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特表2022-506203膀胱機能を監視するためのデバイス、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】膀胱機能を監視するためのデバイス、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/20 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61B5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523413
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 US2019058527
(87)【国際公開番号】W WO2020092343
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/752,987
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517209293
【氏名又は名称】レノビア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Renovia Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ビア,マーク ディ
(72)【発明者】
【氏名】プリアム,サマンサ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マッキニー,ジェシカ エル
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038DD04
(57)【要約】
膀胱機能を監視して切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁などの尿失禁障害を診断、治療、または予防するために、骨盤底運動を観察するための、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および直腸内デバイス、それらのシステムおよびキット、ならびにデバイス、システム、およびキットを使用する方法を紹介する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の位置センサを含む、尿流動態カテーテル。
【請求項2】
前記カテーテルが、デバイスの長さに沿って配置された複数の位置センサを含む、請求項1に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項3】
前記位置センサのうちの1つ以上が、MEMS加速度計である、請求項1または2に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項4】
前記カテーテルが、2~50個のセンサを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項5】
前記カテーテルが、2~20個のセンサを含む、請求項4に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の尿流動態カテーテルと、1つ以上の位置センサを含む膣内または直腸内デバイスと、を含む、システム。
【請求項7】
前記膣内または直腸内デバイスが、前記デバイスの長さに沿って配置された複数の位置センサを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記膣内または直腸内デバイス上の前記位置センサのうちの1つ以上が、MEMS加速度計である、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記膣内または直腸内デバイスが、2~50個のセンサを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記膣内または直腸内デバイスが、2~20個のセンサを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記膣内または直腸内デバイスが、膣壁、膣円蓋、または直腸に接触するように構成された外縁部を有する実質的にリング状の本体と、前記本体に接続されたテザーと、を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記膣内または直腸内デバイスの長さが、約2cm~約50cmである、請求項6~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記尿流動態カテーテル、膣内デバイス、または直腸内デバイスが、データを電子デバイスに通信するための送信機および/または受信機を含む、請求項6~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記送信機または受信機が、無線周波数送信機または受信機である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記送信機および/または受信機が、前記データを前記電子デバイスに無線で通信することができる、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記送信機および/または受信機が、Bluetooth、ISM(産業、科学、および医療)帯域無線、および/またはWi-Fi対応電子デバイスとともに使用するように構成されている、請求項13~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記電子デバイスが、ディスプレイを含み、任意選択的に、前記ディスプレイが、タッチユーザインターフェースを備えたグラフィカルユーザインターフェースなどのグラフィカルユーザインターフェースである、請求項13~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記電子デバイスが、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、またはスマートウォッチである、請求項13~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
対象の膀胱機能を評価する方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の尿流動態カテーテルまたは請求項6~18のいずれか一項に記載のシステムを用いて、1つ以上の尿流動態測定を実施することを含む、方法。
【請求項20】
前記1つ以上の尿流動態測定が、1つ以上の位置、運動、圧力、および流動を計測する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧力が、腹腔内圧、排尿筋圧、および膀胱内圧のうちの1つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~5のいずれか一項に記載の尿流動態カテーテルもしくは請求項6~18のいずれか一項に記載のシステム、または1つ以上の位置センサを含む膣内もしくは直腸内デバイスを用いて、対象の膀胱機能の日誌をつける方法であって、前記方法が、前記尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスを用いて前記膀胱機能を監視することと、前記カテーテル、膣内、または直腸内デバイスの前記1つ以上の位置センサから位置データを取得することと、を含む、方法。
【請求項23】
前記1つ以上の位置センサからの前記データを処理して前記膀胱機能の発生を判定することと、前記処理されたデータに基づいて前記膀胱機能の前記発生を記録することと、をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記位置データが、センサ角度および時間のうちの一方または両方を含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記膀胱機能が、充満、排出、容量、知覚、コンプライアンス、および漏出のうちの1つ以上を含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~5のいずれか一項に記載の尿流動態カテーテルまたは請求項6~18のいずれか一項に記載のシステムと、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項27】
1つ以上の位置センサを含む尿流動態カテーテルおよび膣内デバイスを含む、キット。
【請求項28】
前記キットが、自動排尿日誌として使用されるように構成されている、請求項26または27に記載のキット。
【請求項29】
前記位置センサのうちの1つ以上が、MEMS加速度計である、請求項1に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項30】
前記カテーテルが、2~50個のセンサを含む、請求項1に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項31】
前記カテーテルが、2~20個のセンサを含む、請求項30に記載の尿流動態カテーテル。
【請求項32】
請求項1に記載の尿流動態カテーテルと、1つ以上の位置センサを含む膣内または直腸内デバイスと、を含む、システム。
【請求項33】
前記膣内または直腸内デバイスが、前記デバイスの長さに沿って配置された複数の位置センサを含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記膣内または直腸内デバイス上の前記位置センサのうちの1つ以上が、MEMS加速度計である、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記膣内または直腸内デバイスが、2~50個のセンサを含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
前記膣内または直腸内デバイスが、2~20個のセンサを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記膣内または直腸内デバイスが、膣壁、膣円蓋、または直腸に接触するように構成された外縁部を有する実質的にリング状の本体と、前記本体に接続されたテザーと、を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項38】
前記膣内または直腸内デバイスの長さが、約2cm~約50cmである、請求項32に記載のシステム。
【請求項39】
前記尿流動態カテーテル、膣内デバイス、または直腸内デバイスが、データを電子デバイスに通信するための送信機および/または受信機を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項40】
前記送信機または受信機が、無線周波数送信機または受信機である、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記送信機および/または受信機が、前記データを前記電子デバイスに無線で通信することができる、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記送信機および/または受信機が、Bluetooth、ISM(産業、科学、および医療)帯域無線、および/またはWi-Fi対応電子デバイスとともに使用するように構成されている、請求項39に記載のシステム。
【請求項43】
前記電子デバイスが、ディスプレイを含み、任意選択的に、前記ディスプレイが、タッチユーザインターフェースを備えたグラフィカルユーザインターフェースなどのグラフィカルユーザインターフェースである、請求項39に記載のシステム。
【請求項44】
前記電子デバイスが、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、またはスマートウォッチである、請求項39に記載のシステム。
【請求項45】
対象の膀胱機能を評価する方法であって、請求項1に記載の尿流動態カテーテルを用いて、1つ以上の尿流動態測定を実施することを含む、方法。
【請求項46】
前記1つ以上の尿流動態測定が、1つ以上の位置、運動、圧力、および流動を計測する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記圧力が、腹腔内圧、排尿筋圧、および膀胱内圧のうちの1つ以上を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項1に記載の尿流動態カテーテルを用いて対象の膀胱機能の日誌をつける方法であって、前記方法が、前記尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスを用いて前記膀胱機能を監視することと、前記カテーテル、膣内、または直腸内デバイスの前記1つ以上の位置センサから位置データを取得することと、を含む、方法。
【請求項49】
前記1つ以上の位置センサからの前記データを処理して前記膀胱機能の発生を判定することと、前記処理されたデータに基づいて前記膀胱機能の前記発生を記録することと、をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記位置データが、センサ角度および時間のうちの一方または両方を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記膀胱機能が、充満、排出、容量、知覚、コンプライアンス、および漏出のうちの1つ以上を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
請求項1に記載の尿流動態カテーテルと、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項53】
前記キットが、自動排尿日誌として使用されるように構成されている、請求項52に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
尿失禁は、男性および女性の両方で発生するものであり、骨盤底(PF)の筋肉の衰弱または緊張(例えば、筋緊張亢進)に関連するものである。女性の骨盤底筋の衰弱または拘縮には、妊娠、膣出産、骨盤手術、加齢、遺伝的素因、神経疾患、および体重増加など、多くの一般的な要因が寄与している。男性の場合、尿失禁はしばしば前立腺肥大によって引き起こされる。さらに、尿失禁はしばしば、腹圧性尿失禁(SUI)、切迫性尿失禁、および混合性尿失禁の3つの種類に分類される。
【背景技術】
【0002】
尿失禁を診断するための現在の方法として、尿流動態検査および/または排尿日誌を使用することによって膀胱機能を監視することが挙げられる。ただし、これらの方法論では、膀胱機能の性質に関する不完全な情報が提供されることが多く、様々な種類の尿失禁が常に効果的に区別されるとは限らず、人為的ミスの対象となる可能性がある。尿流動態検査を使用して、膀胱圧の変化および圧力勾配による漏出の変化を評価することができるが、尿流動態検査システムでは、バルサルバ法(Valsalva)による筋肉の動きまたはシステム内の動きを特定または評価することができない。例えば、女性は、腹圧性尿失禁に関連する状態である過可動性尿道の症状を示し得るが、これは、尿流動態検査では捕捉されていない。また、骨盤底筋収縮は、腹圧性尿失禁の予防または排尿筋収縮によって引き起こされる切迫症状の鎮静において重要であるが、現在の尿流動態検査システムでは捕捉されない。
【0003】
尿失禁の別の原因として、内因性括約筋欠損症(ISD)がある。ISDの診断は、通常、尿流動態パラメータ(低漏出点圧または尿道閉鎖圧(MUCP))を評価することによって行われる。ISDの診断を行うために必要なこれらのパラメータの絶対値は、不正確である。
【0004】
したがって、尿失禁を正確に監視、診断、および治療するために、膀胱機能を監視するための新しいデバイス、システム、および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、1つ以上の位置センサを含む尿流動態カテーテルが特徴付けられる。カテーテルは、デバイスの長さに沿って配置された複数(例えば、2~50個、例えば、2~20個)の位置センサ(例えば、MEMS加速度計)を含み得る。
【0006】
また、尿流動態カテーテルと膣内または直腸内デバイスとを含むシステムも特徴付けられる。尿流動態カテーテルならびに/または膣内および直腸内デバイスは、1つ以上の位置センサおよび/または他のセンサを含み得る。膣内または直腸内デバイスは、デバイスの長さに沿って配置された複数(例えば、2~50個、例えば、2~20個)の位置センサ(例えば、MEMS加速度計)および/または他のセンサを含み得る。膣内または直腸内デバイスは、膣壁、膣円蓋、または直腸に接触するように構成された外縁部を有する実質的にリング状の本体と、本体に接続されたテザーと、を含み得る。膣内または直腸内デバイスの長さは、約2cm~約50cmであり得る。
【0007】
尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスは、データを電子デバイスに通信するための送信機および/または受信機(例えば、無線周波数送信機または受信機)を含み得る。送信機および/または受信機は、(例えば、Bluetooth(登録商標)、ISM(産業、科学、および医療)帯域無線、および/またはWi-Fi対応電子デバイスを用いて)データを電子デバイスに無線で通信することができる。電子デバイスは、例えば、タッチユーザインターフェースを備えたグラフィカルユーザインターフェースなどのディスプレイを含み得る。電子デバイスは、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、またはスマートウォッチであり得る。
【0008】
また、上記の態様のいずれかの尿流動態カテーテルまたはシステムを用いて1つ以上の尿流動態測定を実施することによって、対象の膀胱機能を評価する方法も特徴付けられる。1つ以上の尿流動態測定には、位置、運動、圧力、および流動のうちの1つ以上を計測することが含まれ得る。圧力測定には、腹腔内圧、排尿筋圧、および/または膀胱内圧のうちの1つ以上を計測することがさらに含まれ得る。
【0009】
また、上記の態様のいずれかの尿流動態カテーテルもしくはシステム、または1つ以上の位置センサおよび/もしくは他のセンサを含む膣内もしくは直腸内デバイスを用いて、対象の膀胱機能(例えば、充満、排出、容量、知覚、コンプライアンス、漏出、頻尿、排尿期間、およびバルサルバ排尿の証拠)の日誌をつける方法も紹介する。本方法は、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスを用いて膀胱機能を監視することと、カテーテル、膣内、または直腸内デバイスの1つ以上の位置センサおよび/または他のセンサから位置および/または他のデータを取得することと、を含む。本方法は、1つ以上の位置センサおよび/または他のセンサからのデータを処理して膀胱機能の発生を判定することと、処理されたデータに基づいて膀胱機能の発生を記録することと、をさらに含み得る。位置データには、センサの角度および時間のうちの一方または両方が含まれ得る。他のセンサデータには、時間の経過に伴う他のパラメータの計測値が含まれ得る。
【0010】
また、1つ以上の位置センサおよび/または他のセンサを含む上記の態様の尿流動態カテーテルと、膣内デバイスまたは直腸内デバイスと、を含むキットも特徴付けられる。キットには、任意選択的に使用説明書が含まれ得る。一部の実施形態では、尿流動態カテーテルは、位置センサを含まない。キットは、自動排尿日誌として使用されるように構成することができる。
【0011】
上記の態様のいずれかの一部の実施形態では、尿流動態カテーテルは、1つ以上の位置センサを含まない。
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段明記しない限り、複数形を参照することを含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、記載された値の+/-10%を意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「近接」および「近位」という用語は、組織表面(例えば、組織表面から、または組織表面に隣接して、例えば、対象の子宮頸部または膣カフを取り囲む約0.01~5mm)の近くの場所を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「フィードバック」または「バイオフィードバック」という用語は、健康およびパフォーマンスを改善(例えば、骨盤底障害(PFD)の発生または症状の治療、軽減、および/または予防)する目的で、生理学的活動(例えば、骨盤底筋機能)を変化させるように個体を訓練するために使用することができる情報を指す。(バイオ)フィードバックはまた、ユーザが自身の日常的な活動を実施している間、例えば実質的にリアルタイムで、日常的な監視中に本発明のデバイスによって収集された情報を含み得る。情報は、実質的にリアルタイムで確認することができるか、または後で確認するためにアクセスすることができる。本発明のデバイスなどの器具を使用して、筋活動(例えば、運動および圧力)、圧力(例えば、膀胱圧または膣圧)、筋質、ならびに膣管のpH、温度、および湿度などの生理学的活動を計測し、この情報をバイオフィードバックとして個体に提供することができる。本発明のデバイスなどの器具を使用して、分子のレベル、例えば、ホルモンのレベルおよび/または毒素のレベルを計測し、この情報をバイオフィードバックとして個体に提供することもできる。個体へのこの情報の提示は、視覚的、聴覚的、または触覚的信号によるものであり得、所望の生理学的変化(例えば、骨盤底筋力、制御、および質の改善)を支持し得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「較正期間」という用語は、個体によるデバイスの使用期間中に、本明細書に記載のデバイス内に位置決めされたセンサからの計測値のベースラインセットを決定し、計測値のベースラインセットが、治療プログラムの開始前または開始時の個体の骨盤底筋の健康状態(筋力、筋質、状態など)を特徴付けるプロセスを指す。較正期間中に収集された計測値のベースラインセットを使用して、治療プログラムを通じて個体の進捗状況を計算および/または決定することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「診断」という用語は、疾患または状態(例えば、骨盤底障害)の特定または分類を指す。例えば、「診断」は、特定の種類の尿失禁を特定することを指してもよい。
【0018】
「障害」とは、慢性および急性の障害または疾患を含むがこれらに限定されない、治療から利益が得られる任意の状態であり、対象を問題の障害に罹患しやすくする病的状態が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「監視」という用語は、データ、例えば、本明細書に記載のデバイスのセンサ(複数可)から取得されたデータを収集、追跡、および/または保存するために本発明の尿道内、直腸内、または膣内デバイスを使用することを指す。監視は、例えば、デバイスがユーザの膣腔、直腸、または尿道内に位置決めされたとき、かつ/またはデバイスが診断または治療期間中に使用されたときに行われる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「骨盤底リフト」および「PFL」という用語は、骨盤底の運動(例えば、恥骨から後方の仙骨まで、かつこれらの2つの骨を結合する隣接する骨構造まで球形で領域に及ぶ、肛門挙筋(例えば、恥骨尾骨筋、回腸尾骨筋、尾骨筋、および恥骨直腸筋、ならびに会陰筋および肛門括約筋の運動)の筋線維および関連する結合組織)を指しており、これは、骨盤底の上向きの運動(例えば、頭蓋方向の運動などのリフト運動)によって特徴付けられる。PFL中の骨盤底の運動は、明確に記述された骨盤底全体(例えば、肛門挙筋、尿道括約筋および肛門括約筋、球海綿体筋、坐骨海綿体筋、表在性横会陰筋)の集合的行動の要素であり、これにより、全ての筋肉が同時に活性化されると、リフトと円周方向に向けられた圧迫作用とが組み合わされる。PFLには、骨盤底の肛門挙筋成分の選択的な係合が伴い得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「骨盤底弛緩」および「PFR」という用語は、骨盤底の運動(例えば、恥骨から後方の仙骨まで、かつこれらの2つの骨を結合する隣接する骨構造まで球形で領域に及ぶ、肛門挙筋(例えば、恥骨尾骨筋、回腸尾骨筋、尾骨筋、および恥骨直腸筋)の筋線維および関連する結合組織)を指しており、これは、骨盤底の弛緩(例えば、尾側方向への運動などの下向きの運動)によって特徴付けられる。PFR中の骨盤底の運動は、PFLの同心筋収縮(例えば、筋収縮の縮小)とは異なり、筋線維の伸長または弛緩を表す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「リアルタイム」は、日常的な活動などの事象が発生する実際の時間を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「センサデータ」は、個体の骨盤底の健康を特徴付ける計測値(例えば、骨盤底筋運動、骨盤底筋質、骨盤底筋力、圧力の計測値、およびpH、温度、ならびに/または水分(例えば、膣内)などの他の条件の計測値のうちのいずれか1つ以上)を指し、本明細書で記載されるように、本発明の尿道内、直腸内、または膣内デバイスのセンサ(複数可)によって取得される。また、骨盤底運動を、例えば、尿失禁または便失禁または衝動に関連付けるセンサデータが収集されてもよい。これらのデータは、例えば、尿失禁または便失禁を診断するために使用することができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「無線周波数」は、10Hz~1012Hzの範囲の周波数を有する電磁波を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「対象」、「患者」、または「個体」は、人間である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「減少する」および「阻害する」という用語は、測定可能な測定基準で約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力として定義される。減少または阻害は、例えば、治療されている骨盤底障害(PFD)の症状を指し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、特に、本明細書に記載のデバイス(例えば、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、または直腸内デバイス)、システム、または方法の使用と組み合わせて、治療を必要とする対象に(例えば、尿失禁もしくは便失禁、またはそれに関する衝動の可能性を治療または低減するために)治療を提供することを指す。「疾患を治療する」または「治療的治療」に使用することは、対象の状態を改善または安定させるために、すでに疾患を罹患している対象に治療を施すことを含む。疾患を「予防する」または「発症する可能性を減少させる」とは、まだ病気または症候性ではないが、尿失禁または便失禁などの特定の疾患にかかりやすいか、または別様でそのリスクがある対象の予防的治療を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「女性泌尿生殖器系」は、例えば、バルトリン腺、子宮頸部、陰核、陰核小帯、陰核亀頭(clitoral glans)(陰核亀頭(glans clitoridis))、陰核包皮、陰核管、陰唇、大陰唇、小陰唇、小陰唇の小帯、卵巣、スキーン腺、子宮、膣、および外陰部を含む女性生殖系の器官系と、例えば、腎臓、尿管、膀胱、および尿道を含む泌尿器系と、その周囲で支持する神経および筋肉組織と、を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「男性泌尿生殖器系」は、例えば、膀胱、恥骨、外部尿道括約筋、陰茎、海綿体、陰茎亀頭、包皮、尿道開口部、S状結腸、直腸、精嚢、射精管、前立腺、カウパーズグラッド、肛門、精管、精巣上体、精巣、ならびに陰嚢、腎臓、尿管、膀胱、および尿道を含む男性生殖器系の器官系と、その周囲で支持する神経および筋肉組織と、を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「膣カフ」は、子宮頸部の除去後に(例えば、子宮摘出中に)残っている膣管の上部にある縫合組織を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「尿失禁」は、膀胱からの尿の漏出を指す。失禁は、数滴の尿が漏出する程度から、膀胱が完全に空になる程度の範囲に及び得る。尿失禁は、腹圧性尿失禁(SUI)、切迫性尿失禁、および混合性尿失禁の3つの主要な種類に分類することができる。腹圧性尿失禁は、咳、笑い、またはくしゃみをするときに尿が漏出することである。漏出は、女性が歩いたり、走ったり、または運動したりしたときにも発生する可能性がある。切迫性尿失禁は、突然の強い排尿衝動であり、止めることは困難である。この種類の尿失禁を有する女性は、トイレに行く途中で尿が漏出する可能性がある。混合性尿失禁は、腹圧性尿失禁および切迫性尿失禁の両方の症状を組み合わせたものである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「骨盤底」は、骨盤に張り付いた腹部の基部の筋肉領域を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「骨盤底障害」または「PFD」は、骨盤器官を支持する筋肉および組織に影響を与える障害を指す。これらの障害が発生すると、膀胱または腸の制御ができなくなるか、または1つ以上の骨盤内器官が下向きに落下し、脱腸が生じる可能性がある。
【0034】
本明細書で使用される場合、「尿流動態カテーテル」は、1つ以上の尿流動態測定を実施する際に使用するように構成された尿道カテーテルを指す。カテーテルは、複数の(例えば、2つまたは3つの)管腔を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
出願ファイルには、カラーで描かれた図面が少なくとも1つ含まれている。この特許またはカラー図面付きの特許出願のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて、特許庁から提供される。
図1】デバイスの長さに沿って位置決めされた複数の位置センサ(例えば、MEM加速度計)200を備えた二管腔式尿流動態カテーテルの概略図である。
図2】尿流動態計測値をプロットしたグラフである。グラフは、縦軸に流動、筋電図、排尿筋圧、膀胱圧、腹圧、および容積を示し、横軸に時間を示している。
図3】(例えば、リング形態または不完全なリング形態を有し得る)本体110、テザー10、および送信機/受信機ボックス500を有する膣内デバイス100を示す概略図である。テザー10は、本体110から取り外し不可能であり得るか、または本体110から取り外し可能である場合には、容易に取り外せるように構成され得る。膣内デバイス100は、本体110またはテザー10のいずれかに、センサ(複数可)200(例えば、MEMSセンサなどの加速度計)、電池800、マイクロコントローラ900、内部送信機/受信機1000、データストレージ構成要素1100、知覚出力構成要素1200、無線通信アンテナ1300、認証チップ1400(例えば、Apple製品認証チップ)、およびオン/オフスイッチ1600を接続する回路基板700を含む。膣内デバイス100はまた、個体の膣管内でのデバイスの回転および滑動を低減するための成形された翼部300を含み得る。膣内デバイス100はまた、本体110またはリング10のいずれかに、エネルギー送信機210(ハッチングされたボックスとして示されている)を含み得る。上記の構成要素のうちのいずれかが、膣内デバイス100に存在する場合もあるか、または存在しない場合もある(例えば、RF送信機などのエネルギー送信機210は任意選択である)。
図4】本体110およびテザー10を備えた膣内デバイス100を示す概略図である。図示の本体110は5つのセンサ200(例えば、MEMSセンサなどの加速度計)を含み、図示のテザー10は、8つのセンサ200を含む。1つのセンサ200は、本体110およびテザー10の両方によって共有されている。
図5A】膣内デバイス100に対して参照される(例えば、対象の膣管に挿入されたときの)膣角度(θV)および円蓋角度(θF)を示す概略図である。対象の膣管内に位置決めされた場合、図5Aに示される膣内デバイス100のセンサ対1は、前部円蓋に存在し、一方、センサ対2のセンサは各々、外側円蓋に存在する。残りの1つのセンサであるセンサ3は、後部円蓋に存在し、この最後のセンサはまた、テザーの一部である。
図5B図5Bは、A9およびA12とラベル付けされた前部円蓋のセンサ、A10およびA11とラベル付けされた外側円蓋内のセンサ、および本体110およびテザー10によって共有される、A8とラベル付けされた後部円蓋の単一のセンサを示す。テザー10専用のセンサには、A1~A7とラベル付けされている。膣角度(θV)は、テザーの線(本質的に膣の長軸の境界を定める)と、以下「水平線」と称される、導入部の仮想平面に平行な平面に含まれる線との間の角度として定義される。円蓋角度(θF)は、前部円蓋と後部円蓋(本体の前部および後部の点)とを接続する線と水平線の線との間の角度として定義される。
図5C図5Cは、(1)テザーの各センサが最適な線によって接続され得ること、および(2)前部円蓋内の2つのセンサの位置が平均化され得ることを示している。同様に、外側円蓋内のセンサの位置を平均化することができ、後部円蓋から前部円蓋までの最適な線を引くことができる。膣角(θV)および円蓋角(θF)は、図5Cおよび図5Dの両方に示されている。
図5D図5Dでは、図5Cに示される点(「ノード」)は、S1~S10とラベル付けされている。描かれているセンサは、例えば、MEMSセンサなどの加速度計である。
図6】縦軸に、図4および図5の膣内デバイスのセンサS1~S8のセンサ角度(度)をプロットし、横軸に、対象が縦線で示される一連の手技(骨盤底弛緩、バルサルバ手技、骨盤底リフト、持続的な骨盤底リフト(保持)、および連続的に繰り返される骨盤底リフト(繰り返し))を実施した時間(秒)をプロットしたグラフである。センサ5は、手技中にセンサ角度の最大の変化を示した。センサデータは、MEMSセンサを使用して生成された。
図7A】縦軸に、図4および図5の膣内デバイスを使用して取得されたセンサ角複合スコア(Y1およびY2)をプロットし、横軸に、対象が縦線で示される一連の手技(骨盤底弛緩、バルサルバ手技、骨盤底リフト、持続的な骨盤底リフト(保持)、および連続的に繰り返される骨盤底リフト(繰り返し))を実施した時間(秒)をプロットした一組のグラフである。図7Aは、時間の関数としてプロットされたセンサ角度を示す。
図7B図7Bは、時間の関数としてのセンサ角度の変化を示す、図7Aのデータの時間に関する一次導関数を示す。
図8】10人の異なる対象において、図4および図5の膣内デバイスを使用して取得された各センサのセンサ角度の変化を示すグラフである。各バーは、各対象のセンサS1~S10の各々のセンサ角度(リフト中の角度~弛緩中の角度)の変化を表す。水平線は、所与のセンサの平均センサ角度を示す。S4~S6は、最も強く、最も一貫性のある信号対雑音比、大きさ、および指向性をもたらしている。対象ごとに、最も強い信号および膣の長さを提供するセンサが表示されている。3人の対象における「訓練済み」ラベルは、対象に骨盤底障害がないことを示す兆候を示していることを反映している。
図9】肛門挙筋および骨盤底の外肛門括約筋群の磁気共鳴画像法(MRI)スキャンの画像である。恥骨内臓筋(PVM)(例えば、恥骨尾骨筋(PCM))、腸骨尾骨筋(ICM)、恥骨直腸筋(PRM)、および外肛門括約筋(EAS)がスキャンに示され、ラベル付けされている。仙尾骨下パブリックポイント(SCIPP)線は、正中矢状面に描画され、全ての傍矢状スライドに置き換えられる。筋線維の配向(角度)は、筋肉群の上に描かれた線で示され、水平線を基準にして計測される。繊維の方向は、個々のSCIPP線に関してマーキングおよび評価され、SCIPP線より34°下にある平均水平線に対する角度として表された。水平線に対して時計回りの角度をなす繊維の配向は負の符号を有し、水平線に対して反時計回りの角度をなす繊維の配向は正の符号を有している。リング、テザー、およびデバイスの長さに沿って間隔を置いて配置された複数の加速度計を備えた膣内デバイスが、MRIスキャンにオーバーレイされている。
図10】骨盤底における肛門挙筋および外肛門括約筋群を示す概略図である。太い矢印は、水平線への平均方向を二次元グラフィックで表示している。破線は水平線であり、水平線から角度が計測される。水平線より上の角度は正の符号を有し、水平線より下の角度は負の符号を有する。MRIにおいて、PRMの内側にPVMが認められた。リング、テザー、およびデバイスの長さに沿って間隔を置いて配置された複数の加速度計を備えた膣内デバイスが、画像にオーバーレイされている。
図11】骨盤底における肛門挙筋および外肛門括約筋群を示す概略図である。太い矢印は、理論上の1Nの力による、水平線に対するPVMおよびPRM筋肉の作用線の平均方向を示している。細い線は、密閉し、かつリフトする機能に関連する各力の部分を示している。リング、テザー、およびデバイスの長さに沿って間隔を置いて配置された複数の加速度計を備えた膣内デバイスが、画像にオーバーレイされている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、1つ以上の位置センサを含む尿流動態カテーテルを単独で、または1つ以上の位置センサを含む膣内もしくは直腸内デバイスと組み合わせて使用することによって、対象(例えば、男性または女性の対象)の尿失禁を診断し、膀胱機能を監視するためのデバイス、システム、および方法を特徴とする。
【0037】
尿流動態カテーテルを使用して、膀胱機能をより正確に監視するために、尿流動態検査中に1つ以上のセンサ(加速度計など)を使用して対象の骨盤底運動を監視することができる。さらに、デバイスおよびシステムを使用して、膀胱機能に関するより堅牢な定量的データを提供する自動化またはデジタル化された膀胱日誌を作成することができる。システムはまた、尿流動態カテーテル上のセンサからデータを収集するように構成されたコンピュータ処理ユニット、または膣内もしくは直腸内デバイスを含む周辺デバイスを含み得、データを、対象の診断または治療状態を表す有用な生理学的兆候に変換する。次に、データを対象または別の人間(例えば、医療提供者)に提示して、生理学的兆候に関するフィードバックまたはアラートを提供することができる。周辺デバイスは、デバイス(複数可)またはシステムのセンサからの位置データを分析する1つ以上のアルゴリズムで構成することができる。本明細書に記載のデバイスおよびシステムは、例えば、対象が尿流動態検査を受けている間、または対象が日常的な活動を行っている間、実質的にリアルタイムで対象の泌尿生殖器系および骨盤底(例えば、肛門挙筋の筋線維、例えば、恥骨尾骨筋、回腸尾骨筋、尾骨筋、恥骨直腸筋、および関連する結合組織)の全体的な健康状態の監視を提供するように構成され得る。デバイス(複数可)およびシステムは、対象の骨盤底運動を評価して、尿流動態測定と相関する運動を特定するように構成することができる。デバイスおよび方法を使用して、デバイスからの情報を使用して失禁(例えば、腹圧性、切迫性、または混合性尿失禁)を正確に診断することができ、対象の適切な治療方針を特定することができる。これにより、対象は、尿失禁の減少、発生、および/または重症度などの治療目標を達成することができる。
【0038】
本明細書に記載のデバイスおよびシステムはまた、単独で、もしくは尿流動態カテーテルからセンサデータを受信するように構成された周辺デバイス、または膣内もしくは直腸内デバイスと組み合わせて使用して、臨床医が尿流動態検査を実施している間、または対象が日常的な活動を行っている間、(例えば、本明細書に記載されるような1つ以上のセンサを用いて)対象の泌尿生殖器系および骨盤底の全体的な尿流動態状態を監視することができる。周辺デバイスは、処理ユニットで構成され、処理ユニットは、尿流動態検査または尿/排尿発現中にカテーテル、直腸内、および/または膣内デバイスから受信したセンサデータを変換または利用して、対象(または医療提供者)にフィードバックを提供し得、適切な診断および/または治療方針を決定することができる。
【0039】
尿流動態カテーテル
本明細書に記載のように、細長い本体と、その長さに沿って位置決めされた1つ以上の位置センサ(例えば、MEMS加速度計)と、を有する、尿流動態カテーテルが特徴付けられる。尿流動態カテーテルは、単独で、または骨盤底運動を監視するためのシステムの一部として、例えば、尿流動態検査中、その前、もしくはその後に、または排尿日誌を作成するために、使用することができる。尿流動態カテーテルは、対象(例えば、男性または女性の対象)の尿道に挿入するように構成され、その結果、1つ以上の位置センサにより、対象の尿道の空間的配向の位置の読み取り値が提供される。尿道の位置から読み取り値が提供され、これは、骨盤底および尿道を含む骨盤底器官の空間配置の代用として機能する。男性の対象の場合、尿流動態カテーテルの配向により、前立腺の位置に関する情報が提供され得る。尿流動態カテーテルはまた、運動、圧力、および/または流量センサなどの1つ以上の追加のセンサを含み得る。尿流動態カテーテルは、対象の尿道内に適合するように任意の好適な形状で構造的に構成することができる。尿流動態カテーテルは、複数、例えば2つの管腔を有し得る。一方の管腔は膀胱を充満させるためのものであり得、一方の管腔は圧力を計測するためのものであり得る(図1)。
【0040】
本明細書に記載の尿流動態カテーテルを製造するように修正され得る例示的な尿流動態カテーテルは、例えば、米国特許第6,447,462号ならびに同第US5,984,879号、および米国特許出願公開第US2006/0122488号、同第US2003/0097039号、同第US2006/0276712号、同第US2006/0281992号、ならびに同第US2017/0258345号に記載されている。これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
尿流動態カテーテルは、その遠位端または対象端に近接する、少なくとも1つの薄壁状の円周方向に延在するバルーンを含み得る。これにより、バルーンの外部の圧力が、少容積の密閉気柱を通して、対象の身体の外部のトランスデューサに近位に伝達される。カテーテルは、折り畳まれた状態で少なくとも1つのバルーンとともに挿入され、マルチチャネル膀胱内圧測定手順中、カテーテルが対象の膀胱、または膣、または直腸に挿入された後に拡張され得る。
【0042】
尿流動態カテーテルは、少なくとも1つの圧力管腔を含み、少なくとも1つの圧力管腔は、外管の近位端から遠位に延在しており、その遠位端またはその近くで外管を円周方向に取り囲む小径バルーンの範囲内で終端する出口を有している。対象の体内に挿入した後、圧力管腔の近位端を、使い捨てコネクタによってトランスデューサを組み込んだハウジングに接続し、バルーンとトランスデューサとの間に延在する気柱を密閉して少量(例えば、1~100μL、例えば、5μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、または100μL)の流体(例えば、空気または水)で充填することができる。充填は、密閉された気柱内の空気量の変位によって実施され、その密閉後の内部のデッドスペースを最小限に抑えることができる。本発明の一実施形態では、独立して充填可能な2つのバルーンを使用することができ、一方はカテーテルの遠位端に近接し、他方はそこから近位に、一定の距離(例えば、1~100cm、例えば、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cm、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm、70cm、80cm、90cm、100cm)だけ離れている。
【0043】
尿流動態カテーテルのバルーンは、尿道圧の結合を高めるために、完全に膨張したときの直径(例えば、0.01~0.5インチ、例えば、0.02インチ、0.03インチ、0.04インチ、0.05インチ、0.06インチ、0.07インチ、0.08インチ、0.09インチ、0.1インチ、0.2インチ、0.3インチ、0.4インチ、0.5インチ、例えば、0.160インチ)が小さく、膨張したときの長さ(例えば、0.01~0.5インチ、例えば、0.02インチ、0.03インチ、0.04インチ、0.05インチ、0.06インチ、0.07インチ、0.08インチ、0.09インチ、0.1インチ、0.2インチ、0.3インチ、0.4インチ、または0.5インチ)が小さい場合がある。バルーンは極めて薄壁状(例えば、0.0002~0.0010インチ、例えば、0.0004インチ、0.0006インチ、0.0008インチ、または0.0010インチ)であってもよく、柔軟性を有し、過剰な力または圧力により、シワが測定の妨げになることはない。これにより、バルーン膜を介した理想的な流体圧力伝達が実現する。さらに、熱収縮材料を使用してバルーンの容積を熱安定化させて、バルーンを一定の容積に収縮させ、熱風流を使用してバルーンの端部カフを熱収縮させることによって外管に取り付けることができる。これにより、バルーンの端で個別の熱収縮チューブフープまたは接着剤の必要性が回避され、カテーテル外部の外管とバルーンとの間の非常にスムーズな移行部が設けられる。バルーンにつながる長さ約18~24(例えば、19、20、21、22、23、または24)インチの小さな内径(例えば、約0.005~0.008インチ)の圧力管腔により、密閉した気柱内のバルーンの容積に比べて低い内部容積がもたらされ、許容可能な周波数応答を確保し、比較的広い測定範囲(0~250cm HOなど)が提供される。
【0044】
カテーテルは、フレンチカテーテルスケールに従ってサイズを決めることができ、各ゲージの外径は1/3mmである。7フレンチカテーテルの外径は2.333mmであり、その構造により、挿入を容易とする可撓性が得られ、対象の快適性と安全性が向上する。外管と比較してデュロメータの異なるより高い圧力管腔チューブを使用することにより、柔らかい外側のジャケットと丸いカテーテルの遠位端とが、外管内のより剛性が高く、ねじれにくい圧力管腔チューブと組み合わせて提供され、外管内のねじれが発生しにくい圧力管腔チューブにより、剛性による穿孔のリスクが低く、使用前の出荷および保管中に包装ポーチでカールしたときに所定の位置にセットされる傾向が少ない、精密で小口径の圧力ラインが実現される。さらに、圧力管腔チューブは、圧力管腔チューブの遠位端のバルーン位置、および圧力管腔チューブが外管から出る場所を除いて、外管に固定されていないため、キンクのリスクが低い可撓性カテーテルが容易となり、カテーテル全体の剛性に対する圧力管腔チューブの寄与が最小限に抑えられる。同様に、外管の近位端からその遠位端のポートに近接するように延在する充満管は、圧力管腔チューブの取り付けの近くで外管の遠位にのみ固定され、外管からの圧力管腔チューブの出口点でより近位に固定される。
【0045】
尿流動態カテーテルには、筋肉の運動、例えば、PFLおよび/またはPFRを検出するように構成された1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上)のセンサが含まれる。一部の場合では、センサは、実質的にリアルタイムで、例えば、PFLおよび/またはPFRなどの筋肉の運動を検出するように構成され得る。一部の場合では、1つ以上のセンサは、運動センサ、配向センサ、加速度計、ジャイロスコープ、微小電気機械システム(MEMS)センサ(例えば、MEMS加速度計)、Gセンサ、傾斜センサ、回転センサ、圧力センサ、温度センサ、水分センサ、筋電図(EMG)センサ、LiDARセンサなどの光検出センサ、EIMセンサ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0046】
本明細書に記載の2つ以上のセンサは、カテーテルの縦軸の周りに、例えば、カテーテルの本体および/またはテザーの中心軸の周りに、互いにおよそ±1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°、190°、200°、210°、220°、230°、240°、250°、260°、または270°で円状または螺旋状に配置され得る。代替的に、または追加的に、本明細書に記載の2つ以上のセンサは、例えば、カテーテルに沿って、およそ0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mm、125mm、150mm、175mm、200mm、225mm、250mm、275mm、300mm、325mm、350mm、またはそれ以上離れて配置され得る。一部の場合では、本明細書に記載されているように、2つ以上のセンサは、カテーテルの中心軸に沿って配置することができる。一部の場合では、2つ以上のセンサは、本明細書に記載されるように、それらが中心軸上に存在しないように、例えば、それらがカテーテルの中心軸からオフセットされるように配置することができる。センサ(複数可)は、センサ(複数可)の全部または一部が尿道の組織と直接接触するように、カテーテルの表面に位置決めすることができる。一部の場合では、センサ(複数可)は、約0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、またはそれ以上、カテーテルの外面(例えば、尿道の組織と直接接触する面)の下に位置決めすることができる。一部の場合では、センサ(複数可)を位置決めして、センサの約0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、またはそれ以上をカテーテルの外面から突出させることができる。代替的に、センサは、センサが尿道に直接接触しないようにカテーテル内に位置決めすることができ、骨盤底運動中の動きを検出するように位置決めすることができる。センサ(複数可)は、カテーテル上またはカテーテル内に間隔を置いて均等または不均一に位置決めすることができる。カテーテル内のセンサは、カテーテルが対象に挿入されたときにセンサが腹側方向(例えば、前方向)を向くように位置決めすることができる。
【0047】
カテーテルはまた、無線で、または取り外し可能なケーブルを介して、電子デバイス(例えば、ハンドヘルドもしくはポータブルデバイスなどの周辺デバイス、またはスマートフォン、タブレット、もしくはラップトップなどのコンピュータ)と通信するための送信機および/または受信機を含むことができる。代替的に、送信機および受信機は、外部ハウジング内に配置され、無線で、または取り外し可能なケーブルによってカテーテルに接続され得る。送信機および受信機は、マイクロコントローラ、センサ(複数可)、および/または回路基板に直接的もしくは間接的に接続できる。送信機および受信機は、Bluetooth(登録商標)、ISM対応電子デバイス、Wi-Fi対応電子デバイス、および/またはRF対応電子デバイスとともに使用するように構成することができる。センサ(複数可)によって収集された情報は、送信機および/または受信機によって、かつ/または取り外し可能なケーブルを使用することによって、電子デバイスに無線で伝達(例えば、ダウンロード、転送)され得る。電子デバイスには、ユーザインターフェースが含まれ得る。ユーザインターフェースは、データを表示するように、かつ/またはカテーテルの使用に関する指示を提供するようにプログラムすることができる。カテーテルは、電源(例えば、電池)をさらに含む。電源を使用して、センサ(複数可)、送信機、受信機、および回路基板など、デバイスのうちの1つ以上の構成要素を動作させることができる。
【0048】
尿流動態評価の方法
尿流動態評価を使用して、対象が経験した失禁の種類および程度を特定することができる。評価は、対象から(例えば身体検査から、または開示または文書化された履歴から)取得された他の生理学的兆候と組み合わせて実施することができる。尿流動態評価は、本明細書に記載のデバイス、システム、およびキットを使用して実施することができる。例示的な尿流動態検査は、尿流動態検査、排尿後残留測定、膀胱内圧測定検査、漏出点圧力測定、圧力流量試験、筋電図検査、および動画尿流動態検査である。尿流動態検査には、例えば、直腸または膣のプローブによって取得された参照腹圧と比較した膀胱圧の測定、ならびに膀胱圧と比較した尿道圧の測定が含まれてもよい。排尿筋失禁(DI)と同様に、腹圧性尿失禁(SUI)が膀胱の充満中に診断されてもよい。SUIは、笑い、咳、または他の刺激的な影響に応じて尿意を催すことが特徴であり、DIは、排尿を開始する不随意で顕著な定期的な排尿筋収縮を伴う。過可動性およびISDは、異なる2つの従来の診断方法、すなわち尿道内圧プロファイル(UPP)およびバルサルバ漏出点圧試験(VLPP試験)を使用して特定することができる。UPPにより、カテーテルが尿道を通って膀胱から引き抜かれるときに、尿道圧および膀胱圧が計測される。VLPP試験では、膀胱が1つ以上の選択された容量まで充満される。その際、対象は、カテーテルを通過して漏出が発生するか、またはベースライン圧力に対する選択された膀胱圧力差に達するまで、排尿するようにゆっくり体を支える。
【0049】
尿流動態評価は、膀胱に関する定量的データを取得するために採用されている。膀胱充満試験は、充満膀胱内圧測定としても知られ、膀胱内圧と含まれる液体の量との関係が計測される。膀胱の容量およびコンプライアンス(増加量に対応する膀胱の能力)が計測され、主観的な切迫感の観点からの排尿欲求も計測される。最後に、排尿筋の安定性、つまり前述の種類の刺激の下であっても膀胱の充満中に弛緩したままであるような筋肉群の能力が定量化される。
【0050】
マルチチャネル膀胱内圧測定を使用して、計測された膀胱圧を補正し、腹圧を差し引くことによって、真の膀胱圧を得ることができる。膀胱圧は、尿道を通して膀胱に挿入されたカテーテルの遠位端にある感知要素またはポートを介して計測され得、一方、腹圧は、対象の直腸または膣に挿入されたカテーテルの遠位端にある感知要素によって計測され得る。2つの計測値の差は、その大きさがcm HOの単位として定量化されており、排尿筋圧として特徴付けられる。刺激への反応を含め、膀胱充満中に観察された膀胱圧と腹圧との間の関係を監視することで、定量的な膀胱機能を記録する膀胱内圧測定図が結果として得られる。
【0051】
マルチチャネル尿流動態検査により、充満段階および排出段階の両方で膀胱機能が評価される。検査は通常、圧力感知カテーテルを対象の膀胱/尿道(カテーテルの長さに沿った2つのセンサ。一方は尿道用、他方は膀胱用)に配置し、膣または直腸(腹圧の代用)にも配置することによって実施される。加えて、表面筋電図(sEMG)パッド(または尿道周囲電極)を追加して、尿道周囲の筋活動を評価することができる。次に、膀胱は、カテーテルを介して充満され、膀胱容量、知覚、およびコンプライアンスが記録される。充満されると、刺激を与える手技が実施され、腹圧性尿失禁による漏出(漏出点圧)が判定されるか、または尿道の閉鎖圧(MUCP)が評価される。圧力トレース(例えば、時間対圧力)を使用して、排尿筋(膀胱筋)の過活動を特定することができる。過活動は、切迫性尿失禁または神経因性膀胱と一致する可能性がある。さらに、膀胱を空にするのに必要な圧力、尿流の性質(例えば、断続的かまたは連続的か)、および尿流の速度が観察され、排尿(膀胱を空にする)が評価される。これらの評価を併用して、排尿筋過活動、神経因性膀胱、腹圧性尿失禁、内因性括約筋欠損症、括約筋運動障害、尿閉、コンプライアンスの低下/上昇、排尿筋収縮不良などの診断を行うことができる。
【0052】
(例えば、尿道部分の)尿流動態カテーテル内の位置センサ(例えば、加速度計)により、膀胱の充満中、排出中、およびバルサルバ法中の尿道の動きの検出が可能となる。これにより、膀胱の充満中、排出中、およびバルサルバ法中の尿道の角度変化を正確に計測することで、尿道の過可動性の同時かつ正確な診断が提供され得る。パターン認識を使用することで、膀胱の充満および排尿に関連する角度の変化を特定でき、ならびに、バルサルバ法に関連する角度変化により、これらの事象中の角度変化を定量化し、角度変化の兆候を尿道過可動性またはISDの対象で発生する角度変化と相関させることにより、腹圧性尿失禁の正確な診断が提供され、対象の状態が診断される。
【0053】
また、尿流動態カテーテル内の位置センサ(例えば、加速度計)を使用して、排尿筋収縮またはバルサルバ法に応答した骨盤底の動きを特定することができる。これらのパターンを視覚化することで、骨盤底筋収縮による切迫感の抑制の存在を確認することができる。現在の尿流動態検査では、切迫性尿失禁を有する対象が骨盤底筋収縮を伴う衝動抑制を感じているかどうかを検出することはできない。本明細書に記載するように、尿流動態カテーテルへの位置センサの追加により、切迫性尿失禁の原因(排尿筋過活動対非活動的または非活動的衝動抑制)のより完全な理解が明らかとなる。このような理解を深めることで、治療上の意思決定、例えば排尿筋の過活動に対する薬物療法、または活動していないか、または活動が不十分な骨盤底筋に対する理学療法の提案を導くことができる。
【0054】
バルサルバ法に関連する筋収縮を理解することは、骨盤底筋収縮の性質および有効性を明らかにして腹腔内圧の上昇による漏出を止めることに役立ち得る。
【0055】
「コツ(knack)」とは、腹圧性尿失禁を予防するために、予期的に骨盤底筋を圧迫することである。対象のコツのタイミングを理解することで、漏出時の骨盤底筋活動の影響、および骨盤底筋訓練がSUIによる漏出を軽減または排除するのにどのように役立つかが明らかになり得る。
【0056】
骨盤底障害
本発明のデバイス、システム、およびキットを使用して、骨盤底障害を監視および診断することができる。骨盤底障害には、尿路障害(膀胱の貯蔵を困難にする障害)、または失禁(体が尿の排出を制御できないことを含む)が含まれる。歩行可能な成人女性の失禁の種類および罹患として、腹圧性尿失禁(SUI)、排尿の不安定性(切迫性尿失禁)、混合性尿失禁(腹圧性および切迫性)、他の失禁(溢流性尿失禁、神経性尿失禁)が挙げられる。排尿筋の不安定性および混合性尿失禁の罹患は、対象サンプルの年齢とともに増加することが観察されている。男性の対象は、同様の失禁の問題を経験する可能性があり、これはしばしば前立腺肥大に関連している。男性はまた、前立腺のために尿閉の問題を有している。
【0057】
SUIは、排尿筋収縮がない状態で膀胱内圧が最大尿道圧を超えたときに発生する不随意の尿喪失によって特徴付けられ得る。腹圧性尿道失禁には、笑い、くしゃみ、咳、または立ち上がることによる偶発的な尿の喪失が含まれ得る。かかる運動により、膀胱およびそこに含まれる尿に伝達される腹圧が増加して、尿道、および主に尿道括約筋によって生成される流動に対する抵抗を超過する。SIは、膀胱頸部の過可動性および内因性括約筋欠損症(ISD)としてさらに分類され得る。
【0058】
膀胱頸部の過可動性は、骨盤底の下降に起因し得、骨盤底筋および結合組織の衰弱に起因し得る。これは、出産に起因する外性器への神経損傷と組み合わされることで観察される可能性があるが、出産していない若い女性でも発生する可能性がある。通常の位置では、膀胱は骨盤の筋肉によって支持されており、これにより、腹圧の上昇が尿道の圧力を上回ることはない。骨盤の筋肉が衰弱または損傷すると、腹部のストレス時に膀胱頸部が異常に変位し、尿道括約筋の閉鎖圧が尿失禁の抑制を維持するには不十分となる。過可動性に関連するSIによる尿の喪失は、典型的に、定期的に発生し、尿の量は状態の重症度に比例し得る。
【0059】
ISDは重度の腹圧性尿失禁であり、尿道閉鎖機序の本質的な欠陥、または膀胱頸部が安静時に開いている機能不全の尿道が原因で発生し得る。重度のISDでは、尿の継続的な漏出または対象の最小限の運動でも反応して漏出が生じる。ISDでは、膀胱頸部が固定されているか、過可動性であり得る。ISDは、過去の失禁手術による尿道瘢痕が原因で発生するケースが多いが、他の原因で発生する場合もある。ISDに起因する腹圧性尿失禁を示す対象はごく少数である。
【0060】
診断方法
特定の尿障害に応じて、尿流動態カテーテルを使用して尿流動態検査中に特定の障害を特定および/または診断することができる。過活動膀胱を有する対象は、センサS4~S6で頻繁に小さなリフトが発生し、全体的な可動域の減少(例えば、角度変化の範囲の制限)を示し得る。近位センサ(例えば、S9およびS10)の動きのパターンは、失禁の有無にかかわらず、尿意切迫感の発現に対応し得る。切迫性尿失禁を有する対象は、少量の頻繁な排尿を示唆するパターン(例えば、頻繁な短い弛緩パターン)を伴う、全体的な可動域の減少(例えば、角度変化の全体的な範囲の制限)を示し得る。近位センサ(例えば、S9およびS10)の動きのパターンは、失禁の有無にかかわらず、尿意切迫感の発現に対応し得る。便失禁を有する対象は、全体的な可動域の減少(例えば、角度変化の範囲の制限)を示し、長期の頻繁な角度変化の増加(便を保持するか、かつ/または便の喪失を控える試みを表す)を示し得る。代替的に、便失禁を有する対象は、全体的な可動域の増加を示し得る。これは、娩出中に後膣壁で特に顕著になり得、随意の骨盤底運動の筋収縮中に対応する水平方向の動きが減少する。便秘を有する対象は、母集団の平均と比較して、全体的な可動域が制限され得(例えば、角度変化の範囲が制限されている)、バルサルバ法の延長(例えば、角度変化のわずかな減少)が認められることがある。各特定の障害に関連する角度変化パターンを特定することにより、(例えば、臨床医が)対象を特定の障害を有すると診断し、対象に適切な治療法を選択することができる。
【0061】
一部の対象は、初期検査段階を経て、尿流動態検査と組み合わせて、(例えば、特定のセンサから、例えば特定の活動に関連付けられて)角度変化のパターンが検出される。これらのパターンおよび角度の変化を、診断または治療の前に観察されたものと比較して、それに関連する変化を判定することができる。
【0062】
尿流動態検査中に観察されるセンサ(MEMS加速度計など)の角度変化の傾向およびパターンは、以下で説明するように(例えば、図9図11も参照)、様々な肛門挙筋および肛門括約筋群の位置、運動、相対的配向に基づいて予測することができる。これらの筋肉群の配向は、例えば、Betschart et al.(Int.Urogynecol.J.25:1263-1268,2014)に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
骨盤底運動を検出する方法
尿流動態カテーテルの位置センサを使用して、骨盤底運動(例えば、骨盤底リフト、骨盤底弛緩、バルサルバ手技、持続的な骨盤底リフト、および連続的に繰り返される骨盤底リフト)を追跡することができる。尿流動態検査または排尿中に観察されるセンサ(例えば、MEMS加速度計)の角度変化の傾向およびパターンは、様々な肛門挙筋および肛門括約筋群の位置、運動、および相対的配向に基づいて予測することができる(図9図11)。例えば、膣内デバイスでは、センサS4~S6(図5B)により、一貫した信号対雑音比、大きさ、および指向性(図8)が提供される。センサS6も強い信号対雑音比をもたらすが、指向性は対象によって異なり得る。これらのデータは、膣内デバイスを使用して生成されるが、一方で、同じ種類のデータが本明細書に記載されている尿流動態カテーテルによって生成され得る。センサデータを使用した日常的な活動の過程で角度の変化を追跡するアルゴリズムにおいて、様々な骨盤底運動を監視するために、これらのセンサの1つ以上から生成されたデータを使用できる。センサデータは、グラフィカルユーザインターフェースを介して処理して、対象または他の人に表示することができる。例えば、対象の周辺デバイス(スマートフォンなど)で実行されているアプリケーションを介したテキストメッセージ、電子メール、アラートを、対象または別の人間に送信できる。マイクロコントローラは、例えば、非一時的な記憶媒体を使用して、計算されたデータを記憶することができる。1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上)のパラメータを定義するアルゴリズムを使用することができ、このアルゴリズムは、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上)のセンサ角度計測値の複合スコアを構成している。アルゴリズムを使用して、治療期間中または監視期間中(例えば、骨盤底運動中)に単一のセンサまたは複数のセンサの角度の変化を追跡することができる。角度対時間の一次導関数を使用して、時間に対する正または負の角度変化を示すことができる。正の角度変化は、骨盤底運動の開始時間または大きさ(例えば、リフト)を示し得、負の角度変化は、骨盤底運動の終了時間または減少の大きさ(例えば、弛緩)を示し得る。二次時間微分を生成および使用して、極大値または極小値(例えば、時間に対する角度の変化率がゼロ)を示すことができ、極大値または極小値により、運動がいつ開始または終了するかが示される。追加的に、アルゴリズムを使用して、骨盤底障害またはその症状の存在を示す骨盤底運動を検出することができる。
【0064】
各MEMS加速度計は、水平線に対する位置およびセンサ角度に対応する信号を発信する。各センサからの角度データは、時間の関数としてプロットすることができる(例えば、本明細書に記載の膣内デバイスを使用して生成されたMEMSセンサデータを示す図6を参照)。次に、複合スコアは、1つ以上のセンサ角度の合計から計算することができる。アルゴリズムには、例えば、移動平均またはフィルタリングされた複合スコアを計算して、ノイズを低減し、誤検出を最小限に抑えることが含まれてもよい。フィルタリングされた複合スコアは、時間に対してプロットすることができ(例えば、本明細書に記載の膣内デバイスを使用して生成されたMEMSセンサデータを示す図7Aを参照)、これらのデータの導関数は、時間に対するセンサ角度の変化としてプロットすることができる(例えば、本明細書に記載の膣内デバイスを使用して生成されたMEMSセンサデータを示す図7Bを参照)。時間に対するセンサ角度の変化が所定の閾値(例えば、1°、2°、3°、4°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、例えば、約18°)を超えると、骨盤底運動が発生したと判定され得る。所定の閾値は、異なる対象から収集されたデータから経験的に決定することができる。骨盤底リフトの開始は、フィルタリングされた複合スコアの複合スコアの時間微分が所定の閾値を超えた瞬間またはその前後で決定され得る。移動平均のピーク値(例えば、Y_max)は、骨盤底運動(例えば、リフト)の大きさを示し得る。運動の開始から終了までの複合スコアの変化は、Δとして定義することができる。フィルタリングされた平均の複合スコアが、最大スコアとΔの半最大値との差の値を下回った場合(例えば、YがY_max-0.5xΔYを下回った場合)、骨盤底運動が終了したと判定することができる。Δの前にある係数は、経験的に決定してもよく、例えば、0.1~1.0(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、および1.0)まで変動し得る。センサ角度の時間に対する二次導関数がゼロに達したときに、運動の開始時間および終了時間を特定することもできる(例えば、図7Bを参照)。次に、尿流動態カテーテルによって生成されたデータまたは兆候のいずれかが対象に提示され得る。さらに、これらの兆候を使用して、対象を診断し、適切な治療方針を指示することができる。
【0065】
膣内デバイス
本明細書に記載の、本体および/またはテザーを有する膣内デバイスは、尿流動態検査中、その前、またはその後に骨盤底運動を監視するためのシステムの一部として使用することができる。代替的に、膣内デバイスは、単独で、または尿流動態カテーテルおよび/もしくは排尿日誌を作成するための直腸内デバイスと組み合わせて使用することができる。デバイスを女性の対象の膣に挿入して、膣内デバイスを子宮頸部または膣カフの近位に位置決めすることができる。膣内デバイスには、1つ以上の位置センサ(例えば、MEMS加速度計)および/または他のセンサが含まれる。位置センサおよび/または他のセンサにより、骨盤底運動を高感度に監視するため、かつ/または対象の骨盤底構造または他の健康面を評価するために使用され得る高感度の位置および/または他の情報が提供される。
【0066】
特に、膣内デバイスは、尿流動態検査中に尿流動態カテーテルと組み合わせて使用して、角度変化のパターンを検出することができる。例えば、膣内デバイスの特定のセンサを尿流動態検査中に監視して、骨盤底筋の生理機能を評価するための代用として、骨盤底のパターンおよび角度の変化を評価できる。パターンおよび角度の変化は、検査対象または既知の骨盤底障害(例えば、尿失禁)を有する対象において診断または治療の前に観察されたものと比較して、検査対象の骨盤底障害を正確に診断することができる。
【0067】
尿流動態検査中に尿流動態カテーテルおよび膣内デバイスで観察されるセンサ(例えば、MEMS加速度計)の角度変化の傾向およびパターンを使用して、骨盤底筋(例えば、様々な肛門挙筋および肛門括約筋群)および/または骨盤底器官の位置、運動、および相対的配向に基づいて病状を診断もしくは予測し、または対象における選択された治療の有効性を評価することができる。
【0068】
対象の骨盤底筋の健康状態を訓練、視覚化、および診断するための例示的な膣内デバイス、システム、および方法は、PCT国際出願PCT/US2018/057811号、国際公開第WO2018/023037号、ならびに米国特許出願第62/577,811号、同第62/625,301号、および同第62/657,585号に広く記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
膣内デバイスは、子宮頸部または膣カフを取り囲む膣壁の全てまたは一部に接触するように構成された外縁部を備えた本体を有しており、子宮頸部または膣カフをほぼ円周方向に囲むサイズの内径を有する。膣内デバイスの内径と外径はほぼ同等であり得、それらの長さの違いは、膣内デバイスを製造するために使用される材料の厚さに起因する。内径および/または外径は、長さが約20mm~約80mm(例えば、約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80mm)であり得る。一部の場合では、膣内デバイスの内径が外径よりも小さい場合がある。一部の場合では、膣内デバイスは、例えば、取り外し可能または永久的な接続によって膣内デバイスの本体に任意選択的に取り付けられ得るテザー(例えば、可撓性コードまたはリボン)を用いて製造することができる。テザーは、最大約14cm(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14cm)の長さおよび約1~約10mm(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mm)の幅を有し得る。デバイスの様々なフォームファクタには、リング(円形または楕円形)、テザー付きのリング、および不完全なリング(例えば、馬蹄形の構成)が含まれる。
【0070】
膣内デバイスの本体の外縁部は、膣壁に圧力、張力、接着、および/または吸引を加えて、膣内デバイスの位置を個体の子宮頸部または膣カフの近位の場所に保持するように構成することができる。膣内デバイスの外縁部によって膣壁に加えられる圧力、張力、接着、および/または吸引は、個体の膣管からの膣内デバイスの滑動、再位置決め、または変位を制限するのに十分な強度のものである。
【0071】
追加的に、膣内デバイスの本体は、個体の体内でデバイスを安定化、方向付け、および/または位置決めする目的のための1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の特徴部を含み得る。特徴部は、コーティング、突起、およびテクスチャからなる群から選択することができる。一部の場合では、特徴部は、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の生体材料を含むコーティング(例えば、表面コーティング)である。保持特徴部は、示されているデバイスに塗布することができ、または本明細書に記載されている他のデバイスの特徴部として塗布することもできる。保持特徴部は、本発明のデバイスに有用であり得、本発明のデバイスは、女性の膣内に長期間(例えば、少なくとも10分、20分、30分、40分、50分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11か月、12か月)留まるように設計されている。
【0072】
膣内デバイスは、本体(例えば、実質的にリング状の形態)および/または筋肉の運動を検出するように構成されたテザー(例えば、PFLおよび/またはPFR)内の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上)のセンサを含む。一部の場合では、センサは、実質的にリアルタイムで、例えば、PFLおよび/またはPFRなどの筋肉の運動を検出するように構成され得る。一部の場合では、センサ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上のセンサ)は、運動センサ、配向センサ、加速度計、ジャイロスコープ、微小電気機械システム(MEMS)センサ(例えば、MEMS加速度計)、Gセンサ、傾斜センサ、回転センサ、圧力センサ、LiDARセンサなどの光検出センサ、EIMセンサ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。デバイスはまた、LiDARセンサなどの光検出センサとともに使用するための光生成構成要素を含み得る。デバイスはまた、EIMセンサとともに使用するための電極を含み得る。追加的に、膣内デバイスは、例えば、筋力、筋質、生体分子(例えば、ホルモンおよび/または毒素)、pH、温度、および/または湿度のレベルまたはレベルの変化を検出するように構成された1つ以上センサ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上のセンサ)を含み得る。
【0073】
一部の場合では、センサは、例えば、国際公開第WO2015/103629(A1)号、同第WO2016/607023(A1)号、および同第WO2016/042310(A1)号と、米国特許出願公開第US2015/0032030(A1)号、同第US2014/0066813(A1)号、同第US2015/0151122(A1)号、同第US2015/0133832(A1)号、同第US2016/0008664(A1)号、および同第US2015/0196802(A1)号と、米国特許第US8983627号、同第US7955241号、同第US7645220号、同第US7628744号、同第US7957794号、同第US6264582号、および同第US6816744号と、に記載されているものと同様の配置または異なる配置で位置決めすることができ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本明細書に記載の2つ以上のセンサは、膣内デバイスの縦軸の周りに、例えば、膣内デバイスの本体および/またはテザーの中心軸の周りに、互いにおよそ±1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°、190°、200°、210°、220°、230°、240°、250°、260°、または270°で円状または螺旋状に配置され得る。代替的に、または追加的に、本明細書に記載の2つ以上のセンサは、例えば、本体の周囲に沿って、および/または膣内デバイスのテザーの長さに沿って、およそ0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mm、125mm、150mm、175mm、200mm、225mm、250mm、275mm、300mm、325mm、350mm、またはそれ以上離れて配置され得る。一部の場合では、2つ以上のセンサは、本明細書に記載されるように、本体の中心軸および/または膣内デバイスのテザーに沿って配置することができる。一部の場合では、2つ以上のセンサは、本明細書に記載されるように、それらが中心軸上に存在ないように、例えば、それらが本体の中心軸および/または膣内デバイスのテザーからオフセットされるように配置することができる。センサがテザー内に位置決めされている場合など、特定の例では、本体にセンサが含まれていない場合がある。他の例では、センサがテザー内に位置決めされている場合、本体はまた、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上)のセンサを含み得る。一部の場合では、センサは多軸加速度計などの加速度計である。他の例では、センサは多軸ジャイロスコープなどのジャイロスコープである。さらに他の例では、センサはMEMSセンサである。追加的に、膣内デバイスは、本体内に1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上)の追加のセンサ、ならびに/または圧力センサ、筋質センサ、筋力センサ、生体分子センサ(例えば、ホルモンセンサおよび/または毒素センサ)、温度センサ、水分センサ、湿度センサ、筋電図(EMG)センサ、およびpHセンサからなる群から選択されるテザーをさらに含み得る。センサ(複数可)は、膣内デバイスの表面(例えば、本体および/またはテザーの表面)に位置決めすることができ、その結果、センサ(複数可)の全てまたは一部は、個体の膣壁および/または子宮頸部または膣カフの組織と直接接触することができる。一部の場合では、センサ(複数可)は、約0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、またはそれ以上、膣内デバイス(例えば、本体および/または膣内デバイスのテザー)の外面(例えば、膣壁の組織および/または個体の子宮頸部または膣カフと直接接触する表面)の下に位置決めすることができる。一部の場合では、センサの約0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、またはそれ以上が膣内デバイス(例えば、膣内デバイスの本体および/またはテザー)の外面から突出するようにセンサを位置決めすることができる。代替的に、センサは、膣内デバイス内(例えば、本体および/またはテザー内)に位置決めされ得、センサが個体の膣壁および/または子宮頸部もしくは膣カフに直接接触しないように、ユーザがPFLまたはPFRを実施するときに動きを検出するように位置決めされている。センサ(複数可)は、膣内デバイス上または膣内デバイス内に間隔を置いて均等または不均一に位置決めすることができる。膣内デバイス内(例えば、本体および/またはテザー内)のセンサは、膣内デバイスがユーザに挿入されたときにセンサが腹側方向(例えば、前方方向)を向くように位置決めすることができる。
【0074】
テザーは最大約20cm(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20cm)の長さとすることができ、その長さに沿ってセンサを含むセグメントに分割することができる。センサは、テザーの長さに沿って、等間隔または不均一な間隔で、例えば、約1~約140mm(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、または140mm)の間隔で位置決めすることができる。テザー内のセンサの場所は、テザーの表面上の兆候(例えば、突起、象徴物、書き込み、および/またはエッチング)の存在によって、デバイスの外側で特定され得る。
【0075】
膣内デバイス(例えば、本体(例えば、実質的にリング状の形態)および/またはテザー)は、センサ(複数可)からデータを受信するように構成された実質的にリング状の形態のマイクロコントローラをさらに含む。マイクロコントローラはまた、センサ(複数可)からのデータを非一時的に保存するために構成され得るか、または別個の構成要素を含むことができる。マイクロコントローラは、例えば、ワイヤおよび/または回路基板によってセンサ(複数可)に接続されてもよい。ワイヤおよび回路基板は、可撓性または剛性であり得る。
【0076】
膣内デバイスはまた、本体内の送信機ならびに受信機(例えば、実質的にリング状の形態)、および/または無線でもしくは電子デバイス(例えば、ハンドヘルドもしくはポータブルデバイスなどの周辺デバイス、またはスマートフォン、タブレット、もしくはラップトップなどのコンピュータ)との取り外し可能なケーブルを介して通信するためのテザー形態を含むことができる。代替的に、送信機および受信機は、外部ハウジング内に配置され、無線でまたは取り外し可能なケーブルによって膣内デバイスに接続され得る。送信機および受信機は、マイクロコントローラ、センサ(複数可)、および/または回路基板に直接的にまたは間接的に接続できる。送信機および受信機は、Bluetooth(登録商標)、ISM対応電子デバイス、および/またはWi-Fi対応電子デバイス、および/またはRF対応電子デバイスとともに使用するように構成できる。センサ(複数可)によって収集された情報は、送信機および受信機によって、かつ/または取り外し可能なケーブルを使用することによって、電子デバイスに無線で伝達(例えば、ダウンロード、転送)され得る。
【0077】
追加的に、膣内デバイスは、対象が日常的な活動(例えば、対象の泌尿生殖器系および/または骨盤底の全体的な健康状態を変化させる(例えば、増加および/または減少させる)活動)中などに骨盤底運動を実施するときに膣内デバイスから受信したセンサデータを変換または利用し得る処理ユニットで構成され得る周辺デバイスを含むことができ、検出された活動が対象の健康状態に影響を与えるか、UIおよび/またはFIの治療を示すか、または治療の必要性を示すかどうかに関して、対象にフィードバックを提供する。例えば、周辺デバイスは、センサデータを処理して、将来取得されるセンサデータとの比較に使用することができるベースラインを生成して、対象に、対象が実施する活動が対象の健康状態に有益であるか有害であるか、または骨盤底運動がUIの治療を示すか、または治療の必要性を示すかどうかに関するフィードバック(例えば、アラート)を提供することができる。加えて、または代替的に、周辺デバイスは、センサデータを処理し、結果を過去に確立されたベースラインまたは所定のベースラインと比較することができ、この比較に基づいて、対象に、実施された活動が対象の健康状態に有益であるかもしくは有害であるか、または骨盤底運動がUIの治療を示すか、または治療の必要性を示すかどうかに関するフィードバック(例えば、アラート)を提供することができる。
【0078】
追加的に、電子デバイスには、ユーザインターフェースが含まれ得る。ユーザインターフェースは、データを表示するように、かつ/または膣内デバイスの使用に関する指示を提供するようにプログラムすることができる。膣内デバイスは、電源(例えば、電池)をさらに含む。電源を使用して、センサ(複数可)、送信機、受信機、回路基板など、デバイスのうちの1つ以上の構成要素を動作させることができる。一部の場合では、電源は、膣内デバイスの実質的にリング状の形態内に位置決めされ、ワイヤおよび/または回路基板によって構成要素(複数可)に接続される。
【0079】
本発明の例示的な膣内デバイスは、図3および図4に示されている。図3は、本体110およびテザー10を備えた膣内デバイス100を示している。テザー10は、例えば、1~20個のセンサ200(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上のセンサ200)を含んでもよい。本体110はまた、例えば、1~20個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれ以上のセンサ)のセンサ200および1~20個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれ以上)のエネルギー送信機210(例えば、RF、レーザ、電気刺激)を含んでもよい。テザー10または本体110は、平坦または長方形であり得る。テザー10のセンサは、MEMSセンサであり得る。テザー10はまた、ブルートゥース(登録商標)チップおよび/またはアップルチップまたは他の無線互換チップセットを含み得る。本体110は、PFD、膣障害、もしくはその症状、または他の疾患もしくは状態の治療のために、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5つ、またはそれ以上)の薬剤を膣組織に投与するように構成され得る。一部の場合では、テザー10は、膣組織に薬剤を投与するように同様に構成され得る。本体110から取り外し可能であり得るテザー10を医薬投与のために構成することは、例えば、薬剤が枯渇したとき、別の薬剤が必要なとき、または別の投与量が必要なときに、本体110を廃棄する必要なく、必要に応じてテザーを置換および/または交換することができる選択肢をユーザに提供する。テザー10は、膣内デバイス100が膣内にどれだけ深く存在するかを視覚化するために、グラデーションまたはルーラーのマーキングを有し得る。本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、任意選択的に、テザーは存在しない場合がある。
【0080】
膣内デバイス100は、骨盤底筋運動を監視するために、テザー10内に少なくとも1つのセンサ200を含む。図3に示されるように、膣内デバイス100は、本体110内に回路基板700を含む。回路基板700は、膣内デバイス100の複数の構成要素、例えば、センサ200、電池800、マイクロコントローラ900、送信機/受信機1000、データストレージユニット1100、知覚出力構成要素1200、無線通信アンテナ1300、オン/オフスイッチ1600、および認証チップ1400(図3、挿入図)などを互いに接続する可撓性回路基板であり得る。代替的に、回路基板700をワイヤによってセンサ200に接続することができる。代替的に、回路基板700およびその全ての接続された構成要素は、テザー10内に位置決めすることができる。膣内デバイス100は、追加のセンサおよび/または送達モジュールで構成され得る。
【0081】
膣内デバイス100は、対象の膣に挿入され、手動または挿入ツールを使用して、骨盤底に隣接する上部膣の表面に実質的に平行な、子宮頸部、膣円蓋、または膣カフに近接した位置に展開され得る。膣内デバイス100はまた、対象の子宮頸部または膣カフに近接した位置でデバイスを安定化するための成形された翼部300を含み得る(図3)。テザー10はまた、膣内デバイス100を送信機/受信機ボックス500に接続し、対象からの膣内デバイス100の取り外しを支援するために使用することができる取り外し可能なケーブルの形態であり得る。
【0082】
特定の実施形態では、膣内デバイス10は、テザー10に8個以下(例えば、4個または5個)のセンサ200を含み、本体110に5個以下のセンサ200を含む。1つのセンサは、テザーと本体の両方によって共有され得る(図4)。本体110の前面および後面を接続する平面とテザー10との間の角度は、0°~180°(例えば、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、180°)の範囲で変化し得る。本体110の円周は、約10cm~約50cm(例えば、15cm、20cm、25cm、30cm、35cm、40cm、45cm、または50cm)であり得るか、または27.6cmであり得る。テザー10の長さは、約1cm~約50cm(例えば、2cm、3cm、4cm、5cm、10cm、15cm、20cm、25cm、30cm、35cm、40cm、45cm)であり得るか、または25.5cmの長さであり得る。センサ200は、約0.5cm~約5cm(例えば、1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、3.5cm、4cm、または4.5cm)間隔で配置され得、約1.6cm間隔で配置され得る。少なくとも1つのセンサ200は、本体110から10cm以下(例えば、9cm、8cm、7cm、6cm、5cm、4cm、3cm、2cm、または1cm)のテザー上に配置され得る。
【0083】
直腸内デバイス
また、例えば、本明細書に記載の尿流動態カテーテルを備えたシステムとして使用され得る直腸内デバイスも特徴付けられる。本明細書に記載の、細長い本体を有する直腸内デバイスは、尿流態検査中、その前、またはその後に骨盤底運動の動きを監視するためのシステムの一部として、または尿流動態カテーテルまたは膣内デバイスと組み合わせて、排尿日誌を作成するために使用することができる。例示的な直腸内デバイスは、例えば、米国特許出願公開第US2017/0281072号および同第US2017/0303843号に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
デバイスは、対象(例えば、男性または女性の対象)の直腸に挿入することができ、その結果、1つ以上の位置センサにより、対象の直腸の空間的配向の位置の読み取り値が提供される。直腸の位置により、読み取り値が提供され、これは、骨盤底の位置および尿道および前立腺を含む骨盤底器官の空間的配置の代用として機能する。直腸内デバイスには、デバイスの長さに沿って位置決めされた複数の位置センサ(例えば、MEM加速度計)が含まれ得る。直腸内デバイスはまた、運動および/または圧力センサなどの1つ以上の追加のセンサを含み得る。直腸内デバイスは、対象の直腸内に適合するように任意の好適な形状で構造的に構成することができる。
【0085】
直腸内デバイスは、尿流動態検査中に尿流動態カテーテルと組み合わせて使用して、角度変化のパターンを検出することができる。例えば、直腸内デバイスの特定のセンサを尿流動態検査中に監視して、骨盤底筋の生理機能を評価するための代用として、骨盤底のパターンおよび角度の変化を評価できる。パターンおよび角度の変化は、検査対象または既知の骨盤底障害(例えば、尿失禁)を有する対象において診断または治療の前に観察されたものと比較して、検査対象の骨盤底障害を正確に診断することができる。
【0086】
尿流動態検査中に尿流動態カテーテルおよび直腸内デバイスで観察されるセンサ(例えば、MEMS加速度計)の角度変化の傾向およびパターンを使用して、骨盤底筋(例えば、様々な肛門挙筋および肛門括約筋群)および/または骨盤底器官の位置、運動、および相対的配向に基づいて病状を診断もしくは予測し、または対象における選択された治療の有効性を評価することができる。
【0087】
システムおよびキット
また、尿失禁などの骨盤底障害(PFD)の診断、予防、および/または治療に使用するための、尿流動態カテーテル、ならびに任意選択的に膣内および/または直腸内デバイスを含むシステムおよびキットも特徴付けられる。自動排尿日誌として使用されるように構成されたキットも使用することができる。これらのキットを使用して、骨盤底筋運動を監視することによって、より効果的な尿流動態検査が有効と考えられる個体(例えば、男性または女性の対象)を治療することができる。一部の場合では、キットには、ユーザの泌尿生殖器系および/または骨盤底(例えば、肛門挙筋の筋線維、例えば、恥骨尾骨筋、回腸尾骨筋、尾骨筋、恥骨直腸筋、および関連する結合組織)の全体的な健康状態を監視するように構成された本発明のデバイスが含まれ得る。本明細書に記載のキットまたはシステムのいずれにおいても、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスは、位置センサの有無にかかわらず構成され得る。
【0088】
システムまたはキットは、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイス、ならびに送信機および受信機、取り外し可能なケーブル、電子デバイス、データベース、および/またはユーザインターフェース、電源(例えば、1つ以上の電池)、ならびにそれらの使用説明書のうちの1つ以上を含み得る。追加的に、キットは、例えば、充填器、衛生クリーナー、および/または手袋を含んでもよい。
【0089】
キットの他の任意選択の構成要素は、尿道内、直腸内、または膣内デバイスを挿入する際に使用する潤滑剤(例えば、膣内デバイスが製造される材料と適合性のある潤滑剤、例えば、シリコーン)、および/または個体の子宮頸部または膣カフ、直腸、または尿道/膀胱の近位位置でのデバイスの接着を改善するために使用する生体材料(例えば、ヒアルロン酸)を含む。任意選択の構成要素(例えば、潤滑剤および/または生体材料)は、別個の容器(例えば、密封されたパケット、チューブ、および/またはアプリケータ)で提供され得る。
【0090】
代替的に、任意選択の構成要素(例えば、潤滑剤および/または生体材料)は、デバイスにあらかじめ塗布されており、デバイスの挿入および使用が可能な状態になっている。キットの追加の任意選択の構成要素には、デバイスの挿入および/もしくは取り外しに使用するための滅菌手袋(例えば、少なくとも1つのペア)、または代替的に、潤滑剤および/もしくは生体材料をデバイスに適用する際に使用するため、かつ/または本発明のデバイスおよび/もしくはシステムのための貯蔵容器が含まれる。
【0091】
本発明のキットは、これらに限定されないが、尿失禁(UI)、排尿筋失禁(DI)、腹圧性尿失禁(SUI)、切迫性尿失禁(SI)、内因性括約筋欠損症(ISD)、混合腹圧性ならびに切迫性尿失禁、排尿障害(例、痛みを伴う排尿)、および肛門または便失禁などの骨盤底障害の診断および/または治療に有用であり得る。
【0092】
排尿日誌
排尿日誌は、従来、尿失禁を有する対象(男性または女性の対象など)によって手動で維持されるログであり、水分の流入および排尿、およびそれに関連する特性が追跡されるものである。本発明により、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイス、ならびにそれらのシステムを使用して作成され得る自動排尿日誌が特徴付けられる。一部の実施形態では、膣内デバイスまたは直腸内デバイスのみを使用して、自動排尿日誌を作成することができる。膣内デバイスは女性の対象に使用され、直腸内デバイスは男性または女性の対象のいずれかによって使用され得る。
【0093】
排尿日誌には、水分摂取量、排尿頻度、各排尿量(量など)、期間、質、(例えば、強い突然の衝動のために)急いでトイレに行った回数、偶発事象の回数、漏出の数または重大度、パッドまたはおむつの交換の数、ならびに衣服の交換の数などの情報が含まれる。さらに、排尿日誌は、一日を通してこれらの事象のそれぞれを追跡する時間ログを含み得、そして、例えば、1週間~6ヶ月以上(例えば、2週間、3週間、4週間、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月)の診断および/または治療期間の過程にわたって維持されてもよい。排尿日誌につけられた各事象は、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスの位置センサおよび/または他のセンサによる事象の自動検出によって追跡される。本明細書でより詳細に説明されているように(例えば、上記の「骨盤底運動を検出する方法」を参照)、排尿、衝動、コツ、咳、バルサルバ法、切迫感/衝動抑制中の反射性肛門挙筋反応、および/または他の骨盤底筋収縮に関連する異なる骨盤底運動により、これらの特定の事象に関連付けられ得る特徴的なセンサ角度パターンが示される。次に、例えば周辺デバイスおよび/またはプロセッサと通信するセンサを使用して、各事象の発生を追跡し、それをタイムスタンプとともに記録することができる。さらに、尿流動態カテーテル、膣内デバイス、および/または直腸内デバイスにより、排尿事象中に生成される尿の量などの兆候が提供され得、それにより、各排尿発現を小、中、または大に分類する必要がなくなる。周辺デバイスは、表示インターフェースを含む電子デバイスを含むか、または電子デバイスと通信することができる。表示インターフェースにより、尿発現の情報(例えば、最後の骨盤底筋収縮中の排尿または切迫性)がユーザに提供され得る。表示インターフェース(例えば、スマートフォンまたはタブレット)には、排尿日誌情報および上記の兆候の合理化された視覚的表示を提供するアプリケーションが含まれ得る。アプリケーションには、対象に、排尿発現を確認することを可能にする機能が含まれ得る。例えば、アプリケーションは、加速度計によって生成されたパターンを解釈し、パターンを特定の事象と相関させてから、ユーザにクエリを実行して、デバイスによって特定された発現を確認してもよい。したがって、これらのデバイスは、堅牢な事象のログを提供するために、排尿および尿失禁に関連する発現を正確に追跡する方法のシステムとして使用できる。ログに記録された事象を使用して、尿失禁などの骨盤底障害の診断、およびそれを必要とする対象におけるこれらの障害の治療方法を支援することができる。
【実施例
【0094】
以下の実施例は、当業者に、本明細書に記載のデバイス、システム、および方法がどのように実施、製造、および評価されるかについての説明を提供するために提示されるものである。以下の実施例は、デバイス、システム、および方法での使用を純粋に例示することを意図するものであり、発明者が、発明者の発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。
【0095】
実施例1.位置センサに対応した尿流動態カテーテルによる尿流動態検査
尿失禁を有する女性の対象が、尿流動態検査中に、位置センサに対応した尿流動態カテーテル(図1)を使用している。尿流動態カテーテルには、デバイスの長さに沿って配置された複数のMEMS加速度計が含まれる。医師がカテーテルを対象に挿入して、対象が排尿を行う。カテーテルにより、筋電図を使用して骨盤底の筋肉および神経の流動および電気的活動が計測される(図2)。また、カテーテルにより、排尿筋圧、膀胱圧、腹圧、および膀胱内の体液量が計測される。カテーテルの位置センサにより、膀胱の充満、排出、およびバルサルバ法中に詳細な視覚情報が提供される。加速度計の読み取り値から観察された特徴的なパターンにより、対象が尿道の過可動性を有していることが示される。
【0096】
尿流動態検査中に膣内および/または直腸内デバイスを使用して、骨盤底筋運動に関する追加データを取得し、尿失禁の種類と重症度とをより完全に診断することもできる。
【0097】
実施例2.アルゴリズムを使用した骨盤底運動の検出
複数のMEMS加速度計を有する膣内デバイスを女性の対象の膣に挿入し、対象に一連の骨盤底運動(例えば、骨盤底リフト、骨盤底弛緩、バルサルバ手技、持続的な骨盤底リフト、および連続的に繰り返される骨盤底リフト)を実施するように依頼した。センサの(水平線に対する)角度および各MEMS加速度計から位置データが収集された。各センサからの角度データは、時間の関数としてプロットされた(図6)。
2つの複合スコアY1およびY2が、センサS5~S7の角度(A)から計算された。
Y1=A5+A6+0.6xA7
Y2=A5+A6-0.8xA7
【0098】
Y1およびY2の移動平均(Y1_movmeanとY2_movmean)は、Y1およびY2の3つの連続したサンプルから計算された。ノイズを減少させ、誤検知を最小限に抑えるために移動平均フィルタを使用した。フィルタリングされた複合スコアは、時間に対してプロットされ(図7A)、これらのデータの導関数は、センサ角度対時間の変化としてプロットされた(図7B)。時間に対するセンサ角度の変化が18°の閾値を超えたとき、骨盤底リフトが発生したと判定された。この閾値は、図7Aの曲線の傾きおよび図7Bの破線によって視覚化することができる。18°の値は、10人の異なる対象からのデータから経験的に決定された。骨盤底リフトの開始は、Y1またはY2の移動平均の時間微分がこの閾値を超えた瞬間で決定された。移動平均Y1およびY2のピーク値をY1_maxおよびY2_maxで表した。Y1およびY2の移動平均の増加は、ΔY1=Y1_max-Y1_startおよびΔY2=Y2_max-Y2_startで表された(図7A)。これらの値は、骨盤底リフトの大きさを示している。Y1_movmeanがY1_max-0.5xΔY1の値を下回ったとき、またはY2_movmeanがY2_max-0.5xΔY2の値を下回ったとき、骨盤底リフトが終了したと判定した。図7Bの約42秒および約55秒のスパイクの上部および下部によって示されるように、開始時間および終了時間はまた、時間に対するセンサ角度の二次導関数がゼロに達した瞬間と相関していた。グラフに示されているように、全ての骨盤底運動(骨盤底リフト、骨盤底弛緩、バルサルバ手技、持続的な骨盤底リフト、および連続的に繰り返される骨盤底リフト)に対して同じデータ分析が繰り返された。
【0099】
この例のデータは膣内デバイスから生成されているが、同じ種類のデータが、加速度計を備えた尿流動態カテーテルによって生成されてもよい。
【0100】
実施例3.ユーザの健康状態の尺度としての日常活動中の骨盤底運動の検出
ユーザは、複数のMEMS加速度計を有する膣内デバイスを自身の膣に挿入することができ、デバイスにより、ユーザの日常的な活動中に骨盤底運動(例えば、骨盤底リフト、骨盤底弛緩、バルサルバ手技、持続的な骨盤底リフト、および連続的に繰り返される骨盤底リフト)が検出され得る。デバイス内のプロセッサ、またはスマートフォンもしくはウェアラブルデバイス(時計など)などの周辺デバイス内のプロセッサにより、データを処理して骨盤底事象の発生を計算することができる。各MEMS加速度計は、水平線に対する位置およびセンサ角度に対応する信号を発信する。各センサからの角度データは、時間の関数としてプロットされる。各センサからの信号の強さは、角度の変化(骨盤底リフト中の角度-骨盤底弛緩中の角度)によって示される。この信号強度は、どのセンサが最も強い信号を提供するかを判定するために使用される。これは、10人の対象に対して繰り返される(図8)。
【0101】
パラメータDMNは、対象番号NのセンサMの角度「デルタ」として定義される。Sは、センサMの角度として定義される。最適化された複合スコアは、Yopt_N=sum(1:10){DMNxS}として定義される。したがって、最適化された複合スコアは、各センサの相対信号強度に基づく加重平均であり、対象によって異なる。図7A図7Bでは、第1の対象の最適化された複合スコアは、Yopt_1=-1.1S-1.8S+1.2S+7.6S+6.9S-3.1S-10.2S-8.7S-5.1S-4.8S10で与えられる。最適化された複合スコアは、他の対象(2~10)についても同様の方法で計算される。
【0102】
この例のデータは膣内デバイスから生成されているが、同じ種類のデータが、加速度計を備えた尿流動態カテーテルによって生成されてもよい。
【0103】
実施例4.自動排尿日誌の維持
尿失禁を有する対象は、位置センサに対応した尿流動態カテーテル(図1)および/または複数のMEMS加速度計を含む膣内デバイスを含む本発明のシステムを使用して、デバイス(複数可)のMEMSセンサによって生成される、排尿ならびに充満に関連する特徴的な骨盤底運動、切迫感ならびに衝動の抑制中の反射性肛門挙筋反応、および咳ならびにバルサルバ法のコツを自動的に監視および記録する。各事象にタイムスタンプを割り当てることができ、これにより、各発現の頻度および期間の両方の情報が提供される。尿流動態カテーテルを使用して、各排尿事象の量を計測することができ、これは、自動排尿日誌にも記録され得る。次に、この情報を使用して、対象を診断したり、治療計画の有効性を追跡したりするために、失禁発現のパターンを判定することができる。
【0104】
代替的に、対象は、MEMS加速度計を備えた膣内デバイスのみを使用して排尿日誌を作成することができる。デバイスは対象の膣に挿入され、最大4週間その中に留まり、その間にユーザは自動排尿日誌を作成する。各尿発現は、排尿ならびに充満に関連する特徴的な骨盤底運動、切迫感ならびに衝動の抑制中の反射性肛門挙筋反応、および咳ならびにバルサルバ法中のコツを追跡する膣内デバイスのセンサによって監視される。各事象にタイムスタンプを割り当てることができ、これにより、各発現の頻度および期間の両方の情報が提供される。次に、この情報を使用して、対象を診断したり、治療計画の有効性を追跡したりするために、失禁発現のパターンを判定することができる。
【0105】
他の実施形態
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの独立した刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されてきたが、さらなる修正が可能であり、本出願は、本発明の組成物および方法で使用するための、概して、本発明の組成物および方法で使用するための原理に従い、かつ本発明が関連し、前述の本質的な特徴に適用され得る当技術分野の既知のまたは慣習的な慣行の範囲内にあり、特許請求の範囲に従う、本開示からのかかる逸脱を含む、任意の変形例、使用方法、または適合例を包含することを意図するものである。他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】