(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】改善された振動特性を有する操作機構、クラッチアクチュエータおよび変速機アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 19/04 20060101AFI20220106BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20220106BHJP
F16D 28/00 20060101ALI20220106BHJP
F16H 61/28 20060101ALI20220106BHJP
F16F 15/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F16H19/04 Z
F16H19/04 L
F16H25/20 Z
F16D28/00 Z
F16H61/28
F16F15/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522364
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2019076367
(87)【国際公開番号】W WO2020083610
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】102018126475.5
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン シャラー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュディ
【テーマコード(参考)】
3J048
3J062
3J067
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AB01
3J048BC01
3J048CB30
3J048EA07
3J062AA17
3J062AB01
3J062AB02
3J062AB05
3J062AB12
3J062AB22
3J062AB24
3J062AC07
3J062BA25
3J062CD03
3J062CD04
3J062CD22
3J062CD42
3J062CD64
3J067AA21
3J067AB21
3J067DB02
3J067DB32
3J067FB21
3J067GA01
(57)【要約】
操作機構であって、伝達方向(X)に対して平行に移動させられるように構成されている伝達要素(2)と、伝達要素(2)を移動させるために操作運動(Y)を実施するように構成されている操作要素(1)とを有し、伝達要素(2)と操作要素(1)との間に変換機構(9)が設けられており、変換機構(9)は、操作要素(1)の操作運動(Y)を伝達要素(2)の移動に変換するように構成されており、操作機構は、少なくとも変換機構(9)に、好ましくは弾性的な予荷重を導入するように構成されている緊締要素(6)を有する、操作機構が開示される。さらに、このような操作機構を有するクラッチアクチュエータおよび変速機アクチュエータが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作機構であって、
伝達方向(X)に対して平行に移動させられるように構成されている伝達要素(2)と、
前記伝達要素(2)を移動させるために操作運動(Y)を実施するように構成されている操作要素(1)と
を有し、
前記伝達要素(2)と前記操作要素(1)との間に変換機構(9)が設けられており、該変換機構(9)は、前記操作要素(1)の前記操作運動(Y)を前記伝達要素(2)の移動に変換するように構成されており、
少なくとも前記変換機構(9)に、好ましくは弾性的な予荷重を導入するように構成されている緊締要素(6)を有する、
操作機構。
【請求項2】
前記緊締要素(6)は、前記予荷重を前記伝達要素(2)に加えるように構成されている、請求項1記載の操作機構。
【請求項3】
前記緊締要素(6)は、特にばね要素またはゴム要素として形成されている、かつ/または
前記緊締要素(6)は、前記操作機構のハウジング(7)内にまたは前記操作機構の要素に支持されている、かつ/または
前記緊締要素(6)は、前記伝達要素(2)または前記操作要素(1)に直接または中間要素を介して接触している、請求項1または2記載の操作機構。
【請求項4】
前記変換機構(9)は、回転運動、特に前記操作要素(1)の回転運動を前記伝達方向(X)に対して平行な前記伝達要素(2)の移動に変換するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項5】
前記変換機構(9)は、特に歯列、ボールねじ伝動装置、運動ねじ山、スピンドル伝動装置またはウォームねじ山を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項6】
前記操作運動(Y)を実施するために前記操作要素(1)を運動させるように構成されている駆動装置(3)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項7】
前記操作機構は、前記予荷重を、特に保持力、保持モーメントまたはロック手段によって支持するように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項8】
駆動運動を前記操作要素(1)の前記操作運動(Y)に変換するように構成されている伝動装置(4)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項9】
前記伝動装置(4)は、特に歯車伝動装置、ウォーム伝動装置またはベルト伝動装置を有する、かつ/または
前記伝動装置(4)は、前記緊締要素(9)によって導入された前記予荷重が前記伝動装置(4)にも加えられるように構成されている、請求項8記載の操作機構。
【請求項10】
前記伝達方向(X)を中心とする前記伝達要素(2)の回動運動を阻止するように構成されている回動防止部材(5)を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項11】
前記伝達要素(2)は、前記伝達方向(X)への移動によって、クラッチを切るように構成されているか、または変速機のギヤを入れるかもしくは外すように構成されているか、または変速機のゲートを選択するように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の操作機構を有するクラッチアクチュエータ。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の操作機構を有する変速機アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された振動特性を有する操作機構、クラッチアクチュエータならびに変速機アクチュエータに関する。
【0002】
操作要素の操作運動を伝達要素の移動に変換するように構成されている操作機構は、この変換のために、特に操作要素が操作運動を行っていない無負荷状態において遊びを有している機構を有する。このような機構は、例えばボールねじ伝動装置または歯列として形成されている。このような操作機構が車両内、特に車両のクラッチアクチュエータまたは変速機アクチュエータ内に存在する場合、この操作機構は、特に車両の原動機または(クラッチアクチュエータの場合には)クラッチの揺動に起因して発生する振動によって強い負荷を受ける。
【0003】
したがって、本発明の課題は、改善された振動特性を有する操作機構、クラッチアクチュエータおよび変速機アクチュエータを提供することである。
【0004】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。有利な改良形態は従属請求項の対象である。
【0005】
本発明によれば、操作機構であって、
- 伝達方向に対して平行に移動させられるように構成されている伝達要素と、
- 伝達要素を移動させるために操作運動を実施するように構成されている操作要素と
を有し、
伝達要素と操作要素との間に変換機構が設けられており、変換機構は、操作要素の操作運動を伝達要素の移動に変換するように構成されており、
- 少なくとも変換機構に予荷重を導入するように構成されている緊締要素を有する、
操作機構が提案されている。
【0006】
予荷重は、好ましくは弾性的な予荷重として形成されている。
【0007】
緊締要素によって、好ましくは変換機構に力またはモーメント、すなわち予荷重を加えることができる。操作機構はさらに、好ましくは予荷重によって変換機構の複数の要素が互いに緊締されるように構成されている。緊締は、特に無負荷状態において、すなわち、操作要素によって操作運動が実施されず、伝達要素が移動させられないときに行われる。
【0008】
したがって、予荷重は、特に変換機構に基本荷重を加える。これによって、変換機構内で無負荷状態において生じる可能性のある遊びが発生しない。これは、予荷重によってすべての要素が互いに接触しているかもしくは互いに接触状態に保たれるからである。
【0009】
予荷重によって生じる接触は、好ましくは、操作要素の初期の操作運動が、伝達要素の移動、好適には伝達方向への移動に直接変換されるように形成されている。
【0010】
操作機構は、好ましくは伝達要素と操作要素との間で予荷重を支持するように構成されている。
【0011】
好ましくは、緊締要素は、予荷重を伝達要素に加えるように構成されている。このことは、好ましくは伝達方向の方向への力の形態で行われる。
【0012】
好ましくは、緊締要素は、特にばね要素またはゴム要素として形成されている。これによって有利には、材料特性またはばね定数が既知であることにより、緊締要素によって生ぜしめられる正確な予荷重を決定することができる。
【0013】
好ましくは、緊締要素は、操作機構のハウジング内に直接または中間要素を介して支持されている。代替的に、緊締要素は操作機構の要素に支持されている。
【0014】
代替的または付加的に、緊締要素は、伝達要素または操作要素に直接または中間要素を介して接触している。
【0015】
変換機構は、好ましくは回転運動、特に操作要素の回転運動を伝達方向に対して平行な伝達要素の移動に変換するように構成されている。
【0016】
このように構成された変換機構に緊締要素によって伝達方向の力が加えられると、変換機構でモーメントが形成される。このモーメントは他の要素で支持されなければならない。したがって、伝達要素に力を加えることによって、変換機構の緊締を得ることができる。
【0017】
好ましくは、変換機構は、特に歯列、ボールねじ伝動装置、運動ねじ山、スピンドル伝動装置またはウォームねじ山を有する。これらは、さらに好ましくは、操作要素の操作運動を伝達要素の伝達方向への移動に変換するように構成されている。
【0018】
好ましくは、操作機構は、操作運動を実施するために操作要素を運動させるように構成されている駆動装置を有する。駆動装置は、特に電動モータまたは空気圧式あるいは液圧式のアクチュエータとして形成されている。これによって操作機構は自動化されており、このことは、特に商用車で使用されるクラッチアクチュエータまたは変速機アクチュエータにおいて有利である。駆動装置は、さらに好ましくは、操作要素に接触していて、操作要素に操作運動を実施させる。特に好ましくは、駆動装置と操作要素との間に少なくとも1つの中間要素が設けられていて、駆動装置の駆動運動を操作運動に変換する。このような中間要素は、特に伝動装置を有する。
【0019】
有利な実施形態では、駆動装置が緊締要素として形成されている。この場合、無負荷状態において、駆動装置が予荷重、すなわち、力またはモーメントを少なくとも変換機構に導入し、これによって、変換機構の要素がその遊びを相応に克服し、操作要素が操作運動を実施しているかのように、同様に互いに接触する。この実施形態は、付加的な緊締要素を省くことができるという利点を有する。
【0020】
操作機構は、好ましくは予荷重を、特に保持モーメント、保持力またはロック手段によって支持するように構成されている。
【0021】
支持は、特に好ましくは駆動装置によって行われる。この駆動装置は、さらに好ましくは、無負荷状態においてロックされるかまたは少なくとも予荷重に抗する保持モーメントもしくは保持力を加えるように構成されている。駆動装置が電動モータを有する場合、支持は好ましくは電動モータのリラクタンストルクによって行われる。
【0022】
好ましくは、操作機構は、駆動運動を操作要素の操作運動に変換するように構成されている伝動装置を有する。
【0023】
この場合、駆動運動は、好ましくは駆動装置によって生ぜしめられる。この駆動装置は、さらに好ましくは伝動装置に接続されている。したがって有利には、比較的小さな力または比較的小さなモーメントを伝動装置に導入するのみで済む駆動装置を設ける可能性を伝動装置によって提供することができる。
【0024】
好ましくは、伝動装置は、特に歯車伝動装置、ウォーム伝動装置またはベルト伝動装置を有する。
【0025】
代替的または付加的に、伝動装置は、緊締要素によって導入された予荷重が伝動装置にも加えられるように構成されている。これによって有利には、伝動装置の緊締が達成されるので、伝動装置においても、特に無負荷状態において生じ得る遊びが克服される。
【0026】
好ましくは、操作機構は、伝達方向を中心とする伝達要素の回動運動を阻止するように構成されている回動防止部材をさらに有する。これによって、操作要素の操作運動時に、伝達要素が伝達方向を中心とする回動運動を実施しないことが保証される。その代わりに、操作運動は完全に伝達方向に変換される。
【0027】
操作要素の操作運動は、好ましくは回転運動、特に好ましくは伝達方向を中心とする回転運動である。
【0028】
伝達要素は、好ましくは伝達方向への移動によって、クラッチを切るように構成されている。代替的に、伝達要素は、変速機のギヤを入れるかもしくは外すように構成されている。このために伝達要素は、好ましくは変速機の相応のシフト要素を動かすように構成されている。代替的に、伝達要素は、変速機のゲートを選択するように構成されている。これは、好ましくは、変速機内で伝達要素が相応のシフト要素を位置調整することによって、シフト要素がギヤを入れるかもしくは外すことができることと理解されるべきである。このために伝達要素は、好ましくは変速機の相応のシフト要素を動かして、このシフト要素を相応のゲートに係合させるように構成されている。操作機構および特に伝達要素のこの構成によって、この操作機構を、自動車技術もしくは駆動技術における特別な用途のために構成することができる。例えばこの操作機構を、好ましくはクラッチアクチュエータまたは変速機アクチュエータに設けることができる。
【0029】
本発明によれば、上述した操作機構を有するクラッチアクチュエータがさらに提案されている。この操作機構によって、クラッチアクチュエータは、好ましくはクラッチを操作する、特に切るように構成されている。
【0030】
本発明によれば、上述した操作機構を有する変速機アクチュエータがさらに提案されている。この操作機構によって、変速機アクチュエータは、好ましくは変速機のギヤを入れるかもしくは外すようにまたはゲート選択を実施するように構成されている。
【0031】
前述の実施形態および特徴は、任意に互いに組み合わせることができ、それによって構成され得るすべての対象は、本発明に係る対象である。
【0032】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付の図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る操作機構の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明に係る操作機構の第2の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明に係る操作機構の第3の実施形態を示す図である。
【0034】
【0035】
ロッドの形態で左から右に向かって延在する伝達要素2が示されている。伝達要素2は、伝達方向Xに対して平行に移動させられるように構成されている。伝達要素2は上面に歯列(図示せず)を有する。したがって伝達要素2はラックとして形成されている。伝達要素2は、その左側の端部でもってクラッチ(図示せず)を操作するもしくは切るように構成されている。これは、伝達要素2が伝達方向Xでクラッチに接触し、伝達方向Xへの移動によりクラッチを切ることによる。
【0036】
さらに、ピニオンとして形成された操作要素1が示されている。操作要素1は、図平面に対して垂直に方向付けられた回転軸線1aを中心として回転可能に形成されている。ピニオンの歯列(図示せず)は伝達要素2の歯列に噛み合っている。この場合、両歯列は変換機構9を形成しており、この変換機構9は、両歯列の噛合い領域において、破線の枠によって示されている。変換機構9は、操作要素1の操作運動Y、本実施例では回転軸線1aを中心とするピニオンの回転を、伝達要素2の伝達方向Xに平行な移動に変換するように構成されている。
【0037】
操作要素1は、駆動装置3、例えば電動モータの軸(図示せず)に接続されている。これによって操作要素1を回転軸線1aを中心として回転させることができるので、操作要素1による操作運動Yの実施が可能になる。
【0038】
図示した操作機構は、上述した通り、伝達要素2の左側の端部によってクラッチを操作するように構成されている。クラッチを操作するために、操作要素1は駆動装置3によって操作運動Yさせられる。操作要素1の操作運動Yは、変換機構9によって、伝達要素2の伝達方向Xへの移動に変換される。この場合、伝達要素2の左側の端部がクラッチに突き当たり、伝達方向Xへの移動によってクラッチを切る。
【0039】
一方、クラッチが締結されていて、操作機構が無負荷状態にあり、したがって伝達要素2の左側の端部が、クラッチを切るのに十分なほど強くクラッチを押圧していない場合には、伝達要素2の左側の端部とクラッチとの接触部を介して、クラッチからの振動もしくはパワートレーン全体からの振動が操作機構に伝達される。
【0040】
さらに、特にこの実施形態で操作要素1と伝達要素2との間の歯列として形成されている変換機構9は、遊びを有している場合がある。伝達要素2に伝達される振動は、この遊びに基づき変換機構9の歯列同士の相対運動を引き起こし、これによって、歯列の個々の歯が互いにぶつかり合って摩耗してしまう。
【0041】
それゆえ、伝達要素2の右側に、さらに緊締要素6が接続されている。緊締要素6はばねとして形成されていて、このばねの右側は操作機構のハウジング7内に支持されている。緊締要素6は、伝達要素2の、緊締要素6が直接接触している右側の端部に、伝達方向Xに対して平行な力の形態の予荷重を加えるように構成されている。
【0042】
この予荷重は、少なくともこの予荷重の一部が変換機構9において、特に歯列において支持されるように作用する。変換機構9の歯列を介して、予荷重はさらに駆動装置3に伝達される。駆動装置3は、この予荷重に抗して作用するように構成されている。駆動装置3が電動モータとして形成されている場合、このモーメントはリラクタンストルクとして加えられ得る。
【0043】
これによって、歯列内の遊びが克服されるように形成されている特定の高さの予荷重が常に変換機構9に加えられる。すなわち、操作要素1と伝達要素2とは、無負荷状態においても予荷重によって接触している。したがって、変換機構9は遊び無しに構成されている。
【0044】
図2は、本発明に係る操作機構の第2の実施形態を示す。
【0045】
ロッドの形態で左から右に向かって延在する伝達要素2が示されている。伝達要素2は、伝達方向Xに対して平行に移動させられるように構成されている。伝達要素2は、その左側の端部でもってクラッチ(図示せず)を操作するもしくは切るように構成されている。これは、伝達要素2が伝達方向Xでクラッチに接触してクラッチを切ることによる。
【0046】
さらに、ナットとして形成された操作要素1が示されている。操作要素1は、伝達方向Xに対して平行に方向付けられた回転軸線1aを中心として操作方向Yで回転可能に形成されている。操作要素1は、本実施形態では中空軸として構成されている駆動要素3aを介して、駆動装置3、例えば電動モータに接続されており、これによって操作要素1は、回転軸線1aを中心として回転可能である。駆動要素3aは、駆動運動を操作要素1に加えるように構成されている。駆動装置3は、駆動運動を駆動要素3aに加えるように構成されている。
【0047】
伝達要素2と操作要素1とは、互いに同軸に方向付けられていて、伝達要素2は操作要素1を貫通している。さらに、伝達要素2は、操作要素1の右側で、駆動要素3aならびに駆動装置3をも貫通している。駆動要素3aと駆動装置3とは、伝達要素2に対して同軸に方向付けられている。
【0048】
操作要素1と伝達要素2との間に、循環するボール8を有するボールねじ伝動装置が設けられている。ボール8はボールガイド(図示せず)内でガイドされており、ボールガイドは伝達要素2の外面および操作要素1の内面に位置している。この場合、ボールねじ伝動装置が変換機構9である。変換機構9は、破線の枠によって示されている。
【0049】
変換機構9によって、操作要素1の操作運動Yが伝達要素2に伝達され、それに基づき伝達要素2は伝達方向Xへ移動させられる。
【0050】
さらに、伝達要素2の右側の端部に回動防止部材5が設けられている。回動防止部材5は、伝達方向Xもしくは回転軸線1aを中心とする伝達要素2の回動運動を形状接続式に阻止するように構成されており、これによって、操作運動Yが完全に伝達方向Xへの移動に変換される。
【0051】
図示した操作機構は、上述した通り、伝達要素2の左側の端部によってクラッチを操作するように構成されている。クラッチを操作するために、操作要素1は駆動装置3によって操作運動Yさせられる。操作要素1の操作運動Yは、変換機構9によって伝達要素2の伝達方向Xへの移動に変換される。この場合、伝達要素2の左側の端部がクラッチに突き当たり、伝達方向Xへの移動によってクラッチを切る。
【0052】
一方、クラッチが締結されていて、操作機構が無負荷状態にあり、したがって伝達要素2の左側の端部が、クラッチを切るのに十分なほど強くクラッチを押圧していない場合には、伝達要素2の左側の端部とクラッチとの接触部を介して、クラッチからの振動もしくはパワートレーン全体からの振動が操作機構に伝達される。
【0053】
特に本実施形態で操作要素1と伝達要素2との間のボールねじ伝動装置として形成されている変換機構9は、遊びを有している場合がある。伝達要素2に伝達される振動は、この遊びに基づきボール8同士の相対運動および/またはボールガイド同士の相対運動を引き起こし、これによって、個々のボール8が互いにぶつかり合って摩耗してしまうか、またはこれによってボールガイドが摩耗してしまう。
【0054】
それゆえ、伝達要素2の右側に、さらに緊締要素6が接続されている。緊締要素6は、
図1に示した緊締要素6と同様にばねとして形成されていて、このばねの右側は操作機構のハウジング7内に支持されている。この緊締要素6も、伝達要素2の、緊締要素6が直接接触している右側の端部に、伝達方向Xに対して平行な力の形態の予荷重を加えるように構成されている。
【0055】
この予荷重は、少なくともこの予荷重の一部が変換機構9において、特にボールねじ伝動装置において支持されるように作用する。さらにこの支持によって、変換機構9において、伝達要素2と操作要素1との間でトルクが形成される。変換機構9のボールねじ伝動装置と駆動要素3aとを介して、予荷重はさらに駆動装置3に伝達される。駆動装置3は、この予荷重に抗して作用するモーメントを発生させるように構成されている。駆動装置3が電動モータとして形成されている場合、このモーメントはリラクタンストルクとして加えられ得る。
【0056】
これによって、ボールねじ伝動装置内の遊びが克服されるように形成されている特定の高さの予荷重が常に変換機構9に加えられる。すなわち、操作要素1と伝達要素2とは、無負荷状態においても予荷重によって接触している。したがって、変換機構9は遊び無しに構成されている。
【0057】
図3は、本発明に係る操作機構の第3の実施形態を示す。
【0058】
この実施形態は実質的に、
図2に示した操作機構の拡張形態である。
【0059】
ロッドの形態で左から右に向かって延在する伝達要素2が示されている。伝達要素2は、伝達方向Xに対して平行に移動させられるように構成されている。伝達要素2は、その左側の端部でもってクラッチ(図示せず)を操作するもしくは切るように構成されている。これは、伝達要素2が伝達方向Xでクラッチに接触してクラッチを切ることによる。
【0060】
さらに、ナットとして形成された操作要素1が示されている。操作要素1は、伝達方向Xに対して平行に方向付けられた回転軸線1aを中心として操作方向Yで回転可能に形成されている。操作要素1は、第1の歯車4aおよび第2の歯車4bを有する歯車伝動装置として形成されている伝動装置4と、本実施形態では伝動装置4の入力軸として構成されている駆動要素3aとを介して、駆動装置3、例えば電動モータに接続されており、これによって操作要素1は、回転軸線1aを中心として回転可能である。駆動要素3aは、駆動運動を伝動装置4に導入し、ひいては操作要素1に伝達するように構成されている。駆動装置3は、駆動運動を駆動要素3aに加えるように構成されている。
【0061】
伝達要素2と操作要素1とは、互いに同軸に方向付けられていて、伝達要素2は操作要素1を貫通している。駆動要素3aならびに駆動装置3は、伝達方向Xに対してずらされて配置されている。
【0062】
操作要素1と伝達要素2との間に、循環するボール8を有するボールねじ伝動装置が設けられている。ボール8はボールガイド(図示せず)内でガイドされており、ボールガイドは伝達要素2の外面および操作要素1の内面に位置している。この場合、ボールねじ伝動装置が変換機構9である。変換機構9は、破線の枠によって示されている。
【0063】
さらに、伝達要素2は、回動防止部材5に接触している。回動防止部材5は実質的に、
図2に示した回動防止部材5と同様に形成されており、これによって、操作運動Yが完全に伝達方向Xへの移動に変換されることが保証されている。
【0064】
図示した操作機構は、上述した通り、伝達要素2の左側の端部によってクラッチを操作するように構成されている。クラッチを操作するために、操作要素1は、駆動要素3aと伝動装置4とを介して駆動装置3によって操作運動Yさせられる。操作要素1の操作運動Yは、変換機構9によって伝達要素2の伝達方向Xへの移動に変換される。この場合、伝達要素2の左側の端部がクラッチに突き当たり、伝達方向Xへの移動によってクラッチを切る。
【0065】
一方、クラッチが締結されていて、操作機構が無負荷状態にあり、したがって伝達要素2の左側の端部が、クラッチを切るのに十分なほど強くクラッチを押圧していない場合には、伝達要素2の左側の端部とクラッチとの接触部を介して、クラッチからの振動もしくはパワートレーン全体からの振動が操作機構に伝達される。
【0066】
さらに、特に本実施形態で操作要素1と伝達要素2との間のボールねじ伝動装置として形成されている変換機構9は、遊びを有している場合がある。さらに、伝動装置4の第1の歯車4aと第2の歯車4bとの間にも、遊びが生じる場合がある。伝達要素2に伝達される振動は、この遊びに基づきボール8同士の相対運動および/または変換機構9の操作要素1および伝達要素2に設けられたボールガイド同士の相対運動を引き起こし、これによって、個々のボール8が互いにぶつかり合って摩耗してしまうか、またはボールガイドが摩耗してしまう。さらに、第1の歯車4aと第2の歯車4bとの間で歯列の相対運動が生じる場合もあり、これによって、第1の歯車4aと第2の歯車4bとの間で個々の歯が互いにぶつかり合い、ひいては摩耗してしまう。
【0067】
したがって、この実施例では、操作機構の複数の伝達箇所が、潜在的に摩耗しやすくなっている。
【0068】
それゆえ、伝達要素2の右側に、さらに緊締要素6が接続されている。緊締要素6は、
図1および
図2に示した緊締要素6と同様にばねとして形成されていて、このばねの右側は操作機構のハウジング7内に支持されている。この緊締要素6も、伝達要素2の、緊締要素6が直接接触している右側の端部に、伝達方向Xに対して平行な力の形態の予荷重を加えるように構成されている。
【0069】
この予荷重は、少なくともこの予荷重の一部が変換機構9において、特にボールねじ伝動装置において支持されるように作用する。変換機構9のボールねじ伝動装置を介して操作要素1にモーメントが加えられ、このモーメントは伝動装置4と駆動要素3aとを介してさらに駆動装置3に伝達される。駆動装置3は、このモーメントひいては予荷重に抗して作用するモーメントを発生させるように構成されている。駆動装置3が電動モータとして形成されている場合、このモーメントはリラクタンストルクとして加えられ得る。
【0070】
これによって、ボールねじ伝動装置内および/またはねじ山4内の遊びが克服されるように形成されている特定の高さの予荷重が常に変換機構9に加えられる。すなわち、操作要素1と伝達要素2とは、無負荷状態においても予荷重によって接触している。したがって、変換機構9は遊び無しに構成されている。
【0071】
図示した実施例は、本発明の対象を限定する効果をもつものではない。むしろ、個々の特徴の変化形、組み合わせ、交換または省略によって、別の実施形態を得ることができ、これらの別の実施形態も同様に本発明の対象とみなすことができる。
【0072】
したがって、例えば回動防止部材5は、単に任意選択的なものとみなされ得る。
【0073】
さらに、操作要素1がナットとして形成され、伝達要素2がロッドとして形成されている場合に、変換機構9は、スピンドル伝動装置、運動ねじ山として形成されていてもよいし、他の適切な実施形態として形成されていてもよい。
【0074】
伝動装置4も、必ずしも第1の歯車4aと第2の歯車4bとを有する伝動装置として形成されていなくてもよい。代わりに、伝動装置4は、代替的にまたは付加的にもウォーム伝動装置、ベルト伝動装置、または他の適切な伝動装置実施形態を有していてもよく、また、1つよりも多くの伝達段を有していてもよい。
【0075】
さらに、伝動装置は、必ずしも操作要素がナットとして形成されている実施形態において設けられていなくてもよい。
図1に示した実施形態および別の実施形態も、操作要素1と伝達要素2との間に伝動装置4を有していてもよい。
【0076】
さらに、緊締要素6は、必ずしも並進的に作用するばねとして形成されていなくてもよい。さらに、例えば相応の結合部を有するねじりばねとして形成することが可能である。緊締要素6が、伝達要素2に予荷重を加えるように構成されていることも、必ずしも必要ではない。予荷重は、代替的または付加的に、操作要素1または他の要素、例えば歯車4a,4bの一方に加えられてもよい。
【0077】
緊締要素は、予荷重を、直接的にではなく中間要素を介して、特に操作要素1または伝達要素2に加えてもよい。
【0078】
さらに、駆動装置3は、必ずしも電動モータとして形成されていなくてもよい。代わりに、ここに液圧式または空気圧式の駆動装置が設けられていてもよい。
【0079】
さらに、操作運動Yは、必ずしも回転軸線1aを中心とする回転運動として形成されなくてもよい。操作機構、特に変換機構9および/または伝動装置4は、並進的な操作運動Yまたは少なくとも並進的な成分を有する操作運動Yも伝達要素2の伝達方向Xへの移動に変換されるように構成されていてもよい。
【0080】
最後に、予荷重を支持するためには、必ずしも駆動装置のモーメントが使用されなくてもよい。代わりに、図示された実施形態においても別の実施形態においても、ロック手段が設けられていてもよい。このロック手段は、無負荷状態においてロックされるように構成されている。これによって、ロック手段に対する予荷重の支持が行われる。ロック手段は、特に駆動装置3、伝動装置4、または駆動運動もしくは操作運動Yを伝達要素2の伝達方向に沿った移動に変換するように構成されている他の要素に設けられていてもよい。
【0081】
図1、
図2および
図3に示した実施形態は、クラッチを切るための操作機構に関する。この場合、この操作機構は、クラッチアクチュエータに設けられていてもよい。さらに、伝達要素2が、変速機内の要素を操作するように構成されている別の実施形態が可能である。この要素は、例えばギヤを入れるかもしくは外すようにまたはゲート選択を実施するように構成されている。したがって、操作機構は、変速機アクチュエータに設けられていてもよく、この場合、このような変速機アクチュエータは操作機構によって、改善された振動特性をも有する。
【符号の説明】
【0082】
1 操作要素
1a 回転軸線
2 伝達要素
3 駆動装置
3a 駆動要素
4 伝動装置
4a 第1の歯車
4b 第2の歯車
5 回動防止部材
6 緊締要素
7 ハウジング
8 ボール
9 変換機構
X 伝達方向
Y 操作運動
【国際調査報告】