(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アルミノリン酸塩分子篩SCM-18、その調製、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C01B 39/54 20060101AFI20220106BHJP
B01J 29/83 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C01B39/54
B01J29/83 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523060
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2019106628
(87)【国際公開番号】W WO2020082944
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】201811250883.6
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊為民
(72)【発明者】
【氏名】袁志慶
(72)【発明者】
【氏名】滕加偉
(72)【発明者】
【氏名】付文華
(72)【発明者】
【氏名】劉松霖
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA70
4G073BA75
4G073BB02
4G073BB13
4G073BB48
4G073BB66
4G073BB70
4G073BD06
4G073CZ41
4G073CZ57
4G073FB02
4G073FB21
4G073FB23
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4G073FB25
4G073FB50
4G073FC19
4G073FC25
4G073FC27
4G073FC30
4G073FD01
4G073FD23
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA12
4G073GA13
4G073GA14
4G073UA01
4G073UA02
4G073UA06
4G169BA07A
4G169BA21C
4G169BC16A
4G169BD02A
4G169BD07A
4G169BE06C
4G169BE17C
4G169BE37C
4G169BE38C
4G169DA05
4G169EC03X
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4G169FA01
4G169FB05
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC08
4G169ZA39A
4G169ZB01
4G169ZB03
4G169ZB08
4G169ZB09
4G169ZC02
4G169ZC04
4G169ZC07
(57)【要約】
アルミノリン酸塩分子篩SCM-18、その調製、およびその用途が開示される。前記分子篩は、モル基準で表すとAl2O3・nP2O5の化学組成式を有し、式中、nは、リン対アルミニウムのモル比を表し、約0.8~1.2の範囲である。前記アルミノリン酸塩分子篩は、独特のX線回折パターンを有し、吸着剤、触媒、または触媒担体として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル比で表すとAl
2O
3・nP
2O
5の化学組成式を有するアルミノリン酸塩分子篩であって、
式中、nは、リン対アルミニウムのモル比を表し、約0.8~約1.2の範囲であり、
前記分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【表1】
アルミノリン酸塩分子篩。
【請求項2】
前記分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【表2】
請求項1に記載のアルミノリン酸塩分子篩。
【請求項3】
前記分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【表3】
請求項2に記載のアルミノリン酸塩分子篩。
【請求項4】
前記分子篩は、約150~500m
2/g、好ましくは約200~400m
2/gの比表面積を有し、約0.9~0.25ml/g、好ましくは約0.10~0.20ml/gのミクロ細孔容積を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミノリン酸塩分子篩。
【請求項5】
アルミノリン酸塩分子篩を調製するための方法であって:
i)アルミノリン酸塩分子篩前駆体を準備する工程であって、前記前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【表4】
工程;および、
ii)前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体を焼成して、前記アルミノリン酸塩分子篩を得る工程;
を含む、方法。
【請求項6】
前記前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有し、
【表5】
好ましくは、前記前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【表6】
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程i)は、
ia)アルミニウム源、リン源、有機材料R、および水を、前記アルミニウム源(Al
2O
3として計算):前記リン源(P
2O
5として計算):R:H
2Oのモル比を約1:(1.0~3.0):(1.5~6.0):(50~500)として混合して、合成母液を得る工程;および、
ib)前記合成母液を結晶化に供し、前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得る工程;
をさらに含み、
ここで、前記有機材料Rは、以下の式を有する水酸化アンモニウムであり、
【化1】
式中、
基R1~R12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、独立して、HおよびC
1-6アルキル基から選択され、好ましくはHおよびC
1-3アルキル基から選択され、より好ましくはHである;
基R13およびR14は、互いに同一であっても異なっていてもよく、独立して、C
1-6アルキル基から選択され、好ましくはC
1-3アルキル基から選択され、より好ましくはメチルから選択される;
請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
工程ia)において、前記アルミニウム源、前記リン源、前記有機材料R、および水は、前記アルミニウム源(Al
2O
3として計算):前記リン源(P
2O
5として計算):R:H
2Oのモル比を約1:(1.0~2.0):(2.5~4.8):(100~300)として、混合される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機材料Rは、1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシドである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
工程ib)は、以下の条件:
密閉した反応容器、約130~200℃、好ましくは約145~185℃の結晶化温度、および、約24~150時間、好ましくは約48~120時間の結晶化時間;
の下で行われ、
好ましくは、前記工程ib)は、得られた前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体を洗浄および乾燥することをさらに含む、
請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムゾル、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、および酸化アルミニウムからなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは、擬ベーマイトおよびアルミニウムイソプロポキシドからなる群から選択される1つ以上であり;および/または、
前記リン源は、リン酸、オルト亜リン酸、および五酸化リンからなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは、リン酸である;
請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体は、Al
2O
3として計算したアルミニウムに対する、P
2O
5として計算したリンのモル比(すなわち、P
2O
5/Al
2O
3)が約0.8~約1.2の範囲であり、
任意に、前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体は、前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体の重量基準で、約8重量%~約40重量%の有機材料を含む、
請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項5~12のいずれか1項に記載の方法によって得られたアルミノリン酸塩分子篩。
【請求項14】
請求項1~4および13のいずれか1項に記載のアルミノリン酸塩分子篩、ならびにバインダーを含む分子篩組成物。
【請求項15】
吸着剤、触媒、または触媒担体としての、請求項1~4および13のいずれか1項に記載のアルミノリン酸塩分子篩、または請求項14に記載の分子篩組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、分子篩の技術分野に関し、特に、アルミノリン酸塩分子篩、その調製、および用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
分子篩は、多孔質で結晶性材料のファミリーであり、これまでに、既知の構造を有する250種類以上の分子篩が発見されている。ほとんどの分子篩は、大きな内部比表面積と、反応部位として働き、金属、金属酸化物、有機分子、および水分子などゲスト分子を保持する開放した内部空間とを有する。分子篩は、均一で規則的な細孔チャネルを有し、細孔チャネルの大きさは分子の大きさと同程度であるため、分子の出入りを選択することができ、したがって形状選択効果を得ることができる。上記のような特徴のため、分子篩は、触媒、触媒担体、吸着剤、および洗浄剤などとして広く使用されており、石油化学産業、環境保護、吸着、および分離の分野で広く用いられている。
【0003】
分子篩の骨格は、典型的には、共通の頂点で結合している配位四面体(TO4)で構成されている。アルミノリン酸塩分子篩に関して、この種の分子篩の骨格は、AlO4
-四面体とPO4
+四面体とを結合することによって形成される。その結果、分子篩の骨格全体は、電気的に中性に見える。もちろん、ゼオライトと同様に、アルミノリン酸塩分子篩中のアルミニウムまたはリンは、他の元素、最も一般的にはケイ素(得られる分子篩はSAPOと呼ばれる)および遷移金属元素(得られる分子篩はMAPOと呼ばれる)、によって置換することができる。これらの元素の導入によって、アルミノリン酸塩分子篩に、固体酸性または酸化還元特性などの新しい特徴が付与される。アルミノリン酸塩分子篩の人工的合成の研究は、ゼオライト分子篩と比較して、比較的遅れている。
【0004】
1971年、Flanigenらは、アルミノリン酸塩分子篩の合成を報告した[Flanigen E. M. and Grose R. W., Phosphorus Substitution in Zeolite Frameworks. in Molecular Sieve Zeolites-I, 1970, P76-P98, ACS, Washingtom D.C]。当該合成は、水熱合成条件下でアルミニウム、ケイ素、およびリンの酸化物を混合することを含み、シリコアルミノリン酸塩分子篩を生成する。当該シリコアルミノリン酸塩分子篩は、リン含有量が5~25%(P2O5として計算)であるアナルサイム、チャバザイト、フィリップサイト-ハーモトーム、ゼオライトL、A、およびBなどと同じ結晶構造を有するが、ゼオライトの構造とは異なる構造は見られない。
【0005】
米国特許第4,310,440号は、鋳型として有機アミンまたは第四級アンモニウムカチオンを使用する一連のアルミノリン酸塩分子篩の水熱合成を記載している。一連のアルミノリン酸塩分子篩には、AlPO4-5、AlPO4-8、AlPO4-9、AlPO4-11、AlPO4-12、AlPO4-14、AlPO4-16、AlPO4-17、AlPO4-18、AlPO4-20、AlPO4-21、AlPO4-22、AlPO4-23、AlPO4-25、AlPO4-26、AlPO4-28、AlPO4-31などが含まれる。使用される鋳型には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ピペリジンおよびその誘導体、シクロヘキシルアミン、DABCO、キヌクリジンなどが含まれる。
【0006】
米国特許第4,440,871号は、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-16、SAPO-17、SAPO-20、SAPO-31、SAPO-34、SAPO-35、SAPO-37、SAPO-40、SAPO-41、SAPO-42、SAPO-44等を含むケイ素含有アルミノリン酸塩分子篩の合成を記載している。
【0007】
米国特許第4,752,651号は、チタン含有TiAPSO、マグネシウム含有MgAPSO、マンガン含有MnAPSO、コバルト含有CoAPSO、亜鉛含有ZnAPSO、鉄含有FeAPSOなどを含む一連の金属含有シリコアルミノリン酸塩分子篩の合成を記載している。
【0008】
アルミノリン酸塩分子篩の合成に関して、有機鋳型は得られる分子篩の構造を決定する主要な因子であり、新しい分子篩はしばしば、新しい鋳型を使用することによって得られる。これまでのところ、有機アミンおよび第四級アンモニウムタイプの有機化合物が、アルミノリン酸塩分子篩の合成において最も広く使用されている鋳型である。
【0009】
〔発明の概要〕
本出願の目的は、新規なアルミノリン酸塩分子篩、その調製、およびその用途を提供することである。当該アルミノリン酸塩分子篩は、独特のX線回折パターンを有し、吸着剤、触媒、または触媒担体として使用することができる。
【0010】
一態様において、本出願は、モル基準で表すとAl2O3・nP2O5の化学組成式を有するアルミノリン酸塩分子篩であって、式中、nは、Alに対するPのモル比を表し、約0.8~約1.2の範囲であり、前記分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【0011】
【0012】
アルミノリン酸塩分子篩を提供する。
【0013】
別の態様において、アルミノリン酸塩分子篩を調製するための方法であって、以下の工程:
i)アルミノリン酸塩分子篩前駆体を準備する工程であって、前記前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【0014】
【0015】
工程;および、
ii)前記アルミノリン酸塩分子篩前駆体を焼成して、前記アルミノリン酸塩分子篩を得る工程;
を含む、方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記工程i)は、
ia)アルミニウム源、リン源、有機材料R、および水を、前記アルミニウム源(Al2O3として計算):前記リン源(P2O5として計算):R:H2Oのモル比を約1:(1.0~3.0):(1.5~6.0):(50~500)として混合して、合成母液を得る工程;および、
ib)前記合成母液を結晶化に供し、前記分子篩前駆体を得る工程;
をさらに含み、
ここで、前記有機材料Rは、以下の式を有する水酸化アンモニウムであり、
【0017】
【0018】
式中、
基R1~R12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、独立して、HおよびC1-6アルキル基から選択され、好ましくはHおよびC1-3アルキル基から選択され、より好ましくはHである;
基R13およびR14は、互いに同一であっても異なっていてもよく、独立して、C1-6アルキル基から選択され、好ましくはC1-3アルキル基から選択され、より好ましくはメチルから選択される。
【0019】
また別の態様において、本出願は、上記に記載される方法によって得られたアルミノリン酸塩分子篩を提供する。
【0020】
また別の態様において、本出願は、本出願に係るアルミノリン酸塩分子篩、または本出願に係る方法によって得られたアルミノリン酸塩分子篩、およびバインダーを含む分子篩組成物を提供する。
【0021】
また別の態様において、本出願は、吸着剤、触媒、または触媒担体としての、本出願に係る分子篩、本出願に係る方法によって得られた分子篩、または本出願に係る分子篩組成物の使用を提供する。
【0022】
本出願に係るアルミノリン酸塩分子篩は、開放した骨格を有しており、ゆえに、アルミノリン酸塩分子篩は、ゲスト分子を収容することができる。例えば、アルミノリン酸塩分子篩は、小有機分子および水分子の吸着剤として使用することができ、または、金属もしくは酸化銅などの金属酸化物をロードするための触媒担体として使用することができ、および、窒素酸化物を含有するテールガスを処理するための触媒として使用することができる。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1で得られたアルミノリン酸塩分子篩前駆体のXRDパターンを示す。
【0024】
図2は、実施例1で得られたアルミノリン酸塩分子篩のXRDパターンを示す。
【0025】
本出願は、以下の実施例を参照してさらに説明されるが、これらは限定することを意図するものではない。
【0026】
〔発明の詳細な説明〕
以下、本出願の実施の形態について詳細に説明する。しかしながら、本出願の範囲は、実施形態によって限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることに留意されたい。
【0027】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、本明細書中に提供される定義が支配的である。
【0028】
材料、物質、方法、工程、装置、構成要素などが、本明細書中で「当業者に公知である」、「先行技術」などとして記載される場合、それらは、出願時に当技術分野で一般的に使用されるもの、および、現在一般的には使用されていないが、類似の目的に有用であるとして当技術分野で公知になるものを包含することが意図される。
【0029】
本出願の文脈において、「Alに対するPの比」または「Alに対するPのモル比」という用語は、Al2O3として計算されたアルミニウムに対する、P2O5として計算されたリンのモル比を指す。
【0030】
本出願の文脈において、用語「比表面積」は、内部表面積および外部表面積を含む、単位質量当たりのサンプルの総面積を指す。ポルトランドセメント、いくつかの粘土鉱物粒子などの非多孔質サンプルは、外部表面積のみを有する。アスベスト繊維、珪藻土、分子篩などの多孔質サンプルは、外部表面積および内部表面積の両方を有する。多孔質サンプル中の2nm未満の孔径を有する孔の表面積は、内部表面積と呼ばれる。内部表面積を除く表面積は、外部表面積と呼ばれる。サンプルの単位質量当たりの外部表面積は、外部比表面積と呼ばれる。
【0031】
本出願の文脈において、用語「細孔容積」は、分子篩の単位質量当たりの細孔の容積を指す。用語「全細孔容積」は、分子篩の質量当たりのすべての細孔(典型的には50nm未満の孔径を有する細孔のみを含む)の容積を指す。用語「ミクロ細孔容積」は、分子篩の単位質量当たりのすべてのミクロ細孔(典型的には2nm未満の孔径を有する細孔を含む)の容積を指す。
【0032】
本出願の文脈において、分子篩/分子篩前駆体の化学組成式は、分子篩/分子篩前駆体の骨格の化学組成を指す。化学組成は、分子篩/分子篩前駆体の骨格におけるリン(P2O5として計算)、およびアルミニウム(Al2O3として計算)などの元素の間のモル比を模式的にのみ示すが、それぞれの元素の正確な形態は、厳密に限定されない。一般に、化学組成式は、誘導結合プラズマ原子発光分光(ICP)法によって、決定することができる。
【0033】
本出願の文脈において、分子篩の構造は、X線粉末回折計を使用して決定されたX線回折(XRD)パターンに従って決定される。当該X線粉末回折計は、Kα1波長(λ=1.5405980オングストローム(Å))のCu-Kα線源を備えており、Kα2線はモノクロメータを使用して除去される。
【0034】
本出願の文脈において、分子篩のXRDデータにおいて、W、M、S、VS、W-M、M-S、およびS-VSなどは、回折ピーク面積に基づいて計算された最も強い回折ピーク(すなわち、最大面積を有する回折ピーク)に対する、対応する回折ピークの相対強度I/I0を表す。Iは、対応する回折ピークのピーク面積を表す。I0は、最も強い回折ピークのピーク面積を表す。Wは、弱を意味する。Mは、中間を意味する。Sは、強を意味する。VSは、非常に強を意味する。W-Mは、弱から中間を意味する。M-Sは、中間から強を意味する。S-VSは、強から非常に強を意味する。このような表現は、当業者に公知である。一般に、Wは20未満を表し、Mは20~40を表し、Sは40~60を表し、VSは60超えを表し、W-Mは40未満を表し、M-Sは20~60を表し、S-VSは40超えを表す。
【0035】
本出願の文脈において、「焼成後」、「焼成形態」または「焼成分子篩」という用語は、焼成後の分子篩の状態を指す。焼成後の状態は例えば、合成したままの分子篩の細孔内に存在し得る有機材料(特に、有機鋳型)および水が、焼成によりさらに除去された分子篩の状態であってもよい。
【0036】
本明細書中に開示される態様(または実施形態)のうちの2つ以上は、任意の組合せで互いに組み合わせることができ、こうして得られた技術的解決策(例えば、方法またはシステム)は、元々の開示の一部として含まれ、本出願の範囲内であることに留意されたい。
【0037】
特に断らない限り、本出願において言及されるすべてのパーセンテージ、部、比などは、モル基準の計算が当業者の従来の理解と矛盾しない限り、モル基準で計算される。
【0038】
第1の態様において、本出願は、アルミノリン酸塩分子篩を提供する。当該アルミノリン酸塩分子篩は、Al2O3・nP2O5の化学組成式を有し、式中、nは、Alに対するPのモル比を表し、約0.8~約1.2の範囲であり、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0039】
【0040】
好ましい一実施形態において、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0041】
【0042】
さらに好ましい一実施形態において、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0043】
【0044】
いくつかの好ましい実施形態において、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0045】
【0046】
さらに好ましい一実施形態において、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0047】
【0048】
またさらに好ましい一実施形態において、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0049】
【0050】
好ましい一実施形態において、アルミノリン酸塩分子篩は、約150~500m2/gの比表面積を有し、好ましくは約200~400m2/gの比表面積を有し、そして、約0.09~0.25ml/gのミクロ細孔容積を有し、好ましくは約0.10~0.20ml/gのミクロ細孔容積を有する。
【0051】
第2の態様において、本出願は、アルミノリン酸塩分子篩を調製するための方法を提供する。当該方法は、以下の工程:
i)アルミノリン酸塩分子篩前駆体を準備する工程であって、前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、
【0052】
【0053】
工程;および、
ii)アルミノリン酸塩分子篩前駆体を焼成して、アルミノリン酸塩分子篩を得る工程;
を含む。
【0054】
好ましい一実施形態において、分子篩前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0055】
【0056】
さらに好ましい一実施形態において、分子篩前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0057】
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、分子篩前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0059】
【0060】
さらに好ましい一実施形態において、分子篩前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0061】
【0062】
またさらに好ましい一実施形態において、分子篩前駆体は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0063】
【0064】
いくつかの好ましい実施形態において、アルミノリン酸塩分子篩前駆体の骨格は、モル基準で表すとAl2O3・nP2O5の化学組成式を有する。式中、nは、リン対アルミニウムのモル比を表し、約0.8~約1.2の範囲である。
【0065】
好ましい一実施形態において、工程i)は、
ia)アルミニウム源、リン源、有機材料R、および水を、アルミニウム源(Al2O3として計算):リン源(P2O5として計算):R:H2Oのモル比を約1:(1.0~3.0):(1.5~6.0):(50~500)として混合して、合成母液を得る工程;および、
ib)合成母液を結晶化に供し、分子篩前駆体を得る工程;
をさらに含み、
ここで、有機材料Rは、以下の式を有する水酸化アンモニウムであり、
【0066】
【0067】
式中、
基R1~R12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、独立して、HおよびC1-6アルキル基から選択され、好ましくはHおよびC1-3アルキル基から選択され、より好ましくはHである;
基R13およびR14は、互いに同一であっても異なっていてもよく、独立して、C1-6アルキル基から選択され、好ましくはC1-3アルキル基から選択され、より好ましくはメチルから選択される。
【0068】
本出願に係る方法において、アルミニウム源は、特に限定されず、例えば、アルミニウム含有分子篩の製造のために一般的に用いられるものであってもよい。好ましい一実施形態において、アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムゾル、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、および酸化アルミニウムからなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは、擬ベーマイトおよびアルミニウムイソプロポキシドからなる群から選択される1つ以上である。
【0069】
本出願に係る方法において、リン源は、特に限定されず、例えば、リン含有分子篩の製造のために一般的に用いられるものであってもよい。好ましい一実施形態において、リン源は、リン酸、オルト亜リン酸、および五酸化リンからなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは、リン酸である。
【0070】
好ましい一実施形態において、工程ia)において、アルミニウム源、リン源、有機材料R、および水は、アルミニウム源(Al2O3として計算):リン源(P2O5として計算):R:H2Oのモル比を約1:(1.0~2.0):(2.5~4.8):(100~300)として、混合される。
【0071】
特に好ましい一実施形態において、有機材料Rは、1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシドであり、これは以下の式を有する。
【0072】
【0073】
好ましい一実施形態において、工程ib)は、以下の条件:密閉した反応容器、約130~200℃の結晶化温度、および、約24~150時間の結晶化時間;の下で行われる。さらに好ましくは、結晶化温度は約145~185℃であり、結晶化時間は約48~120時間である。
【0074】
さらに好ましくは、工程ib)は、得られたアルミノリン酸塩分子篩前駆体を洗浄および乾燥することをさらに含む。洗浄および乾燥の手順は、特に限定されず、従来の様式で行ってもよい。例えば、洗浄は、脱イオン水を用いて行うことができ、使用済み洗浄溶液がほぼ電気的に中性になるまで、吸引濾過または遠心分離などの方法を適用することができる;乾燥は、例えば、約100~250℃で約1~48時間、オーブン中で乾燥することであってもよい。
【0075】
いくつかの好ましい実施形態において、工程ib)で得られる分子篩前駆体において、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比、すなわち(P2O5/Al2O3)は、約0.8~約1.2の範囲であり、有機材料の含有量は、分子篩前駆体の重量の約8%~約40%の範囲である。
【0076】
工程ib)で得られるアルミノリン酸塩分子篩前駆体は、安定な結晶構造を有し、従来の方法を使用して焼成することができるが、当該焼成は、本出願において特に限定されない。例えば、焼成は、大気雰囲気下にて約500~750℃で行うことができ、焼成時間は、例えば、約1~10時間とすることができる。特に、焼成は、大気雰囲気下にて約550℃で約6時間、行うことができる。焼成条件に応じて、得られるアルミノリン酸塩分子篩は、特定の量の残留炭素質材料を含有する可能性がある。しかしながら、このような残留炭素質材料は、分子篩の化学組成において、考慮されない。
【0077】
好ましい一実施形態において、工程ii)で得られるアルミノリン酸塩分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0078】
【0079】
さらに好ましい一実施形態において、工程ii)で得られるアルミノリン酸塩分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0080】
【0081】
またさらに好ましい一実施形態において、工程ii)で得られるアルミノリン酸塩分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0082】
【0083】
いくつかの好ましい実施形態において、工程ii)で得られるアルミノリン酸塩分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0084】
【0085】
さらに好ましい一実施形態において、工程ii)で得られるアルミノリン酸塩分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0086】
【0087】
またさらに好ましい一実施形態において、工程ii)で得られるアルミノリン酸塩分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する。
【0088】
【0089】
本出願に係る方法において、アルミニウム源、リン源、および有機材料Rの組み合わせ効果の下、特定のX線回折パターンを有する本出願に係るアルミノリン酸塩分子篩は、出発材料の供給比率を制御することによって、指向性をもって調製することができる。
【0090】
第3の態様において、本出願は、本出願に係る方法によって得られたアルミノリン酸塩分子篩を提供する。
【0091】
第4の態様において、本出願は、本出願に係るアルミノリン酸塩分子篩、または本出願に係る方法によって得られたアルミノリン酸塩分子篩、およびバインダーを含む分子篩組成物を提供する。
【0092】
分子篩組成物は、粉末、顆粒、または成形品(例えば、棒状、三裂状など)のような任意の物理的形態であってよい。これらの物理的形態は、当技術分野で一般に知られている任意の様式で得ることができ、特に限定されない。
【0093】
本出願において、バインダーは、特に限定されない。例えば、粘土、カルクレイト、酸化ケイ素、シリカゲル、アルミナ、酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、吸着剤または触媒を調製するために一般的に使用されるものを使用してもよい。
【0094】
第5の態様において、本出願は、吸着剤、触媒、または触媒担体としての、本出願に係るアルミノリン酸塩分子篩、本出願に係る方法によって得られたアルミノリン酸塩分子篩、または本出願に係る分子篩組成物の使用を提供する。
【0095】
吸着剤の例としては、例えば、少量の水を含む、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、およびイソブチルケトンなどの有機溶媒から水を除去するために有用なもの、ならびに、少量の水分を含む天然ガスから水分を吸着除去するために有用なものが挙げられる。
【0096】
触媒の例としては、例えばSCM-18分子篩上にCuをロードすることによって得られる触媒を挙げることができ、これは、自動車排気ガス中に存在する窒素酸化物の触媒的分解のために有用である。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態において、本出願は、以下の技術的解決策を提供する。
【0098】
項目1:水分を除いて、モル比で表すとAl2O3:nP2O5の化学組成を有するSCM-18分子篩であって、式中、nは、1.0~3.0であり、分子篩は、以下の表に示す相対強度プロファイルを示すX線回折パターンを有する、SCM-18分子篩。
【0099】
【0100】
項目2:以下の工程:
a)アルミニウム源、リン源、有機材料R、および水を、Al2O3:(1.0~3.0)P2O5:(1.5~6.0)R:(50~500)H2Oの重量比率にて、均一に混合して、合成母液を得る工程;
b)密閉した反応容器中で合成母液を結晶化に供する工程;
c)工程b)で得られた生成物を洗浄および乾燥して、SCM-18分子篩の前駆体を得る工程;および、
d)SCM-18分子篩の前駆体を焼成して、SCM-18分子篩を得る工程;
を含む、項目1に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0101】
項目3:アルミニウム源、リン源、有機材料R、および水は、Al2O3:(1.0~2.0)P2O5:(2.5~4.8)R:(100~300)H2Oのモル比にて、均一に混合されて、合成母液を得る、項目2に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0102】
項目4:有機材料Rは、1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシドである、項目2に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0103】
項目5:結晶化温度は130℃~200℃であり、結晶化時間は24~150時間である、項目2に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0104】
項目6:アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムゾル、および酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つであり;リン源は、リン酸、オルト亜リン酸、または五酸化リンから選択される1つ以上である、項目2に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0105】
項目7:SCM-18分子篩の前駆体は、以下のX線回折パターンを有する、
【0106】
【0107】
項目2に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0108】
項目8:SCM-18分子篩の前駆体は、水分を除いて、m有機成分:Al2O3:P2O5の化学組成を有し、ここで、0.03≦m≦0.3である、項目2に記載のSCM-18分子篩を調製するための方法。
【0109】
項目9:項目1の分子篩、または項目2~8のいずれか1つに記載の方法によって得られた分子篩、およびバインダーを含む分子篩組成物。
【0110】
項目10:吸着剤、または触媒としての、項目1の分子篩、項目2~8のいずれか1つに記載の方法によって得られた分子篩、または項目9の分子篩組成物の使用。
【0111】
〔実施例〕
本出願は、以下の実施例を参照してさらに説明されるが、これらの実施例は限定することを意図するものではない。
【0112】
〔出発物質〕
以下の実施例において、使用される出発物質である1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシドは、SACHEM companyから市販されており、質量濃度20.75%(水溶液)を有する化学的に純粋なものである:擬ベーマイトは、Shandong Ying Lang Chemicals Co.,Ltd.から市販されており、Al2O3として計算すると72重量%の含有量を有する純粋な化学薬品である;リン酸は、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から市販されており、質量濃度85%(水溶液)を有する分析的に純粋なものである;アルミニウムイソプロポキシドは、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から市販されており、Al2O3として計算すると24.7重量%の含有量を有する化学的に純粋なものである。
【0113】
特に明記しない限り、以下の実施例において使用される化学試薬は、市販の化学的に純粋な製品である。
【0114】
〔分析装置および方法〕
実施例において、分子篩のXRDパターンは、PANalytical X’Pert PRO X線粉末回折計を使用して、決定された。当該X線粉末回折計は、Kα1波長がλ=1.5405980オングストローム(Å)であるCu-Kα線源を備えており、Kα2線は、Ge(111)モノクロメータを用いて除去される。動作電流および電圧は、それぞれ40ミリアンペアおよび40キロボルトであり、走査ステップサイズは2θ=0.02°、走査速度は6°/分である。
【0115】
分子篩の化学組成は、Kontronが提供しているモデルS-35を使用した誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって、決定された。固体分子篩サンプルは、HFを用いて溶解し、試験前に溶液を作製した。
【0116】
分子篩の比表面積および細孔容積は、Quantachromeが提供しているQUADRASORB evo Gas Sorption Surface Area and Pore Size Analyzerを使用したN2物理吸着脱離法によって、測定された。測定温度は77Kであり、測定前にサンプルは573Kにて6時間、真空前処理された。BET式を使用して比表面積を計算し、t-プロット法によって細孔容積を計算した。
【0117】
分子篩前駆体中の有機材料の含有量は、NETZSCHが提供しているSTA449F3熱重量分析計を使用した熱重量分析法により決定された。空気流量は30ml/分、加熱速度は10℃/分であり、250℃~550℃の間の重量損失率を有機材料の含有量とした。
【0118】
〔実施例1〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(以下、Rという)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た(ここで、Al
2O
3はAl
2O
3として計算したアルミニウム源、P
2O
5はP
2O
5として計算したリン源を表す。以下、同様である):
1.0Al
2O
3:2.4P
2O
5:4.8R:190H
2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度175℃にて84時間、上記合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al
2O
3として計算したアルミニウムに対する、P
2O
5として計算したリンのモル比(すなわち、P
2O
5/Al
2O
3)が1.0であり、有機材料の重量含有量が15.3%であった。前駆体は、
図1に示すXRDパターンおよび表1Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl
2O
3・1.0P
2O
5であり、比表面積が394m
2/gであり、ミクロ細孔容積が0.17ml/gであり、
図2に示すXRDパターンおよび表1Bに示す対応するXRDデータを有した。
【0119】
【0120】
【0121】
〔実施例2〕
8.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:1.5R:50H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度175℃にて84時間、上記合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.0であり、有機材料の重量含有量が17.9%であり、表2Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.0P2O5であり、比表面積が363m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.16ml/gであり、表2Bに示すXRDデータを有した。
【0122】
【0123】
【0124】
〔実施例3〕
34.5gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:6.0R:280H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度175℃にて84時間、合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が0.98であり、有機材料の重量含有量が14.4%であり、表3Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・0.98P2O5であり、比表面積が410m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.18ml/gであり、表3Bに示すXRDデータを有した。
【0125】
【0126】
【0127】
〔実施例4〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:4.8R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度190℃にて60時間、合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.0であり、有機材料の重量含有量が20.2%であり、表4Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.0P2O5であり、比表面積が357m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.15ml/gであり、表4Bに示すXRDデータを有した。
【0128】
【0129】
【0130】
〔実施例5〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:4.8R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度150℃にて120時間、上記合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が0.95であり、有機材料の重量含有量が19.0%であり、表5Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・0.95P2O5であり、比表面積が330m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.15ml/gであり、表5Bに示す対応するXRDデータを有した。
【0131】
【0132】
【0133】
〔実施例6〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで1.15gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:1.2P2O5:4.8R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度175℃にて84時間、合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.0であり、有機材料の重量含有量が15.6%であり、表6Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.0P2O5であり、比表面積が408m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.19ml/gであり、表6Bに示すXRDデータを有した。
【0134】
【0135】
【0136】
〔実施例7〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.88gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:3.0P2O5:4.8R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度175℃にて84時間、上記合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.03であり、有機材料の重量含有量が17.8%であり、表7Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.03P2O5であり、比表面積が390m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.17ml/gであり、表7Bに示すXRDデータを有した。
【0137】
【0138】
【0139】
〔実施例8〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、23gの水を添加し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:4.8R:400H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度175℃にて84時間、合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.0であり、有機材料の重量含有量が16.4%であり、表8Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.0P2O5であり、比表面積が392m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.19ml/gであり、表8Bに示す対応するXRDデータを有した。
【0140】
【0141】
【0142】
〔実施例9〕
8.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.698gの擬ベーマイトを撹拌しながら添加し、次いで1.15gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:1.2P2O5:1.5R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度190℃にて60時間、合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が0.99であり、有機材料の重量含有量が16.3%であり、表9Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・0.99P2O5であり、比表面積が310m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.15ml/gであり、表9Bに示す対応するXRDデータを有した。
【0143】
【0144】
【0145】
〔実施例10〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、84gのアルミニウムイソプロポキシドを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:4.8R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度190℃にて60時間、合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.0であり、有機材料の重量含有量が20.1%であり、表10Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.0P2O5であり、比表面積が345m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.17ml/gであり、表10Bに示す対応するXRDデータを有した。
【0146】
【0147】
【0148】
〔実施例11〕
27.6gの20.75% 1,1-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス-1-メチルピロリジニウムジヒドロキシド(R)溶液を秤量し、0.84gのアルミニウムイソプロポキシドを撹拌しながら添加し、次いで2.30gの85%リン酸溶液をゆっくり滴下し、均一に撹拌して、モル比で表すと以下の組成を有する合成母液を得た:
1.0Al2O3:2.4P2O5:4.8R:190H2O
密閉した反応容器中で、結晶化温度150℃にて120時間、上記合成母液を結晶化させ、得られた結晶化生成物を洗浄および乾燥して、アルミノリン酸塩分子篩前駆体を得た。前駆体は、Al2O3として計算したアルミニウムに対する、P2O5として計算したリンのモル比(すなわち、P2O5/Al2O3)が1.01であり、有機材料の重量含有量が14.7%であり、表11Aに示すXRDデータを有した。アルミノリン酸塩分子篩前駆体を550℃にて5時間、焼成し、アルミノリン酸塩分子篩を得た。生成物である分子篩は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP)によって決定された化学組成式がAl2O3・1.01P2O5であり、比表面積が372m2/gであり、ミクロ細孔容積が0.16ml/gであり、表11Bに示す対応するXRDデータを有した。
【0149】
【0150】
【0151】
〔実施例12〕
実施例2において得られた粉末のサンプル2gをアルミナ3gおよびセスバニア粉末0.2gと十分に混合した後、5重量%の硝酸5mlを加えて混練し、φ1.6×2mmの棒状に押出した。棒状物を110℃にて乾燥し、大気雰囲気中で550にて8時間、焼成し、分子篩組成物を得た。分子篩組成物は、吸着剤または触媒として使用することができる。
【0152】
〔実施例13〕
20gの種々の液体吸着質のそれぞれに、実施例12において得られた2gのSCM-18分子篩組成物を室温にて添加し、混合物を12時間、吸着のために撹拌した後、濾過してサンプルを分離した。得られた固形サンプルを、流動窒素雰囲気中で40℃にて2時間、乾燥させた後、電子天秤(精度0.001g)を使用して秤量した。以下の式により吸着能を算出し、その結果を表12に示す。
【0153】
吸着能=(吸着後のサンプルの重量-サンプルの初期重量)÷サンプルの初期重量
比較のために、乾燥したAlPO-5、AlPO-11、ZSM-5分子篩、および3A分子篩それぞれを、実施例12に記載の組成物に対して配合し、各組成物2gを吸着性能試験に供した。結果を表12に示す。加えて、シリカゲル2gを吸着性能試験に供した。結果を表12に併せて示す。
【0154】
【0155】
表12から分かるように、本出願の分子篩/分子篩組成物は、多くの有機小分子および水分のための吸着剤として使用することができ、特に、H2Oについて良好な吸着能を有する。
【0156】
本出願は、好ましい実施形態を参照して上記に詳細に説明されているが、これらの実施形態に限定されることを意図していない。本出願の発明思想に従って種々の変更をしてもよく、これらの変更は本出願の範囲内である。
【0157】
なお、上記実施形態で説明した種々の技術的特徴は、矛盾することなく適宜に組み合わせてもよい。不必要な繰り返しを避けるために、本出願では種々の可能な組み合わせを記載していないが、その組み合わせもまた本出願の範囲内である。
【0158】
さらに、当該組み合わせが本出願の精神から逸脱しない限り、本出願の種々の実施形態を任意に組み合わせることができ、そのような組み合わせた実施形態は、本出願の開示としてみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【
図1】
図1は、実施例1で得られたアルミノリン酸塩分子篩前駆体のXRDパターンを示す。
【
図2】
図2は、実施例1で得られたアルミノリン酸塩分子篩のXRDパターンを示す。
【国際調査報告】