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特表2022-505766気体透過性膜およびそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】気体透過性膜およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20220106BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/08 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/44
B01D71/60
B01D71/28
B01D71/08
B01D71/06
B01D71/38
B01D71/52
B01D71/70 500
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/48
B01D71/68
B01D71/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522425
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019058331
(87)【国際公開番号】W WO2020087067
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/751,529
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ダブリュー エス ウィンストン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヤン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006KE07R
4D006KE16R
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MB04
4D006MB09
4D006MC05X
4D006MC07X
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC28
4D006MC33X
4D006MC39
4D006MC40X
4D006MC46
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC57
4D006MC58
4D006MC60
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65
4D006NA03
4D006NA46
4D006PA01
4D006PA05
4D006PB18
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB65
4D006PB66
4D006PB67
4D006PB70
(57)【要約】
膜、膜を作製する方法、および膜を使用する方法が、本明細書に記載される。膜は、支持層と、支持層の上に配置された選択的ポリマー層と、を含んでいてもよい。選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックス(例えば、親水性ポリマー、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物、親CO性エーテル、またはこれらの組み合わせ)と、選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンと、を含んでいてもよい。膜を使用して、二酸化炭素を水素と分離することができる。本明細書に記載される膜を使用して合成ガスを精製する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、
前記支持層の上に配置された選択的ポリマー層とを含む膜であって、前記選択的ポリマー層が、選択的ポリマーマトリックスと、前記選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンとを含む、膜。
【請求項2】
前記選択的ポリマーマトリックスが、親水性ポリマー、アミノ化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記アミノ化合物が、アミン含有ポリマーを含む、請求項2に記載の膜。
【請求項4】
前記アミン含有ポリマーが、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
前記アミン含有ポリマーが、ポリビニルアミンを含む、請求項4に記載の膜。
【請求項6】
前記アミノ化合物が、低分子量アミノ化合物を含む、請求項2~5のいずれかに記載の膜。
【請求項7】
前記低分子量アミノ化合物が、1,000Da未満の分子量を有する、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
前記低分子量アミノ化合物が、一級アミンの塩または二級アミンの塩を含む、請求項6または7に記載の膜。
【請求項9】
前記低分子量アミノ化合物が、以下の一般式によって定義される塩を含み、
【化1】
式中、R、R、R、およびRは、水素、または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは、0~4の範囲の整数であり、Am+は、1~3の価数を有するカチオンであり、mは、前記カチオンの価数に等しい整数である、請求項6~8のいずれかに記載の膜。
【請求項10】
前記低分子量アミノ化合物が、アミノイソ酪酸-カリウム塩、アミノイソ酪酸-リチウム塩、アミノイソ酪酸-ピペラジン塩、グリシン-カリウム塩、グリシン-リチウム塩、グリシン-ピペラジン塩、ジメチルグリシン-カリウム塩、ジメチルグリシン-リチウム塩、ジメチルグリシン-ピペラジン塩、ピペラジン-2-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジン-2-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-2-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジン-4-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジン-4-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-4-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジン-3-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジン-3-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-3-カルボン酸-ピペラジン塩、およびこれらのブレンドからなる群から選択される塩を含む、請求項6~9のいずれかに記載の膜。
【請求項11】
前記低分子量アミノ化合物が、アミノ酸塩を含む、請求項6~10のいずれかに記載の膜。
【請求項12】
前記アミノ酸塩が、以下の式によって定義され、
【化2】
式中、前記アミノ酸中のそれぞれの場合について独立して、R1、R2、R3およびR4の各々は、以下の1つから選択されるか、
【化3】
またはR1およびR3は、これらが接続する原子と共に、nが1の場合には、以下の構造によって定義される5員ヘテロ環を形成するか、もしくはnが2の場合には、以下の構造によって定義される6員ヘテロ環を形成する、請求項11に記載の膜。
【化4】
【請求項13】
前記アミノ酸塩が、グリシン酸塩、サルコシン酸塩、またはアミノイソ酪酸塩を含む、請求項11または12に記載の膜。
【請求項14】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミンなどのポリアミン、ポリビニルアミン、またはポリエチレンイミン、ポリシロキサン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項2~13のいずれかに記載の膜。
【請求項15】
前記選択的ポリマーマトリックスが、親水性ポリマー、アミン含有ポリマー、および低分子量アミノ化合物を含む、請求項2~14のいずれかに記載の膜。
【請求項16】
前記選択的ポリマーマトリックスが、親CO性エーテルをさらに含む、請求項1~15のいずれかに記載の膜。
【請求項17】
前記親CO性エーテルが、アルコールエーテル、ポリアルキレンアルコールエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコールエーテル、エトキシル化フェノール、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の膜。
【請求項18】
前記親CO性エーテルが、アルキルエトキシレート(C1-C6)-XEOであり、X=1~30直鎖または分枝鎖である、請求項17に記載の膜。
【請求項19】
前記親CO性エーテルが、エチレングリコールブチルエーテル(EGBE)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE)、エチレングリコールジブチルエーテル(EGDE)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、またはこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項17に記載の膜。
【請求項20】
前記選択的ポリマーマトリックスが、架橋剤をさらに含む、請求項1~19のいずれかに記載の膜。
【請求項21】
前記架橋剤が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、アクリル酸ビニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項20に記載の膜。
【請求項22】
前記酸化グラフェンが、3~20の炭素対酸素比を有する、請求項1~21のいずれかに記載の膜。
【請求項23】
前記酸化グラフェンが、1~3の炭素対酸素比を有する、請求項1~22のいずれかに記載の膜。
【請求項24】
前記選択的ポリマー層が、前記選択的ポリマー層の全乾燥重量を基準として0.01重量%~5重量%の酸化グラフェンを含む、請求項1~23のいずれかに記載の膜。
【請求項25】
前記酸化グラフェンがナノ多孔性である、請求項1~24のいずれかに記載の膜。
【請求項26】
前記選択的ポリマー層が、前記選択的ポリマーマトリックス中に分散したカーボンナノチューブをさらに含む、請求項1~25のいずれかに記載の膜。
【請求項27】
前記支持層が、気体透過性ポリマーを含む、請求項1~26のいずれかに記載の膜。
【請求項28】
前記気体透過性ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ポリマー有機シリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドから選択されるポリマーを含む、請求項27に記載の膜。
【請求項29】
前記気体透過性ポリマーが、ポリエーテルスルホンまたはポリスルホンを含む、請求項28に記載の膜。
【請求項30】
前記支持層が、基材の上に配置された気体透過性ポリマーを含む、請求項1~29のいずれかに記載の膜。
【請求項31】
前記基材が、不織布を含む、請求項30に記載の膜。
【請求項32】
前記不織布が、ポリエステルから形成される繊維を含む、請求項31に記載の膜。
【請求項33】
前記膜が、平坦シート、渦巻き形、中空繊維、またはプレートフレーム構造で構成される、請求項1~32のいずれかに記載の膜。
【請求項34】
前記膜が、酸性ガスに対して選択的に透過性である、請求項1~33のいずれかに記載の膜。
【請求項35】
前記膜が、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、酸化窒素、塩化水素、水、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される流体に対して選択的に透過性である、請求項1~34のいずれかに記載の膜。
【請求項36】
前記選択的ポリマーマトリックスが、107℃、31.7barの供給圧で、少なくとも50のCO:H選択性を有する、請求項1~35のいずれかに記載の膜。
【請求項37】
前記選択的ポリマーマトリックスが、107℃、31.7barの供給圧で、50~500のCO:H選択性を有する、請求項1~36のいずれかに記載の膜。
【請求項38】
前記選択的ポリマーマトリックスが、107℃、31.7barの供給圧で、50~350のCO:H選択性を有する、請求項1~37のいずれかに記載の膜。
【請求項39】
供給ガス流から第1ガスを分離するための方法であって、前記方法が、前記第1ガスを膜透過させるのに効果的な条件下、請求項1~38のいずれかによって定義される膜と、前記第1ガスを含む前記供給ガス流とを接触させることを含む、方法。
【請求項40】
前記供給ガスが、水素、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、一酸化炭素、窒素、メタン、蒸気、酸化硫黄類、酸化窒素類、またはこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記供給ガスが、合成ガスを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1ガスが、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項39~41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記供給ガスが、窒素、水素、一酸化炭素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第2ガスを含み、
前記膜が、107℃、31.7barの供給圧で、20~300の第1ガス/第2ガス選択性を示す、請求項39~42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
支持層の上に選択的ポリマー層を配置することを含む、膜を作製する方法であって、前記選択的ポリマー層が、選択的ポリマーマトリックスと、前記選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月26日に出願された米国特許仮出願第62/751,529号の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大気中のCO濃度が、過去十年間にわたって400ppmを超えているため、地球温暖化に関する懸念が高まっている。化石燃料の燃焼は、大量のCO放出の主要な要因の1つであり、大きな固定発生源からCOを捕捉し、その後、圧縮し、地質学的に隔離する有望な手法として、膜技術が示唆されてきた。大規模な電気を発生させる手法の1つとして、石炭を、より清浄な合成ガスへと気体化することができ、次いで、これを使用して、ガスタービンまたは燃料電池によって電気を発生させることができる。COを捕捉した後、エネルギーを得るために、または純粋なHを好ましい化学原料として製造するために、合成ガスに水性ガスシフト(WGS)反応を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的には統合ガス化複合サイクル(IGCC)と呼ばれるこのスキームにおいて、COは、Hから分離されなければならない。水蒸気およびHSを含む他の少量構成要素も除去する必要がある。したがって、COとHを分離する改良された方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
支持層と、支持層の上に配置された選択的ポリマー層と、を含む膜が開示される。選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンと、を含んでいてもよい。
【0005】
気体透過性支持層は、気体透過性ポリマーを含んでいてもよい。気体透過性ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ポリマー有機シリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、気体透過性ポリマーは、ポリエーテルスルホンを含む。特定の場合に、気体透過性支持層は、基材(例えば、ポリエステル不織布などの不織布)の上に配置された気体透過性ポリマーを含む。
【0006】
選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物(例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物、またはこれらの組み合わせ)、親CO性エーテル、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマー(例えば、ポリビニルアミン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、および低分子量アミノ化合物(例えば、PZEA-Sar、PZEA-AIBA、HEP、またはこれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマー(例えば、ポリビニルアミン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、低分子量アミノ化合物(例えば、PZEA-Sar、PZEA-AIBA、HEP、またはこれらの組み合わせ)、および親CO性エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル)を含んでいてもよい。
【0007】
酸化グラフェンは、任意の好適な形態の酸化グラフェンであってもよい。いくつかの実施形態において、酸化グラフェンは、ナノ多孔性であってもよい。選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の全乾燥重量を基準として0.01重量%~5重量%の酸化グラフェンを含んでいてもよい。
【0008】
膜は、二酸化炭素などの気体に対して選択的な透過性を示すことができる。特定の実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、107℃、31.7barの供給圧で、少なくとも50(例えば、50~500)のCO:H選択性を示すことができる。
【0009】
本明細書に記載される膜を使用して供給ガス流から第1ガスを分離するための方法も提供される。これらの方法は、第1ガスを膜透過させるのに効果的な条件下、本明細書に記載される膜と、第1ガスを含む供給ガス流とを接触させることを含んでいてもよい。供給ガスは、水素、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、一酸化炭素、窒素、メタン、蒸気、酸化硫黄類、酸化窒素類、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1ガスは、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、およびこれらの組み合わせから選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、供給ガスは、窒素、水素、一酸化炭素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第2ガスを含んでいてもよく、膜は、107℃、31.7barの供給圧で、20~300の第1ガス/第2ガス選択性を示す。
【0011】
特定の実施形態において、供給ガスは、合成ガスを含む。第1ガスは、二酸化炭素を含んでいてもよく、第2ガスは、水素を含んでいてもよい。これらの実施形態において、本明細書に記載される膜は、例えば、石炭由来の合成ガスを脱炭素化するために使用することができる。
【0012】
支持層の上に選択的ポリマー層を配置することを含む、膜を作製する方法であって、選択的ポリマー層が、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンとを含む、方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】膜I、膜II、膜III、および膜IVを形成するために使用される構成要素の化学構造を示す。
図2】擬似合成ガスにおいて、種々の供給物CO分圧での膜IのCOパーミアンスおよびCO/H選択性を示すプロットである。
図3】擬似合成ガスにおいて、種々の供給物CO分圧での膜IIのCOパーミアンスおよびCO/H選択性を示すプロットである。
図4】擬似合成ガスにおいて、種々の供給物CO分圧での膜IIIのCOパーミアンスおよびCO/H選択性を示すプロットである。
図5】擬似合成ガスにおいて、種々の供給物CO分圧での膜IVのCOパーミアンスおよびCO/H選択性を示すプロットである。
図6】擬似合成ガスにおいて、種々の供給物CO分圧での膜IIおよびIIIのHS/CO選択性を示すプロットである。
図7】本明細書に記載される膜を使用する提案されたプロセスの概略図である。
図8】膜モジュールの供給側でのCO分圧の変化を示すプロットである。マーカーは、図3および4に示されるデータである。
図9】膜面積およびH回収率に対する膜割り当ての効果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
高いCO/H選択性のため、アミン含有ポリマー膜は、効率的な水素精製にとって有望な技術である。IGCCにおいてCOを除去するために膜を適用する1つの良好な因子は、30~40%というかなり多いCO濃度で、合成ガスが、典型的には50barまでの高圧で運ばれることである。この高いCO分圧は、さらなるエネルギー損失を発生させることなく、選択的にCOを除去するための十分な膜透過の原動力を提供する。しかし、いくつかの操作上の課題が、高い供給圧でのアミン含有膜の操作を妨害する。第1に、膜のCOパーミアンスは、飽和アミン担体に起因して、供給圧が増加するにつれて、減少する傾向がある。合成ガス分離法において高度に選択的な膜性能を達成するために、アミン-CO化学の精密な理解および設計が必要である。第2に、高い供給圧によって、ポリマー材料が圧縮される場合があり、膜の高密度化を引き起こし、それによって、COパーミアンスが低下する。膜の圧縮を軽減するために、いくつかの無機ナノフィラーが提案されてきたが、それらはいずれも、合成ガス精製に関連する供給圧での実行可能性を示さなかった。
【0015】
高いCO分圧で卓越したCO/H分離性能を有する膜が本明細書で開示される。膜の選択的層は、COの輸送を促進するために、例えば、ポリマーマトリックスとしてのポリビニルアミンおよび架橋したポリビニルアルコールと、移動担体としての低分子アミンとを含んでいてもよい。特定の組成物において、エーテル基(-C-O-C-)に基づく親CO性部分も、CO溶解性を向上させるために組み込まれる。膜圧縮の課題に対処するために、少量のナノ多孔性酸化グラフェンを二次元強化フィラーとして分散させる。最後に、99%を超えるH回収率をもたらしつつ、IGCCから90%のCOを捕捉するための一段膜プロセスが記載される。
【0016】
したがって、膜、膜を作製する方法、および膜を使用する方法が、本明細書に記載される。膜は、支持層と、支持層の上に配置された選択的ポリマー層と、を含んでいてもよい。
【0017】
支持層
支持層は、任意の好適な材料から形成されてもよい。支持層を形成するために使用される材料は、膜の最終使用用途に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態において、支持層は、気体透過性ポリマーを含んでいてもよい。気体透過性ポリマーは、架橋したポリマー、相分離したポリマー、多孔性の縮合したポリマー、またはこれらのブレンドであってもよい。好適な気体透過性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ポリマー有機シリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、またはこれらのブレンドが挙げられる。支持層中に存在し得るポリマーの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジ-イソ-プロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリベンズイミダゾール、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの部分的にフッ素化された、ペルフッ素化された、またはスルホン酸化された誘導体、これらのコポリマー、またはこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態において、気体透過性ポリマーは、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンであってもよい。所望な場合、支持層は、支持層の透過性を変えることなく、機械的強度を高めるために無機粒子を含んでいてもよい。
【0018】
特定の実施形態において、支持層は、基材の上に配置された気体透過性ポリマーを含んでいてもよい。基材は、特定の用途で使用するのに好適な膜の形成を容易にするように構成された任意の構成であってもよい。例えば、基材は、平坦な円板、管、渦巻き形、または中空繊維基材であってもよい。基材は、任意の好適な材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態において、層は、繊維状材料を含んでいてもよい。基材中の繊維状材料は、メッシュ(例えば、金属またはポリマーメッシュ)、織布または不織布、ガラス、ガラス繊維、樹脂、スクリーン(例えば、金属またはポリマースクリーン)であってもよい。特定の実施形態において、基材は、不織布(例えば、ポリエステルから形成される繊維を含む不織布)を含んでいてもよい。
【0019】
選択的ポリマー層
選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンと、を含んでいてもよい。選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物(例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物、またはこれらの組み合わせ)、親CO性エーテル、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0020】
選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物、親CO性エーテル、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、存在しなくてもよい(例えば、選択的ポリマーマトリックスは、1つ以上のアミノ化合物および/または1つ以上の親CO性エーテルを含んでいてもよい)。他の実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーとアミノ化合物の組み合わせを含んでいてもよい。例えば、ある場合には、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーマトリックス中に分散したアミノ化合物(例えば、低分子、ポリマー、またはこれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。他の実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミノ化合物、および親CO性エーテルの組み合わせを含んでいてもよい。例えば、ある場合には、選択的ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーマトリックス中に分散したアミノ化合物(例えば、低分子、ポリマー、またはこれらの組み合わせ)および親CO性エーテルを含んでいてもよい。
【0021】
一例として、いくつかの実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマー(例えば、ポリビニルアミン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、および低分子量アミノ化合物(例えば、PZEA-Sar、PZEA-AIBA、HEP、またはこれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマー(例えば、ポリビニルアミン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、低分子量アミノ化合物(例えば、PZEA-Sar、PZEA-AIBA、HEP、またはこれらの組み合わせ)、および親CO性エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル)を含んでいてもよい。
【0022】
ある場合には、選択的ポリマー層は、拡散または促進された拡散によって気体がその中を透過する選択的ポリマーマトリックスであってもよい。選択的ポリマー層は、107℃、31.7barの供給圧で、少なくとも10のCO:H選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含んでいてもよい。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、107℃、31.7barの供給圧で、少なくとも25(例えば、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、または少なくとも475)のCO:H選択性を有していてもよい。いくつかの実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、107℃、31.7barの供給圧で、500以下(例えば、475以下、450以下、425以下、400以下、375以下、350以下、325以下、300以下、275以下、250以下、225以下、200以下、175以下、150以下、125以下、100以下、75以下、50以下、または25以下)のCO:H選択性を有していてもよい。
【0023】
特定の実施形態において、選択的ポリマー層は、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲のCO:H選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含んでいてもよい。例えば、特定の実施形態において、選択的ポリマー層は、107℃、31.7barの供給圧で10~500(例えば、107℃、31.7barの供給圧で10~400、107℃、31.7barの供給圧で75~400、107℃、31.7barの供給圧で100~400、107℃、31.7barの供給圧で10~350、107℃、31.7barの供給圧で75~350、107℃、31.7barの供給圧で100~350、107℃、31.7barの供給圧で10~250、107℃、31.7barの供給圧で75~250、または107℃、31.7barの供給圧で100~250)のCO:H選択性を有する選択的ポリマーマトリックスを含んでいてもよい。選択的ポリマーのCO:H選択性は、以下の実施例に記載されるものなど、当該技術分野で既知の気体パーミアンスを測定するための標準的な方法を用いて測定することができる。
【0024】
親水性ポリマー
選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な親水性ポリマーを含んでいてもよい。選択的ポリマー層に使用するのに好適な親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアリルアミンなどのポリアミン、ポリビニルアミン、またはポリエチレンイミン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドを挙げることができる。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含む。
【0025】
存在する場合、親水性ポリマーは、任意の好適な分子量を有していてもよい。例えば、親水性ポリマーは、15,000Da~2,000,000Da(例えば、50,000Da~200,000Da)の重量平均分子量を有していてもよい。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、50,000Da~150,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールを含んでいてもよい。他の実施形態において、親水性ポリマーは、高分子量親水性ポリマーであってもよい。例えば、親水性ポリマーは、少なくとも500,000Da(例えば、少なくとも700,000Da、または少なくとも1,000,000Da)の重量平均分子量を有していてもよい。
【0026】
選択的ポリマー層は、任意の好適な量の親水性ポリマーを含んでいてもよい。例えば、ある場合には、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層を形成するために使用される構成要素の全重量を基準として、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%、または10重量%~30重量%)の親水性ポリマーを含んでいてもよい。
【0027】
アミノ化合物
いくつかの実施形態において、アミノ化合物は、1つ以上の一級アミン部分および/または1つ以上の二級アミン部分を含む化合物(例えば、低分子、ポリマー、またはこれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。アミノ化合物は、例えば、アミン含有ポリマー、低分子量アミノ化合物(すなわち、低分子)、またはこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、選択的ポリマー層は、アミン含有ポリマーおよびアミノ酸塩を含んでいてもよい。これらの実施形態において、アミン含有ポリマーは、「固定された担体」として機能することができ、アミノ酸塩は、「移動担体」として機能することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、アミノ化合物は、アミン含有ポリマー(本明細書では「固定された担体」とも呼ばれる)を含む。アミン含有ポリマーは、任意の好適な分子量を有していてもよい。例えば、アミン含有ポリマーは、5,000Da~5,000,000Da、または50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有していてもよい。アミン含有ポリマーの好適な例としては、限定されないが、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、およびこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミン含有ポリマーは、ポリビニルアミン(例えば、50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアミン)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、アミノ化合物がアミン含有ポリマーを含む場合、親水性ポリマーは存在しない。アミノ化合物がアミン含有ポリマーを含むいくつかの実施形態において、選択的ポリマー層は、アミン含有ポリマーと親水性ポリマーのブレンド(例えば、親水性ポリマーマトリックス中に分散したアミン含有ポリマー)を含んでいてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、アミノ化合物は、低分子量アミノ化合物(本明細書では「移動担体」とも呼ばれる)を含んでいてもよい。低分子量アミノ化合物は、1,000Da以下(例えば、800Da以下、500以下、300Da以下、または250Da以下)の分子量を有していてもよい。いくつかの実施形態において、低分子量アミノ化合物は、膜が保存または使用される温度で不揮発性であってもよい。例えば、低分子量アミノ化合物は、一級アミンの塩または二級アミンの塩を含んでいてもよい。アミノ化合物が低分子量アミノ化合物を含むいくつかの実施形態において、選択的ポリマー層は、低分子量アミノ化合物と親水性ポリマーのブレンド(例えば、親水性ポリマーマトリックス中に分散した低分子量アミノ化合物)を含んでいてもよい。
【0030】
ある場合には、低分子量アミノ化合物は、アミノ酸塩を含んでいてもよい。アミノ酸塩は、任意の好適なアミノ酸の塩であってもよい。アミノ酸塩は、例えば、グリシン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、6-アミノヘキサン酸、プロリン、サルコシン、メチオニン、またはタウリンに由来していてもよい。ある場合には、アミノ酸塩は、以下の式によって定義される化合物の塩を含んでいてもよく、
【化1】
【0031】
式中、アミノ酸中のそれぞれの場合について独立して、R、R、RおよびRの各々は、以下の1つから選択されるか、
【化2】
またはRおよびRは、これらが接続する原子と共に、nが1の場合には、以下の構造によって定義される5員ヘテロ環を形成するか、もしくはnが2の場合には、以下の構造によって定義される6員ヘテロ環を形成する。
【化3】
【0032】
ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリアルギニン、ポリリシン、ポリオニチン、またはポリヒスチジンはまた、アミノ酸塩を調製するために使用してもよい。
【0033】
他の実施形態において、低分子量アミノ化合物は、以下の式によって定義されてもよく、
【化4】
【0034】
式中、R、R、R、およびRが、水素、または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nが、0~4の範囲の整数であり、Am+が、1~3の価数を有するカチオンである。ある場合には、カチオン(Am+)は、下式を有するアミンカチオンであってもよく、
【化5】
【0035】
式中、RおよびRは、水素、または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、Rは、水素、または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基、または2~6個の炭素原子と1~4個の窒素原子を含むアルキルアミンであり、yは、1~4の範囲の整数であり、mは、カチオンの価数に等しい整数である。いくつかの実施形態において、Am+は、元素の周期律表のIa、IIa、およびIIIa族、または遷移金属から選択される金属カチオンである。例えば、Am+は、リチウム、アルミニウム、または鉄を含んでいてもよい。
【0036】
他の好適な低分子量アミノ化合物としては、アミノイソ酪酸-カリウム塩、アミノイソ酪酸-リチウム塩、アミノイソ酪酸-ピペラジン塩、グリシン-カリウム塩、グリシン-リチウム塩、グリシン-ピペラジン塩、ジメチルグリシン-カリウム塩、ジメチルグリシン-リチウム塩、ジメチルグリシン-ピペラジン塩、ピペラジン-2-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジン-2-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-2-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジン-4-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジン-4-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-4-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジン-3-カルボン酸-カリウム塩、ピペラジン-3-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-3-カルボン酸-ピペラジン塩、およびこれらのブレンドが挙げられる。
【0037】
親CO性エーテル
選択的ポリマーマトリックスは、1つ以上の親CO性エーテルをさらに含んでいてもよい。親CO性エーテルは、ポリマー、オリゴマー、または1つ以上のエーテル結合を含む低分子であってもよい。親CO性エーテルの例としては、アルコールエーテル、ポリアルキレンアルコールエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシアルキレン)グリコールエーテル、エトキシル化フェノールが挙げられる。一実施形態において、親CO性エーテルは、アルキルエトキシレート(C1-C6)-XEOを含んでいてもよく、X=1~30直鎖または分枝鎖である。いくつかの実施形態において、親CO性エーテルは、エチレングリコールブチルエーテル(EGBE)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE)、エチレングリコールジブチルエーテル(EGDE)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0038】
酸化グラフェン
選択的ポリマー層は、酸化グラフェンをさらに含んでいてもよい。
【0039】
「グラフェン」という用語は、ハニカム結晶格子中に密に充填されるsp2結合した炭素原子の1原子厚の平坦なシートを指す。一実施形態において、グラフェンは、グラファイトの単層態様を指す。
【0040】
「酸化グラフェン」という用語は、本明細書では、官能基化されたグラフェンシート(FGS)、すなわち、グラファイトの酸化組成物を指す。これらの組成物は、単一の化学量論量によって定義されない。むしろ、グラファイトを酸化すると、酸素含有官能基(例えば、エポキシド、カルボキシル、およびヒドロキシル基)が、グラファイトに導入される。完全な酸化は必要とされない。官能基化されたグラフェンは、一般的に、酸化グラフェンを指し、原子状炭素対酸素比は、約2で開始する。この比は、ポリマー、ポリマーモノマー樹脂、または溶媒を含み得る媒体中の構成要素との反応によって、および/または放射エネルギーの適用によって、増加させることができる。炭素対酸素比が非常に大きくなる(例えば、20以上に近づく)につれて、酸化グラフェンの化学組成は、純粋なグラフェンの化学組成に近づく。
【0041】
「酸化グラファイト」という用語は、「酸化グラフェン」を含み、酸化グラフェンは、平坦なシートの形態での酸化グラファイトの形態学的部分集合である。「酸化グラフェン」は、酸化グラファイトの単層シートまたは多層シートのいずれかを含む酸化グラフェン材料を指す。さらに、一実施形態において、酸化グラフェンは、その一部に少なくとも1つの単層シートと、その別の一部に少なくとも1つの多層シートとを含有する、酸化グラフェン材料を指す。酸化グラフェンは、ある範囲の可能な組成および化学量論量を指す。酸化グラフェン中の炭素対酸素比は、酸化グラフェンおよび酸化グラフェンを含有する任意のコンポジットポリマーの特性を決定する際に役割を果たす。
【0042】
「GO」という省略語は、本明細書では酸化グラフェンを指すために使用され、GO(m)という表記は、C:O比が約「m」である酸化グラフェンを指し、mは、3~約20の範囲であり、端点を含む。例えば、C:O比が3~20の酸化グラフェンは、「GO(3)~GO(20)」と呼ばれ、mは、3~20の範囲であり、例えば、m=3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であり、その間の全ての10分の1刻みの分数を含み、例えば、3~20の値の範囲は、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、および20までを含む。したがって、本明細書で使用される場合、GO(m)という用語は、C:O比が3~約20である全ての酸化グラフェン組成物を記載する。例えば、C:O比が6であるGOは、GO(6)と呼ばれ、C:O比が8であるGOは、GO(8)と呼ばれ、両方ともGO(m)の定義に含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「GO(L)」は、C:O比が約「L」である低C:O比の酸化グラフェンを指し、Lは、3未満、例えば、約1(1を含む)から3(3を含まない)までの範囲であり、例えば、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、または約2.9を含む。多くの実施形態において、GO(L)材料は、C:O比が約2である。GO(L)基中の材料についての指定は、上述のGO(m)材料の指定と同じであり、例えば、GO(2)は、C:O比が2である酸化グラフェンを指す。
【0044】
いくつかの実施形態において、酸化グラフェンは、GO((m)であってもよい。いくつかの実施形態において、酸化グラフェンは、GO(L)であってもよい。いくつかの実施形態において、酸化グラフェンは、ナノ多孔性であってもよい。
【0045】
他の構成要素
いくつかの実施形態において、選択的ポリマーマトリックスは、架橋剤をさらに含んでいてもよい。選択的ポリマーマトリックスに使用するのに好適な架橋剤としては、限定されないが、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、アクリル酸ビニル、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態において、架橋剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、または無水マレイン酸を含んでいてもよい。選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の架橋剤を含んでいてもよい。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスの重量の1~40%の架橋剤を含んでいてもよい。
【0046】
選択的ポリマーマトリックスは、基材をさらに含んでいてもよい。基材は、選択的ポリマーマトリックスの架橋(例えば、親水性ポリマーとアミン含有ポリマーとの架橋)を触媒するための触媒として作用し得る。いくつかの実施形態において、基材は、選択的ポリマーマトリックス中で維持され、選択的ポリマーマトリックスの一部を構成してもよい。好適な基材の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、基材は、水酸化カリウムを含んでいてもよい。選択的ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の基材を含んでいてもよい。例えば、選択的ポリマーマトリックスは、選択的ポリマーマトリックスの重量の1~40%の基材を含んでいてもよい。
【0047】
選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックス中に分散したカーボンナノチューブをさらに含む。任意の好適なカーボンナノチューブ(任意の好適な方法によって調製されるか、または商業的な供給源から得られる)を使用してもよい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0048】
ある場合には、カーボンナノチューブは、少なくとも10nm(例えば、少なくとも20nm、少なくとも30nm、または少なくとも40nm)の平均直径を有していてもよい。ある場合には、カーボンナノチューブは、50nm以下(例えば、40nm以下、30nm以下、または20nm以下)の平均直径を有していてもよい。特定の実施形態において、カーボンナノチューブは、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲の平均直径を有していてもよい。例えば、カーボンナノチューブは、10nm~50nm(例えば、10nm~30nm、または20nm~50nm)の平均直径を有していてもよい。
【0049】
ある場合には、カーボンナノチューブは、少なくとも50nm(例えば、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、または少なくとも15μm)の平均長さを有していてもよい。ある場合には、カーボンナノチューブは、20μm以下(例えば、15μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、または100nm以下)の平均長さを有していてもよい。
【0050】
特定の実施形態において、カーボンナノチューブは、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲の平均長さを有していてもよい。例えば、カーボンナノチューブは、50nm~20μm(例えば、200nm~20μm、または500nm~10μm)の平均長さを有していてもよい。
【0051】
ある場合には、カーボンナノチューブは、官能基化されていないカーボンナノチューブを含んでいてもよい。他の実施形態において、カーボンナノチューブは、側壁が官能基化されたカーボンナノチューブを含んでいてもよい。側壁が官能基化されたカーボンナノチューブは、当該技術分野で周知である。好適な側壁が官能基化されたカーボンナノチューブは、官能基化されていないカーボンナノチューブから、例えば、強酸酸化によって側壁に欠損部を作成することによって調製することができる。酸化剤によって作成された欠損部を、その後、より安定なヒドロキシルおよびカルボン酸基へと変換することができる。次いで、酸処理されたカーボンナノチューブ上のヒドロキシルおよびカルボン酸基を、他の官能基を含有する試薬(例えば、アミン含有試薬)にカップリングし、それによって、カーボンナノチューブの側壁にペンダント官能基(例えば、アミノ基)を導入することができる。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、ヒドロキシ官能基化されたカーボンナノチューブ、カルボキシ官能基化されたカーボンナノチューブ、アミン官能基化されたカーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の合計乾燥重量を基準として、少なくとも0.5重量%(例えば、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも4.5重量%)のカーボンナノチューブを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の合計乾燥重量を基準として、5重量%以下(例えば、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、または1重量%以下)のカーボンナノチューブを含んでいてもよい。
【0053】
選択的ポリマー層は、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲の量のカーボンナノチューブを含んでいてもよい。例えば、選択的ポリマー層は、選択的ポリマー層の合計乾燥重量を基準として、0.5重量%~5重量%(例えば、1重量%~3重量%)のカーボンナノチューブを含んでいてもよい。
【0054】
所望な場合、選択的ポリマー層は、例えば、選択的ポリマー層の性能を向上させるために、化学接合、ブレンド、またはコーティングによって表面改質されてもよい。例えば、疎水性構成要素は、より大きな流体選択性を促進する様式で、選択的ポリマー層の特性を変えるために選択的ポリマー層に添加されてもよい。
【0055】
膜中の各層の合計厚さは、構造が機械的に頑丈であるように、但し、透過性を損なわせるほど厚くならないように選択することができる。いくつかの実施形態において、選択的ポリマー層は、50ナノメートル~5ミクロン(例えば、50nm~2ミクロン、または100ナノメートル~750ナノメートル、または250ナノメートル~500ナノメートル)の厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態において、支持層は、1ミクロン~500ミクロン(例えば、50~250ミクロン)の厚さを有していてもよい。ある場合には、本明細書に開示される膜は、5ミクロン~500ミクロンの厚さを有していてもよい。
【0056】
作製方法
これらの膜を作製する方法も、本明細書に開示される。膜を作製する方法は、支持層の上に選択的ポリマー層を配置し、支持層の上に配置された選択的層を形成することを含んでいてもよい。選択的ポリマー層は、選択的ポリマーマトリックスと、選択的ポリマーマトリックス中に分散した酸化グラフェンと、を含んでいてもよい。
【0057】
任意選択で、支持層は、選択的ポリマー層の配置前に前処理されてもよく、例えば、支持体および吸着剤に適した方法を用い、水または他の吸着種を除去してもよい。吸着種の例は、例えば、水、アルコール、ポロゲン、および界面活性剤テンプレートである。
【0058】
選択的ポリマー層は、まず、選択的ポリマーマトリックスの構成要素(例えば、親水性ポリマー、アミノ化合物、親CO性エーテル、またはこれらの組み合わせ、任意選択で、架橋剤および塩基性化合物)および酸化グラフェンを適切な溶媒中に含むコーティング溶液を形成することによって調製することができる。好適な溶媒の一例は、水である。いくつかの実施形態において、使用される水の量は、コーティング溶液の50重量%~99重量%の範囲であろう。次いで、コーティング溶液を、選択的ポリマー層を形成する際に使用することができる。例えば、コーティング溶液を、任意の適切な技術を用い、支持層(例えば、ナノ多孔性気体透過性膜)の上でコーティングすることができ、基材上に非多孔性膜が形成されるように溶媒を蒸発させてもよい。好適なコーティング技術の例としては、限定されないが、「ナイフコーティング」または「浸漬コーティング」が挙げられる。ナイフコーティングは、ナイフを使用して、平坦な基材にわたってポリマー溶液を出し、均一な厚さのポリマー溶液の薄膜を形成し、その後、ポリマー溶液の溶媒を、周囲温度または約100℃まで、またはそれ以上の温度で蒸発させ、加工された膜を得るプロセスを含む。浸漬コーティングは、ポリマー溶液を多孔性支持体と接触させるプロセスを含む。過剰な溶液を支持体から排出することが可能であり、ポリマー溶液の溶媒を、周囲温度または高温で蒸発させる。ここに開示される膜は、中空繊維、管、膜、シートなどの形態で成形されてもよい。特定の実施形態において、膜は、平坦シート、渦巻き形、中空繊維、またはプレートフレーム構造で構成されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、例えば、親水性ポリマー、架橋剤、基材、アミノ化合物、親CO性エーテル、および酸化グラフェンを含有する選択的ポリマーマトリックスから形成される膜を、架橋を起こさせるのに十分な温度および時間、加熱することができる。一例では、80℃~100℃の範囲の架橋温度を使用することができる。別の例では、架橋は、1~72時間行ってもよい。上述のように、得られた溶液を支持層の上にコーティングし、溶媒を蒸発させてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒除去後の選択的ポリマーマトリックスに対するさらに高度な架橋は、約100℃~約180℃で行われ、架橋は、約1~約72時間で起こる。
【0060】
膜の水保持能を高めるために、選択的ポリマー層を形成する前に、選択的ポリマー層に添加剤が含まれていてもよい。好適な添加剤としては、限定されないが、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-リチウム塩、スルホン酸化ポリフェニレンオキシド、ミョウバン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一例では、添加剤は、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、これらの膜を作製する方法を、工業レベルまで拡張することができる。
【0062】
使用方法
本明細書に開示される膜は、気体状混合物を分離するために使用することができる。例えば、第1ガスと1つ以上のさらなるガス(例えば、少なくとも第2ガス)とを含む供給ガスから第1ガスを分離するための方法が提供される。本方法は、第1ガスを膜透過させるのに効果的な条件下、開示された膜のいずれかと(例えば、選択的ポリマーを含む側で)、供給ガスとを接触させることを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本方法は、膜の逆側から、少なくとも第1ガスを含有する透過物を抜き取ることも含んでいてもよく、第1ガスは、気体流から選択的に除去される。透過物は、供給流に対して増加した濃度で、少なくとも第1ガスを含んでいてもよい。「透過物」という用語は、膜の逆側または第2の側で抜き取られ、膜の第2の側に存在し得るスイープガスまたは液体などの他の流体を除く、供給流の一部を指す。
【0063】
膜は、100℃以上の温度を含む任意の好適な温度で流体を分離するために使用することができる。例えば、膜は、100℃~180℃の温度で使用することができる。いくつかの実施形態において、第1ガスを除去するために、膜の透過物面に真空を適用することができる。いくつかの実施形態において、スイープガスは、膜の透過物面を通って流れ、第1ガスを除去することができる。任意の好適なスイープガスを使用することができる。好適なスイープガスの例としては、例えば、空気、蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0064】
第1ガスは、酸ガスを含んでいてもよい。例えば、第1ガスは、二酸化炭素、硫化水素、塩酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄、酸化窒素、またはこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、膜は、水素、窒素、一酸化炭素、またはこれらの組み合わせと比較して、二酸化炭素に対して選択性であってもよい。いくつかの実施形態において、膜は、水素、窒素、一酸化炭素、またはこれらの組み合わせと比較して、硫化水素に対して選択性であってもよい。いくつかの実施形態において、膜は、水素、窒素、一酸化炭素、またはこれらの組み合わせと比較して、塩酸ガスに対して選択性であってもよい。いくつかの実施形態において、酸ガスは、燃料電池、発電、および水素化要素、再生可能エネルギーのためのバイオガス、および商業的使用のための天然ガスのために水素精製を必要とする化石燃料に由来していてもよい。例えば、膜は、燃料電池に使用されてもよい(例えば、燃料電池に入る前に供給ガスを精製するために)。膜は、燃料ガスから二酸化炭素を除去するためにも使用することができる。
【0065】
特定の実施形態において、供給ガスは、合成ガスを含む。第1ガスは、二酸化炭素を含んでいてもよく、第2ガスは、水素を含んでいてもよい。これらの実施形態において、本明細書に記載される膜は、例えば、石炭由来の合成ガスを脱炭素化するために使用することができる。
【0066】
第1ガスまたは酸ガスのパーミアンスは、107℃、31.7barの供給圧で、少なくとも50GPU(例えば、75GPU以上、100GPU以上、150GPU以上、200GPU以上、250GPU以上、300GPU以上、350GPU以上、400GPU以上、450GPU以上、500GPU以上、550GPU以上、600GPU以上、650GPU以上、700GPU以上、750GPU以上、800GPU以上、850GPU以上、900GPU以上、950GPU以上、1000GPU以上、1100GPU以上、1200GPU以上、1300GPU以上、または1400GPU以上)であってもよい。
【0067】
第1ガスまたは酸ガスのパーミアンスは、107℃、31.7barの供給圧で、1500GPU以下(例えば、1400GPU以下、1300GPU以下、1200GPU以下、1100GPU以下、1000GPU以下、950GPU以下、900GPU以下、850GPU以下、800GPU以下、750GPU以下、700GPU以下、650GPU以下、600GPU以下、550GPU以下、500GPU以下、450GPU以下、400GPU以下、350GPU以下、300GPU以下、250GPU以下、200GPU以下、150GPU以下、100GPU以下、または75GPU以下)であってもよい。
【0068】
膜を通る第1ガスまたは酸ガスのパーミアンスは、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまで様々であってもよい。例えば、第1ガスまたは酸ガスのパーミアンスは、107℃、31.7barの供給圧で、50GPU~1500GPU(例えば、120℃で300GPU~1500GPU、または107℃、31.7barの供給圧で500GPU~1500GPU)であってもよい。
【0069】
膜は、107℃、31atmの供給圧で、少なくとも10の第1ガス/第2ガス選択性を示すことができる。いくつかの実施形態において、膜は、107℃、31.7barの供給圧で、500までの第1ガス/第2ガス選択性を示すことができる。例えば、膜は、107℃、31.7barの供給圧で、10以上、25以上、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、225以上、250以上、275以上、300以上、325以上、350以上、375以上、400以上、425以上、450以上、または475以上の第1ガス/第2ガス選択性を示すことができる。いくつかの実施形態において、第1ガスまたは酸ガスについての膜のパーミアンスおよび選択性は、これより高い温度または低い温度で、様々であってもよい。
【0070】
非限定的な例示として、本開示の特定の実施形態の例を以下に示す。
【実施例
【0071】
実施例1.石炭由来の合成ガスからの水素精製のための膜および膜プロセス
これらの例では、石炭由来の合成ガスを脱炭素化するための一段膜プロセスのために調整された3種類の膜が記載される。これらの膜において、固定された部位担体としての高MWポリビニルアミンと共に、水膨潤性架橋ポリビニルアルコールがポリマーマトリックスとして使用される。膜Iについて、2-(1-ピペラジニル)エチルアミンおよびサルコシンのアミノ酸塩が移動担体として使用され、サルコシンは、中程度の立体障害を有する。膜IIにおいて、2-アミノイソ酪酸の2-(1-ピペラジニル)エチルアミン塩(PZEA-AIBA)が移動担体として使用され、AIBAは、立体障害のあるアミンである。膜IIIおよびIVは、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンおよび1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンをそれぞれ移動担体として使用し、これらは複数のアミノ基および親CO性ヒドロキシル基を含有する。これに加えて、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルは、親CO性部分として膜IIIおよびIVに組み込まれる。ナノ多孔性酸化グラフェンは、高供給圧下での膜圧縮を避けるために、3種類全ての膜に分散する。
【0072】
膜を、107℃、31.7barの供給圧、12.5~0.5barのCO分圧で試験し、これは、それぞれバルクCO除去の前後の供給物CO分圧に対応していた。膜IおよびIIの分離性能は、CO分圧に強く依存しており、72~435GPU(1GPU=10-6cm(STP)cm-2-1cmHg-1)のCOパーミアンスを与え、93~558のCO/H選択性を有していた。担体飽和現象に起因して、CO分圧が増加するにつれて、COパーミアンスが顕著に低下した。一方、膜IIIおよびIV中のアミノ基および豊富な親CO性部分の存在は、高いCO分圧でCO溶解度を向上させ、それによって、206~246GPUのCOパーミアンスおよび103~123の魅力的なCO/H選択性が、12.5~3.5barのCO分圧について得られた。供給物CO分圧に対する異なる依存度は、一段膜プロセスの設計機械を提供する。より透過性が高いが、より選択性が低い膜IIIは、供給物入口に近接して実装することができ、そこでは、CO分圧は高いが、H分圧は低い。COを除去したら、供給物CO分圧は鋭敏に低下し、一方、H膜透過の原動力が増加する。この場合に、膜IまたはIIを使用して、COパーミアンスおよびCO/H選択性を上げることができる。膜プロセス設計は、一段膜プロセスが、99%を超えるH回収率で90%のCO除去を達成することができることを示す。
【0073】
材料および方法
2-(1-ピペラジニル)エチルアミン(PZEA、99%)、サルコシン(Sar、98%)、2-アミノイソ酪酸(AIBA、98%)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(HEP、98%)、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(DHEP、98%)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME、Mn約250)、水酸化カリウム(KOH、85%)、およびグルタルアルデヒド溶液(50重量%)は、Sigma-Aldrich(ミルウォーキー、WI)から購入した。ポリビニルアルコール(Poval S-2217、92%)は、Kuraray America Inc.(ヒューストン、TX)によって与えられた。全ての化学物質は、さらに精製することなく、受領したまま使用された。単層酸化グラフェン(GO)は、TCI America(ポートランド、OR、USA)から固体フレークの形態で購入され、膜調製のために使用する前に超音波処理を必要とする。気体透過率測定のために、前精製されたCOおよびアルゴンは、Praxair Inc.(ダンバリー、CT)から購入された。
【0074】
アミン含有ポリマーは、ポリビニルアミン(PVAm)に限定される必要はない。種々のアミン含有ポリマー、例えば、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、コポリマー、およびこれらのブレンドを使用することができる。これらの実施例で使用されるアミン含有ポリマーは、BASF(ヴァンディリア、IL)からPolymin(登録商標)VXという名称の商業的製品から精製されたPVAmである。PVAmは、2,000kDaの高い重量平均分子量を有する。アミン含有ポリマーは、300~3,000kDaの重量平均分子量を有していてもよい。しかし、特定の実施形態において、アミン含有ポリマーは、少なくとも1000kDaの重量平均分子量を有していてもよい。
【0075】
ナノ多孔性酸化グラフェン(GO)の調製
GOを、出力2500Wの超音波プローブによって3時間かけて水(約1mg/ml)に分散させた。GOの沈殿を防ぐために、KOH溶液(50重量%)を、KOHとGOの重量比14:1でGO分散液にゆっくりと加えた。混合物を30分間、さらに超音波処理した。この後、60℃の対流式オーブンで水を蒸発させ、その後、60℃の真空オーブンで一晩、さらに乾燥させた。得られた固体を200℃で2時間アニーリングし、GO基面に孔を作成した。熱処理の後、固体を、濾液がpH7に達するまで、減圧濾過しつつDI水によって洗浄した。精製されたナノ多孔性GO(nGO)を、超音波浴によって、再び水(約1mg/ml)に分散させた。
【0076】
コーティング溶液および膜の調製
nGO強化されたコンポジット膜を、以下のステップによって合成した。
【0077】
第1に、撹拌しつつ、PVAを80℃でDI水に溶解した。PVA水溶液に、化学量論量のグルタルアルデヒドおよび特定の量のKOHを加え、PVAのヒドロキシル基に基づき、100mol%の架橋度を達成した。PVA/グルタルアルデヒド/KOH溶液を撹拌しつつ、80℃で3時間加熱した。
【0078】
特定の量の精製されたPVAm溶液を、激しく撹拌しつつ、架橋したPVA溶液に添加した。コーティング溶液の最終的な全固形分中、3重量%のnGO保持量を目的として、濃度が約1mg/mlのnGO分散液を、激しく撹拌しつつ、10μLのガラスキャピラリーチューブによって、ポリマー溶液に滴下した。混合物を15mLのコニカル遠心管に移し、均一に分散するまで、1/8インチのMicrotip音波プローブによって、50%の振幅で均質化した。音波処理を氷浴中で行った。nGO分散液によって導入された水を、窒素パージによって蒸発させた。
【0079】
アミノ酸塩移動担体を、基材PZEAと、アミノ酸SarまたはAIBAとを反応させることによって合成した。化学量論量の量のSarまたはAIBAを、激しく混合しつつ、24重量%のPZEA水溶液に加えた。使用前に、溶液を室温で2時間混合した。PZEA-SarおよびPZEA-AIBAの化学構造を図1に示す。
【0080】
アミノ酸および親CO性部分を含む特定量の移動担体溶液を分散液に組み込み、コーティング溶液を作成した。8,000×gで3分間遠心分離処理し、気泡を除去した後、コーティング溶液を、制御されたギャップ設定を用いたGARDCO調節可能ミクロンメートルフィルムアプリケーター(Paul N.Gardner Company、ポンパノビーチ、FL)を使用することによって、ナノ多孔性ポリスルホン(PSf)基質の上にコーティングした。膜を、ドラフトチャンバー中、室温で30分間乾燥し、次いで、120℃で6時間硬化させた。
【0081】
気体透過性の測定
コンポジット膜の輸送特性は、Wicke-Kallenbach透過装置によって測定された[2]。膜を、107℃、31.7barの供給圧で、4%の水および6000ppmのHSを含み、残分がCOおよびHである擬似合成ガスを用いて試験した。COおよびH濃度を、供給側のCO分圧を12.5から0.5barまで下げることによって徐々に変え、これは、それぞれバルクCO除去の前後の供給物CO分圧に対応していた。透過物圧力は、1psigに維持された。気体透過セルを除去した後、保持物および透過物の両方における水蒸気が、それぞれの水ノックアウト容器中で捕捉された。両方の気体流の乾燥気体組成を、熱伝導性検出器(Model 6890N、Agilent Technologies、Palo Alto、CA)およびステンレス鋼ミクロ充填カラム(80/100メッシュCarboxen 1004、Sigma-Aldrich、セントルイス、MO)を取り付けたガスクロマトグラフを使用して分析した。
【0082】
実施例の膜I
この例では、架橋したPVAおよびPVAmによって形成されるポリマーマトリックス中のCO輸送を促進するために、PZEA-Sarが、移動担体として使用された。
【0083】
3gのPVAm水溶液(4重量%)を、激しく撹拌しつつ、1gの架橋したPVA水溶液(8重量%の架橋したPVA、4.4重量%のKOH)に滴下した。次いで、8gのnGO分散液(約0.1重量%)を、激しく混合しつつ、ポリマー溶液に滴下して加えた。この後、混合物を音波処理して再分散させた。その後、nGO分散液によって導入された水をNによって蒸発させた。最後に、0.222gのPZEA-Sar水溶液(43.19重量%)を分散液に加え、均一なコーティング溶液を作成した。8,000×gで3分間遠心分離処理を行い、コーティング溶液中に取り込まれた気泡を除去した。コーティング溶液を、GARDCO調節可能ミクロンメートルフィルムアプリケーターを使用することによって、ナノ多孔性ポリスルホン(PSf)基質の上にコーティングし、厚さが約25μmの選択的層を得た。膜を、ドラフトチャンバー中、室温で30分間乾燥し、次いで、120℃で6時間硬化させた。
【0084】
図2は、107℃、31.7barで、擬似合成ガスを用い、この膜についての供給物CO分圧の関数として、COパーミアンスおよび/またはCO/H選択性を示す。擬似合成ガスは、4%の水蒸気と6000ppmのHSを含み、残量はCOおよびHであった。COおよびH濃度を、供給側のCO分圧を12.5から0.5barまで下げることによって徐々に変え、これは、それぞれバルクCO除去の前後の供給物CO分圧に対応していた。図2からわかるように、この膜は、0.5barの供給物CO分圧で、435GPUの最も高いCOパーミアンス(1GPU=10-6cm(STP)cm-2-1cmHg-1)を示し、COパーミアンスは、担体飽和現象に起因して、CO分圧が増加するにつれて、顕著に減少した。担体飽和現象で、より高いCO分圧では、膜において利用可能な遊離アミン担体が減ることによって、より低い性能が生じた。一方、Hは、溶液拡散機能によって、膜を通して透過し、そのパーミアンスは、0.78GPUで一定に維持された。その結果、CO/H選択性も、558から93まで減少した。
【0085】
実施例の膜II
この例では、PZEA-AIBAは、移動担体として使用され、架橋したPVAおよびPVAmによって形成されるポリマーマトリックス中のCO輸送を促進した。
【0086】
0.5gのPVAm水溶液(4重量%)を、激しく撹拌しつつ、1gの架橋したPVA水溶液(8重量%の架橋したPVA、4.4重量%のKOH)に滴下した。次いで、8gのnGO分散液(約0.1重量%)を、激しく混合しつつ、ポリマー溶液に滴下して加えた。この後、混合物を音波処理して再分散させた。その後、nGO分散液によって導入された水をNによって蒸発させた。最後に、0.988gのPZEA-AIBA水溶液(27.13重量%)を分散液に加え、均一なコーティング溶液を作成した。8,000×gで3分間遠心分離処理を行い、コーティング溶液中に取り込まれた気泡を除去した。コーティング溶液を、GARDCO調節可能ミクロンメートルフィルムアプリケーターを使用することによって、ナノ多孔性ポリスルホン(PSf)基質の上にコーティングし、厚さが約25μmの選択的層を得た。膜を、ドラフトチャンバー中、室温で30分間乾燥し、次いで、120℃で6時間硬化させた。
【0087】
図3は、107℃、31.7barで、擬似合成ガスを用い、この膜についての供給物CO分圧の関数として、COパーミアンスおよび/またはCO/H選択性を示す。擬似合成ガスは、4%の水蒸気と6000ppmのHSを含み、残量はCOおよびHであった。COおよびH濃度を、供給側のCO分圧を12.5から0.5barまで下げることによって徐々に変え、これは、それぞれバルクCO除去の前後の供給物CO分圧に対応していた。供給物CO分圧に対する同様の依存性が、膜IIについて観察された。しかし、膜IIにおいて立体障害のあるAIBAは、担体飽和現象を軽減した。117~307GPUのかなり多くのCOパーミアンスおよび144~379の高いCO/H選択性が、1~7barのCO分圧について得られた。
【0088】
実施例の膜III
この例では、HEPは、移動担体として使用され、架橋したPVAおよびPVAmによって形成されるポリマーマトリックス中のCO輸送を促進した。それに加えて、PEGDMEも、高いCO分率でCO溶解性を向上させるために、親CO性部分として組み込まれた。
【0089】
0.2gのPVAm水溶液(4重量%)を、激しく撹拌しつつ、1gの架橋したPVA水溶液(8重量%の架橋したPVA、4.4重量%のKOH)に滴下した。次いで、8gのnGO分散液(約0.1重量%)を、激しく混合しつつ、ポリマー溶液に滴下して加えた。この後、混合物を音波処理して再分散させた。その後、nGO分散液によって導入された水をNによって蒸発させた。最後に、0.14gのHEPおよび0.14gのPEGDMEをそれぞれ分散液に加え、均一なコーティング溶液を作成した。8,000×gで3分間遠心分離処理を行い、コーティング溶液中に取り込まれた気泡を除去した。コーティング溶液を、GARDCO調節可能ミクロンメートルフィルムアプリケーターを使用することによって、ナノ多孔性ポリスルホン(PSf)基質の上にコーティングし、厚さが15μmの選択的層を得た。膜を、ドラフトチャンバー中、室温で30分間乾燥し、次いで、120℃で6時間硬化させた。
【0090】
図4は、107℃、31.7barで、擬似合成ガスを用い、この膜についての供給物CO分圧の関数として、COパーミアンスおよび/またはCO/H選択性を示す。擬似合成ガスは、4%の水蒸気と6000ppmのHSを含み、残量はCOおよびHであった。COおよびH濃度を、供給側のCO分圧を12.5から0.5barまで下げることによって徐々に変え、これは、それぞれバルクCO除去の前後の供給物CO分圧に対応していた。この膜について、供給物CO分圧は、分離性能に対して非常に弱い影響を有していた。アミノ基および豊富な親CO性部分の存在によって、高いCO分圧での膜において、CO溶解性が向上した。その結果、206~246GPUのCOパーミアンスおよび103~123の非常に良好なCO/H選択性が、3.5~12.5barのCO分圧について得られた。
【0091】
実施例の膜IV
この例では、DHEPは、移動担体として使用され、架橋したPVAおよびPVAmによって形成されるポリマーマトリックス中のCO輸送を促進した。それに加えて、PEGDMEも、高いCO分率でCO溶解性を向上させるために、親CO性部分として組み込まれた。
【0092】
0.2gのPVAm水溶液(4重量%)を、激しく撹拌しつつ、1gの架橋したPVA水溶液(8重量%の架橋したPVA、4.4重量%のKOH)に滴下した。次いで、8gのnGO分散液(約0.1重量%)を、激しく混合しつつ、ポリマー溶液に滴下して加えた。この後、混合物を音波処理して再分散させた。その後、nGO分散液によって導入された水をNによって蒸発させた。最後に、0.14gのDHEPおよび0.14gのPEGDMEをそれぞれ分散液に加え、均一なコーティング溶液を作成した。8,000×gで3分間遠心分離処理を行い、コーティング溶液中に取り込まれた気泡を除去した。コーティング溶液を、GARDCO調節可能ミクロンメートルフィルムアプリケーターによって、ナノ多孔性ポリスルホン(PSf)基質の上にコーティングし、厚さが15μmの選択的層を得た。膜を、ドラフトチャンバー中、室温で30分間乾燥し、次いで、120℃で6時間硬化させた。
【0093】
図5は、107℃、31.7barで、擬似合成ガスを用い、この膜についてのCOパーミアンスおよび/またはCO/Hを示す。擬似合成ガスは、4%の水蒸気と6000ppmのHSを含み、残量はCOおよびHであった。COおよびH濃度を、供給側のCO分圧を12.5から0.5barまで下げることによって徐々に変え、これは、それぞれバルクCO除去の前後の供給物CO分圧に対応していた。ここからわかるように、235~242GPUのCOパーミアンスおよび100~116の中程度のCO/H選択性が、3.5~12.5barのCO分圧について得られた。驚くべきことに、膜の性能は、CO分圧に伴って大きく変化しなかった。移動担体としてHEPを含む膜IIIと比較して、この膜は、CO性能の約20GPUの増加を示したが、CO/H選択性に大きな改善は示さなかった。この組成物は、担体飽和挙動を活用することができるように担体構造をさらに最適化する能力を示唆している。
【0094】
膜IIおよびIIIのHS/CO分離性能
膜IIおよびIIIのHS/CO分離性能も特性決定され、結果を図6に示す。CO分圧は、HS透過性にほとんど影響を与えなかった。865および755GPUのHSパーミアンスが、それぞれ膜IIおよびIIIについて得られた。これによって、31.7barで、これらの膜について3~7の範囲のHS/CO選択性が生じた。
【0095】
石炭由来の合成ガスからの膜炭素捕捉プロセス
一段膜プロセスの詳細なプロセスフロー図を図7に示す。General Electric Energy(GEE)の「放射線のみ」のガス化装置を用いたIGCCをモデリングするために、DOE 2015 Cost and Performance BaselineにおけるケースB5AおよびB5Bに従った。低温水性ガスシフト反応器からの高圧シフトした合成ガス(54.1bar)は、ターボエキスパンダーEX-01によって、約18~31.7barまで膨脹された。熱膨張は、活性化された硫黄含浸炭素吸着床による水銀除去のために、気体流を冷却する。特定の圧力範囲について、熱交換器HX-01および水ノックアウトドラムKO-01を使用して、合成ガス温度を約110℃に調節する。次いで、ガス流は、100を超えるCO/H選択性で単一膜段階に入り、供給物を、90%のCOが除去され、99%を超えるH回収率を有するCO枯渇保持物と、乾燥基準で95%を超えるCO純度を有するCO豊富な透過物とに分離する。さらに高いHS/H選択性(300を超える)に起因して、HSも、優先的に下流に透過し、保持物中に30ppm未満のHSが得られる。供給物から保持物までのCO分圧の顕著な減少により、典型的には、加工された輸送膜について、CO/H選択性が増加する(例えば、300を超える)ことを注記すべきである。この特徴は、高いH回収率を達成するために有益である。保持物は、EX-01の放出圧力が31.7bar未満である場合、ターボエキスパンダーEX-01によって駆動する同軸コンプレッサーCP-01によって、31.7barまで再圧縮される。CO除去によって気体の流速が低下し、それによって、コンプレッサーのエネルギー消費が少なくなるため、このステップは、エネルギー効率的である。EX-01によって生成する残りの出力は、発電に使用される。再圧縮の後、清浄化された合成ガスを196℃まで上げ、発電のためにガスタービン燃焼器に送る。熱交換器HX-02は、温度調整にとって最適である。過剰な寄生エネルギーを発生させることなく、膜透過の原動力を最大化するために、透過物流を1.1barで操作する。次いで、この流れを、5段フロント負荷遠心分離コンプレッサーMSC-01によって50barまで圧縮し、HS除去のために一段Selexolユニットに送る。除去されたHSは、Clausプラントによって原子状硫黄にさらに変換される。HSをストリッピングしたCO流は、隔離または油回収率の向上のために、3段フロント負荷遠心分離コンプレッサーMSC-02によって153barまで最終的に圧縮される。
【0096】
図8は、膜モジュールの供給側でのCO分圧の変化を示す。31.7barの供給圧および1.1barの透過物圧力を使用して、シフトしたガスから90%のCOを除去するのに必要な膜面積を計算した。図8の水平軸は、供給流路(550MWについて約14m)の全長によって正規化された供給物入口からの距離である。ここからわかるように、CO分圧は、CO除去に起因して顕著に減少し、それによって、膜中のより多くの担体が利用可能になり、COの透過を促進することができる。この特徴を利用するために、より透過性が高いが、より選択性が低い膜IIIを供給物入口に近接して、すなわち、膜段階の最初の35%に使用し、一方、より選択性が高いアミン含有膜IIを、保持物出口に近接して、すなわち、膜段階の残りの65%に使用する。このことは、操作する側から見て、上述の2つの異なる膜から製造された渦巻き形モジュールの中心の管を接続することによって達成することができる。ここからわかるように、図3および4で擬似合成ガスを使用して得られる膜性能に基づき、COパーミアンスは、供給物入口から保持物出口まで約206GPUから244GPUまで増加する。Hのみが、溶液拡散機構によって膜を通って透過するため、そのパーミアンスは、膜IIIについて約1.95であり、膜IIについて0.78であり、これはCO分圧によって影響を受けない。その結果、CO/H選択性も、供給物から保持物まで、約106から313まで増加する。この顕著に増加したCOパーミアンスによって、供給物出口に対応して一定のパーミアンスを有するものと比較して、必要な膜面積が30%減少する。より重要なことに、H分圧は、COを除去すると顕著に増加する。保持物出口に近づく三重のCO/H選択性は、H損失を最小化し、99%を超えるH回収率は、単一膜段階によって達成することができる。
【0097】
図9は、膜IIおよびIIIの割り当てが、31.7barの供給圧、1.1barの透過物圧力について、図3および4に示される実験的に測定される輸送データを用い、全膜面積およびH回収率にどのように影響を与えるかを示す。水平軸は、膜IIIが使用される供給物入口から開始する膜面積の割合である。示されるように、供給物入口付近の膜IIよりもCOパーミアンスが高いことに起因して、膜面積は、膜IIIの使用量を増加させるにつれて減少する。H回収率に対する影響は、さらに複雑である。膜IIIの使用量が多すぎる場合、保持物出口に近い高度にCO選択性の膜IIの不足によって、低いH回収率が生じる。一方、膜IIIの使用量が少なすぎる場合、供給物入口付近の膜IIの不十分なCO/H選択性によって、H回収率も悪化する。このトレードオフの関係によって、35%の膜IIIと65%の膜IIを組み合わせて、99.3%の最適なH回収率を生じる。
【0098】
参考文献
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[3]T.Fout,A.Zoelle,D.Keairns,M.Turner,M.Woods,N.Kuehn,V.Shah,V.Chou,and L.Pinkerton,“Cost and Performance Baseline for Fossil Energy Plants Volume b:Bituminous Coal(IGCC) to Electricity Revision 2b-Year Dollar Update”,National Energy Technology Laboratory Report,DOE/NETL-2015/1727(2015)。
[4]Z.Qiao,Z.Wang,S.Yuan,J.Wang,S.Wang,Preparation and characterization of small molecular amine modified PVAm membranes for CO/H separation,J.Membr.Sci.475(2015)290-302。
[5]Y.Zhao,B.T.Jung,L.Ansaloni,W.S.W.Ho,Multiwalled carbon nanotube mixed matrix membranes containing amines for high pressure CO/H separation,J.Membr.Sci.459(2014)233-243。
[6]L.Ansaloni,Y.Zhao,B.T.Jung,K.Ramasubramanian,M.G.Baschetti,W.S.W.Ho,Facilitated transport membranes containing amino-functionalized multi-walled carbon nanotubes for high-pressure CO separations,J.Membr.Sci.490(2015)18-28。
【0099】
添付の特許請求の範囲の組成物、システムおよび方法は、特許請求の範囲の少数の態様の例示であるものとされる、本明細書に記載の特定の組成物、システムおよび方法によって範囲が限定されない。機能的に同等であるいずれの組成物、システムおよび方法も、特許請求の範囲内に含まれるものとする。組成物、システムおよび方法の各種の変更は、本明細書に表示および記載されたものに加えて、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。さらに本明細書に開示される、ある代表的な組成物、システムおよび方法ステップのみが具体的に記載されているが、組成物、システムおよび方法ステップの他の組み合わせも、具体的に記載されていない場合でも、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。したがって、ステップ、要素、構成要素または構成の組み合わせは、本明細書で明示的にまたはそれ以下で言及され得るが、ステップ、要素、構成要素または構成の他の組み合わせは、明示的に述べられていなくても含まれる。
【0100】
本明細書で使用する「含む(comprising)」という用語およびその変形は、「含む(including)」という用語およびその変形と同義的に使用され、オープンで非限定的な用語である。本明細書では、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語を使用して各種の実施形態を説明してきたが、「含む(comprising)」および「含む(including)」の代わりに「から本質的になる」および「からなる」という用語を使用して、本発明のより具体的な実施形態を提供することができ、およびまた開示されている。特に注記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される形状、寸法などを表す数字は全て、少なくとも、均等論の特許請求の範囲への適用に限定しようとする試みとして理解されるべきでなく、有効数字および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0101】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、開示された発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用されている刊行物およびそれらが引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】