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特表2022-505876遺伝子治療を向上させる新しいツール及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】遺伝子治療を向上させる新しいツール及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/14 20060101AFI20220106BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N15/14 ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61P1/16
A61P7/04
A61K35/76
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522958
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2019079351
(87)【国際公開番号】W WO2020084161
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】18202888.6
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501180768
【氏名又は名称】フリーイェ・ユニヴェルシテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSIEIT BRUSSEL
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フアンデンドリス,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】チュア,レイ キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZA751
4C084ZA752
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA10
4C087NA13
4C087ZA53
4C087ZA75
(57)【要約】
本発明は、導入遺伝子にコードされるタンパク質又はポリペプチドのレベル及び/又は活性を増加させるための、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むヒトアルブミンをコードする核酸分子、肝臓特異的調節エレメント及びコドン最適化第IX因子、第VIII因子、第VII因子又は第VIIa因子導入遺伝子を含む核酸発現カセット及びベクターでのその核酸分子の使用、それらの発現カセット及びベクターを用いる方法、並びにそれらの使用に関する。本発明は、肝臓指向性遺伝子治療を用いる用途、特に血友病A、血友病B又は第VII因子欠乏症の治療に、特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号14に定められる配列を含む、ヒトアルブミンをコードするコドン最適化核酸分子。
【請求項2】
配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含み、好ましくは前記導入遺伝子がコドン最適化導入遺伝子であり、任意選択で、前記導入遺伝子が配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列の5’末端に位置する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記導入遺伝子が、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列から、1つ又は複数のポリペプチド又はペプチドリンカーをコードする配列によって、好ましくは配列番号18に定められるペプチドリンカーをコードする配列によって隔てられている、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
導入遺伝子にコードされるタンパク質又はポリペプチドの発現及び/又は循環レベル及び/又は活性を増加させるのに使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
プロモーターに動作可能に連結された請求項1~3のいずれか一項に記載の前記核酸分子を含む核酸発現カセット。
【請求項6】
前記プロモーター及び請求項1~3のいずれか一項に定められる前記核酸分子に動作可能に連結された少なくとも1つの組織特異的核酸調節エレメント;
マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、好ましくは配列番号20に定められる前記MVMイントロン;並びに/又は
転写終結シグナル、好ましくはポリアデニル化シグナル、より好ましくは配列番号21に定められる合成ポリアデニル化シグナル又は配列番号23に定められるシミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナル;
を含む、請求項5に記載の核酸発現カセット。
【請求項7】
前記導入遺伝子が、分泌可能な治療用タンパク質又は分泌可能な免疫原性タンパク質をコードし、好ましくは前記導入遺伝子が、第IX因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、ADAMTS13、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PLGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFLT1)、α1-アンチトリプシン(AAT)、インスリン、プロインスリン、第X因子、フォン・ヴィルブランド因子、C1エステラーゼ阻害剤(C1-INH)、ライソゾーム酵素、ライソゾーム酵素イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)
、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、アファミン(AFM)、α1-アンチトリプシン、α-ガラクトシダーゼA、α-L-イズロニダーゼ、リポタンパク質リパーゼ、アポリタンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)、アルブミン、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)-抵抗性グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、GLP-2、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、インターフェロン(例えばIFNアルファ-2b)、β-ナトリウム利尿ペプチド、IL-1Ra、エキセンディン-4、オキシントモジュリン、ホリスタチン、抗体及びナノボディからなるリストより選択される分泌可能な治療用タンパク質をコードし、好ましくは前記導入遺伝子が、肝臓関連疾患、好ましくは血友病A、血友病B又は第VII因子欠乏症を治療及び/又は予防するための治療用タンパク質をコードする、請求項5又は6に記載の核酸発現カセット。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、
凝固因子IX(FIX)であって、好ましくは高活性化変異、より好ましくはR338Lアミノ酸置換に対応する前記過剰活性化変異を含み、より好ましくは前記導入遺伝子が、配列番号11に定められる核酸配列を有する凝固因子IXをコードする凝固因子IX(FIX);
凝固第VIII因子(FVIII)であって、好ましくは前記導入遺伝子がコドン最適化凝固因子FVIIIである、若しくは前記凝固第VIII因子がBドメインの欠損を有し、好ましくは前記FVIIIの前記Bドメインが配列番号15に定められるリンカーで置換され、より好ましくは前記導入遺伝子が、配列番号16に定められる核酸配列を有する凝固第VIII因子をコードする凝固第VIII因子;又は
凝固第VII因子(FVII)若しくは因子FVIIa(FVIIa)の軽鎖若しくは重鎖であって、任意選択で、FVII若しくはFVIIaの軽鎖が、FVII又はFVIIaの重鎖に1つ若しくは複数の切断可能なポリペプチド若しくはペプチドリンカーによって結合され、好ましくは前記導入遺伝子が、配列番号34に定められるアミノ酸配列をコードする軽鎖若しくは重鎖;
をコードする、請求項7に記載の核酸発現カセット。
【請求項9】
少なくとも1つの組織特異的核酸調節エレメントが、少なくとも1つの肝臓特異的核酸調節エレメントである、請求項7又は8に記載の核酸発現カセット。
【請求項10】
前記少なくとも1つの肝臓特異的核酸調節エレメントが、配列番号25に定められるセルピンエンハンサー又は前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列、好ましくは、配列番号25に定められるセルピンエンハンサー又は前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列のトリプルリピート、好ましくはタンデムに配置されたリピートからなる、請求項9に記載の核酸発現カセット。
【請求項11】
前記プロモーターが、肝臓特異的プロモーター、好ましくは、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、最小限TTRプロモーター(TTRm)、AATプロモーター、アルブミン(ALB)プロモーター若しくは最小限プロモーター、アポリポタンパク質A1(APOA1)プロモーター若しくは最小限プロモーター、補体因子B(CFB)プロモーター、ケトヘキソキナーゼ(KHK)プロモーター、ヘモペキシン(HPX)プロモーター若しくは最小限プロモーター、ニコチンアミドNメチルトランスフェラーゼ(NNMT)プロモーター若しくは最小限プロモーター、(肝臓)カルボキシルエステラーゼ1(CES1)プロモーター若しくは最小限プロモーター、プロテインC(PROC)プロモーター若しくは最小限プロモーター、アポリポタンパク質C3(APOC3)プロモーター若しくは最小限プロモーター、マンナン結合レクチンセリンプロテアーゼ2(MASP2)プロモーター若しくは最小限プロモーター、ヘプシジン抗菌ペプチド(HAMP)プロモーター若しくは最小限プロモーター、又はセルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードC
(アンチトロンビン)、メンバー1(SERPINC1)プロモーター若しくは最小限プロモーターから選択される肝臓特異的プロモーター、好ましくはTTRmである、請求項7~10のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項12】
好ましくはウイルスベクターであり、より好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来し、好ましくは一本鎖AAVである請求項5~11のいずれか一項に記載の前記核酸発現カセットを含むベクター。
【請求項13】
配列番号2、配列番号3、配列番号6又は配列番号8、好ましくは配列番号8を有する、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の前記ベクター及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
医学、好ましくは遺伝子治療、より好ましくは肝臓指向性遺伝子治療に使用するための、請求項12又は13に記載のベクター又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
肝臓関連疾患、好ましくは、前記導入遺伝子がFIX、FVIII、FVII又はFVIIaである場合、血友病の治療に使用するための、請求項12又は13に記載のベクター又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
肝臓細胞で導入遺伝子産物を発現させるためのインビトロ又はエクスビボの方法であって、
請求項5~11のいずれか一項に記載の前記核酸発現カセット又は請求項12又は13に記載の前記ベクターを前記肝臓細胞に導入すること;
前記導入遺伝子産物を前記肝臓細胞で発現させること;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(導入)遺伝子の組織特異的発現及び/又は活性を高めることができる新しいツール、そのツールを用いる方法、及びそのツールの使用に関する。本発明はさらに、そのツールを含む発現系及び医薬組成物を包含する。本発明は、遺伝子治療、より具体的には組織指向性遺伝子治療を用いる用途、及びワクチン接種を目的とする用途に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
血友病Bは、凝固第IX因子(FIX)の欠乏によって起こるX連鎖劣性出血性疾患である。血友病Aは、肝臓で産生される血液凝固第VIII因子(FVIII)の欠乏又は完全な欠落によって起こる重篤な出血性疾患である。血友病A及びBの臨床像は、突発的かつ長期的な出血のエピソードを特徴とする。血友病A及びBに罹患するのはそれぞれ、5,000人に1人及び20,000人に1人と推定されている。現在、血友病A及びBは、血漿由来又は遺伝子組換えのFVIII又はFIXを用いたタンパク質補充療法で治療されている。タンパク質補充により血友病患者の平均余命は著しく改善されたものの、短い半減期、限られた入手可能性、患者1人当たり年間10万ドルに上りうる精製血液凝固因子の高いコストによって予防的な治療が制限されるので、患者は依然として重篤な出血エピソードや慢性的な関節損傷のリスクにさらされている。くわえて、汚染された血液ソースから得られた血漿由来の因子を使用すると、ウイルス感染のリスクが増加する。治療域(therapeutic window)が比較的広く、正常な生理的レベルの1%をわずかに上回るレベルでも治療可能であるので、遺伝子治療は、血友病Bを治療する新しい方法として有望である。遺伝子治療が成功すれば、肝臓での一定したFVIII又はFIXの恒常的な合成が実現し、この疾患の治癒につながる可能性がある。血友病の遺伝子治療のさまざまなモダリティは、例えばChuah et al., 2012a, 2012b, 2012c、VandenDriessche et al.,
2012、High 2001, 2011、及びMatrai et al., 2010a, 2010bにおいて広範にレビューされている。
【0003】
血友病A及び血友病Bの重症度は、国際血栓止血学会の学術標準化委員会の第VIII因子及び第IX因子に関する小委員会(the subcommittee on Factor VIII and Factor IX)によって、それぞれFVIIIレベル及びFIXレベルに応じて次の3つの型に分類されている。1)重症型(FVIII又はFIXレベルが0.01国際単位(IU)/ml未満、すなわち正常なFVIII又はFIXレベルの1%未満)、2)中等症型(FVIII又はFIXレベルが0.01~0.05IU/ml、すなわち正常なFVIII又はFIXレベルの1~5%)、及び3)軽症型(0.05U/mlより高く0.4IU/mlまでのFVIII又はFIXレベル、すなわち正常なFVIII又はFIXレベルの5%より高く40%まで)。血友病Aは最も一般的な遺伝性凝固障害であり、発生率は男性5000人に約1人に達する。
【0004】
精製又は組換えFVIII及びFIXによるタンパク質置換療法(PST)は、患者のクオリティ・オブ・ライフを大幅に改善してきた。しかし、PSTは治癒的なものではなく、患者は依然として、生命を脅かす出血や手足を不自由にする関節炎症を発症するリスクがある。残念ながら、多く(最大40%)の血友病Aの患者で、PST後にFVIIIに対する中和抗体(すなわち「インヒビター」)が発生する。同様に、推定で血友病Bの患者の約10%でFIXに対する「インヒビター」が発生する。これらのインヒビターは出血エピソードの管理を複雑にし、さらなるPSTを無効する可能性がある。このような血友病患者は、FVIII又はFIXに対する中和抗体があっても止血補正を可能にする第VIIa因子で治療することができる。PSTのこれらの限界は、血友病治療の潜在的
な代替法として遺伝子治療の開発の妥当性を示す。さらに、FIXやFVIIIの血漿中濃度のわずかな増加が治療効果のために必要とされ、正常レベルの1%を超えるレベルで、特発性出血や長期関節症の発生率を著しく下げることができる。
【0005】
肝臓はFIX及びFVIIIの合成の主要な生理的部位であり、したがって肝細胞は血友病遺伝子治療に非常に適した標的細胞である。この部位から、FIX又はFVIIIタンパク質は血液循環に容易に入ることができる。さらに、肝臓ニッチ(hepatic niche)は導入遺伝子産物に対する免疫寛容の誘導に好ましい可能性がある(Annoni et al., 2007、Follenzi et al., 2004、Brown et al., 2007、Herzog et al., 1999、Matrai et al., 2011、Matsui et al., 2009)。血友病の肝臓指向遺伝子治療は、レトロウイルス(Axelrod et al., 1990、Kay et al., 1992、VandenDriessche et al., 1999、Xu et al., 2003, 2005)、レンチウイルス(Ward et al., 2011、Brown et al., 2007、Matrai et al., 2011)、アデノ関連ウイルス(AAV)(Herzog et al., 1999)及びアデノウイルスベクター(Brown et al., 2004、Ehrhardt & Kay, 2002)を含むさまざまなウイルスベクターによって達成することができる。AAVは一本鎖DNAゲノムをもつ天然の複製欠損非病原性ウイルスである。AAVベクターは好ましい安全性プロファイルを有し、持続的な導入遺伝子発現を達成することができる。長期発現は主にエピソームに保持されたAAVゲノムによって媒介される。安定に形質導入されたベクターゲノムの90%超は染色体外であり、大部分は高分子量のコンカテマーとして組織化される。したがって、挿入性腫瘍形成のリスクは、特に形質導入細胞の選択的増殖が起こらないと予想される血友病遺伝子治療の状況では、最小限に抑えられる。AAVベクターの主な限界は、ベクター粒子のパッケージング容量が限られ(すなわち、AAV逆位末端反復を含む約5.0kb)、機能的なベクターを得るための導入遺伝子発現カセットのサイズが制限されることである(Jiang et al., 2006)。血友病遺伝子治療用のほとんどのベクターは初期には最も一般的なAAV血清型2に由来していたが、免疫学的に異なるいくつかのAAV血清型がヒト及び非ヒト霊長類から単離されている(Gao et al., 2002、Gao et al. 2004)。先天性失明に対してAAVに基づく遺伝子治療が初めて臨床的に成功したことは、この遺伝子導入技術の可能性を明確に示している(Bainbridge et al., 2008)。
【0006】
血友病のマウス及びイヌモデル又は非ヒト霊長類におけるAAVベクターを用いた前臨床研究では、持続的な治療的発現が示めされ、血友病モデルでの出血表現型の部分的又は完全な補正につながった(Snyder et al., 1997, 1999、Wang et al., 1999, 2000、Mount et al., 2002、Nathwani et al., 2002)。特に、肝臓への形質導入は、制御性T細胞(Treg)の誘導を必要とするFIXに対する免疫寛容を都合よく誘導する(Mingozzi
et al., 2003、Dobrzynski et al., 2006)。肝臓指向性AAV2-FIX遺伝子治療で治療された、インヒビターを発生し易い(inhibitor-prone)ヌル変異血友病Bイヌでは、インヒビターの発生を伴わない血友病の表現型の長期的な補正が達成された(Mount et
al, 2002)。ベクターの投与量をさらに減らすために、より強力なFIX発現カセットが開発されている。これは、より強力なプロモーター/エンハンサーエレメント、コドン最適化FIX又はAAV形質導入の制限ステップの1つ(すなわち一本鎖から二本鎖AAVへの変換)を克服する自己相補的二本鎖AAVベクター(scAAV)を使用することによって達成することができた(McCarty, 2001, 2003、Nathwani et al, 2002, 2006, 2011、Wu et al., 2008)。肝細胞への形質導入の増加をもたらし、ベクターの核内移行を向上させ、T細胞活性化のリスクが低減しうる別のAAV血清型(例えばAAV8又はAAV5)が使用できたが(Gao et al., 2002、Vandenberghe et al., 2006)、エピトープは異なるAAV血清型間で保存されているので、これが必ずしもヒト対象にも当てはまるかは不明である(Mingozzi et al., 2007)。AAV8又はAAV9を用いた血友病Bに対する肝臓指向性遺伝子治療は、少なくともマウスでは、レンチウイルスベクターを用いたときよりも効率的であり、炎症が少なくなった(VandenDriessche et al., 2007, 2002)。さらに、表面に露出したチロシン残基の変異により、ベクター粒子がリン酸化とそ
れに続くユビキチン化を回避でき、したがってプロテアソームを介した分解を防ぎ、結果としてマウスのFIXの肝発現が10倍に増加することが研究から示されている(Zhong et al., 2008)。
【0007】
これらの肝臓指向性前臨床研究は、重症血友病B患者の臨床遺伝子治療用のAAVベクターの使用への道を開いた。AAV-FIXベクターの肝臓への送達は、肝動脈カテーテル法によってAAV‐FIXを受けた被験者で一時的な治療的FIXレベル(最大で正常レベルの12%)をもたらした(Kay et al., 2000)。最近、血友病の遺伝子治療は重要な前進を遂げた(Nathwani et al., 2012、Nathwani et al., 2014、VandenDriessche & Chuah, 2012による論評)。重症血友病B(<1%FIX)を患う被験者に、肝臓特異的プロモーターからのコドン最適化FIXを発現する自己相補的(sc)AAV8ベクターを静脈注射した。FIX発現レベルは、約3年にわたって正常レベルの1%~6%の間で変動し、ベクターの投与量依存的な効果を伴った。注目すべきことに、高投与量コホートの6名の患者はすべて、FIX発現レベルが最大で正常FIXの5%に達した。FIX発現レベルはFIX使用量と年間出血回数の減少と一致し、最高投与量コホートで最も高い相対的減少(すなわち94%)が観察された。それにもかかわらず、被験者は外傷性出血を含む出血のリスクがあり、とりわけ循環FIXレベルが低い被験者では、間欠的にFIXを補うことが必要であった。特に、この遺伝子治療が全体的に良好な忍容性を示したことは明るい見通しを与える(encouraging)。以前の肝臓指向性AAV治験との主な違いは、初めて遺伝子治療後に持続した治療的FIXレベルが達成できたことである。しかし、最もよく見られた研究関連有害事象は循環肝酵素(すなわちアラニンアミノトランスフェラーゼ、ALT)レベルの無症候性の上昇であり、ベクター注入後約7~10週間で、高投与量コホートの6名の患者のうち4名で発生した。このことは、10年より前に(more
than 10 years)血友病に対する遺伝子治療の初期の治験において、AAV2をベースとするベクターで見られたことを彷彿させる(Manno et al., 2006)。このベクター特異的免疫応答を制限する試みとして、短期のグルココルチコイドの使用による一時的な免疫抑制が用いられた。同一のベクター設計が、より最近の治験(ClinicalTrials.gov番号:#NCT02396342)でも用いられたが、その場合は、治療用FIX遺伝子カセットをパッケージングするのに別のカプシド血清型(すなわちAAV5)を採用した(Miesbach et al., 2018)。これは、AAV5がAAV2やAAV8と比較して中和抗体(NAb)の発生率が低いことに基づいてより有利な免疫プロファイルを示し、少なくともヒト以外の霊長類でAAV8と同程度に肝細胞を形質導入する能力もあるという理論的根拠に基づいた。しかし、局所的かつ特異的な集団効果が読み出しに影響する可能性があるので、さまざまなAAV血清型の全体的な血清陽性率をより良く理解するために、標準化された検証済みアッセイを用いた包括的な研究が必要である。1件の過去のAAV5に基づく治験では、AAV5はカプシドに対する細胞性免疫応答を誘発しないようであることが示唆されている(D'Avola et al., 2015)。とはいえ、比較的限られた数の患者に基づいて、AAV8よりもAAV5を使用することによって派生する可能性のある免疫学的な影響(possible immune ramifications)について最終的な結論を出すのは、やや時期尚早と思われる。
【0008】
その非盲検臨床試験には、重症血友病Bの10名の成人が含まれ、誰も以前から存在する抗AAV5中和抗体を持っていなかった。被験者は、低ベクター投与量コホート(5×1012vg/kg)及び高ベクター投与量コホート(2×1013vg/kg)に登録された。4.4%に相当する平均FIX発現レベルが、低投与量コホートの患者で達成され、高投与量コホートでは6.9%に増加した。これはFIX使用量及び年間特発性出血回数の減少と一致していたが、外傷性出血のリスクは遺伝子治療介入前と同様に高いままであった。興味深いことに、遺伝子治療の前に予防的治療を受けた9名の患者のうち8名では、予防治療はもはや必要ではなくなった。FIX発現は、低投与量コホート及び高投与量コホートでそれぞれ1年間及び約6か月持続した。無症候性で一過性の肝トランスア
ミナーゼ上昇が3名の被験者で検出されたが、それはAAVカプシド特異的T細胞反応やFIX活性の低下とは相関しないようであった。この研究は、血清型をAAV5からAAV8に変更しても、AAVに基づく遺伝子治療のこの有害事象は防げないことを示す。その結果として、患者は、これらの望ましくない免疫応答及びトランスアミナーゼ上昇をブロックするために、グルココルチコイドによる一時的なの免疫抑制治療を受けた。
【0009】
遺伝子治療による血友病A治療のための効率的なウイルス遺伝子送達系を作り出す際に、重大な制限の1つはFVIII cDNAのサイズが大きいことである。これまでの血友病Aに対するウイルスベクターに基づく遺伝子治療研究は、典型的には、小さいが弱いプロモーターの使用に依存したり、臨床的に意味のない過度に高いベクター投与量を必要としたり、又は著しく低下したベクターの力価をもたらしたりした。AAVのパッケージングの制約を克服するための分割(split)又はデュアルベクターデザインの使用など、他のアドホックな戦略がいくつか検討されたが、それらのアプローチは全体的に比較的非効率的であり、さらなる免疫原性の懸念を引き起こした(Petrus et al., 2010にレビューされている)。FVIII Bドメインは凝固促進活性に必須ではないことが見出されている。その結果として、そのより小さいサイズがより容易にベクターに組み込まれるので、Bドメインが欠損しているFVIIIコンストラクトは遺伝子導入の目的のために使用される。さらに、Bドメインの欠損は、mRNA及び一次翻訳産物の17倍の増加をもたらすことが示されている。Bドメインが欠損し、14個のアミノ酸の短いリンカーで置換されたFVIIIは、現在、組換え製品として製造され、臨床用にRefacto(登録商標)として市販されている(ワイスファーマ(Wyeth Pharma))(Sandberg et al.,
2001)。Miaoら(2004年)は、分泌を向上させるために、最適には226個のアミノ酸で、N-結合型グリコシル化のための6つの部位を保持する短いBドメイン配列をBドメイン欠損FVIIIに戻した。McIntoshら(2013年)は、Miao et al.の226個のアミノ酸スペーサーを、Bドメインの6つのグリコシル化トリプレットが並んだ17個のアミノ酸のペプチドで置き換えた。しかし、産生量はまだ治療目的には十分ではなかった。また、ヒト第VIII因子cDNAのコドン最適化は高いレベルの発現をもたらす。コドン最適化cDNA配列からFVIIIを発現するレンチウイルスベクターで形質導入した新生児血友病Aマウスの血漿において、活性型FVIIIタンパク質が有意に高いレベル(最大で44倍の増加、正常のヒトレベルの200%を超える)が検出され、それによって疾患モデルの補正に成功した(Ward et al., 2011)。
【0010】
FIXの肝臓特異的発現のための例示的な最新ベクターは国際公開第2009/130208号に記載され、因子cDNAを駆動するTTR/Serp調節配列を含む一本鎖AAVベクターから構成される。FIXの第1のイントロンは、ポリアデニル化シグナルとともにベクターに含まれた。前記(said)改良ベクターを使用して、約25~30%の安定な循環第IX因子が得られた。
【0011】
血友病のためのウイルスベクターに基づく遺伝子治療を臨床に橋渡し(translate)するためには、大量のベクター投与を肝臓に施すことに伴う安全性の懸念及び大量の臨床グレードのベクターを製造する必要性に対処しなければならない。これらの目標を達成するためには、遺伝子導入ベクターの効力(投与量あたりの有効性)を高めることが重要である。それにより、より少ない投与量を用いて治療効果を得ることが可能になり、インビボ投与に伴う潜在的な毒性や免疫活性化を低減し、製造のニーズを軽減することができる。
【0012】
効力を増大させる1つの方法は、導入遺伝子配列自体を操作して、ベクター1コピー当たりの発現及び生物学的活性を最大にすることである。以前に本発明者らは、コドン使用に関して最適化した、過剰凝固活性及び血栓形成傾向と関連するR338Lアミノ酸置換(Simioni et al., 2009)を有するFIX導入遺伝子が、血友病Bマウスにおいて、レンチウイルスベクター又はAAVベクターを用いた遺伝子治療の有効性を、検出可能な有害
作用なしに最大15倍まで増加させ、治療有効性に達するのに要する投与量を実質的に減少させ、したがって将来のスケールアップ及びその臨床への橋渡し(translation)を促進することを示した(Cantore et al., 2012、Nair et al., 2014)。
【0013】
FIX-R338L Paduaバリアントに基づいて、2つの独立した遺伝子治療の治験が最近実施され、有望な結果が得られている。さらに、野生型FIXの使用から離れて、戦略的に過剰活性FIX-R338Lバリアントに焦点を移した他の試験がいくつか進行中であり、そのバリアントが血友病B遺伝子治療のゴールドスタンダードとなりつつあることを示唆している。最初のFIX-R338L Padua試験(バクスアルタ(Baxalta)、現在はシャイアー(Shire)の一部、NCT01687608、Monahan et al. (2015)及びHorling et al. (2017)も参照)では、重症の血友病B患者を、コドン最適化FIX-R338L Paduaバリアント(BAX335と命名)を発現する自己相補的(sc)AAV8ベクターを用いた単回静脈注射で治療した。この試験では、3つの投与コホートが行われ、合計で7名の患者を治療した。2名の患者は、50%を超えた一過性のFIX活性レベルを示し、その後最終的にベースレベルに低下した。中間投与量のコホート(1012vg/kg)の患者のうち1名は、FIX活性が20%台で1年以上持続した。しかし、その試験に登録された患者の大部分では、FIXの発現は検出できなかった、又その発現は持続しなかった。根本原因分析により、FIX発現の低下の潜在的な原因が異常に増強された免疫原性に起因する可能性が示唆された。実際、BAX335はFIXコーディング配列に高コピーのCpGジヌクレオチドモチーフを多く含んでおり、Toll様受容体9(TLR9)依存的に自然免疫系を刺激することによって、免疫原性の増強に寄与している可能性がある(Faust et al., 2013)。
【0014】
別のFIX-R338L Padua試験(スパーク・セラピューティックス(Spark Therapeutics)/ファイザー;NCT02484092)では、BAX335試験の結果と比較して、より一貫した患者の反応が得られた。アポリポタンパクE遺伝子の肝臓制御領域(APOE)及び肝臓特異的なヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターから構成される肝細胞特異的プロモーターからコドン最適化FIX-F338L Paduaバリアントを発現させる一本鎖AAVベクター(SPK-9001と命名)を設計した(George et al., 2017)。AAVベクター(AAV-Spark100と命名)は、その有利な血清陽性プロファイルに基づいて、別の変異AAVカプシドを用いてパッケージ化した。比較的低投与量のベクター(5×1011vg/kg)を、10名の重度血友病B患者に静脈注射した。ベクター投与の14週間後、10名の被験者は定常状態FIX活性が約33.7±18.5%に達し、これは年間出血回数(11.1回から0.4回出血性イベント/年に)と年間輸液回数(67.5回から1.2回に)の両方の減少と一致した。FIX活性は、遺伝子治療用ベクターを単回静脈注射した後、1年間持続した。これはタンパク質置換療法による予防の中止を促した。他のすべての血友病B遺伝子治療試験の場合と同様に、この試験でも試験被験者のうち2名が、AAVカプシド特異的T細胞免疫応答と同時に肝トランスアミナーゼの一過性の上昇を示し、経口コルチコステロイドの漸増投与での治療が必要となった。一時的な免疫抑制で治療した試験参加者のうち1名では、FIXの発現は正常なFIX活性の70~90%の範囲で安定した。しかし、別の患者では、免疫抑制はFIXレベルの有意な低下を防ぐのに十分ではなかった。これは、高トランスアミナーゼ血症を発症する前の予防的治療として、おそらくもっと早くに経口コルチコステロイドを投与することが必要かつ堅実かもしれないことを示唆する。
【0015】
血友病マウス及び非ヒト霊長類における有望な結果(Bunting et al., 2018)に基づいて、重度の血友病A患者9名に、コドン最適化Bドメイン欠損型ヒト第VIII因子をコードするAAV5ベクター(AAV5-hFVIII-SQ)を静脈注射した(Rangarajan et al., 2017)。低投与量(1名の患者;6×1012vg/kg)及び中間投与量
(1名の患者;2×1013vg/kg)では、循環するFVIIIレベルは検出されなかった。しかし、最も高い投与量の6×1013vg/kgのベクターで治療を受けた7名の患者のうち6名は、20週間後に正常FVIII活性レベルの50%超に達するFVIII活性レベルの有意な増加を示した。この試験で使用されたベクター投与量は、AAVに基づくどの血友病B試験で使用された投与量よりも大幅に高いと思われる。それでも、基準がない状態において、ベクター投与量と試験結果を比較するには、注意が若干必要である。最も重要なことは、ベクター注入の1年後、最も高い投与量を受けた試験被験者では、93±48%の平均FVIII活性レベルが達成されたことである。しかし、4名の患者では、正常FVIII活性レベルの150%を超えるレベルが達成され、ピークは正常の201~349%であった。これにより、血栓症のリスクが増加する可能性に関する懸念が生じたが、この超生理的なレベルは持続せず、78週目にはFVIIIレベルはさらに下がり、生理的範囲内に入った。過去にFVIIIの予防処置を受けていた最も高い投与量の6名の患者では、遺伝子治療後に、年間出血回数が1年に16回から1回に減少した。同様に、年間FVIII注入回数の中央値は、遺伝子治療後に1年に138回の注入から2回に減少した。他の血友病B試験と同じく、高投与量コホートの一部の患者はトランスアミナーゼ値の有意な上昇を示し、グルココルチコイド治療の投与量を漸減する必要があった。このことから、AAV5カプシドに対するT細胞介在性免疫応答の証拠はなかったが、AAV5に基づく遺伝子治療は結果として肝臓の炎症につながったことが示唆された。これは、上記(Miesbach et al., 2018)のAAV5に基づく血友病B試験で得られた結果を彷彿とさせる。
【0016】
国際公開第2014/064277号では、強力なセルピンエンハンサーと、FIX又はFVIIIをコードするコドン最適化導入遺伝子を組み合わせ、それぞれFIX及びFVIIIの肝臓特異的発現の増加をもたらす発現ベクターが記載されている。
【0017】
しかし、遺伝子発現を最大にするという点で、プロモーターの操作や導入遺伝子のコドン最適化などの戦略で達成できることの限界に達している可能性がある。タンパク質工学における最近の成功は、FIXタンパク質をアルブミン又は免疫グロブリンFcドメインのいずれかと融合させることにより、FIXタンパク質の半減期を有意に延長できること示した(Peters et al., 2010、Powell et al., 2013、Metzner et al., 2009、Santagostino et al., 2016)。その結果として、血友病B患者は十分な止血を維持するのに、それらのより長く作用する因子を用いると、標準的な組換えFIXタンパク質を用いた従来のタンパク質置換療法によるのと比べて、格段に少ない注入頻度ですむ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
血友病A及び血友病Bに対する肝臓指向性遺伝子治療の効率及び安全性をさらに高めることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
FIXタンパク質とアルブミンとの融合がFIXタンパク質の半減期を有意に延ばすことが以前に示されたが(Metzner et al., 2009、Santagostino et al., 2016)、それらの研究は、組換えFIX-Alb融合タンパク質の作製及び前記組換えFIX-Alb融合タンパク質(ベクターではない)の対象への投与に関するものである。本発明の発明者らは、FIX及びヒトアルブミンの融合タンパク質をコードする先行技術の非コドン最適化融合遺伝子を発現するウイルスベクターを投与したとき、FIX導入遺伝子を単独で発現するウイルスベクターと対比して、融合タンパク質の循環レベル及び/又は活性に有意な差はなく、有意な発現レベルの増加は検出されないことを見出した。これは、ヒトアルブミンとの組換え融合遺伝子を用いて報告された成功が、遺伝子治療目的のためのウイルスベクターを用いて再現できなかったことを示す。しかし、配列番号14によるコドン最
適化ヒトアルブミン及びFIX導入遺伝子を含み、FIX-ヒトアルブミン融合タンパク質をコードする融合遺伝子を発現するベクターを投与すると、融合遺伝子の遺伝子発現並びにFIXタンパク質の循環レベル及び活性の有意な増加が見られた。
【0020】
したがって、本発明は以下の態様を提供する。
態様1.配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号14に定められる配列を含むヒトアルブミンをコードするコドン最適化核酸分子。
【0021】
態様2.配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含み、好ましくは前記導入遺伝子がコドン最適化導入遺伝子である態様1による核酸分子。
【0022】
態様3.前記導入遺伝子が、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列の5’末端に位置する態様1又は2による核酸分子。
【0023】
態様4.前記導入遺伝子が、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列から、1つ又は複数のポリペプチド又はペプチドリンカーをコードする配列によって、好ましくは配列番号18に定められるペプチドリンカーによって隔てられている態様1~3のいずれか1つによる核酸分子。
【0024】
態様5.導入遺伝子にコードされるタンパク質又はポリペプチド発現及び/又は循環レベル及び/又は活性を増加させるのに使用するための請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【0025】
態様6.プロモーターに動作可能に連結された態様1~4のいずれか1つによる核酸分子を含む核酸発現カセット。
【0026】
態様7.プロモーターに動作可能に連結された少なくとも1つの組織特異的核酸調節エレメント及び態様1~5のいずれか1つで画定された核酸分子を含む態様6による核酸発現カセット。
【0027】
態様8.マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、好ましくは配列番号20に定められる前記MVMイントロンを含む態様6又は7による核酸発現カセット。
【0028】
態様9.転写終結シグナル、好ましくはポリアデニル化シグナル、より好ましくは配列番号21に定められる合成ポリアデニル化シグナル又は配列番号23に定められるシミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナルを含む態様6~8のいずれか1つによる核酸発現カセット。
【0029】
態様10.前記導入遺伝子が、分泌可能な治療用タンパク質又は分泌可能な免疫原性タンパク質をコードし、好ましくは導入遺伝子が、第IX因子、第VIIa因子、第VIII因子、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、ADAMTS13、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PLGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFLT1)、α1-アンチトリプシン(AAT)、インスリン、プロインスリン、第VII因子、第X因子、フォン・ヴィルブランド因子、C1エステラーゼ阻害剤(C1-INH)、ライソゾーム酵素、ライソゾーム酵素イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、
インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、アファミン(AFM)、α1-アンチトリプシン、α-ガラクトシダーゼA、α-L-イズロニダーゼ、リポタンパク質リパーゼ、アポリポタンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)、アルブミン、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)-抵抗性グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、GLP-2、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、インターフェロン(例えばIFNアルファ-2b)、β-ナトリウム利尿ペプチド、IL-1Ra、エキセンディン-4、オキシントモジュリン、ホリスタチン、抗体及びナノボディからなるリストより選択される分泌可能な治療用タンパク質をコードする態様6~9のいずれか1つによる核酸発現カセット。
【0030】
態様11.前記導入遺伝子が、肝臓関連疾患、好ましくは血友病A、血友病B又は第VII因子欠乏症を治療及び/又は予防するための治療用タンパク質をコードする態様10による核酸発現カセット。
【0031】
態様12.前記導入遺伝子が凝固因子IX(FIX)をコードし、好ましくは前記凝固因子FIXが高活性化変異を含み、より好ましくは前記高活性化変異がR338Lアミノ酸置換に対応し、より好ましくは前記導入遺伝子が配列番号11に定められる核酸配列を有する凝固因子IXをコードする態様11による核酸発現カセット。
【0032】
態様13.前記導入遺伝子が凝固第VIII因子(FVIII)をコードし、好ましくは前記導入遺伝子がコドン最適化凝固因子FVIII又であり、又は前記凝固第VIII因子がBドメインの欠損を有し、好ましくは前記FVIIIの前記Bドメインが配列番号15に定められるリンカーによって置換され、より好ましくは前記導入遺伝子が、配列番号16に定められる核酸配列を有する凝固第VIII因子をコードする態様12による核酸発現カセット。
【0033】
態様14.前記導入遺伝子が、凝固第VII因子(FVII)又は因子FVIIa(FVIIa)の軽鎖及び重鎖をコードし、FVIIの軽鎖がFVII又はFVIIaの重鎖に1つ又は複数の切断可能なポリペプチド又はペプチドリンカーよって結合され、好ましくは前記導入遺伝子が、配列番号34に定められるアミノ酸配列をコードする態様12による核酸発現カセット。
【0034】
態様15.少なくとも1つの組織特異的核酸調節エレメントが、少なくとも1つの肝臓特異的核酸調節エレメントである態様11~14のいずれか1つによる核酸発現カセット。
【0035】
態様16.少なくとも1つの肝臓特異的核酸調節エレメントが、配列番号25に定められるセルピンエンハンサー又は前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む態様15による核酸発現カセット。
【0036】
態様17.配列番号25に定められるセルピンエンハンサー又は前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列のトリプルリピート、好ましくはタンデムに配置されたリピ
ートを含む態様16による核酸発現カセット。
【0037】
態様18.プロモーターが肝臓特異的プロモーター、好ましくは、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、最小限TTRプロモーター(TTRm)、AATプロモーター、アルブミン(ALB)プロモーター若しくは最小限プロモーター、アポリポタンパク質A1(APOA1)プロモーター若しくは最小限プロモーター、補体因子B(CFB)プロモーター、ケトヘキソキナーゼ(KHK)プロモーター、ヘモペキシン(HPX)プロモーター若しくは最小限プロモーター、ニコチンアミドNメチルトランスフェラーゼ(NNMT)プロモーター若しくは最小限プロモーター、(肝臓)カルボキシルエステラーゼ1(CES1)プロモーター若しくは最小限プロモーター、プロテインC(PROC)プロモーター若しくは最小限プロモーター、アポリポタンパク質C3(APOC3)プロモーター若しくは最小限プロモーター、マンナン結合レクチンセリンプロテアーゼ2(MASP2)プロモーター若しくは最小限プロモーター、ヘプシジン抗菌ペプチド(HAMP)プロモーター若しくは最小限プロモーター、又はセルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードC(アンチトロンビン)、メンバー1(SERPINC1)プロモーター若しくは最小限プロモーターからなる群より選択される肝臓特異的プロモーター、好ましくはTTRmである態様11~17のいずれか1つによる核酸発現カセット。
【0038】
態様19.態様6~18のいずれか1つによる核酸発現カセットを含み、好ましくは前記ベクターがウイルスベクターであり、より好ましくは前記ベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクター。
【0039】
態様20.前記ベクターが一本鎖AAVである態様19によるベクター。
【0040】
態様21.配列番号2、配列番号3、配列番号6又は配列番号8、好ましくは配列番号8を有する態様20によるベクター。
【0041】
態様22.態様19~21のいずれか1つによるベクター及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0042】
態様23.医学、好ましくは遺伝子治療、より好ましくは肝臓指向性遺伝子治療に使用するための態様19~21のいずれか1つによるベクター又は態様22による医薬組成物。
【0043】
態様24.肝臓関連疾患、好ましくは、導入遺伝子がFIX(血友病B)、FVIII(血友病A)又はFVII(血友病A、血友病B、好ましくはFVIII若しくはFIXに対するインヒビターをもつ患者;FVII欠乏症)である場合、血友病A、血友病B又はFVII欠乏症の治療に使用するための態様19~21のいずれか1つによるベクター又は態様22による医薬組成物。
【0044】
態様25.そのような治療を必要とする対象における肝臓関連疾患、好ましくは血友病を治療する方法であって、治療有効量の態様19~21のいずれか1つによるベクター又は態様22による医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【0045】
態様26.対象における肝臓関連疾患、好ましくは血友病の治療用薬物(medicament)を製造するための、態様19~21のいずれか1つによるベクター又は態様22による医薬組成物の使用。
【0046】
態様27.肝臓細胞で導入遺伝子産物を発現させるためのインビトロ又はエクスビボの方法であって、
態様6~18のいずれか1つによる核酸発現カセット、又は態様19~21のいずれか1つによるベクターを肝臓細胞に導入すること;
導入遺伝子産物を肝臓細胞で発現させること;
を含む、方法。
【0047】
態様28.導入遺伝子にコードされるタンパク質又はポリペプチドの発現及び/又は循環レベル及び/又は活性を増加させるための、好ましくはインビトロでの使用である、態様1~4のいずれか1つによる核酸分子、態様6~18のいずれか1つによる核酸発現カセット又は態様19~21のいずれか1つによるベクターの使用。
【0048】
態様29.態様1~4のいずれか1つによる核酸分子、態様6~18のいずれか1つによる核酸発現カセット、又は態様19~21のいずれか1つによるベクターを用いて導入遺伝子にコードされるタンパク質又はポリペプチドの発現及び/又は循環レベル及び/又は活性を増加させる方法。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明を以下の図で説明する。これらの図は例示目的にのみ考慮されるべきであり、その中で開示される実施形態に本発明を限定するものではない。
図1】pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図2】pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Alb-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図3】pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図4】pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図5】pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図6】pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図7】pAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図8】pAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図9】FIXノックアウト(KO)マウスにおいて、記載のベクターを形質導入した際のFIXタンパク質レベル及び活性を示す図である。9A):AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA及びAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pAを5×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたタンパク質発現量の経時的推移。9B)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA及びAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pAを5×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたFIXタンパク質活性の経時的推移。9C)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA及びAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAを5×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたタンパク質活性の経時的推移。
図10】マウスにおいて、記載のベクターを形質導入した際のFIXタンパク質レベル及びmRNA発現を示す図である。10A):AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA及びAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAを1×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたFIXタンパク質発現レベルの経時的推移。10B):AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA及びAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAを1×10vg/マウスで形質導入した際に達成された、対照に対するmRNA発現。
図11】FIXノックアウト(KO)マウスにおいて、記載のベクターを形質導入した際のFIXタンパク質及び活性レベルを示す図である。11A):AAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pA及びAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAを5×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたタンパク質発現レベルの経時的推移。11B):AAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pA及びAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAを5×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたタンパク質活性の経時的推移。
図12】FIXノックアウト(KO)マウスにおいて、記載のベクターを5×10vg/マウス、1×10vg/マウス、又は5×10vg/マウスで形質導入した際に達成されたFIX抗原レベル及びFIX活性レベルの経時的推移(1週間及び3週間)を示す図である。
図13】FIXノックアウト(KO)マウスにおいて、記載のベクターを5×10vg/マウス(A)、1×10vg/マウス(B;D)、又は5×10vg/マウス(C;E)で形質導入した際に達成されたFIX活性レベルの経時的推移(注射後の週数で表す)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他の意味に解釈すべき場合を除き、単数形と複数形の両方の指示対象を含む。
【0051】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包括的又は非限定的(open-ended)であり、追加の、記載されていないメンバー、要素又は方法ステップを排除しない。また、この用語は「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含し、これらは特許用語において十分に確立された意味をもつ。
【0052】
端点による数値範囲の記載には、それぞれの範囲内に含まれるすべての数字及び分数、並びに記載された端点が含まれる。
【0053】
パラメーター、量、時間的長さ(temporal duration)などの測定可能な値について言及するときに本明細書で使用される「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、開示される発明で実行するのに適切である限り、指定された値の、かつそれからの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動など、指定された値の及びそれからの変動を包含することを意味する。「約(about)」という修飾語が指す値は、それ自体も具体的に、好ましくは開示されることが理解されるべきである。
【0054】
メンバーのグループの1つ又は複数のメンバー又は少なくとも1つのメンバーなど、「1つ若しくは複数(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、それ自体が明確であるが、さらに例示すると、この用語はとりわけ、前記メンバー
のいずれか1つ、又は前記メンバーのいずれか2つ以上、例えば、前記メンバーの任意の≧3、≧4、≧5、≧6又は≧7などへの言及を包含し、さらに前記メンバーのすべてまでを包含する。別の例では、「1つ若しくは複数」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上を指すことができる。
【0055】
本明細書では、本発明の内容を説明するために、本発明の背景に関する説明が含まれている。これは、言及された資料のいずれかが、いずれかの請求項の優先日の時点で、いずれかの国で公開され、公知である、又は一般的な常識の一部であったことを認めたものとみなされるべきではない。
【0056】
本開示全体を通して、さまざまな出版物、特許、公開特許明細書が、識別引用(identifying citation)によって参照される。本明細書中で引用される文献はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及されるそのような文献の教示又は項は、参照により組み込まれる。
【0057】
別段の定義がない限り、技術的及び科学的な用語を含む、本発明を開示する際に使用される用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針の手段として、本発明の教示をより良く理解するために、用語の定義が含まれる。本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して特定の用語が定義される場合、そのようなコノテーション(connotation)は、別段の定義がない限り、本明細書全体、すなわち本発明の他の態様又は実施形態の文脈においてもあてはまることを意味する。
【0058】
以下の文章では、本発明のさまざまな態様又は実施形態がより詳細に画定される。そのように画定された態様又は実施形態はそれぞれ、明らかにそうでないという指示がない限り、いずれの他の態様又は実施形態とも組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される他の特徴又は特徴のいずれとも組み合わせることができる。
【0059】
本明細書全体を通して「1つの実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通してさまざまな箇所で「1つの実施形態では(in one embodiment)」又は「一実施形態では(in an embodiment)」という表現が現れることは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、本開示から当業者に明らかなように1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる特徴のうち含むものもあれば含まないものもあるが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者に理解されるであろうように、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、クレームされた実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0060】
本発明は、特定の実施形態に関して、及びある特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。クレーム中の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。記載の図面は概略的なものであり、限定的なものではない。図面では、いくつかの要素のサイズは誇張されていることがあり、説明の目的のために、正確な比率で描かれていないこともある。
【0061】
本明細書で提供される用語又は定義は、本発明の理解を助けるためのものである。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される用語はすべて、それらの用語が
本発明の当業者に対してもつと思われる意味と同じ意味を有する。当該技術分野の定義や用語について、実務家は特にSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York (1989)及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York (1999)を参照されたい。
【0062】
本明細書で提供される定義は、当業者によって理解される範囲よりも小さい範囲を有すると解釈されるべきではない。
【0063】
本発明の発明者らは、コドンが最適化されたヒトアルブミン(本明細書では「Albco」とも呼ばれる)、好ましくは、配列番号14に定められる配列又は前記配列に対して少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも85%の配列同一性を有する配列を有するコドン最適化ヒトアルブミンが、導入遺伝子に遺伝子的に融合された場合に、その導入遺伝子の遺伝子発現を増強し、かつ/又はその導入遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはポリペプチドのレベル及び/若しくは活性を増加させるために使用できることを意外にも発見した。より具体的には、コドン最適化ヒトアルブミンを使用して、ヒト凝固因子IX(hFIX)-Alb、ヒト凝固第VIII因子(hFVIII)-Alb又はヒト凝固因子FVII-Albをコードする遺伝子的に融合された導入遺伝子(本明細書では融合遺伝子」とも呼ばれる)を調製して、それぞれhFIX、hFVIII若しくはhFVIIの遺伝子発現を増強すること、並びに/又はインビトロ及びインビボで、それぞれhFIX、hFVIII若しくはhFVIIの発現又は循環レベル及び/若しくは活性を増加させることができる。対照的に、非コドン最適化(本明細書では「野生型」とも呼ばれる)ヒトアルブミン(本明細書では「Alb」とも呼ばれる)が、遺伝子的に導入遺伝子に融合された場合、前記導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドの遺伝子発現及び/又はレベル及び/又は活性に対する有益な効果は観察されない。
【0064】
したがって、第1の態様は、導入遺伝子の遺伝子発現を増強するのに使用するための、かつ/又は導入遺伝子にコードされるタンパク質若しくはポリペプチドのレベル及び/若しくは活性を増加させるためのヒトアルブミンをコードするコドン最適化核酸分子を提供し、前記核酸分子は、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号14に定められる配列を含む。
【0065】
本明細書で使用される「核酸分子」又は「核酸」という用語は、典型的には、本質的にヌクレオチドから構成される任意の長さのオリゴマー又はポリマー(好ましくは直鎖ポリマー)を指す。ヌクレオチド単位は、一般に、複素環塩基、糖基、及び修飾又は置換されたリン酸基を含む少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、又は3つのリン酸基を含む。複素環塩基としては、とりわけ、天然の核酸に広く存在するアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)などのプリン塩基及びピリミジン塩基、他の天然の塩基(例えばキサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)並びに化学的又は生化学的に修飾された(例えば、メチル化された)非天然又は誘導体化塩基を挙げることができる。糖基としては、とりわけ、好ましくは天然に存在する核酸で一般的なリボース及び/若しくは2-デオキシリボースなどのペントース(ペントフラノース)基、又はアラビノース、2-デオキシアラビノース、トレオース若しくはヘキソース糖基、並びに修飾又は置換された糖基を挙げることができる。本明細書で意図する核酸としては、天然の存在するヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド、又はそれらの混合物を挙げることができる。修飾ヌクレオチドには、修飾された複素環式塩基、修飾された糖部分、修飾されたリン酸基、又はそれらの組み合わせが含まれうる。安定性、酵素による分解への抵抗性、又は他のいくつかの有用な特性を向上させるために、リン酸基又は糖の修飾を導入することができる。「核酸」という用語は、さらに好ましくは、DNA、RNA及びDNA/R
NAハイブリッド分子を包含し、具体的には、hnRNA、pre-mRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅産物、オリゴヌクレオチド、及び合成(例えば化学的に合成された)DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドが挙げられる。核酸は天然に起こるもの、例えば天然に存在するもの若しくは天然から単離されたものでもよく、非天然のもの、例えば組換え体、すなわち組換えDNA技術によって生産されたもの及び/又は部分的若しくは全体的に、化学的若しくは生化学的に合成されたものでもよい。「核酸」は、二本鎖、部分的に二本鎖、又は一本鎖であることができる。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖であってもアンチセンス鎖であってもよい。さらに、核酸は環状でもあっても直鎖であってもよい。そのような核酸分子又は核酸は好適に単離することができる。
【0066】
配列番号14に定められるヌクレオチド配列は、配列番号28に定められる野生型又は非コドン最適化ヒトアルブミンcDNAのコドン最適化形態を表し、その前駆体形態はNCBIジェンバンク(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)受託番号NM_477.6の下で注釈が付けられている。
【0067】
本明細書で教示されるコドン最適化核酸分子によってコードされるヒトアルブミンタンパク質は、配列番号27に定められ、その前駆体形態のアミノ酸配列がNCBI参照配列NP_000468.1の下で注釈が付けられている野生型ヒトアルブミンタンパク質であってもよく、又は例えばアミノ酸の欠失、付加及び/若しくは置換などの、対応する天然タンパク質に対してアミノ酸配列多様性を有するそのバリアント又は変異体であってもよい。例えば、ヒトアルブミンは、Andersen et al., 2014及びStrohl et al., 2015に記載のアルブミンのK573P変異(すなわち、アミノ酸残基573位のリジンがプロリンで置換されている)も包含しうる。
【0068】
導入遺伝子に関して使用される場合、「コドン最適化」という用語は、前記導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなく、導入遺伝子のコドンを改変することを指す。典型的には、導入遺伝子のまれなコドン(すなわち、導入遺伝子が発現される宿主においてまれにしか使用されないコドン)が、宿主生物の導入遺伝子においてより豊富なコドンに置き換えられる。
【0069】
本明細書で使用される「コドン」という用語は、所与のメッセンジャーRNA(mRNA)分子中の、又はタンパク質若しくはポリペプチドの特定のアミノ酸残基をコードするコーディングDNA(cDNA)、又は翻訳の終結(「終止コドン」)のための3つの連続したヌクレオチド塩基のグループを指す。「コドン」という用語はまた、DNA鎖中の塩基のトリプレットも包含する。コドン最適化導入遺伝子のインシリコ予測は、例えば、OptimumGene(商標)遺伝子デザインシステム(Gene Design system)(ジェンスクリプト(GenScript))やコドン最適化ツール(Codon Optimization Tool)(OMICS_23398)、Omictools)などの市販のコドン最適化ツールを用いて、当該技術分野で公知のいずれかの方法で得ることができる。当然ながら、これらは予測ツールに過ぎず、各コドン最適化の実際の効果は依然として不確かであり、広範な試験が必要である。
【0070】
配列番号14に定められるヌクレオチド配列での限定された多様性(例えば、対応する核酸に対する(すなわち比較しての)1つ又は複数のヌクレオチド付加、欠失、又は置換)は、本明細書に記載の配列番号14に定められるヌクレオチド配列として同一のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を依然としてもたらしうることを当業者であれば理解するであろう。
【0071】
したがって、特定の実施形態では、本明細書で教示される核酸分子は、配列番号14に定められる配列又は配列番号14と少なくとも約80%同一、例えば好ましくは少なくと
も約85%同一、例えばより好ましくは少なくとも約90%、例えば少なくとも91%同一、92%同一、さらにより好ましくは少なくとも約93%同一、例えば少なくとも94%同一、さらにより好ましくは少なくとも約95%同一、例えば少なくとも96%同一、さらにより好ましくは少なくとも約97%同一、例えば少なくとも98%同一、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列を含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、「同一性」及び「同一」などの用語は、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子間、例えば2つのDNA分子間の配列類似性を指す。配列アライメント及び配列同一性の決定は、例えば、Tatusova and Madden 1999(FEMS Microbiol Lett 174: 247-250)に記載の「Blast 2 sequences」アルゴリズムなどの、もともとAltschul et al. 1990(J Mol Biol 215: 403-10)に記載のBasic
Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて行うことができる。典型的には、配列同一性のパーセント割合は、配列の全長にわたって計算される。本明細書で使用される場合A、「実質的に同一」という用語は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を意味する。
【0073】
本明細全体を通して使用される「タンパク質」という用語は、一般に、1つ又は複数のポリペプチド鎖、すなわちペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマー鎖を含む高分子を包含する。この用語は、天然に、組換えで、半合成的に、又は合成的に生成されたタンパク質を包含しうる。この用語はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、スルホン化、メチル化、ユビキチン化、シグナルペプチド除去、N末端Met除去、プロ酵素又はプレホルモンの活性形態への転換などの、ポリペプチド鎖の1つ又は複数の共発現型又は発現後型修飾を担うタンパク質も包含する。この用語はさらにまた、例えばアミノ酸欠失、付加及び/又は置換などの、対応する天然タンパク質に対してアミノ酸配列多様性を有するタンパク質バリアント又は変異体も含む。この用語は、完全長のタンパク質と、例えば完全長の天然に存在するタンパク質のプロセシングから生じるそのようなタンパク質の部分などのタンパク質の部分又は断片の両方を企図する。
【0074】
本明細書全体を通して使用される「ポリペプチド」という用語は、一般に、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマー鎖を含む。したがって、特に、タンパク質が単一のポリペプチド鎖のみから構成される場合、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、そのようなタンパク質を示すために互換的に使用されうる。この用語は、ポリペプチド鎖のいかなる最小の長にも限定されない。この用語は、天然に、組換えで、半合成的に、又は合成的に生成されたポリペプチドを包含しうる。この用語はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、スルホン化、メチル化、ユビキチン化、シグナルペプチド除去、N末端Met除去、プロ酵素又はプレホルモンの活性形態への転換などの、ポリペプチド鎖の1つ又は複数の共発現型又は発現後型修飾を担うタンパク質も包含する。この用語はさらにまた、例えばアミノ酸欠失、付加及び/又は置換などの、対応する天然ポリペプチドに対してアミノ酸配列多様性を有するポリペプチドバリアント又は変異体も含む。この用語は、完全長のポリペプチドと、例えば完全長の天然に存在するポリペプチドのプロセシングから生じるそのようなポリペプチドの部分などのポリペプチドの部分又は断片の両方を企図する。
【0075】
本明細書全体を通して使用される「ペプチド」という用語は、好ましくは、50個のアミノ酸以下、例えば45アミノ酸個の以下、好ましくは40個のアミノ酸以下、例えば35個のアミノ酸以下、より好ましくは30個のアミノ酸以下、例えば25個以下、20個以下、15個以下、10個以下又は5個以下のアミノ酸から本質的になる、本明細書で使用されるポリペプチドを指す。
【0076】
そのようなタンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、好適に単離することができる。特定の成分(例えば核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチド)に関する「単離された」という用語は、一般に、そのような成分が、その自然環境の1つ又は複数の他の成分から分離して存在すること、例えば、それから分離されている、又はそれから分離して調製及び/若しくは維持されていることを意味する。例えば、単離されたヒト又は動物のタンパク質又は複合体は、それが天然に存在するヒト又は動物の体から分離して存在しうる。
【0077】
特定の実施形態では、本明細書で教示される核酸分子は、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含み、好ましくは、前記導入遺伝子はコドン最適化導入遺伝子である。
【0078】
本発明の文脈では、本明細書で使用される「融合された(fused)」という用語は、「連結された(connected)」、「結合された(bound)」、「結合された(coupled)」、「結合された(joined)」と類義語であり、少なくとも2つの要素又は成分間の物理的なリンクを指す。2つの遺伝子又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列の文脈では、「融合された」とは、コード配列の融合(「遺伝子融合」と呼ばれる)を指し、発現させると融合タンパク質が結果として得られる。
【0079】
典型的には、導入遺伝子を、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列と融合させると、融合タンパク質又はポリペプチドをコードする融合遺伝子又はキメラ遺伝子が形成される。「融合タンパク質」又は「融合ポリペプチド」という用語は、遺伝子融合の産物を意味し、それによって、2つ以上のタンパク質、ポリペプチド又はそれらのバリアント若しくは断片が、融合産物をコードする単一の連続的なポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通して、それらの個々のポリペプチド主鎖を介して、同一線上の(co-linear)共有結合によって結合される。典型的には、融合産物をコードする連続的なポリヌクレオチド分子を作製するために、所与のポリペプチド断片をそれぞれコードする2つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)が、それぞれの元のORFに対する正しいリーディングフレームを維持するように結合されて、連続したより長いORFを形成する。結果として得られる組換え融合ポリペプチドにおいて、元のORFによってコードされる2つ以上のポリペプチド断片は同じポリペプチド分子内で結合しているが、それらは通常、自然界でそのように結合していない。したがって、リーディングフレームは、融合された遺伝子断片全体にわたって連続しているが、そのように融合されたポリペプチド断片は、例えば、切断可能でありうるインフレームのポリペプチド又はペプチドリンカーによって物理的又は空間的に隔てられていてもよい。
【0080】
当業者であれば、導入遺伝子及び配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列の順序によっては、融合遺伝子によってコードされる融合タンパク質又はポリペプチドの切断を避けるために、最も上流に位置する配列の終止コドンを取り除く必要がありうることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、融合遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドが効果的に作られるためには、導入遺伝子及び配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列がインフレームである必要があることも理解するであろう。
【0081】
本明細書で使用される「導入遺伝子」又は「(導入)遺伝子((trans)gene)」という用語は、その核酸配列が挿入された細胞で発現することになるポリペプチド又はポリペプチドの一部をコードする特定の核酸配列を指す。しかし、核酸配列が挿入された細胞で特定のポリペプチドの量を典型的には低下させるために、導入遺伝子をRNAとして発現させることも可能である。このようなRNA分子としては、RNA干渉(shRNA、RN
Ai)、マイクロRNA調節(miRNA)、触媒RNA、アンチセンスRNA、RNAアプタマーなどを通して機能を発揮する分子が挙げられるが、これらに限定されない。核酸配列がどのようにして細胞に導入されるかは、本発明にとって本質的ではなく、例えば、ゲノム中への組み込み、エピソームプラスミドとして、又はウイルス若しくは非ウイルスベクターを介してであることができる。注目すべきことに、導入遺伝子の発現は、核酸配列が挿入される細胞のサブセットに制限されうる。「導入遺伝子」という用語は、以下を含むことを意味する。(1)細胞で天然には見られない核酸配列(すなわち異種核酸配列)、(2)それが導入された細胞で天然に見られる核酸配列の変異型である核酸配列、(3)それが導入された細胞に、天然に存在する配列と同じ(すなわち相同である)若しくはそれに類似する核酸配列のさらなるコピーを加える働きをする核酸配列、又は(4)それが導入された細胞で発現が誘導される、サイレントな天然に存在する若しくは相同な核酸配列。「変異型」とは、野生型又は天然に存在する配列と異なる1つ又は複数のヌクレオチドを含む核酸配列を意味し、すなわち変異体核酸配列は、1つ又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入を含む。場合によっては、導入遺伝子は、導入遺伝子産物が細胞から分泌されることになるようなリーダーペプチドやシグナル配列をコードする配列を含んでいてもよい。
【0082】
特定の実施形態では、導入遺伝子はコドン最適化導入遺伝子である。
【0083】
特定の実施形態では、導入遺伝子は分泌可能なタンパク質をコードする。
【0084】
特定の実施形態では、導入遺伝子は、治療用タンパク質又は免疫原性タンパク質、好ましくは分泌可能な治療用タンパク質又は分泌可能な免疫原性タンパク質をコードする。
【0085】
本明細書で使用される「分泌可能なタンパク質」という用語は、特定の細胞又は肝臓などの特定の組織で発現し、次いで、体の他の部分への輸送のために血流に運び出されるタンパク質を指す。
【0086】
実施形態では、導入遺伝子は、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞外酵素(例えばグルコシダーゼ、リポタンパク質リパーゼ、アルファ1-アンチトリプシン)、血漿因子、凝固因子、エリスロポエチン、抗体及びナノボディなどの分泌可能な治療用タンパク質をコードする。
【0087】
分泌可能な治療用タンパク質非限定的な例としては、第IX因子、第VIII因子、第VII因子、第VIIa因子(FVIIa)、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、ADAMTS13、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PLGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFLT1)、α1-アンチトリプシン(AAT)、インスリン、プロインスリン、第X因子、フォン・ヴィルブランド因子、C1エステラーゼ阻害剤(C1-INH)、ライソゾーム酵素、ライソゾーム酵素イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、腫瘍壊死因子
(TNF)、アファミン(AFM)、アルファ1-アンチトリプシン、アルファ-ガラクトシダーゼA、アルファ-L-イズロニダーゼ、リポタンパク質リパーゼ、アポリポタンパク質(例えばアポリポタンパク質A-I(アポA-I))、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)、アルブミン、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)-抵抗性グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、GLP-2、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、インターフェロン(例えばIFNアルファ-2b)、β-ナトリウム利尿ペプチド、IL-1Ra、エキセンディン-4、オキシントモジュリン、ホリスタチン、導入遺伝子がコードする抗体、ナノボディ、及びそれらの断片、サブユニット又は変異体などが挙げられる。
【0088】
実施形態では、導入遺伝子は分泌可能な免疫原性タンパク質をコードする。分泌可能な免疫原性タンパク質又はサブユニットの非限定的な例としては、がん細胞(HER2)、ウイルス(HPV、HBV)、細菌(百日咳、ジフテリア、破傷風)、及び真菌又は寄生虫(マラリア)に由来する抗原が挙げられる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「免疫原性」という用語は、免疫応答を誘発することができる物質又は組成物を指す。
【0090】
特定の実施形態では、前記導入遺伝子は、肝臓関連疾患、好ましくは血友病を治療及び/又は予防するための分泌可能な治療用タンパク質をコードする。
【0091】
典型的には、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の導入遺伝子は、凝固因子IX、凝固第VIII因子又は凝固因子VII(又は凝固因子VIIa)好ましくはヒト凝固因子IX、凝固第VIII因子又は凝固因子VII(又は凝固因子VIIa)、より好ましくはヒト凝固因子IXをコードする。
【0092】
「凝固因子IX」という用語は、当該技術分野で公知の意味を有する。凝固因子IXの類義語は、「FIX」又は「クリスマス因子」又は「F9」であり、互いに交換可能に用いることができる。特に、「凝固因子IX」という用語は、ジェンバンク受託番号NM_000133に記載のmRNA配列によってコードされるヒトタンパク質を包含する。
【0093】
好ましくは、前記FIXは変異FIXであり、野生型FIXと比較して、過剰活性又は過機能性である。ヒト凝固因子の機能的活性を改変することは、生物工学によって、例えば点変異を導入することによって行うことができる。このアプローチによって、過剰活性R338Aバリアントが報告され、このバリアントは、インビトロ活性化部分トロンボプラスチン時間分析(APPT)で野生型ヒトFIXと比較して3倍の凝固活性増加を示し(Chang et al., 1998)、変異体FIX遺伝子を形質導入した血友病Bマウスで2~6倍高い比活性を示した(Schuettrumpf et al., 2005)。さらにより高い凝固活性をもつさらなる例示的なFIX点変異体又はドメイン交換変異体が記載されている。FVII由来のEGF-1ドメインで置換されたEGF-1ドメインを、単独で又はR338A点変異と併せてもつFIX(Brunetti-Pierri et al., 2009)、V86A/E277A/R338A三重変異体(Lin et al., 2010)、Y259F、K265T、及び/又はY345Tの単一、二重、又は三重変異体(Milanov, et al., 2012)、G190V点変異体(Kao et al., 2010)。すべて参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましい実施形態では、FIX変異体はSimioniらが2009年に記載したものであり、「第IX因子Padua」変異体と呼ばれ、X連鎖血栓形成傾向を引き起こす。前記変異体第IX因子は過剰活性であり、R338Lアミノ酸置換を有する。本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載の核酸発現カセット及び発現ベクターで使用されるFIX導入遺伝子は、ヒトFIXタンパク質をコードし、最も好ましくは、FIX導入遺伝子はヒトFIXタンパク質のPadua変異体をコードする。したがって、本発明の特に好ましい実施形態では
、導入遺伝子は配列番号11(すなわち、ヒトFIXタンパク質のPadua変異体をコードするコドンを最適化導入遺伝子)を有する。
【0094】
「凝固第VIII因子」という用語は、当該技術分野で公知の意味を有する。凝固第VIII因子の類義語は、「FVIII」又は「抗血友病因子」又は「AHF」であり、本明細書において互いに交換可能に使用することができる。「凝固第VIII因子」という用語は、例えばUniprot受託番号P00451に記載のアミノ酸配列を有するヒトタンパク質を包含する。
【0095】
実施形態では、前記FVIIIは、Bドメインが欠損しているFVIIIである(すなわちBドメイン欠損FVIII、本明細書では、BDD FVIII又はFVIIIΔB
又はFVIIIデルタBとも呼ばれる)。「Bドメイン欠損FVIII」という用語は、例えば、Bドメインの全体又は一部が欠損しているFVIII変異体及びBドメインがリンカーによって置換されているFVIII変異体を包含するが、これらに限定されない。Bドメイン欠損FVIIIの非限定的な例は、Ward et al. (2011)及び国際公開第2011/005968号に記載され、これらの文献は参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【0096】
好ましい実施形態では、前記FVIIIはBドメイン欠損FVIIIであり、そのBドメインは、SFSQNPPVLTRHQR(配列番号15)(すなわちWard et al. (2011))で画定されたSQ FVIII)という配列を有するリンカーで置換されている。特に好ましい実施形態では、FVIIIをコードする前記導入遺伝子は、国際公開第2011/005968号ども開示されているように、配列番号16を有する(すなわち、本明細書では(h)FVIIIcopt又はco(h)FVIIIデルタB又はco(h)FVIIIデルタB導入遺伝子とも呼ばれるBドメイン欠損ヒトFVIIIをコードするコドン最適化導入遺伝子)。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は凝固因子IX(FIX)コードし、好ましくは、前記凝固因子FIXには活性亢進性変異が入っており、より好ましくは、前記活性亢進性変異はR338Lアミノ酸置換にあたり、さらにより好ましくは、前記導入遺伝子は配列番号11に定められる核酸配列を有する凝固因子IXをコードする。
【0098】
特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は凝固第VIII因子(FVIII)をコードし、好ましくは、前記導入遺伝子はコドン最適化凝固因子FVIIIである、又は、前記凝固第VIII因子はBドメインの欠損を有し、好ましくは、前記FVIIIの前記Bドメインは配列番号15に定められるリンカーで置換され、より好ましくは、前記導入遺伝子は、配列番号16に定められる核酸配列を有する凝固第VIII因子をコードする。
【0099】
本明細書で使用される「凝固因子VII」という用語は、当該技術分野で公知の意味を有する。凝固因子VIIの類義語は「FVII」であり、本明細書において互いに交換可能に使用することができる。「凝固因子VII」という用語は、例えばUniprot受託番号P08709に記載のアミノ酸配列を有するヒトタンパク質を包含する。典型的には、凝固FVIIは、例えば配列番号30に定められるアミノ酸配列の152位のアミノ酸残基(アルギニン)と163位のアミノ酸残基(イソロイシン)との間の単一のペプチド結合のタンパク質分解によって、2つのポリペプチド鎖、例えば配列番号31に定められるアミノ酸配列のN末端軽鎖及び例えば配列番号32に定められるアミノ酸配列C末端重鎖の形成をもたらし、1つのジスルフィド架橋によって一緒に保持されることよって活性型「FVIIa」に変換される。凝固因子VIIタンパク質又は凝固因子VIIaタン
パク質とアルブミンの融合が、FVII又はFVIIaタンパク質の半減期を有意に延ばすことが以前に示された(Schulte, 2008、Negrier, 2016、Herzog et al., 2014、Zollner et al., 2014、Metzner et al, 2013、Golor et al., 2013)。
【0100】
特定の実施形態では、本願明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は、凝固因子VIIをコードし、好ましくは、FVIIをコードする前記導入遺伝子はコドン最適化される。本明細書で使用される「凝固因子VII」という用語は、例えば配列番号31に定められる軽鎖及び例えば配列番号32に定められる凝固因子VIIの重鎖を含むポリペプチド又はタンパク質を指す。活性化されると、前記軽鎖及び重鎖はジスルフィド架橋によって互いに結合される(すなわち、結果として「活性化された凝固第VII因子」又は「FVIIa」がもたらされる)。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は、凝固第VII因子の軽鎖及び重鎖をコードし、好ましくは、凝固第VII因子の軽鎖及び重鎖は、1つ又は複数の切断可能なポリペプチド又はペプチドリンカーによって互いに隔てられている。
【0101】
特定の実施形態では、1つ又は複数の切断可能なポリペプチド又はペプチドリンカーは、以前にMargaritis et al., 2004によって記載されたように、少なくともアミノ酸配列RKRRKR(配列番号33)、RKR又はPRPSRKRR(配列番号35)、好ましくはRKRRKR(配列番号33)を含む。
【0102】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は、配列番号31に定められる第VII因子の軽鎖、配列番号32に定められる重鎖、及び配列番号33に定められる配列を含む1つ又は複数の切断可能なポリペプチド又はペプチドリンカーをコードする。より好ましい実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は、配列番号34に定められるアミノ酸配列をコードする。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列の5’末端(すなわち上流)に位置する。
【0104】
特定の実施形態では、導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドと、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列によってコードされるヒトアルブミンは、例えばインフレームのポリペプチド又はペプチドリンカーによって物理的又は空間的に隔てられていてもよい。
【0105】
したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、発現カセット及びベクター中の前記導入遺伝子は、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列から1つ又は複数のポリペプチド又はペプチドリンカーをコードする核酸配列によって隔てられている。
【0106】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、他の要素を連結する機能を果たす連結要素を指す。好ましくは、導入遺伝子と、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列との間の連鎖は、加水分解的に安定な連鎖、すなわち、特に生理的条件下を含む、実用的なpH値におけて水中で実質的に安定な連鎖でことができ、好ましくはそこにおいて、前記導入遺伝子はコドン最適化導入遺伝子である。
【0107】
特定の実施形態では、リンカーは1つ又は複数のアミノ酸のペプチドリンカーである。
より具体的に、ペプチドリンカーは、1~50アミノ酸長又は2~50アミノ酸長又は1~45アミノ酸長又は2~45アミノ酸長、好ましくは1~40アミノ酸長又は2~40アミノ酸長又は1~35アミノ酸長又は2~35アミノ酸長、より好ましくは1~30アミノ酸長又は2~30アミノ酸長であることができる。さらに好ましくは、リンカーは5~25アミノ酸長又は5~20アミノ酸長であることができる。特に好ましくは、リンカーは5~15アミノ酸長又は7~15アミノ酸長であることができる。したがって、ある実施形態では、リンカーは、1、2、3又は4アミノ酸長であることができる。他の実施形態では、リンカーは、5、6、7、8又は9アミノ酸長であることができる。さらなる実施形態では、リンカーは、10、11、12、13又は14アミノ酸長であることができる。さらに他の実施形態では、リンカーは、15、16、17、18又は19アミノ酸長であることができる。さらなる実施形態では、リンカーは、20、21、22、23、24又は25アミノ酸長であることができる。
【0108】
リンカーを構成するアミノ酸の性質は、リンカーによって連結されたポリペプチド断片の生物学的活性が実質的に損なわれない限り、特に関連性がなく、リンカーは導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドと、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列によってコードされるヒトアルブミンの意図した空間的分離をもたらし、好ましくはそこにおいて、前記導入遺伝子はコドン最適化導入遺伝子である。好ましいリンカーは実質的に免疫原性がない。
【0109】
ある好ましい実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、トレオニン(T)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなることができる。さらにより好ましい実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなることができる。そのようなリンカーは、特に良好な柔軟性を与える。ある実施形態では、リンカーはグリシン残基のみで構成されていてもよい。ある実施形態では、リンカーは、セリン残基のみから構成されていてもよい。例えば、ポリペプチド又はペプチドリンカーは、アミノ酸配列SSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGS(配列番号17)又はその断片を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる。
【0110】
特定の実施形態では、導入遺伝子が本明細書の他の箇所に記載の凝固第VII因子(又は因子FVIIa)の軽鎖及び重鎖をコードする場合、アルブミンと凝固第VII因子の軽鎖及び重鎖との間のリンカーは、好ましくは配列番号17に定められるリンカーである。
【0111】
特定の実施形態では、ポリペプチド又はペプチドリンカーは切断可能なリンカーである。
【0112】
本明細書で使用される「切断可能な」という用語は(「生分解性の」と呼ばれることもある)、分割(split)又は分割される(divided)能力、より具体的には複雑な分子をより単純な分子に分割する能力を指す。タンパク質分解は、タンパク質をより小さなポリペプチド又はアミノ酸に分解することである。典型的には、タンパク質分解は、プロテアーゼと呼ばれる細胞酵素によって触媒される。低pH又は高温も、酵素を必要とせずにタンパク質分解を引き起こしうる。本発明による融合タンパク質のインビボでの分解は、導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドの放出をもたらし、続いて対象領域においてその生物学的効果を誘導することができる。
【0113】
特定の実施形態では、ポリペプチド又はペプチドリンカーは、導入遺伝子によってコードされる特定のタンパク質の活性化に特異的である1つ又は複数のプロテアーゼによって
切断可能であり、好ましくはそこにおいて、そのタンパク質は、本明細書の他の箇所に記載の分泌可能な治療用タンパク質である。
【0114】
特定の実施形態では、例えば、導入遺伝子がFIXである場合、ポリペプチド又はペプチドリンカーは、野生型FIXも活性化する1つ又は複数のプロテアーゼによって切断可能である。より特定の(particular more)実施形態では、導入遺伝子がFIXである場合、ポリペプチド又はペプチドリンカーは、FIX軽鎖のC末端及びFIX活性化ペプチドのN末端から構成される切断部位に由来し、Metzner et al., 2009に記載のように、FIXを活性化するのと並行してヒトアルブミンを除去して、特異度活性を増加させることができる。より特定の実施形態では、導入遺伝子がFIXである場合、ポリペプチド又はペプチドリンカーは、アミノ酸配列SVSQTSKLTRAETVFPDVDGS(配列番号18)又はその断片を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる。配列番号18に定められるアミノ酸配列からなるポリペプチド又はペプチドリンカーは、配列番号29に定められる配列によってコードされうる。
【0115】
核酸分子の特定の実施形態では、前記導入遺伝子は、配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列から、配列番号29に定められる配列又は前記配列と、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば96%や、97%、98%、99%などの同一性を有する配列又はその機能的断片によって隔てられている。
【0116】
さらなる態様は、本明細書で教示される核酸分子によってコードされる融合タンパク質を提供する。典型的には、本明細書で教示される融合タンパク質は、任意選択で、1つ又は複数のポリペプチド又はペプチドリンカーによって結合される、アルブミン並びに導入遺伝子(又は導入遺伝子及びcoAlb)を含む。
【0117】
さらなる態様は、誘導遺伝子の遺伝子発現を増強するため、かつ/又は導入遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはポリペプチドのレベル及び/若しくは活性を増加させるための核酸発現カセットを提供する。より具体的には、本明細書で提供されるのは、プロモーターに動作可能に連結された本明細書で教示される核酸分子を含む核酸発現カセットである。
【0118】
本明細書で使用される場合、「核酸発現カセット」という用語は、1つ又は複数の所望の細胞型、組織又は器官における(導入)遺伝子発現を導く1つ又は複数の転写調節エレメント(限定されないが、プロモーター、エンハンサー及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列、並びにイントロンなど)を含む核酸分子を指す。典型的には、本明細書に記載の核酸発現カセットは、本明細書で教示される核酸分子を含むことになる。
【0119】
本明細書で使用される「動作可能に連結された」という用語は、さまざまな核酸分子要素が機能的に連結され、かつ互いに相互作用することができるように、それらの核酸分子要素のそれぞれに対する配置を指す。そのような要素としては、プロモーター、エンハンサー及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列、1つ又は複数のイントロン及び/又はエクソン、並びに発現される目的の遺伝子(すなわち導入遺伝子)のコード配列又は発現される目的の融合遺伝子(例えば、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子)のコード配列を挙げることができるが、これらに限定されない。核酸配列要素は、適切に配向された、又は機能的に連結された場合、一緒に作用して互いの活性を調節し、最終的には導入遺伝子の発現レベルに影響を及ぼしうる。調節とは、特定の要素の活性レベルを増加させる、減少させる、又は維持することを意味する。他の要素に対する各要素の位置は、各要素の5’末端及び3’末端に基づいて表すことができ、任意の特定の要素間の距離は、要素間に
あるヌクレオチド又は塩基対の数によって参照することができる。
【0120】
本出願で使用される場合、「プロモーター」という用語は、直接的又は間接的のいずれかで、それが動作可能に連結された対応する核酸コード配列(例えば導入遺伝子又は内在性遺伝子)の転写を調節する核酸配列を指す。プロモーターは、転写を調節するために単独で機能することもでき、1つ若しくは複数の他の調節配列(例えばエンハンサーやサイレンサー)と協調して作用することもできる。本出願の文脈では、典型的には、プロモーターは調節エレメントに動作可能に連結されて、導入遺伝子及び/又は融合遺伝子の転写を調節する。プロモーターは、相同(すなわち、核酸発現カセットでトランスフェクションされる動物、特に哺乳動物と同じ種に由来)であっても、異種(すなわち、発現カセットでトランスフェクトされる動物、特に哺乳動物の種以外の供給源に由来)であってもよい。したがって、プロモーターの供給源は、いずれのウイルス、いずれの単細胞原核生物若しくは真核生物、いずれの脊椎動物若しくは無脊椎動物生物、又はいずれの植物であってもよくでもよく、合成プロモーター(すなわち、非天然に存在する配列を有する)であってもよい。ただし、プロモーターが本明細書に記載の調節エレメントと組み合わせて機能することを条件とする。好ましい態様では、プロモーターは、哺乳動物プロモーター、特にマウス又はヒトプロモーターである。プロモーターの非限定的な例としては、レトロウイルスLTRプロモーター、特に、ラウス肉腫ウイルス又はマウス白血病ウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1αプロモーターが挙げられる。
【0121】
プロモーターは、誘導性プロモーターでも構成性プロモーターでもよい。
【0122】
特定の実施形態では、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクターに含まれるプロモーターは、組織特異的プロモーターである。組織特異的プロモーターは、肝臓や、B細胞、T細胞、造血細胞、単球細胞、白血球、マクロファージ、筋肉、膵臓腺房又はベータ細胞、内皮細胞、星状細胞、ニューロン、肺などの特定の種類の細胞又は組織において活性がある。
【0123】
特定の実施形態では、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクターに含まれているプロモーターは、肝臓特異的プロモーター、好ましくは本明細書の他の箇所に記載の肝臓特異的プロモーターである。これは、肝臓特異性を増加させる、かつ/又は他の組織における発現の漏出(leakage)を回避するためである。
【0124】
「肝臓特異的プロモーター」という用語は、肝臓特異的発現を(導入)遺伝子に付与する任意のプロモーターを包含する。肝臓特異的プロモーターの非限定的な例は、肝臓特異的プロモーターデータベース(Liver Specific Gene Promoter Database)(LSPD、http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に示され、例えば、トランスサイレチン(TTR)プロモーター若しくはTTR-最小限プロモーター(TTRm)、アルファ1-アンチトリプシン(AAT)プロモーター、アルブミン(ALB)プロモーター若しくは最小限プロモーター、アポリポタンパク質A1(APOA1)プロモーター若しくは最小限プロモーター、補体因子B(CFB)プロモーター、ケトヘキソキナーゼ(KHK)プロモーター、ヘモペキシン(HPX)プロモーター若しくは最小限プロモーター、ニコチンアミドN-メチルトランスフェラーゼ(NNMT)プロモーター若しくは最小限プロモーター、(肝臓)カルボキシルエステラーゼ1(CES1)プロモーター若しくは最小限プロモーター、プロテインC(PROC)プロモーター若しくは最小限プロモーター、アポリポタンパク質C3(APOC3)プロモーター若しくは最小限プロモーター、マンナン結合レクチンセリンプロテアーゼ2(MASP2)プロモーター若しくは最小限プロモーター、ヘプシジン抗菌ペプチド(HAMP)プロモーター若しくは最小限プロモーター、及びセルピン
ペプチダーゼ阻害剤、クレードC(アンチトロンビン)、メンバー1(SERPINC1)プロモーター若しくは最小限プロモーターが挙げられる。
【0125】
本出願で使用される「肝臓特異的発現」という用語は、他の(すなわち肝臓以外の)組織又は細胞と比較して、肝臓、肝組織又は肝臓細胞における(導入)遺伝子の優先的又は優占的(RNA及び/又はポリペプチドとしての)発現を指す。特定の実施形態よれば、(導入)遺伝子発現の少なくとも50%、より具体的には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%が、肝組織又は肝臓細胞内で起こる。特定の実施形態によれば、肝臓特異的発現は、脾臓、筋肉、心臓及び/又は肺などの他の器官への発現遺伝子産物の「漏出」がないことを意味する。同じことが、必要な変更を加えて、肝臓特異的発現の特別な形態と考えられうる肝細胞特異的発現及び肝芽細胞特異的発現にも当てはまる。本出願全体を通して、肝臓特異的が発現の文脈で言及される場合、肝細胞特異的発現及び肝芽細胞特異的発現もまた明確に想定される。
【0126】
本明細書で使用される場合、「肝臓細胞」という用語は、主に肝臓に集まっている細胞を包含し、主として肝細胞、卵形細胞、肝類洞壁内皮細胞(LSEC)及び胆管細胞(胆管を形成する上皮細胞)を包含する。
【0127】
本明細書で使用される「肝細胞」という用語は、適切な条件下で肝臓特異的表現型を発現することができるように、前駆肝芽細胞から分化した細胞を指す。「肝細胞」という用語はまた、脱分化した肝細胞も指す。この用語には、そのような細胞が初代細胞であるか継代細胞であるかに関係なく、インビボでの細胞及びエクスビボで培養された細胞が含まれる。
【0128】
本明細書で使用される「肝芽細胞」という用語は、分化して肝細胞、オーバル細胞、又は胆管細胞を生じる中胚葉の胚細胞を指す。この用語には、そのような細胞が初代細胞であるか継代細胞であるかに関係なく、インビボでの細胞及びエクスビボで培養された細胞が含まれる。
【0129】
特に好ましい実施形態では、プロモーターは、哺乳類の肝臓特異的プロモーター、特に、ネズミ又はヒトの肝臓特異的プロモーターである。
【0130】
さらなる特定の実施形態によれば、肝臓特異的プロモーターは、トランスサイレチン(TTR)遺伝子に由来する、又はアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)遺伝子に由来する。さらにさらなる特定の実施形態によれば、TTRプロモーターは最小限プロモーター(本明細書においてTTRm又はTTRminとも呼ばれる)であり、最も具体的には配列番号19に定められる最小限TTRプロモーターである。
【0131】
特定の実施形態よれば、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクター中のプロモーターは、最小限プロモーターである。
【0132】
本明細書で使用される「最小限プロモーター」は、依然として発現を進める能力があるが、(例えば組織特異的)発現の調節に寄与する配列の少なくとも一部を欠いているフルサイズのプロモーターの一部である。この定義は、遺伝子の発現を駆動する能力はあるが、その遺伝子を組織特異的に発現する能力を失っている、(組織特異的な)調節エレメントが欠損しているプロモーターと、遺伝子の発現を駆動する(おそらく減少させる)能力があるが、その遺伝子を組織特異的に発現する能力を必ずしも失っていない、(組織特異的な)調節エレメントが欠損しているプロモーターの両方を含む。最小限プロモーターは、当該技術分野において広範に文書で記述されており、最小限プロモーターの非限定的な
リストが本明細書で示されている。
【0133】
他の配列(例えばイントロン及び/又はポリアデニル化配列)も、典型的には導入遺伝子及び/又は融合遺伝子産物の発現をさらに増加又は安定化させるために、本明細書で開示される核酸発現カセットに組み込まれうる。
【0134】
いずれのイントロンも、本明細書に記載の発現カセットで利用することができる。「イントロン」という用語は、核のスプライシング装置によって認識及びスプライシングされるのに十分に大きいイントロン全体の任意の部分を包含する。典型的には、発現カセットの構築及び操作を容易にする発現カセットのサイズを可能な限り小さく保つために、短い機能的なイントロン配列が好ましい。いくつかの実施形態では、イントロンは、発現カセット内のコード配列によってコードされるタンパク質をコードする遺伝子から得られる。イントロンは、コード配列に対して5’、コード配列に対して3’、又はコード配列内に位置しうる。イントロンがコード配列に対して5’にある利点は、イントロンがポリアデニル化シグナルの機能を妨害する可能性を最小限にすることである。実施形態では、本明細書で開示される核酸発現カセットは、イントロンをさらに含む。好適なイントロンの非限定的な例は、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、ベータ-グロビンイントロン(ベータIVS-II)、第IX因子(FIX)イントロンA、シミアンウイルス40(SV40)スモール-tイントロン、及びベータ-アクチンイントロンである。好ましくは、イントロンはMVMイントロンであり、より好ましくは配列番号20に定められるMVMミニ-イントロンである。本明細書に記載の核酸発現カセットへのMVMイントロンのクローニングは、それに動作可能に連結された導入遺伝子の予想外に高い発現レベルをもたらすことが示された。
【0135】
したがって、特定の実施形態では、核酸発現カセットは、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、好ましくは配列番号20に定められるMVMイントロンを含む。
【0136】
ポリAテールの合成を導く任意のポリアデニル化シグナルは、本明細書に記載の発現カセットにおいて有用であり、それらの例は当業者に周知である。例示的なポリアデニル化シグナルとしては、シミアンウイルス40(SV40)後期遺伝子、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、最小限ウサギβ-グロビン(mRBG)遺伝子、及びLevitt et al.(1989, Genes Dev 3:1019-1025)に記載の合成ポリA(SPA)部位に由来するポリA配列(配列番号21)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル(配列番号22)又はシミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナル(配列番号23)である。
【0137】
したがって、特定の実施形態では、核酸発現カセットは、転写終結シグナル、好ましくはポリアデニル化シグナル、より好ましくは合成ポリアデニル化シグナル(配列番号21)又はシミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナル(配列番号23)を含む。
【0138】
典型的には、本発明による核酸発現カセットは、プロモーター、エンハンサー、本明細書で教示される核酸分子(例えば導入遺伝子と、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列とを含む融合遺伝子)及び転写ターミネーターを含む。
【0139】
特定の実施形態では、本明細書で教示される核酸発現カセットは、プロモーターに動作可能に連結された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5又は6つ、好ましくは3つの(タンデム)リピートなど)の核酸調節エレメント、及び配列番号14に定められる
前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含む。
【0140】
特定の実施形態では、本明細書で教示される核酸発現カセットは、プロモーターに動作可能に連結された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5又は6つ、好ましくは3つの(タンデム)リピートなど)の組織特異的核酸調節エレメント及び配列番号14に定められる前記配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含み、好ましくは、その少なくとも1つの組織特異的核酸調節エレメントは、プロモーター及び導入遺伝子に動作可能に連結された肝臓特異的核酸調節エレメントである。
【0141】
本明細書で使用される「調節エレメント」は、遺伝子の転写、特に遺伝子の組織特異的な転写を調節及び/又は制御することができる転写調節エレメント、特にノンコーディングシス作用性転写調節エレメントを指す。調節エレメントは、少なくとも1つの転写因子結合部位(TFBS)、より具体的には、肝臓特異的転写因子に対する少なくとも1つの結合部位などの組織特異的転写因子に対する少なくとも1つの結合部位を含む。典型的には、本明細書で使用される調節エレメントは、調節エレメントなしで、プロモーター単独からの遺伝子の転写と比較したとき、プロモーター駆動遺伝子発現を増加させる又は増強する。したがって、調節エレメントは特にエンハンサー配列を含むが、転写を増強する調節エレメントは、典型的な遥か上流のエンハンサー配列に限定されず、それらが調節する遺伝子のいずれの距離にも存在しうることが理解されるべきである。実際、転写を調節する配列は、それらがインビボで調節する遺伝子の上流(例えばプロモーター領域)又は下流(例えば3’UTR)のいずれかに位置でき、遺伝子のすぐ近く又はより離れたところに位置できることが当技術分野で公知である。注目すべきは、典型的には本明細書で開示される調節エレメントは、天然に存在する配列であるが、そのような調節エレメント(の一部)又は調節エレメントのいくつかのコピーの組み合わせ、すなわち天然に存在しない配列も、それ自体が調節エレメントとして想定されることである。本明細書で使用される調節エレメントは、転写調節に関与するより大きな配列の一部、例えばプロモーター配列の一部であってもよい。しかし典型的には、調節因子は単独で転写を開始するのに十分ではなく、その転写開始のためにはプロモーターを要する。
【0142】
本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクターに含まれる1つ又は複数の調節エレメントは、好ましくは、細胞又は組織特異的であり、例えば、肝臓や、B細胞、T細胞、造血細胞、単球細胞、白血球、マクロファージ、筋肉(例えば国際公開第2015/110449号で開示されている調節エレメント、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、横隔膜(例えば国際公開第2018/178067号で開示されている調節エレメント、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、膵臓の腺房細胞やベータ細胞、内皮細胞(例えば国際公開第2017/109039号で開示されている調節エレメント、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、アストロサイト、ニューロン、肺に特異的である。
【0143】
特定の実施形態では、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクターに含まれる1つ又は複数の調節エレメントは肝臓特異的である。肝臓特異的調節エレメントの非限定的な例は、国際公開第2009/130208号及び/又は国際公開第2016/146757号で開示されている。これらの文献は本明細書に参照により具体的に組み込まれる。肝臓特異的調節エレメントの別の例は、配列番号24に定められ、本明細書では「TTRe」又は「TTREnh」(Wu et al., 2008)とも呼ばれる調節エレメントなどのトランスサイレチン(TTR)遺伝子に由来する調節エレメントである。本出願で使用される「肝臓特異的発現」は、他の組織と比較して肝臓における(導入)遺伝子(RNA及び/又はポリペプチドとして)の優先的又は優占的な発現を指す。特定の実施形態よれば、
(導入)遺伝子発現の少なくとも50%が肝臓内で起こる。より特定の実施形態よれば、(導入)遺伝子発現の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は100%が肝臓内で起こる。特定の実施形態によれば、肝臓特異的発現は、脾臓、筋肉、心臓及び/又は肺などの他の器官への発現遺伝子産物の「漏出」がないことを意味する。同じことが、必要な変更を加えて、肝臓特異的発現の特別な形態と考えられうる肝細胞特異的発現にも当てはまる。本出願全体を通して、肝臓特異的が発現の文脈で言及される場合、肝細胞特異的発現もまた明らかに想定される。同様に、組織特異的発現が本出願で使用される場合、組織を主に構成する細胞型の細胞型特異的発現もまた想定される。
【0144】
好ましくは、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクター中の1つ又は複数の調節エレメントは、限られた長さしかないが、十分に機能的である。これにより、それらのペイロード容量(payload capacity)を過度に制限することなく、ベクター又は核酸発現カセットにおける調節エレメントの使用が可能になる。したがって、実施形態では、本明細書で開示される発現カセット及びベクター中の1つ又は複数の調節エレメントは、1000ヌクレオチド以下、800ヌクレオチド以下、600ヌクレオチド以下、好ましくは400ヌクレオチド以下、例えば300ヌクレオチド以下、200ヌクレオチド以下、150ヌクレオチド以下、又は100ヌクレオチド以下の核酸である(すなわち、核酸調節エレメントは、1000ヌクレオチド、800ヌクレオチド、600ヌクレオチド、400ヌクレオチド、300ヌクレオチド、200ヌクレオチド、150ヌクレオチド、又は100ヌクレオチドの最大長を有する)。しかし、開示される核酸調節エレメントは、調節活性(転写の特異性及び/又は活性に関して)を保持し、したがって具体的には、20ヌクレオチド、25ヌクレオチド、30ヌクレオチド、35ヌクレオチド、40ヌクレオチド、45ヌクレオチド、50ヌクレオチド、55ヌクレオチド、60ヌクレオチド、65ヌクレオチド、又は70ヌクレオチドの最小長を有することが理解されるべきである。
【0145】
好ましい実施形態では、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクター中の1つ又は複数の調節エレメントは、SERPINA1調節エレメント、すなわちインビボでSERPINA1遺伝子の発現を調節する調節エレメントからの配列を含む。好ましくは、前記調節エレメントは、配列番号25に定められる配列、前記配列と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列、又はその機能的断片を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる。また、好ましくは、前記調節エレメントは、150ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下の最大長を有し、配列番号25に定められる配列、前記配列と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列、又はその機能的断片を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる。配列番号25からなる肝臓特異的核酸調節エレメントは、本明細書では「セルピンエンハンサー」、「SerpEnh」、又は「Serp」と呼ばれる。
【0146】
本出願で使用される「機能的断片」という用語は、肝臓特異的発現を調節する能力を保持する本明細書で開示される配列の断片を指し、すなわちそれらの断片は依然として組織特異性を付与し、それらが由来する配列と同じ方法で(同じ程度ではない可能性はあるが)(導入)遺伝子の発現を調節する能力を有する。断片は、それが由来する配列の少なくとも10個の連続的なヌクレオチドを含む。さらなる特定の実施形態では、断片は、それが由来する配列の少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個又は少なくとも40個の連続的なヌクレオチドを含む。また、好ましくは、機能的断片は、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、少なくと
も3つ、又は少なくとも4つ、さらにより好ましくは少なくとも5つ、少なくとも10個、又は少なくとも15個の、その断片が由来する配列に存在する転写因子結合部位(TFBS)含むことができる。
【0147】
特に好ましい実施形態では、本明細書で開示される核酸発現カセット及びベクターは、配列番号25、又は前記配列と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含む、本質的にそれからなる又はそれからなる肝臓特異的調節エレメントの、より好ましくは、配列番号25、又は前記配列と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含む、本質的にそれからなる又はそれからなる150ヌクレオチド以下、好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは80ヌクレオチド以下の肝臓特異的調節エレメントの2つ、3つ、4つ、5つ又は6つなどの2つ以上、好ましくは3つの(タンデム)リピートを含む。配列番号25の3つのタンデムリピート含む好ましい核酸調節エレメントは、本明細書にでは「3×Serp」と呼ばれ、配列番号26に定められている。
【0148】
より特定の実施形態では、本明細書で教示される核酸発現カセットは、少なくとも1つの肝臓特異的核酸調節エレメントを含み、その少なくとも1つの肝臓特異的核酸調節エレメントは、配列番号25に定められるセルピンエンハンサー又は前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列からなる。さらにより特定の実施形態よれば、本明細書で教示される核酸発現カセットは、配列番号25に定められるセルピンエンハンサー又は前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列のトリプルリピート、好ましくはタンデムに配置されたリピートを含む。
【0149】
本明細書に記載の調節エレメントが、プロモーターと導入遺伝子の両方及び/又は融合遺伝子に動作可能に連結された場合、調節エレメントは、(1)インビボ(及び/若しくはインビトロの肝細胞/肝細胞株(hepatic cell lines))での導入遺伝子及び/若しくは融合遺伝子のかなりの程度の肝臓特異的発現を付与することができる、かつ/又は(2)肝臓(及び/若しくはインビトロの肝細胞/肝細胞株(hepatocyte cell lines))での導入遺伝子及び/若しくは融合遺伝子の発現のレベルを増加させることができる。
【0150】
本発明の典型的な実施形態では、核酸発現カセットが開示され、以下を含む。
肝臓特異的核酸調節エレメント、好ましくはセルピンエンハンサー(例えば配列番号25)の1つ又は3つのタンデムリピートを含む調節エレメント、
肝臓特異的プロモーター、好ましくは(例えば配列番号19に定められる)TTRmプロモーター、
イントロン、好ましくは例えば配列番号20に定められるMVMイントロン、及び
(導入)遺伝子、好ましくはFIX、より好ましくは配列番号9に定められるコドン最適化第IX因子cDNA、さらにより好ましくは配列番号11に定められるhFIXcoPadua、
1つ若しくは複数のポリペプチド又はペプチドリンカーをコードする、好ましくは配列番号18に定められるペプチドリンカーをコードする核酸配列、
配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列、及び
転写ターミネーター、好ましくは配列番号23に定められるシミアン空胞形成ウイルス40又はシミアンウイルス40(SV40)のポリアデニル化シグナルや配列番号21に定められる合成ポリA部位などのポリアデニル化シグナル。
【0151】
非限定的な例として、そのようなベクターは、配列番号2、配列番号3、配列番号6又
は配列番号8、好ましくは配列番号3、配列番号6又は配列番号8、より好ましくは配列番号6又は配列番号8、さらにより好ましくは配列番号8に定められる。
【0152】
本明細書で開示される発現カセットは、それ自体で使用してもよく、典型的には、核酸ベクターの一部であってもよい。したがって、さらなる態様は、ベクター、特に核酸ベクターにおける本発明に記載の核酸発現カセットの使用に関する。
【0153】
さらなる態様は、本明細書で教示される核酸発現カセットを含むベクターを提供し、好ましくは、前記ベクターはウイルスベクターであり、より好ましくは、前記ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来する。
【0154】
本出願で使用される「ベクター」という用語は、限定されないがcDNA分子など、別の核酸分子(挿入核酸分子)をその中に挿入できる一本鎖又は二本鎖のDNAの核酸分子を指す。ベクターは、挿入核酸分子を好適な宿主細胞に輸送するために使用される。ベクターは、挿入核酸分子を転写すること及び任意選択で転写物をポリペプチドに翻訳することを可能にする必要なエレメントを含むことができる。挿入核酸分子は、宿主細胞に由来してもよく、異なる細胞又は生物に由来してもよい。ベクターは、いったん宿主細胞内に入ると、宿主の染色体DNAとは独立して、又は宿主の染色体DNAと同時に複製することができ、ベクター及びその挿入核酸分子のいくつかのコピーが生成されうる。
【0155】
したがって、「ベクター」という用語はまた、標的細胞への遺伝子導入を容易にする遺伝子送達媒体と定義することもできる。この定義には、非ウイルスベクターとウイルスベクターの両方が含まれる。非ウイルスベクターとしては、カチオン性脂質、リポソーム、ナノ粒子、PEG、PEIなどが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターはウイルスに由来し、例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、遺伝子送達系は、ナノ粒子とビロソーム(Yamada et al., 2003)など、ウイルス成分と非ウイルス成分を組み合わせるように使用することもできる。
【0156】
典型的には、必ずしもそうではないが、ウイルスベクターは、複製に必須のウイルス遺伝子がウイルスベクターから取り除かれているため、所与の細胞で増殖する能力を失っているので、複製能を欠いている。しかし、一部のウイルスベクターは、例えばがん細胞などの所与の細胞で特異的に複製するように適合させることもでき、典型的には、(がん)細胞特異的(腫瘍)溶解((onco)lysis)を誘発するために使用される。好ましいベクターは、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス及びレンチウイルスに由来する。
【0157】
レトロウイルス及びレンチウイルスは、感染後に、それらの遺伝子を宿主細胞の染色体に挿入する能力を有するRNAウイルスである。ウイルスタンパク質をコードする遺伝子を欠いているが、細胞に感染し、それらの遺伝子を標的細胞の染色体に挿入する能力は保持しているレトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターが開発されている(Miller, 1990、Naldini et al., 1996、VandenDriessche et al., 1999)。レンチウイルスベクターと、古典的なモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)をベースとするレトロウイルスベクターとの違いは、レンチウイルスベクターは分裂細胞と非分裂細胞の両方を形質導入できるのに対して、MLVをベースとするレトロウイルスベクターは分裂細胞しか形質導入できないことである。
【0158】
アデノウイルスベクターは、生きている対象に直接投与されるように設計される。レトロウイルスベクターと違って、アデノウイルスベクターゲノムの大部分は宿主細胞の染色体に組み込まれない。その代わり、アデノウイルスベクターを用いて細胞に導入された遺
伝子は、長期間存続する染色体外要素(エピソーム)として核内に維持される。アデノウイルスベクターは、インビボで、気道上皮細胞、内皮細胞、肝細胞及びさまざまな腫瘍を含む多くの異なる組織の分裂細胞及び非分裂細胞を形質導入する(Trapnell, 1993、Chuah et al., 2003)。別のウイルスベクターは、大型の二本鎖DNAウイルスである単純ヘルペスウイルスに由来する。別のdsDNAウイルスであるワクシニアウイルスの組換え形態は、大きな挿入断片を収容でき、相同組換えによって作製される。
【0159】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト及び一部の他の霊長類に感染する小さいssDNAウイルスで、疾患を引き起こすことは知られておらず、結果的に非常に穏やかな免疫反応しか起こさない。AAVは、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。これらの特徴により、AAVは、遺伝子治療用ウイルスベクターを作製するための非常に魅力的な候補となっているが、ベクターのクローニング能力は比較的限られている。したがって、本発明の好ましい実施形態では、使用されるベクターは、アデノ随伴ウイルス(すなわちAAVベクター)に由来する。
【0160】
AAVの異なる血清型、例えばAAV血清型2、AAV血清型5、AAV血清型8、及びAAV血清型9などが単離され、特徴付けられており、本明細書ではすべてのAAV血清型が企図される。特に、本明細書で開示されるFIX導入遺伝子を含むAAVベクターは好ましくはAAV血清型9ベクターであり、本明細書で開示されるFVIII導入遺伝子を含むAAVベクターは好ましくはAAV血清型8ベクターである。AAVベクターはまた、抗AAV抗体による指向性又は中和に影響を及ぼすように改変されているカプシドを含む天然ベクターに由来するAAVベクターなど、非天然AAVベクターであってもよい。
【0161】
本明細書で開示されるAAVベクターは、一本鎖(すなわちssAAVベクター)であっても、自己相補的(すなわちscAAVベクター)であってもよい。特に、本明細書で開示されるFIX導入遺伝子を含むAAVベクターは、好ましくは自己相補的であり、本明細書で開示されるFVIII導入遺伝子を含むAAVベクターは、好ましくは一本鎖である。「自己相補的AAV」という用語は、本明細書において、コーディング領域が分子内二本鎖DNAテンプレートを形成するように設計されている組換えAAV由来ベクターを意味する。
【0162】
本明細書で開示されるアデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療は、ベクターに含まれる導入遺伝子に対する免疫寛容を誘導することが示された。
【0163】
実施形態では、本発明によるベクターは以下のエレメントを含む(図3、6及び8を参照)。
逆位末端反復配列(ITR)、任意選択で変異されたもの、
肝臓特異的調節エレメント、好ましくは、セルピンエンハンサー(「Serp」又は「SerpEnh」)の1つ又は3つのタンデムリピート(例えば配列番号25で定められる核酸断片を含む調節エレメント)を含む調節エレメント、
プロモーター、好ましくは配列番号19で定められる最小限TTRプロモーター(TTRm)、
イントロン、好ましくは配列番号20に定められるMVMイントロン、
(導入)遺伝子、好ましくは配列番号9で定められるコドン最適化第IX因子cDNA、さらにより好ましくは配列番号11で定められるコドン最適化第IX因子Padua cDNA、
1つ又は複数のポリペプチド又はペプチドリンカーをコードする、好ましくは配列番号18に定められるペプチドリンカーをコードする核酸配列、
配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列、
転写ターミネーター、好ましくは、配列番号23に定められるシミアン空胞形成ウイルス40又はシミアンウイルス40(SV40)のポリアデニル化シグナルや配列番号21に定められる合成ポリA部位などのポリアデニル化シグナル、及び
逆位末端反復配列(ITR)。
【0164】
前記要素の組み合わせにより、対象の肝臓において、コドン最適化FIX又はパドヴァ変異をもつコドン最適化FIXのタンパク質レベル及び活性が予想外に高くなった一方で、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列の代わりに、野生型の非コドン最適化型のヒトアルブミンcDNAを含むベクターを使用した場合には、そのような結果は見られなかった。
【0165】
好ましくは、ベクターは、配列番号2、配列番号3、配列番号6又は配列番号8、配列番号3、配列番号6又は配列番号8、より好ましくは配列番号6又は配列番号8、さらにより好ましくは配列番号8に定められるベクターなどの、アデノ随伴ウイルス由来ベクター、より好ましくは自己相補的AAVベクター、さらにより好ましくは自己相補的AAV血清型9ベクターである。
【0166】
特定の実施形態では、前記ベクターは一本鎖AAVである。
【0167】
具体的な実施形態では、以下のプラスミド/ベクターが形成される。
pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA(配列番号2)、
pAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA(配列番号6)、
pAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA(配列番号3)、及び
pAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA(配列番号8)。
【0168】
特定の実施形態では、本明細書で教示されるベクターは、配列番号2、配列番号3、配列番号6又は配列番号8、好ましくは配列番号3、配列番号6又は配列番号8、より好ましくは配列番号6又は配列番号8、さらにより好ましくは配列番号8を有する。他の実施形態では、ベクターは、トランスポゾンをベースとするベクターなどの非ウイルスベクターである。好ましくは、前記トランスポゾンをベースとするベクターは、スリーピングビューティー(Sleeping Beauty)(SB)又はピギーバック(PiggyBac)(PB)に由来する。好ましいSBトランスポゾンは、Ivics et al. (1997)に記載されており、Mates et al. (2009)に記載のSB100Xを含むその過剰活性型である。ピギーバックをベースとするトランスポゾンは、腫瘍化のリスクを高めないという点で安全なベクターである。さらに、これらのベクターを用いた肝臓指向性遺伝子治療は、導入遺伝子、特にベクターに含まれるhFIX又はhFVIII導入遺伝子に対する免疫寛容を誘発することが示された。
【0169】
トランスポゾンをベースとするベクターは、好ましくは、遺伝子治療のためにトランスポザーゼをコードするベクターと組み合わせて投与される。例えば、ピギーバック由来のトランスポゾンをベースとするベクターは、野生型ピギーバックトランスポザーゼ(Pbase)又はマウスコドン最適化ピギーバックトランスポザーゼ(mPBase)とともに投与することができる。好ましくは、前記トランスポザーゼは、例えば、Yusa et al. (2011)に記載の7つのアミノ酸置換(I30V、S103P、G165S、M282V、
S509G、N538K、N570S)を含む過剰活性PB(hyPB)トランスポザーゼなどの過剰活性トランスポザーゼである。その文献は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0170】
トランスポゾン/トランスポザーゼコンストラクトは、ハイドロダイナミック注入によって、又は非ウイルス性ナノ粒子を用いて送達して、肝細胞などの細胞をトランスフェクションすることができる。
【0171】
さらなる態様は、核酸分子、本明細書で教示される核酸発現カセット又はベクター、並びに薬学的に許容される担体、すなわち1つ若しくは複数の薬学的に許容される担体物質及び/若しくは添加剤、例えば緩衝剤、担体、賦形剤、安定剤などを含む医薬組成物又は医薬調製物を提供する。医薬組成物は、キットの形態で提供することができる。
【0172】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、当該技術分野と一致し、医薬組成物の他の成分と混合可能であり、そのレシピエントに有害でないことを意味する。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、塩酸塩や、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、又は酢酸塩や、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの有機酸付加塩を意味する。薬学的に許容される金属塩の例は、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、及び亜鉛塩である。薬学的に許容されるアンモニウム塩の例は、アンモニウム塩及びテトラメチルアンモニウム塩である。薬学的に許容される有機アミン付加塩の例は、モルホリン及びピペリジンとの塩である。薬学的に許容されるアミノ酸付加塩の例は、リジン、グリシン、及びフェニルアラニンとの塩である。本発明による医薬組成物は、丸剤、錠剤、ラッカー錠、糖衣錠、顆粒、ハード及びソフトゼラチンカプセル、水溶液、アルコール溶液若しくは油性溶液、シロップ、エマルジョン若しくは懸濁液の形態で経口的に、又は例えば坐薬の形態で直腸に投与することができる。また投与は、例えば皮下、筋肉内又は静脈内に注射液又は輸液の形態で非経口的に実施することもできる。他の好適な投与形態は、例えば、軟膏、チンキ、スプレー若しくは経皮治療システムの形態での経皮投与若しくは局所投与、又は鼻腔スプレー若しくはエアゾール混合物の形態での吸入投与、又は例えばマイクロカプセル、インプラント又はロッド(rod)である。医薬組成物は、それ自体当業者に公知の方法で調製することができる。この目的のために、本明細書で画定される核酸発現カセット又は発現ベクター、1つ又は複数の固体又は液体の薬学的に許容される賦形剤は、所望であれば、他の医薬活性化合物と組み合わせて、のちにヒト医学又は獣医学における医薬として使用できる好適な投与形態又は投薬形態に作られる。
【0173】
別の態様によれば、本明細書で教示される配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された治療用タンパク質をコードする導入遺伝子を含む核酸分子又は本明細書で教示されるそのような核酸分子を含む核酸発現カセット、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0174】
別の実施形態によれば、医薬組成物は、本明細書で教示される配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された治療用タンパク質をコードする導入遺伝子を含む核酸分子を含む核酸発現カセットを含むベクター、及び薬学的に許容される担体を含む。さらなる特定の実施形態よれば、導入遺伝子は第IX因子をコードし、医薬組成物は血友病Bの治療用である、又は導入遺伝子は第VIII因子をコードし、医薬組成物は血友病Aの治療用である。
【0175】
さらなる態様は、導入遺伝子の遺伝子発現を増強するための、かつ/又は導入遺伝子にコードされるタンパク質若しくはポリペプチドのレベル及び/若しくは活性を増加させる
ための、本明細書で教示される核酸分子、核酸発現カセット、ベクター、医薬組成物に使用を提供し、前記使用は、インビトロ、エクスビボ又はインビボでの使用であり、好ましくは、前記使用はインビトロでの使用である。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書で教示される配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含む核酸分子によってコードされる融合タンパク質(例えば循環タンパク質又はポリペプチド)のインビトロ又はインビボでのレベルは、アルブミンへの融合なしに融合タンパク質をコードする核酸分子中に存在する同じ導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドのインビトロ又はインビボでのレベルと比較して、約2倍~約5倍高い。タンパク質又はポリペプチドのレベルは、例えば、遺伝子産物の治療的発現が達成されているかどうかを評価するために、抗体に基づくアッセイ、例えば、ウェスタンブロットやELISAアッセイなど、当該技術分野で認められているいずれかの手段によって決定することができる。また、遺伝子産物の発現は、本明細書の他の箇所に記載のように、遺伝子産物の酵素活性又は生物学的活性を検出するバイオアッセイで測定することもできる。
【0177】
特定の実施形態では、本明細書で教示される配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含む核酸分子によってコードされる融合タンパク質の活性は、アルブミンへの融合なしに融合タンパク質をコードする核酸分子中に存在する同じ導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドの活性と比較して、約1.5倍~約4倍高い。一般に、ポリペプチド又はタンパク質の「活性」への言及は、例えば細胞、組織、器官、又は生物内での、その生化学的活性、酵素活性、シグナル伝達活性、相互作用活性、リガンド活性、及び/又は構造的活性のいずれか1つ又は複数の側面など、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性のいずれか1つ又は複数の側面を包含しうるが、これらに限定されない。タンパク質又はポリペプチドの活性は、当技術分野で公知のいずれかの方法で決定することができ、タンパク質又はポリペプチドの種類及び活性の種類に依存する。例えば、タンパク質又はポリペプチドがFIXである場合、活性は発色アッセイ(HYPHEN BioMed、アンドレジー(Andresy)、フランス)を用いて決定することができる。
【0178】
特定の実施形態では、本明細書で教示される核酸分子、核酸発現カセット、ベクター及び医薬組成物は、本明細書で教示される配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子を含む核酸分子によってコードされる融合タンパク質のインビトロでの半減期(より高い定常状態タンパク質レベルによって反映されうる)及びインビボでの循環半減期(より高い定常状態タンパク質レベルによって反映されうる)を増加させ、したがって導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドの半減期も増加させる。より具体的には、本明細書で教示される融合タンパク質の定常状態レベル(及び導入遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチドの定常状態レベル)は、融合タンパク質中と同じ導入遺伝子によってコードされるがアルブミンに融合されていないタンパク質又はポリペプチドの定常状態タンパク質レベルと比較して、約1.5倍~5倍高い。タンパク質又はポリペプチドの半減期は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば薬物動態学的研究によって決定することができる。
【0179】
アルブミンを治療用タンパク質などの目的のタンパク質又はポリペプチドに遺伝子融合させることで、前記目的のタンパク質やポリペプチドの薬物動態特性が向上し、より具体的にはその半減期が長くなる。本明細書で教示される融合タンパク質は、ヒトアルブミンに融合されていないタンパク質又はポリペプチドと比較して、長時間作用する融合タンパク質と考えることができる。
【0180】
さらに、本明細書に記載の発現カセット及びベクターは、治療量の融合遺伝子産物の発現を長期間導く。典型的には、治療的発現は、少なくとも20日、少なくとも50日、少なくとも100日、少なくとも200日、少なくとも300日、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年、場合によっては10年以上続くことが想定される。さらなる態様では、本明細書に記載の核酸分子、核酸発現カセット及びベクターは、遺伝子治療に使用することができる。
【0181】
インビトロでだけでなく特にインビボでも、標的細胞における治療用遺伝子産物の発現を達成することを意図した遺伝子治療プロトコールが当該技術分野において広範に記載されている。それらのプロトコールとしては、(裸の又はリポソーム中の)プラスミドDNAの筋肉内注射、間質注射、気道への点滴注入、内皮への適用、肝実質内投与、及び静脈内又は動脈内投与(例えば肝内動脈、肝内静脈)などが挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞へのDNAの可用性を高めるために、さまざまな装置が開発されている。簡単なアプローチは、標的細胞を、DNAが入っているカテーテルや埋め込み可能な材料と物理的に接触させることである。別のアプローチは、高圧下で液体のカラムを標的組織内に直接投射する無針ジェット注入装置を利用することである。送達のこれらの実例(paradigms)はまた、ウイルスベクターを送達するためにも用いることができる。標的遺伝子送達に対する別のアプローチは、細胞への核酸の特異的標的化のために核酸結合剤又はDNA結合剤に結合されたタンパク質又は合成リガンドからなる分子結合体の使用である(Cristiano et al., 1993)。
【0182】
特定の実施形態よれば、本発明の核酸分子、核酸発現カセット及びベクターの使用は、特定の種類の細胞又は組織の遺伝子治療(例えば、肝臓(すなわち肝臓指向性遺伝子治療)、筋肉(すなわち筋肉指向性遺伝子治療)、内皮細胞(すなわち内皮特異的遺伝子治療))、好ましくは肝臓細胞の遺伝子治療(すなわち肝臓指向性遺伝子治療)を想定する。さらなる特定の実施形態によれば、核酸分子、発現カセット又はベクターの使用は、インビボでの遺伝子治療、肝臓指向性遺伝子治療のためである。さらにさらなる特定の実施形態によれば(According to yet a further particular embodiment)、その使用は、血友病を治療するため、特に血友病B又は血友病Aを治療するための遺伝子治療、特に肝臓指向性遺伝子治療の方法のためのものである。
【0183】
哺乳類の肝細胞への遺伝子導入は、エクスビボとインビボの両方の手順で行われている。エクスビボアプローチでは、肝臓細胞を採取し、長期発現ベクターをインビトロで形質導入し、形質導入した肝細胞を門脈循環に再び入れる必要がある(Kay et al., 1992、Chowdhury et al., 1991)。インビボでのターゲティングは、DNA又はウイルスベクターを肝実質、肝動脈、又は門脈に注入することによって、及び転写ターゲティングを介して行われている(Kuriyama et al., 1991、Kistner et al., 1996)。最近の方法には、ネイキッドDNAの門脈内送達(Budker et al., 1996)やハイドロダイナミック尾静脈トランスフェクション(Liu et al., 1999、Zhang et al., 1999)も含まれる。
【0184】
さらなる態様によれば、細胞、好ましくは肝臓細胞でタンパク質を発現させる方法が提供され、以下のステップを含む。
細胞に、好ましくは肝臓細胞に、本明細書に記載の核酸発現カセット又はベクターを導入すること、及び
細胞で、好ましくは肝臓細胞で融合遺伝子産物を発現させること。
【0185】
これらの方法は、インビトロとインビボの両方で行うことができる。
【0186】
さらなる態様は、疾患又は障害を治療するための、好ましくは遺伝子治療によって治療
するための、本明細書で教示される核酸分子、核酸発現カセット、ベクター、及び医薬組成物の使用を提供する。
【0187】
さらに、遺伝子治療を必要とする対象に対する遺伝子治療の方法も提供され、この方法は、その患者の臓器、好ましくは肝臓に、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子であって、導入遺伝子をコードする導入遺伝子を含む核酸分子を含む核酸発現カセットを導入するステップ及び治療量の治療用タンパク質を前記臓器、好ましくは肝臓で発現させるステップを含む。さらなる実施形態によれば、その方法は、患者の臓器、好ましくは肝臓に、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する前記配列に融合された導入遺伝子であって、導入遺伝子をコードする導入遺伝子を含む核酸分子を含む核酸発現カセットを含むベクターを導入するステップ及び治療量の治療用タンパク質を前記臓器、好ましくは肝臓で発現させるステップを含む。
【0188】
本明細書で教示されるヒトアルブミンをコードする核酸分子、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物を使用する遺伝子治療で治療効果が得られる可能性のある例示的な疾患及び障害としては、肝疾患、血友病(血友病A及び血友病Bを含む)などの肝臓関連疾患、ミオチュブラーミオパチー(MTM)、ポンペ病、筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)/ベッカー型筋ジストロフィー(BMD))、筋緊張性ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー(DM)、三好型ミオパチー、福山型先天性、筋ジストロフィー、ジスフェルリン異常神経筋疾患、運動ニューロン疾患(MND)、例えばシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、肢帯型筋ジストロフィー、代謝性ミオパチー、筋炎症性疾患、筋無力症、ミトコンドリアミオパチー、イオンチャネルの異常、核膜疾患、心筋症、心肥大、心不全、遠位型ミオパチー、心血管疾患、フォン・ヴィルブランド病、微小血管血栓症、血栓性血小板減少性紫斑病、末梢血管疾患、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化性疾患、脳卒中、心疾患、糖尿病、インスリン抵抗性、慢性腎不全、腫瘍増殖、転移、静脈血栓症、虚血、腫瘍増殖、腫瘍血管新生、がんやエボラなどのウイルス感染症、デング熱、デング出血熱、自己免疫疾患(例えばクローン病、多発性硬化症)、及びライソゾーム蓄積症が挙げられる。
【0189】
特定の実施形態では、疾患又は障害は肝臓関連疾患又は障害である。
【0190】
本明細書で使用される「肝臓関連疾患又は障害」という用語は、肝臓での遺伝子発現の変化に関連する疾患又は障害を指す。肝臓関連疾患又は障害には、狭義での肝疾患はもちろん、肝疾患には直接至らないが、主に体内の他の部位で症状が現れる一部の遺伝性疾患も含まれる。肝臓関連疾患又は障害の非限定的な例としては、血友病(血友病A及びBを含む)、肝炎、がん、及び肝硬変、多嚢胞性肝疾患(PLD)、血友病A又はB、家族性高コレステロール血症、ライソゾーム蓄積症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、及びα-アンチトリプシン欠乏症が挙げられる。
【0191】
典型的には、導入遺伝子並びに組織特異的プロモーター及び/又は組織特異的調節エレメントの選択は、本明細書で教示されるベクター又は医薬組成物を用いて治療されることが意図される疾患又は障害に関連する。疾患や障害が血友病などの肝臓関連の障害である場合、使用するプロモーターや調節要素は好ましくは肝臓特異的又は肝細胞特異的であり、導入遺伝子は好ましくはFIX、FVIII又はFVII、より好ましくはFIX又はFVIIIである。
【0192】
非常に具体的な実施形態によれば、核酸発現カセット又はベクター中の導入遺伝子によ
ってコードされる治療用タンパク質は第IX因子であり、本発明の方法は血友病Bを治療するための方法である。遺伝子治療を介して肝臓で第IX因子を発現させることによって、血友病Bを治療することができる(Snyder et al., 1999)。別の非常に具体的な実施形態によれば、核酸発現カセット又はベクター中の導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質は第VIII因子であり、本発明の方法は血友病Aを治療するための方法である。別の非常に具体的な実施形態によれば、核酸発現カセット又はベクター中の導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質は、第VII因子(又は凝固因子VIIa)であり、本発明の方法は、血友病A、血友病B又はFVII欠乏症を治療するための方法である。
【0193】
さらに本明細書で提供されるのは、本明細書の他の箇所に記載の遺伝子治療で治療効果が得られる可能性のある疾患又は障害、好ましくは肝臓関連障害、より好ましくは血友病を、そのような治療を必要としている対象において治療する方法であって、その方法は、治療有効量の本明細書で教示されるベクター又は医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0194】
別段の言及がある場合を除き、「対象」又は「患者」という用語は互いに交換可能に使用され、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物を指し、具体的にはヒトの患者及び例えばマウスなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。好ましい患者又は対象はヒト対象である。
【0195】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」という用語は、治療処置と、予防(prophylactic)又は予防(preventative)対策の両方を指し、その目的は、例えばがんなどの増殖性疾患の発症又は拡散などの望ましくない生理学的変化又は障害を防ぐ又は遅らせる(軽減する)ことである。有益な又は望ましい臨床結果としては、検出可能であれ検出不可能であれ、症状の緩和、疾患の広がり程度の減少、疾患の状態の安定(すなわち悪化しないこと)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患の状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味する。
【0196】
本明細書で使用される場合「治療を必要とする対象」などの表現には、血友病Bや血友病Aなどの所与の状態の治療で治療効果が得られるであろう哺乳類の対象などの対象が含まれる。典型的には、そのような対象には、限定されないが、その状態と診断されているもの、前記状態をもつ傾向が強い若しくは発症しやすいもの、及び/又はその状態が予防されるべきものが含まれる。
【0197】
「治療有効量」という用語は、対象の所与の状態を治療する、すなわち、所望の局所的又は全身的効果及び性能を得るのに有効な化合物又は医薬組成物の量を指す。したがって、この用語は、治療されている疾患又は障害の症状の緩和を含む、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている組織、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的反応を誘発する化合物又は医薬組成物の量を意味する。特に、この用語は、本発明による化合物又は医薬組成物の量を指し、導入遺伝子によってコードされる治療タンパク質が第IX因子又は第VIII因子である場合、血友病などの所与の状態に関連する臨床的障害、症状、又は合併症を、単回投与又は複数回投与のいずれかで、予防、治癒、改善、又は少なくとも最小限にするために必要な化合物又は医薬組成物の量である。
【0198】
特定の実施形態では、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質が第IX因子である(かつ導入遺伝子が、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列に融合される)場合、この用語は、対象における少なくと
も約1%の生理活性、すなわち10mU/ml(ミリリットル当たりミリユニット)血漿、少なくとも5%の生理活性若しくは50mU/ml血漿、少なくとも10%の生理活性若しくは100mU/ml血漿、少なくとも15%の生理活性若しくは150mU/ml、少なくとも20%の生理活性若しくは200mU/ml血漿、少なくとも25%の生理活性若しくは250mU/ml、少なくとも30%の生理活性若しくは300mU/ml、少なくとも35%の生理活性若しくは350mU/ml、少なくとも40%の生理活性若しくは400mU/ml、少なくとも45%の生理活性若しくは400mU/ml、少なくとも45%の生理活性若しくは450mU/ml、少なくとも50%の生理活性若しくは500mU/ml、少なくとも65%の生理活性若しくは650mU/ml、少なくとも70%の生理活性若しくは700mU/ml、少なくとも75%の生理活性若しくは750mU/ml、少なくとも80%の生理活性若しくは800mU/ml、少なくとも85%の生理活性若しくは850mU/ml、少なくとも95%の生理活性若しくは950mU/ml、又は少なくとも100%の生理活性若しくは1000mU/mlの治療濃度と同等又はそれより高い血漿中の第IX因子のレベルが、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによるベクターを、対象に形質導入又はトランスフェクションすることによって得ることができるという意味を含む。本発明の核酸発現カセット及びベクターの効率が非常に高く、かつ/又はそれらから得られる融合遺伝子産物の半減期がより長いので、比較的低い投与量のベクターを投与することによって、対象における第IX因子のこの高い治療レベルを得ることができる。
【0199】
別の特定の実施形態では、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質が第VIII因子である(かつ導入遺伝子が、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列に融合されている)場合、この用語は、10mU/ml(ミリリットル当たりミリユニット)血漿、50mU/ml血漿、100mU/ml血漿、150mU/ml血漿、200mU/ml血漿、250mU/ml血漿、300mU/ml血漿、350mU/ml血漿、400mU/ml血漿、450mU/ml血漿、500mU/ml血漿、550mU/ml血漿、600mU/ml血漿、650mU/ml血漿、750mU/ml血漿、800mU/ml血漿、850mU/ml血漿、900mU/ml血漿、950mU/ml血漿以上の治療濃度と同等又はそれより高い血漿中の第VIII因子のトラフレベルが、本明細書で開示されるベクターにずれかを、対象に形質導入又はトランスフェクションすることによって得ることができるという意味を含む。本明細書で開示されるベクター及び核酸発現カセットの効率が非常に高く、かつ/又はそれらから得られる融合遺伝子産物(すなわち融合タンパク質)の半減期がより長いので、比較的低い投与量のベクターを投与することによって、対象における第VIII因子のこれらの高い治療レベルを得ることができる。
【0200】
別の特定の実施形態では、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質が第VII因子又は凝固因子VIIaである(かつ導入遺伝子が、配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列に融合されている)場合、この用語は、10U/ml(ミリリットル当たりユニット)血漿、50U/ml血漿、100U/ml血漿以上の治療濃度と同等若しくはそれより高い(又はAbshire et al., 2004に記載の治療濃度と同等若しくはそれより高い)血漿中第VII因子又は第VIIa因子のトラフレベルが、本明細書で開示されるベクターにずれかを対象に形質導入又はトランスフェクションすることによって得ることができるという意味を含む。本明細書で開示されるベクター及び核酸発現カセットの効率が非常に高く、かつ/又はそれらから得られる融合遺伝子産物(すなわち融合タンパク質)の半減期がより長いので、比較的低い投与量のベクターを投与することによって、対象における第VII因子(又は第VIIa因子)のこれらの高い治療レベルを得ることができる。
【0201】
さらなる態様は、薬物として使用するための本明細書で教示されるベクター又は医薬組
成物を提供する。
【0202】
さらなる態様は、本明細書の他の箇所に記載の遺伝子治療で治療効果が得られる可能性のある疾患又は障害、好ましくは肝臓関連の障害、より好ましくは、導入遺伝子がFIX、FVIII又はFVIIをコードしている場合、血友病の治療に使用するための、本明細書で教示されるベクター又は医薬組成物を提供する。
【0203】
さらに本明細書で提供されるの、対象において、本明細書の他の箇所に記載の遺伝子治療で治療効果が得られる可能性のある疾患又は障害、好ましくは肝臓関連障害、より好ましくは血友病の治療用薬物を製造するための、本明細書で教示されるベクター又は医薬組成物の使用である。
【0204】
特定の実施形態では、導入遺伝子が第IX因子又は第VIII因子をコードする場合、本明細書で画定される実施形態のいずれか1つによるベクターの対象への形質導入は、対象において100mU/ml血漿以上の治療的第IX因子レベルを得るように6×1013vg/kg(キログラムあたりのウイルスゲノム)より低い投与量で行うことができる。例えば、対象での300mU/ml血漿以上の第IX因子レベルは、5×1011vg/kgより低い投与量で達成することができる。
【0205】
血友病治療の場合、治療の有効性は、例えば、対象における血友病に起因する出血を評価することによって決めることができる。また、インビトロ活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(APPT)、試験第IX因子発色活性アッセイ、血液凝固時間、第IX因子又はヒト第VIII因子特異的ELISAなどのインビトロ試験も利用可能であるが、これらに限定されない。当該技術分野で公知の治療の有効性を評価するための他のいずれの試験も、もちろん使用することができる。
【0206】
本発明の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、単独で使用してもよく、所与の症状に対する既知の治療法のいずれかと組み合わせて使用してもよい。例えば、既知の血友病治療法としては、組換え凝固因子の投与又は精製凝固因子の投与が挙げられる。したがって、本発明の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、単独で又は1つ若しくは複数の活性化合物と組み合わせて投与することができる。後者は、前記薬剤の投与前、投与後、又は投与と同時に投与することができる。
【0207】
所与の状態、好ましくは肝臓関連疾患、より好ましくは血友病、さらにより好ましくは血友病B又は血友病Aの治療に使用するためのこれらの医薬組成物を製造するための、本明細書で開示される核酸分子、核酸発現カセット及びベクター構成要素の使用も想定される。
【0208】
代替的な例では、本明細書で開示される核酸分子、発現カセット及びベクターは、ワクチン接種の目的で、免疫学的な量の遺伝子産物(ポリペプチド、特に免疫原性タンパク質や、RNAなど)を発現させるために使用することができる。
【0209】
実施形態では、医薬組成物はワクチンであることができる。ワクチンは、免疫反応を高めるための1つ又は複数のアジュバントを含んでいてもよい。例えば好適なアジュバントとしては、サポニン、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プラウロンポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油又は炭化水素のエマルジョン、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、合成アジュバントQS-21などが挙げられるが、これらに限定されない。任意選択で、ワクチンはさらに1つ又は複数の免疫刺激分子を含んでいてもよい。免疫刺激分子の非限定的な例としては、インターロイキン(例えばIL-1、IL-2、I
L-3、IL-4、IL-12、IL-13)、成長因子(例えば顆粒球-マクロファージ(GM)-コロニー刺激因子(CSF))、及びマクロファージ炎症性因子(macrophage inflammatory factor)、Flt3リガンド、B7.1、B7.2などの他の免疫刺激分子など、免疫刺激、免疫増強、及び炎症促進の活性をもつさまざまなサイトカイン、リンホカイン及びケモカインが挙げられる。
【0210】
実施形態では、本明細書に記載の核酸分子、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物は、ワクチン、より具体的には予防ワクチンとして使用するためのものであることができる。
【0211】
さらに本明細書で開示されるのは、ワクチンの製造、特に予防ワクチンの製造のための、本明細書に記載の核酸分子、核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物の使用である。
【0212】
さらに本明細書で開示されるのは、以下を含む、ワクチン接種を必要とする対象の前記ワクチン接種、特に予防接種の方法である。
対象に、特に対象の肝臓に、プロモーターに動作可能に連結された配列番号14に定められる配列又は前記配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列に融合された導入遺伝子を少なくとも含む、本明細書で教示される核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を導入すること、及び
対象で、特に対象の肝臓で、免疫学的に有効な量の融合遺伝子産物(すなわち融合タンパク質)を発現させること。
【0213】
本明細書で使用される「免疫学的に有効な量」は、(導入)遺伝子によってコードされた免疫原への再曝露(subsequent exposure)に対して対象の免疫反応を高めるのに有効な(導入)遺伝子産物の量を指す。誘導された免疫のレベルは、例えばプラーク中和法、補体固定法、酵素結合免疫吸着法、マイクロ中和法などで、中和する分泌抗体及び/又は血清抗体の量を測定することによって決めることができる。
【0214】
本明細書では、本発明による方法及び用途について、特定の実施形態、具体的な構造及び構成、並びに材料が論じられてきたが、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、形態及び詳細のさまざまな変更又は修正を行うことができることを理解されたい。
【0215】
以下の実施例は、特定の実施形態をより良く説明するために提供され、本出願を限定するものとみなされるべきではない。本出願は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0216】
実施例1:ヒトアルブミンのコドン最適化
GeneArt(GeneArt株式会社(AG))が自社開発したソフトウェアGeneOptimizerを用いて行ったコドン適応指数を用いて、既知のヒトアルブミンcDNA(配列番号28)とホモ・サピエンスのコドンバイアスに合わせたコドン使用頻度を分析することによってコドン最適化配列を作り出した。
【0217】
発現に悪影響を及ぼす可能性のあるシス作用部位(例えばスプライスドナー部位及びアクセプター部位や、内部TATAボックス、カイサイト、リボソームエントリーサイト、RNA不安定性モチーフ、リピート配列、RNA二次構造など)は可能な限り除いた。
【0218】
mRNAの半減期が長くなるようにGC含有量を調整した。具体的には、GC含有量が非常に高い(>80%)又は非常に低い(<30%)領域は可能な限り避けた。
【0219】
コドン使用頻度から、結果としてコドン適応指数(CAI)値は0.96になった(Nucleic Acids Res. 1987 Feb 11;15(3):1281-95; The codon Adaptation Index--a measure of directional synonymous codon usage bias, and its potential applications.; Sharp PM, Li WHを参照)。CAIは、コドンが標的生物のコドン使用優先度にどれだけよく一致するか表し、好ましくは>0.9である。
【0220】
実施例2:hFIXco-Albco融合体は、定常状態のhFIXレベル及び活性を大幅な増加をもたらす
1.研究デザイン
以下のベクターコンストラクトを従来のクローニング及び合成遺伝子アセンブリによって作製した。
1)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA(配列番号1)
2)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA(配列番号2)
3)AAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA(配列番号3)
4)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA(配列番号4)
5)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pA(配列番号5)
6)AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA(配列番号6)
7)AAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pA(配列番号7)
8)AAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA(配列番号8)
【0221】
対応するベクターのプラスミドマップと配列を図1~8及び12に示す。AAVssは、以前にVandenDriessche et al., 2007で記載された一本鎖(ss)AAVベクターバックボーンにあたる。SERPは、SERPINA1遺伝子に由来するシス調節エレメントにあたり、過去の論文(Nair et al., 2014、Chuah et al., 2014)のHS-CRM8と同一である。ベクターは、図示されているように、このSERPエレメントのシングルコピー(1×SERPと表す)又はトリプレットリピート(3×SERPと表す)のいずれかを含む。mTTRは最小限トランスサイレチン(transtherythin)プロモーターにあたり、MVMはマウス微小ウイルスイントロンにあたる。ベクターはまた、TTR最小限プロモーター(mTTR)の下流にTTR遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)を含む。hFIXcoは、以前に記載された(Nair et al., 2014、Chuah et al., 2014)コドン最適化ヒト(h)FIX遺伝子にあたる。Paduaは、もともとSimioni及び同僚によって記載された(Simioni et al., 2009)、血栓形成傾向をもつ患者におけるR338L機能獲得型FIX変異を指す。Albは、野生型の、コドンが最適化されていないアルブミン配列を指し、一方でAlbcoは、対応するコドン最適化アルブミン配列を指す。SV40pAは、SV40のポリアデニル化部位に対応する。hFIXcoAlbco、hFIXcoPadua-Alb及びhFIXcoPadua-Albco融合コンストラクトは、以前に記載されたように(Metzner et al., 2009、Santagostino et al.,
2016)、融合タンパク質の合成を可能にするリンカー(配列番号18)を含む。過剰活性化Padua変異(すなわちFIX-Padua)及び肝細胞特異的プロモーターをもつコドン最適化FIX(coFIX)の作製及び初期特性評価は以前に記載されている(Cantore et al., 2012、Nair et al., 2014)。
【0222】
異なるFIX遺伝子の配列は以下の通りである。hFIXco(配列番号9);hFIXco-Albco(配列番号10);hFIXcoPadua(配列番号11);hFIXcoPadua-Alb(配列番号12);hFIXcoPadua-Albco(配列番号13)。
【0223】
AAVベクターは、記載のように(Nair et al., 2014、Chuah et al., 2014)、AAVベクター及びAAV8-DJカプシド(Grimm et al., 2008、Gao et al., 2004)をコードするヘルパーコンストラクトを含むプラスミドを293T細胞に共トランスフェクションすることによって作製した。ベクターを塩化セシウム超遠心分離で精製し、ベクターの力価を、記載のように(Nair et al., 2014、Chuah et al., 2014)ベクター特異的プライマーを用いた定量リアルタイムPCRで決定した。成体C57Bl6マウス及び成体血友病Bマウス(Wang et al., 1997)に、示されたAAVベクター投与量で静脈注射した。FIX抗原レベルを酵素結合免疫吸着法(ELISA)で測定し、FIX活性を、記載のように(Nair et al., 2014、Chuah et al., 2014)かつ製造者の指示に従って、発色アッセイ(HYPHEN BioMed、アンドレジー、フランス)で測定した。動物実験は、大学の動物倫理委員会の承認を得た。mRNAの発現レベルは、記載のように(Nair et al., 2014、Chuah et al., 2014)、定量リアルタイムPCR及び定量リアルタイム逆転写酵素PCRでそれぞれ測定した。
【0224】
2.結果
まず出願人らは、コドン最適化アルブミン融合と、非コドン最適化アルブミン融合とを対比させて、循環ヒトFIXのレベル及び活性に対する影響を評価した。血友病FIX欠損マウス(FIXノックアウト又はFIX KO)に、5×10vg/マウスのAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pA、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAベクターを静脈注射した。ベクターはすべてAAV8-DJカプシドでパッケージングした。結果は、コドン最適化hFIXcoPadua-Albco融合タンパク質(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA)をコードするAAVベクターは、アルブミン(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA)に融合させなかったhFIXcoPaduaタンパク質をコードするAAVベクターと比較して、有意に高い(約3倍)FIX活性をもたらしたことを示す(図9A)。FIX活性レベルは投与した動物で持続し、抗hFIX免疫応答又は抗hAlb免疫応答の欠如と一致した。
【0225】
対照的に、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pAベクターとAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pAベクターを対比させて5×10vg/マウスで静脈注射した血友病FIX欠損マウスでは、循環FIX抗原レベルに有意な差はなかった(図9B)。同様に、hFIXcoPadua-Albco融合遺伝子を用いたときとは対照的に、5×10vg/マウスのAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pAベクターを静脈投与した血友病FIX欠損マウスの循環FIX活性レベルは、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pAベクターで得られたレベルと類似していた、又はわずかに低くさえあった(図9C)。まとめると、これらの結果は、適切なコドン最適化がアルブミン融合自体体で行われることを条件として、FIX-アルブミン融合はより高いFIX活性レベルをもたらすことを示す。
【0226】
アルブミン融合の効果を確認するために、非Padua hFIXcoを治療用導入遺
伝子として用いて野生型C57Bl6マウスのFIXレベルに対する効果を評価した。そこで、正常なC57Bl6マウスに、10vg/マウスのAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA又はAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAベクターを注射した。結果は、非融合対照(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA)と比較して、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAベクターの注射後に、アルブミン融合体は循環FIX抗原レベルを有意に増加させることを示す(図10A)。したがって、FIX-アルブミン融合体を用いた遺伝子治療の有効性の向上は、2つの異なるタンパク質、すなわち過剰活性Padua FIX-R338L(図9)と野生型FIX(図10)に基づいて得ることができ、したがってPaduaFIX-R338L変異と無関係である。
【0227】
さらに、図10Bは、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA又はAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAベクターを注射したマウス間で肝臓でのFIXのmRNA発現が実質的に同じであることを示し、これは非融合対照(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA)と比較して、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAベクターの注射後に増加した循環FIX抗原レベル(図10A)は、hFIX-アルブミン融合タンパク質のmRNA発現の増加ではなくむしろ、その融合タンパク質の半減期の増加に起因する可能性を示唆している。
【0228】
FIX-アルブミン遺伝子治療アプローチの治療効果をさらに高めるために、SERPエレメントの複数のコピーを含むことが、定常状態のFIXレベルをさらに増加させるかどうかを評価した。そこで、正常なC57Bl6マウスに、10vg/マウスのAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA又はAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAベクターを注射した。結果は、SERPエレメントの複数コピーがhFIX-アルブミン融合タンパク質の循環レベルを増やしたことを示し(図10A)、hFIXco-Albco mRNAレベルの有意な増加と一致した(図10B)。
【0229】
最後に、複数のSERPエレメントに基づく最適化ベクターデザインを用いて、hFIXcoPadua-Albco導入遺伝子がhFIXcoPadua-Albと比較して優れた治療有効性をもつこと確認した。そこで、血友病FIX-欠損マウスに、5×10vg/マウスのAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Alb-SV40pA又はAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAベクターを注射した。結果は、コドン最適化hFIXcoPadua-Albco融合タンパク質をコードするAAVベクター(すなわちAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA)は、アルブミンに融合させなかったhFIXcoPaduaタンパク質をコードするAAVベクター(すなわちAAVss-3XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA)の抗原及び活性レベルと比較して、有意に高いFIX抗原及び活性レベル(約2~4倍)をもたらしたことを示す(図11A及びB)。
【0230】
アルブミン融合の効果をさらに確認するために、次に、FIX抗原レベル及びFIX活性に対するその効果を、治療用導入遺伝子として、非Padua hFIXco又はPadua-hFIXco(「hFIXcoPadua」)のいずれかを用いて、包括的な用量反応解析後に血友病FIXで評価した。そこで、血友病FIX-欠損マウスに、5×10vg/マウス、1×10vg/マウス又は5×10vg/マウスの、AAVss
-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA(配列番号1)、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA(配列番号2)、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA(配列番号4)又はAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA(配列番号6)ベクターを注射した。FIX抗原及び活性レベルをベクター注射の1週間後及び3週間後に測定した(図12及び13)。
【0231】
結果は、コドン最適化hFIXcoPadua-Albco融合タンパク質をコードするAAVベクター(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pA)は、アルブミン又はコドン最適化アルブミン(「Albco」)に融合させなかったhFIXcoPaduaタンパク質をコードするAAVベクター(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA)で得られた抗原及び活性レベルと比較して、有意に高いFIX抗原及び活性レベルをもたらすことを示す(図12及び13A~C)。同様に、この結果はまた、コドン最適化hFIXco-Albco融合タンパク質をコードするAAVベクター(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pA)は、アルブミン又はコドン最適化アルブミン(「Albco」)に融合させなかったhFIXcoタンパク質をコードするAAVベクター(すなわちAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA)で得られた抗原及び活性レベルと比較して、有意に高いFIX抗原及び活性レベルをもたらすことを示した(図12及び13D~E)。くわえて、hFIXcoPaduaをコードするAAVベクターで得られたFIX活性レベルは、非過剰活性hFIXcoをコードするAAVベクターで得られた活性レベルよりも有意に高かった(図12及び13A~E)。これは、アルブミン融合体又は非融合対照のいずれでも一貫して見られた。FIX抗原及び活性レベルは、ベクター投与量が増えるにつれて増加した(図12及び13A~E)。最も高いFIX抗原及び活性レベルは、5×10vg/マウスのAAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAを注射した後に達成された(1000~1200%の範囲のFIX活性:10~12倍の生理的FIXレベル)(図12及び13C)。
【0232】
AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-Albco-SV40pAアルブミン融合体と、非融合AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXcoPadua-SV40pA対照コンストラクトとの間のFIX抗原及び活性レベルの差は、最も低いベクター投与量(5×10vg/マウス)(10~19倍)(図12及び13A)及び中間のベクター投与量(10vg/マウス)(4~9倍)(図12及び13B)では、最も高いベクター投与量(5×10vg/マウス)(図12及び13C)より顕著であった。これは飽和効果の可能性を示唆している。同様に、AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-Albco-SV40pAアルブミン融合体と、非融合AAVss-1XSERP-mTTR-MVM-hFIXco-SV40pA対照コンストラクトとの間のFIX抗原及び活性レベルの差も、最も高いベクター投与量(5×10vg/マウス)(図12及び13E)よりも中間のベクター投与量(10vg/マウス)(2~5倍)(図12及び13D)でより顕著であった。まとめると、これらの結果から、FIX-アルブミン融合体を用いた遺伝子治療の有効性は、2つの異なるタンパク質、すなわち過剰活性Padua FIX-R338Lと野生型FIXに基づいて得ることができ、したがってPadua FIXR338L変異と無関係であることが確認された。
【0233】
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図1
図2
図3
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図11
図12
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【配列表】
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【国際調査報告】