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特表2022-505824インクジェットインク用途のアクリルポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】インクジェットインク用途のアクリルポリマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20220106BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220106BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522498
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 US2019057597
(87)【国際公開番号】W WO2020086678
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/750,498
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】リウ ティアンチー
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジンチー
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC01
2H186BA10
2H186BA11
2H186DA12
2H186DA14
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB55
4J039AD09
4J039BA04
4J039BC07
4J039BC33
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE28
4J039BE30
4J039CA05
4J039EA19
4J039EA29
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料;少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマーであって、下記の構造を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、少なくとも1種のアクリルポリマー
(式中、Aは、C2-C12アルキルであり、R1は、H、C1-C12アルキル、式-NR34を有するアミン、および式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基から選択され、R3~R7は、HおよびC1-C12アルキルから独立して選択され、R2は、H、C1-C12アルキル、および酸基から選択される)
を含むインクジェットインク組成物が本明細書に開示される。インクジェットインク組成物は、水性液体媒体を更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料、
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマーであって、下記の構造を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、少なくとも1種のアクリルポリマー
【化1】
(式中、
Aは、C2-C12アルキルであり、
1は、H、C1-C12アルキル、式-NR34を有するアミン、および式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基から選択され、R3~R7は、HおよびC1-C12アルキルから独立して選択され、
2は、H、C1-C12アルキル、および酸基から選択される)、ならびに
水性液体媒体
を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項2】
酸価が150~400KOH/gの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸価が少なくとも160KOH/gである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
分子量が1,000~13,000の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、水性液体媒体に対して自己分散性または可溶性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のアクリルポリマーがコポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、少なくとも1種のアクリルモノマーを少なくとも20mol%の量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、少なくとも1種のアクリルモノマーを20mol%~75mol%の範囲の量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のアクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびその塩から選択される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種のアクリルモノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項11】
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸の、エステル、アミノエステルおよびアミド;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応生成物;スチレン;アクリロニトリル;アセテート;ならびにアリルアルコールから選択される少なくとも1種の第2のモノマーを更に含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基、そのエステル、またはその塩を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの有機基が、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、そのエステル、またはその塩を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの有機基が、式-CQ(PO322を有する少なくとも1つの基またはその塩(式中、Qは、H、R、OR、SR、またはNR2であり、Rは、同じであっても異なっていてもよく、H、C1-C18アルキル、C1-C18アシル、アラルキル、アルカリール、およびアリールから選択される)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの有機基が、式-(CH2)n-CQ(PO322を有する少なくとも1つの基またはその塩(式中、nは1~9の範囲の整数である)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの有機基が、式-CR=C(PO322を有する少なくとも1つの基またはその塩を含み、Rが、H、C1-C6アルキル、およびアリールから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの有機基が、少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩、および少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩に対してビシナルまたはジェミナルな少なくとも1つの第2のイオン性基、イオン化可能基、または塩基性基を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
水性液体媒体が水である、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、塩基で少なくとも40%中和されている、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
Aが、C2-C6アルキルである、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
1が、式-NR34を有するアミンである、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
1が、式-NR34を有するアミンであり、R3およびR4のうちの少なくとも1つがHである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
1が、式-NR34を有するアミンであり、R3およびR4がHである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
1が、式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
2が、カルボン酸、スルホン酸、およびホスホン酸から選択される酸基である、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
2が、カルボン酸から選択される酸基である、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、+1の正味電荷を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
6~10の範囲のpHを有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも1種の顔料と少なくとも1種のアクリルポリマーとを含むインクジェットインク組成物が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば普通紙上に堆積させた場合に、適切な光学濃度を有する顔料ベースのインクジェットインク組成物に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料;
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマーであって、下記の構造を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、少なくとも1種のアクリルポリマー
【化1】
(式中、
Aは、C2-C12アルキルであり、
1は、H、C1-C12アルキル、式-NR34を有するアミン、および式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基から選択され、R3~R7は、HおよびC1-C12アルキルから独立して選択され、
2は、H、C1-C12アルキル、および酸基から選択される);ならびに
水性液体媒体
を含むインクジェットインク組成物が本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
普通紙への水性インクジェット印刷の場合、基材が親水性であり高気孔率であるので、顔料粒子が紙繊維の網目構造に浸透するのが見られるのが一般的である。この浸透は、紙の上面での低い光学濃度(OD)および/または裏側での高いシースルーをもたらす可能性がある。インクジェット用途の場合、いくつかのグレードの普通紙は、遊離した可溶性の2価/3価イオン、例えば、カルシウムおよび/またはマグネシウムで処理される。2価/3価の金属イオンは、顔料と共に凝固して、より大きな凝集体を形成する。結果として繊維への顔料の浸透が減少し、より高い顔料濃度が上面に残存する。しかしながらこの紙処理は、製紙業者、印刷施設、ひいては消費者にとってコスト増となる可能性がある。
水性インクジェット印刷の場合の別の望ましい属性は、汚れおよび画像転写を回避するための紙上でのインク液滴の速乾性である。しかし、より速い乾燥を可能にする(例えば、インクジェット液体が紙繊維の網目構造により速く浸透することを可能にする)ためのインク配合アプローチは、顔料が紙繊維または炭酸カルシウムと相互作用する時間が不十分なため、光学濃度の低下をもたらす場合がある。
ある特定のポリマーと顔料の組み合わせが、少なくとも普通紙へのインクジェット印刷による光学濃度を高めることが発見された。したがって、一実施形態は、
1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料;
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマー;ならびに
水性液体媒体
を含むインクジェットインク組成物を提供する。
普通紙の製造においては、無機粒子を結合させ、印刷機での走行性のためのシートの剛性を付与するための接着剤として、デンプンがベースシートに添加される。デンプンは水に敏感であり、水と接触すると著しく膨張する可能性がある。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、水性インク組成物中のある特定のポリマーは、デンプンの湿潤および膨張のプロセスを促進して、OD性能の改善をもたらす可能性がある。膨張したデンプンは、普通紙の気孔率を低下させ、したがって紙繊維の網目構造への顔料粒子の浸透を阻害することができる。
【0005】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、低分子量と高酸価(親水性に寄与する)を有するポリマーは、比較的流動性があり、普通紙の表面内/上でのデンプンの湿潤と膨張を促進することができる。結果として生じる紙の気孔率の低下は、例えば普通紙では紙繊維マトリクスによる、または表面加工紙に存在する2価/3価の金属イオンによる、顔料粒子のより効率的な捕捉を可能にし得る。これは、より多くの顔料粒子を紙の上面に残存させ、光学濃度性能への寄与における顔料の使用を最大化することができる。
一実施形態において、少なくとも1種のポリマーは、アクリルポリマーである。一実施形態において、アクリルポリマーは、少なくとも1種のアクリルモノマーを含む。一実施形態において、少なくとも1種のアクリルモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩を含む。
【0006】
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルモノマーは、その酸価(AN)を特徴とする。少なくとも1種のアクリルポリマーの酸価は、下記の等式から計算することができる:
AN=(COOH含有モノマーのモル数×56.1mgKOH×1000)/(モノマーの総質量(g))
一実施形態において、COOH含有モノマーは、アクリルモノマーを含み、任意にCOOHを含有する他のモノマーを含むことができる。別の実施形態において、COOH含有モノマーは、アクリルモノマーである。一実施形態において、アクリルポリマーは、少なくとも150KOH/g(アクリルポリマー)の酸価を有する。別の実施形態において、酸価は、少なくとも160KOH/gアクリルポリマー、例えば、少なくとも175、または少なくとも200KOH/gアクリルポリマーである。別の実施形態において、酸価は、150~400、例えば160~400、175~400、200~400、150~300、160~300、175~300、200~300、150~250、160~250、175~250、または200~250KOH/gアクリルポリマーの範囲である。
【0007】
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、1,000~15,000、例えば1,000~14,000、1,000~13,000、1,000~10,000、3,000~15,000、3,000~14,000、3,000~13,000、または3,000~10,000の範囲の質量平均分子量を有する。
水性インクジェットインクは、典型的には有機溶媒、例えば保湿剤および/または浸透剤を含有する。保湿剤は、インクジェットインク組成物の所望の粘度を達成するのに役立つことができ、および/または印字ヘッドノズル開口部における適切な水分レベルを維持することができる。浸透剤は、表面活性があり、噴射挙動、液滴の広がり、および/または印刷基材上での液滴の浸透を制御するために使用できる。分散させた顔料とポリマーの両方を含むインク組成物は、典型的には水および水が少なくとも50質量%の量で存在する場合の溶媒/水混合物中で安定性を示す。しかし、水が蒸発して50質量%未満の水濃度を有する組成物が生じる可能性がある状況、例えば、印字ノズルが噴射シーケンス間で休止している場合や、保存中にキャップが外されている場合が存在する。こうした環境は、顔料粒子の安定性を低下させる可能性がある。更に、アクリルポリマーの存在は、インクの粘度を増加させる可能性があり、それは、噴射に関する問題につながる可能性がある。
【0008】
アクリルポリマーをある特定の有機塩基(例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)で中和することによって有機対イオンを系に組み込むと、インク組成物が50質量%未満の水を有する状況における顔料および/またはポリマーの相溶性および/または安定性が向上する。こうした相溶性/安定性は、ポリマーを無機塩基、例えば水酸化ナトリウムで中和した組成物と比較して、改善されている。しかし、この相溶性および/または安定性の改善は、インクを基材(例えば、紙)上に堆積させる場合に光学濃度(O.D.)の低下につながり得る。高いO.D.は、典型的には顔料粒子のより速い凝固または凝集を必要とし、この能力は、安定性/相溶性が向上すると低下する。したがって、こうした組成物の場合、顔料/ポリマーの相溶性/安定性とO.D.性能との間には、トレードオフが存在する。
【0009】
相溶性/安定性とO.D.性能との間のトレードオフは、グアニジン構造を組み込んでいるある特定の塩基でポリマーを中和することによって管理できることが発見されている。こうした塩基は、無機塩基と比較して、相溶性および/または安定性の改善を、他の有機塩基と比較して、大幅にO.D.を低下させることなく、達成できる。
したがって、別の実施形態は、
1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料;
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマーであって、下記の構造を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、少なくとも1種のアクリルポリマー
【化2】
(式中、
Aは、C2-C12アルキルであり、
1は、H、C1-C12アルキル、式-NR34を有するアミン、および式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基から選択され、R3~R7は、HおよびC1-C12アルキルから独立して選択され、
2は、H、C1-C12アルキル、および酸基から選択される);ならびに 水性液体媒体
を含むインクジェットインク組成物を提供する。
【0010】
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、塩基で少なくとも部分的に中和されており、例えば、少なくとも1種のアクリルポリマーは、塩基で少なくとも40%中和、少なくとも50%中和、少なくとも60%中和、少なくとも70%中和、少なくとも80%中和、少なくとも90%中和、少なくとも95%中和、少なくとも99%中和、または完全に中和(100%中和)されている。所望の量の中和は、少なくとも1種のポリマーの酸価から計算することができる。一実施形態において、組成物のpH(中和後)は、6~10、例えば6~9、6~8.5、7~10、7~9、または7~8.5の範囲とすることができる。
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、塩基で少なくとも部分的に中和されており、その結果、塩基は+1の正味電荷を有する対イオン(カチオン)として作用する。この正味電荷は、R1およびR2基の選択、ならびに/または塩基のグアニジン残基上の窒素基のプロトン化によって達成できる。一実施形態において、塩基での中和は、少なくとも1種のポリマーと中性形態の塩基との組み合わせによって達成でき、ポリマーから塩基へのプロトン移動を引き起こし、+1の正味電荷を有する対イオン(カチオン)としての塩基を生成する。
【0011】
別の実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、少なくとも1種のポリマーとカチオン形態の塩基(例えば、塩)との組み合わせによって、塩基で少なくとも部分的に中和されている。一実施形態において、この組み合わせは、少なくとも1種のポリマーならびにそのプロトンおよび/または対イオンと、カチオン性塩基(塩基は+1の正味電荷を有する)およびそのそれぞれの対イオンとの間のイオン交換を引き起こす。例えば、ポリマーは、カチオン性塩基とイオン交換できるナトリウム対イオンを有することができ、その結果、少なくとも1種のポリマーは、カチオン性塩基を対イオンとして有し、そこでは、塩基が+1の正味電荷(例えば、アルギニンカチオン)を有する。
一実施形態において、Aは、C2-C6アルキル、例えばエチルである。一実施形態において、R1およびR2は、Aの同じまたは異なる炭素原子に結合することができる。一実施形態において、R1およびR2は、Aの同じ炭素原子に結合している。
一実施形態において、R1は、式-NR34を有するアミンであり、式中、R3およびR4は、HおよびC1-C12アルキルから、例えばHおよびC1-C6アルキル(例えばメチルまたはエチル)から独立して選択される。一実施形態において、R3およびR4のうちの少なくとも1つはHである。別の実施形態において、R3とR4の両方がHである。
【0012】
一実施形態において、R1は、式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基であり、式中、R5~R7は、HおよびC1-C12アルキルから、例えばHおよびC1-C6アルキル(例えばメチルまたはエチル)から独立して選択される。
一実施形態において、R2は、H、C1-C12アルキル(例えばC1-C6アルキル、例えばメチルまたはエチル)、および酸基から選択される。一実施形態において、R2は、酸基から選択される。酸基は、カルボン酸、スルホン酸、およびホスホン酸から選択できる。一実施形態において、R2は、カルボン酸から選択される酸基である。
一実施形態において、Aは、C2-C6アルキルであり、R1は、式-NR34を有するアミンであり、R2は、酸基である。一実施形態において、R3およびR4は、Hであり、R2は、カルボン酸である。一実施形態において、少なくとも1種のポリマーは、アルギニンで少なくとも部分的に中和されている。
一実施形態において、Aは、C2-C6アルキルであり、R1は、式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するアミンであり、R2は、酸基である。一実施形態において、R5~R7は、Hであり、R2は、カルボン酸である。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、少なくとも1種のアクリルモノマーを、少なくとも20mol%の量で、例えば少なくとも25mol%の量で含む。少なくとも1種のアクリルポリマーは、コポリマーとすることができる。別の実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、少なくとも1種のアクリルモノマーを、20mol%~75mol%、例えば25mol%~75mol%、20mol%~70mol%、25mol%~70mol%、20mol%~65mol%、または25mol%~65mol%の範囲の量で含む。
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、およびフマル酸とそれらの塩から選択される。一実施形態において、少なくとも1種のアクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸とそれらの塩から選択される。
【0014】
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、コポリマー、例えばランダムコポリマーである。少なくとも1種のアクリルモノマーに加えて、少なくとも1種のアクリルポリマーは、少なくとも1種のアクリルモノマーと共重合可能な少なくとも1種の第2のモノマーを更に含むことができる。一実施形態において、少なくとも1種の第2のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸の、エステル、アミノエステルおよびアミド;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応生成物;スチレン;アクリロニトリル;アセテート;ならびにアリルアルコールから選択される。
【0015】
例示的な第2のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸(actylate)t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、およびメタクリル酸ベンジル;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応生成物、例えばステアリン酸とメタクリル酸グリシジルとの付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応生成物;スチレン、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、およびp-tert-ブチルスチレン;イタコン酸エステル、例えばイタコン酸ベンジル;マレイン酸エステル、例えばマレイン酸ジメチル;フマル酸エステル、例えばフマル酸ジメチル;ならびにアクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸イソボニル、メタクリル酸イソボニル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、アクリル酸のアミノエチルアミド、アクリル酸のアミノプロピルアミド、アクリル酸のメチルアミノエチルアミド、アクリル酸のメチルアミノプロピルアミド、アクリル酸のエチルアミノエチルアミド、アクリル酸のエチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸のアミノエチルアミド、メタクリル酸のアミノプロピルアミド、メタクリル酸のメチルアミノエチルアミド、メタクリル酸のメチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸のエチルアミノエチルアミド、メタクリル酸のエチルアミノプロピルアミド、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N-メチロールアクリルアミド、およびアリルアルコールが挙げられる。
【0016】
一実施形態において、少なくとも1種の第2のモノマーは、スチレン、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、およびp-tert-ブチルスチレンから選択される。一実施形態において、少なくとも1種の第2のモノマーは、スチレンである。
一実施形態において、塩基で少なくとも部分的に中和されている少なくとも1種のアクリルポリマーは、水性液体媒体中で自己分散性または可溶性であり、例えば、水性液体媒体に分散または溶解させるために追加の界面活性剤または分散剤を必要としない。
一実施形態において、少なくとも1種のアクリルポリマーは、組成物の全質量に対して0.5質量%~5質量%の範囲の量、例えば0.5質量%~4質量%、0.5質量%~3質量%、1質量%~5質量%、1質量%~4質量%、または1質量%~3質量%の範囲の量で存在する。
一実施形態において、ポリマー/顔料比は、0.05~2、例えば0.05~1、0.05~0.5、0.05~0.3、0.1~2、0.1~1、0.1~0.5、0.1~0.3、0.15~2、0.15~1、0.15~0.5、または0.15~0.3である。
【0017】
一実施形態において、顔料は自己分散顔料であり、例えば、顔料は自己分散性である。一実施形態において、自己分散顔料は、少なくとも1つの有機基が結合した改質顔料である。一実施形態において、「結合した」有機基は、数時間(例えば、少なくとも4、6、8、12、または24時間)のソックスレー抽出によって、結合した基が顔料から除去されないという点で、吸着した基とは区別できる。別の実施形態において、出発有機処理材料を溶解できるが処理した顔料を分散できない溶媒または溶媒混合物で反復洗浄(例えば、2、3、4、5回、またはそれ以上の洗浄)しても有機基が除去できない場合、有機基は、顔料に結合している。更に別の実施形態において、「結合した」は、結合、例えば共有結合を指し、例えば、顔料は有機基に結合または共有結合している。
一実施形態において、組成物は、カルシウムに結合する能力がある、即ち、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料を含む。一実施形態において、カルシウム結合能は、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第8,858,695号に記載されているように、カルシウム指数値により定量化できる。「カルシウム指数値」は、溶液中で有機基がカルシウムイオンに配位または結合する能力の尺度を指す。カルシウム指数値が高いほど、基は強力または有効にカルシウムイオンに配位することができる。カルシウム指数値は、他の2価金属イオン、例えば、マグネシウムの結合能を示すために使用することもできる。
【0018】
カルシウム指数値は、当技術分野で公知の任意の方法によって判定することができる。例えば、カルシウム指数値は、可溶性のカルシウムイオンと変色指示薬を含有する標準溶液中で化合物によって配位したカルシウムの量を紫外可視分光法を使用して測定する方法で測定してもよい。あるいは、強い色を有する化合物の場合、カルシウム指数値は、NMR法を使用して測定してもよい。
一実施形態において、「カルシウム指数値」は、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第8,858,695号に記載の方法、例えば、第29欄45行目~第31欄37行目の方法Aまたは方法Bに従い判定される。使用するいずれの方法の場合も、試験を行う所望の有機基に対応する化合物を選択した。試験化合物において、カルシウムイオンへの結合に関与する原子が少なくとも2つの結合によって残基から分離される限り、少なくとも1つの有機基は、任意の残基に結合することができる。残基は、水素、C1-C10アルキル(置換もしくは非置換)、またはC4-C18アリール(置換もしくは非置換)を含むか、それからなるものとすることができ、例えば、試験を行う化合物は、水素、C1-C10アルキル(置換もしくは非置換)、またはC4-C18アリール(置換もしくは非置換)に結合した有機基を含むことができる。例えば、3,4,5-トリカルボキシフェニル官能基およびその塩の場合、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸を選択することができる。この例において、残基は水素であり、カルボン酸の酸素原子は、水素残基から少なくとも結合2つ分離れている。
【0019】
一実施形態において、カルシウム指数値への言及は、値が基準材料の値以上であることを意味する。一実施形態において、基準は、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸である。したがって、少なくとも1つの有機基は、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する。別の実施形態において、基準は、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸である。一実施形態において、カルシウム指数値は、以下により詳細に記載するように、紫外可視分光法(または方法A)を使用して判定する場合、2.8以上、3.0以上、または3.2以上である。
【0020】
方法A。この方法では、0.087mMのコンゴーレッド指示薬、5mMの塩化セシウム、1質量%のMW350ポリエチレングリコールメチルエーテル、および0~7mM(0.2、0.5、1、2、3、4、4.5、5、6、および7mM)の範囲の濃度の塩化カルシウムを含有する一連の溶液をpH9で調製した。これらの溶液の紫外可視スペクトルを、UV-2501PCを使用してそれらの調製から1時間以内に記録した。これらのスペクトルを使用して、520nmでの吸光度をカルシウム濃度と関連づける較正曲線を創出した。
次いで、0.087mMのコンゴーレッド指示薬、1質量%のMW350ポリエチレングリコールメチルエーテル、5mMの塩化カルシウム、およびpH9でのイオン濃度が5mMとなるようにした対象の化合物のセシウム塩を含有する試験溶液を、pH9で調製した。錯体化していないカルシウム濃度を較正曲線との比較によって判定した。次いで、カルシウム指数値を、log10((0.005-錯体化していないカルシウム)/((錯体化していないカルシウム)2))として計算した。繰り返して測定を行い、平均を求めた。
【0021】
方法B。高レベルの色を発色し、したがって方法Aの使用が困難な化合物用に、第2の方法が開発された。この方法の場合、43CaCl2が0.01M、NaClが0.01M、10%D2O、およびpH8または9の水溶液を、43CaCO3、HCl/D2O、NaOH/D2O、D2Oおよび水から調製した。pHは、検査対象の化合物をイオン化し、化合物を溶解させるために選択した。約0.65gの重さの溶液の一部を5mmのNMR管に添加し、0.001gの位まで計量した。プロトン共鳴周波数が400.13MHzのBruker AvanceII分光計を使用して非結合43Caの化学シフトを測定した。検査対象の化合物(配位子)の0.2~1.0M溶液を連続的な増分で添加した。毎回の添加後に、43Ca化学シフトを測定し、サンプルの化学シフトと非結合カルシウムの化学シフトとの差δを計算した。連続的な増分は、Lo/Cao比が0.25、0.5、1、2、3、4、6および8となるように計画し、ここで、Loは、配位子からの錯体化、プロトン化および遊離アニオンの総濃度であり、Caoは、存在する全ての種中のカルシウムの総濃度である。カルシウム指数値(NMR)は、log10(X)として計算し、ここで、Xは、データと等式から予想される化学シフトとのRMS差が最小となるように、パラメータXおよびδmを等式に代入することによって判定される。
【0022】
【数1】
(式中、
δは、サンプルの43Ca化学シフトと遊離水性43Ca2+の化学シフトとの差であり;
δmは、無限L/Caにおける43Ca化学シフトと遊離43Ca2+の化学シフトとの計算された差であり;
oは、配位子からの錯体化、プロトン化および遊離アニオンの総濃度であり;
Caoは、存在する全ての種中のカルシウムの総濃度であり;
Xは、代入パラメータであり;
aは、配位子LHの場合のプロトン解離定数である)
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのホスホン酸基(例えば、少なくとも2つのホスホン酸基)、その部分エステル、およびその塩、例えばジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩から選択される。一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよく、即ち、少なくとも1つの有機基は、同じ炭素原子に直接結合した少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよい。こうした基はまた、1,1-ジホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩と呼んでもよい。したがって、例えば、少なくとも1つの有機基は、式-CQ(PO322を有する基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよい。Qは、ジェミナル位置に結合しており、H、R、OR、SR、またはNR2であってもよく、式中、Rは、同じであっても異なっていてもよく、H、C1-C18飽和もしくは不飽和分枝もしくは非分枝アルキル基、C1-C18飽和もしくは不飽和分枝もしくは非分枝アシル基、アラルキル基、アルカリール基、またはアリール基である。例えば、Qは、H、R、OR、SR、またはNR2であってもよく、式中、Rは、同じであっても異なっていてもよく、H、C1-C6アルキル基、またはアリール基である。一実施形態において、Qは、H、OH、またはNH2である。更に、少なくとも1つの有機基は、式-(CH2n-CQ(PO322を有する基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよく、式中、Qは、上記の通りであり、nは、0~9、例えば1~9、0~3、または1~3である。一実施形態において、nは、0または1のいずれかである。また、少なくとも1つの有機基は、式-Y-(CH2n-CQ(PO322を有する基、その部分的なエステル、およびその塩を含んでもよく、式中、Qおよびnは、上記の通りであり、Yは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、ビニリデン、アルカリーレン、アラルキレン、環式、または複素環基である。一実施形態において、Yは、アリーレン基、例えばフェニレン、ナフタレン、またはビフェニレン基であり、これは、任意の基、例えば1つまたは複数のアルキル基またはアリール基で更に置換されていてもよい。Yがアルキレン基である場合、例としては、限定されるものではないが、置換または非置換アルキレン基が挙げられ、これは、分枝または非分枝でもよく、1つまたは複数の基、例えば芳香族基で置換することができる。例としては、限定されるものではないが、メチレン、エチレン、プロピレン、またはブチレン基などのC1-C12基が挙げられる。
【0023】
Yは、限定されるものではないが、R’、OR’、COR’、COOR’、OCOR’、カルボキシレート、ハロゲン、CN、NR’2、SO3H、スルホネート、サルフェート、NR’(COR’)、CONR’2、イミド、NO2、ホスフェート、ホスホネート、N=NR’、SOR’、NR’SO2R’、およびSO2NR2’から選択される1つまたは複数の基で更に置換されていてもよく、式中、R’は、同じであっても異なっていてもよく、独立して水素、分枝もしくは非分枝C1-C20置換もしくは非置換飽和もしくは不飽和炭化水素、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アルカリール、または置換もしくは非置換アラルキルである。
【0024】
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、式-Y-Sp-(CH2n-CQ(PO322を有する基、その部分エステル、またはその塩を含んでもよく、式中、Y、Q、およびnは、上記の通りである。Spは、スペーサ基であり、本明細書において使用した場合、2つの基の間の結合である。Spは、結合または化学基とすることができる。化学基の例としては、限定されるものではないが、-CO2-、-O2C-、-CO-、-OSO2-、-SO3-、-SO2-、-SO224O-、-SO224S-、-SO224NR”-、-O-、-S-、-NR”-、-NR”CO-、-CONR”-、-NR”CO2-、-O2CNR”-、-NR”CONR”-、-N(COR”)CO-、-CON(COR”)-、-NR”COCH(CH2CO2R”)-およびそれに由来する環状イミド、-NR”COCH2CH(CO2R”)-およびそれに由来する環状イミド、-CH(CH2CO2R”)CONR”-およびそれに由来する環状イミド、-CH(CO2R”)CH2CONR”およびそれに由来する環状イミド(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含む)、スルホンアミド基(-SO2NR”-および-NR”SO2-基を含む)、アリーレン基、アルキレン基などが挙げられる。R”は、同じであっても異なっていてもよく、水素または有機基、例えば置換もしくは非置換アリールもしくはアルキル基を表す。上記の構造により示されるように、少なくとも2つのホスホン酸基およびその塩を含む基は、スペーサ基Spを介してYに結合している。一実施形態において、Spは、-CO2-、-O2C-、-O-、-NR”CO-、または-CONR”-、-SO2NR”-、-SO2CH2CH2NR”-、-SO2CH2CH2O-、または-SO2CH2CH2S-であり、式中、R”は、HまたはC1-C6アルキル基である。
【0025】
加えて、少なくとも1つの有機基は、式-CR=C(PO322を有する少なくとも1つの基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよい。Rは、H、C1-C18飽和もしくは不飽和の分枝もしくは非分枝アルキル基、C1-C18飽和もしくは不飽和の分枝もしくは非分枝アシル基、アラルキル基、アルカリール基、またはアリール基とすることができる。一実施形態において、Rは、H、C1-C6アルキル基、またはアリール基である。
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、2つを超えるホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよく、例えば、各種類の基が少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含む、1を超える(例えば2以上の)種類の基を含んでもよい。例えば、少なくとも1つの有機基は、式-Y-[CQ(PO322]pを有する基、その部分エステル、またはその塩を含んでもよい。YおよびQは、上記の通りである。一実施形態において、Yは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリーレン、またはアラルキレン基である。この式において、pは、1~4であり、例えば、pは2である。
【0026】
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのビシナルビスホスホン酸基、その部分エステル、その塩を含んでもよく、それは、これらの基が、互いに隣接していることを意味する。したがって、少なくとも1つの有機基は、隣接または近接する炭素原子に結合した2つのホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含んでもよい。こうした基は、1,2-ジホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩とも呼ばれることがある。2つのホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含む基は、芳香族基またはアルキル基であってもよく、したがって、ビシナルビスホスホン酸基は、ビシナルアルキルまたはビシナルアリールジホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩であってもよい。例えば、少なくとも1つの有機基は、式-C63-(PO322を有する基、その部分エステル、およびその塩であってもよく、この場合、酸、エステル、または塩の基は、互いに対してオルト位置にある。
【0027】
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩、およびホスホン酸基およびその塩に対してビシナルまたはジェミナルな少なくとも1つの第2のイオン性基、イオン化可能基、または塩基性基を含む。
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、-C(OH)(PO322、-CH2C(OH)(PO322、-CH2CH2C(OH)(PO322、-CH2CH2CH2C(OH)(PO322、-CH(PO322,-CH2CH(PO322、それらの部分エステル、およびそれらの塩から選択される。
結合した有機基の量は、改質されたカーボンブラックの所望の使用および結合した基の種類に応じて変化する可能性がある。例えば、有機基の総量は、窒素吸着(BET法)により測定した場合、約0.01~約10.0マイクロモル(基の)/m2(顔料の表面積)であってもよく、例えば約0.5~約5.0マイクロモル/m2、約1~約3マイクロモル/m2、または約2~約2.5マイクロモル/m2である。本発明の様々な実施形態に関して記載するものとは異なる追加の結合した有機基も、存在してもよい。
結合前の非改質顔料は、当業者によって従来より使用されている任意の種類の顔料、例えば、青、黒、茶、シアン、緑、白、紫、マゼンタ、赤、オレンジ、または黄色の顔料を含む黒色顔料および他の着色顔料とすることができる。様々な顔料の混合物を使用することもできる。黒色顔料の代表例としては、種々のカーボンブラック(ピグメントブラック7)、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、およびランプブラックが挙げられ、例えば、Cabot Corporationから入手可能なRegal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)、およびVulcan(登録商標)カーボンブラック(例えばBlack Pearls(登録商標)2000、Black Pearls(登録商標)1400、Black Pearls(登録商標)1300、Black Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)570、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Regal(登録商標)660、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400、Vulcan(登録商標)P)として販売されているカーボンブラックが含まれる。他の供給業者から入手可能なカーボンブラックを使用することもできる。着色顔料の適切なクラスとしては、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、ヘテロサイクリックイエロー、キナクリドン、キノロノキノロン、および(チオ)インジゴイドが挙げられる。こうした顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、Sun Chemical Corporation、Clariant、およびDianipponInk and Chemicals(DIC)を含む多数の供給元から粉末またはプレスケーキのいずれかの形態で市販されている。他の適切な着色顔料の例は、Colour Index, 3rd edition (The Society of Dyers and Colourists, 1982)に記載されている。一実施形態において、顔料は、シアン顔料、例えばピグメントブルー15、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、もしくはピグメントブルー60、マゼンタ顔料、例えばピグメントレッド122、ピグメントレッド177、ピグメントレッド185、ピグメントレッド202、もしくはピグメントバイオレット19、黄色顔料、例えばピグメントイエロー74、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー218、ピグメントイエロー220、もしくはピグメントイエロー221、オレンジ顔料、例えばピグメントオレンジ168、緑色顔料、例えばピグメントグリーン7もしくはピグメントグリーン36、または黒色顔料、例えばカーボンブラックである。
【0028】
一実施形態において、顔料は、インクジェットインクの性能に悪影響を及ぼすことなく所望の画質(例えば、光学濃度)を実現するのに有効な量で存在することができる。一実施形態において、顔料は、インクジェットインク組成物に、インクジェットインク組成物の全質量を基準として0.1%~20%、例えば、1%~20%、1%~10%、または3%~8%の範囲の量で存在する。
【0029】
分散体およびインクジェットインク組成物
一実施形態において、分散体は、例えば、水とすることができる水性液体媒体を含む水性分散体、例えばインクジェットインク組成物である。一実施形態において、分散体またはインクジェットインク組成物は、少なくとも40%の水、例えば少なくとも45%の水または少なくとも50%の水を含む。
【0030】
一実施形態において、分散体またはインクジェットインク組成物は、インクジェットインク組成物の全質量に対して1%~50%の範囲の量で存在する、または本明細書に開示するような他の量で存在する、少なくとも1種の有機溶媒を含む。一実施形態において、有機溶媒は、水に可溶性または混和性である。別の実施形態において、有機溶媒は、水性加水分解条件(例えば、エステルおよびラクトンの加水分解を含む、例えば熱老化条件下での水との反応)に対して化学的に安定である。一実施形態において、有機溶媒は、水の誘電率より低い誘電率、例えば20℃で約10~約78の範囲の誘電率を有する。適切な有機溶媒の例としては、低分子量グリコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびテトラエチレングリコールモノブチルエーテル);アルコール(例えばエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、およびtert-ブチルアルコール、2-プロピン-1-オール(プロパルギルアルコール)、2-ブテン-1-オール、3-ブテン-2-オール、3-ブチン-2-オール、およびシクロプロパノール);約2~約40個の炭素原子を含有するジオール(例えば1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、およびポリ(エチレン-co-プロピレン)グリコールと、それらの、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどのエチレンオキシドを含むアルキレンオキシドとの反応生成物);約3~約40個の炭素原子を含有するトリオール(例えばグリセリン(グリセロール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオールなどと、それらの、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの混合物を含むアルキレンオキシドとの反応生成物);ポリオール(例えばペンタエリトリトール);アミド(例えばジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド);ケトンまたはケトアルコール(例えばアセトンおよびジアセトンアルコール);エーテル(例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン);ラクタム(例えば2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、およびε-カプロラクタム);尿素または尿素誘導体(例えばジ-(2-ヒドロキシエチル)-5,5,-ジメチルヒダントイン(ダンタコール)および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン);分子内塩(例えばベタイン);ならびにヒドロキシアミド誘導体(例えばアセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、およびプロピルカルボキシプロパノールアミンと、それらのアルキレンオキシドとの反応生成物)が挙げられる。追加の例としては、サッカリド(例えばマルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース);約2~約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体(対称および非対称)(例えばジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、およびアルキルフェニルスルホキシド);ならびに約2~約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称)(例えばジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、およびジメチルスルホラン)が挙げられる。有機溶媒は、有機溶媒の混合物を含むことができる。
【0031】
溶媒の量は、溶媒の特性(溶解度および/または誘電率)、着色剤の種類、および結果として得られるインクジェットインク組成物の所望の性能を含む種々の要因に応じて変化する可能性がある。溶媒は、インクジェットインク組成物の全質量を基準として1%~40質量%の範囲の量で使用してもよく、1%~30%の範囲の量、または1%~20%の範囲の量が挙げられる。別の実施形態において、溶媒の量は、水性分散体またはインクジェットインク組成物の全質量を基準として約2質量%以上であり、約5%以上および約10質量%以上が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、インク組成物(例えば、インクジェットインク組成物)は、例えば、顔料が自己分散性ではない場合、少なくとも1種の界面活性剤を含む。少なくとも1種の界面活性剤は、組成物のコロイド安定性を高め、またはインクと印刷基材、例えば印刷用紙、またはインク印字ヘッドのいずれかとの相互作用を改変することができる。本発明のインク組成物と共に様々なアニオン性、カチオン性および非イオン性界面活性剤を使用することができ、これらは、未希釈で使用しても、水溶液として使用してもよい。一実施形態において、界面活性剤は、インクジェットインク組成物の全質量に対して質量で0.05%~5%の範囲の量、例えば、0.1%~5%、または0.5%~2%の範囲の量で存在する。
【0033】
アニオン性界面活性剤の代表例としては、限定されるものではないが、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホスクシネート、ナフテネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシル化ペプチド、α-オレフィンスルホネート、N-アシルメチルタウリン(N-acrylmethyl taurine)、アルキルエーテルスルホネート、二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネートが挙げられ、ヒドロキシル化またはアミノ化誘導体が含まれる。例えば、スチレンスルホネート塩、非置換および置換ナフタレンスルホネート塩(例えばアルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含む非置換アルキルアルデヒド誘導体)、マレイン酸塩、ならびにこれらの混合物のポリマーおよびコポリマーをアニオン性分散補助剤として使用してもよい。塩は、例えば、Na+、Li+、K+、Cs+、Rb+、ならびに置換および非置換のアンモニウムカチオンを含む。カチオン性界面活性剤の代表例としては、脂肪族アミン、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0034】
本発明のインクジェットインクに使用できる非イオン性界面活性剤の代表例としては、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、エトキシ化アセチレンジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合型のエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドが挙げられる。例えば、エトキシ化モノアルキルまたはジアルキルフェノールを使用してもよい。これらの非イオン性界面活性剤または分散剤は、単独で、または前述のアニオン性およびカチオン性分散剤と組み合わせて使用できる。
【0035】
一実施形態において、インクジェットインクは、少なくとも80のヒドロキシル価を有する少なくとも1種の水溶性化合物を更に含み、ここで、少なくとも1種の水溶性化合物は、エトキシ化C3-C20ポリオール、例えばエトキシ化トリオール、エトキシ化テトラオール、エトキシ化ペンタオール、およびエトキシ化ヘキサオールから選択される。一実施形態において、エトキシ化C3-C20ポリオールは、エトキシ化(ethyoxylated)グリセロール、エトキシ化ペンタエリトリトール、エトキシ化トリメチロールプロパン、エトキシ化グルコシド、およびエトキシ化グルコースから選択される。別の実施形態において、少なくとも1種の水溶性化合物は、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール(例えばキシリトールおよびソルビトール)、ならびにポリエーテルポリオールから選択される。少なくとも1種の水溶性化合物は、インクジェットインク組成物の全質量に対して1%~60%質量の範囲の量で存在することができる。
【0036】
一実施形態において、インクジェットインク組成物は、1~25cPの範囲の粘度を有する。理解されることであるが、粘度は、様々な方法によって調節できる。インクジェットインク組成物の粘度を調節するための例示的なレオロジー添加剤としては、限定されるものではないが、アルカリ膨潤性エマルション(例えばBASF製Rheovis(登録商標)ASレオロジー制御添加剤)、疎水性改質アルカリ膨潤性エマルション(例えばBASF製Rheovis(登録商標)HSレオロジー制御添加剤)、疎水性改質ポリウレタン(例えばBASF製Rheovis(登録商標)PUレオロジー制御添加剤)、および疎水性改質ポリエーテル(例えばBASF製Rheovis(登録商標)PEレオロジー制御添加剤)が挙げられる。
一実施形態において、インクジェットインク組成物は、色バランスを修正し、光学濃度を調節するための染料を更に含んでもよい。例示的な染料としては、食用色素、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応染料、銅フタロシアニン誘導体を含むフタロシアニンスルホン酸の誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩が挙げられる。
【0037】
一実施形態において、インクジェットインク組成物は、組成物の安定性を維持しながら多数の所望の特性を付与するための1または複数種の適切な添加剤を更に含むことができる。他の添加剤は、当技術分野で周知であり、保湿剤、殺生物剤および殺菌剤、pH制御剤、乾燥促進剤、浸透剤などが挙げられる。特定の添加剤の量は、種々の要因に応じて変化するが、一般的には、インクジェットインク組成物の質量を基準として0.01%と40%の間の範囲の量で存在する。一実施形態において、少なくとも1種の添加剤は、インクジェットインク組成物の全質量に対して質量で0.05%~5%の範囲の量、例えば0.1%~5%の範囲の量、または0.5%~2%の範囲の量で存在する。
例えば、ノズルの閉塞防止、ならびに紙浸透(浸透剤)、乾燥の改善(乾燥促進剤)、および耐コックリング特性の実現を目的として、保湿剤および少なくとも1種の有機溶媒以外の水溶性有機化合物も、本発明のインクジェットインク組成物に添加してもよい。一実施形態において、保湿剤および/または水溶性化合物は、0.1%~50%の範囲の量、例えば1%~50%、0.1%~30%、1%~30%、0.1%~10%、または1%~10%の範囲の量で存在する。
【0038】
使用してもよい保湿剤および他の水溶性化合物の特定の例としては、低分子量グリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコール;約2~約40個の炭素原子を含有するジオール、例えば1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ポリ(エチレン-co-プロピレン)グリコールなどと、それらの、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどのエチレンオキシドを含むアルキレンオキシドとの反応生成物;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオールなどを含む約3~約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体と、それらのエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの混合物を含むアルキレンオキシドとの反応生成物;ネオペンチルグリコール、(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)などと、それらの、広範な分子量の材料を形成するための任意の望ましいモル比でのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むアルキレンオキシドとの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリトリトールおよび低級アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、およびtert-ブチルアルコール、2-プロピン-1-オール(プロパルギルアルコール)、2-ブテン-1-オール、3-ブテン-2-オール、3-ブチン-2-オール、およびシクロプロパノール;アミド、例えばジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド;ケトンまたはケトアルコール、例えばアセトンおよびジアセトンアルコール;エーテル、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン;セロソルブ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル;カルビトール、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル;ラクタム、例えば2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンおよびε-カプロラクタム;尿素および尿素誘導体;分子内塩、例えばベタインなど;1-ブタンチオールを含む前述の材料のチオ(硫黄)誘導体;t-ブタンチオール1-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール;2-メチル-2-プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオまたはジチオジエチレングリコールなど;アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなどを含むヒドロキシアミド誘導体;前述の材料とアルキレンオキシドとの反応生成物;ならびにこれらの混合物が挙げられる。追加の例としては、サッカリド、例えばマルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース;多価アルコール、例えばトリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタン;N-メチル-2-ピロリドン;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;ジアルキルスルフィド(対称および非対称スルホキシド)、例えばジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなどを含む、約2~約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体;ならびに約2~約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称スルホン)、例えばジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなどが挙げられる。こうした材料は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0039】
殺生物剤および/または殺菌剤も、本明細書に開示する水性分散体またはインクジェットインク組成物に添加してもよい。殺生物剤は細菌増殖の防止に重要であり、その理由は、細菌が多くの場合はインクノズルより大きく、閉塞だけでなく、他の印刷上の問題も引き起こす可能性があるためである。有用な殺生物剤の例としては、限定されるものではないが、安息香酸塩またはソルビン酸塩、ならびにイソチアゾリノンが挙げられる。一実施形態において、殺生物剤および/または殺菌剤は、組成物の全質量に対して0.05%~5質量%、0.05%~2質量%、0.1%~5質量%、または0.1%~2質量%の範囲の量で存在する。
【実施例
【0040】
本明細書に開示するアクリルポリマーを含有するインクのO.D.の改善を実証するため、一連のインクを調製した。以下の表1は、実施例および比較例に使用したインク配合物を列挙する。
【表1】
【0041】
実施例および比較例に使用したポリマー添加剤を以下に列挙する:
・Joncryl(登録商標)樹脂-BASF製スチレンアクリルポリマー、水酸化ナトリウムで中和するか、既に塩基に予備溶解している場合はそのまま使用する;Joncryl(登録商標)樹脂50、684、680、675、693、60、7025、96、71、586を使用(J50、J684、J680、J675、J693、J60、J7025、J96、J71、J586と略記);
・SMA(登録商標)樹脂-CrayValley製スチレン/無水マレイン酸ポリマー;SMA(登録商標)樹脂1440、2000、3000、EF40、およびEF60をNaOHでの加水分解後に使用(SMA1440、SMA2000、SMA3000、SMAEF40、およびSMAEF60と略記);
・Pluronic(登録商標)F38界面活性剤-BASF製ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド(PEO/PPO)ベースのトリブロックコポリマー(Plur.F38と略記);
・PVP10K-Sigma Aldrich製10,000の平均分子量を有するポリビニルピロリドン;
・PEG1000-Sigma Aldrich製1000の平均分子量を有するポリエチレングリコール;および
・AQ55SまたはAQ(商標)55Sポリマー-Eastman Chemical製スルホン化ポリエステル。
対照インクも表1の配合に従い調製したが、ポリマー添加剤は含まれていない。
【0042】
実施例および比較例において、様々なポリマー添加剤を用いて作成したインクを、インクジェット処理をしていない2種類の普通紙:Xerox4200(Xerox)およびStaplesコピー用紙(Staples)と、HP製インクジェット表面加工紙:HP多目的ウルトラホワイト(HPMP)上で評価した。
Staples、XeroxおよびHPMPの各紙上で、#3ワイヤを巻いたラボロッドを用いてインク(70μL)のドローダウンを得た。下記の設定のX-rite530分光光度計を使用することにより光学濃度(OD)を得た:照度D65、2度標準観察者、DIN密度標準、Absに設定したホワイトベース、およびフィルターなし。各用紙について、ドローダウン画像の上部、中間部および下部で取得した少なくとも3回の測定値の平均としてOD値を報告した。
【0043】
対照インクは、HPMP紙上でOD変動を評価した。表2は、ドローダウン上のOD測定値の変動を列挙する。
【表2】

対照インクの場合、標準偏差(σ)は0.02であった。したがって、閾値OD差は、3σ以上、即ち、0.05以上の増加または減少であると決定した。
【0044】
(実施例1~7および比較例1~13)
表1の配合から、様々なアクリル樹脂を用いて実施例1~7を調製した。比較例1~13は、非アクリル樹脂を用いて、または15,000を超える分子量および/もしくは150未満の酸価を有するアクリル樹脂を用いて調製した。実施例1~7、比較例1~13、および対照サンプルのそれぞれについて、使用した顔料は、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第8,858,695号の実施例72に記載されているように調製し、3.45のカルシウム指数値を有するビスホスホネート基で改質したカーボンブラックであった。
【0045】
表3は、実施例1~7および比較例1~13のそれぞれのポリマー添加剤とそれらの特性、ならびにインクジェット表面未加工(普通)紙(XeroxおよびStaples)とインクジェット表面処理紙(HPMP)上での対応するODデータを記載する。ΔOD値=OD(サンプル)-OD(対照)。
【表3】
【0046】
表4のパラメータに従い、「評価」を決定する。
【表4】

表3のデータから、特許請求されている発明によるアクリルポリマーは、2種類の普通紙上でより良好なODをもたらし、インクジェット表面加工紙ではほとんど変化がなかったことがわかる。低い酸価を有するポリマーを含むインクは、O.D.の改善を何ら示さない。高分子量を有するポリマーを含むインクは、表面加工紙上でO.D.性能の低下を示す。
【0047】
(比較例14~29)
比較例14~29のインクを表1に従い調製し、ここでは、カーボンブラックが1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数以下のカルシウム指数を有する基で改質されている。具体的には、顔料は、下記の官能基:トルエンスルホン酸(比較例14~17);安息香酸(比較例18~21);イソフタル酸(比較例22~25);および1,2,3-ベンゼントリカルボン酸(比較例26~29)で改質され、これらのそれぞれは、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,571,311号の方法に従い調製した。表5は、ポリマー添加剤およびODデータを列挙する。
【0048】
【表5】


表3に列挙した例とは異なり、表5のデータは、これらのカーボンブラック分散体を種々のポリマー添加剤と共に使用した場合、特許請求されている発明によるポリマー添加剤であっても、OD効果がほとんどまたは全く見られないことを示している。特許請求されているポリマーと顔料の組み合わせにより、所望のOD効果が達成されることがわかる。
【0049】
(実施例9および比較例30~36)
この組のサンプルは、ポリマー添加剤の存在下での、様々なカルシウム結合指数を有する官能基で処理したピグメントレッド122(PR122)のOD反応を実証する。具体的には、顔料は、下記の官能基:その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,571,311号の方法に従い調製したトルエンスルホン酸(比較例30~33);およびその開示が参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第8,858,695号の実施例72に記載の通り調製されたビスホスホン酸(実施例9および比較例34~36)で改質されている。表6は、ポリマー添加剤およびODデータを列挙する。
【0050】
【表6】
【0051】
ベース顔料としてPR122を用いた表5のデータから、OD反応は、カーボンブラックの例と同様の傾向を示す。より高いカルシウム結合指数を有する官能基でPR122を表面処理した実施例9の場合のみ、低分子量および高酸価ポリマーの存在下で2種類の普通紙上でのODの上昇が観察される。
【0052】
(実施例10)
O.D.特性および溶媒相溶性特性を比較するため、様々な塩基で中和したJoncryl(登録商標)693アクリルポリマーを含有するインクを調製した。使用したインク配合物は表1に示されており、使用した塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、炭酸グアニジン、およびアルギニンであった。光学濃度を、上記のようにXerox紙上でのインクのドローダウンにより判定した。溶媒能力評価は、ヒュームフードにおいて室温でインクを40%の質量損失が発生するまで蒸発させた後の粘度測定値に基づいて得た。インクは、相対粘度(蒸発させたインク対元のインク)が6を超える場合、「許容できない」と判定した。以下の表7は、以下の様々なインクの場合のデータを列挙する。
【0053】
【表7】

上記のデータから、特許請求されている発明に含まれるアルギニンは、許容できる相溶性評価を維持しながら高ODを達成することがわかる。
【0054】
「1つの(a)」および「1つの(an)」ならびに「その(the)」という用語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈から明白に矛盾しない限り、単数と複数の両方を網羅すると解釈すべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内に入るそれぞれ別個の値を個々に指す簡略法として機能すると単に意図され、それぞれ別個の値は、あたかも個々に本明細書で列挙されるように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法は全て、本明細書で別段の指示がない限り、または他の方法で文脈から明白に矛盾しない限り、任意適切な順序で遂行することができる。本明細書で提供されるいかなる例、または例示的な言語(「例えば(such as)」など)の使用も、単に本発明をより良く説明することを意図したものであり、別段の主張がない限り本発明の範囲を制限しない。明細書中のいかなる言語も、特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠と示すものと解釈すべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料、
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマーであって、下記の構造を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、少なくとも1種のアクリルポリマー
【化1】
(式中、
Aは、C2-C12アルキルであり、
1は、H、C1-C12アルキル、式-NR34を有するアミン、および式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基から選択され、R3~R7は、HおよびC1-C12アルキルから独立して選択され、
2は、H、C1-C12アルキル、および酸基から選択される)、ならびに
水性液体媒体
を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項2】
酸価が150~400KOH/gの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
分子量が1,000~13,000の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、水性液体媒体に対して自己分散性または可溶性である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のアクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびその塩から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸の、エステル、アミノエステルおよびアミド;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応生成物;スチレン;アクリロニトリル;アセテート;ならびにアリルアルコールから選択される少なくとも1種の第2のモノマーを更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基、そのエステル、またはその塩を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
水性液体媒体が水である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のアクリルポリマーが、塩基で少なくとも40%中和されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
Aが、C2-C6アルキルである、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
1が、式-NR34を有するアミンである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
1が、式-NR34を有するアミンであり、R3およびR4のうちの少なくとも1つがHである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
1が、式-N(R5)-C(=NH)-N(R6)(R7)を有するグアニジン残基である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
2が、カルボン酸、スルホン酸、およびホスホン酸から選択される酸基である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
6~10の範囲のpHを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
「1つの(a)」および「1つの(an)」ならびに「その(the)」という用語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈から明白に矛盾しない限り、単数と複数の両方を網羅すると解釈すべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内に入るそれぞれ別個の値を個々に指す簡略法として機能すると単に意図され、それぞれ別個の値は、あたかも個々に本明細書で列挙されるように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法は全て、本明細書で別段の指示がない限り、または他の方法で文脈から明白に矛盾しない限り、任意適切な順序で遂行することができる。本明細書で提供されるいかなる例、または例示的な言語(「例えば(such as)」など)の使用も、単に本発明をより良く説明することを意図したものであり、別段の主張がない限り本発明の範囲を制限しない。明細書中のいかなる言語も、特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠と示すものと解釈すべきではない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕1,2,3-ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの有機基が結合した少なくとも1種の顔料、
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000~15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1種のアクリルポリマーであって、下記の構造を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、少なくとも1種のアクリルポリマー
【化1】
(式中、
Aは、C 2 -C 12 アルキルであり、
1 は、H、C 1 -C 12 アルキル、式-NR 3 4 を有するアミン、および式-N(R 5 )-C(=NH)-N(R 6 )(R 7 )を有するグアニジン残基から選択され、R 3 ~R 7 は、HおよびC 1 -C 12 アルキルから独立して選択され、
2 は、H、C 1 -C 12 アルキル、および酸基から選択される)、ならびに
水性液体媒体
を含む、インクジェットインク組成物。
〔2〕酸価が150~400KOH/gの範囲である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕酸価が少なくとも160KOH/gである、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕分子量が1,000~13,000の範囲である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔5〕少なくとも1種のアクリルポリマーが、水性液体媒体に対して自己分散性または可溶性である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔6〕少なくとも1種のアクリルポリマーがコポリマーである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔7〕少なくとも1種のアクリルポリマーが、少なくとも1種のアクリルモノマーを少なくとも20mol%の量で含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔8〕少なくとも1種のアクリルポリマーが、少なくとも1種のアクリルモノマーを20mol%~75mol%の範囲の量で含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔9〕少なくとも1種のアクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびその塩から選択される、前記〔7〕または〔8〕に記載の組成物。
〔10〕少なくとも1種のアクリルモノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される、前記〔7〕または〔8〕に記載の組成物。
〔11〕アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸の、エステル、アミノエステルおよびアミド;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応生成物;スチレン;アクリロニトリル;アセテート;ならびにアリルアルコールから選択される少なくとも1種の第2のモノマーを更に含む、前記〔7〕~〔10〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔12〕少なくとも1つの有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基、そのエステル、またはその塩を含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔13〕少なくとも1つの有機基が、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、そのエステル、またはその塩を含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔14〕少なくとも1つの有機基が、式-CQ(PO 3 2 2 を有する少なくとも1つの基またはその塩(式中、Qは、H、R、OR、SR、またはNR 2 であり、Rは、同じであっても異なっていてもよく、H、C 1 -C 18 アルキル、C 1 -C 18 アシル、アラルキル、アルカリール、およびアリールから選択される)を含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔15〕少なくとも1つの有機基が、式-(CH 2 )n-CQ(PO 3 2 2 を有する少なくとも1つの基またはその塩(式中、nは1~9の範囲の整数である)を含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔16〕少なくとも1つの有機基が、式-CR=C(PO 3 2 2 を有する少なくとも1つの基またはその塩を含み、Rが、H、C 1 -C 6 アルキル、およびアリールから選択される、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔17〕少なくとも1つの有機基が、少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩、および少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩に対してビシナルまたはジェミナルな少なくとも1つの第2のイオン性基、イオン化可能基、または塩基性基を含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔18〕水性液体媒体が水である、前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔19〕少なくとも1種のアクリルポリマーが、塩基で少なくとも40%中和されている、前記〔1〕~〔18〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔20〕Aが、C 2 -C 6 アルキルである、前記〔1〕~〔19〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔21〕R 1 が、式-NR 3 4 を有するアミンである、前記〔1〕~〔20〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔22〕R 1 が、式-NR 3 4 を有するアミンであり、R 3 およびR 4 のうちの少なくとも1つがHである、前記〔21〕に記載の組成物。
〔23〕R 1 が、式-NR 3 4 を有するアミンであり、R 3 およびR 4 がHである、前記〔21〕に記載の組成物。
〔24〕R 1 が、式-N(R 5 )-C(=NH)-N(R 6 )(R 7 )を有するグアニジン残基である、前記〔21〕に記載の組成物。
〔25〕R 2 が、カルボン酸、スルホン酸、およびホスホン酸から選択される酸基である、前記〔1〕~〔25〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔26〕R 2 が、カルボン酸から選択される酸基である、前記〔1〕~〔25〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔27〕少なくとも1種のアクリルポリマーが、+1の正味電荷を有する塩基で少なくとも部分的に中和されている、前記〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔28〕6~10の範囲のpHを有する、前記〔1〕~〔27〕のいずれか1項に記載の組成物。
【国際調査報告】