(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】免疫原性細胞死を誘導する合成ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20220106BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220106BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220106BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20220106BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K14/47
C12N5/09
A61K38/08
A61P35/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522985
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2019080366
(87)【国際公開番号】W WO2020094701
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】511134470
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ ルシェルシェ サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カロヤン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス トーレス,アナ,カロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス パディージャ,マリア,クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB19
4B065CA44
4B065CA60
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA40
(57)【要約】
本発明は、免疫原性細胞死、特に免疫原性癌細胞死を誘導することができるTSP-1由来ペプチドに関する。本発明はさらに、そのようなペプチドの使用、特に、医薬組成物を調製して、該組成物を必要とする対象において、癌治療を有効にする、又は有効性を向上させることに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療において免疫原性細胞死を誘導するために使用する、TSP-1由来合成ペプチド。
【請求項2】
前記TSP-1由来合成ペプチドが、式(I)のヘキサペプチド配列を含む化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩である、請求項1に記載の用途のTSP-1由来合成ペプチド。
-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6- (I)
式中、
-X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6は、独立に、ペプチド結合又は少なくとも1つの擬ペプチド結合により、式(I)に従って互いに結合しており、
-X
1は、置換又は非置換のフェニルアラニン、置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシン、又は置換又は非置換のホモフェニルアラニンからなるリストから選択される残基であり、
-X
2は、置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシン、置換又は非置換のフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、ホモ-m-チロシン、ホモ-p-チロシンあるいはホモ-o-チロシンからなるリストから選択される残基であり、
-X
3は、置換又は非置換のバリン、置換又は非置換のアラニン、置換又は非置換のロイシン、置換又は非置換のイソロイシンからなるリストから選択される残基であり、好ましくはバリンであり、
-X
4は、置換又は非置換のバリン、置換又は非置換のアラニン、置換又は非置換のロイシン、置換又は非置換のイソロイシンからなるリストから選択される残基であり、好ましくはバリンであり、
-X
5は、置換又は非置換のメチオニン、あるいはメチル化ホモシステイン、リジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸からなるリストから選択される残基であり、
-X
6は、置換又は非置換のトリプトファン、置換又は非置換のヘテロ-トリプトファン、置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシン、置換又は非置換のフェニルアラニン、あるいは置換又は非置換のナフチルアラニンからなるリストから選択される残基であり、
-X
1は式(I)の分子のN末端側であり、X
6は式(I)の分子のC末端側である。
【請求項3】
前記ペプチドが、PKHB1(配列番号2)、PKT16(配列番号17)、PKTD10(配列番号25)、PKD10(配列番号21)、PKTDi2-FF(配列番号34)及びPKTD10-X-RNMe(配列番号27)の中から選択される、請求項1又は2に記載の用途のTSP-1由来合成ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが、PKHB1(配列番号2)、PKT16(配列番号17)及びPKTD10(配列番号25)の中から選択される、請求項1又は2に記載の用途のTSP-1由来合成ペプチド。
【請求項5】
癌が、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌、多発性骨髄腫、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、黒色腫、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、腟癌、外陰癌、及び子宮癌からなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の用途のTSP-1由来合成ペプチド。
【請求項6】
腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導するための、TSP-1由来合成ペプチドのin vitroでの使用。
【請求項7】
TSP-1由来合成ペプチドで前記細胞を処理する工程を含む、腫瘍細胞の調製方法。
【請求項8】
癌の治療のための免疫原性細胞死を誘導するために使用する、TSP-1由来合成ペプチドで処理した腫瘍細胞。
【請求項9】
TSP-1由来合成ペプチドで処理された腫瘍細胞及び薬学的に許容できる担体を含む、注射可能な医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性細胞死、特に免疫原性癌細胞死を誘導することができるTSP-1由来ペプチドに関する。本発明はさらに、そのようなペプチドの使用、特に、医薬組成物を調製して、該組成物を必要とする対象において、癌治療を有効にする、又は有効性を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫原性細胞死(Immunogenic Cell Death:ICD)は、死細胞関連抗原に対する適応免疫応答を活性化し、腫瘍細胞免疫原性を誘導する制御された細胞死の一種である(1、2)。ICDは、内因性免疫原性生体分子、すなわち損傷関連分子パターン(damage-associated molecular patterns:DAMPs)の曝露又は放出を特徴とする(3)。生理学的条件では、DAMPsは細胞内に存在しているが、ストレス、損傷、又は細胞死が起こる場合に、曝露又は放出されると、免疫細胞上の受容体に結合する(4、5)。細胞表面で曝露される、及び/又は細胞外培地に放出される、ICDに関連する主なDAMPsには、カルレティキュリン(CRT)(6~8)及び熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質90(HSP70及びHSP90)等の他の小胞体(ER)タンパク質(9、10)、並びにATP(11~13)及び非ヒストン性クロマチンタンパク質高移動群ボックス(High-Mobility Group Box1:HMGB1)の分泌(14、15)がある。したがって、これらのDAMPsは、抗原提示細胞(Antigen-Presenting Cells:APCs)をICD部位に動員し、死細胞関連抗原の取込み、処理、及び提示を刺激し、適応免疫応答をもたらす(1、16~18)。近年、免疫原性細胞死(ICD)は、免疫正常宿主において適応免疫応答を活性化するのに十分に「制御された細胞死(Regulated Cell Death:RCD)の形態」と定義されている(67)。
【0003】
ドキソルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、及びアントラサイクリンを含む化学療法剤のサブセットは、ICDを引き起こすことができ(18、21)、したがって抗癌免疫応答を活性化する(1)。これらの薬物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)等の血液悪性腫瘍を含む様々な種類の癌を治療するために使用される。
【0004】
別のICD誘導物質を使用した過去の報告でも、腫瘍の成長を妨げた。例えば、黒色腫の治療で使用されるアルキル化剤であるメルファランの場合、C57BL6マウスに、メルファランによって死滅したマウスB78黒色腫細胞を注入し、10日後にB78生細胞を再注入したところ、40%のマウスの腫瘍を抑制した(51)。マウス結腸癌(CT26)細胞株にドキソルビシンを使用して、同様の結果を得た(42)。このワクチンの使用によって、DCsの成熟及び細胞傷害性T細胞活性化をさせること(52)並びにNK細胞傷害活性を向上させることで、抗癌免疫の活性化が促進される(53)。
【0005】
免疫療法は、癌に対して宿主免疫防御を使用し、癌細胞への免疫原性の付与を試みる(55)、癌に対する有望な治療選択肢である(54)。腫瘍細胞の免疫原性が増すと、長期間の治療効果を提供し得る抗腫瘍免疫応答が引き起こされる(1)。特定の薬物が、DAMPsを放出すること及びICDを引き起こすことで、免疫応答の覚醒を誘導することができるという知見は、このような薬剤を探求する研究を促進した(1、42、53、56)。アントラサイクリン、白金誘導体、アルキル化剤、及びプロテアソーム阻害剤は、ICDを誘発することに関する膨大な証拠を有する化学療法薬の一部である(57)。ICD誘導を示す別の療法には、光線力学的療法(58)、放射線療法(59)、腫瘍溶解性ウイルス(60、61)、高静水圧(62)、並びにシコニン(63、64)及びカプサイシン(65、66)等の別のファイトケミカル剤(phytochemical agent)がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Annu Rev Immunol. 2013; 31:51-72.
【非特許文献2】Cell Death Differ. 2018; 25(3):486-541.
【非特許文献3】Sultan Qaboos University Medical Journal. 2015;15(2): e157.
【非特許文献4】Trends Immunol. 2007;28(10):429-36.
【非特許文献5】Biofactors. 2013;39(4):355-67.
【非特許文献6】Nat Med. 2007;13(1):54-61.
【非特許文献7】EMBO J. 2012;31(5):1062-79.
【非特許文献8】Immunol Lett. 2018; 193:25-34.
【非特許文献9】Blood. 2007;109(11):4839-45.
【非特許文献10】Front Immunol. 2015;6:588.
【非特許文献11】Nature. 2009;461(7261):282.
【非特許文献12】Cancer Res. 2010;70(3):855-8.
【非特許文献13】Cell Death Differ 2014;21(1):79-9175.
【非特許文献14】Nature. 2002;418(6894):191-5.
【非特許文献15】Cell death and differentiation. 2014;21(1):39-49.
【非特許文献16】Cell death and Differ. 2008;15(1):3-12.
【非特許文献17】Nature Reviews Cancer. 2012;12(12):860.
【非特許文献18】Front Immunol. 2015;6:187.
【非特許文献19】Oncoimmunology. 2014;3(9):e955691.
【非特許文献20】OncoImmunology. 2017;6(12):e1386829.
【非特許文献21】Nat Rev Immunol. 2017;17(2):97-111
【非特許文献22】Cancer. 2015;121(15):2517-28.
【非特許文献23】Blood Cancer J. 2017;7(6):e577.
【非特許文献24】https://seer.cancer.gov/statfacts/html/alyl.html
【非特許文献25】Pediatric Oncology. Springer, Cham. 2017;151-175
【非特許文献26】Pediatric Blood & Cancer. 2018;65(6):e26989.
【非特許文献27】Clin Lymphoma, Myeloma Leuk. 2017;17(9):590-4.
【非特許文献28】PLoS medicine. 2016;13(12):e1002200.
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【非特許文献30】Anticancer Res. 2015;35(10):5667-70.
【非特許文献31】Blood. 2016;127(3):303-9.
【非特許文献32】Cell. 2009;138(2):286-99.
【非特許文献33】PLoS medicine. 2015;12(3):e1001796.
【非特許文献34】J. Med Chem. 2016;59(18):8412-21.
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【非特許文献39】Cell death Dis. 2018;9(5).
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【非特許文献41】Br J Pharmacol. 2012;167(7):1415-30.
【非特許文献42】J Exp Med. 2005;202(12):1691-701.
【非特許文献43】ISRN Hematol. 2013;2013:1-19.
【非特許文献44】A. J Immunol. 2003;170(7):3544-53.
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【非特許文献46】Cell. 2005;123(2):321-34.
【非特許文献47】Sci Transl Med. 2010;2(63):63-94
【非特許文献48】Biomed Pharmacother. 2015;73:109-15.
【非特許文献49】Cancer Res. 2011;71(14):4821-33.
【非特許文献50】Oncol Lett. 2017;14(1):844-52.
【非特許文献51】Cancer Res. 2015;75(8):1603-14.
【非特許文献52】Adv Cancer Res 2013;119:421-75).
【非特許文献53】Cytokine. 2017;97:123-32.
【非特許文献54】Ann Transl Med. 2016;4(14) :261-261.
【非特許文献55】Tumori J 2018;104(1):1-8.
【非特許文献56】Oncoimmunology. 2015;4(4):e1008866.
【非特許文献57】Oncoimmunology. 2014;3(1):e27048.
【非特許文献58】Oncotarget. 2016;7(30):47242-51.
【非特許文献59】Semin Radiat Oncol. 2015;25(1):11-7
【非特許文献60】Cancer Res. 2012;72(9):2327-38.
【非特許文献61】Mol Ther-Oncolytics. 2016;3:16031.
【非特許文献62】Int J Cancer. 2014;135(5):1165-77.
【非特許文献63】Mol Cancer. 2015;14(1):174.
【非特許文献64】Recept Clin Investig. 2016;3:1-5.
【非特許文献65】Cell Stress and Chaperones. 2013;18(6):801-8.
【非特許文献66】Exp Ther Med. 2016;12(2):765-70.
【非特許文献67】Intl. J. Mol. Sci. 2019, 20, 959.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ICD誘導物質等の、免疫系を活性化することができる新しい治療の開発は、化学療法抵抗性悪性腫瘍と闘うために、依然として重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
現在、本発明者等は、合成ペプチドの既知のファミリーが、癌細胞株において、選択的免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができることを証明した。
【0009】
合成ペプチドは、プログラム細胞死(Programmed Cell Death:PCD)を誘発して、その結果PCDの欠陥に関連する疾患を治療することができるCD-47作動薬として、先行して記載されている(国際特許出願第2017194634号、国際特許出願第2017194627号)。
【0010】
実際に、本発明者等は、PKHB1が、マウス及びヒトの非腫瘍細胞を残しつつ、白血病細胞において、カスパーゼ非依存性細胞死及びカルシウム依存性細胞死を誘導することを示すデータを得た。さらに、これらの結果は、PKHB1がin vitroでCRT曝露及びDAMPs放出を誘導し、予防的ワクチン接種がin vivoで腫瘍確立を阻害することから、PKHB1が白血病細胞においてICDを誘導することができることを示す。
【0011】
したがって、本発明は、癌治療において免疫原性細胞死を誘導するために使用する、TSP-1由来合成ペプチドに関する。
【0012】
また、本発明は、癌治療において、免疫原性細胞死を誘導するための医薬組成物調製用のTSP-1由来合成ペプチドの使用に関する。
【0013】
本発明によれば、
図1に表すように、TSP-1由来合成ペプチドは、TSP-1のβストランド7番を模倣するペプチド、又はTSP-1のβストランド7番及び8番の結合によって形成されるβシートを模倣するペプチド中から選択される。
【0014】
一実施形態によれば、TSP-1由来合成ペプチドは、式(I)のヘキサペプチド配列を含む化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩であり、
-X1-X2-X3-X4-X5-X6- (I)
式中、
-X1、X2、X3、X4、X5、X6は、独立に、ペプチド結合又は少なくとも1つの擬ペプチド結合により、式(I)に従って互いに結合しており、
-X1は、置換又は非置換のフェニルアラニン、置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシン、又は置換又は非置換のホモフェニルアラニンからなるリストから選択される残基であり、
-X2は、置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシン、置換又は非置換のフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、ホモ-m-チロシン、ホモ-p-チロシンあるいはホモ-o-チロシンからなるリストから選択される残基であり、
-X3は、置換又は非置換のバリン、置換又は非置換のアラニン、置換又は非置換のロイシン、置換又は非置換のイソロイシンからなるリストから選択される残基であり、好ましくはバリンであり、
-X4は、置換又は非置換のバリン、置換又は非置換のアラニン、置換又は非置換のロイシン、置換又は非置換のイソロイシンからなるリストから選択される残基であり、好ましくはバリンであり、
-X5は、置換又は非置換のメチオニン、あるいはメチル化ホモシステイン、リジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸からなるリストから選択される残基であり、
-X6は、置換又は非置換のトリプトファン、置換又は非置換のヘテロ-トリプトファン、置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシン、置換又は非置換のフェニルアラニン、あるいは置換又は非置換のナフチルアラニンからなるリストから選択される残基であり、
-X1は式(I)の分子のN末端側であり、X6は式(I)の分子のC末端側である。
【0015】
好ましくは、式(I)のヘキサペプチド配列は、少なくとも1つの置換又は非置換のp-チロシン、置換又は非置換のo-チロシン、置換又は非置換のm-チロシンの残基を含む。
【0016】
具体的な実施形態によれば、TSP-1由来合成ペプチドは、アミノ酸配列、KRFYVVMWKK(配列番号1)を含むペプチドについて示している、国際特許出願第2013/182650号に記載されている通りである。
【0017】
一実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1と、1個、2個又は3個のアミノ酸が異なっていてよい。
【0018】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1と、4個又は5個のアミノ酸が異なっていてよい。
【0019】
一実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1と、少なくとも75%一致し、さらにより好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%一致し、依然として腫瘍細胞においてICDを誘導することができる。
【0020】
一実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1と、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%一致する、配列番号1が定めるアミノ酸配列又はそれらの変異体であり、依然として腫瘍細胞においてICDを誘導することができる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、ペプチドは、本明細書に記載の配列番号1のアミノ酸配列を含む、45アミノ酸長未満のアミノ酸配列である。
【0022】
本発明の別の実施形態では、ペプチドは、本明細書に記載の配列番号1のアミノ酸配列を含む、40アミノ酸長未満のアミノ酸配列である。
【0023】
本発明の別の実施形態では、ペプチドは、本明細書に記載の配列番号1のアミノ酸配列を含む、30アミノ酸長未満のアミノ酸配列である。
【0024】
本発明の別の実施形態では、ペプチドは、本明細書に記載の配列番号1のアミノ酸配列を含む、20アミノ酸長未満のアミノ酸配列である。
【0025】
本発明の別の実施形態では、ペプチドは、本明細書に記載の配列番号1のアミノ酸配列を含む、15アミノ酸長未満のアミノ酸配列である。
【0026】
具体的な実施形態によれば、TSP-1由来合成ペプチドは、国際特許出願第2017/194627号に記載されている通りであり、該出願は、式(II)の配列を含むペプチドと対応することを示し、
-A-B-X1-X2-X3-X4-X5-X6- (II)
式中、
-A及びBは、上に定義した通り、アミノ酸残基であり、好ましくは天然又は合成のアミノ酸残基であり、
-X1、X2、X3、X4、X5及びX6は本明細書で定義される通り、
又はそれらの薬学的塩である。
【0027】
式(II)において、好ましくは、Aは(D)-リジンであり、Bはアルギニンである。
【0028】
式(II)において、好ましくは、A((D)-リジン等)及びB((L)-アルギニン等)は、(-CO-NMe)等の擬ペプチド結合によって互いに結合しており、より好ましくは、Bはアルギニンであり、A及びBは結合-CO-NMeによって互いに結合する。
【0029】
式(II)において、好ましくはX1-X2-X3-X4-X5-X6は、FYVVXW、FYVVIW、FYVVKW又はFYVVLWであり、Xはノルロイシンである。
【0030】
あるいは、式(II)において、X1-X2-X3-X4-X5-X6はFFVVXW、FFVVIW、FFVVKW又はFFVVLWであり、Xはノルロイシンである。
【0031】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、式(III)の配列を含むペプチドであり、
-A-B-X1-X2-X3-X4-X5-X6-C-D- (III)
式中、
-A、B、C及びDは、上に定義した通り、アミノ酸残基、好ましくは天然又は合成のアミノ酸残基であり、
-X1、X2、X3、X4、X5及びX6は本明細書で定義される通りであるか、
又はそれらの薬学的塩である。
【0032】
式(III)において、好ましくは、Aは(D)-リジンであり、Bはアルギニンであり、好ましくは、Cは(L)-リジンであり、Dは(D)-リジンである。
【0033】
式(III)において、好ましくは、A((D)-リジン等)及びB((L)-アルギニン等)は、(-CO-NMe-)等の擬ペプチド結合によって互いに結合する。
【0034】
式(III)において、好ましくは、X1-X2-X3-X4-X5-X6はFYVVXW、FYVVIW、FYVVKW又はFYVVLWであり、Xはノルロイシンである。
【0035】
あるいは、式(III)において、X1-X2-X3-X4-X5-X6はFFVVXW、FFVVIW、FFVVKW又はFFVVLWであり、Xはノルロイシンである。
【0036】
有利なことに、式(I)の化合物は、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6(式(I))を含むペプチドであり、式(I)のペプチドの溶解性を維持するために、構造の性質及び大きさは、6~20個のアミノ酸、より好ましくは7~15個のアミノ酸、さらにより好ましくは8~12個のアミノ酸、最も好ましくは10個のアミノ酸を備える。
【0037】
より好ましくは、式(I)の化合物は、ペプチド結合又は擬ペプチド結合を介して、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6(式(I))のN末端に結合したジペプチドと、ペプチド結合又は擬ペプチド結合を介して、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6のC末端に結合したジペプチドとを有するデカペプチド(10個のアミノ酸)であり、N末端上で、式(IV)を表し、
Y-A-B-X1-X2-X3-X4-X5-X6-C-D-Z (IV)
式中、
-A、B、C及びDは、上に定義した通り、アミノ酸残基、好ましくは天然又は合成のアミノ酸残基であり、
-Yは、水素、C1~C6のアルキル基、C5~C8のアリール基、断片R1-CO-(式中、R1は水素原子、C1~C6のアルキル基、好ましくはメチル、又はC5~C8のアリール基、好ましくはフェニルであり、
-Zは、-OH、C1~C6のアルキル基、C5~C8のアリール基、NH2基、C1~C6のアルコキシ基又はC5~C8のアリールオキシ基、あるいはそれらの薬学的塩である。
【0038】
式(IV)において、好ましくは、ペプチド配列X1-X2-X3-X4-X5-X6の両側のすべてのアミノ残基は、上に定義される通り、(D)型若しくは(L)型の天然アミノ酸残基及び/又は(D)型若しくは(L)型の合成アミノ酸残基である。
【0039】
特定の実施形態では、式(I)の化合物の側鎖及び/又はバックボーンは、上記の定義に従って、化学的に保護される。
【0040】
式(IV)において、好ましくは、Aは(D)-リジンであり、Bはアルギニンである。
【0041】
好ましくは、Cは(L)-リジンであり、Dは(D)-リジンである。
【0042】
式(IV)において、好ましくは、A((D)-リジン等)及びB((L)-アルギニン等)は、(-CO-NMe-)等の擬ペプチド結合によって互いに結合する。
【0043】
式(IV)において、Yは、好ましくは、水素原子又はアセチルであり、ZはNH2である。
【0044】
式(IV)において、好ましくは、X1-X2-X3-X4-X5-X6はFYVVXW、FYVVIW、FYVVKW又はFYVVLWであり、Xはノルロイシンである。
【0045】
あるいは、式(IV)において、X1-X2-X3-X4-X5-X6は、FFVVXW、FFVVIW、FFVVKW又はFFVVLWであり、Xはノルロイシンである。
【0046】
本発明は、X1、X2、X5及び/又はX6が非イオン性アミノ酸残基であり、例えばX5がノルロイシン、ロイシン又はイソロイシン残基、好ましくはノルロイシン残基であることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0047】
本発明は、少なくとも1個の擬ペプチド結合が、N-メチルペプチド結合であること、好ましくは式(I)の化合物のN末端側で、断片がX1に結合すること及び/又は式(I)の化合物のC末端側で、断片がX6に結合することを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0048】
本発明は、水素原子、アミノ酸残基又はペプチド断片が、式(I)のヘキサペプチドのN末端アミンに結合することを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0049】
本発明は、-OH基、-NH2基、アミノ酸残基又はペプチド断片が、式(I)のヘキサペプチドのC末端カルボニルに結合することを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0050】
本発明は、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関し、化合物(I)又はそれらの薬学的に許容できる塩のN末端アミンが、好ましくは、C1~C6のアルキル基、C5~C8のアリール基、断片R1-CO-からなるリストから選択される非イオン性の基によりキャップされることを特徴とし、式中、R1は、
-水素原子、
-C1~C6のアルキル基、好ましくはメチル又は
-C5~C8のアリール基、好ましくはフェニルである。
【0051】
本発明は、C末端カルボン酸が、COR2(式中、R2はC1~C6のアルキル基、C5~C8のアリール基、NH2基、C1~C6のアルコキシ基又はC5~C8のアリールオキシ基である)等の非イオン性基に置き換えられることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0052】
本発明は、好ましくはX2-X3-X4の位置に、配列YVVを含むことを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0053】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0054】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0055】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X2がチロシンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X2がフェニルアラニンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0056】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X3がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0057】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X4がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0058】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0059】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0060】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X3がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0061】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X4がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0062】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0063】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであり、X3がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであり、X3がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0064】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであり、X4がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであり、X4がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0065】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0066】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであり、X3がバリンであり、X4がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであり、X3がバリンであり、X4がバリンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0067】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであり、X3がバリンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであり、X3がバリンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0068】
本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がチロシンであり、X3がバリンであり、X4がバリンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。本発明は、X5がリジン、ノルロイシン、ロイシン又はイソロイシンであり、X1がフェニルアラニンであり、X2がフェニルアラニンであり、X3がバリンであり、X4がバリンであり、X6がトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0069】
本発明は、好ましくはX2-X3-X4-X5の位置に、配列YVV-ノルロイシン(配列番号5)を含むことを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0070】
本発明は、X1、X2、及び/又はX6が、p-フルオロ-フェニルアラニン、p-アミノーフェニルアラニン又はp-ニトロ-フェニルアラニンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0071】
本発明は、X1が置換又は非置換のフェニルアラニンであり、X2が置換又は非置換のp-チロシンであり、X6が置換又は非置換のトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0072】
本発明は、X1が置換又は非置換のフェニルアラニンであり、X2が置換又は非置換のフェニルアラニンであり、X6が置換又は非置換トリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0073】
本発明は、X1が置換又は非置換フェニルアラニンであり、X2が非置換のフェニルアラニンであり、X6が置換又は非置換のトリプトファンであることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0074】
本発明は、式(I)のヘキサペプチドが、2個の(D)-リジン等の、2個の(D)型のアミノ酸残基の間に構成されることを特徴とする、本明細書で開示される化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩に関する。
【0075】
本発明のペプチドの例を以下に挙げる。
【0076】
KRFYVVMWKK(4N1K、配列番号1、下の化学構造を参照)
(D)K-R-F-Y-V-V-M-W-K-(D)K(PKHB1、配列番号2、下の化学構造を参照)
H-(D)KΨ(CONMe)RFYVVXWK(D)K-OH(PKT16、配列番号17、下の化学構造を参照)
【0077】
【0078】
化合物又はそれらの薬学的に許容できる塩の別の例は、以下の通りである。
【0079】
Ac-RFYVVMWK-NH2(配列番号3)
Ac-KRFYVVMWKK-NH2(配列番号4)
H-(D)KAFYVVMWK(D)K-OH(配列番号5)
H-(D)KRFYVV(Nle)WK(D)K-OH(配列番号6)
H-FYVVXW-OH(配列番号7)
H-FYVVXW-NH2(配列番号8)
Ac-FYVVXW-OH(配列番号9)
Ac-FYVVXW-NH2(配列番号10)
H-(D)KFYVVXW(D)K-OH(配列番号11)
H-FYVVKW-OH(配列番号12)
H-FYVVKW-NH2(配列番号13)
H-(D)KΨ(CONMe)RFYVVMWK(D)K-OH(配列番号14)
H-(D)KRFYVVMWΨ(CONMe)K(D)K-OH(配列番号15)
H-(D)KΨ(CONMe)RFYVVMWΨ(CONMe)K(D)K-OH(配列番号16)
H-(D)KΨ(CONMe)RFYVVLWK(D)K-OH(配列番号18)
H-(D)KΨ(CONMe)RFYVVIWK(D)K-OH(配列番号19)
H-(D)KΨ(CONMe)RFFVVXWK(D)K-OH(配列番号20)
【0080】
上記ペプチドにおいて、
-構造の左側の「H」は水素原子を表し、
-用語「Ac」は、n末端アミンがアセチル化されていることを意味し、
-構造の右側の「OH」は、C末端COOHのOHを表し、
-「X」はノルロイシン残基を表し、
-構造の右側の「NH2」は、C末端COOHのOHがNH2に置き換えられていることを意味し、
-(D)は、以下のアミノ酸残基が(D)型であることを意味し、用語「hR」及び「hK」は、それぞれホモ-アルギニン及びホモ-リジンを表し、
-「Ψ(CONMe)」は、この用語の両側の2個のアミノ酸残基を結合させる擬ペプチド結合を表し、
-Nleはノルロイシン残基を表す。
【0081】
別の実施形態によれば、本発明のTSP-1由来合成ペプチドは、国際特許出願第2017/194634号に記載されている、一般式(V)の単離環状ペプチド又はそれらの薬理学的に許容できる塩若しくは生物活性のある誘導体であり:
【化2】
【0082】
-Z1は、存在しないか、ヘテロキラル配列D-Pro-L-Pro(p-Pとも示され、pはD-プロリンであり、PはL-プロリンである)又はヘテロキラル配列若しくはβターンを模倣することができる2個のアミノ酸若しくはアミノ酸類似体の任意の配列であって、配列のアミノ酸又はアミノ酸類似体の例は、ニペコチン酸、イソニペコチン酸、ピペリジンカルボン酸、シラプロリン、チオプロリン及びそれらの任意の別の置換誘導体(フルオロ、メチル、ブロモ等)、擬プロリン、置換プロリン、N-メチルアミノ酸、シクロプロピルアミノ酸(Karoyan等、Target in heterocyclic system、(2004)及びKaroyan等、ChemBioChem(2011)、12(7)、1039-1042及びLarregola等、Journal of Peptide Science(2011)、17(9)、632-643を参照されたい)又はビアリールアミノ酸鋳型であり、好ましい実施形態では、Z1はD-Pro-L-Proであり;
【0083】
-B1は、(配列RFYVVMWKの)TSP-1のβストランド7番に由来するペプチド配列X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16を表し、式中、
X7は、存在しないか、セリンあるいはグリシン又はアラニン又はトレオニン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸を指し、
X8は、存在しないか、アルギニンあるいはホモアルギニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、N-メチルアルギニン、ホモフェニルアラニン、又はオルト位、メタ位若しくはパラ位の任意の別の環置換類似体等の類似した特性を有する任意のアミノ酸を指し、例えば、アルギニンに関して、誘導体はグアニド基及び/又は1個以上のアミン基を含む任意の別の側鎖を含み、
X9は、フェニルアラニン、あるいはナフチルアラニン、ホモフェニルアラニン又はp-フルオロ-フェニルアラニン、オルト位、メタ位若しくはパラ位の任意の別の環置換類似体(例えば、p-アミノ-フェニルアラニン又はp-ニトロ-フェニルアラニン)等の類似の特性を有する任意のアミノ酸、及びチロシン又は芳香族側鎖を有する任意のアミノ酸を指し、
X10は、チロシン又は芳香族側鎖を有する任意のアミノ酸、フェニルアラニン又はナフチルアラニン、ホモフェニルアラニン若しくはオルト位、メタ位若しくはパラ位の任意の別の環置換類似体(例えば、p-フルオロ-フェニルアラニン、p-アミノ-フェニルアラニン又はp-ニトロ-フェニルアラニン)等の類似した特性を有する任意のアミノ酸を指し、
X11は、バリン又はロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン、メチオニンを含む類似する特性を有する任意のアミノ酸を指し、
X12は、バリン、又はロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン、メチオニン等の類似する特性を有する任意のアミノ酸を指し、
X13は、メチオニン若しくはリジン又はバリン、メチオニン、ノルロイシン、ロイシン若しくはイソロイシン若しくはtert-ロイシン等の類似する特性を有する任意のアミノ酸を指し、
X14は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ナフチル-アラニン、p-フルオロ-フェニルアラニン、p-アミノーフェニルアラニン、p-ニトローフェニルアラニン、D-プロリノートリプトファン又はD-プロリノ-ホモトリプトファンを指し、
X15は、存在しないか、リジン、あるいはアルギニン、ホモアルギニン、オルニチン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、N-メチルアルギニン又はホモフェニルアラニン又はオルト位、メタ位若しくはパラ位の任意の別の環置換換類似体又はヒスチジン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸を指し、
X16は、存在しないか、グルタミン若しくはアラニン又はアスパラギン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸を指し、
好ましくは、X8が存在しない場合、X7は存在せず、及び/又はX15が存在しない場合、X16は存在せず、
好ましくは、B1は、少なくとも6個のアミノ酸-X9-X10-X11-X12-X13-X14を含み、より好ましくは、B1は、少なくともペプチド断片-FYVVMW-を含み、
【0084】
-Z2は、存在しないか、ヘテロキラル配列D-Pro-L-Pro(p-Pとも示される)又はヘテロキラル配列若しくはβターンを模倣することができる2個のアミノ酸又はアミノ酸類似体の任意の配列であって、配列のアミノ酸又はアミノ酸類似体の例は、ニペコチン酸、イソニペコチン酸、ピペリジンカルボン酸、シラプロリン、チオプロリン及びそれらの任意の別の置換誘導体(フルオロ、メチル、ブロモ等)、擬プロリン、置換プロリン、N-メチルアミノ酸、シクロプロピルアミノ酸(Karoyan等、Target in heterocyclic system、(2004)及びKaroyan等、ChemBioChem(2011)、12(7)、1039-1042及びLarregola等、Journal of Peptide Science(2011)、17(9)、632-643)又はビアリールアミノ酸鋳型であり、好ましい実施形態では、Z2はD-Pro-L-Proであり、
【0085】
-BnはB1又はB2を表し、
【0086】
B2は、存在しないか、(配列GLSVKVVNSの)TSP-1のβストランド8番に由来する6~10個のアミノ酸を含むペプチド配列であり、一実施形態では、B2は以下の配列-X22-X17-X18-X23-X24-X19-X25-X26-X20-X21-を含み、好ましくは、B2は、以下の配列-X22-X17-X18-S-V-X19-V-V-X20-X21-を含み、式中、
X17は、存在しないか、グリシン若しくはアラニン又はセリン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X18は、イソロイシン若しくはロイシン若しくはアラニン又はtert-ロイシン、バリン、メチオニン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X19は、リジン若しくはアラニン、又はアルギニン、ホモアルギニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、N-メチルアルギニン若しくはホモフェニルアラニン若しくは任意の別の環置換類似体(オルト、メタ、パラ)等の類似した特性を有する任意のアミノ酸、ヒスチジン若しくはメチオニン、又はバリン、ロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X20は、存在しないか、アスパラギン若しくはアラニン、又はグルタミンを含む類似した特性を有する任意のアミノ酸、あるいはリジン又はアルギニン、ホモアルギニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、N-メチルアルギニン若しくはホモフェニルアラニン若しくは任意の他の環置換類似体(オルト、メタ、パラ)等の類似した特性を有する任意のアミノ酸、ヒスチジンであり、
X21は、存在しないか、セリン若しくはグリシン、又は類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X22は、存在しないか、セリン若しくはアラニン、又は類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X23は、セリン若しくはアラニン、又はロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X24は、バリン若しくはアラニン、又はロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
X25は、バリン若しくはアラニン、又はロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、また
X26は、バリン若しくはアラニン、又はロイシン、イソロイシン、tert-ロイシン等の類似した特性を有する任意のアミノ酸であり、
好ましくは、X17が存在しない場合、X22は存在せず、及び/又はX20が存在しない場合、X21は存在せず、
好ましくは、B2は、少なくとも6個のアミノ酸-X18-S-V-X19-V-V-を含み、より好ましくは、B2は、少なくともペプチド断片-LSVKVV-を含み、
単離環状ペプチドは、8~26個のアミノ酸、好ましくは14~22個のアミノ酸を含み、別の実施形態によれば、単離環状ペプチドは、18個~22個のアミノ酸を含む。
【0087】
本発明の一般式(V)の単離環状ペプチドは、TSP-1のC-末端ドメインの、βシート7番の少なくとも一部又はβシート7番及び8番の少なくとも一部を含むが、TSP-1のC-末端ドメインの全配列は含まない(Kosfeld MD,Frazier WA(1993)Identification of a new cell adhesion motif in two homologous peptide from the COOH-terminal cell binding domain of human thrombospondin.J biol Chem 268:8806-8814に記載)。これは、該ドメインが、本発明の環状ペプチドと同様の生物活性を有さないためである。
【0088】
明示的に言及する場合を除いて、すべてのアミノ酸は、(D)型又は(l)型のどちらかであるかについては関係がない。
【0089】
したがって、本発明は、式B1-B2、Z1-B1-B2、B1-Z2-B1、B1-B1(各B1は同一又は異なる)及びB1-Z2-B1(各B1は同一又は異なる)の環状ペプチドを含む。
【0090】
好ましくは、単離環状ペプチドは、偶数個のアミノ酸(すなわち、B1及びBnは同じ数のアミノ酸を有し、両方とも6、7、8、9又は10個のアミノ酸の断片からなる。)を含み、単離環状ペプチドは、8~26個のアミノ酸、好ましくは12~22個のアミノ酸を含み、より好ましくは、本発明の単離環状ペプチドは、12、14、16、18、20又は22個のアミノ酸からなる。
【0091】
好ましい実施形態では、B
1及びB
2は、以下に表すように、B
1のX
5がB
2のX
16に面し、B
1のX
8がB
2のX
15に面するように配置される。
【化3】
【0092】
特定の実施形態によれば、Z1及びZ2の両方は、存在しなくてもよく、Z1が2個のアミノ酸からなる場合、Z2は存在せず、Z2が2個のアミノ酸からなる場合、Z1は存在しない。
【0093】
環状ペプチドの合成は、国際特許出願第2017/194634号に記載されている。
【0094】
本発明の単離環状ペプチドの例は、表Iに記載の通りである。
【表1】
【0095】
また、本発明は、上に定義したペプチドの変異体の使用に関し、変異体は、欠失、挿入及び/又は置換等のアミノ酸変異を有するタンパク質を含む。
【0096】
「欠失」は、タンパク質中に1つ以上のアミノ酸が存在しないことを指す。
【0097】
「挿入」は、タンパク質中で1つ以上のアミノ酸が付加することを指す。
【0098】
「置換」は、タンパク質中で、別のアミノ酸残基によって1つ又は複数のアミノ酸が置き換えられることを指す。
【0099】
典型的には、所与のアミノ酸は、類似した特性(例えば、極性、水素結合ポテンシャル、酸性、塩基性、疎水性、芳香性等)を有するアミノ酸で置き換えられる。この所与のアミノ酸は、天然アミノ酸でも非天然アミノ酸でもよい。保存されていると示されているもの以外のアミノ酸は、タンパク質が異なっていてもよく、その結果、類似する機能を有する2個のタンパク質間における、タンパク質又はアミノ酸配列中の類似する割合は異なっていてよく、例えば、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づくクラスター法等の配列図に従って決定されるように、70%~99%であってよい。
【0100】
典型的には、本発明は、本明細書で上に記載した通り、1つ以上の残基が、機能的に類似する残基によって、保存的に置換され、TSP-1由来合成ペプチドの機能的態様を示し、すなわち、所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じ方法で、依然としてICDを誘導することができる、上に定義したペプチドと実質的に同一であるペプチドを含む。
【0101】
保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニン等の1個の非極性(疎水性)残基を別の非極性残基で置換すること、アルギニンとリジン間、グルタミンとアスパラギン間、グリシンとセリン間のように、1個の極性(親水性)残基を別の極性残基で置換すること、リジン、アルギニン又はヒスチジン等の1個の塩基性残基を別の塩基性残基で置換すること、又はアスパラギン酸、グルタミン酸等の1個の酸性残基を別の酸性残基で置換することが挙げられる。
【0102】
用語「保存的置換」は、非誘導体化残基の代わりに化学的誘導体化残基を使用することも含む。
【0103】
「化学的誘導体」は、官能側基の反応によって、化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する、対象ペプチドを指す。
【0104】
このような誘導体化分子の例には、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成する分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は誘導体化され、塩、メチル及びエチルエステル又は別の種類のエステル若しくはヒドラジドを形成することができる。遊離ヒドロキシル基は誘導体化され、O-アシル又はO-アルキルの誘導体を形成することができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化され、N-im-ベンジルヒスチジンを形成することができる。化学的誘導体は、20種類の標準アミノ酸のうち、1つ以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドも含む。例えば、プロリンは、4-ヒドロキシプロリンで置換されてもよく、リジンは、5-ヒドロキシリジンはで置換されてもよく、ヒスチジンは、3-メチルヒスチジンで置換されてもよく、セリンは、ホモセリンで置換されてもよく、リジンは、オルニチンで置換されてもよい。また、用語「保存的置換」という用語は、ペプチド又はタンパク質の二次構造を制御及び安定化することを目的とした非天然アミノ酸の使用を含む。これらの非天然アミノ酸は、本明細書で以下に記載されるように、プロリノアミノ酸、βアミノ酸、N-メチルアミノ酸、シクロプロピルアミノ酸、α,α-置換アミノ酸等の化学修飾したアミノ酸である。また、これらの非天然アミノ酸には、フッ素化、塩素化、臭素化又はヨウ素化によって修飾したアミノ酸を含んでよい。
【0105】
好ましくは、TSP-1由来合成ペプチドは、PKHB1(配列番号2)、PKT16(配列番号17)、PKD10(配列番号21)、PKTD10(配列番号25)、PKTDi2-FF(配列番号34)及びPKTD10-X-RNMe(配列番号27)の中から選択される。
【0106】
好ましくは、TSP-1由来合成ペプチドは、PKHB1(配列番号2)、PKT16(配列番号17)及びPKD10(配列番号21)の中から選択される。
【0107】
TSP-1由来合成ペプチドは、任意の癌又は新生物、例えば、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌、多発性骨髄腫、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、黒色腫及び転移性黒色腫、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、腟癌、外陰癌、並びに子宮癌、好ましくは慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病等の白血病からなる群から選択される癌を治療するために、免疫原性癌細胞死を誘導するために使用される。
【0108】
別の実施形態によれば、本発明は、腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導するためのTSP-1由来合成ペプチドのin vitro使用に関する。
【0109】
本発明で言及される腫瘍細胞は、癌、特に上に記載した癌の少なくとも1つに罹患している対象の腫瘍から得られる細胞である。対象の腫瘍から得られた細胞を同定するために使用される用語「腫瘍細胞」は、本明細書では、循環している腫瘍細胞(例えば、白血病の場合)、腫瘍床から得た細胞、又は転移部から得た細胞を同定するためにも使用されることを理解されたい。
【0110】
また、本発明は、癌の治療のための免疫原性細胞死を誘導するために使用する、「免疫活性のために使用されるワクチン」とも示される、TSP-1由来合成ペプチドで処理される腫瘍細胞に関する。
【0111】
免疫活性のために使用されるワクチンは、腫瘍細胞を培養し、次いで得られた腫瘍細胞の培養物をTSP-1由来合成ペプチドで処理することによって得られる。
【0112】
このような処理の例は、実験部分に記載する。
【0113】
好ましくは、「TSP-1由来合成ペプチドで処理された腫瘍細胞」は、死腫瘍細胞からなり、特に、死腫瘍細胞は、TSP-1由来合成ペプチドで処理した腫瘍細胞の溶解物であり、このような溶解物の調製は当業者に周知である。
【0114】
また、本発明は、本発明に従って使用可能な腫瘍細胞を調製するためのTSP-1由来合成ペプチドの使用、及び細胞をTSP-1由来合成ペプチドで処理する工程を含む、そのような腫瘍細胞、好ましくは死細胞、より好ましくは死細胞溶解物を調製する方法に関する。
【0115】
さらに、本発明は、TSP-1由来合成ペプチド及び薬学的に許容できる担体で処理された、腫瘍細胞、好ましくは死腫瘍細胞、より好ましくは腫瘍細胞溶解物を含む、好ましくは注射可能な医薬組成物に関する。
【0116】
特定の実施形態では、注射される医薬製剤は、腫瘍(個体又は液体)をTSP-1由来合成ペプチドで処理することによって得られ、液体腫瘍(白血病)の患者から血液試料を採取した後、又は手術後に固形腫瘍を採取した後、少なくとも106個の細胞を得て、培養し、TSP-1由来合成ペプチドで腫瘍を処理した後、次いで、細胞を死滅させ、好ましくは溶解させた後、医薬製剤を調製する。医薬製剤の投与(注射)は、液体腫瘍、及び手術後の固形腫瘍に対する、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、特異的キナーゼ阻害剤に基づく療法、抗血管新生剤に基づく療法、抗体に基づく療法、特にモノクローナル抗体に基づく療法から選択される「従来の癌治療」の前、同時に及び/又は後に行うことができる。
【0117】
本発明の目的に対して適切な薬学的に許容できる担体には、これだけに限定されないが、水、塩溶液(例えば、NaCl)、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロース、デンプン等)、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース及びポリビニルピロリドン、脂質、例えばそれだけに限定されないが、リン脂質、スフィンゴ脂質、グリセロール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0118】
本発明の医薬組成物は滅菌することができ、所望される場合、活性化合物に悪影響を及ぼさない補助剤、例えば潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香味料及び/又は芳香剤等と混合することができる。本発明の医薬組成物は、所望される場合、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含むことができる。
【0119】
本発明の医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョンとすることができる。いくつかの適切で厳密な製剤については、例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995、Mack Publishing Companyに記載されている。
【0120】
本発明の医薬組成物は、個体への静脈内投与に適した組成物としての慣習的手順に従って調製することができる。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌の水性等張緩衝剤又は無菌の乾燥凍結剤中の溶液であり、注射前に再構成され、そのような注射は静脈内、筋肉内、皮下、鞘内注射とし、該医薬組成物は、鼻腔及び/又は肺送達を通して吸入することもできる。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、注射によって、例えば腫瘍内注射によって投与するための液体組成物である。腫瘍内注射は、例えば、定位脳手術を使用することによって行うことができる。この投与は、腫瘍を除去するための外科手術の前又は後に行うことができる。第1の例では、該組成物は、腫瘍の成長を阻害し、腫瘍細胞の播種及び対象に対する劇的な症状の発生を回避することを可能にし、第2の例では、該組成物は、外科手術中に除去されなかったすべての腫瘍細胞を破壊するために使用することができる。
【0121】
TSP-1由来合成ペプチド又は「TSP-1由来合成ペプチドで処理された腫瘍細胞」の有効用量は、例えば、選択された投与方法、治療される個体の体重、年齢、性別、及び感受性等の多くの要因を関数として変化する。その結果、最適な用量は、関連する要因に応じて、医療専門家によって個別に決定されなければならない。ヒトにおいて予想される活性用量を予測するために、初めての動物実験を以下に示し、またRocchetti等(2007)によって記載されるfc2及びCT値も使用することができる。
【0122】
別の実施形態によれば、本発明は、TSP-1由来合成ペプチド及び/又は腫瘍細胞、好ましくは死腫瘍細胞、より好ましくは腫瘍細胞溶解物を、それを必要とする個体に、ICDを誘導するのに十分な量で患者に投与する工程を含み、該腫瘍細胞が、患者にICDを誘導するのに十分な量のTSP-1由来合成ペプチドで処理される方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】pdb1ux6からのTSP-1のCTDを表す図である。A.T3
5-7-CTD C974S/N1049K二重変異体が、5mMのカルシウム(分解能1.9Å)の存在下での、Ala813から、15本のβストランドで構成されるPro1151への結晶化を表す図である。B.レクチン様βサンドイッチからの10本のβストランドを表す図である。βストランド7及び8は、それぞれオレンジ色(ストランド7、RFYVVMWK)及び青色(ストランド8、GLSKVVK)で着色されており、ストランドの結合によって形成された逆平行βシートを強調している[7、8]。
【
図2】PKHB1は、T-ALL白血病細胞株において細胞死を誘導する。アネキシンV-APC及びPI染色によって細胞死を測定し、処理なし(対照)並びに100、200及び300μMのPKHB1で2時間処理した、A.CEM、B.MOLT-4ヒト白血病細胞、及びC.L5178Yマウス細胞株をグラフ化した。
【
図3】PKHB1は、白血病細胞株において、カスパーゼ非依存性、カルシウム依存性の細胞死及びミトコンドリア膜の消失を誘導する。A.処理なし(対照)あるいは実験を行ったそれぞれの細胞株において、PKHB1(200μM、2時間)で処理した後に、放置したもの(-)又はQVD若しくはCA2+キレート剤BAPTAで30分、予備培養したものを表すグラフである。B.PKHB1(200μm、2時間)によって誘導されたUΨmの消失が、T-ALL細胞において測定された。細胞蛍光測定法によるプロット図を示す。
【
図4】PKHB1は、in vitroでマウス及びヒトの非癌性初代白血球を残す。A.PKHB1で処理したPBMCsの細胞死を、アネキシン-V/PI染色によって測定した(n=10のドナー)。B.未処理又はPKHB1で処理した各ドナーのCD4+及びCD8+T細胞の割合。C.細胞死をアネキシンV-APCによって測定し、グラフ化した。D.PKHB1で処理したマウスPBMCsの細胞死を、Ann/PI染色によって測定した(n=10)。E.MTTアッセイによって測定した健康なマウスの骨髄、脾臓、胸腺及びリンパ節の細胞生存率。n=9匹のマウス
【
図5】L5178Y-R担癌マウスに対するPKHB1処理によって、腫瘍部位への白血球浸潤が誘導され、白血球細胞の数が向上された。A.H&Eで染色した、対照マウス及びPKHB1処理マウス(18日目)の腫瘍の組織構造である。有糸分裂細胞(赤色矢印)、リンパ球(青色矢印)、好酸球(黄色矢印)、巨細胞(黒色矢印)、壊死(褐色矢印)及び正常組織(緑色矢印)である。B.免疫組織化学染色のために、対照マウス及びPKHB1処理マウスの腫瘍組織において、CD4+及びCD8+細胞を標識した。矢印は、陽性標識を有する細胞を指す。C.未処理の腫瘍を有するマウス(対照)、PKHB1で処理した腫瘍を有するマウス又は腫瘍もなく処理もされていないマウス(健康)のリンパ系器官の細胞数を、トリパンブルー染色を使用して測定した(n=6)。D.血液生体測定分析を使用して得た、対照マウス、PKHB1処理マウス及び健康なマウスの様々種類の白血球をグラフに示す。
【
図6】PKHB1はカルレティキュリン曝露を誘導する。A.左の図は、FACSを使用した、CEM細胞(上)、MOLT-4細胞(中)及びL5178Y-R細胞(下)における表面CRT検出を示す図である。IgGアイソタイプ抗体を含む陰性対照を、点線(IgG-C)及び実線(IgG-PK)で示し、灰色(対照)は基礎量のCRTであり、黒色は処理細胞(PKHB1)である。B.PKHB1で処理された細胞において、CRT-PE染色によって、ECTO-CRTが認められ、核がHoechst 33342で染色され、共焦点顕微鏡法で、40倍で可視化された。
【
図7】PKHB1による処理に応答した、HSP90、HSP70、CRT及びHMGB1タンパク質の発現及び放出。未処理及びPKHB1で処理した、CEM、MOLT-4及びL5178Y-R細胞の細胞溶解物(A)又は上清(B)を使用して、ウエスタンブロッティング及びデンシトメトリー分析を行った。ローディング・コントロールは、β-アクチン及びポンソーレッドであった。
【
図8】PKHB1は、CEM、MOLT-4及びL5178Y-R細胞株において、HMGB1及びATPの放出を誘導する。CC50及びCC100で、PKHB1で2時間,細胞を処理し、次いで、各試料の上清100μLを採取して、ELISA(A)によってHMGB1放出又は生物発光検出によってATP放出(B)を測定した。示されている図は、3回の同様の実験を表すグラフである。
【
図9】PKHB1は、予防的ワクチン接種又は腫瘍への事前曝露及び処理を通じて、短期間及び長期間の免疫記憶を誘導する。A.ワクチン未接種マウス(対照;n=6)又はh1.5×10
6(1.5M;n=4)、3×10
6(3M;n=8)若しくは5×10
6(5M;n=6)のCC100PKHB1で処理したL5178Y-R細胞のワクチンを接種し、L5178Y-R生細胞を再注入したマウスにおける腫瘍成長を示すグラフである。B.ワクチン接種したマウスにおける、経時的生存率。C.200万個のL5178YR細胞を再注入した寛解状態のマウスの長期間抗腫瘍記憶(対照n=6、PKHB1処理n=6)。D.再注入されたマウスにおける経時的生存率。生存率はカプラン・マイヤー法によるグラフで表す。
【
図10】CD47媒介ICDを表す概略図である。PKHB1は、T-ALL細胞において迅速な免疫原性細胞死を誘導して、DAMP放出をもたらす。PKHB1で事前に処理した腫瘍細胞である予防的抗腫瘍ワクチンの投与は、in vivoで腫瘍確立を妨げた。
【
図11】異なるCD47作動薬ペプチドによる2時間の処理後に、MEC-1(A)及びJurkat(B)白血病細胞で観察されたカルレティキュリン曝露を表すヒストグラムである。IgGアイソタイプ抗体を有する陰性対照は点線で示されており、未処理又はペプチドで処理した細胞のCRTは灰色で示される。
【
図12】異なるCD47作動薬ペプチドで2時間処理した後の、MEC-1及びJURKAT白血病細胞で観察されたカルレティキュリン曝露を表すヒストグラムである。グラフは、2回の独立した実験の平均値(±SD)を表す。
【
図13】異なるCD47作動薬ペプチドによる処理の2時間後に、MDA-MB-231細胞(A)、MCF-7(B)、PANC-1(C)及びHCT-116の細胞で観察されたカルレティキュリン曝露を表すヒストグラムである。IgGアイソタイプ抗体を有する陰性対照は点線で示されており、未処理又はペプチドで処理した細胞のCRTは灰色で示される。
【
図14】処理されたMDA-MB-231、MCF-7の細胞におけるHMGB1放出を示す。
【
図15】処理されたMDA-MB-231、MCF-7の細胞におけるHMGB1放出を示す。
【
図16】処理されたMDA-MB-231の細胞におけるATP放出を示す。
【
図17】処理されたMCF-7の細胞におけるATP放出を示す。
【
図18】処理されたPANC-1の細胞におけるATP放出を示す。
【
図19】処理されたHCT116の細胞におけるATP放出を示す。
【
図20】in vitro、ex vivo、及びin vivoにおける、CD47媒介免疫原性細胞死を表す概略図である。KBTX-1は、L5178Y-R細胞株において選択的ICDを誘導し、損傷関連分子パターン(DAMPs)放出をもたらす。DAMPsは、樹状細胞(DC)成熟及び抗原の部分配列の提示及びT細胞活性化を促進して、癌細胞死を誘導する。さらに、治療ワクチンとして投与されたKBTX-1処理細胞は、L5178Y-R腫瘍担持同系マウスにおいて腫瘍退縮を誘導する。CRT、カルレティキュリン、HMGB1、高移動群ボックス1、HSP、熱ショックタンパク質、ICD、免疫原性細胞死、TSP-1、トロンボスポンジン-1。
【
図21】KBTX-1は、CEM及びL5178Y-R細胞株において細胞死を誘導する。アネキシン-V-アロフィコシアニン(アネキシン-V-APC)及びヨウ化プロピジウム(PI)染色によって細胞死を測定し、グラフに表した。グラフは、3回の独立した実験の平均(±SD)を表す。KBTX1によって誘導された細胞死を、前処理なしで放置した細胞(対照)又はBAPTA、Q-VD-oPh(QVD)で前処理(30分間)した細胞と同様に評価し、カスパーゼ非依存性細胞死及びカルシウム依存性細胞死を強調した。
【
図22】KBTX-1は、カルレティキュリン曝露を誘導する。A.グラフ(左側)は、FACSを使用した、CEM(上)及びL5178Y-R細胞(下)における表面CRT検出を表す。IgGアイソタイプ抗体を含む陰性対照を、点線(IgG-C)及び実線(IgG-KB)で示し、灰色(対照)は基礎量のCRTであり、黒色は処理された細胞(KBTX-1)である。B.CRT-PE染色によって、KBTX-1で処理した細胞においてECTO-CRTが観察された。
【
図23】KBTX1は、CEM及びL5178Y-R細胞株において、HMGB1及びATPの放出を誘導する。CC
100のKBTX-1で2時間,細胞を処理し、次いで、各試料の上清100μLを採取して、以下を測定した。A及びBは、CEM及びL5178Y-Rに対する生物発光検出によってATP放出を測定した。C及びDは、ELISAアッセイによって、HMGB1放出を測定した。示されるグラフによって、3回実施された3つの同様の実験を表す。
【
図24】KBTX-1-TCL治療ワクチン接種は、長期間の抗腫瘍記憶を誘導する。治療ワクチン接種後に寛解状態にあるマウスに、2×10
6個のL5178Y-R生細胞を再注入した。グラフは、KBTX-1-TCLで事前に処理した後寛解したマウスへの、L5178Y-R生細胞(KBTX-1-TCL-Rechallenge)を再注入したマウスを示す。治療的ワクチン接種は、以下のように長期間の抗腫瘍記憶に対する評価の前に行った。L5178Y-R細胞を移植し、腫瘍が100mm
3に達したときにKBTX-1-TCL(5×10
6個のCC
100のKBTX-1で処理したL5178Y-R細胞)で処理を開始し、次いで、KBTX-1-TCLを3日に1回、2週間(合計4回の注射)投与した。
【実施例】
【0124】
実施例1
I.材料及び方法
血液及びPBMCsの単離
書面によるインフォームドコンセントを得た後、10名の健康な志願者から末梢血を採取した。この研究は、ヌエボ・レオン自治大学生物科学部(Universidad Autonoma de Nuevo Leon、College of Biological Sciences)の倫理委員会によって承認された。動物実験は、動物倫理委員会(Animal Ethical Committee:CEIBA)、第01/2015号によって承認された。すべての実験は、メキシコの規定、NOM-062-ZOO-1999に従って実施した。
【0125】
屠殺したマウスの血液を心穿刺によって採取し、ヒトの血液は静脈穿刺によって採取した。末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell:PBMCs)の単離を、Ficoll-Hypaque-1119(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、USA)を使用した密度勾配遠心分離によって行った。4×105個の白血球細胞を洗浄し、播種した。一次抗体(CD4、MT310 sc-19641及びCD8、32-M4-sc-1177、サンタクルズ、カルフォルニア州、米国)を使用して、CD4+/CD8+の分類を行った。
【0126】
脾臓、胸腺、リンパ節、及び骨髄の細胞の抽出
屠殺後の雌のBALB/cマウスから脾臓、胸腺、リンパ節、及び骨髄の細胞を得た。灌流によって脾臓細胞を得て、浸軟によって胸腺細胞及びリンパ節細胞を得て、骨髄細胞(マウス1匹あたり1つの大腿骨及び脛骨から)をPBSで洗い流した。細胞を洗浄し、トリパンブルー染色を使用して計数した。
【0127】
細胞培養
CEM、MOLT-4(T-急性リンパ芽球性白血病、T-ALL)、及びL5178Y-R(マウスリンパ芽球性T細胞株)を、ATCCから得た。ヒト及びマウスのPBMCs、ヒトCD4+及びCD8+T細胞、並びに一次リンパ器官の細胞を、健康な個体から得た。細胞を、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO、Life Technologies、グランドアイランド、ニューヨーク州、米国)を補充したRPMI-1640培地で維持し、37℃、CO2が5%である制御された加湿状態で培養した。細胞数の測定は、ATCCの標準プロトコルによって提案されているように、トリパンブルー(0.4%、Sigma-Aldrich)、ノイバウアーチャンバ及び光学顕微鏡(Zeiss Primo Star)を使用して行った。
【0128】
フローサイトメトリー細胞死の誘導及び阻害
アネキシン-V-アロフィコシアニン(Ann-V-APC0.1μg/ml、BDPharingen、サンジョーズ、カルフォルニア州、米国)、ヨウ化プロピジウム(PI、0.5μg/ml、Sigma-Aldrich)及びテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE、20nM、Sigma-Aldrich)を、それぞれ、BD AccuryC6フローサイトメーター(BDBiosciences)における、ホスファチジルセリン曝露、細胞生存率、及びミトコンドリア膜電位差(UΨm)の定量に使用した(合計10,000個の細胞)。FlowJoソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0129】
1×106細胞/mLをPKHB1で(示されるように)2時間処理した。阻害アッセイのために、カルシウムキレート剤、BAPTA(5mM、CalbioChem、Merck、ビレリカ、マサチューセッツ州、米国)又はパンカスパーゼ阻害剤Q-VD-OPh(QVD、10μM、BioVision、ミルピタス、カルフォルニア州、米国)をPKHB1の30分前に添加した。
【0130】
全血球計算(CBC)
マウスから得たヘパリン処理血液を、自動血液分析装置KontroLabを使用して評価した。塗抹を行い、メタノールで固定し、ライトで染色し、顕微鏡で観察して、白血球細胞分画を行った。
【0131】
カルレティキュリン曝露
1×106細胞/mLをプレートに載せ、PKHB1で処理し、2時間培養した。細胞を回収、洗浄、及びFACS緩衝液中のカルレティキュリン-PE(FMC-75、Enzo Life Science、ファーミングデール、ニューヨーク州、米国)抗体(1:1000)で染色した。室温の暗所で1時間培養した後、細胞を洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁して、フローシトメトリーを評価した。共焦点顕微鏡観察(OlympusX70)のために、ポリ-リジンを滅菌カバーガラスに24時間添加し、1×106細胞/mLを播種した。PKHB1を添加し、2時間培養した。次いで、細胞をカルレティキュリン-PE抗体(1:500)及びHoechstで染色し、1時間培養し、共焦点顕微鏡によって評価した。
【0132】
ウエスタンブロッティング
1×106細胞/mLを無血清培地に播種し、PKHB1(各細胞株に対してCC50及びCC100)で処理するか、又は2時間放置した(対照)。上清を回収し、溶解緩衝液(20mMのトリス pH6.8、2mMのEDTA、300mMのNaCl及びSDS2%)で溶解した。
【0133】
DCタンパク質アッセイキット(Bio-Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)を使用してタンパク質濃度を測定し、SDS-PAGEゲルに50μgのタンパク質をロードした。ブロッティング後、HMGB1(HAP46.5:sc-56698)、HSP70(C92F3A-5:sc-66048)、HSP90(F-8:SC-13119)及びカルレティキュリン(F-4:sc373863)に対する一次抗体(1:1000)をニトロセルロースフィルタにプローブした。抗マウス又は抗ラビット-HRPは、二次抗体として機能した(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州、米国)。ECL基質法(Thermo Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)を用いて可視化を行った。
【0134】
ATP放出アッセイ
1×106細胞/mLを、PKHB1(各細胞株に対してCC50及びCC100)で2時間処理した。
【0135】
上清を使用して、製造業者の指示書に従って、ルシフェラーゼアッセイ(ENLITENキット、Promega、マディソン、ウィスコンシン州、米国)によって、細胞外ATPを評価した。マイクロプレートリーダー(Synergy HT、BioTek、Software Gen5、ウィヌースキ、バーモント州、米国)において、560nmで生物発光を評価した。
【0136】
HMGB1放出アッセイ
未処理及び処理した(各細胞株に対してPKHB1CC50及びCC100)白血病細胞(1×106細胞/mL)の上清を使用して、製造業者の指示書に従って、HMGB1 ELISAキットを使用して、CEM、MOLT-4又はL5178Y-R細胞((ヒト用、マウス用それぞれの)BioAssayELISAキット、US biological Life Science、セーレム、マサチューセッツ州、米国)の細胞外HMGB1を測定した。450nmで吸光度を評価した。
【0137】
in vivoモデル
6~8週齢の雌のBALB/cマウスを、制御された環境条件(25℃及び12時間の明/暗サイクル)で維持し、げっ歯類用の餌(Science diet)及び水を制約なしに与えた。
【0138】
-予防ワクチンL5178Y-R細胞(1.5、3、5×106個)を300μMのPKHB1(CC100)で2時間処理した。トリパンブルー染色及びフローサイトメトリーを使用して細胞死を確認した。処理した細胞を、100μlのPBS中で左後脚に皮下接種し、7日後に、2×106個の未処理対照細胞を右後脚に接種した(42)。
【0139】
-腫瘍の確立及び測定100μLのPBS中の1×106個のL5178Y-R細胞を、左脚後部に皮下注射することによって、腫瘍を確立した。キャリパ(デジマチックキャリパ、ミツトヨ株式会社、日本)及びデジタル重量計(American Weight Scale-600-BLK、米国)を用いて、腫瘍の体積及び質量を週3回測定した。腫瘍が100mm3に達したとき、最初のPKHB1注射(200μg)を注入した(0日目)。腫瘍の体積は、式、腫瘍体積(mm3)=4π/3*A*B*Cを用いて決定した。
【0140】
長期間記憶アッセイPKHB1処理後に完全に寛解したマウスに、100μLのPBS中の2×106個の細胞を、反対肢に再注入し、腫瘍体積を上記のように測定した。
【0141】
組織学及び免疫組織化学
組織及び器官を得て、10%の中性ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋し、切片化(厚さ5μm)して、H&E(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、米国)で染色した。
【0142】
外部の獣医病理学者(National professional certificate2593012)が組織病理学的分析を行った。適切な一次抗体(CD4/CD8)を使用し、ビオチン化二次抗体を添加することによって、免疫組織化学を行った。最後に、マウント液として樹脂を使用して、ヘマトキシリンで対比染色したスライドをカバーガラスで覆い、顕微鏡で観察する。
【0143】
統計分析
すべてのin vivo実験において、マウスを異なる群に無作為に割り当てた。独立した実験を3回繰り返した。GraphPad Prismソフトウェア(サンディエゴ、カルフォルニア州、米国)を使用してマン・ホイットニー検定及び両側・対応のないスチューデントT検定を行い、平均値をSDとして示した。p値は、p<0.05、p<0.01及びp<0.001の通り有意とみなした。
【0144】
II.結果
CD47作動薬ペプチドPKHB1は、ヒト及びマウスの腫瘍リンパ芽球性T細胞株において細胞死を誘導する。
しだいに増やしたPKHB1濃度(100,200及び300μM)で2時間接種された細胞は、Ann-V-APC/PI陽性CEM細胞(
図2A)、MOLT-4細胞(
図2B)及びL5178Y-R細胞(
図2C)の数の増加を示すため、PKHB1は、濃度依存方式で細胞死を誘導する。約50%の細胞死(CC50)を誘導する細胞傷害性濃度は、CEMでは、200μMであり、MOLT-4では300μMであり、L5178Y-Rでは200μMである。
【0145】
PKHB1は、CEM、MOLT-4及びL5178Y-R細胞におけるミトコンドリア膜電位の消失を伴う、カスパーゼ非依存性、カルシウム依存性の細胞死を促進する。
次に、T-ALL細胞におけるPKHB1誘導細胞死が、カスパーゼ非依存性(43)、持続的カルシウム流入及びミトコンドリア膜電位(UΨm)消失(33、44)を含む、CD47媒介細胞死に関する、上に記載した主な生化学的特徴を共有するかについて評価した。したがって、pan-カスパーゼ阻害剤(Q-VDーOPH)又は細胞外Ca2+キレート剤(BAPTA)で予備培養し、細胞死を試験した。カスパーゼ阻害は、CEM細胞(51%±4~48%±5)、MOLT-4細胞(57%±4~51%±6)及びL5178Y-R細胞(52%±5~49%±3)におけるPKHB1誘導殺傷を妨げなかった。しかし、細胞外カルシウムキレート化は、すべての場合においてPKHB1誘導細胞死を有意に減少させた。CEM(51%±4~18%±11)、MOLT-4(57%±4~38%±3)及びL5178Y-R(52%±5~21%±8)(
図3A)であった。固定化した抗CD47(B6H12)によって誘導された細胞死に対するカルシウム依存性が、CEM細胞(SF1)においても裏付けられた。
【0146】
また、CC50のPKHB1による処理は、CEMで49%±5、MOLT-4で61%±4、L5178Y-Rで51%±8である、T-ALLにおけるUΨmの消失を誘導することを示した(
図3B)。
【0147】
PKHB1処理は、ヒト及びマウスの非癌性初代白血球を残す。
健康なドナーのヒトPBMCs並びにCD4+及びCD8+ヒトT細胞における、PKHB1の選択性についてテストした(
図4A、
図4B、
図4Cをそれぞれ参照)。
【0148】
さらに、間接的な細胞生存率分析によって、マウスPBMCs(
図4D)、並びに、健康な(腫瘍がなく処理されていない)BALB/cマウスの骨髄(BM)、脾臓、胸腺及びリンパ節の初代培養物において、PKHB1の選択性をテストした(
図4E)。すべての器官が新生物細胞(SF2)と同様のレベルのCD47を発現しても、PKHB1処理によって、ヒト及びマウスの非癌性細胞の細胞生存率に有意な影響を及ぼさなかった(
図4)。これらの結果は、悪性細胞においてのみ細胞死を誘導するPKHB1の選択性を示した。
【0149】
PKHB1で処理したL5178Y-R腫瘍担持BALB/cマウスは、腫瘍部位への白血球浸潤及び白血球細胞数の改善を示す。
PKHB1処理がin vitroで健康な白血球に影響を及ぼさなかったことを確認した後、in vivoにおける効果を評価した。雌の免疫正常BALB/cマウスを使用してL5178Y-R腫瘍細胞を生成し、マウスに200μgのPKHB1を毎週腹膜内に処理した。18日後、すべての対照マウスを屠殺し、PKHB1処理マウスの一部を、比較のために、無作為に選択して、屠殺した。腫瘍を解剖し、それらの形態学的及び細胞的差異を分析した(
図5A)。対照群は、L5178Y-R細胞とみられる未分化リンパ系細胞を提示し、それらの一部は有糸分裂を行っていた(
図5Aの左)。反対に、PKHB1処理マウスにおける腫瘍は、リンパ球と多形核細胞(polymorphonuclear cell:PMN)との混合物を含有していた(
図5Aの中央)。
【0150】
さらに、30日目に大部分のマウスにおいて完全な腫瘍退縮が観察され、組織スライドは、接種部位における抗腫瘍免疫応答であるとみられるものを示している(
図5Aの右)。したがって、腫瘍切片に対する免疫組織化学の実施が決定され、PKHB1処理マウスにおけるCD4+及びCD8+細胞の存在を示した(
図5B)。
【0151】
さらに、対照マウス、PKHB1処理マウス又は健康なマウスのリンパ系器官の細胞数の測定を行った。注目すべきことに、PKHB1処理マウスでは、BM、脾臓及び胸腺の細胞の数が有意に増加し、また、リンパ節の細胞数に有意な減少が観察された(
図5C)。さらに、PKHB1処理マウスにおける同じ器官の細胞数は、健康なマウスのものと類似していた。さらに、WBC分画を実施したところ、健康なマウスとPKHB1処理マウスとの間に有意差は示されなかったが、非処理担癌マウスは、すべての白血球型において他の2つの群との間に有意差を示した(
図5D)。結果として、上記により、PKHB1が腫瘍担持マウスの抗腫瘍免疫系を改善することが示唆され、完全な腫瘍退縮における免疫系の関与の可能性が示される。
【0152】
PKHB1処理は、T-ALL細胞においてDAMPsの曝露及び放出を誘導する。
T-ALL細胞におけるいくつかのDAMPsの曝露及び放出の評価を行った。
図6では、フローシトメトリー(
図6A)及び共焦点顕微鏡による観察(
図6B)で分析したところ、CC50のPKHB1で培養した、CEM、MOLT-4及びL5178Y-R細胞が、CRT曝露において、有意な増加を示したことが観察できる。
【0153】
次いで、HSP90、HSP70、CRT及びHMGB1の発現及び放出を測定した。試験を行った各細胞株について、未処理の細胞並びにCC50及びCC100でPKHB1処理した細胞の細胞溶解物及び上清中におけるウエスタンブロッティングによって、これらのDAMPsの存在を決定した。
図7Aは、PKHB1で処理した細胞の細胞溶解物中の、HSP90、HSP70、CRT及びHMGB1の発現の低下を示す。反対に、これらのDAMPsの発現は、未処理細胞と比較して、PKHB1処理上清において増加した(
図7B)。このような結果は、PKHB1処理によって、熱ショックタンパク質、CRT及びHMGB1の細胞外培地への放出が促進されることを示している。
【0154】
HMGB1放出は,ウエスタンブロッティングによってはほとんど検出されなかったので、ELISAアッセイを行った。
【0155】
HMGB1の放出は、試験を行った細胞株及び使用したPKHB1の濃度に応じて変動した。CC100のPKHB1を使用した場合、CEM、MOLT-4及びL5178Y-R細胞株において、未処理対照と比較したHMGB1放出はそれぞれ6倍、4倍及び2倍であったが、CC50のPKHB1を使用した場合、MOLT-4細胞のHMGB1放出は、対照と比較して8倍であった(
図8A)。
【0156】
免疫原性死が行われているという別の重要な指標は、ATP放出である。
【0157】
したがって、生物発行アッセイを行ったところ、CC50及びCC100のPKHB1処理細胞の上清において、ATPの存在が有意に増大したことが見出された(
図8B)。
【0158】
予防ワクチンとしてのPKHB1処理細胞は、L5178Y-R細胞の腫瘍確立を妨げた。
PKHB1処理がICDを誘導することを示す以前のデータを考慮すると、次の工程は、PKHB1処理がin vivoでICDを誘導するかどうかを確認するための判断基準である予防ワクチン接種を実施することであった。ワクチンは、in vitroでCC
100のPKHB1で処理したL5178Y-R細胞の使用に基づく。使用したマウスの4つの群は、i.ワクチンなしの対照群、ii.1.5×10
6個のPKHB1処理細胞を有する1.5Mワクチン群、iii.3×10
6個のPKHB1処理細胞を有する3Mワクチン群、iv.5×10
6個のPKHB1処理細胞を有する5Mワクチン群である。結果は、PKHB1処理細胞を含有するワクチン接種が、L5178Y-R腫瘍の確立を妨げ、ペプチドに起因するより多くの死細胞が、ワクチン投与の7日後に接種された腫瘍細胞に対して良好な応答を示したことを実証した(
図9)。対照群では、6匹中6匹のマウス(100%)が生細胞の接種後に腫瘍を発症し(
図9A、上段左)、1.5Mワクチン群では、4匹中3匹のマウス(75%)が腫瘍を発症し(
図7A、上段右)、3Mワクチン群では、14匹中7匹(50%)が腫瘍を発症し(
図7A、下段左)、5Mワクチン群では、いずれのマウスも(0%)腫瘍を発症しなかった(
図7A、下段右)。各群のマウスの60日間生存率は腫瘍成長と一貫しており、5Mワクチン群では100%であった(
図9B)。
【0159】
PKHB1処理は腫瘍確立の長期間の予防を誘導した。
さらに、PKHB1処理後に完全な腫瘍退縮を示したマウスにおける長期間の腫瘍予防を評価した。これらの実験では、2×10
6個のL5178Y-R生細胞を再注入された6匹のマウス中1匹(約17%)が腫瘍を発症したが、ナイーブ対照群では、6匹中6匹(100%)が腫瘍成長を示した(
図9C)。カプラン・マイヤー曲線を用いて生存率をグラフ化したところ、再注入されたマウスは90%の生存率を示した(
図9D)。
【0160】
III.考察
本アッセイでは、i)CD47媒介細胞死の保存された特徴を有するT-ALL細胞において選択的に細胞死を誘導するPKHB1ペプチドの能力、及びii)このタイプの細胞死が免疫原性であるかどうかを決定するPKHB1の能力を評価した。
【0161】
CEM、MOLT-4及びL5178Y-R細胞におけるPKHB1誘導死(
図2)は、原形質膜透過化とともに、ホスファチジルセリン曝露を示唆する高速カスパーゼ非依存性プロセスであること、悪性細胞に選択的なミトコンドリア膜電位の喪失であることを観察した。(
図3)(
図4)。さらに、以前にCLL細胞で観察されたように、PKHB1によって誘導された細胞死に対するカルシウム依存性がT-ALL細胞に保存されていることが観察された(33)。
【0162】
これらの結果は、腫瘍担持マウスへのPKHB1による処理が、腫瘍部位への白血球浸潤を誘導し、異なるリンパ系器官における白血球細胞数を改善することを示した(
図5)。実際、PKHB1は、T-ALL細胞において、DAMPs曝露及び放出を促進することが可能であった。CRTは、細胞死が免疫原性であることを決定するために必要であることが示されている主要な分子の1つである(6、18)。PKHB1処理後のT-ALLに対する、フローサイトメトリー及び共焦点顕微鏡による観察によって、CRTの曝露が実証されている(
図6)。免疫分野における様々な研究は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(Low Density Lipoprotein Receptor-related Protein1:LRP1)に結合することによって,APCsによる抗原取込みを助ける「イート・ミー」シグナル(6、15、46,、47)としてのCRT曝露の重要性を強調している(7)。癌細胞におけるCRT発現とCD47発現との間には密接な相互関係がある(47)。実際、最近、トロンボスポンジン(TSP)による乳癌細胞株の処理が、TSPとCRT及びCD47との相互作用を促進し、異種移植マウスにおいて細胞オートファジー及び腫瘍成長の阻害を誘導することが明らかになった(48)。このような結果は、TSP又はTSP由来のペプチドが、CD47活性化及びCRT曝露との相互関係を介して、細胞死を誘導することができるという考えを支持する。また、CEM、MOLT-4及びL5178Y-Rの細胞株に対するPKHB1処理によって、HSP70及びHSP90、HMGB1並びにATPが放出された(
図7及び
図8)。これらの分子の放出は、免疫系の活性化及び強力な抗癌免疫の誘導に関与する(17、49、50)。しかし、DAMPsの放出は、ICD誘導を確実にするのに十分ではなく、in vivoワクチン接種が判断基準と考えられている(1、18、21)。多くの場合で腫瘍成長を妨げたため、in vivoアッセイは、PKHB1が短期間及び長期間の免疫記憶を活性化し、免疫正常マウスモデルにおいて防御的抗癌応答を誘導することを示した(
図10)。ワクチン中のPKHB1処理細胞の数が増すと、その防御的抗腫瘍応答が改善される(
図9)。
【0163】
実施例2
T-ALL細胞に対するDAMPs曝露及び放出を促進することができるPKHB1と同じ方法で、より強力なTSP1-C末端結合ドメイン擬ペプチドがDAMPs曝露を誘導する能力を、より低い濃度で評価した。CRTは、細胞死が免疫原性であることを決定するために必要であることが示されている主要な分子の1つであるため、該TSP-1-C-末端結合ドメイン擬ペプチドで処理した際の様々な癌細胞株(MEC-1、Jurkat、MDA-MB-231、MCF7、Panc-1、HCT116)に対するCRTの放出、並びにATP及びHMGB1の放出(MDA-MB-231、MCF7、Panc-1、HCT116)を評価した。
【0164】
以下の例では、
PKD10(配列番号21)及びKBTX-1、
PKTD10-X-RNMe(配列番号27)及びKBTX-5、
PKTDi2-FF(配列番号34)及びKBTX-7、並びに
PKTD10(配列番号25)及びKBTX-9は、それぞれ同様のペプチドを示す。
【0165】
カルレティキュリン曝露
MEC-1、JURKAT細胞を培養し(5×106細胞/mL)、未処理又は以下に記載されるように示されるマイクロMの濃度である、異なる作動薬ペプチドで処理した。
【0166】
【0167】
次いで、試験を行った各ペプチドに、細胞を2時間培養した。
【0168】
FACS緩衝剤中で、細胞を回収、洗浄、及びカルレティキュリン-フィコエリトリン(カルレティキュリン-PE、FMC-75、Enzo Life Science、ファーミングデール、ニューヨーク州、米国)抗体(1:1000)で染色した。室温(Room Temperature:RT)の暗所で1時間後、細胞を洗浄し、100μLのFACS緩衝液(PBS1×及び2%のウシ胎児血清)に再懸濁して、BD FACS Cantoフローシトメトリー(BDBiosciences)(総数:細胞10,000万個)よって評価した。FlowJoソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0169】
結果を
図11に示す。異なるCD47作動薬ペプチドによる2時間の処理後に、MEC-1(A)及びJurkat(B)白血病細胞で観察されたカルレティキュリン曝露を表すヒストグラムである。IgGアイソタイプ抗体を含む陰性対照は点線で示され、未処理又はペプチドで処理した細胞のCRTは灰色で示され、また
図12は、異なるCD47作動薬ペプチドで2時間処理した後の、MEC-1及びJURKAT白血病細胞で観察されたカルレティキュリン曝露を表すヒストグラムである。グラフは、2回の独立した実験の平均(±SD)を表す。
【0170】
MDA-MB-231、MCF-7、PANC-1及びHCT116の細胞を培養し(1×106細胞/mL)、未処理、又は以下に記載されるような異なるCD47作動薬ペプチドで処理した。
【0171】
【0172】
次いで、細胞をペプチドで2時間培養した。
【0173】
FACS緩衝剤中で、細胞を回収、洗浄、及びカルレティキュリン-フィコエリトリン(カルレティキュリン-PE、FMC-75、Enzo Life Science、ファーミングデール、ニューヨーク州、米国)抗体(1:1000)で染色した。室温(Room Temperature:RT)の暗所で1時間後、細胞を洗浄し、100μLのFACS緩衝液(PBS1×及び2%のウシ胎児血清)に再懸濁して、BD FACS Cantoフローシトメトリー(BDBiosciences)(総数:細胞10,000万個)よって評価した。FlowJoソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0174】
図13は、異なるCD47作動薬ペプチドによる処理の2時間後に、MDA-MB-231(A)、MCF-7(B)PANC-1(C)及びHCT-116の細胞で観察されたカルレティキュリン曝露を表すヒストグラムである。IgGアイソタイプ抗体を有する陰性対照は点線で示されており、未処理又はペプチドで処理した細胞のCRTは灰色で示される。
【0175】
HMGB1放出
MDA-MB-231及びMCF-7の細胞を培養し(1×106細胞/mL)、未処理、又は以下に記載されるような異なるCD47作動薬ペプチドで処理した。
【0176】
【0177】
次いで、細胞をペプチドで2時間培養した。
【0178】
上清を回収し、2000rpm/10分で遠心分離し、-70℃で凍結させた。
【0179】
製造業者による指示書に従って、HMGB1のChemi-Luminiscent ELISAキットを使用した。
【0180】
【0181】
ATP放出
MDA-MB-231、MCF-7、PANC-1及びHCT116の細胞を培養し(1×106細胞/mL)、未処理、又は以下に記載されるような異なるCD47作動薬ペプチドで処理した。
【0182】
【0183】
次いで、細胞をペプチドで2時間培養した。
【0184】
上清を回収し、2000rpm/10分で遠心分離し、-70℃で凍結させた。
【0185】
製造業者による指示書に従って、ATP用のENLITEN ATP ASSAY SYSTEM BIOLUMINESCENCE DETECTIONキットを使用した。
【0186】
【0187】
結論
これら事例の結果は、TSP1-C末端結合ドメイン疑ペプチドが、DAMPs曝露を誘導することができることを実証し、少なくとも主要分子のCRTの1つは、これらの疑ペプチドによって誘導される細胞死が免疫原性であり、予防的及び治療的ワクチン接種を可能にすると結論付ける。
【0188】
この最後の点は、急性リンパ性白血病T-ALL細胞株(CEM細胞、ヒト)でPKD10(配列番号21)(KBTX-1)を用いて、及び免疫正常BALB/cマウスでそれらのマウスに相同であるL5178Y-R(T-マウス腫瘍リンパ芽球細胞株)をin vivoで用いて実証された(
図20参照)。
【0189】
材料及び方法
in vivoモデル
6~8週齢の雌のBALB/cマウスを、制御された環境条件(25℃及び12時間の明/暗サイクル)で維持し、げっ歯類の餌(LabDiet、セントルイス、ミズーリ州、米国)及び水を制限なしに与えた。
【0190】
100μLのPBS中の2×106個のL5178Y-R細胞を左脚後部に皮下注射することによって、腫瘍を確立した。キャリパ(デジマチックキャリパ、ミツトヨ株式会社、日本)及びデジタル重量計(American Weigh Scale-600-BLK、米国)を用いて、腫瘍の体積及びマウスの重量をそれぞれ週3回測定した。腫瘍体積は、式、腫瘍体積(mm3)=4π/3*A(長さ)*B(幅)*C(高さ)によって決定した。腫瘍が100mm3に達したとき、KBTX1腫瘍細胞溶解物(KBTX1-TCL)の最初の治療ワクチンを以下のように適用した。
【0191】
L5178Y-R細胞(5×106個)を、無血清RPMI培地中で2時間(CC100)、KBTX-1により、in vitroで処理した。細胞死は上に報告したように確認された。処理した細胞を、100μlの無血清培地で右後脚に週に2回、皮下接種した。対照を、100μlの無血清培地で処理した。
【0192】
長期間の記憶の評価のために、本発明者等は、ナイーブマウス6匹(対照)及びKBTX1-TCL処理語完全寛解したマウス(腫瘍のない状態が60日を超えるマウス)6匹を使用した。両群において、100μLのPBS中の2×106個のL5178Y-R生細胞を左後脚に注射した。後者の群をKBTX1-TCL再注入と命名した。上に記載したように、腫瘍体積及び生存率を評価した。
【0193】
統計分析
すべてのin vivo実験において、マウスを異なる群に無作為に割り当てた。少なくとも3回の独立した実験を3回独立して繰り返した。GraphPad Prismソフトウェア(サンディエゴ、カルフォルニア州、米国)を使用してマン・ホイットニー検定及び両側・対応のないスチューデントT検定を行い、平均値を±SDとして示した。p値は、p<0.05、p<0.01及びp<0.001の通り有意とみなした。
【0194】
結果
KBTX-1は、CEM及びL5178Y-R細胞株において細胞死を誘導する。アネキシン-V-アロフィコシアニン(アネキシン-V-APC)及びヨウ化プロピジウム(PI)染色によって細胞死を測定し、グラフに表した。グラフは、3回の独立した実験の平均(±SD)を表す。KBTX1によって誘導された細胞死を、前処理なしで放置した細胞(対照)又はBAPTA、Q-VD-oPh(QVD)で前処理した細胞(30分間)と同様に評価し、カスパーゼ非依存性及びカルシウム依存性の細胞死導入に焦点を当てた。(
図21)。
【0195】
KBTX-1は、カルレティキュリン曝露を誘導する。A.グラフ(左側)は、FACSを使用した、CEM(上)及びL5178Y-R細胞(下)における表面CRT検出を表す。IgGアイソタイプ抗体を含む陰性対照を、点線(IgG-C)及び実線(IgG-KB)で示し、灰色(対照)は基礎量のCRTであり、黒色は処理された細胞(KBTX-1)である。B.CRT-PE染色によって、KBTX-1で処理した細胞においてECTO-CRTが観察された(
図22)
【0196】
KBTX1は、CEM及びL5178Y-R細胞株において、HMGB1及びATPの放出を誘導する。CC
100のKBTX-1で2時間,細胞を処理し、次いで、各試料の上清100μLを採取して、以下を測定した。A及びBは、CEM及びL5178Y-Rに対する生物発光検出によってATP放出を測定した。C及びDは、ELISAアッセイによって、HMGB1放出を測定した。示されるグラフによって、3回実施された3つの同様の実験を表す(
図23)
【0197】
KBTX-1-TCL治療ワクチン接種は、長期間の抗腫瘍記憶を誘導する。治療ワクチン接種後に寛解状態にあるマウスに、2×10
6個のL5178Y-R生細胞を再注入した。グラフは、KBTX-1-TCLで事前に処理した後寛解したマウスへの、L5178Y-R生細胞(KBTX-1-TCL-Rechallenge)を再注入したマウスを示す。治療ワクチンは、次のように、実現化された長期間の抗腫瘍記憶の以前の評価である。L5178Y-R細胞を移植し、腫瘍が100mm
3に達したときに、KBTX-1-TCL(5×10
6個のCC
100KBTX-1で処理されたL5178Y-R細胞)で処理を開始し、次いで、KBTX-1-TCLを3日ごとに2週間(合計4回の注射)投与した(
図24)。
【0198】
結論
この研究は、KBTX-1-TCLが、確立されたL5178Y-R腫瘍においてex vivo及びin vivoで抗腫瘍免疫応答を導入することができたことから、CD47作動薬ペプチドである、KBTX-1によって誘導されるICDが、癌疾患に対処する治療的可能性があることを実証した。さらに、KBTX-1-TCL処理マウスは、長期免疫記憶を発現した。
【0199】
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【0200】
配列表
KRFYVVMWKK (配列番号l).
PKHB1: (D)K-R-F-Y-V-V-M-W-K-(D)K ; (配列番号2)
Ac-RFYVVMWK-NH2 (配列番号3)
Ac-KRFYVVMWKK-NH2 (配列番号4)
H-(D)KAFYVVMWK(D)K-OH (配列番号5)
H-(D)KRFYVV(Nle)WK(D)K-OH (配列番号6)
H-FYVVXW-OH (配列番号7)
H-FYVVXW-NH2 (配列番号8)
Ac-FYVVXW-OH (配列番号9)
Ac-FYVVXW-NH2 (配列番号10)
H-(D)KFYVVXW(D)K-OH (配列番号11)
H-FYVVKW-OH (配列番号12)
H-FYVVKW-NH2 (配列番号13)
H-(D)K ψ(CONMe)R F Y V V M W K (D)K-OH (配列番号14)
H-(D)K R F Y V V M W ψ(CONMe)K (D)K-OH (配列番号15)
H-(D)K ψ(CONMe)R F Y V V M W ψ(CONMe)K (D)K-OH (配列番号16)
H-(D)K ψ(CONMe)R F Y V V X W K (D)K-OH (配列番号17, PKT16)
H-(D)K ψ(CONMe)R F Y V V L W K (D)K-OH (配列番号18)
H-(D)K ψ(CONMe)R F Y VV I W K (D)K-OH (配列番号19)
H-(D)K ψ(CONMe)R F F V V X W K (D)K-OH (配列番号20)
【表6】
【配列表】
【国際調査報告】