IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ゲイツ コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特表-テンショナ 図1
  • 特表-テンショナ 図2
  • 特表-テンショナ 図3A
  • 特表-テンショナ 図3B
  • 特表-テンショナ 図4
  • 特表-テンショナ 図5
  • 特表-テンショナ 図6
  • 特表-テンショナ 図7
  • 特表-テンショナ 図8
  • 特表-テンショナ 図9
  • 特表-テンショナ 図10
  • 特表-テンショナ 図11
  • 特表-テンショナ 図12
  • 特表-テンショナ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
F16H7/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522544
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 US2019055608
(87)【国際公開番号】W WO2020086286
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】16/169,404
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】モラ,アンソニー アール.
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ミンチュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ケミング
(72)【発明者】
【氏名】デック,アンドルゼイ
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049BB05
3J049BB13
3J049BH01
3J049BH02
(57)【要約】
ブラケットと、ブラケットに旋回可能に取り付けられる第1揺動アームと、第1揺動アームに軸支される第1プーリと、ブラケットに旋回可能に取り付けられる第2揺動アームと、第2揺動アームに軸支される第2プーリと、第1揺動アームと第2揺動アームとの間に連結されるダンピング部材とを備え、ダンピング部材が非対称ダンピング特性を有するテンショナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケットと、
前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第1揺動アームと、
前記第1揺動アームに軸支される第1プーリと、
前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第2揺動アームと、
前記第2揺動アームに軸支される第2プーリと、
前記第1揺動アームと前記第2揺動アームとの間に連結されるダンピングストラット部材とを備え、ダンピング部材がダンピング特性を有する
ことを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記ダンピングストラット部材が更に、
シリンダおよび協働するロッドと、前記ロッドの円錐台部分とシリンダ内周面の間に摺接するように配置されたウェッジ部材と、前記ウェッジ部材を前記円錐台部分および前記シリンダ内周面に押圧係合させるように押圧するバネとを備え、
非対称ダンピング特性を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記ロッドが更に、前記第1揺動アームが螺合されるネジ部を備えることを特徴とする請求項2に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記ブラケットが、従動プーリを取り囲む円弧形状を有することを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項5】
ブラケットと、
前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第1揺動アームと、
前記第1揺動アームに軸支される第1プーリと、
前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第2揺動アームと、
前記第2揺動アームに軸支される第2プーリと、
前記第1揺動アームと前記第2揺動アームとの間に連結されるダンピングストラット部材とを備え、ダンピング部材がダンピング特性を有し、
前記ダンピングストラット部材が、本体および協働するロッドと、前記ロッドの円錐台部分と本体内周面の間に摺接するように配置されたウェッジ部材と、前記ウェッジ部材を前記円錐台部分および前記本体内周面に押圧係合させるように押圧するバネとを備える
ことを特徴とするテンショナ。
【請求項6】
前記ブラケットが被駆動装置のシャフトを取り囲む配置で前記被駆動装置に取り付け可能であることを特徴とする請求項5に記載のテンショナ。
【請求項7】
被駆動装置のシャフトを取り囲む配置で前記被駆動装置に取り付け可能であるブラケットと、
前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第1揺動アームと、
前記第1揺動アームに軸支される第1プーリと、
前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第2揺動アームと、
前記第2揺動アームに軸支される第2プーリと、
前記第1揺動アームと前記第2揺動アームとの間に連結され、ダンピング特性を有する第1ダンピングストラット部材とを備え、
前記第1ダンピングストラット部材が、本体および協働するロッドと、前記ロッドの円錐台部分と本体内周面の間に摺接するように配置された第1ウェッジ部材と、前記第1ウェッジ部材を前記円錐台部分および前記本体内周面に押圧係合させるように押圧するバネとを備える
ことを特徴とするテンショナ。
【請求項8】
前記本体がシリンダ状であることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記第1ウェッジ部材が2つ以上のセグメントを備えることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項10】
前記被駆動装置にモータ・ジェネレータ・ユニットが含まれることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項11】
前記ロッドが、前記円錐台部分から離れて配置されるネジ部を備えることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項12】
前記第1ウェッジ部材と協働するように係合する第2ウェッジ部材を更に備えることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項13】
前記ブラケットと前記第1揺動アームの間に係合される第2ダンピングストラット部材を更に備えることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項14】
前記ブラケットと前記第2揺動アームの間に係合される第3ダンピングストラット部材を更に備えることを特徴とする請求項13に記載のテンショナ。
【請求項15】
前記ダンピング特性が非対称であることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項16】
前記ダンピング特性が対称であることを特徴とする請求項7に記載のテンショナ。
【請求項17】
前記第2ダンピングストラット部材が、非対称ダンピング特性を有することを特徴とする請求項13に記載のテンショナ。
【請求項18】
前記第2ダンピングストラット部材が、対称ダンピング特性を有することを特徴とする請求項13に移載のテンショナ。
【請求項19】
前記第3ダンピングストラット部材が、非対称ダンピング特性を有することを特徴とする請求項14に記載のテンショナ。
【請求項20】
前記第3ダンピングストラット部材が、対称ダンピング特性を有することを特徴とする請求項13に記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナに関し、特にブラケットに連結された第1揺動アームおよび第2揺動アームと、第1揺動アームと第2揺動アームの間に連結され非対称ダンピング特性を有するダンピングストラットとを備えるテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
殆どの内燃機関は、幾つかの例を挙げるとパワーステアリング、オルタネータやエアコンなどの補機を備える。これらの補機は、一般的にはベルトにより駆動される。ベルトに予荷重を与え、スリップを防止するためにテンショナが一般的に用いられる。テンショナはエンジンマウント面に搭載可能である。
【0003】
エンジンは更に、車両が動いていないときにエンジンを停止し、発進のドライバの指示を受けると、一般的にモータ/ジェネレータユニット(MGU)の作動によりエンジンを再起動する、始動/停止システムを備えてもよい。
【0004】
始動/停止機能は、ベルトの荷重を反転させるようにする。したがって、ベルト荷重の反転に対応するためテンショナが利用できる。テンショナは、両ベルト駆動方向に要求されるベルト予荷重力を適切に作用させるために独立して旋回する1つまたは複数のコンポーネントを備え得る。エンジンベイのスペースを節約するために、テンショナをMGUなどのアクセサリに直接取り付けることもできる。
【0005】
この技術分野の代表は、米国特許第9、795、293号明細書であり、ベルトに張力を掛けるためのテンショナを開示し、それぞれ第1および第2のプーリを有する第1および第2のテンショナアームを備える。第1および第2のプーリは、第1および第2のベルトスパンと係合するように構成され、それぞれ第1および第2のフリーアーム方向に付勢される。第2のテンショナアーム係止部は、第2のフリーアーム方向と反対の方向への第2のテンショナアームの動きを制限するように配置されている。第2のテンショナアーム係止部は、運転時に、第2のプーリが無端駆動部材と係合し、第2のテンショナアームが第1の選択された動作条件の範囲全体に亘って第2のテンショナアーム係止部と係合するように配置される。
【0006】
必要とされているのは、ブラケットに連結された第1揺動アームおよび第2揺動アームと、第1揺動アームと第2揺動アームの間に連結され非対称ダンピング特性を有するダンピングストラットとを備えるテンショナである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様は、ブラケットに連結された第1揺動アームおよび第2揺動アームと、第1揺動アームと第2揺動アームの間に連結され非対称ダンピング特性を有するダンピングストラットとを備えるテンショナを提供することである。
【0008】
本発明の他の態様は、本発明の以下の説明および添付の図面によって指摘または明らかにされるであろう。
【0009】
本発明は、ブラケット、ブラケットに旋回可能に取り付けられた第1揺動アーム、第1揺動アームに軸支された第1プーリ、ブラケットに旋回可能に取り付けられた第2揺動アーム、第2揺動アームに軸支された第2プーリ、および第1揺動アームと第2揺動アームとの間に連結されたダンピング部材を備え、ダンピング部材は非対称ダンピング特性を有する。
【0010】
ここまで、以下の本発明の詳細な説明がよりよく理解され得るように、本発明の特徴および技術的利点をかなり広く概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の追加の特徴および利点を以下に説明する。開示された概念および特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用できることを当業者は理解すべきである。そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことも当業者によって認識されるべきである。本発明の特徴であると考えられる新規の特徴は、その構成および操作方法の両方に関して、更なる目的および利点とともに、添付の図とあわせて検討すると、以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、各図は、例示および説明のみを目的として提示されており、本発明の限界を定義することを意図するものではないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を例示し、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
図1】テンショナの斜視図である。
図2】ダンピングストラットの分解図である。
図3】ダンピングウェッジの詳細図である。
図4】組み立てられたストラットの断面図である。
図5】テンショナアームの分解図である。
図6】組み立てられたテンショナのストラットなしの部分断面図である。
図7】ストラットを備えた組み立て済みテンショナの部分断面図である。
図8】テンショナの背面斜視図である。
図9】テンショナを組み込んだエンジンMGUシステムの概略図である。
図10】荷重が掛かっているときのダンピングウェッジの自由体図である。
図11】荷重が掛かっていないときのダンピングウェッジの自由体図である。
図12】複数のダンピングウェッジを使用したテンショナの断面図である。
図13】複数のダンピングストラットを備える別の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、テンショナの斜視図である。テンショナは、機械的ストラット・サブ・アセンブリ100によって互いに連結された2つのテンショナ・サブ・アセンブリ201、202を備える。サブアセンブリ201、202は、弧状ブラケット290に旋回可能に取り付けられる。
【0013】
図2は、ダンピングストラットの分解図である。ストラットブッシング120は、ストラットシリンダ110の端部に圧入され、ブッシング120のフランジ121がシリンダ110の内径111と係合する。ストラットの内部構成要素は、ロッド160の周りに組み立てられる。バネ支持体130およびバネ140は、ロッド160上に摺接する。
【0014】
図3は、ダンピングウェッジの詳細図である。ダンピングウェッジ150は、3つのセグメントを備える。ウェッジ150は、支持体130に隣接するロッド160の円錐台部分163の周りに円形に組み立てられる。これらの構成要素は、ストラットシリンダ110内に取り付けられ、溝112に取り付けられるスナップリング170によって所定の位置に保持される。ウェッジ部材は、それが部分163に押し付けられるときにウェッジ部材の半径方向の拡張を容易にするため3つのセグメントを備える。
【0015】
図4は、組み立てられたストラットの断面図である。
【0016】
図5は、テンショナアームの分解図である。テンショナ・サブ・アセンブリ201、202は、ストラット取り付け部品を除いて同一である。サブアセンブリは、ブラケット290に旋回可能に取り付けられる。ブッシング231、232、233、234は、各アーム251、252に押し込まれる。各ベアリング241、242は、それぞれ各アーム251、252に押し込まれる。ダウエルピン281、282は、それぞれ取り付けブラケット290の穴291、292に押し込まれる。ネジ222は、ダウエル281に係合してアーム251を保持する。ネジ223は、ダウエル282に係合してアーム252を保持する。アーム251は、ダウエル281の周りに旋回する。アーム252は、ダウエルス282の周りに旋回する。ストラット・ロッド・サポート270は、ネジ221によりアーム251に固定される。
【0017】
図6は、組み立てられたテンショナのストラットなしの部分断面図である。
【0018】
図7は、ストラットを備えた組み立て済みテンショナの部分断面図である。シリンダ110の取り付けポスト113は、アーム252に挿入され、ネジ224で固定される。ロッド160のネジ部分162は、ロッド支持体270のネジ穴271にねじ込まれる。ネジ部分162は、アーム251のアーム252に対する相対位置の調整を可能にする。
【0019】
ベアリング241、242は、各ベアリングが底に達するまで、それぞれ各プーリ211、212のハブに押し付けられる。プーリ211、212は、ベアリングの内側レースウェイと一緒に回転する。ダストキャップ261、262は、それぞれ各プーリ211、212のハブに押し付けられる。
【0020】
図8は、テンショナの背面斜視図である。穴295は、テンショナをMGUに取り付けるための留め具に使用される。図9を参照。
【0021】
図9は、テンショナを組み込んだエンジンMGUシステムの概略図である。テンショナはMGUに取り付けられる。MGUはドライバプーリDPを備える。多軸掛けンベルトBは、エアコンのコンプレッサAC、ウォーターポンプWP、クランクシャフトCRKに掛け回される。MGUは、エンジン始動用およびアクセサリ作動用の駆動モータとして、またエンジンによって駆動される車両に電力を供給するオルタネータとして機能する。
【0022】
通常モードでは、クランクシャフトCRKがベルトBを駆動する。その結果、ベルトBがMGUプーリDPを駆動する。停止/始動モードでは、MGUはプーリDPを駆動し、プーリDPはベルトBを駆動してクランクシャフトCRKを駆動し、それによってエンジンを始動する(不図示)。
【0023】
ブラケット290は、従動プーリDPを取り囲む弧状の形態を有する。各テンショナ・サブ・アセンブリ201、202は、ブラケット290上の互いに反対側に配置される。各サブ・アセンブリ・プーリ211、212は、他のサブ・アセンブリ・プーリDPと同一平面上にある。従動プーリDPは、ブラケット290内に延出する。ブラケット290は、被動装置のシャフトの周囲を取り囲むような配置で被駆動装置に取り付け可能である。従動プーリDPはシャフトに取り付けられる。
<動的な説明>
【0024】
燃料の経済性と効率を向上させるために、多くの自動車メーカーは、アクセサリ・ベルト・ドライブ・システム(ABDS)を駆動する機能を備えたオルタネータを組み込んでいる。このようなオルタネータは、一般にモータ・ジェネレータ・ユニット(MGU)、またはベルト・スタータ・ジェネレータ(BSG)と呼ばれる。これらは、エンジンの始動、バッテリの充電、および車両の加速に使用できる。
【0025】
通常運転中、クランクプーリはABDSシステムを駆動する。この場合、張り側はベルトがクランクプーリに入る側であり、緩み側はベルトがクランクプーリから外れる側である。ただし、MGUを使用してシステムを駆動する場合(始動時など)、張り側はベルトがMGUに入る側となり、緩み側はベルトがMGUから出る側になる。これは、クランクプーリによって駆動される先の状況とは逆である。
【0026】
ベルトの緩み側は、テンショナが必要な側である。ベルトの緩み側は作動モードによって変化するため、ベルトの張力を適切に制御するには、これらの変化する条件に適応できるテンショナが必要である。
【0027】
本発明のテンショナは、交替するベルトの緩み側に対応するために、両側のベルト張力を制御する。これは、機械的なダンピングストラットによって結合された2つの独立したテンショナを備える。
【0028】
原動プーリから出力されるトルクが大きくなると、ベルトの張力も大きくなる。ベルト張力の増加は、ベルト張り側のテンショナプーリをベルト経路から遠ざけるようにする。プーリ同士はストラットで連結されているため、緩み側のテンショナプーリは、張り側のプーリが押し出されるに連れてベルト経路側へと引き込まれる。ストラットは伸長および収縮することによって長さを変えられるので、この動きは2つのテンショナ間で1:1の態様では起こらない。すなわち、2つのテンショナプーリ211、212の間には相対運動がある。
【0029】
例えば、張り側プーリが20°移動すると、緩み側は10°移動するかもしれず、実際の値はドライブジオメトリやその他の要因によって異なる。したがって、ベルト張力の増加は、テンショナプーリ同士を他方に対して離間するようにする。プーリ同士が離れると、ストラットロッドは一方のプーリに追従し、バネとシリンダはもう一方のプーリに追従する。これによりバネが圧縮され、バネの荷重が増加する。ロッド/シリンダの離間の増加に伴うバネ荷重の増加により、ダンピングウェッジ150がロッドの円錐台部分163をずり上がる。
【0030】
図10は、荷重が掛かっているときのダンピングウェッジの自由体図である。
【0031】
図11は、荷重が掛かっていないときのダンピングウェッジの自由体図である。ウェッジ150が部分163上をスライドすると、それらは半径方向外側に押しやられ、ストラットシリンダの内面114と接触する。内面と接触すると、ウェッジは、バネ支持体130、円錐台部分163、および内面114の3つの面で摩擦ダンピングを起こす。
【0032】
摩擦力はf1、f2、f3で表される。これらは、それぞれ2つの垂直抗力N1、N2とバネ力Fsの積である。摩擦力f2がダンピングの大部分の原因であり、他の寄与は無視できるほど小さい。これは、動きの大部分が内面114とダンピングウェッジ150との間で発生し、他の2つはまったく動かないか、ほとんど動かないためである。この動きにより、エネルギーが熱として放散され、システムが減衰する。バネ力の大きさは、ロッドの円錐台部分の角度θとともに、N2の大きさを決定するN1の大きさに影響し、N2は、f222の関係に従ってf2の大きさを決定する。ここで、μ2はウェッジとシリンダボアの間の摩擦係数である。荷重方向に移動する場合、f2はバネ力Fsと同じ方向であるため、付加的となる。したがって、f2は、バネ力だけのときに加えて、ダンピングストラットの張力を高める働きをする。
【0033】
一方、原動プーリのトルク出力が低下すると、ベルト張力も低下する。これにより、テンショナプーリは、互いに向かって移動する。プーリ同士が互いに向かって移動すると、ロッド160がシリンダ110内により深く突き刺さる。この動きは、バネ140の負荷を減少させるように作用する。
【0034】
荷重軽減方向に動くとき、ウェッジ150とシリンダ内面114の間の楔効果は減少し、図11に示すように全ての摩擦力が逆方向になる。荷重が軽減する間、第1ダンピング力f2はバネ力Fsに対抗し、ストラット内の張力を低減する。楔効果の減少と、バネ荷重の低下により、荷重軽減方向のダンピングはより低減する。移動方向に応じて異なるレベルのダンピングが発生する現象は、非対称ダンピングとして知られている。非対称ダンピングは、必要なときに大きな抵抗を提供し、そうでないときに小さな抵抗を提供するため、テンショナにおいて有利である。
【0035】
別の実施形態では、対称ダンピングとなるように摩擦力を両方の移動方向で実質的に等しくなるように装置の上記パラメータを調整できる。必要に応じて、非対称または対称ダンピングを用いることができる。
【0036】
ベルトが原動プーリによって負荷がかけられると、ベルト張力は公称レベルを超えて増加する。これはベルトスリップの可能性を減らし、システムの振動を減衰し、衝撃の大きさを低減する。これはシステムのパフォーマンスに適しているだけでなく、テンショナの寿命にも有利である。すなわち、激しい動きが少ないと摩耗が少なくなる。
【0037】
システムの原動プーリがトルクや速度を低下させると、ベルト張力が公称値を下回る。荷重軽減時、ベルトが滑る可能性は殆ど、または全くないため、ベルトを公称張力とする理由はない。ベルトを公称張力よりも低い張力で荷重を軽減できるようにすれば、非対称ダンピングがない場合よりもベルトの寿命が長くなる。
【0038】
このシステムのダンピングは非対称であるが調整も可能である。前述したように、角度θの大きさは、垂直抗力N1の大きさを制御し、これは垂直抗力N2の大きさを制御し、その結果、主減衰力であるf2を制御する。したがって、角度θを変更すると、発生するダンピングの強さが変更される。更に、別の設計の実施形態では、複数のセットのウェッジを含ませることができる。このようにして発生する減衰力を変更できる。
【0039】
図12は、複数のダンピングウェッジを使用したテンショナの断面図である。複数のセットのウェッジの場合、追加のウェッジ152の各セットに対してスペーサコーン151を追加する必要がある。ウェッジは自己潤滑ポリマーでできているが、スペーサコーンはロッド160と同様に鋼で構成される。ロッドにスペーサと同じ鋼を選択した場合、追加のウェッジとスペーサの間の摩擦係数は同じである。異なる鋼を選択してこの係数を変更でき、発生するダンピングを更に調整できる。摩擦係数は、スペーサ151、および/またはロッドの円錐台部分163、および/または内面114の表面仕上げを変えることによって更に変更することができる。
【0040】
複数のウェッジセットの背後にあるメカニズムは、単一セットシステムのメカニズムと同じであるが、更に多くのステップを含む。複数のウェッジセットが用いられると、摩擦面の数(その結果としての摩擦力)と摩擦表面積の両方が増大する。これら2つのパラメータの増加は、摩擦ダンピングの増大につながる。他の代替的実施形態では、図12に示されるように最大2セットのウェッジに限定されないことに留意する必要がある。所望の減衰力を生成するために必要に応じてウェッジのより多くのセットを追加することができる。
【0041】
図13は、複数のダンピングストラットを備える別の実施形態である。代替的実施形態では、第2ダンピングストラット100Aが、ブラケット290Aと揺動アーム251または252の何れかと係合し、その結果、揺動アームには、2つのダンピングストラットが取り付けられる。更に別の実施形態では、第3ダンピングストラット100Bが、ブラケット290と、揺動アーム251または揺動アーム252(100Aが取り付けられていない方)の何れかと係合し、各揺動アームは、各々取り付けられた2つのダンピングストラットを有する。これにより、このテンショナでは3つのダンピングストラットが使用される。これにより、単一のダンピングストラットを備える場合と比較して、各揺動アームのダンピング効果がさらに向上する。ダンピングストラット100Aは、穴296Aでブラケット290に取り付けられ、ダンピングストラット100Bは、穴296Bでブラケット290に取り付けられる。
【0042】
更に別の実施形態では、油圧またはガスを用いたダンピングストラットを、本明細書に記載の楔型ストラットの代わりに使用することができる。油圧式ダンピングストラットおよびガス式ダンピングストラットは、ダンピング技術分野において知られている。
【0043】
更に、この実施形態では、対称または非対称の何れかのダンピングを各ストラットに適用できる。どのダンパーを対称または非対称にするかに関する構成は、所望のシステム応答または特性を達成するために変更できる。
【0044】
被駆動装置のシャフトを取り囲む配置で被駆動装置に取り付け可能であるブラケットと、前記ブラケットに旋回可能に取り付けられる第1揺動アームと、第1揺動アームに軸支される第1プーリと、ブラケットに旋回可能に取り付けられる第2揺動アームと、第2揺動アームに軸支される第2プーリと、第1揺動アームと第2揺動アームとの間に連結されるダンピングストラット部材とを備え、そのダンピング部材がダンピング特性を有し、ダンピングストラット部材が、本体および協働するロッドと、ロッドの円錐台部分と本体内周面の間に摺接するように配置されたウェッジ部材と、ウェッジ部材を円錐台部分および本体内周面に押圧係合させるように押圧するバネとを備えるテンショナ。
【0045】
本明細書では、本発明の複数の形態について説明されたが、当業者であれば、ここで説明された発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、その構成、パーツ間の関係に様々な変更ができることは明らかである。特に明記されていない限り、図面に示されている構成部は一定の縮尺で描かれていない。更に、「手段」または「ステップ」という言葉が特定のクレームで明示的に使用されていない限り、添付されたクレームまたはクレーム要素の何れかが35U.S.C.112(f)条の適用を意図するものではない。本開示は、図面に示され、本明細書に記載される例示的な実施形態または数値上の寸法に限定されるものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】