IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クローダ,インコーポレイティドの特許一覧

特表2022-506036微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法
<>
  • 特表-微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法 図1
  • 特表-微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法 図2
  • 特表-微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法 図3
  • 特表-微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/02 20060101AFI20220107BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20220107BHJP
   C09K 23/44 20220101ALI20220107BHJP
【FI】
C09C1/02
C09C3/08
B01F17/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523183
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 US2019054734
(87)【国際公開番号】W WO2020091948
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/752,474
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508276992
【氏名又は名称】クローダ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】カピル デシュパンデ
(72)【発明者】
【氏名】チェン リー
【テーマコード(参考)】
4D077
4J037
【Fターム(参考)】
4D077AB04
4D077AC05
4D077BA13
4D077DC02X
4D077DC19X
4D077DC26X
4J037AA04
4J037AA09
4J037AA17
4J037AA22
4J037CB07
4J037CB09
4J037DD05
4J037EE28
4J037FF23
(57)【要約】
本発明は、微細粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法に関する。分散剤は、一般式(I):R1-(AO)n-O-R2の化合物を含む。一般式(I)において、AOは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択されるアルキレンオキシド基であり、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基から選択され、R2は、カルボン酸基とポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)との間に1~5個の炭素原子を含むカルボン酸末端基であり、nは2~100である。分散剤を含むナノ粒子の分散体、分散剤の使用、及びナノ粒子を分散させるための方法もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法であって、一般式(I):
1-(AO)n-O-R2 (I)
の化合物であって、式中、
それぞれのAOが、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択されるアルキレンオキシ基であり;
1がC1~C6アルキル基から選択され;
2が末端のカルボン酸基とポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)との間に1~5個の炭素原子を含むカルボン酸末端基であり;かつ
nが2~100である
化合物を分散剤として使用する工程を含み、ナノ粒子が、金属及び金属の塩、酸化物、チタン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、炭化物並びにそれらの組み合わせから選択される、方法。
【請求項2】
1が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1がメチル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2がサクシネート基、マレエート基及び酢酸基から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2
【化1】
であり、従って化合物が一般式(III):
【化2】
の構造を有し、R4がカルボニル基とともに、末端のカルボン酸基とポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)との間に2~5個の炭素原子を含む骨格を形成するように、R4が飽和又は不飽和の、分岐した又は分岐していないヒドロカルビル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
nが5~50である、好ましくはnが10~25である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)が500~1000の数平均分子量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれのAOがエチレンオキシ基である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ナノ粒子が500nmより小さい平均サイズを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子が250nmより小さい平均サイズを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ナノ粒子が、セラミックナノ粒子、ミネラルナノ粒子及び元素金属ナノ粒子から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ナノ粒子が、少なくとも1つの酸化物、チタン酸塩又は炭酸塩の化合物を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子が、炭酸バリウム、チタニア、チタン酸バリウム及びそれらの混合物から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ナノ粒子が銀ナノ粒子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子が炭化ケイ素を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる分散体。
【請求項17】
ナノ粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させるための、請求項1~8のいずれか1項に記載の分散剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月30日に提出された、A METHOD OF DISPERSING FINE PARTICLES IN AN AQUEOUS OR POLAR SOLVENTと題名を付けられた米国仮出願第62/752474号に関連し、それに対して優先権の利益を主張していて、その内容は、全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、微細粒子、例えばナノ粒子を、水性又は極性の溶媒中に分散させる方法に関する。本発明はまた、一般式(I)の化合物である分散剤に関する。
【背景技術】
【0003】
特有の特性及び特徴をもたらすそれらのサイズのために、ナノ粒子は様々な分野において関心を集めてきた。しかし、ナノ粒子は、溶液中で凝集する強い傾向を有する。
【0004】
ナノ粒子の凝集は、幾つかの難点をもたらす。ナノ粒子の凝集によって引き起こされる1つの問題は、ナノ粒子のサイズから得られる特有の特性の喪失である。
【0005】
凝集によって引き起こされる別の問題は、ナノ粒子を処理すること、及び操作することにおける増大した困難さである。凝集は、処理粘度における増加を引き起こす場合があり、同様にナノ粒子の使用における問題を引き起こす場合がある。例えば、ナノ粒子が凝集するとき、印刷可能な銀ナノ粒子を含有するインクは、インクジェット印刷ノズルを詰まらせる場合がある。
【0006】
典型的には、ナノ粒子は結合配位子によって安定化され、次いで非吸着性の界面活性剤を用いて非相溶性の媒体中に分散される。しかし、これらの系は、例えば配位子交換及び/又は配位子インターキレーション(interchelation)によって、配位子を直接ナノ粒子に、永久的に結合させることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上で議論された問題のうち1つ又は複数を解決し、スケーラブルな製造を可能とすることができる、水性又は極性の系における微細粒子、例えばナノ粒子のための分散剤への要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カルボン酸末端基によってナノ粒子の表面に可逆的に吸着することができ、一方でさらに、溶媒と相溶性であるポリアルキレングリコール尾部によって立体的な安定化を提供する分散剤に関する。このような可逆的な吸着は、配位子がナノ粒子に永久的に結合する系と比較したときに、有利であることができる。
【0009】
第一の態様から見れば、本発明は、ナノ粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させる方法であって、一般式(I):
1-(AO)n-O-R2 (I)
の化合物であって、式中、
それぞれのAOは、エチレンオキシ及びプロピレンオキシから選択されるアルキレンオキシ基であり;
1がC1~C6アルキル基から選択され;
2が末端のカルボン酸基とポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)との間に1~5個の炭素原子を含むカルボン酸末端基であり;かつ
nが2~100である
化合物を分散剤として使用する工程を含む方法を提供する。
【0010】
理論によって拘束されることを望むものではないが、金属及び金属の塩、酸化物、チタン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、炭化物並びにそれらの組み合わせから選択されるナノ粒子は、配位子結合のために適していない場合がある。本発明は、一般式(I)の化合物を分散剤として提供することによって、これらのナノ粒子のために有利であることができる。
【0011】
第二の態様から見れば、本発明は、第一の態様による方法によって得ることができる、好ましくは得られた分散体を提供する。
【0012】
第三の態様から見れば、本発明は、ナノ粒子を水性又は極性の溶媒中に分散させるための、本明細書において画定される分散剤の使用を提供する。
【0013】
本発明の任意の態様は、本発明のその態様又は本発明の任意の他の態様に関して本明細書において説明される特徴のうち任意のものを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施態様による分散剤を伴う、水における炭酸バリウムナノ粒子を含有する溶液の粘度を示す。
図2】本発明の実施態様による分散剤を伴う、水における炭酸バリウム及びチタニアナノ粒子を含有する溶液の粘度を示す。
図3】本発明の実施態様による分散剤を伴う、及び伴わない、水におけるチタニアナノ粒子の粒径分布の比較を示す。
図4】本発明の実施態様による分散剤を伴う、及び伴わない、水におけるチタニアナノ粒子の平均粒径を比較するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される任意の高い方若しくは低い方の量の又は範囲の限度は、独立に組み合わせることができると理解される。
【0016】
他に明言されない限り、本明細書において画定される全ての分子量は、数平均分子量である。このような分子量は、当分野において周知である方法を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定することができる。GPCデータを、直鎖ポリスチレン標準のシリーズに対して校正することができる。
【0017】
本明細書において使用されるとき、用語「微細粒子」は、ナノ粒子、すなわちレーザー回折によって測定した場合に1000nmより小さい平均サイズ、好ましくは少なくとも1nmであり、かつ1000nmより小さい平均サイズを有する粒子をいう。レーザー回折によって粒径を測定するのに使用される装置は、Horiba-LA960であってよい。用語「平均サイズ」は、粒子の最長の寸法、好ましくは線寸法の平均サイズをいうと理解される。
【0018】
本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、分散剤は、末端のカルボン酸基と、ポリアルキレングリコール基、すなわち-(AO)n-O-を含む尾部とを有する化合物を含む。尾部は、ポリエチレングリコール基、すなわち-(OCH2CH2n-O-、ポリプロピレングリコール基、すなわち
【化1】
、又はエチレンオキシ(EO)基とプロピレンオキシ(PO)基との混和物から選択することができる。好ましくは、尾部はポリエチレングリコール基である。
【0019】
理論によって拘束されることを望むものではないが、末端のカルボン酸は微細粒子の表面に吸着して、それによって分散剤をナノ粒子に固定すると考えられる。ポリアルキレングリコール尾部は、水性及び極性の溶媒と相溶性であり、立体的な安定化を提供して、溶液中の微細ナノ粒子を効果的に分散及び安定化する。
【0020】
分散剤は、ナノ粒子に吸着可能、好ましくはナノ粒子に可逆的に吸着可能であることができる。好ましくは、分散剤は、ナノ粒子に永久的には結合しない。分散剤はナノ粒子に化学的に結合しなくてよく、好ましくはナノ粒子に共有結合しない。分散剤は、ナノ粒子に対する配位子、好ましくは結合配位子ではない、を形成しなくてよい。ナノ粒子は、配位子結合のために適していなくてよい。
【0021】
分散剤は、一般式(I):
1-(AO)n-O-R2 (I)
の化合物を含んでよい。
【0022】
少なくとも1つの実施態様において、それぞれのAOは、エチレンオキシ(EO)及びプロピレンオキシ(PO)から選択されるアルキレンオキシ基であり、好ましくはそれぞれのAOはエチレンオキシ(EO)である。
【0023】
少なくとも1つの実施態様によれば、nは2~100である。好ましくは、nは5~50であり、より好ましくは、nは10~25である。
【0024】
少なくとも1つの実施態様において、ポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)は、100~4000、例えば250~2500又は500~1000の数平均分子量を有する。少なくとも1つの実施態様において、ポリアルキレングリコールは、750の数平均分子量を有する、例えばPEG 750である。
【0025】
少なくとも1つの実施態様において、R1はC1~C6アルキル基である。好ましくは、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基から選択され、より好ましくは、R1はメチル基又はエチル基である。少なくとも1つの実施態様において、R1はメチル基である。
【0026】
少なくとも1つの実施態様によれば、R2はカルボン酸末端基である。好ましくは、R2は、カルボン酸とポリアルキレングリコール基、すなわち-(AO)n-O-、との間に1~5個の炭素原子を含む。
【0027】
本明細書において使用されるとき、句「末端のカルボン酸基とポリアルキレングリコール基との間の1~5個の炭素原子」は、末端のカルボン酸の炭素原子とポリアルキレングリコールとの間の骨格中に含有される炭素原子の数に関する。R2は分岐しているか、又は分岐鎖していなくてよい。R2が分岐しているとき、R2はカルボン酸とポリアルキレングリコールとの間の骨格に結合された付加的な炭素原子を含有してよい。好ましくは、R2は分岐していない。
【0028】
2は、置換されているか、又は置換されていなくてよく、飽和であるか、又は不飽和であってよい。
【0029】
2は、ただ1つのカルボニル基、すなわち末端のカルボン酸のカルボニル基を含んでいてよく、例えば酢酸であってよい。他の実施態様において、R2は、末端のカルボン酸のカルボニル基を含む2つのカルボニル基を含んでいてよく、R2は、例えばサクシネート基又はマレエート基を含む。
【0030】
少なくとも1つの実施態様において、R2はただ1つのカルボニル基を含み、例えばR2
【化2】
であり、化合物は一般式(II):
【化3】
の構造を有し、R1、AO及びnは、一般式(I)について上の通りに画定されていて、R3は、カルボン酸とポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)との間に1~5個の炭素原子が存在するように、飽和又は不飽和の、分岐した又は分岐していないヒドロカルビル基である。好ましくは、R3は分岐していない。
【0031】
少なくとも1つの実施態様によれば、R3は-CH2-基であり、すなわちR2は酢酸基である。
【0032】
他の実施態様において、R2はカルボン酸のカルボニル基に加えて第二のカルボニル基を含んでよく、すなわちR2
【化4】
であり、化合物は一般式(III):
【化5】
の構造を有し、R1、AO及びnは、一般式(I)について上の通りに画定されていて、R4は、カルボン酸とポリアルキレングリコール基(-(AO)n-O-)との間に2~5個の炭素原子が存在するように、飽和又は不飽和の、分岐した又は分岐鎖していないヒドロカルビル基であり、すなわちR4はカルボニル基とともに、末端のカルボン酸基とポリアルキレングリコール基との間に2~5個の炭素原子を含む骨格を形成する。好ましくは、R4は分岐していない。
【0033】
少なくとも1つの実施態様において、それぞれ、R4は-CH2-CH2-基又は-CH=CH-基であり、すなわちR2はサクシネート基又はマレエート基である。
【0034】
本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、分散体は、一般式(I)の化合物である分散剤、水性又は極性の溶媒、及び微細粒子、例えばナノ粒子、を含む。分散体は、本発明による方法によって得ることができ、好ましくは得られる。
【0035】
ナノ粒子は半導体材料を含まなくてよい。好ましくは、ナノ粒子はオプトエレクトロニクス特性を示さない(又はオプトエレクトロニクス材料を含まない)。好ましくは、ナノ粒子は量子ドットではない。
【0036】
ナノ粒子は、金属及び金属の塩、酸化物、チタン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、炭化物並びにそれらの組み合わせから選択することができる。好ましくは、ナノ粒子は、セラミックナノ粒子、ミネラルナノ粒子及び元素金属ナノ粒子から選択される。元素金属ナノ粒子は、単一の金属元素から実質的になることができ、好ましくは単一の金属元素からなる。
【0037】
好ましくは、ナノ粒子は、少なくとも1つの酸化物、チタン酸塩又は炭酸塩の化合物を含む。好ましくは、ナノ粒子は酸化物を含む。酸化物は、金属酸化物であってよい。
【0038】
好ましくは、ナノ粒子は金属酸化物を含む。金属酸化物ナノ粒子の例は、チタニア、セリア、ジルコニア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化バリウム及び酸化マグネシウムを含むが、それらに限定されない。
【0039】
ナノ粒子は、炭酸バリウム、炭酸銅、硫酸バリウム、チタン酸バリウム及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、ナノ粒子は、炭酸バリウム、チタニア、チタン酸バリウム及びそれらの混合物から選択される。
【0040】
ナノ粒子は、炭化ケイ素を含んでよい。
【0041】
ナノ粒子は、元素金属ナノ粒子であってよい。金属ナノ粒子の例は、銀、金、ニッケル、白金及びコバルトを含むが、それらに限定されない。好ましくは、ナノ粒子は銀ナノ粒子を含む。銀ナノ粒子は、例えば溶媒としてアルコールを使用する、インクジェット印刷可能な配合物において使用される。このような配合物においてナノ銀粒子を安定化することは、高速乾燥溶媒の存在の下においても、インクジェットノズルが詰まるのを妨げることを補助する。
【0042】
好ましくは、ナノ粒子はチタン酸塩を含む。チタン酸塩ナノ粒子の例は、チタン酸マグネシウム、チタン酸リチウム及びチタン酸バリウムを含むが、それらに限定されない。少なくとも1つの実施態様において、ナノ粒子はチタン酸バリウムを含む。チタン酸バリウムは、例えば、チタン酸バリウムナノ粒子の安定化が処理粘度を低下させてスケーラブルな製造を可能とする複数層のセラミックキャパシタの形成において、使用される。
【0043】
ケイ酸塩ナノ粒子の例は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩及びホウケイ酸塩を含むが、それらに限定されない。
【0044】
炭化物のナノ粒子の例は、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化カルシウム及び炭化タングステンを含むが、それらに限定されない。
【0045】
ナノ粒子は、異なるナノ粒子の混合物を含有するか、又は単一種類のナノ粒子のみを含んでいてよい。例えば、分散体はチタニアのみを含むか、又は炭酸バリウムとチタニアとの混合物を含んでいてよい。
【0046】
これらのナノ粒子の分散体は、例えば水、アルコール、グリコール及びそれらの混合物から選択される溶媒中で、形成することができる。
【0047】
少なくとも1つの実施態様によれば、ナノ粒子は500nm以下の、例えば250nmより小さい又は150nmより小さい、平均サイズを有する。他の実施態様において、ナノ粒子は、100nmより小さい、好ましくは75nmより小さい、より好ましくは50nmより小さい平均サイズを有する。ナノ粒子は、少なくとも0.1nm、好ましくは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nm、特に少なくとも5nm、例えば少なくとも10nm又は少なくとも25nmの平均サイズを有してよい。好ましくは、平均サイズは、平均の最長の線寸法をいう。ナノ粒子の平均サイズは、レーザー回折によって測定することができる。
【0048】
分散体は、水性又は極性の溶媒中に分散させることができる。少なくとも1つの実施態様において、溶媒は水である。他の実施態様において、溶媒は極性の溶媒、例えばアルコール、例えばエタノール、プロパノール若しくはブタノール、又はグリコール、例えばエチレングリコール若しくはプロピレングリコールであってよい。分散剤のポリアルキレングリコール尾部と相溶性の他の極性の溶媒もまた使用することができる。
【0049】
ナノ粒子は、分散体の合計の重量に対して少なくとも5wt%の量で、分散体中に存在してよい。少なくとも1つの実施態様において、ナノ粒子は、分散体の合計の重量に対して少なくとも10wt%、少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも25wt%又は少なくとも50wt%の量で、分散体中に存在してよい。
【0050】
分散剤は、分散体の合計の重量に対して少なくとも0.1wt%、例えば少なくとも0.25wt%、少なくとも0.5wt%又は少なくとも1wt%の量で、分散体中に存在してよい。好ましくは、分散剤は、分散体の合計の重量に対して25wt%以下、より好ましくは20wt%以下、特に15wt%以下、望ましくは10wt%以下の量で、分散体中に存在する。
【0051】
少なくとも1つの実施態様によれば、上で説明されたナノ粒子は、一般式(I)の化合物を含む分散剤をナノ粒子の表面に吸着させることによって、水性又は極性の溶媒中に分散させることができる。
【0052】
分散剤及びナノ粒子は、溶液中で、ともに撹拌又は混合することができる。例えば、凝集体は、高圧ホモジナイザーを使用して、又は超音波分散を使用して分解することができる。
【0053】
分散体は、室温(すなわち20~25℃)で、又は上昇した温度で形成することができる。例えば、分散体は、ナノ粒子の分散体を目的として、100℃以下に加熱することができる。
【0054】
ナノ粒子分散体は、少なくとも1日、好ましくは少なくとも1週、より好ましくは少なくとも1月の間安定であることができる。本明細書において使用されるとき、用語「安定である」は、分散体が溶液中で実質的に懸濁したままであり(すなわち10wt%以下のナノ粒子が溶液から出てくる)、実質的にアグロメレート化されていない(すなわち平均サイズが初期サイズの10%以下増加する)ことを意味する。
【0055】
開示された特徴の任意のもの若しくは全て、及び/又は説明される任意の方法若しくはプロセスの工程の任意のもの若しくは全ては、本発明の任意の態様において使用することができる。
【実施例
【0056】
本発明は、以下の非限定的な例によって例示される。
【0057】
本明細書において他に明示されない限り、又は関連する試験方法及び手順において他に明示されない限り、本明細書において説明される全ての試験手順及び物理パラメータは、大気圧及び室温(すなわち約20℃)で定められたと理解される。他に明示されない限り、全ての部(part)及び割合(percentage)は重量で与えられる。
【0058】
実施例1
実施例1において、炭酸バリウムの分散体を水中で調製した。ポリエチレングリコール基について750の数平均分子量を有するメチル(ポリエチレングリコール)サクシネート(MPEG 750サクシネート)を使用して、50wt%炭酸バリウム(Sigma Aldrich)を水中で分散させた。分散剤を、分散体の合計の重量に対して0.5wt%の総量で加えた。
【0059】
20000RPMで、30分の間、室温で運転する、Ultra Turrax T-25高速ホモジナイザーを使用して、分散体を製造した。同日に粘度の測定を行った。
【0060】
図1に示すように、分散体の粘度は、分散剤を伴わない水中の50wt%炭酸バリウムの同様の溶液より有意に低かった。
【0061】
実施例2
実施例2において、水中で、BW-KS炭酸バリウムナノ粒子とAMT-100チタニアナノ粒子(6nm公称粒径)との混合物を使用して、分散体を調製した。35.7wt%炭酸バリウム(Sakai Chemical、等級BW-KS)を、14.3wt%チタニア(Tayca、AMT-100)と、水中で混合した。メチル(ポリエチレングリコール)サクシネート(MPEG 750)を、分散体の合計の重量に対して0.5wt%で加えた。
【0062】
20000RPMで、30分の間、室温で、Ultra Turrax T-25高速ホモジナイザーを用いて、分散体を製造した。同日の間に粘度の測定を行った。
【0063】
図2に示すように、分散剤は、分散剤を用いずに調製された同様の溶液と比較して、分散体の粘度を有意に減少させた。
【0064】
実施例3
水中の、15nmチタニア(製造者[Showa Denkoによって報告された公称サイズ、F-6A)の分散体を、MPEG 750サクシネートを分散剤として使用して調製した。チタニアを、30000psiで3回、高圧ホモジナイザーを受けさせて、アグロメレートを約100~200nmに分解した。5wt%のチタニアを、組成物の合計の重量に対して0.25wt%の分散剤の量で、水に添加した。
【0065】
分散体の調製の1日後、粒径を測定して、分散剤の添加を伴わないこと以外は同じ方法で調製した対照サンプルと比較した。図3に示すように、分散剤を有する分散体は、実質的に単峰性のサイズ分布を示した。分散剤を有しない対照サンプルは、二峰性のサイズ分布を示した。
【0066】
図4に示すように、分散剤を用いて調製された分散体の平均粒径は約200nmであった。対照サンプルは有意な凝集を示し、9μmより大きい平均粒径を有していた。これらの結果に基づいて、分散剤は、さらなるアグロメレート化を妨げ、分散体を安定化した。
【0067】
本発明は、単なる例によって説明される上の実施態様の詳細に限定されるものではないと理解される。多くの変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】