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特表2022-506430CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220107BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220107BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220107BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220107BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220107BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220107BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/28
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 U
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P13/12
A61P1/04
A61P7/04
A61P9/00
A61P21/04
A61P3/10
A61P17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523796
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 RU2019050205
(87)【国際公開番号】W WO2020091634
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】2018138510
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516261966
【氏名又は名称】ジョイント・ストック・カンパニー “バイオキャド”
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】イアコフレフ,パベル・アンドレービッチ
(72)【発明者】
【氏名】ペストーワ,ナタリア・ユーゲニエフナ
(72)【発明者】
【氏名】アニキナ,アリーナ・ビタレフナ
(72)【発明者】
【氏名】トルドビシニコワ,アンナ・アレクサンドロフナ
(72)【発明者】
【氏名】シュチェメレワ,マリーア・アレクサンドロフナ
(72)【発明者】
【氏名】カラティアン,ニーナ・グラチヤエフナ
(72)【発明者】
【氏名】ソロフエフ,バレリイ・ウラディミロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ミソリン,アレクセイ・コンスタンチノビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ディドゥク,セルゲイ・バシリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】エロシャワ,アンナ・ウラジミロフナ
(72)【発明者】
【氏名】ウサトワ,ベロニカ・セルゲーフナ
(72)【発明者】
【氏名】クレンデレワ,エレーナ・アンドレーフナ
(72)【発明者】
【氏名】ウスティウゴフ,イアコフ・イウレビッチ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロフ,アレクセイ・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】スミルノーワ,イアナ・アンドレーフナ
(72)【発明者】
【氏名】コスコワ,スベトラーナ・ウラジミロフナ
(72)【発明者】
【氏名】イワノフ,ロマン・アレクセービッチ
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ,ドミトリ・バレンチノビッチ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA36
4C084ZA53
4C084ZA68
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC35
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジーに関し、そしてCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。本発明はまた、前記抗体をコードするDNA、対応する発現ベクター、およびその産生の方法、ならびに前記抗体を用いた治療の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
1)配列番号2または配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン;
2)配列番号4または配列番号8に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
1)重鎖可変ドメインが配列番号2に示すアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが配列番号4に示すアミノ酸配列を含む
請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
1)重鎖可変ドメインが配列番号6に示すアミノ酸配列を含み;
2)軽鎖可変ドメインが配列番号8に示すアミノ酸配列を含む
請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
1)配列番号1または配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、重鎖;
2)配列番号3または配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖
を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
1)配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、重鎖;
2)配列番号3に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖
を含む、請求項4記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
1)配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、重鎖;
2)配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖
を含む、請求項4記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
CD20に特異的に結合する抗体が、全長IgG抗体である、請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
全長IgG抗体が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプに関連する、請求項7記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
全長IgG抗体がヒトIgG1アイソタイプに関連する、請求項8記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸。
【請求項11】
核酸がDNAである、請求項10記載の核酸。
【請求項12】
請求項10~11のいずれか一項記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項13】
請求項12記載のベクターで、細胞を形質転換する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を産生するための宿主細胞の産生のための方法。
【請求項14】
請求項10~11のいずれか一項記載の核酸を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を産生するための、宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片の産生のための方法であって、前記抗体またはその抗原結合断片を産生するために十分な条件下で、培地中で、請求項14記載の宿主細胞を培養し、必要であれば、その後、産生した抗体またはその抗原結合断片を単離し、そして精製する工程を含む、前記方法。
【請求項16】
CD20によって仲介される疾患または障害の予防または治療のための薬学的組成物であって、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を、1つまたはそれより多い薬学的に許容されうる賦形剤と組み合わせて含む、前記薬学的組成物。
【請求項17】
請求項16記載の予防または治療のための薬学的組成物であって、疾患または障害が:
a)腫瘍性疾患または障害あるいは
b)自己免疫疾患または障害
より選択される、前記薬学的組成物。
【請求項18】
腫瘍性疾患または障害が:B細胞リンパ腫または白血病を含む群より選択される、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
B細胞リンパ腫が:非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキン病(ホジキンリンパ腫)より選択される、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
白血病が:慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)より選択される、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項21】
自己免疫疾患または障害が:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群より選択される、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項22】
CD20によって仲介される疾患または障害の予防または治療のための薬学的組み合わせであって、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片、および少なくとも1つの異なる療法的活性化合物を含む、前記薬学的組み合わせ。
【請求項23】
異なる療法的活性抗腫瘍化合物が、化学療法剤、抗体または抗ホルモン剤より選択される、請求項22記載の薬学的組み合わせ。
【請求項24】
CD20の生物学的活性の阻害を必要とする被験体における、こうした阻害のための方法であって、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片の有効量の投与を含む、前記方法。
【請求項25】
CD20によって仲介される疾患または障害の治療のための方法であって、こうした治療を必要とする被験体において、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項16記載の薬学的組成物を、療法的有効量で投与する工程を含む、前記方法。
【請求項26】
疾患または障害が:
a)腫瘍性疾患または障害あるいは
b)自己免疫疾患または障害
より選択される、請求項25記載の疾患または障害の治療のための方法。
【請求項27】
腫瘍性疾患または障害が:B細胞リンパ腫または白血病を含む群より選択される、請求項26記載の疾患または障害の治療のための方法。
【請求項28】
B細胞リンパ腫が:非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキン病(ホジキンリンパ腫)より選択される、請求項27記載の疾患または障害の治療のための方法。
【請求項29】
白血病が:慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)より選択される、請求項27記載の疾患または障害の治療のための方法。
【請求項30】
自己免疫疾患または障害が:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群より選択される、請求項26記載の疾患または障害の治療のための方法。
【請求項31】
CD20によって仲介される疾患または障害の治療の必要がある被験体におけるこうした治療のための、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項16記載の薬学的組成物の使用。
【請求項32】
疾患または障害が:
a)腫瘍性疾患または障害あるいは
b)自己免疫疾患または障害
より選択される、請求項27記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項33】
腫瘍性疾患または障害が:B細胞リンパ腫または白血病を含む群より選択される、請求項32記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項34】
B細胞リンパ腫が:非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキン病(ホジキンリンパ腫)より選択される、請求項33記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項35】
白血病が:慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)より選択される、請求項33記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項36】
自己免疫疾患または障害が:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群より選択される、請求項32記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野、特に抗CD20抗体またはその抗原結合断片、およびB細胞と関連する疾患の治療のための該抗体または断片の使用に関する。より具体的には、本発明は、CD20(Bリンパ球抗原CD20)に特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。本発明はまた、前記抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸、発現ベクター、抗体を産生するための方法、およびB細胞、特にBリンパ球抗原CD20と関連する疾患または障害の治療のための抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球は、白血球の多くのタイプの1つであり;リンパ球は、外来(foreign)抗原を特異的に認識し、そしてこれに反応する。リンパ球の3つの主なタイプは、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)およびナチュラルキラー(NK)細胞である。Bリンパ球は、抗体産生および体液性免疫に関与する細胞である。B細胞は、骨髄内で成熟し、そして細胞表面上に抗原結合抗体を発現する状態で骨髄を離れる。以前曝露されていないB細胞が、膜結合抗体が特異的である抗原と最初に出会うと、細胞は迅速に分裂し始め、そしてその子孫はメモリーB細胞および「形質細胞」と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。メモリーB細胞は、より長い寿命を有し、そして元来の親細胞と同じ特異性を持つ膜結合抗体を発現し続ける。形質細胞は、膜結合抗体を産生せず、代わりに分泌可能な型の抗体を産生する。分泌された抗体は、体液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0003】
抗原CD20(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも称される)は、プレBおよび成熟Bリンパ球上に位置する、およそ35kDaの分子量の疎水性膜貫通タンパク質である(Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19), 1989, p.11282-11287;およびEinfeldら, EMBO J. 7(3), 1988, p.711-717)。抗原はまた、非ホジキンリンパ腫におけるB細胞の90%を超える細胞表面上でも発現される(HXJI)(Andersonら, Blood 63(6), 1984, p.1424-1433)が、造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞または他の正常組織上では検出されていない(Tedderら, J. Immunol. 135(2), 1985, p.973-979)。CD20は、細胞周期開始および分化の活性化プロセスにおいて、初期段階(単数または複数)を制御するようであり(Tedderら、上記)、そしておそらく、カルシウムイオンチャネルとして機能する(Tedderら. J. Cell. Biochem. 14D, 1990, p.195)。
【0004】
B細胞リンパ腫において、CD20が発現されることを考慮すると、この抗原は、前記リンパ腫の治療において、価値ある療法ターゲットでありうる。
抗体リツキシマブ(RITUXAN、MabThera、Acellbia)は、ヒト抗原CD20に対する、遺伝子操作されたキメラネズミ/ヒトモノクローナル抗体であり、再発性または難治性低悪性度または濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫に罹患した患者の治療のために示される。リツキシマブは、US 5,736,137およびUS 5,776,456において、「C2B8」と称される抗体である。in vitro作用様式の研究は、リツキシマブがヒト補体に結合し、そして補体依存性細胞傷害性(CDC)を通じて、Bリンパ球系統を溶解させることを示している(Reffら, Blood 83(2), 1994, p.435-445)。さらに、この抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)アッセイにおいて、有意な活性を有する。in vivoの前臨床試験は、リツキシマブが、おそらく補体および細胞仲介性プロセスを通じて、カニクイザル(cynomolgus monkey)(Macaca fascicularis)の末梢血、リンパ節および骨髄からB細胞を枯渇させることを示している(Reffら, Blood 83(2), 1994, p.435-445)。
【0005】
さらに、後に、抗CD20抗体、例えばリツキシマブが、多様な自己免疫疾患、例えば関節リウマチ(特許、RU2358762、RU2489166およびRU2457860)またはウェゲナー肉芽腫症(特許、RU2326127)の治療においても有効な療法剤であることが見出された。
【0006】
ヒト療法におけるネズミ抗体使用の大きな限界は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)の形成である(例えば、Miller R.A.ら, ”Monoclonal antibody therapeutic trials in seven patients with T-cell lymphoma,” Blood, 62, 1983, p.988-995;およびSchroff R.W.ら, ”Human anti-murine immunoglobulin response in patients receiving monoclonal antibody therapy,” Cancer Res., 45, 1985, p.879-885を参照されたい)。齧歯類抗体の可変(V)ドメインをヒト定常(C)領域に融合させたキメラ分子であっても、なお、有意な免疫反応(HACA、ヒト抗キメラ抗体反応)を誘発可能である(Neubergerら, Nature(London), 314, 1985, p.268-270)。
【0007】
モノクローナル抗体の臨床使用におけるこれらの限界を克服する強力なアプローチは、ネズミ抗体または非ヒト種由来の抗体の「ヒト化」である(Jonesら, Nature(London), 321, 1986, p.522-525; Riechmanら, Nature(London), 332, 1988, p.323-327)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 5,736,137
【特許文献2】US 5,776,456
【特許文献3】RU2358762
【特許文献4】RU2489166
【特許文献5】RU2457860
【特許文献6】RU2326127
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19), 1989, p.11282-11287
【非特許文献2】Einfeldら, EMBO J. 7(3), 1988, p.711-717
【非特許文献3】Andersonら, Blood 63(6), 1984, p.1424-1433
【非特許文献4】Tedderら, J. Immunol. 135(2), 1985, p.973-979
【非特許文献5】Tedderら. J. Cell. Biochem. 14D, 1990, p.195
【非特許文献6】Reffら, Blood 83(2), 1994, p.435-445
【非特許文献7】Miller R.A.ら, ”Monoclonal antibody therapeutic trials in seven patients with T-cell lymphoma,” Blood, 62, 1983, p.988-995
【非特許文献8】Schroff R.W.ら, ”Human anti-murine immunoglobulin response in patients receiving monoclonal antibody therapy,” Cancer Res., 45, 1985, p.879-885
【非特許文献9】Neubergerら, Nature(London), 314, 1985, p.268-270
【非特許文献10】Jonesら, Nature(London), 321, 1986, p.522-525
【非特許文献11】Riechmanら, Nature(London), 332, 1988, p.323-327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、患者に投与した際に最小限の抗原性を生じるか、または抗原性をまったく生じず、そして長期治療における使用のために主に意図される、CD20抗原に対する療法抗体を産生することが有益である。本発明はこの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
モノクローナル抗体BCD-132は、CD20抗原に選択的に、そして特異的に結合し、そしてCD20抗原の有効な阻害剤であり;また、本発明の抗体は、患者に投与した際に、最小限の抗原性しか持たない。
【0012】
発明の簡単な概要
1つの側面において、本発明は、CD20に特異的に結合し、そして:
1)配列番号2または配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン;
2)配列番号4または配列番号8に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0013】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は:
1)配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン;
2)配列番号4に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む。
【0014】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は:
1)配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン;
2)配列番号8に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む。
【0015】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は:
1)配列番号1または配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、重鎖;
2)配列番号3または配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖
を含む。
【0016】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は:
1)配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、重鎖;
2)配列番号3に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖
を含む。
【0017】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は:
1)配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、重鎖;
2)配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖
を含む。
【0018】
いくつかの態様において、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、全長IgG抗体である。
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプのものである。
【0019】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものである。
1つの側面において、本発明は、上記抗体をコードする、核酸に関する。
【0020】
いくつかの態様において、核酸はDNAである。
1つの側面において、本発明は、上記核酸を含む、発現ベクターに関する。
1つの側面において、本発明は、上記ベクターでの細胞の形質転換を含む、上記抗体を産生するための宿主細胞の産生のための方法に関する。
【0021】
1つの側面において、本発明は、上記抗体の産生のための宿主細胞であって、上記核酸を含む前記宿主細胞に関する。
1つの側面において、本発明は、上記抗体の産生のための方法であって、前記抗体を産生するために十分な条件下で、培地中で、上記宿主細胞を培養し、必要であれば、その後、得られた抗体を単離し、そして精製する工程を含む、前記方法に関する。
【0022】
1つの側面において、本発明は、CD20によって仲介される疾患または障害の治療のために用いられる薬学的組成物であって、療法的有効量の前記抗体またはその抗原結合断片を、1つまたはそれより多い薬学的に許容されうる賦形剤と組み合わせて含む、前記薬学的組成物に関する。
【0023】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、疾患または障害の治療のために用いられるよう意図され、ここで、疾患または障害は:
a)腫瘍性疾患または障害あるいは
b)自己免疫疾患または障害
より選択される。
【0024】
いくつかの態様において、薬学的組成物は:B細胞リンパ腫または白血病を含む群より選択される腫瘍性疾患または障害の治療のために用いられるよう意図される。
いくつかの態様において、薬学的組成物は:非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキン病(ホジキンリンパ腫)より選択されるB細胞リンパ腫の治療のために意図される。
【0025】
いくつかの態様において、薬学的組成物は:慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)より選択される白血病の治療のために意図される。
いくつかの態様において、薬学的組成物は:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群より選択される自己免疫疾患または障害の治療のために意図される。
【0026】
1つの側面において、本発明は、CD20によって仲介される疾患または障害の予防または治療のための薬学的組み合わせであって、前記抗体またはその抗原結合断片、および少なくとも1つの療法的活性化合物を含む、前記薬学的組み合わせに関する。
【0027】
いくつかの態様において、薬学的組み合わせは、化学療法剤、抗体または抗ホルモン剤より選択される、異なる療法的活性抗腫瘍化合物を含む。
1つの側面において、本発明は、CD20の生物学的活性の阻害を必要とする被験体における、こうした阻害のための方法であって、前記抗体またはその抗原結合断片の有効量の投与を含む、前記方法に関する。
【0028】
1つの側面において、本発明は、CD20によって仲介される疾患または障害の治療のための方法であって、療法的有効量の前記抗体またはその抗原結合断片、あるいは前記薬学的組成物のこうした治療を必要とする被験体への投与を含む、前記方法に関する。
【0029】
いくつかの態様において、疾患または障害の治療のための方法は:
a)腫瘍性疾患または障害あるいは
b)自己免疫疾患または障害
より選択される、疾患または障害に関する。
【0030】
いくつかの態様において、疾患または障害の治療のための方法は:B細胞リンパ腫または白血病を含む群より選択される、腫瘍性疾患または障害に関する。
いくつかの態様において、疾患または障害の治療のための方法は:非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキン病(ホジキンリンパ腫)より選択される、B細胞リンパ腫に関する。
【0031】
いくつかの態様において、疾患または障害の治療のための方法は:慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)より選択される、白血病に関する。
いくつかの態様において、疾患または障害の治療のための方法は:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群より選択される、自己免疫疾患または障害に関する。
【0032】
1つの側面において、本発明は、CD20によって仲介される疾患または障害の治療の必要がある被験体における治療のための、前記抗体またはその抗原結合断片、あるいは前記薬学的組成物の使用に関する。
【0033】
いくつかの態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は疾患または障害の治療のために用いられ、ここで、疾患または障害は:
a)腫瘍性疾患または障害あるいは
b)自己免疫疾患または障害
より選択される。
【0034】
いくつかの態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は:B細胞リンパ腫または白血病を含む群より選択される、腫瘍性疾患または障害の治療のために用いられる。
いくつかの態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は:非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキン病(ホジキンリンパ腫)より選択される、B細胞リンパ腫の治療のために用いられる。
【0035】
いくつかの態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は:慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)より選択される、白血病の治療のために用いられる。
【0036】
いくつかの態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群より選択される、自己免疫疾患または障害の治療のために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】発現ベクターpEE CKのマップ。
図2】発現ベクターpEE HCのマップ。
図3】IgG1形式の模式図。
図4】ヒト・ナイーブコンビナトリアルライブラリーの合成図。
図5】Fabファージディスプレイライブラリーをクローニングするためのファージミドのマップ。
図6】Fabを培養するための発現プラスミドpLLのマップ。
図7】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図8】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-026候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図9】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-028候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図10】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-075候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図11】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図12】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-028候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図13】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(1、2)候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図14】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(3、4)候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図15】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(5、6)候補-ビオチン化CD20ペプチド相互作用の分析。
図16】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-028候補-FcγRIIIa-158F相互作用の分析。
図17】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(1、2)候補-FcγRIIIa-158F相互作用の分析。
図18】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(3、4)候補-FcγRIIIa-158F相互作用の分析。
図19】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(5、6)候補-FcγRIIIa-158F相互作用の分析。
図20】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-028候補-FcγRIIIa-158V相互作用の分析。
図21】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(1、2)候補-FcγRIIIa-158V相互作用の分析。
図22】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(3、4)候補-FcγRIIIa-158V相互作用の分析。
図23】Forte Bio Octet RED 386上のBCD132L-077(5、6)候補-FcγRIIIa-158V相互作用の分析。
図24】発現ベクターpSXのマップ。
図25】MabTheraと比較した際の、フローサイトメトリーを用いたWIL2-S細胞株上のCD20受容体に対するBCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の特異的結合の測定。
図26】MabTheraと比較した際の、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の補体依存性細胞傷害性の測定。BCD-132-L-028●MabThera ■BCD-132-L-028 ▼BCD-132-L-077。
図27】MabTheraと比較した際の、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の補体依存性細胞傷害性の測定。BCD-132-L-077●MabThera ■BCD-132-L-028 ▼BCD-132-L-077。
図28】MabTheraと比較した際の、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の抗体依存性細胞傷害性の測定。低アフィニティCD16レポーター細胞株、ターゲットWIL2-S細胞株。BCD-132-L-028●MabThera ■BCD-132-L-028 ▼BCD-132-L-077。
図29】MabTheraと比較した際の、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の抗体依存性細胞傷害性の測定。低アフィニティCD16レポーター細胞株、ターゲットWIL2-S細胞株。BCD-132-L-077●MabThera ■BCD-132-L-028 ▼BCD-132-L-077。
図30】MabTheraと比較した際の、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の抗体依存性細胞傷害性の測定。高アフィニティCD16レポーター細胞株、ターゲットWIL2-S細胞株。BCD-132-L-028●MabThera ■BCD-132-L-028 ▼BCD-132-L-077。
図31】MabTheraと比較した際の、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の抗体依存性細胞傷害性の測定。高アフィニティCD16レポーター細胞株、ターゲットWIL2-S細胞株。BCD-132-L-077●MabThera ■BCD-132-L-028 ▼BCD-132-L-077。
図32】FF(A)、FV(B)およびVV(C)アロタイプの健康なドナー由来の全血に対する、MabTheraと比較した際の、抗体BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077によって誘導されるCD19+によるB細胞枯渇の測定。
図33】商業的に入手可能な抗体、リツキシマブに比較した、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の測定。
図34】炎症反応重症度(BCD132-L-077)。
図35】脱髄重症度(BCD132-L-077)。
図36】22.0mg/kg、44.0mg/kg、88.0mg/kgの用量のBCD132-L-077産物の反復静脈内投与下での霊長類血清に関する平滑化濃度曲線。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義および一般的な方法
別に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、一般の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0039】
さらに、背景によって別に必要とされない限り、単数形の用語には複数形が含まれるものとし、そして複数形の用語には単数形が含まれるものとする。典型的には、細胞培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医学および薬学的化学の分類および方法、ならびに本明細書に記載するタンパク質および核酸のハイブリダイゼーションおよび化学は、当業者によって周知であり、そして広く用いられている。酵素反応および精製法は、当該技術分野において一般的であるように、または本明細書に記載するように、製造者の指示にしたがって実行される。
【0040】
抗体に関する定義
CD20、またはBリンパ球抗原CD20は、Bリンパ球表面上に見られるタンパク質共受容体である。CD20は、ヒトMS4A1遺伝子の産物である。このタンパク質の正確な機能はいまだに知られていないが、該タンパク質は、Bリンパ球の活性化および増殖に役割を果たすと考えられる。
【0041】
MS4A1遺伝子は、少なくとも25の他の遺伝子からなるMS4A(膜貫通4A)遺伝子ファミリーのメンバーである。このファミリーの遺伝子は、ヒト染色体遺伝子座11q12-13にクラスター形成される。対応するタンパク質は、類似の空間構造を有すると考えられ:これらは、NおよびC末端細胞質ドメインを伴い4回貫通膜トポロジーを有する(JANAS E.ら, Functional role of lipid rafts in CD20 activity?, Biochem Soc Symp. 2005;(72):165-75)。
【0042】
この遺伝子の増幅および/またはそのタンパク質の過剰発現が、多くの癌または自己免疫疾患において観察されてきており、これには、以下におけるものが含まれる:
a)非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(ホジキンリンパ腫)、慢性リンパ球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む群からの腫瘍性疾患または障害、
b)関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スティル病)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、ANCA血管炎、実質性臓器の移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を含む群からの自己免疫疾患または障害。
【0043】
用語「結合分子」には、抗体および免疫グロブリンが含まれる。
用語「抗体」または「免疫グロブリン」(Ig)には、本明細書において、完全抗体および任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)または一本鎖が含まれる。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、または抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常領域を含む。ギリシャ文字:α、δ、ε、γおよびμで示される哺乳動物Ig重鎖の5つのタイプが知られる。重鎖のタイプは、抗体クラスを定義する:これらの鎖は、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体に見られる。異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり;αおよびγはおよそ450アミノ酸を含有する一方、μおよびεはおよそ550アミノ酸を有する。各重鎖は2つの領域、定常領域および可変領域を有する。定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つの定常ドメインCH1、CH2およびCH3(一列に)で構成される、定常領域、ならびに柔軟性を付加するためのヒンジ領域を有し(Woof J., Burton D., Nat Rev Immunol 4, 2004, cc.89-99);重鎖μおよびεは、4つの定常ドメイン、CH1、CH2、CH3およびCH4で構成される定常領域を有する。哺乳動物において、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)によって示される2つのタイプの軽鎖のみが知られる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖のおよその長さは211~217アミノ酸である。好ましくは、軽鎖はカッパ(κ)軽鎖であり、そして定常ドメインCLは好ましくはCカッパ(κ)である。
【0044】
本発明記載の「抗体」は、任意のクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、好ましくはIgG)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2、好ましくはIgG1)であってもよい。
【0045】
VLおよびVH領域を、より保存される、フレームワーク領域(FR)と称される領域の間に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域にさらに分けてもよい。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される、3つのCDRおよび4つのFRで構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介しうる。
【0046】
用語、抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合断片」(あるいは単に「抗体部分」または「抗体断片」)は、本明細書において、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたはそれより多い断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実行可能であることが示されてきている。用語、抗体の「抗原結合部分」内に含まれる結合断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片一価断片;(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VH/VHHドメインからなるdAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544-546);および(vi)抽出された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つの領域、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされており、単一のタンパク質鎖を受け入れることが可能であるようにする合成リンカーを用いた組換え法を用いて、これらを連結してもよく、ここで、VLおよびVH領域は対形成して一価分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;およびHustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。こうした一本鎖分子もまた、用語、抗体の「抗原結合部分」内に含まれると仮定される。これらの抗体断片は、当業者に知られる慣用的技術を用いて得られ、そして該断片は、損なわれていない(intact)抗体と同じ方式でスクリーニングされる。
【0047】
好ましくは、本発明の抗原結合部分のCDRまたは完全抗体抗原結合部分は、マウス、ラマまたはヒトドナーライブラリーに由来するか、あるいは実質的にヒト起源であり、特定の抗体の特性、例えばKD、koff、IC50、EC50、ED50を最適化するため、特定のアミノ酸残基が改変されている、例えば異なるアミノ酸残基で置換されている。好ましくは、本発明の抗体のフレームワーク領域はヒト起源であるかまたは実質的にヒト起源である(少なくとも80、85、90、95、96、97、98または99%ヒト起源)。
【0048】
他の態様において、本発明の抗原結合部分は、マウス、ラマ、ウサギ、ラットまたはハムスターを含むがこれらに限定されない、他の非ヒト種に由来してもよい。あるいは、抗原結合領域は、ヒト種に由来してもよい。
【0049】
用語「可変ドメイン」は、可変ドメインの特定の部分で、抗体間で配列が非常に異なる事実を指す。Vドメインは、抗原結合を仲介し、そしてその特定の抗原に関する特定の抗体各々の特異性を決定する。しかし、可変性は可変ドメインの110アミノ酸スパンに渡って、均一には分布していない。その代わり、V領域は、「超可変領域」またはCDRと称される超可変性のより短い領域によって分離される、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と称される不変断片からなる。天然重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのFRを含み、これらは主にベータシート配置を採用し、ベータシート構造を連結し、そしてある場合はその一部を形成するループを形成する、3つの超可変領域によって連結される。各鎖中の超可変領域は、FRによってごく近接してともに保持され、そしてもう一方の鎖に由来する超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接は関与しないが、多様なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体の関与を示す。
【0050】
用語「超可変領域」は、本明細書において、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基および/または「超可変ループ」由来の残基を含む。
【0051】
特定の場合、ターゲットエピトープに対する結合アフィニティを改善するため、1つまたはそれより多いCDRアミノ酸残基を改変することが望ましい可能性もまたある。これは、「アフィニティ成熟」として知られ、そして随意に、例えば抗体のヒト化が結合特異性またはアフィニティの減少を導き、そして復帰突然変異のみによっては結合特異性またはアフィニティを十分に改善することが不可能である状況において、ヒト化と関連して実行されてもよい。多様なアフィニティ成熟法が当該技術分野に知られ、例えばBurksら, Proc Natl Acad Sci USA, 94:412-417(1997)によって記載されるin vitroスキャニング飽和突然変異誘発法、およびWuら, Proc Natl Acad Sci USA 95:6037 6042(1998)による段階的in vitroアフィニティ成熟法がある。
【0052】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基とは異なる可変ドメインの残基である。各可変ドメインは、典型的には、FR1、FR2、FR3およびFR4と同定される4つのFRを有する。CDRをKabatにしたがって定義した際、軽鎖FR残基は、およそ、残基1~23(LCFR1)、35~49(LCFR2)、57~88(LCFR3)、および98~107(LCFR4)に位置し、そして重鎖FR残基は、重鎖中、およそ、残基1~30(HCFR1)、36~49(HCFR2)、66~94(HCFR3)、および103~113(HCFR4)に位置する。CDRが超可変ループ由来のアミノ酸残基を含む場合、軽鎖FR残基は、軽鎖中、およそ、残基1~25(LCFR1)、33~49(LCFR2)、53~90(LCFR3)、および97~107(LCFR4)に位置し、そして重鎖FR残基は、重鎖残基中、およそ、残基1~25(HCFR1)、33~52(HCFR2)、56~95(HCFR3)、および102~113(HCFR4)に位置する。CDRがKabatによって定義されるCDRおよび超可変ループのものの両方に由来するアミノ酸を含むいくつかの場合、FR残基は適宜調節されるであろう。例えば、CDRH1にアミノ酸H26~H35が含まれる場合、重鎖FR1残基は1~25位であり、そしてFR2残基は36~49位である。
【0053】
免疫グロブリンの断片、結晶化可能領域(「Fc領域、Fc」)は、細胞表面Fc受容体、ならびに補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する、免疫グロブリンの「テール」領域である。この特性は、抗体が免疫系を活性化することを可能にする。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプにおいて、Fc領域は、それぞれ、2つの重鎖の第二および第三の定常ドメイン由来の2つの同一のタンパク質断片で構成され;IgMおよびIgEアイソタイプにおいては、Fc領域は、各ポリペプチド鎖において、3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含有する。
【0054】
ターゲット抗原に「結合する」本発明の抗体は、該抗体が前記抗原を発現するタンパク質または細胞をターゲティングする診断および/または療法剤として使用可能であり、そして他のタンパク質とわずかにしか交差反応しないように、十分なアフィニティで抗原に結合可能な抗体を指す。分析法:蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはELISAにしたがって、こうした態様において、非ターゲットタンパク質に対する抗体結合の度合いは、特異的ターゲットタンパク質への抗体結合の10%未満である。ターゲット分子への抗体の結合に関して、用語、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドターゲット上のエピトープに対する「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」は、非特異的相互作用とは顕著に(測定可能に)異なる結合を意味する(例えばbH1-44またはbH1-81の場合、非特異的相互作用は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ウシ胎児血清またはニュートラアビジンに対する結合である)。
【0055】
例えば、対照分子の結合に比較した、分子の結合を決定することによって、特異的結合を測定してもよい。例えば、ターゲットに類似の対照分子、例えば過剰な非標識ターゲットとの競合によって、特異的結合を決定してもよい。この場合、プローブに対する標識ターゲットの結合が、過剰な非標識ターゲットによって競合的に阻害された場合、特異的結合が示される。本明細書において、用語、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドターゲット上のエピトープに対する「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」は、少なくとも約200nM、または少なくとも約150nM、または少なくとも約100nM、または少なくとも約60nM、または少なくとも約50nM、または少なくとも約40nM、または少なくとも約30nM、または少なくとも約20nM、または少なくとも約10nM、または少なくとも約8nM、または少なくとも約6nM、または少なくとも約4nM、または少なくとも約2nM、または少なくとも約1nM、またはそれよりも大きい、ターゲットに対するKdを有する分子によって記載されうる。1つの態様において、用語「特異的結合」は、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープへの実質的な結合を伴わずに、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに分子が結合する場合の結合を指す。
【0056】
用語「Ka」は、本明細書において、特定の抗体-抗原相互作用の会合(オン)速度を指す。
用語「Kd」は、本明細書において、特定の抗体-抗原相互作用の解離(オフ)速度を指す。
【0057】
「結合アフィニティ」は、一般的に、分子(例えば抗体)およびその結合パートナー(例えば抗原)の単一の結合部位の間の非共有相互作用の総計強度を指す。別に示さない限り、「結合アフィニティ」は、結合対のメンバー(例えば抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する、本質的な(特性的な、真の)結合アフィニティを指す。分子Xのその結合パートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数(Kd)によって示されうる。好ましいKd値は、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM、またはそれ未満である。本明細書に記載するものを含めて、当該技術分野に知られる一般的な方法によって、アフィニティを測定してもよい。低アフィニティ抗体は、一般的に、抗原にゆっくりと結合し、そして容易に解離する傾向がある一方、高アフィニティ抗体は、一般的に、抗原により迅速に結合し、そしてより長く結合したままである傾向がある。結合アフィニティを測定する多様な方法が当該技術分野に知られ、本発明の目的のために、これらの方法のいずれを用いてもよい。
【0058】
1つの態様において、「Kd」または「Kd値」は、25℃、~10反応単位(RU)で、固定された抗原CM5チップを伴い、BIAcoreTM-2000またはBIAcore(登録商標)-3000(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore, Inc.)を、製造者の指示にしたがって、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(~0.2μM)まで希釈し、そして次いで、5μl/分の流速で注入して、結合タンパク質のおよそ10相対単位(RU)を達成する。抗原投与後、1Mエタノールアミン溶液を投与して、未反応基をブロッキングする。動力学測定のため、Fabの二重連続希釈(例えば0.78nM~500nM)を0.05%Tween 20を含むPBS(PBST)中、25℃、およそ25μl/分の流速で注入する。会合および解離センサグラムを同時に適合させることによって、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、オン速度(kon)およびオフ速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)を比koff/konとして計算する。例えばChen, Y.ら(1999)J. Mol. Biol. 293:865-881を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、オン速度が10-1-1を超える場合、分光光度計、例えば流動停止を装備した分光光度計(stop-flow eqipped spectrophotometer)(Aviv Instruments)または攪拌キュベットを伴う8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)において測定されるように、増加する濃度の抗原の存在下、PBS、pH7.2中、20nMのアンチ抗原抗体溶液(Fab型)の25℃での蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nM、16nmバンドパス)の増加または減少を測定する、蛍光消光技術を用いることによって、オン速度を決定してもよい。
【0059】
用語「koff」は、結合分子および抗原の間の特定の相互作用のオフ速度定数を指す。例えばOctetTM系を用い、バイオレイヤー干渉法を用いて、オフ速度定数koff測定してもよい。
【0060】
また、25℃、~10相対単位(反応単位、RU)で、固定された抗原CM5チップを用い、BIAcoreTM-2000またはBIAcore(登録商標)-3000(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いた上記の表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって、本発明記載の「オン速度」または「kon」を測定してもよい。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore, Inc.)を、製造者の指示にしたがって、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(~0.2μM)に希釈し、そして次いで、5μl/分の流速で注入して、およそ10反応単位(RU)の結合タンパク質を達成する。抗原投与後、1Mエタノールアミン溶液を投与して、未反応基をブロッキングする。
【0061】
別に明記しない限り、本発明のポリペプチドに関する用語、「生物学的に活性の」および「生物学的活性」および「生物学的特性」は、生物学的分子に結合する能力を有することを意味する。
【0062】
用語「生物学的分子」は、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、およびその組み合わせを指す。1つの態様において、生物学的分子は天然に存在する。
慣用的技術、例えば完全抗体のパパインまたはペプシン消化を用いて、完全抗体から、抗体断片、例えばFabおよびF(ab’)2断片を調製してもよい。さらに、例えば本明細書に記載するような標準的組換えDNA法を用いて、抗体、その部分および免疫接着分子を調製してもよい。
【0063】
用語「組換え抗体」は、抗体をコードするヌクレオチド配列(単数または複数)を含む細胞または細胞株で発現される抗体を指すよう意図され、前記ヌクレオチド配列(単数または複数)は、天然には該細胞と関連していない。
【0064】
本明細書において、用語「変異体抗体」は、親抗体の配列と比較した際、1つまたはそれより多いアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換のために、その「親」抗体のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する抗体を指すよう意図される。好ましい態様において、変異体抗体は、親抗体に比較した際、アミノ酸の少なくとも1つまたはそれより多い(例えば1~12、例えば2、3、4、5、6、7、8または9、10、11または12;いくつかの態様において、変異体抗体は1~約10の)付加、欠失、および/または置換を含む。いくつかの態様において、こうした付加、欠失および/または置換は、変異体抗体のCDRで作製される。変異体抗体の配列に関する同一性または相同性は、本明細書において、配列を整列させ、そして配列同一性の最大パーセントを達成するために必要であればギャップを導入した後、親抗体残基のものと同一である、変異体抗体配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。変異体抗体は、親抗体が結合する、同じ抗原に、そして好ましくは同じエピトープに結合する能力を保持し;そしていくつかの態様において、少なくとも1つの特性または生物学的活性が、親抗体のものより優れている。例えば、変異体抗体は、例えば、親抗体に比較した際に、より強い結合アフィニティ、より長い半減期、より低いIC50、または抗原生物学的活性を阻害する能力の増進を有してもよい。本明細書において、特に関心が持たれる変異体抗体は、親抗体に比較した際の、生物学的活性の少なくとも2倍(好ましくは少なくとも5倍、10倍または20倍)の生物学的活性の増進を示すものである。
【0065】
用語「二重特異性抗体」は、単一の生物学的分子上の2つの別個のエピトープに特異的に結合することが可能であるか、または2つの別個の生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することが可能である、抗原結合ドメイン(単数または複数)を有する抗体を指す。二重特異性抗体はまた、本明細書において、「二重特異性」を有するかまたは「二重特異性」抗体であると称される。
【0066】
広い意味で、用語「キメラ抗体」は、1つの抗体の1つまたはそれより多い領域、および1つまたはいくつかの他の抗体の1つまたはそれより多い領域を含む抗体、典型的には部分的にヒトおよび部分的に非ヒトである抗体、すなわち部分的に非ヒト動物、例えばマウス、ラットもしくは同様の害獣(vermin)、またはラクダ科(Camelidae)、例えばラマおよびアルパカ由来である、抗体を指す。ヒト・アンチ抗体免疫反応、例えばネズミ抗体の場合のヒト抗マウス抗体免疫反応のリスクを減少させるため、一般的に、非ヒト抗体よりもキメラ抗体が好ましい。典型的なキメラ抗体の例は、可変領域配列がネズミ配列である一方、定常領域配列がヒトであるものである。キメラ抗体の場合、抗体をヒト化するため、非ヒト部分をさらなる改変に供してもよい。
【0067】
用語「ヒト化」は、抗体が、完全にまたは部分的に非ヒト起源を有する、例えばそれぞれ、マウスまたはラマを関心対象の抗原で免疫することによって得たマウスまたはラマ抗体であるか、あるいはマウスまたはラマのこうした抗体に基づくキメラ抗体である場合、ヒトにおいて免疫反応を回避するかまたは最小限にするため、特定のアミノ酸、特に重鎖および軽鎖のフレームワーク領域および定常ドメイン中の特定のアミノ酸を置換することが可能である事実を指す。抗体は、主に、6つの重鎖および軽鎖CDRに位置するアミノ酸残基を通じて、ターゲット抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外のものよりも、個々の抗体間ではるかにより多様である。CDR配列は、抗体-抗原相互作用の大部分に関与するため、特異的天然存在抗体、またはより一般的には、前記アミノ酸配列を含む任意の特異的抗体の特性を模倣する組換え抗体を、例えば特異的抗体由来のCDR配列および異なる抗体由来のフレームワーク配列を発現する発現ベクターを構築することによって、発現することも可能である。その結果、非ヒト抗体を「ヒト化」し、そして最初の抗体の結合特異性およびアフィニティを大部分保持することが可能である。免疫原性を、そしてしたがって特定の抗体のヒト・アンチ抗体反応を正確に予測することは不可能であるが、非ヒト抗体は、典型的にはヒト抗体よりもより免疫原性である。外来性(例えば害獣またはラクダ科)定常領域がヒト起源の配列で置換されているキメラ抗体は、一般的に、完全に外来性起源である抗体よりも、より低い免疫原性を示し、そして療法抗体においては、ヒト化または完全ヒト抗体を用いる傾向がある。したがって、非ヒト起源のキメラ抗体または他の抗体をヒト化して、ヒト・アンチ抗体反応のリスクを減少させてもよい。
【0068】
キメラ抗体に関して、ヒト化は、典型的には、可変領域配列のフレームワーク領域の修飾を伴う。相補性決定領域(CDR)の一部であるアミノ酸残基は、ほとんどの場合、ヒト化のために修飾はされないが、いくつかの場合、CDRの個々のアミノ酸残基を修飾するため、例えばグリコシル化部位、脱アミド化部位、アスパラギン酸異性化部位、あるいは望ましくないシステインまたはメチオニン残基を欠失させるため、修飾が望ましい可能性もある。トリペプチド配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr、式中、XはPro以外の任意のアミノ酸であってもよい、におけるアスパラギン残基にオリゴ糖鎖を付着させることによって、N連結グリコシル化が起こる。AsnまたはSer/Thr残基のいずれかを異なる残基によって、好ましくは保存的置換によって、突然変異させることによって、N-グリコシル化部位の除去を達成してもよい。アスパラギンおよびグルタミン残基の脱アミド化は、pHおよび表面曝露などの要因に応じて起こりうる。アスパラギン残基は、特にAsn-Gly配列中に、そして度合いはより低いが、他のジペプチド配列、例えばAsn-Ala中に存在する場合、主に脱アミド化を特に受けやすい。CDR配列がこうした脱アミド化部位、特にAsn-Glyを含むならば、この部位を、典型的には、関与する残基の1つを欠失させる保存的置換によって、除去することが好ましい可能性もある。
【0069】
抗体配列をヒト化するための多くの方法が当該技術分野に知られる。1つの一般的に用いられる方法は、CDR移植である。CDR移植は、KabatによるCDR定義に基づいてもよいが、最終版(Magdelaine-Beuzelinら, Crit Rev.Oncol Hematol. 64:210 225(2007))は、IMGT(登録商標)(international ImMunoGeneTics information system(登録商標)、www.imgt.org)定義が、ヒト化結果を改善しうることを示唆する(Lefrancら, Dev. Comp Immunol. 27:55-77(2003)を参照されたい)。いくつかの場合、CDR移植は、CDRを得た親抗体に比較した際、CDR移植非ヒト抗体の結合特異性およびアフィニティを、そしてしたがって生物学的活性を減少させることが可能である。親抗体の結合特異性およびアフィニティを回復させるため、CDR移植抗体の選択される位置、典型的にはフレームワーク領域において、復帰突然変異(時に「フレームワーク領域修復」と称される)を導入してもよい。文献および抗体データベースにおいて入手可能な情報を用いて、ありうる復帰突然変異のための位置の同定を行ってもよい。復帰突然変異の候補であるアミノ酸残基は、典型的には、抗体分子の表面に位置するものである一方、包埋されたまたは表面曝露の度合いが低い残基は、通常、改変されないであろう。CDR移植および復帰突然変異に代わるヒト化技術は、非ヒト起源の非表面曝露残基が保持される一方、表面残基がヒト残基に改変される、再表面改変(resurfacing)である。
【0070】
2つの技術を用いて、完全ヒト抗体を生成してもよい:in vitro収集ファージライブラリーを用いるものまたはヒト化動物(マウス、ラット等)のin vivo免疫によるものである。
【0071】
コンビナトリアルファージ抗体ライブラリーの構築は、いくつかの抗体ライブラリータイプ:ナイーブ、免疫および合成を区別可能であることに応じて、遺伝子レパートリー供給源の選択から始まる。ナイーブおよび免疫ライブラリーは、それぞれ、健康なドナーまたは特定の抗原で免疫されたドナーの可変免疫グロブリンドメインをコードする、天然再編成遺伝子を用いて、構築される。抗体産生リンパ細胞株由来のmRNAをこの目的のために単離する。末梢血リンパ球を主に用いるが、脾臓細胞[Sheets MD, Amersdorfer P, Finnern R, Sargent P, Lindquist E, Schier R,ら Efficient construction of a large nonimmune phage antibody library: the production of high-affinity human single-chain antibodies to protein antigens. Proc Natl Acad Sci U S A 1998,95:6157-6162およびde Haard HJ, van Neer N, Reurs A, Hufton SE, Roovers RC, Henderikx P,ら A large non-immunized human Fab fragment phage library that permits rapid isolation and kinetic analysis of high affinity antibodies. J Biol Chem 1999,274:18218-18230.]、扁桃腺細胞または骨髄リンパ球[Vaughan TJ, Williams AJ, Pritchard K, Osbourn JK, Pope AR, Earnshaw JCら Human antibodies with sub-nanomolar affinities isolated from a large non-immunized phage display library. Nat Biotechnol 1996,14:309-314.]もまた、用いられてきている。次いで、mRNAの塩基に対してcDNAを合成し、そしてオリゴ-dTプライマーおよび統計的に考案された六ヌクレオチドの両方を用いて、抗体の可変ドメインをコードするありうる遺伝子変異体すべてのcDNAコピーを生じてもよい[Ulitin AB, Kapralova MV, Laman AG, Shepelyakovskaya AO, Bulgakova EB, Fursova KK,ら The library of human miniantibodies in the phage display format: Designing and testing DAN: Izd-vo ”Nauka”; 2005.]。
【0072】
1つまたはいくつかのプライマーを同時に用いて、ここで、cDNAレベルで、1つまたはいくつかの可変ドメイン遺伝子ファミリーまたは抗体アイソタイプに対して増幅される遺伝子の範囲を制限してもよい[Marks JD, Hoogenboom HR, Bonnert TP, McCafferty J, Griffiths AD, Winter G. Bypassing immunization. Human antibodies from V-gene libraries displayed on phage. J Mol Biol 1991,222:581-597]。免疫グロブリンをコードする遺伝子の増幅に用いるプライマーは、その最も保存される領域に相補的である。KabatまたはV BASEデータベースなどのデータベースに編成されている遺伝子コレクションからその配列を選択する。プライマー設計はまた、PCR産物を適切なベクター内にクローニングするための、内部制限部位も提供する。
【0073】
合成ライブラリーの構築は、ランダム配列セットでの天然CDRの置換に基づく。この場合、非常に多様な抗原結合部位を生成することが可能である。
ファージディスプレイは、最も強力で、そして広く用いられているin vitro抗体検索技術の1つである。1985年、Smithは、外来DNA配列を糸状バクテリオファージM13内にクローニングすることが可能であり、そしてこうしてクローニングされた配列を、融合タンパク質として、ファージ粒子表面上に発現させることが可能であることを見出した(Smith GP: Filamentous fusion phage: novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface. Science 1985, 228:1315-1317.)。したがって、他のタンパク質に結合する能力に基づいて、関心対象の融合タンパク質を選択することが可能である。この発見は、PCR増幅法と組み合わされ、これによって、免疫グロブリン遺伝子のcDNAレパートリーをクローニングして、可変ドメインを含有する多様なファージライブラリーを生成することが可能となり、これを用いて、ターゲット特異的モノクローナル抗体を迅速に検索することが可能になった。ファージライブラリーレパートリーは、ライブラリーを生成するためにその血液を用いた各ヒトまたは動物のB細胞抗体のレパートリーを反映する。1995年、2つの論文が、ハイブリドーマ技術によって産生されたものに匹敵しうる、完全ヒト抗体レパートリーを発現する遺伝子操作マウスの生成を報告した(Lonberg N, Taylor LD, Harding FA, Trounstine M, Higgins KM, Schramm SR, Kuo CC, Mashayekh R, Wymore K, McCabe JGら: Antigen-specific human antibodies from mice comprising four distinct genetic modifications. Nature 1994, 368:856-859)。これらの動物において、それ自体の内因性重鎖およびκ軽鎖免疫グロブリン鎖遺伝子は、意図的に破壊され、その後、ヒト重鎖およびκ軽鎖遺伝子のセグメントである導入遺伝子が導入された。マウス免疫系がヒト遺伝子レパートリーを用いて、より多様な抗原に対する、高特異性および高アフィニティ抗体を産生することが可能であることが分かった。トランスジェニックマウスは、マウスおよびヒト構成要素の本質的なハイブリッドである(ヒト免疫グロブリン、マウスIgα、Igβおよび他のシグナル伝達分子)B細胞受容体を発現する事実にもかかわらず、そのB細胞は正常に発生し、そして成熟する。
【0074】
用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、細胞の別個のクローン集団によって合成され、そして単離された抗体を指す。クローン集団は、不死化細胞のクローン集団であってもよい。いくつかの態様において、クローン集団中の不死化細胞は、典型的には免疫動物由来の個々のBリンパ球とリンパ球性腫瘍由来の個々の細胞との融合によって産生されるハイブリッド細胞、ハイブリドーマである。ハイブリドーマは構築された細胞のタイプであり、そして天然には存在しない。
【0075】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結される一方、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間では、ジスルフィド連結の数が異なる。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を空けた鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を、その後、いくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、そしてもう一端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと整列され、そして軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。
【0076】
本明細書において多様な抗体を記載するために用いる用語、「単離された」は、抗体が発現された細胞または細胞培養から同定され、そして分離され、そして/または再生されている抗体を指す。天然環境由来の不純物(混入構成要素)は、ポリペプチドの診断的または療法的使用に干渉するであろう物質であり、そしてこれには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれうる。好ましい態様において、(1)スピニングカップ配列決定装置(Edman配列決定装置)の使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な度合いまで、あるいは(2)クーマシー・ブリリアント・ブルーまたは好ましくは銀染色を用い、非還元または還元条件下で、SDS-PAGEによって均質になるまで、抗体を精製する。ポリペプチドの天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないであろうため、単離抗体には、組換え細胞内のin situの抗体が含まれる。単離ポリペプチドは、典型的には、少なくとも1つの精製工程によって調整される。
【0077】
「単離」核酸分子は、抗体核酸の天然供給源において結合している、少なくとも1つの核酸分子不純物から同定されそして分離されているものである。単離核酸分子は、天然条件下で見出される型またはセットとは異なる。したがって、単離核酸分子は、天然条件下の細胞中に存在する核酸分子とは異なる。しかし、例えば核酸分子が天然条件下での細胞における位置とは異なる染色体局在を有する場合、単離核酸分子には、抗体が通常発現される細胞に位置する核酸が含まれる。
【0078】
用語「エピトープ」は、本明細書において、結合分子(例えば抗体または関連分子、例えば二重特異性結合分子)に特異的に結合する抗原の部分(決定基)を指すよう意図される。エピトープ決定基は、通常、分子の化学的に活性である表面群、例えばアミノ酸または炭水化物または糖側鎖からなり、そして典型的には、特定の三次元構造特性、ならびに特異的電荷特性を含む。エピトープは、「直鎖」または「コンホメーション性」のいずれかであってもよい。直鎖エピトープにおいては、タンパク質(例えば抗原)および相互作用分子(例えば抗体)の間の相互作用点のすべては、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線形に存在する。コンホメーションエピトープにおいては、相互作用点は、一次アミノ酸配列において互いに分離されているタンパク質上のアミノ酸残基に渡って存在する。抗原の望ましいエピトープが決定されたならば、当該技術分野に周知の技術を用いて、このエピトープに対する抗体を生成することも可能である。さらに、抗体または他の結合分子の生成および特徴づけは、望ましいエピトープに関する情報を解明しうる。この情報から、次いで、例えば抗原に対する結合に関して互いに競合する結合分子を発見する競合研究を実行することによって、同じまたは同一のエピトープに結合する抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。
【0079】
用語「ペプチドリンカー」は、本明細書において、互いに結合するドメインに応じた長さを持ち、そして任意のアミノ酸配列を含む、ドメインを組み合わせる能力を有する任意のペプチドを意味するよう意図される。好ましくは、ペプチドリンカーは、5アミノ酸より多い長さを有し、そしてG、A、S、P、E、T、D、Kより選択されるアミノ酸の任意のセットからなる。
【0080】
用語「in vitro」は、人工的な条件下、体の外での、生物学的物体、生物学的プロセス、または生物学的反応を指す。例えば、in vitroで増殖した細胞は、体の外の環境で、例えば試験管、培養バイアル、またはマイクロタイタープレート中で増殖した細胞と理解されるものとする。
【0081】
用語「IC50」(50%阻害濃度)は、本明細書において、測定可能な活性または反応、例えば腫瘍細胞などの細胞の成長/増殖を、50%阻害する薬剤濃度を指す。適切な用量-反応曲線を用い、曲線適合のための特別な統計ソフトウェアを用いて、IC50値を計算してもよい。
【0082】
用語「IC50」(50%阻害濃度または最大半量阻害濃度)は薬剤濃度を指し、そして生物学的プロセスを50%阻害するために必要な阻害剤体積を示す。適切な用量-反応曲線を用い、曲線適合のための特別な統計ソフトウェアを用いて、IC50値を計算してもよい。
【0083】
用語GI50(50%増殖阻害)は、腫瘍細胞などの細胞の増殖を50%阻害する薬剤濃度を指す。
用語「ED50」(EC50)(50%有効用量/濃度)は、50%の生物学的影響(細胞傷害性も含まれうる)を生じる薬剤濃度を指す。
【0084】
用語「抗増殖活性」は、細胞、例えば癌細胞の増殖を停止させるかまたは阻害することを指すよう意図される。
用語、抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然Fc領域配列またはFc領域アミノ酸変異体)に寄与しうる生物学的活性を指し、抗体アイソタイプで多様である。抗体エフェクター機能の例には:C1結合および補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞仲介性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)の下方制御およびB細胞活性化が含まれる。
【0085】
「抗体依存性細胞傷害性」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、ターゲット細胞上に結合した抗体を認識し、そして続いてターゲット細胞の溶解または食作用を引き起こす、細胞仲介性反応を指す。ADCCを仲介する主な細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、RavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol 9: 457-92(1991)の464ページの表3に要約される。関心対象の分子のADCC活性を評価するため、in vitro ADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるアッセイを実行してもよい。こうしたアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいはまたはさらに、関心対象の分子のADCC活性を、in vivoで、例えばClynesら PNAS(USA)95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、評価してもよい。
【0086】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたはそれより多いFcRを発現し、そしてエフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、該細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、そしてADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを仲介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が含まれ;PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞を、その天然供給源から、例えば本明細書に記載するように、血液またはPBMCから単離してもよい。
【0087】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するよう用いられる。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、そしてこれには、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体が含まれ、これらの受容体のアレル変異体および選択的スプライシング型が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは主に、その細胞質ドメインが異なる、類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234(1997)の概説を参照されたい)。FcRは、RavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92(1991)に概説される。将来同定されるであろうものを含む他のFcRが、本明細書の用語「FcR」に含まれる。該用語にはまた、新生受容体FcRnが含まれ、該受容体は、胎児への母性IgGのトランスファーに関与する。
【0088】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、分子が、補体の存在下でターゲットを溶解させる能力を指す。補体活性化経路は、同族(cognate)抗原と複合体化した分子(例えば抗体)への補体系の第一成分(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するため、例えばGazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイを実行してもよい。
【0089】
用語「同一性」または「相同性」は、配列を整列させ、そして全配列に関する最大パーセント同一性を達成するために必要であればギャップを導入した後、そして配列同一性の一部として、いかなる保存的置換も考慮せずに、比較する対応する配列の残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合を意味すると見なされる。NまたはC末端伸長または挿入はいずれも、同一性または相同性を減少させるとは見なされないであろう。整列のための方法およびコンピュータプログラムは、当該技術分野に周知である。配列分析ソフトウェア(例えば配列分析ソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Ave., Madison, WI 53705)を用いて、配列同一性を測定してもよい。このソフトウェアは、多様な置換、欠失(除去)、および他の修飾に対して、ある度合いの相同性を割り当てることによって、類似の配列をマッチさせる。
【0090】
抗体のポリペプチド配列に関する用語「相同」は、ポリペプチド配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、そして最も好ましくは95%の配列同一性を示す抗体と見なされなければならない。核酸配列に関する該用語は、核酸配列に対して、少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%そして最も好ましくは97%の配列同一性を示すヌクレオチド配列と見なされなければならない。
【0091】
本明細書に記載する抗体のアミノ酸配列修飾(単数または複数)を提供する。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが望ましい可能性もある。適切なヌクレオチド変化を抗体核酸内に導入することによって、またはペプチド合成によって、抗体のアミノ酸配列変異体を調製する。こうした修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が望ましい特性を所持するという条件で、欠失、挿入および置換の任意の組み合わせを行って、最終構築物に到達する。アミノ酸変化はまた、抗体の翻訳後プロセスを改変してもよく、例えばグリコシル化部位の数または位置を変えてもよい。
【0092】
アミノ酸置換を用いた抗体のアミノ酸配列の修飾の変異体。こうした変異体は、抗体分子における少なくとも1つのアミノ酸残基の異なる残基での置換である。置換性突然変異誘発に関して最も関心が持たれる部位には、超可変領域またはCDRが含まれるが、FRまたはFc改変もまた意図される。保存的置換を表Aにおいて「好ましい置換」以下に示す。こうした置換が生物学的活性の改変を引き起こすならば、表Aにおいて「例示的置換」と称される、さらなる実質的な変化、またはアミノ酸のクラスを記載する際に以下にさらに記載する改変を導入してもよく、そしてまた産物をスクリーニングしてもよい。
【0093】
【表1】
【0094】
用語「核酸」、「核配列(nucleic sequence)」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」は、本説明において交換可能に用いられ、修飾されているかまたはされていないヌクレオチドの正確な配列を意味し、核酸の断片または領域を決定し、非天然ヌクレオチドを含有するかまたは含有せず、そして二本鎖DNAまたはRNA、一本鎖DNAまたはRNA、あるいは前記DNAの転写産物のいずれかである。
【0095】
本発明が天然染色体環境にある、すなわち天然状態にあるヌクレオチド配列と関連しないこともまた、本明細書に含まれなければならない。本発明の配列は、単離され、そして/または精製されており、すなわちこれらは、例えばコピーによって、直接または間接的にサンプリングされ、その環境は少なくとも部分的に修飾されている。したがって、組換え遺伝学によって、例えば宿主細胞によって得られるか、または化学合成によって得られる単離核酸もまた、本明細書に言及されなければならない。
【0096】
ヌクレオチド配列に対する言及は、別に明記しない限り、その相補体を含む。したがって、特定の配列を有する核酸への言及は、その相補配列とともに、その相補鎖を含むものと理解されなければならない。
【0097】
表現「制御配列」は、特定の宿主生物における、機能可能であるように連結されているコード配列の発現のために必要なDNA配列を指す。原核生物に適切な制御配列には、例えば、プロモーター、随意にオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られる。
【0098】
核酸は、別の核酸配列と機能的関連に置かれた際、「機能可能であるように連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダー配列のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されている場合、ポリペプチドに関するDNAに機能可能であるように連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に機能可能であるように連結されており;リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に機能可能であるように連結されている。一般的に、「機能可能であるように連結されている」は、連結されているDNA配列が隣接しており、そして分泌リーダーの場合、隣接しそして読み枠中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。
【0099】
用語「ベクター」は、本明細書において、連結されている別の核酸を輸送可能な核酸分子を意味する。いくつかの態様において、ベクターは、プラスミド、すなわち、その中にさらなるDNAセグメントを連結可能なDNAの環状二本鎖片である。いくつかの態様において、ベクターはウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内に連結してもよい。いくつかの態様において、ベクターは、導入される宿主細胞において自律複製可能である(例えば複製の細菌起点部位を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。さらなる態様において、ベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入に際して、宿主細胞のゲノム内に組み込まれてもよく、そしてそれによって宿主遺伝子とともに複製される。さらに、特定のベクターは、機能可能であるように連結されている遺伝子の発現を指示することが可能である。こうしたベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。
【0100】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書において、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指すよう意図される。本発明は、例えば、上述の本発明記載のベクターが含まれうる宿主細胞に関する。本発明はまた、例えば、本発明の結合分子の第一の結合ドメインおよび/または第二の結合ドメインの、重鎖をコードするヌクレオチド配列またはその抗原結合部分、軽鎖コードヌクレオチド配列またはその抗原結合部分、あるいはその両方を含む、宿主細胞にも関する。「組換え宿主細胞」および「宿主細胞」が、特定の対象細胞だけでなく、こうした細胞の子孫もまた指すよう意図されることを理解しなければならない。突然変異または環境の影響のいずれかにより、続く世代で修飾が生じうるため、こうした子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性もあるが、こうした細胞はなお、本明細書において、用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0101】
用語「賦形剤」は、本明細書において、本発明の化合物(単数または複数)以外の任意の成分を記載する。
用語「CD20によって仲介される疾患または障害」は、疾患または障害の病因、発展、進行、持続または病理を含めて、直接または間接的のいずれかでCD20と関連する任意の疾患または障害を意味する。「治療する」、「治療している」および「治療」は、生物学的障害および/またはその付随する症状の少なくとも1つを軽減するかまたは無効にする方法を指す。本明細書において、疾患、障害または状態を「軽減する」ことは、疾患、障害、または状態の症状の重症度および/または発生頻度を減少させることを意味する。さらに、本明細書において、「治療」に対する言及には、根治的、緩和的および予防的治療に対する言及が含まれる。
【0102】
1つの側面において、治療の被験体または患者は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体である。前記被験体は、任意の年齢の男性または女性いずれであってもよい。
用語「障害」は、本発明の化合物での治療から利益を得るであろう任意の状態を意味する。これは、哺乳動物を問題の障害に罹りやすくする病理学的状態を含む、慢性および急性障害または疾患を意味する。
【0103】
用語「癌」および「癌性」は、典型的には細胞の制御されない成長/増殖によって特徴づけられる、哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは生理学的状態を記載する。該定義は、良性および悪性癌性疾患の両方を含む。癌性疾患の例には、限定されるわけではないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病が含まれる。こうした癌性疾患のより具体的な例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃癌、膵臓癌、神経膠芽腫、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、膣癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、および多様な頭頸部癌が含まれる。
【0104】
用語「免疫反応」、「自己免疫反応」および「自己免疫炎症」は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食作用細胞、顆粒球および前記細胞または肝細胞によって産生される可溶性巨大分子(侵襲性病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌細胞、あるいは自己免疫または病的炎症の場合、人体由来の正常細胞または組織の選択的損傷、破壊または除去の結果産生される、抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を指す。
【0105】
用語「免疫反応」、「自己免疫反応」および「自己免疫炎症」は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食作用細胞、顆粒球および前記細胞または肝細胞によって産生される可溶性巨大分子(侵襲性病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌細胞、あるいは自己免疫または病的炎症の場合、人体由来の正常細胞または組織の選択的損傷、破壊または除去の結果産生される、抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を指す。
【0106】
本明細書において、用語「自己抗体」は、自己抗原に対して向けられる抗体を指す。自己抗原には、限定されるわけではないが、核酸(例えば二本鎖DNAまたはRNA、一本鎖DNAまたはRNA、あるいはその組み合わせ)、核タンパク質(例えばSS-A(Ro)、SS-B(La)、Scl-70、セントロメア、Jo-1、ヒスチジル(histadyl)-tRNAシンテターゼ、スレオニル-tRNAシンテターゼ、PM-1、Mi-2、ヒストン、およびクロマチン)、細胞受容体(例えばアセチルコリン受容体、甲状腺刺激ホルモン受容体)、細胞タンパク質(例えばカルジオリピン、β2GP1)、細胞膜タンパク質(例えばアクアポリン、デスモグレイン)、RNAタンパク質複合体(例えばRNPおよびSm)、赤血球および血小板受容体糖タンパク質が含まれる。
【0107】
用語「自己免疫疾患」は、本明細書において、個体自身の(自己)抗原および/または組織から生じ、そしてこれらに対して向けられる非悪性疾患または障害を意味する。
該用語は、限定されるわけではないが、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、敗血症関節炎、ライム変形性関節症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、「移植片対宿主」反応、臓器移植拒絶、臓器移植に関連する急性または慢性免疫疾患、サルコイドーシス、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病,顕微鏡性腎血管炎、慢性活性肝炎、ブドウ膜炎(uvenita)、敗血症ショック、毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、限局性脱毛症、血清陰性関節症、関節症、ライター病、潰瘍性大腸炎関節症と関連する乾癬性関節症、アトピー性アレルギー、自己免疫水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、天疱瘡病、線状IgA、IgG関連疾患、自己免疫溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、悪性貧血、若年性悪性貧血、頭蓋性巨大動脈炎(cranial giant arteritis)、関節炎、原発性硬化性肝炎A、特発性自己免疫肝炎、肺線維性疾患、特発性線維性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、慢性好酸球性肺炎、感染後間質性肺疾患、痛風関節炎、自己免疫肝炎、I型自己免疫肝炎(古典的自己免疫肝炎またはルポイド)、II型自己免疫肝炎、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫好中球減少症、腎NOS疾患、糸球体腎炎、顕微鏡性腎血管炎、円板状エリテマトーデス、特発性または雄性NOS不妊症[精子に対する自己免疫]、多発性硬化症(すべてのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患に続く肺高血圧、グッドパスチャー症候群、結節性多発性関節炎(polyarthritis nodosa)の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、局在型硬化症、シェーグレン症候群、シェーグレン病、ベーチェット病、強直性脊髄炎、脊椎関節炎、軸性腱付着部炎、再発性多発性軟骨炎、高安病、自己免疫血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫甲状腺炎、自己免疫胃炎、多腺性自己免疫症候群、甲状腺機能亢進症、橋本病、自己免疫萎縮性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑、急性肝疾患、慢性肝疾患、アレルギー、喘息、精神障害(うつ症状および統合失調症を含む)、Th2型/Th1型仲介性疾患、結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アルファ-Iアンチトリプシン欠損症、筋委縮性側索硬化症、貧血、嚢胞性線維症、サイトカイン療法に関連する障害、脱髄性疾患、皮膚炎、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流傷害、虚血性脳卒中、若年性関節リウマチ、自己免疫腸疾患、自己免疫難聴、自己免疫リンパ増殖性症候群、自己免疫心筋炎、自己免疫心筋症、コクサッキー心筋炎、ドレスラー症候群、ループス腎炎、遺伝性血管浮腫を含む血管浮腫、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、粃糠疹、白斑、アジソン病、自己免疫性多内分泌腺症候群、自己免疫膵炎、セリアック病、顕微鏡的大腸炎、抗リン脂質症候群、自己免疫リンパ増殖性症候群、寒冷凝集素症、本態性クリオグロブリン血症、エバンス症候群、悪性貧血、赤血球無形成、CREST症候群、好酸球性筋膜炎、フェルティ症候群、オーバーラップ症候群、慢性ライム病、パリー・ロンバーグ症候群、回帰性リウマチ、リウマチ、急性リウマチ熱、後腹膜症候群、サルコイドーシス、シュニッツラー症候群、未分化結合組織病、皮膚筋炎、多発性筋炎、線維筋痛症、重症筋無力症、神経性筋強直症、急性播種性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、デビック病、橋本脳症、ランバート・イートン筋無力症症候群、多発性血管炎白血球破砕性血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症、ループス血管炎、リウマチ性血管炎、結節性多発動脈炎、自己免疫早期卵巣機能不全および眼瞼炎を含む。抗体はまた、上記障害の任意の組み合わせを治療することも可能である。
【0108】
「療法的有効量」は、ある程度の度合いまで、治療中の障害の症状の1つまたはそれより多くを軽減するであろう、投与される療法剤の量を指すよう意図される。
用語「慢性」使用は、長期間、最初の療法効果(活性)を維持するような、投与の急性(一過性)経路とは対照的な、剤(単数または複数)の連続(非中断)使用を指す。
【0109】
「断続性」使用は、中断なしに一貫しては実行されず、事実上、むしろ周期的である、治療を指す。
本明細書において、単語「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含まれる(include)」または変形、例えば「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含まれる(includes)」または「含まれている(including)」およびそのすべての文法的変形は、言及する整数または整数群の包含を示すと理解されるが、いかなる他の整数または整数群の排除も意図しない。
【0110】
発明の開示
抗体
本発明は、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。
【0111】
1つの側面において、本発明は、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関し、そして:
1)アミノ酸配列
【0112】
【化1】
【0113】
を含む、重鎖可変ドメイン;
2)アミノ酸配列
【0114】
【化2】
【0115】
を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む。
いくつかの態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は:
1)アミノ酸配列
【0116】
【化3】
【0117】
を含む、重鎖可変ドメイン;
2)アミノ酸配列
【0118】
【化4】
【0119】
を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
いくつかの態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は:
1)アミノ酸配列
【0120】
【化5】
【0121】
を含む、重鎖可変ドメイン;
2)アミノ酸配列
【0122】
【化6】
【0123】
を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む。
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は:
1)アミノ酸配列
【0124】
【化7】
【0125】
を含む、重鎖;
2)アミノ酸配列
【0126】
【化8】
【0127】
を含む軽鎖
を含む。
いくつかの態様において、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、BCD132-077である。
【0128】
モノクローナル抗体BCD132-077は:
1)アミノ酸配列
【0129】
【化9】
【0130】
を含む重鎖;
2)アミノ酸配列
【0131】
【化10】
【0132】
を含む軽鎖
を含む。
いくつかの態様において、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、BCD132-L-028である。
【0133】
モノクローナル抗体BCD132-L-028は:
1)アミノ酸配列
【0134】
【化11】
【0135】
を含む重鎖;
2)アミノ酸配列
【0136】
【化12】
【0137】
を含む軽鎖
を含む。
いくつかの態様において、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、全長IgG抗体である。
【0138】
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプのものである。
いくつかの態様において、モノクローナル抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものである。
【0139】
核酸分子
本発明はまた、随意に、連結された任意のペプチドリンカー配列を含む、核酸分子、特に、本明細書に記載するような、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体をコードする配列にも関する。
【0140】
ヌクレオチド配列への言及は、別に示さない限り、その相補体を含む。したがって、特定の配列を有する核酸への言及は、その相補配列とともにその相補鎖を含むものと理解されなければならない。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において、少なくとも長さ10塩基の、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、あるいはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾型のいずれかのヌクレオチドのポリマー型を意味する。該用語には、一本鎖および二本鎖型が含まれる。
【0141】
1つの側面において、本発明は、配列番号1~8より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。核酸分子はまた、前記ヌクレオチド配列の任意の組み合わせも含んでもよい。
【0142】
1つの側面において、本発明は、CD20に特異的に結合し、そして:
1)配列番号2または配列番号6に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
2)配列番号4または配列番号8に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
【0143】
いくつかの態様において、核酸分子は:
1)配列番号2に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
2)配列番号4に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
を含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0144】
いくつかの態様において、核酸分子は:
1)配列番号6に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;
2)配列番号8に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
を含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0145】
いくつかの態様において、核酸分子は:
1)配列番号1または配列番号5に示すアミノ酸配列を含む重鎖;
2)配列番号3または配列番号7に示すアミノ酸配列を含む軽鎖
を含むモノクローナル抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0146】
いくつかの態様において、核酸分子は:
1)配列番号1に示すアミノ酸配列を含む重鎖;
2)配列番号3に示すアミノ酸配列を含む軽鎖
を含むモノクローナル抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0147】
いくつかの態様において、核酸分子は:
1)配列番号5に示すアミノ酸配列を含む重鎖;
2)配列番号7に示すアミノ酸配列を含む軽鎖
を含むモノクローナル抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0148】
上記態様のいずれにおいても、核酸分子は単離されていてもよい。
CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する任意の供給源から、本発明の核酸分子を単離してもよい。特定の態様において、本発明の核酸分子を、単離するのではなく、合成してもよい。
【0149】
1つの態様において、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(単数または複数)に機能可能であるように連結され、そして/またはVLセグメントがベクター内のCLセグメントに機能可能であるように連結されるように、それぞれ、重鎖定常(CH)または軽鎖定常(CL)ドメインをすでにコードする発現ベクター内への挿入によって、VH(配列番号2または配列番号6)またはVL(配列番号4または配列番号8)ドメインをコードする核酸分子を、全長に渡る抗体遺伝子に変換する。別の態様において、標準的分子生物学的技術を用いて、CHおよび/またはCLドメインをコードする核酸分子に、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子を結びつける、例えば連結することによって、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子を、抗体の全長に渡る遺伝子に変換する。次いで、重鎖および/または軽鎖をコードする全長に渡る核酸分子が導入されている細胞から、これらを発現させてもよい。
【0150】
核酸分子を用いて、CD20に特異的に結合する組換えモノクローナル抗体を多量に発現させてもよい。
ベクター
別の側面において、本発明は、本明細書記載の任意のヌクレオチド配列の発現に適したベクターに関する。
【0151】
本発明は、本明細書に記載するような、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその部分(例えば第一の結合ドメインの重鎖配列ならびに/あるいは第二の結合ドメインの重鎖および/または軽鎖配列)の任意のアミノ酸配列をコードする核酸分子を含むベクターに関する。本発明は、さらに、融合タンパク質、修飾抗体、抗体断片をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0152】
いくつかの態様において、遺伝子が、必要な発現制御配列、例えば転写および翻訳制御配列に機能可能であるように連結されるように、発現ベクターにおいて、上述のように得た、第一または第二の結合ドメインの配列(例えば、結合ドメインが軽鎖および重鎖配列を含む場合の軽鎖および重鎖配列)を部分的にまたは完全にコードするDNAを挿入することによって、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を発現する。発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソーム等が含まれる。ベクター内の転写および翻訳制御配列が、DNAの転写および翻訳を制御する意図される機能を果たすように、DNA分子をベクター内に連結してもよい。用いる発現宿主細胞と適合するように、発現ベクターおよび発現制御配列を選択してもよい。第一および第二の結合ドメインの配列(例えば、結合ドメインが重鎖および軽鎖配列を含む場合の重鎖および軽鎖配列)を部分的にまたは完全にコードするDNA分子を個々のベクター内に導入してもよい。1つの態様において、前記DNA分子の任意の組み合わせを同じ発現ベクター内に導入する。標準法(例えば抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位の連結、または制限部位が存在しない場合、平滑端連結)によって、DNA分子を発現ベクター内に導入してもよい。
【0153】
適切なベクターは、いかなるVHまたはVL配列も、上述のように容易に挿入されそして発現されうるように、適切な制限部位操作で、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。こうしたベクターにおけるHCおよびLCコード遺伝子は、対応するmRNAを安定化させることによって、全体の抗体タンパク質収量の増進を生じる、イントロン配列を含有してもよい。該イントロン配列には、RNAスプライシングがどこで起こるかを決定する、スプライスドナーおよびスプライスアクセプター部位が隣接する。イントロン配列の位置は、抗体鎖の可変または定常領域のいずれにあってもよく、あるいは多数のイントロンを用いる場合、可変および定常領域の両方にあってもよい。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域下流の天然染色体部位で起こってもよい。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドもコードしてもよい。シグナルペプチドがインフレームで免疫グロブリン鎖のアミノ末端に連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクター内にクローニングしてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0154】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換えベクター発現は、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する、制御配列を所持してもよい。当業者には、制御配列の選択を含めて、発現ベクターの設計が、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等に依存しうることが理解されるであろう。哺乳動物における発現宿主細胞のための好ましい制御配列には、哺乳動物細胞において、高レベルのタンパク質発現を確実にするウイルス要素、例えばレトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えば主要後期プロモーターアデノウイルス(AdMLP))、ポリオーマウイルスおよび強力な哺乳動物プロモーター、例えば天然免疫グロブリンプロモーターまたはアクチンプロモーターが含まれる。ウイルス制御要素およびその配列のさらなる説明に関しては、例えば、米国特許第5,168,062号、第4,510,245号および第4,968,615号を参照されたい。結合分子、例えば抗体を植物において発現するための方法は、プロモーターおよびベクター、ならびに植物の形質転換の説明を含めて、当該技術分野に知られる。例えば、米国特許第6,517,529号を参照されたい。細菌細胞または真菌細胞、例えば酵母細胞においてポリペプチドを発現するための方法もまた、当該技術分野に周知である。
【0155】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)および選択可能マーカー遺伝子を所持してもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に対して、医薬品剤、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートに対する耐性を与える。例えば、選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅中、dhfr-宿主細胞において使用するため)、neo遺伝子(G418選択のため)、およびグルタミン酸シンテターゼ遺伝子が含まれる。
【0156】
用語「発現制御配列」は、本明細書において、連結されているコード配列の発現およびプロセシングに影響を及ぼすために必要であるポリヌクレオチド配列を指すよう意図される。発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増進させる配列(例えばコザック・コンセンサス配列);タンパク質安定性を増進させる配列;ならびに望ましい場合、タンパク質分泌を増進させる配列が含まれる。こうした制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり;原核生物においては、こうした制御配列には、一般的に、リボソーム結合部位のプロモーター、および転写終結配列が含まれ;真核生物においては、典型的には、こうした制御配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。用語「制御配列」には、少なくとも、その存在が、発現およびプロセシングに必須であるすべての構成要素が含まれ、そしてまた、その存在が有益であるさらなる構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナーの配列も含まれてもよい。
【0157】
宿主細胞
本発明のさらなる側面は、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための方法に関する。本発明の1つの態様は、本明細書に定義するようなCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための方法であって、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を発現することが可能な組換え宿主細胞を産生し、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体の発現/産生に適した条件下で前記宿主細胞を培養し、そしてCD20に特異的に結合する、生じたモノクローナル抗体を単離する工程を含む、前記方法に関する。こうした組換え宿主細胞におけるこうした発現によって産生された、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、本明細書において、「CD20に特異的に結合する組換えモノクローナル抗体」と称される。本発明はまた、こうした宿主細胞由来の細胞の子孫、および同様に産生される、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体にも関する。
【0158】
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体をコードする核酸分子およびこれらの核酸分子を含むベクターを、適切な哺乳動物またはその細胞、植物またはその細胞、細菌または酵母宿主細胞のトランスフェクションに用いてもよい。形質転換は、宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するための任意の既知の技術によってもよい。哺乳動物細胞内に異種ポリヌクレオチドを投与するための方法は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、デキストラン仲介性トランスフェクション、陽イオン性ポリマー-核酸複合体トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム中のポリヌクレオチド(単数または複数)の被包、および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる。さらに、ウイルスベクターによって、哺乳動物細胞内に核酸分子を導入してもよい。細胞をトランスフェクションするための方法は、当該技術分野に周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号および第4,959,455号を参照されたい。植物細胞を形質転換するための方法が当該技術分野に周知であり、これには、例えばアグロバクテリウム仲介形質転換、微粒子銃形質転換、直接注入、エレクトロポレーションおよびウイルス形質転換が含まれる。細菌および酵母細胞を形質転換する方法もまた、当該技術分野に周知である。
【0159】
形質転換のための宿主として用いる哺乳動物細胞株が当該技術分野に周知であり、そしてこれには、入手可能な多数の不死化細胞株が含まれる。これらには、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、FreeStyle 293細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHepG2)、A549細胞、および多くの他の細胞株が含まれる。どの細胞株が高発現レベルを有し、そして産生するタンパク質に必要な特性を提供するかを決定することによって、細胞株を選択する。使用可能な他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9またはSf21細胞である。CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞内に導入する際、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主細胞を増殖させる培地内への抗体の分泌を可能にするために十分な期間、宿主細胞を培養することによって、抗体を産生する。標準的なタンパク質精製技術を用いて、培地から、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を再構成してもよい。植物宿主細胞には、例えばニコチアナ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、ウキクサ(duckweed)、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ等が含まれる。細菌宿主細胞には、エシェリキア属(Escherichia)およびストレプトミセス属(Streptomyces)種が含まれる。酵母宿主細胞には、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0160】
さらに、多くの既知の技術を用いて、産生細胞株からの本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体の産生レベルを増進させてもよい。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を増進させるための一般的なアプローチである。GS系は、EP第0216846号、第0256055号、第0323997号および第0338841号と関連して、全体にまたは部分的に論じられる。
【0161】
多様な細胞株によって、またはトランスジェニック動物において発現される、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、互いに比較した際、異なるグリコシル化プロファイルを有する可能性が高い。しかし、本明細書記載の核酸分子によってコードされるかまたは本明細書に提供するアミノ酸配列を含む、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、結合分子のグリコシル化に関わらず、そして一般的に翻訳後修飾の存在または非存在に関わらず、本発明の一部である。
【0162】
抗体の調製
本発明はまた、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体およびその抗原結合断片を産生するための方法およびプロセスにも関する。
【0163】
モノクローナル抗体
Kohlerら Nature 256,1975, p.495によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて、モノクローナル抗体を調製してもよいし、または組換えDNA法を用いて調製してもよい(US 4816567)。
【0164】
ハイブリドーマ法を用いる際、免疫に用いたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するかまたは産生可能であるリンパ球を誘発するため、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを、上述の方法にしたがって免疫する。別の態様にしたがって、in vitro免疫によって、リンパ球を産生してもよい。免疫後、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを用いて、リンパ球を骨髄腫細胞株と融合させて、ハイブリドーマ細胞を産生する。
【0165】
上記方式で産生されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つまたはそれより多い物質を含有する適切な培地中で培養してもよい。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培地には、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)、すなわちHGPRT欠損細胞の増殖を防止する物質が含まれるであろう。
【0166】
骨髄腫細胞融合の構成要素として用いられる、好ましい細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支持し、そして融合していない親細胞が選択される培地に感受性であるものである。好ましい骨髄腫細胞株は、ネズミ骨髄腫細胞株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、米国カリフォルニア州サンディエゴより入手可能であるMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、ならびにAmerican Type Culture Collection、米国メリーランド州ロックビルより入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞である。モノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒト・ヘテロ骨髄腫細胞株もまた記載されてきている(Kozbor, J. Immunol, 133, 1984, p.3001)。
【0167】
好ましくは、免疫沈降によって、あるいはin vitro結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を決定する。
【0168】
モノクローナル抗体の結合アフィニティを、例えば、Munsonら, Anal. Biochem., 107:220(1980)に記載されるスキャッチャード分析によって決定してもよい。
【0169】
所望の特異性、アフィニティ、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をひとたび同定したら、限界希釈法によってクローンをサブクローニングし、そして標準法によって増殖させてもよい。この目的のための適切な培地には、例えばD-MEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。さらに、例えば細胞をマウスに腹腔内(i.p.)注射することによって、ハイブリドーマ細胞を、動物における腹水腫瘍として、in vivoで増殖させてもよい。
【0170】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体を、培地、腹水、または血清から、慣用的抗体精製技術、例えばアフィニティクロマトグラフィ(例えばプロテインAまたはプロテインG-Sepharoseを用いて)またはイオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析等によって、分離してもよい。
【0171】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用法を用いて(例えばネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離されそして配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、こうしたDNAの好ましい供給源として利用される。ひとたび単離されたら、DNAを発現ベクター内に配置してもよく、これを次いで、宿主細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはトランスフェクションされなければ抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクションして、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。
【0172】
さらなる態様において、モノクローナル抗体または抗体断片を、McCaffertyら, Nature, 348:552-554(1990)に記載される技術を用いて生成される抗体ファージライブラリーから単離してもよい。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)およびMarksら, J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリーを用いた、ネズミおよびヒト抗体の単離を記載する。続く刊行物は、鎖シャッフリングによる高アフィニティ(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、ならびに非常に巨大なファージライブラリーを構築するための戦略として、コンビナトリアル感染およびin vivo組換え(Waterhouseら, Nucl. Acids. Res. 21:2265-2266(1993))を記載する。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する有望な代替法である。
【0173】
例えばキメラまたは融合抗体ポリペプチドを産生するため、例えば重鎖および軽鎖(CHおよびCL)定常領域配列を相同ネズミ配列に関して置換することによって(US 4816567およびMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 81:6851(1984))、あるいは非免疫グロブリンポリペプチド(異種ポリペプチド)のコード配列のすべてまたは一部に、免疫グロブリンコード配列を共有的に融合させることによって、抗体をコードするDNAを修飾してもよい。非免疫グロブリンポリペプチド配列を、抗体の定常領域に対して置換してもよいし、または抗体の抗原結合中心の可変ドメインに対してこれらを置換して、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位、および異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含む、キメラ二価抗体を生成してもよい。
【0174】
ファージディスプレイライブラリーに基づくヒト抗体および方法論
現在、免疫後に、内因性免疫グロブリン産生を伴わずに、ヒト抗体の全範囲を産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されてきている。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイのこうした生殖系列突然変異体マウス内へのトランスファーは、抗原曝露後にヒト抗体の産生を生じる(US 5545806、5569825、5591669(すべて、GenPharm);5545807;およびWO 97/17852)。
【0175】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature, 348:552-553(1990))を用いて、免疫ドナーの身体由来の免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーから、ヒト抗体および抗体断片をin vitroで産生してもよい。この技術にしたがって、抗体V領域遺伝子を、糸状バクテリオファージ、例えばM13またはfdの主要または非主要いずれかのコートタンパク質遺伝子とインフレームでクローニングして、そしてファージ粒子表面上に機能性抗体断片としてディスプレイする。糸状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択はまた、前記特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も生じる。したがって、ファージは、B細胞特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイを多様な形式で実行してもよい。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源をファージディスプレイに用いてもよい。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模ランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。本質的に、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載される技術にしたがって、免疫ヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築して、そして抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体を単離してもよい。
【0176】
また、上述のように、in vitro活性化B細胞によって、ヒト抗体を生成してもよい(US 5567610および5229275を参照されたい)。
抗体断片
特定の状況において、全抗体よりも抗体断片を用いることが得策である。断片が小さいサイズであることは、その迅速なクリアランスに寄与し、そして高密度腫瘍内へのより優れた浸透に寄与しうる。
【0177】
抗体断片の産生のために、多様な技術が開発されてきている。伝統的には、これらの断片は、損なわれていない抗体のタンパク質分解的消化を通じて得られた。しかし、現在、組換え宿主細胞によって直接これらの断片を得てもよい。Fab、FvおよびScFv抗体断片を大腸菌で発現させて該大腸菌から分泌させ、それによって、これらの断片の多量の産生を促進することを可能にしてもよい。上述の抗体ファージライブラリーから抗体断片を単離してもよい。別の態様にしたがって、Fab’-SH断片を大腸菌から直接単離し、そして化学的にカップリングして、F(ab’)断片を形成してもよい(Carterら,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチにしたがって、F(ab’)断片を組換え宿主細胞培養から直接単離してもよい。エピトープ結合受容体残基を保持しながら、in vivo半減期が増加した、FabおよびF(ab’)が、US 5869046に記載される。抗体断片を産生するための他の技術は、当業者には明らかであろう。他の態様において、選択される抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である(WO 93/16185; US 5571894およびUS 5587458を参照されたい)。FvおよびscFvのみが、定常領域を含まずに、損なわれていない結合部位を含む種であり;その結果、これらはin vivo使用中、非特異的結合を減少させるために適している。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのNまたはC末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合を生じてもよい。抗体断片はまた、例えばU.S. 5641870に記載されるような「直鎖抗体」であってもよい。こうした直鎖抗体断片は、単一特異性または二重特異性であってもよい。
【0178】
薬学的組成物
別の側面において、本発明は、活性成分として(または唯一の活性成分として)CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む薬学的組成物を提供する。
【0179】
薬学的組成物には、CD20に特異的に結合する少なくとも1つのモノクローナル抗体、ならびに薬学的に許容されうるそして薬理学的に適合する賦形剤からなる群より選択される少なくとも1つの構成要素が含まれてもよい。
【0180】
薬学的組成物には、CD20に特異的に結合する少なくとも1つのモノクローナル抗体、および1つまたはそれより多い対応する表面受容体をターゲティングする、1つまたはそれより多いさらなる結合分子(例えば抗体)が含まれてもよい。いくつかの態様において、組成物は、CD20に関連しうる障害を改善するか、防止するか、または治療するよう意図される。
【0181】
「薬学的組成物」は、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体、および薬学的に許容されうるそして薬理学的に適合する賦形剤、例えば充填剤、溶媒、希釈剤、キャリアー、補助剤、分配剤、送達剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、持続送達制御剤からなる群より選択される少なくとも1つの構成要素を含む組成物を意味し、これらの選択および比率は、投与および投薬のタイプおよび経路に応じる。本発明の薬学的組成物およびその調製法は、明確に、当業者に明らかであろう。薬学的組成物は、好ましくは、GMP(製造管理および品質管理に関する基準)要件に適合して製造されなければならない。組成物は、緩衝剤組成物、等張剤、安定化剤および可溶化剤を含んでもよい。活性薬学的成分の吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンによって、組成物の作用の持続を達成してもよい。適切なキャリアー、溶媒、希釈剤および送達剤の例には、水、エタノール、ポリアルコールおよびその混合物、油、ならびに注射用の有機エステルが含まれる。
【0182】
「医薬品(薬剤)」は、ヒトおよび動物において、生理学的機能の回復、改善または修飾のために、そして疾患の治療および防止のために、診断、麻酔、避妊、美容術等のために意図される、錠剤、カプセル、粉末、凍結乾燥物、注射剤、注入剤、軟膏および他の既製品型の薬学的組成物としての化合物または化合物の混合物である。当該技術分野において許容される、ペプチド、タンパク質または抗体を投与するための任意の方法を、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体に関して、適切に使用してもよい。
【0183】
用語「薬学的に許容されうる」は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける投与に適した1つまたはそれより多い適合する液体または固体構成要素を指す。
用語「賦形剤」は、本明細書において、本発明の上記成分以外の任意の成分を記載する。これらは、薬剤産物に、必要な物理化学特性を与えるため、薬剤製造において用いられる無機または有機性の物質である。
【0184】
用語「緩衝液」、「緩衝剤組成物」、「緩衝剤」は、その酸-塩基コンジュゲート構成要素の作用によって、pHの変化に抵抗することが可能であり、そしてCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体薬剤が、pHの変化に抵抗することを可能にする、溶液を指す。一般的に、薬学的組成物は、好ましくは、4.0~8.0の範囲のpHを有する。用いる緩衝剤の例には、限定されるわけではないが、酢酸、リン酸、クエン酸、ヒスチジン、コハク酸等の緩衝溶液が含まれる。
【0185】
用語「等張剤」、「浸透圧調節物質」または「浸透圧調節剤」は、本明細書において、液体抗体配合物の浸透圧を増加させうる賦形剤を指す。「等張」薬剤は、ヒト血液のものと等しい浸透圧を有する薬剤である。等張薬剤は、典型的には、約250~350mOsm/kgの浸透圧を有する。用いられる等張剤には、限定されるわけではないが、ポリオール、糖類およびスクロース、アミノ酸、金属塩、例えば塩化ナトリウム等が含まれる。
【0186】
「安定化剤」は、活性剤の物理的および/または化学的安定性を提供する、賦形剤、あるいは2つまたはそれより多い賦形剤の混合物を指す。安定化剤には、アミノ酸、例えば限定されるわけではないが、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、リジン、グルタミン、プロリン;界面活性剤、例えば限定されるわけではないが、ポリソルベート20(商品名:Tween 20)、ポリソルベート80(商品名:Tween 80)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコールおよびそのコポリマー(商品名:ポロキサマー)、プルロニック、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);酸化防止剤、例えば限定されるわけではないが、メチオニン、アセチルシステイン、アスコルビン酸、モノチオグリセロール、亜硫酸塩等;キレート剤、例えば限定されるわけではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸ナトリウム等が含まれる。
【0187】
明記される保存可能期間中に、保存温度、例えば2~8℃で、活性剤が、その物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を保持するならば、薬学的組成物は「安定」である。好ましくは、活性剤は、物理的および化学的安定性、ならびに生物学的活性の両方を保持する。加速されたまたは天然の経年変化(aging)状態において、安定性試験の結果に基づいて、保存期間を調節する。
【0188】
既製配合物の形の、単一単位用量または複数の単一単位用量の形で、本発明の薬学的組成物を製造するか、パッケージングするか、または広く販売してもよい。用語「単一単位用量」は、本明細書において、活性成分のあらかじめ決定した量を含有する、別個の量の薬学的組成物を指す。活性成分の量は、典型的には、被験体に投与しようとする活性成分の用量、あるいはこうした用量の好適な部分、例えばこうした用量の半量または三分の一量と等しい。
【0189】
本発明記載の薬学的組成物は、典型的には、注射、注入および移植により、胃腸管を迂回して、皮膚または粘膜障壁における割れ目(breach)を通じてヒト体内に投与されるよう意図された無菌配合物としての、非経口投与に適している。例えば、非経口投与には、とりわけ、皮下、腹腔内、筋内、胸骨内、静脈内、動脈内、クモ膜下腔内、心室内、尿道内、頭蓋内、滑膜内、経皮注射または注入;および腎臓透析注入技術が含まれる。腫瘍内送達、例えば腫瘍内注射もまた使用してもよい。局所灌流もまた提供される。好ましい態様には、静脈内および皮下経路が含まれる。当該技術分野に許容される、ペプチドまたはタンパク質を投与するための任意の方法を、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体に適切に使用してもよい。
【0190】
限定なしに、単位投薬型で、例えばアンプル、バイアル中、プラスチック容器、あらかじめ充填したシリンジ、自動注射(autoinjection)デバイス中で、注射可能配合物を調製するか、パッケージングするか、または販売してもよい。非経口投与のための配合物には、とりわけ、懸濁物、溶液、油性または水性基剤中のエマルジョン、ペースト等が含まれる。
【0191】
別の態様において、本発明は、投与前に適切な基剤(例えば無菌病原体不含水)で再構成するための乾燥(すなわち粉末または顆粒)型で提供される、薬学的組成物を含む、非経口投与のための組成物を提供する。こうした配合物を、例えば凍結乾燥プロセスによって調製してもよく、該プロセスは、フリーズドライとして当該技術分野に知られ、そして産物を凍結し、その後、凍結した物質から溶媒を除去する工程を伴う。
【0192】
また、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、鼻内または吸入によって、単独で、適切な薬学的に許容されうる賦形剤との混合物としてのいずれかで、吸入装置、例えば加圧エアロゾルコンテナ、ポンプ、スプレー、アトマイザーまたはネブライザーから、適切な噴霧剤を用いまたは用いず、あるいは点鼻剤として、またはスプレーで、投与してもよい。
【0193】
非経口投与のための投薬型を、即時または修飾放出されるように、配合してもよい。修飾放出配合物には、遅延、持続、パルス、制御、ターゲティングおよびプログラム放出が含まれる。
【0194】
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体の療法的使用
1つの側面において、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、CD20活性と関連する(該活性によって仲介される)障害の治療に有用である。
【0195】
1つの側面において、被験体は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体である。上記被験体は、男性または女性のいずれであってもよく、そして任意の年齢であってもよい。
腫瘍(例えば癌)の場合、抗体またはその断片(例えば、CD20に特異的に結合する抗体またはその断片)は、癌細胞数を減少させ;最初の腫瘍サイズを減少させ;末梢臓器内への癌細胞浸潤を阻害し(すなわちある程度遅延させ、そして好ましくは停止し);腫瘍転移を阻害し(すなわちある程度遅延させ、そして好ましくは停止し);腫瘍増殖をある程度阻害し;そして/または障害と関連する症状の1つまたはそれより多くをある程度軽減することも可能である。抗体またはその断片は、ある程度、癌細胞の増殖を防止し、そして/または存在する癌細胞を殺すことが可能であり、これは、細胞分裂停止性および/または細胞傷害性であってもよい。癌療法に関して、in vivo有効性は、例えば、生存、腫瘍進行までの時間(TTP)、治療に対する腫瘍反応速度(RR)、反応期間および/または生活の質を評価することによって測定可能である。
【0196】
本明細書において、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体および1つまたはそれより多い異なる療法剤に言及する用語、「同時投与」、「同時投与された」および「と組み合わされた」は、以下を意味するか、以下を指すか、または以下を含むと意図される:
1)本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療が必要な患者への同時投与であって、こうした構成要素が、前記構成要素を前記患者に実質的に同時に放出する、単一の投薬型内にともに配合されている場合の、前記投与、
2)本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療が必要な患者への同時投与であって、こうした構成要素が別個の投薬型に互いに分かれて配合され、これらが、前記患者に実質的に同時に摂取され、これに際して前記構成要素が、前記患者に実質的に同時に放出される場合の、前記投与、
3)本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療が必要な患者への連続投与であって、こうした構成要素が別個の投薬型に互いに分かれて配合され、これらが、各投与の間に十分な時間間隔を伴い、前記患者によって連続した時間で摂取され、投与に際して、前記構成要素が前記患者に、実質的に異なる時点で放出される場合の、前記投与;および
4)本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療が必要な患者への連続投与であって、こうした構成要素が、単一の投薬型にともに配合され、該投薬型が、前記構成要素を制御された方式で放出し、放出に際して、前記患者に同じおよび/または異なる時点で、同時に、連続して、または合同で放出され、ここで各部分が、同じまたは異なる経路のいずれかによって、投与されうる場合の、前記投与。
【0197】
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、さらなる療法的治療を伴わずに、すなわち独立療法として投与してもよい。さらに、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体による治療は、少なくとも1つのさらなる療法的治療を含んでもよい(併用療法)。いくつかの態様において、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、癌または自己免疫疾患の治療のため、別の医薬品/調製物と組み合わせて投与するかまたはともに配合してもよい。
【0198】
本明細書において、用語「細胞傷害剤」は、細胞の機能を阻害するかまたは防止し、そして/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。該用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、ならびにその断片および/または変異体を含む、細菌、真菌、植物または動物起源の毒素、例えば小分子毒素または酵素的に活性である毒素を含むよう意図される。
【0199】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(例えばブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(例えばクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、例えばカリケアマイシン・ガンマIIおよびカリケアマイシン・オメガII(例えばAgnew, Chem. Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照されたい));ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXOL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、PEG化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガファー(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモファー、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;抗副腎機能剤(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージーン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えばT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子配合物(ABRAXANETM)、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標))、FILDESIN(登録商標)、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合が微小管を形成するのを防止するビンカ類;エトポシド(VP16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイン酸などのレチノイド;ビスホスホネート、例えばアスクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチロドネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAJX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮増殖因子受容体(EGF-R)の発現を阻害するもの;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えばPS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファルニブ(RI 1577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義を参照されたい);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義を参照されたい);ならびに上記いずれかの薬学的に許容されうる塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つまたはそれより多くの組み合わせ、例えばシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略語であるCHOP、ならびに5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)での治療措置の略語であるFOLFOXが含まれる。
【0200】
この定義にやはり含まれるのは、腫瘍に対するホルモン作用を制御するかまたは阻害するように作用する、抗ホルモン剤、例えば混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを持つ抗エストロゲンであり、これには、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVTSTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、および選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、例えばSERM3;アゴニスト特性を含まない純粋抗エストロゲン、例えばフルベストラント(FASLODEX(登録商標))、およびEM800(こうした剤は、エストロゲン受容体(ER)二量体化を遮断し、DNA結合を阻害し、ER代謝回転を増加させ、そして/またはERレベルを抑制することも可能である);ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えばフォルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ならびに非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えばアナストラゾール(AREVIIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアミノグルテチミド、ならびにボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、イミダゾールを含む他のアロマターゼ阻害剤を含む、アロマターゼ阻害剤;リュープロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプテレリンを含む、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;プロゲスチン、例えば酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロン、エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロールおよびプレマリン、ならびにアンドロゲン/レチノイド、例えばフロキシメステロン、オールトランスレチノイン酸およびフェンレチニドを含む性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御剤(ERD);抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;テストラクトン;ならびに上記いずれかの薬学的に許容されうる塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つまたはそれより多くの組み合わせである。
【0201】
上記自己免疫疾患または関連する自己免疫状態の治療において、本明細書に提供するようなCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、異なる療法剤、例えば免疫抑制剤、抗炎症薬剤、全身性ホルモン薬剤、抗新生物および免疫調節薬剤またはその他と組み合わせて、多剤レジメンを用いて患者に投与してもよい。CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、異なる療法剤と同時に、連続してまたは交互に投与してもよいし、あるいは異なる療法に対する耐性が示された後に投与してもよい。異なる療法剤を、当該技術分野で用いられるものと比較して、同じまたはより低い投薬量で投与してもよい。好ましい異なる療法剤を選択する際には、治療しようとする疾患のタイプおよび患者の医学的記録を含む多くの要因を考慮しなければならない。
【0202】
本明細書において、追加(add-on)療法において用いられる用語「免疫抑制剤」は、患者の免疫系を抑制するかまたは隠すようにする物質を指す。こうした剤は、サイトカイン産生を阻害するか、自己抗原発現を下方制御または抑制するか、あるいは主要組織適合複合体(MHC)抗原を隠す物質であってもよい。こうした剤の例には、ステロイド、例えばグルココルチコイド、例えばプレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾン;2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(US 4665077を参照されたい)、アザチオプリン(またはアザチオプリンに対する副反応がある場合はシクロホスファミド);ブロモクリプチン;グルタルアルデヒド(US 4120649に記載されるようにMHC抗原を隠す);MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;インターフェロン-ガンマ、-ベータ、または-アルファ抗体を含むサイトカインおよびサイトカイン受容体アンタゴニスト;抗腫瘍壊死因子抗体;抗インターロイキン-2抗体および抗IL-2受容体抗体;抗L3T4抗体、異種抗リンパ球グロブリン、汎T抗体、好ましくは抗CD3または抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド(WO 90/08187、1990年6月26日公開);ストレプトキナーゼ;TGF-p:ストレプトドマーゼ;宿主DNA/RNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞受容体(US 5114721);T細胞受容体断片(Offnerら, Science 251:430-432(1991); WO 90/11294;およびWO 91/01133);およびT細胞受容体抗体(ЕР 340109)、例えばT10B9が含まれる。
【0203】
関節リウマチの治療において、患者に、単独で、あるいは以下の薬剤:DMARD(基本的抗炎症薬剤(例えばメトトレキセート、レフルノミド、スルファサラジン))、NSAID(非ステロイド抗炎症薬剤、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾロン、ブデソニド)の1つまたはそれより多くと組み合わせて、本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を投与してもよい。RAの治療で用いられる典型的なDMARDは、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキセート、レフルノミド、アザチオプリン、D-ペニシラミン、金に基づく調製物(経口)、金に基づく調製物(筋内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、プロテインA免疫吸着によって得られるスタフィロコッカスである。RA治療のための慣用法は、例えば、J. A. Singhら, 2015 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Rheumatoid Arthritis. Arthritis Care Res(Hoboken)68, 1-25(2016)に記載される。
【0204】
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、上述のような治療法に用いてもよく、上述のような治療に用いてもよく、そして/または上述のような治療のための薬剤製造に用いてもよいことが意味される。
【0205】
用量および投与経路
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体は、問題の状態の治療に有効な量で、すなわち望ましい結果を達成するために必要な用量で、そして必要な期間、投与されるであろう。療法的に有効な量は、治療中の特定の状態、患者の年齢、性別および体重、ならびにCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を、独立型治療として、あるいは1つまたはそれより多いさらなる薬剤または治療との組み合わせで、投与するかどうかなどの要因にしたがって、多様でありうる。
【0206】
投薬措置を調節して、最適な反応を提供してもよい。例えば、単一ボーラスを投与してもよいし、いくつかの分割用量を長期に渡って投与してもよいし、あるいは療法状況の緊急事態によって示されるように、用量を比例して減少させるかまたは増加させてもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のため、単位投薬型での非経口組成物を配合することが特に好適である。本明細書において、単位投薬型は、治療しようとする患者/被験体のための単位投薬として適した物理的に別個の単位を指すよう意図され;各単位は、所望の薬学的キャリアーと関連した、所望の療法効果を生じるよう計算された、あらかじめ決定された量の活性化合物を含有する。本発明の単位投薬型の詳述は、典型的には、(a)化学療法剤のユニークな特性、および達成しようとする特定の療法的または予防的効果、ならびに(b)治療のためのこうした活性化合物を化合する、当該技術分野に生得的な被験体感度の限界によって決定づけられ、そしてこれらに直接依存する。
【0207】
したがって、当業者は、本明細書に提供する開示に基づき、療法分野に周知の方法にしたがって、用量および投薬措置が調節されることを認識するであろう。すなわち、最大許容用量は、容易に確立可能であり、そして患者に対して検出可能な療法効果を提供する有効な量もまた決定可能であり、患者に対して検出可能な療法効果を提供するために各剤を投与するための一時的な要件も同様である。したがって、本明細書において、特定の用量および投与措置を例示するが、これらの例は、本発明の態様の実施において、患者に提供されうる用量および投与措置を、いかなる意味でも限定しない。
【0208】
投薬値が、軽減しようとする状態のタイプおよび重症度に応じて多様である可能性があり、そしてこれには単一または多数の用量が含まれてもよいことが注目されるものとする。さらに、任意の特定の被験体に関して、個体の必要性、および組成物を投与するかまたは投与を監視する医学的専門家の判断にしたがって、特定の投薬措置を長期に渡って調節すべきであり、そして本明細書に示す投薬範囲は例示のみであり、そして請求する組成物の範囲または実施を制限するとは意図されないことが理解されるものとする。さらに、本発明の組成物を含む投薬措置は、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、および使用するCD20に特異的に結合する特定のモノクローナル抗体を含む、多様な要因に基づきうる。したがって、投薬措置は、広く多様である可能性もあるが、標準法を用いて、ルーチンに決定可能である。例えば、臨床効果、例えば毒性効果および/または実験室値を含んでもよい薬物動態学または薬力学的パラメータに基づいて、用量を調節してもよい。したがって、本発明は、当業者によって決定されるような、患者内用量増大を含む。適切な投薬量および措置を決定するための方法は、当該技術分野に周知であり、そして本明細書に開示するアイディアをひとたび提供されれば、当業者によって理解されるであろう。
【0209】
適切な投薬法の例を上記に提供する。
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体の適切な用量は、0.1~200mg/kg、好ましくは0.1~100mg/kgの範囲であり、約0.5~50mg/kg、例えば約1~20mg/kgを含むであろう。例えば少なくとも0.25mg/kg、例えば少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1mg/kgを含む、例えば少なくとも1.5mg/kg、例えば少なくとも2mg/kg、例えば少なくとも3mg/kg、少なくとも4mg/kgを含む、例えば少なくとも5mg/kg;そして例えば最大50mg/kgまで、最大30mg/kgまで、例えば最大20mg/kgまでを含む、最大15mg/kgまでを含む用量で、CD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を投与してもよい。投与は、典型的には、適切な時間間隔で、例えば週1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、または4週ごとに1回、そして責任者である医師によって適切と判断されるだけ長く反復され、該医師は、いくつかの場合、必要であれば、用量を増加させるかまたは減少させてもよい。
【0210】
診断使用および組成物
本発明記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体はまた、診断プロセス(例えばin vitro、ex vivo)でも用いられる。例えば、本発明記載のCD20に特異的に結合する本モノクローナル抗体を、患者から得た試料(例えば組織試料または体液試料、例えば炎症性滲出物、血液、血清、間質液、唾液または尿)中のCD20を検出するかまたはそのレベルを測定するために用いてもよい。検出および測定のために適した方法には、イムノアッセイ、例えばフローサイトメトリー、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ、および免疫組織学が含まれる。本発明にはさらに、キット、例えば本明細書記載のCD20に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む診断キットが含まれる。
【0211】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解するために提供される。これらの実施例は、例示目的のみのためであり、そしていかなる方式でも、本発明の範囲を限定するとは見なされないものとする。
【0212】
本明細書に引用される、すべての刊行物、特許および特許出願は、本明細書に援用される。前述の発明は、理解を明確にする目的のため、例示および例のために、ある程度詳細に記載されてきているが、一般の当業者には、本発明の教示を考慮して、付随する態様の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変化および修飾を行ってもよいことが容易に明らかであろう。
【実施例
【0213】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解するために提供される。これらの実施例は、例示目的のみのためであり、そしていかなる方式でも、本発明の範囲を限定するとは見なされないものとする。
【0214】
本明細書に引用される、すべての刊行物、特許および特許出願は、本明細書に援用される。前述の発明は、理解を明確にする目的のため、例示および例のために、ある程度詳細に記載されてきているが、一般の当業者には、本発明の教示を考慮して、付随する態様の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変化および修飾を行ってもよいことが容易に明らかであろう。
【0215】
材料および一般的方法
ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は:Kabat, E.A.ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)に提供される。抗体鎖のアミノ酸は、EU番号付けにしたがって番号付けられそして称される(Edelman, G.M.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. Natl. Acad. Sci. USA 63(1969)78-85; Kabat, E.A.ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD,(1991))。
【0216】
組換えDNA技術
Sambrook, J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されるように、DNAを操作するために標準法を用いた。製造者の指示にしたがって、分子生物学試薬を用いた。
【0217】
遺伝子合成
化学合成によって作製されるオリゴヌクレオチドから所望の遺伝子セグメントを調製した。PCR増幅を含む、オリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結によって、単一の制限部位が隣接する長さ300~4000kbの遺伝子セグメントを集合させ、そして続いて示す制限部位を通じてクローニングした。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。
【0218】
DNA配列決定
サンガー配列決定によって、DNA配列を決定した。
DNAおよびタンパク質配列分析および配列データ管理
InfomaxのVector NT1 Advance suiteバージョン8.0を、配列生成、マッピング、分析、アノテーションおよびイラストレーションに用いた。
【0219】
発現ベクター
記載する抗体および抗原の発現のため、原核細胞(大腸菌(E.coli))における発現、真核細胞における(例えばCHO細胞における)一過性発現のために意図される発現プラスミドの変異体を適用した。抗体発現カセットに加えて、ベクターは:大腸菌における前記プラスミドの複製を可能にする複製起点、大腸菌において多様な抗生物質に対する(例えばアンピシリンおよびカナマイシンに対する)耐性を与える遺伝子を含有した。
【0220】
以下に記載するような記載する抗体鎖を含む融合遺伝子を、PCRおよび/または遺伝子合成によって生成し、そして例えば対応するベクターにおけるユニークな制限部位を用いて、一致した核酸セグメントの連結により、既知の組換え法および技術を用いて組み立てた。DNA配列決定によって、サブクローニングした核酸配列を検証した。一過性トランスフェクションのため、形質転換大腸菌培養から、プラスミド調製によって、より多量のプラスミドを調製した。
【0221】
実施例1. 哺乳動物細胞の懸濁培養における組換え対照抗体の産生
公表された配列を持つ抗体であるリツキシマブを対照として用いた。抗体の重鎖/軽鎖可変ドメインの遺伝子を合成し、そして哺乳動物細胞におけるタンパク質産生のために意図されるベクターpEE-HC、pEE-CKの、それぞれ、SalI/NheIおよびSalI/BstWI制限部位内にクローニングした(図1、2)。
【0222】
大腸菌細胞において必要な量のプラスミドを培養し、そしてQiagenキットを用いて精製した。
チャイニーズハムスター卵巣細胞から得られた樹立細胞株細胞(CHO-T株)において、対照抗体を産生した。8mM L-グルタミンおよび1g/lのプルロニック68を補充した血清不含培地(HyCell TransFx-C)を用いて、軌道インキュベーター振盪装置上のフラスコにおいて、懸濁培養を行った。一過性発現のため、細胞(2~2.2x10細胞/ml)を、直鎖ポリエチレンイミン(PEI MAX、Polysciences)によってトランスフェクションした。DNA/PEI比は1:3~1:10であった。トランスフェクション9日後、0.5/0.22μm深層フィルターを通じた濾過によって、培養液を細胞から分離した。細菌タンパク質プロテインAを用いたアフィンHPLCによって、培養液からターゲットタンパク質を単離した。
【0223】
還元および非還元SDSゲル電気泳動によって、得たタンパク質溶液の純度を評価した。
実施例2. ナイーブヒト抗体FAB-ライブラリーMeganLibTMの構築
1000人を超える個々のヒトドナー由来の血液試料由来のBリンパ球の総RNAを、示唆されるプロトコル(QIAGEN)にしたがって、RNeasyミニキットを用いて単離した。Nanovueキット(GE Healthcare)を用いて、RNA濃度アッセイを行い、1.5%アガロースゲル電気泳動によって、単離RNAの品質を調べた。
【0224】
MMuLV逆転写酵素およびプライマーとしてのランダム六量体オリゴヌクレオチドを用い、推奨されたプロトコルにしたがって、MMLV RTキット(Evrogen)を用いて逆転写反応を行った。
【0225】
2段階ポリメラーゼ連鎖反応において、マトリックスとして逆転写産物を用いて、制限部位が隣接した可変ドメインの遺伝子を産生した;[J Biol Chem. 1999 Jun 25; 274(26): 18218-30]によるプロトコルにしたがって、オリゴヌクレオチドキットを用いて反応を行った。
【0226】
生じたDNA調製VL-CK-VH(図4)を、NheI/Eco91I制限エンドヌクレアーゼで処理し、そして元来のプラスミドpH5内に連結した(図5)。プロトコルにしたがって調製したSS320エレクトロコンピテント細胞に連結産物を形質転換した[Methods Enzymol. 2000;328: 333-63.]。コンビナトリアルファージFabディスプレイライブラリーMeganLibTMのレパートリーは1011形質転換体であった。先に記載された方法[J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3): 581-97]にしたがって、Fabライブラリーファージ産物を調製した。
【0227】
実施例3. ファージディスプレイによるFABライブラリーの選択
コンビナトリアルファージFabディスプレイライブラリーMeganLibTMから、特異的抗CD20ヒトファージFab抗体を得た。ファージディスプレイ[Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-14; J Mol Biol.1991 Dec 5;222(3):581-97]によって、ヒトCD20発現真核細胞に対してバイオパニングを行ったが、磁気ビーズおよびKingFisher Flexデバイスを用い、これはこの技術が、最大96の異なるバイオパニングスキームおよび変形を同時に行うことを可能にするためである。
【0228】
バイオパニング中、回転装置上、20分間、ビーズと細胞をインキュベーションすることによって、ストレプトアビジン磁気ビーズの表面上に、ビオチン化真核細胞を固定した。次いで、ビーズをPBS(pH7.4)で洗浄し、次いで、PBS(pH7.4)中の2%脱脂乳溶液でビーズを1時間ブロッキングした。次いで、2%スキムミルクを補充したPBS(pH7.4)中で抗原陰性細胞とプレインキュベーションしたファージ溶液を、細胞が結合した磁気ビーズに添加した。混合物を攪拌しながら40分間インキュベーションした。0.1%Tween-20を補充したPBS溶液(pH7.4)で磁気ビーズを数サイクル洗浄することによって、未結合ファージを除去した。洗浄サイクルの回数を周期ごとに増加させた(第一周期では10回の洗浄サイクル、第二周期および第三周期では30回の洗浄サイクル)。磁気ビーズ表面上の抗原と結合したファージを、攪拌しながら、15分間、100mM Gly-HCl溶液(pH2.2)でビーズから溶出させ、そして次いで、1M Tris-HCl(pH7.6)で溶液を中和した。生じたファージで大腸菌TG1細菌を感染させ、ファージが該細菌中で培養され、これを単離し、そして次の選択サイクルで用いた。3~4周期後、DNA(ファージミド)をファージから単離し、そして大腸菌細胞においてFabを産生するため、抗体可変ドメイン遺伝子を発現ベクター(図6)内にクローニングした。
【0229】
実施例4. ライブラリースクリーニング
最初のスクリーニング
標準的技術にしたがってFabを産生した:細菌細胞を、Fab遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換する一方、生じた形質転換体の培養中に、培地内に、lacオペロンの転写を誘発する誘導剤を続いて添加すると、Fabの発現が誘導される。
【0230】
次いで、本発明者らは、支持体固定CD20ペプチドへのFabの結合に関してELISAを行った。抗ヒトFab HRPコンジュゲート化二次抗体(Pierce-ThermoScientific)を用いて、抗原結合性Fabを検出した。
【0231】
発現プラスミドpLL内に挿入したリツキシマブFab配列を、陽性対照として用いた(図6)。
最初のスクリーニングの結果として、本発明者らはターゲットCD20ペプチドに結合可能であるクローンを選択した。材料を二次スクリーニングのためトランスファーした。
【0232】
二次スクリーニング
二次スクリーニングは、CD20ペプチドと相互作用し、そして他の抗原、IL6R-Fc、PCSK9-VG-FE、PD-1-Fcと相互作用しない、Fab産生クローンの選択を目的とした。
【0233】
標準技術にしたがってFabを産生した。次いで、本発明者らは、標準法にしたがって、多様な支持体固定抗原に対するFabの結合に関して、ELISAを行った。
二次スクリーニングの結果として、ターゲットCD20ペプチドのみに特異的に結合するFab産生クローンを選択した。
【0234】
実施例5. リーダー候補の最適化
選択した候補を最適化して、ヒト化を増加させた。YLabソフトウェアパッケージ(BIOCADにより開発)のHumanizerツールを用いて、置換ポイントを選択した。多様な生物学的種由来の生殖系列機能性V、D、JセグメントをIMGTデータベースから得て、そしてデータ供給源として用いた。ヒトセグメントを陽性参照として用いる一方、ラットおよびマウス由来のものを陰性参照として用いた。このデータに基づいて、該ツールは置換すべき位を示唆した。
【0235】
さらなる選択のため、本発明者らは、選択した置換セットの複数のサブセットを含む1000の候補を生成した。生じた候補を最初の候補-ターゲットCD20複合体の結晶構造に基づいてモデリングした。BENDER(BIOCADにより開発)およびBioLuminate(Schrodinger Suiteソフトウェアより、Schrodingerにより開発)ソフトウェアを用いて、モデルを生成した。100ns分子動力学トラジェクトリーに沿って、OPLS 2005力場を用い、平均値MM-GBSAを計算することによって、生じたモデルを評価した。Desmond(Schrodinger Suite、Schrodingerにより開発)を用いて、分子動力学トラジェクトリーを得た。得た結果において、本発明者らは、133の候補クラスターを明らかに区別し、これらは、対照候補とともに、さらなる合成に関して示唆された。
【0236】
実施例6. IgG1形式の全長抗体の調製
Ylabソフトウェアパッケージ(BIOCAD)のOligoDesignerツールを用いて、調製した133の候補に関して、CHO細胞にあわせて、コドンを最適化した。重鎖/軽鎖可変ドメインの最適化配列を新規合成し、そしてベクターpEE-HC、pEE-CK(IgG1形式)の、それぞれ、Sal1/Nhe1およびSal1/BsiW1制限部位内にクローニングした(図1、2)。IgG1形式の模式図を図3に示す。
【0237】
生じた遺伝子構築物を用いて、CHO-T細胞株を形質転換した。実施例1に記載するような細菌プロテインA上のアフィニティクロマトグラフィによる標準法にしたがって、タンパク質を単離し、そして精製した。変性7.5%PAGEにおいて電気泳動を行った。22の候補の産生成績は、閾値レベル(50mg/l)未満であり;したがって、これらを単離しそして精製することはなかった。
【0238】
実施例7. 高アフィニティクローンの配列決定
Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)上、標準プロトコルにしたがって陽性クローンの可変ドメイン遺伝子を配列決定し、そして分析した。
【0239】
実施例8. Forte Bio Octert RED 384上の全長抗体のアフィニティの決定
生じた全長候補のKD値を、Forte Bio Octet RED 384上で決定した。
【0240】
SAXバイオセンサーおよびビオチン修飾CD20ペプチド(Sigma Aldrich)を研究に用いた。抗体、リツキシマブを対照として用いた。SAXバイオセンサーを、20μg/mlの濃度でビオチン化CD20ペプチドを含有する溶液内に浸し、ここでペプチドは固定された。作業緩衝液として、0.1%Tween 20および0.1%BSAを含有するPBSを用いて、さらなる分析を30℃で行った。
【0241】
緩衝溶液中でベースラインを記録した後、10μg/mlの濃度の抗体溶液を含有するウェル内にセンサーを150秒間浸し、ここで複合体が会合した。次いで、緩衝溶液中の複合体解離を300秒間検出した。
【0242】
1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析ソフトウェア(バージョン9.0)を用いて、参照シグナルを減じた後の結合曲線を分析した。
116の候補を分析のためにトランスファーした。これらのうち67は、ペプチドに対するいかなる結合も示さなかった。残りの49の候補は、ナノモルおよびマイクロモルアフィニティでペプチドと相互作用した(図7および表1)。
【0243】
表1
【0244】
【表2-1】
【0245】
【表2-2】
【0246】
【表2-3】
【0247】
【表2-4】
【0248】
【表2-5】
【0249】
上記分析の結果に基づいて、候補BCD132L-026、BCD132L-028、BCD132L-075およびBCD132L-077を選択した。
実施例9. Forte Bio Octert RED 384を用いた、CD20に対する、一過性産生後の最終候補のアフィニティの決定
SAXバイオセンサーおよびビオチン修飾CD20ペプチド(Sigma Aldrich)を研究に用いた。抗体、リツキシマブを対照として用いた。SAXバイオセンサーを、20μg/mlの濃度でビオチン化CD20ペプチドを含有する溶液内に浸し、ここでペプチドは固定された。作業緩衝液として、0.1%Tween 20および0.1%BSAを含有するPBSを用いて、さらなる分析を30℃で行った。
【0250】
緩衝溶液中でベースラインを記録した後、10μg/mlの濃度の抗体溶液を含むウェル内にセンサーを210秒間浸し、ここで複合体が会合した。次いで、緩衝溶液中の複合体解離を100秒間検出した。
【0251】
1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析ソフトウェア(バージョン9.0)を用いて、参照シグナルを減じた後の結合曲線を分析した(図8~11を参照されたい)。
【0252】
【表3】
【0253】
上記分析の結果に基づいて、候補BCD132L-028およびBCD132L-077を選択した。
実施例10. IgG1形式の抗体を安定に産生する細胞株の調製
上記アッセイ結果に基づいて、BCD132-L-028、BCD132-L-077は、最高の性能を示した。これらの重鎖および軽鎖配列を、ベクターpSXのHindIII、XbaI部位にクローニングした(図24)。生じたプラスミドを大腸菌細胞中で培養し、BenchProを用いて600~700μgを単離した。PvuIエンドヌクレアーゼによってプラスミドを一晩直線化し、そして次いでエタノールで再沈殿して、そして900~1100ng/μlの最終濃度にした。
【0254】
CHO-K1-S細胞株をS.3.87 MM培地(BIOCADにより開発されたFBS不含合成培地)+6mMグルタミン中で培養した。BCD132-L-028、BCD132-L-077候補鎖をコードする配列を含む遺伝子構築物でのトランスフェクションを、製造者のプロトコルにしたがい、NucleofectorTM(Lonza)を用いたエレクトロポレーションによって行った。
【0255】
トランスフェクション翌日、ピューロマイシン(7.2μg/mlの最終濃度)、ハイグロマイシンB(640μg/mlの最終濃度)を培地に添加することによって、トランスフェクション培養を24日間選択した。選択した細胞集団をクローニングした。増殖率、集団均一性、および形態変化の非存在を考慮して、ターゲットタンパク質レベル/構造均一性の分析結果に基づき、それぞれ、BCD132-L-028、BCD132-L-077を発現する細胞クローンを選択した一方、候補BCD132-L-026およびBCD-132-L-075を排除した。
【0256】
実施例11. Forte Bio Octert RED 384上での、CD20に対する、安定細胞株中で培養された最終候補のアフィニティの決定
SAXバイオセンサーおよびビオチン修飾CD20ペプチド(Sigma Aldrich)を研究に用いた。抗体、リツキシマブを対照として用いた。SAXバイオセンサーを、20μg/mlの濃度でビオチン化CD20ペプチドを含有する溶液内に浸し、ここでペプチドは固定された。作業緩衝液として、0.1%Tween 20および0.1%BSAを含有するPBSを用いて、さらなる分析を30℃で行った。
【0257】
緩衝溶液中でベースラインを記録した後、10μg/mlの濃度の抗体溶液を含有するウェル内にセンサーを150秒間浸し、ここで複合体が会合した。次いで、緩衝溶液中の複合体解離を300秒間検出した。
【0258】
1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析ソフトウェア(バージョン9.0)を用いて、参照シグナルを減じた後の結合曲線を分析した(図12~15)。
【0259】
【表4】
【0260】
実施例12. Forte Bio Octert RED 384上での、FcγRIIIa-158Fに対する、安定細胞株中で培養された最終候補のアフィニティの決定
SAXバイオセンサーおよびビオチン修飾FcγRIIIa-158Fタンパク質(Sigma Aldrich)を研究に用いた。SAXバイオセンサーを、5μg/mlの濃度でビオチン化タンパク質を含有する溶液内に浸し、ここでタンパク質は0.5nmのシグナルレベルに固定された。作業緩衝液として、0.1%Tween 20および0.1%BSAを含有するPBSを用いて、さらなる分析を30℃で行った。
【0261】
ベースラインを記録した後、多様な濃度の抗体溶液を含有するウェル内にセンサーを90秒間浸し、ここで複合体が会合した。次いで、緩衝溶液中の複合体解離を150秒間検出した。
【0262】
1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析ソフトウェア(バージョン9.0)を用いて、参照シグナルを減じた後の結合曲線を分析した(図16~19)。
【0263】
【表5】
【0264】
実施例13. Forte Bio Octert RED 384上での、FcγRIIIa-158Vに対する、安定細胞株中で培養された最終候補のアフィニティの決定
SAXバイオセンサーおよびビオチン修飾FcγRIIIa-158Vタンパク質(Sigma Aldrich)を研究に用いた。SAXバイオセンサーを、5μg/mlの濃度でビオチン化タンパク質を含有する溶液内に浸し、ここでタンパク質は0.5nmのシグナルレベルに固定された。作業緩衝液として、0.1%Tween 20および0.1%BSAを含有するPBSを用いて、さらなる分析を30℃で行った。
【0265】
ベースラインを記録した後、多様な濃度の抗体溶液を含有するウェル内にセンサーを90秒間浸し、ここで複合体が会合した。次いで、緩衝溶液中の複合体解離を150秒間検出した。
【0266】
1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析ソフトウェア(バージョン9.0)を用いて、参照シグナルを減じた後の結合曲線を分析した(図20~23)。
【0267】
【表6】
【0268】
実施例14. フローサイトメトリーを用いた、WIL2-S細胞株上のCD20受容体に対する、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の特異的結合の測定。
【0269】
MabThera(リツキシマブ)を対照抗体として用いた。試料および対照抗体を、200μg/mlの濃度まで希釈し、染色緩衝液(PBS、0.5%BSA、0.1%NaN3)中、4の増分で力価決定した。1x10細胞/mlの濃度のWIL2-S(ATCC(登録商標)CRL8885)細胞懸濁物を標準および試験試料溶液のある力価とともにインキュベーションした。懸濁物を攪拌し、そして氷中で30分間インキュベーションした。インキュベーション時間後、プレートを遠心分離し、上清を収集し、100μlの染色緩衝液を添加し、混合物を再懸濁し、そして遠心分離した。上清を収集し、染色緩衝液中のコンジュゲート化蛍光抗ヒトFc-PE抗体(Jackson Immunoresearch、109-115-098)溶液中に沈殿物を再懸濁した。プレートを暗所、氷中で30分間インキュベーションした。インキュベーション時間後、プレートを遠心分離し、上清を収集し、100μlの染色緩衝液を添加し、混合物を再懸濁し、そして遠心分離した。上清を収集し、沈殿物を150μlの染色緩衝液中に再懸濁し、そしてフローサイトメーターGuava12HT(Merck Millipore)によってアッセイした。guavaSoft 3.1.1ソフトウェアのInCyteモジュールを用いて、データを分析した。
【0270】
WIL2-S細胞株上のCD20受容体に対する試験抗体BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の特異的結合レベルは、MabThera(リツキシマブ)のものと同一である。結果を図25に示す。
【0271】
実施例15. BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の補体依存性細胞傷害性の測定
WIL2-S(ATCC(登録商標)CRL-8885TM)細胞株を補体依存性細胞傷害性アッセイに用いた。
【0272】
2mMグルタミン、0.1%ウシ血清アルブミン、50μg/mlのゲンタマイシンを補ったRPMI-1640中でアッセイを行った。試験抗体BCD-132-L-028、BCD-132-L-077およびMabThera(リツキシマブ)を、50μg/mlの濃度から連続して希釈した。生じた溶液を50μl/ウェルで96ウェルプレートに添加した。1x10細胞/mlのWIL2-S細胞懸濁物を調製し、そして50μl/ウェルでプレートウェルに添加した。補体(Quidel、A113)の作業溶液を調製し、そして50μl/ウェルで培養プレートに添加した。
【0273】
37℃、5%COでプレートを2時間インキュベーションした。インキュベーション時間後、15μl/ウェルのアラマーブルー色素をプレートウェルに添加し、勾配染色が見られるまで、37℃、5%COでプレートをインキュベーションした。Infinite M200Proプレート読み取り装置を用い、544/590nmの励起/発光波長で、蛍光を測定した。
【0274】
BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の補体依存性細胞傷害性のレベルは、MabThera(リツキシマブ)のものと同等である。結果を図26図27に示す。
【0275】
実施例16. レポーター株Jurkat-NFAT-CD16を用いた、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077の抗体依存性細胞傷害性の測定。
WIL-2S(ATCC(登録商標)CRL-8885TM)をターゲット株として用いて、抗体依存性細胞傷害性を測定した。エフェクター細胞として、本発明者らは、細胞表面FcγRIIIa(CD16a)受容体を安定発現し、そしてNFAT反応要素の制御下にルシフェラーゼコード遺伝子を所持するレポーター株Jurkat-NFAT-CD16高(CD16の高アフィニティアロタイプ、V158)およびJurkat-NFAT-CD16低(CD16の低アフィニティアロタイプ、F158)を使用した。
【0276】
本発明者らは、2mM L-Gln、4%(v/v)低IgG FBSおよび5μg/mlゲンタマイシンを補充したRPMI1640中、0.5x10細胞/mlでWIL-2S細胞懸濁物を調製した。25μl/ウェルのターゲット細胞懸濁物を白色壁の培養プレートに添加した。
【0277】
本発明者らは、BCD-132-L-028またはBCD-132-L-077およびMabThera(リツキシマブ)のある力価を5μg/mlから5の増分(25μl/ウェル)で、そしてレポーター株Jurkat-NFAT-CD16高または低の3x10細胞/mlの懸濁物(25μl/ウェル)を添加した。プレートを攪拌し、そして37℃、5%CO2で4~8時間インキュベーションした。
【0278】
インキュベーション時間後、本発明者らは75μl/ウェルのBio-Bloルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を添加し、そして100ms積分時間でInfinite M200Proを用いて発光を測定した。
【0279】
BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077は、MabTheraのものに比較した際、有意により高いADCC活性を示し:CD16の高アフィニティアロタイプとレポーター株を用いた際、活性は3~4倍高く、そしてCD16の低アフィニティアロタイプとレポーター株を用いた際、12~16倍高かった。結果を図28に示す;図29はCD16の低アフィニティアロタイプとレポーター株の結果を示し、そして図30図31は、CD16の高アフィニティアロタイプとレポーター株の結果を示す。
【0280】
実施例17. 健康なドナー由来の全血を用いた、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077によって誘導されるCD19+によるB細胞枯渇の測定。
CD16a受容体アロタイプ:FF(低アフィニティ受容体)、FV(ヘテロ接合体)、VV(高アフィニティ受容体)を持つ健康なドナー由来の全血を用いて、試験試料の活性をex vivoで測定した。
【0281】
MabThera(リツキシマブ)を対照抗体として用いた。対照および試験抗体を、96ウェルプレート中、3つ組で力価決定した。Li-ヘパリンを含む真空管中に、健康なドナー由来の血液を収集した。試験管を室温で30分間インキュベーションした。10μlの調製抗体溶液および190μlの全血を、側面溝のある96ウェルプレート(Eppendorf)に添加した。5mlのDPBSを96ウェルプレートの側面溝に添加した。軌道振盪装置(2mm)上、600rpmで2分間、プレートを攪拌し、そして次いで、COインキュベーター中、22時間インキュベーションした。
【0282】
インキュベーション時間後、CD45、CD3/CD19(BD Pharmingen)に対する蛍光標識抗体で試料を1時間染色した。本発明者らは細胞を固定し、そしてBD Pharmingen溶解緩衝液を用いて赤血球を溶解し、染色緩衝液(DPBS、0.1%NaN3、0.5%BSA)中の溶解緩衝液で2回洗浄し、そしてCD45+CD3+およびCD45+CD19+事象の数を測定した(ゲートCD45+内で少なくとも10,000事象)。guavaSoft 3.1.1ソフトウェアのInCyteモジュールを用いて、データを分析した。
【0283】
抗体を含まないポイントのB細胞/T細胞比を用いて、相対B細胞枯渇を測定した(B細胞数を100%=0%B細胞枯渇とする)。以下の式:
【0284】
【化13】
【0285】
を用いて、B細胞/T細胞比を計算した。
以下の式:
【0286】
【化14】
【0287】
を用いて、B細胞枯渇パーセントを計算した。
拡張パッケージdrcを含む統計環境Rを使用して、4パラメータ曲線をプロットした。
【0288】
試験抗体BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077は、MabThera(リツキシマブ)に比較した際、有意により高い活性を示す。したがって、アロタイプFFの供与血液を用いた際、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077は、CD19+細胞の約50%の枯渇を誘導する一方、MabThera(リツキシマブ)は、約20%の枯渇を誘導する。MabThera(リツキシマブ)のED50値は、CD16アロタイプFVおよびVVの供与血液を用いた際、BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077のものより有意に高い。BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077のB細胞枯渇のレベルは、ドナーCD16アロタイプに依存しない。結果を図32に示す。
【0289】
実施例18. ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を用いた、ラモス細胞株に対する、抗CD20抗体候補の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性アッセイ。
CD20発現ラモス細胞株および健康なドナー由来のPBMCをADCCアッセイに使用した。10%FBS(ウシ胎児血清)を補充したRPMI-1640培地中、ラモス細胞を37℃、5%COで培養し、損傷を受けた細胞壁をもつ細胞のみから逃れうる蛍光色素カルセインAMで細胞を染色した。10細胞/mlの密度の細胞懸濁物を、10%FBSを補ったRPMI-1640培地中で調製した。
【0290】
Ficoll密度勾配分離(1.077g/cm)によって健康なドナー由来の静脈血からPBMCを単離した。510細胞/mlの密度の細胞懸濁物を、10%FBSを補充したRPMI-1640培地中で調製した。
【0291】
ADCCアッセイのため、一連の抗体希釈を50μl/ウェルで96ウェルプレートのウェルに添加した。100μl/ウェルのラモス懸濁物および50μl/ウェルのPBMC懸濁物をこれらに添加した。プレートを5%COとともに、37℃で4時間インキュベーションした。インキュベーション終了の30分前、10μl/ウェルの10%Triton X-100を最大溶解ウェルに添加した。インキュベーション後、細胞を採取せずに、100μl/ウェルの細胞液を新規プレートに移した。485/538nmの励起/発光波長で蛍光を測定した。
【0292】
以下の式:
【0293】
【化15】
【0294】
を用いて、ADCC効率を計算した。
抗体濃度の関数としてのADCCに基づいて、本発明者らは、GraphPad Prism 6.0ソフトウェアパッケージを用いて、4パラメータ等式によって記載される依存性を決定し、そして最大半量有効濃度(EC50)を計算した。
【0295】
ADCCアッセイにしたがって、抗CD20抗体候補BCD-132-L-028およびBCD-132-L-077は、リツキシマブのものよりもより優れた性能を示す。結果を図33に示す。
【0296】
実施例19. 実験自己免疫脳脊髄炎(EAE)のモデルに対する、カニクイザルにおける反復静脈内投与後の、BCD132-L-077モノクローナル抗体産物の活性研究。
【0297】
オス・カニクイザルにおいて、研究を行った。総数12頭の動物が実験に関与し、各群は4頭のサルを含んだ。本発明者らは、実験において、2つの産物用量;5mg/kg;22mg/kgを用い、対照群の動物にはプラセボ産物を投与した。動物実験群のデータを表2に示す。
【0298】
表2. 動物群
【0299】
【表7】
【0300】
カニクイザルにおいて実験自己免疫脳脊髄炎を誘導するため、いくつかの刊行物に記載されている修飾技術を用いた。霊長類を感作するため、本発明者らはJSC<BIOCAD>の組換えタンパク質を用い、該タンパク質は、ヒトミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質の細胞外ドメイン(rhMOG、アミノ酸1~125)である。
【0301】
各動物に、400μlのフロイントの完全アジュバントと混合した、400μlのリン酸緩衝生理食塩水中の400μgのタンパク質を含有するエマルジョンを3回注射した。rhMOGの最初の投与直後、サルに熱不活性化百日咳菌(B. pertussis)ワクチンを注射した。
【0302】
rhMOGの第一の投与
エマルジョンを調製するため、10mgのrhMOGを10mlのリン酸緩衝生理食塩水中に溶解した。生じた溶液に、10mlのフロイントの完全アジュバントを添加した。8ポイントの100μl注射(サルあたりの総投与体積は800μlである)によって、生じたエマルジョンを表皮下投与した:
4回の注射を脊髄領域に(肩甲骨の間、2回を脊髄の右側および2回を左側);
2回の注射を鼠径部に(1回を右側および1回を左側);
2回の注射を腋窩空間に(1回を右側および1回を左側);
rhMOGの最初の投与後、1010不活性化百日咳菌粒子を静脈内投与した。
第一および第二の免疫の間の間隔は28日間であった。
【0303】
rhMOGの第二の投与
エマルジョンを調製するため、10mgのrhMOGを10mlのリン酸緩衝生理食塩水中に溶解した。生じた溶液に、10mlのフロイントの完全アジュバントを添加した。8ポイントの100μl注射(サルあたりの総投与体積は800μlである)によって、生じたエマルジョンを表皮下投与した:
4回の注射を脊髄領域に(肩甲骨の間、2回を脊髄の右側および2回を左側);
2回の注射を鼠径部に(1回を右側および1回を左側);
2回の注射を腋窩空間に(1回を右側および1回を左側);
第二および第三の免疫の間の間隔は14日間であった。
【0304】
rhMOGの第三の投与
エマルジョンを調製するため、10mgのrhMOGを10mlのリン酸緩衝生理食塩水中に溶解した。生じた溶液に、10mlのフロイントの完全アジュバントを添加した。8ポイントの100μl注射(サルあたりの総投与体積は800μlである)によって、生じたエマルジョンを表皮下投与した:
4回の注射を脊髄領域に(肩甲骨の間、2回を脊髄の右側および2回を左側);
2回の注射を鼠径部に(1回を右側および1回を左側);
2回の注射を腋窩空間に(1回を右側および1回を左側);
【0305】
実験自己免疫脳脊髄炎(EAE)のモデルに対するBCD132-L-077産物の有効性の評価
産物活性を測定するため、脳および脊髄組織の組織学的検査を行った。脊髄および脳組織における炎症反応の重症度を、表3にしたがった3ポイントスケールでスコア付けした。
【0306】
表3. 炎症反応重症度スケール
【0307】
【表8】
【0308】
霊長類脊髄および脳組織における変性変化の重症度を、表4に示すようなスケールでスコア付けした。
【0309】
表4.脊髄/脳組織脱髄重症度スケール
【0310】
【表9】
【0311】
炎症重症度測定値の結果を図34に示す。研究で用いた5.0mg/kgおよび22.0mg/kg用量の投与で、対照群(偽対照)に比較した際、総群スコアの減少があることが示されてきている。検出された変化には信頼性がなかった。また、実験群間に有意な相違はなかった。したがって、産物の2つの試験用量に関して匹敵する抗炎症効果有効性があるといってもよい。
【0312】
神経組織における変性変化の重症度の測定結果を図35に示す。5.0mg/kgの最小用量で試験産物BCD132-L-077を用いた際、本発明者らは、対照のものに比較して、脱髄スコアの有意な減少を観察した。
【0313】
22.0mg/kgの用量で産物を投与された動物群もまた、問題のパラメータ値の減少を示したが、信頼性はなかった。実験群間の値に有意な相違はなく;したがって、2つの用量の活性レベルは匹敵すると結論付けてもよい。
【0314】
研究によって、5.0mg/kgおよび22.0mg/kgの用量では産物は有効性に関して匹敵する抗炎症効果を示し、そして実験霊長類の神経組織において、類似の度合いまで、脱髄レベルを減少させることが示された。上記データに基づいて、5.0mg/kgの用量が、薬理学的活性用量(FAD)と確立可能である。
【0315】
実施例20. カニクイザルにおける多数回の皮下投与後のBCD132-L-077の毒性および主要薬物動態学的パラメータ(毒物動態学)の研究。
カニクイザルのオスにおいて研究を行った。検疫後、動物を4つの実験群に分け、各群は、投与しようとする産物の用量にしたがって、3頭のオスを含み;サルを群に分配する基準として体重を用いた。本発明者らは実験において、3つの産物用量:44mg/kg;88mg/kg;176mg/kgを用い、対照群の動物はプラセボ産物を投与された。動物の状態、死んだ動物の数およびその死亡のタイミングを評価基準として用いた。注射後8時間、そして次いで、42日間毎日、動物を観察した。
動物実験群および産物用量に関するデータを表5に示す:
【0316】
表5. BCD132-L-077産物の有効性研究における動物群
【0317】
【表10】
【0318】
動物の状態、死んだ動物の数およびその死亡のタイミングを評価基準として用いた。
研究範囲内で、注射後8時間、そして次いで毎日、臨床検査を行い;さらに、本発明者らは以下を評価した:
・動物体重;
・体温;
・尿検査;
・以下のパラメータ:赤血球数、白血球数、ヘモグロビン濃度に関する完全血液分析;
・以下のパラメータ:乳酸デヒドロゲナーゼ、総ビリルビン、総タンパク質、グルコース、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼに関する血清の生化学的分析;
・血清中の産物濃度。
【0319】
研究にしたがって、試験産物は、単回静脈内投与後、カニクイザルの死を誘導せず、実験動物は、投与プロセスをよく許容した。産物は、統合毒性指標に対するいかなる影響も示さず、そして問題のパラメータにしたがって、臓器の機能状態にも影響を示さなかった。選択した用量範囲で、産物は、線形薬物動態を示す。
【0320】
実施例21. 4週間のカニクイザルにおけるBCD132-L-077産物の反復静脈内投与、その後、2週間の回復期間後の薬物動態学および免疫原性の研究。
22.0、44.0および88.0mg/kgの用量を用いて、反復静脈内投与後の薬物動態学および免疫原性を研究した。4~7歳の総数18頭の性的に成熟したサル、9頭のメスのサルおよび9頭のオスのサル(カニクイザル)が研究に含まれた。投与しようとする産物の用量に基づいて、動物を3群に分けた。
【0321】
表6. 動物群
【0322】
【表11】
【0323】
酵素連結免疫吸着アッセイによって、霊長類血清中のBCD132-L-077のレベルを測定した。研究中、薬物動態学的パラメータに対する産物結合抗体の形成のありうる影響を確立するため、BCD132-L-077産物の免疫原性を測定した。また、本発明者らは、比AUCSS168(336~504):AUC0~168から集積係数を計算した。
【0324】
AUC0~168値を計算するため、産物の最初の投与直前に血清を採取し、そして次いで投与0.25、24、72および168時間後に採取して;AUCss168(336~504)値を計算し、産物の第四の投与直前に血清を採取し、そして次いで、投与0.25、24、72および168時間後に採取したが検出されなかった動物のみのデータに基づいて、薬物動態学的パラメータを計算した。したがって、産物に免疫反応を示す動物由来のデータは、薬物動態学的パラメータの計算からは排除された。集積インデックスによって産物集積を測定し;この目的に向けて、AUC0~168およびAUCss(336~504)値を決定し、そして以下の式:
【0325】
【化16】
【0326】
式中、AUCss168(336~504)は、反復投与下で、投薬間隔に対応する期間(168時間)に渡って、産物濃度-時間曲線下の面積の平衡値であり;
AUC0~168は、体内に産物が導入された瞬間から最初の投与の168時間後までの、産物濃度-時間曲線下の面積である
によってインデックスを計算した。
【0327】
抗体結合BCD132-L-077産物のレベルを分析するため、本発明者らは霊長類の血清を用いた。最初の投与前に、そして次いで実験第4週および第7週に、研究用の試料を採取した。
【0328】
実施例22. BCD132-L-077産物の増加用量(22.0mg/kg、44.0mg/kg、88.0mg/kg)の反復静脈内投与下での薬物動態学的パラメータの比較。
【0329】
図36は、霊長類血清に関する平滑化BCD132-L-077産物の濃度-時間曲線を示す。表7は、群に関する主要薬物動態学的パラメータの平均値を示す。
表7. BCD132-L-077産物の増加用量の投与下での主要薬物動態学的パラメータに関する比較データ(投薬間隔に対応する336~504時間の期間(168時間)を用いて、定常状態(ss)値を計算した)。
【0330】
【表12】
【0331】
産物投与336~504時間後の投薬期間(168時間)中の定常状態AUC値を用いて、BCD132-L-077産物の薬物動態学的パラメータを計算した。最初の投薬間隔(1~168時間)において計算した初期AUCは、用いた用量と直接関連した。最小用量群では、このパラメータは13,435.59±11,159.80(μg/ml)時間であり;中間(average)用量群では:13,301.04±8,719.10(μg/ml)時間であり;そして最大用量群では:34,145.90±16,765.50(μg/ml)時間であった。定常状態(336~504時間)で計算したAUCもまた、用いた用量に依存した。AUCss168(336~504)は、22mg/kgの用量で産物を投与された動物群では26,227.47±16,819.40(μg/ml)時間であり;中間用量群では、値は22,366.93±10,370.60(μg/ml)時間であり、そして最大用量群では、97,088.33±94,675.60(μg/ml)時間であった。半減期値(T1/2)は、22mg/kgの用量で産物を投与された動物群では94.76±50.30時間であり、中間用量群では155.38±111.20時間であり、そして最大用量群では471.00±782,50時間であった。クリアランスは、最小用量群で0.00924±0.004l/時間であり、中間用量群で0.01873±0.015l/時間であり、そして最大用量群で0.01228±0.005l/時間であった。産物の平均滞留時間(MRT)は、最小用量群で66.37±13.60時間、中間用量群で68.30±17.50時間、そして71.51±9.20時間であった。分布の定常状態体積(Vdss)は、最小、中間および最大用量群で、それぞれ、521.65±186.90ml/kg、1,639.68±1,170.50ml/kg、2,384.08±2,213.30ml/kgであった。平均定常状態濃度(Css)は、最小、中間および最大用量群で、それぞれ、156.12±100.10μg/ml、133.14±61.70μg/ml、577.91±563.50μg/mlであった。最大定常状態濃度(Cssmax)は、326.89±241.70μg/ml、427.03±266.50μg/ml、1,212.72±830.90μg/mlであった。最小定常状態濃度(Cssmin)は、82.64±75.20μg/ml、84.58±63.90μg/ml、162.88±74.70μg/mlであった。得られたデータから、霊長類血清中の産物濃度が、実験に用いたBCD132-L-077用量に直接関係することが示される。
【0332】
22.0mg/kgの最小用量で産物を投与された動物群に関しては、集積インデックス(R)は1.95であった。44.0mg/kgの中間用量でBCD-132を投与された動物群に関しては、集積インデックスRは1.68であった。最大用量(88.0mg/kg)で産物を投与された動物群に関しては、インデックスRは2.84であった。得られた実験データは、集積インデックス値が用いた用量に依存しないことを示す。
【0333】
研究中、薬物動態学的パラメータに対する産物結合抗体の形成のありうる影響を確立するため、BCD132-L-077産物の免疫原性を測定した。実験データは、研究に関与するすべての動物の11.11%におけるBAbの存在を示す。性別依存性は見られず;BAbは1頭のオスおよび1頭のメスで観察された。産物結合抗体は、中間および最大用量群で見られ、各群で1頭のみの動物であった。結合抗体の存在が確立された動物に関する実験データをプロセシングから排除するならば、薬物動態学的パラメータをすべての動物群で評価してもよい。
【0334】
実施例23. 4週間のカニクイザルにおけるBCD132-L-077産物の反復静脈内投与、その後、2週間の回復期間後の毒性および局所刺激効果の研究。
4~7歳の総数30頭のカニクイザル、15頭のオスおよび15頭のメスが実験に関与した。各群には6頭のサルが含まれた。22mg/kg、44mg/kgおよび88mg/kgの用量で、反復投与下、産物毒性を研究した。投与しようとする産物の用量および安楽死までの時間にしたがって、動物を5群に分けた:
22mg/kgの最小用量でのBCD132-L-077産物(3頭のメスおよび3頭のオス);
44mg/kgの中間用量でのBCD132-L-077産物(3頭のメスおよび3頭のオス);
88mg/kgの最大用量でのBCD132-L-077産物、投与終了後安楽死(3頭のメスおよび3頭のオス);
88mg/kgの最大用量でのBCD132-L-077産物、回復期終了後の安楽死(3頭のメスおよび3頭のオス);
偽対照(3頭のメスおよび3頭のオス)。
【0335】
動物実験群に関するデータを表8に示す。
表8. 動物群
【0336】
【表13】
【0337】
研究範囲内で、臨床検査を毎日行い;さらに本発明者らは以下を調べた:
・動物体重;
・体温;
・尿検査;
・ECG;
・止血パラメータ:活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノーゲン濃度、プロトロンビン時間;
・以下のパラメータに関する完全血液分析:赤血球数、白血球数、ヘモグロビン濃度、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球;
・以下のパラメータに関する血清の生化学的分析:乳酸デヒドロゲナーゼ、総ビリルビン、総タンパク質、グルコース、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、コレステロール、トリグリセリド、尿素、クレアチニン(createnine)、ナトリウム、カリウム、アルカリホスファターゼ;
・病理形態学的および組織学的研究。
【0338】
検査データおよび組織学的検査の結果に基づいて、局所刺激効果を評価した。投与部位組織および排出リンパ節を組織学的検査のために選択した。
組織学的検査によれば、試験産物は局所刺激効果を示さない。
【0339】
JSC<BIOCAD>によって産生されたBCD132-L-077療法モノクローナル抗体産物の毒性研究において得られたデータは、試験産物が、4週間の反復毎週静脈内投与下で、実験動物の主要臓器および臓器系に毒性効果を示さないことを示す。この研究で確立されるように、観察される副作用レベルの非存在(NOAEL)は、試験産物BCD132-L-077の最大用量および88mg/kgまでの量に対応する。
【0340】
実施例24. Rajiヒトリンパ腫細胞株を用いた、皮下異種移植片モデルに対する、ヒトNK細胞でヒト化された免疫不全hIL15-NOGマウスにおける、反復腹腔内投与後のBCD132-L-028産物の抗腫瘍活性の研究。
【0341】
この研究において、本発明者らは、ヒトIL-15を恒常的に発現し、そして15.0~25.0gの重量の免疫不全トランスジェニックhIL15-NOGマウスの7群を用いるよう計画する。総数84頭のメス動物が実験に関与した。群に関するデータを表9に示す。
【0342】
表9. 動物群
【0343】
【表14】
【0344】
腫瘍細胞株の投与前に、そして次いで、実験全体で週2回、動物の重量を測定する。
腫瘍細胞の投与後、実験全体で週2回、腫瘍小結節を測定する。
腫瘍小結節の体積を以下の式によって計算する:
V=π/6xLxWxH、式中、L、W、Hは腫瘍線寸法である。
【0345】
腫瘍増殖阻害インデックス(TGI)対腫瘍増殖インデックス(I)によって、試験産物の有効性を評価する。以下の式によってインデックスを計算する:
【0346】
【化17】
【0347】
式中、VおよびVоは、それぞれ、対照および処置群における腫瘍体積中央値(MM)である。
=V/V
式中、Iは腫瘍増殖インデックスであり、iは実験日であり、そしてVoは1日あたりの腫瘍体積である。
【0348】
実施例25. カニクイザルにおける単回静脈内投与後のBCD132-L-028モノクローナル抗体産物の毒性および主要薬物動態学的パラメータ(毒物動態学)の研究。
研究において、本発明者らは、各群3頭のオスを含むカニクイザルの4つの実験群を用いるよう計画する。サルは、実験にしたがった動物番号の表示を含む個々のケージに維持される。
【0349】
体重を基準として用いて、投与しようとする物質の用量にしたがって、動物をランダムに群に割り当てる。
表10. 動物群
【0350】
【表15】
【0351】
産物を、無菌等張生理食塩水溶液として、尺骨静脈に静脈内投与するよう計画する。対照群の動物には、実験群で用いたものと同じ体積および方法を用いて、等張生理食塩水を投与する(プラセボ)。
【0352】
研究範囲内で、臨床検査を毎日行い;さらに、本発明者らは以下を調べる:
1. 動物体重;
2. 体温;
3. 尿検査;
4. 以下のパラメータに対する完全血液分析:赤血球数、白血球数、ヘモグロビン濃度;
5. 以下のパラメータに対する血清の生化学分析:乳酸デヒドロゲナーゼ、総ビリルビン、総タンパク質、グルコース、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ;
6. 血清中の産物濃度の研究、主要薬物動態学的パラメータの計算、および薬物動態学的線形性の評価。
【0353】
実施例26. 13週間のカニクイザルにおけるBCD132-L-028モノクローナル抗体産物の反復静脈内投与、その後、30日間の回復期間後の、薬物動態学および免疫原性の研究
13週間の反復静脈内投与、その後、30日間の回復期間後の、薬物動態学および免疫原性の研究において、本発明者らは18頭のカニクイザル(9頭のオスおよび9頭のメス)を用いるよう計画する。
【0354】
動物は、投与しようとする物質の用量にしたがって、3群(表11)に割り当てられ、各群は3頭のメスおよび3頭のオスを含む:最小用量群(6mg/kg)、中程度の用量群(20mg/kg)、最大用量群(60mg/kg)。
【0355】
表11. 動物群
【0356】
【表16】
【0357】
研究において、本発明者らは:
1. 実験動物の血清において試験産物濃度を評価する;
2. 増加する用量の投与下で、試験産物集積を評価する;
3. 試験産物の反復静脈内投与下で、結合抗体レベルを評価する
よう計画する。
【0358】
実施例27. 13週間のカニクイザルにおけるBCD132-L-028モノクローナル抗体産物の反復静脈内投与、その後、30日間の回復期間後の、毒性および局所刺激効果の研究。
【0359】
研究において、本発明者らは、カニクイザルの5つの実験群を用いるよう計画し、各群は3頭のオスおよび3頭のメスを含む:最小用量群(6mg/kg、剖検なし)、中程度の用量群(20mg/kg、剖検なし)、サテライト最大用量群(60mg/kg、産物投与期間終了後に剖検)、主要最大用量群(60mg/kg、回復期間終了後に剖検)および偽対照群(回復期間終了後に剖検)。
【0360】
表12. 動物群(-サテライト群の動物)
【0361】
【表17】
【0362】
各動物の臨床検査を毎日行い;さらに、本発明者らは以下を評価する:
・動物体重;
・体温(投与前、および次いで、実験終了まで毎週);
・Poly-Spectr心電計を用いた心臓血管系に対する影響;
・尿検査;
・以下のパラメータに関する完全血液分析:赤血球数、白血球数、ヘモグロビン濃度、リンパ球数、単球数、好中球数、好酸球数、好塩基球数;
・以下のパラメータに関する凝血系に対する影響の評価:活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノーゲン濃度、プロトロンビン時間;
・以下のパラメータに関する血清の生化学的分析:ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、総ビリルビン、総タンパク質、グルコース、トリグリセリド、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総コレステロール;
産物投与期間終了時(第14週)、本発明者らは、各動物群から3頭のオスおよび3頭のメスを安楽死させるよう計画する。各群の残りの2頭のオスおよび2頭のメスは回復期間終了時(第18週)に安楽死させる。局所刺激効果は、剖検データおよび組織学的検査の結果に基づいて評価される。組織学的検査のため、本発明者らは、尺骨静脈、投与部位組織および排出リンパ節の切片を選択するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
図18
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図20
図21
図22
図23
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図26
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【配列表】
2022506430000001.app
【国際調査報告】