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特表2022-506189塩及び/又は発泡体を含むエネルギー貯蔵装置用の組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】塩及び/又は発泡体を含むエネルギー貯蔵装置用の組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220107BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220107BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220107BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220107BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220107BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20220107BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20220107BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220107BHJP
   H01G 11/54 20130101ALI20220107BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M4/139
H01M4/36 A
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/0585
H01G11/24
H01G11/30
H01G11/84
H01G11/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523392
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 US2019060263
(87)【国際公開番号】W WO2020097327
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/757,620
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508035757
【氏名又は名称】マックスウェル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペトロウスキー マット
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】タピア ヴィセンテ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA05
5E078BA26
5E078BA44
5E078BA68
5E078BA73
5E078BB30
5E078DA06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AK11
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ04
5H029CJ03
5H029CJ13
5H029CJ15
5H029DJ08
5H029DJ13
5H029EJ01
5H029EJ08
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050BA18
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA01
5H050EA02
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA14
5H050FA13
5H050GA03
5H050GA13
5H050GA16
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA08
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置は、カソード、アノード及びカソードとアノードとの間のセパレータを備え得る。電極の少なくとも1つは、乾燥プロセスにより製造された電極フィルムを含み得る。電極フィルム、電極及び/又はセパレータは、塩、改良された多孔度、増加した密度を含み得、事前リチウム化され得及び/又は発泡体を含み得る。本明細書には、電極及び/又は電極フィルムを製造するために使用されるプロセス及び装置についても記載されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムであって、
乾燥活物質;
乾燥バインダ;及び、
乾燥電解質塩
を備え、
前記乾燥電極フィルムは自立型である、乾燥電極フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電解質塩は、LiPF、LiBF、LiBOB、LiN(SOCF、LiOSOCF、LiNO、酢酸リチウム、ハロゲン化リチウム、テトラフルオロホウ酸テトラアルキルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラアルキルアンモニウム、ガーネットイオン伝導体、硫黄ベースのイオン伝導体、Li0.5La0.5TiO(LLTO)、LiLaZr12(LLZO)、リチウム超イオン伝導体(LISCON)、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、Li10SnP12、Li3xLa2/3-xTiO、Li0.8La0.6Zr(PO、Li1+xTi2-xAl(PO、Li1+x+yTi2-xAlSi(PO3-y及びLiTiZr2-x(PO、又はこれらの組み合わせから選択される、乾燥電極フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
前記乾燥電解質塩は、前記乾燥電極フィルムの1~10重量%を構成する、乾燥電極フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
少なくとも110μmの厚さを有する、乾燥電極フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムにおいて、
少なくとも0.8g/cmの電極フィルム密度を有する、乾燥電極フィルム。
【請求項6】
エネルギー貯蔵装置の乾燥勾配電極フィルムであって、
第1濃度の電解質塩を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の第1の乾燥電極フィルム;及び、
第2濃度の電解質塩を含み、前記第1濃度の電解質塩が前記第2濃度の電解質塩よりも少ない、請求項1~5のいずれか1項に記載の第2の乾燥電極フィルム
を有する、乾燥勾配電極フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムを備える固体エネルギー貯蔵装置であって、液体溶媒を含まない、固体エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムと、
装置ハウジング内の溶媒と
を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
請求項8に記載のエネルギー貯蔵装置において、
前記溶媒は高揮発性溶媒である、エネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の乾燥電極フィルムを備える、バッテリ。
【請求項11】
エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの製造方法であって、
乾燥活物質、乾燥バインダ及び乾燥電解質塩を準備すること;及び、
前記乾燥活物質、前記乾燥バインダ及び前記乾燥電解質塩から自立乾燥電極フィルムを形成すること
を含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記乾燥電極フィルムを溶媒にさらし、それにより電解質塩を溶解させることをさらに含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記乾燥電極フィルムをエネルギー貯蔵装置ハウジング内に配置することをさらに含み、 前記乾燥電極フィルムを溶媒にさらすことを、前記エネルギー貯蔵装置ハウジング内で行う、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記乾燥電極フィルムをエネルギー貯蔵装置ハウジング内に配置することをさらに含み、
前記乾燥電極フィルムを溶媒にさらすことを、乾燥電極を前記エネルギー貯蔵装置ハウジングに配置する前に行う、
乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
前記乾燥電極フィルムを溶媒にさらすステップ中に、前記乾燥電極フィルムの事前リチウム化を行うことをさらに含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の乾燥電極フィルムの製造方法において、
リチウム化された前記乾燥電極を圧延することをさらに含む、乾燥電極フィルムの製造方法。
【請求項17】
エネルギー貯蔵装置の発泡体-活物質複合体であって、
乾燥活物質;及び、
発泡体
を含む、発泡体-活物質複合体。
【請求項18】
請求項17に記載の材料において、
前記発泡体は、金属発泡体、セラミック発泡体又はそれらの組み合わせである、材料。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の材料において、
前記乾燥活物質は、前記発泡体により封止されている、材料。
【請求項20】
請求項17又は18に記載の材料において、
乾燥バインダをさらに含む、材料。
【請求項21】
請求項20に記載の材料において、
前記乾燥活物質及び前記乾燥バインダは、前記発泡体により封止されている、材料。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか1項に記載の材料を含み、
別個の集電体を含まない、エネルギー貯蔵装置の電極。
【請求項23】
請求項17~21のいずれか1項に記載の材料を含み、
集電体をさらに含む、エネルギー貯蔵装置の電極。
【請求項24】
エネルギー貯蔵装置の乾燥複合固体ポリマー電解質(SPE)フィルムであって、
乾燥イオン伝導性ポリマー;
乾燥リチウム源;
乾燥バインダ;
イオン伝導性媒体;及び、
乾燥フィラー材料
を含む、乾燥複合固体ポリマー電解質(SPE)フィルム。
【請求項25】
請求項24に記載のフィルムにおいて、
前記乾燥イオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(メチレンオキシド)、ポリオキシメチレン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(オキシエチレン)9メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メチルエーテルメタクリレート及びポリ(プロピレンイミン)、又はそれらの組み合わせから選択される、フィルム。
【請求項26】
請求項24又は25に記載のフィルムにおいて、
前記乾燥リチウム源は、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)(Li(CSON)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(C10LiNO)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FLiNO)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF(C)、ジフルオロリン酸リチウム(FLiOP)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロクロロホウ酸リチウム(LiBFCl)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、LiLaZr12、Li10SnP12、LixLa2/3-xTiO、Li0.8La0.6Zr(PO、Li1+xTi2-xAl(PO、Li1+x+yTi2-xAlSi(PO3-y及びLiTiZr2-x(PO、又はこれらの組み合わせから選択される、フィルム。
【請求項27】
請求項24~26のいずれか1項に記載のフィルムにおいて、
前記乾燥フィラーは、酸化チタン(TiO)、シリカ(SiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化銅(CuO)、モンモリロナイト((Na,Ca)0.33(Al,Mg)(Si10)、ベントナイト(Al34SiOO)、カオリナイト(AlSi(OH))、ヘクトライト(Na0.3(Mg,Li)Si10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH)))、4’-アミノ-2,3’-ジメチルアゾベンゼン(CHN=NC(CH)NH)、イットリウムアルミニウム酸化物(YAl12)、イットリウム鉄酸化物(YFe12)及びナノクレイ、又はそれらの組み合わせから選択される、フィルム。
【請求項28】
請求項24~27のいずれか1項に記載のフィルムにおいて、
前記イオン伝導性媒体は、ナノクレイ及びガーネットから選択される、フィルム。
【請求項29】
乾燥電極フィルムを含む乾燥カソード電極;
請求項24~28のいずれか1項に記載の乾燥複合SPEフィルム;及び、
リチウム金属アノード
を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項30】
請求項29に記載のエネルギー貯蔵装置において、
液体溶媒を含まない固体エネルギー貯蔵装置である、エネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先出願の参照による組み込み
本出願は、2018年11月8日に出願された米国仮出願番号62/757,620の優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、エネルギー貯蔵装置に関し、特に、エネルギー貯蔵装置電極用の組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
電子装置に電力を供給するために、例えば、キャパシタ、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッド及び/又は燃料電池を含む、様々なタイプのエネルギー貯蔵装置を使用できる。改良された電極配合物及び/若しくは製造プロセスを使用して準備された電極を備える、従来の又は固体リチウムイオンキャパシタ又はバッテリなどの、エネルギー貯蔵装置は、改良されたキャパシタの電気性能を促進できる。改良された電極配合物及び/又は製造プロセスを使用して製造された電極を備えるリチウムイオンキャパシタ又はバッテリは、改良されたサイクル性能、低減された等価直列抵抗(ESR)値、増大した電力密度性能及び/又は増大したエネルギー密度性能を示し得る。改良された電極配合物及び/又は製造プロセスは、エネルギー貯蔵装置の製造コストの削減にも役立ち得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示及び先行技術に対して達成される利点を要約する目的で、本開示の特定の目的及び利点をここに記載する。そのような目的又は利点のすべてが特定の実施形態で達成されるわけではない。したがって、例えば、当業者は、本発明が、教示又は示唆される他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点又は利点群を達成し又は最適化する方法で具体化又は実施され得ることを認識するであろう。
【0005】
第1の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムが提供される。乾燥電極フィルムは、乾燥活物質;乾燥バインダ;及び乾燥電解質塩を含む。乾燥電極フィルムは自立型(free-standing)である。
【0006】
いくつかの実施形態では、乾燥電解質塩は、LiPF、LiBF、LiBOB、LiN(SOCF、LiOSOCF、LiNO、酢酸リチウム、ハロゲン化リチウム、テトラフルオロホウ酸テトラアルキルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラアルキルアンモニウム、ガーネットイオン伝導体、硫黄ベースのイオン伝導体、Li0.5La0.5TiO(LLTO)、LiLaZr12(LLZO)、リチウム超イオン伝導体(LISCON)、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、Li10SnP12、Li3xLa2/3-xTiO、Li0.8La0.6Zr(PO、Li1+xTi2-xAl(PO、Li1+x+yTi2-xAlSi(PO3-y及びLiTiZr2-x(PO又はこれらの組み合わせから選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、乾燥電解質塩は、乾燥電極フィルムの1~10重量%を構成する。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、少なくとも110μmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、少なくとも0.8g/cmの電極フィルム密度を有する。
【0008】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥勾配電極フィルムが提供される。乾燥勾配電極フィルムは、第1濃度の電解質塩を含む、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの第1の乾燥電極フィルムと、第2濃度の電解質塩を含む、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの第2の乾燥電極フィルムとを有し、ここで、第1濃度の電解質塩は第2濃度の電解質塩よりも少ない。
【0009】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの乾燥電極フィルムを備える固体エネルギー貯蔵装置が提供され、ここで固体エネルギー貯蔵装置は液体溶媒を含まない。
【0010】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの乾燥電極フィルムと、装置ハウジング内に含まれる溶媒とを備えるエネルギー貯蔵装置が提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は高揮発性溶媒である。
【0011】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの乾燥電極フィルムを備える、バッテリが提供される。
【0012】
第2の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥電極フィルムの製造方法が提供される。本方法は、乾燥活物質、乾燥バインダ及び乾燥電解質塩を準備することを含む。本方法は、乾燥活物質、乾燥バインダ及び乾燥電解質塩から自立乾燥電極フィルム(a free standing dry electrode film)を形成することを、さらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥電極フィルムを溶媒にさらし、それにより電解質塩を溶解させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥電極フィルムをエネルギー貯蔵装置ハウジング内に配置することをさらに含み、ここで乾燥電極フィルムを溶媒にさらすことは、エネルギー貯蔵装置ハウジング内で行う。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥電極フィルムをエネルギー貯蔵装置ハウジング内に配置することをさらに含み、ここで乾燥電極フィルムを溶媒にさらすことは、乾燥電極をエネルギー貯蔵装置ハウジングに配置する前に行う。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥電極フィルムを溶媒にさらすステップ中に、乾燥電極フィルムの事前リチウム化(prelithiation)を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、リチウム化された乾燥電極を圧延すること(rolling)をさらに含む。
【0014】
第3の態様では、エネルギー貯蔵装置の発泡体-活物質複合体が提供される。この複合体は、乾燥活物質、乾燥バインダ及び発泡体を含む。
【0015】
第4の態様では、エネルギー貯蔵装置の発泡体-活物質複合体が提供される。この複合体は、乾燥活物質及び発泡体を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、発泡体は、金属発泡体、セラミック発泡体又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、乾燥活物質は、発泡体によって封止されている。いくつかの実施形態では、乾燥活物質及び乾燥バインダは、発泡体によって封止されている。
【0017】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置の電極は、発泡体-活物質複合体を含み、別個の集電体を含まない。
【0018】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置の電極は、発泡体-活物質複合体を含み、集電体をさらに含む。
【0019】
第5の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾燥複合固体ポリマー電解質(SPE)フィルムが提供される。このSPEフィルムは、乾燥イオン伝導性ポリマー;乾燥リチウム源;乾燥バインダ;イオン伝導性媒体;及び、乾燥フィラーを含む。
【0020】
いくつかの態様では、乾燥イオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(メチレンオキシド)、ポリオキシメチレン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(オキシエチレン)9メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メチルエーテルメタクリレート及びポリ(プロピレンイミン)又はそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、乾燥リチウム源は、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)(Li(CSON)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(C10LiNO)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FLiNO)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF(C)、ジフルオロリン酸リチウム(FLiOP)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロクロロホウ酸リチウム(LiBFCl)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、LiLaZr12、Li10SnP12、LixLa2/3-xTiO、Li0.8La0.6Zr(PO、Li1+xTi2-xAl(PO、Li1+x+yTi2-xAlSi(PO3-y及びLiTiZr2-x(PO又はこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、乾燥フィラーは、酸化チタン(TiO)、シリカ(SiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化銅(CuO)、モンモリロナイト((Na,Ca)0.33(Al,Mg)(Si10)、ベントナイト(Al34SiOO)、カオリナイト(AlSi(OH))、ヘクトライト(Na0.3(Mg,Li)Si10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH)))、4’-アミノ-2,3’-ジメチルアゾベンゼン(CHN=NC(CH)NH)、イットリウムアルミニウム酸化物(YAl12)、イットリウム鉄酸化物(YFe12)及びナノクレイ、又はそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、イオン伝導性媒体は、ナノクレイ及びガーネット、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0021】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置が提供される。エネルギー貯蔵装置は、乾燥電極フィルムを含む乾燥カソード電極と、乾燥複合SPEフィルムと、リチウム金属アノードとを備える。
【0022】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、液体溶媒を含まない固体エネルギー貯蔵装置である。
【0023】
これらの実施形態のすべては、本明細書に開示される本発明の範囲内にあることを意図している。これら及び他の実施形態は、添付の図面を参照する好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は、開示される特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示のこれら及び他の特徴、態様及び利点を、特定の実施形態の図面を参照して説明する。図面は、特定の実施形態を説明することを意図し、本発明を限定することを意図しない。
図1図1は、一実施形態に係る、エネルギー貯蔵装置の一例を示す概略側方断面図である。
図2図2は、電極塩を含む電極フィルム混合物から電極フィルムを製造するプロセスの一例を示すプロセスフロー図である。
図3図3は、電極フィルム混合物を発泡体で封止するプロセスの一例を示すプロセスフロー図である。
図4図4は、自立電極フィルムを発泡体に対してプレスするプロセスの一例を示すプロセスフロー図である。
図5図5は、電極塩を含む電極フィルムを事前リチウム化するために使用する装置及びプロセスを示す。
図6図6は、SPE-2(パネルa)、SPE-3(パネルb)、SPE-4(パネルc)及びSPE-5(パネルd)の配合物の乾燥混合粉末を示す。
図7図7は、カレンダ処理により乾燥混合粉末から変質したSPEフィルムの一例(パネルa)、並びにSPE-1(パネルb)、SPE-3(パネルc)及びSPE-4(パネルd)の乾燥材料から形成したフィルムを示す。
図8図8は、フィルムを所望の厚さに再カレンダ処理した、SPE-1(パネルa)、SPE-2(パネルb)、SPE-4(パネルc)及びSPE-5(パネルd)のフィルムを示す。
図9図9は、SPE-4粉末混合物から変質されたフィルムの表面を、20倍(パネルa)、200倍(パネルb)、500倍(パネルc)及び1000倍(パネルd)の倍率で示すSEM画像である。
図10図10は、再カレンダ処理されたSPE-4フィルムの表面を、20倍(パネルa)、200倍(パネルb)、500倍(パネルc)及び1000倍(パネルd)の倍率で示すSEM画像である。
図11図11は、再カレンダ処理されたSPE-4フィルムの引張(負荷)対伸びを示す機械的強度測定(パネルa)及び引張測定後の試験片の画像(パネルb)を示す。フィルムSPE-4_3、SPE-4_4及びSPE-4_5は、機器の負荷限界(10N)を超えた。ピーク引張強度10.32Nは、5回の測定の平均値であり、伸び2.91mmは、負荷限界を超えなかったSPE-4_1及びSPE-4_2の測定の平均値である。
図12図12は、Cu/SPE/CuのA.C.インピーダンスから測定されたSPE-4及びSPE-5フィルムのイオン伝導率を示す。
図13図13は、SPE-4(パネルa及びb)及びSPE-5(パネルc及びd)のLiストリッピング及び堆積におけるLi/SPE/Liセルの電圧プロファイルを示す図であり、電流密度は0.2mA/cmであり、Liストリッピングには3時間かかり、Li堆積には3時間かかり、正及び負の各々の分極後に残り5分かかった。
図14図14は、電気化学測定に使用したGr/SPE-1/Liポーチセルの構成を示す:1つのSPE層を有するセル1(パネルa)、2つのSPE層を有するセル2(パネルb)及びセルガード/SPE層を有するセル3(パネルc)。
図15図15は、図14に示すグラファイト/SPE-1/Liポーチセルの、セル1、セル2及びセル3について、第1サイクル容量(パネルa)及びクーロン効率(パネルb)を示す。
図16図16は、乾燥電極を有するSPE層の直接ラミネートの複数の固体構造を示す(パネルa、b、c及びd)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
定義
本明細書で使用される「バッテリ」及び「キャパシタ」という用語は、当業者にとって通常の慣習的な意味を与えられるべきである。「バッテリ」及び「キャパシタ」という用語は、互いに排他的なものではない。キャパシタ又はバッテリは、単独で動作し又はマルチセルシステムのコンポーネントとして動作し得る、単一の電気化学セルを指す場合がある。
【0026】
本明細書で使用する場合、エネルギー貯蔵装置の電圧は、単一のバッテリ又はキャパシタセルの動作電圧である。電圧は、負荷がかかっている状態で又は製造公差にしたがい、定格電圧を超えるか又は定格電圧を下回る場合がある。
【0027】
本明細書で提供される「自己支持(self-supporting)」電極フィルムは、フィルム又は層を支持し、電極フィルム又は層が自立できるように、その形状を維持するのに十分なバインダマトリックス構造を組み込んだ電極フィルムである。エネルギー貯蔵装置に組み込まれる場合、自己支持電極フィルム又は活性層は、そのようなバインダマトリックス構造を組み込んだものである。エネルギー貯蔵装置の製造プロセスを容易にするためには支持要素が使用されるが、一般に、採用される方法に応じて、そのような電極フィルム又は活性層は、集電体、支持ウェブ又は他の構造などの外部支持要素なしで、エネルギー貯蔵装置製造プロセスで使用するのに十分な強度がある。例えば、「自己支持」電極フィルムは、他の支持要素がなくても、電極製造プロセス内で巻き取り、取り扱い、巻きほどき(unrolled)を行うのに十分な強度を有し得る。カソード電極フィルム又はアノード電極フィルムなどの乾燥電極フィルムは、自己支持型であり得る。
【0028】
本明細書で提供されるように、「無溶媒」電極フィルムは、検出可能な処理溶媒、処理溶媒残留物又は処理溶媒不純物を含まない電極フィルムである。カソード電極フィルム又はアノード電極フィルムなどの乾燥電極フィルムは、無溶媒であり得る。
【0029】
「湿潤」電極、「湿潤プロセス」電極又はスラリー電極は、活物質、バインダ及び任意選択での添加剤の、スラリーを含む少なくとも1つのステップにより調製される電極である。湿潤電極は、処理溶媒、処理溶媒残留物及び/又は処理溶媒不純物を含み得る。
【0030】
説明
特定の実施形態及び例を以下に説明するが、当業者は、本発明が、具体的に開示された実施形態及び/又は使用並びにそれらの明らかな変更及び同等物を超えて拡張されることを理解するであろう。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、以下に記載するどの特定の実施形態によっても限定されるべきではないことが意図されている。
【0031】
電極フィルム充填密度又は電極フィルム多孔性は、改良された電気化学的性能を達成するためのエネルギー貯蔵装置コンポーネントにおける重要な特性である。したがって、適切な電極フィルム密度を決定して製造する必要がある。適切な電極フィルム密度は、高いイオン伝導率及び高い電子伝導率の両方を提供するものである。湿潤電極コーティングプロセスでは、電極材料の充填重量及び電極フィルム密度が別々のステップで生成され、溶媒が除去された後の電極フィルム密度は、通常、所望の標的電極フィルム密度のそれよりも小さい。
【0032】
乾燥電極プロセスでは、電極フィルム密度及び標的電極材料の充填重量の制御は、自立フィルムの厚さ及び加えられる圧縮圧力の大きさを制御することによって測定され、一般に、連続するカレンダ通過により達成される。したがって、湿潤コーティング技術とは異なり、電極材料の充填重量及び電極フィルム厚の独立した制御は制限される。乾燥電極フィルム製造における電極フィルムの多孔度は、主に自立フィルムの製造に使用される粉末配合によって制御される。粒子サイズ、表面化学及び形態は、供給される乾燥自立電極フィルムの電極フィルム密度に影響を与える一般的な特性である。
【0033】
場合によっては、細孔形成材料を粉末配合物に添加し、次いで除去し、自立フィルムに細孔体積を残すことができる。使用される細孔形成材料は、塩などの液体抽出及びすすぎ後のステップ、又はガス状副産物への熱分解を必要とする場合がある材料である。いくつかの実施形態では、本開示は、高多孔度(低密度)を有するが、製造コストを増加させるそのような後処理ステップをともなわない、乾燥処理された電極フィルムを製造するための材料及びプロセスを提供する。
【0034】
さらに、いくつかの実施形態では、これらの材料及びプロセスはまた、乾燥電極フィルムを事前リチウム化するために使用し得る。アノードをリチウム化するための従来のプロセスは、リールツーリール方式で電極をリチウム化するためのカウンタ電極としてリチウム金属を利用する。低コストの塩のアプローチはリチウム金属の使用を回避するが、従来、ガルバニ電池を使用した連続リールツーリールリチウム化での還元プロセスのために十分なリチウムイオンを維持するように、電解質チャンバへの塩のリアルタイム監視及び計量が必要である。本開示は、いくつかの実施形態において、電極フィルムを事前リチウム化するために使用し得る乾燥電極フィルム中の電極塩材料の使用を記載する。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルム中の電極塩の量を調整することによって、事前リチウム化のレベルを調整できる。いくつかの実施形態では、電極フィルムの事前リチウム化はまた、電極フィルムの多孔度の増加を与える。
【0035】
他の例では、これらの材料及びプロセスを使用して、固体電極を製造できる。典型的な市販のリチウムイオンバッテリは、可燃性の電解質を含むため、過充電すると発火や爆発の可能性がある。典型的なリチウムイオンバッテリの電極は、スラリーが活物質及び溶媒から構成された、湿潤プロセスから製造される。溶媒は、手順にコストを追加し、固体エネルギー貯蔵装置のコンポーネントを劣化させ得るだけでなく、N-メチル-2-ピロリドンなどの一般的に使用される溶媒が繰り返しの曝露により健康に悪影響を与える可能性がある。
【0036】
固体バッテリは、不燃性コンポーネントを使用することにより安全性を向上させる。さらに、固体バッテリは、デンドライトの形成が典型的な液体ベースのリチウムイオンバッテリに比べてそれほど深刻ではないため、電極として元素リチウム金属を安全に利用できる。リチウム金属は、グラファイトと比較して大幅に高い理論比容量を提供するため、典型的なリチウムイオンバッテリよりもエネルギー密度を向上させ得る。さらに、乾燥電極処理法は、従来の方法よりも安価で且つ安全であることが期待される。典型的には、固体リチウムバッテリは、イオン性及び/又は電子伝導性カソード、固体電解質及びリチウム金属アノードを有する。いくつかの実施形態では、固体電極は、乾燥固体電解質塩を含む。いくつかの実施形態では、固体電解質は、イオン伝導性無機固体電解質である。いくつかの実施形態では、固体電解質はポリマーベースのフィルムである。いくつかの実施形態では、乾燥処理された複合固体ポリマー電解質(SPE)である。
【0037】
いくつかの例では、実施形態は、より高密度の活物質、より大きな電極フィルム厚、より大きな電極フィルム密度及び/又はより大きな電子密度(例えば、エネルギー密度、比エネルギー密度、面積エネルギー密度、面積容量及び/又は比容量など)を有する電極フィルムを達成する乾燥電極配合物及び製造プロセスを含む。より高密度の電極フィルムは、一般に、より小さな体積でより多くの活物質を含むであろう。具体的には、より小さな粒子サイズ並びに活物質、バインダ及び添加剤のより密接な接触が、乾燥処理において実現され得る。乾燥処理法は、従来、高剪断及び/又は高圧処理ステップを使用して、電極フィルム材料を破壊し及び混合し、これが、構造上の利点に寄与し得る。本開示は、いくつかの実施形態において、電極密度及び多孔度が、電極材料組成を変化させることにより、例えば活物質、ポリマーバインダ及び添加剤を変化させることにより、改変し得ることを教示する。さらに、高充填での改良された高電極フィルム密度は、カレンダ処理温度、間隔サイズ、ロール速度、シーケンス及び通過の数などの、電極のカレンダ処理パラメータを制御することによっても生成され得ることがわかった。そのようなプロセス及び組成物を利用する実施形態は、高充填で著しく改良された電極フィルム密度を示す。いくつかの実施形態では、カレンダ処理は、周囲温度で行い得る。いくつかの実施形態では、高充填及び高電極フィルム密度は、電極フィルムの亀裂及び/又は層間剥離などの問題なく達成される。
【0038】
多くの実施形態及び例が本開示全体を通して説明されているが、当業者は、開示された実施形態が単独で使用されても、又は組み合わせて使用されてもよいことを理解するであろう。例えば、高密度電極フィルムは、固体システム及び/又は厚い電極フィルムで利用できる。他の例では、厚い電極フィルムは、電極塩を含む電極フィルム、固体システム、多孔質電極フィルム及び/又は発泡体を含む電極若しくは電極フィルムで利用できる。他の例では、発泡体を含む電極又は電極フィルムは、固体システム、電極塩を含む電極フィルム及び/又は多孔質電極フィルムで利用できる。多くの非限定的な例の組み合わせを本明細書に挙げるが、他の組み合わせもまた可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、改良された電気的及び/又は機械的性能特性を備えた、リチウムイオンキャパシタ(LiC)又はリチウムイオンバッテリなどのエネルギー貯蔵装置が提供される。いくつかの実施形態では、装置は、改良された電極フィルム組成を含む電極を備えていてもよく、これは、改良された電気的及び/又は機械的性能を提供し得る。いくつかの実施形態では、電極は、アノード又はカソードであり得る。
【0040】
本明細書の実施形態は、電極フィルム、エネルギー貯蔵装置及び電極塩を有する関連する方法のための、材料の混合物を含み得る。電極塩を利用することにより、多くの電気的、機械的性能及び/又は処理の利点を実現できる。
【0041】
例えば、乾燥電極フィルムは、電極塩を含み得る。ここで、乾燥電極フィルムが溶媒にさらされると、電極塩が溶媒に溶解し、それにより、多孔度が増加した乾燥電極フィルムを達成する。いくつかの実施形態では、溶媒は、エネルギー貯蔵装置のハウジング又は容器に投入されると乾燥電極フィルムと接触するように、配置される。例えば、ここで、電極塩は、電解質として作用するために装置内に残る。他の例では、溶解した電極塩を含む溶媒は、エネルギー貯蔵装置の容器から除去され及び/又は洗浄される。いくつかの実施形態では、溶媒は、エネルギー貯蔵装置の容器の外側の乾燥電極フィルムに導入され、それにより、乾燥電極フィルムが乾燥電極として集電体にラミネートされる前及び/又はエネルギー貯蔵装置の容器内に配置される前に、電極塩を除去する。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、溶媒で洗浄され、エネルギー貯蔵装置の容器の外側の電流にさらされるときに同時に事前リチウム化される。いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムは、エネルギー貯蔵装置の容器の外側で溶媒で洗浄した後に事前リチウム化され、例えば、事前リチウム化は、別個の事前リチウム化装置又はエネルギー貯蔵装置の容器内で行い得る。
【0042】
他の例では、乾燥電極は電極塩を含み得、乾燥電極は、エネルギー貯蔵装置における固体電極として利用される。いくつかの実施形態では、固体電極は、エネルギー貯蔵装置の容器内で完全に組み立てられ且つ動作するときには、溶媒を含まないままの乾燥電極である。いくつかの実施形態では、電極塩は導電性が高い。高導電性の塩は通常、格子エネルギーが比較的低いため、塩は溶媒に溶解して十分な数のイオンを生成する。例えば、いくつかの高導電性Li塩には、LiPF、LiClO及びLiN(SOCFが含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、電極塩はイオン性化合物であり得る。いくつかの実施形態では、電極塩は、固体電解質添加剤であり得る。いくつかの実施形態では、電極塩は、高いイオン伝導率を有する化合物であり得る。いくつかの実施形態では、電極塩は、高いイオン伝導性を有するセラミック化合物であり得る。いくつかの実施形態では、電極塩は、LiPF、LiBF、LiBOB、LiN(SOCF、LiOSOCF、LiNO、酢酸リチウム、ハロゲン化リチウム、テトラフルオロホウ酸テトラアルキルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラアルキルアンモニウム、フッ化リチウム、ガーネットイオン伝導体、例えばLiLaTa12及びLiN、硫黄ベースのイオン伝導体、例えば、LiS-P及びLiS-P-LiPO、高いイオン伝導性を有する他の化合物、例えばLi0.5La0.5TiO(LLTO)、LiLaZr12(LLZO)、リチウム超イオン伝導体(LISCON)、例えばLISCONは化学式Li(2+2x)Zn(l-x)GeOのものであり得る、のうち、少なくとも1つから選択され得る。いくつかの実施形態では、電極塩は、LiPF、LiBF、LiBOB、LiN(SOCF、LiOSOCF、LiNO、酢酸リチウム、ハロゲン化リチウム、テトラフルオロホウ酸テトラアルキルアンモニウム及びヘキサフルオロリン酸テトラアルキルアンモニウムの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、電極塩は、リチウム塩である。いくつかの実施形態では、その電極塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム及びフッ化リチウムの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、そのリン酸塩は、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)(Li(CSON)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、LiLaZr12、Li10SnP12、Li3xLa2/3-xTiO、Li0.8La0.6Zr(PO、Li1+xTi2-xAl(PO、Li1+x+yTi2-xAlSi(PO3-y及びLiTiZr2-x(POの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、電極塩はフッ化リチウムである。いくつかの実施形態では、電極塩は、ガーネットイオン伝導体、例えば、LiLaTa12及びLiNである。いくつかの実施形態では、電極塩は、硫黄ベースのイオン伝導体、例えば、LiS-P及びLiS-P-LiPOである。いくつかの実施形態では、電極塩は、高いイオン伝導性を有する他の化合物、例えば、Li0.5La0.5TiO(LLTO)及び/又はLiLaZr12(リチウムランタンジルコン酸塩又はLLZO)である。いくつかの実施形態では、電極塩は、リチウム超イオン伝導体(LISCON)であり、例えば、そのLISCONは、Li(2+2x)Zn(1-x)GeOの化学式を有し得る。いくつかの実施形態では、電極塩は、通常のエネルギー貯蔵装置の動作下では劣化しない。
【0044】
いくつかの実施形態では、電極塩は、乾燥電極混合物の0.5重量%若しくは約0.5重量%、1重量%若しくは約1重量%、2重量%若しくは約2重量%、3重量%若しくは約3重量%、4重量%若しくは約4重量%、5重量%若しくは約5重量%、6重量%若しくは約6重量%、7重量%若しくは約7重量%、8重量%若しくは約8重量%、9重量%若しくは約9重量%、10重量%若しくは約10重量%又は11重量%若しくは約11重量%又はそれらの値の間のあらゆる値、を構成する。例えば、いくつかの実施形態では、電極塩は、乾燥電極混合物の1~10重量%を構成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、装置で電解質として使用するための、又は装置外での洗浄として使用するための溶媒は、炭酸塩、エステル、アミド、エーテル、アルコール、スルホン及び水のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、溶媒は炭酸ジメチルである。いくつかの実施形態では、溶媒は高揮発溶媒であり、溶媒は周囲温度及び気圧で気体である。いくつかの実施形態では、その高揮発性溶媒は、1気圧を超える気圧で液体である。いくつかの実施形態では、その高揮発性溶媒は、20℃未満で液体である。いくつかの実施形態では、その高揮発性溶媒は、大気圧下での沸点が、約10℃若しくは最大約10℃、約20℃若しくは最大約20℃、約30℃若しくは最大約30℃、約40℃若しくは最大約40℃、約50℃若しくは最大約50℃、約57℃若しくは最大約57℃、約60℃若しくは最大約60℃、約66℃若しくは最大約66℃、約70℃若しくは最大約70℃、約80℃若しくは最大約80℃、約90℃若しくは最大約90℃、約91℃若しくは最大約91℃、約95℃若しくは最大約95℃、又はこれらの間の任意の範囲である。いくつかの実施形態では、その高揮発性溶媒は、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル又はそれらの混合物であり得る。
【0046】
図1は、本開示の1つ又は複数の実施形態に係る、エネルギー貯蔵装置100の例を示す側方断面の概略図である。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、バッテリ、キャパシタ、キャパシタ-バッテリハイブリッド又は燃料電池として分類できる。いくつかの実施形態では、装置100はリチウムイオンバッテリである。装置100は、第1の電極102、第2の電極104及び第1の電極102と第2の電極104との間に配置されたセパレータ106を備える。第1の電極102及び第2の電極104は、セパレータ106のそれぞれの反対側の表面に隣接する。いくつかの実施形態では、第1の電極102は、アノード(「負電極」)であり得、第2の電極104は、カソード(「正電極」)であり得る。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の電極102、104間のイオン輸送を容易にするための電解質122を備える。例えば、電解質122は、第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106と接触し得る。電解質122、第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置のハウジング120内に収容される。例えば、エネルギー貯蔵装置のハウジング120は、第1の電極102、第2の電極104及びセパレータ106の挿入、並びにエネルギー貯蔵装置100への電解質122の含浸に続いて、密閉し、第1の電極102、第2の電極104、セパレータ106及び電解質122が、ハウジングの外部の環境から物理的に密封されるようにしてもよい。エネルギー貯蔵装置100は、二重電極、二重層の装置として示されているが、単層電極などの他のタイプを実装し得ることが理解されよう。
【0047】
エネルギー貯蔵装置100は、任意の数の異なるタイプの電解質122を備え得る。例えば、装置100は、リチウム塩などのリチウム源、及び有機溶媒などの溶媒を含み得るリチウムイオンバッテリ電解質を備え得る。いくつかの実施形態では、装置100は、固体電解質中間相(solid electrolyte interphase)(SEI)-形成添加剤、電極湿潤添加剤又はセパレータ湿潤添加剤などの添加剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(C10LiNO)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FLiNO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF(C)、ジフルオロリン酸リチウム(FLiOP)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロクロロホウ酸リチウム(LiBFCl)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、それらの組み合わせ及び/又はその同等物を含み得る。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電解質溶媒は、1つ又は複数のエーテル及び/又はエステルを含み得る。例えば、リチウムイオン電解質溶媒は、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ビニル(VC)、炭酸プロピレン(PC)、それらの組み合わせ及び/又はその同等物を含み得る。例えば、電解質は、LiPF、炭酸エチレン、炭酸プロピレン及び炭酸ジエチルを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100の電解質122は、溶媒及び前記の電極塩の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、固体エネルギー貯蔵装置であり、したがって、電解質122は、溶媒を含まない。
【0049】
セパレータ106は、セパレータ106の反対側で隣接する2つの電極、例えば、第1の電極102及び第2の電極104を、その2つの隣接する電極間でのイオン輸送を可能にしつつ、電気的に絶縁するように構成し得る。セパレータ106は、適切な多孔質電気絶縁材料を含み得る。いくつかの実施形態では、セパレータ106は、ポリマー材料を含み得る。例えば、セパレータ106は、セルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料並びに/又はポリエチレン及びポリプロピレン材料を含み得る。いくつかの実施形態では、セパレータは、例えば、PP/PE又はPP/PE/PPなどの多層材料であり得る。いくつかの実施形態では、セパレータは、例えばセラミックコーティングされたPE、PP又は多層材料などの、セラミックコーティングされたものであってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、特にエネルギー貯蔵装置100が固体エネルギー貯蔵装置である場合、セパレータ106は、固体電解質層であり得る。いくつかの実施形態では、固体電解質層は、固体ポリマー電解質(SPE)を含み得る。
【0051】
図1に示すように、第1の電極102及び第2の電極104は、第1の電極フィルム112及び第2の電極フィルム114と接触する第1の集電体108と、第3の電極フィルム116及び第4の電極フィルム118と接触する第2の集電体110とを、それぞれ含む。第1の集電体108及び第2の集電体110は、対応する各電極フィルムと外部回路(図示しない)との間の電気的結合を容易にし得る。第1の集電体108及び/又は第2の集電体110は、1つ又は複数の導電性材料を含み、対応する電極と外部電気回路との間の電荷の移動を容易にするように選択された任意の適切な形状及びサイズを有する。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタルなど、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム及び合金などの貴金属、並びにそれらの組み合わせなどの金属材料を含み得る。例えば、第1の集電体108及び/又は第2の集電体110は、例えば、アルミホイル又は銅ホイルを含み得る。第1の集電体108及び/又は第2の集電体110は、対応する電極と外部回路との間で電荷の移動を提供するようなサイズの長方形又は実質的に長方形の形状を有し得る。いくつかの実施形態では、集電体は、本明細書に記載するような発泡体を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極フィルムは、集電体によって封止される。
【0052】
第1の電極102は、第1の集電体108の第1の表面(例えば、第1の集電体108の上面)における第1の電極フィルム112(例えば、上部電極フィルム)と、第1の集電体108の第2の反対側の表面(例えば、第1の集電体108の底面)におけるの第2の電極フィルム114(例えば、下部電極フィルム)とを有し得る。同様に、第2の電極104は、第2の集電体110の第1の表面(例えば、第2の集電体110の上面)における第3の電極フィルム116(例えば、上部電極フィルム)と、第2の集電体110の第2の反対側の表面(例えば、第2の集電体110の底面)における第4の電極フィルム118とを有し得る。例えば、第2の集電体110の第1の表面は、セパレータ106が第1の電極102の第2の電極フィルム114及び第2の電極104の第3の電極フィルム116に隣接するように、第1の集電体108の第2の表面に面し得る。いくつかの実施形態では、電極は、例えば、図1に示す第1の電極102の第1の集電体108における第1の電極フィルム112及び第2の電極フィルム114などの、2つ以上の電極フィルムを含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、例えば、図1に示される第1の電極102が第1の電極フィルム112及び第1の集電体108から構成されるように、1つのみの電極フィルムのみを含み得る。
【0053】
電極フィルム112及び/又は114は、本明細書で提供される乾燥及び/又は自立電極フィルムであり得、本明細書で提供されるように、増加した厚さ、増加した電極フィルム密度、増加した電極フィルムの多孔度、増加したエネルギー密度、増加した比エネルギー密度、増加した面積エネルギー、及び/又は増加した面積容量などの有利な特性を有する。
【0054】
電極フィルムは、特定の用途に適した選択された厚さを有し得る。本明細書で提供される電極フィルムの厚さは、従来のプロセスにより準備された電極フィルムの厚さよりも厚くてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約30ミクロン以上、約50ミクロン以上、約100ミクロン以上、約110ミクロン以上、約115ミクロン以上、約120ミクロン以上、約130ミクロン以上、約135ミクロン以上、約150ミクロン以上、約155ミクロン以上、約160ミクロン以上、約170ミクロン以上、約200ミクロン以上、約250ミクロン以上、約260ミクロン以上、約265ミクロン以上、約270ミクロン以上、約280ミクロン以上、約290ミクロン以上、約300ミクロン以上、約350ミクロン以上、約400ミクロン以上、約450ミクロン以上、約500ミクロン以上、約750ミクロン以上、約1mm以上若しくは約2mm以上以上、又はこれらの間の値の任意の範囲であってよい。電極フィルム厚は、所望の面積容量、比容量、面積エネルギー密度、エネルギー密度又は比エネルギー密度に対応するように選択され得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム厚は、単一電極フィルムの厚さに対応する。いくつかの実施形態では、電極フィルム厚は、一緒に形成されて電極フィルムとなる複数の単一電極フィルムの厚さに対応する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される電極フィルムの電極フィルム多孔度は、従来のプロセスにより準備された電極フィルムの多孔度よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される電極フィルムの電極フィルム多孔度は、従来のプロセスにより準備された電極フィルム多孔度よりも小さくてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約5%、約8%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%もしくは約40%、又はこれらの間の値の任意の範囲であってよい、電極フィルム多孔度(これは、細孔によって占められる電極フィルムの体積のパーセンテージとして表され得る)を有し得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、少なくとも約5%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約12%、少なくとも約14%、少なくとも約16%、少なくとも約18%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%若しくは少なくとも約40%、又はこれらの間の値の任意の範囲の、電極フィルム多孔度(これは、細孔によって占められる電極フィルムの体積のパーセンテージとして表され得る)を有し得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、最大で約5%、少なくとも約8%、少なくとも最大で約10%、最大で約12%、最大で約14%、最大で約16%、最大で約18%、最大で約20%、最大で約25%、最大で約30%、最大で約35%若しくは最大で約40%、又はこれらの間の値の任意の範囲であってもよい、電極フィルム多孔度(細孔によって占められる電極フィルムの体積のパーセンテージとして表され得る)を有し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される電極フィルムの電極フィルム密度は、従来のプロセスにより準備された電極フィルムの密度よりも小さくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される電極フィルムの電極フィルム密度は、従来のプロセスにより準備された電極フィルムの電極フィルム密度よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約0.8g/cm、約1.0g/cm、約1.4g/cm、約1.5g/cm、約1.6g/cm、約1.7g/cm、約1.8g/cm、約1.9g/cm、約2.0g/cm、約2.5g/cm、約3.0g/cm、約3.3g/cm、約3.4g/cm、約3.5g/cm、約3.6g/cm、約3.7g/cm、約3.8g/cm、約3.9g/cm、約4.0g/cm、約4.1g/cm若しくは約4.2g/cm、又はこれらの間の値の任意の範囲の、電極フィルム密度を有し得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、最大で約0.8g/cm、約1.0g/cm、1.4g/cm、最大で約1.5g/cm、最大で約1.6g/cm、最大で約1.7g/cm、最大で約1.8g/cm、最大で約1.9g/cm若しくは最大で約2.0g/cm、又はこれらの間の値の任意の範囲の、電極フィルム密度を有し得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、少なくとも約0.8g/cm、約1.0g/cm、約1.4g/cm、少なくとも約1.5g/cm、少なくとも約1.6g/cm、少なくとも約1.7g/cm、少なくとも約1.8g/cm、少なくとも約1.9g/cm、少なくとも約2.0g/cm、少なくとも約2.5g/cm、少なくとも約3.0g/cm、少なくとも約3.3g/cm、少なくとも約3.4g/cm、少なくとも約3.5g/cm、少なくとも約3.6g/cm、少なくとも約3.7g/cm、少なくとも約3.8g/cm、少なくとも約3.9g/cm、少なくとも約4.0g/cm、少なくとも約4.1g/cm若しくは少なくとも約4.2g/cm、又はこれらの間の値の任意の範囲の、電極フィルム密度を有し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、電極配合物は、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約23℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約50℃、約60℃、約65℃、約90℃、約120℃、約150℃、約170℃、約200℃、約220℃若しくは約250℃又はこれらの間の値の任意の範囲の温度でカレンダ処理し得る。いくつかの実施形態では、電極配合物は、ほぼ周囲温度又は室温でカレンダ処理し得る。
【0058】
電極フィルムは、一般に、1つ又は複数の活物質、例えば、本明細書で提供されるようなアノード活物質又はカソード活物質を含む。第1の電極フィルム112及び/又は第2の電極フィルム114はまた、本明細書で提供されるような1つ又は複数のバインダを含み得る。電極フィルム112及び/又は114は、本明細書に記載するプロセスにより準備できる。電極フィルム112及び/又は114は、本明細書に記載するように、湿潤又は自己支持型の乾燥電極であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、1つ若しくは複数の電極フィルム112及び/又は114などの電極フィルムは、本明細書に記載するように、少なくとも1つの電極塩を含む。いくつかの実施形態では、電極フィルムはまた、少なくとも1つの活物質及び少なくとも1つのバインダを含む。少なくとも1つの活物質は、当技術分野で知られている任意の活物質であり得る。少なくとも1つの活物質は、バッテリのアノード又はカソードでの使用に適した材料であり得る。
【0060】
少なくとも1つの活物質は、1つ以上の炭素材料を含み得る。その炭素材料は、例えば、黒鉛材料(graphitic material)、グラファイト、グラフェン含有材料、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、導電性炭素又はそれらの組み合わせから選択され得る。活性炭は、蒸気プロセス又は酸/エッチングプロセスから得られる。いくつかの実施形態では、黒鉛材料は、表面処理された材料であり得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、活性炭を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、階層的に構造化された炭素を含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤー及び/又は構造化カーボンナノシートを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、グラフェンシートを含み得る。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、表面処理された炭素であり得る。
【0061】
アノード活物質は、例えば、挿入材料(炭素、グラファイト(天然、合成又はブレンドなど)、ハードカーボン又はアモルファスカーボン及び/又はグラフェンなど)、合金化/脱合金化材料(シリコン、酸化ケイ素、スズ及び/又は酸化スズなど)、金属元素、金属合金又は化合物(Si-Al及び/又はSi-Snなど)、及び/又は変質材料(酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケルなど及び/又は酸化銅など)、を含み得る。アノード活物質は、単独で使用してもよく、混合して多相材料(Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SiOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-SnOx-C、Si-SiOx-Sn又はSn-SiOx-SnOxなど)を形成してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、少なくとも1つの活物質、バインダ、及び任意選択の導電性添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、アノードの少なくとも1つの活物質は、合成グラファイト、天然グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン、メソポーラスカーボン、シリコン、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、混合物又は前記材料の複合材料を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約80~約98重量%又は約94~約97重量%を含む、約80~約98重量%の、少なくとも1つの活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約92重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%若しくは約99重量%、又はこれらの間の値の任意の範囲の、少なくとも1つの活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約1~約3重量%を含む、最大約5重量%の導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約5重量%若しくは最大約5重量%、約3重量%若しくは最大約3重量%、約1重量%若しくは最大約1重量%又は約0.5重量%若しくは最大約0.5重量%、又はこれらの間の値の任意の範囲の、導電性添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約1.5~約10重量%、約1.5~約5重量%、又は約3~約5重量%を含む、最大約20重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約4重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムは、約20重量%若しくは最大約20重量%、約15重量%若しくは最大約15重量%、約10重量%若しくは最大約10重量%、約5重量%若しくは最大約5重量%、約3重量%若しくは最大約3重量%、約1.5重量%若しくは最大約1.5重量%又は約1重量%若しくは最大約1重量%の、又はこれらの間の任意の範囲の値のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノードフィルムは、導電性添加剤を含まなくてもよい。
【0063】
カソード活物質は、例えば、金属酸化物、金属硫化物又はリチウム金属酸化物を含み得る。リチウム金属酸化物は、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム鉄リン酸塩(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムチタン酸塩(LTO)及び/又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)であり得る。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、例えば、層状遷移金属酸化物(LiCoO(LCO)、Li(NiMnCo)O(NMC)及び/又はLiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA)など)、スピネル酸化マンガン(LiMn(LMO)及び/又はLiMn1.5Ni0.5(LMNO)など)、かんらん石(LiFePOなど)、カルコゲナイド(LiTiS)、タボライト(LiFeSOF)、シリコン、酸化ケイ素(SiOx)、アルミニウム、スズ、酸化スズ(SnOx)、酸化マンガン(MnOx)、酸化モリブデン(MoO)、二硫化モリブデン(MoS)、酸化ニッケル(NiOx)又は酸化銅(CuOx)を含み得る。カソード活物質は、硫黄又は硫化リチウム(LiS)などの硫黄を含む材料若しくは他の硫黄ベースの材料、又はそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、カソードフィルムは、硫黄又は少なくとも50重量%の濃度の硫黄活物質を含む材料を含む。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料を含むカソードフィルムは、少なくとも10mAh/cmの面積容量を有する。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料を含むカソードフィルムは、1g/cmの電極フィルム密度を有する。いくつかの実施形態では、硫黄を含むカソードフィルム又は硫黄活物質を含む材料は、バインダをさらに含む。いくつかの実施形態では、硫黄又は硫黄活物質を含む材料を含むカソードフィルムのバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、ゼラチン、その他の熱可塑性プラスチック又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極フィルムは、約70~約92重量%又は約70~約96重量%を含む、約70~約98重量%の少なくとも1つの活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約70重量%若しくは最大約70重量%、約90重量%若しくは最大約90重量%、約92重量%若しくは最大約92重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%若しくは最大約96重量%又は約98重量%若しくは最大約98重量%、又はこれらの間の任意の範囲の値の、少なくとも1つの活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリ又はハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極フィルムは、約40~約60重量%の少なくとも1つの活物質を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、最大約5重量%又は約1~約5重量%を含む、最大約10重量%の多孔質炭素材料を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約10重量%若しくは最大約10重量%、約5重量%若しくは最大約5重量%、約1重量%若しくは最大約1重量%又は約0.5重量%若しくは最大約0.5重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、多孔質炭素材料を含み得る。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約1~約3重量%を含む最大約5重量%の導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約10重量%若しくは最大約10重量%、5重量%、約3重量%若しくは最大約3重量%、又は約1重量%若しくは最大約1重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、最大約20重量%のバインダ、例えば、約1.5~10重量%、約1.5~約5重量%、又は約1.5~3重量%を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約1.5~約3重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムは、約20重量%若しくは最大約20重量%、約15重量%若しくは最大約15重量%、約10重量%若しくは最大約10重量%、約5重量%若しくは最大約5重量%、約3重量%若しくは約3重量%、約1.5重量%若しくは最大約1.5重量%又は約1重量%若しくは最大約1重量%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、バインダを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、バインダ材は、1つ又は複数のフィブリル化可能なバインダ成分を含み得る。例えば、電極フィルムを形成するためのプロセスは、電極フィルムがフィブリル化されたバインダを含むように、フィブリル化可能なバインダ成分をフィブリル化することを含み得る。バインダ成分は、複数のフィブリルを提供するようにフィブリル化でき、それらのフィブリルには、フィルムの他の1つ以上の成分のための機械的支持が望まれる。電極フィルムは、電極フィルムの他の成分を支持するように、フィブリルの構造マトリックス、格子及び/又はウェブを含み得る。例えば、フィブリルのマトリックス、格子及び/又はウェブを形成して、電極フィルムに所望の機械的構造を提供し得る。例えば、リチウムイオンキャパシタのカソード及び/又はアノードは、1つ又は複数のフィブリル化されたバインダ成分を含む1つ又は複数の電極フィルムを含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態は、ポリマーバインダ材を含む1つ又は複数の活性層を有する、アノード及び/又はカソードなどの電極フィルムを含む。バインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアルキレン、ポリエーテル、スチレンブタジエン、ポリシロキサンのコポリマー、ポリシロキサン、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。バインダは、セルロース、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。例えば、バインダは、ポリ塩化ビニレン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー及び/又はそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは熱可塑性プラスチックであり得る。いくつかの実施形態では、バインダは、フィブリル化可能なポリマーを含む。特定の実施形態では、バインダは、PTFEを含むか、本質的にそれから構成されるか又はそれから構成される。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する1つ又は複数の電極フィルムは、乾燥製造プロセスを使用して製造できる。本明細書で使用される場合、乾燥製造プロセスは、電極フィルムの形成に溶媒が使用されないか、又は実質的に使用されないプロセスを指し得る。例えば、炭素材料及びバインダを含む、活性層又は電極フィルムの成分は、乾燥粒子を含み得る。活性層又は電極フィルムを形成するための乾燥粒子は、組み合わせられて、粒子活性フィルム混合物を提供し得る。いくつかの実施形態では、活性層又は電極フィルムは、粒子活性フィルム混合物から形成して、活性層又は電極フィルムの成分の重量パーセント及び乾燥粒子活性フィルム混合物の成分の重量パーセントが実質的に同じであるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、乾燥製造プロセスを使用して乾燥粒子活性フィルム混合物から形成された活性層又は電極フィルムは、任意の処理溶媒及びそれから生じる溶媒残留物を、含まないか又は実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、活性層又は電極フィルムは、乾燥粒子混合物からの乾燥プロセスを使用して形成された自立乾燥粒子電極フィルムである。活性層又は電極フィルムを形成するためのプロセスは、フィルムがフィブリル化されたバインダを含むように、フィブリル化可能なバインダ成分をフィブリル化することを含み得る。さらなる実施形態では、自立活性層又は電極フィルムは、集電体なしで形成し得る。さらなる実施形態では、活性層又は電極フィルムは、フィルムが自己支持するように、フィブリル化ポリマーマトリックスを含み得る。フィブリルのマトリックス、格子又はウェブを形成して、電極フィルムに機械的構造を提供できると考えられる。
【0068】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置の電極フィルムは、約12mg/cm、約13mg/cm、約14mg/cm、約15mg/cm、約16mg/cm、約17mg/cm、約18mg/cm、約19mg/cm、約20mg/cm、約21mg/cm、約22mg/cm、約23mg/cm、約24mg/cm、約25mg/cm、約26mg/cm、約27mg/cm、約28mg/cm、約29mg/cm、約30mg/cm、約40mg/cm、約50mg/cm、約60mg/cm、約70mg/cm、約80mg/cm、約90mg/cm若しくは約100mg/cm又はそれらの間の任意の範囲の値の、高電極材料充填、又は高活物質充填(これは、電極フィルム又は集電体の単位面積あたりの活物質の重量として表され得る)を提供し得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置の電極フィルムは、少なくとも約12mg/cm、少なくとも約13mg/cm、少なくとも約14mg/cm、少なくとも約15mg/cm、少なくとも約16mg/cm、少なくとも約17mg/cm、少なくとも約18mg/cm、少なくとも約19mg/cm、少なくとも約20mg/cm、少なくとも約21mg/cm、少なくとも約22mg/cm、少なくとも約23mg/cm、少なくとも約24mg/cm、少なくとも約25mg/cm、少なくとも約26mg/cm、少なくとも約27mg/cm、少なくとも約28mg/cm、少なくとも約29mg/cm、少なくとも約30mg/cm、少なくとも約40mg/cm、少なくとも約50mg/cm、少なくとも約60mg/cm、少なくとも約70mg/cm、少なくとも約80mg/cm、少なくとも約90mg/cm若しくは少なくとも約100mg/cm、又はこれらの間の任意の値の範囲の、高電極材料充填、又は高活物質充填(これは、電極フィルム又は集電体の単位面積あたりの重量として表され得る)を提供し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置電極フィルムは、約3.5mAh/cm若しくは少なくとも約3.5mAh/cm、約3.8mAh/cm若しくは少なくとも約3.8mAh/cm、約4mAh/cm若しくは少なくとも約4mAh/cm、約4.3mAh/cm若しくは少なくとも約4.3mAh/cm、約4.5mAh/cm若しくは少なくとも約4.5mAh/cm、約4.8mAh/cm若しくは少なくとも約4.8mAh/cm、約5mAh/cm若しくは少なくとも約5mAh/cm、約5.5mAh/cm若しくは少なくとも約5.5mAh/cm、約6mAh/cm若しくは少なくとも約6mAh/cm、約6.5mAh/cm若しくは少なくとも約6.5mAh/cm、約6.6mAh/cm若しくは少なくとも約6.6mAh/cm、約7mAh/cm若しくは少なくとも約7mAh/cm、約7.5mAh/cm若しくは少なくとも約7.5mAh/cm、約8mAh/cm若しくは少なくとも約8mAh/cm又は約10mAh/cm若しくは少なくとも約10mAh/cm、又はこれらの間の任意の範囲の値の面積容量(電極フィルム又は集電体の単位面積あたりの容量として表し得る)を提供できる。さらなる実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置電極フィルムは、少なくとも約8mAh/cm、例えば約8mAh/cm、約10mAh/cm、約12mAh/cm、約14mAh/cm、約16mAh/cm、約18mAh/cm、約20mAh/cm又はこれらの間の任意の範囲の値の、面積容量(電極フィルム又は集電体の単位面積あたりの容量として表され得る)を提供し得る。いくつかの実施形態では、面積容量は充電容量である。さらなる実施形態では、面積容量は放電容量である。
【0070】
いくつかの実施形態では、乾燥及び/又は自己支持グラファイトバッテリのアノード電極フィルムは、約3.5mAh/cm、約4mAh/cm、約4.5mAh/cm、約5mAh/cm、約5.5mAh/cm、約6mAh/cm、約6.5mAh/cm、約7mAh/cm、約7.5mAh/cm、約8mAh/cm、約8.5mAh/cm、約9mAh/cm、約10mAh/cm、又はこれらの間の任意の範囲の値の、面積容量を提供し得る。いくつかの実施形態では、面積容量は充電容量である。さらなる実施形態では、面積容量は放電容量である。
【0071】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置電極フィルムは、約150mAh/g、約160mAh/g、約170mAh/g、約175mAh/g、約176mAh/g、約177mAh/g、約179mAh/g、約180mAh/g、約185mAh/g、約190mAh/g、約196mAh/g、約200mAh/g、約250mAh/g、約300mAh/g、約350mAh/g、約354mAh/g若しくは約400mAh/g、又はこれらの間の任意の範囲の値の、比容量(これは、活物質の質量当たりの容量として表され得る)を提供し得る。さらなる実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置電極フィルムは、少なくとも約175mAh/g若しくは少なくとも約250mAh/g、又はこれらの間の任意の範囲の値の、比容量(電極フィルム又は集電体の質量当たりの容量として表され得る)を提供し得る。いくつかの実施形態では、比容量は充電容量である。さらなる実施形態では、比容量は放電容量である。いくつかの実施形態では、電極は、アノード及び/又はカソードであり得る。いくつかの実施形態では、比容量は、最初の充電及び/又は放電容量であり得る。さらなる実施形態では、比容量は、最初の充電及び/又は放電の後に測定された充電及び/又は放電容量であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する自己支持乾燥電極フィルムは、有利には、典型的な電極フィルムと比較して改良された性能を示し得る。その性能は、例えば、引張強度、弾性(伸び)、曲げ性、クーロン効率、容量又は導電率であり得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵装置電極フィルムは、クーロン効率、例えば約85%若しくは少なくとも約85%、約86%若しくは少なくとも約86%、約87%若しくは少なくとも約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%又は約95%、又はこれらの間の任意の範囲の値、例えば90.1%、90.5%及び91.9%又はこれらの間の任意の範囲の値の、第1サイクルのクーロン効率(これは、放電容量を充電容量で割ったパーセントとして表され得る)を提供し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/若しくは自己支持フィルムであるか又は電極が乾燥及び/若しくは自己支持フィルムを含む、エネルギー貯蔵装置電極フィルム又は電極は、約10%若しくは少なくとも約10%、約20%若しくは少なくとも約20%、約30%若しくは少なくとも約30%、約40%若しくは少なくとも約40%、約50%若しくは少なくとも約50%、約60%若しくは少なくとも約60%、約70%若しくは少なくとも約70%、約80%若しくは少なくとも約80%、約90%若しくは少なくとも約90%、約98%若しくは少なくとも約98%、約99%若しくは少なくとも約99%、約99.9%若しくは少なくとも約99.9%又は約100%若しくは少なくとも約100%、又はこれらの間の任意の範囲の値の、放電容量保持パーセンテージ(所定速度での放電容量をC/10で測定された放電容量で割ったものによって表され得る)を提供し得る。いくつかの実施形態では、充電容量保持パーセンテージの放電率は、C/10以上、C/5以上、C/3以上、C/2以上、1C以上、1.5C以上若しくは2C以上、又はこれらの間の任意の値である。
【0074】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/若しくは自己支持フィルムであるか又は電極が乾燥及び/若しくは自立フィルムを含む、エネルギー貯蔵装置電極フィルム又は電極は、約10%若しくは少なくとも約10%、約20%若しくは少なくとも約20%、約30%若しくは少なくとも約30%、約40%若しくは少なくとも約40%、約50%若しくは少なくとも約50%、約60%若しくは少なくとも約60%、約70%若しくは少なくとも約70%、約80%若しくは少なくとも約80%、約90%若しくは少なくとも約90%、約98%若しくは少なくとも約98%、約99%若しくは少なくとも約99%、約99.9%若しくは少なくとも約99.9%、約100%若しくは少なくとも約100%、又はそれらの間の任意の範囲の値の、充電容量生成パーセンテージ(これは、所定の定電流速度で測定された充電容量をC/10で測定された放電容量で割ったものにより表され得る)を提供し得る。いくつかの実施形態では、充電容量生成パーセンテージの充電率は、少なくともC/10、C/5、C/3、C/2、1C、1.5C若しくは2C、又はこれらの間の任意の値である。
【0075】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自己支持フィルムであるエネルギー貯蔵の装置電極フィルムは、比エネルギー密度又は質量エネルギー密度(電極フィルムの質量当たりのエネルギーとして表され得る)が、約200Wh/kg、約210Wh/kg、約220Wh/kg、約230Wh/kg、約240Wh/kg、約250Wh/kg、約260Wh/kg、約270Wh/kg、約280Wh/kg、約290Wh/kg、約300Wh/kg、約400Wh/kg、約500Wh/kg、約600Wh/kg、約650Wh/kg、約700Wh/kg、約750Wh/kg、約800Wh/kg、約825Wh/kg、約850Wh/kg若しくは約900Wh/kg、又はこれらの間の任意の範囲の値であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、電極フィルムが乾燥及び/又は自立フィルムであるエネルギー貯蔵装置電極フィルムは、エネルギー密度又は体積エネルギー密度(これは、最終的な又はその場(in situ)での電極フィルムの単位体積あたりのエネルギーとして表され得る)が、約550Wh/L、約600Wh/L、約630Wh/L、約650Wh/L、約680Wh/L、約700Wh/L、約750Wh/L、約850Wh/L、約950Wh/L、約1100Wh/L、約1400Wh/L、約1425Wh/L、約1450Wh/L、約1475Wh/L、約1500Wh/L、約1525Wh/L若しくは約1550Wh/L、又はこれらの間の任意の範囲の値であり得る。
【0077】
図2は、いくつかの実施形態に係る、電極フィルムを製造するためのプロセス200の例を示すプロセスフロー図である。いくつかの実施形態では、電極フィルムを製造するためのプロセス200は、得られる電極フィルムが液体、溶媒及び結果として生じる残留物を含まない又は実質的に含まないように、液体又は溶媒を使用しない、乾燥プロセスである。ブロック202では、電極塩を含む電極フィルム混合物を形成する。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、電極活物質をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、炭素粒子をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、バインダ材をさらに含み得る。任意選択で、1つ又は複数の導電性促進添加剤を組み合わせてもよく、例えばグラフェン、グラファイト又はカーボンナノチューブである。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、乾燥粒子混合物である。いくつかの実施形態では、バインダ材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの1つ又は複数のフィブリル化化可能なポリマーを含む。いくつかの実施形態では、バインダ材は、PTFEなどの1つのタイプのポリマーから構成されているか、又は本質的にそれから構成されている。いくつかの実施形態では、導電性促進添加剤は、1つ又は複数の導電性炭素であり得る。例えば、導電性カーボンは、本明細書に記載する1つ又は複数のタイプのカーボンブラック及び/又はグラファイトを含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、連続混合プロセスを使用できる。そのような実施形態では、混合及び/又は粉砕を行う時間は、供給速度に反比例し得る。一般に、供給速度はミリングマシン(the milling machinery)に依存し、本明細書で提供されるガイダンスを考慮して、そのマシンの動作パラメータに基づき調整し得る。さらなる実施形態では、より大きなチャネルを有する装置を使用して、混合及び/又は粉砕を行う時間を長くできる。バッチ混合及び/又は粉砕プロセスを使用する場合、その時間は、単により長い時間及び/又はより高いRPMで混合及び/又は粉砕を行うことにより、長くし得る。
【0079】
ブロック204では、バインダ材からフィブリルを形成するために、電極フィルム混合物をフィブリル化し得る。フィブリル化プロセスは、速度を下げたり及び/又は処理圧力を上げたりして行い得る。速度を下げ及び/又は処理圧力を上げることは、より少ない量のバインダ材を使用して、引っ張り、剪断、圧縮及び/又はねじれ応力に対して所望の耐性を有する電極フィルムを形成できるように、フィブリルの形成の増加を促進し得る。本明細書に記載するように、いくつかの実施形態では、フィブリル化プロセスは、例えば混合及び/又は粉砕プロセスを含む、機械的剪断プロセスであり得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物の粒子がブレンダ及び/又はミルを循環する速度は、フィブリル化プロセス中に低下し得る。いくつかの実施形態では、フィブリル化プロセス中のブレンダ及び/又はミル内の処理圧力を増加させ得る。いくつかの実施形態では、ブロック202の形成ステップ及びブロック204のフィブリル化ステップは、1つ又は実質的に1つの連続工程であり得る。速度を低下させ及び/又は処理圧力を増加させると、例えば、単一のより高圧のカレンダ処理(単一のステップ)又は複数のカレンダ処理ステップのいずれかにより、例えばこのときフィルムの巻きが解かれ(unwound)、次いで、最初のカレンダ処理ステップ後に再カレンダ処理を1回以上行い、例えば自立電極フィルムなどの十分に大きな強度を有する電極フィルムの製造が可能となる。
【0080】
ブロック206において、電極フィルム混合物は、カレンダ装置でカレンダ処理されて、自立型のフィブリル化された電極フィルムを形成できる。カレンダ装置は、当技術分野でよく知られており、一般に、電極フィルム混合物などの原材料がその間に供給されて電極フィルムを構成する、一対のカレンダロール(機械的に固定された間隔又は水圧若しくは空気圧により固定された間隔のいずれかを有する)を備える。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、追加のカレンダ処理ステップなしで、第1のカレンダ処理ステップで形成され、本明細書でさらに説明するように、所望の最小厚さでフィルムを形成できる。いくつかの実施形態では、カレンダ処理された混合物は、液体、溶媒及びそれらから生じる残留物を含まない又は実質的に含まない自立乾燥粒子フィルムを形成する。いくつかの実施形態では、電極フィルムはアノード電極フィルムである。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、カソード電極フィルムである。
【0081】
ブロック208において、電極フィルムは、溶媒にさらされ、溶媒にさらされた電極フィルムを形成する。電極フィルムを溶媒にさらすと、電極塩が抽出され得る。いくつかの実施形態では、抽出された電極塩は、エネルギー貯蔵装置の電解質システムのイオン成分として機能し得る。いくつかの実施形態では、電極塩の抽出は、細孔体積の増加及び電極フィルムの全体的な密度の減少をもたらし得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、図1に示すエネルギー貯蔵装置の容器120などの、エネルギー貯蔵装置の容器内の溶媒にさらされる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、エネルギー貯蔵装置の容器の外部の溶媒にさらされる。例えば、電極フィルムは、電解質浴の溶媒にさらされてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、自立電極フィルムとして、又は集電体をさらに含む電極の一部として、溶媒にさらされ得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、溶媒にさらされている間、同時に電流にさらされ得る。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、溶媒にさらされている間、同時に事前リチウム化され得る。いくつかの実施形態では、固体電極フィルムを製造するプロセスなどにおいて、ブロック208を実行せず、それにより、電極塩が電極フィルム内に留まることが可能となる。そのような実施形態では、電極塩は、固体エネルギー貯蔵装置において固体電解質として機能し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、溶媒にさらされた電極フィルムは、電極における自由空隙体積の1~50%の範囲の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、溶媒に曝された電極フィルムは、電極における自由空隙体積の1~10%の範囲の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、溶媒に曝された電極フィルムは、20~300μmのフィルム厚さを有する。いくつかの実施形態では、溶媒にさらされた電極フィルムは、50~150μmのフィルム厚さを有する。
【0083】
他の例では、乾燥電極又は乾燥電極フィルムは、乾燥発泡体を含み得る。いくつかの実施形態では、発泡体は、金属発泡体であり得る。いくつかの実施形態では、発泡体はセラミック発泡体であり得る。いくつかの従来のエネルギー貯蔵装置では、例えば集電体としての又は集電体及び他の電極フィルム材料を組み合わせた、高密度アルミニウムを使用するが、電極フィルム及び集電体の表面間の比較的小さな接触面積は、電子伝達が不十分で、そのため速度性能(rate capabilities)が不十分となり得る、という結果を生じさせる可能性がある。しかし、集電体としての金属発泡体などの発泡体を使用すると、活物質を封止し、発泡体集電体と活物質との間の接触面積を増加させる三次元的に相互接続された多孔質構造を利用することにより、エネルギー貯蔵装置の電力を大幅に増大させることができ、それにより、エネルギー貯蔵装置の速度性能を高めることができる。さらに、セラミック発泡体などの発泡体の使用は、イオン源を提供し、イオン伝導体として作用し得、例えば、ジルコン酸リチウムランタン(LLZO)を含む発泡体は、リチウムイオンを伝導させ得る。さらに、金属発泡体及びセラミック発泡体などの発泡体内に活物質を封入することにより、電極混合物にバインダなどの不活性成分を含める必要性が減少し又は排除され得る。不活性成分の最小化又は排除は、電気化学装置のエネルギー密度の増加をもたらし得る。さらに、発泡体内への活物質の封入は、充電/放電プロセスに関連する電極体積ひずみの少なくとも一部を軽減し得る。一例として、サイクル中の従来のリチウムイオンバッテリ電極の体積膨張及び収縮は、サイクル寿命を短縮させ得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物又は自立電極フィルムは、発泡体によって封止され得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物又は自立電極フィルムを発泡体に対してプレスしてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物又は自立電極フィルムを、発泡体に対してカレンダ処理し得る。いくつかの実施形態では、発泡体は、市販のものであってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、発泡体は、活物質のハウジングとして機能する。いくつかの実施形態では、発泡体は、活物質のハウジングとして機能し、追加の集電体が使用されたとしても集電体を使用する必要がないように十分な導電性を提供する。そのような発泡体活物質複合材料は、本開示の目的のための乾燥電極として特徴付けられる。そのような複合材料の例は、金属発泡体により封止された活物質である。
【0085】
いくつかの実施形態では、発泡体は活物質のハウジングとして機能するが、十分な導電性を提供せずに集電体を必要とする。そのような発泡体活物質複合材料は、本開示の目的のための乾燥電極フィルムとして特徴付けられる。セラミックには通常電気絶縁性があるので、そのような複合材料の例は、セラミック発泡体により封止された活物質である。したがって、いくつかの実施形態では、発泡体活物質複合材料を集電体にラミネートし得る。いくつかの実施形態では、集電体は金属集電体である。いくつかの実施形態では、ラミネートは、カレンダ処理により行い得る。いくつかの実施形態では、カレンダ処理は、2ロールカレンダプレスを使用して行い得る。
【0086】
図3は、電極フィルム混合物を発泡体内に封入するためのプロセス300の例を示すプロセスフロー図である。いくつかの実施形態では、プロセス300における電極フィルム混合物は、本明細書で前記のように、カソード又はアノード電極フィルム混合物であり得る。いくつかの実施形態では、プロセス300における電極フィルム混合物は、カソード電極フィルム混合物である。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物を発泡体内に封入するためのプロセス300は、得られる電極フィルムが液体、溶媒及び結果として生じる残留物を含まない又は実質的に含まないように、液体又は溶媒を使用しない乾燥プロセスである。ブロック302において、電極フィルム混合物を形成する。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、リチウムイオン伝導性セラミック材料を含み得る。いくつかの実施形態では、リチウムイオン伝導性セラミック材料は、リチウムランタンジルコン酸塩(LLZO)、窒化リチウム、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、リチウム亜鉛ゲルマニウム酸化物(LISICON)、リチウムゲルマニウムリン硫化物(Thio-LISICON)、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)及び硫化リチウムの少なくとも1つから選択され得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物中のリチウムイオン伝導性セラミック材料の量は、0.5重量%若しくは約0.5重量%、1重量%若しくは約1重量%、5重量%若しくは約5重量%、10重量%若しくは約10重量%、20重量%若しくは約20重量%、30重量%若しくは約30重量%、40重量%若しくは約40重量%、50重量%若しくは約50重量%又は60重量%若しくは約60重量%、又はこれらの間の任意の範囲の値であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物中のリチウムイオン伝導性セラミック材料の量は、約1~約50重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、例えば、活物質、炭素粒子及び/又はバインダ材など、本明細書に記載する他の材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、活物質は、リチウム金属酸化物などの少なくとも1つの金属酸化物から選択され得る。いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの少なくとも1つから選択され得る。任意選択で、1つ又は複数の導電性促進添加剤を組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、乾燥粒子混合物である。
【0087】
いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、バインダ材を含まず、実質的にバインダ材を含まなくてもよく、又はバインダ材の量が、発泡体のない電極と比較して少ない。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、発泡体のない電極と比較して、約0%、0.5%、1%、1.5%若しくは2%又はこれらの間の任意の範囲の値で、含まれるバインダ材がより少ない。いくつかの実施形態では、バインダ材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの1つ又は複数のフィブリル化可能なポリマーを含む。いくつかの実施形態では、バインダ材は、PTFEなどの1つのタイプのポリマーから構成されている、又は本質的にそれから構成されている。いくつかの実施形態では、導電性促進添加剤は、1つ又は複数の導電性炭素であり得る。例えば、導電性カーボンは、本明細書に記載する1つ又は複数のタイプのカーボンブラック及び/又はグラファイトを含み得る。
【0088】
ブロック304において、電極フィルム混合物は、発泡体で封止されている。いくつかの実施形態では、発泡体は、金属発泡体又はセラミック発泡体である。いくつかの実施形態では、金属発泡体は、アルミニウム発泡体、ニッケル発泡体、チタン発泡体、銀発泡体、銅発泡体、コバルト発泡体及びスチール発泡体のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、セラミック発泡体は、酸化アルミニウム発泡体、二酸化ケイ素発泡体、炭化ケイ素発泡体、窒化ホウ素発泡体及び炭化ホウ素発泡体のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、発泡体は多孔質構造を含む。いくつかの実施形態では、発泡体は、0.03~0.3の間の相対密度を有し、ここで相対密度は、非多孔質金属又は非多孔質セラミックなどの非多孔質参照材料の密度に対する発泡体密度の比として定義される。いくつかの実施形態では、発泡体は、約0.1g/cm若しくは最大約0.1g/cm、約0.3g/cm若しくは最大約0.3g/cm、約0.4g/cm若しくは最大約0.4g/cm、約0.5/cm若しくは最大約0.5g/cm、約0.6g/cm若しくは最大約0.6g/cm、約0.7g/cm若しくは最大約0.7g/cm、約0.8g/cm若しくは最大約0.8g/cm、約0.9g/cm若しくは最大約0.9g/cm、約1.0g/cm若しくは最大約1.0g/cm、約1.5g/cm若しくは最大約1.5g/cm、約2.0g/cm若しくは最大約2.0g/cm、又はこれらの間の任意の値の密度を有する。いくつかの実施形態では、発泡体は、約25%若しくは少なくとも約25%、約28%若しくは少なくとも約28%、約30%若しくは少なくとも約30%、約40%若しくは少なくとも約40%、約50%若しくは少なくとも約50%、約60%若しくは少なくとも約60%、約70%若しくは少なくとも約70%、約80%若しくは少なくとも約80%、約85%若しくは少なくとも約85%、約90%若しくは少なくとも約90%、約95%若しくは少なくとも約95%又は約98%若しくは少なくとも約98%、又はこれらの間の任意の範囲の値の、多孔度を有する。いくつかの実施形態では、発泡体は、主な細孔サイズ又は細孔直径が、約0.1mm、最大約0.1mm若しくは最小約0.1mm、約0.2mm、最大約0.2mm若しくは最小約0.2mm、約0.3mm、最大約0.3mm若しくは最小約0.3mm、約0.4mm、最大約0.4mm若しくは最小約0.4mm、約0.5mm、最大約0.5mm若しくは最小約0.5mm、約0.6mm、最大約0.6mm若しくは最小約0.6mm、約0.7mm、最大約0.7mm若しくは最小約0.7mm、約0.8mm、最大約0.8mm若しくは最小約0.8mm、約0.9mm、最大約0.9mm若しくは最小約0.9mm、約1mm、最大約1mm若しくは最小約1mm、約1.5mm、最大約1.5mm若しくは最小約1.5mm、約1.6mm、最大約1.6mm若しくは最小約1.6mm、約2mm、最大約2mm若しくは最小約2mm、約3mm、最大約3mm若しくは最小約3mm、約4mm、最大約4mm若しくは最小約4mm、約5mm、最大約5mm若しくは最小約5mm、約6mm、最大約6mm若しくは最小約6mm、約7mm、最大約7mm若しくは最小約7mm、約8mm、最大約8mm若しくは最小約8mm、約9mm、最大約9mm若しくは最小約9mm、約10mm、最大約10mm若しくは最小約10mm、約15mm、最大約15mm若しくは最小約15mm、又はこれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、発泡体は、開いた細孔を有し得る。いくつかの実施形態では、発泡体は、閉じた細孔を有し得る。いくつかの実施形態では、発泡体は、開いたマクロ細孔を有し得る。いくつかの実施形態では、発泡体は、閉じたマクロ細孔を有し得る。いくつかの実施形態では、非多孔質参照材料は、密度が、約1g/cm若しくは最小約1g/cm、約1.5g/cm若しくは最小約1.5g/cm、約2g/cm若しくは最小約2g/cm、約3g/cm若しくは最小約3g/cm、約4g/cm若しくは最小約4g/cm、約5g/cm若しくは最小約5g/cm又は約10g/cm若しくは最小約10g/cm、又はこれらの間の任意の範囲の値である。
【0089】
図4は、自立電極フィルムを発泡体にプレスするためのプロセス400の例を示すプロセスフロー図である。いくつかの実施形態では、プロセス400における自立電極フィルムは、本明細書に記載する、カソード又はアノード自立電極フィルムであり得る。いくつかの実施形態では、プロセス400における自立電極フィルムは、カソード自立電極フィルムである。ブロック402において、電極フィルム混合物を形成する。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、任意の方法により、又は前記の任意の組成物を用いて製造される。いくつかの実施形態では、自立電極フィルムは、活物質及びバインダから構成されている。いくつかの実施形態では、自立電極フィルムは、導電性炭素をさらに含む。いくつかの実施形態では、自立電極フィルムは、前記のように、導電性炭素及びリチウムイオン伝導性セラミックをさらに含む。いくつかの実施形態では、バインダは、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)のうちの少なくとも1つから選択され得る。いくつかの実施形態では、フィルム中のバインダの総量は、0.5重量%若しくは約0.5重量%、1重量%若しくは1重量%、5重量%若しくは約5重量%、10重量%若しくは約10重量%、15重量%若しくは約15重量%又は20重量%若しくは約20重量%、又はこれらの間の値の任意の範囲であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、フィルム中のバインダの総量は、約1~約15重量%である。いくつかの実施形態では、フィルム中のリチウムイオン伝導性セラミックの総量は、0.5重量%若しくは約0.5重量%、1重量%若しくは約1重量%、5重量%若しくは約5重量%、10重量%若しくは約10重量%、20重量%若しくは約20重量%、30重量%若しくは約30重量%、40重量%若しくは約40重量%、50重量%若しくは約50重量%又は60重量%若しくは約60重量%、又はこれらの間の任意の範囲の値であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、フィルム中のリチウムイオン伝導性セラミックの総量は、約1~約50重量%の範囲である。
【0090】
ブロック404において、電極フィルム混合物中のバインダをフィブリル化する。いくつかの実施形態では、フィブリル化は、図2のブロック204に記載したプロセスなど、前記の任意の方法によって行い得る。ブロック406では、電極フィルム混合物を、自立電極フィルムを形成するためにカレンダ処理する。いくつかの実施形態では、自立電極フィルムは、前記の任意の方法により製造できる。理論によって限定するものではないが、いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物に十分に高い剪断力及び/又は圧力を加えた後、電極フィルム混合物内に提供され又は形成される十分に小さいサイズの粒子は、それらの表面自由エネルギーによって引き付けられるようになり、その中で他の粒子が支持され得る支持マトリックスを提供する。理論によって限定するものではないが、十分な剪断力及び/又は圧力下で、本明細書に記載する電極フィルム混合物内の粒子は、一般に、粒子固有の表面自由エネルギーから生じる引力(ロンドン-ファンデルワールス力など)により粒子が互いに引き寄せ合うように相互作用して、連続した自己支持フィルムを形成するような分離距離まで、互いに接近し得ると理論づけられる。ブロック408において、自立電極フィルムをプレスして、発泡体に対してラミネートする。いくつかの実施形態では、カレンダ処理により自立電極フィルムを発泡体にプレスする。いくつかの実施形態では、カレンダ処理は、2ロールカレンダプレスにより行い得る。いくつかの実施形態では、発泡体は、前記のような、任意の方法又は任意の組成物を用いて製造し得る。いくつかの実施形態では、発泡体は金属発泡体である。いくつかの実施形態では、発泡体はセラミック発泡体である。いくつかの実施形態では、電極フィルム-発泡体複合材料を集電体にラミネートし得る。いくつかの実施形態では、フィルム-発泡体複合材料は、集電体を追加しなくても電極として機能し得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、セパレータ層を挟んだ電極の巻き取り又は積層などの当技術分野で知られた方法によって乾電池を構築すると、選択された溶媒又は溶媒の組み合わせを、すぐに使用するのために乾電池に添加し得る。長いカレンダ寿命の貯蔵が不可欠である場合などのいくつかの実施形態では、製造された乾電池は、劣化を最小限に抑え、乾燥状態で貯蔵できる。固体エネルギー貯蔵装置などのいくつかの実施形態では、製造された乾電池は、溶媒又は溶媒の組み合わせの添加なしで、すぐに使用する準備ができている場合もある。
【0092】
本明細書の電極及びエネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンキャパシタ及びバッテリの文脈で説明され得るが、実施形態は、リチウムの有無にかかわらず、1つ又はより多くのバッテリ、キャパシタ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、燃料電池、固体エネルギー貯蔵装置、それらの組み合わせなどの、あらゆる多くのエネルギー貯蔵装置及びシステムで実施し得る。
【0093】
エネルギー貯蔵装置内の溶媒に電極フィルムをさらすこと
いくつかの実施形態では、電極塩を含む電極フィルムを備えるエネルギー貯蔵装置の電池は、電極フィルムから電極塩を抽出し及び電極塩を溶解するために、1つ又は複数の電解質溶媒で充填され又は満たされる。溶解した電極塩は、エネルギー貯蔵装置内の電解質システムのイオン成分又は溶質として機能し得る。さらに、電極フィルムから電極塩を抽出すると、細孔体積が増え電極フィルム全体の密度が小さくなった、溶媒にさらされた電極フィルムを生じさせ得る。
【0094】
塩、溶媒及び処理条件は、意図した機能を達成するように選択し得る。いくつかの実施形態では、電極塩及び溶媒は、互いに適合性があるように選択される。いくつかの実施形態では、水性溶媒混和性電極塩及び水性溶媒が選択される。いくつかの実施形態では、非水性溶媒混和性電極塩及び非水性溶媒が選択される。いくつかの実施形態では、水分の影響を受けやすい電極塩が選択される。いくつかの実施形態では、通常の装置の処理条件下で安定な電極塩が選択される。いくつかの実施形態では、通常の装置の動作条件下で分解しない電極塩が選択される。
【0095】
いくつかの実施形態では、電極塩は、LiPF、LiBF、LiBOB、LiN(SOCF、LiOSOCF、LiNO、酢酸リチウム、ハロゲン化リチウム、テトラフルオロホウ酸テトラアルキルアンモニウム及びヘキサフルオロリン酸テトラアルキルアンモニウムのうちの少なくとも1つから選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、溶媒は、炭酸塩、エステル、アミド、エーテル、アルコール、スルホン及び水のうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、溶媒は揮発性溶媒である。いくつかの実施形態では、溶媒は高揮発性溶媒であり、ここで溶媒は周囲温度及び気圧で気体である。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、1気圧を超える圧力下で液体である。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、20℃未満で液体である。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、周囲気圧での沸点が、約10℃若しくは最大約10℃、約20℃若しくは最大約20℃、約30℃若しくは最大約30℃、約40℃若しくは最大約40℃、約50℃若しくは最大約50℃、約57℃若しくは最大約57℃、約60℃若しくは最大約60℃、約66℃若しくは最大約66℃、約70℃若しくは最大約70℃、約80℃若しくは最大約80℃、約90℃若しくは最大約90℃、約91℃若しくは最大約91℃又は約95℃若しくは最大約95℃、又はこれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル又はこれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、不揮発性溶媒にさらされた電極フィルムと比較して多孔度が増加した、溶媒にさらされた電極フィルムを生成する。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、不揮発性溶媒に比べて融点が低く低温でも液体のままであるため、エネルギー貯蔵装置が、低温環境、例えば約-150℃若しくは最低約-150℃、約-110℃若しくは最低約-110℃、約-108℃若しくは最低約-108℃、約-100℃若しくは最低約-100℃、約-98℃若しくは最低約-98℃、約-75℃若しくは最低約-75℃、約-50℃若しくは最低約-50℃、約-25℃若しくは最低約-25℃、約0℃若しくは最低約0℃、約2℃若しくは最低約2℃、約4℃若しくは最低約4℃、約5℃若しくは最低約5℃又は約10℃若しくは最低約10℃、又はこれらの間の任意の値で、動作できることを可能にする。いくつかの実施形態では、高揮発性溶媒は、不揮発性溶媒と比較して、より高濃度の電解質塩を溶解させることを可能にする。
【0097】
いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルムを備える乾燥エネルギー貯蔵装置に溶媒を添加する。いくつかの実施形態では、電極塩の総量は、目標モル濃度でのエネルギー貯蔵装置内の電解質を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、塩の総量は、正電極で計量され得る。いくつかの実施形態では、塩の総量は、負電極で計量され得る。いくつかの実施形態では、塩の総量は、正電極及び負電極で均等に計量され得る。いくつかの実施形態では、塩の総量は、例えば、10:90、25:75、45:55、55:45、75:25及び90:10又はこれらの値のいずれかの間の任意の範囲などの、正電極及び負電極への任意の不均等なあらゆる量で計量され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、電極フィルムは、カソード電極フィルムである。
【0099】
電極フィルムの洗浄
いくつかの実施形態では、電極フィルムから電極塩を抽出し及び電極塩を溶解するために、電極塩を含む電極フィルムを、エネルギー貯蔵装置の容器とは別の1つ又は複数の電解質溶媒で洗浄する。電極フィルムから電極塩を抽出すると、細孔体積が増え電極フィルム全体の密度が小さくなった、溶媒にさらされた電極フィルムが生じ得る。さらに、いくつかの実施形態では、乾燥電極フィルム内の電極塩材料の使用により、洗浄プロセスと同時に電極フィルムを事前リチウム化できる。他の実施形態では、洗浄された電極フィルムは、洗浄プロセスの後に事前リチウム化してもよく、例えば、電極フィルムの事前リチウム化を、別個の事前リチウム化装置又はエネルギー貯蔵装置の容器内で行ってもよい。
【0100】
図5は、電極塩を含む電極フィルムの事前リチウム化プロセスを同時に行う洗浄装置500の一実施形態を示す概略図である。乾燥電極塩を含む電極フィルムロール501を、巻きほどき502上に配置し、電源503を用いて負分極する。乾燥電極フィルムロール501は、前記の方法のいずれかによって準備できる。乾燥電極フィルムロール501を、展開され、電極フィルムシート504に巻きほどき、溶媒506を含む溶媒浴505に浸漬する。電極フィルムシート504を、ローラ507の間で、及び電源503により正分極した少なくとも1対カウンタ電極508間で、溶媒506中に浮かす。電極フィルムシート504が溶媒506中に浮かされると、電極フィルムシート504から電極塩が溶媒506に溶解する。同時に、電極フィルムシート504の負分極及び1対のカウンタ電極508の正分極により、電極塩のリチウム成分により電極フィルムシート504を電気化学的に事前リチウム化させる。電極フィルムシートは、リチウム化電極フィルム509として溶媒506及び溶媒浴505から出る。リチウム化電極フィルム509を回収し、巻き直し部510で、巻き直されたリチウム化電極511に巻き直される。示されていないいくつかの実施形態では、リチウム化電極フィルム509は、巻き直されたリチウム化電極511に巻き直される前に、すすぎ浴ですすいでもよい。示されていないいくつかの実施形態では、リチウム化電極フィルム509は、巻き直されたリチウム化電極511に巻き直される前に、溶媒浴505又はすすぎ浴からの溶媒506を除去するために乾燥してもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムシート504の事前リチウム化を行わず、このため、電源503及びカウンタ電極508対は利用しないか又は装置500に存在しない。
【0101】
いくつかの実施形態では、溶媒浴の溶媒は、炭酸ジメチルである。いくつかの実施形態では、溶媒は電解質塩を含まない。いくつかの実施形態では、溶媒は、電解質塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、電解質塩はフッ化リチウムである。いくつかの実施形態では、溶媒の電解質塩は、前記のように、電極フィルム又は電極の電極塩と同じである。
【0102】
いくつかの実施形態では、乾燥電極は、カソード又はアノード電極であり得る。いくつかの実施形態では、乾燥電極はアノード電極である。いくつかの実施形態では、乾燥電極はグラファイトを含む。いくつかの実施形態では、乾燥電極はケイ素を含む。いくつかの実施形態では、カウンタ電極はガラス状炭素電極である。
【0103】
いくつかの実施形態では、リチウム化電極フィルムは、電極塩を実質的に含まないか又は含まない。いくつかの実施形態では、巻き直されたリチウム化電極フィルムは、電極塩を実質的に含まないか又は含まない。いくつかの実施形態では、リチウム化電極フィルムは細孔を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、リチウム化電極フィルムを備えたエネルギー貯蔵装置は、添加された電解質塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、多孔質電極からの塩の総量をアノードで計量できるように、前記のリチウム化電極フィルムを含むアノードと、前記のカソードフィルムを含むカソードとを備える。いくつかの実施形態では、塩の総量は、正極及び負極において均等に計量し得る。いくつかの実施形態では、塩の総量は、例えば、10:90、25:75、45:55、55:45、75:25及び90:10又はこれらの値のいずれかの間の任意の範囲などの、正電極及び負電極への任意の不均等な量で計量され得る。
【0105】
固体電極
本明細書に記載する電極処理方法は、乾燥プロセスにおいて乾燥固体電解質添加剤を乾燥活物質と混合して、前記の乾燥電極フィルムを製造することを含む。固体電解質塩又は固体電解質添加剤とこの性質の活物質との密接な混合物は、典型的な固体リチウムイオンバッテリで非常に高いことが知られている電解質-活物質の界面抵抗を低減するのに役立ち得る。湿潤電極プロセスと比較して、乾燥電極プロセスはまた、固体電解質-活物質界面でより密接な接触を提供し、水分の影響を受けやすい固体電解質の溶媒誘発性の劣化を低減し得る。いくつかの実施形態では、溶媒の添加又は除去を行わない。さらに、乾燥電極コーティングプロセスでは溶媒の乾燥が必要ないので、高密度に充填された粒子マトリックスを製造して、イオン及び電子と活物質との接触を多くし、電極の抵抗を全体的に低くし得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、固体電極は、前記のものと同様の方法により、電解質電極粉末から形成する。いくつかの実施形態では、電解質電極粉末は、活物質を固体電解質添加剤と混合して調製する。いくつかの実施形態では、電解質電極粉末は、バインダをさらに含む。いくつかの実施形態では、バインダは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ビニリデンジフルオライド)及びカルボキシメチルセルロースのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、バインダは、フィブリル化可能なバインダである。いくつかの実施形態では、バインダの分子量は、約1000~約5×10g/モルである。いくつかの実施形態では、バインダは、複数の分子量の組み合わせ又は範囲を有するポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、バインダは、電解質電極粉末の約2~約40重量%を構成する。いくつかの実施形態では、バインダは、電解質電極粉末の約1~15重量%を構成する。
【0107】
いくつかの実施形態では、活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びNMC811などのLiNi1-x-yCoMn(NCM)のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、40~90重量%の電解質電極粉末を構成する。
【0108】
いくつかの実施形態では、固体電解質添加剤はリチウム塩である。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム及び過塩素酸リチウムのうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、固体電解質添加剤は、ガーネットイオン伝導体、例えば、LiLaTa12及びLiNである。いくつかの実施形態では、固体電解質添加剤は、硫黄ベースのイオン伝導体、例えば、LiS-P及びLiS-P-LiPOである。いくつかの実施形態では、固体電解質添加剤は、イオン伝導率が高い他の化合物、例えば、Li0.5La0.5TiO(LLTO)及び/又はLiLaZr12(LLZO)である。いくつかの実施形態では、固体電解質添加剤は、リチウム超イオン伝導体(LISCON)であり、例えば、LISCONは、分子式がLi(2+2x)Zn(1-x)GeOのものであってもよい。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、電解質電極粉末の1~10重量%を構成する。
【0109】
いくつかの実施形態では、乾燥固体電極フィルムは、電極フィルム内の自由空隙体積の約1~約50%の範囲の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、乾燥固体電極フィルムは、電極フィルム内の自由空隙体積の約1~約10%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、乾燥固体電極フィルムは、フィルム厚さが約20~約300μmである。いくつかの実施形態では、乾燥固体電極フィルムは、フィルム厚さが約50~約150μmである。いくつかの実施形態では、乾燥固体電極フィルムの多孔性、密度及び/又は厚さは、本開示全体を通して記載する他の任意の値であり得る。
【0110】
固体電極を準備するための例示的な乾燥処理手順は以下のとおりである。NMC811のカソード活物質を、約7:2(NMC811:LLZO)の質量部の比率でLLZOと乾燥混合する。活物質-LLZO粉末の混合電解質-電極粉末に、導電性炭素を約0.5質量部の比率で添加し、さらに均質化する。約0.5質量部のバインダをその混合物に添加し、高剪断力をかけて混合し、自立電極フィルム製造のために準備された粉末配合物を生成する。その準備された粉末配合物を、2ロールカレンダプレスにより、自立固体電極フィルムに対してプレスする。次いで、フィルムを、2ロールカレンダプレスにより金属集電体にラミネートすると、乾燥処理された固体カソードが得られる。
【0111】
いくつかの実施形態では、固体バッテリは、乾燥処理された固体カソードを、間に薄い固体電解質層を挟んだリチウム金属電極と積重することにより準備する。薄い固体電解質層は、リチウム金属上にプレコートするか、又は固体カソード上に、カソードで使用される固体電解質組成物若しくは同様のイオン伝導性及び同様の動作電圧の安定性を有する代替の固体電解質を使用して、プレコートし得る。いくつかの実施形態では、固体バッテリは液体溶媒を含まない。
【0112】
固体ポリマー電解質
前記の乾燥粉末混合及びフィルムカレンダ処理プロセスはまた、固体リチウム金属バッテリなどの固体エネルギー貯蔵装置においてイオン伝導性固体セパレータ又は電解質として使用するための複合ポリマーフィルムを製造するために利用し得る。固体ポリマー電解質膜の乾燥処理は、有毒な溶媒廃棄物の発生を最小限に抑える環境に優しい製造プロセス、膜から溶媒又は残留水を蒸発させるための追加の時間のかかるフィルム乾燥ステップが含まれないプロセス、より薄いポリマー膜を調整できる能力、高分子電解質フィルムに残留有機溶媒がないことによる高い電気化学的性能、並びにポリマー膜及び完全なセル組み立ての両方の連続的ロールツーロール製造プロセスを可能にすることなど、一般的な湿潤溶媒キャスト調製に比べて多くの利点を提供し得る。乾燥粉末混合及びフィルムカレンダ処理プロセスによる、乾燥処理及び無溶媒複合ポリマーフィルムについて記載し、そのようなフィルムの物理的及び電気化学的特性を示す。
【0113】
いくつかの実施形態では、複合固体ポリマー電解質(SPE)は、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのリチウム源を含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つの支持ポリマーバインダを含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのフィラーを含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのイオン伝導性媒体を含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマー及び少なくとも1つのリチウム源を含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマー、少なくとも1つのリチウム源及び少なくとも1つの支持ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマー、少なくとも1つのリチウム源、少なくとも1つの支持ポリマー及び少なくとも1つのフィラーを含む。いくつかの実施形態では、SPEは、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマー、少なくとも1つのリチウム源、少なくとも1つの支持ポリマー、少なくとも1つのフィラー及び少なくとも1つのイオン伝導性媒体を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(メチレンオキシド)、ポリオキシメチレン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(オキシエチレン)9メタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)メチルエーテルメタクリレート及びポリ(プロピレンイミン)のうちの少なくとも1つから選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、リチウム源は、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)(Li(CSON)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(C10LiNO)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FLiNO)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF(C)、ジフルオロリン酸リチウム(FLiOP)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロクロロホウ酸リチウム(LiBFCl)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、Li6.4LaZr1.4Ta0.612、LiLaZr12、Li10SnP12、Li3xLa2/3-xTiO、Li0.8La0.6Zr(PO、Li1+xTi2-xAl(PO、Li1+x+yTi2-xAlSi(PO3-y及びLiTiZr2-x(POのうちの少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態では、リチウム源は、前記のリチウム塩又はその他であり得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、支持ポリマーバインダは、ポリエチレン(PE)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの少なくとも1つから選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、フィラーはセラミックフィラーである。いくつかの実施形態では、セラミックフィラーは、酸化チタン(TiO)、シリカ(SiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化銅(CuO)、モンモリロナイト((Na,Ca)0.33(Al,Mg)(Si10))、ベントナイト(Al34SiOO)、カオリナイト(AlSi(OH))、ヘクトライト(Na0.3(Mg,Li)Si10(OH))及びハロイサイト(AlSi(OH))、4’-アミノ-2,3’-ジメチルアゾベンゼン(CHN=NC(CH)NH)、イットリウムアルミニウム酸化物(YAl12)、イットリウム鉄酸化物(YFe12)及びナノクレイのうちの少なくとも1つから選択される。表1に、SPEフィルムに使用できる乾燥材料の仕様を示す。
【0118】
いくつかの実施形態では、イオン伝導性媒体は、ナノクレイ、ガーネット又はそれらの混合物である。
【0119】
【表1】
【0120】
一例では、ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)をイオン伝導性ポリマーとして使用し、ポリエチレン(PE)、PTFE及びそれらの混合物を支持マトリックスとして使用し、シリカをセラミックフィラーとして使用し、ガーネットをイオン伝導性媒体として使用し、LiTFSIをリチウム源として使用し、様々な組み合わせで使用し、SPE乾燥粉末配合物を生成した。ナノクレイをセラミックフィラーとして使用したが、有利なことにかつ予想外に、ナノクレイはSPEのイオン伝導性を高め、それゆえイオン伝導性媒体としても機能することを見出した。表2に、5つのそのような乾燥SPE配合物を示す。
【0121】
【表2】
【0122】
SPE乾燥粉末配合物のSPE乾燥粉末混合物への乾燥粉末混合は、前記の方法、又は他の方法によって行い得る。表2に記載する乾燥SPE配合物の乾燥粉末混合は、表3に示す混合手順にしたがって行った。例えば、タンブラー、対流、ホッパー及び流動化などの典型的な混合及びブレンド方法を粉末の混合に使用し得る。Resodyn粉末混合を、60%の強度(50G)で5分間行った。得られた処理済み粉末のいくつかの画像を図6に示す。図6では、粉末(a)はSPE-2を指し、粉末(b)はSPE-3を指し、粉末(c)はSPE-4を指し、粉末(d)はSPE-5を指す。
【0123】
【表3】
【0124】
処理された乾燥粉末混合物は、前記の方法又は他の方法により、乾燥自立SPEフィルムに変質させ得る。乾燥SPEフィルムは、表4に示すパラメータでカレンダ処理した後、表3に記載する乾燥粉末混合物のいくつかから生成した。図7は、表4の1回目のカレンダ処理プロセスにしたがって処理した乾燥粉末から変質された第1通過カレンダ処理SPEフィルムを示す。図7では、(a)が(カレンダ処理の際の)SPE-2を示し、(b)はSPE-1を示し、(c)はSPE-3を示し、(d)はSPE-4を示す;(b)~(d)はすべてカレンダ処理後を示す。図8は、望ましいフィルム厚を実現するために、表4の2回目のカレンダ処理プロセスにしたがい再カレンダ処理した図7の第1通過カレンダ処理SPEフィルムを示す。
【0125】
【表4】
【0126】
図9は、1回目のカレンダ処理ステップ後のSPE-4フィルムの表面形態を示し、図10は、2回目のカレンダ処理ステップ後のSPE-4フィルムの表面形態を示す。第1通過カレンダ処理SPE-4フィルムは、粗く不規則な表面を示し、イオン伝導性ポリマー及び支持ポリマーマトリックス間の相分離を示唆しているように見える。第2通過カレンダ処理SPE-4フィルムは、第1通過カレンダ処理フィルム及びPTFEファイバーよりも滑らかな表面を示している。また、図10には、細孔のない比較的高密度のSPEフィルムが観察される。これにより、イオン伝導率を高くでき、リチウムデンドライトの侵入を防ぎ得る。
【0127】
さらに、SPE-1、SPE-2及びSPE-3の1回目通過のカレンダ処理ステップ後のフィルムはもろく、2回目のカレンダ処理ステップ後のフィルムはより柔軟になった。さらに、SPE-4及びSPE-5フィルムでは、フィルム内にフィブリル化PTFEが存在するため、非常に柔軟で強い自立乾燥フィルムが製造された。図11に示すように、ILLord引張試験による自立乾燥SPE-4フィルムの機械的強度は、引張強度ピークが非常に高く(10.3N)、伸びが比較的長かった(2.3mm)。表5は、図11に示す引張強度測定で使用した乾燥SPEフィルムの仕様を示す。
【0128】
【表5】
【0129】
乾燥SPEフィルムのイオン伝導率(σ)は、次の式を使用して計算した。
【0130】
σ=(1/R)x(L/A);ここで、Rはバルクインピーダンスであり、LはSPEフィルムの厚さであり、AはSPEフィルムの面積である。
【0131】
バルクインピーダンスは、対称Cu/SPE/Cuセルを使用して測定した。図12は、SPE-4及びSPE-5フィルムの室温イオン伝導率の値を示す。乾燥処理したSPEフィルムのイオン伝導率は、PEOベースのポリマー電解質を使用する従来技術で報告されているものよりも約1桁高い。
【0132】
対称Li/SPE/Liセルを使用して乾燥処理したSPEフィルムのリチウムストリッピング及び堆積性能もまた調べた。SPEフィルムの室温でのイオン伝導率が低く、リチウム金属及びSPEフィルム間の界面インピーダンスが高いため、1回目のリチウムストリッピングプロセス中にセル電圧が2Vを超えることがわかった。表6に示すように、約0.8mLの炭酸塩溶媒ベースの電解質をLi/SPE/Liセルに添加すると、界面インピーダンスが大幅に低下し、安定した分極が得られた。図13は、Li/Liセル内のSPE-4及びSPE-5電解質フィルムの最初のLiストリッピング/堆積サイクルを示す。SPE-5を有するセルの電圧は、SPE-4を有するセルと比較して低く、より安定している。これは、SPE-5フィルムにリチウム塩が存在ことに起因している可能性がある。
【0133】
【表6】
【0134】
SPEフィルムは、グラファイト電極半電池のセパレータとしても特徴付けられ、乾燥グラファイト電極/SPE-1/Li箔の積層体を使用して組み立て、ポーチ形態で密封した。表6に示すように、約0.8mLの支持リチウムイオン電解質を電池に添加した。この電気化学的研究で使用した3つの異なるセル構成を図14に示す。乾燥グラファイト電極及びSPEフィルムの仕様を表7に示す。
【0135】
図15は、図14に示される3つの異なるセル構成を有するグラファイト電極の電気化学的容量及びクーロン効率を示す。SPE-1フィルムは、剛性及び多孔性フィルムであり、イオン伝導性媒体又はリチウム塩を含まないことに留意されたい。セル1及び2は、SPE-1フィルムに対する電解質の湿潤性が低いため及び/又は多孔質SPE-1フィルムの機械的安定性が低いため、電気化学的性能が低く、そのためリチウムデンドライトが侵入し及び/又は炭酸溶媒ベースの非水系リチウムイオン電解質とSPE-1フィルムとの非相溶性が起こりやすい可能性がある。しかし、セル3は、表6に示すように、リチウムイオン電解質が組み込まれた乾燥グラファイト電極及び市販のポリプロピレン(PP)セパレータ(セルガードから)から構成される、従来技術に匹敵する容量及び効率を示した。
【0136】
【表7】
【0137】
図17は、乾燥電極を使用したSPE層の直接ラミネートの固体構造を示す。ここで、(a)は片面SPE/電極を示し、(b)は両面SPE/電極を示し、(c)は片面Li/SPE/電極(SS)を示し、(d)は両面Li/SPE/電極を示す。また、図17に示すように、材料の層はカレンダ処理プロセスによりラミネートできる。
【0138】
固体勾配電極
固体電極は、固体電極内に勾配電解質添加剤分布を達成するように、乾燥電極フィルムを生成するために、前記のように、乾燥プロセスにおける乾燥固体電解質添加剤と乾燥活物質とのブレンドを含み得る。いくつかの実施形態では、勾配電解質添加剤分布を生成するために、固体電解質添加剤の濃度が各連続電極フィルムとともに増大する多数の固体乾燥電極フィルムを生成する。いくつかの実施形態では、多数の固体乾燥電極フィルムは、一緒にカレンダ処理されて、フィルムの厚さの方向に、固体電解質添加剤濃度の勾配を有する固体乾燥電極フィルム、又は段階的固体乾燥電極フィルムを形成する。いくつかの実施形態では、段階的固体乾燥電極フィルムのより高濃度の固体電解質添加剤を含む側は装置内の電解質セパレータとして機能するので、そのような段階的固体乾燥電極フィルムは、独立した電解質セパレータを使用しない固体エネルギー貯蔵装置で使用できる。
【0139】
いくつかの実施形態では、段階的固体乾燥電極フィルムの層の少なくとも1つは、固体電解質添加剤濃度が、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上若しくは約100重量%以上又はこれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、段階的固体乾燥電極フィルムの層の少なくとも1つは、固体電解質添加剤濃度が、約40重量%以上である。いくつかの実施形態では、段階的固体乾燥電極フィルムの外層の1つは、固体電解質添加剤濃度が約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上若しくは約100重量%又はこれらの間の任意の範囲の値である。
【0140】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図しない。実際は、本明細書に記載する新規の方法及びシステムは、他の様々な形態で具体化できる。さらに、本明細書に記載するシステム及び方法の様々な省略、置換及び変更は、本開示の思想から逸脱することなく行い得る。添付の請求項及びそれらの同等物は、本開示の範囲及び思想に含まれるような形態又は変形をカバーすることを意図している。
【0141】
特定の態様、実施形態又は例に関連して説明される特徴、材料、特性又はグループは、互いに両立しない場合を除き、このセクション又は本明細書の他の場所に記載する他の任意の態様、実施形態又は例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されたすべての特徴(添付の請求項、要約及び図面を含む)及び/又はそのように開示された任意の方法又はプロセスのすべてのステップは、そのような特徴及び/又はステップが相互に排他的である少なくともいくつかの組み合わせを除き、任意の組み合わせが可能である。保護は、前記の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(任意の添付の請求項、要約及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規のもの若しくは任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規なもの若しくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0142】
さらに、別々の実装の文脈で本開示に記載する特定の特徴はまた、単一の実装において組み合わせて実装してもよい。対照的に、単一の実装の文脈で記載する様々な特徴は、また、複数の実装で別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実装し得る。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして前記で記載した場合もあるが、クレームされた組み合わせからの1つ又は複数の特徴は、いくつかの場合には、組み合わせから削除され得、その組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形としてクレームされ得る。
【0143】
さらに、操作は、特定の順序で図示され又は明細書に記載され得るが、その一方で、そのような操作は、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序若しくは連続した順序で実行される必要はなく、またすべての操作が行われる必要もない。図示又は記載されていない他の操作は、例示的な方法及びプロセスに組み込み得る。例えば、1つ以上の追加の操作を、記載する操作の前に、後に、同時に又はそれらの間に、行い得る。さらに、操作は、他の実装で再配置し又は並べ替えてもよい。当業者は、いくつかの実施形態において、図示及び/又は開示されたプロセスにおいて取られる実際のステップが、図示されるものとは異なる可能性があることを理解するであろう。実施形態に応じて、前記の特定のステップを削除でき、他のステップを追加し得る。さらに、上に開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、異なる方法で組み合わせ、追加の実施形態を形成でき、それらはすべて、本開示の範囲内にある。また、前記の実装における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実装においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、記載するコンポーネント及びシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、又は複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されるべきである。例えば、本明細書に記載するエネルギー貯蔵システムの任意のコンポーネントは、別々に提供するか、又は一緒に統合して(例えば、一緒にパッケージ化するか、又は一緒に取り付ける)、エネルギー貯蔵システムを構成し得る。
【0144】
本開示の目的のために、特定の態様、利点及び新規の特徴を本明細書に記載する。必ずしもすべてのそのような利点が特定の実施形態にしたがって達成され得るとは限らない。したがって、例えば、当業者は、本明細書で教示され又は示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点又は一群の利点を達成する方法で本開示が具体化され又は実行され得ることを認識するであろう。
【0145】
「し得る」、「できる」、「かもしれない」、「であってもよい」などの条件付きの文言は、特に明記しない限り又は使用される文脈内で別の方法で理解されない限り、一般に、他の実施形態は特定の特徴、要素及び/又はステップは含まないが、その一方で、特定の実施形態はそれらを含むことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付きの用語は、一般に、特徴、要素及び/若しくはステップが1つ又は複数の実施形態に何らかの意味で必要であること、又は1つ若しくは複数の実施形態が、ユーザ入力若しくはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素及び/若しくはステップが含まれるか又は特定の実施形態で実行されるかどうかを決定するためのロジックを必ず含むこと、を意味することを意図しない。
【0146】
「X、Y及びZの少なくとも1つ」というフレーズなどの接続的な文言は、特に明記しない限り、項目、用語などがX、Y又はZのいずれかであり得ることを伝えるために一般的に使用される文脈で理解される。したがって、そのような接続的な文言は、一般に、特定の実施形態が、Xの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ及びZの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味することを意図しない。
【0147】
本明細書で使用する「およそ」、「約」、「一般的に」及び「実質的に」という用語など、程度の用語は、記載する値、量又は特性に近い値、量又は特性もまた、望みの機能を実行するか、望みの結果を達成することを表す。例えば、「およそ」、「約」、「一般的に」及び「実質的に」という用語は、望みの機能又は望みの結果に応じて、記載する量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満及び0.01%未満の量を指す場合がある。
【0148】
本開示の範囲は、このセクション又は本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図せず、このセクション若しくは本明細書の他の場所に提示されるか又は将来提示される、請求項によって定義され得る。請求項の文言は、請求項で使用されている文言に基づき広く解釈されるべきであり、本明細書に記載する例又は出願の審査中に限定されず、これらの例は非排他的であると解釈されるべきである。
【0149】
本明細書に提供される見出しは、あったとしても、便宜上のものであり、本明細書に開示される装置及び方法の範囲又は意味に必ずしも影響を及ぼさない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】