(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】高分子膜の改良及び高分子膜に関する改良
(51)【国際特許分類】
B01D 67/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B01D67/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523412
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2019079895
(87)【国際公開番号】W WO2020089421
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・スウィンバーン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ゲバウアー
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006MA22
4D006MC36
4D006NA32
4D006NA50
4D006NA54
(57)【要約】
液体のろ過又は被験物質の捕捉に適する高分子多孔質膜を製造する方法であって、基板(220)上に流動性組成物(100)を与える工程であって、組成物は、少なくとも光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子を含む工程、組成物を局所的に重合するのに十分なエネルギーでの1つ又は複数のレーザ光パルス(L)を組成物における少なくとも1つの焦点に与える工程、連続又は段階的な所定の方法で、既に重合した組成物に対し、複数の更なる位置へ焦点又は各焦点を移動させる工程、並びに従来の高分子膜の細孔と同じ大きさの非重合領域を残して組成物の3次元基質が重合されるよう、それらの更なる位置でパルスを反復する工程を含む、方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体のろ過又は被験物質の捕捉に適する高分子多孔質膜を製造する方法であって、
基板(220)上に流動性組成物(100)を与える工程であって、組成物は、少なくとも光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子を含む工程、
組成物を局所的に重合するのに十分なエネルギーの1つ又は複数のレーザ光パルス(L)を組成物における少なくとも1つの焦点に与える工程、
連続又は段階的な所定の方法で、既に重合した組成物に対し、複数の更なる位置へ焦点又は各焦点を移動させる工程、並びに
従来の高分子膜の細孔と同じ大きさの非重合領域を残して組成物の3次元基質が重合されるよう、それらの更なる位置でパルスを反復する工程
を含む、方法。
【請求項2】
基板を溶液、例えば溶液の槽中に浸漬するか、又はある量の溶液で繰り返し補充する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レーザ光パルスは、レンズを通過するレーザ光の伝播方向に概ね平行なZ軸に沿って、1つ又は複数の焦点に光を集める対物レンズを介して、及び焦点又は各焦点を前記Z軸に対して横方向に、例えば前記Z軸に垂直なX軸に沿って及び/又はZ軸及びX軸に垂直なY軸で、移動させることができる更なる光学部材を介してレーザによって供給され、レーザ及び光学部材の制御により、第1の領域における前記複数の位置の少なくとも一部が与えられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基板及び重合した組成物を、前記レンズに対して少なくとも前記X、Y軸方向に再配置して、第2の領域に前記レーザ光パルスを照射する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
長さの短いレーザパルスを用い、1パルス当たり約2個の光子吸収を生じさせる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの焦点は、分割されたレーザビーム及び/又は複数のレーザ光源に由来する複数の焦点である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
焦点は、線形配列又は2次元配列であり、所望される細孔間隔のピッチ又はピッチの倍数だけ間隔を空ける、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
焦点の線形又は2次元配列は、共に光学的に移動可能であり、その間隔を維持する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合は、細孔壁(120)となるよう意図される場所でのみ行われ、重合した細孔壁間の間隙(118)の全て又は大部分は、重合しないままであり、方法が、膜の細孔に相当する領域から非重合組成物を除去する工程を更に含み、次いで、膜の全体若しくは実質的な部分に亘って、又はその連続する領域に重合用の光を当てることによって非重合の間隙を広範囲に光重合する工程を更に含み、前記更なる広範囲の光重合の前に膜の頂部及び底部を重合する工程を任意選択で含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記間隙は、1つの細孔壁(120)を別の細孔壁(120)、例えば隣接する細孔壁(120)で支持するように作用する重合した特徴部(121)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液体のろ過又は被験物質の捕捉に適する高分子多孔質膜を製造する方法であって、
基板上に流動性組成物を与える工程であって、組成物は、少なくとも光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子を含む工程、
モノマーを局所的に重合するのに十分なエネルギーの1つ又は複数のレーザ光パルスを組成物における少なくとも1つの焦点に与える工程、並びに
連続又は段階的な所定の方法で、組成物に対し、複数の位置へ焦点又は各焦点を移動させ、且つ膜の細孔と同じ大きさの3次元の柱が形成されるよう、それらの位置でパルスを反復する工程
を含み、
非重合組成物を除去する工程、前記柱の周りの領域を膜材料で充填する工程、次いで膜材料から柱を除去して膜材料中に開孔を残す工程
を更に含む、方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するよう動作可能な、多孔質膜を製造する装置。
【請求項13】
完成したフィルタ膜を受けるロールを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
液体のろ過又は被験物質の捕捉に適する高分子多孔質膜であって、光重合された膜材料、及び膜の一方の側から他方の側への流体経路にそれぞれ延びる多数の開孔を含み、任意選択で、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法に従って製造される、高分子多孔質膜。
【請求項15】
前記流体経路が非線形である、請求項14に記載の高分子多孔質膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子多孔質膜、及びそれを製造する方法に関し、特に、限定されないが、流体のフロースルーろ過又は被験物質の捕捉における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、多くの生物学的用途があり、例えばバイオプロセシング、生物薬剤学的処理、並びに細胞及び遺伝子治療学に応用される。生物学的機構や細胞活動に対する理解の絶え間ない前進により、ろ過に由来する保持液とろ液をより良好に区別できるよう、より制御された膜ろ過が必要とされる。通常、これらの保持液又はろ液は、細胞、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、抗体、ウイルス、細菌、若しくはファージ、又はその他の微生物若しくは巨大分子といった標的分子又は標的物質である。市販されている高分子膜は、支持基板上に広がる溶媒に溶解したポリマーの液体ウェブを流延し、溶媒が蒸発するまでウェブを乾燥させ、且つ多数の細孔を有する残存固体ポリマー構造を残すことによって形成される、全体としてランダムな細孔の配列からなる。既知の高分子膜の一般的な構成に関する実施可能な程度の開示として、本明細書に組み込まれるか、又はそこに引用される公報と合わせて依拠される米国特許出願公開第20180104655(A1)号公報に、製造方法の1つがより詳細に記載される。
【0003】
細孔の大きさ、細孔の大きさの均一性、細孔の形状、膜の一方の側から他方の側への細孔の大きさの偏差、及び単位面積当たりの細孔数は、初期流延液の組成、ウェブの厚さ、及びウェブの乾燥条件に大きく依存する。新規の厚さ、若しくは新規の大きさの細孔を有する膜、又は新規の材料で膜を作製するには、経験豊富な膜製造業者であっても、ある程度多くの試行錯誤が必要である。通常、平均して0.1~10μmの大きさの細孔を有する、4μm~1mmの範囲の厚さの膜が使用される。
【0004】
非常に小さい大きさの細孔、例えば細孔の大きさが0.1μmや10μmの膜を製造する別の技術は、ショットガンブラストに似た、ポリカーボナートといったポリマーに電子線パルスを照射する方法である。本技術は、「トラックエッチング」として知られ、一例が米国特許第5449917号に記載される。本技術の結果、一貫した製造パラメータを使用したとしても、一貫性のない特性を有する、ランダム性の大きな微細細孔パターンが得られる。
【0005】
超短波レーザパルスを使用し、ある体積の感光性材料のいわゆる2光子重合に基づいて固体オブジェクトを作製する3次元(3D)微細加工法が知られる。ある体積の感光性材料に注目すると、パルスは、2光子吸収を介する重合、及びそれに続く重合を開始させる。次元的に制御された環境で、所望の3D形状に類似するパターンの感光性材料をレーザ照射し、続いて非照射外部領域を洗い流した後、所定の3D形状の重合した材料が残る。これにより、当該体積の感光性材料にレーザで直接「記録」することによって、コンピュータで生成されたあらゆる3D構造に加工することが可能となる。このような条件下で、約100nm以上の寸法の要素を有する加工品が可能となる。
【0006】
膜の3D加工方法は、「Perspective on 3D printing of separation membranes and comparison to related unconventional fabrication techniques」、Journal of Membrane Science、2017、523、596~613頁で検討されているが、大部分は否定されている。しかし、前述の従来の技術によってそのような細孔を作製するのにかかる時間は実用的でないとされ、そのため、膜に微小細孔を3D加工することは、大部分が否定される。例えば、上記の論文は、細孔密度について言及していないものの、実用的に有用な細孔密度であると推定される100nmの大きさの細孔を有する100mm×100mmの膜試料の製造に要する時間が数カ月であることを挙げている。また、そのような膜を製造するための実用的な技術は開示されていない。
【0007】
従来の膜は、ふるい作用を基礎とする表面ろ過、及びろ過が、塞いでいる細孔構造による物理的保持、特異型若しくは非特異型の表面相互作用、又は親和性リガンドによる表面修飾に少なくとも部分的に依拠する深層ろ過の両方を含む、様々なろ過機構に依拠する。既知の深層ろ過構造は、多層膜のサンドイッチ構造を含んでよく、ここで各層における細孔の大きさ、細孔構造、気孔率、屈曲度、及び他の物理的細孔特性は、膜を通過する液体及び粒子の経路に沿って非対称性をもたらすよう変動しうる。
【0008】
従来のろ過機構として、廃棄物の保持(浄化又はフロースルークロマトグラフィ)、深層ろ過における対象物、例えばタンパク質、細胞等の保持及びその後の放出(精製とも称される)、又はサイズ排除フィルタ上流の表面ろ過における生成物の保持(一般的にウルトラフィルトレーションやダイアフィルトレーションと称され、細胞洗浄を含む)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20180104655(A1)号
【特許文献2】米国特許第5449917号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Perspective on 3D printing of separation membranes and comparison to related unconventional fabrication techniques」、Journal of Membrane Science、2017、523、596~613頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の2つの段落に記載された従来のろ過機構は、従来の方法の一部であるため、改良されたあらゆる膜は、そのような機構と両立できる必要があり、従って、概ね同等の物理特性を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、高分子膜を製造する全く新しい手法を採用することにより、上記課題に新規の方法で取り組んだ。本発明者は、1つの手法において、モノマー又はオリゴマー組成物の低エネルギーレーザによる光重合を、従来の高分子膜のポリマー構造に似た固体光重合領域を有するポリマー構造又はその一部の作製に使用することができ、且つ従来の高分子膜において溶媒の蒸発によって残される細孔に似た非重合領域を残すことでき、非重合領域は、溶媒による洗浄によって残存する重合領域から除去されうることに気が付いた。この手法の改良例において、非重合領域(細孔)が一度洗い流された後、包囲される非重合領域に広範囲の光重合を施して処理時間を短縮することができるよう、光重合領域は、それぞれ非光重合領域を包囲しうる。別の手法において、組成物の低エネルギーレーザによる光重合は、従来の高分子膜の細孔に似た固体重合領域を有する、雄型高分子構造の作製に使用することができ、従来の高分子膜におけるポリマー構造に似た組成物非重合領域を残すことができる。非重合組成物の洗浄がそれに続き、雄型領域のみが残り、少なくとも雄型ポリマー構造の周りへの更なる固体材料の流延がそれに続き、その後、この雄型ポリマー構造は除去され、更なる固体材料のみが残り、これにより、従来の高分子膜の細孔に似た雄型高分子構造の除去によって残った空孔が備えられる。実際には、従来の高分子膜の細孔及び周囲の材料は、溶媒の蒸発又は電子ビーム照射の結果得られ、従って全体としてランダムな形態であり、一方で光重合は、次元的に制御された方法で実施され、従って所望されない限りランダム性を有する必要がないため、本段落における「に似た」という用語は、「と同じ効果を有する」ことを意味する。そしてこれは、細孔の大きさ、細孔形状、細孔の幾何学的形状(例えば、らせん状/湾曲細孔)、細孔密度、及び細孔の大きさの均一性が、製造公差の範囲内で事実上任意に達成できることを意味する。更にこれは、本明細書に記載される製造方法によって、従来の膜のランダム性を生じさせることなく、作製される細孔の重要な幾何学的形状を完全に制御することが可能となるため、従来の高分子膜の欠点を容認する必要がないことを意味する。例えば、ニトロセルロース膜の製造中に溶媒の蒸発によって形成される蛇行路を、除去又はエミュレートするまた任意とすることができる。
【0013】
本発明の第1の態様によると、本発明は、液体のろ過又は被験物質の捕捉に適する高分子多孔質膜を製造する方法であって、
基板上に流動性組成物を与える工程であって、組成物は、少なくとも光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子を含む工程、組成物を局所的に重合するのに十分なエネルギーの1つ又は複数のレーザ光パルスを組成物における少なくとも1つの焦点に与える工程、並びに連続又は段階的な所定の方法で、既に重合した組成物に対し、複数の更なる位置へ焦点又は各焦点を移動させ、且つ従来の高分子膜の細孔と同じ大きさの非重合領域を残して組成物の3次元基質が重合されるよう、それらの更なる位置でパルスを反復する工程を含む、方法を提供する。
【0014】
このようにして、予想可能な細孔の大きさ及び細孔形状を有する高分子膜を製造することができ、且つ従来の蒸発工程の予測できない性質の大部分を排除することができる。唯一の制限は、直前に記載した方法の製造公差である。
【0015】
一実施形態において、組成物は、光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子を含有する溶液であり、基板は、当該溶液中に、例えば当該溶液の槽又は補充量の当該溶液に浸漬される。
【0016】
一実施形態において、レーザ光パルスは、レンズを通過するレーザ光の伝播方向に概ね平行なZ軸に沿って焦点又は複数の焦点に光を集める対物レンズを介して、且つ焦点又は各焦点をZ軸に沿って及び/又は前記Z軸に対して横方向に、例えば前記Z軸に垂直なX軸に沿って及び/又はZ軸及びX軸に垂直なY軸で、移動させることができる光学部材を更に介してレーザによって供給され、レーザ及び光学部材の制御により、前記複数の位置の少なくとも一部が与えられる。
【0017】
一実施形態において、基板及び重合した組成物は、前記X、Y、及び/又はZ軸方向に移動し、複数の位置、又は前記複数の位置の更なる一部を与える。
【0018】
従って、レーザ光の重合焦点位置は、光学手段によって組成物に対して移動しうる、且つ/又は既に重合したポリマー組成物は、機械的手段によってレーザ光の位置に対して移動しうる。光学的な動作は、比較的高速且つ高精度であるが、寸法に比較的制限があるため、膜における1つの小さな第1の領域、又は膜の1枚の層は、光学的再配置動作を第2の領域で再び開始することができるよう、膜における新しい部分が形成された領域自体を機械的に比較的長い距離、第1の領域に隣接する第2の領域に移動させる前に、光を光学的に再配置することによって作製されうる。このような工程は、形成後の膜の複数の領域、又は重合位置の光学的再配置によって形成された部分から形成される膜全体が製造されるまで、続く領域で何度も繰り返されうる。しかし、小さな面積に関しては、レーザ光の光学的再配置のみを実施し、良好な結果を得ることができる。第2の領域又はそれ以降の領域に一度膜を移動させた後に、重合した膜をレーザ焦点に再び並べるために、顕微鏡と画像認識ソフトウェアを使用して細孔(又は一部の細孔)パターンを認識し、次いで第2の領域又はその後の領域で作製される細孔パターンが既に作製された細孔パターンと一致するように、膜を更に移動させるか、又は焦点位置を調整することによって、レーザ焦点に対して膜を精密に配列させることができる。例えば、意図的に1つの層を下層から離し、例えばジグザグの細孔を形成することによって非対称の細孔が作製されうるよう、同様の技術を、層を作製した後、その後の層のデータムを与えるために使用することができる。
【0019】
一実施形態において、集光されたレーザ光パルスは、光子総数の一致性が低く、例えば、2光子吸収が優勢である。
【0020】
一実施形態において、少なくとも1つの焦点は、分割されたレーザビーム、及び/又は複数のレーザ光源に由来する複数の焦点である。便宜上、焦点は、線形配列又は2次元配列であり、所望される細孔間隔のピッチ又は当該ピッチの倍数だけ間隔を空ける。便宜上、焦点の線形又は2次元配列は、共に光学的に移動可能であり、その間隔を維持する。
【0021】
一実施形態において、重合は、細孔壁となるよう意図される場所でのみ行われる。重合した細孔壁の間の間隙は、重合しないままである。その場合、方法は、次いで非重合組成物を膜の細孔に相当する領域から除去する工程を更に含み、次いで、重合用の光を膜全体に亘って、又はその連続する領域に当てることによって非重合の間隙を広範囲に光重合する工程を更に含む。便宜上、膜の頂部及び底部は、前記更なる広範囲の光重合の前にも形成される。
【0022】
このように、膜の細孔壁及び外表面のみが寸法的に制御された条件で光重合される必要があり、本質的にシェルを形成し、最終的な膜構造の内部領域は、液体のままである。残った内部空間の液体組成物に対する広範囲の光重合は、細孔の非重合組成物を一度洗い流した後に、例えば高エネルギーレーザ又は複数の高エネルギーレーザといった広域光源を使用することによって達成されうる。熱又はUV光による重合も可能である。重合の多くは寸法的な制御を行わずに行われうるため、この技術は、製造時間を著しく低減する。
【0023】
第2の態様によると、本発明は、液体のろ過又は被験物質の捕捉に適する高分子多孔質膜を製造する方法であって、
基板上に流動性組成物を与える工程であって、組成物は、少なくとも光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子を含む工程、
モノマーを局所的に重合するのに十分なエネルギーで1つ又は複数のレーザ光パルスを組成物における少なくとも1つの焦点に与える工程、並びに
連続又は段階的な所定の方法で、組成物に対し、複数の位置へ焦点又は各焦点を移動させ、且つ膜の細孔と同じ大きさの3次元の柱が形成されるよう、それらの位置でパルスを反復する工程
を含み、
非重合組成物を除去する工程、前記柱の周りの領域を膜材料で充填する工程、次いで膜材料から柱を除去して膜材料中に開孔を残す工程
を更に含む、方法を提供する。
【0024】
本発明は、そのような組み合わせが明示的に本明細書に言及されているか否かにかかわらず、本明細書に開示される特徴のあらゆる組み合わせに及ぶ。更に、2つ以上の特徴が組み合わせされて言及される場合、そのような特徴は、本発明の範囲を拡張することなく、個別に請求されうるよう意図される。
【0025】
本発明は、多くの方法で実施することができ、その例示的な実施形態が、図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る膜の顕微鏡写真を示す図である。
【
図5】説明される膜を製造するための製造設備を示す図である。
【
図6】説明される膜を製造するための製造設備を示す図である。
【
図7】
図4a~
図4cに示される膜製造技術の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、その課題及び利点と共に、以下の説明を添付の図面と併せて参照することにより、より良く理解されうる。ここで、類似の参照番号、又は下二桁が同じ参照番号は同様の要素を示す。
【0028】
図1を参照すると、以下に説明される手順に従って製造された、細孔2を有するプリントされた高分子膜10の顕微鏡写真が平面図で示される。この例において、概ね円形の細孔12が、白い「ハロー」と共に、直径約2.5μmの黒い領域として示される。「ハロー」は、光学系のダイナミックレンジの幅が縁部を示すのに十分に広くなく、顕微鏡の画素を飽和させる、鋭い縁部への荷電集中の影響に起因する。
【0029】
図2を参照すると、意図的に線を引いてプリントされた、それぞれ異なる大きさのプリントされた試験細孔を有する領域A、B及びCから形成された膜20の顕微鏡写真が示され、いずれも
図1に示される膜10よりも小さい拡大倍率で示される。細孔の大きさは、それぞれ約4.5、4及び1.6、2.5μmである。示される複数の細孔は、前述の種の膜としての使用に適する。以下に説明する手順を使用し、これらの細孔は、細孔サイズ領域を固化させずに残して液体ポリマーを層毎に固化し、次いで未固化のポリマーを細孔サイズの孔から洗い流して細孔を露呈させることによって製造されたものである。A、B及びC等の各領域は、各細孔の形成に使用される光学部材に対する膜の一部の機械的動作によって次の領域へ移動する前に、光学的操作を使用して順次プリントされたものである。
【0030】
図3は、前述の方法と同じ方法で作製されるが、直径がはるかに小さい複数の細孔32を同様に有する異なる領域D及びEを有する更なる膜30を示し、この場合、それぞれ2μm及び1μmの細孔が形成されている。示される細孔12、22、32の間の間隔は、ある程度増大又は減少してよく、且つ繰り返される格子パターンは、不規則又は異なるパターン、例えば規則的な形状の細孔のモザイク状パターンであってよいことが明らかであろう。また、細孔の形状は、円形以外であってよく、例えば重合される材料の量を低減するよう、六角形の細孔が蜂巣のようにモザイク状となる六角形の細孔が使用されうる。このように、従来の方法で製造された膜と同様の、所望される特性を有する膜を達成することができる。細孔密度は、膜の用途に応じて調整されうるが、固体材料密度に対し細孔を最大で70%とすることが可能であり、例えば規則的な約0.018Dの間隔を空けた細孔行が配置される。ここで、Dは平均細孔径であり、行は千鳥状に配置される。
【0031】
図4aを参照すると、製造技術の例が模式的に示される。シリコンゴム基板床220を含む液体組成物100の槽の一部の断面が示される。組成物は、以下に説明される光活性化性モノマー分子、光活性化開始剤分子、及び光活性化クエンチャ分子から少なくとも構成される混合物を含む。この図において、重合した組成物100の直線状の連続小片114は、所望されるXY座標軸に焦点が並べられる場合、Z軸における一定の小片の高さに集光された、コントローラ(
図5、250)によって作動されるフェムト秒のレーザパルスを有するレーザビームLを使用して形成される。ここで、Zは、図のページの上下方向であり、Xは、図の左右方向であり、Yは図の手前奥方向である。このようなパルスは、重なり合う重合小片114を形成するが、重合されない「細孔」112を残すようレーザは制御され、その後レーザは、繰り返して次の連続小片114の固化を行うために、隣接する位置に光学的に再配置される。図において、レーザ焦点Pは、X方向に(左から右へ)走査され、定期的に通電されて連続小片114を作製するが、細孔112が設置されるよう意図される位置では通電されない。
【0032】
図4bにおいて、
図4aと同じパターンであるが、第1の連続小片に重なるよう、1つの小片の大きさより低い高さだけZを上昇させたパターンに焦点Pを再走査し、しかし同様に細孔領域112上では通電させずにレーザを走査することによって、
図4aに示される第1の層とわずかに重なる重合小片の第2の層が作製される。この層毎の重合は、何度も繰り返すことができ、ほぼあらゆる大きさの細孔及びあらゆる細孔パターンを有する、所望の厚さの膜が作製される。
【0033】
図4cは、非重合細孔領域112を有する前の層の上に形成される更に多くの小片層で形成される、最終的な膜140を示す。実際には、溶媒で膜140を洗浄することによって、非重合組成物は取り除かれ、これらの細孔領域112は空の状態となる。明確さのため、小片は、実際に形成される小片よりもはるかに大きく示される。細孔領域112の縁部120の間に形成される間質領域118は、重合された状態で示される。しかし、それらの間質領域118の少なくとも一部を重合しないまま残すことも本発明の範囲内であり、細孔領域112が一度洗い流された後、領域118も重合させる最終的な広範囲の重合が行われうる。
【0034】
便宜上、細孔領域112は、単純な垂直の細孔経路として示されているが、関心のある被験物質、例えばタンパク質又は細胞といった大きな分子を保持又は捕捉するが、他の物質は膜を通過させるのに、実際にはより良い形状でありうる他の形状の細孔経路、例えばらせん状細孔、ジグザグ状細孔、疑似ランダム経路等も同様に簡単に作製される。このような湾曲経路は、前述の深層ろ過を目的として与えられる。
【0035】
図4a、
図4b、及び
図4cは、理解しやすいよう、固化領域118に対して細孔112を過大に示し、膜の断面を模式的に示すと理解されるべきである。
【0036】
細孔径は、5μm未満であっても、又は5μmより大きくてもよく、典型的な細孔経路の長さは(膜の厚さである必要はなく)、細孔径の5、10、20、50、又は100倍である。細孔の縁部120のみを重合し、領域118’を液体のまま残す場合、比較的直径の小さい長い細孔に関しては、細孔領域112中の液体が一度洗い流されると、長い中空構造は脆くなる。例えば隣接する細孔領域112の隣接する縁部120を接合するブレース121を重合させることによって、これらの固化した縁部120を強化することが可能である。強度及び剛性を高めるために、細孔縁部120間に複数のブレース121、例えば
図4b及び
図4cに示される交差ブレース121が使用されうる。
【0037】
図5は、前述の膜の製造に使用される装置200の一例を示す。本例において、レーザ202は、各々コントローラ250の影響下にある2枚のガルバニック反射ミラー204及び206にコヒーレント光ビームLを伝播するよう向けられる。前述した重合を目的として槽100内の重合点PにビームLを厳密に集光させるために、同様にコントローラ250の影響下にある、調整可能な対物レンズ又は複数の対物レンズ208が使用される。ミラー204及び206の制御された動きによって焦点Pは迅速に再配置され、フェムト秒レーザパルスでのレーザの迅速な発射により、示される領域A内に前述の重合した連続小片114が実現される。小片の層は、コントローラ250の制御下にあるリニアアクチュエータ212を使用し、レンズ208の高さZを調節することによって作製されうる。槽100は、更なるリニアアクチュエータ210を使用してX軸方向に、且つ図示されない同様の構成によってY軸方向に再配置される。前述のミラーの迅速な動作によって、次の領域が選択される前に次の領域B及びC等が同様に重合されうるよう、いずれの場合においても、アクチュエータはコントローラ250の影響下にある。より良好な精度のため、槽100上の対物レンズ208とガラス層125の間の空間は、レーザ光パルスLの光路の大部分がほぼ同じ屈折率で材料を通過するよう、光透過性の油105で満たされる。
【0038】
上記の装置による製造は十分に速いが、より速く製造することが望まれる。そのため、
図6に示されるように、複数のレーザビームLを使用することが好ましい。複数のレーザビームLは、本例においては装置200’の複数のレーザ211に由来するが、複数のビームスプリッタを使用し、より強力なレーザビームを多数のビームに分割することによっても生じうる。後者の手法はより安価であるが、より多くの光学的アライメントを要するため、複数のレーザが好ましい。
図6に示される装置200’は、複数のレーザ211が集められ、それらの出力ビームが集束パターンに形成される以外は、
図5に関連して前述された方法と同様の方法で動作する。本例においては、9個のレーザが3×3の2次元パターンに配置される。ビームは、先に説明されたようにポリマー組成物100の槽に向かって伝播し、先に詳述されたように重合小片を形成するよう段階的に移動しうる。
【0039】
発熱を軽減するため、レーザビームL(
図5)又は複数のレーザビームL’(
図6)は、隣接する細孔間の幅(すなわち、細孔ピッチ)より長い距離を移動してよく、且つ/又はビームL’は、1細孔ピッチより離れてよい。従って、例えば、ビームL’がXピッチ間隔を空けて段階的にX-1ピッチ移動する場合、端の細孔を除き、残る細孔は、1度に1ピッチだけ動かす場合よりも少ない発熱で形成されうる。
図6は複数のレーザを示すが、これらのレーザの代わりにLEDレーザアレイを使用することが可能であろう。
【0040】
いずれの重合方法を使用するかにかかわらず、重合した材料を連続して積層することにより、透明性の低下及び回折の問題が生じうる。これらの問題を軽減するため、レーザ光システムは、構造や回折パターン等における不均一性の主な原因となる局所的な光の照射量や角度等及び投入エネルギーを評価し、且つ最適化することによる下層の3D構造の正確なモデリングを利用しうる。
【0041】
別の膜製造技術が
図7に示され、ここで加工312を有する雄型の鋳型は、前述と同じ技術を使用する光重合によって形成される。ポリマーの非重合の残余318は、雄型鋳型を残して洗い流される。ここで、空孔318は、充填用熱硬化性ポリマーといった膜形成材料で満たされうる。充填用ポリマーが硬化したら、鋳型は機械的に、又は適切な溶媒で洗い流すことによって、又は熱を用いて除去されてよく、前述の細孔12、22、32、112等に相当する細孔が残る。
【0042】
組成物100及び製造手順の例を以下に示す。
一例において、流動性組成物100は、透明な光活性化性アクリラートモノマー樹脂を含み、最大で3%の、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド分子等のアシルホスフィンオキサイド、又はベンゾフェノン、キサントン、若しくはキノン、又はこれらの分子の組み合わせといった光活性化開始剤、及び第3級アミン分子といった光活性化クエンチャが添加される。レーザは、約800nmの出力波長を有する、パルス長が10~100フェムト秒(fs)のエキシプレックスレーザ(エキシマレーザとしても知られる)であってよいが、パルス長は、約40~60fs、例えば50fsが好ましく、可能な繰り返し率は約5MHzである。
【0043】
細孔が次元的に最も重要である場合、細孔間の間隙は、例えば、より広い面積をより速く光重合させることが可能で、それによって製造工程を高速化できる、より高いエネルギーのレーザ光を使用することによって、又は噴射による材料の導入、すなわち液体熱可塑性物質の導入(細孔を包囲する材料と同じ材料である必要はない)によって、より低い分解能で満たされる。
【0044】
局所的な重合を引き起こすのに必要なエネルギーは、組成物100における少なくとも1つの焦点に集光されたレーザパルスによって与えられ、2光子吸収重合によって、すなわち2つ以上の光子が同時に上記の光活性化開始剤(光開始剤)に吸収され、モノマー樹脂の重合を開始させる活性種を生じさせる。このような条件下で、光強度が最大となる領域のみで多光子吸収が起きる。これにより、重合が集光レーザビームの体積(ボクセルとして知られる)に制限される。このようにして、わずかに重なり合う、例えば25%重なり合う、重合した材料の小片が作製される。消光分子は、蛍光を消光させ、高分子枝が樹枝状に広がることを阻害するか又は停止させ、より一体化した境界明瞭な重合塊を生じさせる。有機溶媒を使用して樹脂の未固化部を洗い流すことで膜が露呈する。
【0045】
上記の技術及び材料を使用した結果、その膜厚及び細孔密度を含め、従来の層状ニトロセルロース膜やTrack-Etched膜の適切な等価物がもたらされる。しかし、本発明に従って作製される膜の特性を向上させる変形例を与えることが可能であると考えられる。例えば、
図8に示されるように、製造中に組成物槽100に導入される、前述した細孔の形成を過度に妨げない繊維411、例えばナノファイバを有する膜10’が示される。完成した膜10’は、改善された機械的強度を有する。更に、又は代わりに、同じの効果を達成するため、膜の細孔の大きさ及び配置と比べて比較的粗い織目を有する材料(図示せず)のメッシュ又はウェブを、重合前に槽に浸漬させてよい。一度細孔が形成されると、メッシュ等は、膜に組み込まれ、同様に膜を著しく強化し、それにより膜差圧が大きくなる。
【0046】
前述の基板支持体220は、上記の例において、膜を形成する表面が除去可能であるよう意図される。また、基板220の表面を用いて、1つ又は複数のマイクロセンサ400(
図8)がその上に設置されてよく、必要に応じ、それらのセンサとの通信及び/又はそれらのセンサへの電力供給のための電気伝導路410が、例えば、3Dプリントによって、ポリマー槽が置かれる前に支持体220の表面に形成される。完成した膜からの支持体220の剥離、又はその逆によって、センサ及びあらゆる導体トラックは留置され、完成した膜上又は膜中で使用される準備が整う。この場合、マイクロセンサ400は、膜差圧を測定する静電容量ギャップセンサであり、膜のフィルタ性能に関する指標を与えることができる。他のセンサ、例えば他の圧力センサ、流量センサ、電導度センサ、pHセンサ、浸透圧センサ、化学組成又は濃度センサ等も使用されてよく、ろ過が行われる際にリアルタイムでデータ、例えば膜の性能を与えることができる。別の例(図示せず)において、膜を通過する流体の光吸収性能を遠隔で観測することができるよう、膜は吸光度センサ含む基板上に形成されてよく、ここで膜は、センサに対する入口及び出口を含む。これにより、タンパク質濃度等を観測することができる。更に別の変形例において、膜は、微小流体弁上、及び圧力センサ上に形成されてよく、圧力センサは、例えば横方向の膜の差圧が所定量を超えた際に、弁を開放するための信号を生成することができる。他のセンサ、例えば、膜が破断した場合等に電路が遮断されると膜の不具合を伝える信号が送られる電気伝導率センサや温度センサが使用されうる。追加のセンサ又は他の膜の付属品、例えばフレーム若しくは他の物理支持体を製造するための、より従来型の、低分解能物質の積層造形を、良好な結果で、本明細書に記載される膜製造方法と併せて使用することができる。
【0047】
示される実施形態によって平面状の膜が得られるが、他の形状の膜、例えば中空線維ろ過における中空線維として機能する管状膜も有用でありうる。従って、本明細書で使用される膜という語は、必ずしも平面状でないシート状材料及び他の薄い材料を含むよう意図される。
【0048】
多くの実施形態を説明及び図示したが、請求される発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対する追加、省略、及び変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0049】
前述された技術は、単一層の膜で非対称性を達成するために使用することができ、物理的性質における複数の非対称性(例えば、より広く、次いでより狭く、次いでより広い細孔)及び/又は表面又は深層ろ過を促進するための起伏表面特性、例えば漏斗状細孔開口又は狭窄した細孔開口をも有しうる。
【0050】
その後にリガンドを結合させるための化学リガンド又はアンカーがプリントされてよく、機能を向上させるため、及び/又は(高価な)リガンドをより効果的に使用するための、制御された配置、及びその後の非等方的で非対称な特性の変更が可能となる。
【0051】
寸法の小さい重合領域を作製し、次いで重合させる別の領域に光学ヘッドを移動させるか、又は重合させる材料をヘッドに対して移動させるために、上記の技術は、比較的小さい光学ヘッド走査距離を必要とする。その場合、各領域で細孔パターンを一致させることが望ましいが、これは必須ではない。領域間の境界に、細孔の途切れ、折り返し、又はひだを有することも可能である。膜の折り返し部は、相対的に剛性な部分に付着することができ、フィルタカセット又はフィルタカートリッジを形成する。
【0052】
図8に関し、上記では、既知のセンサ上又は他のハードウェア上にプリントし、それによってそのようなハードウェアを、そうしてプリントされた膜に組み込む技術が記載された。他の実施形態において、重合した材料からセンサ又はセンサの一部を形成することが可能である。例えば、前述の圧力センサに関し、重合した材料から形成される壁で柔軟で圧縮可能な空洞を形成することが可能であり、ここで検知表面は、柔軟な感圧膜として精密に形成され、空洞の残りは、感圧センサ素子への流体導管として機能し、それによって膜内部の一部における流体圧の測定が可能となる。
【0053】
更に、ある実施形態において、光コンジット又は光ガイドを設けることが可能である。そのような光ガイドは、例えば透明性の低い構造内部で、第2の重合工程をもたらしうる。光が末端光拡散体又はレンズを有する場合、構造を形成する部分的に重合した膜に導かれた光は、膜を完全に重合するために使用することができる。
【0054】
個別のシート状膜の製造を説明及び図示したが、他の技術が用いられうることは明らかであろう。例えば、連続製造技術が用いられてよく、例えば、完成した膜をその支持体220から剥離し、洗い流して細孔を製造し、その後ロールに巻くことができる。
【0055】
上記では、単一又は複数のレーザ光による重合が想定されるが、ホログラフィシステム、又はビームスプリッタ及び複数のレンズを使用し、複数の光路を生じさせることができる。重合材料は、例えばガンマ線で滅菌できるよう選択されうる。更に、又は代わりに、滅菌は、無菌閉鎖条件下で、且つ事前に殺菌された材料を使用して膜を製造することによって達成されうる。滅菌された完成した膜は、単回使用用途に適し、生体適合性材料を使用すれば、これらは、Good Manufacturing Process(GMP)の一部となることができ、細胞及び遺伝子治療といった医療用途に適する。
【符号の説明】
【0056】
10、10’、20、30、140 膜
12、22、32、112 細孔
100 組成物
105 油
114 連続小片
118 間質領域
120 縁部
121 ブレース
125 ガラス層
200、200’ 装置
202、211 レーザ
204、206 ミラー
208 レンズ
210、212 リニアアクチュエータ
220 基板
250 コントローラ
312 加工
318 残余、空孔
400 マイクロセンサ
411 線維
L パルス
P 焦点
【国際調査報告】