の、または代替の実施形態では、コントローラは、スパッタリング装置(またはスパッタリングプロセス)の状態を監視すること、およびスパッタリング装置(またはスパッタリングプロセス)を制御することの両方に適合される。
【0108】
一例では、マグネトロン構造のコントローラは、センサ信号を受信または捕捉し得る。信号は、モニタデータに処理される。モニタデータからの応答として、コントローラは、制御データを生成し、制御データを使用して、スパッタリングプロセスまたはスパッタリング装置の一部を制御することができる。したがって、プロセスまたはスパッタリング装置の良好な自己調整を伴うフィードバックループを確立することができる。これにより、スパッタリングに高い安定性をもたらし、人間のフィードバックまたは介入の必要性を減らすことができる。一般的には、人間のインタラクションが少なくて済むため、高度に自動化されたユニットを有利に得ることができる。
【0109】
本実施形態では、コントローラ内部から制御可能なアクチュエータを厳密に接続する必要はない。スパッタリング装置の設置中は、アクチュエータおよびセンサをマグネトロン構造の回路に接続するだけでよく、アクチュエータおよび/またはセンサを任意の外部コンピュータまたは制御システムに接続および構成する必要はない。これにより、外部への接続数が少なく、コンパクトで安定したモジュール式ユニットが得られる。必要に応じて、初期設定もしくは外部制御を導入するため(例えば、フィードバック制御を上書きするため)、またはモニタデータに基づいてコントローラ内で生成されたモニタデータもしくはアラーム信号を出力するために、接続部を設けることができる。これは人間のインタラクションを可能にするが、その度合いは低い。例えば、スパッタリング装置は、動作点の範囲内で独立していてもよい。例えば、高レベルのデータのみが外部に送信され得る、自立可能なマグネトロン構造を有するシステムが提供されてもよい。例えば、通常、コーティングプロセス中、例えばコータストップ上でのメンテナンスが必要である。本発明により、残りの変動を内部的に対処することができる。これにより、中間故障なく、スムーズに次のコータストップを達成することができる。
【0110】
監視および制御の組み合わせの具体例
スパッタリングプロセスおよびスパッタリング装置の状態を制御および/または監視するための、コントローラを含むマグネトロンの複数の構成を提供することができる。監視データおよび制御データの任意の好適な組み合わせを使用することができ、例えば、電力レベルが低下したときの電力の制御、モニタデータが電力レベルもしくは温度の増加、または両方の組み合わせを示す場合の冷却液流の増加、レーストラックが不安定になる場合のスパッタガス流の変動、および他の組み合わせが挙げられる。
【0111】
このフィードバック構成の特定の例では、マグネトロン構造のコントローラは、スパッタリングプロセスおよび/または電力を監視することができる。モニタデータが安定したスパッタリングおよび低消費電力を示すとき、この情報に基づいて、コントローラは、制御データを生成し、冷却システムのアクチュエータを制御して、冷却液の流れを低減し、これにより、流体(例えば、水)消費を低減することができる。ただし、プロセッサは、冷却液流量を、安全な動作点から所定の範囲内にのみ低減するようにプログラムすることができる。別様では、コントローラは、(例えば、制御データが、フローが所定の閾値未満で減少することを示す場合)この範囲を超えて、検証のためにオペレータに通知するようにプログラムされ得る。
【0112】
いくつかの用途では、マグネトロンが加熱されて、エネルギー損失、熱膨張および経年劣化を引き起こし得る。これにより、真空シール、冷却液シールなどが損傷する場合がある。本発明のいくつかの実施形態では、ハウジング内またはマグネトロン内のセンサは、温度および/または熱膨張を検出し得、信号は、処理のためにコントローラに直接送信することができる。1つ以上のセンサ信号が解釈され、データが信号が所定の閾値を超えていることを示す場合、処理されたデータを使用して、マグネトロンユニットの外部のアラームを制御するための制御データ、または給電および/もしくは周波数および/もしくは回転速度を低減するための制御データ、または多数のパラメータのうちのいずれかを生成することができる。特定の実施形態では、マグネトロン構造の状態を監視するためのセンサは、コントローラの一部であり得、非常にコンパクトな配置が得られる。
【0113】
特定の例では、センサは、トルクを検知するマグネトロン構造に含まれ得る。コントローラは、センサ信号を捕捉し得(例えば、センサ信号は、処理のためにコントローラに送信されてもよい)、プロセッサは、信号をモニタデータに解釈し、これにより、ターゲットのトルクを監視する。プロセッサは、例えば、トルクが所定の範囲内に含まれない場合に、信号をアラームシステムに送信することによって、アラームをオフにするようにプログラムされ得る。トルクが所定の範囲内に含まれない場合とは、ターゲットがマグネトロンにうまく取り付けられていないこと、または摩擦が過大であることを意味し得る。モニタデータはまた、トルクの周期的な変化を示し得、これは、ターゲットが変形(例えば、屈曲)を有し、スパッタリング装置のいくつかの構成要素を損傷させることを意味し得る。トルクデータは、ターゲットの速度にもリンクさせることができ、これは、データインターフェースを介して直接導入することができるか、またはそれを検知することもできる。
【0114】
コントローラの例
コントローラは、処理されたデータを提供するために、プロセッサを含み得る。コントローラは、センサ信号(例えば、センサによって生成され、センサから取り込まれる信号)を処理するようにプログラムすることができ、これにより、モニタデータを提供する。かかる場合、コントローラは、信号入力、例えば光学入力、電子入力(有線または無線入力、例えば高周波RFを介して)、圧力入力などを含んでもよい。アナログ-デジタル変換器および/またはデジタル-アナログ変換器を回路に含めることができる。
【0115】
追加的に、または代替的に、プロセッサは、コマンドから制御データを生成するようにプログラムすることができる。かかる場合、外部コマンドのための入力が含まれ得る。いくつかの実施形態では、制御データは、例えば、電子ユニット自体によって処理されるモニタデータから、センサ信号に由来する制御データを生成するようにプログラムすることができる。コントローラは、一般にスパッタリング装置またはそれらに関連するサブシステム内のマグネトロン構造内のアクチュエータを駆動および制御するために適合され得る。これらは、スパッタリング装置(冷却システム、電源など)の真空部分の内側または外側にあり得る。
【0116】
コントローラは、データ、ルックアップテーブル、アルゴリズムなどを記憶するためのデータストレージ(例えば、メモリ)を含み得る。これらは、長期監視などを提供するために、プロセッサおよび/または外部システムによってアクセスすることができる。記憶された情報は、モニタデータ(履歴記録など)、制御データ(アクチュエータの制御のため)、またはスパッタリングプロセスもしくはスパッタリング装置の監視および/または制御に関連するデータに関連し得る。
【0117】
コントローラは、例えば、処理されたモニタデータに応答して、かつ/またはメモリ上のモニタデータと所定のデータとの値の比較に応答して、アクチュエータを制御するためにフィードバックを提供するように適合され得る。
【0118】
マグネトロンは、データを通信し、外部機器と交換するための外部機器へのインターフェースを有する。これは、無線(例えば、WIFI、Bluetooth、光学、または任意の他のタイプのEM放射線など)であってもよいか、またはデータをコントローラに転送するためのコネクタ(電気、光学など)を有する有線であってもよい。インターフェースは、マグネトロンおよび/またはそのハウジングを通って、スパッタリング装置の真空部分の外側に延在するコネクタを含み得、そこから、例えば、有線接続を介して外部機器に接続することができる。いくつかの実施形態では、
図1に示すように、インターフェース108またはそのコネクタは、外部機器と信号を交換するためのアンテナ109を含む。
【0119】
いくつかの特定の実施形態では、マグネトロンのインターフェースは、データ(モニタデータおよび/または制御データ)を送信および/または受信することができ、例えば単一のコネクタを使用してコントローラに給電するための電力を受信することもできる。接続、ワイヤなどの数を低減させることができる。データおよび電源信号用のこのデュアルコネクタは、有線または無線であり得る。
【0120】
インターフェースは、コントローラの一部であり得る。他の実施形態では、コントローラは、他の回路から離れた、例えばマグネトロンの別の位置にあるインターフェースに接続することができる。例えば、
図1に示されるように、コントローラ106は、マグネトロンの上部部品101内にあり得、それは、取り付け可能な底部部品102内のインターフェース108とデータを交換し得る。インターフェースとコントローラとの間のデータ交換は、有線接続を介して行われてもよい。また、無線で行われてもよく、その場合、インターフェース108およびコントローラ106の両方が、無線データ送信機/受信機を含んでもよく、これにより、置換および交換が容易な完全モジュール式マグネトロンアセンブリが取得され得る。例えば、異なるマグネトロンの上部部品を、同一の底部部品で使用し、それらの間の無線接続のみをペアリングすることも可能である。
【0121】
コントローラは、集積バッテリなどのローカルソースによって給電することができる。本発明のいくつかの実施形態では、回路は、冷却液流(油圧変換)、ターゲットチューブの電気給電などの利用可能なソースからエネルギーを(例えば、電力抽出器で)抽出することによって給電され得る。いくつかの実施形態では、回路は、外部コネクタによって給電され得、外部コネクタは、バッテリを変更するためにスパッタリング装置の真空システムを開くなどのメンテナンスを必要としない。
【0122】
コントローラは、冷却システムを含み得る。例えば、スパッタリング装置の冷却システムは、コントローラに冷却を提供してもよい。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくともプロセッサは、モノリシック回路であり得るが、より多くの要素が、コントローラの一部として含まれてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、
図3に示すように、コントローラは、統合モジュール301であり、プロセッサ(例えば、モノリシックプロセッサ302)を含み、ADC、DAC、データコネクタ、センサ信号を捕捉するための信号入力、ドライバ、さらにはセンサおよび/またはアクチュエータをさらに含む。したがって、マグネトロン300の特定の形状に適合および調整し得る高度に統合されたデバイスが得られる。
【0125】
図4は、その内部の図のためにその断面を取り外したマグネトロン401の斜視図を示す。マグネトロン401内に埋め込まれたプロセッサを含む統合モジュール402の例示的な配置が示される。モジュール402は、任意の必要な接続を容易にする、部分401の静止部に取り付けられ得る。モジュール402の形状は、任意の必要な電源ピン、冷却システムなどの導入を可能にするように適合され得る。
図4に示される例は、別個の上部部品または底部部品を有しない一体型のマグネトロンの一例である。
【0126】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の実施形態による少なくとも1つのマグネトロン構造を含むスパッタリング装置を提供するものである。
【0127】
さらなる特徴および特性は、本発明の第1の態様に記載されるマグネトロン構造の特定の実施形態の特徴に対応し得る。
【0128】
第3の態様では、本発明は、スパッタリング装置で使用するためのマグネトロン構造での、コントローラの使用に関する。マグネトロン構造は、管状ターゲットとともに使用するための回転可能なマグネトロンスパッタリング源とともに使用されてもよいが、これらに限定されない。コントローラは、スパッタリングプロセスおよび/もしくはスパッタリング装置に関連するパラメータを監視するため、またはそれらの機能を制御するため、または両方の組み合わせのために適合(例えば、プログラム)され得る。コントローラは、データを信号に、またはその逆に処理するために適合され得る。コントローラは、マグネトロン構造内、例えば、マグネトロンの上部部品、マグネトロンの底部部品、またはそのハウジング内で完全に統合可能であり得る。例えば、コントローラを形成する回路(複数可)は、円筒形ターゲットとともに使用するために(例えば、マグネトロンのベースプレートに、またはそのヘッドに)マグネトロンに取り付けられ得るか、または統合され得る。さらなる特徴は、第1および第2の態様に記載される構成要素の機能に対応し得る。
【国際調査報告】