IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハキム,カーロス・エーの特許一覧

<>
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図1
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図2A
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図2B
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図2C
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図3A
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図3B
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図3C
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図4
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図5
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図6
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図7
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図8
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図9A
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図9B
  • 特表-自動調整水頭症バルブ 図9C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】自動調整水頭症バルブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/03 20060101AFI20220106BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B5/03
A61M1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522359
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 US2019057862
(87)【国際公開番号】W WO2020086847
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/750,897
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515254253
【氏名又は名称】ハキム,カーロス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ハキム,カーロス・エー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C077
【Fターム(参考)】
4C017AA20
4C017AB06
4C017AC04
4C017BC11
4C017BD04
4C017DD14
4C017EE01
4C077AA16
4C077DD19
4C077DD26
4C077EE04
4C077HH06
4C077HH13
(57)【要約】
完全植込み又は部分的外部ハードウェアを用いてヒト脳内の圧力(Pp)を正確に測定するシステム及び方法。システムは、脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定するように構成された第1の圧力トランスデューサーと、脳腔内の第2の圧力(Pp)を間接測定するように構成された第2の圧力トランスデューサーと、測定圧PcsfとPpとの間の有効差圧(Pei=Pcsf-Pp)を計算して有効差圧測定値が真の二次圧を表すかを決定するように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全植込み又は部分的外部ハードウェアを用いてヒト脳内の圧力(Pp)を正確に測定する方法であって、
脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定することと、
脳腔内の第2の測定圧(Pp)を間接測定することと、
前記測定圧Pcsfと前記Ppとの間の有効差圧(Pei=Pcsf-Pp)を計算することと、
前記有効差圧測定値が真の二次圧を表すかを決定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記脳室の脳脊髄液圧測定値(Pcsf)が特定差圧閾値内で前記脳腔の二次圧(Pp)に等しいか又はそれ以内の場合、前記脳室の圧力があらかじめ決められた圧力値だけ低下される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定圧力低下が10mmH2Oである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の圧力(Pp)を間接測定することが、脳実質腔内の実質内圧を間接測定することを含み、前記方法が、前記Pcsf圧測定値が前記Pp圧測定値よりも前記特定差圧閾値だけ低くなるまで前記脳室内の圧力を継続して低下させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記特定差圧閾値が20mmH2Oである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Pp測定値が真の実質内静脈圧を表す、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記脳脊髄液圧の低下が高圧水頭症を治療する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脳脊髄液圧の低下が正常圧水頭症又は他のタイプの認知症を治療する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脳脊髄液圧の低下が偽脳腫瘍(特発性頭蓋内圧亢進症)などの病態を治療する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Pcsf及びPp継続測定が、脳室容積と実質内静脈圧との定常状態バランスを提供する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、
前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブアセンブリーのバルブアパーチャーが開いて前記バルブアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、
前記出口ポートから、脳脊髄液が吸収されうる人体内の腔への、流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、
脳脊髄液圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、
二次圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、
前記圧力トランスデューサーからの測定値に基づいて前記バルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、
を含む、外科的植込み型シャントバルブシステム。
【請求項12】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に外科的に配置される植込み流入カテーテルと、
前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブアセンブリーのバルブアパーチャーが開いて前記バルブアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成された外部シャントバルブアセンブリーと、
分析及び/又は廃棄のために脳脊髄液が収集されうる人体外のバッグへの前記出口ポートからの流体のドレナージを提供する、外部ドレナージバッグ又は類似の収集ベッセルに接続される外部流出チューブと、
脳脊髄液圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、
二次圧測定のために前記流入カテーテル又は個別カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、
前記圧力トランスデューサーからの測定値に基づいて前記バルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブルバルブコントローラーと、
瞬時値及びトレンド値並びに臨床医に有用な情報を提供する他の二次測定値として、mmH2O、mmHgの臨床上有用な値で直接測定CSF及び実質内圧測定値を表示する外部スクリーンディスプレイと、
を含む、部分的植込み及び部分的外部の植込み型シャントバルブシステム。
【請求項13】
脳脊髄液圧(Pcsf)測定のための前記第1の圧力トランスデューサーが、前記バルブコントローラーに測定圧を表す第1の電気シグナルを提供する、請求項11又は請求項12に記載のシャントバルブシステム。
【請求項14】
実質内圧(Pp)測定のための前記第2の圧力トランスデューサーが、前記バルブコントローラーに測定圧を表す第2の電気シグナルを提供する、請求項11又は請求項12に記載のシャントバルブシステム。
【請求項15】
前記バルブコントローラーが測定Pcsf圧とPp圧との間の圧力差を計算する、請求項14に記載のシャントバルブシステム。
【請求項16】
前記バルブコントローラーが、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベルを超えたかを決定する、請求項15に記載のシャントバルブシステム。
【請求項17】
PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル未満であると前記バルブコントローラーが決定した場合、前記バルブコントローラーが、あらかじめ決められた値だけ前記シャントバルブアセンブリーの圧力設定値を低下させる、請求項16に記載のシャントバルブシステム。
【請求項18】
前記あらかじめ決められた圧力レベルが10mmH2Oである、請求項17に記載のシャントバルブシステム。
【請求項19】
PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル超であると前記バルブコントローラーが決定した場合、前記バルブコントローラーが真のPp圧として測定Pp圧を同定する、請求項16に記載のシャントバルブシステム。
【請求項20】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、
前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いて前記アパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、
身体内の腔への前記出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、
実質内圧(Pp)測定のために前記流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、
脳脊髄液圧(Pcsf)測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、
あらかじめ決められた閾値と比較してPcsf及び/又はPp測定値に基づいて高圧水頭症(HPH)、正常圧水頭症(NPH)、又は脳内の偽腫瘍の病態が存在するかを決定するように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、
を含む、外科的植込み型シャントバルブシステム。
【請求項21】
実質内圧(Pp)測定のための前記第1の圧力トランスデューサーが、Pcsfが測定されるたびに前記バルブコントローラーに測定圧を表す電気シグナルを提供する、請求項20に記載のシャントバルブシステム。
【請求項22】
前記バルブコントローラーが、あらかじめ決められた値だけ前記外科的植込み型シャントバルブアセンブリーの圧力設定値を低下させる、請求項20に記載のシャントバルブシステム。
【請求項23】
前記バルブコントローラーが、測定Pcsf圧があらかじめ決められた量超の圧力値だけ測定Pp圧よりも低いかを決定する、請求項22に記載のシャントバルブシステム。
【請求項24】
PpとPcsfとの間の差が20mmH2O超である、請求項23に記載のシャントバルブシステム。
【請求項25】
脳室の容積が正常容積になるまで、前記バルブコントローラーがバルブ圧設定値を維持する、請求項23に記載のシャントバルブシステム。
【請求項26】
PcsfがPpに等しくなるまで、前記バルブコントローラーがバルブアセンブリーの圧力設定値を増加させる、請求項25に記載のシャントバルブシステム。
【請求項27】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、
前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いて前記アパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、
人体内の腔への前記出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、
脳脊髄液圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、
二次圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと
前記第1及び第2の圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、
植込み型パワー源と、
前記アジャスタブル植込みバルブコントローラーと外部プログラミング機器との間のワイヤレス通信機構と、
を含む、外科的植込み型シャントバルブシステム。
【請求項28】
前記シャントバルブアセンブリーが、前記アジャスタブル植込みバルブコントローラーから分離された植込みアジャスタブルバルブを含む、請求項27に記載のシャントバルブシステム。
【請求項29】
前記植込みアジャスタブルバルブが、バルブ通信ケーブルで前記バルブコントローラーに電気インターフェースされる、請求項28に記載のシャントバルブシステム。
【請求項30】
プログラマーが、前記バルブコントローラーから操作設定値及びデータをワイヤレス受信する、請求項27に記載のシャントバルブシステム。
【請求項31】
プログラマーが、前記バルブコントローラーに操作設定値の新たな値をワイヤレス送信する、請求項27に記載のシャントバルブシステム。
【請求項32】
前記シャントバルブアセンブリーが、前記バルブコントローラー内にインテグレートされたモジュールである植込みアジャスタブルバルブを含む、請求項27に記載のシャントバルブシステム。
【請求項33】
前記アジャスタブルバルブが、前記植込みバルブコントローラーのポリマーヘッダー内に位置する、請求項32に記載のシャントバルブシステム。
【請求項34】
前記植込みバルブコントローラーに前記第1及び第2の圧力トランスデューサーから圧力値を送信するために、脳室からの流入カテーテルがワイヤを含む、請求項32に記載のシャントバルブシステム。
【請求項35】
前記インテグレートされたアジャスタブルバルブ及びバルブコントローラーが、前記植込みパワー源及び前記ワイヤレス通信機構から分離された植込みデバイスである、請求項32に記載のシャントバルブシステム。
【請求項36】
前記インテグレートされたアジャスタブルバルブ及びバルブコントローラーと、前記植込みパワー源及び前記ワイヤレス通信機構と、の間で接続される電気ケーブルをさらに含む、請求項35に記載のシャントバルブシステム。
【請求項37】
前記植込みパワー源は一次バッテリーである、請求項35に記載のシャントバルブシステム。
【請求項38】
前記植込みパワー源はリチャージャブルバッテリーである、請求項35に記載のシャントバルブシステム。
【請求項39】
植込みリチャージャブルバッテリーが、外部機器からのワイヤレス手段を介してリチャージされる、請求項38に記載のシャントバルブシステム。
【請求項40】
植込みバルブコントローラー及び前記アジャスタブルバルブがヒト患者の頭蓋に近接して位置する、請求項35に記載のシャントバルブシステム。
【請求項41】
植込みバルブコントローラー及び前記アジャスタブルバルブが、ポータブル外部機器から連続パワーワイヤレスで受信する、請求項35に記載のシャントバルブシステム。
【請求項42】
脳室に流体連通して植込み可能に構成された圧力センサーにより圧力データをバルブコントローラーに提供して外科的植込み型シャントバルブアセンブリーを操作する方法であって、
脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定することと、
脳腔内の二次圧(Pp)を測定することと、
前記測定圧Pcsfと前記Ppとの間の差圧を計算することと、
前記差圧に基づいて前記外科的植込み型シャントバルブアセンブリーのシャントバルブの圧力設定値を調整するかを決定することと、
を含む方法。
【請求項43】
あらかじめ決められた差圧閾値超のPcsfが高圧水頭症の指標となる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記あらかじめ決められた差圧閾値が20mmH2Oである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記バルブコントローラーを用いたあらかじめ決められた差圧減分だけ前記シャントバルブの圧力設定値を低下させることをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記あらかじめ決められた差圧減分が10mmH2Oである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
PpとPcsfとの間の差圧があらかじめ決められた差圧閾値超であるかを決定することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記あらかじめ決められた差圧閾値が10mmH2Oである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
PpとPcsfとの間の差圧が第2のあらかじめ決められた差圧閾値超になるまで前記バルブコントローラーを用いて前記シャントバルブの圧力設定値を継続して低下させることをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第2のあらかじめ決められた差圧閾値が20mmH2Oである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記脳室が正常サイズ又は容積に戻るまで前記バルブコントローラーを用いて前記圧力設定値を維持することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
Pp及びPcsfが等しくなるまで前記バルブコントローラーを用いた前記シャントバルブの圧力設定値を増加させることをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記バルブコントローラーを用いてメモリーに前記Pp及びPcsf値を記録することをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
患者が、正常Pcsf測定値を有する正常圧水頭症と臨床診断される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
Pcsf測定値が150mmH2Oである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記バルブコントローラーを用いて前記シャントバルブの圧力設定値をあらかじめ決められた減分だけ低下させることをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記あらかじめ決められた減分が10mmH2Oである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記バルブコントローラーを用いてPpとPcsfとの間の差圧があらかじめ決められた閾値超であるかを決定することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記あらかじめ決められた差圧閾値が10mmH2Oである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
PpとPcsfとの間の差圧が第2のあらかじめ決められた閾値超になるまで前記バルブコントローラーを用いて前記シャントバルブ圧力設定値を継続して低下させることをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記第2のあらかじめ決められた差圧閾値が20mmH2Oである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記脳室が正常サイズ又は容積に戻るまで前記バルブコントローラーを用いて前記圧力設定値を維持することをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
Pp及びPcsfが等しくなるまで前記バルブコントローラーを用いて前記シャントバルブの前記圧力設定値を増加させることをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記バルブコントローラーを用いてメモリーにPp及びPcsf値を記録することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、
シャントバルブを含むとともに前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブのアパーチャーが開いて前記アパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、
人体内の腔への前記出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、
脳脊髄液圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、
二次圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと
前記第1及び第2の圧力トランスデューサーからの測定値に基づいて前記バルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、
植込み型パワー源と、
外部プログラミング機器と前記植込みバルブコントローラーとの間のワイヤレス通信を提供するように構成された第1のワイヤレス通信デバイスと、
前記植込みバルブコントローラーと外部患者レシーバーとの間のワイヤレス通信を提供するように構成された第2のワイヤレス通信デバイスと、
を含む、外科的植込み型シャントバルブシステム。
【請求項66】
前記植込みバルブコントローラーが前記外部患者レシーバーへのワイヤレスデータ転送を提供する、請求項65に記載のシャントバルブシステム。
【請求項67】
転送されるデータが前記第1及び第2の圧力トランスデューサーからの測定圧シグナルを含む、請求項66に記載のシャントバルブシステム。
【請求項68】
転送されるデータがアラームデータを含む、請求項66に記載のシャントバルブシステム。
【請求項69】
前記アラームデータが前記第1及び第2の圧力トランスデューサーから得られる異常圧力測定値の指標となる、請求項68に記載のシャントバルブシステム。
【請求項70】
前記アラームデータがデバイスシステム障害の指標となる、請求項68に記載のシャントバルブシステム。
【請求項71】
前記外部患者レシーバーが患者へのオーディオアラームを提供する、請求項65に記載のシャントバルブシステム。
【請求項72】
前記外部患者レシーバーが患者へのビジュアルアラームを提供する、請求項65に記載のシャントバルブシステム。
【請求項73】
前記バルブコントローラーが、アラームシグナルを転送した後、外部患者レシーバーにすべての測定データをワイヤレス転送する、請求項71及び72のいずれか1項に記載のシャントバルブシステム。
【請求項74】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、
前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いて前記アパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、
前記出口ポートから外部脳室ドレナージシステムへの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、
脳脊髄液圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、
二次圧測定のために前記流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと
前記圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブルバルブコントローラーと、
を含む、シャントバルブシステム。
【請求項75】
脳脊髄液圧(Pcsf)測定のための前記第1の圧力トランスデューサーが、前記バルブコントローラに測定圧を表す第1の電気シグナルを提供する、請求項74に記載のシャントバルブシステム。
【請求項76】
二次圧(Pp)測定のための前記第2の圧力トランスデューサーが、前記バルブコントローラーに測定圧を表す第2の電気シグナルを提供する、請求項75に記載のシャントバルブシステム。
【請求項77】
前記バルブコントローラーが測定Pcsf圧とPp圧との間の圧力差を計算する、請求項76に記載のシャントバルブシステム。
【請求項78】
前記バルブコントローラーが、前記PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベルを超えたかを決定する、請求項77に記載のシャントバルブシステム。
【請求項79】
前記PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル未満であると前記バルブコントローラーが決定した場合、前記バルブコントローラーが、あらかじめ決められた値だけ前記シャントバルブアセンブリーの前記圧力設定値を低下させる、請求項77に記載のシャントバルブシステム。
【請求項80】
前記あらかじめ決められた圧力レベルが10mmH2Oである、請求項79に記載のシャントバルブシステム。
【請求項81】
前記PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル超であると前記バルブコントローラーが決定した場合、前記バルブコントローラーが真のPp圧として測定Pp圧を同定する、請求項77に記載のシャントバルブシステム。
【請求項82】
入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、
前記入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときに前記シャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いて前記アパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、
前記出口ポートから、脳脊髄液が吸収されうる人体内の腔への、流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、
前記流入カテーテルに装着されるとともに脳脊髄液圧(Pcsf)及び二次圧(Pp)を測定するように構成された差圧トランスデューサーと、
測定された脊髄液圧と実質内圧との間の圧力差を計算するように且つ前記差圧トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブルバルブコントローラーと、
を含む、シャントバルブシステム。
【請求項83】
前記差圧トランスデューサーが、脳脊髄液圧測定のための第1の圧力トランスデューサーと、二次圧測定のための第2の圧力トランスデューサーと、を含む、請求項82に記載のシャントバルブシステム。
【請求項84】
前記バルブコントローラーが、前記PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベルを超えたかを決定するようにさらに構成される、請求項82に記載のシャントバルブシステム。
【請求項85】
前記PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル未満であると前記バルブコントローラーが決定した場合、前記バルブコントローラーが、あらかじめ決められた値だけ前記シャントバルブアセンブリーの前記圧力設定値を低下させる、請求項84に記載のシャントバルブシステム。
【請求項86】
前記あらかじめ決められた圧力レベルが10mmH2Oである、請求項85に記載のシャントバルブシステム。
【請求項87】
前記PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル超であると前記バルブコントローラーが決定した場合、前記バルブコントローラーが真のPp圧として測定Pp圧を同定する、請求項85に記載のシャントバルブシステム。
【請求項88】
脳室に流体連通するように構成された圧力センサーにより圧力データをバルブコントローラーに提供してシャントバルブアセンブリーを操作する方法であって、
脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定することと、
脳腔内の二次圧(Pp)を測定することと、
前記測定圧PcsfとPpとの間の差圧を計算することと、
前記差圧に基づいて前記シャントバルブアセンブリーのシャントバルブの圧力設定値を調整するかを決定することと、
を含む方法。
【請求項89】
前記第2の圧力トランスデューサーが、前記第1の圧力トランスデューサー及び前記アジャスタブル植込みバルブコントローラーの制御下で前記流出カテーテルを介するドレナージを可能にするために、オフになるように構成される、請求項11又は請求項12に記載のシャントバルブシステム。
【請求項90】
前記第1の圧力トランスデューサーが、システムによる測定二次圧のみのモニタリングを可能にするために、オフになるように構成される、請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載のシャントバルブシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水頭症は、脳室内への脳脊髄液(CSF)の正味の蓄積に起因する脳室容積拡大に関連する病態である。非交通性水頭症(閉塞性)又は高圧水頭症(HPH)は、脳室系又はCSFフロー経路の閉塞に関連する水頭症であり、脳脊髄液(CSF)圧の増加により一般に特徴付けられる。HPHはまた、脳室フロー経路に閉塞がないがCSFが脳室系から血流中に排出される場所で閉塞が起こるときにも生じる。これとは対照的に、脳脊髄液フローの可視(すなわち同定可能)ブロッケージから生じない交通性(又は非閉塞性)形態の水頭症もまた、起こりうる。正常圧水頭症(NPH)は、事実上正常CSF圧で脳室容積拡大が存在する交通性水頭症の一形態であり、主に高齢者が罹患する臨床病態である。このタイプの水頭症では、CSF経路はインタクトであり、血流中へのドレナージは損なわれない。NPHは、頭蓋内圧上昇の不在下の脳室容積拡大に関連する以下のハキム三徴として知られる3つの症状により特徴付けられる。
・ 最初に起こるのは通常は運動障害(主に歩行障害)、
・ 失禁(主に尿失禁)、及び
・ 認知症。
【0002】
重症度及び進行度に依存して、典型的には歩行障害を主症状として、1、2、又は3つすべての症状が存在しうる。まとめると、NPHは、正常CSF圧の条件下で脳室の拡大として現れる。
【0003】
NPHは、それ自体と他の脳萎縮及び認知症との鑑別診断の正しさを証明する既知のユニークな臨床病態である。ほとんどの認知症とは異なり、NPHに関連する認知症は、シャントの植込みによる治療で回復可能である。
【0004】
すべての形態の水頭症の治療の目標は、脳室圧を低下させることにより脳室容積を低下させて脳室容積が標準化されるようにすることである。HPH及びNPHのいずれのタイプの水頭症も、多くの場合、脳室又は腰髄膜腔(交通性水頭症では脳の流体区画と交通する)から過剰のCSFを排出するシャントを脳の流体区画に植え込むことにより治療される。かかるシャントの例としては、
・ 脳室から心臓の右心房に流体を分流する脳室心房(VA)シャント、
・ 脳室から腹膜に流体を分流する脳室腹腔(VP)シャント、及び
・ 腰椎部から腹膜にCSFを分流する腰椎腹腔(LP)シャント、
が挙げられる。
【0005】
脳室シャントは、交通性又は非交通性水頭症の患者に使用されうるが、腰椎シャントは、交通性水頭症の患者にのみ植え込まれうる。
【0006】
これらのシャントは、
・ 脳実質を介して脳室内に挿入される脳カテーテル(脳室シャント用)や中空針を介して腰髄膜腔内に挿入される腰椎カテーテル(腰椎シャント用)などの流入カテーテルと、
・ 脳室又は腰椎部のどちらかからの流体の圧力を制御するワンウェイバルブシステムと、
・ CSFを吸収することにより非交通性又は閉塞性水頭症で閉塞をバイパスしたりNPHでCSF圧を実質圧未満に低下させたり(及び脳室容積を標準化したり)する頸静脈(先端を心臓の右心房まで前進させる)や腹膜腔などの身体のリザーバーに挿入される流出カテーテルと、
で一般に構成される。
【0007】
脳室心房、脳室腹腔、及び腰椎腹腔シャントは、以下でさらに考察されるように、固定圧又は可変圧(プログラマブル又はアジャスタブル)のどちらかのバルブ機構で利用可能である。
【0008】
そのほか、頭蓋内圧(ICP)の管理のために、又は限定されるものではないが感染、脳室内出血、CSFタンパク質上昇などをはじめとする病態を管理するために、又はNPH用スクリーニング手順として植込み型シャントが管理選択肢であるかを決定するために、シャントの永久植込み前の一時手順として、脳室からドレナージバッグ(外部脳室ドレナージシステム又はEVDS)に又は腰髄膜腔からドレナージバッグ(外部腰椎ドレナージシステム又はELDS)に排出する外部ドレナージシステム(EDS)が数週間使用されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の技術は最良の場合でも臨床医への定期訪問時にのみ調整されうる技術を提供するので、治療される特異的病態に対するシャンティングを最適化するために水頭症及び脳脊髄液(CSF)腔の関連障害の治療用の自動調整水頭症バルブ(植込み型及び外部)の必要性が当技術分野に存在する。それゆえ、態様及び実施形態は、いつでもどこでも患者の要件が変化したらバルブの自動調整を可能にする自動調整バルブおよその操作方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、完全植込み又は部分的外部ハードウェアを用いてヒト脳内の二次圧たとえば実質内静脈圧(Pp)を正確に測定する方法は、脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定することと、脳の実質腔内の実質内圧(Pp)を間接測定することと、測定圧PcsfとPpとの間の有効差圧(Pei=Pcsf-Pp)を計算することと、有効差圧測定値が真の実質内圧を表すかを決定することと、を含む。
【0011】
一例では、脳室の脳脊髄液圧測定値(Pcsf)が脳の実質腔の実質内圧(Pp)に対して特定差圧閾値以内にある場合、脳室の圧力はあらかじめ決められた圧力値だけ低下される。一例では、特定圧力低下は10mmH2Oである。本方法は、Pcsf圧測定値が特定差圧閾値だけPp圧測定値よりも低くなるまで脳室内の圧力を継続して低下させることをさらに含みうる。一例では、特定差圧閾値は20mmH2Oである。他の一例では、Pp測定値は真の実質内静脈圧を表す。
【0012】
本方法のある特定の例では、脳脊髄液圧の低下により高圧水頭症が治療される。
【0013】
本方法のある特定の例では、脳脊髄液圧の低下により正常圧水頭症が治療される。
【0014】
本方法のある特定の例では、脳脊髄液圧の低下により偽脳腫瘍(特発性頭蓋内圧亢進症)の病態が治療される。
【0015】
本方法のある特定の例では、Pcsf及びPpの継続測定により脳室容積と実質内静脈圧との定常状態バランスが提供される。
【0016】
他の一実施形態によれば、外科的植込み型シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、脳脊髄液が吸収されうる人体内の腔への出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、脳脊髄液圧測定のために流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、実質内圧測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、を含む。
【0017】
他の一実施形態によれば、部分的植込み及び部分的外部の植込み型シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に外科的に配置される植込み流入カテーテルと、入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成された外部シャントバルブアセンブリーと、分析及び/又は廃棄のために脳脊髄液が収集されうる人体外のバッグへの出口ポートからの流体のドレナージを提供する外部ドレナージバッグに接続される外部流出チューブと、脳脊髄液圧測定のために流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、実質内圧測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブルバルブコントローラーと、瞬時値及びトレンド値並びに臨床医に有用な情報を提供する他の二次測定値としてmmH2O、mmHgなどの臨床上有用な値で直接測定CSF及び実質内圧測定値を表示する外部スクリーンディスプレイと、を含む。
【0018】
ある特定の例では、脳脊髄液圧(Pcsf)測定のための第1の圧力トランスデューサーは、測定圧を表す第1の電気シグナルをバルブコントローラーに提供する。
【0019】
ある特定の例では、実質内圧(Pp)測定のための第2の圧力トランスデューサーは、測定圧を表す第2の電気シグナルをバルブコントローラーに提供する。
【0020】
一例では、バルブコントローラーは、測定Pcsf圧とPp圧との間の圧力差を計算する。バルブコントローラーは、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベルを超えたかを決定しうる。一例では、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル未満であるとバルブコントローラーが決定した場合、バルブコントローラーは、あらかじめ決められた値だけシャントバルブアセンブリーの圧力設定値を低下させる。一例では、あらかじめ決められた圧力レベルは10mmH2Oである。他の一例では、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル超であるとバルブコントローラーが決定した場合、バルブコントローラーは、測定されたPp圧を真のPp圧として同定する。
【0021】
他の一実施形態によれば、外科的植込み型シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、身体内の腔への出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、実質内圧(Pp)測定のために流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、脳脊髄液圧(Pcsf)測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、あらかじめ決められた閾値と比較してPcsf及び/又はPp測定値に基づいて高圧水頭症(HPH)、正常圧水頭症(NPH)、又は脳内の偽腫瘍の病態が存在するかを決定するように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、を含む。
【0022】
一例では、実質内圧(Pp)測定のための第1の圧力トランスデューサーは、測定圧を表す電気シグナルをPcsfが測定されるたびにバルブコントローラーに提供する。
【0023】
一例では、バルブコントローラーは、あらかじめ決められた値だけ外科的植込み型シャントバルブアセンブリーの圧力設定値を低下させる。他の一例では、バルブコントローラーは、測定されたPcsf圧があらかじめ決められた量超の圧力値だけ測定されたPp圧よりも低いかを決定する。一例では、PpとPcsfとの間の差は20mmH2O超である。他の一例では、バルブコントローラーは、脳室の容積が正常容積になるまでバルブ圧設定値を維持する。他の一例では、バルブコントローラーは、PcsfがPpに等しくなるまでバルブアセンブリーの圧力設定値を増加させる。
【0024】
他の一実施形態によれば、外科的植込み型シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、人体内の腔への出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、脳脊髄液圧測定のために流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、実質内圧測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、第1及び第2の圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、植込み型パワー源と、アジャスタブル植込みバルブコントローラーと外部プログラミング機器との間のワイヤレス通信機構と、を含む。
【0025】
一例では、シャントバルブアセンブリーは、アジャスタブル植込みバルブコントローラーから分離された植込みアジャスタブルバルブを含む。他の一例では、植込みアジャスタブルバルブは、バルブ通信ケーブルによりバルブコントローラーに電気インターフェースされる。他の一例では、プログラマーは、バルブコントローラーから操作設定値及びデータをワイヤレス受信する。他の一例では、プログラマーは、操作設定値の新たな値をバルブコントローラーにワイヤレス送信する。
【0026】
一例では、シャントバルブアセンブリーは、バルブコントローラー内にインテグレートされたモジュールである植込みアジャスタブルバルブを含む。一例では、アジャスタブルバルブは、植込みバルブコントローラーのポリマーヘッダー内に位置する。他の一例では、脳室からの流入カテーテルは、第1及び第2の圧力トランスデューサーから植込みバルブコントローラーに圧力値を送信するためのワイヤを含む。一例では、インテグレートされたアジャスタブルバルブ及びバルブコントローラーは、植込みパワー源及びワイヤレス通信機構から分離された植込みデバイスである。一例では、シャントバルブシステムは、インテグレートされたアジャスタブルバルブ及びバルブコントローラーと、植込みパワー源及びワイヤレス通信機構と、の間に接続される電気ケーブルをさらに含む。一例では、植込みパワー源は一次バッテリーである。他の一例では、植込みパワー源はリチャージャブルバッテリーである。一例では、植込みリチャージャブルバッテリーは、外部機器からワイヤレス手段を介して再チャージされる。一例では、植込みバルブコントローラー及びアジャスタブルバルブは、ヒト患者の頭蓋に近接して位置する。他の一例では、植込みバルブコントローラー及びアジャスタブルバルブは、ポータブル外部機器から連続パワーをワイヤレス受信する。
【0027】
他の一実施形態は、脳室に流体連通して植込み可能に構成された圧力センサーにより圧力データをバルブコントローラーに提供して外科的植込み型シャントバルブアセンブリーを操作する方法に関する。一実施形態では、本方法は、脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定することと、脳の実質腔内の実質内圧(Pp)を測定することと、測定圧PcsfとPpとの間の差圧を計算することと、差圧に基づいて外科的植込み型シャントバルブアセンブリーのシャントバルブの圧力設定値を調整するかを決定することと、を含む。
【0028】
一例では、あらかじめ決められた閾値超のPcsfは、高圧水頭症の指標となる。一例では、あらかじめ決められた閾値は220mmH2Oである。
【0029】
本方法は、バルブコントローラーを用いてシャントバルブの圧力設定値をあらかじめ決められた減分だけ低下させることをさらに含みうる。一例では、あらかじめ決められた減分は10mmH2Oである。
【0030】
本方法は、PpとPcsfとの間の差圧があらかじめ決められた差圧閾値超であるかを決定することをさらに含みうる。一例では、あらかじめ決められた差圧閾値は10mmH2Oである。本方法は、PpとPcsfとの間の差圧が第2のあらかじめ決められた差圧閾値超になるまでバルブコントローラーを用いてシャントバルブ圧力設定値を継続して低下させることをさらに含みうる。一例では、第2のあらかじめ決められた差圧閾値は20mmH2Oである。一例では、本方法は、脳室が正常サイズ又は容積に戻るまでバルブコントローラーを用いて圧力設定値を維持することをさらに含む。他の一例では、本方法は、Pp及びPcsfが等しくなるまでバルブコントローラーを用いてシャントバルブの圧力設定値を増加させることをさらに含む。一例では、本方法は、バルブコントローラーを用いてメモリー内のPp及びPcsf値を記録することをさらに含む。一例では、患者は、正常Pcsf測定値を有する正常圧水頭症と臨床診断される。一例では、Pcsf測定値は150mmH2Oである。本方法は、バルブコントローラーを用いてシャントバルブの圧力設定値をあらかじめ決められた減分だけ低下させることをさらに含みうる。一例では、あらかじめ決められた減分は10mmH2Oである。本方法は、バルブコントローラーを用いてPpとPcsfとの間の差圧があらかじめ決められた閾値超であるかを決定することをさらに含みうる。一例では、あらかじめ決められた差圧閾値は10mmH2Oである。本方法は、PpとPcsfとの間の差圧が第2のあらかじめ決められた閾値超になるまでバルブコントローラーを用いてシャントバルブ圧力設定値を継続して低下させることをさらに含みうる。一例では、第2のあらかじめ決められた差圧閾値は20mmH2Oである。本方法は、脳室が正常サイズ又は容積に戻るまでバルブコントローラーを用いて圧力設定値を維持することをさらに含みうる。一例では、本方法は、Pp及びPcsfが等しくなるまでバルブコントローラーを用いてシャントバルブの圧力設定値を増加させることをさらに含む。本方法は、バルブコントローラーを用いてメモリー内のPp及びPcsf値を記録することをさらに含みうる。
【0031】
他の一実施形態によれば、外科的植込み型シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、シャントバルブを含むとともに入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、人体内の腔への出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、脳脊髄液圧測定のために流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、実質内圧測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、第1及び第2の圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブル植込みバルブコントローラーと、植込み型パワー源と、外部プログラミング機器と植込みバルブコントローラーとの間のワイヤレス通信を提供するように構成された第1のワイヤレス通信デバイスと、植込みバルブコントローラーと外部患者レシーバーとの間のワイヤレス通信を提供するように構成された第2のワイヤレス通信デバイスと、を含む。
【0032】
一例では、植込みバルブコントローラーは、外部患者レシーバーへのワイヤレスデータ転送を提供する。一例では、転送されるデータは、第1及び第2の圧力トランスデューサーからの測定圧シグナルを含む。他の一例では、転送されるデータはアラームデータを含む。アラームデータは、第1及び第2の圧力トランスデューサーから得られる異常圧力測定値の指標でありうる。一例では、アラームデータは、デバイスシステム障害の指標となる。一例では、外部患者レシーバーは、患者にオーディオアラームを提供する。他の一例では、外部患者レシーバーは、患者にビジュアルアラームを提供する。ある特定の例では、バルブコントローラーは、アラームシグナルを転送した後、すべての測定データを外部患者レシーバーにワイヤレス転送する。
【0033】
他の一実施形態によれば、シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、出口ポートから外部脳室ドレナージシステムへの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、脳脊髄液圧測定のために流入カテーテルに装着される第1の圧力トランスデューサーと、実質内圧測定のために流入カテーテルに装着される第2の圧力トランスデューサーと、圧力トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブルバルブコントローラーと、を含む。
【0034】
一例では、脳脊髄液圧(Pcsf)測定のための第1の圧力トランスデューサーは、測定圧を表す第1の電気シグナルをバルブコントローラーに提供する。他の一例では、実質内圧(Pp)測定のための第2の圧力トランスデューサーは、測定圧を表す第2の電気シグナルをバルブコントローラーに提供する。一例では、バルブコントローラーは、測定Pcsf圧とPp圧との間の圧力差を計算する。他の一例では、バルブコントローラーは、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベルを超えたかを決定する。一例では、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル未満であるとバルブコントローラーが決定した場合、バルブコントローラーは、あらかじめ決められた値だけシャントバルブアセンブリーの圧力設定値を低下させる。一例では、あらかじめ決められた圧力レベルは10mmH2Oである。他の一例では、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル超であるとバルブコントローラーが決定した場合、バルブコントローラーは、測定されたPp圧を真のPp圧として同定する。
【0035】
他の一実施形態によれば、シャントバルブシステムは、入口ポートに接続されて脳室又は脊柱のCSF腔に植え込まれる流入カテーテルと、入口ポートの流体の圧力がシャントバルブアセンブリーの選択された圧力設定値を超えたときにシャントバルブアセンブリーのアパーチャーが開いてアパーチャーを介して流体が出口ポート中にベントされるように構成されたシャントバルブアセンブリーと、脳脊髄液が吸収されうる人体内の腔への出口ポートからの流体のドレナージを提供する流出カテーテルと、流入カテーテルに装着されるとともに脳脊髄液圧(Pcsf)及び実質内圧(Pp)を測定するように構成された差圧トランスデューサーと、測定された脊髄液圧と実質内圧との間の圧力差を計算するように且つ差圧トランスデューサーからの測定値に基づいてバルブ圧設定値を変化させるように構成されたアジャスタブルバルブコントローラーと、を含む。
【0036】
一例では、差圧トランスデューサーは、脳脊髄液圧測定のための第1の圧力トランスデューサーと、実質内圧測定のための第2の圧力トランスデューサーと、を含む。
【0037】
一例では、バルブコントローラーは、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベルを超えたかを決定するようにさらに構成される。一例では、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル未満であるとバルブコントローラーが決定した場合、バルブコントローラーは、あらかじめ決められた値だけシャントバルブアセンブリーの圧力設定値を低下させる。あらかじめ決められた圧力レベルは、たとえば10mmH2Oでありうる。他の一例では、PcsfとPpとの間の圧力差があらかじめ決められたレベル超であるとバルブコントローラーが決定した場合、バルブコントローラーは、測定されたPp圧を真のPp圧として同定する。
【0038】
他の一実施形態は、脳室に流体連通するように構成された圧力センサーにより圧力データをバルブコントローラーに提供してシャントバルブアセンブリーを操作する方法に関する。一実施形態では、本方法は、脳室内の脳脊髄液圧(Pcsf)を測定することと、脳の実質腔内の実質内圧(Pp)を測定することと、測定圧PcsfとPpとの間の差圧を計算することと、差圧に基づいてシャントバルブアセンブリーのシャントバルブの圧力設定値を調整するかを決定することと、を含む。
【0039】
さらに他の態様、実施形態、並びにこれらの模範的態様及び実施形態の利点は、以下で詳細に考察される。本明細書に開示される実施形態は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つに一致するいかなる形でも他の実施形態と組み合わされうるとともに、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「代替実施形態」、「各種実施形態」、「一実施形態」などへの参照は、必ずしも相互排他的であるとは限らず、記載される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれうることを示唆することが意図される。本明細書におけるかかる用語の出現は、必ずしもすべてが同一の実施形態を参照するとは限らない。
【0040】
各種態様の実施形態は、添付の図面に関連して以下で考察される。明確を期して、すべてのコンポーネントがすべての図面に記されうるとは限らない。図面は、必ずしも原寸通りである必要はなく、その代わりに、本発明の原理を例示することに重点が置かれる。図面は、各種態様及び実施形態の例示を行って理解を深めるために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成するが、本発明の限界の定義として意図されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】各種構造及び関連圧力測定を参照して球モデルで提示されたヒト脳の解剖学的構造を示す図である。
図2A】各種臨床病態用セルフアジャスタブルバルブに対する医師による臨床評価のアルゴリズムのグラフ表現である。
図2B】水頭症と診断された患者のセルフアジャスタブルバルブによる測定及び治療のアルゴリズムのグラフ表現である。
図2C】圧力測定の実験室研究データ例の例示及び本明細書に記載の圧力測定のグラフ表現である。
図3A】機械設計アプローチに基づく自動調整水頭症バルブシステム例のデバイスコンポーネントを例示する図である。
図3B】自動調整水頭症バルブシステム例のデバイスコンポーネントを例示する図である。
図3C】ポータブルワイヤレス受信デバイスも含む自動調整水頭症バルブシステムの他のデバイスコンポーネント例を例示する図である。
図4】インテグレートコントローラー及びアジャスタブルバルブを有する他の自動調整水頭症バルブシステム例を提供するデバイスコンポーネント構成を例示する図である。
図5】リチャージャブルパワー源と共にインテグレートコントローラー及びアジャスタブルバルブを有する他の自動調整水頭症バルブシステム例を提供するデバイスコンポーネント構成を例示する図である。
図6】水頭症病態の存在の決定時のCSF圧(Pcsf)及び実質内静脈圧(Pp)の測定及びモニタリング例のフローチャートである。
図7】定常状態操作時の治療アルゴリズム例のフローチャートである。
図8】植込みバルブコントローラー及び外部機器例の電子ブロック図である。
図9A図6に提示されるフローチャートのアルゴリズムに対する圧力測定の時間ベースグラフ表現を例示するグラフである。
図9B】高圧水頭症の治療例で追従された工程を例示するグラフである。
図9C】正常圧水頭症の治療例で追従された工程を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
態様及び実施形態は、患者に植え込まれて又は患者に植え込まれたカテーテルに接続されて脳脊髄液(CSF)のフロー(ドレナージ)の調節に使用されるように構成された自動調整バルブに関する。
【0043】
定義:
クモ膜絨毛: 静脈洞の一部へのクモ膜の微視的突起であり、これを介してCSFを血流中に排出する。
心房: 血液が心臓に入る2つの上側腔の1つ。
カテーテル: 流体分流用に医療グレード材料から作製された細いチューブ。
心房カテーテル: 心房中に排出するシャントの遠位流出チューブ。
ドレナージカテーテル: シャントの遠位流出カテーテル(チューブ)であり、このチューブから流体がシャントバルブシステムを出る。
流入カテーテル: 脳脊髄液区画の1つに配置されるシャントの近位チューブであり、これを介してCSFがシャントバルブシステムに流入する。
腰椎カテーテル: シャントの近位チューブであり、これを介してCSFが脊椎の周りのCSF腔から排出される。
腹膜カテーテル: 腹膜中に排出するシャントの遠位流出チューブ。
脳室カテーテル: 脳室からCSFを排出するシャントの近位流入チューブ。
脳脊髄液: 脳及び脊髄を浸す無色透明体液であり、主に脳室の脈絡叢中で生成される。脳に対するクッション又はバッファーとして作用し、頭蓋内の脳及び脊柱に対する基本的な機械的及び免疫学的保護を提供する。
脈絡叢: 脈絡叢は、脳室内の脳脊髄液の大部分を生成する細胞の血管叢である。脈絡叢は修飾上衣細胞からなる。
外部ドレナージシステム(EDS): 外部ドレナージ及びモニタリングは、重力とCSF圧との組合せを用いることによる脳の側脳室又は脊椎の腰椎腔から外部収集バッグ中への一時CSFドレナージである。
外部腰椎ドレナージシステム(ELDS): 外部ドレナージ及びモニタリングは、重力とCSF圧との組合せを用いることによる脊椎の腰椎腔から外部収集バッグ中への一時CSFドレナージである。
外部脳室ドレナージシステム(EVDS): 外部ドレナージ及びモニタリングは、重力とCSF圧との組合せを用いることによる脳の側脳室から外部収集バッグ中への一時CSFドレナージである。
固定圧: 単一操作圧で操作するバルブ。
水頭症: 脳室内の脳脊髄液(CSF)の正味の蓄積に起因する脳室容積拡大に関連する病態。
交通性水頭症: CSFフローの可視ブロッケージから生じない水頭症形態の非閉塞性水頭症。
高圧水頭症: 脳室内へのCSFの過剰蓄積が見られる神経学的障害の高血圧性水頭症。CSFが蓄積して脳(頭蓋)内の圧力増加をもたらすことにより脳室容積の拡大及び脳組織の伸長を引き起こしてクリティカル構造を圧迫する。
非閉塞性水頭症: 交通性水頭症を参照されたい。
正常圧水頭症: NPHと略記されるこの病態は、ときにはICPの増加をほとんど又はまったく伴うことなく脳室が拡大した状態になるCSFの蓄積であり、「正常」CSF圧の存在下で神経学的症状の三徴(3つのグループ)-歩行障害(典型的には最初に現れる)、認知症、及び膀胱制御障害が起こる。重症度に依存して、これらの症状の1つ以上が現れる。
閉塞性水頭症: 高圧水頭症を参照されたい。
腰椎腹腔シャント: 腰部のクモ膜下(腰髄膜)腔から腹腔にCSFを分流するシャント-バルブシステム。
脳実質: 2つのタイプの脳細胞すなわちニューロン及びグリア細胞で構成される脳内の機能性組織。
腹膜: 腹腔をライニングして腹部器官をカバーする漿膜。
クモ膜下圧: クモ膜下CSF腔で測定されるCSF圧。
硬膜下圧: 硬膜下腔で測定される圧力。
プログラマブル圧: プログラマーにより変更可能な操作圧の非侵襲的アジャスタブル範囲を有する可変圧バルブ機構。
シャント: 典型的には、2つのカテーテル(流入及び流出)と、量、フロー方向、及び脳の流体区画のCSF圧を調節するワンウェイバルブと、を含む植込みデバイス。
上矢状洞: 前大脳半球の外側面から静脈洞交会への血液の排出を可能にする大脳鎌の付着縁に沿った不対領域であるヒト頭蓋内の上側縦走洞。
腰髄膜腔: 脊髄及び馬尾を囲む硬膜の膜性鞘である髄膜嚢又は硬膜嚢に囲まれたCSF流体区画。髄膜嚢は、脊髄が「浮かぶ」脳脊髄液を含有する。
クモ膜下腔: デリケートな結合組織小柱及びCSFを含有する相互交通チャネルにより占有されたクモ膜と軟膜との間隙。
バルブ: 一方向のみの流体フローを可能にするシャント中の抵抗調節機構。伝統的には、バルブは、固定圧又は非侵襲的アジャスタブル圧でありうる。
頸静脈: 頭部から上大静脈(上半身の大静脈)に血液を運んで心臓に注ぐ頸部の静脈。
浅大脳静脈: 上大脳静脈、浅中大脳静脈、下大脳静脈、下吻合静脈、及び上吻合静脈を含む頭部の大脳静脈群。
脳室: 上衣細胞でライニングされた脳内の腔であり、CSFは、ここで生成された後、脊髄クモ膜下腔と交通する頭蓋腔内で循環されるか又はクモ膜絨毛内に排出される。脳室は、第3脳室及び続いて第四脳室に排出する一対の側脳室を含む。
脳室心房シャント: 脳室から心臓の右心房に流体を移動(分流)するシャント-バルブシステム。
脳室腹腔シャント: 脳室から腹腔に流体を移動(分流)するシャント-バルブシステム。
【0044】
略号:
CSF: 脳脊髄液
EDS: 外部ドレナージシステム
ELDS: 外部腰椎ドレナージシステム
EVDS: 外部脳室ドレナージシステム
HPH: 高圧水頭症
NPH: 正常圧水頭症
Pcsf: 脳室内CSF圧
Pei: 有効脳室内CSF差圧、Pei=Pcsf-Pp
Pp: 実質内静脈圧
Psa: クモ膜下腔圧
Pv: 実質外静脈圧(上矢状静脈洞(SSS)で測定される)
Pvalve: バルブ操作圧
SSS: 上矢状静脈洞
【0045】
HPH及びNPHは、中枢神経系内の異なる流体圧間の相互作用により発生する。
【0046】
図1に示されるように、脳表面から出現して脳実質海綿から血液を排出する浅大脳静脈105は、クモ膜下腔115を通り抜けて、脳脊髄液(CSF)に浸入し、硬膜静脈洞に連結し、上矢状静脈洞(SSS)130中に排出される。水平位のSSS130中の正常圧は、おおよそ70mmHOである(Pv=SSS中で測定される実質外静脈圧)。
【0047】
CSFもまた、SSS130中に排出されるが、異なる経路すなわちSSS壁のクモ膜絨毛135を介する。CSF圧は、これらのクモ膜絨毛135を介する抵抗にSSS130の圧力をプラスした結果である。したがって、患者が水平位にいるとき、クモ膜下腔115中のCSFの正常圧(Psa=クモ膜下CSF圧)は、典型的には120mmHOである。クモ膜下CSF圧は、実質内静脈系圧のパラレル変動を誘発する。同様に、SSS130レベル又はその後の静脈圧変動は、実質内静脈系及びCSF系の両方に等しく伝達される。なぜなら、両方ともSSS130中に排出されるからである。これらの2つの機構は、脳組織又は海綿様実質125の一定した静水学的ローディングを確保する。
【0048】
脳組織又は実質125は2つの対抗圧に付される。一方はCSF系(Pcsf)により生成され、これは脳室110を拡大する(及び実質125の容積を減少させる、すなわち、海綿の容積を減少させる)傾向にある。他方の圧力は実質内静脈系120(Pp)により生成され、これは脳室容積拡大に対抗して脳室容積を低下させる(及び実質125の容積を増加させる)傾向にある。これらの2つの圧力がそれらの絶対値にかかわらず等しい状態が保たれる限り、それらの間の差圧はゼロであり、組織はごくわずかな応力や歪みにも付されることがなく、脳室容積さらには実質容積は不変の状態が保たれて定常状態条件にある。
【0049】
液体が実質海綿から又は実質海綿にスキーズされ、その結果、脳室容積を変化及び制御して特定形態の水頭症を生成しうる程度を制御する勾配は、脳室内CSF圧(Pcsf)と実質内静脈圧(Pp)との間に存在する差である。この勾配は、有効脳室内CSF差圧(Pei=Pcsf-Pp)と称される。Pcsf>Ppのとき、Pei>0であり、流体は実質125からスキーズされ(すなわち、海綿が「スキーズされ」)、脳室容積が増加する。逆に言えば、Pcsf<Ppのとき、Pei<0であり、流体は実質125を満たして実質容積を拡大し、脳室容積が減少することが可能である。脳室容積拡大が等しいPpにより対抗されずに脳室が拡大するとき、NPHの症状(正常Pcsfであっても)を生じる。
【0050】
正常脳100では、脳室110内の脳脊髄液の圧力(Pcsf)は、典型的には、実質内静脈路120の圧力(Pp)に等しい。そのため、Pcsf=Ppのとき、脳室の拡大を引き起こすおそれのあるこれらの2つの圧力区画間に勾配が存在しないので、脳室容積は正常に保たれ、水頭症は発生しない。水頭症又は脳100の脳室腔容積の拡大は、脳100内の圧力アンバランス(すなわち、PcsfとPpとの間の勾配)により生じ、Pcsf110がPp120超になるか(高圧水頭症の場合)又はPp120がPcsf110未満になるか(正常圧水頭症の場合)のどちらかのときに起こる。水頭症の管理の目標は、実質圧(Pp)以下になるようにCSF圧(Pcsf)を操作することである。
【0051】
水頭症治療用の初期シャント(流入カテーテルとバルブとドレナージカテーテルとからなる)では、シャントを通るフローを調節するために固定w圧バルブが組み込まれた。多くの場合、固定圧バルブの植込み後、アンダードレナージ又はオーバードレナージに起因して、医師は、最適操作圧範囲(平衡条件)が決定されるまで、さまざまな操作圧範囲の1つ(たとえば、アンダードレナージではより低い圧力範囲又はオーバードレナージではより高い圧力範囲)を用いて、初期バルブを交換するために数回の手術を実施する必要があるだろう。バルブを交換するために手術を使用するのではなく非侵襲的に(皮膚を介して)バルブの操作圧を調整可能な外部(非侵襲的)アジャスタブル「プログラマブル」バルブが開発されてきた。しかしながら、シャント性能を最適化するためにかかるプログラマブルバルブの圧力設定値を頻繁に調整することが一般に必要である。これは臨床医への1回以上の訪問を介して達成される。プログラムした後、臨床医の臨床判断に基づいて再プログラムされるまで、アジャスタブルバルブは固定圧バルブのように作用する(すなわち、患者の変化要件に合わせて調整しない)。このため、臨床医への患者の訪問の必要性に合わせてかかるバルブが調整されうる時が限定され、1日を通して患者の変化する臨床上の必要性に基づいてバルブ調整を行って患者の毎日の要件に適応することができない。
【0052】
態様及び実施形態は、所要のバルブ抵抗を連続的に決定し、それに応じて臨床医の介入を必要とすることなく調整しうる自動調整バルブに関する。
【0053】
現在使用されている従来のシャントバルブは、固定圧又は非侵襲的アジャスタブルバルブのどちらかであり、2つのパラメーター:入口圧(CSF)及び出口ドレナージ圧(心臓の右心房(本質的に圧力ゼロ)又は腹膜腔圧のどちらか)で機能する。これらのデバイスは、CSF圧がバルブシステムの操作圧設定値未満に低下するまでCSFのバルブ貫流を可能にしてCSF圧を制御する。バルブ操作圧を設定する指標として脳室容積やCSF圧などのいくつかのパラメーターを医師が使用可能であったとしても、バルブの選択(固定圧バルブ)又は調整(可変圧バルブ)に関係する試行錯誤がいくつか存在する。これとは対照的に、態様及び実施形態は、バルブの圧力設定値の調整を自動制御するようにフィードバックを提供することにより、臨床医の介入なしで必要ならばいつでもどこでもバルブを調整するように閉ループシステムを提供する第3のパラメーターを用いた自動調整バルブに関する。
【0054】
脳の早期の理解によれば、健常患者では、脳組織が脳室からCSF圧を吸収するであろうから、硬膜下圧はゼロの値を有した。患者が水頭症を発生し脳室の容積が増加すると及び/又はCSF圧の値が増加すると、脳室圧の多くは、脳組織又は実質を介して脳の表面に伝達されるであろうから、硬膜下圧は、正の値を有するであろう。従来の自動調整バルブは、正常者の硬膜下圧がゼロに等しいという考えに基づく。人が水頭症を発生したときのみ、硬膜下圧は0超の値を有するであろうから、これはCSFを排出するバルブの圧力設定値を低下させるために使用されるであろう。
【0055】
ある特定の態様によれば、頭蓋腔の水力学のより最近の理解から、さらには実験的証拠から、健常被験者の硬膜下圧はゼロの値を有していないであろうと結論付け可能である。その代わりに、硬膜下センサーは、2つの圧力Pcsf及びPpの高い方を測定するであろう。それゆえ、自動調整バルブの態様及び実施形態は、少なくとも部分的には、実質圧センサーが実質内静脈圧(Pp)及び脳室内CSF圧(Pcsf)の高い方を測定するという認識に基づく。Pcsfは、CSF中に配置されたセンサーを用いて直接測定可能である。したがって、硬膜下センサープローブからの圧力読み値と、CSF圧センサーからの圧力読み値と、を比較することにより、オブザーバー又はシステムはPpを外挿可能である。
【0056】
より具体的には、出発状態では、高圧水頭症(HPH)の患者は、高Pcsf及び正常Ppを有する(すなわち、Pcsf>Pp)。出発点では、PcsfがPp超であるので、実質センサーはPcsfを測定する。同様にPcsfを測定するCSF圧センサーは、実質センサーと同一の読み値を与えうる。次いで、バルブは、患者のPcsfを徐々に減少できるように設定されうる。Pcsfが減少し始めたとき、実質センサー及びCSFセンサーは、継続して同一の読み値を与えるであろう。しかしながら、患者のPcsfがPp未満に低下すると、実質センサーは、その代わりにPpを測定し始めるであろう。この時点では、実質センサー及びCSFセンサーが異なる圧力読み値を測定しているので、システム又はオブザーバーは、Pcsf<Ppであることを知ることが可能である。バルブは、脳室を標準化させる(すなわち、生理学的正常容積まで排出させる)のに十分な程度に長くこの設定値を保持可能である。次いで、バルブは、Pcsf及びPpを等しくして定常状態平衡を維持するように調整可能である。以下でさらに考察されるように、本明細書に開示される態様及び実施形態は、Pcsf及びPpを等しくすることにより、脳室容積拡大を引き起こす圧力アンバランスを補正して、HPH又はNPHの患者を治療するシステム及び方法を提供する。
【0057】
ある特定の態様はまた、少なくとも部分的には、正常圧水頭症(NPH)が正常Pcsf及び正常値未満Pp(すなわち、Pcsf>Pp)を有する脳内の圧力アンバランスにより特徴付けられるという認識に基づく。本明細書に開示される態様及び実施形態は、Pcsf及びPpを等しくすることにより、正常Pcsf圧下で脳室容積拡大を引き起こす圧力アンバランスを補正して、NPHの患者を治療するシステム及び方法を提供する。非水頭症病態、HPH、及びNPHに対するこれらの圧力関係の概念は、以下の表にまとめられる。
【0058】
【表1】
【0059】
有利なことに、一部の患者は、脳室のサイズが大幅に減少しなかったとしても、顕著に回復する。いくつかの場合には、患者の回復のために、拡大脳室を生成した圧力勾配を単に低下させるだけで十分でありうる。言い換えると、患者の回復のために、脳室を正常容積に完全に低下させる必要がないこともありうる。それゆえ、ある特定の態様は、主に、PcsfとPpとの間の圧力勾配を低下させることに関する。
【0060】
高圧水頭症(HPH)の患者では、Pcsf110は正常値超であり(CSF循環系の部分閉塞に起因して)、且つPp120は正常であり、したがって、Pcsf>Pp。正常圧水頭症(NPH)の患者では、Pcsf110は正常であるが(CSF循環系の閉塞が存在しないため)、Pp120は正常値未満であり、したがって、Pcsf>Pp。
【0061】
図2Aは、医師が、臨床手段(たとえばイメージング)を介して、脳室容積に関して患者の病態を視覚的に評価し、既存の水頭症病態が存在するかを決定するプロセスのグラフ表現を提供する。視覚的イメージングアセスメントは、たとえば、MRI又はCTスキャンを用いて行われうる。臨床評価が水頭症に関連する拡大脳室を示唆した場合、バルブ圧設定値は、脳室容積を低下させるように減少されうる。水頭症病態は、高圧水頭症(HPH)又は正常圧水頭症(NPH)のどちらかとして評価されうる。いずれの場合でも、手動調整は同一である。脳室容積が正常サイズであると決定された場合、水頭症制御システムは、Pcsf圧及びPp圧を測定しうるとともに、水頭症が停止状態になるであろうから、CSF圧及び実質内静脈圧をモニターする「待機」定常状態モードにプログラムされうる。しかしながら、高Pcsf及び高Ppを有する正常脳室容積は、偽腫瘍病態を示唆しうる。この場合には、バルブ圧は、Pcsf及びPpを正常値に減少させるように低下可能である。脳室が「スリット」病態(スリット又は正常脳室未満として知られる)であることをアセスメントが示唆した場合、バルブ圧設定値は、脳室容積を拡大(「標準化」)させるように増加されうる。脳室容積は、脳室が正常サイズに戻るかを評価するために視覚的にモニターされうる。
【0062】
図2Bは、セルフアジャスタブルバルブ用アルゴリズムのグラフ表現を提供する。工程1は、脳室内CSF圧(Pcsf)及び実質内静脈圧(Pp)を測定する電子センサー(すなわち圧力トランスデューサー)が存在しうることを示す。Pcsf圧及びPp圧の測定値は、等しいものでありうるか、又はPcsfがPp以上でありうるか、又はPcsfがPp未満でありうるかを決定するように比較されうる。PcsfがPp未満でない場合(工程2)、Pp測定値は、まだ実際の実質外静脈圧(Pv)でない可能性がある。バルブ圧設定値は、バルブ圧設定値を変化させ、設定時間を待機し、そしてPcsfがPp未満になるまで2つの圧力を測定する閉ループアルゴリズムで低下されうる。PcsfがPp未満になったら(工程3)、Ppが実際の実質外静脈圧(Pv)を反映しうると推定されうる。
【0063】
図2Cは、頭蓋腔の硬膜下部に植え込まれたセンサーが実質内静脈圧(Pp)及び脳脊髄液圧(Pcsf)の高い方を測定するという研究データに基づいて、証拠例を提供する。健常被験者では、これらの2つ圧力は典型的には等しい。これとは対照的に、HPH、NPH、又は偽腫瘍(頭蓋内圧が上昇し且つ心室拡大がない病態)では、硬膜下部のセンサーは、必ずしも実質内静脈圧を測定しうるわけではない。頭蓋腔内の特定可変圧の測定に使用されるセンサー、トランスデューサー、又は他のデバイスは、ある程度、環境内の他の変数をすべて測定する傾向があるので、異なる流体間で最高圧を測定するであろう。上述した3つの病態(すなわち、HPH、NPH、又は偽腫瘍)では、硬膜下領域のセンサーが実質内静脈圧(Pp)の直接測定となるのは、これがPp及びPcsfの高い方の圧力である場合のみであろう。
【0064】
【表2】
【0065】
このことから、測定される圧力は、常に、2つの圧力の高い方であると結論付け可能である。それゆえ、ある特定の態様は、Pp及びPcsfを独立して測定する方法に関する。通常の条件下ではCSF圧が実質内静脈圧を制御するという仮説に基づいて、下記実験が設計され、結果は図2Cのグラフに例示される。
【0066】
下記:
・ 脳室CSF圧(円形ラベルにより表されたプロット)
・ 硬膜下圧(正方形ラベルにより表されたプロット)
・ 上矢状静脈洞圧(三角形ラベルにより表されたプロット)
に関して、正常イヌで同時測定を実施した。
【0067】
圧力を記録しながら、脳室に接続された生理食塩水溶液が充填されたバッグを低下させることにより、脳室CSF圧(丸形ラベルのプロット)を徐々に低下させた。脳室CSF圧(Pcsf)が減少するにつれて、これにより硬膜下センサーの圧力(正方形ラベルのプロット)の等しい低下を生じることが観測された。グラフの左側部分に見られるように、両方の圧力は、上矢状静脈洞圧(三角形ラベルのプロット)の値に達するまで継続して減少し、その時点で、Pcsfは継続して低下するが、硬膜下圧はさらに減少しない(すなわち、SSSはPv未満)。この時点では、硬膜下センサーは、今や、実質内静脈圧(Pp)を測定しており、上矢状静脈洞圧(Pvと略記され、このグラフの中央部分ではPv=Pp)の値未満になれない。グラフの中心部分では、PcsfはPp未満であり、且つ硬膜下センサーはPpを測定する。その後、生理食塩水が充填されたバッグを上昇させることにより脳室CSF圧を増加させると、CSF圧が上矢状静脈洞圧(Pv)の値を超えた後、硬膜下センサーにより測定される実質内静脈圧のみが増加し始める(グラフの右側部分に示される)。
【0068】
図2A及び2Bに例示され以下にさらに説明されるように、実質内静脈圧の真の測定の基本原理は、機械調節システムとして又はセンサーベース電子調節制御システムとしてのどちらかで実現されうる。図3Aは、機械設計自動調整バルブ例を例示する。水頭症アジャスタブルバルブ310は、脳室内に植え込まれうる脳室カテーテル340を含みうるとともに、これはPcsf測定値を提供しうる。機械制御水頭症バルブシステムへのフィードバックとしても使用されうる圧力は、硬膜下圧バッグ305として例証されるように脳の表面の接触圧でありうる。Pcsf圧と硬膜下圧との間の等価性を維持する目的で、自動調整バルブ310は、圧力を機械的に低下させうる。アジャスタブルバルブ310はまた、遠位流出ドレナージカテーテル390に接続されうるとともに、頭蓋の外部に位置しうる。
【0069】
図3Bは、自動調整水頭症バルブシステム例300のデバイスコンポーネントを例示する。以上で考察したように、水頭症アジャスタブルバルブ310は、脳室内に植え込まれうる脳室カテーテル340を含みうる。ある特定の例では、脳室カテーテル340は、脳又は脊髄のクモ膜下腔からのCSFのドレナージを制御するために使用される外部脳室ドレナージシステム又はその一部に接続されうるとともに、これはセンサー出力及び生理学的関連データを提供するデータ処理のディスプレイを備える。電子CSF圧センサー330は、脳室カテーテル340の外表面上に取り付けられうるとともに、この流体腔内のCSF圧(Pcsf)を測定可能でありうる。また、第2の電子圧力センサー320は、脳実質に接触する位置で脳室カテーテル340の外部に取り付けられうるとともに、実質内静脈圧(Pp)を間接測定可能でありうる。アジャスタブルバルブ310は、遠位流出ドレナージカテーテル390に接続されうるとともに、頭蓋の外部に位置しうる。第2のカテーテル又はバルブ通信ケーブル350は、CSF圧(Pcsf)センサー330、実質内静脈圧(Pp)センサー320の電気接続又はワイヤ、及びアジャスタブルバルブ310の圧力設定値を変化させる電子制御シグナルを含みうる。バルブ通信ケーブル350はまた、バルブコントローラー360(植込み電子バルブ制御デバイス及びパワー源を含みうる)に接続されうるとともに、これはバルブ調整の基になる情報を提供しうる。
【0070】
ある特定の実施形態によれば、バルブコントローラー360は、パワー源、マイクロコントローラー、及びワイヤレス通信回路(図3Bには示されていない)を含みうるとともに、図8のブロック図を参照して以下でさらに説明される。パワー源は、一次バッテリー、リチャージャブルバッテリー、又は外部パワー源から連続ワイヤレスパワー転送を受信しうるデバイスでありうる(又はこれらのエレメントの2つ以上の組合せでありうる)。バルブコントローラー360内のマイクロコントローラーは、2つの圧力センサーにより得られた圧力測定値を分析しうるとともに、各測定値に基づいてアジャスタブルバルブ310の設定値を変化させるためにとられる措置を決定しうる。これらのアルゴリズム例は、図6に提示されるフローチャートを参照してさらに詳細に考察される。ワイヤレス通信は、保存された圧力測定値の記録を検索したり、特定操作を実施するように植込みバルブコントローラー360に指示したり、バルブコントローラー360の現在のプログラムされた操作設定値を検索したり、アジャスタブルバルブ310及び植込みバルブコントローラー360の操作設定値を再プログラム(調整)したりする能力を臨床医に提供しうる。バルブコントローラー360の電子部品は、アクティブ植込み型医療用デバイスでよく見受けられるようにハーメチックシールエンクロージャー(チタン又は類似の材料で構築される)内に収容されうる。外部プログラマー380は、植込みバルブコントローラー360から検索された情報をレビューするためにグラフィカルユーザーインターフェースを提供しうる。そのほか、外部プログラマー380は、医師によるレビュー及びアーカイビングのために、さらには医師がバルブコントローラー360内の操作設定値を調整してアジャスタブルバルブ310を制御できるようにプログラムデータを転送するために、ワイヤレス送信データを受信しうるプログラミングワンド370を介してバルブコントローラー360からデータを検索しうる経皮ワイヤレス通信を提供しうる。
【0071】
図3Cは、システムコンポーネントの変形形態を提供する。図3Cに示される例では、コンポーネントはすべて、患者又は介護者により持ち運びされうる追加の外部デバイス又は患者ワイヤレスレシーバー375がある場合を除き、図3Bと同一である。患者ワイヤレスレシーバー375は、植込みバルブコントローラー360からワイヤレス通信を受信しうる。ワイヤレス通信は、バルブコントローラー360により開始され、たとえば、バルブコントローラー360により同定されたアラーム状態の結果として患者ワイヤレスレシーバー375に送信されうる。アラーム状態は、CSF圧(Pcsf)センサー330、実質内圧(Pp)センサー320のどちらかからの圧力測定値、及び/又は脳室内CSF差圧(Pei=Pcsf-Pp)の結果でありうる。アラームはまた、バルブコントローラー360による植込みシステムの自己診断チェック時に同定された状態の結果として発生されうる。
【0072】
他の一実施形態によれば、図4に例示される例の自動調整水頭症バルブシステム400は、アジャスタブルバルブ410と、インテグレートして1つの植込み自動調整バルブ/コントローラーデバイス470に物理的にアセンブル可能なバルブコントローラー460と、を含む。図3Bに示されるデバイスと同様に、バルブコントローラー460の電子部品は、ハーメチックシールチタンエンクロージャー内に収容されうる。アジャスタブルバルブ410は、ポリマーヘッダー415に収容されうる。ドレナージカテーテル480は、ポリマーヘッダー415を介してアジャスタブルバルブ410から出るようにしうる。自動調整バルブ/コントローラーデバイス470はまた、より単純な脳室カテーテル440と、脳室内CSF圧センサー430と実質内静脈圧センサー420とアジャスタブルバルブ410との間のワイヤ接続と、を単一の脳室又は腰椎カテーテル及び圧力センサーワイヤ450としうる。バルブコントローラー460とアジャスタブルバルブ410との間の電気接続は、自動調整バルブ/コントローラーデバイス470内に含まれうる。
【0073】
他の一実施形態の自動調整水頭症バルブシステム500は図5に示される。この例では、自動調整バルブ/コントローラーデバイス560は、依然としてインテグレートされうるが、パワー源及びワイヤレス通信を個別モジュール540として構成しうる。この構成は、より小型の自動調整バルブ/コントローラーデバイス560の利点を提供し、より短いドレナージカテーテル及びセンサーワイヤを自動調整バルブ/コントローラーデバイス560にもたらしうる。この実施形態のパワー源はまた、リチャージャブルバッテリーを含みうるとともに、これはより長期植込み継続期間及び/又はより小さなバッテリー選択肢を可能にする。植込みワイヤレス通信及びリチャージャブルパワー源540は、自動調整バルブ/コントローラーデバイス560から離れて位置しうる。外部バッテリーチャージャー520とワイヤレス通信とリチャージャブルパワー源540との間のワイヤレスパワー転送は、パワーコイル522からワイヤレス通信内のコイル及びリチャージャブルパワー源540までパワーを転送しうる。ワイヤレス通信及びリチャージャブルパワー源540をチャージするパワーは、ポータブル(たとえば、患者ウェアラブル)バッテリー及びパワー制御524デバイスにより提供されうるか、又はACアダプター(図示せず)から提供されうる。
【0074】
あらかじめ決められたインターバルにわたる定常状態モニタリング時の水頭症の再発を決定するプロセス例は、図6にフローチャートとして示される。この例では、図3Bに示されるCSF圧(Pcsf)センサー330及び実質内圧(Pp)センサー320を用いて、CSF圧(Pcsf)110及び実質内静脈圧(Pp)120の測定及び連続モニタリングが実施される。このモニタリングプロセスはまた、水頭症病態発生の可能性がありうるかをいつ決定するかを検討するために、パラメトリック因子として患者の概日リズムさらには患者の変化する姿勢を考慮して1日(又は他の期間)を通してバルブコントローラー360によるPcsfの変動の記録及び同定を可能にしうる。
【0075】
図6を参照して、工程600では、バルブコントローラー360内にコードされたプロセスは、CSF圧(Pcsf)センサー330から圧力測定値を取得することにより開始しうる。Pcsf測定値は、あらかじめ決められたPcsf値と比較されうるとともに、プロセスは、測定されたPcsfが、バルブコントローラー360のメモリー内に保存された患者に対するあらかじめ決められた正常範囲内にあるかを同定する工程305を含みうる。PcsfがPcsfの正常範囲内にある場合、工程610は、Pcsfが前に測定されたPpからの許容差(又はΔ)圧力内にあるかを決定することを含みうる。圧力ΔがPpの正常範囲内にある場合、1日を通してPcsfの変動を考慮するために、Pcsfを工程650で移動平均計算に因子として加えうる。次いで、プロセスは、その次のPcsf測定600を行う前に、プログラムされたPcsf測定遅延時間(たとえば1時間)を待機しうる655。工程605でPcsf値が患者の正常Pcsf範囲内にないと決定された場合、工程620は、最後のPp測定以降の十分な時間インターバル(たとえば3時間)が存在するかを決定することを含みうる。プロセスはまた、Ppに対する差圧の増加が異常な測定(たとえばノイズ)が原因でないことを検証するために、Pcsfの複数の逐次測定を行うことを含みうる(フローチャートには示されていない)。Pp測定インターバルをPcsf測定インターバルよりも長くすれば、工程620でこのより長いインターバルにわたるPcsfの検証は、Pcsfが範囲外でありうることを確認する能力を測定プロセスに提供しうる。Pcsf測定に類似して、繰返し測定による確認は、Pp測定に移行する前にいずれの測定ノイズアーチファクトもフィルター除去しうる。繰返し測定による妥当な圧力値の確認はまた、有意な圧力偏差が潜在的に起こりうると推定されるとき、プロセス全体にわたり他の条件に適用しうる。Pp測定インターバルが工程620で達成されない場合、Pcsf測定値は、工程625で移動平均計算に因子として加えうるとともに、プロセスは、工程600でその次のPcsf測定を行う前に特定Pcsf測定遅延時間を待機しうる630。工程620でPp測定インターバルが達成された場合、工程635でPpが測定されうる。Ppセンサー330からの測定値が実際の実質内静脈圧を表しうるかを決定する方法例は、図7に関連して以下でさらに考察される。工程640で決定したときにPpがPcsfの許容Δ限界内にある場合、正常非水頭症病態が同定されうるとともに、Pp測定値をPp移動平均の計算に加えうる645。次いで、プロセスは、工程655に移行してその次のPcsf測定遅延を待機する。Pp測定値がPcsfの許容Δ内にない場合640、バルブコントローラー360は、Pp値を記録しうるとともに、工程615で病態を水頭症として同定しうる。そしてワイヤレス通信により患者にアラートを出してから治療プロセスに移行しうる。医師はまた、患者に圧力測定偏差のアラートを出して医師と連絡をとるように指示すべくバルブコントローラー360をプログラムしうる。測定データは、レビューのために医師にリモート送信されうる。医師は、図2Aを参照して以上で説明した臨床評価をさらに行って水頭症病態が再発したかを決定するために、リモートでバルブコントローラー360を再プログラムするか又は医療施設(病院の事務所)に行くように患者を要求するかのどちらかを行いうる。
【0076】
患者が非水頭症病態に戻ったら(すなわち、脳室が標準化されたら)、医師は、モニタリング及び記録を継続して、患者の毎日の概日リズムの指標となる平均圧並びに最小及び最大範囲を同定しうる。ある特定の実施形態によれば、バルブコントローラー360の主目的は、1日を通してさらには患者の体位(姿勢)の変化に関連する変動があっても、PcsfとPpとの間の圧力勾配を同一に保つことである。
【0077】
一実施形態によれば、水頭症を有する患者に対してアジャスタブルバルブ310を最初にプログラムするために、医師は、あらかじめプログラムされたデフォルト値を使用しうるか、前の測定圧データ及び関連トレンドに基づく患者の前病歴に基づいて値を選択するかのどちらかを行いうる。
【0078】
ある特定の実施形態では、実質内静脈圧(Pp)の測定値を得る方法は、実質内圧(Pp)センサー320が実質内静脈圧(Pp)及び脳室内CSF圧(Pcsf)の高い方を測定すると仮定する。Ppは、PcsfがPp測定値未満に低下するまで、アジャスタブルバルブ310の圧力設定値を低下させながら、Pcsfを追跡可能である。Ppの測定は、Pcsfを低下させることにより水頭症の治療をもたらしうる。
【0079】
制御プロセス例は図7に示される。制御プロセスは、植込みバルブコントローラー360中にファームウェアとして常駐しうる。プロセスは、2つの区画間の差圧ひいては水頭症病態の潜在的存在の決定に使用しうる2つの圧力を測定することを含みうる。CSF圧(Pcsf)センサー330及び実質内圧(Pp)センサー320からの測定値は、高圧水頭症(HPH)の決定時に実質内静脈圧(Pp)の間接測定値を提供しうる。
【0080】
以上で考察したように、圧力測定は、アジャスタブルバルブ310に接続された脳室カテーテル340上に取り付けられうる電子圧力センサーを用いて行われうる。工程700から出発して、Pcsfが測定されうるとともに、工程705でベースライン値としてPpの測定が行われる。バルブコントローラー360に常駐するアルゴリズムは、工程710であらかじめ決められた圧力(たとえば10mmH2O)だけバルブ圧設定値を低下させうる。調整されたバルブ圧設定値は、医師により設定されうるか、又はあらかじめプログラムされたデフォルト値でありうる。次いで、バルブコントローラー360は、圧力を安定化させるために工程715で特定時間インターバル(たとえば1時間)を待機しうるとともに、Pcsf及びPpの2つの測定を繰り返しうる。2つの圧力測定値は、工程720で比較されうるとともに、PcsfがPpに等しい場合、バルブコントローラー360は、あらかじめ決められた設定圧力(たとえば10mmH2O)だけアジャスタブルバルブ310の圧力設定値を低下させうる。そして次いで再度2つの圧力を測定し評価するために他の特定時間インターバル(たとえば1時間)を待機しうる。2つの圧力が等しくなくPcsfがPp未満である場合、プロセスは、測定されたPp値が工程730で真の実質内静脈圧Ppでありうることを同定することを含みうる。工程735及び740では、プロセスは、工程740でPcsfとPpとの間の差が第2のあらかじめ決められた量(たとえば20mmH2O)超になるまでアジャスタブルバルブ310のバルブ圧設定値を低下させることにより、継続してPcsf及びPp測定を行うことを含みうる。次いで、バルブコントローラー360は、工程745でPp値を記録しうる。プロセスは、Pcsf及びPpが工程750で正常状態への回復の指標となる特定等価範囲内にもう一度なりうるように、アジャスタブルバルブ310の圧力設定値の増加に移行することを含みうるとともに、工程760でバルブ圧設定値を維持しうる。
【0081】
図8は、植込みバルブコントローラー805と、ユーザーインターフェースを提供しうるプログラマー845と外部ワイヤレス通信855モジュールとを含む外部機器と、を含む自動調整バルブシステム例800の電子ブロック図を提供する。図8に例示される例では、植込みバルブコントローラー805は小サイズであることが望まれうると仮定され、したがって、図5にも示されるように植込みパワー源はリチャージャブルバッテリー835として同定される。植込みリチャージャブルバッテリー835は、当技術分野で公知の経皮ワイヤレスパワー転送法により、外部パワー源リチャージャー840からリチャージされうる。外部プログラマー845機器と植込みバルブコントローラー805との間のワイヤレス通信(855及び830)は、医師が記録された圧力データをレビューしたり植込みバルブコントローラー805のプログラムされた設定値をレビューしたりできるようにしうるとともに、植込みバルブコントローラー805の操作設定値を調整する能力を医師に提供しうる。ワイヤレス通信(855及び830)は、近距離電磁形態又は遠距離RFテレメトリー、たとえば、MICS(Medical Implant Communication Services)法でありうるとともに、両者とも当技術分野で公知である。
【0082】
植込みバルブコントローラー805は、Pcsf圧やPp圧860などの圧力を記録するためのデータ取得モジュール825を含みうる。データ取得モジュール825は、増幅器826、フィルター、アナログ-ディジタル(A/D)コンバーター828などの回路を含みうる。データ取得モジュール825からのシグナルは、図6及び図7のフローチャートに記載のプロセスを実現するために、ファームウェアアルゴリズムを実行しうるマイクロコントローラー810により解釈されうる。植込みバルブコントローラー805は、操作ファームウェア(たとえばアルゴリズム)を含有しうるフラッシュメモリーなどのデータストレージ820をさらに含みうるとともに、測定されたデータ及び/又は記録された生理学的データを保存しうる。マイクロコントローラー810はまた、自動調整バルブ/コントローラー560デバイスの圧力設定値を変化させるために、図5の植込み自動調整バルブ/コントローラー560デバイス内の水頭症バルブにシグナルを送信しうるバルブ制御回路815にインターフェースしうる。そのほか、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いた患者のイメージングなどの強磁場に意図的にバルブを暴露する前、プログラマー845は、自動調整バルブ/コントローラー560デバイスのプログラムされた操作圧を医師がレビューできるように、植込みバルブコントローラー805からのデータ検索に使用されうる。MRIによるイメージングの後、プログラマー845は、植込みバルブコントローラー805からデータを検索するために再度使用されうるとともに、プレMRI操作圧設定値に対して植込みバルブコントローラー805を自動で再プログラムしうる。さらに、プログラマー845はまた、強磁場に暴露されたときの偶発的調整状況でプログラムされたと疑われる設定値に対して、植込みバルブコントローラー805の操作圧を復元するために使用されうる植込みバルブコントローラー805の最後のプログラムされた設定値を保存しうる。
【0083】
以上で考察したように、ある特定の例では、植込み自動調整バルブ及び任意選択的に植込みバルブコントローラーが使用されうるが、他の例では、自動調整バルブ及びバルブコントローラーは患者の外部に残存しうる。たとえば、以上で考察したように、自動調整バルブは、外部脳室ドレナージシステムの一部でありうる植込み脳室又は腰椎カテーテルに接続可能である。そのため、自動調整バルブは、CSFを患者の身体内の位置に、又は外部デバイスに、たとえば、脳室ドレナージカテーテルに接続されたバッグ又は他の流体容器に排出するように構成可能である。センサー(Pcsf及び/又は実質内圧(Pp)センサー)の出力は、ディスプレイスクリーンに直接出力されうるか、又は患者の臨床アセスメントを容易にする生理学的パラメーターを表示するようにアルゴリズムを用いて処理されうる。
【0084】
図9Aは、自動調整バルブで治療された水頭症患者からの一群の好適な圧力読み値に対して図7に例示されるプロセス例の時間ベースグラフ表現を例示する。第1の相900では、Pp測定値は、PcsfがPp以上でありうるようにPcsf測定値を追跡しうる。第2の相905では、Pp測定値は、バルブの圧力設定値を低下させながら継続してPcsf測定値を追跡しうる。Pcsf測定値が工程910のようにPpの測定値未満に低下すると、Ppの測定値は、真の実質内静脈圧(Pp)を示唆しうると推定されうる。第3の相915では、バルブ圧設定値は、Pcsfが所望の圧力を表して水頭症病態を低下させるまで継続して減少されうる。次いで、工程920では、アジャスタブルバルブ310の圧力設定値は、Pcsf及びPpがもう一度等しくなって、定常状態に戻り、正常脳室容積を維持しつつ頭蓋内圧の平衡に達するまで増加されうる。
【0085】
図9B及び図9Cは、それぞれ、HPH及びNPHの治療で追従しうる工程を例示する。以上で考察したように、自動調整バルブを裏付ける原理は、PcsfとPpとの間の勾配が脳室容積を制御するものであるということである。これらの2つのパラメーターを測定してPcsfをPpに対して上方又は下方に調整することにより、アジャスタブルバルブ310は、これらの2つの圧力間の勾配を制御して脳室容積を制御しうる。
【0086】
図9Bに示される第1の例では、両センサーが工程1で最高測定圧値930で追跡するときに測定されたPpが同一値で追跡してPcsfは最初に220mmH2Oで測定されうる。PcsfはPp超でありうるが、両方センサーは2つの実際の圧力の高い方を測定しうる。所望の正常PcsfはPpに等しいものでありうる。工程2でアジャスタブルバルブ310の圧力設定値を徐々に低下させることにより(Pcsf値を低下させうる)、Pp測定値は継続してPcsfを追跡しうる。工程3でPcsf及びPpが両方とも80mmH2Oの真のPvに達すると(上矢状静脈洞(SSS)の圧力を表す)、Pp測定値はさらに低下されることはないが、Pcsfのさらなる低下によりCSFが脳室から排出されうるとともに935、工程4aで生じる脳室容積を低下させうる。脳室が正常容積に達しうる特定インターバル(たとえば1時間)後、次いで、Pcsf及びPpがもう一度等しくなってPcsfが目標Pp(工程4b)をわずかに超えるまで、バルブ圧設定値は増加されうる。次いで、頭蓋内圧の平衡に達して正常脳室容積を維持することにより、定常状態条件が維持されうるとともに940、PcsfがPp及びPvに等しくなる(工程4c)。
【0087】
図9Cに例示される第2の例では、Pcsfは最初に150mmH2Oの正常値で測定されうるとともに、PpはPcsf値を追跡する。実際のPp値は80mmH2Oではより低く、結果としてNPHをもたらす。工程1のHPHと同様に、両センサーは最高測定圧値945で追跡するので、測定されたPpは同一値でPcsfを追跡しうる。工程2でバルブ圧設定値を徐々に低下させることにより(Pcsfを低下させうる)、Pp測定値は同様に継続してPcsfを追跡しうる。工程3でPcsf圧及びPp圧が80mmH2Oの真のPvに達すると、Ppはさらに低下されることはないが、Pcsfのさらなる低下によりCSFが脳室から排出されうるとともに950、工程4aで生じる脳室容積を低下させうる。特定インターバル(たとえば1時間)後、次いで、Pcsf及びPpがもう一度等しくなってPcsfが目標Pp(工程4b)をわずかに超えるまで、バルブ圧設定値は増加されうる。次いで、頭蓋内圧の平衡に達して正常脳室容積を維持することにより、定常状態条件が維持されうるとともに955、PcsfがPp及びPvに等しくなる(工程4c)。
【0088】
図9B及び図9Cの両例では、PcsfとPpとの間の差圧は、水頭症に関連する脳室容積病態を低下させる主因子である。
【0089】
いくつかの態様の少なくとも一実施形態を以上で説明してきたが、当業者であれば各種変更、修正、及び改善が容易に行われることを認識すべきである。かかる変更、修正、及び改善は、本開示の一部であることが意図されるとともに、本発明の範囲内であることが意図される。本明細書で考察される方法及び装置の実施形態は、以上の説明に示される又は添付の図面に例示されるコンポーネントの構成及び配置の詳細に適用が限定されるもではないことを認識すべきである。本方法及び装置は、他の実施形態で実現可能であるとともに、各種方法で実践又は実施可能である。具体的な実現形態の例は、単に例示を目的として本明細書に提供されたものにすぎず、限定を意図するものでない。また、本明細書で用いられる表現及び用語は、説明を目的としたものであり、限定するものとみなすべきではない。「including(~を含む)」、「comprising(~を含む)」、「having(~を有する)」、「containing(~を含有する)」、「involving(~を含む)」、及びそれらの変化形の本明細書での使用は、それらの後に列挙されたアイテム及びそれらの均等物さらには追加のアイテムを包含することが意図される。「or(又は)」への参照は、包括的と解釈されうるので、「or(又は)」を用いて記載された用語はいずれも、記載の用語の1つ、2つ以上、及びすべてのいずれをも示唆しうる。それゆえ、以上の説明及び図面は単なる例にすぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適正構成物及びそれらの均等物から決定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】