(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】JAK阻害剤としての2-アザビシクロヘキサン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20220107BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20220107BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220107BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220107BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220107BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20220107BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C07D471/04 105Z
C07D471/04 CSP
A61K31/437
A61K9/10
A61P29/00
A61P3/10
A61P27/04
A61P9/10
A61P43/00 111
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523279
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019056947
(87)【国際公開番号】W WO2020092019
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514190040
【氏名又は名称】セラヴァンス バイオファーマ アール&ディー アイピー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファザリー, ポール アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジアン, ラン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065BB06
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK06
4C065LL01
4C065PP18
4C065QQ04
4C076AA22
4C076BB24
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC29
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA45
4C086ZB11
4C086ZC20
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、JAK阻害剤として有用である、式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。本発明は、前記化合物を含む薬学的組成物、JAK阻害剤の影響を受けやすい疾患を処置するために前記化合物を使用する方法、および前記化合物の調製に有用なプロセスも提供する。1つの態様において、本発明は、哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、前記方法が、哺乳動物に化合物1または本発明の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化20】
の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
式:
【化21】
の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物および薬学的に許容され得るキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物が、眼への適用に適している、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物が、硝子体内注射に適している、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物が、懸濁液である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
式1の化合物
【化22】
またはその薬学的に許容され得る塩を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
(a)式6の化合物:
【化23】
を式7-PGの化合物:
【化24】
(式中、R
Aは、ヒドロキシルまたは脱離基であり、PGは、アミノ保護基である)と反応させて、化合物1-PG:
【化25】
を得る工程;
(b)化合物1-PGを脱保護する工程;および
(c)必要に応じて、薬学的に許容され得る塩を調製して、式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を得る工程
を含む、プロセス。
【請求項8】
R
Aが、ヒドロキシルである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
6と7-PGとの間の前記反応が、HATUの存在下において行われる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
PGが、Bocである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
哺乳動物の眼疾患の処置において使用するための、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項12】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞および萎縮性角結膜炎からなる群より選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記眼疾患が、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
哺乳動物の眼疾患を処置するための薬の製造における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項15】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞および萎縮性角結膜炎からなる群より選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記眼疾患が、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、前記方法は、請求項1または2に記載の化合物および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物を前記哺乳動物の眼に投与する工程を含む、方法。
【請求項18】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞および萎縮性角結膜炎からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記眼疾患が、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、炎症性疾患、特に眼疾患の処置に有用なJAKキナーゼ阻害剤化合物に関する。本発明は、そのような化合物を含む薬学的組成物、眼疾患を処置するためにそのような化合物を使用する方法、およびその化合物の調製に有用なプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
当該分野の状況
サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカインおよび腫瘍壊死因子を含む細胞間シグナル伝達分子である。サイトカインは、正常な細胞増殖および免疫調節に不可欠であるだけでなく、免疫介在疾患を主導し、悪性細胞の増殖に関与する。多くのサイトカインの高レベルは、多数の疾患または症状、特に炎症を特徴とする疾患の病理に関係づけられている。疾患に関係づけられているサイトカインの多くは、シグナル伝達性転写因子(STAT)ファミリーの転写因子を介してシグナル伝達するJanusファミリーのチロシンキナーゼ(JAK)に依存するシグナル伝達経路を介して作用する。
【0003】
JAKファミリーは、4つのメンバーJAK1、JAK2、JAK3およびチロシンキナーゼ2(TYK2)を含む。サイトカインがJAK依存性サイトカインレセプターに結合すると、レセプターの二量体化が誘導され、それにより、JAKキナーゼ上のチロシン残基がリン酸化され、JAKの活性化がもたらされる。次に、リン酸化されたJAKは、様々なSTATタンパク質に結合してリン酸化し、そのSTATタンパク質は、二量体化し、細胞核に内部移行して、遺伝子の転写を直接調節することにより、他の作用の中でも、炎症性疾患に関連する下流の作用をもたらす。これらのJAKは、通常、2つ1組でホモ二量体またはヘテロ二量体として、サイトカインレセプターと会合する。特定のサイトカインが、特定のJAK対形成に関連する。JAKファミリーの4つのメンバーの各々が、炎症に関連するサイトカインの少なくとも1つのシグナル伝達に関係づけられている。
【0004】
炎症は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞および萎縮性角結膜炎をはじめとした多くの眼疾患において際だった役割を果たす。ブドウ膜炎は、複数の眼内炎症症状をもたらし、自己免疫性であることが多く、公知の感染性トリガーなしに生じる。米国の約200万人の患者がこの症状に罹患していると推定されている。一部の患者では、ブドウ膜炎に伴う慢性炎症によって、組織が破壊され、これが米国における失明の主な原因の第5位になっている。JAK-STAT経路を介してシグナル伝達する、ブドウ膜炎患者の眼において増加しているサイトカインとしては、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-23およびIFN-γが挙げられる(Horai and Caspi,J Interferon Cytokine Res,2011,31,733-744;Ooiら、Clinical Medicine and Research,2006,4,294-309)。ブドウ膜炎に対する既存の治療は、最適に満たないことが多く、多くの患者が十分に管理されていない。ステロイドは、有効であることが多いが、白内障および眼内圧上昇/緑内障に関連する。
【0005】
糖尿病性網膜症(DR)は、網膜における血管に対する傷害によって引き起こされる。糖尿病性網膜症は、糖尿病を有する人々の間で最も一般的な視力喪失原因である。この疾患では、血管新生経路ならびに炎症性経路が重要な役割を果たす。多くの場合、DRは、糖尿病を有する患者において最も頻度の高い視力喪失原因である糖尿病性黄斑浮腫(DME)に進行する。この症状に、米国だけで約150万人の患者が罹患していると推定されており、そのうちの約20%が、両眼に疾患がある。JAK-STAT経路を介してシグナル伝達するサイトカイン(例えば、IL-6)、ならびにその産生がJAK-STAT経路シグナル伝達によって部分的に引き起こされる他のサイトカイン(例えば、IP-10およびMCP-1(別名CCL2))が、DR/DMEに関連する炎症において役割を果たすと考えられている(Abcouwer,J Clin Cell Immunol,2013,Suppl 1,1-12;Sohnら、American Journal of Opthalmology,2011,152,686-694;Owen and Hartnett,Curr Diab Rep,2013,13,476-480;Cheungら、Molecular Vision,2012,18,830-837;Dongら、Molecular Vision,2013,19,1734-1746;Funatsuら、Ophthalmology,2009,116,73-79)。DMEに対する既存の治療は、最適に満たない。抗VEGFによる硝子体内処置は、一部の患者でしか有効でなく、ステロイドは、白内障および眼内圧上昇に関連する。
【0006】
ドライアイ疾患(DED)は、米国のおよそ500万人の患者が罹患している多因子障害である。この疾患の発症および伝播では、眼表面の炎症が重要な役割を果たすと考えられている。高レベルのサイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6およびIFN-γ)が、DEDを有する患者の眼内液において顕著であり(Stevensonら、Arch Ophthalmol,2012,130,90-100)、このレベルは、疾患重症度と相関することが多かった。加齢黄斑変性症および萎縮性角結膜炎も、JAK依存性サイトカインと関連すると考えられている。
【0007】
網膜静脈閉塞(RVO)は、非常に蔓延している視覚障害性疾患である。網膜の血流障害は、網膜血管系の傷害、出血および組織虚血に至り得る。RVOの原因は、多因子であるが、血管メディエーターと炎症性メディエーターの両方が、重要であると示された(Deobhaktaら、International Journal of Inflammation,2013,article ID 438412)。JAK-STAT経路を介してシグナル伝達するサイトカイン(例えば、IL-6およびIL-13)、ならびにその産生がJAK-STAT経路シグナル伝達によって部分的に引き起こされる他のサイトカイン(例えば、MCP-1)が、RVOを有する患者の眼組織において高レベルで検出された(Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology,2015,63(12),905-911)。RVOを有する多くの患者は、光凝固術によって処置されるが、これは、本質的に破壊性の治療である。抗VEGF剤も使用されるが、それらは、患者の一部でしか有効でない。眼の炎症レベルを低下させるステロイド薬剤(トリアムシノロンアセトニドおよびデキサメタゾン留置剤)も、ある特定の形態のRVOを有する患者にとって有益な結果をもたらすと示されたが、それらは、白内障および眼内圧上昇/緑内障を引き起こすとも示された。
【0008】
眼疾患を処置するための強力な汎JAK阻害剤の必要性が残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Horai and Caspi,J Interferon Cytokine Res,2011,31,733-744
【非特許文献2】Ooiら、Clinical Medicine and Research,2006,4,294-309
【非特許文献3】Abcouwer,J Clin Cell Immunol,2013,Suppl 1,1-12
【非特許文献4】Sohnら、American Journal of Opthalmology,2011,152,686-694
【非特許文献5】Owen and Hartnett,Curr Diab Rep,2013,13,476-480
【非特許文献6】Cheungら、Molecular Vision,2012,18,830-837
【非特許文献7】Dongら、Molecular Vision,2013,19,1734-1746
【非特許文献8】Funatsuら、Ophthalmology,2009,116,73-79
【非特許文献9】Deobhaktaら、International Journal of Inflammation,2013,article ID 438412
【非特許文献10】Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology,2015,63(12),905-911
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
1つの態様において、本発明は、眼炎症性疾患の処置に有用なJAK阻害剤化合物を提供する。
【0011】
特に、1つの態様において、本発明は、式:
【化1】
の化合物(本明細書中以後、化合物1)またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0012】
本発明は、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物も提供する。
【0013】
1つの態様において、本発明は、哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、その方法が、哺乳動物に化合物1または本発明の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。1つの態様において、眼疾患は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞および萎縮性角結膜炎からなる群より選択される。特に、眼疾患は、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である。
【0014】
別個の異なる態様では、本発明は、化合物1の調製に有用な、本明細書中に記載される合成プロセスも提供する。
【0015】
本発明は、医学的治療において使用するための本明細書中に記載されるような化合物1またはその薬学的に許容され得る塩、ならびに眼疾患を処置するための製剤または薬の製造における本発明の化合物の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
化学構造は、本明細書中で、ChemDrawソフトウェア(PerkinElmer,Inc.,Cambridge,MA)に実装されているようなIUPACの慣例に従って命名される。
【0017】
さらに、本化合物の構造におけるテトラヒドロイミダゾピリジン部分のイミダゾ部は、互変異性体で存在する。本化合物は、
【化2】
と等価に示され得る。IUPACの慣例によると、これらの表示は、テトラヒドロイミダゾピリジン部の原子の異なるナンバリングを生じさせる。したがって、この構造は、((1S,5R)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-イル)(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-
3,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)メタノンと名付けられる。この構造は、((1S,5R)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-イル)(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-
1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)メタノンとも名付けられ得る。構造は、ある特定の形態として示されているかまたは命名されているが、本発明は、それらの互変異性体も含むことが理解される。
【0018】
本発明の化合物は、いくつかの塩基性基も含むので、それらの化合物は、遊離塩基として、または様々な塩の形態(例えば、モノプロトン化塩の形態、ジプロトン化塩の形態またはそれらの混合物)で存在し得る。別段示されない限り、そのような形態のすべてが、本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
本発明は、同位体で標識された式1の化合物、すなわち、原子が、同じ原子番号を有するが自然界で優勢である原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置き換えられているかまたは富化されている式1の化合物も含む。式1の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、および18Fが挙げられるが、これらに限定されない。トリチウムまたは炭素-14に富化した式1の化合物が特に興味深く、それらの化合物は、例えば、組織分布研究において使用され得る。また、特に代謝部位においてジュウテリウムに富化した式1の化合物も特に興味深く、それらの化合物は、より高い代謝的安定性を有すると予想される。さらに、陽電子放出同位体(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)に富化した式1の化合物も特に興味深く、それらの化合物は、例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)研究において使用され得る。
【0020】
定義
様々な態様および実施形態を含む本発明を説明する際、以下。
【0021】
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与されたとき、処置をもたらすのに十分な量を意味する。
【0022】
用語「処置する」または「処置」は、患者(特にヒト)の処置される病状、疾患もしくは障害(例えば、呼吸器疾患)を予防すること、回復させることもしくは抑制すること;または病状、疾患もしくは障害の症候を軽減することを意味する。
【0023】
用語「薬学的に許容され得る塩」は、患者または哺乳動物(例えば、ヒト)への投与が許容され得る塩(例えば、所与の投与レジメンについて許容され得る哺乳動物の安全性を有する塩)を意味する。代表的な薬学的に許容され得る塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸(edisylic)、フマル酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucoronic)、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸およびキシナホ酸(xinafoic acid)などの塩が挙げられる。
【0024】
用語「その塩」は、酸の水素がカチオン(例えば、金属カチオンまたは有機カチオンなど)によって置き換えられたときに形成される化合物を意味する。例えば、カチオンは、プロトン化型の式1の化合物、すなわち、1つまたはそれより多くのアミノ基が酸によってプロトン化されている形態であり得る。代表的には、塩は、薬学的に許容され得る塩であるが、これは、患者への投与が意図されていない中間体化合物の塩には求められない。
【0025】
用語「アミノ保護基」は、アミノ窒素において望まれない反応を妨げるのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル;アシル基、例えば、アルカノイル基(例えば、アセチルおよびトリ-フルオロアセチル);アルコキシカルボニル基(例えば、tertブトキシカルボニル(Boc));アリールメトキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc));アリールメチル基(例えば、ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)および1,1-ジ-(4’-メトキシフェニル)メチル);シリル基(例えば、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM));などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
数多くの保護基ならびにそれらの導入および除去は、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New Yorkに記載されている。
【0027】
一般的な合成手順
化合物1およびそれらの中間体は、商業的に入手可能なまたは日常的に調製される出発物質および試薬を使用して、以下の一般的な方法および手順に従って調製され得る。さらに、酸性または塩基性の原子または官能基を有する化合物は、別段示されない限り、塩として使用され得るかまたは生成され得る(場合によっては、特定の反応において塩を使用するためには、その反応を行う前に、日常的な手順を使用して、その塩から非塩形態、例えば、遊離塩基に変換することが必要である)。
【0028】
本発明の特定の実施形態が、以下の手順に示され得るかまたは記載され得るが、当業者は、本発明の他の実施形態または態様も、そのような手順を用いて、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発物質を用いて、調製され得ることを認識する。特に、化合物1は、反応体が異なる順序で混和されることにより最終生成物を生成する途中で異なる中間体が提供される種々のプロセス経路によって調製され得ることが認識される。
【0029】
化合物1の調製は、添付の実施例に詳細に記載されている。重要な工程がスキーム1に要約されている。R
Aは、ヒドロキシルであり得、その場合、化合物7-PGは、HATU、HOBTなどのような活性化試薬の存在下、通常のアミド結合形成条件下において中間体6とカップリングされる。あるいは、R
Aは、Clなどの脱離基であってもよい。
スキーム1
【化3】
【0030】
化合物6を7-PGとカップリングさせた後、保護基「PG」を除去して、化合物1を得る。その保護基は、上で定義されたようなアミノ保護基から選択され得る。例えば、PGは、Boc保護基であり得、その場合、脱保護は、TFAまたはHClなどの強酸の存在下において行われ得る。
【0031】
中間体3は、実験の項に記載されているように調製され得る。保護された重要な中間体5を調製する代替方法をスキーム2に示す。
スキーム2
【化4】
【0032】
ブロモインダゾールアルデヒド8を、ベンジルで保護されたイミン化合物2と反応させて、中間体9を得ることができる。この反応は、代表的には、重亜硫酸ナトリウムの存在下、約130℃~約140℃の温度において、約1~約6時間にわたってまたは反応が実質的に完了するまで、行われる。化合物9を、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を用いて還元して化合物10を得て、それを通常のSuzuki-Miyauraカップリング条件下において、保護されたフェニルトリフルオロボレート11と合わせることにより、中間体5を得る。この反応は、代表的には、パラジウム触媒の存在下において高温で行われる。スキーム2にトリフルオロホウ酸カリウム塩として示されているSuzukiパートナー11は、対応するボロネート(下記の調製法1における中間体1-5)を二フッ化水素カリウムと反応させて中間体11を得ることによって調製することができる。あるいは、そのボロネート中間体をトリフルオロボレート11の代わりに使用することができる。
【0033】
したがって、方法の態様において、本発明は、式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を調製するプロセスを提供し、そのプロセスは、式6の化合物を式7-PGの化合物と反応させた後、保護基PGを除去し、必要に応じて、化合物1の薬学的に許容され得る塩を調製することにより、式1の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を得る工程を含む。
【0034】
薬学的組成物
化合物1およびその薬学的に許容され得る塩は、通常、薬学的組成物または製剤の形態で使用される。そのような薬学的組成物は、任意の許容され得る投与経路によって好都合に患者に投与されてよく、その投与経路としては、経口、吸入、光注入(optical injection)、局所(経皮を含む)、直腸、経鼻および非経口的な投与形式が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
したがって、上記組成物の態様の1つにおいて、本発明は、薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤および化合物1を含む薬学的組成物に関し、ここで、上で定義されたように、「化合物1」は、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩を意味する。必要に応じて、そのような薬学的組成物は、所望であれば、他の治療剤および/または製剤化剤を含んでもよい。組成物およびその使用を論じる際、化合物1は、本明細書中で「活性な作用物質」と称されることがある。
【0036】
いくつかの態様において、本開示は、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、眼への適用に適している。いくつかの態様において、組成物は、眼への注射に適している。いくつかの態様において、組成物は、硝子体内注射に適している。いくつかの態様において、組成物は、懸濁液である。いくつかの態様において、組成物は、結晶性の懸濁液である。
【0037】
本発明の薬学的組成物は、通常、治療有効量の化合物1を含む。しかしながら、薬学的組成物は、治療有効量より多い、すなわち、大量の組成物または治療有効量より少ない、すなわち、治療有効量を達成するための複数回投与のためにデザインされた個別の単位用量を含むことがあることを当業者は認識する。
【0038】
代表的には、そのような薬学的組成物は、約0.01~約95重量%の活性な作用物質(例えば、約0.05~約30重量%;および約0.1%~約10重量%の活性な作用物質を含む)を含む。
【0039】
任意の従来のキャリアまたは賦形剤を、本発明の薬学的組成物において使用してもよい。特定のキャリアもしくは賦形剤、またはキャリアもしくは賦形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処置するために用いられる投与様式、または病状もしくは疾患状態のタイプに依存する。この点において、特定の投与様式に対して好適な薬学的組成物の調製法は、十分に薬学分野の当業者の技術の範囲内である。さらに、本発明の薬学的組成物において使用されるキャリアまたは賦形剤は、商業的に入手可能である。さらなる例証として、従来の製剤化の手法は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(2000);およびH.C.Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(1999)に記載されている。
【0040】
薬学的に許容され得るキャリアとして機能し得る材料の代表例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロース(例えば、微結晶性セルロース)およびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤ろう);油(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および薬学的組成物において使用される他の無毒性の適合性物質。
【0041】
薬学的組成物は、代表的には、活性な作用物質を薬学的に許容され得るキャリアおよび1つまたはそれより多くの必要に応じた成分と十分かつ完全に混合または混和することによって調製される。次いで、得られた均一に混和された混合物は、従来の手順および器具を用いて、錠剤、カプセル剤、丸剤などに成形または充填され得る。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、好ましくは、単位剤形に包装される。用語「単位剤形」とは、患者への投与に適した物理的に別々の単位のことを指し、すなわち、各単位は、単独でまたは1つもしくはそれより多くのさらなる単位と組み合わさって所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性な作用物質を含む。例えば、そのような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤など、または眼投与もしくは非経口投与に適した単位パッケージであり得る。
【0043】
1つの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適している。経口投与に好適な薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、舐剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤の形態であり得るか;または水性もしくは非水性液体における溶液または懸濁液として存在し得るか;または水中油型もしくは油中水型の液体エマルジョンとして存在し得るか;またはエリキシル剤もしくはシロップ剤などとして存在し得;それらの各々は、所定の量の化合物1を活性成分として含んでいる。
【0044】
固形剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤など)での経口投与が意図されているとき、本発明の薬学的組成物は、通常、活性な作用物質および1つまたはそれより多くの薬学的に許容され得るキャリアを含む。必要に応じて、そのような固形剤形は、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア);保湿剤(例えば、グリセロール);崩壊剤(例えば、クロスカルメロース(crosscarmellose)ナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケートおよび/または炭酸ナトリウム);溶解遅延剤(例えば、パラフィン);吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよび/またはモノステアリン酸グリセロール);吸収剤(例えば、カオリンおよび/またはベントナイト粘土);滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはそれらの混合物);着色剤;および緩衝剤を含み得る。
【0045】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存剤ならびに酸化防止剤も、本発明の薬学的組成物に存在し得る。薬学的に許容され得る酸化防止剤の例としては、水溶性の酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);油溶性の酸化防止剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど);および金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)が挙げられる。錠剤、カプセル剤、丸剤などのためのコーティング剤としては、腸溶コーティングのために使用されるもの(例えば、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸、メタクリル酸エステル共重合体、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなど)が挙げられる。
【0046】
本発明の薬学的組成物はまた、例えば、様々な比率でヒドロキシプロピルメチルセルロース;または他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/もしくはミクロスフェアを用いて、活性な作用物質の持続放出または制御放出を提供するように製剤化され得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、必要に応じて不透明化剤を含んでもよく、消化管のある特定の部分において、必要に応じて遅延様式で、活性成分だけを放出するようにまたは活性成分を優先的に放出するように製剤化され得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。活性な作用物質は、適切な場合、上に記載された賦形剤の1つまたは複数とともに、マイクロカプセル化された形態でも存在し得る。
【0047】
経口投与に好適な液体剤形としては、例証として、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、代表的には、活性な作用物質および不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、オレイン酸、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含む。あるいは、ある特定の液体製剤は、例えば噴霧乾燥によって、粉末に変換され得、その粉末は、従来の手順によって固形剤形を調製するために使用される。
【0048】
懸濁剤は、活性成分に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0049】
化合物1は、非経口的に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内または腹腔内注射によって)も投与され得る。非経口投与の場合、活性な作用物質は、代表的には、非経口投与に好適なビヒクルと混合され、そのビヒクルの例としては、滅菌水溶液、食塩水、低分子量アルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルなどが挙げられる。非経口製剤は、1つまたはそれより多くの酸化防止剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤または分散剤も含み得る。これらの製剤は、滅菌された注射可能な媒質、滅菌剤の使用、濾過、照射または加熱によって、滅菌され得る。
【0050】
化合物1は、眼注射用の滅菌水性懸濁液または滅菌水性溶液としても製剤化され得る。そのような水性製剤に含められ得る有用な賦形剤としては、ポリソルベート80、セルロースポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒスチジン、α-α-トレハロース二水和物、スクロース、ポリソルベート20、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、塩化ベンザルコニウム、アンバーライトIRP-69、ポリオキシエチレングリコールエーテル(ラウリル、ステアリルおよびオレイル)、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、タウロコール酸ナトリウム、サポニンおよびクレモフォールEL、ポリカルボフィル-システイン、キサンタンガム、ジェランガム、ヒアルロン酸、リポソームおよびリン酸ナトリウムが挙げられる。透過性向上剤、界面活性剤、胆汁酸、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)およびキレート剤が、製剤に含められ得る。親水性の外表面および親油性の内表面を有し、活性な作用物質と複合体を形成する能力を有する円筒形のオリゴヌクレオチドも、製剤に含められ得る。ベンジルアルコールは、保存剤として働き得、塩化ナトリウムは、張度を調整するために含められ得る。さらに、塩酸および/または水酸化ナトリウムが、pH調整のために溶液に加えられ得る。眼注射用の水性製剤は、保存剤フリーとして調製され得る。
【0051】
眼製剤は、眼への活性成分の徐放を可能にし得る。眼製剤は、エマルジョン(水中油型または油中水型)、懸濁液または軟膏として製剤化され得る。懸濁液の製剤は、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩を結晶形態、例えば、形態1もしくは形態2として、または非晶質状態で含み得る。
【0052】
化合物1は、点眼投薬に適するように、または硝子体内インプラントとして、製剤化され得る。そのインプラントは、一定の治療レベルの薬物の送達を可能にし得る。レザバーインプラントは、通常、ケイ素、エチレンビニルアセテート(EVA)またはポリビニルアルコール(PVA)などの非反応性物質によって取り囲まれたペレット状の薬物コアで作製される。これらのインプラントは、非生物分解性であり、数ヶ月間から1年間にわたって持続した量の薬物を送達できる。マトリックスインプラントも使用され得る。それらは、通常、負荷投与量に続いて漸減量の薬物を1日から6ヶ月間にわたって送達するために使用される。それらは、最も一般的には、水および二酸化炭素に分解される共重合体であるポリ乳酸(PLA)および/またはポリ乳酸グリコール酸(PLGA)から作製される。イオン導入も使用され得る。イオン導入は、低電流を流して、イオン化した薬物が組織に浸透するのを高める非侵襲的な手法である。
【0053】
細胞ベースの送達系であるカプセル化細胞技術(ECT)も、治療剤を眼に送達するために使用され得る。代表的には、遺伝的に改変された細胞を半透膜の中空管の中に詰める。これにより、免疫細胞の侵入が防がれ、栄養分および治療的分子がその膜を越えて自由に拡散することが可能になる。ポリマーセクションの2つの末端をシールし、アンカリング末端にチタンループを配置して、それを毛様体扁平部に埋め込み、強膜に固定する。
【0054】
化合物1は、眼底への送達を可能にする任意の形態に製剤化され得る。送達形式の例は、文献(Kunoら、Polymers,2011,3,193-221,del Amoら、Drug Discovery Today,2008,13,135-143, Short,Toxicologic Pathology,2008,36,49-62)において知られている。そのような送達形式としては、脈絡膜上腔を通じた脈絡膜および網膜への送達を可能にする脈絡膜上(suprachoroidal)送達、テノン嚢下(sub-Tenon)送達、眼周囲送達、コンタクトレンズ、涙点プラグおよび強膜プラグが挙げられるがこれらに限定されない。化合物1は、眼周囲注射、強膜上注射、眼球後注射、眼球周囲注射または結膜下注射によっても送達され得る。
【0055】
化合物1は、エマルジョン、ポリマーマイクロスフェアもしくはポリマーナノスフェア、リポソーム、微粒子もしくはナノ粒子、ミクロスフェア、ミセルまたはデンドリマーとして送達され得る。ポリラクチド(polyactide)およびPLGAなどの生分解性ポリマーおよび生体適合性ポリマーが使用され得る。化合物1は、カプセル化されてもよい。
【0056】
さらに、化合物1は、皮膚への局所投与のために軟膏またはクリームとしても製剤化され得る。軟膏製剤は、代表的には透明の油性または脂肪性の材料の基剤を有する半固体の調製物である。軟膏製剤において使用するめに適した油性材料としては、ペトロラタム(ペトロレアムゼリー)、蜜ろう、カカオバター、シアバターおよびセチルアルコールが挙げられる。軟膏は、所望であれば、必要に応じてさらに軟化薬および浸透促進剤を含んでもよい。
【0057】
クリーム製剤は、代表的には精製水を含む、油相および水相を含むエマルジョンとして調製され得る。クリーム製剤の構成要素としては、油性基剤(例えば、ペトロラタム(petrolatrum)、鉱油、植物油および動物油ならびにトリグリセリド);クリーム基剤(例えば、ラノリンアルコール、ステアリン酸およびセトステアリルアルコール);ゲル基剤(例えば、ポリビニルアルコール);溶媒(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール);乳化剤(例えば、ポリソルベート、ステアレート(例えば、ステアリン酸グリセリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル(octylhydroxystearate)、ステアリン酸ポリオキシル、PEGステアリルエーテル、パルミチン酸イソプロピルおよびモノステアリン酸ソルビタン));安定剤(例えば、多糖および亜硫酸ナトリウム);軟化薬(すなわち、保湿剤(例えば、中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピルおよびジメチコーン));硬化剤(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコール);抗菌剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸、ジアゾリジニル尿素およびブチル化ヒドロキシアニソール);浸透促進剤(例えば、N-メチルピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレートなど);およびキレート剤(例えば、エデト酸二ナトリウム)が挙げられ得る。
【0058】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、吸入による投与のために製剤化される。吸入による投与に好適な薬学的組成物は、代表的には、エアロゾルまたは粉末の形態であり得る。そのような組成物は、一般に、周知の送達デバイス(例えば、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、噴霧器または同様の送達デバイス)を用いて投与される。
【0059】
加圧容器を用いて吸入によって投与されるとき、本発明の薬学的組成物は、代表的には、活性成分および好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガス)を含み得る。さらに、薬学的組成物は、化合物1および粉末吸入器での使用に適した粉末を含むカプセルまたはカートリッジ(例えばゼラチンでできたもの)の形態であり得る。好適な粉末基剤の例としては、ラクトースまたはデンプンが挙げられる。
【0060】
以下の非限定的な例は、本発明の代表的な薬学的組成物を例証する。
【0061】
錠剤経口固形剤形
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、例えば、錠剤1つあたり5mg、20mgまたは40mgの活性な作用物質という単位投与量が提供されるように、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウムと4:5:1:1の比で乾式混合され、錠剤に圧縮される。
【0062】
カプセル経口固形剤形
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、例えば、カプセル1つあたり5mg、20mgまたは40mgの活性な作用物質という単位投与量が提供されるように、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウムと4:5:1:1の比で湿式造粒によって混和され、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのカプセルに充填される。
【0063】
液体製剤
化合物1(0.1%)、水(98.9%)およびアスコルビン酸(1.0%)を含む液体製剤が、本発明の化合物を水とアスコルビン酸との混合物に加えることによって形成される。
【0064】
腸溶コーティングされた経口剤形
化合物1を、ポリビニルピロリドンを含む水溶液に溶解させ、1:5w/wという活性な作用物質:ビーズの比で微結晶性セルロースまたは糖のビーズ上にスプレーコーティングし、次いで、アクリル共重合体を含む腸溶コーティングのおよそ5%重量増加を適用する。その腸溶コーティングされたビーズを、例えば、カプセル1つあたり30mgの活性な作用物質という単位投与量が提供されるように、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのカプセルの中に充填する。
【0065】
腸溶コーティングされた経口剤形
Eudragit-L(登録商標)とEudragit-S(登録商標)との組み合わせまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む腸溶コーティングを、上に記載された錠剤経口剤形またはカプセル経口剤形に適用する。
【0066】
眼注射用の水性製剤
1mLの滅菌水性懸濁液は、5mg~50mgの化合物1、張度用の塩化ナトリウム、保存剤としての0.99%(w/v)ベンジルアルコール、0.75%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.04%ポリソルベートを含む。pHを5~7.5に調整するために水酸化ナトリウムまたは塩酸を含めてもよい。
【0067】
眼注射用の水性製剤
保存剤フリーの滅菌水性懸濁液は、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、0.03%ポリソルベート20および5%スクロース中に5mg/mL~50mg/mLの化合物1を含む。
【0068】
局所投与用の軟膏製剤
化合物1は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、ペトロラタム、C8-C10トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸オクチルおよびN-メチルピロリドンと、ある比で混和される。
【0069】
局所投与用の軟膏製剤
化合物1は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、白色ワセリン、プロピレングリコール、モノ-およびジ-グリセリド、パラフィン、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびエデト酸カルシウム二ナトリウムと、ある比で混和される。
【0070】
局所投与用の軟膏製剤
化合物1は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、鉱油、パラフィン、炭酸プロピレン、白色ワセリンおよび白ろうと混和される。
【0071】
局所投与用のクリーム製剤
鉱油が、化合物1、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、ポリソルベート60、セチルアルコール、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリオキシル40、ソルビン酸、メチルパラベンおよびプロピルパラベンと混和されて、油相が形成され、それが、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、剪断混合(shear blending)によって精製水と混和される。
【0072】
局所投与用のクリーム製剤
化合物1、ベンジルアルコール、セチルアルコール、無水クエン酸、モノグリセリドおよびジグリセリド、オレイルアルコール、プロピレングリコール、硫酸セトステアリルナトリウム、水酸化ナトリウム、ステアリルアルコール、トリグリセリドならびに水を含むクリーム製剤は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む。
【0073】
局所投与用のクリーム製剤
化合物1、セトステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、プロピレングリコール、セトマクロゴール1000、ジメチコーン360、クエン酸、クエン酸ナトリウムおよび精製水を、保存剤としてイミド尿素、メチルパラベンおよびプロピルパラベンとともに含むクリーム製剤は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む。
【0074】
乾燥粉末組成物
微粒子化された化合物1(1g)を、粉砕ラクトース(25g)とブレンドする。次いで、このブレンド混合物を、1用量あたり約0.1mg~約4mgの化合物1を提供するのに十分な量で、剥離可能なブリスター包装の個々のブリスターに充填する。それらのブリスターの内容物が、乾燥粉末吸入器を用いて投与される。
【0075】
定量吸入器用組成物
微粒子化された化合物1(10g)を、レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)に溶解することによって調製された溶液に分散させる。得られた懸濁液を噴霧乾燥し、次いで、微粒子化して、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粒子化された組成物を形成する。次いで、その微粒子化された組成物を、定量吸入器によって投与されたとき1用量あたり約0.1mg~約4mgの化合物1を提供するのに十分な量で、加圧された1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む定量吸入器カートリッジに充填する。
【0076】
ネブライザー用組成物
化合物1(25mg)を、1.5~2.5当量の塩酸を含む溶液に溶解させた後、pHを3.5~5.5に調整するために水酸化ナトリウム、および3重量%のグリセロールを加える。すべての構成要素が溶解するまで、その溶液を十分撹拌する。その溶液を、1用量あたり約0.1mg~約4mgの化合物1を提供するネブライザーデバイスを用いて投与する。
【0077】
有用性
化合物1は、JAKファミリーの酵素:JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2の強力な阻害剤であると示された。
【0078】
眼疾患
多くの眼疾患が、JAK-STAT経路に依存する炎症促進性サイトカインの増加に関連すると示された。化合物1は、4つすべてのJAK酵素において強力な阻害を示すので、JAKを介してシグナル伝達する数多くのサイトカイン(例えば、IL-6、IL-2およびIFN-γ)のシグナル伝達および病原性の作用を強く阻害すると予想され、ならびにその産生がJAK-STAT経路のシグナル伝達によって引き起こされる他のサイトカイン(例えば、MCP-1およびIP-10)の増加を防ぐと予想される。
【0079】
アッセイの項に例証されるように、化合物1は、サイトカイン増加の下流効果の阻害を示すアッセイを含む細胞アッセイにおいて活性を示した。
【0080】
さらに、化合物1の硝子体内投薬は、ラットの網膜/脈絡膜組織において、IL-6によって誘導されるpSTAT3の有意な阻害を示した。
【0081】
有意な全身レベルの非存在下における眼のJAK阻害は、全身で引き起こされる有害作用なく、眼において強力な局所的抗炎症活性をもたらすと予想される。したがって、化合物1は、いくつかの眼疾患において有益であると予想され、それらの眼疾患としては、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞および萎縮性角結膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
特に、ブドウ膜炎(Horai and Caspi,J Interferon Cytokine Res,2011,31,733-744)、糖尿病性網膜症(Abcouwer,J Clin Cell Immunol,2013,Suppl 1,1-12)、糖尿病性黄斑浮腫(Sohnら、American Journal of Opthalmology,2011,152,686-694)、ドライアイ疾患(Stevensonら、Arch Ophthalmol,2012,130,90-100)、網膜静脈閉塞(Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology,2015,63(12),905-911)および加齢黄斑変性症(Knickelbeinら、Int Ophthalmol Clin,2015,55(3),63-78)は、JAK-STAT経路を介してシグナル伝達するある特定の炎症促進性サイトカインの増加を特徴とする。したがって、化合物1は、付随する眼の炎症を軽減することおよび疾患の進行を逆転させることまたはこれらの疾患の症候緩和を提供することができると予想される。
【0083】
ゆえに、1つの態様において、本発明は、哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、その方法が、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および薬学的キャリアを含む薬学的組成物を哺乳動物の眼に投与する工程を含む、方法を提供する。1つの態様において、眼疾患は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞または萎縮性角結膜炎である。1つの態様において、その方法は、硝子体内注射によって化合物1を投与する工程を含む。
【0084】
炎症性皮膚疾患
アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患は、JAK-STAT経路に依存する炎症促進性サイトカイン、特に、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13およびIFNγの増加に関連した。ゆえに、化合物1は、いくつかの皮膚炎症性症状または皮膚そう痒性症状において有益であると予想され、それらの症状としては、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、白斑、皮膚T細胞リンパ腫、結節性痒疹、扁平苔癬、原発性限局性皮膚アミロイドーシス、水疱性類天疱瘡、移植片対宿主病の皮膚発現、類天疱瘡、円板状狼瘡、環状肉芽腫、慢性単純性苔癬、外陰部/陰嚢/肛門周囲のそう痒、硬化性苔癬、帯状疱疹後神経痛かゆみ、毛孔性扁平苔癬および脱毛性毛包炎(foliculitis decalvans)が挙げられるが、これらに限定されない。特に、円形脱毛症(Xingら、Nat Med.2014 Sep;20(9):1043-9)、白斑(Craiglowら、JAMA Dermatol.2015 Oct;151(10):1110-2)、皮膚T細胞リンパ腫(Netchiporoukら、Cell Cycle.2014;13(21):3331-5)、結節性痒疹(Sonkolyら、J Allergy Clin Immunol.2006 Feb;117(2):411-7)、扁平苔癬(Welz-Kubiakら、J Immunol Res.2015;2015:854747)、原発性限局性皮膚アミロイドーシス(Tanakaら、Br J Dermatol.2009 Dec;161(6):1217-24)、水疱性類天疱瘡(Felicianiら、Int J Immunopathol Pharmacol.1999 May-Aug;12(2):55-61)および移植片対宿主病の皮膚発現(Okiyamaら、J Invest Dermatol.2014 Apr;134(4):992-1000)は、JAK活性化を介してシグナル伝達するある特定のサイトカインの増加を特徴とする。したがって、化合物1は、これらのサイトカインによって引き起こされる関連する皮膚の炎症またはそう痒症を軽減することができると予想される。
【0085】
ゆえに、1つの態様において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)の炎症性皮膚疾患を処置する方法であって、その方法が、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および薬学的キャリアを含む薬学的組成物を哺乳動物の皮膚に塗布する工程を含む、方法を提供する。1つの態様において、炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎である。
【0086】
化合物1は、炎症性皮膚疾患を処置するためにグラム陽性抗生物質(例えば、ムピロシンおよびフシジン酸)と併用しても使用され得る。ゆえに、1つの態様において、本発明は、哺乳動物の炎症性皮膚疾患を処置する方法であって、その方法が、化合物1およびグラム陽性抗生物質を哺乳動物の皮膚に塗布する工程を含む、方法を提供する。別の態様において、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩、グラム陽性抗生物質および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
【0087】
呼吸器疾患
JAK-STAT経路を介してシグナル伝達するサイトカイン、特に、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-11、IL-13、IL-23、IL-31、IL-27、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、インターフェロン-γ(IFNγ)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、喘息炎症および他の炎症性呼吸器疾患にも関係づけられている。上に記載されたように、化合物1は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2酵素の強力な阻害剤であると示されており、細胞アッセイにおいて炎症促進性サイトカインの強力な阻害も示した。
【0088】
JAK阻害剤の抗炎症活性は、喘息の前臨床モデルにおいて強く実証された(Malaviyaら、Int Immunopharmacol,2010,10,829,-836;Matsunagaら、Biochem and Biophys Res Commun,2011,404,261-267;Kudlaczら、Eur J Pharmacol,2008,582,154-161)。したがって、化合物1は、炎症性呼吸器障害、特に、喘息の処置に有用であると予想される。肺の炎症および線維症は、喘息に加えて他の呼吸器疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫および閉塞性細気管支炎)に特徴的である。ゆえに、化合物1は、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫、閉塞性細気管支炎およびサルコイドーシスの処置にも有用であると予想される。
【0089】
ゆえに、1つの態様において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)の呼吸器疾患を処置する方法であって、その方法が、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0090】
1つの態様において、呼吸器疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫、閉塞性細気管支炎またはサルコイドーシスである。別の態様において、呼吸器疾患は、喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0091】
さらなる態様において、呼吸器疾患は、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋肉腫症、気管支拡張症または浸潤性肺疾患である。さらに別の態様において、呼吸器疾患は、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性 気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフラー症候群、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である。
【0092】
本発明はさらに、哺乳動物の喘息を処置する方法であって、その方法が、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0093】
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、好酸球性肺疾患の処置にも有用であると予想される。好酸球性肺疾患と総称される疾患の特徴的な特徴である好酸球性気道炎症(Cottinら、Clin.Chest.Med.,2016,37(3),535-56)。好酸球性疾患は、IL-4、IL-13およびIL-5のシグナル伝達に関連した。好酸球性肺疾患としては、感染症(特に、蠕虫感染症)、薬物誘発性肺臓炎(例えば、抗生物質、フェニトインまたはl-トリプトファンなどの治療薬によって誘発される)、真菌誘発性肺臓炎(例えば、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、過敏性肺臓炎および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以前はチャーグ・ストラウス症候群として知られていた)が挙げられる。病因が不明の好酸球性肺疾患としては、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群およびレフラー症候群が挙げられる。
【0094】
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、PAHの処置にも有用であり得る。IL-6遺伝子の多型が、IL-6の高レベルおよび肺動脈高血圧症(PAH)を発症する高リスクに関連した(Fangら、J Am Soc Hypertens.,2017,11(3),171-177)。PAHにおけるIL-6の役割を裏付けるように、IL-6レセプター鎖gp130の阻害によって、PAHのラットモデルにおいてその疾患が回復した(Huangら、Can J Cardiol.,2016,32(11),1356.e1-1356.e10)。
【0095】
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、サルコイドーシスなどの非アレルギー性肺疾患およびリンパ管平滑筋肉腫症の処置にも有用であり得る。IFNγ、IL-12およびIL-6などのサイトカインは、サルコイドーシスなどの一連の非アレルギー性肺疾患、およびリンパ管平滑筋肉腫症に関係づけられた(El-Hashemiteら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.,2005,33,227-230およびEl-Hashemiteら、Cancer Res.,2004,64,3436-3443)。
【0096】
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、慢性好中球炎症に関連する疾患である気管支拡張症および浸潤性肺疾患の処置にも有用であり得る。ある特定のサイトカインが、好中球炎症に関連する(例えば、IL-6、IFNγ)。
【0097】
病的なT細胞活性化は、複数の呼吸器疾患の病因において不可欠である。自己反応性T細胞は、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(COSとも呼ばれる)において役割を果たす。COSと同様に、肺移植片拒絶の病因は、移植されたドナー肺によるレシピエントのT細胞の異常なT細胞活性化と関係がある。肺移植片拒絶は、原発性移植片機能不全(PGD)、器質化肺炎(OP)、急性拒絶反応(AR)またはリンパ球性細気管支炎(LB)として初期に生じることもあり、また、慢性肺同種移植片機能不全(CLAD)として肺移植の数年後に生じることもある。CLADは、以前は閉塞性細気管支炎(BO)として知られていたが、現在は、BO、拘束性CLAD(rCLADまたはRAS)および好中球同種移植片機能不全をはじめとした種々の病理発現を有し得る症候群と考えられている。慢性肺同種移植片機能不全(CLAD)は、それによって移植された肺が次第に機能を失うので、肺移植レシピエントの長期間の管理における大きな課題である(Gauthierら、Curr Transplant Rep.,2016,3(3),185-191)。CLADは、処置に対する応答が不十分であるので、この症状を予防または処置することができる有効な化合物が必要とされている。IFNγおよびIL-5などのいくつかのJAK依存性サイトカインは、CLADおよび肺移植片拒絶において上方制御される(Berasteguiら、Clin Transplant.2017,31,e12898)。さらに、JAK依存性IFNシグナル伝達の下流にあるCXCL9およびCXCL10などのCXCR3ケモカインが肺において高レベルであることは、肺移植患者の不良な予後と関係がある(Shinoら、PLOS One,2017,12(7),e0180281)。JAK阻害は、腎臓移植片拒絶において有効であると示された(Vicentiら、American Journal of Transplantation,2012,12,2446-56)。ゆえに、化合物1は、肺移植片拒絶およびCLADの処置または予防において有効である可能性を有する。肺移植片拒絶の根拠と記載されるT細胞活性化事象と類似のT細胞活性化事象は、造血幹細胞移植後に生じ得る肺の移植片対宿主病(GVHD)の主な要因であるとも考えられている。CLADと同様に、肺GVHDは、極めて不良な予後を伴う慢性の進行性の症状であり、現在認可されている処置がない。JAK阻害剤ルキソリチニブを救済療法として全身投与された、ステロイド不応性の急性または慢性GVHDを有する95人の患者の後向き多施設調査研究は、肺GVHDを有する患者を含む患者の大部分においてルキソリチニブに対して完全奏効または部分奏効を示した(Zeiserら、Leukemia,2015,29,10,2062-68)。より最近では、別のT細胞介在性肺疾患である、免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎が、免疫チェックポイント阻害剤の使用の増加に伴って出現した。これらのT細胞刺激剤で処置された癌患者は、致命的な肺臓炎を発症し得る。化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、これらの十分に対処されていない重篤な呼吸器疾患に対する新規処置となる可能性を有する。
【0098】
胃腸疾患
JAK阻害剤として、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、他の種々の疾患にも有用であり得る。化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、種々の胃腸炎症性適応症に有用であり得、それらの適応症としては、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎、汎大腸炎、潰瘍性直腸炎および左側大腸炎)、クローン病、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、ベーチェット病、セリアック病、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎、回腸炎、好酸球性食道炎、移植片対宿主病関連大腸炎および感染性大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。潰瘍性大腸炎(Reimundら、J Clin Immunology,1996,16,144-150)、クローン病(Woywodtら、Eur J Gastroenterology Hepatology,1999,11,267-276)、コラーゲン蓄積大腸炎(Kumawatら、Mol Immunology,2013,55,355-364)、リンパ球性大腸炎(Kumawatら、2013)、好酸球性食道炎(Weinbrand-Goichbergら、Immunol Res,2013,56,249-260)、移植片対宿主病関連大腸炎(Coghillら、Blood,2001,117,3268-3276)、感染性大腸炎(Stallmachら、Int J Colorectal Dis,2004,19,308-315)、ベーチェット病(Zhouら、Autoimmun Rev,2012,11,699-704)、セリアック病(de Nittoら、World J Gastroenterol,2009,15,4609-4614)、免疫チェックポイント阻害剤によって誘発される大腸炎(例えば、CTLA-4阻害剤によって誘発される大腸炎;(Yanoら、J Translation Med,2014,12,191)PD-1またはPD-L1阻害剤によって誘発される大腸炎)および回腸炎(Yamamotoら、Dig Liver Dis,2008,40,253-259)は、ある特定の炎症促進性サイトカインのレベルの上昇を特徴とする。多くの炎症促進性サイトカインが、JAKの活性化を介してシグナル伝達するので、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、炎症を軽減することおよび症候の軽減を提供することができ得る。特に、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、潰瘍性大腸炎の緩解の誘導および維持、ならびにクローン病、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎および移植片対宿主病における胃腸有害作用の処置に有用であり得る。ゆえに、1つの態様において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)の胃腸炎症性疾患を処置する方法であって、その方法が、化合物1もしくはその薬学的に許容され得る塩、または薬学的に許容され得るキャリアおよび化合物1もしくはその薬学的に許容され得る塩を含む薬学的組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0099】
他の疾患
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、他の炎症性疾患、自己免疫疾患または癌などの他の疾患の処置にも有用であり得る。
【0100】
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、移植片拒絶、眼球乾燥症、乾癬性関節炎、糖尿病、インスリン依存性糖尿病、運動ニューロン疾患、骨髄異形成症候群、疼痛、サルコペニア、悪液質、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス、白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、強直性脊椎炎、骨髄線維症、B細胞リンパ腫、肝細胞癌腫、ホジキン病、乳癌、多発性骨髄腫、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣明細胞癌腫、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、真性多血症、シェーグレン症候群、軟部組織肉腫、肉腫、脾腫、T細胞リンパ腫および重症型サラセミアのうちの1つまたは複数の処置に有用であり得る。
【0101】
併用療法
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩は、疾患を処置するために、同じ機序または異なる機序によって作用する1つまたはそれより多くの作用物質と併用して使用され得る。それらの異なる作用物質は、別個の組成物または同じ組成物で連続的にまたは同時に投与され得る。併用療法のための作用物質の有用なクラスとしては、抗血管新生、ステロイド、抗炎症、血漿カリクレイン阻害剤、胎盤成長因子リガンド阻害剤、VEGF-Aリガンド阻害剤、アンジオポエチンリガンド-2阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼベータ阻害剤、Tekチロシンキナーゼレセプター刺激物質、カルシニューリン阻害剤、VEGFリガンド阻害剤、mTOR複合体1阻害剤、mTOR阻害剤、IL-17アンタゴニスト、カルモジュリン調節因子、FGFレセプターアンタゴニスト、PDGFレセプターアンタゴニスト、VEGFレセプターアンタゴニスト、TNFアルファリガンド阻害剤、TNF結合剤、プロテオグリカン4刺激物質、VEGF-Cリガンド阻害剤、VEGF-Dリガンド阻害剤、CD126アンタゴニスト、補体カスケード阻害剤、糖質コルチコイドアゴニスト、補体C5因子阻害剤、カンナビノイドレセプターアンタゴニスト、スフィンゴシン-1-リン酸レセプター-1調節因子、スフィンゴシン-1-リン酸レセプター-3調節因子、スフィンゴシン-1-リン酸レセプター-4調節因子、スフィンゴシン-1-リン酸レセプター-5調節因子、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害剤、Flt3チロシンキナーゼ阻害剤、Kitチロシンキナーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼC阻害剤、副腎皮質刺激ホルモンリガンド、間質細胞由来因子1リガンド阻害剤、免疫グロブリンG1アゴニスト;インターロイキン-1ベータリガンド阻害剤、ムチン刺激物質;核因子カッパーB調節因子、細胞傷害性T-リンパ球タンパク質-4刺激物質、T細胞表面糖タンパク質CD28阻害剤、リポタンパク質リパーゼ刺激物質;PPARアルファアゴニスト、アデノシンA3レセプターアゴニスト、アンジオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、VEGFレセプターアンタゴニスト、インターフェロンベータリガンド、SMAD-2調節因子;TGFベータ1リガンド阻害剤、ソマトスタチンレセプターアゴニスト、IL-2レセプターアルファサブユニット阻害剤、VEGF-Bリガンド阻害剤、サイモシンベータ4リガンド、アンジオテンシンII AT-1レセプターアンタゴニスト、CCR2ケモカインアンタゴニスト、膜銅アミンオキシダーゼ阻害剤、CD11aアンタゴニスト、ICAM-1阻害剤、インスリン様成長因子1アンタゴニスト、カリクレイン阻害剤、フコシルトランスフェラーゼ6刺激物質、GDPフコースシンテターゼ調節因子、GHR遺伝子阻害剤、IGF1遺伝子阻害剤、VEGF-1レセプターアンタゴニスト、アルブミンアゴニスト、IL-2アンタゴニスト、CSF-1アンタゴニスト;PDGFレセプターアンタゴニスト、VEGF-2レセプターアンタゴニスト、mTOR阻害剤、PPARアルファアゴニスト、Rho GTPase阻害剤、Rho結合タンパク質キナーゼ阻害剤、補体C3阻害剤、EGR-1転写因子阻害剤、核赤血球2関連因子調節因子、核因子カッパーB阻害剤、インテグリンアルファ-V/ベータ-3アンタゴニスト、エリトロポイエチンレセプターアゴニスト、グルカゴン様ペプチド1アゴニスト、TNFRSF1A遺伝子刺激物質、アンジオポエチンリガンド-2阻害剤、アルファ-2抗プラスミン阻害剤、コラーゲンアンタゴニスト、フィブロネクチン阻害剤、ラミニンアンタゴニスト、プラスミン刺激物質、神経成長因子リガンド、FGF1レセプターアンタゴニスト、FGF3レセプターアンタゴニスト、itkチロシンキナーゼ阻害剤、Lckチロシンキナーゼ阻害剤、Ltkチロシンキナーゼレセプター阻害剤、PDGFレセプターアルファアンタゴニスト、PDGFレセプターベータアンタゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、VEGF-3レセプターアンタゴニスト、膜銅アミンオキシダーゼ阻害剤、ソマトスタチン2レセプターアゴニスト、ソマトスタチン4レセプターアゴニスト、ソマトスタチン5レセプターアゴニスト、タンパク質キナーゼCアルファ阻害剤、タンパク質キナーゼCベータ阻害剤、タンパク質キナーゼCデルタ阻害剤 タンパク質キナーゼCイプシロン阻害剤 タンパク質キナーゼCエータ阻害剤、タンパク質キナーゼCシータ阻害剤、アンキリン調節因子、ムチン刺激物質、P2Y2プリンレセプターアゴニスト、ギャップ結合アルファ-1タンパク質阻害剤、CCR3ケモカインアンタゴニスト;エオタキシンリガンド阻害剤、アミロライド感受性ナトリウムチャネル阻害剤、PDGFレセプターアンタゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、網膜色素上皮タンパク質阻害剤、マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤、PDGFレセプターアンタゴニスト、PDGFレセプターベータアンタゴニスト、PDGF-Bリガンド阻害剤、成長ホルモンレセプターアンタゴニスト、細胞接着分子阻害剤、インテグリン調節因子、CXCR4ケモカインアンタゴニスト、コイルドコイルドメイン含有タンパク質阻害剤、Hsp90調節因子、Rho結合タンパク質キナーゼ阻害剤、VEGF遺伝子阻害剤、エンドグリン阻害剤、CCR3ケモカインアンタゴニスト、maxi Kカリウムチャネル調節因子、maxi Kカリウムチャネル刺激物質、PGF2アルファアゴニスト、プロスタノイドレセプターアゴニスト、電位開口型クロライドチャネル2調節因子、補体C5aレセプターアンタゴニスト、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、インターロイキン18リガンド阻害剤、TRPカチオンチャネルM8刺激物質、CNTFレセプターアゴニスト、TRPV1遺伝子阻害剤、デオキシリボヌクレアーゼI刺激物質、IRS1遺伝子阻害剤、Rho結合タンパク質キナーゼ阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ1阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ2阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ3阻害剤、バニロイドVR1アゴニスト、NFAT5遺伝子刺激物質、ムチン刺激物質、Sykチロシンキナーゼ阻害剤、アルファ2アドレノセプターアゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アミロイドタンパク質沈着阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害剤、PARP刺激物質、タウ沈着阻害剤、DDIT4遺伝子阻害剤、ヘモグロビン合成調節因子、インターロイキン-1ベータリガンド阻害剤、TNFアンタゴニスト、KCNQ電位開口型カリウムチャネル刺激物質、NMDAレセプターアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ1阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5-HT 1aレセプターアゴニスト、カルシウムチャネル阻害剤、FGF-2リガンド調節因子、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、CD44アンタゴニスト、ヒアルロニダーゼ調節因子、ヒアルロン酸アゴニスト、IL-1アンタゴニスト、I型IL-1レセプターアンタゴニスト、補体P因子阻害剤、チューブリンアンタゴニスト、ベータアミロイドアンタゴニスト、IL2遺伝子刺激物質、I-カッパーBキナーゼベータ阻害剤、核因子カッパーB調節因子、プラスミノゲンアクチベーター阻害剤1阻害剤、FGF-2リガンド、プロテアーゼ調節因子およびコルチコトロピン調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
化合物1と併用して使用され得る特定の作用物質としては、ラナデルマブ、アフリベルセプト、RG-7716、AKB-9778、シクロスポリン、ベバシズマブ、エベロリムス、セクキヌマブ、フルオシノロンアセトニド、RP-101、乳酸スクアラミン、組換えヒトラブリシン、OPT-302、サリルマブ、デキサメタゾン、エクリズマブ、フィンゴリモド、アダリムマブ、レプロキサラップ(reproxalap)、ミドスタウリン、コルチコトロピン、オラプテセドペゴル(olaptesed pegol)、カナキヌマブ、レコフラボン(recoflavone)、アバタセプト、フェノフィブラート、ピクリデノソン(piclidenoson)、OpRegen、カンデサルタン(candesartan)、ゴリムマブ、ペガプタニブ、インターフェロン-ベータ、ジシテルチド(disitertide)、酢酸オクトレオチド、アネコルタブ、バシリキシマブ、脈絡膜上トリアムシノロンアセトニド、RGN-259、ジフルプレドナート、HL-036、アバシンカプタドペゴルナトリウム(avacincaptad pegol sodium)、イルベサルタン、プロパゲルマニウム、トリアムシノロンアセトニド、アジスロマイシン、BI-1467335、リフィテグラスト、エタボン酸ロテプレドノール、テプロツムマブ、KVD-001、TZ-101、アテシドルセン(atesidorsen)、Nov-03、ベバシズマブ、AVA-101、RU-101、ボクロスポリン(voclosporin)、ボロラニブ(vorolanib)、シロリムス、コリンフェノフィブラート、VX-210、APL-2、CPC-551、エラミプレチド、SF-0166、シビネチド(cibinetide)、エラミプレチド、リラグルチド、EYS-606、ネスバクマブ(nesvacumab)、アフリベルセプト、オクリプラスミン、フィルゴチニブ、セネゲルミン(cenegermin)、アジポセル(adipocell)、ブロルシズマブ(brolucizumab)、ラニビズマブ、アフリベルセプト、パデリポルフィン(padeliporfin)光線力学的療法、パゾパニブ、ASP-8232、ベルドレオチド(veldoreotide)、ソトラスタウリン(sotrastaurin)、アビシパルペゴル、ジカフォソルテトラナトリウム(diquafosol tetrasodium)、HCB-1019、コンベルセプト(conbercept)、ベルチリムマブ(bertilimumab)、SHP-659、THR-317、ALK-001、PAN-90806、インターフェロンアルファ-2b、フルオシノロン、スニチニブリンゴ酸塩、エミクススタト、hI-con1、TB-403、ミノサイクリン、MA09-hRPE細胞、ペグプレラニブ(pegpleranib)ナトリウム、ペグビソマント、ルミネート(luminate)、ブリキサホル(burixafor)、H-1129、カロツキシマブ(carotuximab)、AXP-1275、ラニビズマブ、イソプロピルウノプロストン、テシドルマブ(tesidolumab)、腸溶コーティングされたミコフェノール酸ナトリウム、タデキニグ(tadekinig)アルファ、トリアムシノロンアセトニド、シクロスポリン、ST-266、AVX-012、NT-501-ECT、チバニシラン(tivanisiran)、ベルテポルフィン、ドルナーゼアルファ、アガニルセン(aganirsen)、リパスジル、ルカパリブリン酸塩、ズカプサイシン(zucapsaicin)、テトラチオモリブデート、ジクロフェナク、LHA-510、AGN-195263、タクロリムス、レバミピド、R-348、ブリモニジン酒石酸塩、ビゾミチン(vizomitin)、T-89、LME-636、BI-1026706、リメキソロン、トブラマイシン、TOP-1630、タラポルフィン、ブロムフェナクナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ダブネチド(davunetide)、エタボン酸ロテプレドノール、XED-60、EG-Mirotin、APD-209、アデノビル(adenovir)、PF-04523655、ヒドロキシカルバミド、ナバメペント(navamepent)、レチナラミン(retinalamin)、CNTO-2476、ラニビズマブ、フルピルチン、B27PD、S-646240、GLY-230、ヒドララジン、ネパフェナク、DexNP、トレハロース、ヒアルロン酸、デキサメタゾン-Ca徐放性デポ剤、ナルゾタン(naluzotan)、ヒアルロニダーゼ、ヒアルロン酸ナトリウム、イスナキンラ(isunakinra)、ソマトスタチン、CLG-561、OC-10X、UCA-002、組換えヒト上皮成長因子、ペミロラスト、VM-100、MB-11316、アルファルミノール一ナトリウム、ラニビズマブ、IMD-1041、LMG-324、HE-10、シンヒアルロン酸ナトリウム(cinhyaluronate sodium)、BDM-E、間葉系前駆細胞、ジスルフィラム、CTC-96、PG-101、Beifushu、キモトリプシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および1つまたはそれより多くの他の治療剤を含む薬学的組成物も本明細書中に提供される。その治療剤は、上記で特定された作用物質のクラスおよび上に記載された特定の作用物質のリストから選択され得る。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、眼への送達に適している。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、液体または懸濁液の組成物である。
【0104】
さらに、方法の態様において、本発明は、哺乳動物の疾患または障害を処置する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩および1つまたはそれより多くの他の治療剤を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0105】
それらの作用物質は、併用療法において使用されるとき、単一の薬学的組成物として製剤化されてもよいし、それらの作用物質は、同時にまたは別々の時点において同じまたは異なる投与経路によって投与される別個の組成物として提供されてもよい。そのような組成物は、別々に包装されてもよいし、キットとして一緒に包装されてもよい。キットの中の2つまたはそれより多くの治療剤は、同じ投与経路によって投与されてもよいし、異なる投与経路によって投与されてもよい。
【実施例】
【0106】
以下の合成および生物学の実施例は、本発明を例証するために提供されるのであって、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。下記の実施例では、以下の省略形は、別段示されない限り、以下の意味を有する。下記に定義されない省略形は、それらの一般に認められている意味を有する。
ACN =アセトニトリル
Boc =tert-ブトキシカルボニル
DCC =ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA =N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAc =ジメチルアセトアミド
DMF =N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO =ジメチルスルホキシド
EtOAc =酢酸エチル
HATU =N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
LDA =リチウムジイソプロピルアミド
min =分
MTBE =メチルtert-ブチルエーテル
NBS =N-ブロモスクシンイミド
NMP =N-メチル-2-ピロリドン
RT =室温
THF =テトラヒドロフラン
ビス(ピナコラト)ジボロン =4,4,5,5,4’,4’,5’,5’-オクタメチル-[2,2’]ビ[[1,3,2]ジオキサボロラニル]
Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2 =ジクロロメタンとのジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン)-ジパラジウム(II)錯体
【0107】
試薬および溶媒は、商業的供給業者(Aldrich、Fluka、Sigmaなど)から購入し、さらに精製せずに使用した。反応混合物の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(anal.HPLC)および質量分析法によってモニターした。反応混合物は、各反応において具体的に記載されるように後処理した;通常、それらは、抽出および他の精製方法(例えば、温度依存性および溶媒依存性の結晶化および沈殿)によって精製した。さらに、反応混合物は、代表的にはC18またはBDSカラムパッキングおよび従来の溶離剤を用いる、カラムクロマトグラフィーまたは分取HPLCによって通例のように精製した。代表的な分取HPLC条件は、下記に記載される。
【0108】
反応生成物の特徴付けは、質量分析法および1H-NMR分光法によって通例のように行った。NMR解析の場合、サンプルを重水素化溶媒(例えば、CD3OD、CDCl3またはd6-DMSO)に溶解させ、標準的な観測条件下でVarian Gemini 2000装置(400MHz)を用いて1H-NMRスペクトルを取得した。化合物の質量分析同定は、自動精製システムに連結された、Applied Biosystems(Foster City,CA)のモデルAPI 150 EX装置またはWaters(Milford,MA)の3100装置を用いるエレクトロスプレーイオン化法(ESMS)によって行った。
分取HPLC条件
カラム:C18、5μm.21.2×150mmまたはC18、5μm 21×250またはC14、5μm 21×150mm
カラム温度:室温
流速:20.0mL/分
移動相:A=水+0.05%TFA
B=ACN+0.05%TFA、
注入量:(100~1500μL)
検出器の波長:214nm
【0109】
粗化合物を約50mg/mLで1:1水:酢酸に溶解させた。4分間の分析スケールの試験ランを、2.1×50mm C18カラムを用いて行った後、15または20分間の分取スケールのランを、分析スケールの試験ランの%B保持に基づくグラジエントを伴う100μLの注入を用いて行った。正確なグラジエントは、サンプル依存的であった。近くを流れる(close running)不純物を含むサンプルは、最善の分離のために21×250mm C18カラムおよび/または21×150mm C14カラムを用いて調べた。所望の生成物を含む画分を質量分析によって特定した。
調製法1:2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1-5)
【化5】
(a)2-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-1-フルオロベンゼン(1-2)
【0110】
2つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。5-ブロモ-2-フルオロフェノール(1-1)(850g,4.5mol)、臭化ベンジル(837g,4.9mol)および炭酸カリウム(923g,6.7mol)を含むACN(5L)の混合物を、20℃で12時間撹拌した。その反応物を合わせ、濃縮し、水(8L)で希釈し、EtOAcで抽出した(3×3L)。有機層を分離し、ブライン(3L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカゲルパッド(3:1石油エーテル:EtOAcで溶出)に通して精製して、表題中間体(1.83kg,73%収率)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.38-7.46(m, 5H), 7.15 (dd, J = 7.6, 2.0 Hz, 1H),6.98-7.15 (m, 1H), 5.12 (s, 2H).
(b)2-(ベンジルオキシ)-4-エチル-1-フルオロベンゼン(1-3)
【0111】
6つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。前の工程の生成物(200g,711mmol)を含むTHF(100mL)の溶液に、炭酸カリウム(197g,1.4mol)を加えた。その反応混合物に窒素を3回パージした後、Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2(11.6g,14.2mmol)を加えた。その反応混合物を0℃に冷却し、ジエチル亜鉛(1M,1.07L)を滴下して加え、その反応混合物を70℃で1時間撹拌した。その反応物を合わせ、20℃に冷却し、水(7L)にゆっくり注ぎ込んだ。その混合物に4M HCl水溶液をpH6になるまで加えた。有機層を分離し、水相をEtOAcで抽出した(3×2L)。合わせた有機層をブライン(5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルパッド(50:1石油エーテル:EtOAcで溶出))に通して精製して、表題中間体(900g,92%収率)を淡黄色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.29-7.43(m, 5H), 6.94-6.97 (m, 1H), 6.82 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.70 (m, 1H), 5.09(s, 2H), 2.52-2.58 (m, 2H), 1.17 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
(c)1-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-5-エチル-2-フルオロベンゼン(1-4)
【0112】
4つの反応を並行して行い、合わせた。2-(ベンジルオキシ)-4-エチル-1-フルオロベンゼン(1-3)(293g,1.3mol)を含むACN(1L)の溶液に、NBS(249g,1.4mol)を小分けにして20℃において加えた。その反応混合物を20℃で2時間撹拌した。その反応混合物を合わせ、濃縮した。残渣を水(5L)で希釈し、EtOAcで抽出した(2×5L)。有機相をブライン(4L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc100:1~10:1で溶出)によって精製して、表題中間体(1.4kg,89%収率)を淡黄色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ7.29-7.38 (m, 5H), 7.2 (d, J = 10.4 Hz, 1H),6.8 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.06 (s, 2H), 2.6 (q, J = 7.6 Hz, 2 H),1.1 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
(d)2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1-5)
【0113】
7つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。前の工程の生成物(200g,647mmol)を含むジオキサン(2L)の溶液に、酢酸カリウム(190g,1.9mol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(181g,712mmol)およびPd(dppf)Cl
2-CH
2Cl
2(10.6g,12.9mmol)を窒素下、20℃において加えた。その混合物を120℃で2時間撹拌した。その反応混合物を合わせ、濃縮し、水(5L)で希釈し、EtOAcで抽出した(3×4L)。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc1:0~5:1で溶出)によって精製して、表題化合物(1.35kg,84%収率)を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ7.33-7.51 (m, 6H), 6.82 (d, J = 7.6 Hz, 1H),5.17 (s, 2H), 2.85 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.33 (s, 12H), 1.15 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
調製法2:1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン(2)
【化6】
【0114】
ピリジン-3,4-ジアミン(400g,3.67mol)を含むACN(3L)の溶液に、臭化ベンジル(596g,3.49mol)を小分けにして0℃において加え、その反応混合物を30分間撹拌し、次いで、20℃で12時間撹拌し、濾過した。濾過ケークをACN(500mL)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物のHBr塩(600g,2.14mol,58%収率)を白色粉末として得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ7.83 (d, J= 5.6 Hz, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.32-7.40 (m, 5H), 6.76 (d, J = 6.8 Hz,1H), 5.28 (s, 2H).
調製法3:6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-カルボアルデヒド(3)
【化7】
(a)1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2,2-ジエトキシエタン-1-オン(3-1)
【0115】
9つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン(100g,518mmol)を含むTHF(700mL)の溶液を脱気し、窒素を3回パージした。次いで、2M LDA(311mL)を-70℃において加え、その反応混合物を窒素下、-70℃で0.5時間撹拌した。2,2-ジエトキシ酢酸エチル(96g,544mmol)を含むTHF(200mL)の溶液を窒素下、-70℃で滴下して加え、その反応混合物を1時間撹拌した。その反応物を合わせ、氷上の飽和塩化アンモニウム(10L)に小分けにして注ぎ込み、EtOAcで抽出した(3×3L)。有機層を分離し、ブライン(5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル EtOAc1:0~100:1で溶出)によって精製して、表題化合物(1.26kg,84%収率)を黄色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ7.12 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 5.15 (s, 1H), 3.61-3.7 (m, 4H), 1.2(t, J = 7.2 Hz, 6H).
(b)1-(4’-(ベンジルオキシ)-2’-エチル-3,5,5’-トリフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2,2-ジエトキシエタン-1-オン(3-2)
【0116】
5つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2,2-ジエトキシエタン-1-オン(3-1)(189g,586mmol)を含むエタノール(150mL)およびトルエン(1.5L)の混合物に、水(150mL)、炭酸ナトリウム(84.8g,800mmol)および2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1-5)(190g,533mmol)を20℃において加えた。その懸濁液を真空下で脱気し、窒素を数回パージした。Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2(13g,16mmol)を加え、その反応混合物に窒素を数回パージし、120℃で2時間撹拌した。その反応物を合わせ、20℃に冷却し、水(5L)に注ぎ込み、EtOAcで抽出した(3×4L)。合わせた有機層をブライン(5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc100:1~5:1で溶出)によって精製して、表題中間体(880g,70%収率)を黄色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.36-7.48 (m, 5H), 6.94-6.96 (m, 2H), 6.86-6.92 (m, 2H),5.29 (s, 1H), 5.19 (s, 2H), 3.67-3.77 (m, 4H), 2.52 (q, J = 7.6 Hz, 2H),1.25 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.07 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
(c)6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-3-(ジエトキシメチル)-4-フルオロ-1H-インダゾール(3-3)
【0117】
4つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。前の工程の生成物(220g,466mmol)を含むTHF(2L)の溶液に、ヒドラジン一水和物(47.6g,931mmol)を20℃において加えた。その反応混合物を100℃で12時間撹拌した。4つの反応物を合わせ、20℃に冷却し、濃縮した。残渣をEtOAc(5L)に溶解させ、0.1M HClで洗浄した(2×1.5L)。合わせた有機層をブライン(1.5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、表題中間体(900g,粗)を黄色ゴム状物として得て、それを次の工程で直接使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.36-7.48 (m, 5H), 6.94-6.96 (m, 2H), 6.86-6.92 (m, 2H),5.29 (s, 1H), 5.19 (s, 2H), 3.67-3.77 (m, 4H), 2.52 (q, J = 7.6 Hz, 2H),1.25 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.07 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
(d)6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-カルボアルデヒド(3)
【0118】
3つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。前の工程の生成物(300g,643mmol)を含むアセトン(1.5L)の溶液に、4M HCl(16mL)を20℃で滴下して加え、その反応混合物を20℃で0.17時間撹拌した。その反応物を合わせ、濃縮し、MTBE(1L)で希釈し、濾過した。濾過ケークをMTBEで洗浄し(2×300mL)、減圧下で乾燥させて、表題中間体(705g,粗)を黄色固体として得て、それを次の工程で直接使用した。C
23H
18F
2N
2O
2の(m/z):[M+H]
+計算値393.13、実測値393.1。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6)δ14.51 (s, 1H), 10.17 (d,J = 3.6 Hz, 1H), 7.50(d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.40-7.42 (m, 4H), 7.24 (d, J = 8.4Hz, 1H), 7.15 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H),5.25 (s, 2H), 2.52-2.53 (m, 2H), 1.03 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
調製法4:5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(4)
【化8】
【0119】
4つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。調製法3の生成物である6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-カルボアルデヒド(3)(172g,440mmol)を含むDMF(1.1L)の溶液に、重亜硫酸ナトリウム(68.6g,659mmol)および1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン(2)(136g,484mmol)を20℃において加え、その反応混合物を150℃で2時間撹拌した。4つの反応物を合わせ、その反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を水(10L)に注ぎ込み、濾過した。濾過ケークを減圧下で乾燥させて、表題中間体(990g,粗)を黄色固体として得て、それを精製せずに直接使用した。C
35H
27F
2N
5Oの(m/z):[M+H]
+計算値572.2、実測値572.3。
調製法5:5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(5)
【化9】
【0120】
3つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。調製法4の生成物である5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(4)(330g,577mmol)を含むメタノール(1.5L)およびTHF(1L)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウム(267g,6.9mol)を小分けにして20℃において加え、その反応混合物を20℃で24時間撹拌した。3つの反応物を合わせ、その反応混合物を水(10L)に加え、10分間撹拌し、濾過した。濾液をEtOAcで抽出し(2×5L)、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物をEtOAc(2L)で希釈し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケークをMTBEで洗浄して(3×200mL)、表題中間体(275g,28%収率)を淡黄色固体として得た。C
35H
31F
2N
5Oの(m/z):[M+H]
+計算値576.25、実測値576.3。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6)δ7.50-7.52 (m, 2H), 7.35-7.43 (m, 7H), 7.23-7.25 (m, 3H),7.15 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.25 (s,2H), 3.72 (s, 2H), 3.43 (br. s, 2H), 2.78 (br. s, 2H), 2.66 (br. s, 2H), 2.55(q, 2H), 1.04 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
調製法6:5-エチル-2-フルオロ-4-(4-フルオロ-3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(6)
【化10】
【0121】
5つの反応を並行して行い、後処理のために合わせた。調製法5の生成物である5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(5)(55g,95.5mmol)を含むTHF(500mL)およびメタノール(500mL)の混合物に、炭素担持パラジウム(15g,9.6mmol)および12M HCl水溶液(10mL)を加えた。その懸濁液を真空下で脱気し、水素を数回パージし、水素下(50psi)、50℃で12時間撹拌した。その反応物を合わせ、反応混合物を濾過した。濾液を真空下で濃縮して、表題中間体のHCl塩(150g,粗)をオフホワイトの固体として得た。C21H19F2N5Oの(m/z):[M+H]+計算値396.16、実測値396.2。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ7.43 (s, 1H), 7.07 (d, J = 11.6Hz, 1H), 6.97 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.8 Hz,1H), 4.57 (s, 2H), 3.74 (s, 2H), 3.24 (s, 2H), 2.55 (q, J= 7.6 Hz, 2H), 1.08 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0122】
実施例1:(1S,5R)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-イル(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-6,7-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-イル)メタノン(1)
【化11】
5-エチル-2-フルオロ-4-(4-フルオロ-3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(21.4mg,0.054mmol)(6)および(1s,5r)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-カルボン酸(24.6mg,0.108mmol)を含むDMF(0.5ml)の混合物に、HATU(45.3mg,0.119mmol)およびDIPEA(0.076ml,0.433mmol)を加え、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。その反応混合物に、MeOH(2.00ml)および水(0.500ml)を加え、次いで、水酸化リチウム(7.78mg,0.325mmol)を加え、その溶液を65℃で1時間撹拌した。次いで、その溶液を濃縮し、残渣にTFA(0.500ml)を加えた。得られた溶液を室温で30分間撹拌し、次いで、濃縮した。次いで、粗生成物を分取HPLC(0.1%TFAを含む5~65%アセトニトリル水溶液のグラジエント,Zorbax Bonus-RPカラム)によって精製して、表題化合物のTFA塩を得た(19.4mg,57%収率)。C
27H
26F
2N
6O
2の(m/z):[M+H]
+計算値505.18、実測値505.2。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6)δ 13.62 (s, 1H), 12.44 (s, 1H), 9.92 (s, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.03 (d,J = 11.9 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 4.59 (m,2H), 3.96 (m, 1H), 3.79 (m, 1H), 3.27 (m, 1H), 2.89 (m, 1H), 2.72 (m, 2H), 2.47(q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.06 (m, 2H), 1.92 (m, 1H), 1.30 (m, 2H), 1.00 (t, J =7.5, 3H)
調製法7:1-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-5-エチル-2-フルオロベンゼン
【化12】
(a)5-エチル-2-フルオロフェノール
【0123】
化合物5-ブロモ-2-フルオロフェノール(80g,419mmol)を含む乾燥テトラヒドロフラン(800mL)の混合物を脱気し、窒素を3回パージし、Pd(t-Bu3P)2(4.28g,8.38mmol)を加えた。その混合物にジエチル亜鉛(114g,921mmol)を25℃で滴下して加え、その反応混合物を窒素下、50℃で12時間撹拌し、氷水(1L)にゆっくり注ぎ込んだ。EtOAc(350mL)を加え、その反応混合物を20分間撹拌し、濾過した。濾過ケークをEtOAcで洗浄した(3×500mL)。合わせた有機層をブライン(600mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題中間体(85g,粗)を黄色油状物として得た。
(b)2-(ベンジルオキシ)-4-エチル-1-フルオロベンゼン
【0124】
前の工程の生成物(85g,606mmol)を含むACN(850mL)の溶液に、臭化ベンジル(124g,728mmol)およびK2CO3(126g,909mmol)を加えた。その反応混合物を25℃で12時間撹拌し、水(1L)に注ぎ込み、EtOAcで抽出した(4×500mL)。合わせた有機層をブライン(600mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題中間体(100g)を黄色油状物として得た。
(c)1-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-5-エチル-2-フルオロベンゼン
【0125】
前の工程の生成物(100g,434mmol)を含むACN(1.0L)の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(85g,477mmol)を少しずつ加えた。その反応混合物を25℃で5時間撹拌し、水(1.3L)に注ぎ込み、EtOAcで抽出した(3×500mL)。合わせた有機層をブライン(800mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(83g)を黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl
3, 400MHz) δ (ppm) 7.27-7.43 (m, 6H), 6.86 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 5.10 (s, 2H), 2.64 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.15 (t, J= 7.2 Hz, 1H).
調製法8:2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン
【化13】
【0126】
調製法7の化合物(83g,268mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(102g,402mmol)およびKOAc(79.0g,805mmol)を含むジオキサン(830mL)の混合物を脱気し、窒素を3回パージし、Pd(dppf)Cl
2(3.93g,5.37mmol)を加えた。その反応混合物を窒素下、120℃で4時間撹拌した。その混合物を25℃に冷却し、水(1L)に注ぎ込み、EtOAcで抽出した(3×500mL)。合わせた有機層をブライン(800mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。その生成物をメタノール(200mL)で洗浄し、濾過し、濾過ケークを乾燥させて、表題化合物(65g)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl
3,400 MHz) δ (ppm) 7.26-7.42 (m, 5H),6.74 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.08 (s, 2H), 2.76 (q, J = 7.2 Hz, 2H),1.25 (s, 12 H), 1.06 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
調製法9:1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン
【化14】
【0127】
ピリジン-3,4-ジアミン(200g,1.8mol)を含むACN(17.0L)の溶液に、臭化ベンジル(306g,1.79mol)を加え、その反応混合物を15℃で12時間撹拌し、濾過し、濾過ケークを真空下で乾燥させて、表題化合物(250g)を白色固体として得た。
1H NMR (d
6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm) 8.02 (dd, J =7.2,1.6 Hz, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.34-7.41 (m, 5H), 6.79 (d, J = 6.8 Hz, 1H),5.62 (s, 2H), 5.36 (s, 2H).
調製法10:5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【化15】
(a)6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル-カルボアルデヒド
【0128】
NaNO2(704g,10.2mol)を含む水(1L)の溶液を、6-ブロモ-1H-インドール(400g,2.0mol)を含むアセトン(7L)の溶液に10℃で滴下して加えた。その反応混合物を10℃で30分間撹拌し、内部温度を10~25℃に維持しつつ激しく撹拌しながら3M HCl水溶液(437mL)をゆっくり加えた。その溶液を20℃で3時間撹拌し、温度を35℃未満に維持しつつ、濃縮した。固体を濾過によって収集した。濾過ケークを1:2石油エーテル:MTBE(800mL)で洗浄した。固体を濾過によって収集し、真空下で乾燥させて、表題中間体(450g)を黒茶色固体として得た。1H NMR (CH3OD, 400 MHz) δ (ppm) 7.77 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.69 (s,1H), 7.22 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 5.70 (s, 1H).
(b)5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【0129】
6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル-カルボアルデヒド(150.0g,666mmol)および1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン(127.5g,639.9mmol)を含むDMF(750mL)の撹拌溶液に、NaHSO
3(83.2g,799.9mmol)を投入し、その反応混合物を140℃で6時間撹拌し、水(3.5L)に注ぎ込んだ。沈殿物を濾過し、水(1L)で洗浄して、表題化合物(180g)を黒茶色固体として得た。
1H NMR (d
6-DMSO,400 MHz) δ (ppm) 8.69 (s, 1H) 8.71 (d, J = 7.2 Hz, 1H) 8.37 (d, J= 8.4 Hz, 1H) 8.07 (d, J = 6.4 Hz, 1H) 7.97 (s, 1H) 7.38-7.43(m, 3H)7.50-7.54 (m, 4H) 5.87 (s, 2H).
調製法11:5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【化16】
【0130】
5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(23.0g,56.9mmol)を含むMeOH(200mL)およびTHF(1L)の溶液に、NaBH
4(12.9g,341.3mmol)を少しずつ加え、その反応混合物を50℃で2時間撹拌した。酢酸(10eq)を加え、その溶液を濃縮乾固し、シリカゲルクロマトグラフィー(30gシリカ,0.1%TEAを含む0~10%MeOH/DCM)によって精製して、表題化合物(6.0g)を得た。
1H NMR (d
6-DMSO,400 MHz) δ (ppm) 8.24 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.28 - 7.37 (m,7H), 3.74 (s, 2H), 3.48 (br.s, 2H), 2.80 (s, 2H), 2.66 (s, 2H).
調製法12:5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【化17】
(a)tert-ブチル5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1-(tert-ブトキシカルボニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-カルボキシレート
【0131】
2つの反応を並行して行った。5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(80g,196mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(128g,587.8mmol,135mL)およびTEA(79.3g,784mmol,109mL)を含むDCM(1L)の懸濁液を20℃で12時間撹拌した。その2つの反応懸濁液を合わせ、濃縮乾固し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc10:1~0:1)によって精製して、表題中間体(170.0g)を得た。
(b)5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【0132】
2つの反応を並行して行った。前の工程の生成物(85g,140mmol)および4M HClのMeOH溶液(400mL)を含むDCM(400mL)の溶液を25℃で12時間撹拌した。その反応混合物を合わせ、濃縮乾固し、撹拌しながらDCM(250mL)を加え、その反応混合物を30分間撹拌し、濾過した。濾過ケークをDCMで洗浄し(2×20mL)、乾燥させて、表題化合物(85g)をオフホワイトの固体として得た。
(c)5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【0133】
85個の反応を並行して行った。前の工程の生成物(1.0g,2.5mmol)、2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(873mg,2.5mmol)およびPd(PPh
3)
4(227mg,196.μmol)を、水(4mL)およびジオキサン(10mL)の混合物に溶解させた。その反応バイアルに窒素を2分間バブリングし、速やかにNa
2CO
3(779mg,7.4mmol)を窒素下で加えた。その反応混合物を130℃で1.5時間加熱した。85個の反応混合物を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣をDCM(500mL)に溶解させ、シリカゲルクロマトグラフィー(150gシリカ,DCM:THF(6:1~3:1)で溶出)によって精製して、化合物表題化合物(50g)をオフホワイトの固体として得た。
調製法13:5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール
【化18】
【0134】
5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(44.5g,79.8mmol)、Pd(OH)2/C(25g,2.7mmol,50%純度)およびTFA(44.5g,390mmol,28.9mL)を含むMeOH(500mL)の混合物を水素下(50Psi)で4時間撹拌し、濾過した。濾液にPd(OH)2/C(25g,2.7mmol,50%純度)を加え、得られた懸濁液を水素下(50Psi)、25℃で12時間撹拌した。その懸濁液を、5.5gスケールでの前の反応からの懸濁液と合わせ、濾過した。濾過ケークを20:1MeOH:TFAで洗浄した(2×200mL)。合わせた濾液を濃縮し、残渣に4M HClのMeOH溶液(200mL)を撹拌しながら加えた。得られた懸濁液を濃縮し、MeOH(80mL)でスラリー化し、30分間撹拌した。白色固体が沈殿した。その固体を濾過し、濾過ケークをMeOHで洗浄し(2×10mL)、真空下で乾燥させて、表題化合物のHCl塩(24.8g)をオフホワイトの固体として得た。C21H20FN5Oの(m/z):[M+H]+計算値378.17、実測値378.1。1H NMR (d6-DMSO,400 MHz) δ (ppm) 8.23 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.35 (d, J =11.2 Hz, 1H), 6.90 - 6.97 (m, 2H), 4.57 (s, 2H), 3.72 (t, J = 6.0Hz, 2H), 3.22 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.51 (q, J = 7.6 Hz,2H), 1.04 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0135】
実施例2:((1S,5R)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-イル)(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)メタノン C-1
【化19】
5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(4.0g,10.60mmol)、(1s,5r)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-カルボン酸(3.61g,15.90mmol)およびDIPEA(7.40ml,42.4mmol)をDMF(60ml)に溶解させ、次いで、HATU(8.06g,21.20mmol)を加え、その反応混合物を室温で24時間撹拌した。次いで、ヒドラジン(0.665ml,21.20mmol)を加えて、望まれない副産物を切断し、次いで、反応混合物を約20mLに濃縮した。次いで、この溶液を200mLの水に滴下して、生成物を析出させ、次いでそれを濾過によって収集し、真空下で乾燥させた。得られた固体をジオキサン(40ml)および水(8ml)に溶解させ、次いで塩酸,4Mのジオキサン溶液(40ml,160mmol)を加え、その反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、その溶液を凍結し、凍結乾燥し、得られた固体を分取HPLC(5~70%アセトニトリル/水のグラジエント,C18カラム)によって精製して、表題化合物のTFA塩を得た(2.69g,42%収率)。C
27H
27FN
6O
2の(m/z):[M+H]
+計算値487.55、実測値487.7。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6)δ 13.15 (s, 1H), 12.42 (s, 1H), 9.79 (s, 1H), 8.29 (d, J = 8.4 Hz,1H), 7.34 (s, 1H), 7.07 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 6.88(d, J = 9.1 Hz, 1H), 4.51 (m, 2H), 3.92 (m, 2H), 3.99 (m, 1H), 2.65 (m, 3H),2.47 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.89 (m, 1H), 1.72 (m, 2H), 0.98 (t, J = 7.5 Hz, 3H),0.89 (m, 2H).
【0136】
生物学的アッセイ
化合物1を、以下の生物学的アッセイのうちの1つまたは複数のアッセイにおいて特徴付けた。
【0137】
アッセイ1:生化学的JAKキナーゼアッセイ
4つのLanthaScreen JAK生化学的アッセイのパネル(JAK1、2、3およびTyk2)を、通常のキナーゼ反応緩衝液(50mM HEPES,pH7.5、0.01%Brij-35、10mM MgCl2および1mM EGTA)に含めた。組換えGSTタグ化JAK酵素およびGFPタグ化STAT1ペプチド基質をLife
Technologiesから入手した。
【0138】
段階希釈した化合物を、それらの4つのJAK酵素の各々および基質とともに、白色384ウェルマイクロプレート(Corning)において周囲温度で1時間プレインキュベートした。続いて、ATPを加えて、1%DMSOを含む10μLの総体積でキナーゼ反応を開始した。JAK1、2、3およびTyk2に対する最終的な酵素濃度は、それぞれ4.2nM、0.1nM、1nMおよび0.25nMであり;使用された対応するKm
ATP濃度は、25μM、3μM、1.6μMおよび10μMであり;基質濃度は、4つすべてのアッセイについて200nMである。キナーゼ反応を周囲温度で1時間進めた後、TR-FRET希釈緩衝液(Life Technologies)中のEDTA(最終濃度10mM)およびTb-抗pSTAT1(pTyr701)抗体(Life Technologies,最終濃度2nM)の10μL調製物を加えた。そのプレートを周囲温度で1時間インキュベートした後、EnVisionリーダー(Perkin Elmer)において読み出した。発光シグナル比(Emission ratio signals)(520nm/495nm)を記録し、それを用いて、DMSOに基づくパーセント阻害値およびバックグラウンドコントロールを算出した。
【0139】
用量反応解析の場合、パーセント阻害のデータを化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。結果は、pIC50(IC50の対数に負号をつけたもの)として表され、続いてCheng-Prusoff式を用いてpKi(解離定数Kiの対数に負号をつけたもの)に変換した。
【0140】
【0141】
アッセイ2:Tall-1T細胞におけるIL-2で刺激されるpSTAT5の阻害
インターロイキン-2(IL-2)で刺激されるSTAT5リン酸化の阻害に対する試験化合物の効力を、AlphaLisaを用いてTall-1ヒトT細胞株(DSMZ)において測定した。IL-2は、JAK1/3を介してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK1/3の細胞効力の尺度を提供する。
【0142】
リン酸化されたSTAT5を、AlphaLISA SureFire Ultra pSTAT5(Tyr694/699)キット(PerkinElmer)によって測定した。Tall-1細胞株由来のヒトT細胞を、37℃、5%CO2加湿恒温器内において、15%熱失活ウシ胎児血清(FBS,Life Technologies)、2mM Glutamax(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)および1×Pen/Strep(Life Technologies)が補充されたRPMI(Life Technologies)中で培養した。化合物をDMSOで段階希釈し、空のウェルに音響学的に分注した。アッセイ培地(10%FBS(ATCC)が補充されたフェノールレッドフリーDMEM(Life Technologies))を分注し(4μL/ウェル)、プレートを900rpmで10分間振盪した。細胞を45,000細胞/ウェルでアッセイ培地(4μL/ウェル)中に播種し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした後、予め加温したアッセイ培地(4μL)中のIL-2(R&D Systems;最終濃度300ng/mL)を30分間加えた。サイトカイン刺激の後、細胞を、1×PhosStopおよびCompleteタブレット(Roche)を含む6ulの3×AlphaLisa溶解緩衝液(PerkinElmer)で溶解させた。その溶解産物を900rpm、室温(RT)で10分間振盪した。リン酸化されたSTAT5をpSTAT5 AlphaLisaキット(PerkinElmer)によって測定した。調製されたばかりのアクセプタービーズ混合物を、緑フィルターをかけた100ルクス未満の光の下で溶解産物(5μL)上に分注した。プレートを900rpmで2分間振盪し、手短に遠心し、RTで2時間、暗所にてインキュベートした。緑フィルターをかけた100ルクス未満の光の下でドナービーズを分注した(5μL)。プレートを900rpmで2分間振盪し、手短に遠心し、RTで一晩、暗所にてインキュベートした。緑フィルターをかけた100ルクス未満の光の下でEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)を使用し、689nmの励起および570nmの発光を用いて、ルミネセンスを測定した。
【0143】
IL-2に応答した試験化合物の阻害性効力を測定するために、pSTAT5に結合したビーズの平均発光強度をヒトT細胞株において測定した。化合物濃度に対するシグナル強度の阻害曲線の解析から、IC50値を決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値(平均値±標準偏差)として表される。化合物1は、このアッセイにおいて7.8というpIC50値を示した。
【0144】
アッセイ3:細胞JAK効力アッセイ:BEAS-2B細胞におけるIL-13によって刺激されるpSTAT6の阻害
BEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)におけるインターロイキン-13(IL-13,R&D Systems)によって誘導されるSTAT6リン酸化を測定することによって、AlphaScreenJAKI細胞効力アッセイを行った。抗STAT6抗体(Cell Signaling Technologies)をAlphaScreenアクセプタービーズ(Perkin Elmer)に結合体化し、抗pSTAT6(pTyr641)抗体(Cell Signaling Technologies)を、EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin(Thermo Scientific)を用いてビオチン化した。
【0145】
BEAS-2B細胞を、37℃の5%CO2加湿恒温器内にて、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)および2mM GlutaMAX(Life Technologies)が補充された50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中で生育した。
アッセイの1日目に、細胞を、25μLの培地が入った、ポリ-D-リジンでコーティングされた白色384ウェルプレート(Corning)に7,500細胞/ウェルの密度で播種し、恒温器内で一晩接着させた。アッセイの2日目に、培地を除去し、試験化合物の用量反応物を含む12μLのアッセイ緩衝液(ハンクス平衡塩類溶液/HBSS、25mM HEPESおよび1mg/mlウシ血清アルブミン/BSA)と交換した。化合物をDMSOで段階希釈し、次いで、最終DMSO濃度が0.1%になるようにさらに培地で1000倍希釈した。細胞を37℃で1時間、試験化合物とインキュベートした後、刺激のために、予め加温した12μLのIL-13(アッセイ緩衝液中80ng/ml)を加えた。37℃で30分間インキュベートした後、アッセイ緩衝液(化合物およびIL-13を含む)を除去し、10μLの細胞溶解緩衝液(25mM HEPES、0.1%SDS、1%NP-40、5mM MgCl2、1.3mM EDTA、1mM EGTA、ならびにRoche Diagnostics製のComplete Ultraミニプロテアーゼ阻害剤およびPhosSTOPによる補充)。プレートを周囲温度で30分間振盪した後、検出試薬を加えた。まず、ビオチン-抗pSTAT6および抗STAT6結合体化アクセプタービーズの混合物を加え、周囲温度で2時間インキュベートした後、ストレプトアビジン結合体化ドナービーズ(Perkin Elmer)を加えた。最低2時間のインキュベーションの後、アッセイプレートをEnVisionプレートリーダーにおいて読み出した。AlphaScreenルミネセンスシグナルを記録し、それを用いて、DMSOに基づくパーセント阻害値およびバックグラウンドコントロールを算出した。
【0146】
用量反応解析の場合、パーセント阻害のデータを化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェアを用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。結果は、IC50値の対数に負号をつけたものであるpIC50としても表されることがある。化合物1は、このアッセイにおいて8というpIC50値を示した。
【0147】
アッセイ4:細胞JAK効力アッセイ:ヒトPBMCにおけるIL-2/抗CD3によって刺激されるIFNγの阻害
インターロイキン-2(IL-2)/抗CD3で刺激されるインターフェロンガンマ(IFNγ)の阻害に対する試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核球(PBMC)において測定した。IL-2は、JAKを介してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0148】
(1)ヒト末梢血単核球(PBMC)を、フィコール勾配を用いて健康ドナーのヒト全血から単離した。細胞を、37℃、5%CO2加湿恒温器内において、10%熱失活ウシ胎児血清(FBS,Life Technologies)、2mM Glutamax(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)および1×Pen/Strep(Life Technologies)が補充されたRPMI(Life Technologies)中で培養した。細胞を、200,000細胞/ウェルで培地(50μL)中に播種し、1時間培養した。化合物をDMSOで段階希釈し、次いで、培地でさらに500倍希釈した(2×最終アッセイ濃度になるように)。試験化合物の希釈物(100μL/ウェル)を細胞に加え、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした後、予め加温したアッセイ培地(50μL)中のIL-2(R&D Systems;最終濃度100ng/mL)および抗CD3(BD Biosciences;最終濃度1μg/mL)を24時間加えた。
【0149】
(2)サイトカイン刺激の後、細胞を500gで5分間遠心分離し、上清を除去し、-80℃で凍結した。IL-2/抗CD3に応答した試験化合物の阻害性効力を測定するために、上清のIFNγ濃度をELISA(R&D Systems)によって測定した。化合物濃度に対するIFNγ濃度の阻害曲線の解析から、IC50値を決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値として表される。化合物1は、このアッセイにおいて6.7というpIC50値を示した。
【0150】
アッセイ5:細胞JAK効力アッセイ:CD4+T細胞におけるIL-2によって刺激されるpSTAT5の阻害
インターロイキン-2(IL-2)/抗CD3によって刺激されるSTAT5リン酸化の阻害に対する試験化合物の効力を、フローサイトメトリーを用いて、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核球(PBMC)中のCD4陽性(CD4+)T細胞において測定した。IL-2は、JAKを介してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0151】
CD4+T細胞を、フィコエリトロビリン(PE)結合体化抗CD4抗体(Clone RPA-T4,BD Biosciences)を用いて特定し、Alexa Fluor647結合体化抗pSTAT5抗体(pY694,Clone 47,BD Biosciences)を用いて、STAT5リン酸化を検出した。
【0152】
(1)IL-2/抗CD3によるサイトカイン刺激を24時間の代わりに30分間行ったこと以外は、アッセイ4のパラグラフ(1)のプロトコルに従った。
【0153】
(2)サイトカイン刺激の後、細胞を、予め加温した固定液(200μL;BD Biosciences)で37℃、5%CO2において10分間固定し、DPBS緩衝液(1mL,Life Technologies)で2回洗浄し、氷冷PermBufferIII(1000μL,BD Biosciences)に4℃で30分間再度懸濁させた。細胞を2%FBSのDPBS溶液(FACS緩衝液)で2回洗浄し、次いで、抗CD4 PE(1:50希釈)および抗CD3抗CD3Alexa Fluor647(1:5希釈)を含むFACS緩衝液(100μL)に室温において60分間、暗所にて再度懸濁させた。インキュベーションの後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した後、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて解析した。IL-2/抗CD3に応答した試験化合物の阻害性効力を測定するために、pSTAT5の蛍光強度中央値(MFI)をCD4+T細胞において測定した。化合物濃度に対するMFIの阻害曲線の解析から、IC50値を決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値として表される。化合物1は、このアッセイにおいて7.7というpIC50値を示した。
【0154】
アッセイ6:細胞JAK効力アッセイ:ヒトPBMCにおけるIL-6で刺激されるCCL2(MCP-1)の阻害
インターロイキン-6(IL-6)で刺激されるCCL2(MCP-1)産生の阻害に対する試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核球(PBMC)において測定した。IL-6は、JAKを介してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の遠位尺度(distal measure)を提供する。
【0155】
(1)試験化合物とのインキュベーションまでは、アッセイ4のパラグラフ(1)のプロトコルに従った。本アッセイでは、試験化合物をウェルに加え、インキュベートした後、予め加温したアッセイ培地(50μL)中のIL-6(R&D Systems;最終濃度10ng/ml)を加えた。
【0156】
(2)48時間のサイトカイン刺激の後、細胞を500gで5分間遠心分離し、上清を除去し、-80℃で凍結した。IL-6に応答した試験化合物の阻害性効力を測定するために、上清のCCL2(MCP-1)濃度をELISA(R&D Systems)によって測定した。化合物濃度に対するCCL2/MCP-1濃度の阻害曲線の解析から、IC50値を決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値として表される。化合物1は、このアッセイにおいて6.5というpIC50値を示した。
【0157】
アッセイ7:薬力学的アッセイ:ラットにおけるIL6によって誘導されるpSTAT3の阻害
試験化合物の単回の硝子体内投与がIL-6によって誘導されるpSTAT3を阻害する能力をラット網膜/脈絡膜ホモジネートにおいて測定した。
【0158】
10mg/mLという標的濃度を達成するように化合物1を1%HPMC E5+15%HPβCD,pH7に溶解することによって、溶液製剤を調製した。雌Lewisラットに、ビヒクル、ビヒクル+ラットIL-6(Peprotech;0.5μg)、またはIL-6+化合物の組み合わせ(0.5μgのIL-6および45μgの化合物1)を硝子体内(IVT)投与した(片眼につき5μL)。IVT注射の1時間後に、眼組織を解剖した。網膜/脈絡膜組織をホモジナイズし、AlphaLisa(PerkinElmer)を用いてpSTAT3レベルを測定した。IL-6によって誘導されるpSTAT3のパーセント阻害を、ビヒクル群およびIL-6群と比較して計算した。
【0159】
45μg用量の化合物1は、網膜/脈絡膜ホモジネートにおいて、IL-6によって誘導されるpSTAT3を84%阻害した。
【0160】
アッセイ8:マウスの肺および血漿の薬物動態
血漿および肺における化合物1の濃度ならびにそれらの比を以下の様式で測定した。Charles River Laboratoriesから入手したBALB/cマウスをこのアッセイに使用した。化合物1を、20%プロピレングリコールを含むクエン酸緩衝液(pH4)中に、0.324mg/mLの濃度で、溶液として製剤化した。50μLのこの溶液製剤を経口吸引によってマウスの気管に導入した。投与後の様々な時点(0.167、2、6時間後)において、血液サンプルを心臓穿刺によって取り出し、そのままの肺をマウスから切除した。血液サンプルをおよそ12,000rpm、4℃で4分間遠心分離して(Eppendorf遠心機,5804R)、血漿を収集した。肺をパッドで乾燥させ(padded dry)、計量し、0.6mLの滅菌水中でホモジナイズした。血漿および肺における化合物1の濃度を、試験マトリクスにおける検量線に作成された分析標準に対するLC-MS解析によって決定した。43.5μg hr/gという肺AUC(0~6時間)によって、肺での持続的な曝露が見出された。肺対血漿比を、μg hr/gを単位とする肺AUCとμg hr/mLを単位とする血漿AUCの比として測定した(ここで、AUCは、時間に対する試験化合物濃度の曲線下面積として慣例的に定義される)。肺AUCと血漿AUCとの比は、59.6であったことから、血漿と比べて肺の曝露量が多かったことが強調される。
【0161】
アッセイ9:カイノームスクリーニングおよびGINI係数
化合物1およびC-1を、それらの選択性プロファイルを評価するために、他のキナーゼに対してスクリーニングした。
【0162】
キナーゼタグ化T7ファージ株を、BL21株由来の大腸菌宿主において24ウェルブロックにて並行して生育した。大腸菌を対数期まで生育し、凍結ストックからのT7ファージに感染させ(感染効率=0.4)、溶解するまで、振盪しながら32℃でインキュベートした(90~150分)。溶解産物を遠心分離し(6,000×g)、濾過して(0.2μm)、細胞残屑を除去した。残っているキナーゼをHEK-293細胞において産生させ、続いて、qPCR検出のためにDNAでタグ化した。
【0163】
ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズを室温で30分間、ビオチン化小分子リガンドで処理して、キナーゼアッセイ用の親和性樹脂を生成した。リガンド結合されたビーズを過剰なビオチンでブロッキングし、ブロッキング緩衝液(SeaBlock(Pierce)、1%BSA、0.05%Tween20、1mM DTT)で洗浄して、未結合のリガンドを除去し、非特異的ファージ結合を減少させた。キナーゼ、リガンド結合された親和性ビーズおよび試験化合物を1×結合緩衝液(20%SeaBlock、0.17×PBS、0.05%Tween20、6mM DTT)中で合わせることによって、結合反応物をアセンブルした。試験化合物を100%DMSO中に40×ストックとして調製し、アッセイに直接希釈した。すべての反応を、ポリプロピレン384ウェルプレートにおいて0.04mlの最終体積で行った。アッセイプレートを振盪しながら室温で1時間インキュベートし、親和性ビーズを洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で洗浄した。次いで、それらのビーズを溶出緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20、0.5μM非ビオチン化親和性リガンド)に再度懸濁させ、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。溶出物中のキナーゼ濃度をqPCRによって測定した。
【0164】
化合物を1μMでスクリーニングし、表2および3における主要なスクリーニング結合相互作用の結果は、「%阻害」(=100-((試験化合物のシグナル-ポジティブコントロールのシグナル)/((ネガティブコントロールのシグナル)-(ポジティブコントロールのシグナル))×100)として報告されており、ここで、ネガティブコントロールは、DMSOであり、ポジティブコントロールは、コントロール化合物である。
【表2】
【表3】
【0165】
化合物1は、化合物C-1よりもEPHB6、KIT、PAK4、SRC、CDK7およびCDK9に対して有意に低い結合阻害を示すことが見出された。化合物1は、他のいくつかのキナーゼに対しても低い結合阻害を有した。
【0166】
化合物1とC-1の両方を35個の異なるキナーゼに対してスクリーニングした。両化合物に対してGini係数を測定した。化合物1は、0.60というGINI係数を有し、化合物C-1は、0.46というGINI係数を有した。Gini係数は、キナーゼのパネルに対する化合物の選択性を表すために使用される(Graczyk,J.Med.Chem.,2007,50,5773-5779)。より高い数値は、より選択的な化合物に対応する。
【0167】
化合物1と化合物C-1との間の唯一の構造的差異は、コア上のフルオロ基の存在である。この構造的差異は、化合物のカイノーム選択性に対して重要な影響を及ぼすことが示された。
【0168】
アッセイ10:細胞生存度アッセイ
CellTiter-Glo発光細胞生存能/細胞傷害性アッセイを、通常の生育条件下のBEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)において行った。
【0169】
細胞を、37℃の5%CO2加湿恒温器内にて、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)および2mM GlutaMAX(Life Technologies)が補充された50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中で生育した。アッセイの1日目に、細胞を、25μLの培地が入った、白色384ウェル組織培養プレート(Corning)に500細胞/ウェルの密度で播種し、恒温器内で一晩接着させた。アッセイの2日目に、試験化合物の用量反応物を含む5μLの培地を加え、37℃で48時間インキュベートした。その後、30μlのCellTiter-Glo検出液(Promega)を加え、オービタルシェーカー上で5分間混合し、さらに10分間インキュベートした後、EnVisionリーダーにおいて読み出した。ルミネセンスシグナルを記録し、パーセントDMSOコントロール値を算出した。
【0170】
用量反応解析の場合、パーセントDMSOコントロールデータを化合物の濃度に対してプロットして、各データポイントをつなぐ線によって用量反応曲線を作成した。各曲線が15%阻害閾値を横断する濃度をCC15と定義する。
【0171】
このアッセイにおいてより高いCC15値を示す試験化合物は、細胞傷害性を引き起こす可能性が低いと予想される。
【0172】
化合物1は、<5というpCC15(>10μMというCC15に対応する)を示したのに対して、化合物C-1は、5.8というpCC15(1.58μMというCC15に対応する)を示した。ゆえに、このアッセイに基づくと、化合物1は、細胞傷害性を引き起こす可能性が化合物C-1よりも有意に低い。
【0173】
化合物1と化合物C-1との間の唯一の構造的差異は、コア上のフルオロ基の存在である。この構造的差異は、化合物の細胞傷害性に対して重要な影響を及ぼすことが示された。
【0174】
アッセイ10:細胞JAK効力アッセイ:初代ヒト網膜毛細血管内皮細胞におけるIL-6のトランスシグナル伝達によって刺激されるp-STAT3の阻害
IL-6のトランスシグナル伝達(IL6+sIL6Rα)によって誘導されるSTAT3リン酸化の阻害に対する試験化合物の細胞効力を、初代ヒト網膜毛細血管内皮細胞(HRMEC)において測定した。IL-6のトランスシグナル伝達は、細胞内でJAK酵素と結合するIL-6レセプターベータ(gp130)によって媒介される。gp130の会合および二量体化の後、JAKは、活性化され、直接、STAT3をリン酸化する。したがって、このアッセイは、JAKの細胞効力の尺度を提供する。HRMEC(Cell Systems,Kirkland WA)を、Attachment FactorTM(Cell Systems,Kirkland WA)でコーティングされた、組織培養処理済み滅菌平底96ウェルアッセイプレートに1ウェルあたり1×104細胞の密度でプレーティングした。HRMEC培養物を、37℃、95%湿度、5%CO2において、10%ウシ胎児血清、Culture BoostTM成長因子およびBacOff(登録商標)抗生物質(Cell Systems,Kirkland WA)が補充された培養液中で3日間生育した。試験化合物をDMSOで段階希釈し、次いで、完全培地中に1.11×最終アッセイ濃度で調製した。細胞を90μLの1.11×試験化合物と37℃で1時間インキュベートした後、予め加温したアッセイ培地中の10μLの10×IL-6/sIL6Rα(PeproTech,Inc.;最終濃度500pM IL-6、5nM sIL6Rα)を30分間加えた。刺激の後、上清を除去し、細胞材料を、ホスファターゼ阻害剤(PhosSTOPTM,Roche)を含む50μLの溶解緩衝液(AlphaLISA(登録商標)SureFire(登録商標)UltraTMアッセイキット,PerkinElmer)中に収集し、解析するまで-80℃で保存した。試験化合物の阻害性効力を測定するために、p-STAT3のレベルを、AlphaLISA(登録商標)SureFire(登録商標)UltraTM p-STAT3(Tyr705)アッセイキット(PerkinElmer)を製造者の指示に従って使用して測定した。IC50値を、試験化合物濃度に対する%p-STAT3アルファシグナルの阻害曲線から決定した(カーブフィッティングは、GraphPad Prism7.0を用いて行った)。データは、pIC50(負のlog10(試験化合物濃度))として表される。化合物1は、3つの独立した実験において6.3±0.1というpIC50を示した。
【0175】
本発明は、その特定の態様または実施形態を参照して説明してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得、等価物で置換され得ることが当業者によって理解される。さらに、適用される特許法および規則によって認められる限りにおいて、本明細書に引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、各文書が個別に参照により本明細書中に援用されるのと同程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】