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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】共焦点光学分度器
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G01B11/26 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523047
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019057834
(87)【国際公開番号】W WO2020086828
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】16/171,883
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ルマラ,イサ・エス
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA31
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF10
2F065FF44
2F065FF51
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL11
2F065LL30
2F065LL31
2F065LL46
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
(57)【要約】
エレメントの横揺れ角、縦揺れ角、および偏揺れ角を同時に測定する共焦点光学分度器であって、レーザ・ビームを生成する調整可能なレーザ源と、レーザ・ビームに応答するSPPRデバイスとを含む。また、この分度器は、SPPRデバイスからの出力ビームを受信および分割するビーム・スプリッタと、分割ビームに応答し、分割ビームをエレメント上に投影するレンズであって、エレメントからの反射ビームに応答する、レンズも含む。更に、この分度器は、エレメントからの反射ビームに応答する測定検出器であって、反射ビームがレンズによって測定検出器上に撮像される、測定検出器と、測定検出器からの画像データを受信および処理し、このデータから縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を生成するプロセッサであって、画像データが分割ビームにおける渦強度パターンの方向を含む、プロセッサとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレメントの縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を測定する光学システムであって、
レーザ・ビームを生成する調整可能なレーザ源と、
前記レーザ・ビームに応答する螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスであって、前記SPPRデバイスが、前記レーザ・ビームを当該デバイス内において前後に反射する対向反射面を含み、前記反射面の1つが、螺旋ステップ・インデックスを含み、異なる位相を有する複数の反射振幅を組み合わせ、前記複数の振幅の位相によって定められる光渦強度パターンを生成させ、前記強度パターンが特異点と半径方向光ピークとを含み、前記SPPRデバイスが第1ビームを前記レーザ源に向けて反射し、第2ビームを透過して前記レーザ源から遠ざける、SPPRデバイスと、
前記第1ビームまたは第2ビームのいずれかを受信および分割し、分割測定ビームを生成する第1ビーム・スプリッタと、
前記第1分割測定ビームに応答し、前記エレメント上に前記第1分割測定ビームを投影し、前記エレメントからの反射ビームに応答するレンズと、
前記エレメントからの反射ビームに応答する測定検出器であって、前記反射ビームが前記レンズによって前記測定検出器上に撮像される、測定検出器と、
前記測定検出器からの画像データを受信および処理し、前記データから縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を生成するプロセッサであって、前記画像データが前記渦強度パターンの方向を含む、プロセッサと、
を備える、光学システム。
【請求項2】
請求項1記載の光学システムにおいて、前記渦強度パターンが、4つの四分儀の各々において1つの強度ピークを含む、光学システム。
【請求項3】
請求項1記載の光学システムにおいて、前記縦揺れ角が、前記渦強度パターンの1つの面におけるシフトによって判定され、前記偏揺れ角が、前記1つの平面に対して直交する他の面における前記渦強度パターンのシフトによって判定され、前記横揺れ角が、前記渦強度パターンの回転によって判定される、光学システム。
【請求項4】
請求項1記載の光学システムであって、更に、前記分割測定ビームを受信し、前記レンズに誘導する第2ビーム・スプリッタを備え、前記第2ビーム・スプリッタが、前記反射ビームを受信し、前記測定検出器に誘導する、光学システム。
【請求項5】
請求項4記載の光学システムであって、更に、シャッタを備え、前記分割測定ビームがこれを通って、前記レンズから前記エレメントに伝搬する、光学システム。
【請求項6】
請求項5記載の光学システムであって、更に、前記シャッタが閉じているときに、前記第2ビーム・スプリッタからの分割反射ビームに応答する検出器を備え、前記検出器が、前記反射ビームの方向および前記第1または第2ビームの強度を追跡する、光学システム。
【請求項7】
請求項6記載の光学システムにおいて、前記検出器が、多重画素検出器、または環状に配列された複数の単一画素検出器を含む単一画素検出器アレイである、光学システム。
【請求項8】
請求項1記載の光学システムにおいて、前記SPPRデバイスが低反射率デバイスであり、前記第1ビーム・スプリッタが前記第1ビームを受信する、光学システム。
【請求項9】
請求項8記載の光学システムであって、更に、前記第1ビーム・スプリッタからの分割ビームに応答する強度検出器を備え、前記強度検出器がビーム強度を監視する、光学システム。
【請求項10】
請求項8記載の光学システムにおいて、前記SRRPデバイスの反射率が約0.04である、光学システム。
【請求項11】
請求項1記載の光学システムにおいて、前記SPPRデバイスが高反射率デバイスであり、前記第1ビーム・スプリッタが前記第2ビームを受信する、光学システム。
【請求項12】
請求項11記載の光学システムにおいて、前記デバイスの反射率が約0.5である、光学システム。
【請求項13】
請求項1記載の光学システムにおいて、前記SPPRデバイスが、当該SPPRデバイスを透過した基準ビームを生成し、前記基準ビームが、前記渦強度パターンの基準方向を生成するために、較正検出器上に投影される、光学システム。
【請求項14】
請求項13記載の光学システムにおいて、前記測定および較正検出器がCCDカメラである、光学システム。
【請求項15】
エレメントの縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を測定する光学システムであって、
レーザ・ビームを生成する調整可能なレーザ源と、
前記レーザ・ビームに応答する螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスであって、前記SPPRデバイスが、前記レーザ・ビームを当該デバイス内において前後に反射する対向反射面を含み、前記反射面の1つが、螺旋ステップ・インデックスを含み、異なる位相を有する複数の反射振幅を組み合わせ、前記複数の振幅の位相によって定められる光渦強度パターンを生成させ、前記強度パターンが特異点と半径方向光ピークとを含み、前記SPPRデバイスが第1ビームを前記レーザ源に向けて反射し、第2ビームを透過して前記レーザ源から遠ざける、SPPRデバイスと、
前記第2ビームに応答し、前記渦強度パターンの基準方向を生成する較正検出器と、
前記第1ビームを受信および分割し、分割測定ビームを生成する第1ビーム・スプリッタと、
前記第1分割測定ビームに応答し、前記エレメント上に前記第1分割測定ビームを投影し、前記エレメントからの反射ビームに応答するレンズと、
前記エレメントからの反射ビームに応答する測定検出器であって、前記反射ビームが前記レンズによって前記測定検出器上に撮像される、測定検出器と、
前記測定検出器からの画像データおよび前記渦強度パターンの基準方向を受信および処理し、前記縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を前記データから生成するプロセッサであって、前記画像データが前記渦強度パターンの方向を含み、前記縦揺れ角が、前記渦強度パターンの1つの面におけるシフトによって判定され、前記偏揺れ角が、前記1つの平面に対して直交する他の面における前記渦強度パターンのシフトによって判定され、前記横揺れ角が、前記渦強度パターンの回転によって判定される、プロセッサと、
を備える、光学システム。
【請求項16】
請求項15記載の光学システムにおいて、前記渦強度パターンが、4つの四分儀の各々において1つの強度ピークを含む、光学システム。
【請求項17】
請求項15記載の光学システムであって、更に、前記分割測定ビームを受信し、前記レンズに誘導する第2ビーム・スプリッタを備え、前記第2ビーム・スプリッタが、前記反射ビームを受信し、前記測定検出器に誘導する、光学システム。
【請求項18】
請求項17記載の光学システムであって、更に、シャッタを備え、前記分割測定ビームがこれを通って、前記レンズから前記エレメントに伝搬する、光学システム。
【請求項19】
請求項18記載の光学システムであって、更に、前記シャッタが閉じているときに、前記第2ビーム・スプリッタからの分割反射ビームに応答する検出器を備え、前記検出器がビームの較正を行う、光学システム。
【請求項20】
請求項15記載の光学システムであって、更に、前記第1ビーム・スプリッタからの分割ビームに応答する強度検出器を備え、前記強度検出器がビーム強度を監視する、光学システム。
【請求項21】
エレメントの縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を測定する光学システムであって、
レーザ・ビームを生成する調整可能なレーザ源と、
前記レーザ・ビームに応答する螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスであって、前記SPPRデバイスが、前記レーザ・ビームを当該デバイス内において前後に反射する対向反射面を含み、前記反射面の1つが、螺旋ステップ・インデックスを含み、異なる位相を有する複数の反射振幅を組み合わせ、前記複数の振幅の位相によって定められる光渦強度パターンを生成させ、前記強度パターンが特異点と半径方向光ピークとを含み、前記SPPRデバイスが渦ビームを出力する、SPPRデバイスと、
前記渦ビームを受信し、測定ビームおよび較正ビームに分割するビーム・スプリッタと、
前記較正ビームに応答し、前記渦強度パターンの基準方向を生成する較正検出器と、
前記測定ビームに応答し、前記エレメント上に前記第測定ビームを投影し、前記エレメントからの反射ビームに応答するレンズと、
前記エレメントからの反射ビームに応答する測定検出器であって、前記反射ビームが前記レンズによって前記測定検出器上に撮像される、測定検出器と、
前記測定検出器からの画像データおよび前記渦強度パターンの基準方向を受信および処理し、前記縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を前記データから生成するプロセッサであって、前記画像データが前記渦強度パターンの方向を含み、前記縦揺れ角が、前記渦強度パターンの1つの面におけるシフトによって判定され、前記偏揺れ角が、前記1つの平面に対して直交する他の面における前記渦強度パターンのシフトによって判定され、前記横揺れ角が、前記渦強度パターンの回転によって判定される、プロセッサと、
を備える、光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、一般的には、エレメントの横揺れ角、縦揺れ角、および偏揺れ角を測定する光学分度器に関し、更に特定すれば、強度ピークを有する光渦パターン・ビームを生成する螺旋位相板共振器(SPPR:spiral phase plate resonator)デバイスを採用し、光渦パターンがエレメントから反射されカメラまたは検出器に入射して、このエレメントの横揺れ角、縦揺れ角、および偏揺れ角を同時に測定する共焦点光学分度器に関する。
【従来技術】
【0002】
[0002] 角度、具体的には、横揺れ、偏揺れ、および縦揺れ角の非接触測定は、光学部品の製造時、航空宇宙部品の構築時、整合および追跡を含むシステム・レベルの計測用途、3Dプリンティング、リソグラフィ、見本部品の製作等に重要となることが多い。当技術分野において角度を測定するために使用されてきた殆どの手法は、オートコリメータ、干渉計、および可動部品を含む機械的デバイスを採用する。横揺れ角は、測定するのに最も困難な角度であり、したがって横揺れ角を精度高く測定することができるシステムの数は限られている。
【0003】
[0003] オートコリメータは、高い正確度で縦揺れおよび偏揺れ角を測定するのに成功したとは言え、これらの角度を測定することができる範囲は限られている。更に、横揺れ角を測定するためには、複雑な構成(arrangement)のオートコリメータが必要となる。干渉計は、縦揺れ角および偏揺れ角を測定することができるが、複雑な構成の追加光学エレメント、例えば、偏向光学素子およびプリズムがないと、横揺れ角を測定することができない。更に、多くの自由空間光学素子は、過酷な環境における動作が制限される。機械式分度器のような機械式デバイスは、システムが小型であることが要求され、角度の非接触測定は厳しく制限される。更に、可動部品を含むシステムは、長期間にわたる動作中に故障する確率がはるかに高くなる。
【0004】
[0004] 通例、横揺れ角を測定するには、内蔵角度チック(angular tick)をその周囲に沿って含む回転可能なマウント上に部品を配置し、次いでマウントを回転させて部品の横揺れ角を判定することによって行う。この技法は、小さい部品を組み立てるときには、大抵の場合うまく作用するが、大きな部品または非常に重い宇宙航空システムの部品を製作するときには、困難を来す可能性がある。他の知られている横揺れ角測定技法では、機械式分度器を部品上に載せて、2つの基準間で対象の角度を判定することを含む。この技法では、機械式分度器が表面と接触して、横揺れ角を判定するが、横揺れ角の非接触測定を必要とする用途では、弊害が生ずる可能性がある。限られた空間において増々小さくなる角度を測定するためには、分度器の半径を大きくする(角度チックを増やす)必要があり、または測定される角度の正確度を増幅するためには、機械式分度器上にギアが必要となる。このため、高正確度測定用の機械式分度器は大型化を招き易く、したがって、限られた空間において角度を測定するときに問題となる可能性がある。この作業は、湾曲表面上で角度を測定するときは、更に一層困難を来す。更に、クリーン・ルーム環境における3Dプリンティング、リソグラフィ、および部品製作といった用途の中には、横揺れ角の非接触判定を必要とするものもあるが、機械式分度器は、測定しようとする部品と接触する。表面が一定速度で回転している場合、横揺れ角および回転速度を機械式分度器によって推論することができない。
【0005】
[0005] 光学システムは、表面が湾曲するおよび/または粗いときでも、表面上における2つの静止点または2本の静止線間で、非接触角度測定を行う機能(ability)を提供することができる。具体的には、円筒対称に組み込まれた光渦の可干渉性重畳(coherent superposition)を使用することによって、非常に高い精度および正確度で非接触の角度測定を行うことができる。光渦の可干渉性重畳の特性は、横揺れ角(方位角)の関数として周期的な強度変調を形成するということであり、角度を測定している表面上にこの周期的な強度変調を投影し、検出器によって検知することができる。
【0006】
[0006] 当技術分野には、光渦の可干渉性重畳を作成するための様々な方法が存在し、空間光変調器、干渉計における螺旋位相板、干渉計における螺旋位相ミラーなどを使用する方法が含まれる。しかしながら、これらの方法は、分解能に限界がある光学システムの選択部分を機械的に回転させなければ、光渦の横揺れ角を制御することができない。あるいは、光学システムが、モータ駆動ステージ、即ち、螺旋ミラーの場合には、q-プレート、螺旋位相板などを含む、光学エレメントの複雑な構造で構成される(consist of)ことになる。空間光変調器(SLM)を採用する方法では、コンピュータがSLMおよびその分解能を制御する必要があり、角度変位(angular displacement)の生成は、画素化されるSLMスクリーンおよびSLMの位相変化の有限範囲によって限定される。これらの難題があるため、光学システムの設計を更に複雑化することなく、角度測定の正確度を最大限高めつつ、システムを微細化する明確な方法がない。
【0007】
[0007] 螺旋位相板に基づく共振器、即ち、螺旋位相板共振器(SPPR:spiral phase plate resonator)デバイスは、光をこのデバイスから反射させることによってまたはこのデバイスを透過させることによって、光渦の可干渉性重畳を生成することができる、微細化光学エレメントである。低反射率のSPPRデバイスに対する共振器の効果を示す基礎科学的な研究がある。また、回転ドプラ・シフトに基づく回転センサの研究もある。しかしながら、製造および生産、航空宇宙システムまたはそれ以外において基準に対する横揺れ角の判定というような、技術的用途のための完全な光学分度器システムの実証は、当技術分野では未だなされていない。
【0008】
[0008] Optical Protractor To Measure Roll Angle On A Static Surface And Rotating Surface(静止面および回転面上で横揺れ角を測定するための光学分度器)と題し、2018年4月2日に出願され、本願の譲受人に譲渡された米国特許出願第15/943,240号は、静止面または回転面上の2点間において横揺れ角を測定するために、螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスを採用する光学分度器を開示する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容が本願にも含まれるものとする。この分度器は、レーザ・ビームを生成する調整可能なレーザ源と、レーザ・ビームに応答してこれをシングル・モード・レーザ・ビームに変換する光学部品とを含む。SPPRデバイスは、シングル・モード・レーザ・ビームを受信し、デバイス内においてビームを前後に反射する対向反射面(opposing relective surface)を含む。反射面の1つは、螺旋状ステップ・インデックスを含み、異なる位相を有する複数の反射ビームを組み合わせて、光渦強度パターンを有するデバイスからの出力ビームとする。ここで、強度パターンは放射状光強度線(radial light intensity lines)を含む。この分度器は、出力ビームをエレメント上に投影するレンズと、エレメントから反射された光を検出する検出器と、検出器からの信号に応答するプロセッサとを含む。プロセッサは、エレメント上に投影された光渦強度パターンを含む反射光の画像を生成し、強度線の1本が2点の内第1のものと整列するように、レーザ源にレーザ・ビームの周波数を変更させる。次いで、プロセッサは、この1本の強度線が、2点の内第2のものと整列するように、再度レーザ源にレーザ・ビームの周波数を変更させ、レーザ・ビームの周波数間の差を使用して、点間の角度を判定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] 以下の論述では、エレメントの横揺れ角、縦揺れ角、および偏揺れ角を同時に測定する共焦点光学分度器について開示および説明する。この分度器は、レーザ・ビームを生成する調整可能なレーザ源と、レーザ・ビームに応答する螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスとを含む。SPPRデバイスは、このデバイス内においてレーザ・ビームを前後に反射する対向反射面を含み、反射面の一方が、螺旋ステップ・インデックスを含み、異なる位相を有する複数の反射電界振幅(reflected field amplitudes)を組み合わせ、複数の電界振幅の位相によって定められる光渦強度パターンを生成させる。SPPRデバイスからの強度パターンは、ビームの中央における特異点と、ビームの軸を中心とする異なる角度における半径方向光ピークとを含む。SPPRデバイスは、第1ビームをレーザ源に向けて反射し、第2ビームを透過してレーザ源から遠ざける。また、この分度器は、第1ビームまたは第2ビームのいずれかを受信および分割し、分割測定ビームを生成する第1ビーム・スプリッタと、第1分割測定ビームに応答して、これをエレメント上に投影し、エレメントからの反射ビームに応答するレンズとを含む。更に、この分度器は、エレメントからの反射ビームに応答する測定検出器であって、反射ビームがレンズによって測定検出器上に撮像される、測定検出器と、測定検出器からの画像データを受信および処理し、縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角をこのデータから生成するプロセッサであって、画像データが渦強度パターンの方向(orientation)を含む、プロセッサとを含む。
【0010】
[0010] 本開示の更に他の特徴は、以下の説明および添付した請求項を、添付図面と併せて検討することによって、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】測定ビームが螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスから反射され、次いでエレメントから(off of)反射されて、エレメントの横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を測定する共焦点光学分度器の模式ブロック図である。
図2図1に示す光学分度器から分離したSPPRデバイスの等幅図である。
図3】内部で反射されるビームを示すSPPRデバイスの側面図である。
図4】円状に配列された8つの単一画素検出器を含む単一画素検出器アレイの図である。
図5図1に示す分度器においてSPPRデバイスから反射されたビームの光渦強度プロファイル画像である。
図6図1に示す分度器においてSPPRデバイスを透過した基準ビームの光渦強度プロファイル画像である。
図7】縦揺れ角を測定するために、ビームを中心点よりも上で反射させたときの、図5に示す光渦強度プロファイル画像である。
図8】縦揺れ角を測定するために、ビームを中心点よりも下で反射させたときの、図5に示す光渦強度プロファイル画像である。
図9】偏揺れ角を測定するために、ビームを右側に移動させたときの、図5に示す光渦強度プロファイル画像である。
図10】偏揺れ角を測定するために、ビームを左側に移動させたときの、図5に示す光渦強度プロファイル画像である。
図11】横揺れ角を測定するために、ビームを時計回り方向に回転させたときの、図5に示す光渦強度プロファイル画像である。
図12】横揺れ角を測定するために、ビームを反時計回り方向に回転させたときの、図5に示す光渦強度プロファイル画像である。
図13】測定ビームをSPPRデバイスに透過させて、エレメントの横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を測定する共焦点光学分度器の模式図である。
図14図13に示す分度器においてSPPRデバイスを透過したビームを示す、光渦強度プロファイル画像である。
図15】縦揺れ角を測定するために、ビームを中心点よりも上で反射させたときの、図14に示す光渦強度プロファイル画像である。
図16】縦揺れ角を測定するために、ビームを中心点よりも下で反射させたときの、図14に示す光渦強度プロファイル画像である。
図17】偏揺れ角を測定するために、ビームを右側に移動させたときの、図14に示す光渦強度プロファイル画像である。
図18】偏揺れ角を測定するために、ビームを左側に移動させたときの、図14に示す光渦強度プロファイル画像である。
図19】横揺れ角を測定するために、ビームを時計回り方向に回転させたときの、図14に示す光渦強度プロファイル画像である。
図20】横揺れ角を測定するために、ビームを反時計回り方向に回転させたときの、図14に示す光渦強度プロファイル画像である。
図21】高コントラスト干渉縞を有する光渦強度プロファイル画像のビーム重心を発見するプロセスを示すフロー・チャート図である。
図22】低コンストラスト干渉縞を有する光渦強度プロファイル画像のビーム重心を発見するプロセスを示すフロー・チャート図である。
図23】縦揺れ角および偏揺れ角を判定するプロセスを示すフロー・チャート図である。
図24】横揺れ角を判定するプロセスを示すフロー・チャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0029] SPPRデバイスを含み、エレメントの横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を測定する共焦点光学分度器を対象とする本開示の実施形態についての以下の論述は、本質的に単なる例示に過ぎず、開示を限定することも、その用途および使用を限定することも全く意図していない。
【0013】
[0030] 以下で詳しく論ずるように、本開示は、エレメントとの横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を測定するために移動部品を使用しない、「完全に光学的な」(all optical)プロセスを提供する光学システム、または光学分度器について説明する。この光学システムは、部品の縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角の非接触測定が重要な、無人航空機、飛行機、空母、弾道ミサイル等のためというような、種々の部材および部品の製造および生産に応用することができる。 また、この光学システムは、パターン認識中にこれらの角度を判定するために、ロボットおよび自律車両におけるような、マシン・ビジョンに応用することもできる。
【0014】
[0031] この光学システムの主要なエレメントは、螺旋位相板共振器(SPPR)デバイスである。このデバイス内において、特定の周波数の光ビームが複数回の反射往復移動を行い、ビーム角(beam angle)の関数として、角度強度変調干渉パターンを有する出力ビームを形成する(create)。SPPRデバイスに入射するビームの波長を正確に変化させることによって、SPPRデバイスから出力されるビームのパターンにおいて、角度強度ピークが回転する。このビームを静止面上に投影すると、縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を測定するために検出することができる。出力ビームにおける強度変調干渉パターンは、SPPRデバイスから出現する選択光渦巻数(winding numbers)の可干渉性重畳の結果である。
【0015】
[0032] 振動および温度勾配の存在というような過酷な環境下であっても、測定対象角の高精度を確保するために、光学システムを較正する方法が必要となる。この方法は、光渦強度パターンの回転角をビームの波長に合わせて較正するステップと、CCDカメラのような検出器上で光強度パターンの基準ビームとの角変位を監視するステップとを含む。レーザ源からのビーム波長の変化、光学素子の屈折率変化、または測定されている表面の振動というような、光学システムにおけるあらゆる偽変化は、角度の測定中に補償することができる。CCDカメラからの画像は、画像処理アルゴリズムを使用して、リアル・タイムで読み取られ、光渦の中心を発見するときの誤差、および角度の判定における他の形態のシステム誤差は低減されている。位相固定方式、振幅固定方式等のような標準的な技法を使用して、SPPRデバイスへの入力ビームの周波数を固定し、そして変化させ、測定、較正、およびリアル・タイム監視のために、周波数の漸増によって強度パターンを回転させる。
【0016】
[0033] 図1は、静止または回転面上の基準線間において横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を同時に測定し、回転面の回転速度を判定するための、先に論じた型式の光学システム10の模式ブロック図である。システム10は、狭線幅レーザ源12を含む。狭線幅レーザ源12は、調整可能であり、例えば、可視光-IR周波数範囲において可干渉レーザ・ビームをシングル・モード光ファイバ14に入射させる。シングル・モード光ファイバ14は、例えば、TEM00ガウス・モードのレーザ・ビーム18を供給する。代替実施形態では、TEM00ガウス・モードを供給するために、シングル・モード光ファイバ14の代わりに、他の光学素子を採用することもできる。例えば、ビーム18をTEM00ガウス・モードにするため、またはこの光学モードを浄化するために、しかるべく設計されたアパーチャ(図示せず)を使用することができる。ファイバ14から放出されたビーム18は、ファイバ14の端部に位置付けられたコリメータ16によって平行化され、ビーム18が、最小限の拡散で、光学システム10全体を伝搬することを確保する。逆反射してレーザ源12に入る光が、レーザ・キャビティにおいてビーム・ジッタを発生し、出力レーザ・ビーム18の強度変動、またはレーザ波長における偽周波数シフトを起こすおそれがあり、レーザ・キャビティにおけるモードの不安定の原因になり、レーザ源12の固定が外れる原因となる可能性がある。したがって、レーザ・ビーム18のレーザ源12への逆反射を防止するために、コリメータ16の出力の後ろに光アイソレータ20を配置する。
【0017】
[0034] 光アイソレータ20を伝搬したシングル・モード・ビーム18は、ビーム・スプリッタ22によって分割され、ビーム18の小部分が、ビーム強度を監視する高速検出器24に送られ、ビーム18の残り部分はSPPRデバイス26に送られ、その有限反射率の結果として、ビーム18はデバイス26内において前後に反射される。図2は、システム10から分離したデバイス26の等幅図であり、図3はその側面図である。デバイス26は、ガラスのような光透過性ブロック28を含み、ブロック28の入力側に、滑らかな反射材のコーティングのような、反射板30を有する。ブロック28は、十分に光を透過するので、コリメータ16からのビーム18はブロック28を伝搬することができる。また、デバイス26は、反射材コーティングを有するポリマーまたはガラス層のような、段付き螺旋反射板(step-wise spiral reflector)32も含み、方位方向に変化する段差36は、ブロック28の出力側において高さΔhを有する。また、ブロック28は十分に光を透過するので、出力ビームはこれを伝搬し、デバイス26から出力することができる。この設計では、ブロック28上に反射面を設けるために、滑らかな反射材コーティングを採用するが、代わりの設計では、ブロック28においてビーム18の反射を可能にするために、ナノ単位の構造体(nanoscale structure)を使用することができる。
【0018】
[0035] ビーム18が、表面反射せずに、ブロック28を伝搬する場合、巻数が明確に定められた光渦ビームがデバイス26の出力面上に生成され、この場合、デバイス26は螺旋位相板(spiral phase plate)として作用する。デバイス26の対向する両面に有限反射を設け、徐々に変化する方位方向厚さを有する反射板32を設けることによって、デバイス26は螺旋位相板共振器(SPPR)として動作し、光渦ビームが、特定の正巻数によって分離された光渦の可干渉性重畳として、デバイス26から出力される。言い換えると、デバイス26内においてビーム18が反射する毎に、一意の位相を有する個々の光渦ビームが形成され、デバイス26から出力される。各ビームは、異なる巻数、即ち、軌道角運動量を有する、振幅U~Uとして示されている。ビームは、異なる巻数および異なる軌道角運動量状態を有する全ての光渦ビーム振幅U~Uの重ね合わせであり、ここでは、光渦強度パターンと呼ぶ。つまり、光渦強度パターンは、ビームU~Uの位相に基づく周期的な強度干渉パターンであり、渦ビームの角度の関数として変動する。強度パターンの回転は、ビーム18の周波数によって制御される。
【0019】
[0036] ビーム18の光渦強度パターンは、SPPRデバイス26の入力側からビーム・スプリッタ22に向けて、反射測定ビーム40として出力され、更に、SPPRデバイス26の出力側から、透過基準ビーム42として出力され、較正の目的に使用される。この非限定的な実施形態では、SPPRデバイス26は、約0.04の内部反射率を有する市販の既製品(COTS)デバイスである。この反射率によって、測定ビーム40における渦強度ピークのコントラストが高くなり、透過基準ビーム42における渦強度ピークのコントラストが低くなる。角度測定のために反射ビーム40を使用することによって、ピークが一層際立ち、背景光を一層容易に除去することが可能になる。
【0020】
[0037] 基準ビーム42は、SPPRデバイス26から焦点距離×2に位置するレンズ50によって、電荷結合デバイス(CCD)カメラ54上にアッテネータ56を介して撮像され、横揺れ角計算のためのビーム方向の基準を供給する。測定ビーム40は、ビーム・スプリッタ22によって、第2ビーム・スプリッタ60に向けて反射され、第2ビーム・スプリッタ60は、測定ビーム40の小部分を検出器62に誘導する。検出器62は、光渦測定ビーム40の方向、およびSPPRデバイス26から反射されたビーム40の強度を追跡する。検出器62は、CCDカメラのような、多重画素検出器として示されているが、本明細書において論ずる目的に適するのであれば、いずれの検出器でも可能である。例えば、検出器62は、図4に示すように、円環(circle ring)状に配列された8つの単一画素検出器78を含む単一画素検出器アレイ76とすることもできる。この円環であれば、ビーム40の回転変位を高い正確度で測定することが可能になる(could allow for)。
【0021】
[0038] 測定ビーム40の主要な部分は、レンズ64または一連のレンズによって、シャッタ68を介してプラットフォーム66上に撮像され、レンズ64は、共焦点撮像結合(confocal imaging geometry)でプラットフォーム66を撮像するために、ビーム40を平行化する。プラットフォーム66からの反射ビームは、ビーム・スプリッタ60によってCCDカメラ70に誘導され、CCDカメラ70は角度測定値を供給する。ここで、レンズ64は反射ビームをカメラ上に撮像する。カメラ70の前に位置付けられた狭帯域フィルタ72が、他の波長の背景光の発生源(source)を低減する。更に、レンズ64はカメラ70の視野(FOV)を狭め、カメラ70に入射する後方散乱光の量も減らす。シャッタ68が閉じているとき、ビーム40はビーム・スプリッタ60を介してカメラ70上に反射される。シャッタ68が開いているとき、ビーム40は、シャッタ68を通過し、プラットフォーム66からカメラ70に逆反射される。また、CCDカメラ70は、ビーム40の内部位置を較正する役割も果たす。
【0022】
[0039] プラットフォーム66に対してx-y-z座標系を示す。ここで、x軸を中心とする回転は偏揺れ角を示し、y軸を中心とする回転は縦揺れ角を示し、z軸を中心とする回転は横揺れ角を示す。カメラ70上に撮像されたときの、高コントラスト干渉縞を有する測定ビーム40の光渦強度プロファイルを図5に示す。ここで、デバイス26は、|r=0.04というような、低い内部反射率のSPPRデバイスである。カメラ54上に撮像されたときの、低コントラスト干渉縞を有する基準ビーム42の光渦強度プロファイルを図6に示す。これらの図において、陰影を付けたエリアは渦強度ピークを表す。システム10は、この実施形態において内部反射率が高いデバイスを実装するときは上手く機能し、SPPRデバイス26は順方向または逆方向に面することができる。
【0023】
[0040] 高精度の角度判定のために、先に論じたのと同様に、カメラ54を使用してシステム10を較正する。この測定値から、光学システム10の較正関数を事実上定める伝達関数を得る。この伝達関数は、光学システム10においてエレメントの熱効果が存在しても、レーザ周波数の変化を角度変化に変換する。理想的には、高い正確度の測定のためには、光学システム10において、熱膨張係数が低い材料を使用する。しかしながら、測定前または測定最中における較正プロセスからのカメラの更新により、熱効果および振動が存在しても、静止面上における角度判定を可能にする。ビーム42の合焦後に行われる測定では、グイ位相(Gouy phase)が、基準ビーム42の回転において、余分なシフトを生じさせる。光学システム10の較正中に、この効果を考慮に入れるのは容易である。
【0024】
[0041] システム10は、光渦ビームが、プラットフォーム66を照明する目的のために、長距離にわたって平行化したままでいることを可能にする。横揺れ角を判定するために、ビーム18の周波数をシフトさせて、角度強度プロファイルを回転させる。縦揺れ角および偏揺れ角を測定するためには、ビーム40の重心をある点から他の点に移動させる。LiDAR、RADAR等のような距離測定デバイスを使用すれば、偏揺れ角および縦揺れ角を測定するときに、距離を推定することができる。
【0025】
[0042] プロセッサ74は、システム10を制御し、カメラ54および70ならびに検出器62から信号を受信して、本明細書における論述にしたがって横揺れ、偏揺れ、および縦揺れ角の測定値を判定するために、レーザ源12を調整する。以下で更に詳しく論ずるが、ビーム40は、プラットフォーム66が基準位置にあるとき、プラットフォーム66から反射され、プラットフォーム66とカメラ70との間の距離を判定し、初期ビーム・プロファイルを特定する(identify)。説明した方向における初期ビーム・プロファイルの中心点よりも上または下へのビーム・プロファイルのy軸に沿ったシフトは、図7および図8における光渦強度プロファイル画像によって示されるように、縦揺れ角の規準(measure)となる。更に、説明した方向における初期ビーム・プロファイルの中心点よりも左または右へのビーム・プロファイルのx軸に沿ったシフトは、図9および図10における光渦強度プロファイル画像によって示されるように、偏揺れ角の規準となる。尚、プラットフォーム66までの距離、およびカメラ70上におけるビーム40のシフトは、縦揺れおよび偏揺れ角を測定するために使用されることを注記しておく。図11および図12における光渦強度プロファイル画像によって示されるように、横揺れ角を測定するために、プラットフォーム66上の基準(図示せず)に対してビーム40を時計回り方向または反時計回り方向に回転させる。
【0026】
[0043] システム10において、デバイス26は、先に論じたように、低い内部反射率を有するので、SPPRデバイス26から反射した測定ビーム40が縦揺れ、偏揺れ、および横揺れ角を測定するために使用される。代替実施形態では、SPPRデバイス26を、|r=0.57というような、中程度の内部反射率のデバイスと置換することができ、その場合、このデバイスを透過したビームが測定ビームとなる。図13は、横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を同時に測定するこの型式の光学システム80の模式ブロック図であり、システム10と同様のエレメントは、同じ参照番号で識別する。この実施形態では、SPRデバイス26がSPPRデバイス82と置換されている。SPPRデバイス82は、高内部反射率を有するカスタム・デバイスであり、検出器24およびビーム・スプリッタ82を除去し、ビーム・スプリッタ84をSPPRデバイス82の下流側に設け、デバイス82からの渦ビームを基準ビーム42および測定ビーム40に分割する。
【0027】
[0044] SPPRデバイス82を透過したビームの光強度プロファイルを図14に示す。システム10について先に論じた野と同様に、ビーム40は,プラットフォーム66が基準位置にあるときに、プラットフォーム66から反射され、プラットフォーム66とカメラ70との間の距離を判定し、初期ビーム・プロファイルを特定する。説明した方向における初期ビーム・プロファイルの中心点よりも上または下へのビーム・プロファイルのy軸に沿ったシフトは、図15および図16における光渦強度プロファイル画像によって示されるように、縦揺れ角の規準となる。更に、説明した方向における初期ビーム・プロファイルの中心点よりも上または下へのビーム・プロファイルのx軸に沿ったシフトは、図17および図18における光渦強度プロファイル画像によって示されるように、偏揺れ角の規準となる。この場合も、プラットフォーム66までの距離およびカメラ70上におけるビーム40のシフトは、縦揺れおよび偏揺れ角を測定するためである。図19および図20における光渦強度プロファイル画像によって示されるように、横揺れ角を測定するために、プラットフォーム66上の基準(図示せず)に対して、ビーム40を時計回り方向または反時計回り方向に回転させる。
【0028】
[0045] 先に説明したように、システム10および80の共焦点光学分度器(COP)には、表面における反射率が低いCOTS SPPRデバイスまたは表面における反射率が高いカスタム製作されたSPPRデバイスを使用することができる。COTS SPPRデバイスでは、このデバイスの表面における反射率は、比較的低く、即ち、|r~|0.219|=0.047である。したがって、カメラ70の内面上、そして対象のプラットフォーム66上において回転位置測定を行う(be making)ことができる光子の最大数と比較すると、回転測定を行う光子の個数(counts)は約2/3少なくなる。プラットフォーム66の反射能(albedo)によっては、カメラ70上に撮像する光粒子は更に少なくなることもある。光学分度器のこの共焦点結合の主要な利点の1つは、SPPRデバイスの反射率には関係なく、高コントラスト干渉縞(単一性)が存在することである。このため、信号対ノイズ比を、特にCOTS SPPRデバイスでは、高めることができる。SPPRデバイスの反射率が|r=|0.577|=0.33の値まで高められると、カメラ70上において信号対ノイズ比が高くなるために、SPPRデバイスの透過結合において回転位置測定を行う光粒子の数が最大になる。
【0029】
[0046] SPPRデバイス26の透過振幅(transmission amplitude)、およびSPPRデバイス26の反射振幅(reflection amplitude)を記述する式は、行列型式を使用して、導き出すことができる。明確さおよび簡略さを目的としてSPPRデバイス26または82の透過(transmission)を表すと、次の式のようになる。
【数1】
ここで、A、B、およびφは、当てはめルーチン(fit routines)を用いて振幅を推定し、背景を推定し、角度強度パターン信号の回転を追跡するために使用され、T[φ,φ,r,β]は、正規化された伝達関数であり、フレネル反射係数r、および方位角方向に変化する強度ピークβの数と共に、SPPRの角度位置φを構成する。パラメータrおよびβは、システム10が構築されるときに分かっているパラメータであり、システム動作中変化しない。SPPRデバイス26または82の反射率は、|rとして定義される。
【0030】
[0047] 同様に、SPPRデバイス26からの反射は、次のように表される。
【数2】
ここで、R[φ,φ,r,β]は正規化された反射関数である。
【0031】
[0048] 横揺れ角、縦揺れ角、および偏揺れ角は、カメラ70上に外面から逆反射される光渦ビームの特定的な特性を追跡することによって測定される。これらの特性には、個々の強度ピークの重心、光渦ビーム全体の重心、および光渦強度プロファイルの回転変位が含まれる。角度を測定しようとするプラットフォーム66の表面上に4つの強度ピークが投影される。横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角を測定するアルゴリズムにより、個々の強度ピークの位置および光渦の中心を、高い精度および正確度で把握することが可能になる。4つの別々の強度ピーク毎に、角度を判定するために、1つの狭い強度ピークを使用する場合と比較すると、横揺れ角、縦揺れ角、および横揺れ角の規準において、測定の正確度が4倍高くなる。この設計は4つの強度ピークを使用するが、SPPRデバイス26からはそれよりもはるかに多い強度ピークまたは少ない強度ピークが現れる可能性がある。
【0032】
[0049] 横揺れ角は、光渦の回転、即ち、カメラ70上における光渦ビームの回転変位(角度変位)を追跡することによって判定される。横揺れ角の判定における分解能は 非常に高い上に、横揺れ角を測定する広い範囲を維持する。この角度は、360°測定範囲全体に及ぶことができる。縦揺れ角は、カメラ70上において、外部プラットフォームからの光渦ビーム重心の垂直変位を追跡することによって判定される。同様に、偏揺れ角は、外部プラットフォームからの逆反射光渦ビームの水平変位を追跡することによって判定される。偏揺れ角および縦揺れ角は、目標までの距離、およびカメラ70上におけるビームの変位の双方から計算される。光渦ビームがプラットフォーム66から逆反射される前に、シャッタ68が閉じているときに、光渦ビームがシャッタ68から内部的に逆反射され、光渦ビーム40の初期位置を判定する。これには、ビーム重心の初期位置、および角強度ピークの初期位置が含まれる。このプロセスは、他のシステム較正プロセスと共に順次行われる。他のシステム較正プロセスには、検出器24を使用するレーザ強度較正およびカメラ54を使用するレーザ周波数較正、カメラ54および70ならびに検出器62上における光渦ビーム48の内部回転の監視が含まれる。異なる実施形態では、初期角度較正のために、既知の角度の外部平面上において初期位置を判定することができる。更に、レーザ波長を光渦ビームの回転に変換する伝達関数(transfer function)が格納されている。
【0033】
[0050] 横揺れ角を測定するための角度変位、ならびに偏揺れ角および縦揺れ角を推定するための変位は、非線形当てはめルーチンから推定される。偏揺れ角および縦揺れ角は、カメラ70のx軸およびy軸上それぞれにおける4つの強度ピークの重心の垂直および水平変位、ならびに目標までの距離から判定される。横揺れ角は、強度ピークの回転変位によって判定される。4つの個別強度ピークが、単一(unity)コントラストで、カメラ70上に投影されるので、これらのピーク強度は個々に当てはめられる。強度ピークの位置から、ビーム全体の重心が得られる。該当する式を使用して、最初にデータから重心を計算し、次いで、これらの値を非線形当てはめルーチンにおいて初期値として使用して、対象の位置を追跡する。ビーム重心の正確な判定は、逆反射されるビームの角度変位を判定するときの第1ステップである。画像内に小斑点(speckle)がある場合、複数の画像を纏めて平均を取れば、小斑点の影響を低減することができる。
【0034】
[0051] 横揺れ、縦揺れ、および偏揺れ角の判定には、ビーム40の絶対中心を知る必要がある。特異点がある光渦ビーム、即ち、SPPRデバイス26によって生成される非常に小さい光渦コア(またはコアなし)では、ビーム40の中心は、強度ピークの全てが集まる点として定められ、これはビームの重心と同等である。ビーム40の中心を計算するアルゴリズムについて、以下に論ずる。このアルゴリズムは、偶数の光渦強度ピーク、即ち、βが偶数であるときには正しく作用する。したがって、この場合に限って、βは4であると仮定する。しかしながら、このアルゴリズムは、奇数の強度ピークであっても正しく作用するように改変することもできる。2つの事例、即ち、カメラ70上で撮像されたビーム40の高コントラスト干渉縞を有する光渦強度プロファイルについての第1事例、およびカメラ70上で撮像されたビーム40の低コントラスト干渉縞を有する光渦強度プロファイルについての第2事例について論ずる。更に特定すれば、SPPRデバイス26または82の選択に応じて、カメラ70は高コントラストまたは低コントラスト干渉縞を受けることができる。SPPRデバイスが低い反射率を有するとき、カメラ70は低コントラスト干渉縞を有する画像を生成するが、中程度から高い反射率のSPPRデバイス、即ち、カスタムSPPRデバイスでは、カメラ70は高コントラスト干渉縞を有する画像を生成する。カメラ70は、システム10および80に対して、常に比較的高いコントラストの干渉縞を有する。
【0035】
[0052] 図21は、カメラ70上に撮像されたビーム40の高コントラスト干渉縞を有する光渦強度プロファイルの中心を判定するプロセスを示すフロー・チャート図90である。ボックス92において、外面から光が来ないように、シャッタ68を閉じるが、設計によっては、シャッタ68を閉じることが必要でない場合もある。シャッタ68を閉じると、ボックス94において、ビーム40はシャッタ68からカメラ70上に逆反射される。ボックス96において、カメラ70上の画素スクリーンを、ビーム40における強度ピークの数を表す数の四分儀にセグメント化する。この例では、4つの強度ピークがあり、即ち、β=4であり、したがって、4つの四分儀があり、ボックス98において、x軸およびy軸上で各四分儀を集計する(integrate)。ボックス100において、収集したデータを使用して、各四分儀における強度ピークの重心および幅を推定し、これらの値を4つの四分儀全てについて個々に格納する。ボックス102において、各四分儀における強度ピークに非線形当てはめルーチンを適用する。ボックス100において、当てはめルーチンにおける初期値を推定し、非限定的な一実施形態では、当てはめルーチンにおけるモデルとして、ガウス状関数を採用する。ボックス106において、当てはめルーチンを使用して、各強度ピークのxおよびy重心位置ならびに幅を推定する。各強度ピークの重心位置の値から、ビーム40の中心位置をサブピクセル精度で計算し、ボックス108においてその値を格納する。ビーム40の中央位置を計算する1つの方法は、対角線上にある四分儀においてそれぞれのxおよびy強度ピークの平均を取ることである。各四分儀における個々の強度ピークの重心および幅の値、ならびにビーム全体の重心は、シャッタ68が閉じているまたは開いているときに、角度の判定における初期位置を形成する。
【0036】
[0053] 干渉縞のコントラストが低いのは、反射率が低いSPPRデバイス26を光が透過する場合である。これは、システム10における光学ハードウェアの場合であり、通例、動的較正の間に画像/フレームをカメラ54上で監視する。一般に、光渦ビーム40の中心の発見は、システム10が最初に構築されるときに行われる。次いで、この手順を使用して中心点を監視し、システム動作中に中心位置には統計的に有意な偏差がないことを確保する。
【0037】
[0054] 図22は、カメラ54上に撮像されたビーム42の低コントラスト干渉縞を有する光渦強度プロファイルの中心を判定するプロセスを示すフロー・チャート図112である。ボックス114において、ビーム42をSPPRデバイス26に透過させ、ボックス116において、x軸およびy軸上の集計カウント(integrated count)を計算する。ボックス118において、収集したデータを使用して、ビーム42の重心および幅を推定し、これらの値を格納する。ボックス102において、非線形当てはめルーチンをビーム42に適用する。ここで、ボックス118において、当てはめルーチンにおける初期値を推定し、非限定的な一実施形態では、ビーム42全体に対して当てはめルーチンにおけるモデルとして、ガウス状関数を採用する。ボックス124において、非線形当てはめルーチンから、ビーム42のxおよびy重心位置ならびに幅を得る。ボックス116から124までの動作は、ボックス126においてビーム中心(重心)位置の一貫性を確保するように、ビーム42のレーザ周波数を変化させることによって、異なる回転角毎に繰り返す。低反射率のSPPRデバイスを使用する場合、ボックス128において、この値を、ビーム42の中心位置の以前に格納した値と比較する。初期較正中に、格納された値から大きな偏差があってはならない。言い換えると、偏差はサブピクセル値以下でなければならない。
【0038】
[0055] 図23は、プラットフォーム66の縦揺れおよび偏揺れ角を計算するプロセスを示すフロー・チャート図130である。カメラ70上に外面から光が来ないように、ボックス132において、シャッタ68を閉じる。ボックス134において、ビーム40はシャッタ68(または外部較正面)から逆反射され、カメラ70に入射する。ボックス136において、フロー・チャート図90または112において先に論じたように、ビーム40の重心を計算する。ボックス138において、シャッタ68を開き、ボックス140において、逆反射したビームの重心を計算する。ボックス142において、カメラ70上のビーム40の垂直変位から、縦揺れ角を判定する。ここで、垂直変位の各値は、縦揺れ角の規準に対応する。ボックス144において、カメラ70上の水平変位から、偏揺れ角を判定する。ここで、水平変位の各値は偏揺れ角に対応する。縦揺れ角および偏揺れ角が連続的に変化している場合、ボックス146において、カメラ70のスクリーン上における位置の関数として、変化角を推定するために、連続測定を実行することができる。ボックス148において、縦揺れおよび偏揺れ角を格納する。
【0039】
[0056] 図24は、プラットフォーム66の横揺れ角を計算するプロセスを示すフロー・チャート図150である。ボックス152において、プラットフォーム66上に光が入射しないように、シャッタ68を閉じる。ボックス154において、検出器24および62ならびにカメラ54を使用して、レーザ源12の強度を安定させ、ボックス156において、カメラ54および70上の強度ピークの角度位置によって、レーザ源12の初期周波数を判定する。ボックス158において、カメラ54および70が同時に画像フレームを受信することを確保するために、これらを同期させる。ボックス160において、流れ図90または112において説明したように、カメラ54および70上におけるビーム40の重心を推定する。非線形当てはめルーチンによって得られた値から、背景の存在を差し引く。ボックス162において、カメラ70上にシャッタ68から逆反射されたビーム40の重心を推定する。ボックス164において、ビーム重心位置から開始して半径方向に沿って、カメラ54上における横揺れ角の関数として、集計カウントを計算し、ボックス166において、非線形当てはめルーチンを使用して、角度強度ピークの位置を推定し、これらの値を格納する。ボックス168において、ビーム重心位置から開始して半径方向に沿って、カメラ70上における横揺れ角の関数として集計カウントを計算し、ボックス170において、非線形当てはめルーチンを使用して、角度強度ピークの位置を推定し、これらの値を格納する。
【0040】
[0057] ボックス172においてシャッタ68を開き、ボックス174において、ビーム40をプラットフォーム66上に投影し、カメラ70上で撮像する。ボックス176において、フロー・チャート図90または112を使用して、プラットフォーム66上に撮像されたビーム40の重心を判定する。ボックス178において、ビーム40の重心から開始して、半径方向集計カウントを、横揺れ角の関数として計算する。ボックス180において、非線形最適化当てはめルーチンから強度ピークの位置を得る。較正プロセスにおいて、ビーム40がシャッタ68から逆反射され、ボックス182において、較正プロセスから、非線形当てはめルーチンに対する強度ピークの初期位置付け(initial positioning)を格納する。プラットフォーム66を回転させると、光渦ビームは、レーザ・ビーム周波数の変化によって、回転を追跡し、光渦強度プロファイルの方向を回転させる。ボックス184において、横揺れ角を推定する。プラットフォーム66を徐々に(in incremental steps)回転させる場合、横揺れ角を判定するために、ビーム40の光渦パターンを徐々に回転させることができる。プラットフォーム66の第1速度での滑らかな連続回転がある場合、回転ドプラ・シフトを使用して、横揺れ角を得ることができる。
【0041】
[0058] 以上の論述は、本開示の例示的な実施形態を開示および説明したに過ぎない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定める通りの本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、このような論述ならびに添付図面および特許請求の範囲から、種々の変更、修正、および変形も行えることは容易に認められよう。
図1
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図3
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【国際調査報告】