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特表2022-505714腫瘍細胞の選択的イメージングのための融合性リポソーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】腫瘍細胞の選択的イメージングのための融合性リポソーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20220106BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20220106BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220106BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20220106BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K47/62
A61K51/04 200
A61K51/02 200
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/61
A61K45/00 101
A61K47/60
A61P35/00
A61K47/58
A61K49/00
A61K49/18
A61K51/02 100
A61K51/04 300
A61K51/12 200
A61K9/127 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522360
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 IL2019051153
(87)【国際公開番号】W WO2020084623
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/749,794
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519374944
【氏名又は名称】エイピーエイ- アドバンスト・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】APA- ADVANCED TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌデルマン、イーゴリ
(72)【発明者】
【氏名】カネティ、ガロズ
(72)【発明者】
【氏名】ミリツィン、ルスラナ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドソベル、アビ
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー、アビ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルション、デビッド
(72)【発明者】
【氏名】アルカレー、ハイム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA12
4C084AA17
4C084MA24
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085BB11
4C085HH03
4C085HH07
4C085HH11
4C085JJ05
4C085KB02
4C085KB05
4C085KB07
4C085KB08
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB18
4C085KB19
4C085KB26
4C085KB46
4C085KB52
4C085KB55
4C085KB56
4C085KB78
(57)【要約】
【課題】融合性リポソーム及びそれを用いた癌の処置方法を提供する。
【解決手段】 内部の水性コンパートメント内にあるまたはリポソーム膜に結合されている、検出可能な作用物質および必要に応じて細胞傷害性薬物を含み、前記融合性リポソームは、14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含み、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む、融合性リポソームを調製する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の水性コンパートメント内にあるまたはリポソーム膜に結合されている、検出可能な作用物質および必要に応じて細胞傷害性薬物を含む融合性リポソームであって、
前記融合性リポソームは、14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含み、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;
前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む、融合性リポソーム。
【請求項2】
前記検出可能な作用物質が、蛍光プローブ、磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤および光力学剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出可能な作用物質が、(a)cy3、cy5、cy5.5、cy7 cy9、FITC、フルオレセイン、alexa fluor790、alexa fluor750、alexa fluor700、alexa fluor680、alexa fluor660、alexa fluor647、alexa fluor633、alexa fluor594、585nm~800nmの範囲のQdot、蛍光プロトポルフィリンオリゴマー、イソシアニングリーン(ICG)から選択される蛍光プローブ;または
(b)フルオレセインアナログ(例えば、ジアセテート修飾アナログ)、クマリンアナログ(例えば、py+BC690-(1-メチル-4-(2-オキソ-8-(ピロリジン-1-イル)-2H-ベンゾ[g]クロメン-3-イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート))、CFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)、ローダミンアナログ(例えば、gGlu-HMRG(γ-グルタミルヒドロキシメチルローダミングリーン))、クルクミノイドジフルオロボロンベースの腫瘍標的化γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって活性化可能な)蛍光プローブ(Glu-DFB)およびインドシアニンアナログ(例えば、AP-Glu(3H-インドリウム、2-[(1E)-2-[4-[[4-[[(4S)-4-アミノ-4-カルボキシ-1-オキソブチル]アミノ]フェニル]メトキシ]フェニル]エテニル]-1-(5-カルボキシペンチル)-3,3-ジメチル-,ブロミド(1:1)、ならびに他の近赤外蛍光活性化分子から選択される活性化可能な蛍光プローブ
である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記MRI用の造影剤が、酸化鉄造影剤(例えば、磁鉄鉱、Fe);硫酸バリウム;およびガドリニウム造影剤(例えば、ガドテレート、ガドジアミド、ガドベネート、ガドペンテテート、ガドブトロール)から選択されるか;CT用の造影剤が、金属元素(例えば、ヨウ素、ビスマス、臭素、タンタル、金、白金、イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、タングステン、インジウムおよびルテチウム)から選択されるか;または前記PET用の造影剤が、64Cu-PSTM、18F-FDG、18F-フッ化物、18F-フルオロミソニダゾールおよびガリウムから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質分子の少なくとも1つが、特異的結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、前記結合対の第1の官能基で官能化されている、請求項1に記載の融合性リポソーム。
【請求項6】
前記融合性リポソームが、前記脂質二重層と前記第1の官能基との間に第1のスペーサーをさらに含む、請求項5に記載の融合性リポソーム。
【請求項7】
各々が、前記相補的な第2の官能基で官能化されており、かつ前記第2の官能基を介して前記第1の官能基に結合されている、同一のもしくは異なる追加の検出可能な作用物質または免疫系活性化剤をさらに含み、ここで、前記同一のまたは異なる追加の検出可能な作用物質は、蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される、請求項5に記載の融合性リポソーム。
【請求項8】
前記免疫系活性化剤が、抗CD3抗体、抗CD8抗体、抗NKG2D抗体またはそれらの組み合わせ、CD3とCD8の両方に結合することができる抗体、およびCD3とNKG2Dの両方に結合することができる抗体から選択される作用物質である、請求項7に記載の融合性リポソーム。
【請求項9】
前記検出可能な作用物質または免疫系活性化剤が、融合性リポソームの外葉において結合されている、請求項7に記載の融合性リポソーム。
【請求項10】
前記検出可能な作用物質または免疫系活性化剤が、前記検出可能な作用物質または免疫系活性化剤と前記第2の官能基との間に第2のスペーサーをさらに含む、請求項7に記載の融合性リポソーム。
【請求項11】
前記第1のスペーサーが、PEG、(C-C12)アルキル、フェノール酸、安息香酸またはナフトエ モノ、ジ-またはトリカルボン酸、テトラヒドロピレンモノ-、ジ-もしくはトリ-カルボン酸またはそれらの塩、環状エーテル、グルタル酸、コハク酸、ムコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、ならびに約2~20アミノ酸残基長、例えば、3アミノ酸残基長のポリGlyペプチドなどのペプチドからなる群より選択される、請求項6に記載の融合性リポソーム。
【請求項12】
前記第1または第2のスペーサーが、約106Da~約4kDaの分子量のPEGである、請求項11に記載の融合性リポソーム。
【請求項13】
PEGが、約194Daの分子量のPEG(PEG)である、請求項12に記載の融合性リポソーム。
【請求項14】
前記第1のスペーサーが、(C-C12)アルキル、好ましくは、ヘプチルまたはドデカノイルである、請求項11に記載の融合性リポソーム。
【請求項15】
カチオン性基を含む脂質分子の前記少なくとも1つが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(18:0DDAB)およびN1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチル-カルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)から選択される、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項16】
カチオン性基を含む前記脂質分子の前記少なくとも1つが、DOTAPである、請求項15に記載の融合性リポソーム。
【請求項17】
前記カチオン性合成高分子が、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートから選択される、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項18】
前記カチオン性天然高分子が、キトサンである、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項19】
前記カチオン性アミノ糖が、グルコサミンである、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項20】
前記カチオン性ポリアミノ酸が、ポリ(L-リジン)、ポリ(L-アルギニン)、ポリ(D-リジン)、ポリ(D-アルギニン)、ポリ(L-オルニチン)およびポリ(D-オルニチン)から選択される、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項21】
前記両親媒性の癌細胞結合ペプチドが、セクロピンA;セクロピンA 1-8;および環状CNGRCから選択される、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項22】
前記脂質分子の前記少なくとも1つが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるリン脂質であり、それらのそれぞれ1つが、1つまたは2つの同一のまたは異なる脂肪酸残基を含み、前記ホスファチジル部分における脂肪酸残基は、飽和、一不飽和または多価不飽和であり、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の炭素という炭素鎖長(例えば、リン脂質配置およびリゾリン脂質配置の、ミリストイル、ステアロイル、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル(共役リノレノイルを含む)、アラキドノイルおよびそれらの組み合わせ)を有する、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項23】
前記リン脂質が、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)および1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE);1,2-ジミリストイル-3-ホスファチジルコリン(DMPC);1,2-ジステアロイル-3-ホスファチジルコリン(DSPC);1,2-ジミリストレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(14:1(Δ9-Cis)PC);1,2-ジミリステライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(14:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジパルミトレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:1(Δ9-Cis)PC);1,2-ジパルミテライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジペトロセレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1(Δ6-Cis)PC);1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルコリン(18:1(Δ9-Cis)PC(DOPC));1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:2(Cis)PC(DLPC));1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:3(Cis)PC);1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(20:1(Cis)PC);1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(20:4(Cis)PC);1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(22:6(Cis)PC);1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(22:1(Cis)PC);1,2-ジネルボノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(24:1(Cis)PC);1,2-ジミリストイル-3--3-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE);1,2-ジパルミトイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE);1,2-ジステアロイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE);1,2-ジミリストイル-3-ホスファチジルセリン(DMPS);1,2-ジパルミトイル-3-ホスファチジルセリン(DPPS);パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE);および1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルセリン(DOPS)からなる群より選択される、請求項22に記載の融合性リポソーム。
【請求項24】
前記リン脂質が、DOPC、POPC、DMPC、DPPC、DOPE、POPE、DSPE、DMPEおよびDPPEから選択される、請求項23に記載の融合性リポソーム。
【請求項25】
前記安定化部分が、約106Da~約4kDaの分子量のPEGである、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項26】
PEGが、約2kDaの分子量である、請求項25に記載の融合性リポソーム。
【請求項27】
前記安定化部分が、切断可能なペプチドリンカーを介して前記脂質分子の少なくとも1つに接続されている、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項28】
前記特異的結合対の前記第1の官能基が、前記結合対の前記相補的な第2の官能基と共有結合を形成することができる、請求項4~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項29】
前記特異的結合対の前記第1の官能基が、クリックケミストリー反応を介して前記結合対の前記相補的な第2の官能基と共有結合を形成することができる、請求項28に記載の融合性リポソーム。
【請求項30】
i)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルキンまたはホスフィンであり、前記結合対の第2の官能基が、アジドであるか、またはその逆であるか;ii)前記特異的結合対の第1の官能基が、シクロアルケン、シクロアルキン、シクロプロパン、イソニトリル(イソシアニド)またはビニルボロン酸であり、前記結合対の第2の官能基が、テトラジンであるか、またはその逆であるか;iii)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルキンまたはマレイミドであり、前記結合対の第2の官能基が、チオールであるか、またはその逆であるか;iv)前記特異的結合対の第1の官能基が、共役ジエンであり、前記結合対の第2の官能基が、置換アルケンであるか、またはその逆であるか;v)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルケン、アルキンまたはアセチレン化銅であり、前記結合対の第2の官能基が、ニトロンであるか、またはその逆であるか;vi)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルデヒドまたはケトンであり、前記結合対の第2の官能基が、アルコキシアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンまたはヒドラジドであるか、またはその逆であるか;またはvii)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルデヒド、ケトン、イソチオシアネート、カルボン酸またはその誘導体(例えば、エステル、無水物、ハロゲン化アシル、トシルおよびN-ヒドロスクシンイミド(NHS))であり、前記結合対の第2の官能基が、アミンであるか、またはその逆であるか;viii)官能基である、請求項28に記載の融合性リポソーム。
【請求項31】
前記特異的結合対が、アルキン-アジドである、請求項30に記載の融合性リポソーム。
【請求項32】
前記特異的結合対の前記第1の官能基が、前記結合対の前記相補的な第2の官能基と非共有結合を形成することができる、請求項4~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項33】
前記特異的結合対の第1の官能基が、ビオチンであり、前記結合対の第2の官能基が、ビオチン結合ペプチドまたはビオチン結合タンパク質から選択される結合パートナーであるか、またはその逆である、請求項32に記載の融合性リポソーム。
【請求項34】
前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジンおよび抗ビオチン抗体から選択される、請求項33に記載の融合性リポソーム。
【請求項35】
前記ビオチン結合ペプチドが、AEGEFCSWAPPKASCGDPAK(配列番号1)、CSWRPPFRAVC(配列番号2)、CSWAPPFKASC(配列番号3)およびCNWTPPFKTRC(配列番号4)から選択される、請求項34に記載の融合性リポソーム。
【請求項36】
前記融合性リポソームが、コレステロール(CHO)またはその誘導体をさらに含む、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項37】
前記融合性リポソームが、DOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPEまたはDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2Kおよび必要に応じてコレステロールを含み、ここで、PEG2Kは、約2kDaの分子量を有するPEGを表し、DOPCの相対モル量は、最大約80%であり、DOTAPの相対モル量は、最大約80%であり、DSPE-PEG2Kの相対モル量は、最大約20%であり、DOPEの相対モル量は、最大約20%であり、コレステロールの相対モル量は、最大約40%である、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項38】
前記融合性リポソームが、
(iii)52.5:35:0.6:10、52.5:35:1.25:10、52.5:35:2.5:10、52.5:35:5:10、52.5:35:0.6:5、52.5:35:1.25:5、52.5:35:2.5:5、52.5:35:5:5、65:20:5:10、50:35:5:10、52.5:35:1.25:7、52.5:35:1.25:5または52.5:35:2.5:7というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPE;または
(iv)52.5:35:0.6、52.5:35:1.25、52.5:35:2.5、52.5:35:5、52.5:35:0.6、52.5:35:1.25、52.5:35:2.5、52.5:35:5、65:20:5、50:35:5、52.5:35:1.25、52.5:35:1.25または52.5:35:2.5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K
を含む、請求項37に記載の融合性リポソーム。
【請求項39】
前記融合性リポソームが、52.5:35:2.5:5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPE;または52.5:35:2.5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2Kを含む、請求項38に記載の融合性リポソーム。
【請求項40】
前記リポソームの融解温度(Tm)が、45℃未満であり、その温度において、前記融合性リポソームが、非結晶転移相で維持されることにより、リポソームと細胞膜との融合に必要な膜の流動性がもたらされる、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項41】
前記融合性リポソームが、最大200nmのサイズ、例えば、約15nm~約200nm、約20nm~約100nm、約50nm~約150nm、約50nm~約90nm、約80nm~約100nm、約110nm~約200nm、例えば、約100nmを有する、請求項1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【請求項42】
癌細胞を選択的に検出するための方法であって、前記癌細胞を請求項1に記載の融合性リポソームと接触させる工程;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出する工程;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程を含む、方法。
【請求項43】
癌患者における癌細胞の選択的な検出が、ナノ粒子に含められた制癌剤による癌の処置に対する前記癌患者の応答性を示唆する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
応答性と判断された癌患者が、前記制癌剤を含むナノ粒子で処置される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
癌細胞を選択的に検出するための方法であって、(a)前記癌細胞を請求項5に記載の官能化された融合性リポソームと接触させる工程;(b)前記癌細胞を、蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質と接触させる工程であって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、工程;および(c)前記検出可能な作用物質が蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む、方法。
【請求項46】
前記検出可能な作用物質が、(a)cy3、cy5、cy5.5、cy7 cy9、FITC、フルオレセイン、alexa fluor790、alexa fluor750、alexa fluor700、alexa fluor680、alexa fluor660、alexa fluor647、alexa fluor633、alexa fluor594、585nm~800nmの範囲のQdot、蛍光プロトポルフィリンオリゴマー、イソシアニングリーン(ICG)から選択される蛍光プローブ;または(b)フルオレセインアナログ(例えば、ジアセテート修飾アナログ)、クマリンアナログ(例えば、py+BC690-(1-メチル-4-(2-オキソ-8-(ピロリジン-1-イル)-2H-ベンゾ[g]クロメン-3-イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート))、CFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)、ローダミンアナログ(例えば、gGlu-HMRG(γ-グルタミルヒドロキシメチルローダミングリーン))、クルクミノイドジフルオロボロンベースの腫瘍標的化γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって活性化可能な)蛍光プローブ(Glu-DFB)およびインドシアニンアナログ(例えば、AP-Glu(3H-インドリウム、2-[(1E)-2-[4-[[4-[[(4S)-4-アミノ-4-カルボキシ-1-オキソブチル]アミノ]フェニル]メトキシ]フェニル]エテニル]-1-(5-カルボキシペンチル)-3,3-ジメチル-,ブロミド(1:1))から選択される活性化可能な蛍光プローブである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
癌患者における癌細胞の選択的な検出が、ナノ粒子に含められた制癌剤による癌の処置に対する前記癌患者の応答性を示唆する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
応答性と判断された癌患者が、前記制癌剤を含むナノ粒子で処置される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
蛍光ガイド手術または標的化放射線治療によって癌を処置するための方法であって、前記方法は、請求項42又は45に記載の方法および癌細胞を含む腫瘍を除去する工程を含む、方法。
【請求項50】
前記癌患者が、皮膚癌などの腫瘍のイメージングまたは全身イメージングを受けており、前記方法が、前記融合性リポソームおよび必要に応じて前記官能化された検出可能な作用物質を全身投与する工程または局所的に適用する工程;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって前記蛍光プローブを検出し、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、皮膚などの器官の領域または全身を走査し、それにより、腫瘍の位置および縁を明確化する工程を含む、請求項42又は45に記載の方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法および癌細胞を含む腫瘍を除去する工程を含む、癌を処置するための方法。
【請求項52】
癌細胞の選択的検出を必要とする癌患者から取り出された組織または血液由来画分における癌細胞をエキソサイチュで選択的に検出するための請求項42または45に記載の方法であって、前記方法は、前記融合性リポソーム、および必要に応じて、官能化された蛍光プローブを、全身投与するかまたは前記組織もしくは血液由来画分に適用する工程、ならびに前記組織または血液由来画分に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって前記蛍光プローブを検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む、請求項42または45に記載の方法。
【請求項53】
前記組織が、皮膚であり、前記癌患者が、皮膚癌を除去するための手術(モース術)を受けており、前記手術は、前記皮膚組織が、検出可能な癌細胞を有さなくなるまで反復される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記血液由来画分中の循環腫瘍細胞(CTC)を選択的に検出するための、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌などの乳癌、メラノーマ、肺癌、甲状腺癌および前立腺癌の群から選択される、請求項42又は45のいずれか1つに記載の方法。
【請求項56】
癌細胞を選択的に検出し、癌を処置するための、請求項42または45に記載の方法であって、前記方法は、前記融合性リポソームおよび必要に応じて前記官能化された検出可能な作用物質を全身投与するかまたは局所的に適用する工程であって、ここで、前記融合性リポソームは、前記検出可能な作用物質ならびに細胞傷害剤および/または免疫系活性化剤を含む、工程;前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって前記蛍光プローブを検出する工程、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程;および必要に応じて、前記検出可能な作用物質を長時間繰り返し検出することによって、処置の応答をモニタリングする工程を含む、請求項42または45に記載の方法。
【請求項57】
(a)14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含み、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドを含み;
前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含み、 該脂質分子の少なくとも1つが、特異的結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、前記結合対の第1の官能基で官能化されている、融合性リポソームを含む第1の容器;
(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質を含む第2の容器であって、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、第2の容器;および
(c)(a)の融合性リポソームおよび続いて(b)の検出可能な作用物質を癌患者に投与する工程を含む癌細胞を選択的に検出するための方法についての指示を含むパンフレットを備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、癌細胞を選択的に検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光検出(国際公開第03/057259号パンフレット、米国特許第8,956,591号明細書、米国特許第9,289,517号明細書)、核磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)および超音波イメージングは、癌病変を画像化する方法として一般的に用いられる。しかしながら、これらの手法は、腫瘍の部位を間接的に標識するものであり、癌細胞自体の選択的な標識を促進するわけではない。ゆえに、癌細胞の選択的イメージングの方法が緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/057259号パンフレット
【特許文献2】米国特許第8,956,591号明細書
【特許文献3】米国特許第9,289,517号明細書
【発明の概要】
【0004】
PCT出願番号PCT/IL2018/050434(本明細書中に完全に開示されたかのように参照により援用される)には、融合性リポソームおよび癌を処置する際のそれらの使用が開示されている。この癌選択的な融合性リポソームは、全身投与することができ、インビボ条件下において癌細胞と融合すると本明細書中で示される。この癌選択的なリポソームはさらに、検出可能な部分を身体内の癌の部位に運ぶためにも使用することができる。癌細胞と選択的に融合する(かつ正常細胞とは融合しない)というこれらのリポソームの固有の能力を、癌細胞を選択的に検出するために本発明において利用する。
【0005】
1つの態様において、本発明は、内部の水性コンパートメント内にあるまたはリポソーム膜に結合されている、検出可能な作用物質および必要に応じて細胞傷害性薬物を含む融合性リポソームを提供し、
ここで、前記融合性リポソームは、14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含み、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;
前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む。
【0006】
追加の態様において、本発明は、癌細胞を選択的に検出するための方法を提供し、その方法は、前記癌細胞を本明細書中で定義される融合性リポソームと接触させる工程;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、励起した蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出する工程;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程を含む。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、癌細胞を選択的に検出するための方法を提供し、その方法は、(a)官能化された融合性リポソームに関する上記の実施形態のいずれか1つに係る官能化された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させる工程;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質と前記癌細胞を接触させる工程であって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、工程;および(c)前記検出可能な作用物質が蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む。
【0008】
なおも追加の態様において、本発明は、蛍光ガイド手術または標的化放射線治療によって癌を処置するための方法を提供し、前記方法は、上記に定義された癌細胞を選択的に検出するための方法および癌細胞を含む腫瘍を除去するための方法のうちの1つを含む。
【0009】
上記に定義された癌細胞を選択的に検出するための方法のいずれか1つのある特定の実施形態において、癌患者は、皮膚癌などの腫瘍のイメージングまたは全身イメージングを受けており、その方法または使用は、融合性リポソーム、および必要に応じて、官能化された検出可能な作用物質を全身投与するかまたは局所的に適用すること;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、皮膚などの器官の領域または全身を走査するMRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、それにより、腫瘍の位置および縁を明確化することを含む。
【0010】
なおもさらなる態様において、本発明は、癌を処置するための方法を提供し、その方法は、癌患者が皮膚癌などの腫瘍のイメージングまたは上に記載された全身イメージングを受けている方法および癌細胞を含む腫瘍を外科的に除去する工程を含む。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、(a)14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含む融合性リポソームを含む第1の容器であって、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、特異的結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる前記結合対の第1の官能基で官能化されている、第1の容器;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質を含む第2の容器であって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、第2の容器;および(c)(a)の融合性リポソームおよび続いて(b)の検出可能な作用物質を癌患者に投与する工程を含む癌細胞を選択的に検出するための方法についての指示を含むパンフレットを備えるキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、マウスにおけるトリプルネガティブ乳癌のインサイチュ検出の写真を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した24時間後に、腫瘍保有マウスを、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて画像化した。腫瘍シグナル(mCherry)を記録した。Aの画像に示されているマウスに注射されたリポソームは、PEG-アジドを用いて修飾したリポソームである。
図1B図1Bは、マウスにおけるトリプルネガティブ乳癌のインサイチュ検出の写真を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した24時間後に、腫瘍保有マウスを、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて画像化した。リポソームシグナル(ICG)を記録した。Bの画像に示されているマウスに注射されたリポソームは、PEG-アジドを用いて修飾したリポソームである。
図1C図1Cは、マウスにおけるトリプルネガティブ乳癌のインサイチュ検出の写真を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した24時間後に、腫瘍保有マウスを、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて画像化した。腫瘍シグナル(mCherry)を記録した。パネルCに示されているマウスには、PEG-ビオチンで修飾されたリポソームを注射した。
図1D図1Dは、マウスにおけるトリプルネガティブ乳癌のインサイチュ検出の写真を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した24時間後に、腫瘍保有マウスを、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて画像化した。リポソームシグナル(ICG)を記録した。パネルDに示されているマウスには、PEG-ビオチンで修飾されたリポソームを注射した。
図2A図2Aは、注射の48時間後の器官の蛍光像および非蛍光像のオーバーレイ画像を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した48時間後に、マウスを屠殺し、器官を取り出し、図1A図1Dと同一条件下(励起および発光)で画像化して、リポソームからのICGシグナルを測定した。器官の順序は、上部から下部、左から右に:肺、肝臓、脾臓、腎臓、腫瘍。未処置のマウス(A)を、閾値レベルを測定するために用いた。
図2B図2Bは、注射の48時間後の器官の蛍光像および非蛍光像のオーバーレイ画像を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した48時間後に、マウスを屠殺し、器官を取り出し、図1A図1Dと同一条件下(励起および発光)で画像化して、リポソームからのICGシグナルを測定した。器官の順序は、上部から下部、左から右に:肺、肝臓、脾臓、腎臓、腫瘍。アジド修飾リポソーム(B)からの3匹のマウスからの器官は、腫瘍および肝臓における蛍光シグナルを示している。
図2C図2Cは、注射の48時間後の器官の蛍光像および非蛍光像のオーバーレイ画像を示している。ICGをロードされたリポソームをIV注射した48時間後に、マウスを屠殺し、器官を取り出し、図1A図1Dと同一条件下(励起および発光)で画像化して、リポソームからのICGシグナルを測定した。器官の順序は、上部から下部、左から右に:肺、肝臓、脾臓、腎臓、腫瘍。ビオチン修飾リポソーム(C)からの3匹のマウスからの器官は、腫瘍および肝臓における蛍光シグナルを示している。
図3A図3Aは、最後の注射の24時間後のGd-DTPAの腫瘍到達および体内分布プロファイルと比べた、腫瘍保有マウスの腫瘍における蛍光シグナルの変化を示している。ガドリニウム(Gd)とインドシアニングリーン(ICG)とを同時ロードされたリポソームであって、T細胞活性化抗体(抗CD3および抗CD8)に結合したリポソームを、腫瘍保有マウスに注射して、2回目の処置の腫瘍部位への到達を試験することにより、処置間の最適な間隔を決定した。この概念証明では、MRI造影剤であるGd-DTPAと蛍光プローブICGとの送達を比較する。A.腫瘍のGdレベルを、335.048nm発光におけるICP解析を用いて測定した。単回の処置を、48時間後(鉛直線)、72時間後(斜めの四角形)および96時間後(水平線)における2回目の処置と比較した。N=1群あたり4匹の動物。
図3B図3Bは、最後の注射の24時間後のGd-DTPAの腫瘍到達および体内分布プロファイルと比べた、腫瘍保有マウスの腫瘍における蛍光シグナルの変化を示している。ガドリニウム(Gd)とインドシアニングリーン(ICG)とを同時ロードされたリポソームであって、T細胞活性化抗体(抗CD3および抗CD8)に結合したリポソームを、腫瘍保有マウスに注射して、2回目の処置の腫瘍部位への到達を試験することにより、処置間の最適な間隔を決定した。この概念証明では、MRI造影剤であるGd-DTPAと蛍光プローブICGとの送達を比較する。B.IVIS Spectrum CTインビボイメージングシステムを用いて、mCherry(腫瘍)およびICG(リポソーム)シグナルを記録した。mCherryシグナルを用いて、手作業で腫瘍関心領域を決定し、それを用いて1秒あたりのICGフォトンを記録した。示されているデータは、単回処置に対する2回目の処置の比である。エラーバーは、標準偏差を表している。
図3C図3Cは、最後の注射の24時間後のGd-DTPAの腫瘍到達および体内分布プロファイルと比べた、腫瘍保有マウスの腫瘍における蛍光シグナルの変化を示している。ガドリニウム(Gd)とインドシアニングリーン(ICG)とを同時ロードされたリポソームであって、T細胞活性化抗体(抗CD3および抗CD8)に結合したリポソームを、腫瘍保有マウスに注射して、2回目の処置の腫瘍部位への到達を試験することにより、処置間の最適な間隔を決定した。この概念証明では、MRI造影剤であるGd-DTPAと蛍光プローブICGとの送達を比較する。C.ICPによって測定したリポソームの体内分布が、組織1グラムあたりのパーセント注射量として提示されている。腫瘍へのリポソーム到達を、単回の処置または異なる間隔での2回の処置における肝臓(水平線、脾臓(横長の四角形)、腎臓(鉛直線)心臓(斜線)および肺(斜めの四角形)と比較する。
図4A図4Aは、ICGをロードされたリポソームを用いて処置されたマウス対未処置マウスにおけるリポソームのクリアランスおよびそれらの蓄積を示している。A.4T1mCherry腫瘍保有マウスを、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて画像化して、腫瘍から放射されるmCherryシグナル(ex570nm、em640nm、露光時間1秒)を処置当日に測定した(左のマウスおよび右のマウス)。
図4B図4Bは、ICGをロードされたリポソームを用いて処置されたマウス対未処置マウスにおけるリポソームのクリアランスおよびそれらの蓄積を示している。B.マウス(左から1番目および4番目のマウス)を、リポソームに結合した治療用抗体(抗CD3および抗CD8)とともに、共被包されたICG-およびGd-DTPAで処置し、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて画像化して、動物の全身から放射されるリポソームICGシグナル(ex745nm、em870nm、露光時間4秒)を処置当日に測定した。左から2番目および3番目のマウスは、ICG-およびGd-DTPAリポソームを投与されなかった。
図4C図4Cは、ICGをロードされたリポソームを用いて処置されたマウス対未処置マウスにおけるリポソームのクリアランスおよびそれらの蓄積を示している。C.Aと同じ、処置の24時間後の、腫瘍から放射されたmCherryシグナルを示している。
図4D図4Dは、ICGをロードされたリポソームを用いて処置されたマウス対未処置マウスにおけるリポソームのクリアランスおよびそれらの蓄積を示している。D.Bと同じ、処置の24時間後の、動物の全身から放射されたリポソームICGシグナルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本願の様々な態様を記載する。本願の完全な理解を提供するために、説明の目的で、具体的な配置および詳細を示す。しかしながら、本願は、本明細書中に提示される具体的な詳細がなくても実施され得ることが当業者には明らかだろう。さらに、本願を不明瞭にしないために、周知の特徴は、省略または単純化されている場合がある。
【0014】
請求項において使用される用語「含む」は、「オープンエンド」であり、記載のエレメントまたはそれらの構造もしくは機能の等価物および記載されていない他の任意のエレメントを意味する。この用語は、その後に列挙される意味に限定されると解釈されるべきでなく、他のエレメントまたは工程を排除しない。この用語は、述べた特徴、整数、工程または構成要素の存在を、言及したとおりに明示すると解釈される必要があるが、他の1つ以上の特徴、整数、工程もしくは構成要素またはそれらの群の存在または追加を排除しない。したがって、「xおよびzを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素xおよびzだけからなるデバイスに限定されるべきでない。また、「工程xおよびzを含む方法」という表現の範囲も、これらの工程だけからなる方法に限定されるべきでない。
【0015】
具体的に述べられていない限り、本明細書中で使用されるとき、用語「約」は、当該分野において通常許容される範囲内、例えば平均値の2標準偏差以内と理解される。1つの実施形態において、用語「約」は、それが使用されている数の報告されている数値の10%以内、好ましくは、報告されている数値の5%以内を意味する。例えば、用語「約」は、述べた値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%以内であるとすぐに理解できる。他の実施形態において、用語「約」は、例えば、用いられた実験手法に応じて、より大きい変動の許容を意味することができる。特定の値の前記変動は、当業者によって理解され、本発明の文脈の範囲内である。例証として、「約1~約5」という数値範囲は、約1~約5という明示的に記載された値を含むだけでなく、その示された範囲内の個々の値および部分的な範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲内に含まれるのは、2、3および4などの個々の値、ならびに例えば、1~3、2~4および3~5といった部分的な範囲、ならびに個々に1、2、3、4、5または6である。この同じ原理が、最小値または最大値として1つの数値だけが記載されている範囲にも適用される。別段文脈から明らかでない限り、本明細書中に提供されるすべての数値が、用語「約」によって修飾される。「実質的に」、「一般に」、「最大」などのような他の類似の用語も、それが絶対的なものではないように用語または値を修飾すると解釈される。そのような用語は、それらの用語が当業者によって理解されるように、それらが修飾する状況および用語によって定義される。これには、最低でも、値を計測するために使用される所与の実験、手法または機器に対する予想される実験誤差、技術的誤差および機器誤差の程度が含まれる。
【0016】
本明細書中で使用されるとき、用語「および/または」は、列挙される関連する項目の1つ以上の任意のおよびすべての組み合わせを含む。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての用語(専門用語および科学用語を含む)が、本発明が属する分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書において定義される用語などの用語は、本明細書および関連分野の状況における意味と一致した意味を有すると解釈されるべきであって、本明細書中ではっきりと定義されない限り、理想的な意味または過度に正式な意味で解釈されるべきでないことがさらに理解される。周知の機能または構成は、簡潔および/または明確にするために、詳細に記載されていないことがある。
【0017】
正常細胞よりも癌細胞と好ましく融合する特性を有する融合性リポソームを用いることにより、インビボまたはインビトロにおいて癌細胞を選択的に検出し、可視化できることが本発明によって見出された。
【0018】
したがって、1つの態様において、本発明は、内部の水性コンパートメント内にあるまたはリポソーム膜に結合されている、検出可能な作用物質および必要に応じて細胞傷害性薬物を含む融合性リポソームを提供し、ここで、
前記融合性リポソームは、14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含み、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;
前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む。
【0019】
本明細書中で使用される用語「リポソーム」とは、リポソームの水性の内部を被包する、内葉および外葉から構成される脂質二重層を含む脂質ナノ粒子または構築物のことを指す。
【0020】
本明細書中で使用される用語「融合性リポソーム」とは、標的細胞の原形質膜と優先的に融合し、より少ない程度でエンドサイトーシスによって取り込まれる、リポソーム構築物のことを指す。
【0021】
一般に、本明細書中で定義されるように、用語「細胞を(の)標識」は、未修飾細胞と構造的に区別する、細胞の任意の修飾に関する。特に、本発明における細胞は、融合性リポソームの官能基または検出可能な作用物質で修飾されるかまたは「標識される」。
【0022】
本明細書中で使用される用語「安定化部分」とは、リポソームの脂質二重層内に組み込まれたとき、安定化部分を欠く同一のリポソームと比べてそのリポソームの血液循環半減期を延長する部分のことを指す。
【0023】
ある特定の実施形態において、検出可能な作用物質は、蛍光プローブ、磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤および光力学剤(photodynamic agent)から選択される。
【0024】
ある特定の実施形態において、検出可能な作用物質は、cy3、cy5、cy5.5、cy7 cy9、FITC、フルオレセイン、alexa fluor790、alexa fluor750、alexa fluor700、alexa fluor680、alexa fluor660、alexa fluor647、alexa fluor633、alexa fluor594、585nm~800nmの範囲のQdot、蛍光プロトポルフィリンオリゴマー、イソシアニングリーン(ICG)から選択される蛍光プローブ;またはエステル結合が切断可能な活性化可能なフルオロフォアの1タイプである活性化可能な蛍光プローブである。フルオロフォアに対するエステル修飾は、フルオロフォアを非蛍光にし、そのフルオロフォアは、リポソームが癌細胞と融合し、続いて細胞質エステラーゼによって細胞質で切断されると、蛍光性になる。
【0025】
ある特定の実施形態において、活性化可能な蛍光プローブは、フルオレセインアナログ(例えば、ジアセテート修飾アナログ)、クマリンアナログ(例えば、py+BC690-(1-メチル-4-(2-オキソ-8-(ピロリジン-1-イル)-2H-ベンゾ[g]クロメン-3-イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート))、CFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)、ローダミンアナログ(例えば、gGlu-HMRG(γ-グルタミルヒドロキシメチルローダミングリーン))、クルクミノイドジフルオロボロンベースの腫瘍標的化γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって活性化可能な)蛍光プローブ(Glu-DFB)、インドシアニンアナログ(例えば、AP-Glu(3H-インドリウム、2-[(1E)-2-[4-[[4-[[(4S)-4-アミノ-4-カルボキシ-1-オキソブチル]アミノ]フェニル]メトキシ]フェニル]エテニル]-1-(5-カルボキシペンチル)-3,3-ジメチル-,ブロミド(1:1)、CAS登録番号1884698-06-9)および他の近赤外蛍光活性化分子から選択される。
【0026】
組織の自己蛍光が比較的低く、長波長の組織透過が、より短波長のものよりも良いので、インビボ条件下では近赤外フルオロフォア(630/661またはそれより長い波長;例えば、Alexafluor633、cell trace far-redまたはCy5)が好ましい。
【0027】
ある特定の実施形態において、MRI用の造影剤は、酸化鉄造影剤(例えば、磁鉄鉱、Fe);硫酸バリウム;およびガドリニウム造影剤(例えば、ガドテレート、ガドジアミド、ガドベネート、ガドペンテテート、ガドブトロール)から選択されるか;CT用の造影剤は、金属元素(例えば、ヨウ素、ビスマス、臭素、タンタル、金、白金、イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、タングステン、インジウムおよびルテチウム)から選択されるか;またはPET用の造影剤は、64Cu-PSTM、18F-FDG、18F-フッ化物、18F-フルオロミソニダゾールおよびガリウムから選択される。
【0028】
ある特定の実施形態において、光力学剤は、ポルフィマーナトリウム(Photofrin(登録商標))、Metvix(登録商標)/Metvixia、テモポルフィン/mTHPC/Foscan、タラポルフィン/NPe6/Laserphyrin、Redaporfin(登録商標)/LUZ11、Tookad、Photochlor、Fotolon、Antrin、Purlytin、TLD1433、WST11およびLutex、または金ナノ粒子(例えば、球状または路状のナノ粒子)から選択される。
【0029】
ある特定の実施形態において、複数の脂質の少なくとも1つの脂質の親水性頭部はそれぞれ、通常の条件下では他の分子への結合またはそれら自体の間における共有結合もしくは非共有結合性の高親和性結合体の形成に優先して互いに結合することができる結合対の第1の官能基または第2の官能基で官能化され、ここで、その結合対の第1の官能基および第2の官能基は、例えば、(i)クリックケミストリー反応の反応基;または(ii)ビオチンおよびビオチン結合ペプチドもしくはビオチン結合タンパク質であるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される用語「高親和性」とは、化学的会合もしくは生物物理的会合、例えば、キレート剤-金属の結合(例えば、Niと、HisなどのいくつかのHis残基を含むペプチド配列との結合)または結合対の2つのメンバー、例えば、抗体とその標的エピトープ、またはビオチンとストレプトアビジンなどの間の結合体化のことを指し、ここで、2つの結合対の間の会合は、10-4M~10-30M、例えば、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12Mまたは12-13MというKを有する。
【0031】
ある特定の実施形態において、前記脂質分子の少なくとも1つは、前記結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、特異的結合対の第1の官能基で官能化される。
【0032】
本明細書中で使用される用語「結合対」とは、異なる分子の対のことを指し、その分子の各々が、それ自体の特異的な官能基を含み、両方の官能基が、互いに対する(または互いに相補的な)特定の特異性を有する。換言すれば、これらの基は、通常の条件下では、他の分子への結合に優先して互いに結合することができる。その結合は、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。そのような結合対の非限定的な例は、チオール-マレイミド、アジド-アルキン、アルデヒド-ヒドロキシルアミンなどである。
【0033】
一般に、官能基は、分子の特徴的な化学反応に関与する、それらの分子内の原子または結合の特定の基または部分である。特に、本明細書中で定義される官能基または結合対の官能基とは、前記結合対の別の官能基(本明細書中以後、「第2の官能基」)に結合することができる、結合対の原子または結合の特定の反応基または部分(本明細書中以後、「第1の官能基」)のことを指す。上で述べたように、第1および第2の官能基は、互いに相補的である。上記の非限定的な例において、第1の官能基は、チオール、アジドまたはアルデヒドであり、それらの相補的な(第2の)官能基は、それぞれマレイミド、アルキンまたはヒドロキシルアミンである。
【0034】
一般に、本明細書中で定義される架橋試薬(または架橋剤)とは、タンパク質上または他の分子上の特定の反応基(第1級アミン、スルフヒドリルなど)に化学的に結合することができる2つ以上の反応性末端(官能基)を含む分子のことを指す。特に、本明細書中で定義される架橋剤は、官能基およびスペーサーを含む。
【0035】
ある特定の実施形態において、融合性リポソームは、脂質二重層と第1の官能基との間に第1のスペーサーをさらに含む。
【0036】
ある特定の実施形態において、融合性リポソーム 第1の官能基で官能化された前記脂質分子の少なくとも1つは、同一のもしくは異なる追加の検出可能な作用物質、光治療薬、すなわち光力学剤、または免疫系活性化剤をさらに含み、それらのそれぞれが、前記相補的な第2の官能基で官能化されており、前記第2の官能基を介して前記第1の官能基に結合され、ここで、前記追加の同一のまたは異なる検出可能な作用物質は、蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される。
【0037】
ある特定の実施形態において、免疫系活性化剤は、抗CD3抗体、抗CD8抗体、抗NKG2D抗体またはそれらの組み合わせ、CD3とCD8の両方に結合することができる抗体およびCD3とNKG2Dの両方に結合することができる抗体から選択される作用物質である。
【0038】
融合性リポソームが、免疫系活性化剤、または金ナノ粒子などの光治療薬を含むとき、その融合性リポソームは、本質的にセラノスティック剤である。
【0039】
ある特定の実施形態において、検出可能な作用物質、光治療薬または免疫系活性化剤は、融合性リポソームの外葉において結合されている。
【0040】
ある特定の実施形態において、検出可能な作用物質または免疫系活性化剤は、検出可能な作用物質または免疫系活性化剤と第2の官能基との間に第2のスペーサーをさらに含む。
【0041】
ある特定の実施形態において、第1または第2のスペーサーは、PEG、(C-C12)アルキル、フェノール酸、安息香酸またはナフトエ モノ、ジ-またはトリカルボン酸、テトラヒドロピレンモノ-、ジ-もしくはトリ-カルボン酸またはそれらの塩、環状エーテル、グルタル酸、コハク酸、ムコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、ならびに約2~20アミノ酸残基長、例えば、3アミノ酸残基長のポリGlyペプチドなどのペプチドからなる群より選択される。
【0042】
ある特定の実施形態において、第1または第2のスペーサーは、約106Da~約4kDaの分子量のPEGである。
【0043】
ある特定の実施形態において、第1または第2のスペーサーは、約194Daの分子量のPEG(PEG)である。
【0044】
ある特定の実施形態において、第1または第2のスペーサーは、(C-C12)アルキル、好ましくは、ヘプチルまたはドデカノイルである。
【0045】
ある特定の実施形態において、免疫系活性化剤は、T細胞活性化剤;炎症促進性サイトカイン;メモリーキラーT細胞活性化ペプチド;ペプチドを提示する可溶性ヒト白血球抗原(sHLA);およびスーパー抗原から選択される。
【0046】
ある特定の実施形態において、免疫系活性化剤は、T細胞活性化剤である。
【0047】
ある特定の実施形態において、T細胞活性化剤は、抗CD3抗体、抗CD8抗体、抗NKG2D抗体またはそれらの組み合わせ、CD3とCD8の両方に結合することができる抗体およびCD3とNKG2Dの両方に結合することができる抗体から選択される。
【0048】
本明細書中に記載される抗体またはその機能的フラグメントは、一本鎖可変フラグメント(scFv);抗体の機能的フラグメント;ナノボディなどの単一ドメイン抗体;および組換え抗体;(ii)抗体ミメティック、例えば、アフィボディ(affibody)分子;アフィリン(affilin);アフィマー(affimer);アフィチン(affitin);アルファボディ;アンチカリン(anticalin);アビマー(avimer);DARPin;ファイノマー(fynomer);クニッツドメインペプチド;およびモノボディ;または(iii)アプタマーのことも指す。
【0049】
本発明において使用される抗体またはその機能的フラグメントは、標的化剤の機能(リポソームをある特定の標的細胞に連れて行くこと)を果たさないが、その代わりに免疫系活性化剤の機能を果たすことを明確にするべきである。
【0050】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、カチオン性基を含む前記脂質分子の少なくとも1つは、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(18:0DDAB)およびN1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチル-カルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)から選択される。
【0051】
ある特定の実施形態において、カチオン性基を含む前記脂質分子の少なくとも1つは、DOTAPである。
【0052】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、カチオン性合成高分子は、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートから選択される。
【0053】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、カチオン性天然高分子は、キトサンである。
【0054】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、カチオン性アミノ糖は、グルコサミンである。
【0055】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、カチオン性ポリアミノ酸は、ポリ(L-リジン)、ポリ(L-アルギニン)、ポリ(D-リジン)、ポリ(D-アルギニン)、ポリ(L-オルニチン)およびポリ(D-オルニチン)から選択される。
【0056】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、両親媒性の癌細胞結合ペプチドは、セクロピンA;セクロピンA 1-8;および環状CNGRCから選択される。
【0057】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、前記脂質分子の少なくとも1つは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるリン脂質であり、それらのそれぞれ1つが、1つまたは2つの同一のまたは異なる脂肪酸残基を含み、ホスファチジル部分における脂肪酸残基は、飽和、一不飽和または多価不飽和であり、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の炭素という炭素鎖長(例えば、リン脂質配置およびリゾリン脂質配置の、ミリストイル、ステアロイル、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル(共役リノレノイルを含む)、アラキドノイルおよびそれらの組み合わせ)を有する。
【0058】
ある特定の実施形態において、リン脂質は、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)および1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE);1,2-ジミリストイル-3-ホスファチジルコリン(DMPC);1,2-ジステアロイル-3-ホスファチジルコリン(DSPC);1,2-ジミリストレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(14:1(Δ9-Cis)PC);1,2-ジミリステライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(14:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジパルミトレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:1(Δ9-Cis)PC);1,2-ジパルミテライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジペトロセレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1(Δ6-Cis)PC);1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルコリン(18:1(Δ9-Cis)PC(DOPC));1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:2(Cis)PC(DLPC));1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:3(Cis)PC);1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(20:1(Cis)PC);1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(20:4(Cis)PC);1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(22:6(Cis)PC);1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(22:1(Cis)PC);1,2-ジネルボノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(24:1(Cis)PC);1,2-ジミリストイル-3--3-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE);1,2-ジパルミトイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE);1,2-ジステアロイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE);1,2-ジミリストイル-3-ホスファチジルセリン(DMPS);1,2-ジパルミトイル-3-ホスファチジルセリン(DPPS);パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE);および1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルセリン(DOPS)からなる群より選択される。
【0059】
ある特定の実施形態において、リン脂質は、DOPC、POPC、DMPC、DPPC、DOPE、POPE、DSPE、DMPEおよびDPPEから選択される。
【0060】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、安定化部分は、約106Da~約4kDaの分子量のPEGである。
【0061】
ある特定の実施形態において、安定化部分のPEGは、約2kDa分子量のPEGである。
【0062】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、安定化部分は、切断可能なペプチドリンカーを介して前記脂質分子の少なくとも1つに接続される。
【0063】
官能基を含むリポソームに関する上記実施形態のいずれか1つにおいて、特異的結合対の第1の官能基は、前記結合対の前記相補的な第2の官能基と共有結合を形成することができる。
【0064】
ある特定の実施形態において、特異的結合対の第1の官能基は、クリックケミストリー反応を介して前記結合対の前記相補的な第2の官能基と共有結合を形成することができる。
【0065】
ある特定の実施形態において、i)特異的結合対の第1の官能基は、アルキンまたはホスフィンであり、前記結合対の第2の官能基は、アジドであるか、またはその逆であるか;ii)特異的結合対の第1の官能基は、シクロアルケン、シクロアルキン、シクロプロパン、イソニトリル(イソシアニド)またはビニルボロン酸であり、前記結合対の第2の官能基は、テトラジンであるか、またはその逆であるか;iii)特異的結合対の第1の官能基は、アルキンまたはマレイミドであり、前記結合対の第2の官能基は、チオールであるか、またはその逆であるか;iv)特異的結合対の第1の官能基は、共役ジエンであり、前記結合対の第2の官能基は、置換アルケンであるか、またはその逆であるか;v)特異的結合対の第1の官能基は、アルケン、アルキンまたはアセチレン化銅であり、前記結合対の第2の官能基は、ニトロンであるか、またはその逆であるか;vi)特異的結合対の第1の官能基は、アルデヒドまたはケトンであり、前記結合対の第2の官能基は、アルコキシアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンまたはヒドラジドであるか、またはその逆であるか;またはvii)特異的結合対の第1の官能基は、アルデヒド、ケトン、イソチオシアネート、カルボン酸またはその誘導体(例えば、エステル、無水物、ハロゲン化アシル、トシルおよびN-ヒドロスクシンイミド(NHS))であり、前記結合対の第2の官能基は、アミンであるか、またはその逆であり;viii)官能基である。
【0066】
ある特定の実施形態において、特異的結合対は、アルキン-アジドである。
【0067】
官能基を含むリポソームに関する上記実施形態のいずれか1つにおいて、特異的結合対の第1の官能基は、前記結合対の前記相補的な第2の官能基と非共有結合を形成することができる。
【0068】
ある特定の実施形態において、特異的結合対の第1の官能基は、ビオチンであり、前記結合対の第2の官能基は、ビオチン結合ペプチドまたはビオチン結合タンパク質から選択される結合パートナーであるか、またはその逆である。
【0069】
ある特定の実施形態において、ビオチン結合タンパク質は、アビジン、ストレプトアビジンおよび抗ビオチン抗体から選択される。
【0070】
ある特定の実施形態において、ビオチン結合ペプチドは、AEGEFCSWAPPKASCGDPAK(配列番号1)、CSWRPPFRAVC(配列番号2)、CSWAPPFKASC(配列番号3)およびCNWTPPFKTRC(配列番号4)から選択される。
【0071】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、融合性リポソームは、コレステロール(CHO)またはその誘導体をさらに含む。
【0072】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、融合性リポソームは、DOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPEまたはDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2Kおよび必要に応じてコレステロールを含み、ここで、PEG2Kは、約2kDaの分子量を有するPEGを表し、DOPCの相対モル量は、最大約80%であり、DOTAPの相対モル量は、最大約80%であり、DSPE-PEG2Kの相対モル量は、最大約20%であり、DOPEの相対モル量は、最大約20%であり、コレステロールの相対モル量は、最大約40%である。
【0073】
ある特定の実施形態において、融合性リポソームは、
(i)52.5:35:0.6:10、52.5:35:1.25:10、52.5:35:2.5:10、52.5:35:5:10、52.5:35:0.6:5、52.5:35:1.25:5、52.5:35:2.5:5、52.5:35:5:5、65:20:5:10、50:35:5:10、52.5:35:1.25:7、52.5:35:1.25:5または52.5:35:2.5:7というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPE;または
(ii)52.5:35:0.6、52.5:35:1.25、52.5:35:2.5、52.5:35:5、52.5:35:0.6、52.5:35:1.25、52.5:35:2.5、52.5:35:5、65:20:5、50:35:5、52.5:35:1.25、52.5:35:1.25または52.5:35:2.5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K
を含む。
【0074】
ある特定の実施形態において、融合性リポソームは、52.5:35:2.5:5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPE;または52.5:35:2.5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2Kを含む。
【0075】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、リポソームの融解温度(Tm)は、45℃未満であり、その温度において、その融合性リポソームは、非結晶転移相で維持されることにより、リポソームと細胞膜との融合に必要な膜の流動性がもたらされる。
【0076】
上記実施形態のいずれか1つにおいて、融合性リポソームは、最大200nmのサイズ、例えば、約15nm~約200nm、約20nm~約100nm、約50nm~約150nm、約50nm~約90nm、約80nm~約100nm、約110nm~約200nm、例えば、約100nmを有する。
【0077】
本発明の融合性リポソームを作製するために用いられる方法は、動力学的反応制御の概念に基づく。それらのリポソームは、2つの官能基の間に化学結合が形成される速度よりもかなり高い反応速度で脂質二重層から自己集合する。したがって、未反応の検出可能な作用物質および他の試薬または触媒(例えば、銅依存性のクリックケミストリー反応のための銅触媒)は、任意の重大な化学反応が溶液中で起きる前に、リポソームの水性の内部内に被包される。検出可能な作用物質および/または化学反応に必要な他の試薬は、リポソームの内側に被包されず、例えば、形成したリポソームを洗浄することによって、溶液からさらに物理的に除去される。本発明のリポソームを形成するクリックケミストリー反応のための触媒の非限定的な例は、銅(II)アセチルアセトネート、銅(I)イソニトリル、および還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを使用して銅(I)塩または銅(II)塩から生成される他の任意の活性な銅(I)触媒である。免疫系活性化剤および他の試薬または触媒は、例えば、透析もしくはゲル濾過によって、または免疫活性化剤もしくは脂質の官能基の一方もしくは両方を過剰量の対応する遊離官能基と反応させる(その免疫活性化剤もしくは脂質の官能基を枯渇させるがゆえにその反応を停止もしくは阻害する)ことによって、除去され得る。
【0078】
リポソームを調製する方法は、当該分野で周知である。Batzri,S.& Korn,E.D.Single bilayer liposomes prepared without sonication.Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes 298,1015-1019(1973)。例えば、有機溶媒中の脂質溶液を、リポソームの形成をもたらす条件において、例えば、ナノアセンブラーアセンブラーまたは他の類似のデバイスによって、Tmを超える温度を有する水溶液に注入し、それにより、融合性リポソームを生成してもよいし;Tmを超える温度を有する水溶液に脂質溶液を注入し、混合することにより、リポソーム溶液を得て、そのリポソーム溶液を、少なくとも1つの支持体および50~400nmの直径を有するポアを有する少なくとも1つのエッチドメンブレンを備える押出し成形機を介して押し出してもよい。
【0079】
追加の態様において、本発明は、癌細胞を選択的に検出するための方法を提供し、その方法は、上記実施形態のいずれか1つおよびそれらの任意の組み合わせにおいて定義された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させる工程、ならびに前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出する工程;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程を含む。ある特定の実施形態において、検出工程は、エキソサイチュ(ex situ)で行われる。
【0080】
同様に、追加の態様において、本発明は、癌細胞の選択的な検出において使用するための上記実施形態のいずれか1つの融合性リポソームを提供し、その使用または検出は、上記実施形態のいずれか1つおよびそれらの任意の組み合わせにおいて定義された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させること、および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出すること;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画すること、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出することを含む。
【0081】
同様に、追加の態様において、本発明は、癌細胞を選択的に検出するための組成物を調製するための、上記実施形態のいずれか1つの融合性リポソームの使用を提供し、その使用または検出は、上記実施形態のいずれか1つおよびそれらの任意の組み合わせにおいて定義された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させること、ならびに前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出すること;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画すること、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出することを含む。
【0082】
用語「融合性リポソームと前記癌細胞を接触させる」は、本発明の融合性リポソームが、細胞にまたは癌細胞のみもしくは癌細胞と正常細胞との混合物を含む器官にインビトロで、あるいは癌を有する患者または癌細胞を有する器官にインビボまたはインサイチュで投与される、任意のシナリオを記載するために本明細書中で使用される。
【0083】
ある特定の実施形態において、癌患者における癌細胞の選択的な検出は、前記制癌剤を含むナノ粒子が前記癌患者の腫瘍に到達する能力を予測することによって、ナノ粒子に含められた制癌剤による癌の処置に対する前記癌患者の応答性を示唆する。
【0084】
ある特定の実施形態において、癌患者における癌細胞の選択的な検出は、第1の結合対に結合したリポソームを全身投与(すなわち、結合対の第1の官能基で官能化されたリポソームの投与)した後に、新生物が疑われる組織から得たバイオプシーを用いて行われ、生検染色および/もしくは対比染色、例えば、ヘマトキシリン、エオシン、DAPI、蛍光抗体、蛍光ファロイジンといった標準的な染色に加えて加えられる蛍光プローブ、または西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素に結合された第2の官能基を用いて染色される。
【0085】
ある特定の実施形態において、選択的な検出は、第1の結合対に結合したリポソームと新生物が疑われる組織切片をインキュベートした後に、その組織から得たバイオプシーを用いて行われ、その後、生検染色および/または対比染色、例えば、ヘマトキシリン、エオシン、DAPI、蛍光抗体、蛍光ファロイジンといった標準的な染色に加えて加えられる蛍光プローブまたはHRPに結合された第2の結合対を用いて染色される。
【0086】
ある特定の実施形態において、応答性と判断された癌患者は、前記制癌剤を含む前記ナノ粒子で処置される。
【0087】
ある特定の実施形態において、癌患者が、応答性と判断された場合、前記制癌剤を含むナノ粒子は、その癌患者の処置において使用するためのナノ粒子である。
【0088】
ある特定の実施形態において、癌患者が、応答性と判断された場合、本発明は、その癌患者を処置するための薬を調製するための、前記制癌剤を含むナノ粒子の使用を提供する。
【0089】
さらなる態様において、本発明は、癌細胞を選択的に検出するための方法を提供し、その方法は、(a)官能化された融合性リポソームに関する上記の実施形態のいずれか1つに係る官能化された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させる工程;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質と前記癌細胞を接触させる工程であって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、工程;および(c)前記検出可能な作用物質が蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む。
【0090】
同様に、追加の態様において、本発明は、癌細胞の選択的な検出において使用するための、上記実施形態のいずれか1つの融合性リポソームを提供し、その使用または検出は、(a)官能化された融合性リポソームに関する上記の実施形態のいずれか1つに係る官能化された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させること;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質と前記癌細胞を接触させることであって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、こと;および(c)前記検出可能な作用物質が蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出することを含む。
【0091】
また同様に、追加の態様において、本発明は、癌細胞を選択的に検出するための組成物を調製するための、上記実施形態のいずれか1つの融合性リポソームの使用を提供し、その使用または検出は、(a)官能化された融合性リポソームに関する上記の実施形態のいずれか1つに係る官能化された融合性リポソームと前記癌細胞を接触させること;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質と前記癌細胞を接触させることであって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、こと;および(c)前記検出可能な作用物質が蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出することを含む。
【0092】
あるいは、工程(b)において、相補的な第2の官能基で官能化された検出可能な作用物質と前記癌細胞を接触させる代わりに、(a)の官能化された融合性リポソームおよび第2の官能基の検出可能な作用物質とは異なる検出可能な作用物質をその表面に含む第2のリポソームまたはナノ粒子と癌細胞を接触させる。この組み合わせは、シグナル対ノイズを改善するため、ならびに肝臓および脾臓などの組織における偽陽性を減少させるために、2工程注射の様式で用いることができる。第1の結合対を有する第1のリポソームは、癌細胞と融合し、一方のフルオロフォアを付加する。第2の結合対を有する第2のナノ粒子は、第1のリポソームで標識された癌細胞上の基に結合し、第2のフルオロフォアを送達する。2つのシグナルが存在することにより、偽陽性が減少し、さらに、それを用いることにより、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を行うことができる。FRETは、インビボ条件下においても用いることができ、ここで、第1の融合性リポソームが、1つのフルオロフォアおよび第1の結合対を有し、第2のリポソーム/ナノ粒子が、相補的な結合対、およびFRETにおいて使用でき、それら2つのフルオロフォアを有する2つのリポソームが近接した場合にシグナルをもたらす第2のフルオロフォアを有する。
【0093】
ある特定の実施形態において、検出可能な作用物質は、cy3、cy5、cy5.5、cy7 cy9、FITC、フルオレセイン、alexa fluor790、alexa fluor750、alexa fluor700、alexa fluor680、alexa fluor660、alexa fluor647、alexa fluor633、alexa fluor594、585nm~800nmの範囲のQdot、蛍光プロトポルフィリンオリゴマー、イソシアニングリーン(ICG)から選択される蛍光プローブ;または
フルオレセインアナログ(例えば、ジアセテート修飾アナログ)、クマリンアナログ(例えば、py+BC690-(1-メチル-4-(2-オキソ-8-(ピロリジン-1-イル)-2H-ベンゾ[g]クロメン-3-イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート))、CFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)、ローダミンアナログ(例えば、gGlu-HMRG(γ-グルタミルヒドロキシメチルローダミングリーン))、クルクミノイドジフルオロボロンベースの腫瘍標的化γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって活性化可能な)蛍光プローブ(Glu-DFB)、インドシアニンアナログ(例えば、AP-Glu(ap-glu3H-インドリウム、2-[(1E)-2-[4-[[4-[[(4S)-4-アミノ-4-カルボキシ-1-オキソブチル]アミノ]フェニル]メトキシ]フェニル]エテニル]-1-(5-カルボキシペンチル)-3,3-ジメチル-,ブロミド(1:1)、CAS登録番号1884698-06-9)および他の近赤外蛍光活性化分子から選択される活性化可能な蛍光プローブ
である。
【0094】
ある特定の実施形態において、癌患者における癌細胞の選択的な検出は、前記制癌剤を含むナノ粒子が前記癌患者の腫瘍に到達する能力を予測することによって、ナノ粒子に含められた制癌剤による癌の処置に対する前記癌患者の応答性を示唆する。
【0095】
ある特定の実施形態において、応答性と判断された癌患者は、前記制癌剤を含む前記ナノ粒子で処置される。
【0096】
ある特定の実施形態において、癌患者が、応答性と判断された場合、前記制癌剤を含むナノ粒子は、その癌患者の処置において使用するためのナノ粒子である。
【0097】
ある特定の実施形態において、癌患者が、応答性と判断された場合、本発明は、その癌患者を処置するための薬を調製するための、前記制癌剤を含むナノ粒子の使用を提供する。
【0098】
癌処置においてまたは癌処置の開発中に使用されるナノ粒子のタイプの非限定的な例は、リポソーム;タンパク質ベースのナノ粒子(例えば、アルブミン、フェリチン、ゼラチンおよびトランスフェリン);共重合体(例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA));高分子ミセル(例えば、ヒドラゾン結合を含むトリブロック共重合体PEG-DiHyd-PLAでできたミセル);金ナノ粒子;およびインビボでの使用に適合するポリマーで覆われた磁鉄鉱コアナノ粒子である。
【0099】
ナノ粒子として製剤化され得る細胞傷害性薬物のタイプの非限定的な例は、化学療法剤(例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、アジリジン、エポキシド、スルホン酸アルキル)、シスプラチンおよびそのアナログ(例えば、カルボプラチン、オキサリプラチン))、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、フルダラビン)、トポイオメラーゼ相互作用剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、抗微小管剤(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレルビン;タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、インターフェロン、インターロイキン-2、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、モノクローナル抗体、エストロゲン調節剤(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン)、メゲストロール、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、オクトレオチド)、オクトレオチド、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、カソデックス)、キナーゼおよびチロシン阻害剤(例えば、イマチニブ(STI571またはGleevac);ゲフィチニブ(Iressa);およびエルロチニブ(Tarceva)であり、両親媒性の癌細胞結合ペプチドは、セクロピンA;セクロピンA 1-8;および環状CNGRC;フォトフリンなどの光力学剤、金から選択される。
【0100】
したがって、上に記載されたナノ粒子に含められる制癌剤は、上に記載されたナノ粒子と細胞傷害性薬物との任意の組み合わせであり得る。
【0101】
ナノ粒子薬物、すなわち、細胞傷害性薬物を含む粒子の非限定的な例は、Abraxane(登録商標)(循環時間を延長するためおよびバイオアベイラビリティを高めるためにアルブミンに結合されたパクリタキセル);およびアクティブローディング法を用いてリポソームに被包されたドキソルビシン製剤であるDoxil(登録商標)である。これらのドキソルビシンリポソーム(HSPC、コレステロールおよびDSPE-PEG2000を56.6:38.2:5.3のモル比で含む)は、癌治療におけるナノ医薬の代表格の1つである。
【0102】
代替のシナリオでは、結合対の第1の官能基で官能化された融合性リポソームによって応答性と判断された癌患者は、前記制癌剤を含む前記ナノ粒子で処置され、ここで、前記ナノ粒子は、相補的な第2の官能基で官能化されている。例えば、アルブミン部分が第2の結合対で修飾されたAbraxane(登録商標)が、全身性に注射されるか、または第2の結合対で官能化されたリポソーム内にアクティブローディングされたドキソルビシンが、全身性に注射される。したがって、官能化された第2のナノ粒子は、すでに第1の官能基で標識または官能化された癌細胞に標的化され、第2の官能基を介してその癌細胞に結合する。
【0103】
さらに追加の態様において、本発明は、蛍光ガイド手術または標的化放射線治療によって癌を処置するための方法を提供し、前記方法は、上記に定義された癌細胞を選択的に検出するための方法の1つおよび癌細胞を含む腫瘍を除去する工程を含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、手術中に使用される、エステラーゼで切断可能なフルオロフォア(活性化可能なフルオロフォア)を有する本発明のリポソームを、静脈内に注射し得るか、または腫瘍組織、および新生物組織と疑われる周囲組織に灌注するために使用し得る。次いで、その組織を食塩水溶液で洗浄して、未結合のリポソームおよび血液のアクセスを除去し、シグナル対ノイズを改善する。リポソームが癌細胞と融合すると、フルオロフォア上のエステル基が除去され、使用されるフルオロフォアに対応する蛍光の励起波長および発光波長を用いた検出が可能になる。
【0105】
癌細胞を選択的に検出するための方法、または上記に定義された癌細胞の選択的な検出において使用するための融合性リポソームのうちのいずれか1つのある特定の実施形態において、癌患者は、皮膚などの器官の領域の走査または皮膚癌などの腫瘍の全身イメージングまたは全身イメージングを受けており、その方法または使用は、融合性リポソーム、および必要に応じて、官能化された検出可能な作用物質を全身投与するまたは局所的に適用すること;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、腫瘍の位置および縁を明確化することを含む。
【0106】
なおもさらなる態様において、本発明は、癌を処置するための方法を提供し、その方法は、癌患者が、皮膚癌などの腫瘍のイメージングまたは上に記載された全身イメージングを受けている方法、および癌細胞を含む腫瘍を外科的に除去する工程を含む。
【0107】
上記に定義された癌細胞を選択的に検出するための方法のいずれか1つのある特定の実施形態において、その方法は、癌細胞の選択的な検出を必要とする癌患者から取り出された組織(例えば、生検材料)または血液由来画分における癌細胞をエキソサイチュで選択的に検出することを目的とし、前記方法は、融合性リポソーム、および必要に応じて、官能化された蛍光プローブを全身投与するかまたはその癌患者から取り出された組織もしくは血液由来画分に適用する工程、およびその組織または血液由来画分に照射し、蛍光プローブから放射される光をエキソサイチュで検出することによって前記蛍光プローブを検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む。
【0108】
ある特定の実施形態において、上記組織は、皮膚であり、前記癌患者は、皮膚癌を除去するための手術(モース術)を受けており、前記手術は、その皮膚組織が、エキソサイチュで検出される検出可能な癌細胞を有さなくなるまで反復される。
【0109】
ある特定の実施形態では、新形成が疑われる組織を摘出し、生理学的等張性緩衝液で洗浄して血餅を除去し、その組織を活性化可能なフルオロフォアリポソーム溶液、例えば、0.1~50mM脂質を含む溶液に浸漬する。リポソームで処置された組織を、PBSまたは他の生理学的等張性溶液(例えば、食塩水)で洗浄し、フルオロフォアに対応する励起波長および発光波長を用いて蛍光顕微鏡下で画像化する。
【0110】
あるいは、新形成が疑われる組織を摘出し、PBSまたは他の緩衝液で洗浄して血餅を除去し、前記結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、特異的結合対の第1の官能基を含む本発明の融合性リポソームを含む溶液(例えば、5mM脂質の溶液)に浸漬する。次いで、リポソームで処置された組織を生理学的等張性溶液で洗浄し、相補的な第2の官能基を含む検出可能なフルオロフォアを含む溶液に浸漬し、洗浄し、フルオロフォアに対応する励起波長および発光波長を用いて蛍光顕微鏡下で画像化する。
【0111】
ある特定の実施形態において、癌細胞をエキソサイチュで選択的に検出することを目的とした方法は、前記血液由来画分中の循環腫瘍細胞(CTC)をエキソサイチュで選択的に検出するために用いられる。これは、当該分野で周知の方法を用いてCTCを単離し、それらを上記の実施形態のいずれか1つの融合性リポソームと接触させることによって達成される。
【0112】
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに従って選択的に検出または処置される癌は、トリプルネガティブ乳癌などの乳癌、メラノーマ、肺癌、甲状腺癌および前立腺癌の群から選択される。
【0113】
ある特定の実施形態において、癌細胞を選択的に検出することを目的とする方法は、癌細胞を選択的に検出するためおよび癌を処置するために用いられ、前記方法は、融合性リポソーム、および必要に応じて、官能化された検出可能な作用物質を全身投与するまたは局所的に適用する工程を含み、ここで、その融合性リポソームは、前記検出可能な作用物質ならびに細胞傷害剤および/または免疫系活性化剤を含み;前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出する工程、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程;および必要に応じて、前記検出可能な作用物質を長時間繰り返し検出することによって、処置の応答をモニタリングする工程を含む。
【0114】
別の態様において、本発明は、癌を処置するための方法を提供し、その方法は、内部の水性コンパートメントに細胞傷害性薬物または光力学剤を含むかまたは被包する融合性リポソームを投与する工程を含み、ここで、前記融合性リポソームは、(a)14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層であって、ここで、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む、脂質二重層;(b)必要に応じて、前記結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、特異的結合対の第1の官能基;および(c)(b)が存在する場合、必要に応じて、前記第1の官能基に結合した前記結合対の前記相補的な第2の官能基を含む免疫系活性化剤を含む。
【0115】
別の態様において、本発明は、癌の処置において使用するための融合性リポソームを提供し、ここで、その融合性リポソームは、内部の水性コンパートメントに細胞傷害性薬物または光力学剤を含むかまたは被包し、ここで、前記融合性リポソームは、(a)14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層であって、ここで、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む、脂質二重層;(b)必要に応じて、前記結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、特異的結合対の第1の官能基;および(c)(b)が存在する場合、必要に応じて、前記第1の官能基に結合した前記結合対の前記相補的な第2の官能基を含む免疫系活性化剤を含む。
【0116】
ある特定の実施形態において、(b)は存在するが(c)が存在しない場合、上記方法または使用は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化された免疫系活性化剤を投与することをさらに含む。
【0117】
ある特定の実施形態において、細胞傷害性薬物は、化学療法剤(例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、アジリジン、エポキシド、スルホン酸アルキル)、シスプラチンおよびそのアナログ(例えば、カルボプラチン、オキサリプラチン))、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、フルダラビン)、トポイオメラーゼ相互作用剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、抗微小管剤(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレルビン;タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、インターフェロン、インターロイキン-2、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、モノクローナル抗体、エストロゲン調節剤(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン)、メゲストロール、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、オクトレオチド)、オクトレオチド、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、カソデックス)、キナーゼ阻害剤およびチロシン阻害剤(例えば、イマチニブ(STI571またはGleevac);ゲフィチニブ(Iressa);およびエルロチニブ(Tarceva)であり、両親媒性の癌細胞結合ペプチドは、セクロピンA;セクロピンA 1-8;および環状CNGRC;フォトフリンなどの光力学剤、金から選択される。
【0118】
さらに別の態様において、本発明は、(a)14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含む融合性リポソームを含む第1の容器であって、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含み;前記脂質分子の少なくとも1つは、前記結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、特異的結合対の第1の官能基で官能化されている、第1の容器;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質を含む第2の容器であって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、第2の容器;および(c)(a)の融合性リポソームおよび続いて(b)の検出可能な作用物質を癌患者に投与する工程を含む癌細胞を選択的に検出するための方法についての指示を含むパンフレットを備えるキットを提供する。
【0119】
用語「キャリア」とは、活性な作用物質とともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルのことを指す。薬学的組成物中のキャリアとしては、結合剤(例えば、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドンまたはポビドン)、トラガカントゴム、ゼラチン、デンプン、ラクトースまたはラクトース一水和物);崩壊剤(例えば、アルギン酸、トウモロコシデンプンなど);潤滑剤または界面活性剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはラウリル硫酸ナトリウム);および滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)が挙げられ得る。
【0120】
上記組成物は、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入または腫瘍への直接注射による非経口投与のために製剤化され得る。注射用の製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルに入った状態で、または保存剤もしくは安定剤が加えられた複数回用量容器に入った状態で、提供され得る。上記組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質フリー水で構成するための粉末の形態でもあり得る。
【0121】
上記組成物は、必要に応じて、口腔癌ならびに場合によっては頭頸部癌、食道癌および他の上部消化管腫瘍病変に局所的な様式でリポソームを送達する口腔ウォッシュとして、液体の形態/粘膜付着性製剤で製剤化され得る。その液体の形態は、溶液、シロップまたは懸濁液であってもよいし、使用前に、水、注射可能な等張性ビヒクルまたは他の好適なビヒクルで再構成するための薬物製品として提供されてもよい。そのような液体調製物は、薬学的に許容され得る添加剤(例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステルまたは分留植物油);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸))とともに従来の手段を用いて、調製され得る。上記薬学的組成物は、例えば、薬学的に許容され得る賦形剤(例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム))を用いて従来の手段によって調製される錠剤またはカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当該分野で周知の方法によってコーティングされてもよい。
【0122】
頬側投与の場合、上記組成物は、従来の様式で製剤化された、錠剤、粘膜付着性パッチ/ステッカーまたはロゼンジの形態をとり得る。
【0123】
上記組成物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、停留浣腸などの直腸組成物にも製剤化され得る。
【0124】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用するための組成物は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体を使用する加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するようにバルブを定めることによって決定され得る。本化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含む、吸入器または注入器において使用するための、例えばゼラチンまたはグリセロールの、カプセルおよびカートリッジが製剤化され得る。
【0125】
本明細書中で使用される用語「処置する」とは、所望の生理学的効果を得る手段のことを指す。その効果は、疾患および/またはその疾患が原因の症状を部分的にまたは完全に治癒するという点で治療的であり得る。この用語は、疾患を阻害すること、すなわち、その発症を止めること;または疾患を回復させること、すなわち、疾患を後退させることを指す。
【0126】
本願のある特定の特徴を本明細書中に例証し、記載してきたが、多くの改変、置換、変更および等価物が、当業者には明らかになるだろう。ゆえに、添付の請求項は、本願の真の趣旨の範囲内に入るそのようなすべての改変および変更を網羅することを目的とすると理解される。
【0127】
要するに、実施形態1によると、本発明は、内部の水性コンパートメント内にあるまたはリポソーム膜に結合されている、検出可能な作用物質および必要に応じて細胞傷害性薬物を含む融合性リポソームを提供し、ここで、
前記融合性リポソームは、14~24個の炭素原子を有する複数の脂質分子を含む脂質二重層を含み、前記脂質分子の少なくとも1つは、カチオン性基、カチオン性天然高分子もしくはカチオン性合成高分子、カチオン性アミノ糖、カチオン性ポリアミノ酸または両親媒性の癌細胞結合ペプチドをさらに含み;
前記脂質分子の少なくとも1つは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、ポリアミノ酸、メチル-ポリオキサゾリン、ポリグリセロール、ポリ(アクリロイルモルホリン)およびポリアクリルアミドからなる群より選択される安定化部分をさらに含む。
【0128】
実施形態2:前記検出可能な作用物質が、蛍光プローブ、磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤および光力学剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【0129】
実施形態3:前記検出可能な作用物質が、cy3、cy5、cy5.5、cy7 cy9、FITC、フルオレセイン、alexa fluor790、alexa fluor750、alexa fluor700、alexa fluor680、alexa fluor660、alexa fluor647、alexa fluor633、alexa fluor594、585nm~800nmの範囲のQdot、蛍光プロトポルフィリンオリゴマー、イソシアニングリーン(ICG)から選択される蛍光プローブ;または
フルオレセインアナログ(例えば、ジアセテート修飾アナログ)、クマリンアナログ(例えば、py+BC690-(1-メチル-4-(2-オキソ-8-(ピロリジン-1-イル)-2H-ベンゾ[g]クロメン-3-イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート))、CFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)、ローダミンアナログ(例えば、gGlu-HMRG(γ-グルタミルヒドロキシメチルローダミングリーン))、クルクミノイドジフルオロボロンベースの腫瘍標的化γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって活性化可能な)蛍光プローブ(Glu-DFB)およびインドシアニンアナログ(例えば、AP-Glu(3H-インドリウム、2-[(1E)-2-[4-[[4-[[(4S)-4-アミノ-4-カルボキシ-1-オキソブチル]アミノ]フェニル]メトキシ]フェニル]エテニル]-1-(5-カルボキシペンチル)-3,3-ジメチル-,ブロミド(1:1)、CAS登録番号1884698-06-9)ならびに他の近赤外蛍光活性化分子から選択される活性化可能な蛍光プローブ
である、実施形態1に記載の融合性リポソーム。
【0130】
実施形態4:前記MRI用の造影剤が、酸化鉄造影剤(例えば、磁鉄鉱、Fe);硫酸バリウム;およびガドリニウム造影剤(例えば、ガドテレート、ガドジアミド、ガドベネート、ガドペンテテート、ガドブトロール)から選択されるか;CT用の造影剤が、金属元素(例えば、ヨウ素、ビスマス、臭素、タンタル、金、白金、イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、タングステン、インジウムおよびルテチウム)から選択されるか;または前記PET用の造影剤が、64Cu-PSTM、18F-FDG、18F-フッ化物、18F-フルオロミソニダゾールおよびガリウムから選択される、態様1に記載の融合性リポソーム。
【0131】
実施形態5:前記脂質分子の少なくとも1つが、特異的結合対の相補的な第2の官能基に結合することができる、前記結合対の第1の官能基で官能化されている、実施形態1~4のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0132】
実施形態6:前記融合性リポソームが、前記脂質二重層と前記第1の官能基との間に第1のスペーサーをさらに含む、実施形態5に記載の融合性リポソーム。
【0133】
実施形態7:各々が、前記相補的な第2の官能基で官能化されており、かつ前記第2の官能基を介して前記第1の官能基に結合されている、同一のもしくは異なる追加の検出可能な作用物質または免疫系活性化剤をさらに含み、ここで、前記同一のまたは異なる追加の検出可能な作用物質は、蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される、実施形態5または6に記載の融合性リポソーム。
【0134】
実施形態8:前記免疫系活性化剤が、抗CD3抗体、抗CD8抗体、抗NKG2D抗体またはそれらの組み合わせ、CD3とCD8の両方に結合することができる抗体、およびCD3とNKG2Dの両方に結合することができる抗体から選択される作用物質である、実施形態7に記載の融合性リポソーム。
【0135】
実施形態9:前記検出可能な作用物質または免疫系活性化剤が、融合性リポソームの外葉において結合されている、実施形態5~8のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0136】
実施形態10:前記検出可能な作用物質または免疫系活性化剤が、前記検出可能な作用物質または免疫系活性化剤と前記第2の官能基との間に第2のスペーサーをさらに含む、実施形態5~9のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0137】
実施形態11:前記第1または第2のスペーサーが、PEG、(C-C12)アルキル、フェノール酸、安息香酸またはナフトエ モノ、ジ-またはトリカルボン酸、テトラヒドロピレンモノ-、ジ-もしくはトリ-カルボン酸またはそれらの塩、環状エーテル、グルタル酸、コハク酸、ムコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、ならびに約2~20アミノ酸残基長、例えば、3アミノ酸残基長のポリGlyペプチドなどのペプチドからなる群より選択される、実施形態10に記載の融合性リポソーム。
【0138】
実施形態12:前記第1または第2のスペーサーが、約106Da~約4kDaの分子量のPEGである、実施形態11に記載の融合性リポソーム。
【0139】
実施形態13:PEGが、約194Daの分子量のPEG(PEG)である、実施形態12に記載の融合性リポソーム。
【0140】
実施形態14:前記第1または第2のスペーサーが、(C-C12)アルキル、好ましくは、ヘプチルまたはドデカノイルである、実施形態10に記載の融合性リポソーム。
【0141】
実施形態15:カチオン性基を含む脂質分子の前記少なくとも1つが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(18:0DDAB)およびN1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチル-カルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)から選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0142】
実施形態16:カチオン性基を含む前記脂質分子の前記少なくとも1つが、DOTAPである、実施形態15に記載の融合性リポソーム。
【0143】
実施形態17:前記カチオン性合成高分子が、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートから選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0144】
実施形態18:前記カチオン性天然高分子が、キトサンである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0145】
実施形態19:前記カチオン性アミノ糖が、グルコサミンである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0146】
実施形態20:前記カチオン性ポリアミノ酸が、ポリ(L-リジン)、ポリ(L-アルギニン)、ポリ(D-リジン)、ポリ(D-アルギニン)、ポリ(L-オルニチン)およびポリ(D-オルニチン)から選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0147】
実施形態21:前記両親媒性の癌細胞結合ペプチドが、セクロピンA;セクロピンA 1-8;および環状CNGRCから選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0148】
実施形態22:前記脂質分子の前記少なくとも1つが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるリン脂質であり、それらのそれぞれ1つが、1つまたは2つの同一のまたは異なる脂肪酸残基を含み、前記ホスファチジル部分における脂肪酸残基は、飽和、一不飽和または多価不飽和であり、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の炭素という炭素鎖長(例えば、リン脂質配置およびリゾリン脂質配置の、ミリストイル、ステアロイル、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル(共役リノレノイルを含む)、アラキドノイルおよびそれらの組み合わせ)を有する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0149】
実施形態23:前記リン脂質が、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)および1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE);1,2-ジミリストイル-3-ホスファチジルコリン(DMPC);1,2-ジステアロイル-3-ホスファチジルコリン(DSPC);1,2-ジミリストレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(14:1(Δ9-Cis)PC);1,2-ジミリステライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(14:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジパルミトレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:1(Δ9-Cis)PC);1,2-ジパルミテライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジペトロセレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1(Δ6-Cis)PC);1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルコリン(18:1(Δ9-Cis)PC(DOPC));1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:1(Δ9-Trans)PC);1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:2(Cis)PC(DLPC));1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:3(Cis)PC);1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(20:1(Cis)PC);1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(20:4(Cis)PC);1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(22:6(Cis)PC);1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(22:1(Cis)PC);1,2-ジネルボノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(24:1(Cis)PC);1,2-ジミリストイル-3--3-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE);1,2-ジパルミトイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE);1,2-ジステアロイル-3-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE);1,2-ジミリストイル-3-ホスファチジルセリン(DMPS);1,2-ジパルミトイル-3-ホスファチジルセリン(DPPS);パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE);および1,2-ジオレオイル-3-ホスファチジルセリン(DOPS)からなる群より選択される、実施形態22に記載の融合性リポソーム。
【0150】
実施形態24:前記リン脂質が、DOPC、POPC、DMPC、DPPC、DOPE、POPE、DSPE、DMPEおよびDPPEから選択される、実施形態23に記載の融合性リポソーム。
【0151】
実施形態25:前記安定化部分が、約106Da~約4kDaの分子量のPEGである、実施形態1~24のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0152】
実施形態26:PEGが、約2kDaの分子量である、実施形態25に記載の融合性リポソーム。
【0153】
実施形態27:前記安定化部分が、切断可能なペプチドリンカーを介して前記脂質分子の少なくとも1つに接続されている、実施形態1~26のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0154】
実施形態28:前記特異的結合対の前記第1の官能基が、前記結合対の前記相補的な第2の官能基と共有結合を形成することができる、実施形態4~27のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0155】
実施形態29:前記特異的結合対の前記第1の官能基が、クリックケミストリー反応を介して前記結合対の前記相補的な第2の官能基と共有結合を形成することができる、実施形態28に記載の融合性リポソーム。
【0156】
実施形態30:i)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルキンまたはホスフィンであり、前記結合対の第2の官能基が、アジドであるか、またはその逆であるか;ii)前記特異的結合対の第1の官能基が、シクロアルケン、シクロアルキン、シクロプロパン、イソニトリル(イソシアニド)またはビニルボロン酸であり、前記結合対の第2の官能基が、テトラジンであるか、またはその逆であるか;iii)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルキンまたはマレイミドであり、前記結合対の第2の官能基が、チオールであるか、またはその逆であるか;iv)前記特異的結合対の第1の官能基が、共役ジエンであり、前記結合対の第2の官能基が、置換アルケンであるか、またはその逆であるか;v)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルケン、アルキンまたはアセチレン化銅であり、前記結合対の第2の官能基が、ニトロンであるか、またはその逆であるか;vi)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルデヒドまたはケトンであり、前記結合対の第2の官能基が、アルコキシアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンまたはヒドラジドであるか、またはその逆であるか;またはvii)前記特異的結合対の第1の官能基が、アルデヒド、ケトン、イソチオシアネート、カルボン酸またはその誘導体(例えば、エステル、無水物、ハロゲン化アシル、トシルおよびN-ヒドロスクシンイミド(NHS))であり、前記結合対の第2の官能基が、アミンであるか、またはその逆であるか;viii)官能基である、実施形態28に記載の融合性リポソーム。
【0157】
実施形態31:前記特異的結合対が、アルキン-アジドである、実施形態30に記載の融合性リポソーム。
【0158】
実施形態32:前記特異的結合対の前記第1の官能基が、前記結合対の前記相補的な第2の官能基と非共有結合を形成することができる、実施形態4~27のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0159】
実施形態33:前記特異的結合対の第1の官能基が、ビオチンであり、前記結合対の第2の官能基が、ビオチン結合ペプチドまたはビオチン結合タンパク質から選択される結合パートナーであるか、またはその逆である、実施形態32に記載の融合性リポソーム。
【0160】
実施形態34:前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジンおよび抗ビオチン抗体から選択される、実施形態33に記載の融合性リポソーム。
【0161】
実施形態35:前記ビオチン結合ペプチドが、AEGEFCSWAPPKASCGDPAK(配列番号1)、CSWRPPFRAVC(配列番号2)、CSWAPPFKASC(配列番号3)およびCNWTPPFKTRC(配列番号4)から選択される、実施形態34に記載の融合性リポソーム。
【0162】
実施形態36:前記融合性リポソームが、コレステロール(CHO)またはその誘導体をさらに含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0163】
実施形態37:前記融合性リポソームが、DOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPEまたはDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2Kおよび必要に応じてコレステロールを含み、ここで、PEG2Kは、約2kDaの分子量を有するPEGを表し、DOPCの相対モル量は、最大約80%であり、DOTAPの相対モル量は、最大約80%であり、DSPE-PEG2Kの相対モル量は、最大約20%であり、DOPEの相対モル量は、最大約20%であり、コレステロールの相対モル量は、最大約40%である、実施形態1~36のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0164】
実施形態38:前記融合性リポソームが、
52.5:35:0.6:10、52.5:35:1.25:10、52.5:35:2.5:10、52.5:35:5:10、52.5:35:0.6:5、52.5:35:1.25:5、52.5:35:2.5:5、52.5:35:5:5、65:20:5:10、50:35:5:10、52.5:35:1.25:7、52.5:35:1.25:5または52.5:35:2.5:7というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPE;または
52.5:35:0.6、52.5:35:1.25、52.5:35:2.5、52.5:35:5、52.5:35:0.6、52.5:35:1.25、52.5:35:2.5、52.5:35:5、65:20:5、50:35:5、52.5:35:1.25、52.5:35:1.25または52.5:35:2.5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K
を含む、実施形態37に記載の融合性リポソーム。
【0165】
実施形態39:前記融合性リポソームが、52.5:35:2.5:5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2K:DOPE;または52.5:35:2.5というモル比のDOPC:DOTAP:DSPE-PEG2Kを含む、実施形態38に記載の融合性リポソーム。
【0166】
実施形態40:前記リポソームの融解温度(Tm)が、45℃未満であり、その温度において、前記融合性リポソームが、非結晶転移相で維持されることにより、リポソームと細胞膜との融合に必要な膜の流動性がもたらされる、実施形態1~39のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0167】
実施形態41:前記融合性リポソームが、最大200nmのサイズ、例えば、約15nm~約200nm、約20nm~約100nm、約50nm~約150nm、約50nm~約90nm、約80nm~約100nm、約110nm~約200nm、例えば、約100nmを有する、実施形態1~40のいずれか1つに記載の融合性リポソーム。
【0168】
実施形態42:癌細胞を選択的に検出するための方法であって、前記癌細胞を実施形態1~39のいずれか1つに記載の融合性リポソームと接触させる工程;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出する工程;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程を含む、方法。
【0169】
実施形態43:癌患者における癌細胞の選択的な検出が、ナノ粒子に含められた制癌剤による癌の処置に対する前記癌患者の応答性を示唆する、実施形態42に記載の方法。
【0170】
実施形態44:応答性と判断された癌患者が、前記制癌剤を含むナノ粒子で処置される、実施形態43に記載の方法。
【0171】
実施形態45:癌細胞を選択的に検出するための方法であって、(a)前記癌細胞を実施形態4~41のいずれか1つに記載の官能化された融合性リポソームと接触させる工程;(b)前記癌細胞を、蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質と接触させる工程であって、ここで、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、工程;および(c)前記検出可能な作用物質が蛍光プローブである場合は、その蛍光プローブによって吸収される波長を有する光を細胞に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって、前記蛍光プローブを検出し;前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む、方法。
【0172】
実施形態46:前記検出可能な作用物質が、(a)cy3、cy5、cy5.5、cy7 cy9、FITC、フルオレセイン、alexa fluor790、alexa fluor750、alexa fluor700、alexa fluor680、alexa fluor660、alexa fluor647、alexa fluor633、alexa fluor594、585nm~800nmの範囲のQdot、蛍光プロトポルフィリンオリゴマー、イソシアニングリーン(ICG)から選択される蛍光プローブ;または(b)フルオレセインアナログ(例えば、ジアセテート修飾アナログ)、クマリンアナログ(例えば、py+BC690-(1-メチル-4-(2-オキソ-8-(ピロリジン-1-イル)-2H-ベンゾ[g]クロメン-3-イル)ピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート))、CFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)、ローダミンアナログ(例えば、gGlu-HMRG(γ-グルタミルヒドロキシメチルローダミングリーン))、クルクミノイドジフルオロボロンベースの腫瘍標的化γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって活性化可能な)蛍光プローブ(Glu-DFB)およびインドシアニンアナログ(例えば、AP-Glu(3H-インドリウム、2-[(1E)-2-[4-[[4-[[(4S)-4-アミノ-4-カルボキシ-1-オキソブチル]アミノ]フェニル]メトキシ]フェニル]エテニル]-1-(5-カルボキシペンチル)-3,3-ジメチル-,ブロミド(1:1))ならびに他の近赤外蛍光活性化分子から選択される活性化可能な蛍光プローブである、実施形態42~45のいずれか1つに記載の方法。活性化可能なフルオロフォアに対するエステル修飾は、フルオロフォアを非蛍光にし、そのフルオロフォアは、リポソームが癌細胞と融合し、続いて細胞質エステラーゼによって細胞質で切断されると、蛍光性になる。
【0173】
実施形態47:癌患者における癌細胞の選択的な検出が、ナノ粒子に含められた制癌剤による癌の処置に対する前記癌患者の応答性を示唆する、実施形態45または46に記載の方法。
【0174】
実施形態48:応答性と判断された癌患者が、前記制癌剤を含むナノ粒子で処置される、実施形態47に記載の方法。
【0175】
実施形態49:蛍光ガイド手術または標的化放射線治療によって癌を処置するための方法であって、前記方法は、実施形態42~48のいずれか1つに記載の方法および癌細胞を含む腫瘍を除去する工程を含む、方法。
【0176】
実施形態50:前記癌患者が、皮膚癌などの腫瘍のイメージングまたは全身イメージングを受けており、前記方法が、前記融合性リポソームおよび必要に応じて前記官能化された検出可能な作用物質を全身投与する工程または局所的に適用する工程;および前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって前記蛍光プローブを検出し、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画し、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出し、皮膚などの器官の領域または全身を走査し、それにより、腫瘍の位置および縁を明確化する工程を含む、実施形態42~48のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
実施形態51:実施形態50に記載の方法および癌細胞を含む腫瘍を除去する工程を含む、癌を処置するための方法。
【0178】
実施形態52:癌細胞の選択的検出を必要とする癌患者から取り出された組織または血液由来画分における癌細胞をエキソサイチュで選択的に検出するための実施形態42または45に記載の方法であって、前記方法は、前記融合性リポソーム、および必要に応じて、官能化された蛍光プローブを、全身投与するかまたは前記組織もしくは血液由来画分に適用する工程、ならびに前記組織または血液由来画分に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって前記蛍光プローブを検出し、それにより、前記癌細胞を選択的に検出する工程を含む、実施形態42または45に記載の方法。
【0179】
実施形態53:前記組織が、皮膚であり、前記癌患者が、皮膚癌を除去するための手術(モース術)を受けており、前記手術は、前記皮膚組織が、検出可能な癌細胞を有さなくなるまで反復される、実施形態52に記載の方法。
【0180】
実施形態54:前記血液由来画分中の循環腫瘍細胞(CTC)を選択的に検出するための、実施形態52に記載の方法。
【0181】
実施形態55:前記癌が、トリプルネガティブ乳癌などの乳癌、メラノーマ、肺癌、甲状腺癌および前立腺癌の群から選択される、実施形態42~54のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
実施形態56:癌細胞を選択的に検出し、癌を処置するための、実施形態42または45に記載の方法であって、前記方法は、前記融合性リポソームおよび必要に応じて前記官能化された検出可能な作用物質を全身投与するかまたは局所的に適用する工程であって、ここで、前記融合性リポソームは、前記検出可能な作用物質ならびに細胞傷害剤および/または免疫系活性化剤を含む、工程;前記検出可能な作用物質が、活性化可能な蛍光プローブまたは蛍光プローブである場合は、皮膚の領域または全身に照射し、蛍光プローブから放射される光を検出することによって前記蛍光プローブを検出する工程、前記検出可能な作用物質が造影剤である場合は、MRI、CTまたはPETデバイスによってシグナル強度の変化を解析することによって像を描画する工程、または前記融合性リポソームが、蛍光プローブと造影剤の両方を含む場合は、前記蛍光プローブと前記造影剤の両方を検出する工程;および必要に応じて、前記検出可能な作用物質を長時間繰り返し検出することによって、処置の応答をモニタリングする工程を含む、実施形態42または45に記載の方法。
【0183】
実施形態57:(a)実施形態5~41のいずれか1つに記載の融合性リポソームを含む第1の容器;(b)蛍光プローブおよび磁気共鳴画像法(MRI)用、コンピュータ断層撮影法(CT)用またはポジトロン放出断層撮影法(PET)用の造影剤から選択される検出可能な作用物質を含む第2の容器であって、前記検出可能な作用物質は、前記脂質分子の前記第1の官能基に結合することができる、結合対の相補的な第2の官能基で官能化されている、第2の容器;および(c)(a)の融合性リポソームおよび続いて(b)の検出可能な作用物質を癌患者に投与する工程を含む癌細胞を選択的に検出するための方法についての指示を含むパンフレットを備える、キット。
【0184】
本発明は、以下の非限定的な例によって例証される。
【実施例
【0185】
材料および方法:
脂質:DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン,Lipoid)、DSPE(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DOPC,Lipoid)、HSPC(水素添加ダイズホスホコリン,Lipoid)、DOTAP(1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド,Lipoid)、DSPE-PEG2000(N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、MPEG-2000-DSPE,Lipoid)、コレステロール(Sigma)、DOPE-FITC(社内合成)、DSPE-PEG4-アジド(社内合成)、DOPE-PEG4-アジド(社内合成)、DSPE-PEG4-ビオチン(社内合成)。
【0186】
PEG4は、約194Daの分子量を有するPEGを表す。
【0187】
イソシアニングリーン、カルディオグリーン(Sigma,カタログ番号21980)。
【0188】
無水エタノールを用いて、脂質を70℃で溶解する。
【0189】
薄膜水和法を用いた検出可能なリポソームの作製:
脂質をクロロホルムまたはクロロホルムメタノール混合物に溶解して、ガラス球状物内で完全に可溶化することができる。球状物を絶えず回転させながら、真空下または窒素気流下において蒸発させることにより、均一な薄膜を形成することができる。目に見える溶媒が蒸発した後、溶媒を真空下で1時間蒸発させる。
【0190】
Gd-DTPAまたはICGなどの検出可能な作用物質を含む水性緩衝液(例えば、PBS)を、使用するリン脂質に係る最高Tm超に予め加温する。球状物を同じ温度に加熱し、水性緩衝液を脂質薄膜に加える。ボルテックスして混合し、60分間回転させる。押出し成形機またはプローブ超音波処理またはマイクロフルイディクスベースのフローセルを用いて、リポソームにダウンサイズする。透析またはサイズ排除法を用いて、被包されていない材料を除去する。400RPMで混合しながら、エタノール-アミン基を25℃において1時間、5モル過剰量のNHS-リンカー-第2の官能基で修飾する。透析またはサイズ排除法を用いて、未結合リンカー-第2の官能基を除去する。
【0191】
エタノール注入を用いた免疫標識リポソームの作製:
リポソーム調製は、当該分野で周知の手法であり、例えば、Torchilin V.P.and Weissig V.,Liposomes:a practical approach 2nd edition(OUP Oxford,2003)に開示されているプロトコルに従って、行うことができる。
【0192】
本発明者らの場合は、脂質(Avanti-極性脂質またはリポイド)を、必要な組成に従って計量し、必要なリポソーム体積の10%という最終体積の無水EtOHに可溶化した。脂質-EtOH混合物をその脂質のTm(融解温度)超に加熱した。カルシウムまたはマグネシウムを含まず、pH=7.2~7.4のPBSへのEtOH注入を、同一の温度において行い、脂質-緩衝液を混合し、押出し成形機を用いて押出し成形して、約90nm~100nmという所望のサイズ分布のリポソームを得た。
【0193】
あるいは、脂質をガラス容器内のクロロホルムまたはクロロホルム-MeOH(2:1)またはクロロホルム-MeOH(3:1)に可溶化し、しっかり混合して、均一な溶液を得た。次いで、有機溶媒中の脂質を陰圧(150mBar)下で2時間蒸発させて、有機溶媒を除去し、それにより、ガラス容器上に脂質の薄膜を作った。フルオロフォアを含み(含有量は目的のフルオロフォアに依存する)、予熱され(脂質Tm超に)、濃縮された水溶液(例えば、PBS/0.9%NaCl/DDW/5%デキストロースを用いて、脂質の薄膜を水和した。例えば、インドシアニングリーン(ICG、カルディオグリーン)は、5%デキストロースに容易に可溶化され、リポソーム被包を可能にする。しかしながら、ICGは、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で凝集物を生成するので、リポソーム被包の目的ではPBSに適合しない。
【0194】
フルオロフォアを脂質に連結する場合(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-DOPE、そのフルオロフォアを脂質混合物に加え、EtOHに溶解した後、EtOH注入を行う。そのような蛍光標識された脂質はまた、薄膜水和法において、またはナノアセンブラーもしくは他のマイクロフルイディクスベースのリポソームアセンブリ方法を用いて、使用され得る。次いで、脂質水溶液を混合(ボルテックス)し、Tm超に加熱した。沈殿物が見えた場合、薄膜が十分に水和され、均一な乳濁溶液が得られるまで、超音波処理を行った。
【0195】
N8製剤と命名された非限定的な例を、通常、下記に示される研究において、癌細胞と選択的に融合するために使用した:
35:52.5:10:2.5というモル比のDOTAP:DOPC:DOPE:DSPE-PEG2000
【0196】
リポソームのサイズ測定を通例のとおり行い、この場合は動的光散乱(DLS,Malvern instruments)を用いて行ったが、クライオTEM電子顕微鏡法を用いて測定することもできる。
【0197】
Tm測定:サンプルを加熱し、次いで冷却し、サンプルの変化を計測する機械である示差走査熱量測定(DSC)を使用することによって、Tmを測定する。例えば、Epand R.M.High sensitivity differential scanning calorimetry of the bilayer to hexagonal phase transitions of diacylphosphatidylethanolamines(Chemistry and Physics of Lipids 1985)を参照のこと。本発明者らはまた、Avanti(登録商標)-Polar LipidsのウェブサイトおよびLipoidのウェブサイトを用いてTmを測定した。
【0198】
細胞媒介性標識のためのフルオロフォアの被包:
薄膜およびエタノール注入の場合、フルオロフォア(例えば、インドシアニングリーン(ICG))を、1mg/mlの濃度で使用したが、必要に応じ低下もしくは上昇させることができるか、または第1級アミンに共有結合でき、フルオレセイン上にそのフルオロフォアを非蛍光にする2つのエステル修飾を有する、官能化された活性化可能なフルオロフォアであるCFSE(5(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートN-スクシンイミジルエステル)。このフルオロフォアは、リポソームが癌細胞と融合し、続いて細胞質で切断されると、蛍光性になる。類似のエステル修飾を有する他の分子は、ThermoFisherによって入手可能である(cell trace:Blue、Violet、CFSE、Yellow、Far Redは、それぞれ375/410nm、405/450nm、495/519nm、546/579nm、630/661nmという励起/発光波長において使用され得る)。
【0199】
過剰量の被包されなかったフルオロフォアを、透析(2Lの緩衝液に対して5-1mlのリポソーム、24時間にわたって少なくとも3回交換した)またはサイズ排除法を用いて除去した。DOPEなどのエタノールアミン脂質を用いる場合、CFSE(および他の類似のThermofisherの分子プローブ)におけるNHSは、その脂質に共有結合し、そのフルオロフォアは、そのリポソームから漏出できないので、蛍光リポソームの安定性を改善する。
【0200】
活性化可能なフルオロフォアを有するリポソームを調製する場合は、エステルに結合した基を切断しない条件下で、これらのフルオロフォアを被包しなければならない。塩基性pHの条件および高温により、フルオレセインからのメチル-Esther切断が生じ、偽陽性が生じ得る。
【0201】
生成後のリポソームの修飾:
エタノールアミン基を含むリポソームを、押出し成形後に、NHSエステル化学反応(N-ヒドロキシスクシンイミド)を用いてリンカーおよびアジド(結合対の一方のメンバー)で化学修飾した。典型的には、NHS-ポリエチレングリコール(PEG)4-アジド(NHS基)を、第1級アミン基(DOPE脂質)1つあたり5モル当量で使用する。過剰量の未結合物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0202】
あるいは、予め修飾された脂質を用いてリポソームを作製することにより、銅依存性または銅非依存性のクリック反応を可能にする類似のリポソーム生成物を得た。簡潔には、PEG4-アルキンまたはアジドで予め修飾されたDSPEまたはDOPE脂質を、EtOH注入前に脂質混合物に組み込んだ。
【0203】
修飾抗体および修飾リポソームを用いる2STEPアプローチおよびOUTアプローチの作成:
2STEP:このアプローチでは、解除細胞を2工程で標識する。まず、それらの細胞を、官能化されたリポソームと接触させ、第2の工程において、それらの細胞を、官能化された抗体または検出可能なプローブまたはMRI/CT/PET/蛍光用のナノ粒子と接触させる。結合対の一方のメンバー(例えば、アジド)に共有結合的に連結されたリポソームを、適切な希釈度で細胞に対して直接使用した(または動物モデルでは静脈内(IV)注射した)後、処置された細胞を洗浄し(インビボの状況では適用されず)、結合対の相補的なメンバー(例えば、BCN)で修飾された、抗体、蛍光プローブ(インドシアニングリーン)、またはMRI/CT/PET/蛍光用のナノ粒子と反応させた。
【0204】
OUT:このアプローチでは、官能化された抗体または検出可能なプローブを外葉上に有するリポソームで癌細胞を1工程で標識する。結合対の一方のメンバー(例えば、アジド)に共有結合的に連結されたリポソームを、結合対の相補的なメンバー(例えば、BCN)を有する抗体またはインドシアニングリーンと反応させた。次いで、この修飾されたリポソームを、適切な希釈度で細胞に対して直接使用した(または動物モデルではIV注射した)後、処置された細胞を洗浄した(インビボの状況では適用されず)。
【0205】
実施例1:1工程手順を用いたトリプルネガティブ乳癌のインサイチュ検出
インドシアニングリーン(ICG)を含むリポソームを、4T1mCherry(トリプルネガティブ乳癌)腫瘍保有マウスにIV注射した。リポソーム注射の24時間後に、IVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用いて、マウスをICGシグナルおよびmCherryについて画像化した。左のパネルの画像は、腫瘍のmCherryシグナルを示しており(図1Aおよび図1C)、右のパネルの画像(図1Bおよび図1D)は、第1の結合対の例としてPEG-アジド(C)またはPEG-ビオチン(D)で修飾された、ICGがロードされたリポソームの注射の24時間後に記録された、ICGシグナルを示している。アジド官能基またはビオチン官能基が存在することにより、標識された癌細胞に結合するT細胞活性化剤(例えば、BCNまたはアビジンで官能化された抗CD3および抗CD8抗体)の投与によるそれらのリポソームのセラノスティックな使用が可能になるので、この方法は、癌細胞を可視化するだけでなく、それらに対するT細胞応答も誘起する。
【0206】
蛍光シグナルは、図1A図1Dに見られるように、蛍光腫瘍内への本発明者らのリポソームの共局在化を示し、ここで、リポソームシグナル(ICG)は、mCherryシグナルと重複している。
【0207】
図2A図2Cに示されているデータは、死後に集められたにもかかわらず、融合性リポソームが、蛍光イメージング支援外科手技、光線力学的療法(妥当な光力学性フルオロフォアを使用すると仮定して)または癌性塊の照射において、およびバイオプシーをエキソサイチュで解析するために、使用できることを示している。
【0208】
同様に、MRI/CT/PET造影剤を含むリポソームを、4T1mCherry(トリプルネガティブ乳癌)腫瘍保有マウスにIV注射する。リポソーム注射の24時間後に、mCherryに対してはIVIS(登録商標)Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を用い、MRI/CT/PET造影剤のシグナルに対しては適切なイメージングデバイスを用いて、マウスを画像化する。
【0209】
実施例2.2工程手順を用いた癌のインサイチュ検出
特異的結合対の第1の官能基(例えば、アジド)を含む融合性リポソームを静脈内注射し、30分~48時間後に、相補的な官能基を有する検出可能なプローブを含む第2のナノ粒子(例えば、BCNで官能化されたナノ金粒子、またはCTにおいて検出可能なBCN-ヨウ素を有するリポソーム、またはBCNに結合したICGをロードされたリポソーム)を注射する。第1の融合性リポソームおよび第2のナノ粒子の循環半減期および薬力学的プロファイルは、イメージングまでの最適な時間を規定し、肝臓および脾臓などの器官におけるオフターゲット標識を回避するために用いることができる。
【0210】
2つのタイプのリポソームまたは2つのナノ技術ベース粒子またはそれらの組み合わせを使用することにより、シグナル対ノイズを改善することができ、偽陽性を減少させることができる。癌細胞と選択的に融合する、第1の結合対を有する1つのリポソーム、および融合した細胞の検出を助ける、第2の結合対を有する第2のナノ粒子も、使用することができる。この組み合わせ(正に帯電したリポソームと、より長い循環時間を有する他のCT/MRI/蛍光の検出可能なリポソーム、または金ナノ粒子もしくは他の高分子ナノ粒子)は、シグナル対ノイズを改善するため、ならびに肝臓および脾臓などの組織における偽陽性を減少させるために、2工程注射の様式で用いることができる。第1のリポソームは、癌細胞との選択的な融合を起こして、第1の結合対を癌細胞の膜の外葉に付加するのに対して、第2のナノ粒子は、第2の結合対を用いて結合する。リポソームを最初に注射し、少なくとも2半減期を経て、第2のナノ粒子を注入することによって、肝臓および脾臓におけるシグナル対ノイズを改善することができる。インビボ条件下では、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)も使用することができ、ここで、第1の融合性リポソームが、脂質に結合した1つのフルオロフォアおよび特異的結合対の第1の官能基を有し、第2のリポソーム/ナノ粒子が、相補的な官能基、およびFRETにおいて使用でき、それら2つのフルオロフォアを有する2つのリポソームが近接した場合にシグナルをもたらす、第2のフルオロフォアを有し、これは、リポソームで標識された癌細胞の膜が、他方のフルオロフォアを有する第2のリポソームに近づくと、FRETが可能になり、シグナル蛍光シフトが起きることを意味する。
【0211】
実施例3.活性化可能な蛍光プローブを用いた癌のインサイチュ検出
手術中に使用される、エステラーゼで切断可能なフルオロフォアを有するリポソームを、静脈内に注射するか、または腫瘍組織、および新生物組織と疑われる周囲に灌注するために使用する。次いで、その組織を、食塩水溶液で洗浄して、未結合のリポソームおよび血液を除去して、シグナル対ノイズを改善する。リポソームが癌細胞と融合すると、フルオロフォア上のエステル基が除去され、使用されるフルオロフォアに対応する蛍光の励起波長および発光波長を用いて検出が可能になる。
【0212】
次いで、この手法を蛍光ガイド手術または標的化放射線治療に利用して、可視化された腫瘍を除去する。
【0213】
実施例4.癌細胞のエキソサイチュでの選択的な検出
1工程手順:新形成が疑われる組織(例えば、モース術の場合は皮膚)を摘出し、PBSまたは他の緩衝液で洗浄して血餅を除去し、シグナル対ノイズを改善し、5mM脂質の活性化可能なフルオロフォアリポソーム溶液に15分間浸漬する。リポソームで処置された組織を、PBSまたは他の生理学的等張性溶液(例えば、食塩水)で洗浄し、フルオロフォアに対応する励起波長および発光波長を用いて蛍光顕微鏡下で画像化する。
【0214】
2工程手順:新形成が疑われる組織を摘出し、PBSまたは他の緩衝液で洗浄して血餅を除去することにより、シグナル対ノイズを改善し、特異的結合対の官能基(例えば、アジド)を含む選択的な融合性リポソーム(例えば、5mM脂質)に15分間浸漬する。リポソームで処置された組織を、PBSまたは他の生理学的等張性溶液(例えば、食塩水)で洗浄し、5~500マイクログラム/mlの、相補的な官能基を含むフルオロフォア(例えば、DBCO-Cy5)の4℃の溶液に1時間浸漬し、洗浄し、フルオロフォアに対応する励起波長および発光波長を用いて蛍光顕微鏡下で画像化する。
【0215】
癌細胞が、解析された組織サンプルにおいて検出された場合、その疑われる領域からさらなる組織を取り出し、サンプル中にシグナルが検出されなくなるまで、上に記載されたように解析する。
【0216】
実施例5.血液中の循環癌細胞(CTC)の検出
生きている循環腫瘍細胞を単離するために、濾過などの種々のデバイスを使用する。
【0217】
これらの細胞を、識別のために抗CD45染色を必要とする白血球とともに共単離する。癌細胞は、必ずしも公知の標的マーカーを有するわけではないので、蛍光色素または活性化可能な色素を有する選択的な融合性リポソームを用いることにより、血液から単離された癌細胞を直接標識することができる。
【0218】
実施例6.腫瘍の全身処置、腫瘍の存在の検出、および処置の有効性の予測:
腫瘍保有マウスに、抗CD3および抗CD8に結合した、GdとICPとが共被包されたリポソーム(エフェクターT細胞活性化リポソーム)を、単回投与で、または試験される因子が注射間の時間である場合は反復投与で、投与した。これらのリポソームは、脂質頭部基(Avanti極性脂質)にDTPAキレート剤が予め結合された1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミン五酢酸(ガドリニウム塩)であるDSPE-DTPA(Gd)と統合され得る。
【0219】
1回目の処置が、抗CD3抗体および抗CD8抗体を同一の用量(マウス1匹あたり各100マイクログラムのmAb)で有する空のリポソームであったマウスに対して2回目の処置を行った。試験された2回目の処置の間隔は、48時間、48時間および96時間であった。GdおよびICGの計測を用いた、2回目の処置の24時間後の、腫瘍へのフルオロフォアの到達および蓄積を図3A図3Cに示す。死後に腫瘍から回収されたGdシグナルおよびインビボ研究中(生存マウス)に記録されたICGシグナルは、十分に相関しており、腫瘍への2回目の処置の到達について似た傾向を示す。図3Cには、Gdをロードされたリポソームの体内分布が示されており、それらは、単回処置と2回目の処置について類似のプロファイルを示している。肝臓および脾臓における蓄積は、組織特異的なマクロファージ/単球による取り込みが原因である。全身の画像が図4A図4Dに示されており、それらは、ICGシグナルを計測することによる、全身からのクリアランスおよび腫瘍部位における蓄積を示している(図4Bおよび図4D)。腫瘍のmCherryシグナルが、図4AおよびCに示されている。図3BにおけるICGシグナルの定量は、mCherry腫瘍シグナルによって測定された関心領域に基づいて行われた。
【0220】
画像を取得した後(図4Cおよび図4D)、マウスを屠殺し、器官を単離し、計量し、燃やして灰にし、1%硝酸に溶解し、0.45ミクロンフィルターで濾過した。器官に関連するGdレベルを、ICP元素分析を用いて測定して、到達組織1グラムあたりの注射量パーセントを測定した(図3C)。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
【配列表】
2022505714000001.app
【国際調査報告】