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特表2022-506002アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナ
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20220107BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20220107BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20220107BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01R29/10 B
H01Q7/00
H01Q9/30
H01Q21/28
G01R29/10 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021502490
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(85)【翻訳文提出日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 US2018049448
(87)【国際公開番号】W WO2020050824
(87)【国際公開日】2020-03-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】リー,グレゴリー・エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヴック,ディーター・ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA07
5J021AA11
5J021AB02
5J021AB04
5J021JA10
(57)【要約】
システムが、アンテナを備える被試験デバイス(DUT)を試験する。システムは、プローブアンテナと、ネットワークエミュレータと、近接場アンテナとを備える。DUTが、DUTの試験中にプローブアンテナに対して移動されているときに、プローブアンテナは、DUTのアンテナによってオーバジエアで放出されるビームロックされたビームのビーム特性を測定する。ネットワークエミュレータは、DUTと通信する通信ネットワークの基地局をエミュレーションする。DUTがプローブアンテナに対して移動されているときに、近接場アンテナは、近接場アンテナとDUTとの間で表面波を使用して、ネットワークエミュレータとDUTとの間の呼リンクを維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを備える被試験デバイス(DUT)を試験するシステムであって、
プローブアンテナであって、該DUTの試験中に該プローブアンテナに対して前記DUTが移動しているときに、前記DUTの前記アンテナによってオーバジエアで放出されるビームロックされたビームのビーム特性を測定するものであるプローブアンテナと、
前記DUTと通信する通信ネットワークの基地局をエミュレーションするネットワークエミュレータと、
近接場アンテナであって、前記DUTが前記プローブアンテナに対して移動しているときに、該近接場アンテナと前記DUTとの間で表面波を使用して、前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の呼リンクを維持するものである近接場アンテナと
を備える、システム。
【請求項2】
前記近接場アンテナは、前記DUTの試験中に前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持するのに使用される唯一の近接場アンテナを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記近接場アンテナはモノポールアンテナを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記近接場アンテナは、モノポールアンテナのダイバーシティペアを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記近接場アンテナは、ループを有するモノポールアンテナを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記近接場アンテナは、それぞれがループを有するモノポールアンテナのダイバーシティペアを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記近接場アンテナは、試験中に、前記DUTから前記ビームロックされたビームの波長の1/4の距離内に維持されるものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記近接場アンテナは、6ギガヘルツ(GHz)よりも低い周波数を有する信号を使用して、前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持するものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記DUTの前記アンテナによってオーバジエアで放出される前記ビームロックされたビームは、6ギガヘルツよりも高いmmWave周波数を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記近接場アンテナからの無線周波数放出が前記DUTの前記アンテナに達するのを阻止する前記近接場アンテナの周囲の発泡体シールドを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記近接場アンテナは、mmWave周波数を使用して、前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持し、前記DUTの前記アンテナによってオーバジエアで放出される前記ビームロックされたビームは前記mmWave周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、前記DUTの前記アンテナからのRF信号を反射する曲面ミラーが配置されたコンパクトアンテナ試験レンジ(CATR)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブアンテナが前記DUTの前記アンテナによってオーバジエアで放出される前記ビームロックされたビームのビーム特性を測定しているときに、前記DUTを回転させる試験プラットフォームを更に備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記DUTはワイヤレスユーザデバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持するために、前記近接場アンテナは、前記DUTからの表面散乱エネルギー又は前記DUTの前記アンテナに接続された集積回路の基板からの漏洩を受信するものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
アンテナを備える被試験デバイス(DUT)を試験するシステムであって、
該DUTの試験中に該DUTの前記アンテナによってオーバジエアで放出されるビームロックされたビームのビーム特性を測定するプローブアンテナに対して前記DUTが移動しているときに、近接場アンテナと前記DUTとの間で表面波を使用して、ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の呼リンクを維持するものである、近接場アンテナを備え、
前記近接場アンテナが前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持しているときに、前記ネットワークエミュレータは、前記DUTと通信する通信ネットワークの基地局をエミュレーションするものである、システム。
【請求項17】
前記近接場アンテナは、前記DUTからの表面散乱エネルギーを受信して、前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持するものである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記近接場アンテナは、前記DUTの前記アンテナに接続された集積回路の基板からの漏洩を受信して、前記ネットワークエミュレータと前記DUTとの間の前記呼リンクを維持するものである、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記近接場アンテナはモノポールアンテナを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記近接場アンテナは、ループを有するモノポールアンテナを含む、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アンテナは、ワイヤレス(wireless)電気通信等の通信において使用される。ワイヤレス電気通信では、ワイヤレスモバイルデバイスが、セルのワイヤレスカバレッジを提供する基地局と通信することができる。ワイヤレスモバイルデバイス及び基地局は、それぞれがアンテナを備えることができ、それぞれが被試験デバイス(DUT:device under test)として別々に試験を受けることができる。ワイヤレスモバイルデバイスがDUTであるとき、ネットワークエミュレータとして知られている試験システムを試験に使用して、基地局をエミュレーションすることができる。
【0002】
ワイヤレスモバイルデバイスのアンテナは、マルチパス伝播を利用するために、多入力多出力(MIMO:multiple-input multiple-output)通信において使用される複数の協調型アンテナ(multiple coordinated antennas)を有するアレイとすることができる。したがって、このアンテナアレイは、ネットワークエミュレータを使用して複合試験を受けることができる。例えば、アンテナアレイは、アンテナアレイ内の各アンテナが共同してビームを形成するように個別に論理制御可能である最新式アンテナとすることができる。複雑な重みパターンが、ビームを形成するために、時間領域信号においてこの最新式アンテナに導入される。
【0003】
DUTを試験する通常のMIMO試験システムは、無響室又は電波暗室(anechoic chamber)と、無響室又は電波暗室内のDUTと、ネットワークエミュレータとを備える。無響室又は電波暗室は、音波(又は電磁波)の反射を吸収するように設計されたチャンバである。オーバジエア(OTA:over the air;無線を介した)試験中に、DUTアンテナからのビームが受信及び測定される。ネットワークエミュレータは、OTA試験においてビーム特性を解析して、DUTの送信能力及び/又は受信能力を評価する。測定及び解析されるDUTのビーム特性は、例えば、放射プロファイル、実効等方放射電力、全放射電力、変調のエラーベクトル振幅(EVM:error-vector-magnitude)、隣接チャネル漏洩電力比(ACLR:adjacent channel leakage ratio)、及びアンテナ放射パターンを含む。ビーム特性は、或る範囲のビーム角及び/又はビーム幅について取得することができ、DUTが適切に動作しているか否かの尺度となる予想値と比較することができる。
【0004】
ミリ波(mmWave:millimeter wave)は、30ギガヘルツ(GHz)~300ギガヘルツのスペクトルの帯域である。次期電気通信規格(すなわち、現在の4G LTE電気通信規格を上回るもの)は、第5世代(5G)電気通信規格と呼ばれ、利用可能な大きなスペクトル帯域幅に起因してmmWaveスペクトルを使用する通信システムを規格化することができる。mmWaveスペクトルにおける提案された帯域は、ほぼ28GHz付近及び39GHz付近であり、幾つかの追加の提案されたアプリケーションは60GHz付近である。5G及び4G LTE等の電気通信規格は、mmWaveスペクトル等の無線周波数スペクトルの画定された部分における通信のための通信動作の順序及びタイミングを含むタイミング方式を定義する無線アクセスプロトコル及び規格の例である。
【0005】
OTA試験の場合、整合したアンテナは、通常、波長の約1/4又は約1/2に比例する。整合したアンテナによって受信される信号電力は、以下のようなフリース(Friis)方程式によって与えられる。
【数1】
このフリース方程式は、受信電力が周波数の2乗の関数として低下することを示している。実際には、この低下は、大気吸収に起因してより一層大きなものとなる可能性がある。加えて、mmWave信号は、回路基板又は同軸ケーブルにおいて転送されるときに、高い減衰を有する場合がある。高いパス損失を克服するために、mmWave通信アンテナシステムは、所望の送信方向に高い指向性を有するように設計される。試験において、到来角(AoA:angle of arrival)を変化させること等によってDUTアンテナを動作させるために、高い指向性を有するビームフォーミングされた送信が使用される。
【0006】
高い指向性を達成するために、mmWave通信アンテナシステムは、パッチアンテナのアンテナアレイである集積アンテナを用いて設計される。振幅及び位相がパッチ間で調整されるとき、無線周波数(RF:radio frequency)エネルギーのビームを形成することができる。エネルギーは、空間の全てに一様に送信されるのではなく方向付けることができ、これによって、幾何学に基づく電力低下が或る程度緩和される。集積アンテナは、アンテナ断面積も増加させ、これによって、アンテナ利得が増加する。波長が短くなるにつれて、1/2波長離れた集積アンテナ上のパッチは、中心上で約5mm以下とすることができる。これによって、RFドライバとして機能する集積回路(IC:integrated circuit)上に集積アンテナを直接取り付けることが可能になり、損失の大きいプリント回路基板(PCB:printed circuit board)からの損失又は同軸送信における損失が最小化(又は除去)される。
【0007】
集積アンテナ及び集積回路RFドライバの登場とともに、DUTとしてのワイヤレスモバイルデバイスは、集積回路RFドライバと集積アンテナとの間に業界標準のケーブル及びコネクタを使用してRF試験機器をプラグ接続する場所を残していない場合がある。これによって、問題が集積アンテナの設計に起因しているのか又は集積回路RFドライバの設計に起因しているのかを特定することが困難になり、そのため、全ての試験は、その場合、必然的にOTAで行われる。すなわち、ワイヤレス通信技術の発展とともに、DUTのRF送受信機への直接接続を有する(すなわち、RF送受信機と統合される)一方、RFコネクタを有しない集積アンテナがますます一般的になってきている。そのようなDUTの全体的な性能は、DUT及び/又は集積アンテナから試験機器に同軸ケーブルを接続する場所がないので、現在のところ、「オーバジエア」で試験しなければならない。実際のところ、集積アンテナの統合に起因して、全体的なDUT性能は、現在、やむを得ず、集積アンテナ構成の関数として試験され得る。
【0008】
幾つかのOTA試験について、試験開発者は、試験中にDUTとネットワークエミュレータとの間の呼接続(call connection)を維持することに関心がある。例えば、DUTが回転されているときに、アンテナビームプロファイルを測定している間、アンテナビームプロファイルを「ビームロック」において所定の位置にロックすることができる。しかしながら、DUTアンテナは指向性を有し、そのため、ネットワークエミュレータは、回転中に、DUTアンテナからの信号が過度に低くなった場合/時に、呼を切断する場合がある。
【0009】
4G(LTE)及び5Gの試験の場合に、試験を行っている間に呼接続を維持するプロセスは無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)接続モードと呼ばれる。6GHz未満のより低い周波数を有するLTEでは、DUTは、通常、無指向性アンテナを有し、その場合に、DUTは、デバイスへの試験リンクを維持する能力に影響を与えない。5G新無線(5G NR(New Radio))では、集積アンテナは指向性であり、試験によっては、ビームロック状態の下で行わなければならないものがある。ビームロック状態では、DUTが回転されているか又は別の方法で移動されているときに、アンテナ利得プロファイルはDUTの幾何形状に対して固定される。DUTはビームロック中に回転に適応しないようにされ、そうでない場合にはビームロックがないことになるので、試験では、信号は呼接続を維持するのに十分でない場合があり、この場合に、呼が切断される。本明細書において説明するアンテナアレイのリモート無線制御用の近接場(near-field)アンテナは、DUTとネットワークエミュレータとの間の信号が過度に低くなるときに、ネットワークエミュレータが呼接続を切断するという問題を緩和する。
【0010】
例示的な実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最も深く理解される。種々の特徴は必ずしも縮尺どおりに描かれていないことを強調したい。実際には、検討を明確にするために、寸法が任意に拡大又は縮小される場合がある。適用可能で、実用的な場合にはいつでも、図面及び記載された説明を通して同じ参照符号が同じ要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを備えるシステムを示す図である。
図2】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを備える別のシステムを示す図である。
図3A】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを示す図である。
図3B】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の別の近接場アンテナを示す図である。
図3C】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の別の近接場アンテナを示す図である。
図3D】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の別の近接場アンテナを示す図である。
図4】代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを備える別のシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を完全に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態が記述される。代表的な実施形態の説明を不明瞭にするのを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法及び製造方法の説明は省略される場合がある。それにもかかわらず、当業者の理解の範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、本教示の範囲内にあり、代表的な実施形態に従って使用される場合がある。本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものでないことは理解されたい。定義される用語は、定義された用語の科学技術的な意味に加えて、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられるような意味を有する。
【0013】
種々の要素又は構成要素を説明するために、本明細書において第1の、第2の、第3の等の用語が使用される場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されたい。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下に論じられる第1の要素又は構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ぶことができる。
【0014】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるときに、「一(a、an)」及び、「その(the)」又は「前記(the)」という単数形の用語は、文脈上、他の意味として明確に指示される場合を除いて、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。さらに、「備える(comprises、comprising)」という用語及び/又は類似の用語は、本明細書において使用されるときに、言及される特徴、要素及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素及び/又はそのグループの存在又は追加を除外しない。本明細書において使用されるときに、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連して列挙される項目のうちの1つ以上の項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0015】
別段の言及がない限り、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続される」、「結合される」又は「隣接する」と言われるとき、その要素又は構成要素を当該別の要素又は構成要素に直接接続又は結合することができるか、又は介在する要素又は構成要素が存在する場合があることは理解されよう。すなわち、これらの用語及び類似の用語は、2つの要素又は構成要素を接続するために、1つ以上の中間にある要素又は構成要素が利用される場合がある事例を含む。しかしながら、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「直接接続される」と言われるとき、これは、2つの要素又は構成要素が、任意の中間にある又は介在する要素又は構成要素を用いることなく、互いに接続される事例のみを含む。
【0016】
上記のことを考慮して、本開示は、それゆえ、その種々の態様、実施形態及び/又は具体的な特徴若しくはサブ構成要素のうちの1つ以上を通して、以下に具体的に言及されるような利点のうちの1つ以上を明らかにすることを意図している。説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を完全に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態が記述される。しかしながら、本明細書において開示される具体的な詳細から逸脱するが、本開示と矛盾しない他の実施形態も依然として、添付の特許請求の範囲内にある。さらに、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないように、既知の装置及び方法の説明は省略される場合がある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内にある。
【0017】
一般に、DUTは、ネットワークエミュレータによって使用される少なくとも1つのプローブアンテナに対して移動される。様々な実施形態によれば、近接場アンテナ(少なくとも1つのプローブアンテナから分離している)は、近接場アンテナとDUTとの間で表面波(surface wave)を使用してネットワークエミュレータとDUTとの間の呼リンク(call link)を維持する。近接場アンテナ(near-field antenna)は、DUTからのビームの放射エネルギーを含むDUTからの放射エネルギーを受信することもできる。しかしながら、近接場アンテナは、特に、DUTから無放射表面波を受信して呼リンクを維持するように構成及び準備される。
【0018】
図1は、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを備えるシステムを示している。図1の実施形態では、システム100は、DUT110と、反射器120と、ネットワークエミュレータ140に接続されたプローブアンテナ130と、近接場アンテナ150と、試験プラットフォーム190とを備える。システム100は、デバイス、すなわちDUT110、具体的にはDUT110のアンテナアレイ115を試験するのに使用される。
【0019】
システム100は、システム100の内部をシステム100の外部からアコースティックに(acoustically)、すなわち、音響的に又は電気的に増幅しないように分離する密閉システムであるコンパクトアンテナ試験レンジ(CATR:compact antenna test range)とすることもできるし、これを備えることもできる。吸収発泡体145を使用して、システム100のアコースティックな分離(acoustic isolation)を達成することができる。したがって、システム100がCATRであるか又はこれを備えるときに、システム100を無響に又は電波的に無反射に(anechoic)することができる。吸収発泡体145は、CATRのチャンバの壁の内側を覆い、内部反射を可能な限り小さくし、通常は数十デシベル分小さくするのに使用することができる。吸収発泡体145は、電磁波吸収材料とすることができる。
【0020】
DUT110は、例えば、28GHzで動作するワイヤレスユーザデバイス等のモバイル通信デバイスとすることができる。DUT110は、例えば、λ/2(ここで、λは、アンテナアレイ115から送信されるRF信号の波長である)で一定間隔を空けて配置されたアンテナ116、117、118及び119を有するアンテナアレイ115を備える。アンテナアレイ115は、DUT110と統合された集積アンテナとすることができる。DUT110の送信チェーン及び受信チェーンは、分離した独立に測定可能なアンテナと対照的に、RF接続部/コネクタを用いることなくアンテナアレイ115の素子に直接接続することができる。アンテナ116、117、118及び119は、アンテナアレイ115における個別のアンテナ又はアンテナ素子を表す。アンテナアレイ115は、DUT110の設計に応じて、様々な他のアンテナ数及びアンテナ配置を含むことができるが、アンテナ116、117、118及び119は、マトリックスを表すことができる。アンテナアレイ115における個別のアンテナ又はアンテナ素子の総数は、数十個、数百個、又はそれよりも多くの個数とすることができ、アンテナ116、117、118及び119によって表されるアンテナ又はアンテナ素子のそれぞれは、個別に論理制御可能なものとすることができる。システム100における試験は、アンテナアレイ115と、アンテナ116、117、118及び119によって表されるアンテナ又はアンテナ素子とを試験することを主として含む。図1におけるシステム100において、アンテナアレイ115は、単一のアンテナの特性を有するほぼ均一の信号源とすることができる。
【0021】
試験プラットフォーム190は、支持アーム191を使用して試験中にDUT110を支持し移動させることができる。例えば、DUT110は、図1に示す軸X、軸Y又は軸Zのうちのいずれかの回りに回転させることができる。軸X、軸Y又は軸Zのうちのいずれの2つも、軸X、軸Y又は軸Zのうちの残りの1つに対して垂直な平面を規定する。したがって、DUT110を3次元において回転させ又は別の方法で移動させることができ、したがって、試験プラットフォーム190は、回転を通してDUT110の角度を変更することができる。
【0022】
反射器120は、RF信号を反射する曲面ミラー(放物面ミラー等)とすることができる。反射器120は、代替的に複数のミラーとすることもできるし、曲面ミラー及び/又は複数のミラーを含むハイブリッドとすることもでき、アンテナアレイ115からのRF信号を反射するのに使用される。加えて、又は代替として、反射器120は、誘電体レンズ等の他の光学素子を補足することもできるし、他の光学素子と取り替えることもできる。図1のシステム100において、アンテナアレイ115は反射器120を照射し、この反射器では、その結果生じる反射波をほぼ完全にコリメートすることができる。このような方法で、アンテナアレイ115をコリメートされたビームに位置決めすることができ、受信電力がDUT110の回転角(仰角及び方位角)の関数として変化しているときに、その放射パターンを特定することができる。反射器120からのコリメートされた反射によって、反射器120がない場合に可能であるチャンバよりもコンパクトなチャンバにおいて、遠方場(far-field)におけるDUT110を特徴付けることが可能になる。
【0023】
プローブアンテナ130は、アンテナアレイ115によってOTAで放出されたビームを受信し、DUT110がDUT110の試験中にプローブアンテナ130に対して移動されているときに、アンテナアレイ115によってOTAで放出されたビームのビーム特性を測定する。ネットワークエミュレータ140(以下で説明する)がDUT110との間でトーク及びリスンの双方を行うセルタワーをエミュレーションすることができる限りにおいて、プローブアンテナ130は、DUT110と送受信することもできる。プローブアンテナ130は、個別のアンテナのマトリックスを有するアンテナアレイを含むことができる。プローブアンテナ130は、アンテナアレイ115によってOTAで放出されたビームのビーム特性を測定するのに使用することができる1つ以上のプローブアンテナを表す。プローブアンテナ130によって受信されるビームの特性から検出及び測定することができるDUT110のパラメータの例は、エラーベクトル振幅(EVM)及び隣接チャネル漏洩電力比(ACLR)を含むことができる。アンテナアレイ115に特有のパラメータ例には、放射プロファイル、実効等方放射電力(effective isotropic radiated power)、及び総放射電力(total radiated power)が含まれる。
【0024】
ビーム特性の例は、図1に示す放射プロファイル137である。前述したように、DUT110が移動されている間、ビームをビームロックし、DUT110が移動されているときのDUT110の幾何形状に対して固定された一定のアンテナ利得プロファイルを有するビームの特性を測定することができる。換言すれば、試験は、DUT110が移動されている間、同じアンテナ利得プロファイルを有する特定のビームのビーム特性の試験を含むことができ、この試験は、DUT110及びアンテナアレイ115が使用中に受け得る状態を効果的に測定する。
【0025】
ネットワークエミュレータ140は、測定されたビーム特性をプローブアンテナ130から受信し、測定されたビーム特性を所定の閾値と比較すること等によって、測定されたビーム特性を解析する。ネットワークエミュレータ140の一例は、Keysight Technologies社によるKeysight(登録商標) UXM等の5Gコールボックス(call box)である。DUT110及びアンテナアレイ115の試験中、アンテナアレイ115によってOTAで放出されたビームがビームロックされ、DUT110が移動されているときに、呼接続が切断される場合がある。呼接続は、ネットワークエミュレータ140が、ビームロックされたビームからの信号が過度に弱いことを検知したときに切断される場合があり、これは、試験におけるDUT110の移動に起因する場合がある。呼接続は、DUT110の移動の結果、DUT110に到達するプローブアンテナ130からの信号がより弱くなったときに、ネットワークエミュレータ140がより多くの電力を出力することができない場合等、ネットワークエミュレータ140からDUT110へのリンクが過度に弱くなったときにも切断される場合がある。すなわち、DUT110も、DUT110が移動されているときに、ネットワークエミュレータ140からの信号が過度に弱くなったことを検知することができる。
【0026】
ネットワークエミュレータ140は、5Gネットワークにおける基地局をエミュレーションするために、1つ以上の送受信機、送信機、mmWaveヘッド、及びコンバイナを備えることができる。本明細書において用いられる「ヘッド」という用語は無線周波数ヘッド(radio frequency head)を表し、周波数アップ変換器(up-frequency converter)又は周波数ダウン変換器(down-frequency converter)として使用されるシステムである。コンバイナ(combiner)は、2つ以上の信号をいずれも変換することなく結合して、結合された信号を生成するのに対し、スプリッタは、結合された信号を2つ以上の信号に分割する。周波数ダウン変換は、受信された高周波数の無線周波数信号等の高周波数信号を変換して、ネットワークエミュレータ140等のデバイスによって使用される中間周波数に下げることを含む。周波数アップ変換は、ネットワークエミュレータ140等のデバイスによって使用される中間周波数を送信用の高周波数の無線周波数信号に変換することを含む。中間周波数への変換は、搬送波信号を局部発振器信号と混合することによって行われる。
【0027】
ネットワークエミュレータ140又は別のコンピュータは、命令を記憶するメモリと、命令を実行するプロセッサとを備えることができる。プロセッサは、プローブアンテナ130によって受信されたビームからDUT110及びアンテナアレイ115の特性を検出及び測定するように構成することができる。プロセッサは、有形であり、非一時的であり、製造品であり、及び/又は機械構成要素である。プロセッサは、本明細書において説明するような試験機能を実行するソフトウェア命令を実行するように構成される。プロセッサは、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)の一部、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサチップ、コントローラ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、状態機械、又はプログラマブルロジックデバイスとすることができる。プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)等のプログラマブルゲートアレイ(PGA:programmable gate array)を含む論理回路、又は離散ゲート及び/又はトランジスタロジックを含む別のタイプの回路とすることもできる。プロセッサは、中央処理ユニット(CPU:central processing unit)、グラフィックス処理ユニット(GPU:graphics processing unit)、又はそれらの双方とすることができる。加えて、本明細書において説明するいずれのプロセッサも、複数のプロセッサ、並列プロセッサ、又はそれらの双方を含むことができる。複数のプロセッサは、単一のデバイス又は複数のデバイスに含めることもできるし、それらのデバイスに結合することもできる。命令を記憶するメモリは、メインメモリ又はスタティックメモリとすることができる。メモリは、データ及び実行可能命令を記憶することができる有形の記憶媒体であり、命令がそこに記憶されている時間の間、非一時的である。本明細書において説明するメモリは、製造品及び/又は機械構成要素である。ネットワークエミュレータ140のメモリは、コンピュータのプロセッサがデータ及び実行可能命令を読み出すことができるコンピュータ可読媒体とすることができる。本明細書において説明するようなメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、リードオンリメモリ(ROM:read only memory)、フラッシュメモリ、電気的プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM:electrically programmable read only memory)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM:electrically erasable programmable read-only memory)、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、テープ、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM:compact disk read only memory)、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disk)、フロッピィディスク、ブルーレイディスク、又はこの技術において知られている他の任意の形態の記憶媒体とすることができる。メモリは、揮発性のもの又は不揮発性のもの、セキュアなもの及び/又は暗号化されたもの、非セキュアなもの及び/又は暗号化されていないものとすることができる。
【0028】
メモリからの命令はプロセッサによって実行され、DUT110のアンテナアレイ115から送信されたmmWave信号の解析を行うことができる。すなわち、受信されたmmWave信号は、アンテナアレイ115の試験を完了するために、解析において使用される周波数に周波数ダウン変換することができる。変換された信号は解析されて、所定の閾値(複数)と比較することができる。この解析では、ビームパターンを緻密に計画し、予想値と比較することができる。DUT110及びアンテナアレイ115の実際の試験は、多くの形態の試験を含むことができるが、本開示の目的上、アンテナアレイ115が試験を受けることに起因して表面波が生成される場合があっても、試験は、呼接続を維持するためにDUT110の表面波の検出及び測定から分離可能である。
【0029】
アンテナアレイ115等の送信アンテナによって形成される電磁場において、いわゆる近接場はいわゆる遠方場と区別可能である。遠方場は、近接場よりもアンテナアレイ115から遠く、専ら電磁放射として生成されるアンテナアレイ115からの電磁波を含む。近接場は、遠方場よりもアンテナアレイ115に近く、DUT110を塵埃若しくは天候から保護する要素又はDUT110の基板(substrate:基材)からの漏洩等によって、DUT110によって散乱されたエネルギー等からの無放射作用を反映した電磁効果を含む。
【0030】
近接場アンテナ150は、DUT110がプローブアンテナ130に対して移動されているときに近接場アンテナ150とDUT110との間で表面波を使用して、ネットワークエミュレータ140とDUT110との間の呼リンクとして呼接続を維持する低利得アンテナとすることができる。具体的には、近接場アンテナ150は、DUT110に極めて接近して配置され、プローブアンテナ130及びネットワークエミュレータ140によるアンテナアレイ115の試験を妨げることなく、DUT110から表面波を受信する。その上、近接場アンテナ150は、DUT110に極めて接近して配置される2つ以上の近接場アンテナを表すことができるが、図1の実施形態では、近接場アンテナ150は、DUT110の試験中にネットワークエミュレータ140とDUT110との間の呼リンクを維持するために使用される唯一の近接場アンテナである。mmWave信号を搬送することが可能なケーブル、コネクタ及びRFスイッチのコストは、呼接続を維持するために使用される近接場アンテナ150の個数を最小にすることによって最小にされる。
【0031】
近接場アンテナ150は、DUT110とネットワークエミュレータ140との間の近接場において、近接場アンテナ150がDUT110のアンテナアレイ115によって形成されるビーム内に入らないように配置される。近接場アンテナ150は、DUT110のアンテナアレイ115によって形成されるビームのビーム経路から十分離れて配置することができる。このようにして、近接場アンテナ150は、アンテナアレイ115によって形成されるRFビームの散乱を回避することによって、DUT110のアンテナアレイ115によって形成されるビームとの干渉を回避する。
【0032】
本明細書において使用される用語「表面波」は、DUT110に及びその周囲に存在し、そこで検出することができるが、遮断されるまで3次元遠方場内に無期限に伝播しない電磁波を指す。表面波は、表面散乱エネルギーである場合もあるし、DUT110内の基板からの漏洩である場合もあるが、アンテナアレイ115によって形成される指向性ビームを含まない。表面波の例には、表面プラズモン、2次元で伝播するゾンマーフェルト波(Sommerfeld wave)、及び反応性近接場波(reactive near-field wave)が含まれる。用語「超近接場(VNF:very near-field)」が、波が存在し、波源から波長に満たずに離れた近接場アンテナ150によって検出されることを意味する限りにおいて、表面波はVNF波を含むが、VNF波に限定されるものではない。図1の実施形態では、アンテナアレイ115は、郵便切手のサイズとすることができ、DUT110のケース内に埋め込むことができる。これによって、近接場アンテナ150が、アンテナアレイ115から波長内に接近することが防止される。それにもかかわらず、VNF波は、DUT110において又はその周囲に存在し得るので、VNF波は、この用語が本明細書において使用されるように表面波の一例である。
【0033】
DUT110において又はその周囲で表面波を検出する近接場アンテナ150の例には、モノポールアンテナ、モノポールアンテナのダイバーシティペア、ループを有するモノポールアンテナ、及びそれぞれがループを有するモノポールアンテナのダイバーシティペアが含まれる。近接場アンテナの例を図3A図3B図3C及び図3Dに示し、それらの図の説明を以下で行う。
【0034】
図1の実施形態では、システム100は、CATRとすることができ、CATR内のDUT110は、通常どおりに、CATRのチャンバのクワイエットゾーン内に配置することができる。CATRでは、クワイエットゾーンは、重ね合わせを介して表面からの浮遊反射によって付加される可能性がある不要な反射を最小にする。これは、最も均一に近い照射(レンジにわたって平坦な位相面及び振幅)を提供する。一般に、クワイエットゾーンは、反射器120が放物面であるときは、焦点距離の約5/3の長さから開始し、反射器120から或る距離だけ更に遠方に延在する。
【0035】
図2は、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを備える別のシステムを示している。
【0036】
図2の実施形態では、システム200は、DUT110と、ネットワークエミュレータ240に接続されたプローブアンテナ230と、近接場アンテナ250と、試験プラットフォーム190とを備える。
【0037】
システム200は、遠方場試験環境とすることもできるし、遠方場試験環境を備えることもできる。DUT110及び試験プラットフォーム190は、図1におけるDUT110及び試験プラットフォーム190と同様又は同一のものとすることができる。すなわち、DUT110はモバイル通信デバイスとすることができ、試験プラットフォーム190は、図2に示すX軸、Y軸及び/又はZ軸の回りに又はそれらの軸に沿ってDUT110を回転又は別の方法で移動させることができる。
【0038】
図2の実施形態では、近接場アンテナ250が、遠方場試験環境において使用される。アンテナアレイ115が、例えば、5メートルよりも大きな遠方場を有するときは、遠方場試験環境は屋外とすることができる。DUT110がプローブアンテナ230に対して移動されているときに、近接場アンテナ250は、この場合も、近接場アンテナ250とDUT110との間で表面波を使用して、ネットワークエミュレータ240とDUT110との間の呼リンクとしての呼接続を維持する。具体的には、近接場アンテナ250は、DUT110に極めて接近して配置され、プローブアンテナ230及びネットワークエミュレータ240によるDUT110の試験を妨げることなくDUT110から表面波を受信する。
【0039】
遠方場試験環境では、DUT110からの放射電力は、DUT110のアンテナアレイからの距離の二乗として減少し、放射の吸収は、DUT110のアンテナアレイにフィードバックしない。
【0040】
遠方場試験環境では、DUT110は、プローブアンテナ230及びネットワークエミュレータ240を使用して試験される。プローブアンテナ230は、DUT110及びDUT110のアンテナアレイ(図示せず)を試験するために図2における試験環境の遠方場において使用される少なくとも1つのプローブアンテナを表す。プローブアンテナ230は、DUT110の試験中にDUT110がプローブアンテナ230に対して移動されているときにDUT110のアンテナアレイによってOTAで放出されたビームのビーム特性を測定する。プローブアンテナ230は、DUT110のアンテナアレイによってOTAで放出されたビームのビーム特性を測定するのに使用される。図1の実施形態と同様に、DUT110が移動されている間、ビームをビームロックし、DUT110が移動されているときのDUTの幾何形状に対して固定された一定のアンテナ利得プロファイルを有するビームの特性を測定することができる。換言すれば、試験は、DUT110が移動されている間、同じアンテナ利得プロファイルを有する特定のビームのビーム特性の試験を含むことができ、この試験は、DUT110が受け得る可能性のある実世界の状態を効果的に測定する。
【0041】
ネットワークエミュレータ240は、測定されたビーム特性をプローブアンテナ230から受信し、測定されたビーム特性を所定の閾値と比較すること等によって、測定されたビーム特性を解析する。
【0042】
図3Aは、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを示している。
【0043】
図3Aの実施形態において、近接場アンテナ351は擬似モノポールアンテナである。モノポールは、単一の極からなるアンテナである。近接場アンテナ351は、均一な円形断面を有するロッド形状を有することができる。近接場アンテナ351は、モノポールに対して垂直な無指向性の放射パターンを有する。モノポールアンテナの長さは、使用される無線波の波長によって決まる。図3Aの場合に、近接場アンテナ351は、近接場アンテナ351によって検出及び測定される表面波の波長の4分の1(1/4)以下の長さを有する。
【0044】
図3Bは、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の別の近接場アンテナを示している。
【0045】
図3Bの実施形態では、近接場アンテナ352は、モノポールアンテナのダイバーシティペアである。ダイバーシティペアは、ワイヤレスリンクの品質及び信頼性を改善するために使用され、図3Bでは、図3Aにおける近接場アンテナ351と比較して、近接場アンテナ352の送受信性能を改善するために使用される。図3Bでは、ダイバーシティペアは、それぞれが均一な円形断面を有するロッド形状を有する2つのモノポールからなる。これらの2つのモノポールは、円形断面の中心が、近接場アンテナ352によって検出及び測定される表面波の波長の約4分の1に位置するように配置される。
【0046】
図3Cは、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の別の近接場アンテナを示している。
【0047】
図3Cの実施形態では、近接場アンテナ353は、ループを有する擬似モノポールアンテナである。ループの周囲の長さは、近接場アンテナ353によって検出及び測定される表面波の波長以下である。近接場アンテナ353の擬似モノポール構成要素は、この場合も、均一な円形断面を有するロッド形状を有することができる。擬似モノポール構成要素は単独で、モノポールに対して垂直な無指向性放射パターンを有し、モノポールアンテナの長さは、使用される無線波の波長によって決まり、近接場アンテナ353によって検出及び測定される表面波の波長の4分の1(1/4)以下とすることができる。近接場アンテナ353のループ構成要素は、ダイポール放射パターンを有する。
【0048】
図3Dは、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の別の近接場アンテナを示している。
【0049】
図33の実施形態では、近接場アンテナ354は、それぞれがループを有するモノポールアンテナのダイバーシティペアである。図33におけるダイバーシティペアは、図3Cにおける近接場アンテナ353と比較して、近接場アンテナ354の送受信性能を改善するために使用される。図3Dでは、ダイバーシティペアのそれぞれの擬似モノポール構成要素は、均一な円形断面を有するロッド形状を有する。2つの擬似モノポール構成要素は、円形断面の中心が、近接場アンテナ354によって検出及び測定される表面波の波長の約4分の1に位置するように配置される。加えて、各ループ構成要素の周囲の長さは、近接場アンテナ354によって検出及び測定される表面波の波長以下である。
【0050】
図3A図3B図3C及び図3Dの実施形態における近接場アンテナ351、352、353、354は、近接場アンテナ351、352、353、354によって検出及び測定される信号の波長に関する特性を用いて設計される。検出及び測定された信号は、DUT110のアンテナアレイ115によって形成されるビームからのエネルギーを含むことができる。ただし、DUT110からの表面波が、本明細書において説明する対象の波である。このように、近接場アンテナ351、352、353、354は、4G信号又は5G信号を使用して通信するアンテナアレイ115を試験するために設計及び使用することができる。図3A図3B図3C及び図3Dの実施形態における近接場アンテナ351、352、353、354は、偏波の影響を受けない。
【0051】
一例として、近接場アンテナ351、352、353、354は、5Gノンスタンドアローン(NSA:Non-Stand Alone)モード(すなわち、LTE/4G及び5Gのハイブリッド機能を使用するモード)において使用される、6GHzよりも低い周波数を有するLTE信号用に設計することができる。この例では、6ギガヘルツ(GHz)よりも低い周波数を有するLTE信号は、呼接続を維持するのに使用される一方、アンテナアレイ115は、28GHz又は39GHzのmmWave周波数を有する5G信号を使用して試験される。より高い周波数のmmWave信号は、アンテナアレイ115の試験において対象の信号であり、試験において試験されているアンテナアレイ115の指向性及び他の特性に対応する。換言すれば、アンテナアレイ115が、ネットワークエミュレータ140による試験用のmmWave周波数を有する第2の信号を使用して試験されている間、近接場アンテナ351、352、353、354は、呼接続を維持する6GHz未満の第1の信号を使用して呼接続を維持するように設計することができる。或いは、近接場アンテナ351、352、353、354は、プライマリ5Gモードにおける信号、すなわち、ネットワークエミュレータ140による試験中に5G通信において使用される同じmmWave周波数を有する信号について呼接続を維持するように設計することができる。
【0052】
図4は、代表的な実施形態による、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを備える別のシステムを示している。
【0053】
図4の実施形態では、システム400は、DUT110と、近接場アンテナ450と、発泡体シールド460とを備える。図4の実施形態は、図1又は図2の実施形態のいずれかとともに使用することもできるし、いずれかと統合することもできる。
【0054】
図4の実施形態では、DUT110のアンテナアレイから近接場アンテナ450をアコースティックに分離するために発泡体シールド460が使用される。
【0055】
特に、5G新無線(5G NR)では、DUT110のmmWaveアンテナアレイは指向性である。近接場アンテナ450は、DUT110において及びその周囲において表面波を使用してネットワークエミュレータ(図示せず)との呼接続を維持するために使用される。近接場アンテナ450を使用して呼接続を維持する動作は、DUT110のアンテナアレイの試験を妨げないように、DUT110のアンテナアレイを試験する動作からアコースティックに分けることができる。その結果、近接場アンテナ450は、DUT110のアンテナアレイのリモート無線制御に使用され、DUT110とネットワークエミュレータとの間の信号が過度に低くなったときに、ネットワークエミュレータが呼接続を切断する可能性を低減又は除去する。同時に、発泡体シールド460を使用して、近接場アンテナ450は、DUT110のアンテナアレイの試験の妨げを最小化又は低減するように動作する。
【0056】
発泡体シールド460は、近接場アンテナ450からの無線周波数放出がCATR用のシステム100におけるプローブアンテナ130又は遠方場試験用のシステム200におけるプローブアンテナ230に入射するのを阻止するRF吸収発泡体とすることができる。その結果、発泡体シールド460は、近接場アンテナ450からの放出が、プローブアンテナ130及びプローブアンテナ230によって検出及び測定されるmmWaveビーム特性の測定を妨げることを防止する。
【0057】
発泡体シールド460は、試験プラットフォーム190若しくは試験プラットフォーム190上、DUT110上、又は近接場アンテナ150、近接場アンテナ250若しくは近接場アンテナ450上若しくはその周囲に取り付けることができる。例えば、図1及び図2の実施形態では、DUT110のアンテナアレイを近接場アンテナ150からシールドする形で近接場アンテナ450をDUT110に又はその周囲に配置することができるように、発泡体シールド460は、支持アーム191のうちの1つ以上に又はそれらを用いて設けることができる。
【0058】
したがって、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナによって、DUT110は、ネットワークエミュレータ140又はネットワークエミュレータ240との呼接続を維持することが可能になる。近接場アンテナ150は、DUT110のアンテナアレイ115の近くに配置することもできるし、DUT110のアンテナアレイ115の背後であっても配置することができる。近接場アンテナ150は、図1の実施形態と同様にCATRにおいて使用することもできるし、図2の実施形態と同様に遠方場アンテナ試験レンジにおいて使用することもでき、ネットワークエミュレータ140又はネットワークエミュレータ240による試験においてアンテナアレイ115によって形成される指向性ビームの方向に送信されない、アンテナアレイ115によって生成されるエネルギーを活用することができる。
【0059】
ダイポールアンテナを近接場アンテナ150として使用するフィールド試験は、近接場アンテナ150が、直接照射から受信される電力の35dB内で信号(表面波を含む)をピックアップすることができることを既に示している。ダイポールアンテナは、このフィールド試験用の半剛性同軸ケーブルをストリップすることによって作製することができ、フィールド試験における最良の結果は、近接場アンテナ150が、DUT110のアンテナアレイ115の前面においてプローブを行うために使用されるときに見られる。フィールド試験は、近接場アンテナ150が、DUT110のアンテナアレイ115の前面からではなく側面からの信号(表面波を含む)をピックアップするときであっても、電力が依然として検出可能かつ測定可能であることを示している。
【0060】
アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを幾つかの例示的な実施形態に関して説明してきたが、使用されている言葉は、限定の言葉ではなく、説明及び例示の言葉であることが理解される。アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナのその態様における範囲及び趣旨から逸脱することなく、現在記載されている添付の特許請求の範囲又は補正された添付の特許請求の範囲の適用範囲内で変更を行うことができる。アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナを特定の手段、材料及び実施形態に関して説明してきたが、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナは、開示された詳細に限定されることを意図していない。逆に、アンテナアレイのリモート無線制御用の近接場アンテナは、添付の特許請求の範囲の適用範囲内にあるような機能的に同等の全ての構造、方法、及び使用に拡張される。
【0061】
本明細書において説明したように、DUT110及びアンテナアレイ15の試験は、アンテナアレイ115において又はその近くで表面波を検出及び測定するために近接場アンテナ150を使用して呼接続を維持しながら、アンテナアレイ115が点源として動作する遠方場において行うことができる。近接場アンテナ150は、適切な場合には、無放射であり、かつ、近接場を越えて存在しないか又は幾つかの形態の表面波については超近接場を越えて存在しない表面波を受信することによって、呼接続を維持することに特に専用化することができる。
【0062】
本明細書において説明したような呼接続の維持は、DUT110の表面波を検出することからもたらされる。表面波の途切れることのない検出は、DUT110及び/又はネットワークエミュレータ140におけるソフトウェア命令又は回路機能が、特に、DUT110からの信号が低下しているか又は呼損(lost call)と相関するように予め定められたレベルに低下したことを示す障害信号を生成しないことによってトリガを行わないことをもたらすことができる。換言すれば、本明細書において説明されている教示は、DUT110及び/又はネットワークエミュレータ140におけるソフトウェア又は回路機能に対して不透明なものとすることができ、これらのソフトウェア又は回路機能は、近接場アンテナ150が、呼接続を維持するためにそれ以外に使用される信号の代わりに、DUT110において及びその周囲において表面波を検出していることに気付かない場合がある。
【0063】
本明細書は、特定の規格及びプロトコルに関連した特定の実施形態において実施することができる構成要素及び機能を説明しているが、本開示は、そのような規格及びプロトコルに限定されるものではない。例えば、4G/LTE及び5G等の規格は、技術の現状の例を表すものである。そのような規格は、一定期間ごとに、本質的に同じ機能を有するより効率的な同等のものに取って代わられる。したがって、同じ又は類似の機能を有する取って代わった規格及びプロトコルは、元の規格及びプロトコルと均等なものとみなされる。
【0064】
本明細書において説明される実施形態の例示は、種々の実施形態の構造を包括的に理解してもらうことを意図している。それらの例示は、本明細書において説明される開示の全ての要素及び特徴の完全な記述としての役割を果たすことは意図していない。数多くの他の実施形態が、本開示を再検討した当業者には明らかになる場合がある。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的代替及び変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態を利用し、導出することができる。さらに、例示は単に表現するものであり、縮尺どおりに描かれない場合がある。例示内の幾つかの特定の比率が誇張されている場合があり、一方、他の比率が最小化される場合がある。したがって、本開示及び図は、限定するものではなく、例示するものと見なされるべきである。
【0065】
本開示の1つ以上の実施形態が、本明細書において、「本発明」という用語によって個別に、及び/又はまとめて参照される場合があるが、便宜にすぎず、本出願の範囲を任意の特定の発明又は発明概念に自発的に制限することは意図していない。さらに、本明細書において具体的な実施形態が例示及び説明されてきたが、図示される具体的な実施形態の代わりに、同じ、又は類似の目的を果たすように設計される任意の後の時点の装置が使用されてもよいことは理解されたい。本開示は、種々の実施形態のありとあらゆる後の時点の改変及び変形に及ぶことを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、及び本明細書において具体的には説明されない他の実施形態が、説明を再検討した当業者には明らかになるであろう。
【0066】
本開示の要約書は、米国特許法施行規則第1.72(b)に準拠するように与えられ、特許請求の範囲の適用範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないという了解の下に提出される。さらに、これまでの詳細な説明において、本開示を簡素化する目的で、種々の特徴がまとめられる場合があるか、又は単一の実施形態において説明される場合がある。本開示は、特許請求される実施形態が、各請求項において明確に列挙されるより多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、添付の特許請求の範囲が反映するように、発明の主題は、開示される実施形態のいずれかの実施形態の全ての特徴より少ない特徴を対象にする場合がある。したがって、添付の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別々に特許請求される主題を規定するものとして自立している。
【0067】
開示される実施形態のこれまでの説明は、任意の当業者が本開示において説明される概念を実践できるようにするために与えられる。その場合に、上記の開示される主題は、例示と見なされ、限定するものと見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る全てのそのような変更形態、改善形態及び他の実施形態に及ぶことを意図している。したがって、法律によって許される最大限まで、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、これらまでの詳細な説明によって限定又は制限されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
【国際調査報告】