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特表2022-506329リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法および装置
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  • 特表-リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20220107BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20220107BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
G01N35/00 B
G01N1/44
G01N21/78 Z
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523643
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2019079845
(87)【国際公開番号】W WO2020089399
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】18203833.1
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518001852
【氏名又は名称】ファウンデーション・フォー・リサーチ・アンド・テクノロジー・ヘラス
【氏名又は名称原語表記】FOUNDATION FOR RESEARCH AND TECHNOLOGY HELLAS
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】パパダキス,ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】ギゼリ,エレクトラ
(72)【発明者】
【氏名】パンタジス,アレクサンドロス
【テーマコード(参考)】
2G052
2G054
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052DA02
2G052DA12
2G052DA26
2G052EB11
2G052EB12
2G052GA11
2G054AA02
2G054AB05
2G054BB08
2G054CA22
2G054CB03
2G054CD03
2G054CE02
2G054EA05
2G054EA06
2G054FA01
2G054FA09
2G054FA12
2G054FA29
2G054FA33
2G054FA37
2G054GA03
2G054GB10
2G054JA01
2G054JA02
2G054JA04
2G058BA08
2G058BB01
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB19
2G058BB26
2G058GA01
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS24
4B063QX01
(57)【要約】
反応チューブに含まれる液体試料の加熱が、チューブの底部を加熱素子と熱接触させることによって実行される、リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法および装置。反応チューブの内容物のリアルタイムモニタリングは、好ましくはカメラを使用することによってチューブの側壁を通して視覚的に実行される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明または透明材料製の反応チューブ(18)に含まれる液体試料においてリアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法であって、
前記反応チューブ(18)の底部(2)を加熱素子(10)と熱接触させることによって前記液体試料を加熱するステップと、
前記反応チューブ(18)の側壁(3)を通して前記アッセイのパラメーターを視覚的にモニタリングするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記加熱素子(10)の方へ前記反応チューブ(18)に圧力を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応チューブ(18)によって前記加熱素子(10)に加えられる圧力が0.4MPa~15MPaである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応チューブ(18)によって前記加熱素子(10)に加えられる圧力が1MPa~10MPaである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応チューブ(18)によって前記加熱素子(10)に加えられる圧力が1MPa~3MPaである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応チューブ(18)の長手軸が、前記加熱素子(10)に対して60~120度の角度を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応チューブ(18)の長手軸が、前記加熱素子(10)に対して90度の角度を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱素子(10)と熱接触している前記反応チューブ(18)の面積が最大で12mmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱素子(10)と熱接触している前記反応チューブ(18)の面積が最大で6mmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱素子(10)と熱接触している前記反応チューブ(18)の面積が最大で3mmである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応チューブ(18)が透明材料製である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記モニタリングするステップがデジタルカメラによって実行される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸増幅アッセイが等温核酸増幅アッセイである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸増幅アッセイがループ介在等温増幅アッセイである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法に従ってリアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための装置であって、
加熱素子(10)と、
半透明または透明材料製であり、反応チューブ(18)の底部(2)が前記加熱素子(10)と熱接触するように配置される前記反応チューブ(18)と、
前記反応チューブ(18)の側壁(3)を通して画像を記録することができるように配置されるデジタルカラーカメラと、
前記デジタルカラーカメラによって得られた画像を処理し、前記画像の赤色、緑色および青色チャネルデータのうちの1つまたは複数を処理し、それによって前記アッセイのパラメーターを得るように構成される処理ユニットと
を含む、装置。
【請求項16】
前記加熱素子(10)の方へ前記反応チューブ(18)に圧力を加えるための手段(15、16)をさらに含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記反応チューブ(18)によって前記加熱素子(10)に加えられる圧力が0.4MPa~15MPaである、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記反応チューブ(18)によって前記加熱素子(10)に加えられる圧力が1MPa~10MPaである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記反応チューブ(18)によって前記加熱素子(10)に加えられる圧力が1MPa~3MPaである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記反応チューブ(18)が透明材料製である、請求項15から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記加熱素子(10)と熱接触している前記反応チューブ(18)の面積が最大で12mmである、請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記加熱素子(10)と熱接触している前記反応チューブ(18)の面積が最大で6mmである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記加熱素子(10)と熱接触している前記反応チューブ(18)の面積が最大で3mmである、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記反応チューブ(18)の長手軸が、前記加熱素子(10)に対して60~120度の角度を形成する、請求項15から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記反応チューブ(18)の長手軸が、前記加熱素子(10)に対して90度の角度を形成する、請求項24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイム比色核酸増幅アッセイにおける実施およびモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
分子組成の観点から生物を理解することは、核酸増幅および定量に主に基づく、ますます迅速で正確な診断試験の設計をもたらした。それはまた、試料が採取されるかまたは患者が処置される場所において実際の診断アッセイを行うことである分子診断の新たな傾向ももたらした(「ポイントオブニード(point-of-need)」試験)。ポイントオブニード試験では、核酸増幅および定量に主に基づく、ますます迅速で正確な診断アッセイの設計は、現在、ヘルスケア、農業/食品安全性、研究などにおいて非常に多くの用途を有する新たに発生した分野である。最も普及しているアッセイの1つはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、それは数回の熱サイクルで特定の標的を指数関数的に増幅させるポリメラーゼ酵素を利用する。各サイクルは3つのステップを含む;1.二本鎖DNA変性のために92~98℃での加熱;2.50~65℃での特異的プライマーアニーリング;および3.72℃でのポリメラーゼによる鎖伸長。高速で正しい生成物形成のための必要条件である効率的な加熱は、典型的に加熱素子上に置かれる、加熱(金属)ブロックへの反応容器(典型的にエッペンドルフチューブ)の浸漬によって達成される。PCRは、実験室ベースの核酸検出におけるゴールデンスタンダードであり、エンドポイントおよび定量的リアルタイム検出の両方に適しているが、ポイントオブケア(point-of-care)または現場ベースの用途(field based application)には理想的ではない。これは、PCRが、高価であり、および/または使用者と共にあちこちに動かすのが困難である、高度な温度制御および光学(蛍光)モニタリングのための機器を必要とするためである。1つの代替のDNA増幅法である、ループ介在等温増幅(LAMP)は、増幅のために1つの温度(65℃)のみを必要とし、色変化(比色)によりDNAの視覚的検出を達成することができるので、ポイントオブケア(POC)用途には理想的であると考えられている。LAMP増幅比色設定では、反応容器はPCRに使用されるものと同様の加熱ブロック内に設置される。LAMP比色法の現在の形式はエンドポイント測定のみに基づく。しかしながら、これには2つの大きな欠点がある;第一に、色変化は多くの場合、裸眼で識別することが困難であり得、第二に、エンドポイント測定は、多くの重要な用途では不適切であり得る定性試験(イエスまたはノー)として使用され得る。現在のところ、これらの問題を克服する利用可能な解決策は存在しない。
【0003】
上記の障害を克服し、リアルタイム比色核酸増幅を可能にする、以前に解決された重要な特徴は、プロセスが反応の効率的な加熱と同時に合わせて行われている間に溶液の色変化をモニタリングする手段/方法を発明することに関連する。現在使用されている形式の全ては、加熱ブロック内への反応容器の浸漬に基づき、これは必要とされる高温での効率的な増幅を可能にする。このことは、検査および検出などの視覚的モニタリングが容器の上部によってのみ達成され得ることを意味する。しかしながら、増幅反応の間、容器は加熱されるので、液体試料の一部は蒸気に変化し、反応容器の上部からのリアルタイム比色モニタリングについての可能性をいくらか妨げる。この理由のために、LAMP比色法の現在の形式は、試料を室温に冷却させた後のエンドポイント測定のみに基づく。このことは、現在の形式では、リアルタイム比色モニタリングを行うことができないことを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、そうしなければ定性的な比色核酸増幅アッセイ、例えばLAMPアッセイを、定量的および典型的にはリアルタイムの手順に変換する方法を開発した。これを達成するために、本発明者らは、リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法および装置を開発した。本発明の1つの重要な態様は、試料を加熱ブロック内に浸漬しない液体試料の加熱である。これは、試料を含有する反応チューブの底部を加熱素子と熱接触させることによって達成される。この方法は、反応チューブの側壁を通して容器の内容物の視覚化を可能にするので視覚モニタリングを容易にする。本発明はさらに、上記の加熱方法を使用すること、および例えばカメラによる視覚モニタリングを使用することによって比色核酸増幅アッセイをモニタリングするための方法を提供する。
【0005】
さらに、本発明は、リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】反応チューブの異なる部分および反応チューブの底部のフットプリントを示す図である。
図2】本発明による装置の概略図を示す図である。
図3】本発明による装置の実施形態を示す図である。
図4】本発明による装置における反応チューブの配置を示す図である。
図5】本発明に従って実施され、指示着色物質としてフェノールレッドおよびヒドロキシルナフトールブルー(HNB)を使用したLAMPアッセイの実験データを示す図である。
図6】本発明に従って実施され、異なる量の圧力下で指示着色物質としてフェノールレッドを使用したLAMPアッセイの実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
核酸増幅アッセイでは、液体試料は典型的に、エッペンドルフチューブとしばしば呼ばれる反応チューブに含有される。典型的に、このようなチューブは、ポリプロピレン(polypropelene)などのポリマー材料製であり、10μl~200μlの体積を有する。市販のエッペンドルフチューブと同様の反応チューブは、他の光学的に透明/半透明な材料および3Dプリントを使用して製造され得る。
【0008】
従来技術のシステムでは、必要な温度に液相を加熱するために、チューブは加熱ブロック内に浸漬される。
本発明者らはここで、驚くべきことに、加熱ブロック内への容器の浸漬は効率的な増幅に必要ではないこと、および液相は、液相を含有するチューブの底部を加熱素子と熱接触させることによって加熱され得ることを見出した。
【0009】
本発明によれば、「チューブの上部」または「反応チューブの上部」は開口部であり、その開口部を通して液体試料がチューブに充填される。「チューブの底部」または「反応チューブの底部」は、チューブの上部と反対側にあるチューブの部分である。図1aは、反応チューブの上部(1)、底部(2)および側壁(3)を示す。
【0010】
本発明によれば、反応チューブは加熱素子の表面上に直接置かれ得る。さらに、加熱素子は熱伝導材料製の表面を含むことができ、その表面上に反応チューブが置かれ得る。加熱素子は典型的に抵抗加熱器またはペルチェ素子である。
【0011】
好ましくは、加熱素子上に設置される場合、チューブの長手軸は、60~120度である、加熱素子に対する角度を形成する。より好ましくは、角度は実質的に直角である。
効率的な核酸増幅アッセイのために、液相の効率的な加熱が最も重要な必要条件の1つである。従来技術は、液相の効率的な加熱のために、反応チューブの多くの面積が加熱体と熱接触しなければならないことを教示している。この理由のために、反応チューブは、チューブのほぼ全体を囲み、チューブの底部および側壁と熱接触する金属ブロック内に浸漬されなければならない。このことは、従来技術が、効率的な加熱のために、チューブのほぼ全面が加熱体と熱接触しなければならないことを教示していることを意味する。ここで、効率的な加熱が、チューブの底部、すなわちチューブの非常に小さな部分のみを加熱素子と熱接触させることによって達成され得ることが予想外に見出された。
【0012】
好ましくは、加熱素子と熱接触しているチューブの面積は最大で12mmである。より好ましくは、加熱素子と熱接触しているチューブの面積は最大で6mmである。さらにより好ましくは、加熱素子と熱接触しているチューブの面積は最大で3mmである。加熱素子と熱接触しているチューブの面積は、図1bに示すように、チューブの底部のフットプリントを確立することによって決定され得る。最初に、チューブの底部が、例えばマーカーで着色され、次いでチューブは1枚の紙(4)に押し付けられて、チューブの底部の円形のフットプリント(5)が得られる。フットプリントの面積は加熱素子と熱接触しているチューブの面積である。
【0013】
本発明者らはまた、驚くべきことに、本発明の加熱方法の有効性および効率が、加熱素子の方へチューブに圧力を加えることによって増加し得ることを見出した。例えば、これを行うことによって、増幅反応が始まる前に必要とされる時間が大幅に短縮される。この態様は、特に、アッセイが可能な限り短時間で実行されなければならない、ポイントオブケア用途において非常に重要である。好ましくは、チューブによって加熱素子に加えられる圧力が0.4MPa~15MPaになるように反応チューブに圧力が加えられる。より好ましくは、チューブによって加熱素子に加えられる圧力は1MPa~10MPaである。さらにより好ましくは、チューブによって加熱素子に加えられる圧力は1MPa~3MPaである。圧力は、当業者に周知である異なる手段によって調整され得る。例えば、圧力は、チューブに異なる重量を加えることによって、またはねじのシステムを使用することによって、または磁石のシステムを使用することによって調整され得る。圧力は当業者に周知の方法によって決定され得る。例えば、圧力は、チューブによって加熱素子に加えられる垂直抗力を測定し、次いで上記のように加熱素子と接触しているチューブの面積を測定し、最後に垂直抗力の値を面積で割ることによって計算され得る。
【0014】
核酸増幅アッセイは、例えば、転写介在増幅、核酸配列ベースの増幅、RNA技術の鎖介在増幅、鎖置換増幅、ローリングサークル増幅、LAMP、等温多重置換増幅、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、シングルプライマー等温増幅、および環状ヘリカーゼ依存性増幅などの等温増幅アッセイであってもよい。好ましくは、アッセイはLAMPアッセイである。
【0015】
本発明の加熱方法の有効性は、チューブが加熱ブロック内に浸漬される、従来技術の方法のものと同じである。他方で、本発明の加熱方法は、液相を加熱するのに必要とされるエネルギーの量が少ないので、エネルギー消費に対して、より高い効率を提供する。
【0016】
本発明の加熱方法の別の利点は、チューブが半透明または透明材料製である場合、チューブの内容物を、チューブの上部からだけでなく、より重要なことに側壁を通して見ることができることである。このことは、比色LAMPアッセイにおける色変化などの、アッセイのパラメーターの視覚モニタリングが、アッセイの実施の間に可能になることを意味する。このことは、増幅反応の間の試料の蒸発がモニタリングを妨げないためである。したがって、本発明の加熱方法はアッセイのリアルタイムモニタリングを可能にする。
【0017】
したがって、本発明の別の態様は、リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための方法であって、液相を含有するチューブの底部を加熱素子と熱接触させることによって液相を加熱するステップと、アッセイのパラメーターのリアルタイム視覚モニタリングを利用するステップとを含む、方法である。
【0018】
視覚モニタリングは、使用者の眼によるモニタリングおよびカメラによるモニタリングを含む。好ましくは、モニタリングはカメラによって実行される。
好ましい実施形態によれば、本発明は、着色物質の形成、反応、または色の変化に起因する液体試料の色の変化をリアルタイムでモニタリングするためにデジタルカラーカメラが使用される方法を提供する。
【0019】
この好ましい実施形態によれば、方法は、液体試料の1つまたは複数の画像を記録するためにデジタルカラーカメラを使用し、各画像について、画像から得られた赤色チャネルデータ、緑色チャネルデータおよび青色チャネルデータのうちの1つまたは複数を処理し、それによってアッセイのパラメーターを得るステップを含む。
【0020】
エンドポイントアッセイでは、方法は典型的に単一画像の記録および処理を含む。方法が複数の画像から得られたデータを記録し、処理するステップを含む場合、一連の画像はビデオを形成することができる。
【0021】
アッセイのパラメーターは、例えば、検体の存在もしくはその量またはLAMPなどの核酸増幅反応の効率であってもよい。
着色物質は、アッセイの間に、その色を形成するか、または消費するか、または変化させる物質を含む。色の変化は、例えば、pHの変化に応答して、または化学反応に応答して発生し得る。色の変化は、ある色から別の色への変化、またはある色から透明への変化、もしくはその逆を含んでもよい。
【0022】
核酸増幅アッセイに使用される着色物質の例には、ヒドロキシナフトールブルー(HNB)、フェノールレッド、カルセイン、クリスタルバイオレット、SYBRグリーンI、クレゾールレッド、ニュートラルレッド、m-クレゾールパープル、金ナノ粒子、ポリジアセチレン(PDA)リポソームおよび当業者に周知の他の物質が含まれる。
【0023】
画像の記録および/または画像から得られたデータの処理は、カラーモード変換、画像較正およびガンマ補正のうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数の画像処理ステップを含んでもよい。
【0024】
典型的に、画像はピクセルを含み、処理ステップは、画像のピクセルから赤色、緑色および青色のうちの1つまたは複数の光のレベル、例えばその強度を抽出し、それによってそれぞれ赤色、緑色および青色チャネルデータのうちの1つまたは複数を得るステップを含む。記録された光のレベル(例えば、強度)は画像のピクセルで表され得る。レベルは、強度、例えば、カメラのチャネルによって記録された強度であってもよい。レベルは、RGBカラー値、例えば、8ビット、16ビット、24ビットまたは32ビットであってもよい。
【0025】
典型的に、デジタルカメラによって記録された画像のピクセルは、画像の異なる色成分を各々表す要素を含む。色成分は典型的に、それぞれ赤色、緑色および青色チャネルに対応する、赤色、緑色および青色であるが、カメラは記録することができ、ならびに/または画像は、属性として明度、彩度および色相を使用するCIECAM02などの異なるカラーモデルに従ったデータを使用して保存され得る。
【0026】
画像は液相の領域のマルチピクセル画像であってもよい。画像は、例えば、光ファイバー、またはカラーチャネルごとの光ファイバーを使用して得ることができる、液相の領域のシングルピクセル画像であってもよい。画像は、例えば、コンピューター画面上に、または画像を表示する当業者に公知の任意の他の様式で表示され得る。
【0027】
本発明の処理ステップは、例えば、数学演算を実行することによって赤色チャネルデータ、緑色チャネルデータおよび青色チャネルデータのうちの1つまたは複数から値を計算するステップを含んでもよい。
【0028】
好ましくは、処理ステップは、赤色チャネルデータ、緑色チャネルデータおよび青色チャネルデータの3つのうちの2つの間の差を計算するステップを含む。より好ましくは、処理ステップは、赤色チャネルデータと緑色チャネルデータとの間の差、または青色チャネルデータと緑色チャネルデータとの間の差を計算するステップを含む。
【0029】
液相のビデオ画像記録はデジタルカメラを使用して行われることが可能である。次いでこのようなビデオ画像記録は、例えばハードウェアプロセッサを使用して、その構成画像に分解され得る。ビデオ画像はリアルタイムで液相アッセイをモニタリングすることを可能にし得る。
【0030】
本発明の別の態様は本発明の方法を実施するための装置である。したがって、本発明は、リアルタイム比色核酸増幅アッセイを実施するための装置であって、
加熱素子と、
半透明または透明材料製であり、チューブの底部が加熱素子と熱接触するように配置される反応チューブと、
反応チューブの側壁を通して画像を記録することができるように配置されるデジタルカラーカメラと、
デジタルカラーカメラによって得られた画像を処理し、画像の赤色、緑色および青色チャネルデータのうちの1つまたは複数を処理し、それによってアッセイのパラメーターを得るように構成される処理ユニットと
を含む、装置を提供する。
【0031】
好ましくは、装置は、加熱素子の方へ反応チューブに圧力を加えるための手段をさらに含む。
本発明による装置の概略図は図2に示される。核酸増幅は、チューブの底部のみが加熱素子と熱接触するように加熱素子(10)上に置かれる反応チューブ(18)内で実行される。カメラ(13)は、反応チューブの側壁を通して画像を記録することができるように配置される。カメラ(13)の出力は、プロセッサ(23)および画像データを保存するためのメモリ(24)ならびにプロセッサによって実行されるコンピュータープログラムを有するコンピューターなどの処理ユニット(22)に送られる。処理ユニット(22)は、図2に示されるように、別個のユニットであってもよいか、またはカメラもしくはカメラを含む他のデバイスの一体的な構成要素であってもよい。
【0032】
図3は、比色LAMPアッセイなどの核酸増幅アッセイを実施し、モニタリングするために使用され得る本発明による装置の実施形態を示す。
装置は、メインスイッチ(8)および電源ソケット(9)を含むメインハウジングユニット(6)を含む。それは、加熱素子ホルダ(11)を介してメインハウジングユニット(6)に取り付けられる加熱素子(10)をさらに含む。メインハウジングユニット(6)は、カメラモジュール(13)を受容するためのカメラホルダ(12)、および反応チューブの内容物を照射するためのLEDライト(14)をさらに含む。メインハウジング(6)は、カメラによって記録された画像を処理するためのマイクロプロセッサおよび電子ボード(図示せず)をさらに含む。
【0033】
装置は、メインハウジングユニット(6)の対応する大きな磁石(16)と係合し、メインハウジングユニット(6)に設置された場合、カバー(7)をその意図される位置に固定する、4つの大きな磁石(15)を含むカバー(7)をさらに含む。
【0034】
装置は、反応チューブ(18)を受容するためのスロットを含む反応チューブホルダ(17)をさらに含む。反応チューブ(18)は半透明材料製である。反応チューブホルダ(17)は、アッセイの間の色変化のモニタリングを容易にする、チューブ(18)に面する側に白色を有する背景壁(19)をさらに含む。
【0035】
アッセイの実施のために、液体試料が、対応するスロットに設置される反応チューブ(18)に添加される。反応チューブホルダ(17)は、反応チューブ(18)の底部が加熱素子(10)と熱接触するように加熱素子(10)上に設置される(図4a)。これにより、カメラは、チューブの側壁を通して液相を可視化することができる(図4b)。カバー(7)は、カバーの大きな磁石(15)を、メインハウジングユニット(6)の大きな磁石(16)と係合することによってその位置に固定される。それによって、反応チューブホルダ(17)は、カバー(7)の対応する小さな磁石(21)と係合する小さな磁石(20)によってその位置に固定される。チューブ(18)の底部によって加熱素子(10)に与えられる圧力は、カバー(7)およびメインハウジングユニット(6)上の大きな磁石(15)および(16)のサイズおよび/または数を変更することによって調整され得る。
【0036】
デジタルカメラは、アッセイの間、画像を記録し、その画像は処理ユニットに送られる。処理ユニットは、赤色チャネルと緑色チャネルとの間、または青色チャネルと緑色チャネルとの間の差を計算するように構成される。これらの値の経時変化は液相の色の変化を計算するために処理される。
【実施例
【0037】
実施例1
PBS緩衝液中に再懸濁した細菌細胞を95℃で1分間溶解した。サルモネラ(Salmonella)侵入遺伝子invAを、2つのアウター(F3およびB3)、2つのインナー(FIPおよびBIP)および2つのループ(Loop-FおよびLoop-B)である、6個のプライマーのセットによって標的化した。
FIP:GACGACTGGTACTGATCGATAGTTTTTCAACGTTTCCTGCGG
BIP:CCGGTGAAATTATCGCCACACAAAACCCACCGCCAGG
F3:GGCGATATTGGTGTTTATGGGG
B3:AACGATAAACTGGACCACGG
Loop F:GACGAAAGAGCGTGGTAATTAAC
Loop B:GGGCAATTCGTTATTGGCGATAG
総体積25μlのLAMP試薬ミックスは、12.5μlの標準物または比色WarmStart 2×Master Mix(New England BioLabs)を含有し、これは、着色物質としてフェノールレッド、1.8μMのFIPおよびBIP、0.1μMのF3およびB3、0.4μMのLoop-FおよびLoop-B、ならびにPBS中の1μlの溶解細胞を使用する。反応は、図3~4に示した装置に設置した反応チューブ内で実行した。アッセイのモニタリングは、装置のデジタルカメラによってチューブの内容物の画像を記録することによって実行した。
【0038】
実施例2
実施例1から得られた画像を以下のように処理する。
第1に、上記のように液相の一連の画像を得る。カメラからの元の赤色(R)、緑色(G)および青色(B)チャネルを、例えば、ガンマ補正、色調整などを含む、画像処理に供することができる。第2に、赤色、緑色および青色チャネルデータを各画像の1つまたは複数のピクセルから抽出する。
【0039】
第3のステップでは、赤色、緑色および青色チャネルの各々に関して、各時点で、赤色、緑色および青色チャネルの初期値を差し引いて、ゼロから開始するデータを得る。差し引かれる値は、最初の時点でのそれぞれ、赤色、緑色または青色の値であり得るが、典型的に、いくつかの初期時点からの値が平均化されてもよいか、または曲線がプロットされてもよく、時間ゼロ軸切片が計算され、差し引かれる。
【0040】
次に、チャネルの2つの間の差を計算する。フェノールレッドを用いた以下のプロトコルの例の場合、緑色の値と青色の値との間の差を計算する(すなわち、以前のステップから得た青色の値を緑色の値から差し引く)。これは各時点で行われる。HNBを用いると、緑色の値と赤色の値との間の差を計算する。
【0041】
次に、差を任意選択によりプロットし、次いで分析して、アッセイの1つまたは複数のパラメーターを決定する。計算した差の値が閾値を超えて増加する時間を使用して、例えば対照(既知の濃度の検体との1つもしくは複数の反応の並行測定および/または予め保存したデータであり得る)を参照して、検体の存在または量を決定することができる。また、経時的な差の値の変化を分析して、増幅反応の効率を確立し、また、例えば、開始時間に戻す外挿によって、検体の量の推定を改善することもできる。
【0042】
図5は、2つの異なる着色物質;pH指示薬であるフェノールレッドおよび金属結合指示薬であるHNBを使用した2つの陽性(感染/10個の細菌の存在)試料のLAMP増幅のリアルタイムモニタリングの比較からの結果を示す。液相の画像は、アッセイが進行するにつれて時間の関数として自動的に記録され、分析されている。緑色のチャネルと青色のチャネルとの間、または緑色のチャネルと赤色のチャネルとの間の差が、各場合、計算される。アッセイの間、反応チューブによって加熱素子に加えられた圧力は2MPaであった。
【0043】
図5は、フェノールレッドまたはHNBカラー指示薬を使用した10個の細菌のLAMP増幅の間のリアルタイム曲線を示す。緑色のチャネルと青色のチャネルとの間の差はフェノールレッド指示薬について計算され、一方、緑色のピクセルと赤色のピクセルとの間の差はHNBについて使用される。プロットは、どちらの場合も、反応の15分目よりも前に陽性シグナルを観察することができることを示す。したがって、検体(この場合、サルモネラ細胞)が存在するか否かを決定することができ、所定の時間での差の大きさを使用して、例えば1つまたは複数の対照と比較して検体の量を決定することができる。
【0044】
実施例3
この実施例は、実施例2の画像処理方法を使用することによって陰性(非感染/サルモネラの非存在)試料に対する陽性(感染/サルモネラの存在)試料の比較からの第2のセットの結果を例示する。この場合に使用されている着色物質はフェノールレッドである。液相の画像は、アッセイが進行するときの時間の関数として記録されている。緑色チャネルと青色チャネルとの間の差が計算される。
【0045】
図6aは、図3~4に示した装置に設置された反応チューブ内で実行したサルモネラ細胞(陽性対陰性試料)のリアルタイム比色LAMP検出を示す。チューブによって加熱素子に加えられた圧力は0.4MPaであった。陽性曲線の色の変化は23分から始まる。30分に測定した最大色変化(色指数単位)は17単位である。
【0046】
図6bは、以前の段落において説明したものと同じ様式で実行したサルモネラ細胞(陽性対陰性試料)のリアルタイム比色LAMP検出の例を示す。しかしながら、この場合、チューブによって加熱素子に加えられた圧力は2MPaであった。陽性曲線の色の変化は17分から始まる。30分に測定した最大色変化(色指数単位)は28単位である。指数関数的増幅アッセイの場合、6分早く検出すると、感度が1~2桁向上し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】