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特表2022-505919抗血小板トロンボリシンの新しい使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】抗血小板トロンボリシンの新しい使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20220106BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523005
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2019080446
(87)【国際公開番号】W WO2020087855
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】201811267026.7
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514259794
【氏名又は名称】兆科薬業(合肥)有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHAOKE PHARMACEUTICAL (HEFEI) COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楚 在▲せん▼
(72)【発明者】
【氏名】李 小▲い▼
(72)【発明者】
【氏名】戴 向栄
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC50
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA36
4C084MA37
4C084MA38
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB111
(57)【要約】
炎症抑制薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症抑制薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用であって、
前記抗血小板トロンボリシンは、α鎖とβ鎖の2本のペプチド鎖から構成され、
前記α鎖のアミノ酸配列は配列番号1に示され、β鎖のアミノ酸配列は配列番号2に示され、或いは
前記抗血小板トロンボリシンは、そのα鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、そのβ鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するとともに、炎症抑制活性を有することを特徴とする、炎症抑制薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用。
【請求項2】
前記炎症は急性炎症及び慢性炎症を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記炎症は変質性炎症、滲出性炎症、増殖性炎症及び特異性炎症を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記炎症抑制薬は化学薬物製剤又は生物製剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記炎症抑制薬は経口製剤又は注射剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記経口製剤は錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、滴丸剤、マイクロカプセル剤又は微丸剤であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記炎症抑制薬は外用製剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記外用製剤はチンキ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション、リンス、塗り薬又はゲル剤であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月29日に中国特許庁に提出された特許出願(出願番号:201811267026.7;発明の名称:抗血小板トロンボリシンの新しい使用)の優先権を主張し、その内容を全て参照によりここに組み込む。
【0002】
本発明は医薬分野に属し、特に炎症抑制薬の製造における抗血小板トロンボリシンの新しい使用に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症(inflammation)とは、外因性及び内因性損傷因子により様々な細胞の損傷性病変が引き起こされた場合、生体の局所又は全身に一連の複雑な反応が起こることで損傷因子を制限及び消滅し、壊死組織を除去及び吸収し、損傷を修復することをいい、生体の防御反応に属する。
【0004】
生体の炎症反応を引き起こす要因には、外部の生物学的因子、物理的及び化学的因子、自己壊死組織、並びにアレルギー反応が含まれる。血管反応は炎症過程の中心的な部分である。いくつかの炎症性因子は、血管内皮に直接損傷を与え、血管透過性の増加を引き起こす可能性がある。しかし、多くの炎症性因子は局所的な血管組織に直接作用することではなく、主に内因性の化学的因子の作用によって炎症を引き起す。これらの内因性の化学的因子は、化学的メディエーター又は炎症性メディエーターである。病原性微生物等の外因性損傷因子が生体に侵入すると、生体自体及び特定の成分が単球、血管内皮細胞等の様々な細胞を活性化して、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン等の様々な炎症誘発性メディエーターを放出し、因子XII、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン及び補体系と接触してそれらを活性化することにより一連の炎症反応を引き起こす。同時に、侵入した病原性微生物及びそのいくつかの成分は、単球、マクロファージ、及び血管内皮細胞による組織因子の発現を直接的又は間接的にアップレギュレートすることにより、血液凝固過程を開始し、血栓症を引き起こす。また、血小板の粘着、活性化及び凝集は、血栓症の開始及び促進因子である。血小板は、炎症性成分として、活性化されると多くのサイトカインを放出し、炎症反応及び血小板凝集をさらに促進する。血液凝固過程におけるトロンビンは、白血球及び内皮細胞への影響を通じて血栓形成を誘導すると同時に血管壁の非細胞成分の蓄積、血管内膜の合成、及び炎症反応因子の放出を促進し、血漿アルブミンと血管壁細胞の炎症反応を調節することもできる。
【0005】
研究によると、血管反応は、炎症過程における中心的なリンクである。急性炎症過程において組織が損傷した後、すぐに血流量や血管口径の変化等の血行動態の変化(細動脈の短期間の収縮、血管拡張、血流の加速、血流の減速、血流の停滞等)が発生する。それが発生する速度は、損傷の重症度に依存する。この過程において、炎症性メディエーターの作用下で血管壁の透過性が増加し、血漿タンパク質と一部の体液が毛細血管と細静脈の静脈端から滲出し、血液濃縮及び血液粘度の上昇が引き起こされることで血流が遅くなり、血栓が形成される。同時に、毛細血管と細静脈の静水圧が上昇し、大量の血漿が滲出して組織浮腫を引き起こし、血流速度の減少につれて赤血球が凝集し、白血球が逸出し、血栓症が形成され、炎症反応が加速する
【0006】
正常な血管内皮細胞は滑らかで完全であるため、血小板の粘着に不利である。しかし、活性化又は損傷した後、自然のバリア機能が破壊され、損傷した内皮細胞が組織因子とトロンボモジュリンを放出して凝固系を活性化することができる。生成する大量の凝固促進因子及び物質は、血管収縮を促進し、線維素溶解機能を低下させる。また、遅い血流は静脈弁のくぼみで停滞して渦巻く傾向があり、血管壁の損傷を悪化させ、損傷した血管内皮細胞の表面には多数の接着分子が発現しており、単球、好中球、血小板がその表面で転がり、接着し、凝集して炎症反応を引き起こす。虚血性血管損傷の部位で、露出した線維性コラーゲンはGPVIに結合し、血小板の活性化とGPIIb/IIIa受容体の機能的アップレギュレーションを誘導し、活性化された血小板それ自体がポリリン酸塩を放出する。ポリリン酸塩は負に帯電した表面と作用して内因性凝固経路の開始酵素である血液凝固因子XIIを活性化する。FXIIは、フィブリン産生による血栓症の誘発に加えて、接触系及びキニンシ系の活性化も促進する。FXIIaは血漿カリクレインを分解して活性セリンプロテアーゼ血漿カリクレインを形成することにより、高分子キニノーゲンを分解して炎症性ペプチドであるブラジキニンBKを放出する。BKは内皮細胞受容体に結合してシグナルカスケードを開始し、内皮細胞の損傷を誘導し、血管浮腫、炎症誘発性サイトカインの発現を引き起こし、グリア細胞の活性化と炎症を誘導する。また、虚血性損傷は、T細胞や好中球等の循環白血球を活性化し、無菌性炎症(内皮細胞及び免疫細胞の化学誘導物質、ケモカイン、及び接着分子のアップレギュレーションを含む)を引き起こす。Tリンパ球は、P-セレクチン/P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)を介して動員され、細胞間接着分子(ICAM-1)/リンパ球機能関連抗原-1[LFA-1]及び血管細胞接着分子-1(VCAM-1)/最晩期抗原-4(VLA-4)により血管に安定的に結合した後、CD40/CD40Lにより活性化された血小板と相互作用して安定的な血栓を形成する。好中球はマクロファージ-1抗原[MAC-1]/GPIba及びP-セレクチン/PSGL-1により血小板と相互作用し、MAC-1/フィブリンの相互作用によりフィブリン架橋に関与し、外因性組織因子TF/FVIIa経路を誘導してトロンビンの活性化を引き起こし、炎症反応因子を放出し、血漿白血球と血管壁細胞の炎症反応を調節する。
通常の場合では、炎症反応は生体を保護する役割を果たすが、炎症反応が強すぎると、大量の炎症メディエーターが生成し、生体の抗炎症-炎症促進のバランスの不均衡を引き起こす可能性がある。TNF-α、IL-1β及びIL-6等の炎症誘発性メディエーターは、生体内で大量の二次炎症性メディエーター(例えば、PGE2、PAF及びいつくかの接着因子等)の産生を誘導することができる。これらの炎症性メディエーターは、いずれも炎症性細胞と血管内皮細胞との間の相互作用を媒介し、生体の抗炎症性を低下させ、代謝機能障害を引き起こし、全身性炎症反応症候群を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明者は、抗血小板トロンボリシンが血小板-好中球凝集を顕著に減少させ、炎症反応を抑制できることを予期せずに発見した。
【0008】
上記抗血小板トロンボリシンのα鎖のアミノ酸配列は配列番号1に示され、β鎖のアミノ酸配列は配列番号2に示され、又は前記抗血小板トロンボリシンは、そのα鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、そのβ鎖のアミノ酸配列が1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は添加されて配列番号2のアミノ酸配と少なくとも95%の同一性を有するとともに、炎症抑制活性を有する。
【0009】
本発明の抗血小板トロンボリシン(Antiplatelet thrombolysin,APT,anfibatide)は、活化されたαMβ2インテグリンと血小板の結合を抑制し、血流速度を向上させ、血小板-好中球凝集を減少させることができ、マウスの中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)及び再灌流モデルにおいて、抗血小板トロンボリシンはマウス脳組織損傷に対して顕著な保護作用を有し、梗塞体積を減少させ、神経障害を改善することができる。
好ましくは、上記炎症は、急性炎症及び慢性炎症を含む。より好ましくは、上記炎症は、変質性炎症、滲出性炎症、増殖性炎症及び特異性炎症を含む。
【0010】
好ましくは、本発明の炎症抑制薬は、化学薬物製剤又は生物製剤を含む。
【0011】
好ましくは、上記炎症抑制薬は、抗血小板トロンボリシン及び薬学的に許容される補助材料を含む。
【0012】
好ましくは、本発明の炎症抑制薬は経口製剤又は注射剤である。
【0013】
より好ましくは、上記経口製剤は錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、滴丸剤、マイクロカプセル剤又は微丸剤である。
【0014】
好ましくは、本発明の炎症抑制薬は外用製剤である。より好ましくは、上記外用製剤はチンキ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション、リンス、塗り薬又はゲル剤である。
【0015】
実験により、本発明の抗血小板トロンボリシンは、αMβ2インテグリンにより媒介される血小板と白血球の相互作用を抑制できることが証明されている。抗血小板トロンボリシンは、好中球間の凝集作用を減少させ、血小板と好中球との間の結合作用を減少させることで炎症を抑制する作用を奏することができる。
【0016】
本発明に係る抗血小板トロンボリシンの新しい使用は、従来薬物による炎症治療の欠陥を補うことができる。in vivo及びin vitroの実験により、抗血小板トロンボリシンは活化されたαMβ2インテグリンと血小板の結合を抑制し、血流速度を向上させ、血小板-好中球凝集を減少させることができ、マウスの中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)及び再灌流モデルにおいて抗血小板トロンボリシンはマウスの脳組織損傷に対して顕著な保護作用を有し、梗塞体積を減少させ、神経障害を改善できることが実証されている。Bederson及びGrip試験のスコアは、炎症を抑制できることを示しており、良好な臨床応用の見通しを有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】抗血小板トロンボリシンはマウスの血小板とαMβ2インテグリンの結合作用を抑制することを示す。
図2】抗血小板トロンボリシンはヒト血小板とαMβ2インテグリンの結合作用を抑制することを示す。
図3】抗血小板トロンボリシンはTNF-α誘導wtマウスの好中球細胞間の凝集作用を減少させることを示す。
図4】抗血小板トロンボリシンはTNF-α誘導wtマウスの血小板-好中球間の結合作用を減少させることを示す。
図5】抗血小板トロンボリシンはヒト好中球間の凝集作用を減少させることを示す。
図6】抗血小板トロンボリシンはヒト血小板-好中球間の結合作用を減少させることを示す。
図7】異なる時点の血小板及び好中球の画像であり、左から右へ順にBSA群、25ng/g anfibatide群、50g/g anfibatide群であり、上から下へ順に0s、30s、60sであり、矢印は血流方向を示し、緑色は標識血小板であり、赤色は標識好中球である。
図8】投与群の血流速度比較図であり、左から右へ順にBSA群、25ng/g anfibatide群、50g/g anfibatide群である。
図9】血小板-好中球のカウント図であり、左から右へ順に対照IgG群、抗PDI群、BSA群、anfibatide群、IgG+BSA群、抗PD-I+anfibatide群である。
図10】虚血/再灌流誘導脳卒中マウスの脳組織切片を示し、左から右へ順に偽手術群、BSA群、5ng/ganfibatide群、25ng/g anfibatide群である。
図11】虚血/再灌流誘導脳卒中マウスの梗塞体積の実験結果を示し、縦座標は梗塞体積を示し、左から右へ順に偽手術群、BSA群、5ng/ganfibatide群、25ng/g anfibatide群である。
図12】虚血/再灌流誘導脳卒中マウスのGripスコアを示し、左から右へ順に偽手術群、BSA群、5ng/g Anfibatide群、25ng/g Anfibatide群である。
図13】虚血/再灌流誘導脳卒中マウスのBedersonスコアを示し、左から右へ順に偽手術群、BSA群、5ng/g Anfibatide群、25ng/g Anfibatide群である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、炎症抑制薬の製造における抗血小板トロンボリシンの使用が開示される。当業者は、本明細書に基づいてプロセスパラメータを適宜修正することができる。特に、全ての類似の置換及び変形は、当業者にとって自明なものであり、いずれも本発明の範囲に含まれるものとみなされる。本発明の方法及び使用は、既に好適な実施例により説明された。当業者は、本発明の内容及び趣旨から逸脱しない範囲内で本明細書に記載の方法及び使用を変形、変更、組み合わせることにより、本発明の技術を実現及び使用することができる。
【0019】
本発明で使用される試薬はいずれも通常の市販品であり、市場で購入できる。
【0020】
当業者が本発明の技術的解決策をよりよく理解することを可能にするために、以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
実施例1:抗血小板トロンボリシンはαMβ2インテグリンと血小板の結合作用を抑制する。
マウス及びヒトの血小板を取り、37℃の条件下でそれぞれ対照IgG(10μg/ml)、BD34(抗PD1抗体,10μg/ml)、BSA(ウシ血清アルブミン,0.2μg/ml)及びanfibatide(抗血小板トロンボリシン0.2μg/ml)と共に30minプレインキュベートし、さらにHEPES-Tyrode緩衝液(20mM HEPES,pH7.4,136 mM NaCl,2.7mM KCl,12mM NaHCO,2mM MgCl,5.5mM glucose)で血小板を洗浄し、洗浄した後の血小板を0.5mM MnClで処理された又は処理されていない組換えヒトαMβ2インテグリン(10μg/ml)と37℃で30minインキュベートし、未結合のαMβ2を除去し、残りの血小板を5μg/ml IgG-FITC又はヤギ抗ヒトβ2抗体とインキュベートし、フローサイトメーターで測定した。
【0022】
αMβ2は、Mac-1又はCD11b/CD18とも呼ばれ、インテグリンファミリーの一員であり、細胞、細胞外マトリックス及び細胞間接着作用を媒介する主な因子であり、細胞外マトリックスにおける対応するリガンドを識別、結合することができ、主に白血球に分布し、重要な白血球接着因子であり、白血球と内皮細胞等の間の接着に関与し、白血球機能を媒介することにより炎症反応、免疫反応等において重要な役割を果たしている。
【0023】
図1はマウス血小板とαMβ2インテグリンの結合作用を示し、図2はヒト血小板とαMβ2インテグリンの結合作用を示す。ここで、縦座標は蛍光強度を示し、横座標が対応する実験群は順に対照IgG群、BSA群、抗PDI群、IgG+BSA群,抗PDI+anfibatide群である。ここで、抗PDIはプロテインジスルフィドイソメラーゼ阻害剤であり、左側のヒストグラムは、MnClで処理されていないαMβ2の検出結果であり、右側のヒストグラムはMnClで処理されたαMβ2の検出結果である。実験データを統計分析した結果、n=3、*P<0.05、**P<0.01、又は***P<0.001であった。
【0024】
結果から分かるように、抗血小板トロンボリシンは、αMβ2インテグリンにより媒介される血小板と白血球の相互作用を抑制することができる。
【0025】
実施例2:抗血小板トロンボリシンはTNF-α誘導wtマウスモデル血小板-好中球凝集作用を減少させる。
好中球は、感染部位に到達する最初の免疫細胞であり、骨髄において粒子状物質を運ぶ成熟細胞に分化した後に血液に放出される。生体が感染していない場合、好中球は静止状態で末梢血に存在する。細菌が浸入すると、生体は迅速に好中球を感染部位に動員し、好中球は食作用により多種の殺菌物質を産生し、粒子からプロテアーゼ及び好中球細胞外捕獲網を放出すると同時に、好中球は、ケモカインも分泌して他の免疫細胞を感染部位へ動員して共同で感染原を消滅する。
【0026】
しかし、過度に活性化された好中球はいつかの重要な器官に動員され、これらの器官部位において、活性化された好中球に運ばれる殺菌物質は局所に大量に放出され、それぞれの破壊作用により組織を損傷し、さらに臓器障害を引き起こす。また、好中球は1つの器官に浸入した後、他の重要な器官中の好中球の凝集を誘導し、多くの器官の機能障害を招く。異なる好中球物質に対する阻害剤により、急性炎症中の組織損傷を緩和することができる。また、血小板トロンビンが活性化された後、血小板選択的受容体は迅速に細胞表面に到達し、血小板と好中球の結合及び接着の活性化を媒介する。これによって、好中球は凝集し、リソソーム酵素が放出される。血小板由来物は好中球走化性、酵素の放出及び食作用を促進し、酸化バーストを抑制することもできる。一方、血小板と好中球が接着して血小板凝集を促進し、血管閉塞を媒介し、炎症反応を悪化させる。
【0027】
実験方法
WTマウス及びPDI CKOマウス(PDIflox/floxマウスとPF4-Creマウスが雑交してPDI CK0マウスを得る)の血小板(2x10個/ml)及び好中球(1x10個/ml)を取り、それぞれDyLight488-抗CD42C及びAlexa Fluor647-抗Ly-6G抗体で標識し、ヒト好中球及び血小板をそれぞれAlexa Fluor 488-抗CD41及びFITC-抗Lセレクチン抗体で標識し、好中球を20ng/ml TNF-αで5min誘導し、血小板をそれぞれ対照IgG(10μg/ml)、抗PDI抗体(10μg/ml)、BSA(0.2μg/ml)、抗血小板トロンボリシン(0.2μg/ml)及び抗血小板トロンボリシン+抗PDIと室温で30minプレインキュベートした後、0.025U/mlトロンビンと37℃で5minインキュベートし、さらに50uM PPACKとインキュベートし、1000rpmで撹拌して血小板と好中球を混合し、5min後に固定し、フローサイトメーターにより分析した。
【0028】
実験結果を図3-6に示す。抗血小板トロンボリシンは、TNF-α誘導wtマウスモデルの血小板-好中球凝集作用を減少させ、縦座標は対照群の細胞と細胞間/血小板と好中球間の作用に対応し、横座標は実験群である。実験群では、左から右へ順に対照IgG群、抗PDI群、BSA群、anfibatide群、IgG+BSA群、抗PD-I+anfibatide群である。n=4、実験データを統計して分析した結果、*P<0.05、**P<0.01、又は***P<0.001であった。
【0029】
実験結果から分かるように、抗血小板トロンボリシンは好中球間の凝集作用を減少でき、血小板と好中球間の結合作用を減少でき、これによって炎症抑制の作用を奏することができる。
【0030】
実施例3:TNF-α誘導炎症に対する抗血小板トロンボリシンの抑制作用
TNF-αは、重要な炎症誘発性サイトカインであり、免疫、抗腫瘍、抗ウイルス、特定の遺伝子発現の調節等の生理学的機能に関与し、生体の免疫-炎症調整シグナルネットワークの調節において重要な役割を果たしている。TNFαが過剰に発現すると、炎症反応性疾患及び自然免疫性疾患を引き起こす。
【0031】
WTマウスを取り、麻酔下後にTNF-αを陰嚢注射し、3h後にそれぞれBSA 50ng/gBW、Anfibatide(25、50ng/gBW)を投与し、生体に対して顕微鏡によりリアルタイムに観察して記録した。WTマウス血小板をカルセインAMで標識し、それぞれIgG(10μg/ml)、抗PDI(10μg/ml)、BSA(0.2μg/ml)、anfibatide(0.2μg/ml)、anfibatide+抗PDIとプレインキュベートした後、血小板数2x10個/mlで各TNF-αマウスに100μl注射した。
【0032】
実験データをANOVA及びTukey’s検体により統計分析した結果、*P<0.05、**P<0.01、又は***P<0.001であった。実験結果から分かるように、TNF-αで処理された後にAnfibatide 25-50ng/gを投与したところ、好中球の内皮細胞での移動及び接着に対してほとんど影響を与えなかった(図7)。BSA対照と比較して、Anfibatideは用量依存的に血液流速を増加させた(図8)。また、生体顕微鏡において血小板転移モデルを使用して実験した。0.2μg/ml Anfibatideで処理することにより50-55%の血小板-好中球の接着が抑制された(図9)。これは、抗血小板トロンボリシンがTNF-α誘導wtマウスモデルの血小板-好中球凝集作用を減少できることをさらに証明した。
【0033】
実施例4:虚血/再灌流脳卒中のマウス脳組織損傷に対する抗血小板トロンボリシンの作用の実験
雌性及び雄性C57BL/6マウス、WTマウス(22-25g,7-10週齢)を2%ペントバルビタールで麻酔し、ブプレノルフィン(30ng/g BW)を腹腔内注射し、手術中に加熱ブランケットを用いて体温を37℃に維持した。左総頸動脈を露出させ、外頸動脈を解剖し、内頸動脈を分離し、フィラメント(直径0.15mm、先端直径0.22-0.25mm)により左中大脳動脈を1h閉鎖し、レーザードップラー灌流モニタリングシステム(PF5010,Perimed AB,Ardmore,PA)により監視し、局所脳血流が20%ベースラインレベルまで下降すると、塞栓形成が成功したことを示す。次にフィラメントを取り外し、血流をフィラメントまで回復させた。塞栓形成の1h後、BSA又は抗血小板トロンボリシン(5、25ng/gBW,100μl生理食塩水)を投与し、さらにブプレノルフィン(25ng/gBW)をip注射し、23h再灌流し、Bederson及びgrispにより動物行為に対してスコアリングした。スコアリングした後、マウスを安楽死させ、2mm脳組織切片を作成し、2%の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド溶液を用いて37℃で10min染色し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、切片を走査し、ImageJにより梗塞体積を分析した。
【0034】
虚血/再灌流脳組織損傷モデルは、成熟した炎症モデルであり、その炎症は血栓形成に関係がある。実験データをANOVA及びTukey’s検定により統計分析した結果、n=6-7/群であった。ANOVA及びTukey検定では、***P<0.001、****P<0.0001は顕著な有意差を示す。
【0035】
結果から分かるように、抗血小板トロンボリシンは虚血/再灌流誘導脳卒中マウスの脳組織損傷に対して保護作用を有する。MCAOにより局所虚血を誘導した1時間後、Anfibatide 5~25ng/g BWを投与して治療したところ、5ng/g BWのAnfibatideは梗塞体積をBSA対照群の40%まで減少でき、BSA対照に比べ、Anfibatideは用量依存的に梗塞体積を減少させ、神経機能を改善し、バランス能力及び運動能力を向上させた(図10-13)。
【0036】
上記説明は本発明の好ましい実施形態に過ぎない。当業者であれば、本発明の原理から逸脱しない範囲内で様々な改良及び修飾することができる。これらの改良及び修飾も本発明の保護範囲に含まれる。
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【国際調査報告】