(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】改変組織の凍結保存及び再構成のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20220107BHJP
【FI】
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523423
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 US2019058491
(87)【国際公開番号】W WO2020092321
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519448175
【氏名又は名称】エイブリィ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランカスター、ジョーダン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コエヴァリー、ジェニファー ワトソン
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン、スティーブン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA46
(57)【要約】
改変組織の凍結保存及び再構成のためのシステム、方法、及び組成物。改変された組織組成物は、凍結保存-解凍サイクル後に機能的である。例えば、組織組成物は、それらの構造的完全性を保持し、細胞間コミュニケーションを維持するなどである。特定の実施形態では、組織組成物は、同期収縮を示し、ホルモンを分泌し、サイトカインを分泌し、RNAを分泌し、増殖因子を分泌し、酵素を分泌し、及び/又は神経伝達物質を分泌する等。いくつかの実施形態では、改変された組織組成物は、培養され、凍結保存され、閉鎖系で再構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.足場、及び
b.足場上又は足場内の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が細胞間コミュニケーションを示す、上記組織組成物。
【請求項2】
a.足場、及び
b.足場上又は足場内の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物がその物理的完全性を維持する、上記組織組成物。
【請求項3】
a.足場、及び
b.足場上又は足場内の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物の細胞が、ホルモン、酵素、増殖因子、サイトカイン、又はRNAのうちの1つ又は組み合わせを分泌する、上記組織組成物。
【請求項4】
a.足場、及び
b.足場上又は足場内の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が同期収縮を示す、上記組織組成物。
【請求項5】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の10%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項6】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の20%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項7】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量よりも多い、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項8】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の10%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項9】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の20%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項10】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量よりも多い、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項11】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項12】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項13】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項14】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項15】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項16】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項17】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項18】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項19】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項3に記載の組織組成物。
【請求項20】
増殖因子が、IGF-1、VEGF、FGF、HGF、G-SCF又はTGF-b、アンジオポエチン-1、TBG-b3、PDGF-A、EPO、HBEGF、TGFa、アンジオゲニン(angiogenein)、アンジオポエチン(angiopoientin)-2、内皮増殖因子、レプチン、PDGF-BB、SPARC、IL-6、IL-8、インターフェロン-ガンマ、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-8、単球走化性タンパク質1、TNFaのうちの1つ又は組み合わせである、請求項3及び11~13のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項21】
組織組成物が、0.5N/mm~4N/mmの最大剛性を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項22】
組織組成物が、0.04~0.10Mpaの引張強度を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項23】
組織組成物の少なくとも一部が、吸収性である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項24】
組織組成物の少なくとも一部が、非吸収性である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項25】
足場が、500μm~1200μmの細孔サイズ(pore size)を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項26】
播種細胞が、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞に由来する細胞、人工多能性幹細胞に由来する細胞、前駆細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞又は傍分泌細胞である、請求項1~20のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項27】
播種細胞が、スフェロイド(spheroids)として、又は細胞シートの形態で、ゲルの形態で、又は泡の形態で播種される、請求項1~21のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項28】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が細胞間コミュニケーションを示す、上記組織組成物。
【請求項29】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物がその物理的完全性を維持する、上記組織組成物。
【請求項30】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物の細胞が、ホルモン、酵素、増殖因子、サイトカイン、又はRNAのうちの1つ又は組み合わせを分泌する、上記組織組成物。
【請求項31】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が同期収縮を示す、上記組織組成物。
【請求項32】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の10%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項33】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の20%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項34】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量よりも多い、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項35】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の10%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項36】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の20%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項37】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量よりも多い、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項38】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項39】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項40】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項41】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項42】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項43】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項44】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項45】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項46】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項30に記載の組織組成物。
【請求項47】
増殖因子が、IGF-1、VEGF、FGF、HGF、G-SCF又はTGF-b、アンジオポエチン-1、TBG-b 3、PDGF-A、EPO、HBEGF、TGFa、アンジオゲニン、アンジオポエチン-2、内皮増殖因子、レプチン、PDGF-BB、SPARC、IL-6、IL-8、インターフェロン-ガンマ、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-8、単球走化性タンパク質1、TNFaのうちの1つ又は組み合わせである、請求項30及び38~48のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項48】
組織組成物が、0.5N/mm~4N/mmの最大剛性を有する、請求項28~47のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項49】
組織組成物が、0.04~0.10Mpaの引張強度を有する、請求項28~48のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項50】
組織組成物の少なくとも一部が、吸収性である、請求項28~49のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項51】
組織組成物が、非吸収性である、請求項28~49のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項52】
足場が、500μm~1200μmの細孔サイズを有する、請求項28~51のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項53】
ECM生成細胞が、生きている、死んでいる、又はECM生成細胞の一部が死んでいる、請求項28~52のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項54】
ECM生成細胞が、最初に足場上に播種され、続いてECMを産生する、請求項28~53のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項55】
ECMが、ECM生成細胞の播種前に足場上に沈着する、請求項28~53のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項56】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が細胞間コミュニケーションを示す、上記組織組成物。
【請求項57】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物がその物理的完全性を維持する、上記組織組成物。
【請求項58】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物の細胞が、ホルモン、酵素、増殖因子、サイトカイン、又はRNAのうちの1つ又は組み合わせを分泌する、上記組織組成物。
【請求項59】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.足場上に配置されたECM生成細胞又は足場上及び足場内のECM生成細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が同期収縮を示す、上記組織組成物。
【請求項60】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の10%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項61】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の20%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項62】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量よりも多い、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項63】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の10%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項64】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の20%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項65】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量よりも多い、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項66】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項67】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項68】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項69】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項70】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項71】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項72】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項73】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項74】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項58に記載の組織組成物。
【請求項75】
増殖因子が、IGF-1、VEGF、FGF、HGF、G-SCF又はTGF-b、アンジオポエチン-1、TBG-b3、PDGF-A、EPO、HBEGF、TGFa、アンジオゲニン、アンジオポエチン-2、内皮増殖因子、レプチン、PDGF-BB、SPARC、IL-6、IL-8、インターフェロン-ガンマ、IL-1a、IL-1 b、IL-6、IL-8、単球走化性タンパク質1、TNFaのうちの1つ又は組み合わせである、請求項58及び66~68のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項76】
組織組成物が、0.5N/mm~4N/mmの最大剛性を有する、請求項56~75のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項77】
組織組成物が、0.04~0.10Mpaの引張強度を有する、請求項56~76のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項78】
組織組成物の少なくとも一部が、吸収性である、請求項56~77のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項79】
組織組成物が、非吸収性である、請求項56~77のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項80】
足場が、500μm~1200μmの細孔サイズを有する、請求項56~79のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項81】
ECM生成細胞が、生きている、死んでいる、又はECM生成細胞の一部が死んでいる、請求項56~80のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項82】
ECM生成細胞が、最初に足場上に播種され、続いてECMを産生する、請求項56~81のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項83】
ECMが、ECM生成細胞の播種前に足場上に沈着する、請求項56~81のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項84】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.ECM中の播種細胞又はECM中及びECM上の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が細胞間コミュニケーションを示す、上記組織組成物。
【請求項85】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.ECM中の播種細胞又はECM中及びECM上の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物がその物理的完全性を維持する、上記組織組成物。
【請求項86】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.ECM中の播種細胞又はECM中及びECM上の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物の細胞が、ホルモン、酵素、増殖因子、サイトカイン、又はRNAのうちの1つ又は組み合わせを分泌する、上記組織組成物。
【請求項87】
a.足場、ならびに
b.足場上に配置された細胞外基質(ECM)材料又は足場上及び足場内のECM材料、ならびに
c.ECM中の播種細胞又はECM中及びECM上の播種細胞
を含む組織組成物であって、
凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物が同期収縮を示す、上記組織組成物。
【請求項88】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の10%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項89】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の20%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項90】
分泌されたホルモンの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量よりも多い、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項91】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の10%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項92】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の20%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項93】
分泌された酵素の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量よりも多い、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項94】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項95】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項96】
分泌された増殖因子の量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項97】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項98】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項99】
分泌されたサイトカインの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項100】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項101】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上である、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項102】
分泌されたRNAの量が、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い、請求項86に記載の組織組成物。
【請求項103】
増殖因子が、IGF-1、VEGF、FGF、HGF、G-SCF又はTGF-b、アンジオポエチン-1、TBG-b3、PDGF-A、EPO、HBEGF、TGFa、アンジオゲニン、アンジオポエチン-2、内皮増殖因子、レプチン、PDGF-BB、SPARC、IL-6、IL-8、インターフェロン-ガンマ、IL-1a、IL-1 b、IL-6、IL-8、単球走化性タンパク質1、TNFaのうちの1つ又は組み合わせである、請求項86及び94~96のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項104】
組織組成物が、0.5N/mm~4N/mmの最大剛性を有する、請求項84~103のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項105】
組織組成物が、0.04~0.10Mpaの引張強度を有する、請求項84~104のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項106】
組織組成物の少なくとも一部が、吸収性である、請求項84~105のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項107】
組織組成物が、非吸収性である、請求項84~105のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項108】
足場が、500μm~1200μmの細孔サイズを有する、請求項84~107のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項109】
播種細胞が、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞に由来する細胞、人工多能性幹細胞に由来する細胞、前駆細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞又は傍分泌細胞である、請求項84~108のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項110】
播種細胞が、スフェロイドとして、又は細胞シートの形態で、ゲルの形態で、もしくは泡の形態で播種される、請求項84~109のいずれか一項に記載の組織組成物。
【請求項111】
a.改変された組織組成物を培養すること、
b.改変された組織組成物を凍結保存すること、及び
c.改変された組織組成物を再構成すること、
を含む、改変された組織組成物のためのワークフローシステムであって、
改変された組織組成物が、凍結保存-解凍サイクル後に機能的であり、
システムが、閉鎖系である、上記ワークフローシステム。
【請求項112】
システムが、改変された組織組成物を培養、凍結保存、及び再構成するための滅菌環境を提供する、請求項111に記載のワークフローシステム。
【請求項113】
改変された組織組成物が、請求項1~110のいずれか一項に記載の改変された組織組成物である、請求項111~112のいずれか一項に記載のワークフローシステム。
【請求項114】
改変された組織組成物の機能を増強する方法であって、方法は、請求項1~110のいずれか一項に記載の改変された組織組成物を凍結保存すること、及び改変された組織組成物を再構成することを含み、改変された組織組成物は、凍結保存-解凍サイクル後に増強された機能を有する、上記方法。
【請求項115】
機能増強が、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA又は増殖因子の分泌増強である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
改変された組織組成物の機能を増強する方法であって、方法が、請求項1から110のいずれか一項に記載の改変された組織組成物を-196℃~37℃未満の温度に冷却すること、及び改変された組織組成物を再構成することを含み、改変された組織組成物が、冷却後に増強された機能を有する、上記方法。
【請求項117】
機能増強が、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子などの分泌増強である、請求項115に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月29日に出願された米国特許出願第62/752,235号の利益を主張し、その明細書は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、組織工学に関し、例えば、1種以上の細胞型の増殖、分化及び/又は維持を可能にするための3次元改変された組織組成物に関する。より詳細には、本発明は、改変組織の凍結保存及び再構成のためのシステム(例えば、血管、容器など)、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、3次元培養物は、インビボで細胞増殖、分化、及び/又は維持に期待される条件(例えば、適切な構造及び微小環境)と同様の条件を提供するために使用されることが増えている。現在、特定の組織を模倣する3次元培養物の開発に多大な努力が傾注されている。このような3次元組織培養物は、治療目的のため、研究用及び試験用の生物学的モデルを作成するためなど、様々な目的のために使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、改変された組織組成物、例えば、細胞の増殖、維持及び/又は分化などを支持する3次元組織組成物、ならびに改変された組織組成物の凍結保存及び再構成のためのシステム(例えば、血管、容器など)、組成物及び方法を特徴とする。システム、方法及び組成物は、閉鎖培養系に適用され得る。いくつかの実施形態では、システム、方法、及び組成物は、開放培養系に適用され得る。
【0005】
本明細書で使用される場合、「開放系」という用語は、操作者が培養プレート及び培養溶液/培地を直接取り扱い、開放している培養系を指す。本明細書で使用される場合、「閉鎖系」という用語は、培養物及び溶液/培地がそれ自体の系に完全に含まれ、周囲の外部環境から隔離されるか又は接触しない(したがって、汚染の可能性がより低い)系を指す。
【0006】
改変された組織組成物の凍結保存及び再構成のためのシステム、方法、及び組成物は、本明細書の改変された組織組成物に限定されず、任意の他の適切な組織組成物に適用され得る。
【0007】
改変された組織組成物は、ある期間にわたって培養され、その後、さらなる処理又は最終使用に必要とされるまで貯蔵するために凍結保存され得る。組織組成物が必要になると、再構成され、さらに処理されるか、又は使用される。さらに処理する場合、組織組成物を再度凍結保存し、後に再構成してもよい。組織は、治療として器官又は組織に、低侵襲(例えば、経皮、カテーテル、内視鏡、注射など)又は手術(例えば、開腹、腹腔鏡、ロボットなど)で適用され得る。組織は、インビトロ試験基質(例えば、薬物毒性/安全性、薬物有効性、薬物の作用機序、疾患の作用機序など)としても使用され得る。
【0008】
組織は、小さい(例えば、直径約5mm)もしくは大きい(例えば、直径5cm以上)、又はそれらの間のサイズであり得る。組織は、単層の細胞、多層の細胞、細胞巣もしくは凝集体、細胞スフェロイド(spheroids)、又は細胞の他の組織体を含み得る。細胞の密度及び組織体は、足場、細胞外基質などに応じて変化し得る。組織は、単一の細胞型又は2つの細胞型又は多くの細胞型を含有し得る。細胞は、ヒト、又は非ヒト、哺乳動物、又は非哺乳動物であり得る。様々な細胞集団は、均一、不均一、混合又は層状であり得る。組織は、数千個の細胞から数十億個の細胞を含み得る。
【0009】
前述のように、組織は、所望の培養を完了すると、凍結保存することができる。組織は、ただ1回の凍結保存又は数回の中間凍結保存を経る場合もある。中間凍結保存の目的は、最終組織産物の開発プロセスの完了前に中間体を保存することであり得る。中間凍結保存の目的は、温度変化によって引き起こされる特定の細胞もしくは組織プロセスの活性化もしくは促進のため、又は他の目的のためであり得る。
【0010】
凍結保存は、制御された速度の冷凍庫、又は凍結速度を制御するエタノールジャケット付き容器もしくは発泡断熱性容器などの他の種類もしくは装置を使用して開始することができる。冷凍装置は、一般に、約1℃/分の温度変化を制御する能力を有する。
【0011】
凍結保存は、バイアル又は形状及び体積が異なる環境チャンバ(バイオバッグ)で行うことができる。バイアルは、開放系培養で最も頻繁に使用される。環境的に隔離されたチャンバ(バイオバッグと呼ばれることが多いが、常にではない)は、開放培養系又は閉鎖培養系で使用することができる。バイアルは、例えば、0.2ml~50ml以上の体積であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、凍結保存は、0.2~1ml、1~5ml、5~25ml(例えば、10ml)、10~25ml、25~50ml、50~75ml、75~100ml、90~110ml(例えば、100ml)などの体積で行われる。
【0012】
一例として、いくつかの実施形態では、組織は、約37℃~約-80℃、場合によっては約-150℃まで、場合によっては約-196℃までの培養物から採取される。
【0013】
凍結保存は、凍結保存溶液の存在下で行われる。これらの溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでも含まなくてもよい。DMSOを含有する溶液は、通常、2~10体積%のDMSOを含む。溶液は、DMEM、RPMI又は類似のものなどの様々な培養培地も含有し得る。溶液は、FBSなどの細胞用栄養素も含有し得る。凍結保存溶液は当業者に周知である。市販の凍結保存溶液の非限定的な例としては、Cryostor(登録商標)(BioLife Solutions)、CellBanker(登録商標)(Amsbio)Thermofisher Cryopreservation Mediumなどが挙げられる。本発明は、いかなる特定の凍結保存溶液にも限定されない。
【0014】
解凍は、組織を凍結保存状態(<0℃)から解凍状態にするプロセスであり、体温(約37℃)、又は室温、又は冷却冷蔵(非凍結)温度であり得る。解凍は、組織を凍結保存状態から再構成状態にするプロセスと考えることもできる。再構成は、組織を凍結保存(例えば、冬眠状態)から使用に必要な完全効力にするプロセスである。効力は、組織及び意図する用途に基づいて異なり、代謝活性、遺伝子発現、サイトカイン発現、生存率などに関連する場合があるが、必ずしもそうとは限らない。一部の組織又は適用は体温への再構成を必要とし得るが、他の組織又は適用はより低い温度又はより高い温度で再構成され得る。さらに、再構成工程は、組織が凍結を超える温度に加温又は冷却される中間温度での中間工程を必要とするか又は可能にし得る。中間工程はまた、組織が使用に必要とされるまで中間期の貯蔵を可能にすることであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組織を一定期間(例えば、24時間)室温又は湿潤氷温に解凍し、後に体温に加温してもよい。いくつかの実施形態では、組織は、一定期間、体温に加温し、次いで使用前の一定期間、室温又は湿潤氷温に冷却され得る。
【0015】
本明細書に記載の任意の特徴又は特徴の組み合わせは、任意のこのような組み合わせに含まれる特徴が、文脈、本明細書、及び当業者の知識から明らかになるように、相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。本発明のさらなる利点及び態様は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲において明らかである。
【0016】
用語
特に説明しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示された発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他を意味しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「又は」という単語は、文脈上明らかに他を意味しない限り、「及び」を含むことを意図している。「含む」という用語は、提示された定義要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を意味する。別の言い方をすれば、用語「含む」は、「主として含むが、必ずしも単独ではない」を意味する。さらに、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの単語「含む(comprising)」の変形は、対応して同じ意味を有する。1つの点では、本明細書に記載される技術は、本発明に必須であるとして、本明細書に記載される組成物、方法、及びこれらのそれぞれの構成要素に関連するが、必須であるか否かにかかわらず(「含む」)、不特定の要素を含めることができる。
【0017】
本明細書に開示されるすべての実施形態は、文脈上明らかに他を指示しない限り、他の実施形態と組み合わせることができる。
【0018】
本開示の実施形態の実施及び/又は試験に適切な方法及び材料を以下に記載する。このような方法及び材料は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されるものと類似又は同等の他の方法及び材料を使用することができる。例えば、本開示が関係する技術分野で周知の従来方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001;Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(and Supplements to 2000);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,4th ed.,Wiley&Sons,1999;Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990;and Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999,Gene Expression Technology(Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991.Academic Press,San Diego,Calif.),’’Guide to Protein Purification’’ in Methods in Enzymology(M.P.Deutshcer,ed.,(1990)Academic Press,Inc.);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,Calif.),Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,2nd Ed.(R.I.Freshney.1987.Liss,Inc.New York,N.Y.),Gene Transfer and Expression Protocols,pp.109-128,ed.E.J.Murray,The Humana Press Inc.,Clifton,N.J.),and the Ambion 1998 Catalog(Ambion,Austin,Tex.),を含む様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されており、これらの開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先する。
【0020】
本明細書に記載されたものと類似又は同等の方法及び材料を使用して、開示された技術を実施又は試験することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。材料、方法、及び例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、特定用語の以下の説明が提供される。
【0021】
「前駆細胞」という用語は、分化によって生じ得る細胞と比較して、より原始的な(例えば、完全に分化した細胞よりも発生の経路又は進行に沿った初期段階にある)細胞表現型を有する細胞を指す。多くの場合、前駆細胞は、有意な又は非常に高い増殖能も有する。前駆細胞は、発生経路ならびに細胞が発生及び分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞型又は単一の分化細胞型を生じ得る。
【0022】
本明細書で使用される「幹細胞」という用語は、増殖することができる未分化細胞であって、分化した又は分化可能な娘細胞を順に生じ得る多数の母細胞を生成する能力を有するより多くの前駆細胞を生じる未分化細胞を指す。娘細胞自体は、増殖し、続いて1種以上の成熟細胞型に分化する子孫を産生するように誘導され得るが、親の発生能を有する1種以上の細胞も保持する。「幹細胞」という用語は、特定の状況下で、より特殊化した又は分化した表現型に分化する能力又は潜在力を有する前駆細胞サブセットを指し、ある状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する。一実施形態では、幹細胞という用語は、一般に、その子孫(子孫)が、胚細胞及び胚組織の漸進的な多様化で生じるように、分化によって、例えば完全に個々の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向で特殊化する天然に存在する母細胞を指す。細胞の分化は、典型的には多くの細胞分裂を通して起こる過程である。分化した細胞は、それ自体が多能性細胞に由来する多能性細胞に由来し得るなどである。これらの多能性細胞のそれぞれが幹細胞と考えられ得るが、それぞれが生じ得る細胞型の範囲はかなり変化し得る。一部の分化細胞は、より大きな発生能を有する細胞を生じる能力も有する。このような能力は、生来のものであってもよく、又は様々な因子による処置の際に人工的に誘導されてもよい。多くの生物学的事例において、幹細胞はまた、2つ以上の異なる細胞型の子孫を産生することができるため、「多能性」であるが、これは、「幹細胞性」には必要ではない。自己複製は、幹細胞定義の他の古典的部分であり、この文献で使用されるように必須である。理論的には、自己複製は、2つの主要な機構のいずれかによって起こり得る。幹細胞は非対称的に分裂し、一方の娘細胞は幹細胞の状態を保持し、他方の娘細胞は何らかの異なる他の特異的な機能及び表現型を発現する。あるいは、集団中の一部の幹細胞は、対称的に2つの幹細胞に分裂することができ、したがって、集団中の一部の幹細胞を全体として維持する一方、集団中の他の細胞は、分化した子孫のみを生じる。
【0023】
「胚性幹細胞」という用語は、胚性胚盤胞(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,843,780号、第6,200,806号を参照)の内部細胞塊の多能性幹細胞を指すために使用される。このような細胞は、体細胞核移植(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,945,577号、第5,994,619号、第6,235,970号を参照)に由来する胚盤胞の内部細胞塊から同様に得ることができる。胚性幹細胞の際立った特徴によって、胚性幹細胞の表現型が定義される。したがって、細胞は、その細胞が他の細胞と識別され得るような胚性幹細胞の1つ以上の固有の特徴を有する場合、胚性幹細胞の表現型を有する。胚性幹細胞の特徴を識別する例としては、遺伝子発現プロファイル、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件に対する応答性などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「成体幹細胞」又は「ASC」という用語は、胎児、若年及び成体の組織を含む非胚組織に由来する任意の多能性幹細胞を指すために使用される。幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋及び心筋を含む多種多様な成体組織から単離されている。これらの幹細胞の各々は、遺伝子発現、因子応答性、及び培養中の形態に基づいて特徴付けることができる。上記のように、幹細胞は、実質的にあらゆる組織に存在することが見出されている。したがって、本明細書に記載される技術によって、幹細胞集団が実質的に任意の動物組織から単離され得ることが理解される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「iPS細胞」又は「人工多能性幹細胞」という用語は、分化した体細胞(非多能性細胞)から人工的に誘導された(例えば、完全又は部分的な反転によって誘導される)多能性細胞を指す。多能性細胞は、全3つの発生胚葉の細胞に分化することができる。
【0026】
別の細胞又は組織に「由来する」細胞に適用される「由来する」という用語は、細胞が言及される組織から単離されたか、又は参照組織もしくは細胞型から分化したことを意味する。したがって、特定の個体組織に「由来する」細胞は、その個体の組織から単離されたか、又は分化した。個体は、所与の条件を有する個体を含むことができる。人工多能性幹細胞は、個体、例えば産後のヒト個体、しばしば成体の体細胞組織に由来する。同様に、胚性幹細胞は胚に由来する。iPS細胞に由来する細胞とは、iPS細胞から分化した細胞を指す。あるいは、細胞は、分化転換又は直接的初期化と呼ばれるプロセスによって、1つの細胞型から異なる細胞型に変換され得る。あるいは、iPS細胞に関して、細胞(例えば、iPS細胞)は、当該分野で脱分化又は初期化と呼ばれるプロセスによって、分化細胞に由来し得る。
【0027】
本明細書で使用される「多能性」という用語は、生殖系列細胞を除く体内の任意の細胞型を生じ得る細胞を指す。本明細書で使用される「多能性」又は「多能性状態」という用語は、内胚葉(腸組織)、中胚葉(血液、筋肉、及び血管を含む)及び外胚葉(皮膚及び神経など)の全3つの胚性胚葉に分化する能力を有する細胞を指し、典型的には、長期間、例えば、1年超又は30継代超にわたってインビトロで分裂する潜在能を有する。多能性は、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現によっても証明されるが、多能性についての好ましい試験は、例えば、ヌードマウス奇形腫形成アッセイを使用して検出されるような、全3つの胚葉の細胞に分化する能力の実証である。iPS細胞は多能性細胞である。多能性細胞は、特定の機能を有する細胞を生じることに拘束される多能性細胞へとさらに分化する。例えば、多能性心血管幹細胞は、心筋細胞を含む心臓の細胞、ならびに心臓の血管系に関与する他の細胞を生じる。本明細書に開示される筋細胞又は心筋細胞へのインビトロ分化に有用な細胞には、例えば、iPS細胞ならびに多能性心血管幹細胞が含まれる。本明細書に開示される組成物及び方法のための筋細胞又は心筋細胞を生成するためのiPSC又は他の幹細胞を使用する主な利点は、多数のかかる細胞を調製し、例えば特定のヒト患者又は対象から細胞を増殖させる能力である。これは、成体心臓細胞の単離及び使用に依存する方法、組成物とは対照的である。
【0028】
本明細書で言及される「分化」という用語は、細胞が発生経路をさらに下方移動し、より特殊化され最終分化した細胞になりやすい細胞に関連することが知られているマーカー及び表現型特性を発現し始めるプロセスを指す。細胞が、あまり拘束されていない細胞から、次第に特定の細胞型に拘束される細胞、最終的には最終分化した細胞に進行する経路は、進行性分化又は進行性拘束と呼ばれる。より特殊化している(例えば、進行性分化の経路に沿って進行し始めている)が、まだ最終分化していない細胞は、部分分化と称される。分化は、細胞がより特殊化された表現型をとる、例えば、他の細胞型とは異なる1つ以上の特徴又は機能を獲得する発達過程である。いくつかの場合、分化した表現型は、いくつかの発生経路における成熟終点にある細胞表現型(いわゆる最終分化した細胞)を指す。すべてではないが多くの組織において、分化の過程は、細胞周期から外れることと連動している。これらの場合、最終分化した細胞は、増殖する能力を失うか又は非常に制限する。しかしながら、本明細書の文脈において、「分化」又は「分化した」という用語は、発生における一時点よりもそれらの運命又は機能においてより特殊化されている細胞を指す。例えば、本出願の文脈において、分化細胞は、心血管前駆細胞から分化した心室心筋細胞を含み、このような心血管前駆細胞は、場合によっては、ES細胞の分化から、又は代替では人工多能性幹(iPS)細胞の分化から、又はいくつかの実施形態ではヒトES細胞株から誘導され得る。したがって、このような心室心筋細胞は、心血管前駆細胞の表現型を有していたときよりも特殊化されているが、iPS細胞が由来する成熟細胞として存在していたとき(例えば、iPS細胞を形成するための細胞の初期化前)と比較して、特殊化されていない場合もある。
【0029】
前駆細胞と比較して「分化した」細胞は、その前駆細胞と比較して1つ以上の表現型の相違を有し、より成熟した又は特殊化した細胞型に特徴的である。表現型の相違には、発現するマーカーの有無だけでなく、マーカー量の相違及びマーカー一式の共発現パターンの相違を含む、遺伝子発現及び生物学的活性の形態学的相違及び相違が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「増殖する」及び「増殖」とは、細胞分裂による集団中の細胞数の増加(増殖)を指す。細胞増殖は、一般に、増殖因子及び他のマイトジェンを含む、環境に応答した複数のシグナル伝達経路の協調活性化に起因すると理解されている。細胞増殖は、細胞内又は細胞外のシグナル作用からの放出、及び細胞増殖を遮断する機構又は細胞増殖に悪影響を及ぼす機構によっても促進され得る。
【0031】
「組織」という用語は、特定の特別な機能を一緒に果たす同様に特殊化された細胞の群又は層を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「心血管の状態、疾患又は障害」という語句は、不十分な、望ましくない又は異常な心機能を特徴とするすべての障害、例えば、不整脈、虚血性心疾患、高血圧性心疾患及び肺高血圧性心疾患、弁膜症、先天性心疾患、ならびに対象、特にヒト対象においてうっ血性心不全を引き起こす任意の状態を含むことを意図している。不十分又は異常な心機能は、疾患、傷害及び/又は加齢の結果であり得る。背景として、心筋損傷に対する応答は、一部の細胞が死ぬ一方で、他の細胞はまだ死んでいないが機能不全である冬眠状態に入る明確に定義された経路をたどる。これに続いて、炎症細胞の浸潤、瘢痕の一部としてのコラーゲンの沈着が起こり、これらはすべて、新しい血管の内殖及びある程度の継続的な細胞死と並行して起こる。本明細書で使用される場合、「虚血」という用語は、血液の流入の減少による任意の局所組織虚血を指す。「心筋虚血」という用語は、冠動脈アテローム性動脈硬化症及び/又は心筋への不十分な酸素供給によって引き起こされる循環障害を指す。例えば、急性心筋梗塞は、心筋組織に対する不可逆的な虚血侵襲を表す。この侵襲は、冠循環における閉塞性(例えば、血栓性又は塞栓性)事象をもたらし、心筋代謝要求が心筋組織への酸素供給を超える環境を作り出す。
【0033】
「疾患」又は「障害」という用語は、身体又は一部の器官の状態の任意の変化を指し、それらの機能の実行を中断もしくは妨害し、及び/又は罹患者もしくは人との接触者に不快感、機能不全、窮迫もしくは死などの症状を引き起こす。疾患又は障害は、ジステンパー、病気(ailing)、病気(ailment)、疾病、障害、病気(sickness)、病気(illness)、愁訴、不快又は苦痛にも関連し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「処置する」又は「処置」又は「処置する」という用語は、治療的処置及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)手段の両方を指し、目的は、疾患の発症を予防又は遅延させること、例えば、心障害の発症を遅延させること、又は心血管の状態、疾患もしくは障害、例えば、不十分な又は望ましくない心機能を特徴とする任意の障害の少なくとも1つの有害作用もしくは症状を軽減することである。心障害の有害作用又は症状は当技術分野で周知であり、呼吸困難、胸痛、動悸、めまい、失神、浮腫、チアノーゼ、蒼白、疲労及び死亡が含まれるが、これらに限定されない。この用語が本明細書で定義されるように、1つ以上の症状又は臨床マーカーが減少する場合、処置は一般に「有効」である。あるいは、疾患の進行が軽減又は停止する場合、処置は「有効」である。すなわち、「処置」には、症状の改善又は疾患マーカーの減少だけでなく、処置なしで予想される症状の停止又は進行遅延又は悪化も含まれる。有益な又は所望の臨床結果には、検出可能か検出不能かに関わらず、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化(例えば、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的か全体的かに関わらず)が含まれるが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して、生存の延長も意味し得る。処置を必要とする者には、心臓状態と既に診断されている者、ならびに遺伝的感受性又は体重、食事及び健康などの他の因子に起因して心臓状態を発症する可能性が高い者が含まれる。
【0035】
「足場」という用語は、細胞及び/又は細胞材料のための支持構造を指す。支持構造は繊維及び細孔を特徴とし得るが、足場はこのような組成物に限定されない。例えば、足場は、フィルム、スポンジ、又は溶液の形態であってもよい。足場は、繊維、ペプチド(例えば、組換えペプチド)、脂質、炭水化物などの様々な材料から構築され得る。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、改変された組織組成物の凍結保存及び再構成のためのシステム、方法、及び組成物を特徴とする。改変された組織組成物(例えば、細胞の増殖及び/又は維持及び/又は分化などを支持する3次元組織組成物)は、当業者に周知であり、本明細書に開示される改変された組織組成物を含むがこれらに限定されない。
【0037】
例えば、改変された組織組成物は、足場及び細胞外基質(ECM)材料を含み得る。いくつかの実施形態では、ECMは無細胞であり得る、例えば、細胞が存在しない。いくつかの実施形態では、ECM材料は、死細胞を含み、例えば1つの生細胞を含む。いくつかの実施形態では、ECM材料は、生細胞の副産物(現時点で生細胞、死細胞、これらの組み合わせなど)であり、例えば、限定されるものではないが、線維芽細胞又は任意の他のECM生成細胞型又はこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、組織組成物は、足場、ECM材料、及びECM生成細胞、非ECM生成細胞、又はこれらの組み合わせである細胞の集団を含む。特定の実施形態では、組織組成物は、足場、ECM材料、及び播種細胞の集団(例えば、目的の細胞型)を含む。特定の実施形態では、組織組成物は、足場、ECM材料、ECM生成細胞、非ECM生成細胞、又はこれらの組み合わせである細胞の集団、及び播種細胞(例えば、目的の細胞型)の集団を含む。組織組成物の前述例は、増殖因子、薬物、ECMへの細胞の接着を増強するための組成物などの追加因子を含み得る。
【0038】
足場
本明細書の改変された組織組成物に使用される足場は、様々な種類の材料、様々なサイズの材料、様々な立体配置などから構築され得る。特定の実施形態では、足場は複数の繊維を含み、繊維は一緒に配置され(例えば、織られ)、その間に配置された複数の細孔を生じる。足場は、繊維の立体配置に限定されない。特定の実施形態では、足場は、フィルム、スポンジ、ゲル、溶液などを含む。代替的な足場の非限定的な例は、ポリマー、タンパク質、組換えペプチド、例えばヒトI型コラーゲンから構築されたスポンジ又はフィルムである。スポンジ及びフィルムを以下にさらに記載する。
【0039】
足場が繊維の立体配置である実施形態では、足場の繊維は直径が概して均一であってもよく、又は繊維は様々な直径であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、足場は、第1の繊維型の繊維及び第2の繊維型の繊維を含み、第1の繊維型は、第2の繊維型の直径とは異なる直径を有する。足場は、第1の繊維型及び第2の繊維型より多くを含んでもよく、例えば、足場は、第1の繊維型及び第2の繊維型及び第3の繊維型、又はさらに第4の繊維型、又はさらに第5の繊維型などを含んでもよいことに留意されたい。2種以上の繊維型を有する足場は、限定されるものではないが、固定パターンの繊維型配置を有する印刷又は紡糸された繊維又は編物又は織布、ランダムな繊維型配置を有する印刷又は紡糸された繊維又は編物又は織布などを含む様々な立体配置で配置することができる。いくつかの実施形態では、小径繊維は、1つ以上の大径繊維から延びる。いくつかの実施形態では、繊維は、細胞がその間に位置するための空間が存在するように、緩く印刷されるか、紡糸されるか、編まれるか、又は織られる。繊維は、特定の細胞整列を可能にする立体配置及び/又は配向で配置されてもよい。
【0040】
前述のように、足場の繊維は、織り又は編みの立体配置で配置されてもよい。織物又は編物の立体配置は、平織、綾織り、交互綾織り、編み織り、平畳織り、綾畳織り、逆畳織り、六角形の透かしステッチ織り、縦編み、又はこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。構築目的のために、足場は、織られ、編まれ、紡糸され、押し出され、又は印刷されてもよい。いくつかの実施形態では、足場はリング様の立体配置を有する。
【0041】
繊維径は様々な大きさであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、繊維の少なくとも一部は、5μm~100μm、10μm~500μm、100μm~1mm(例えば、繊維束)などの直径を有する。本発明は、上記の繊維径に限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態では、繊維はすべて単一の材料から構築される。いくつかの実施形態では、繊維の一部は第1の材料から構築され、繊維の一部は第1の材料とは異なる第2の材料から構築される。いくつかの実施形態では、繊維の一部は第1の材料から構築され、繊維の一部は第1の材料とは異なる第2の材料から構築され、繊維の一部は第1及び第2の材料とは異なる第3の材料から構築される。本発明は、3つの異なる材料型に限定されない。足場は、4つの異なる材料、5つ、6つなどから構築されてもよい。いくつかの実施形態では、足場の1種以上の繊維は、2種以上の材料から構築され、例えば、個々の繊維は材料の組み合わせから作製される。
【0043】
足場(例えば、繊維及び/又はペプチドなどの他の構成要素を有する足場)を構築するために使用される材料としては、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシブチラート、ポリ(無水物)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリグラクチン、ポリ(乳酸)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリラート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリグレカプロン-25モノフィラメント、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリビニル、ポリテトラフルオロエチレン、thermanox、ニトロセルロース、コラーゲン、フィブリン、エラスチン、絹、金属、TMC、ポリエステル、ゼラチン、デキストラン、タンパク質、ペプチド、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、第1の材料は、少なくともグリコリド、ラクチド及びトリメチレンカルボナートを含み、第2の材料は、少なくともラクチド及びトリメチレンカルボナートを含む。
【0044】
前述のように、特定の実施形態では、足場はフィルムの形態である。特定の実施形態では、足場は溶液中にある。特定の実施形態では、足場はスポンジである。スポンジの立体配置に関して、いくつかの実施形態では、スポンジは概して均一な直径を有する。特定の実施形態では、スポンジは、不均一な直径を有する。特定の実施形態では、スポンジは、複数のレベル又は層(例えば、下位レベル、上位レベルなど)を有して層状化され、1つの層は第1の均一性を有してもよく、異なる層は第2の均一性を有してもよい。スポンジは、溝又は隆起を特徴とし得る。例えば、1つの層、例えば最上層又は最下層は、隆起又は溝を特徴とし得る。
【0045】
足場は、ペプチド(例えば、組換えペプチド)、炭水化物、脂質などを含むがこれらに限定されない様々な材料から構築されてもよい。特定の実施形態では、足場は、組換えペプチド及び繊維(例えば、吸収性/分解性繊維、非吸収性/分解性繊維、又はこれらの組み合わせ)の両方を含む。フィルム足場又はスポンジ足場又は溶液足場を作製するために使用される組換えペプチドの非限定的な例としては、I型コラーゲンが挙げられる。
【0046】
足場は、生物由来材料、合成由来材料、又は合成由来材料と生物由来材料との組み合わせから構築されてもよい。
【0047】
足場は、溝及び隆起、例えば平行な溝及び隆起、組織化又はパターン化された溝及び隆起、ランダムに組織化された溝及び隆起を特徴とし得る。足場の立体配置は、細胞の増殖又は分化/成熟を増強するのに役立ち得る。足場の立体配置は、特定の方向又は配向に細胞を組織化する、例えば、筋収縮などの特定の目的のために細胞を整列させるのに役立ち得る。
【0048】
足場は、様々な厚さで構築され得る。例えば、いくつかの実施形態では、足場は少なくとも10umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも25umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも40umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも50umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも100umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも250umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも500umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも1mmの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも2mmの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は、30又は40um~820又は850umである。いくつかの実施形態では、足場は50um~500umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は500um~1mmの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は1mm~2mmの厚さである。本発明は、上述の厚さ、例えば、2~3mm、3~4mm、4~5mm、5~6mmなどに限定されない。例えば、厚さは、45μm~1070μm、45~499μm、246~1070μmなどであってもよい。上述の厚さは、改変された組織組成物(例えば、場合により細胞を含むECMを有する足場など)に適用され得る。例えば、特定の実施形態では、改変された組織組成物は、200~1000ミクロンの厚さである。
【0049】
いくつかの実施形態では、組織組成物の少なくとも一部は吸収性である。足場のいくつかの構成要素(又は構成要素のすべて)、例えば繊維、ペプチドなどは、再吸収性、吸収性、又は分解性であり得る。例えば、増殖性ECM生成細胞が足場上及び足場内で複製するにつれて、構成要素の1つ以上が再吸収/吸収/分解/溶解し得る。足場が2つ以上の異なる繊維型を含む例において、特定の実施形態では、第1の繊維型の繊維は再吸収性/吸収性/分解性であってもよく、第2の繊維型の繊維は再吸収性/吸収性/分解性でなくてもよい。特定の実施形態では、足場構成要素のすべては、ある程度の能力で再吸収性/吸収性/分解性であり、例えば、第1の繊維型は、第2の繊維型とは異なる速度で再吸収性/吸収性/分解性であり得る。足場は、特定の時間に足場の一部が分解する分解プロファイル(時限、段階的)を特徴とし得る。任意の適切な分解性材料又はこれらの組み合わせは、所望の分解プロファイルを達成することができる。以下の例では、分解プロファイル(足場が再吸収/吸収/分解する場合)は、組織組成物の外科的移植の時点から測定される。いくつかの実施形態では、足場の一部又は全部が、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、1週間以内、8日以内、9日以内、10日以内、11日以内、12日以内、13日以内、2週間以内、3週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内、6ヶ月以内、1年以内、2年以内、3年以内、4年以内、5年以内などに再吸収/吸収/分解する。特定の実施形態では、足場は完全に再吸収/吸収/分解しない(足場は非吸収性である)。
【0050】
足場の機械的特性(例えば、剛性など)は、足場の構成要素(例えば、繊維及び/又はペプチドなどの他の材料)が再吸収/吸収/分解するにつれて変化し得る。
【0051】
本発明をいかなる理論又は機構にも限定することを望むものではないが、外科的移植中にそれ自体で著しく湾曲又は折り畳まれない足場は利点を提供し得る、例えば、組織組成物は、それ自体で折り畳まれない場合、外科医が移植するのがより容易であり得ると考えられる。
【0052】
特定の実施形態では、足場は、吸収性/分解性繊維、非吸収性/分解性繊維、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、足場はスポンジ(例えば、組換えペプチド、例えば、ヒトI型コラーゲンで構築される)を含む。いくつかの実施形態では、足場はフィルム(例えば、組換えペプチド、例えば、ヒトI型コラーゲンで構築される)を含む。いくつかの実施形態では、足場は溶液中にある。特定の実施形態では、足場は、組換えペプチド(フィルム又はスポンジを形成する)及び繊維(例えば、吸収性/分解性繊維、非吸収性/分解性繊維、又はこれらの組み合わせ)の両方を含む。特定の実施形態では、足場は、生物由来構成要素(例えば、細胞によって自然に産生される)、合成由来構成要素、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、足場は、細胞及び/又はECMの接着を増強する追加の特徴又は特性を含む。例えば、特定の実施形態では、足場は、細胞及び/又はECMの接着を可能にするように適合した親水性を有する。特定の実施形態では、足場は、細胞及び/又はECMの接着を可能にするように適合した表面粗さを有する。細胞接着を増強し得る組成物又は特徴の非限定的な例は、特定のテクスチャ又は粗さ、特定の親水性化合物又は特徴、特定のリガンド、RGDコーティング材料などを含み得る。
【0053】
足場は異方性であってもよく、例えば、足場の機械的特性は一方向で他の方向と異なっていてもよい。又は、足場は等方性であってもよい。足場は、強度及び柔軟性に関連する様々な機械的特性を有する。
【0054】
一般に、基材特性(例えば、足場のみ)と組織組成物の特性(線維芽細胞及びECMを含む)との間に相違がある。例えば、足場が分解性である(例えば、培養中に分解する繊維又はペプチド)構成要素(例えば、繊維及び/又はペプチド)を特徴とする場合、足場は、組織組成物として最終的に使用されるもの(例えば、インビボ使用のため)よりも剛性であり得る。いくつかの実施形態では、足場はGPa範囲の材料で選択され得るが、組織組成物が移植される場合、足場はMPa範囲であり、同様に、足場はMPa範囲で選択され得るが、組織組成物が移植される場合、足場はkPa範囲であり得る。いくつかの実施形態では、移植材料(組織組成物の特性)は、100Mpa未満であり得る。
【0055】
弾性率(剛性)は、20kPa~100GPaであってもよい。足場は、20N/cm~200N/cm、50N/cm~100N/cm、75N/cm~90N/cmなどの破裂強度を有し得る。足場は、10N/5N~50N/40Nの平行/垂直引裂抵抗を有し得る。足場は、30/31N~350N/36Nの平行/垂直引裂抵抗を有し得る。いくつかの実施形態では、足場は、0.1N/mm~50N/mmの縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1N/mm~30N/mmの縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、0.5N/mm~5N/mmの横剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、横剛性とは異なる縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、横剛性と同じ縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1kPa~100Mpaの縦最大力を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1kPa~100Mpaの横最大力を有する。いくつかの実施形態では、足場は1~3000kPaの強度を有する。いくつかの実施形態では、足場は3000~4600kPaの強度を有する。いくつかの実施形態では、足場は4600kPaを超える強度を有する。足場は、異なる剛性を有する繊維、例えば0.1~20N/mmの剛性を有する繊維及び10Mpa超の強度を有する繊維を特徴とし得る。前述のように、細胞の培養前の足場の剛性は、最終生成物、例えば組織組成物とは異なり得る。いくつかの実施形態では、組織組成物強度(例えば、最終製品)は、1kPa~50Mpaであり得るが、本発明はこれらの値に限定されない。
【0056】
機械的特性(例えば、剛性など)は、製造、細胞増殖、細胞分化、移植などの過程で変化し得る。本発明は、本明細書に記載の機械的特性パラメータに限定されない。
【0057】
特定の実施形態では、改変された組織組成物は、電気シグナル伝達を可能にする。
【0058】
細孔の密度、例えば単位面積当たりの細孔の数(例えば、足場1mm2当たりの細孔の数)は、細胞が足場にわたって効率的に増殖するのを助け得る。いくつかの実施形態では、細孔は密集しており、及び/又は細孔はわずかに重なり合う細孔の上に配置されているが、本発明は、密集する細孔又はわずかに重なり合う細孔の上方に配置される細孔に限定されない。さらに、細孔の密度は、足場に使用される材料の種類、足場の厚さ、足場の織りの種類などに依存し得る。いくつかの実施形態では、足場は、1cm2当たり1~1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1cm2当たり10~1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1cm2当たり100~1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1mm2当たり100~1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1mm2当たり100~500個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は、1mm2当たり200~1,000個の細孔を有する。細孔密度も経時的に変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、足場の構成要素(例えば、繊維及び/又はペプチドなど)が分解し(例えば、生分解、再吸収、吸収など)、足場に元々存在していたものとは異なる細孔密度をもたらし得る。いくつかの実施形態では、細孔は足場全体にわたって均一に配置される。いくつかの実施形態では、細孔は足場全体にわたってランダムに配置される。いくつかの実施形態では、細孔は、足場全体にわたって一定のパターンで配置される。細孔は、様々な形状(例えば、断面形状)、例えば、長方形、角丸長方形、又は六角形、円形、楕円形、8字形などを含むがこれらに限定されない他の幾何学的形状又は不規則な形状又は形状の組み合わせであってもよい。したがって、細孔は、高さ、幅、長さ、直径、面積などを有すると説明することができる。いくつかの実施形態では、足場の細孔(例えば、1つ以上の細孔)は、0.1μm2~100μm2、1μm2~1000μm2、100μm2~5000μm2、0.1μm2~0.01mm2、0.1μm2~0.1mm2、0.1μm2~1mm2、0.1μm2~2mm2、0.1μm2~10mm2などの面積を有する。いくつかの実施形態では、平均細孔サイズ(average pores size)は約104,540μm2である。いくつかの実施形態では、平均細孔サイズは、5,000μm2から 1,000,000μm2超である。いくつかの実施形態では、細孔は、50μm~90μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、50μm~200μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、200μm~400μm、200μm~500μmなどの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、500μm~1000μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、500μm~1500μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、800μm~1200μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、800μm~1000μmの直径を有する。特定の実施形態では、細孔サイズ(pore size)は500μm~1200μmである。
【0059】
いくつかの実施形態では、足場は、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも15週間、少なくとも20週間、少なくとも30週間、少なくとも40週間などの間、その機械的強度の少なくとも50%を保持する。いくつかの実施形態では、足場は3週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後4週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後6週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後8週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後10週間以上で分解する。足場は、二段階再吸収を可能にするために、2つの異なる繊維を特徴とすることができ、一方は(互いと比較して)速い再吸収であり、一方は遅い再吸収である。
【0060】
細胞外基質材料
前述のように、本発明の改変された組織組成物は、細胞外基質(ECM)材料を含む。ECMは、ECM生成細胞によって産生され得るが、本発明は、ECM生成細胞によって産生されるECMに限定されない。特定の実施形態では、ECMは合成由来材料のみを含む。特定の実施形態では、ECMは、生物由来材料(例えば、ECM生成細胞によって産生されるECM)を含む。特定の実施形態では、ECMは、生物由来材料と合成由来材料との組み合わせを含む。一例として、合成的に産生されたコラーゲン及びフィブロネクチン(等、例えば、本明細書で説明される材料)などの材料を組み合わせて、ECM生成細胞を必要とせずにECMを形成することができる。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の0~10%(面積又は体積による)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の10~25%(面積又は体積による)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の25~40%(面積又は体積による)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の40~60%(面積又は体積による)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の60~75%(面積又は体積による)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の75~90%(面積又は体積による)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の50~95%(面積又は体積による)が合成由来である。
【0061】
ECMの構成要素としては、コラーゲン(例えば、I型コラーゲン、III型コラーゲン)、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(例えば、Veriscan、Decorin、Betaglycan、Syndecan)などが挙げられ得るが、これらに限定されない(Naughton,2002,Ann N Y Acad Sci,961:372-85を参照)。いくつかの実施形態では、外因性ゼラチンが足場上に沈着する。いくつかの実施形態では、外因性コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンが添加される(又は他の適切なECM構成要素)。
【0062】
本発明をいかなる理論又は機構に限定することを望むものではないが、一定量のECMが、改変された組織組成物が有効であるために有益であると考えられる(例えば、種細胞の受容、種細胞の分化、外科的移植などに有効である)。
【0063】
特定の実施形態では、ECMは、足場内及び/又は足場上(例えば、足場の細孔及び構成要素の上及び/又は中)にECM生成細胞を播種することによって産生され、ECM生成細胞はその後増殖し、足場内及び/又は足場上及び足場を通って拡大し、ECMを産生する。ECM生成細胞は、足場の構成要素(例えば、繊維、ペプチドなど)に沿って、さらに細孔内を移動し得る(例えば、生成されるECMと共に)。ECM生成細胞(及び/又は本明細書における他の細胞)の播種工程は、限定はしないが、遠心分離又は他の適切な力(例えば、電気力)、又はこれらの組み合わせなど、足場上への細胞の接着を増強するための様々な工程を利用し得る。特定の実施形態では、ECMは、足場上にECMを適用する前にECM生成細胞によって産生される。一例として、ECM生成細胞によるECMの産生後、ECM生成細胞と共にECM材料を足場に適用することができる。あるいは、特定の実施形態では、ECM生成細胞によって産生されるECM材料を無細胞にし、続いて足場に適用することができる。特定の実施形態では、細胞の集団は、ECMの適用前に足場内及び/又は足場上に播種される。
【0064】
ECM生成細胞は生細胞又は死細胞(又は生細胞と死細胞の組み合わせ)であり得ることに留意されたい。例えば、組織組成物は、足場、ECM及び生ECM生成細胞(例えば、線維芽細胞もしくは他のECM生成細胞型又はこれらの組み合わせ)を含み得る。特定の実施形態では、組織組成物は、足場、ECM、及び死んだECM生成細胞を含む。特定の実施形態では、組織組成物は、足場、ECM、ならびに生きているECM生成細胞の集団及び死んだECM生成細胞の集団を含む。
【0065】
ECM生成細胞は、線維芽細胞、例えばヒト真皮線維芽細胞であり得る。しかしながら、本発明は線維芽細胞に限定されない。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、グリア細胞、神経幹細胞、心筋細胞、筋線維芽細胞など、又はこれらの組み合わせを含む。本明細書で論じられるように、特定の実施形態では、ECM生成細胞は、特定のECM及び/もしくは増殖因子を産生するように遺伝子改変され得る、ならびに/又は増殖するように改変され得るなどである。
【0066】
ECM生成細胞は、適切な供給源又は宿主に由来し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ECM生成細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は霊長類細胞である。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、マウス細胞、ラット細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、イヌ、ネコ、又は任意の他の宿主由来細胞である。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、汎用細胞(非免疫原性)になるように遺伝子改変される。
【0067】
前述のように、ECM生成細胞は線維芽細胞であり得る。特定の実施形態では、線維芽細胞は、iPSC由来線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は皮膚由来線維芽細胞、例えば真皮新生児線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は血液由来線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、心臓由来、筋由来、肝臓由来、膵臓由来、脂肪組織由来、中枢神経系(CNS)由来、又は肺由来の線維芽細胞である。
【0068】
特定の実施形態では、ECM生成細胞は野生型細胞である。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、遺伝子改変されており、例えば、目的の1つ以上の遺伝子を発現するように改変される。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、野生型細胞と遺伝子改変細胞との組み合わせである。
【0069】
ECM生成細胞は、足場の最上部に層を形成し得る。(特定の実施形態では、足場上/足場内に播種されたECM細胞は既にECM中にある。特定の実施形態では、ECM中の細胞は生存及び/又は死亡している)。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、足場内及び/又は足場の最上部に配置される。ECM生成細胞は、足場内又は足場の最上部の凝集体中に存在し得るか、足場上に1つ以上の層を形成し得るか、足場内又は足場の最上部の代替的な配置を採用し得るか、又はこれらの組み合わせであり得る。本発明の組織組成物は、細胞の層、例えば3~500の細胞層を有し得る。細胞層は、ECM生成細胞、非ECM生成細胞、又はこれらの組み合わせで構成され得る。
【0070】
ECM生成細胞が増殖し、足場内及び足場上でECMを生成すると、ECM生成細胞及び/又はECMは足場の細孔の少なくとも一部を充填する。次いで、ECM生成細胞及び/又はECMは、足場のすべての細孔を充填し得る。いくつかの実施形態では、足場の細孔の一部又は全部の領域を充填する無細胞ECM材料が使用されることに留意されたい。
【0071】
組換えペプチドから作製された足場を含む組織組成物に関して、特定の実施形態では、組換えペプチド足場は300~500μmの厚さである。特定の実施形態では、心筋細胞は後に20~50μmの厚さである。特定の実施形態では、細孔は直径50~90μmである。本発明は、上記の寸法に限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態では、細孔の面積の100%がECM生成細胞及び/又はECMによって充填される。いくつかの実施形態では、細孔の面積の少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも50%などがECM生成細胞及び/又はECMによって充填される。
【0073】
いくつかの実施形態では、細孔の面積の少なくとも50%が、ECM生成細胞の播種の2~10日以内、ECM生成細胞の播種の3~10日以内、ECM生成細胞の播種の4~10日以内、ECM生成細胞の播種の5~10日以内、ECM生成細胞の播種の8~10日以内、ECM生成細胞の播種の5~15日以内、ECM生成細胞の播種の8~15日以内、ECM生成細胞の播種の10~15日以内、ECM生成細胞の播種の12~15日以内、ECM生成細胞の播種の5~25日以内、ECM生成細胞の播種の10~25日以内、ECM生成細胞の播種の15~25日以内、ECM生成細胞の播種の20~25日以内などに充填される(ECM生成細胞及び/又はECMによって充填される)。
【0074】
細孔が充填するのにかかる時間は、特定の因子、例えば、細胞がどのように播種されるか、例えば、組織組成物が播種プロセス中に揺動されるか否か、揺動速度、遠心分離が播種プロセス中に使用されたか否かなどに依存し得る。一例として、揺動を用いて、特定の実施形態では、細孔の面積の少なくとも50%がECM生成細胞の播種の5~10日以内に充填される(ECM生成細胞及び/又はECMによって充填される)一方、揺動を用いない特定の実施形態では、細孔の面積の少なくとも50%がECM生成細胞の播種の14~17日以内に充填される(ECM生成細胞及び/又はECMによって充填される)。前述の例は、決して本発明を限定することを意味するものではなく、揺動が細孔の面積の少なくとも50%を充填するのに必要な時間を加速し得ることを説明するための一例として役立つにすぎない。
【0075】
ECM生成細胞が増殖し、足場内でECMを生成すると、細胞は形態学的変化を受ける。例えば、ヒト新生児真皮線維芽細胞(HDF)を播種した後、特定の日数後、HDFのより長い紡錘形の形態が存在する。後に、紡錘形の形態を示さず、代わりに小石状の形態を示す細胞のより均一な集団が存在する。いくつかの実施形態では、長い紡錘形の形態は、17日未満、例えば、16日間、15日間、14日間、13日間、12日間、11日間、10日間、9日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、4日間未満、16日間以下、15日間以下、14日間以下、13日間以下、12日間以下、11日間以下、10日間以下、9日間以下、8日間以下、7日間以下、6日間以下、5日間以下などの時間で形成され得る。特定の実施形態では、小石状の形態は、28日未満、例えば27日間、26日間、25日間、24日間、23日間、22日間、21日間、20日間、19日間、18日間、17日間、16日間、15日間、14日間、13日間、12日間、11日間、10日間、9日間、8日間、8日間未満、26日間以下、25日間以下、24日間以下、23日間以下、22日間以下、21日間以下、20日間以下、19日間以下、18日間以下、17日間以下、16日間以下、15日間以下、14日間以下、13日間以下、12日間以下、11日間以下、10日間以下、9日間以下、8日間以下などの時間で形成され得る。形態変化が起こるのにかかる時間は、製造方法に依存し得る。
【0076】
改変された組織組成物は、5×105細胞/cm2~5×106細胞/cm2の最終密度のECM生成細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、改変された組織組成物は、1×105細胞/cm2~1×107細胞/cm2の最終密度のECM生成細胞を含む。いくつかの実施形態では、改変された組織組成物は、1×104細胞/cm2~1×108細胞/cm2の最終密度のECM生成細胞を含む。本発明は、ECM生成細胞の上述の最終密度に限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態では、追加の因子がECM、足場、及び/又はECM産生細胞に添加される。ECMの産生を増強するために、又は細胞増殖、維持及び/もしくは分化を増強するため、細胞及び/もしくはECMの接着を増強するためなどの他の目的のために、追加の因子を添加してもよい。非限定的な例として、ECM沈着の駆動に役立つアスコルビン酸を添加してもよい。いくつかの実施形態では、追加の因子は、ECM生成細胞の接着を増強するため、及び/又は播種細胞の接着を増強するためのものである。
【0078】
いくつかの実施形態では、外因性増殖因子は、ECM及び/又はECM生成細胞及び/又は足場に沿って又は組み合わせて添加される。増殖因子(例えば、線維芽細胞によって分泌されるもの、外因的に添加されるもの)は、増殖(線維芽細胞自体、播種細胞の)、播種効率(線維芽細胞自体、播種細胞)、足場への線維芽細胞の組込み、ECMの生成などを改善し得る。増殖因子としては、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF))、肝細胞増殖因子(HGF)、アンジオポエチン-1、基質沈着因子(例えば、トランスフォーミング増殖因子(TGF-b、TGF-b 1)、トランスフォーミング増殖因子(TBG-b 3))、分裂促進因子(例えば、血小板由来増殖因子A(PDGF-A)、インスリン様増殖因子1(IGF-1)、エリスロポエチン(EPO)、ヘパリン結合性上皮増殖因子(HBEGF)、トランスフォーミング増殖因子a(TGFa))、血管新生因子(例えば、アンジオゲニン(angiogenein)、アンジオポエチン(angiopoientin)-2)、内皮増殖因子、レプチン、血小板由来増殖因子BB(PDGF-BB)、酸性でシステインに富む分泌タンパク質(SPARC)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、炎症性サイトカイン(例えば、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン1a、インターロイキン1b、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、単球走化性タンパク質1、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、腫瘍壊死因子a(TNFa))が挙げられ得るが、これらに限定されない(Naughton,2002,Ann N Y Acad Sci,961:372-85、Lancaster et al.,2010,Tissue Eng Part A,16(10):3065-73を参照)。他の細胞、例えば治療用細胞からの増殖因子を添加してもよい。例えば、心筋細胞は、インビトロシグナル伝達、成熟、ミオカイン活性及びインビボ筋形成などを刺激するための特定の因子を分泌し、増殖因子はまた、外因的に又は別の細胞型の播種を介して添加され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、足場は、組織組成物の1~70体積%を構成する。いくつかの実施形態では、足場は、組織組成物の1~80体積%を構成する。いくつかの実施形態では、足場は、組織組成物の5~50体積%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、組織組成物の少なくとも20体積%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、組織組成物の20~50体積%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、組織組成物の50~75体積%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、組織組成物の50~99体積%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、組織組成物の30~99体積%を構成する。ECM及びECM生成細胞(対足場)で構成される組織組成物の量は、様々な因子、例えば、培養開始時に播種されたECM生成細胞の量、足場材料の予測される分解速度、種細胞集団の量などに依存し得る。例えば、種細胞で構成される組織組成物の量は、組織組成物の3~60%の範囲であり得る。
【0080】
一例として、足場の質量に対する細胞及びECMの質量を評価するために、特定の足場材料(例えば、二重繊維/低速分解足場、ラクチド足場、ポリグラクチン足場)で構築された特定の組織組成物(ECM及びECM生成細胞を含む)を分析した。最初に足場を秤量し、次いで組織組成物(完全に培養されたHDF足場組成物)を湿潤及び乾燥の両方で秤量した。細胞及びECMと共に培養した二重繊維足場では、湿潤重量は0.058g/cm2であり、乾燥重量は0.028g/cm2であったが、二重繊維足場単独では0.021g/cm2の湿潤重量及び0.016g/cm2の乾燥重量を有した。したがって、ECM及びECM沈着細胞の質量は0.037g/cm2であった。乾燥重量は0.012g/cm2であった。
【0081】
改変された組織組成物は、一般に平坦であり得る。改変された組織組成物自体が湾曲を有してもよく、又は組織組成物の微視的特徴が凸状又は凹状の構成要素を有してもよい。本発明をいかなる理論又は機構に限定することを望むものではないが、凹状構造が細胞の播種、接着及び組込みに有益であり得ることが可能である。
【0082】
前述のように、特定の実施形態では、ECMは、生物由来(例えば、ECM生成細胞から)、合成由来、又はこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、野生型、遺伝子改変であるか、又はECM生成細胞は、野生型細胞の集団及び遺伝子改変細胞の集団を特徴とする。特定の実施形態では、ECMは無細胞である。特定の実施形態では、ECMは、生きている、死んでいるECM生成細胞を含む、又は生細胞の集団及び死細胞の集団を特徴とする。特定の実施形態では、ECMは、増殖因子、薬物、及び/又はECM産生、細胞接着、足場へのECM接着などを助ける他の組成物を含む。
【0083】
播種細胞
本発明の組織組成物は、播種細胞を含み得る。播種細胞は、任意の適切な細胞型(及び任意の適切な宿主からのもの、又は汎用細胞であるように遺伝子改変されたもの)であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、播種細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、播種細胞は、マウス細胞、ラット細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、イヌ、ネコ、又は任意の他の宿主由来細胞である。種細胞は、血液、心臓組織、骨格筋組織、肝臓組織、膵臓組織、肺組織、骨組織、臍帯組織、内皮組織、中枢神経系組織、胃腸組織、内分泌細胞、傍分泌細胞、酵素分泌細胞、これらの幹細胞、これらの前駆体、原核生物、真核生物もしくは他の酸素放出粒子、又はこれらの組み合わせに関連し得る。播種細胞は、ECM生成細胞と同じドナーに由来し得ることに留意されたい。特定の実施形態では、播種細胞は、ECM生成細胞のドナーとは異なるドナーに由来する。
【0084】
播種細胞は、増殖性、非増殖性、又はこれらの組み合わせであり得る。播種細胞は、幹細胞(例えば、成体幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞)、初代細胞、前駆細胞などであり得る。例えば、播種細胞は、ヒト人工多能性幹細胞由来細胞(hiPSC)、例えばヒト人工多能性幹細胞に由来する心筋細胞(hiPSC-CM)であり得る。種細胞は、最終分化した細胞、例えば、最終分化した心筋細胞、肝細胞、ベータ細胞、内胚葉、平滑筋細胞、唾液細胞などであり得る。
【0085】
播種細胞は、成熟細胞又は未成熟細胞であり得る。例えば、心臓前駆細胞は、MESP 1、GATA 4、ISL1、NKX2.5など、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上のマーカーを発現し得るが、これらに限定されない。新生心筋細胞は、CTNT、MHC、MLC、サルコメアアクチニンなど、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上のマーカーを発現し得るが、これらに限定されない。iPSCは、Oct-4、LIN-23など、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上のマーカーを発現し得るが、これらに限定されない。
【0086】
播種細胞は野生型細胞であり得る。特定の実施形態では、播種細胞は、目的の1つ以上の遺伝子を発現するように遺伝子改変される。特定の実施形態では、播種細胞は、野生型細胞の集団及び遺伝子改変細胞の集団を含む。例えば、目的の遺伝子としては、チモシン ベータ-4(TB4)、aktマウス胸腺腫(thyoma)ウイルスがん遺伝子相同体(AKT 1)、間質細胞由来因子1アルファ(SDF-1)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子1(IGF-1)、エリスロポエチン(EPO)などが挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明は、上述の遺伝子に限定されず、本発明は、特定の治療目的のために遺伝子を発現する遺伝子改変細胞に限定されない。いくつかの実施形態では、播種細胞には、原核生物、真核生物、又は自発的に又は外部刺激を用いて酸素を産生するように改変された粒子などの追加の細胞又は粒子が含まれ得る。
【0087】
特定の疾患状態又は遺伝状態の細胞を播種することができる。例えば、種細胞は、特定の疾患状態又は状態に関連する異常を有する細胞であり得る。いくつかの実施形態では、種細胞は、異常な状態(例えば、ストレス又は外傷又は心筋梗塞などの事象の後)の組織に由来する細胞である。特定の遺伝子変異を有する細胞又は特定の疾患状態もしくは状態に関連する細胞の非限定的な例としては、先天性心筋症、後天性心筋症、催不整脈性(arrythmogenic)心筋症(例えば、QT延長症候群、QT短縮症候群(SQTS)、ブルガダ症候群、カテコールアミン作動性多形性心室頻拍(CPVT)、催不整脈性右室心筋症(ARVC))、拡張型心筋症(例えば、肥大型心筋症、左室緻密化不全、トランスサイレチンアミロイドーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、ラスオパシー(RASopathis)(ヌーナンスペクトラム障害としても知られる)、心不全などに関連するものが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、疾患状態又は状態は、拡張型虚血性心筋症及び虚血時心筋症、高血圧性心疾患などの後天性状態である。いくつかの実施形態では、疾患状態又は状態は、先天性疾患、後天性又は先天性+不整脈である。いくつかの実施形態では、疾患状態又は状態は、糖尿病、がん、筋ジストロフィー、消化管に影響を及ぼす先天性、遺伝性又は後天性の状態、骨格筋、平滑筋に影響を及ぼす状態などである。本発明は、上記条件に限定されない。
【0088】
組織組成物のECM生成細胞及び/又はECM及び/又は他の因子は、播種細胞の分化及び/又は成熟を引き起こし得る(適切な場合)。増殖因子(例えば、線維芽細胞由来、外因性)は、播種、足場への組込み、増殖、及びインビトロ又はインビボでの播種細胞の分化のうちの1つ以上を改善するのに役立ち得る。2つ以上の細胞型に分化する能力を有する特定の細胞について、組織組成物の微小環境(例えば、ECM生成細胞、ECM、増殖因子など)は、分化経路を駆動するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、外因性因子が特定方向の分化を増強するために加えられる。
【0089】
本発明の組織組成物は、増強細胞をさらに含み得る。増強細胞の非限定的な例としては、分泌細胞、傍分泌細胞、酵素細胞、ベータ細胞、胃腸細胞、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。増強細胞は、播種細胞及び/又はECM生成細胞に対して特定の比率であり得る。細胞の比率は、細胞型及び所望の結果に依存し得る。この比は、増強細胞のクラスター化にも依存し得る(例えば、細胞束)。又は、比率は、細胞の増殖に依存し得る(細胞の増殖が最終的に比率に影響する)。スフェロイド/胚様体は、予め作製され得るか、又は調製で自発的に生成し得る。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比は、1:10~10:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比は1:5~5:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比は、1:20~20:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比は、1:25~25:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比は、1:50~50:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比は1:100~100:1である。本発明は上記の比に限定されない。
【0090】
本発明の組織組成物は、ECM生成細胞とは異なる増殖性細胞、例えば接着性増殖性細胞、例えば間葉系幹細胞、血管前細胞、内皮細胞、前駆細胞などをさらに含み得る。細胞型毎に特定の微小環境があることに留意されたい。したがって、使用される各細胞型は、さらなる細胞型の排除又は組込みを促進するための特定の微小環境を提供する可能性が高い。
【0091】
前述のように、種細胞は、ヒト誘導性多能性幹細胞に由来する心筋細胞又は心筋細胞であり得る。このような組織組成物では、心筋細胞は、例えば同期して発生し、自発的に収縮することができる。心筋細胞は電気信号の伝播を可能にする。いくつかの実施形態では、足場は収縮を方向付ける。前述のように、いくつかの実施形態では、足場の繊維は溝を形成し、溝は足場が細胞の播種又は収縮を方向付けるのを助けることができる。
【0092】
心筋細胞を用いた例において、特定の実施形態では、心筋細胞は、0拍/分~30拍/分、20拍/分~60拍/分、30拍/分~50拍/分、30拍/分~200拍/分、40拍/分~270拍/分、20拍/分~300拍/分、40拍/分~80拍/分などの速度で収縮する。限定されるものではないが、温度、凍結保存後の時間、播種後の時間などの因子が拍動数に影響を及ぼし得ることに留意されたい。拍動数が0であること、又は培養中に変動することが可能である。
【0093】
種細胞は、ECM生成細胞に対して特定の比率で存在し得る。正確な比率は、種細胞の細胞型に依存し得る。例えば、いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比は1:10~10:1である。いくつかの実施形態では、播種細胞とECM生成細胞との比は、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10などである。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比は1:5~5:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比は、1:20~20:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比は、1:25~25:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比は、1:50~50:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比は、1:100~100:1である。いくつかの実施形態では、
図3Dの中空の足場などの足場において、播種細胞とECM生成細胞との比は1:1である。同様に、組織組成物上に沈着する種細胞の量は、種細胞の細胞型に依存し得る。いくつかの実施形態では、種細胞は、0.5×10
6細胞/cm
2~5×10
6細胞/cm
2の最終密度を有するように播種される。いくつかの実施形態では、種細胞は、1×10
4細胞/cm
2~1×10
7細胞/cm
2の最終密度を有するように播種される。いくつかの実施形態では、種細胞は、1×10
2細胞/cm
2~1×10
7細胞/cm
2の最終密度を有するように播種される。
【0094】
種細胞の配置は層であってもよい。又は、足場上の種細胞の配置は、胚様体、カーディオスフェア(cardiosphere)(又は層と束の組み合わせ)などのような密集した細胞の束、凝集体又は群であってもよい。細胞束は様々なサイズであってもよく、単一又は層状の細胞と混合されてもよい。特定の実施形態では、組織組成物は、3~500の細胞層を特徴とする。
【0095】
いくつかの実施形態では、細胞束(例えば、胚様体)を播種し、例えば、播種前に細胞を予めクラスター化する。いくつかの実施形態では、細胞は、播種プロセス後に束又は凝集体を形成し得る。このような束(胚様体)中の細胞は、それ自体の微小環境を示し得ることに留意されたい。
【0096】
組織組成物の特徴及び変形
特定の実施形態では、組織組成物は、生体材料(例えば、足場単独、ECM生成細胞を含まない播種細胞を有する足場、播種細胞及びECM生成細胞を有する足場、ECM生成細胞を有する足場など)及び増殖性細胞集団を含む。例えば、組織組成物は、足場及びECM(ECM生成細胞の有無を問わず)ならびに増殖性細胞集団を含み得る。特定の実施形態では、組織組成物は、生体材料及び非増殖性細胞集団を含む。例えば、組織組成物は、足場及びECM(ECM生成細胞の有無を問わず)ならびに非増殖性細胞集団を含み得る。組織組成物は、3~500細胞層厚の細胞の層を有し得るが、本発明はこの立体配置又は細胞層の範囲に限定されない。本明細書の組織組成物は、所望の厚さを達成するために、因子(例えば、FGF)、他の増殖性サイトカイン、増殖因子、又はこれらの組み合わせと共に培養され得る。
【0097】
生体材料は、吸収性、非吸収性、又はこれらの組み合わせであり得る。生体材料は、合成由来材料、生物由来材料、又はこれらの組み合わせを特徴とし得る。生体材料は、予め播種されたECM生成細胞(例えば、線維芽細胞)を含み得る。特定の実施形態では、生体材料はECM生成細胞(例えば、線維芽細胞)を含まない。特定の実施形態では、生体材料は細孔を含む。特定の実施形態では、生体材料は細孔を含まない。特定の実施形態では、生体材料は、細胞を生体材料に引き付けるためのリガンド、抗体、磁気ベースの粒子など、又はこれらの組み合わせを特徴とし得る。特定の実施形態では、組織組成物を産生するために使用される培養プレート、バイオリアクター又は他の材料は、細胞が表面に付着するのを阻止し、代わりに生体材料に付着するために、その表面の少なくとも一部の抗接着材料を特徴とし得る。
【0098】
増殖性細胞の非限定的な例としては、心臓前駆細胞、線維芽細胞、間葉系幹細胞(MSC)、他の前駆細胞(例えば、骨格筋前駆細胞、平滑筋前駆細胞、神経前駆細胞、肝臓前駆細胞など)などが挙げられる。非増殖性細胞の非限定的な例としては、心筋細胞、神経細胞、膵臓細胞などが挙げられる。
【0099】
本発明の組織組成物、例えば増殖性細胞を用いて作製される組織組成物は、足場上に播種されると増殖し続けるように誘導され得る。特定の組成物(例えば、増殖因子、ペプチドなど)をこのプロセスに使用することができる。本発明の組織組成物、例えば増殖性細胞を用いて作製される組織組成物は、構築物上で増殖させることができ、ある特定の時間に特定の細胞型に分化するように誘導することができる。例えば、心筋前駆細胞を含む組織組成物では、適切な因子が導入されると、心筋前駆細胞の分化が促進され得る。
【0100】
特定の実施形態では、組織組成物(例えば、上記の増殖性細胞を用いて作製されたもの)に、別の細胞集団、例えば、内皮細胞集団、心筋細胞集団、間葉系幹細胞(MSC)集団などを播種し得る。
【0101】
本明細書の組織組成物は、様々な方法で構築することができる。例えば、特定の実施形態では、細胞シート又はスフェロイド(Spheroids)が生成された後、続いて生体材料に移される。細胞シートは、様々な方法で産生され得る。例えば、細胞シートは、選択された時間に細胞又は組織の分離を可能にする組成物(例えば、リガンド)を有する感温プレート、低接着プレート、又はプレートの上に細胞を播種することによって産生され得る。感温プレートは、特定の温度(例えば、20~25℃の間)に置かれた場合に接着性細胞を放出するように設計される。播種細胞がこれらの適切な細胞密集度及び/又は形態に達したら、細胞のシートとしてプレート(例えば、感温プレート、低接着プレート、リガンドを有するプレートなど)から細胞を分離し、続いて生体材料に移すことができる。スフェロイドは、例えば、遠心分離技術、低接着プレート、軌道振盪などを使用して産生することができる。スフェロイドをペレット化し、次いで、生体材料上に播種することができる。
【0102】
本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、細胞シート又はスフェロイドの使用は、組織組成物の播種効率を高めることができると考えられる。これは、高価な及び/又は非増殖性の細胞型で作業する場合に有利であり得る。
【0103】
本発明は、特定の表面に細胞を播種し、続いて生体材料(例えば、足場単独、ECM生成細胞を含まない播種細胞を有する足場、播種細胞及びECM生成細胞を有する足場、ECM生成細胞を有する足場など)を細胞に接着させることによって構築された組織組成物も特徴とする。同様の組織組成物は、最初に生体材料をプレートに接着させ、次いで細胞を播種することによって構築され得る。特定の実施形態では、組織組成物は、生体材料及び細胞の層を特徴とする。生体材料を播種細胞に接着する方法は、遠心分離を含み得るが、これに限定されない。特定の実施形態では、生体材料は、播種細胞を引き付けるための1つ以上の構成要素(例えば、リガンドなど)を含む。特定の実施形態では、播種細胞は、生体材料を引き付けるための1つ以上の構成要素(例えば、リガンド)を含む。
【0104】
表面は、組織組成物の除去を可能にする特徴を有する培養皿又は培養表面であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、表面は感温培養プレートである。感温プレートは、特定の温度(例えば、20~25℃の間)に置かれた場合に接着性細胞(例えば、組織組成物の播種細胞)を放出するように設計される。
【0105】
特定の実施形態では、プレートは、細胞及び/又は生体材料をプレートに一時的に付着させるための付着構成要素を含む。例えば、ある特定の実施形態では、付着構成要素は、RGDなどのリガンドを有する調整リポソーム(例えば、金で被覆されたリポソーム)である。リガンドは、金リポソームをプレートに付着させ、細胞及び/又は生体材料は、リポソームに付着する。組織組成物を採取する準備ができたら、金で被覆されたリポソームを共鳴光で活性化して開き、それによって組織組成物をプレートから分離することができる。本発明は金で被覆されたリポソームに限定されない。本発明をいかなる理論又は機構に限定することを望むものではないが、付着構成要素(金で被覆されたリポソームなど)を使用することの1つの利点は、その形状のプレート上に付着構成要素(例えば、金で被覆されたリポソーム)をパターン化することによって特定形状の組織組成物を構築することを可能にすることであると考えられる。接着構成要素は、細胞及びリポソーム内に含有され得る特定の物質、例えば増殖及び/又は分化に必要な因子の安定性及び制御放出も可能にし得る。
【0106】
本発明はまた、組織組成物の代謝速度を低下させるための方法を特徴とする。例えば、本発明は、組織組成物、例えば心筋細胞を特徴とする組織組成物の拍動数を低下させる方法を特徴とする。本方法は、拍動数を特定の所望の拍動数に低下させる薬物を組織組成物に導入することを特徴とし得る。特定の実施形態では、本方法は温度制御を特徴とする。特定の実施形態では、拍動数は、貯蔵及び/又は安定性、例えば輸送中の安定性の目的で減少する。組織組成物の拍動数を低下させるための方法は、本明細書中の任意の適切な組織組成物、例えば足場、ECM、ECM生成細胞及び心筋細胞を特徴とする組織組成物、足場の有無にかかわらず細胞シートを特徴とする組織組成物などに適用され得る。
【0107】
さらに、本発明は、10~20bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、20~30bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)特徴とする。本発明はまた、10~30bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、30~40bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、20~40bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、40~50bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、30~50bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、0~50bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、0~100bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書における任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明をいかなる理論又は機構に限定することを望むものではないが、低拍動数を有する組織組成物は、高拍動数を有する組織組成物と比較してより低い代謝負荷を有し、より低い代謝負荷は、組織組成物の有効期間(例えば、移植片が移植される前に室温で設定され得る時間)を延ばすのに役立ち得るため、低拍動数(例えば、10~50bpmの拍動数)が有利であり得ると考えられる。組織組成物が健康で機能的であるために必要な栄養素が少なくなるため、より低い代謝負荷も虚血環境では有益であり得る。
【0108】
組織組成物の拍動数を調節する方法には、ベータ遮断薬又は他の外因性因子の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明の組織組成物は、短期間及び/又は長期間の貯蔵、例えば凍結保存に耐えるように構築される。凍結保存は、-80℃~-196℃又は90℃~196℃の温度を指し得る。組織組成物を凍結保存する能力は、要求に応じて使用するまで組織を貯蔵すること、ならびに組織組成物をある場所から別の場所に輸送することを可能にするのに役立つ。
【0110】
組織組成物はまた、室温(又は37℃未満の温度)で一定の長さの時間に耐えるように構築され得る。特定の時間、37℃未満の温度で生存可能である能力は、組織組成物を使用前にインキュベータから出す場合に有益であり得る。一例として、組織組成物は、インキュベータから取り出され、移植プロセスで使用するために手術室に運ばれるが、すぐには移植されない場合、長時間室温に曝されてもよい。
【0111】
組織組成物の特性
本発明の改変された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)は、1つ以上の機械的パラメータ、電気生理学的パラメータ、化学的パラメータ、生化学的パラメータ(増殖因子、代謝産物、イオンチャネルなど)、又はこれらの組み合わせについて評価することができる。機械的パラメータ又は電気生理学的パラメータには、収縮率、収縮/弛緩速度、収縮速度の力(force of contraction-paced)、非収縮速度の力(force of contraction-not paced)、変位速度、変位力、インパルスの方向性、インパルスの速度、電場電位、振幅、捕捉閾値、変時応答、刺激後の興奮順序、機能的ギャップ結合の形成、電気ペーシングに対する応答、電場電位振幅、伝導速度、伝播パターン、ギャップ結合分析、又はこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0112】
同様に、改変された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)は、リアルタイム電気生理学的測定のための多電極アレイマッピングに供することができる。収縮率、収縮期/拡張期変位、収縮期収縮速度、及び/又は拡張期弛緩速度は、顕微鏡で検出することができる。前述のように、心筋細胞をペーシングすることができる。ペーシングは、外部電場刺激を適用することによって達成され得る。
【0113】
組織組成物、例えば心筋細胞を含む組織組成物は、特定の拍動数を有するように構築されてもよい。特定の実施形態では、拍動数は1分当たり0~100拍動(bpm)である。特定の実施形態では、拍動数は10~30bpmである。特定の実施形態では、拍動数は20~40bpmである。特定の実施形態では、拍動数は30~60bpmである。特定の実施形態では、拍動数は40~70bpmである。特定の実施形態では、拍動数は50~80bpmである。特定の実施形態では、拍動数は60~90bpmである。特定の実施形態では、拍動数は70~100bpmである。本発明は、拍動数の上述例に限定されない。
【0114】
改変された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)の機械的特性は、使用される足場材料に依存し得る。例えば、変位、歪み率、変位速度などはすべて、足場の材料に依存し得る。いくつかの実施形態では、改変された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)は、1mm~1.5cmの電極間間隔で0.1mV~1mVの改変された組織組成物にわたる電圧振幅を有する。
【0115】
組織組成物の引張強度は、その組成、例えば足場、ECM、細胞などの割合によって決定することができる。
【0116】
特定の実施形態では、マーカーの相対発現を評価して、ECM生成細胞(例えば、線維芽細胞)に対する目的の特定細胞型(例えば、心筋細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞など)の量を決定することができる。ECM生成細胞に対する目的の細胞型の比は、例えば、目的の細胞が増殖する場合、特定の細胞集団が死滅する場合、細胞が経時的に分化する場合など、組織組成物の変化に基づいて経時変化する。評価され得るマーカーの非限定的な例としては、CD 90、ビメンチン、FSP-1、コラーゲンI、アルファ-SMA、HSP 47などが挙げられる。
【0117】
プラットフォーム
本発明は、本発明の組織組成物を有するプラットフォームも特徴とする。例えば、本発明は、(単一ウェルを有する)単一ウェルプレートを特徴とし、本発明の改変された組織組成物がその中のウェルに沈着する。本発明はまた、2つ以上のウェルを有するマルチウェルプレートを特徴とし、本発明の改変された組織組成物は、その中の少なくとも1つのウェルに沈着する。マルチウェルプレートは、2つのウェル、4つのウェル、6つのウェル、8つのウェル、12個のウェル、24個のウェル、48個のウェル、96個のウェル、96超個のウェル、2~12個のウェル、12~24個のウェル、24~48個のウェル、48~96個のウェルなどを含み得る。本発明はまた、ウェル、トラフ、又はチューブ、トレイなどの任意の他の適切な培養装置内のウェルを含む改変された組織組成物のためのプラットフォームを特徴とする。本発明は、組織組成物を培養、維持及び/又は保存するためのプラットフォームとしての培養皿に限定されない。
【0118】
本発明はまた、本明細書の組織組成物を産生、維持、及び/又は保存するための閉鎖系プラットフォームを特徴とする。例えば、閉鎖系は、組織組成物、例えば足場及びECM、ならびに任意選択的に本明細書で論じられるような他の成分が内部に収容されたカプセル化を特徴とし得る。培地は、無菌様式で閉鎖系内で交換することができる。組織組成物はまた、カプセル化で凍結され、準備ができた場合に解凍され得る。特定の実施形態では、2つ以上の組織組成物をカプセル化で収容することができ、又は複数のカプセル化を一緒に連結して新しいカプセル化を創出することができる。例えば、いくつかの実施形態では、最大6つの組織組成物がカプセル化で収容される。いくつかの実施形態では、最大10個の組織組成物がカプセル化で収容される。いくつかの実施形態では、最大20個の組織組成物がカプセル化で収容される。いくつかの実施形態では、20を超える組成物がカプセル化で収容される。
【0119】
凍結保存及び再構成
本発明は、改変された組織組成物の凍結保存及び再構成のためのシステム、方法、及び組成物を特徴とする。
【0120】
組織の組成は、組織を損傷することなく凍結保存及び再構成を可能にするために重要である。凍結及び解凍による損傷のリスクは、一般に、温度変化に伴う材料の膨張及び収縮に関連する。細胞及び組織は、高い含水量を有する。細胞が膨張及び収縮すると、細胞は氷結晶の形成又は破壊から損傷を受ける場合がある。凍結保存溶液の使用は、氷晶の形成及び損傷の防止に役立ち得る。また、組織中の細胞材料は、温度変化による膨張及び収縮中の損傷に耐えるように、細胞を支持することができる材料を使用することによって保護され得る。材料は、細胞との複合体として作用して堅牢な組織を作り出す。材料は、細胞膜を支持して温度変化の影響を軽減し、したがって損傷に耐える。細胞外基質及び/又は生体材料は、凍結保存及び再構成のための支持体として使用することができる。支持体として使用される材料は、破砕又は他の損傷なしに凍結することができなければならない。支持体として使用される材料は、適切な剛性/弾性、強度及び多孔性、ならびに組織の適切な体積%でなければならない。硬すぎるか又は柔らかすぎると、組織を凍結保存することができない。
【0121】
本明細書に開示される改変された組織組成物のいずれも、凍結保存及び/又は再構成用に検討され得る。例えば、いくつかの実施形態では、足場は編まれた生体材料である。いくつかの実施形態では、足場は、織られた、紡糸された、電界紡糸された、層状化された、積層された、又は印刷されたものである。いくつかの実施形態では、足場又は改変された組織組成物は、0.5N/mm~4N/mmの最大剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は2N/mm~3.5N/mmの剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場又は改変された組織組成物は、0.04~0.15Mpa(又は0.04~0.1Mpa)の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、足場又は改変された組織組成物は、0.05~0.1Mpaの引張強度を有する。前述のように、本発明で使用される生体材料は、生体吸収性又は非吸収性であってもよい(又は生体吸収性材料と非吸収性材料の組み合わせを使用してもよい)。
【0122】
再構成は、組織を急速に加温し、4時間、8時間、24時間又は48時間などの期間にわたって組織を培養条件に再導入することによって行うことができる。例えば、組織を-80℃から37℃の水浴に入れ、1~5分保持し、次いで37℃の培養インキュベータに移し、そこで約24~48時間培養することができる。解凍後の追加の再構成は必要ない場合がある。
【0123】
解凍後の追加の再構成が必要な場合、再構成は、48時間未満又は24時間未満の時間まで加速してもよい。再構成は、温度変化又は温度サイクル(例えば、35℃~39℃の間のサイクル温度を一回、二回、三回など)によって加速され得る。再構成は、光、超音波、神経、電気、電磁気、物理的又は化学的手段によっても加速され得る。例えば、組織又は組織を含む培地に電気刺激を加えて組織を活性化してもよい。あるいは、伸張又は圧縮などの物理的な力を加えることができ、又は反重力環境を適用することができる。あるいは、特定の波長の電磁放射線を使用して、生物学的プロセスの活性化による再構成を加速することができる。また、化学的手段を介して、細胞内の天然の生物学的プロセスを活性化する栄養素又は薬物の使用などによって、組織を刺激して再構成及び機能性/効力を促進することができる。例えば、カテコールアミンもしくはベータアドレナリン作動薬、又はアルファもしくはベータアドレナリン作動性受容体を介して作用する他の薬物を使用して、心臓細胞を活性化することができる。
【0124】
本発明の凍結保存方法の一例としては、下記の特徴、すなわち約4℃の開始温度、-20℃~-40℃の温度での核生成、-80℃~-90℃の最終温度、-80℃又は196℃の保存のうちの1つ又は組み合わせが挙げられる。
【0125】
前述のように、いくつかの実施形態では、凍結保存プロセスは閉鎖系で行われる。いくつかの実施形態では、凍結保存プロセスは、開放系で行われる。いくつかの実施形態では、解凍/再構成プロセスは、閉鎖系で行われる。いくつかの実施形態では、解凍/再構成プロセスは、開放系で行われる。
【0126】
本明細書の組織組成物は、(i)足場及び足場上もしくは足場内の播種細胞、(ii)足場と、足場上もしくは足場内(もしくは足場上及び足場内の両方)に配置されたECM生成細胞とを含む、(iii)足場、足場上もしくは足場内(もしくは足場上及び足場内の両方)に配置されたECM材料、及び足場上もしくは足場内(もしくは足場上及び足場内の両方)に配置されたECM生成細胞、(iv)足場、足場上もしくは足場内(もしくは足場上及び足場内の両方)に配置されたECM材料、及びECMと共に足場内もしくは足場上(もしくはECMと共に足場内及び足場上の両方)に播種された細胞、又は(v)足場、足場上もしくは足場内(もしくは足場上及び足場内の両方)に配置されたECM材料、足場上もしくは足場内(もしくは足場上及び足場内の両方)に配置されたECM生成細胞、及びECM生成細胞及びECMと共に足場内及び/もしくは足場上に播種された細胞、を含むと定義され得る。
【0127】
組織組成物の前述の実施形態のそれぞれについて、組織組成物は、凍結保存-解凍サイクルの後に機能的であり得る。特定の実施形態では、「凍結保存-解凍サイクル後に機能的」という用語は、凍結保存-解凍サイクル後に組織組成物の物理的完全性を維持する組織組成物、凍結保存-解凍サイクル後に細胞間コミュニケーションを示す組織組成物、凍結保存-解凍サイクル後に同期収縮を示す組織組成物、凍結保存-解凍サイクル後に神経伝達物質を分泌する組織組成物(例えば、組織組成物の細胞)、凍結保存-解凍サイクル後にホルモンを分泌する組織組成物(例えば、組織組成物の細胞)、凍結保存-解凍サイクル後に酵素を分泌する組織組成物(例えば、組織組成物の細胞)、凍結保存-解凍サイクル後にサイトカインを分泌する組織組成物(例えば、組織組成物の細胞)、凍結保存-解凍サイクル後に増殖因子を分泌する組織組成物(例えば、組織組成物の細胞)、凍結保存-解凍サイクル後にRNAを分泌する組織組成物(例えば、組織組成物の細胞)、のうちの1つ又は組み合わせを指し得る。
【0128】
以下の表1では、凍結保存-解凍サイクル後に組織組成物が機能的であるか否かを判定するために使用され得るマーカーの例が列挙される。例えば、凍結保存-解凍サイクル後に組織組成物が適切に同期収縮することを確実にするために、心臓組織用に設計された組織組成物を評価することができる。又は、組織組成物を試験して、組織組成物が適切な量のIGF-1を分泌しているか否かを判定することができる。いくつかの実施形態では、組織組成物は、2つ以上のマーカーについて試験される。本発明は、以下に列挙されるか又は本明細書に記載される組織機能性用のマーカーに限定されない。
【表1】
【0129】
本明細書に記載する組織組成物の各実施形態について、凍結保存-解凍サイクルの後、組織組成物を試験して、分泌されるホルモン、増殖因子、サイトカイン、酵素、RNAなどの量が適切であるか否かを判定することができる。
【0130】
特定の実施形態では、分泌されたホルモンの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の10%以上であり、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以上である。特定の実施形態では、分泌されたホルモンの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の20%以上であり、例えば、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%以上などである。特定の実施形態では、分泌されたホルモンの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量の30%以上であり、例えば、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%以上などである。特定の実施形態では、分泌されたホルモンの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたホルモンの量よりも多い。
【0131】
特定の実施形態では、分泌された神経伝達物質の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された神経伝達物質の量の10%以上であり、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以上である。特定の実施形態では、分泌された神経伝達物質の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された神経伝達物質の量の20%以上であり、例えば19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%以上などである。特定の実施形態では、分泌された神経伝達物質の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された神経伝達物質の量の30%以上であり、例えば29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%以上などである。特定の実施形態では、分泌された神経伝達物質の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された神経伝達物質の量よりも多い。
【0132】
特定の実施形態では、分泌された酵素の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の10%以上であり、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以上である。特定の実施形態では、分泌された酵素の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の20%以上であり、例えば19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%以上などである。特定の実施形態では、分泌された酵素の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量の30%以上であり、例えば29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%以上などである。特定の実施形態では、分泌された酵素の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された酵素の量よりも多い。
【0133】
特定の実施形態では、分泌された増殖因子の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上であり、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以上である。特定の実施形態では、分泌された増殖因子の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上であり、例えば、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%以上などである。特定の実施形態では、分泌された増殖因子の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の30%以上であり、例えば、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%以上などである。特定の実施形態では、分泌された増殖因子の量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量よりも多い。
【0134】
特定の実施形態では、分泌されたサイトカインの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上であり、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以上である。特定の実施形態では、分泌されたサイトカインの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上であり、例えば19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%以上などである。特定の実施形態では、分泌されたサイトカインの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の30%以上であり、例えば29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%以上などである。特定の実施形態では、分泌されたサイトカインの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたサイトカインの量よりも多い。
【0135】
特定の実施形態では、分泌されたRNAの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の10%以上であり、例えば9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以上である。特定の実施形態では、分泌されたRNAの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の20%以上であり、例えば19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%以上などである。特定の実施形態では、分泌されたRNAの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌された増殖因子の量の30%以上であり、例えば29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%以上などである。特定の実施形態では、分泌されたRNAの量は、凍結保存-解凍サイクルの前に組織組成物の細胞によって分泌されたRNAの量よりも多い。
【0136】
特定の実施形態では、ECM生成細胞は生きているか、死んでいるか、又はECM生成細胞の一部が死んでいる。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、最初に足場上に播種され、続いてECMを産生する。特定の実施形態では、ECMは、ECM生成細胞の播種前に足場上に沈着する。特定の実施形態では、播種細胞は、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞に由来する細胞、人工多能性幹細胞に由来する細胞、成体幹細胞、前駆細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞又は傍分泌細胞である。特定の実施形態では、播種細胞は、スフェロイドとして、又は細胞シートの形態、ゲルの形態、又は泡の形態で播種される。
【0137】
本発明は、改変された組織組成物のためのワークフローシステムも特徴とする。特定の実施形態では、ワークフローシステムは、改変された組織組成物(本発明による任意の組織組成物)を培養すること、改変された組織組成物を凍結保存すること、及び改変された組織組成物を再構成することを含み、改変された組織組成物は、(本明細書に記載する)凍結保存-解凍サイクルの後に機能性であり、システムは閉鎖系である。いくつかの実施形態では、システムは、改変された組織組成物を培養、凍結保存、及び再構成するための滅菌環境を提供する。
【0138】
本発明はまた、改変された組織組成物の機能を増強する方法を特徴とし、機能とは、前述の機能のいずれか(例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子の分泌、細胞間コミュニケーションの提示等)を指し得る。特定の実施形態では、本方法は、改変された組織組成物を凍結保存すること及び改変された組織組成物を再構成することを含み、改変された組織組成物は、凍結保存-解凍サイクル後に機能が増強され、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子などの分泌が増強される。
【0139】
本発明はまた、改変された組織組成物の機能を増強する方法を特徴とし、機能とは、前述の機能のいずれか(例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子の分泌、細胞間コミュニケーションの提示等)を指し得る。特定の実施形態では、本方法は、改変された組織組成物を37℃未満の温度(例えば、-196℃~37℃未満の温度、30~36℃、25~30℃、25~35℃、20~30℃、15~30℃、15~25℃、15~20℃、10~25℃、10~20℃、10~15℃、5~10℃、5~15℃、0~15℃、0~5℃、1~4℃、-10~0℃、190~0℃、0~36℃、0~25℃、0~10℃、-20~-10℃、-20~0℃、-30~0℃、-40~-20℃、-80~0℃、-190~-80℃の温度等)に冷却すること、及び改変された組織組成物を再構成することを含み、改変された組織組成物は、冷却された後に機能が増強され、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子などの分泌が増強される。組織組成物は、一定期間、例えば数分又は数時間、例えば10分~72時間、1~72時間、2~24時間、4~12時間、4~8時間、6~12時間、8~20時間、10~24時間、24~48時間、48~72時間などの期間、冷却温度又は冷却温度の組み合わせで保持され得る。
【0140】
本発明はまた、改変された組織組成物の機能を増強する方法を特徴とし、機能とは、前述の機能のいずれか(例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子の分泌、細胞間コミュニケーションの提示等)を指し得る。特定の実施形態では、本方法は、改変された組織組成物を37℃を超える温度(例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、38℃~50℃、38℃~42℃、39℃~42℃の温度など)でインキュベーションすること、及び改変された組織組成物を再構成することを含み、改変された組織組成物は、インキュベーション後に機能が増強され、例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、RNA、増殖因子などの分泌が増強される。加温は、凍結保存前、凍結保存後、又は凍結保存とは無関係に使用され得る。加温の持続時間は、数秒から数時間、例えば10秒から4時間、又は30秒から30分などであり得る。
【0141】
例1
例1は、開放系で改変された組織組成物を凍結保存する方法、ならびに改変された組織組成物を解凍及び再構成する方法を開示する。
【0142】
凍結保存:組織(例えば、直径1.6cm)を37℃での培養物から取り出し、1mlの冷却(4℃)凍結保存溶液を含有する1.5mlバイアルに移す。組織をバイアルに入れ、鉗子を用いて完全に浸漬する。次いで、バイアルを、予め冷却した2~8℃のエタノールジャケット付き容器又は発泡断熱容器に入れ、-80℃の冷凍庫に入れる。5時間後、バイアルを-80℃で保存するか、又は必要になるまで-196℃に移すことができる。別の方法では、次いで、バイアルを予め冷却した2~8℃のエタノールジャケット付き容器又は発泡断熱容器に入れ、2~8℃で20分間静置する。次いで、バイアルを含む容器を-80℃に移す。約20分後、容器の側面を軽く叩いて氷核生成を支援する。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、核生成は、力、播種、化学的、電気凍結、機械的、衝撃冷却、圧力などによって開始され得ると考えられる。次いで、容器を最長5時間-80℃に戻し、-80℃で保存するか、又は196℃に移す。
【0143】
解凍及び再構成:バイアルを37℃の水浴に移し、浸漬し、キャップを水面上に残す。バイアルを1~5分間(例えば、4分)加温し、次いでバイオセーフティフードに移し、鉗子を使用して滅菌条件下で取り去る。次いで、組織を、2mlの加温培養培地(DMEM、RPMIなど)を含む24ウェルプレートに移し、B27、FBS、アルブミンなどを補充してもしなくてもよい。アポトーシスを制限するために、培養物に10μM ROCK阻害剤Y-27632を補充してもよい。組織を24時間培養し、培地を交換する。次いで、組織が使用されるまで、例えば、48時間、24時間毎に培地を交換する。特定の実施形態では、再構成は20時間以内に達成される。いくつかの実施形態では、再構成は24~30時間以内に達成される。いくつかの実施形態では、再構成は、48時間以内に達成される。
【0144】
例2
例2は、閉鎖系で改変された組織組成物を凍結保存する方法、ならびに改変された組織組成物を解凍及び再構成する方法を開示する。
【0145】
凍結保存:組織(例えば、直径5.2cm)は37℃で培養を完了し、閉鎖環境系(例えば、バイオバッグ、例えば、Origen CS50クライオバッグ、Charter medical FP-Flex50Bなど)に移す。いくつかの実施形態では、バッグは変更される。例えば、いくつかの実施形態では、バッグは基部及び時には側面に沿って切断され、次いで移植片は改変バッグに入れられ、次にバッグは凍結保存のプロセスを開始するための環境にヒートシールされる(又は使用されるバイオバッグ材料の必要に応じて同様である)。クライオバッグは、スパイクポートに加えて、少なくとも1つ、時には複数のルアーポートを含む。滅菌技術を使用して、ルアーを使用して、シリンジを介して10~30mlの冷却された(4℃)Biolife溶液CS10(又は同様のもの)を導入する。次いで、すべての組織をクライオバッグ内に入れ、凍結の準備をするまでクライオバッグを冷却した(4℃)冷却器に入れる。次に、露出したルアーラインをすべて管溶接機で密封し、すべてのクライオバッグを制御速度の冷凍庫に移す。その後、制御速度の冷凍庫は、温度を-80℃に下げるためのプログラムを通して進行する。
【0146】
解凍及び再構成:-196℃で凍結した組織を、解凍前の最低24時間又は7日間、-80℃に移す。本発明を任意の理論又は機構に限定することを望むものではないが、本明細書の例の方法は、改変された組織組成物を直接-196℃から37℃の水浴に移すことを特徴としないが、改変された組織組成物の特性に応じてそうすることが可能であり得る。
【0147】
クライオバッグを37℃の水浴に移し、浸漬し、1~5分間加温する。いくつかの実施形態では、クライオバッグを解凍中に1回以上反転させる。次いで、クライオバッグは、すべての氷が解凍された後、バイオセーフティフードに移されるまで目視検査される。スパイクポートの1つに滅菌技術を用いてアクセスし、低温培地(cryomedium)をシリンジを用いて除去する。滅菌技術を使用して、組織を洗浄し、加温培地、例えば5ml、時には最大10ml(ただし3ml以上)の加温培養培地(DMEM、RPMIなど)を導入する。培地は、B27、FBS、アルブミンなどを補充してもしなくてもよい。培養物には、10μM ROCK阻害剤Y-27632も補充され得る。次いで、組織をクライオバッグ中で24時間培養する。次いで、培地を、組織が使用されるまで24時間毎に滅菌技術を使用して交換する。
【0148】
前述のように、いくつかの実施形態では、凍結保存プロセス及び/又は解凍/再構成プロセスは、閉鎖系で実行されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、クライオバッグが解凍すると、蠕動ポンプを使用してすべての低温培地(cryomedium)を除去することができる。第2のバッグをクライオバッグに取り付けることができ、例えば、空のバッグをクライオバッグにスパイクし、チューブを適所で溶接し、無菌コネクタ(例えば、ReadyMate、(GE))などを使用して接続することができる。第2のバッグは、組織を再構成するための所望の培養培地(例えば、上記の通り)を含み得る。次いで、バッグは、再構成のために2つの経路のうちの一方に進むことができる。
【0149】
経路1:次いで、産物及び新鮮な培養培地を含有するクライオバッグを、それが維持され得る標準的な細胞培養インキュベータに入れてもよい。組織を24時間未満培養することができる。組織を24時間培養し、培地を交換してもよい。次いで、組織が使用されるまで培地を24時間毎に交換することができる。
【0150】
経路2:クライオバッグは、必要になるまで培養されるバイオリアクター(Xuriなど)に取り付けることができる。培養は、最初の揺動が少なく、後に揺動が多くなる揺動作用(2~8rpm)を含み得る。いくつかの実施形態では、角度又は揺動は2~8度である。いくつかの実施形態では、灌流又は培養培地が添加される。灌流は、2~20 rpmで又はある期間にわたって連続的に行われ得る。再構成時間が完了すると、組織は使用する準備が整う。
【0151】
本発明をいかなる理論又は機構に限定することを望むものではないが、組成物及び容器は、閉鎖系での再構成を可能にするために重要であると考えられる。
【0152】
輸送:いくつかの実施形態では、組織は、完全に再構成されると輸送されてもよい。いくつかの実施形態では、組織は、現地で再構成され得る。輸送は、クライオバッグ管を密封して閉じ、次いでクライオバグを手術の場に輸送することを特徴とし得る。外科チームは組織を37℃に維持し、クライオバッグを生理食塩水(例えば、2×)で洗い流した後、37℃で最長2時間維持してもよい。使用時には、シリンジを用いて生理食塩水をバッグから除去してもよい。次いで、バッグを切開して組織を露出させた後、組織は必要に応じて取り出され、移植される。
【0153】
HypoThermosol(登録商標)などの代替アプローチも検討することができる。HypoThermosol(登録商標)は、安定性を高めるために輸送中に製品を2~8℃に維持するために使用される。この最適化された専有製剤は、研究及び臨床用途を意図した生物製剤、中間産物、及び最終細胞産物の冷却及び再加温中に生じる温度誘発分子細胞ストレス応答を緩和する。HypoThermosol(登録商標)FRSは、フリーラジカルを捕捉し、pH緩衝、膠質/浸透圧支持、エネルギー基質、及び低温で細胞内状態のバランスをとるイオン濃度を提供する構成要素を含む。広域の細胞及び組織型にわたって、HypoThermosol(登録商標)は、市販及び自家製の等張及び細胞外製剤と比較して、保存後の壊死及びアポトーシスの低減にはるかに効果的であることが証明されている。これにより、有効期間が大幅に延長され、保存後の生存率が改善される。
【0154】
例3
例3は、ELISAアッセイによって評価されるように(下記の表2を参照)、新鮮な心臓移植片対解凍された(予め凍結保存された)心臓移植片(線維芽細胞と共培養された最終分化した心筋細胞)の増殖因子及びサイトカインの発現レベルを示す。データは平均+SEである。*は統計的有意差を示す(p<0.05)。新鮮の場合はN=3、解凍の場合はn=3。
【表2】
【0155】
以下の米国特許の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許出願第2018/0361025号、米国特許第4,963,489号、米国特許出願第US2009/0269316号、国際公開第2013151755号、国際公開第2011102991号、米国特許出願第2014/0178450号、米国特許第8,802,144号、国際公開第2009102967号、米国特許第9,119,831号、国際公開第2010042856号、米国特許第2008/0075750号。米国特許第9,587,222号。
【0156】
本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の説明から当業者には明らかであろう。このような変更もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本出願で引用された各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の好ましい実施形態を示し説明したが、添付の特許請求の範囲を超えない変更を行うことができることは当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。特許請求の範囲に列挙された参照数は、例示的であり、特許庁による審査を容易にするためのものにすぎず、決して限定するものではない。いくつかの実施形態では、この特許出願に提示される図面は、角度、寸法比などを含む縮尺通りに描かれている。いくつかの実施形態では、図面は代表的なものにすぎず、特許請求の範囲は図面の寸法によって限定されない。いくつかの実施形態では、「含む(comprising)」という語句を使用して本明細書に記載される発明の説明は、「からなる(consisting of)」と記載され得る実施形態を含み、したがって、「からなる(consisting of)」という語句を使用して本発明の1つ以上の実施形態を特許請求するための明細書記載要件が満たされる。
【国際調査報告】