IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドラキュラ テクノロジーズの特許一覧 ▶ センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィークの特許一覧 ▶ ユニベルシテ デクス マルセイユの特許一覧

<>
  • 特表-光起電力セル及びその製造方法 図1
  • 特表-光起電力セル及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】光起電力セル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/46 20060101AFI20220106BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L31/04 168
H01L31/04 182
H01L31/04 164
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522151
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(85)【翻訳文提出日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 FR2019051610
(87)【国際公開番号】W WO2020002857
(87)【国際公開日】2020-01-02
(31)【優先権主張番号】1856062
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521000518
【氏名又は名称】ドラキュラ テクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】513210666
【氏名又は名称】ユニベルシテ デクス マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D‘AIX-MARSEILLE
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン ドキル,サドク
(72)【発明者】
【氏名】マルギート,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ピエロン,パスカル
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA05
5F151CB13
5F151CB14
5F151CB24
5F151CB29
5F151CB30
5F151DA07
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5F151GA05
(57)【要約】
本発明は、光起電力セルに関し、詳細には、有機光起電力セル、及びその製造方法に関する。本発明はまた、軽スポーツ用品、ベビーカー、包装材、店頭広告パネル、個人用保護具、手袋、教育用のおもちゃ及び娯楽活動、家具、パラソル、織物、自転車、及び自動車などの製品に対する、そのような光起電力セルの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力セル(1)であって:
- ガラス又はポリマー材料から作製された支持体(2)、
- カソードを構成し、前記支持体(2)を覆う酸化インジウムスズの層(3)、
- 前記カソード(3)を覆う、酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第一の界面層(4)、
- 前記第一の界面層(4)を覆う光起電力活性層(5)、
- ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含み、前記光起電力活性層(5)を覆う第二の界面層(6);
- アノードを構成し、前記第二の界面層(6)を覆う銀の層(7);
を備え、前記セルは、前記第二の界面層が、連続的であり、有機繊維状構造、及び30nm~120nmの平均厚さを有することを特徴とする、
光起電力セル(1)。
【請求項2】
前記第二の界面層が、100Ω/スクエア~600Ω/スクエアの電気伝導率を有する、請求項1に記載の光起電力セル(1)。
【請求項3】
前記第二の界面層(6)が、5nm以下の粗度Raを有する、請求項1又は2に記載の光起電力セル(1)。
【請求項4】
前記光起電力活性層(5)が、ポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェンと組み合わせてメチル[6,6]-フェニル-C71-ブタノエートを含むポリマー混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光起電力セル(1)。
【請求項5】
前記支持体(2)が、可撓性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光起電力セル(1)。
【請求項6】
軽スポーツ用品、ベビーカー、包装材、特に高級包装材、旅行カバン、皮革製品、室内装飾、電子機器、店頭広告パネル、個人用保護具、手袋、教育用のおもちゃ及び娯楽活動、家具、パラソル、織物、自転車、自動車などの製品に対する、請求項1~5のいずれか一項に記載の前記光起電力セル(1)の使用。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光起電力セル(1)の製造方法であって、以下の工程:
a)ガラス又はポリマー材料の支持体(2)を供給すること;
b)前記支持体(2)の上に、前記光起電力セル(1)のカソードを構成する酸化インジウムスズの層(3)を形成すること;
c)前記カソード(3)に、第一の界面層(4)を形成すること;
d)前記第一の界面層(4)の上に、光起電力活性層(5)を形成すること;
e)前記活性光起電力層(5)に、第二の界面層(6)を形成すること;
f)前記第二の界面層(6)の上に、前記光起電力セル(1)のアノードを構成する銀の層(7)を形成すること;
を含み、前記方法は、工程c)~e)が、各々、デジタルインクジェット印刷によってインク組成物を堆積させ、続いて熱処理することによって行われることを特徴とし、工程e)で用いられる前記インク組成物は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマー混合物を含み、工程f)で用いられる前記インク組成物は、銀ナノ粒子を含む、
方法。
【請求項8】
工程d)とe)との間に、前記光起電力活性層(5)の洗浄が、エタノール、ブタノール、メタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールから選択される溶剤を用いて行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程c)~f)が:
c)前記カソード(3)上への、酸化亜鉛のナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)のナノ粒子を含む第一のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、及び続いての熱処理による、第一の界面層(4)の形成;
d)前記第一の界面層(4)上への、ポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェンと組み合わせてメチル[6,6]-フェニル-C71-ブタノエートを含むポリマーブレンドを含む第二のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、
e)前記活性光起電力層(5)上への、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマー混合物を含む第三のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、及び続いての熱処理による、第二の界面層(6)の形成;
f)前記第二の界面層(6)上への、銀ナノ粒子を含む第四のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、及び前記堆積に続いての前記光起電力セル(1)の前記アノードを構成する銀の層(7)の形成をもたらす熱処理、
のように実施される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
- 工程c)~e)の前記熱処理が、70℃~130℃の温度で1~5分間にわたって行われるアニーリング処理であり;
- 工程f)の前記熱処理が、120℃~145℃の温度で2~5分間にわたって行われるアニーリング処理である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
- 工程c)の前記熱処理が、ホットプレート上で、85℃の温度で3分間にわたって行われ、
- 工程d)の前記熱処理が、ホットプレート上で、85℃の温度で2分間にわたって行われ、
- 工程e)の前記熱処理が、ホットプレート上で、120℃の温度で1~5分間にわたって行われ、
- 工程f)の前記熱処理が、135℃の温度で3分間にわたって行われるアニーリング処理である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化インジウムスズ層(3)の工程b)が、真空蒸着によって行われる、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)及びb)が、酸化インジウムスズ層でコーティングされたガラス基材を提供する工程a’)で置き換えられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第三のインク組成物が、20℃で10mPa・s未満の粘度を有し、並びに:
- ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムの溶液と、
- 添加剤組成物であって:
- 前記添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、2体積%~5体積%の界面活性剤、
- 前記添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、0.8体積%~2体積%のエ
チレングリコール、
- 前記添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、0.4体積%~1体積%のエタノールアミン、及び
- 前記添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、0.8体積%~2体積%のグリセロール、
を含む、添加剤組成物と、
を含む、請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力セル、特に有機光起電力セル(通常は、「Organic Photovoltaic Cells」に対する英語の頭文字であるOPCと称される)の製造全般に属し、それに関する。
【0002】
本発明の目的のために、有機光起電力セルは、少なくとも活性層が有機分子から成る光起電力セルとして定義される。
【背景技術】
【0003】
有機セルは、光起電力装置の分野において実際に関心を集めている。実際、光起電力セルに一般的に用いられている有機半導体を置き換えることができれば、実現可能なシステムを増加させ、したがって用途の可能性を広げることが可能となる。有機光起電力セルの開発は、さらに市販可能な有機光起電力セルの開発は、現時点での主要な課題である。
【0004】
近年、有機光起電力セルの開発は、その実装におけるインクジェット印刷技術の使用によって進化してきた(非特許文献1、2)。さらに、2014年には、本願出願人は、これらのセルの層の印刷部分にこの技術を用いた光起電力セルの製造方法を開発した(非特許文献3)。
【0005】
最初は、多くの研究が、通常はPEDOT:PSSの略語で称されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマー混合物を含むインクのインクジェット印刷による界面層の作製に集中していた。その後、この分野における研究は、一方は電子供与体で他方は電子受容体である2つの有機材料から通常は構成される光起電力活性層のインクジェット印刷に集中した。有機由来の活性層の場合、従来、P3HT:PCBMが用いられる(P3HTは、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の略語であり、PCBMは、[6,6]-フェニル-C71-メチルブタノエートの略語である)。
【0006】
従来の構造を有する光起電力セルでは、PEDOT:PSS層が、ITO(酸化インジウムスズの略語である)の上、及び、例えばP3HT:PCBMをベースとする活性層の下に配置され(図1に示されるように)、一方逆構造を有する光起電力セルでは、PEDOT:PSS層は、活性層の上、及びアノードとして作用する上側電極の下に印刷される。逆構造の光起電力セルは、従来構造のセルよりも空気中で安定であり、変換効率も高いという利点を有する。
【0007】
本発明の目的のために、光起電力セルの変換効率とは、ある任意のスペクトル分布及び強度における入射光パワーに対する、セルによって得られる最大電力の比を意味する。したがって、PEDOT:PSS層の1cmの面に対して銀ナノワイヤを直接インクジェット印刷することによって、4.3%の変換効率を有するOPVセルを得ることが可能であった(非特許文献4)。しかし、そのような効率が有望ではあるものの、それは、セルの非常に狭い領域上でしか実現されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sharaf Sumaiya, Kamran Kardel, and Adel El-Shahat. "Organic Solar Cell by Inkjet Printing - An Overview. " 53, Georgia, USA : Technologies, 2017, Vol. 5.
【非特許文献2】Peng, X., Yuan, J., Shen, S., Gao, M., Chesman, A. S. R., & Yin, H. (2017). "Perovskite and Organic Solar Cells Fabricated by Inkjet Printing: Progress and Prospects", Adv. Funct. Mater. 2017, 1703704
【非特許文献3】DRACULA TECHNOLOGIES' European patent application EP2960957, filed on 25 June 2015 and published on 30 December 2015.
【非特許文献4】Maisch, P., Tam, K. C., Lucera, L., Egelhaaf, H. J., Scheiber, H., Maier, E., & Brabec, C. J. (2016). "Inkjet printed silver nanowire percolation networks as electrodes for highly efficient semitransparent organic solar cells". Organic Electronics: Physics, Materials, Applications, 38, 139-143. https://doi.org/10.1016/j.orgel.2016.08.006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術の欠点を克服するために、本願出願人は、光起電力セルの製造方法を開発し、この方法では、透明電極で被覆された基材に塗布されたすべての層が、インクジェット印刷によって適用され、このようにして適用された層をカスタマイズすることが可能となる。
【0010】
有機光起電力セルのある特定の層をインクジェット印刷を用いて作製することは、既に知られている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より詳細には、本発明は:
- ガラス又はポリマー材料から作製された支持体、
- カソードを構成し、前記支持体を覆う酸化インジウムスズの層、
- 前記カソードを覆う、酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第一の界面層、
- 前記第一の界面層を覆う光起電力活性層、
- ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含み、前記光起電力活性層を覆う第二の界面層、
- アノードを構成し、前記第二の界面層を覆う銀の層、
を備えた光起電力セルであって、前記セルは、前記第二の界面層が、連続的であり、有機繊維状構造、及び30nm~120nmの平均厚さを有することを特徴とするセルに関する。
【0012】
第二の界面層の有機繊維状構造は、好ましくは、例えば原子間力顕微鏡を用いて観察することができるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムに基づくマイクロメートル単位の有機繊維の存在によって定められる非晶質結晶構造であってよいことには留意されたい。
【0013】
有利には、第二の界面層は、100Ω/スクエア~600Ω/スクエアの電気伝導率を有し得る。
【0014】
有利には、第二の界面層は、5nm以下の粗度Raを有し得る。
【0015】
有利には、光起電力活性層は、メチル[6,6]-フェニル-C71-ブタノエート(例えば、PC70BMの商品名でNano-C(登録商標)により市販されている)をポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェン(例えば、PTB7-Thの商品名で1-Materialsにより、及びPV2000の商品名でRaynergy Tek(登録商標)により市販されている)と組み合わせて含む低ギャップポリマーブレンドを含み得る。
【0016】
本発明に従う光起電力セルの支持体は、有利には、可撓性を有することができる。
【0017】
本発明はまた、軽スポーツ用品、ベビーカー、包装材(包装材、ボトル、キャップ)、特に高級品、旅行カバン、皮革製品、室内装飾、電子機器(特に、モノのインターネット、又は「Internet of Things」(IoT))、BLEビーコン(Bluetooth Low Energy)など):低消費電力のブルートゥース(登録商標))、ロジスティクスセンサー)、店頭広告パネル、個人用保護具、手袋、教育用のおもちゃ及び娯楽、家具、パラソル、織物、自転車、自動車などの製品に対する本発明に従う光起電力セルの使用も目的とする。
【0018】
本発明はまた、本発明に従う光起電力セルの製造方法にも関し、その方法は以下の工程:
a)ガラス又はポリマーの支持体を供給すること;
b)前記支持体に酸化インジウムスズの層を形成して、前記光起電力セルのカソードを形成すること;
c)カソードに第一の界面層を形成すること;
d)第一の界面層に光起電力活性層を形成すること;
e)活性光起電力層に第二の界面層を形成すること;
f)第二の界面層に、光起電力セルのアノードとして銀の層を形成すること;
を含み、前記方法は、工程c)~f)が、各々、デジタルインクジェット印刷によってインク組成物を堆積させ、続いて熱処理することによって行われることを特徴とし、工程e)で用いられる前記インク組成物は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマー混合物を含み、工程f)で用いられる前記インク組成物は、銀ナノ粒子を含む。
【0019】
工程d)とe)との間において、エタノール、ブタノール、メタノール、及びエチレングリコールから選択される溶剤で活性光起電力層を洗浄することが有利である。この洗浄は、特に、イソプロパノール又はエチレングリコールなどのアルコール中に浸漬し、続いてアルゴン若しくは窒素下で、又はホットプレート上で加熱することによって乾燥させることによって行われてよい。この洗浄の目的は、活性層からダスト及び汚染物を除去することである。
【0020】
工程c)~f)は、有利には、以下のように行われ得る:
c)カソード上への、酸化亜鉛のナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)のナノ粒子又は酸化チタン(TiOx)のナノ粒子を含む第一のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、及び続いての熱処理による、第一の界面層の形成;
d)第一の界面層上への、ポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェン(例えば、PTB7-Thの商品名で1-Materialsにより、及びPV2000の商品名でRaynergy Tek(登録商標)により市販されている)と組み合わせたメチル[6,6]-フェニル-C71-ブタノエート(例えば、PC70BMの商品名でNano-C(登録商標)により市販されている)の第二のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、
続いての、熱処理による、光起電力活性層の形成;
e)光起電力活性層上への、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマー混合物(この混合物は、典型的には、コロイド溶液の形態であり、通常は、PEDOT:PSSの略語で称される)を含む第三のインク組成物のデジタルインクジェット印刷による堆積、及び続いての熱処理による、第二の界面層の形成;
f)前記第二の界面層上への、銀ナノ粒子を含む第四のインク組成物のデジタルインク
ジェット印刷による堆積、及び前記堆積に続いて行う熱処理による、前記光起電力セルのアノードを構成する銀層の形成。
【0021】
特に、工程c)~e)の熱処理は、70℃~130℃の温度で1~5分間にわたって行われるアニーリング処理であってよく、工程f)の熱処理は、120℃~145℃の温度で2~5分間にわたって行われるアニーリング処理であってよい。
【0022】
好ましくは、工程c)の熱処理は、ホットプレート上で、85℃の温度で3分間にわたって行われてよく、一方工程d)の熱処理は、ホットプレート上で、85℃の温度で2分間にわたって行われてよく、工程e)の熱処理は、ホットプレート上で、120℃の温度で1~5分間にわたって行われてよく、工程f)の熱処理は、135℃の温度で3分間にわたって行われるアニーリング処理である。
【0023】
有利には、酸化インジウムスズ層の工程b)は、真空蒸着によって行われ得る。
【0024】
本発明に従う方法を実施する有利な方法によると、工程a)及びb)は、酸化インジウムスズの層でコーティングされたガラス支持体を提供する工程a’)で置き換えられる。
【0025】
有利には、第三のインク組成物は、20℃で10mPa・s以下の粘度を有してよく、並びに
- 前記組成物の総体積に基づいて、90体積%~98体積%のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムの溶液と、
- 前記組成物の総体積に対して、2体積%~10体積%の添加剤組成物であって:
- 添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、2体積%~5体積%の界面活性剤、
- 添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、0.8体積%~2体積%のエチレングリコール、
- 添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、0.4体積%~1体積%のエタノールアミン、及び
- 添加剤組成物中の全添加剤の総体積に対して、0.8体積%~2体積%のグリセロール、
を含む、添加剤組成物と、
を含んでよい。
【0026】
本発明の他の利点及び詳細事項は、添付の図面及び以下の例を参照してなされた以下の記述から得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、従来構造の光起電力セルの断面模式図を示す。
図2図2は、本発明に従う光起電力セルの断面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1については、前述した先行技術の説明において記載され、一方、図2については、本発明を、その範囲を限定することなく例示する以下の例において、より詳細に記載される。
【実施例
【0029】
製品
- 酸化インジウムスズの層でコーティングされたガラス支持体(アノード)
- PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリ(エチレン2,6-ナフ
タレート)から作製された可撓性支持体
- 洗浄溶剤:
- 剛性ガラス基材の場合:脱イオン水、アセトン、エタノール、イソプロパノール、及び
- 可撓性基材の場合、これらはプラスチックフィルムによって保護されていることから、剛性基材の場合のような洗浄は必要ない;
- 第一のインク組成物(図2の光起電力セルの界面層4)
- 実験室で合成された酸化亜鉛のナノ粒子から作製されたE11インクであり、その処方は例1に詳述される。
- GENES’INK社により市販されているアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)のナノ粒子のE12インクであって、合成は実験室で行われた。
- 第二のインク組成物(図2の光起電力セルの光起電力活性層5):
- [6,6]-フェニル-C71-メチルブタノエート(PC70BMの商品名でNano-C(登録商標)により市販される)とポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェン(PV2000の商品名でRaynergy Tek(登録商標)により市販される)とのE21ポリマーブレンド;
- [6,6]-フェニル-C71-メチルブタノエート(PC70BMの商品名でNano-C(登録商標)により市販される)とポリ(チエノール[3,4-b]-チオフェン(PTB7-Thの商品名で1-Materialsにより市販される)とのE22ポリマーブレンド;
- 溶剤としてのo-キシレン(式C(CHのオルト-キシレン);及び
- 添加剤としてのテトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン)。
【0030】
E21混合物のPV2000ポリマー又はE22混合物のPTB7-Thポリマーは、これらの第二のインク組成物中に、10mg/mlの割合で存在している。
【0031】
E21混合物中のPV2000ポリマー又はE22混合物中のPTB7-Thポリマーと、PC70BMとの重量比は、1:1.5である。
【0032】
溶剤o-キシレンと添加剤テトラリンの、これらの第二の組成物中での体積比は、97:3である。
【0033】
第二のインク組成物は、溶剤及び添加剤をE21又はE22ポリマー混合物に添加し、この混合物を、700RPMの速度で撹拌しながらホットプレート上で、80℃で24時間維持することによって作製される。
【0034】
- 第三のインク組成物(図2の光起電力セルの第二の界面層6):
- IJ1005の商品名でAgfa(登録商標)により市販されるPEDOT:PSS、又はORGACON S315の商品名でAgfa(登録商標)により市販されるPEDOT:PSS;
- Merck(登録商標)により洗浄剤/界面活性剤として市販される、Triton X-100(式-Oct-C-(OCHCHOH、x=9~10の4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール);
- Merck(登録商標)により市販される、エタンジオール(又はエチレングリコール、式HOCH2CH2OH);
- Merck(登録商標)により市販される、グリセロール(1,2,3-プロパントリオール又はグリセリン、式HOCH2CH(OH)CH2OH);
- 実験室で調製される、又は水のブランド名ELGA(登録商標)の下でPURELAB(登録商標)classicにより市販される、脱イオン水。
- 第四のインク組成物(アノード:図の7):
- H-CS01130の商品名でGENES’INK社により市販される、銀ナノ粒子インクE41、又は
- s901083の商品名でMERCK(登録商標)社により市販される、銀ナノ
粒子のインクE42、又は
- PV-NANOCELL(登録商標)により市販される、銀ナノ粒子インク、又は
- DUPONT(登録商標)社により市販される、銀ナノ粒子インク、又は
- ANP(登録商標)(「Advanced Nano Products」)社により市販される、銀ナノ粒子インク。
【0035】
試験
- 粗度測定 Ra
これらの測定は、原子間力顕微鏡(Brucker(登録商標)Nanoscope III Multimode SPM、間欠接触モード(又は「タッピングモード」)で使用され、MiKromasch(登録商標)により市販され8nmの曲率半径を有するチップhq:nsc15を備える)を用いて行う。測定は、本発明及び先行技術に従う光起電力セルの種々のサンプルに対して行った。
【0036】
- 層厚さ測定
印刷された層の厚さは、BRUKERにより市販されるチップ膜厚計(プロフィロメーター)DektakXTによって、カッターブレードで付けた傷から測定する(このようにして、堆積物の厚さで溝(チャネル)を作り出す)。これは、一定の接触力を適用することによって表面を走査し、何らかのレベルの相違を明らかにする尖ったスタイラスの垂直方向の動きによって起伏(レリーフ)の変化を測定する接触式膜厚計である。サンプルは、任意の速度で、及び選択された距離にわたってサンプルを移動可能とするプラットフォーム上に配置する。本願で示す厚さの値は、同じ工程のサンプルに対して、6つの異なる位置で5回行った測定の平均である。測定を行う前に、走査領域の長さ、その継続時間、スタイラスの接触力、及び測定範囲を定めておく必要がある。
【0037】
- 電気抵抗率の測定
この測定は、以下のように、4端子法を用いて行う:
- 特性決定されるべき層のエッジ部から離れた位置に、4つの端子を並べて配置する。
- これらの4つの端子を、互いに等距離とする。
- 外側の端子間に電流発生装置によって電流を発生させ、一方内側の端子間で電圧を測定する。測定された電圧の、検体を流れる電流に対する比が、内側端子間のセクションの抵抗を示す。
【0038】
- 粘度測定:
流体の粘度は、変形に対するその抵抗によって、又はその層の相対的なすべり量によって示される。例えば、粘性流体がキャピラリー中を流れる過程では、分子の速度(v)は、管の軸において最大になり、壁部でゼロとなるまで減少するが、層の間では、相対的なすべりが起こり、したがって、接線摩擦力が発生する。流体における接線力は、対象の流体の性質及びその流動状態に依存する。
【0039】
用いる粘度計は、ウベローデ型粘度計であり、それを、一定温度(本発明者らのケーススタディでは25℃)に維持したサーモスタット中に配置する。本発明者らは、キャピラリーの上にある小タンクの両側に位置する2つのマーク(M1及びM2)によって定められる一定体積Vの流動時間を測定する。
【0040】
- エージングの測定:
恒久的な光、「ライトソーキング(light soacking)」下でのエージング、及び85℃での熱エージング。
【0041】
- 形態の特性決定:
表面トポグラフィを再現するためのAFM(原子間力顕微鏡)測定、並びに物質の結晶性及び層中に存在するナノ粒子のサイズを確認するためのTEM(透過型電子顕微鏡)測定。
【0042】
- 変換効率
変換効率は、発生した電力の、AM1.5スペクトルに対して100mW/cmに正規化された入射太陽光の電力に対する比である。
【0043】
例1:第一の界面層のための第一の組成物の第一の例のE11インクを得ること
1.2 ポリオール法を用いたZnOの合成(文献5)
用いた材料:
丸底(バルーン)フラスコ2個、臭素カラム、油浴、アルゴン瓶、シリンジフィルター、加熱用プレートとマグネティックスターラー、超音波浴、Ardeje A100(登録商標)プリンター、Ardeje OD100(登録商標)プリンター、KONICA(登録商標)、RICOH(登録商標)のブランドのプリンターヘッド。
【0044】
手順:
- まず、2.207gのKOHを250mLのフラスコに秤量する。次に、115mLのメタノールを添加する。別の大きい方のフラスコに、4.101gの酢酸亜鉛を、210mLのメタノールと共に撹拌しながら添加し、次に115mLの水を添加する。
- この大きい丸底フラスコを、撹拌及びアルゴン下において、ホットプレート上60℃で撹拌しながら油(又は水)浴中に固定する。
- 加えて、KOHを超音波浴中で溶解し、次にこの丸底フラスコに滴下する。
- 本発明者らは、透明から不透明への色の変化を観察する。数分後、この溶液は、再度透明となる。
- 次に、この混合物をさらに3時間撹拌した後、ZnOの白色懸濁液が形成される。
【0045】
1.3 合成したZnOナノ粒子からのE11インクの製造
- 例1.1の後、ポリオール法から得た酸化亜鉛ZnOを、冷却浴中で冷却し、ZnO粒子を遠心分離(12分間及び7800rpm)によって分離し、次に、エチレングリコールを界面活性剤として用いてブタノール中に分散させる。
- その結果、ナノ粒子濃度4mg/mlのZnO粒子のE11インクが得られる。
- インクジェット印刷の前に、E11インクを、0.45マイクロメートルの酢酸セルロース(AC)フィルターで予備ろ過する。
【0046】
例2:第一の界面層のための第一の組成物の第二の例のE12インクを得ること
GENES’INK(登録商標)社により市販されているアルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子(AZO)のインクを以下のようにして用いる:インクジェット印刷の前に、インクをまず超音波浴中に、室温で2分間入れ、次に0.45マイクロメートルの酢酸セルロースフィルターでろ過する。その結果、E12インクが得られる。
【0047】
例3:第一の界面層のための第一の組成物の第三の例のE13インクを得ること
3.1 AZOナノ粒子の合成
この合成は、科学刊行物(非特許文献3)に記載のプロトコルに従う以下のプロトコル
を用いて行う。
- 酢酸亜鉛、アルミニウムイソプロピレート、及び蒸留水を、無水エタノールを含有する丸底フラスコ中に導入する。
- 80℃で30分間加熱した後、エタノール中に分散させた水酸化カリウムを、フラスコに滴下し、80℃で16時間加熱する。こうして、AZOナノ粒子を合成する。
- これらのナノ粒子を、次に、遠心分離によって溶液から分離し、エタノールアミン(EA)を用いてアルコール系溶剤中に分散させる。
- この方法により、Alドープレベルが0%(未ドープの基準(レファレンス))から0.8原子%までの範囲内のAZO NC(アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ結晶)のナノ粒子を、アルミニウムイソプロピレート前駆体の酢酸亜鉛に対する初期比を変動させ、他のパラメータはすべて一定に維持して製造した。
【0048】
3.2 合成したAZOナノ粒子からE12インクを製造するための手順
- 例3.1の後、ポリオール法を用いて得たAZOを、冷却浴中で冷却し、AZO粒子を遠心分離(12分間及び7800rpm)によって分離し、次に、エチレングリコールを界面活性剤として用いてブタノール中に分散させる。
- その結果、ナノ粒子濃度2mg/mlのAZO粒子から作製されたE12インクが得られる。
- インクジェット印刷の前に、E12インクを、0.45マイクロメートルの酢酸セルロースフィルターで予備ろ過する。
【0049】
例4:光起電力活性層のための第二のインク組成物E21及びE22を得ること
PV2000と組み合わせたPC70BM又はPTB7-Thと組み合わせたPC70BMが用いられるかどうかに応じて、それぞれインク組成物E21及びE22が得られる。インク組成物を、以下の表1に詳細に示す。
【表1】
【0050】
E21インク組成物は、以下のようにして得られる:
- 1ミリリットルのo-キシレン及び60マイクロリットルのテトラリン中、10mgのPTB7-thを、15mgのPC70BMと混合する(1:1.5の質量比に対応)。
- この混合物を、ホットプレート上で、80℃で24時間、マグネティックスターラーで撹拌する。
- 印刷の前に、インクを、0.45ミクロンのACフィルターで予備ろ過する。
- 印刷した層を、次に、ホットプレート上で、85℃で2分間の熱アニーリングに掛ける。
【0051】
E22インク組成物は、以下のようにして得られる:
- 1ミリリットルのo-キシレン及び60マイクロリットルのテトラリン中、10mgのPV2000を、15mgのPC70BMと混合する(1:1.5の質量比に対応)。
- この混合物を、ホットプレート上で、80℃で24時間、マグネティックスターラ
ーで撹拌する。
- インクジェット印刷の前に、E22インクを、0.45ミクロンのACフィルターでろ過する。
【0052】
E12又はE22のインクジェット印刷後、活性光起電力層が得られ、これを、印刷後、ホットプレート上で、85℃で2分間の熱アニーリングに掛ける。
【0053】
例5:第二の界面層のための第三のインク組成物E31及びE32を得ること
第二の界面層のためのこれらの第三のインク組成物E31及びE32は、以下のようにして得られる:
- PEDOT:PSSを、0.45μmフィルターでろ過する;
- 500μlのTriton X-100(a)を、200μlのエチレングリコール(b)、200μlのグリセロール(c)、及び100μlのエタノールアミン(d)と、9mlの脱イオン水(e)中で混合する;
- こうして得られた混合物を、ホットプレート上で、50℃で30分間マグネティックスターラーで撹拌し、次に、室温で20分間、マグネティックスターラーで撹拌する;
- 最初にろ過したPEDOT:PSSを、こうして得られた撹拌後の混合物と、1mlのPEDOT:PSSあたり脱イオン水中の3つの添加剤の混合物30μl、の割合で混合し、得られた混合物(PEDOT:PSSを含む)を、ホットプレート上で、室温で少なくとも1時間マグネティックスターラーで撹拌する;並びに
- こうして得られた最終溶液E31を、印刷前に、超音波浴中で3~5分間脱気する。
【0054】
PEDOT:PSS、IJ1005、又はPEDOT:PSS、ORGACON S315のいずれが用いられるかに応じて、それぞれ、インク組成物E31及びE32が得られる。インク組成物の詳細を、以下の表2及び3に示す。
【表2】

【表3】
【0055】
例6:本発明に従うOPVセルの例を得ること
本発明に従うOPVセルを、以下のプロセスに従って製造する:
【0056】
剛性基材の場合:
- 構造化ITO層を有する剛性ガラス基材を、4つの異なる洗浄槽への連続浸漬によって洗浄する:
- 槽1:脱イオン水、20~40℃で10~15分間、
- 槽2:アセトン、20~40℃で10~15分間、
- 槽3:エタノール、20~40℃で10~15分間、
- 槽4:イソプロパノール、20~40℃で10~15分間;
- インクE11、E12、又はE13で印刷し、続いて85℃で5分間アニーリングする;
- 活性層のインクE21又はE22で印刷し、続いて85℃で2分間アニーリングする;
- 活性層E21又はE22を、アルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄する;
- インクE31又はE32で印刷し、続いて120℃で2分間アニーリングする;
- 層E31又はE32を、アルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄する;
- AgインクE41(Genes’Ink製)又はE42(Merck(登録商標)製)で印刷し、続いて135℃で5~8分間アニーリングする。
【0057】
可撓性基材の場合:
- ITO/PET基材の両側を、2つのプラスチックフィルムで保護する:
- この基材を、同じサイズのスライドガラス上に、両面テープで貼り付ける;
- 次に、基材のITO側を覆っているプラスチックフィルムを取り除く;
- インクE11(又はE12)で印刷し、続いて85℃で5分間アニーリングする;
- 活性層のインクE21又はE22で印刷し、続いて85℃で2分間アニーリングする;
- 活性層E21又はE22を、アルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄する;
- インクE31又はE32で印刷し、続いて120℃で2分間アニーリングする;
- 層E31又はE32を、アルコール(エタノール、ブタノール、イソプロパノール)で洗浄する;
- インクE41又はE42で印刷し、続いて135℃で5~8分間アニーリングする;
- 得られた光起電力セルをプラスチックフィルムから取り外す。
【0058】
製造プロセスの終了後、以下の表4にまとめて示す以下のセルが得られ、セルはこの場合、マイクロメートル単位の有機繊維状構造を有する第二の界面層を備えている。
【表4】
【0059】
例7:先行技術/コントロールOPVセルの例を得ること
先行技術/コントロールに従うOPVセルを、以下の手順に従って製造する:
1)ITO基材(Lumtec(登録商標)より購入、15オーム□sq-1)を、脱
イオン水、アセトン、エタノール、及び続いてIPA(イソプロパノール)中での超音波処理によって注意深く洗浄した(槽あたり10分間);
2)IPA及び0.2%(体積/体積)のエタノールアミン中のZnO(又はAZO)ナノ粒子をベースとする溶液を、1500rpmで1分間の遠心(又は「スピンコーティング」)によって堆積させ、ホットプレート上で、80℃で5分間乾燥した;
3)PTB7-Th(又はPV2000)及びPC70BMを、溶剤としてのo-キシレン及び添加剤としてのテトラリン中、1:1.5の重量比で、10mg/mlのポリマー濃度で混合する(溶剤と添加剤との比は、97:3 体積/体積である)。公称厚さ90~100nmの層を、2700rpmで2分間のスピンコーティングによって堆積した;
4)ポリ(3,4-PEDOT:PSS)(S315)の薄層を、60秒間、3000rpmの速度で有機層上にスピンコーティングし、次にホットプレート上で、120℃で5分間加熱した。
5)カソードについては、グローブボックス内部のMBRAUNエバポレータ中にサンプルを置き、その中で、Al金属電極(100nm)を、2×10-7トール(Torr)の圧力下でマスクを通して熱蒸着させた。
【0060】
例8:例6及び7で得たOPVセルの特性決定
本発明及びコントロールに従う異なるOPVセルを、上記で示した試験に従って特性決定し、これらの特性決定の結果を、以下の表5に示す。
【表5】
【0061】
本発明に従うOPVセルC2~C16は、光起電力セルのPEDOT:PSS材料から
作製されたETL層(「electron transport layer(電子輸送層)」の頭文字)の印刷の問題が解決されており:セル、又は可撓性プラスチック若しくは剛性ガラス基材上に存在する第一の透明導電性電極上に印刷した4つの層から構成される、又はいかなる材料も存在しない可撓性プラスチック若しくは剛性ガラス基材上に印刷した5つの層から構成される有機モジュールを作製することができることを示している。
【0062】
本発明は、インクジェット印刷プロセスと適合するPEDOT-PSS溶液を処方することにある。この処方によって、有利には、従来からHTL(「hole transport layer(ホール輸送層)」の略語)に用いられている高導電性PEDOT-PSSを、ETL層を得るために提供することが可能となる。
【0063】
インクジェット印刷プロセスをこの処方と組み合わせることによって、印刷層の厚さを制御すること、材料の電気的及び光学的特性を最適化することが可能となるが、さらに、電荷の輸送に有利となるように実質的に垂直方向に本質的に配向される有機繊維を特に呈する非晶質繊維状有機結晶構造の実現を伴う第二の界面層の構造も可能となる。本発明の補助で作製されるモジュールの変換効率は、今日までのところ依然として他に類を見ない。したがって、6つの相互接続されたセルの一連の10のモジュールを製造することが可能であり、各モジュールは、第一の構造化ITO層上に印刷された4つの層から成り、合計で3.5cmの活性層に相当し、1 SUN AM 1.5の下、平均変換効率は5.7%、最大変換効率は6.2%である。
図1
図2
【国際調査報告】