(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】重合性組成物並びにコポリカーボネートエステル及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/66 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
C08G63/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522088
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 KR2019013227
(87)【国際公開番号】W WO2020085686
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129077
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK Chemicals Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】310,Pangyo-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13494,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オウ, クワン セイ
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA08
4J029AB01
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE01
4J029BA01
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4J029JF381
4J029JF471
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
本発明による重合性組成物から製造されるコポリカーボネートエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び/若しくは1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、カーボネート化合物、並びに石油ベース及び/若しくはバイオベースのジフェニルエステル並びに/又は石油ベース及び/若しくはバイオベースのジフェニルエステル以外の、追加のジフェニルエステル化合物の溶融重縮合によって共重合されることにより、様々な物理的性質を有することができ、それ故に、セグメント化製品の製造に有用に適用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a-1)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び(a-2)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、並びに
(b)(b-1)以下の式1で示されるカーボネート化合物、(b-2)以下の式2で示される化合物、以下の式3で示される化合物、又は両方、並びに(b-3)上記の式2及び式3の化合物以外の、追加のジフェニルエステル化合物を含む重合組成物であって、
成分(a-1)のモル分率がx(0.1≦x≦1)である場合、成分(a-2)のモル分率が1-xであり、成分(b-1)及び成分(b-2)の全モル分率がy(0.1≦y≦1)である場合、成分(b-3)のモル分率が1-yであり、但し、xとyとの両方が同時に1ではない、重合組成物。
【化1】
(上記の式において、R
1は、それぞれ独立的に、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であり、前記アリール基は、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有することができる。)
【請求項2】
上記の式2で示される化合物、上記の式3で示される化合物、並びに成分(a-2)及び成分(b-3)が、それぞれ独立的に、糖、リモネン、及びリグニンからなる群から選択される、少なくとも1種に由来するバイオベースモノマーである、請求項1に記載の重合組成物。
【請求項3】
xが0.5~1である、請求項1に記載の重合組成物。
【請求項4】
yが0.5~1である、請求項1に記載の重合組成物。
【請求項5】
成分(a-2)が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ハイドロキノン、ビフェノール、2,2’-ビフェノール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピル-フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3’-スピロ-ビス(1,1-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、ジスピロ[5.1.5.1]テトラデカン-7,14-ジオール、5,5’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール)、2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニトール、及びテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールからなる群から選択される、少なくとも1種のジオール化合物である、請求項1に記載の重合組成物。
【請求項6】
成分(a-2)が、1,14-テトラデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、又はテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールである、請求項5に記載の重合組成物。
【請求項7】
成分(b-3)が、シュウ酸ジフェニル、マロン酸ジフェニル、コハク酸ジフェニル、グルタル酸ジフェニル、アジピン酸ジフェニル、ピメリン酸ジフェニル、スベリン酸ジフェニル、アゼライン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル、ウンデカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニル、トリデカン二酸ジフェニル、テトラデカン二酸ジフェニル、ペンタデカン二酸ジフェニル、ヘキサデカン二酸ジフェニル、1,2-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルイソフタレート、4,4’-ジフェニル-ビフェニルジカルボキシレート、4,4’-ジフェニル-エチリデンビスベンゾエート、4,4’-ジフェニル-オキシビスベンゾエート、2,4-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,5-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,6-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,7-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、及び2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートからなる群から選択される、少なくとも1種である、請求項1に記載の重合組成物。
【請求項8】
成分(b-3)が、セバシン酸ジフェニル、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、又は2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートである、請求項7に記載の重合組成物。
【請求項9】
コポリカーボネートエステルを調製する方法であって、請求項1に記載の重合組成物に溶融重縮合反応を施して、コポリカーボネートエステルを調製するステップを含む、方法。
【請求項10】
溶融重縮合反応が、(1)50~700トールの減圧及び130~250℃の温度で0.1~10時間の第1の反応並びに(2)0.1~20トールの減圧及び200~350℃の温度で0.1~10時間の第2の反応を含む、請求項9に記載のコポリカーボネートエステルを調製する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の重合組成物から調製されるコポリカーボネートエステル。
【請求項12】
ASTM D6866による、バイオマスに由来するバイオベース炭素含有量が30%以上である、請求項11に記載のコポリカーボネートエステル。
【請求項13】
100~240℃のガラス転移温度を有する、請求項11に記載のコポリカーボネートエステル。
【請求項14】
請求項11に記載のコポリカーボネートエステルから製造される成形品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、石油ベース及び/又はバイオベースのモノマーを含む重合組成物、そのモノマーから共重合されるコポリカーボネートエステル、並びにそれを調製する方法に関する。
【0002】
[背景技術]
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、カーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、及び/又はテレフタレートとの溶融重縮合によって調製されるポリカーボネートエステルは、バイオマス由来のバイオベースモノマーである1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含有するバイオプラスチックである。バイオベースポリカーボネートエステルは、代表的な透明の汎用樹脂であるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の高い透明度を有し、且つビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートの高い耐熱性を有する。
【0003】
こうしたバイオベースポリカーボネートエステルは、環境ホルモンを生じるBPAを含有せず、且つ脂肪族環分子構造を有する1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートモノマーを共重合させることによって、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの分子構造の延性を改善することもできる。さらに、カーボネート結合の一部をエステル結合で置き換えることによって、カーボネート結合の欠点を補うことができる。
【0004】
近年、ポリマー樹脂が利用される用途が多様化し、特定されるので、要求される物理的性質は、詳細に、且つ広範に徐々に変化している。しかし、汎用ポリマー樹脂が限定されたモノマーから主に得られる故に、上記の用途市場における変化に応じて、様々な物理的性質を満たすことができる製品の開発には限界がある。それ故に、従来のポリマー樹脂の組成物を使用した、様々なコポリマーの開発が積極的に行われる。
【0005】
その一方で、バイオベースポリカーボネートエステルを製造するための、主なモノマー組成物は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、カーボネートモノマー(例えば、炭酸ジフェニル)、並びにエステルモノマー(例えば、1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタル酸ジフェニル)である。バイオベースポリカーボネートエステルの、基本の物理的性質、特徴などは、これらのモノマーの様々な組合せで変わることができる。
【0006】
しかし、前述されたポリマー樹脂の用途市場の変化と並行した、環境に配慮した時代の到来によるバイオプラスチック市場の拡大に応じるために、バイオベースポリカーボネートエステルの基本の物理的性質及び特徴を拡張し、適宜その用途を拡張することが必要である。結果として、様々な用途の性質に適合する、石油ベース及び/又はバイオベースのコモノマーを使用することが必要とされる。
【0007】
[発明の詳細な説明]
[技術的課題]
したがって、本発明は、バイオベースポリカーボネートエステルを調製するためのモノマーとして、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、ジフェニルエステルモノマー、追加のジフェニルエステル化合物、及びコポリカーボネートエステルを含む重合組成物、並びにそれを調製する方法を提供することを目的とする。
【0008】
[課題の解決手段]
上記の目的を達成するために、本発明は、(a)(a-1)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び(a-2)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、並びに(b)(b-1)以下の式1で示されるカーボネート化合物、(b-2)以下の式2で示される化合物、以下の式3で示される化合物、又は両方、並びに(b-3)上記の式2及び式3の化合物以外の、追加のジフェニルエステル化合物を含む重合組成物であって、成分(a-1)のモル分率がx(0.1≦x≦1)である場合、成分(a-2)のモル分率が1-xであり、成分(b-1)及び成分(b-2)の全モル分率がy(0.1≦y≦1)である場合、成分(b-3)のモル分率が1-yであり、但し、xとyとの両方が同時に1ではない、重合組成物を提供する。
【0009】
【0010】
上記の式において、R1は、それぞれ独立的に、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であり、アリール基は、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有することができる。
【0011】
別の目的を達成するために、本発明は、コポリカーボネートエステルを調製する方法であって、重合組成物に溶融重縮合反応を施して、コポリカーボネートエステルを調製するステップを含む、方法を提供する。
【0012】
さらに別の目的を達成するために、本発明は、重合組成物から調製されるコポリカーボネートエステルを提供する。
【0013】
さらに別の目的を達成するために、本発明は、コポリカーボネートエステルから製造される成形品を提供する。
【0014】
[本発明の有利な効果]
本発明の重合組成物から調製されるコポリカーボネートエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール並びに/又は1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、カーボネート化合物、並びに石油ベース及び/若しくはバイオベースのジフェニルエステル並びに/又は石油ベース及び/若しくはバイオベースのジフェニルエステル以外の、追加のジフェニルエステル化合物の溶融重縮合によって共重合され、それによって、様々な物理的性質を有することができる。したがって、特定の目的の製品を製造するのに有利に使用することができる。
【0015】
[本発明を実施するための最良の形態]
本発明は、以下に与えられる開示に限定されないが、本発明の要点が変わらない限り、様々な形態に改変することができる。
【0016】
実施形態の説明を通して、用語「含む」は、別段の指示がない限り、他の要素を含めることができる。さらに、本明細書で使用される、成分の量、反応条件などを表す全ての数は、別段の指示がない限り、用語「約」で修飾されるものと理解されたい。
【0017】
(重合組成物)
本発明は、(a)(a-1)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び(a-2)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、並びに(b)(b-1)以下の式1で示されるカーボネート化合物、(b-2)以下の式2で示される化合物、以下の式3で示される化合物、又は両方、並びに(b-3)上記の式2及び式3の化合物以外の、追加のジフェニルエステル化合物を含む重合組成物であって、成分(a-1)のモル分率がx(0.1≦x≦1)である場合き、成分(a-2)のモル分率が1-xであり、成分(b-1)及び成分(b-2)の全モル分率がy(0.1≦y≦1)である場合、成分(b-3)のモル分率が1-yであり、但し、xとyとの両方が同時に1ではない、重合組成物を提供する。
【0018】
【0019】
上記の式において、R1は、上記で定められた通りである。
【0020】
詳細には、xは、0.5~1、0.6~1、又は0.7~1であってもよく、yは、0.5~1、0.6~1、又は0.7~1であってもよい。ここで、xとyとの両方が同時に1ではない。すなわち、本発明の重合組成物は、必ず成分(a-2)及び成分(b-3)のいずれか1つを含み、両方を含んでもよい。
【0021】
成分(a)及び成分(b)は、石油ベース及び/又はバイオベースのモノマーであってもよい。詳細には、上記の式2で示される化合物、上記の式3で示される化合物、並びに成分(a-2)及び成分(b-3)は、それぞれ独立的に、糖、リモネン、及びリグニンからなる群から選択される、少なくとも1種に由来するバイオベースモノマーであってもよい。それぞれの成分の詳細な説明は以下の通りである。
【0022】
〔(a)ジオール化合物〕
〔(a-1)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール〕
本発明の重合組成物は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(a-1)を含む。
【0023】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(a-1)は、バイオマスに由来し、周知の化合物であり得る。詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド、又はイソイジドであってもよい。詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビドであってもよい。
【0024】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、粉末、フレーク、又は水溶液の形態であってもよい。
【0025】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの純度は、調製されるコポリカーボネートエステルの物理的性質に密接に関連する。詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの純度が増すほど、調製されるコポリカーボネートエステルの耐熱性、透明度、及び機械的性質を高めることができる。
【0026】
しかし、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、空気に長時間曝露される場合、容易に酸化され、且つ変色することがあり、それによって、最終のポリマーの色及び分子量が満足なものではないという問題が起こり得る。したがって、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの空気への曝露を最小限にすることが必要である。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、空気に曝露される場合、好ましくは、酸素吸収剤などの脱酸素剤と共に保管される。
【0027】
さらに、その純度を維持するために、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを調製する、複数のステップの方法において生じた、それに含有される不純物を取り除くことによって、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを精製することが極めて重要である。詳細には、真空蒸留による1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの精製において、初期分離で取り除くことが可能な、極微量のレベルの酸性液体成分、及び残渣分離によって取り除くことが可能なアルカリ金属成分を取り除くことが不可欠である。酸性液体成分及びアルカリ金属成分のそれぞれは、10ppm以下、5ppm以下、又は3ppm以下のレベルで保つことができる。
【0028】
〔(a-2)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物〕
本発明の重合組成物は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物(a-2)を含むことができる。
【0029】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の、追加のジオール化合物(a-2)は、石油ベース及び/又はバイオマスの原料から得ることができるが、その種類は限定されない。
【0030】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の、追加のジオール化合物(a-2)は、所望の物理的性質に応じて、第一級、第二級、若しくは第三級のジオール、又はその様々な組合せとして使用することができる。
【0031】
例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の、追加のジオール化合物(a-2)は、バイオマス原料から調製することができる、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール(TDD)、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノール、2,2’-ビフェノール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン(BPA TMC)、5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピル-フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPAフルオレン)、3,3’-スピロ-ビス(1,1-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール)、ジスピロ[5.1.5.1]テトラデカン-7,14-ジオール、及び5,5’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール)、2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニトール、及びテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールからなる群から選択される、少なくとも1種であってもよい。
【0032】
詳細には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の、追加のジオール化合物(a-2)は、1,14-テトラデカンジオール(TDD)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPA TMC)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPAフルオレン)、又はテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールであってもよい。
【0033】
〔(b)カーボネート化合物及びジフェニルエステル化合物〕
〔(b-1)上記の式1で示されるカーボネート化合物〕
上記の式1で示される化合物(b-1)は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジ-t-ブチル、炭酸ジフェニル(DPC)、炭酸ジトリル、又は炭酸ビス(メチルサリチル)であってもよい。詳細には、上記の式1で示される化合物(b-1)は、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル、又は炭酸ビス(メチルサリチル)であってもよい。
【0034】
〔(b-2)上記の式2で示される化合物、上記の式3で示される化合物、又は両方〕
上記の式2で示される化合物及び上記の式3で示される化合物はそれぞれ、既知の石油ベースモノマー、又は糖、リモネン、及びリグニンなどのバイオマスに由来するモノマーであってもよい。
【0035】
詳細には、上記の式2で示される化合物は、以下の式2’で示される化合物から得ることができ、上記の式3で示される化合物は、以下の式3’で示される化合物から得ることができる。
【0036】
【0037】
上記の式において、R2及びR3は、それぞれ独立的に、水素又はメチルである。
【0038】
式2’及び式3’で示される化合物はそれぞれ、以下の方法によって、原料である、糖、リモネン、及びリグニンなどのバイオマスから得ることができる。
【0039】
バイオベーステレフタル酸(TPA)が、糖、リモネン、及びリグニンなどのバイオマスからの、様々な中間物質によって調製されると、バイオベースのTPA及びエタノールにエステル化反応を施して、バイオベーステレフタル酸ジメチル(DMT)を調製することができ、バイオベースDMTに環飽和水素化反応を施してバイオベース1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(DMCD)を調製することができ、バイオベースDMCDに加水分解反応を施してバイオベース1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)を調製することができる。その一方で、バイオベースTPAに環飽和水素化反応を施して、バイオベースCHDAを直接調製することができる(以下の反応スキーム1参照)。
【0040】
【0041】
〔(b-3)上記の式2及び式3の化合物以外の、追加のジフェニルエステル化合物〕
本発明の重合組成物は、上記の式2及び式3によって示される化合物以外の、追加のジフェニルエステル化合物(b-3)を含むことができる。
【0042】
成分(b-3)は、石油ベース及び/又はバイオマスの原料から得ることができるが、その種類は限定されない。
【0043】
成分(b-3)は、所望の物理的性質に応じて、第一級、第二級、又は第三級のジカルボキシレート、ジカルボン酸、又はその様々な組合せを、フェノール又はフェノール置換基と反応させることによって調製することができる。
【0044】
例えば、成分(b-3)は、シュウ酸ジフェニル、マロン酸ジフェニル、コハク酸ジフェニル、グルタル酸ジフェニル、アジピン酸ジフェニル、ピメリン酸ジフェニル、スベリン酸ジフェニル、アゼライン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル、ウンデカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニル、トリデカン二酸ジフェニル、テトラデカン二酸ジフェニル、ペンタデカン二酸ジフェニル、ヘキサデカン二酸ジフェニル、1,2-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルイソフタレート、4,4’-ジフェニル-ビフェニルジカルボキシレート、4,4’-ジフェニル-エチリデンビスベンゾエート、4,4’-ジフェニル-オキシビスベンゾエート、2,4-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,5-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,6-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,7-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、及び2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレート(DPFD)からなる群から選択される、少なくとも1種であってもよい。
【0045】
詳細には、成分(b-3)は、セバシン酸ジフェニル、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、又は2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレート(DPFD)であってもよい。
【0046】
(コポリカーボネートエステル)
本発明は、上記の重合組成物から調製されるコポリカーボネートエステルを提供することができる。
【0047】
詳細には、成分(a)及び成分(b)に溶融重縮合反応を施して、様々な繰り返し単位を含有するコポリカーボネートエステルを調製することができる。
【0048】
例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(a-1)を、上記の式1で示されるカーボネート化合物(b-1)と反応させて、以下の式4で示される、繰り返し単位1(カーボネート結合)を形成することができる。
【0049】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(a-1)を、上記の式2で示される化合物と反応させて、以下の式5で示される、繰り返し単位2(エステル結合)を形成することができる。
【0050】
こうした場合、繰り返し単位2(式5)の1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート部分のcis/trans比は、1/99~99/1%、20/80~80/20%、又は30/70~70/30%であることができる。
【0051】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(a-1)を、上記の式3で示される化合物と反応させて、以下の式6によって示される繰り返し単位3(エステル結合)を形成することができる。
【0052】
【0053】
したがって、本発明のコポリカーボネートエステルは、(i)繰り返し単位1、(ii)繰り返し単位2、繰り返し単位3、又は両方、及び(iii)他の繰り返し単位を含む、様々な組合せの繰り返し単位を選択的に含有することができるので、様々な用途に好適な物理的性質を得るためにより有利である。
【0054】
コポリカーボネートエステルは、100~240℃、110~240℃、120~240℃、又は160~240℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。
【0055】
コポリカーボネートエステルは、0.3~2.3dl/g、0.3~2.0dl/g、0.3~1.5dl/g、0.3~1.0dl/g、0.4~2.0dl/g、0.4~1.5dl/g、又は0.4~1.0dl/gの固有粘度(IV)を有することができる。
【0056】
コポリカーボネートエステルは、85%以上、88%以上、90%以上、85~97%、85~95%、又は88~93%の、ASTM D1003による光透過率を有することができる。
【0057】
コポリカーボネートエステルは、ASTM D1238に従って、260℃で荷重2.16kgの下、10g/10分以上、10~150g/10分、又は10~130g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有することができる。
【0058】
コポリカーボネートエステルは、ASTM D6866による、バイオマスに由来するバイオベース炭素含有量が30%以上、30~95%、又は30~90%であることができる。
【0059】
詳細には、コポリカーボネートエステルの、バイオマスに由来する有機炭素含有量(%Cbio)は、以下の数式1によって定めることができる。
【0060】
[数式1]
%Cbio=(コポリカーボネートエステルの炭素原子の12C同位体に対する14C同位体の含有比)/(バイオマス標準物質の炭素原子の12C同位体に対する14C同位体の含有比)×100
【0061】
数式1による、バイオマス由来の有機炭素含有量を測定する方法は、ASTM D6866に記載された方法(放射性炭素分析を使用した、バイオベース含有量を測定するための標準試験方法)に準拠してもよい。バイオマスに由来する有機炭素含有量の技術的意味及び測定方法は、以下の通りである。
【0062】
一般に、化石原料に由来する樹脂などの有機物質とは異なり、バイオマスに由来する樹脂などの有機物質は、同位体14Cを含有することが既知である。より詳細には、動物又は植物などの生物から得られる、全ての有機物質は、3つの型の同位体12C(約98.892重量%)、13C(約1.108重量%)、及び14C(約1.2×10-10重量%)を共に炭素原子として含有し、それぞれの同位体比は一定に保たれることが既知である。これは、大気中におけるそれぞれの同位体の比と同じものである。生物は、代謝し、外部環境と炭素原子を交換し続けるので、この同位体比は一定のままである。
【0063】
その一方で、14Cは放射性同位体であり、その含有量は、以下の数式2に従って、時間(t)にわたって減少し得る。
【0064】
[数式2]
n=n0・exp(-at)
【0065】
数式2において、n0は14C同位体の初期含有量を示し、nはt時間後に残っている14C同位体の含有量を示し、aは半減期に関連する崩壊定数(又は放射性定数)を示す。
【0066】
数式2において、14C同位体の半減期は約5730年である。半減期を考慮して、外部環境と常に相互作用する、生物から得られる有機物質、すなわちバイオマスに由来する樹脂などの有機物質は、同位体の含有量が僅かに減るとしても、実質的に一定の含有量の14C同位体、及び実質的に一定の、他の同位体との含有比、例えば、14C/12C=約1.2×10-12を維持することができる。
【0067】
その一方で、石炭又は原油などの化石燃料は、50000年よりも長く、外部環境と炭素原子を交換することを妨げられてきた。したがって、化石原料に由来する樹脂などの有機物質は、上記の数式2により推定すると、14C同位体の初期含有量の0.2%未満を含有するので、実質的に14C同位体を含有しないことが分かる。
【0068】
上記の点を上記の数式1の考察に入れる。分母は、バイオマスに由来する同位体の含有比14C/12C、例えば、約1.2×10-12であることができ、分子は、測定される樹脂に含有される14C/12Cの含有比であることができる。
【0069】
上記のように、コポリカーボネートエステルの全炭素原子の中の、バイオマスに由来するバイオベース炭素含有量は、バイオマスに由来する炭素原子が、同位体含有比約1.2×10-12を維持し、その一方で化石燃料に由来する炭素原子が、実質的にゼロであるような同位体含有比を有することに基づいて、上記の数式1によって計算することができる。
【0070】
ここで、それぞれの炭素同位体の含有量は、ASTM D6866規格に記載された2つの方法のうちの1つに従って決定することができる。
【0071】
詳細には、炭素の核分裂の時点で発生する放射線を測定する方法である放射性炭素分析、及び試料中の放射性炭素濃度を直接測定する加速質量分析計を使用する方法を使用して、数式1の、バイオマスに由来する有機炭素含有量を計算することができる。
【0072】
(コポリカーボネートエステルを調製する方法)
本発明は、コポリカーボネートエステルを調製する方法であって、重合組成物に溶融重縮合反応を施して、コポリカーボネートエステルを調製するステップを含む、方法を提供する。
【0073】
詳細には、本発明は、(a)(a-1)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び(a-2)1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、並びに(b)(b-1)上記の式1で示されるカーボネート化合物、(b-2)上記の式2で示される化合物、上記の式3で示される化合物、又は両方、並びに(b-3)上記の式2及び式3の化合物以外の、追加のジフェニルエステル化合物に溶融重縮合反応を施すことによってコポリカーボネートエステルを調製することができる。
【0074】
成分(a)の詳細は、前述したものと同じである。
【0075】
上記の式1で示されるカーボネート化合物(b-1)は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジ-t-ブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル、又は炭酸ビス(メチルサリチル)であってもよい。溶融重縮合反応が減圧下で実施されることを考慮して、好ましくは、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル、又は炭酸ビス(メチルサリチル)を使用することができる。
【0076】
上記の式2及び式3で示される化合物は、使用のために、以下の方法によって調製することができる。
【0077】
上記の式2で示される化合物は、上記の式2’で示される化合物をハロゲン含有化合物(又はハロゲン化化合物)と反応させて、それを、末端にハロゲン官能基を含有する中間反応物(例えば、以下の式2’’で示される化合物)に変換し、引き続いて、それにフェノール若しくはフェノール置換基との求核反応を施すことによって、又は上記の式2’で示される化合物と、フェノール若しくはフェノール置換基とのエステル化反応若しくはエステル交換反応によって得ることができる(以下の反応スキーム2参照)。
【0078】
【0079】
上記の反応スキームにおいて、R2は、それぞれ独立的に、水素又はメチルであり、R4は、それぞれ独立的に、F、Cl、又はBrである。
【0080】
詳細には、上記の式2’で示される化合物をハロゲン化化合物と反応させて、末端にハロゲン官能基を含有する中間反応物(例えば、上記の式2’’で示される化合物)を調製することができる。上記の式2’’で示される化合物は、R4がClである1,4-シクロヘキサンジカルボニルクロリド(CHDC)であってもよい。
【0081】
ハロゲン化化合物は、ホスゲン、トリホスゲン、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、五臭化リン、及びフッ化シアヌルからなる群から選択される、少なくとも1種であってもよい。詳細には、ハロゲン化化合物は、ホスゲン、塩化チオニル、及び塩化オキサリルからなる群から選択される、少なくとも1種の塩素化剤であってもよく、それからの反応副生成物は、容易に取り除くことができる。さらにハロゲン化化合物は、商業的観点から、好ましくはホスゲンであってもよい。
【0082】
添加されるハロゲン化化合物の量は、最初に使用される、上記の式2’で示される化合物のモル量の1~10倍、1.5~7.5倍、又は2~5倍であってもよい。
【0083】
中間反応物への変換の反応条件及び反応時間は、上記の式2’で示される化合物及びハロゲン化化合物の種別に応じて異なり得る。詳細には、中間反応物への変換は、大気圧で、温度-30~150℃で、5分間~48時間実施することができる。より詳細には、中間反応物への変換は、大気圧で、温度20~100℃又は40~80℃で、10分間~24時間実施することができる。
【0084】
中間反応物への変換において、有機溶媒を使用して、上記の式2’で示される化合物を溶解させるか、又は分散させることができる。
【0085】
こうした場合、使用され得る有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、又はその混合物である。
【0086】
中間反応物の変換率及び反応収率を増すために、中間反応物への変換で使用される、上記の式2’で示される化合物及びハロゲン化化合物の種別に応じて、触媒を使用することができる。
【0087】
触媒の種別は、この目的に合う限り、特に限定されない。例えば、有機触媒、無機触媒などを使用することができる。
【0088】
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラブチル尿素、又はその混合物を有機触媒として使用することができる。
【0089】
塩化アルミニウム(AlCl3)、塩化鉄(FeCl3)、塩化ビスマス(BiCl3)、塩化ガリウム(GaCl3)、五塩化アンチモン(SbCl5)、三フッ化ホウ素(BF3)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(Bi(OTf)3)、四塩化チタン(TiCl4)、四塩化ジルコニウム(ZrCl4)、四臭化チタン(TiBr4)、四臭化ジルコニウム(ZrBr4)、又はその混合物を無機触媒として使用することができる。
【0090】
詳細には、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、又はテトラメチル尿素を有機触媒として使用することができ、塩化アルミニウム又は四塩化チタンを無機触媒として使用することができる。より詳細には、有機触媒としてジメチルホルムアミド、及び無機触媒として塩化アルミニウムを使用することが商業的に有利である。
【0091】
中間反応物への変換で使用される触媒の量は、特に限定されないが、上記の式2’で示される化合物及びハロゲン化化合物の種類に応じて異なる。詳細には、中間反応物への変換で使用される触媒の量は、最初に用いられる、上記の式2’で示される化合物の全モル量に対して、0モル%超~10モル%、0モル%超~5モル%、又は0モル%超~3モル%の範囲であってもよい。
【0092】
中間反応物への変換で使用される触媒の量が上記の範囲内であるならば、反応速度が低くなり、暴走反応及び発熱反応が誘起される問題を防ぐことができる。
【0093】
フェノール置換基は、以下の式7で示される化合物であってもよい。
【0094】
【0095】
上記の式において、R6は、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であり、アリール基は、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される、少なくとも1種の置換基を有することができる。こうした場合には、エステル置換基は、1~18個の炭素原子を有するアルキルエステル、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルエステル、又は6~18個の炭素原子を有するアリールエステルであってもよい。
【0096】
上記の求核反応において、上記の式2’’で示される化合物の、フェノール又はフェノール置換基に対するモル比は、1:1~1:5又は1:2~1:3であってもよい。
【0097】
上記の範囲内で、上記の式2で示される化合物を高い収率で調製することができる。範囲外である場合、例えば、フェノール又はフェノール置換基の量が不十分である場合、生産収率は減ることがある。
【0098】
さらに、上記の式2で示される化合物は、上記の式2’で示される化合物と、フェノール又はフェノール置換基とのエステル化反応又はエステル交換反応によって調製することができる。
【0099】
エステル化反応又はエステル交換反応は、20~300℃で実施することができる。詳細には、エステル化反応又はエステル交換反応は、大気圧で、50~250℃若しくは100~200℃で、又は0.1~10kgf/cm2若しくは1~5kgf/cm2の圧力の下、50~300℃で実施することができる。
【0100】
エステル化反応又はエステル交換反応は、5分間~48時間、又は10分間~24時間実施することができる。
【0101】
エステル化反応又はエステル交換反応において、上記の式2’で示される化合物の、フェノール又はフェノール置換基に対するモル比は、1:2~1:40であってもよい。詳細には、エステル化反応又はエステル交換反応において、上記の式2’で示される化合物の、フェノール又はフェノール置換基に対するモル比は、1:3~1:30又は1:4~1:20であってもよい。
【0102】
上記の式2’で示される化合物と、フェノール又はフェノール置換基とのモル比が、上記の範囲内であるならば、生産収率の減少を防ぐことが可能である。
【0103】
こうした場合、上記の式2で示される化合物のcis/trans比は、1/99~99/1%、10/90~90/10%、又は20/80~80/20%であることができる。
【0104】
上記の式3で示される化合物は、以下の式3’で示される化合物をハロゲン化化合物と反応させて、それを、末端にハロゲン官能基を含有する中間反応物(例えば、以下の式3’’で示される化合物)に変換し、引き続いて、それにフェノール若しくはフェノール置換基との求核反応を施すことによって、又は以下の式3’で示される化合物とフェノール若しくはフェノール置換基とのエステル化反応若しくはエステル交換反応によって得ることができる(以下の反応スキーム3参照)。
【0105】
【0106】
上記の反応スキームにおいて、R3は、それぞれ独立的に、水素又はメチルであり、R5は、それぞれ独立的に、F、Cl、又はBrである。
【0107】
上記の式3’で示される化合物をハロゲン化化合物と反応させて、末端にハロゲン官能基を含有する中間反応物(例えば、上記の式3’’で示される化合物)を調製することができる。上記の式3’’で示される化合物は、R5がClである塩化テレフタロイル(TPC)であってもよい。
【0108】
さらに、ハロゲン化化合物の特定の種別及び量は、前述されたものと同じである。
【0109】
さらに、上記の式3’で示される化合物をハロゲン化化合物と反応させることによって中間反応物を調製する方法、例えば、反応温度及び反応時間、使用される有機溶媒の種別、触媒の種別、及び使用される量は、上記の式2’’で示される化合物を調製する方法と同じである。
【0110】
さらに、求核反応によって、式3’’で示される化合物から式3で示される化合物を調製する方法は、式2’’で示される化合物に求核反応を施すことによって、式2で示される化合物を調製する方法とも同じである。
【0111】
さらに、上記の式3で示される化合物は、上記の式3’で示される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのエステル化反応又はエステル交換反応によって調製することができる。エステル化反応又はエステル交換反応の、特定の条件(反応温度、圧力、使用される量など)は、前述されたものと同じである。
【0112】
溶融重縮合反応は、高粘度の溶融反応物から副生成物を迅速に取り除き、重合反応を促進するために、段階的な温度上昇及び減圧で実施することができる。
【0113】
詳細には、溶融重縮合反応は、(1)50~700トールの減圧及び温度130~250℃、140~240℃、又は150~230℃の温度で、0.1~10時間又は0.5~5時間の第1の反応並びに(2)0.1~20トールの減圧及び200~350℃、220~280℃、又は230~270℃の温度で、0.1~10時間又は0.5~5時間の第2の反応を含むことができる。
【0114】
詳細には、溶融重縮合反応は、(1)130~200℃に昇温し、引き続いて、圧力を200~700トールに下げ、200~250℃に0.1~10℃/分の速度で昇温し、引き続いて、圧力を50~180トールに下げる条件下での、第1の反応、及び(2)圧力を1~20トールに下げ、200~350℃に0.1~5℃/分の速度で昇温し、引き続いて、圧力を0.1~1トールに下げる条件下での、第2の反応を含むことができる。
【0115】
その一方で、フェノールは、溶融重縮合反応中の反応副生成物として生成され得る。コポリカーボネートエステルの製造の方へ反応平衡を移動させるために、副生成物として生成されるフェノールを反応系から取り除くことが好ましい。
【0116】
溶融重縮合反応における温度上昇の速度が上記の範囲内である場合、反応副生成物であるフェノールが、反応原料と共に蒸発するか、又は昇華する問題を防ぐことが可能である。詳細には、コポリカーボネートエステルは、バッチ工程又は連続工程において調製することができる。
【0117】
特に1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(a-1)を使用する場合、高い透明度を有するポリマーを調製するために、溶融重縮合反応を相対的に低い反応温度で実施することが好ましい。さらに、こうして調製されたコポリカーボネートエステルの機械的性質を確実にするために、溶融重縮合反応を高重合度まで実施することが好ましい。このために、溶融重縮合反応用の高粘度重合反応器を使用することが有効である。溶融重縮合反応の目標となる粘度は、10000~1000000ポアズ、20000~500000ポアズ、又は30000~200000ポアズであってもよい。
【0118】
〔溶融重縮合反応のための触媒及び添加剤〕
上記の溶融重縮合反応において、触媒を使用して反応の反応性を高めることができる。触媒は、任意の時点で反応ステップに添加することができるが、好ましくは、反応前に添加される。
【0119】
ポリカーボネート溶融重縮合反応において一般に使用される、任意のアルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒を触媒として使用することができる。さらに、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、アミド、フェノレートを触媒として使用することができる。
【0120】
アルカリ金属触媒の例には、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、酢酸リチウム(LiOAc)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、酢酸カリウム(KOAc)、酢酸セシウム(CsOAc)などが挙げられる。
【0121】
アルカリ土類金属触媒の例には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酢酸カルシウム(Ca(OAc)2)、酢酸バリウム(Ba(OAc)2)、酢酸マグネシウム(Mg(OAc)2)、酢酸ストロンチウム(Sr(OAc)2)などが挙げられる。
【0122】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、アミド、又はフェノレートの例には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化ジブチルスズ((C4H9)2SnO)、三酸化アンチモン(Sb2O3)などが挙げられる。
【0123】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物の例には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化ジブチルスズ((C4H9)2SnO)、三酸化アンチモン(Sb2O3)などが挙げられる。
【0124】
触媒は、触媒の金属当量が、全ジオール化合物の1モルに対して、0mmol超~5mmol、0mmol超~3mmol、又は0mmol超~1mmolであるような量で使用することができる。触媒の量が上記の範囲内である場合、副反応が抑制されて、透明度などの優れた物理的性質を有するポリマーが得られる。触媒の量が上記の範囲外である場合、目標の重合度に到達せず、副反応が起こって、こうして調製されたポリマーの透明度を低くする問題があり得る。
【0125】
その一方で、アルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒は、塩基性のアンモニウム若しくはアミン、塩基性リン、又は塩基性ホウ素の化合物などの塩基性触媒と組み合わせて使用することができる。塩基性触媒は、単独で、又は組み合わせて使用することができ、その量は特に限定されない。
【0126】
さらに、溶融重縮合反応中に必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光吸収剤、発色剤、潤滑剤、着色剤、導電剤、核生成剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0127】
例えば、酸化防止剤及び熱安定剤は、ヒンダードフェノール、ハイドロキノン、亜リン酸塩、その置換化合物などであってもよい。
【0128】
光吸収剤の例には、レゾルシノール、サリチル酸塩などが挙げられる。
【0129】
さらに、発色剤は、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などであってもよい。潤滑剤は、モンタン酸、ステアリルアルコールなどであってもよい。
【0130】
染料又は顔料を着色剤として使用してもよく、カーボンブラックを導電剤又は核生成剤として使用してもよい。
【0131】
前述の添加剤の種別及び量は、こうして調製されたコポリカーボネートエステルの性質、とりわけ透明度に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。
【0132】
さらに、本発明は、コポリカーボネートエステルで製造される成形品を提供する。成形品は、射出成形、押出成形、吹込成形、及び異形押出成形、並びにこれらを使用する熱形成などの後処理などの、様々な成形法により、コポリカーボネートエステル樹脂を成形することによって製造することができる。成形品の特定の形状及びサイズは、用途に応じて様々に決定することができ、その例は、特に限定されない。
【0133】
前述されたように、本発明の重合組成物から調製されるコポリカーボネートエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール並びに/又は1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物、カーボネート化合物、並びに追加の石油ベース及び/若しくはバイオベースのジフェニルエステルの溶融重縮合によって共重合され、それによって、様々な物理的性質を有することができる。したがって、特定の目的の製品の製造に有利に使用することができる。
【0134】
[本発明を実施するための実施形態]
以下で、本発明は、以下の実施例に関して、より詳細に記載される。しかし、これらの実施例は、本発明を説明することを示すものであり、本発明の範囲はそれに限定されない。
【0135】
([調製例]バイオベースモノマーの合成)
(調製例1:バイオベースTPAの合成)
エチレンジアミン31.6g(525mmol)、無水FeCl33.34g(145mmol)、及びナトリウム0.16g(0.964mmol)を混合し、窒素の下、50℃で加熱した。バイオベースα-リモネン101g(742mmol;Sigma-Aldrich)を混合物にゆっくりと滴下添加し、次いで温度100℃に加熱し、8時間維持した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、水300gで希釈し、ジクロロメタン(DCM)400gで2回抽出した。抽出された有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させて粗パラ-シメンを得た(収率:99%)。
【0136】
65%HNO3 288g(2968mmol)を粗パラ-シメン及び水400gの混合物に添加し、次いで反応させた。反応混合物を1日加熱しながら還流させ、次いで、室温に冷却し、DCM 530gで抽出した。次いで、抽出された有機層を水で2回洗浄し、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させてパラ-シメン酸化物を得た。
【0137】
NaOH 83g(1484mmol)をパラ-シメン酸化物及び水1000gの混合物に添加し、次いで撹拌しながら溶解させた。次いで、過マンガン酸カリウム235g(1484mmol)をそこにゆっくりと添加し、16時間加熱しながら還流させてスラリー状態の混合物を得た。その後、スラリー混合物をセライトで濾過し、次いで、水で洗浄した。次いで、濃H2SO4(98%)を、強酸性になるまで水層に添加して、白色沈殿物を得た。沈殿物を濾過し、水及びDCMで洗浄した。こうして得られた、全ての白色固体生成物を80℃及び50mmHgで12時間乾燥させてバイオベースTPAを得た(収率:93%)。
【0138】
(調製例2:バイオベースDMTの合成)
濃H2SO43.1g(31.6mmol)を、調製例1で得られるバイオベースTPA 105g(632mmol)及びメタノール1650g(6320mmol)の混合物に添加し、1日加熱しながら還流させた。その後、溶液を室温に冷却し、溶媒を取り除いた後に得られる固体をDCM 530gに溶解させた。溶液を水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させて粗固体生成物を得た。固体生成物を冷メタノールで洗浄し、90℃で12時間乾燥させてバイオベースDMTを得た(収率:95%)。バイオベースDMTのバイオベース炭素含有量は83%であった。
【0139】
(調製例3:バイオベースDMCDの合成)
固定床連続反応器に、ルテニウム(Ru)1重量%がアルミナに担持された、打錠成形された触媒を仕込んだ。調製例2で得られたバイオベースDMTを、7cm/秒の速度の水素ガスと共に、80リットル/時の速度で反応器の上部領域に供給し、環水素化反応を反応圧力40kgf/cm2で実施した。反応温度はそれぞれ、反応器の上部領域において140℃~155℃、反応器の中間領域において135℃~145℃、及び反応器の下部領域において125℃~135℃で維持し、反応器における最大の温度差は、20℃以内であった。5~10時間の反応の後、粗液体生成物を反応器の下部領域から得た。液体生成物に真空蒸留を施して、バイオベースDMCDを得た。バイオベースDMCDのバイオベース炭素含有量は83%であった。
【0140】
(調製例4:バイオベースCHDMの合成)
固定床連続反応器にクロム銅(CuCr)の錠剤触媒を仕込んだ。調製例3で得られたバイオベースDMCDを、10cm/秒の速度の水素ガスと共に、120リットル/時の速度で反応器の上部領域に供給し、エステル還元水素化反応を反応圧力220kgf/cm2で実施した。反応温度はそれぞれ、反応器の上部領域において230℃~240℃、反応器の中間領域において135℃~145℃、及び反応器の下部領域において225℃~235℃で維持し、反応器における最大の温度差は、20℃以内であった。5~10時間の反応の後、粗液体生成物を反応器の下部領域から得た。液体生成物に真空蒸留を施して、バイオベースCHDMを得た。バイオベースCHDMのバイオベース炭素含有量は83%であった。
【0141】
(調製例5:バイオベースFDCAを使用したバイオベースDPFDの合成)
4羽根式撹拌機、ホスゲン及び窒素のガス用の注入口、排ガス用の排気口、及び温度計を備えた、1リットルの丸底フラスコに、バイオベース2,5-フランジカルボン酸(FDCA、Chemsky)100g(0.60モル)及びトルエン200gを仕込んだ。混合物を室温で撹拌した。ホスゲンガス1.28モルを、大気圧で、フラスコに10時間送り込んで、反応を実施した。その後、窒素ガスをフラスコに2時間送り込んで、残留のホスゲン及び副生成物として生成される塩酸のガスを取り除き、それによって、透明の、均一な反応溶液を得た。
【0142】
次いで、最初に供給されたトルエン50重量%を、減圧で、反応溶液から留去した。その後、フェノール121g(1.28モル)をトルエン121g中に溶解させたフェノール溶液を、滴下漏斗によって反応溶液に2時間添加した。混合物を1時間撹拌した。反応が終わると、トルエンを、減圧で、反応溶液から留去して、粗固体生成物を得た。固体生成物を再結晶化によって精製し、真空で、80℃で12時間乾燥させて、バイオベースDPFDを得た(収率:85%)。バイオベースDPFDのバイオベース炭素含有量は98%であった。
【0143】
([実施例]コポリカーボネートエステルの調製)
(実施例1)
重縮合用の17リットルベンチスケール反応器に、イソソルビド(ISB;Roquette Freres)1401g(9.59モル)、BPA TMC(Songwon)1276g(4.11モル)、DPCD(SK Chemical)1333g(4.11モル)、DPC(Changfeng)2054g(9.59モル)、及びアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)の1%水溶液2gを仕込んだ。混合物を150℃に加熱した。温度が150℃に達すると、圧力を400トールに下げ、次いで温度を1時間かけて190℃に上昇させた。温度上昇中に、フェノールを重合反応の副生成物として排出した。温度が190℃に達したら、圧力を100トールに下げ、20分間維持し、次いで、温度を20分間かけて230℃に上昇させた。温度が230℃に達したら、圧力を10トールに下げ、次いで、温度を10分間かけて250℃に上昇させた。圧力を250℃で1トール以下に下げ、反応を目標の撹拌トルクに達するまで続けた。目標の撹拌トルクに到達すると、反応を終えた。加圧され、排出された重合生成物を水浴で急速に冷却し、次いで、ペレットに切断した。こうして調製されたコポリカーボネートエステルは、Tg 184℃、IV 0.57dl/g、及びバイオベース炭素含有量34%を有した。
【0144】
(実施例2)
コポリカーボネートエステルは、ISB 1602g(10.96モル)、BPAフルオレン(TCI)960g(2.74モル)、DPCD 1778g(5.48モル)、及びDPC 1761g(8.22モル)を使用したことを除いて、実施例1と同様に調製した。
【0145】
(実施例3)
コポリカーボネートエステルは、ISB 1602g(10.96モル)、TDD(Sigma-Aldrich)631g(2.74モル)、DPT(SK Chemical)2181g(6.85モル)、及びDPC 1467g(6.85モル)を使用したことを除いて、実施例1と同様に調製した。
【0146】
(実施例4)
コポリカーボネートエステルは、ISB 1401g(9.59モル)、CHDM(SK Chemical)593g(4.11モル)、DPCD1333g(4.11モル)、DPT(SK Chemical)2181g(6.85モル)、及びDPC 2054g(2.74モル)を使用したことを除いて、実施例1と同様に調製した。
【0147】
(実施例5)
コポリカーボネートエステルは、ISB 2002g(13.70モル)、DPCD 889g(2.74モル)、DPT 872g(2.74モル)、バイオベースDPFD(調製例5)845g(2.74モル)、及びDPC 1174g(5.48モル)を使用したことを除いて、実施例4と同様に調製した。
【0148】
(実施例6)
コポリカーボネートエステルは、ISB 1401g(9.59モル)、バイオベースCHDM(調製例4)593g(4.11モル)、DPCD 889g(2.74モル)、DPT 872g(2.74モル)、バイオベースDPFD 845g(2.74モル)、及びDPC 1174g(5.48モル)を使用したことを除いて、実施例5と同様に調製した。
【0149】
([比較例]バイオベースポリカーボネートエステルの調製)
(比較例1)
ポリカーボネートエステルは、重縮合用の17リットルベンチスケール反応器に、ISB 2002g(13.70モル)、DPCD 1333g(4.11モル)、DPC 2054g(9.59モル)、及びアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)の1%水溶液2gを仕込んだことを除いて、実施例1と同様に調製した。こうして調製されたポリカーボネートエステルは、Tg 154℃、IV 0.58dl/g、及びバイオベース炭素含有量67%を有した。
【0150】
(比較例2)
ポリカーボネートエステルは、ISB 2002g(13.70モル)、DPT 2181g(6.85モル)、及びDPC 1467g(6.85モル)を使用したことを除いて、実施例3と同様に調製した。
【0151】
[評価例]
実施例1~実施例6及び比較例1及び比較例2の、コポリカーボネートエステル及びバイオベースポリカーボネートエステルを、以下の方法によって、その物理的性質について評価した。測定された物理的性質を以下の表1に示す。
【0152】
〔(1)ガラス転移温度(Tg)〕
ガラス転移温度は、ASTM D3418に従って、示差走査熱量計(Q20、TA Instruments)を使用して測定した。
【0153】
〔(2)固有粘度(IV)〕
試料を、150℃で、o-クロロフェノール中に、濃度1.2g/dlで15分間溶解させた。試料の固有粘度は、Ubbelodhe粘度計を使用して、35℃のサーモスタットで測定した。
【0154】
〔(3)光透過率(T)〕
光透過率(%)は、ASTM D1003に従って、分光光度計(CM-3600A、コニカミノルタ)を使用して測定した。
【0155】
〔(4)メルトフローインデックス(MFI)〕
メルトフローインデックスは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー(G-01、東洋精機(株))を使用して、260℃及び荷重2.16kgの条件の下で、測定した。
【0156】
〔(5)バイオベース炭素含有量〕
バイオベース炭素含有量(%)は、ASTM D6866-16に従って、加速器質量分析(Beta Analytic Co.)を使用して測定した。
【0157】
【0158】
上記の表1に示すように、BPAベースモノマーの共重合によって調製された、実施例1及び実施例2のコポリカーボネートエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのみを使用して調製された、比較例1及び比較例2のバイオベースポリカーボネートエステルと比較して、相対的に高いガラス転移温度170℃を有した。したがって、それらは、高い耐熱性を要する用途に好適である。さらに、それらは、比較例2のものより優れた、又はそれに等しいメルトフローインデックス及び光透過率も有した。
【0159】
さらに、石油ベースモノマーであるTDDを比較例2の組成物と共重合させた、実施例3のコポリカーボネートエステルにおいて、ガラス転移温度は、比較例2のものよりも低かったが、メルトフローインデックスは増大し、それによって流動性を増した。さらに、石油ベースモノマーであるDPCD及びCHDMを比較例2の組成物と共重合させた、実施例4のコポリカーボネートエステルにおいて、ガラス転移温度、光透過率、メルトフローインデックス、及びバイオベース炭素含有量は、実施例3のものとほぼ同じであった。
【0160】
その一方で、バイオベースモノマーであるDPFDを使用した、実施例5のコポリカーボネートエステルは、バイオベース炭素含有量70%を有することにより、環境に配慮したものとなり、高いガラス転移温度を有することにより、耐熱性の観点から優れたものとなった。
【0161】
さらに、バイオベースCHDMを実施例5の組成物と共重合させた、実施例6のコポリカーボネートエステルにおいて、ガラス転移温度は、実施例5のものよりも低かったが、実施例6のコポリカーボネートエステルは、バイオベース含有量、透過率、及びメルトフローインデックスの観点から優れていた。
【0162】
したがって、上記の結果から分かるように、様々なコモノマーの使用によって調製されるコポリカーボネートエステルの物理的性質は、使用に対して適切に調節することができる。
【国際調査報告】