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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】初期耐水性を有するコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20220107BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20220107BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220107BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220107BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220107BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20220107BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D7/40
C09D7/61
C09D183/04
C09D133/14
C09D133/02
C08G77/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523352
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019059380
(87)【国際公開番号】W WO2020092895
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/754,725
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】カウジーノ,ポーラ,レネ
(72)【発明者】
【氏名】シーバー,マイケル,ジェイムス
【テーマコード(参考)】
4J038
4J246
【Fターム(参考)】
4J038CF021
4J038CG001
4J038CG031
4J038CH121
4J038CH151
4J038CJ031
4J038DF012
4J038DL051
4J038GA06
4J038GA07
4J038HA216
4J038HA436
4J038HA446
4J038HA536
4J038HA556
4J038JA55
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA03
4J038NA17
4J038PA06
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
4J246AA03
4J246BA120
4J246BA12X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA130
4J246CA13X
4J246CA680
4J246CA68X
4J246FA071
4J246FA131
4J246FD01
4J246FE26
4J246FE32
4J246GA06
4J246GC17
4J246GC46
4J246GD08
4J246HA22
4J246HA56
(57)【要約】
コーティング組成物が本明細書に示され、記載されている。コーティング組成物は、少なくとも1つの活性水素を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ酸粒子状フィラー(e)、および水(f)、任意にて1つまたは複数の添加剤を含み、ここでエポキシシランオリゴマー組成物は、5から15重量パーセントのモノマー、5から20重量パーセントの二量体、5から20重量パーセントの三量体、および45から85重量パーセントのポリオリゴマーの成分を含む。コーティング組成物は、コーティングが完全に硬化する前に水にさらされた場合にコーティングの欠陥が最小限に抑えられるように、初期耐水性を示す水性コーティング組成物を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー;
(b)エポキシシランオリゴマー組成物であって、
(i)約5から約15重量パーセントの量の、式(I)の構造を有するモノマー:
(Z(RO)3-2aSi-R (I)
(ii)5から20重量パーセントの量の、式(II)の構造を有する二量体:
(Z(RO)2-2b(R)Si-O-Si(R)(OR2-2c(Z (II);
(iii)約5から約20重量パーセントの量の、直鎖状構造(III)または環状構造(IV)を有する少なくとも1つの三量体:
【化1】

【化2】

ここで三量体(iii)の総量は、式(III)の直鎖状三量体および/または式(IV)の環状三量体の重量の合計であり、および
(iv)約45から約85重量パーセントの量の、式(V)の構造を有する少なくとも1つのポリオリゴマー:
【化3】

ここでポリオリゴマー(iv)の総量は、式(V)の構造を有する各成分の重量の合計であり、を含むエポキシシランオリゴマー組成物、
ここで
の各存在は、独立して二価の基-ORO-であり、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、但し
(i)2つの酸素原子はR中の2つの異なる炭素原子に結合しており、そして
(ii)各酸素原子の開放原子価が、環状1,3-ジオキサ-2-シラ-シクロアルキル基を形成するよう同じSi原子に結合している、という条件であり、
の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、またはRが前記のとおりである-OROH基であり、
の各存在は、以下であり
【化4】

の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、Rが前記のとおりである-OROH基、または以下であり、
【化5】

ここでRの各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、Rが前記のとおりである-OROH基、または以下であり、
【化6】

そして下付き文字a、b、c、d、e、f、g、h、i、m、およびnは整数であり、ここでa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは独立して0または1であり、mは0から5であり、そしてnは2から15であり、そしてここで重量パーセントは、成分(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の合計の総重量に基づいている、
(c)乳化剤;
(d)酸化チタン粒子;
(e)ケイ質粒子状フィラー;および
(f)水、
を含む、水性コーティング組成物。
【請求項2】
活性水素を含む官能基は、カルボキシル基(-C(=O)OH)またはヒドロキシル基(-OH)である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
活性水素を含む官能基は、塩形態-C(=O)Oに中和されるカルボキシル基であり、ここでMはNa、K、またはアンモニウムイオンである、請求項2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
カルボキシル基は、電位差滴定法によって決定される、約1から約780の酸価を有するのに十分な量である、請求項2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、純粋なアクリル、スチレンアクリル、ビニルアクリルおよびアクリル化エチレンビニルアセテートコポリマーからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、乳化重合によって調製されてなる、請求項5に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
純粋なアクリルは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製されてなり、スチレンアクリルは、スチレンとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルとをモノマーとして使用して調製されてなり、ビニルアクリルは、ビニルアセテートとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製されてなり、そしてアクリル化エチレンビニルアセテートコポリマーは、エチレン、ビニルアセテートとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製されてなる、請求項6に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)および水(f)の重量の合計に基づいて、約5から約60重量%の量である、請求項1から7のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、および1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチルからなる群から選択され;Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、および1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチルからなる群から選択され;Rは、エチレン、プロピレン、および2-メチルプロピレンからなる群から選択され;そしてRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチルおよび1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル、(グリシドキシプロピル)ビス(2-メチル-3-ヒドロキシプロポキシ)シリル、および[(グリシドキシプロピル)ジメトキシシリルオキシ]-(グリシドキシプロピル)メトキシシリルからなる群から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
はメチルまたはエチルであり、Rはメチルまたはエチルであり;Rはメチル、エチル、(グリシドキシプロピル)ジメトキシシリル、または(グリシドキシプロピル)ジエトキシシリル)であり;a、b、c、d、e、f、g、h、およびiは0である、請求項1から8のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、約500から約2500の重量平均分子量を有する、請求項1から10のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項12】
エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、0.5重量パーセントを超えて約5重量パーセントまでの量である、請求項1から11のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項13】
乳化剤(c)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸塩、アルキルサルフェートエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、アルキルホスフェート塩、アルキルアリルサルフェートエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルホスフェートエステル塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、およびジ(長鎖アルキル)ジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される界面活性剤である、請求項1から12のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項14】
乳化剤(c)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、約1.0重量パーセントから約15重量パーセントの量である、請求項1から13のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項15】
酸化チタン粒子は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づいて、約0.5重量パーセントから約50重量パーセントの量で存在する、請求項1から14のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項16】
ケイ質粒子状フィラーは、含水カオリン、ムライト、パイロフィライト、藍晶石、霞石閃石、粘土、珪線石、シリカ、およびタルクからなる群から選択される、請求項1から15のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項17】
ケイ質粒子状フィラー(e)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づいて、約0.05から約25重量パーセントの量である、請求項1から16のいずれかに記載の水性コーティング組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の水性コーティング組成物を基材の表面に適用し、そして水性コーティング組成物を乾燥させてコーティングを形成することを含む、基材をコーティングする方法。
【請求項19】
水性コーティング組成物は、(A)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、水(f)、および1つまたは複数の任意の添加剤含むストック水性コーティング組成物を提供すること、および(B)エポキシシランオリゴマー組成物(b)をストック水性コーティング組成物に加えることにより形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップの水性コーティング組成物は、水性コーティング組成物を基材に適用する前に、約50℃で14日間熱エージングされる、請求項18または19に記載の基材をコーティングする方法。
【請求項21】
基材に適用して乾燥させた後の水性コーティング組成物は、10から40グロスユニット(GU)の間の60度光沢度を有する、請求項18から20のいずれかに記載の基材をコーティングする方法。
【請求項22】
(A)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、水(f)、および1つまたは複数の任意の添加剤を含むストック水性コーティング組成物を提供すること、
(B)エポキシシランオリゴマー組成物をストック水性コーティング組成物に添加して水性コーティング組成物を形成すること、および
(C)(b)からの組成物を基材に適用しそして組成物を乾燥させてコーティングを形成すること、を含む基材をコーティングする方法。
【請求項23】
エポキシシランオリゴマー組成物は、
(i)約5から約15重量パーセントの量の、式(I)の構造を有するモノマー:
(Z(RO)3-2aSi-R (I)
(ii)5から20重量パーセントの量の、式(II)の構造を有する二量体:
(Z(RO)2-2b(R)Si-O-Si(R)(OR2-2c(Z (II)
(iii)約5から約20重量パーセントの量の、直鎖状構造(III)または環状構造(IV)を有する少なくとも1つの三量体:
【化7】

【化8】

ここで三量体(iii)の総量は、式(III)の直鎖状三量体および/または式(IV)の環状三量体の重量の合計であり、および
(iv)約45から約85重量パーセントの量の、式(V)の構造を有する少なくとも1つのポリオリゴマー
【化9】

ここでポリオリゴマー(iv)の総量は、式(V)の構造を有する各成分の重量の合計であり、
ここで
の各存在は、独立して二価の基-ORO-であり、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、但し
(iii)2つの酸素原子はRの2つの異なる炭素原子に結合しており、そして
(iv)各酸素原子の開放原子価が、環状1,3-ジオキサ-2-シラ-シクロアルキル基を形成するよう同じSi原子に結合している、という条件であり、
の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、またはRが前記のとおりである-OROH基であり、
の各存在は以下であり、
【化10】

の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、Rが前記のとおりである-OROH基、または以下であり、
【化11】

ここでRの各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、Rが前記のとおりである-OROH基、または以下であり、
【化12】

そして下付き文字a、b、c、d、e、f、g、h、i、m、およびnは整数であり、ここでa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは独立して0または1であり、mは0から5であり、そしてnは2から15であり、そしてここで重量パーセントは、成分(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の合計の総重量に基づいており、
(c)乳化剤;
(d)酸化チタン粒子;
(e)ケイ質粒子状フィラー;および
(f)水
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
活性水素を含む官能基が、カルボキシル基(-C(=O)OH)、水酸基(-OH)、または塩形態に中和されたカルボキシル基-C(=O)Oであり、ここでMはNa、K、またはアンモニウムイオンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、約0.5重量パーセントを超える量から約5重量パーセントまでの量である、請求項22から23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ステップ(b)の水性コーティング組成物は、水性コーティング組成物を基材に適用する前に、約50℃で14日間熱エージングされる、請求項22から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
基材に適用して乾燥させた後の水性コーティング組成物は、10から40グロスユニット(GU)の間の60度光沢度を有する、請求項22から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
物品の表面に配置されたコーティングを含む物品であって、ここでコーティングは、請求項1から17のいずれかに記載の水性コーティング組成物から形成されてなる、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月2日に出願された「初期耐水性を有するコーティング」と題する米国仮特許出願第62/754,725号の優先権および利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、コーティング組成物、特に、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリレートポリマーのエマルジョン、エポキシ官能性シランオリゴマー組成物、酸化チタンおよびケイ質フィラーを含む水性コーティング組成物に関する。エポキシ官能性シランオリゴマー組成物を使用するこれらの水性コーティング組成物は、コーティングが完全に硬化する前に湿気にさらされることから生じ得る湿気の膨れに対して初期耐水性を示すコーティングを提供する。
【背景技術】
【0003】
水性コーティングおよび塗料は、コーティングが表面に適用された直後、およびコーティングが完全に硬化する時間を有する前に、水または湿気にさらされ得る。湿気への暴露は、コーティングが、高湿度条件などまたはバスルームやシャワーで生成される蒸気または湿気から、空気中に高い割合の湿気を含む条件にさらされ得る屋内適用、およびコーティングが、湿気、霧、露、雨、雪などの環境条件からの湿気にさらされ得る屋外適用で生じ得る。コーティングが硬化する前に湿気にさらされると、コーティングに膨れやしわを引き起こすことがあり得る。コーティングの膨れやしわは、コーティングの接着性を低下させ、剥離などの他の欠陥を引き起こすことがあり得る。
【0004】
これらの問題を回避しようとする従来の方法の1つは、コーティングの硬化速度を上げることである。例えば、コーティングの硬化速度を上げるために、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどの添加剤が使用されてきた。これにより、湿気への初期暴露に起因するいくつかの問題を回避できる一方で、コーティングの柔軟性や表面の外観など、他のコーティング特性が最終的に犠牲になることがあり得る。
【0005】
したがって、コーティングを基材に適用した直後に湿気にさらされたときに、膨れおよびしわの形成に対して良好な耐性を有する水性コーティング組成物を提供する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、基材への適用直後に耐水性を示す水性コーティング組成物が提供される。一態様では、水性コーティング組成物は、(a)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーのエマルジョン、および(b)エポキシシランオリゴマー組成物を含む。(メタ)アクリルポリマーのエマルジョンへのエポキシシランオリゴマー組成物の添加は、しばしば初期耐水性と呼ばれる、基材への適用直後に水にさらされたときの膨れおよびしわに対する耐性を改善することが見出された。水性コーティング組成物は、コーティングが完全に硬化する前に水にさらされた場合にコーティングの欠陥が最小限に抑えられるように、初期耐水性を示すコーティングを提供することができる。
【0007】
一態様では、基材をコーティングするための方法であって、水性コーティング組成物を基材に適用することを含み、ここで水性コーティング組成物は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーのエマルジョンおよびエポキシシランオリゴマー組成物を含む、方法が提供される。
【0008】
一態様では、水性コーティング組成物は、
(a)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー;
(b)以下を含むエポキシシランオリゴマー組成物
(i)約5から約15重量パーセントの量の式(I)の構造を有するモノマー:
(Z(RO)3-2aSi-R (I)
(ii)約5から約20重量パーセントの量の式(II)の構造を有する二量体:
(Z(RO)2-2b(R)Si-O-Si(R)(OR2-2c(Z (II);
(iii)約5から約20重量パーセントの量の直鎖状構造(III)または環状構造(IV)を有する少なくとも1つの三量体:
【化1】

【化2】

ここで三量体(iii)の総量は、式(III)の直鎖状三量体および/または式(IV)の環状三量体の重量の合計であり、および
(iv)約45から約85重量パーセントの量の式(V)の構造を有する少なくとも1つのポリオリゴマー:
【化3】

ここでポリオリゴマー(iv)の総量は、式(V)の構造を有する各成分の重量の合計であり、
ここで
の各存在は、独立して二価の基-ORO-であり、ここでRは、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、但し、
(i)2つの酸素原子はRの2つの異なる炭素原子に結合しており、そして
(ii)各酸素原子の開放原子価が、環状1,3-ジオキサ-2-シラ-シクロアルキル基を形成するよう同じSi原子に結合している、という条件であり、
の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、または-OROH基であり、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、
の各存在は、下記であり、
【化4】

の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、-OROH基、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、あるいは下記であり、
【化5】

ここでRの各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、-OROH基、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、あるいは下記であり、
【化6】

そして下付き文字a、b、c、d、e、f、g、h、i、m、およびnは整数であり、ここでa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは独立して0または1であり、mは0から5であり、そしてnは2から15であり、そしてここで重量パーセントは、成分(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の合計の総重量に基づいており、
(c)乳化剤;
(d)酸化チタン粒子;
(e)ケイ質粒子状フィラー;および
(f)水、を含む。
【0009】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、約0.5を超えて約5重量パーセントまでの、好ましくは約0.75から約2重量パーセントの量でコーティング組成物中に存在する。
【0010】
一実施形態では、活性水素を含む官能基は、カルボキシル基(-C(=O)OH)またはヒドロキシル基(-OH)である。一実施形態では、活性水素を含む官能基は、塩形態-C(=O)Oに中和されるカルボキシル基であり、ここで、MはNa、K、またはアンモニウムイオンである。
【0011】
一実施形態では、カルボキシル基は、電位差滴定法によって決定される、約1から約780の酸価を有するのに十分な量である。
【0012】
一実施形態では、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、純粋なアクリル、スチレンアクリル、ビニルアクリル、およびアクリル化エチレンビニルアセテートコポリマーからなる群から選択される。
【0013】
一実施形態では、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、乳化重合によって調製される。
【0014】
一実施形態では、純粋なアクリルは、モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルを使用して調製され、スチレンアクリルは、モノマーとしてスチレンとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルを使用して調製され、ビニルアクリルは、モノマーとしてビニルアセテートとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルを使用して調製され、そしてアクリル化エチレンビニルアセテートコポリマーは、モノマーとしてエチレン、ビニルアセテートとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルを使用して調製される。
【0015】
一実施形態では、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)および水(f)の重量の合計に基づいて、約5から約60重量%の量である。
【0016】
一実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、および1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチルからなる群から選択され;Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、および1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチルからなる群から選択され;Rは、エチレン、プロピレン、および2-メチルプロピレンからなる群から選択され;そしてRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチルおよび1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル、(グリシドキシプロピル)ビス(2-メチル-3-ヒドロキシプロポキシ)シリル、および[(グリシドキシプロピル)ジメトキシシリルオキシ]-(グリシドキシプロピル)メトキシシリルからなる群から選択される。
【0017】
一実施形態では、Rはメチルまたはエチルであり、Rはメチルまたはエチルであり;Rはメチル、エチル、(グリシドキシプロピル)ジメトキシシリル;または(グリシドキシプロピル)ジエトキシシリル)であり;そしてa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは0である。
【0018】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、約500から約2500の重量平均分子量を有する。
【0019】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、約0.5重量パーセントを超える量から約5重量パーセントまでの量である。
【0020】
一実施形態では、乳化剤(c)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸塩、アルキルサルフェートエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、アルキルホスフェート塩、アルキルアリルサルフェートエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルホスフェートエステル塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、およびジ(長鎖アルキル)ジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される界面活性剤である。
【0021】
一実施形態では、乳化剤(c)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、約1.0重量パーセントから約15重量パーセントの量である。
【0022】
一実施形態では、酸化チタン粒子は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づいて、約0.5重量パーセントから約50重量パーセントの量で存在する。
【0023】
一実施形態では、ケイ質粒子状フィラーは、含水カオリン、ムライト、パイロフィライト、藍晶石、霞石閃石、粘土、珪線石、シリカ、およびタルクからなる群から選択される。
【0024】
一実施形態では、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づいて、ケイ質粒子状フィラー(e)は、約0.05から約25重量パーセントの量である。
【0025】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物は、式(I)の構造を有するエポキシ官能性シランの反応によって合成され、
(Z(RO)3-2aSi-R (I)
ここでZは二価の基-ORO-であり、ここでRは、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、但し
(i)2つの酸素原子はRの2つの異なる炭素原子に結合しており、そして
(ii)各酸素原子の開放原子価が、環状1,3-ジオキサ-2-シラ-シクロアルキル基を形成するよう同じSi原子に結合している、という条件であり、
の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、または-OROH基であり;ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり;Rの各存在は、下記であり、
【化7】

そして下付き文字aは整数であり、ここでaは0または1であり、触媒の存在下でエポキシ官能性シラン1モルあたり0.5から1.0モルの水を有し、ここで前記水は、反応の間、継続的に供給される。
【0026】
一実施形態では、前記のいずれかの実施形態の水性コーティング組成物は、10から40グロスユニット(GU)、より具体的には15から25グロスユニット(GU)の間の60度光沢度を有する水性コーティング組成物である。
【0027】
別の態様では、前記のいずれかの実施形態のコーティング組成物を基材の表面に適用することを含む、基材をコーティングするための方法が提供される。
【0028】
一態様では、(a)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー、乳化剤、酸化チタン、少なくとも1つのケイ質フィラー、水および任意の添加材を含む、予め形成された水性ストックコーティング組成物を提供すること、(b)エポキシシランオリゴマー組成物を予め形成されたストック水性コーティング組成物に加えること、(c)ステップ(b)からの水性コーティング組成物を基材に適用し、そして水性コーティング組成物から水を蒸発させ、改善された初期耐水性を有する乾燥コーティングを含む基材を形成すること、を含む基材をコーティングする方法を提供する。
【0029】
方法の一実施形態では、(b)からの組成物は、組成物を基材に適用する前に熱エージング(熱老化)される。方法の別の実施形態では、(b)からの組成物は、50℃で14日間熱エージングされる。
【0030】
以下の説明および図面は、様々な例示的な態様を開示している。いくつかの改善および新規の態様が明確に識別され得る一方で、他のものは説明および図面から明らかであり得る。本発明のさらに他の目的は、部分的には明白であり、部分的には明細書から明らかであり、本発明の範囲は特許請求の範囲に示されることになる。
【0031】
添付の図面は、様々なシステム、装置、デバイス、および関連する方法を示しており、同様の参照文字は、全体を通して同様の部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1a-1cは、基材のコーティング後1日(1a)、4日(1b)および7日(1c)乾燥され、次いで水中に沈めた、基材にコーティングされた比較例Aのストック水性コーティング組成物の写真である。1日間の乾燥後に重度の膨れが観察され、4日間の乾燥後にいくらかの膨れが観察された。
【0033】
図2図2a-2cは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーの重量に基づいて0.5重量パーセントの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含むストック水性コーティング組成物の写真であり(比較例B)、これを基材上にコーティングし、基材のコーティング後、1日(2a)、4日(2b)、7日(2c)乾燥し、水中に沈めた。1日間の乾燥後に中程度の膨れが観察され、4日間の乾燥後に少量の膨れが観察された。
【0034】
図3図3a-3cは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーの重量に基づいて2.0重量パーセントの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含むストック水性コーティング組成物の写真であり(比較例C)、これを基材にコーティングし、基材のコーティング後1日(3a)、4日(3b)、7日(3c)乾燥させ、次に水中に沈めた。フィッシュアイは1日の乾燥後に観察され、4日間の乾燥後に少量の膨れが観察された。
【0035】
図4図4a-4cは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を有する官能基を含む(メタ)アクリルポリマーの重量に基づいて、0.5重量パーセントの例1で調製されたエポキシシランオリゴマー組成物を含むストック水性コーティング組成物の写真であり(例2)、これを基材にコーティングし、基材のコーティング後1日(4a)、4日(4b)、7日(4c)乾燥させ、次に水中に沈めた。1日間の乾燥後に膨れが観察され、4日間の乾燥後に非常に少量の膨れが観察された。エポキシシランオリゴマー組成物の約0.5重量パーセントの量は、初期耐水性を達成するには不十分である。
【0036】
図5図5a-5cは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーの重量に基づいて2.0重量パーセントの例3で調製されたエポキシシランオリゴマー組成物を含むストック水性コーティング組成物の写真であり(例2)、これを基材にコーティングし、基材のコーティング後1日(5a)、4日(5b)、7日(5c)乾燥させ、次に水中に沈めた。1日、4日、7日間の乾燥後に観察されたコーティングの外観は、重大な膨れがなく、またフィッシュアイがなかった。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、例示的な実施形態を参照し、その例を添付の図に示す。
【0038】
本願の明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、示されるように理解されるべきである。
【0039】
単数形「a」、「an」、および「the」は複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0040】
実施例または別段の指示がある場合を除き、明細書および特許請求の範囲に記載されている、材料の量、反応条件、持続時間、材料の定量化された特性などを表すすべての数値は、すべての例において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0041】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に制限を課さない。
【0042】
明細書のいかなる文言も、クレームされていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0043】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語、およびそれらの文法上の同等物は、追加の、引用されていない要素または方法のステップを除外しない包括的または制約のない用語であるが、「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consistingessentially of)」というより限定的な用語も含むと理解されることになる。
【0044】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その範囲内のすべての下位範囲、およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0045】
本明細書で使用される場合、化学量論的添え字の整数値は分子種を指し、化学量論的添え字の非整数値は、分子量平均ベース、数平均ベース、またはモル分率ベースでの分子種の混合物を指す。
【0046】
以下の説明では、すべての重量パーセントは、特に明記しない限り、有機材料の総重量パーセントに基づいており、本明細書に記載のすべての範囲は、それらの間のすべての下位範囲、およびそれらの間の範囲および/または下位範囲の任意の組み合わせを含む。
【0047】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または暗黙的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載されている任意の化合物、材料または物質は、その群の個々の代表物およびそのすべての組み合わせを含むことがさらに理解される。
【0048】
「炭化水素基」または「炭化水素ラジカル」という表現は、1つまたは複数の水素原子が除去された、水素および炭素原子から構成される任意の炭化水素を意味し、そしてアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アラルキル、およびアレーニル基を含む。基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭化水素基、および例えば、酸素、窒素、または硫黄の少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭化水素基から構成することができる。
【0049】
「アルキル」という用語は、1つの水素原子が除去された任意の一価の飽和の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味し;「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む任意の一価の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素二重結合またはその中の他の場所のいずれかにあり得;そして「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合、および任意選択で1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む任意の一価の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素三重結合、炭素-炭素二重結合、またはその中の他の場所であり得る。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピルおよびイソブチルが含まれる。アルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネン、およびエチリデンノルボルネニルが含まれるが、これらに限定されない。アルキニルの例には、アセチレニル、プロパルギルおよびメチルアセチレニルが含まれる。
【0050】
「アルキレン」という用語は、2つの水素原子が除去された任意の二価の飽和の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味する。アルキレン基の例には、メチレン(-CH-)、エチレン(-CHCH-)、プロピレン(-CHCHCH-)、および2-メチルプロピレン(-CHCH(CH)CH-)が含まれるが、これらに限定されない。化合物の命名において、プロピルは二価のアルキル基であり、プロピレンと同等である、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランのように、1つの付加水素が除去されたアルキル基である二価アルキル基の名前を使用することが一般的な命名法の使用法であることを理解されたい。
【0051】
本明細書で使用される場合、「例」および「例示」という用語は、実例または例示を意味する。「例」または「例示」という言葉は、重要なまたは好ましい態様または実施形態を示すものではない。「または」という言葉は、文脈上別段の示唆がない限り、排他的ではなく包括的であることを意図している。一例として、「AはBまたはCを使用する」という句は、任意の包括的順列を含む(例えば、AはBを使用する;AはCを使用する;またはAはBおよびCの両方を使用する)。別の問題として、冠詞「a」および「an」は、文脈が別段の示唆をしない限り、一般に「1つまたは複数」を意味することを意図している。
【0052】
本明細書で使用される場合、「水性」は、液体の水を含み、「水媒性」と交換可能に使用することができるコーティングを意味する。
【0053】
活性水素基を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー、エポキシシランオリゴマー組成物、乳化剤、酸化チタン、ケイ質粒子状フィラー、水、および任意選択で他の成分を含む水性コーティング組成物が提供される。本願の水性コーティング組成物は、初期耐湿性を示す。特に、水性コーティング組成物は、エポキシ修飾シランオリゴマー組成物を含まない組成物と比較して、膨れ、フィッシュアイ、および/または剥離を含む欠陥のサイズおよび/または頻度の減少を示す。
【0054】
他の成分と組み合わせた活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーのエマルジョンは、しばしば、ラテックスコーティングまたはラテックス塗料と呼ばれる。ラテックス塗料は、内外装を含むさまざまな用途に使用されている。ラテックス塗料は、特定の用途のニーズに応じて、フラット、セミグロス、グロス、またはサテン仕上げとして提供できる。ラテックスは、水性媒体中のゴムまたはプラスチックポリマー微粒子の分散液であり、ここで乳化剤を使用して微粒子が安定化される。ラテックスは天然のものでも合成のものでもよい。
【0055】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)
【0056】
本発明の(メタ)アクリルポリマーは、限定されるものではないが、カルボキシル基(-C(=O)OH)、それらのいくつかは、例えば、-C(=O)O、ここで、MはNa、Kまたはアンモニウムイオン中和塩形態であり得、またはヒドロキシル基(-OH)を含む、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を有する。ポリマーは、末端またはペンダントのカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含むものである。特に、ポリマーは、電位差滴定法によって決定されるように、1から780の間、好ましくは10から280の間の酸価を有するのに十分な量のカルボキシル酸基を含む。電位差滴定法は以下に示される:Wang,C., Tam, K. C., Jenkins, R. D., & Bassett, D. R. (2000), Potentiometric titration and dynamic light scattering ofhydrophobically modified alkali soluble emulsion (HASE) polymer solutions, PhysicalChemistry Chemical Physics, 2(9), 1967-1972, May 2000. doi:10.1039/A910302N、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。活性水素含有基がヒドロキシルの場合、ヒドロキシル基の量は、ASTM D4274 - 05、ポリウレタン原料を試験するための標準試験方法:ポリオールのヒドロキシル数の決定を使用して決定され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒドロキシル基が存在する場合、その数は1から25、より具体的には5から15の範囲である。
【0057】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマーは、1000から1×10グラム/モルの範囲の重量平均分子量を有する。ゲル浸透クロマトグラフィー法を使用して、重量平均分子量を決定する。一実施形態では、ASTM D5296 - 11高性能サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレンの分子量平均および分子量分布の標準試験方法(その全体が本明細書に組み込まれる)を使用することができる。
【0058】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、乳化重合法によって調製することができる。乳化重合は、乳化剤と水の存在下での(メタ)アクリルモノマーの重合を含む。乳化重合の説明は、Emulsion Polymerization, D. Distler, Encyclopedia ofMaterials: Science and Technology (second edition), 2769-2774 (2001)(その全体が本明細書に組み込まれる)にある。
【0059】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、典型的には、純粋なアクリル、スチレンアクリル、ビニルアクリル、およびアクリレートエチレンビニルアセテートコポリマーから選択される。
【0060】
純粋なアクリルは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製される。スチレンアクリルは、スチレンとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製される。ビニルアクリルは、ビニルアセテートとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製される。アクリル化エチレンビニルアセテートコポリマーは、エチレン、ビニルアセテートとアクリル酸、メタクリル酸、アクリレートエステル、および/またはメタクリレートエステルをモノマーとして使用して調製される。当業者によって容易に理解されるように、モノマーはまた、アクリルアミドおよびアクリロニトリルなどの他のモノマー、ならびにイタコン酸およびウレイドメタクリレートなどの1つまたは複数の官能性モノマーを含むことができる。
【0061】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のカルボキシル含有量は、しばしば乳化重合プロセス中にアクリル酸またはメタクリル酸モノマーを使用してポリマーに組み込まれる。活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のカルボキシ含有量はまた、乳化重合反応中に、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエステル官能基の加水分解によってその場で形成され得る。
【0062】
本発明の活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、乳化剤(c)、水(f)および他の任意の成分を含むエマルジョンとして水性コーティング組成物に添加され得る。水(e)および乳化剤(c)の量は、水性コーティング組成物の乳化剤および水(f)の一部または全部を構成し得る。
【0063】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエマルジョンは市販されている。活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエマルジョンの代表的かつ非限定的な例には、Joncryl(登録商標)60ポリアクリル樹脂、およびJoncryl(登録商標)67ポリアクリル樹脂、Florham Park, New JerseyのBASFから市販、およびAcronal(登録商標)PLUS 4670アクリル樹脂、およびAcronal(登録商標)PLUS 4130アクリルラテックス樹脂、Florham Park, New JerseyのBASFから市販、が含まれる。
【0064】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の選択は、コーティングの仕上げを決定するために使用される。一実施形態では、活性水素を有する官能基を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、「完全アクリル」または限定された量のスチレンポリマーを有するまたはスチレンポリマーを有しない純粋なアクリルである。一実施形態では、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、主に、ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを含むモノマーから誘導されるブチルアクリレート/メチルメタクリレートコポリマーから選択される。
【0065】
典型的なアクリル塗料組成物において、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、アクリル酸またはメタクリル酸の1つまたは複数のエステル、典型的には、メチルメタクリレートに由来する高Tgモノマーと、アクリル酸またはメタクリル酸を約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの小さな割合で有するブチルアクリレートなどの低Tgモノマーとの約50:50重量の混合物から構成される。ビニルアクリル塗料は、通常、ビニルアセテートとブチルアクリレート、および/または2-エチルヘキシルアクリレートを含む。ビニル-アクリル塗料組成物では、形成されたポリマーの少なくとも約50パーセントはビニルアセテートで構成され、残りはアクリル酸またはメタクリル酸のエステルから選択される。スチレン/アクリルポリマーは、典型的には、メタクリレートモノマーの全部または一部がスチレンで置換されているアクリルポリマーに類似している。
【0066】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエマルジョンは、約30から約75%の固体および約70から約650nmの平均エマルジョン粒子サイズを含む。
【0067】
活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)は、好ましくは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)(乾燥重量)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)および水(f)の重量の合計に基づいて、水性コーティング組成物中に、約5から約60重量%、約8から約40重量%、または約15から約30重量%の量で存在する。
【0068】
エポキシシランオリゴマー組成物(b)
【0069】
エポキシシランオリゴマー組成物(b)は、エポキシ官能基およびケイ素原子を含む成分の混合物である。エポキシシランオリゴマー組成物は、以下から構成される:
(i)約5から約15重量パーセントの量の、式(I)の構造を有するモノマー:
(Z(RO)3-2aSi-R (I)
(ii)約5から約20重量パーセントの量の、式(II)の構造を有する二量体:
(Z(RO)2-2b(R)Si-O-Si(R)(OR2-2c(Z (II)
(iii)約5から約20重量パーセントの量の、直鎖状構造(III)または環状構造(IV)を有する少なくとも1つの三量体:
【化8】

【化9】

ここで三量体(iii)の総量は、式(III)の直鎖状三量体および/または式(IV)の環状三量体の重量の合計であり、ならびに
(iv)約45から約85重量パーセントの量の式(V)の構造を有する少なくとも1つのポリオリゴマー:
【化10】

ここでポリオリゴマー(iv)の総量は、式(V)の構造を有する各成分の重量の合計であり、
ここで
の各存在は、独立して、二価の基-ORO-であり、ここでRは、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、但し
(i)2つの酸素原子がRの2つの異なる炭素原子に結合しており、そして
(ii)各酸素原子の開放原子価が、環状1,3-ジオキサ-2-シラ-シクロアルキル基を形成するよう同じSi原子に結合しており、
の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、または-OROH基であり、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基であり、
の各存在は、以下であり、
【化11】

の各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、-OROH基、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基である、または下記であり、
【化12】

ここでRの各存在は、独立して、1から6個の炭素原子を含む一価の直鎖状アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、-OROH基、ここでRは、独立して、2から6個の炭素原子の二価の直鎖状アルキレン基または3から6個の炭素原子の分岐状アルキレン基である、または下記であり、
【化13】

そして下付き文字a、b、c、d、e、f、g、h、i、m、およびnは整数であり、ここでa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは独立して0または1であり、mは0から5であり、そしてnは2から15であり、そしてここで重量パーセントは、成分(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の合計の総重量に基づいている。
【0070】
の代表的かつ非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、および1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチルが含まれる。
【0071】
の代表的かつ非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、および1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチルが含まれる。
【0072】
の代表的かつ非限定的な例には、エチレン、プロピレン、および2-メチルプロピレンが含まれる。
【0073】
の代表的かつ非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチルおよび1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル、(グリシドキシプロピル)ビス(2-メチル-3-ヒドロキシプロポキシ)シリル、および[(グリシドキシプロピル)ジメトキシシリルオキシ]-(グリシドキシプロピル)メトキシシリルが含まれる。
【0074】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物は、Rはメチルまたはエチルであり、Rはメチルまたはエチルであり、Rは、メチル、エチル、(グリシドキシプロピル)ジメトキシシリルまたは(グリシドキシプロピル)ジエトキシシリル)であり、そしてa、b、c、d、e、f、g、h、およびiは0である成分で構成されている。
【0075】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物は、触媒の存在下で、3つの加水分解性基を有するグリシドキシシランと水との反応から合成され、ここで前記水は、反応の間、継続的に供給される。エポキシシランオリゴマーは、エポキシシランモノマーと連続的な水の導入および触媒との制御された加水分解および縮合を使用して合成することができる。
【0076】
触媒は、強陽イオン交換樹脂材料または酢酸、硫酸などの酸触媒を含むがこれらに限定されない任意の適切な触媒から選択することができる。
【0077】
エポキシシランオリゴマー組成物を調製するために使用することができる触媒の代表的かつ非限定的な例は、イオン交換樹脂、例えば、Purolite(登録商標)CT-175またはCT275、Pluroliteから入手可能、Amberlite(登録商標)IRA 400, 402, 904, 910 または966、Sigma-Aldrichから入手可能、Lewatit(登録商標)M-500, M-504, M-600, M-500-A, M-500またはK-2641、Bayerから入手可能、Dowex(登録商標)SBR,SBR-P, SAR, MSA-1またはMSA 2、Dowから入手可能、またはDIAON(登録商標)SA10, SA12, SA 20A, PA-302, PA-312,PA-412またはPA-308、Mitsubishiから入手可能、が含まれる。触媒はまた、アルキルアンモニウム塩であり得、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド、またはベンジルトリメチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、または単独、またはハロゲン化物塩と組み合わせのいずれかのこれらのアルキルアンモニウム塩の水酸化物形態であり得る。他の有用な触媒は、セラミック(ガラスを含む)、シリカゲル、沈降またはヒュームドシリカ、アルミナおよびアルミノシリケートなどの第四級アンモニウム有機官能性シランおよび担体の反応生成物である。
【0078】
適切なグリシドキシシランの例には、これらに限定されないが、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロキシシラン、3-グリシドキシプロピル-トリス-(2-メチル-3-ヒドロキシプロポキシ)シラン、3-グリシドキシプロピル-トリス-(3-ヒドロキシブトキシ)シラン、2-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]-ジオキサシリナン、および2-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2-(2-メチル-3-ヒドロキシプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]-ジオキサシリナンが含まれる。
【0079】
水とシランモノマーとのモル比は、約0.5:1.0から約1.0:1.0、または約0.65:1.0から約0.85:1.0であり得る。
【0080】
エポキシシランオリゴマー(ESO)は、アルコールを含まない、化学的に安定な溶媒、例えば、脂肪族炭化水素、ナフサまたはミネラルスピリットなどのパラフィン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、またはそれらの高沸点ホモログ;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アミルケトンなどのケトン、エチル、n-プロピル、n-ブチル、またはアミルアセテートなどのエステルなどの存在下で合成することができる。
【0081】
本発明の別の実施形態では、副生成物のアルコールは、反応中に連続的に取り出される。
【0082】
エポキシシランオリゴマー組成物の各成分の量は、逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)法を使用して決定することができる。使用できる実験条件は、Affinity 2620 ELS検出器、1.60 SLPM N条件での60℃、LUNA C18エンドキャップ、5ミクロン、300x4.6mmカラム、溶媒勾配
【表1】

0.5mL/分の流量、および4mLのイソプロパノールに0.1グラムのエポキシシランオリゴマー濃度を含む溶液0.5マイクロリットルの注入量である。逆相高圧液体クロマトグラフィー分析から溶出した個々の成分を分離し、質量分析および核磁気共鳴(NMR)技術によってさらに分析することができる。
【0083】
エポキシシランオリゴマー組成物はまた、DCCl緩和剤中の0.05Mクロムアセトアセトン(Cr(AcAc))を使用する29SiNMR技術を使用して分析することができる。
【0084】
エポキシシランオリゴマー組成物の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル相クロマトグラフィー法(GPC)によって決定することができる。この方法には、Agilent 2600 Infinity PDA UVおよびAgilent 2600Infinity ELS検出器を備えたAgilent 2600 Infinityクロマトグラフの使用、およびAgilent OpenLabシステムでのデータ収集が含まれる。カラムはPhenomenexSpherogel Linear(2)によって製造され、100x4.6mmのガードカラムと300x7.6mmの線形混合ベッドカラムで、報告分子量範囲は100から20,000,000(ポリスチレン)を有する。カラムには5ミクロンの粒子サイズのスチレンジビニルベンゼンが充填されており、0.2ミクロンの入口フリットと0.5ミクロンの出口フリットを有する。溶媒は、流速:1.0mL/分での塩化メチレンであった。注入量は、0.45ミクロンの使い捨てフィルターでろ過して未溶解の粒子状物質を除去したエポキシシランオリゴマー組成物の1.0から1.5重量パーセント溶液の1マイクロリットルであった。狭Mwポリジメチルシロキサン(12範囲230から1,250,000)を使用してシステムを較正した。
【0085】
一実施形態では、エポキシシランオリゴマー組成物の重量平均分子量は、約500から約2500、より具体的には約800から約1600、さらにより具体的には約1100から約1500である。
【0086】
エポキシシランオリゴマー組成物は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、0.5重量パーセントを超えて約5重量パーセント、より具体的には約0.75重量パーセントから約3重量パーセント、さらにより具体的には約1.0重量パーセントから約2.0重量パーセントの量で存在し得る。
【0087】
エポキシシランオリゴマー組成物は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエマルジョンの形成中、水性コーティング組成物を形成する混合ステップ中にコーティング組成物に提供することができ、または、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、乳化剤(c)、酸化チタン(d)、ケイ質微粒子フィラー(e)、水(f)、および任意の他の成分を含むストック水性コーティング組成物に「後添加」材料として添加することができる。実施形態では、エポキシシランオリゴマーは、水性コーティング組成物を基材に適用する前に、「後添加」材料としてストック水性コーティング組成物に添加される。一実施形態では、成分(a)、(c)、(d)、(e)、(f)、および他の任意の成分を含むストック水性コーティング組成物が提供され、そしてエポキシシランオリゴマー組成物(b)は、本発明の水性コーティング組成物を提供するために、ストック水性コーティング組成物に添加され、そして混合される。
【0088】
乳化剤(c)
【0089】
乳化剤(c)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエマルジョンの形成に使用される。乳化剤(c)は、水中(f)中で活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)を安定化させる。乳化剤(c)はまた、水性コーティング組成物の水(f)相においてエポキシシランオリゴマー組成物を安定化するように機能する。
【0090】
本明細書で使用される乳化剤(c)は、非イオン性、アニオン性およびカチオン性界面活性剤または界面活性剤の混合物を含む。混合物は、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤の混合物、または非イオン性界面活性剤と少なくとも1つのアニオン性界面活性剤または少なくとも1つのカチオン性界面活性剤との混合物を含む。
【0091】
非イオン性界面活性剤の代表的かつ非限定的な例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。陰イオン性界面活性剤の代表的かつ非限定的な例には、脂肪酸塩、アルキルサルフェートエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、アルキルホスフェート塩、アルキルアリルサルフェートエステル塩、およびポリオキシエチレンアルキルホスフェートエステル塩が含まれる。代表的で非限定的なカチオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩、例えば、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、およびジ(長鎖アルキル)ジメチルアンモニウム塩が含まれる。
【0092】
本発明において有用な界面活性剤のさらなるリストは、1994 McCutcheon’s Vol. 2: Functional Materials, NorthAmerican Edition (The Manufacturing Confectioner Publishing Co., Glen Rock)に記載されているものであり得、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
界面活性剤の適切な親水性-親油性バランス(HLB)は、乳化されている活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のHLBに対応するように選択される。ポリマーに最適なHLBを選択する方法は、当業者に周知であり、例えば、ICI Americas Incによる「The HLB System」に記載されている。
【0094】
成分(a)、(c)および(f)によって定義されるように、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)のエマルジョンは、エポキシシランオリゴマー組成物(b)の添加前に調製され得ることから、乳化剤は、それらのHLBがエポキシシランオリゴマー組成物のHLBに近くなり、水性コーティング組成物中のエポキシシランオリゴマーを安定化するのを助けることもできるように選択することができる。
【0095】
乳化剤(c)は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)の重量に基づいて、約0.5重量パーセントから約50重量パーセント、より具体的には約1.0重量パーセントから約15重量パーセント、さらにより具体的には約2.0重量パーセントから約7重量パーセントの量で存在するべきである。
【0096】
酸化チタン粒子
【0097】
酸化チタン(IV)またはチタニアとしても知られる二酸化チタンは、天然に存在するチタンの酸化物であり、化学式TiOである。顔料として使用される場合、それはチタンホワイト、ピグメントホワイト6(PW6)、またはCI77891と呼ばれる。一般的に、それはイルメナイト、ルチルおよび鋭錐石から供給される。二酸化チタンは、ミネラルのルチルと鋭錐石として、さらに2つの高圧形態として自然界に存在する。これらの1つは、アカオギイト(akaogiite)として知られる単斜晶系のバデライトのような形態であり、もう1つは、ブルッカイトとして知られる斜方晶系のα-PbOのような形態である。ルチルは鉱石に約98%の二酸化チタンを含む。準安定鋭錐石相とブルッカイト相は、600-800℃の範囲の温度以上に加熱すると、不可逆的に平衡ルチル相に変換される。
【0098】
二酸化チタンは、ルチル、鋭錐石、アカオギイト、およびブルッカイトに加えて、8つの変形を有し、3つの準安定相を合成的に生成でき(単斜晶、正方晶、斜方晶)、そして5つの高圧形態(α-PbO様、バデライト様、コツナイト様、斜方晶系OI、および立方晶相)も存在する。最も一般的な鉱物源はイルメナイトである。
【0099】
ルチル鉱物砂はまた、塩化物プロセスまたは他のプロセスで精製することができる。イルメナイトは、サルフェートプロセスまたはクロリドプロセスのいずれかを介して顔料級二酸化チタンに変換される。サルフェートプロセスとクロリドプロセスの両方で、ルチル結晶の形で二酸化チタン顔料を生成できる。クロリドプロセスは、元素塩素との反応によってイルメナイトまたは他のチタン源を四塩化チタンに変換し、次に蒸留によって精製され、酸素と反応して塩素を再生し、そして二酸化チタンを生成する。二酸化チタン顔料は、アップグレードされたスラグ、ルチル、ロイコキセンなどのチタン含有量の高い原料から、塩化物酸プロセスを介して製造することもできる。
【0100】
酸化チタン粒子は、スラリーの形態であり得、このスラリーは、水酸化アルミニウム、シリカ、および水を含む他の成分を含む。
【0101】
酸化チタン粒子は、方法DIN EN ISO 591-1 (2000)塗料用二酸化チタン顔料-パート1:試験の仕様および方法、ならびに乾燥顔料二酸化チタン製品のASTM D476標準分類を使用して分類することができる。一実施形態では、種類による分類は次のとおりである。
【表2】
【0102】
一実施形態では、酸化チタン顔料は、種類I、種類IVおよび種類Vから選択される。
【0103】
顔料の特性は、特定の顔料の一般的な特性のためのASTM D1208 - 96(2019)標準試験方法によって決定することができる。
【0104】
酸化チタン粒子(顔料)は、Chemours、Cristal Global、Venator-Huntsman、KronosおよびTronoxから入手可能である。チタンの代表的かつ非限定的な例には、Wilmington,DelawareのChemoursから市販されている、Ti-Pure(商標)R-900、Ti-Pure(商標)R-960、Ti-Pure(商標)TS-6200、Ti-Pure(商標)TS-6300、Ti-Pure(商標)R-746、Ti-Pure(商標)R-706、Ti-Pure(商標)R-7411、およびTi-Pure(商標)R-902、が含まれる。
【0105】
水性コーティング組成物に使用される酸化チタン粒子の量は、約0.5重量パーセントから約50重量パーセント、より具体的には約1.0重量パーセントから約25重量パーセント、さらにより具体的には約5.0重量パーセントから約20.0重量パーセントであり、重量パーセントは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)(乾燥重量)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づく。
【0106】
ケイ質粒子状フィラー(e)
【0107】
ケイ質粒子状フィラー(e)は、シリケートを含む鉱物である。ケイ質粒子状フィラー(e)は、ケイ酸アルミニウム、例えば含水カオリン[AlSi(OH)]、ムライト[AlSiO]、パイロフィライト[AlSi10(OH)]、カイヤナイト[AlOSiO]、霞石閃長岩[ナトリウム、カリウムアルミニウムシリケート]、粘土[含水アルミニウムフィロシリケート]、およびシリマナイト[AlSiO];ヒュームドシリカ、沈降シリカ、および粉砕石英などを含む、シリカ[SiO];タルク[MgSi10(OH)]:などから選択できる。
【0108】
ケイ質粒子状フィラー(e)の粒子サイズ分布は、レーザー光散乱によるアルミナまたは石英の粒子サイズ分布を決定するためのASTM C1070-01 (2014) 標準試験方法によって決定することができる。
【0109】
ケイ質粒子状フィラー(e)の代表的かつ非限定的な例には、Sibelcoから市販されているMinex(登録商標)10霞石閃長岩、Sandersville, GeorgiaのThiele製のKaoplate(商標)、およびFlorham Park, New JerseyのBASFから入手可能なAttagel(登録商標)50が含まれる。
【0110】
水性コーティング組成物中のケイ質粒子状フィラー(e)の量は、約0.05から約25重量パーセント、より具体的には約0.1から約15重量パーセント、さらにより具体的には約1から約5重量パーセントであり得、重量パーセントは、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)(乾燥重量)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づく。
【0111】
水(f)
【0112】
水道水、脱イオン水、または蒸留水を含む水は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)(乾燥重量)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)および水(f)の重量の合計に基づいて、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)(乾燥重量)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)および水(f)の重量の合計で100%まで、より具体的には約35から約90重量パーセント、さらにより具体的には約40から約80重量パーセントとなる量で存在する。
【0113】
その他の添加剤
【0114】
1つまたは複数の添加剤は、特に限定されるものではなく、水性コーティング組成物および特定の目的または意図された用途に適し得る任意の添加剤から選択することができる。実施形態では、組成物は、接着促進剤、分散剤、湿潤剤、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、殺生物剤、防カビ剤、着色剤、ワックス、香料および共溶媒からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤を含むことができる。
【0115】
本発明に従って製造されたエポキシシランオリゴマーに加えて、水性コーティング組成物は、ビニルシラン、アルキルシラン、またはアルキレンシランなどの非エポキシ系モノマーシランを含み得る。典型的な非エポキシ系モノマーシランは、ビニルトリメトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-171シランで市販されている、ビニルトリエトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-151シランで市販されている、ビニルメチルジメトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-2171シランで市販されている、ビニルトリイソプロポキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名CoatOSil(登録商標)A-1706シラン、n-オクチルトリエトキシシラン、Waterford, New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-137シランで市販されている、プロピルトリエトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-138シランで市販されている、メチルトリメトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-1630シランで市販されている、ポリアルキレンオキシドトリメトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-1230シランで市販されている、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名Silquest(登録商標)A-174シランで市販されている、または3-メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、Waterford,New YorkのMomentivePerformance Materials, Incからの商品名CoatOSil(登録商標)A-1757シランで市販されている、であり得る。
【0116】
一実施形態では、任意の先行する実施形態の水性コーティング組成物は、10から40グロスユニット(GU);15から35グロスユニット;または20から30グロスユニットの間の60度光沢度を有するコーティング組成物である。光沢は、光沢を測定するための任意の適切な装置および方法を使用して評価することができる。一実施形態では、光沢は、ASTM D 523 - 14(2018)鏡面光沢の標準試験方法に従って、BYK Micro -TRI-GlossMeterを使用して測定される。
【0117】
本発明の水性コーティング組成物は、特定の目的または意図された用途のために望まれるように、任意の適切な基材に適用され得る。一実施形態では、基材をコーティングするための方法は、
(a)活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、水(f)、および任意の添加剤を含むストック水性コーティング組成物を提供すること、
(b)エポキシシランオリゴマーをストック水性コーティング組成物に加えること、および
(c)(b)の組成物を基材に適用し、そして組成物を乾燥させてコーティングを形成すること、を含む。
【0118】
本明細書で使用される乾燥は、水性コーティング組成物からの水の除去を意味する。乾燥には、温度と圧力の周囲条件、高温または減圧、あるいはその両方での蒸発などの方法が含まれる。乾燥は、水の完全な除去を必要とせず、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を含む(メタ)アクリルポリマー(a)、エポキシシランオリゴマー組成物(b)、乳化剤(c)、酸化チタン粒子(d)、ケイ質粒子状フィラー(e)、および水(f)の重量の合計に基づいて、約10重量パーセント未満、より好ましくは約5重量パーセント未満、さらにより好ましくは約1重量パーセント未満の水を含むがこれらに限定されない、いくらかの残留量の水を含み得ることが理解される。
【0119】
一実施形態では、(b)からの水性コーティング組成物は、「そのまま」、すなわち、基材に適用する前にコーティングをさらに処理することなく、基材に適用される。一実施形態では、(b)からの水性コーティング組成物は、組成物を基材に適用する前に熱エージングされる。熱エージングは約50℃で2日、5日、7日、10日、または14日行うことができる。一実施形態では、(b)からの組成物は、組成物を基材の表面に適用する前に、50℃で14日間熱エージングされる。
【0120】
特定の理論に拘束されるべきではないが、初期耐水性は、活性水素を有する少なくとも1つの官能基を有する(メタ)アクリルポリマー(a)が二酸化チタン粒子(d)およびケイ質粒子状フィラー(e)に急速に吸着し、成分(a)と成分(d)および(e)との相互作用を形成し、ここでエポキシシランオリゴマー組成物(b)がこれらの成分と化学的に反応して初期耐水性を付与することによって達成される。
【0121】
水性コーティング組成物は、例えば、紙、木、コンクリート、金属、ガラス、セラミック、プラスチック、しっくい、屋根ふき基材、例えばアスファルトコーティング、屋根ふきフェルト、発泡ポリウレタン断熱材などの多種多様な材料に;または以前に塗装した、下塗りした、アンダーコーティングした、摩耗した、または風化した基材に適用できる安定した流体である。本発明の水性コーティング組成物は、例えば、ブラシ、ローラー、モップ、エアアシストまたはエアレススプレー、静電スプレーなどの当技術分野で周知の様々な技術によって材料に適用することができる。
【実施例
【0122】
【0123】
例1.エポキシシランオリゴマー組成物の調製
【0124】
添加漏斗、水凝縮器および機械的攪拌を備えた反応器に、100部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials, Inc.製のSilquest(登録商標)A-187 シラン)および35部のイオン交換樹脂(Sigma-Aldrichから入手可能なAmberlite(登録商標)IRA 402 CL)を入れた。大気圧および約70℃の温度で撹拌しながらゆっくりと連続的に水を導入した。水の量は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1モル当たり0.73モルであった。添加が完了した後、反応混合物を高温で撹拌して反応を完了させた。反応から形成されたメタノールを約0.2バールの減圧下で反応器から除去した。反応混合物を室温まで冷却させた。反応混合物を濾過してイオン交換樹脂を除去し、約80部の生成物を得た。
【0125】
逆相高圧液体クロマトグラフィーにより、11.9重量パーセントの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、13.3重量パーセントの1,3-ビス-(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン、14.2重量パーセントの1,3,5-トリス-(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3,5,5-ヘキサメトキシ-1,3,5-トリシラ-2,4-ジオキサペンタン、および60.6重量パーセントの高分子量ポリオリゴマーが検出された。エポキシシランオリゴマー組成物の重量平均分子量は1300であった。29SiNMR分析では、0、1、2、および3の-OSi基が結合したケイ素原子がそれぞれ11.9モルパーセント、41.3モルパーセント、37.3モルパーセント、および9.5モルパーセントであることが示された。
【0126】
例2および3ならびに比較例A-C
【0127】
本発明の態様および/または実施形態による水性コーティング組成物は、初期耐水性について評価された。例1で調製したエポキシシランオリゴマー組成物を市販のサテン外装塗料に添加し、水浸試験を使用して初期耐水性を試験し、ASTM D 714(塗料の膨れ度を評価するための標準試験方法)を使用して膨れを評価した。市販のサテン外装塗料は、Behrから購入した、商品名Premium Plus Ultra ExteriorSatin PaintのUltra Pure White No 9850であった。市販のサテン外装塗料の組成物には、2-エチルヘキシルベンゾエート、水酸化アルミニウム、2重量パーセント未満のメタクリル酸を含むブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートモノマーに基づくポリマー、アモルファス、沈降シリカ、および二酸化チタン顔料が含まれていた。(メタ)アクリルポリマーの量は、乾燥樹脂固体に基づいて約27重量パーセントであり、シリカおよび酸化チタンの量は、それぞれ1および10重量パーセントを超えるレベルで使用された。
【0128】
水性コーティング組成物のサンプルは、エポキシで裏打ちされた4分の1パイント缶を使用して調製された。市販のサテン外装塗料(150グラム)を缶に加えた。続いて、エポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials Inc.から入手可能なSilquest(登録商標)A-187)または例1のエポキシシランオリゴマー組成物を、サテン外装塗料に後添加した。低剪断パドルブレードを使用して、シランまたはエポキシシランオリゴマー組成物を組み込んだ。ドローダウンを実行する前に、サンプルを4時間放置した。材料は、アルキド硬化黒Lenetaスクラブチャート上に5ミルのバードバーを使用して引いた。水性コーティング組成物を含むアルキド硬化黒Lenetaスクラブチャートを、周囲温度および周囲湿度で様々な時間で乾燥(硬化)させた。
【0129】
24時間の硬化時間の後、ドローダウンは3つの等しい2.5×6.5インチ(6.35×16.51cm)のコーティングされたストリップにカットされた。第1のストリップを室温の脱イオン水に24時間浸した。第2のストリップをさらに3日間硬化させ、そして室温の脱イオン水に24時間浸した。最後のストリップをさらに6日間硬化させ、そして室温の脱イオン水に24時間浸漬した。認められた硬化および浸漬時間の後、パネルを脱イオン水から取り出し、ペーパータオルを使用して軽くたたいて乾かし、そしてASTM D714を使用して膨れを評価した。
【0130】
ドローダウンが完了したら、4分の1パイント缶内の残りの材料を適切な蓋を使用して封入し、そして50℃のオーブンに2週間入れた。サンプルを50℃のオーブンに2週間入れた後、サンプルを取り出し、そしてベンチトップに4時間置いて、室温に戻した。上記の実験は、これらのエージングした水性コーティング組成物サンプルで繰り返された。
【0131】
試験に使用された組成物は表1に示されている。
【表3】
【0132】
ASTM D 714評価の概観
【0133】
ASTM D 714試験方法の下で、膨れは、サイズおよび頻度に関して評価される。膨れのサイズは、10から0の数値スケールで評価され、ここで10は膨れがないことを表し、8は最小の膨れを表す;6、4、および2は、徐々に大きくなるサイズを表す。膨れの頻度は、特定の領域内の膨れの密度で評価され、D(高密度)、MD(中密度)、M(中)、またはF(少数)の名称が与えられる。現在の試験では、膨れの頻度は、コーティングされたストリップの塗装領域全体にわたって評価され、これは、2.5×6.5インチ(6.35×16.51cm)にカットされたプラカードの2インチ×2.5インチ(5.08cm×6.35cm)のドローダウンである塗装領域全体である。
【0134】
表2および表3は、それぞれのコーティングで観察された膨れの評価の結果を示している。表2は、「製造時」のコーティング、つまりコーティングをさらに処理せずに基材に適用されたコーティングで行われた試験の結果を示している。表3は、実験のセクションで説明したように熱エージングさせたコーティングの結果を示している。
【表4】

【表5】
【0135】
図1から5は、熱エージングされたコーティングを使用したコーティングサンプルの写真である。例2および3は、追加のエポキシシランを含まない比較例Aと比較して、1日および4日で評価された膨れの減少によって証明されるように、より良好な耐湿性を示す。例2および3はまた、比較例BおよびCよりも性能が優れている。高濃度のエポキシシランオリゴマーを用いた例3は、モノマーエポキシシランを使用した比較例BおよびCよりも良好に機能する。例2は、比較例BおよびCよりもわずかに高い密度の膨れを有するが、例2は、比較例BおよびCのコーティングが、例2および3には見られないピンホールなどの他の欠陥を示すという点で、より優れた性能を示している。
【0136】
上記に記載されたものは、本明細書の例を含む。もちろん、本明細書にて説明する目的で構成要素または方法論の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本明細書のさらに多くの組み合わせおよび順列が可能であることを認識することができる。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にあるそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することを意図している。さらに、「含む(includes)」という用語が詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語が請求項内の移行語として使用される場合に「含む(comprising)」が解釈されるのと同様の方法で包括的であることを意図する。
【0137】
前述の説明は、コーティング組成物、特にラテックスコーティング組成物の様々な非限定的な実施形態を特定する。当業者および本発明を作製および使用することができる人々に変更が生じ得る。開示された実施形態は、単に例示の目的のためであり、本発明の範囲または特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。


図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
【国際調査報告】