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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】低損失電力フェライト及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/38 20060101AFI20220107BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C04B35/38
H01F1/34 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523837
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 US2019056462
(87)【国際公開番号】W WO2020092004
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/754,938
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤジエ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】イイン・ヤオ
【テーマコード(参考)】
5E041
【Fターム(参考)】
5E041AB02
5E041BD01
5E041NN02
(57)【要約】
MnZnフェライトマトリクスからなる一次相、及び、Rが希土類イオンであるオルソフェライトRFeO、イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、それらの組み合わせを含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子であって、前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子の平均粒径(D50)よりも小さい、マイクロスケールの介在物粒子、及び、任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を含む、多相フェライト組成物であって、重量パーセントが、前記多相フェライト組成物の総重量に基づく、多相フェライト組成物を含む。多相フェライト組成物の製造方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト混合物を形成するために、
MnZnフェライト粒子、
Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであるオルソフェライトRFeO
イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、
それらの組み合わせ
を含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子、及び、
任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を組み合わせる段階であって、
重量パーセントが、前記フェライト混合物の総重量に基づいており、
前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、
前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子のD50よりも小さい、段階と、
前記フェライト混合物とバインダー溶液を含むスラリーを造粒して、50から750ミクロン、好ましくは100から500ミクロンの顆粒を得る段階と、
前記顆粒を圧縮してグリーン体を形成する段階と、
前記グリーン体を0.01から20%の酸素中で焼結して、多相フェライト組成物を生成する段階と、
を含む、多相フェライト組成物を製造するための方法。
【請求項2】
前記MnZnフェライト粒子が、Mn1-xZnFe2+y(x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4)、及び、任意にドーパントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドーパントが、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、ドーパントをさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、オルソフェライトを含み、前記ドーパントが、Zr、Ti又はそれらの組み合わせを含み、又は、
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YIGを含み、前記ドーパントが、Ce、Ca、V、Mn、Gd、Al、In又はそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YFeO、YIG又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記任意の添加剤が、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO又はそれらの組み合わせである、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記MnZnフェライト粒子が、0.5ミクロンから10ミクロン、好ましくは0.5から2ミクロン、又は、1から5ミクロン、又は、5から10ミクロンの平均粒径(D50)を有する、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フェライト混合物を粉砕して、0.5ミクロンから10ミクロン、好ましくは0.5から2ミクロン、又は、1から5ミクロン、又は、5から10ミクロンの平均粒径(D50)を有するMnZnフェライト粒子を得る段階、
前記MnZnフェライト粒子を合成する段階、
前記マイクロスケールの介在物粒子を合成する段階、又は、
前記焼結されたグリーン体を冷却して、前記多相フェライト組成物を得る段階を含む、
請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バインダー溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルブチラール(PVB)を含み、好ましくは、前記バインダー溶液が、前記バインダー溶液の総重量に基づいて4から6重量パーセントの濃度でPVA又はPVBを含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スラリーを噴霧乾燥することによって造粒が行われる、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
グリーン体を形成するために前記顆粒を圧縮する段階が、0.3から4トン/cm、好ましくは0.5から3トン/cmで行われる、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の方法により製造された多相フェライト組成物。
【請求項14】
MnZnフェライトマトリクスからなる一次相、及び、
Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであるオルソフェライトRFeO
イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、
それらの組み合わせ
を含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子であって、
前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、
前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子の平均粒径(D50)よりも小さい、マイクロスケールの介在物粒子、及び、
任意に0.01から5重量パーセントの添加剤
を含む、多相フェライト組成物であって、
重量パーセントが、前記多相フェライト組成物の総重量に基づく、多相フェライト組成物。
【請求項15】
前記MnZnフェライト粒子が、Mn1-xZnFe2+y(x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4)、及び、任意にドーパントを含む、請求項14に記載の多相フェライト組成物。
【請求項16】
前記ドーパントが、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の多相フェライト組成物。
【請求項17】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、ドーパントをさらに含む、請求項14から16の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項18】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、オルソフェライトを含み、前記ドーパントが、Zr、Ti又はそれらの組み合わせを含み、又は、
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YIGを含み、前記ドーパントが、Ce、Ca、V、Mn、Gd、Al、In又はそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の多相フェライト組成物。
【請求項19】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YFeO、YIG又はそれらの組み合わせを含む、請求項14から18の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項20】
前記任意の添加剤が、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO又はそれらの組み合わせである、請求項14から19の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項21】
200kHz、100mTで50から150mW/cmの電力損失(Pv)、1000から3500の透磁率、少なくとも450から500mTの磁束密度、又は、それらの組み合わせを有する、請求項13から20の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項22】
請求項13から21の何れか一項に記載の多相フェライト組成物を含み、又は、請求項1から12の何れか一項に記載の方法により作られた物品。
【請求項23】
変圧器、電子デバイス、インダクタ、パワーエレクトロニクスデバイス、電力システム、電源又は電力変換器である、請求項22に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電力用途向けの低損失複合材料を製造する方法、その方法によって作られる低損失複合材料、及び、低損失複合材料を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用途向けの低損失で小型のフェライト部品は、何十年にもわたって求められてきた。パワーエレクトロニクスの現在の急速な開発、特にワイドバンドギャップデバイスの用途では、高周波用途用の低損失フェライト材料が緊急に必要とされている。
【0003】
電力フェライト材料の電力損失密度を低減するための多くの試みがなされてきた。これらの試みのほとんどは、フェライトマトリクスに非磁性(常磁性、反磁性又は反強磁性)の絶縁材料を追加することによって電気抵抗率を高めることを含む。しかしながら、非磁性材料を使用する場合の欠点は、材料の透磁率及び飽和磁束密度が大幅に低下することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野では、電力用途向けの高動作周波数(50kHzから10MHz)で低損失、高透磁率及び高飽和を有するフェライト材料、及び、そのようなフェライト材料を製造する、費用効果が高く柔軟な方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されるものは、フェライト混合物を形成するために、MnZnフェライト粒子、Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであるオルソフェライトRFeO、イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、それらの組み合わせを含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子、及び、任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を組み合わせる段階であって、重量パーセントが、前記フェライト混合物の総重量に基づいており、前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子の平均粒径(D50)よりも小さい、段階と、前記フェライト混合物とバインダー溶液を含むスラリーを造粒して、50から750ミクロン、好ましくは100から500ミクロンの顆粒を得る段階と、前記顆粒を圧縮してグリーン体を形成する段階と、前記グリーン体を0.01から20%の酸素中で焼結して、多相フェライト組成物を生成する段階と、を含む、多相フェライト組成物を製造するための方法である。
【0006】
また、MnZnフェライトマトリクスからなる一次相、及び、Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであるオルソフェライトRFeO、イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、それらの組み合わせを含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子であって、前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子の平均粒径(D50)よりも小さい、マイクロスケールの介在物粒子、及び、任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を含む、多相フェライト組成物であって、重量パーセントが、前記多相フェライト組成物の総重量に基づく、多相フェライト組成物が開示される。
【0007】
上記及び他の特徴は、以下の詳細な説明によって例示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、MnZnフェライトマトリクスに導入されたフェリ磁性又は弱強磁性誘電体のマイクロスケールの介在物を含む多相フェライト組成物及びその多相フェライト組成物を製造する方法を開発した。多相フェライト組成物は、高い透磁率及び飽和磁化を維持しながら、抵抗率が向上している。介在物は、多相フェライト組成物の透磁率を保持し、又は、増加させながら、電力損失密度を低減する。多相フェライト組成物は、高い動作周波数、例えば50キロヘルツ(KHz)から10メガヘルツ(MHz)での電力用途での使用に特に適している。
【0009】
上記のように、多相フェライト組成物は、室温でフェリ磁性又は弱強磁性である誘電体材料のマイクロスケールの介在物粒子が導入されたMnZnフェライトマトリクスからなる一次相を含む。マイクロスケールの介在物粒子は、MnZnフェライトの粒界又は粒子内に配置することができる。任意に、多相フェライト組成物は、添加剤組成物をさらに含む。多相フェライト組成物は、50kHzから10MHzの動作周波数で高い透磁率及び高い磁束密度を維持しながら、超低電力損失を示す。例えば、多相フェライト組成物は、200kHz、100mTで50から150mW/cmの電力損失(Pv)、1000から3500の透磁率、及び/又は、少なくとも450から500mTの磁束密度を有する可能性がある。
【0010】
MnZnフェライトマトリクスは、式Mn1-xZnFe2+yのMnZnフェライトであり、ここで、x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4であり、任意にドーパントを含む。MnZnフェライトドーパントは、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせであり得る。MnZnフェライトは、意図された用途の動作周波数で、透磁率などの望ましい特性をマトリクスに提供するように注意して選択される。
【0011】
任意にドープされたMnZnフェライトは、粉末又は粒状の形で商業的に入手することができる。あるいは、任意にドープされたMnZnフェライトは、任意の適切な方法によって合成することができる。
【0012】
MnZnフェライトを合成するための例示的な方法は、適切な量のMnO、ZnO、Fe及び任意にドーパント源を混合し、酸化物の混合物をか焼し、か焼された生成物を所望の粒径に縮小する。ドーパント源は、CoO、NiO、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta又はそれらの組み合わせである可能性がある。ドーパント源の適切な量は、MnZnフェライトに所望の程度のドーピングを提供する量であり、例えば、0.005から15重量パーセント、0.005から8重量パーセント、0.005から5重量パーセント、0.01から5重量パーセント、0.05から5重量パーセント、又は、0.1から5重量パーセントのドーピングレベルであり、ここで、重量パーセントは、全てのソース化合物の総重量に基づくものである。酸化物の混合物のか焼は、空気又は他の適切な雰囲気中で行うことができる。温度は、600℃から1500℃、好ましくは800℃から1300℃であり得る。酸化物の混合物のか焼は、混合物から任意にドープされたMnZnフェライトを生成するのに適した期間、例えば、1から12時間、又は、2から10時間実行される。か焼された生成物の粒度を小さくすることは、任意の適切な方法によって実行することができる。例えば、か焼された生成物は、押しつぶし及び/又は粉砕に供され得、任意に篩にかけられ得る。多相フェライト組成物を製造するために、任意にドープされたMnZnフェライトの最終的な平均粒径は、マイクロスケールの介在物粒子の平均粒径よりも大きくなければならず、例えば、0.5ミクロンから10ミクロン、又は、0.5ミクロンから2ミクロン、又は、1ミクロンから5ミクロン、又は、5ミクロンから10ミクロンであり得る。
【0013】
本明細書において、「粒径」は、体積分布粒径を意味する。「平均粒径」又は「D50」という用語は、粒子の50%がその値よりも小さい体積分布粒径を有する体積分布粒径値を指す。粒径は、セディグラフ法、レーザー回折又は同等の方法で決定することができる。特定の実施形態において、粒径は、例えば、Horiba LA-960レーザー粒径分析器を用いたレーザー回折によって決定される。
【0014】
マイクロスケールの介在物粒子は、多相フェライト組成物の使用目的の動作周波数での透過性などの所望の特性を備えた多相フェライト組成物を提供するように注意して選択される。マイクロスケールの介在物粒子は、オルソフェライトRFeOにすることができ、ここで、Rは、希土類イオンであり、YFe12(イットリウム鉄ガーネット、「YIG」)、又は、それらの組み合わせである。好ましくは、オルソフェライト中のRは、Y、Ho、Er、Gd又はLuであり、より好ましくは、Rは、Y、Ho又はErである。
【0015】
希土類オルソフェライトの特徴は、R3+とFe3+の2つの磁気サブシステムが存在することである。理論に縛られることなく、Fe-Fe、R-Fe及びR-R相互作用の競合が、これらの材料にいくつかの興味深い現象をもたらすと考えられている。対応するスピン配置は、c(c//z)結晶軸に沿って方向付けられた小さな総強磁性モーメントと、a(a//x)結晶軸に沿って方向付けられた反強磁性ベクトルを持つ傾斜反強磁性構造である。希土類イオンは、常磁性のままであるが、鉄イオンサブシステムの分子場で磁気モーメントを発生させる。
【0016】
イットリウム鉄ガーネットは、磁気及び磁電気特性を備えたフェライト材料であり、光学デバイス及びマイクロ波通信コンポーネントの様々な用途、特に高周波用途に適している。YIGの立方晶構造には、3つの副格子が含まれる:それぞれ3つのイットリウムイオン、2つの鉄イオン、及び、3つの鉄イオンが占める十二面体(c)サイト、八面体(a)サイト、及び、四面体(d)サイトである。理論に拘束されることなく、YIG構造の磁気的挙動は、逆平行に整列したaサイトとdサイトの鉄イオン間の超交換相互作用から生じると考えられ、それは、d-サイトの余剰鉄イオンのため磁気モーメントを生成する。
【0017】
マイクロスケールの介在物粒子は、ドーパントをさらに含むことができる。ドープされたRFeO中のドーパントの例には、Zr、Ti及びそれらの組み合わせが含まれる。ドープされたYIGにおけるドーパントの例には、Ce、Ca、V、Mn、Gd、Al、In及びそれらの組み合わせが含まれる。マイクロスケールの介在物粒子は、多相フェライト組成物の総重量に基づいて、0.005から15重量パーセント、又は、0.01から10重量パーセント、又は、0.01から5重量パーセントの量で多相フェライト組成物に存在することができる。本明細書において、「マイクロスケール」とは、粒子が、少なくとも0.1ミクロン、又は、少なくとも0.15ミクロン、又は、少なくとも0.25、又は、少なくとも0.5ミクロンであるが、10ミクロン以下、5ミクロン以下、又は、2ミクロン以下の体積ベースの平均粒径(D50)を有することを意味する。マイクロスケールの介在物粒子は、MnZnフェライト粒子のD50よりも小さいD50を有する必要がある。
【0018】
マイクロスケールの介在物粒子は、粉末又は粒状の形態で商業的に入手することができる。あるいは、マイクロスケールの介在物粒子は、任意の適切な方法によって合成することができる。
【0019】
任意にドープされたマイクロスケールの介在物粒子を合成するための例示的な方法は、希土類酸化物などの希土類イオンの適切な量のソース化合物、及び、Fe、並びに、任意にドーパント源を混合し、酸化物の混合物をか焼し、か焼された生成物を所望の粒径に縮小することを含む。ドーパント源の例には、TiO、ZrO、SnO、Gd、In、Al及びそれらの組み合わせが含まれる。ドーパント源の適切な量は、オルソフェライト又はYIGにおいて所望の程度のドーピングを提供する量であり、例えば、0.005から8重量パーセント、0.005から5重量パーセント、0.01から5重量パーセント、0.05から5重量パーセント、又は、0.1から5重量パーセントのドーピングレベルであり、重量パーセントは、全てのソース化合物の総重量に基づいている。酸化物の混合物のか焼は、空気又は20から100%の酸素などの他の適切な雰囲気中で実施することができる。温度は、600℃から2000℃、700℃から1700℃、又は、800℃から1500℃にすることができる。酸化物の混合物のか焼は、混合物から任意にドープされた介在物粒子を生成するのに適した期間、例えば、1から12時間、又は、2から10時間、又は、3から8時間実行される。か焼された生成物の粒径を小さくすることは、任意の適切な方法によって実行することができる。例えば、か焼された生成物は、押しつぶし及び/又は粉砕に供することができる。か焼された生成物の粒径を小さくすることは、アトライタ、圧延機、クロスビートミルなどで行うことができる。多相フェライト組成物を製造するために、任意にドープされたマイクロスケールの介在物粒子の最終的な平均粒径は、0.1ミクロンから10ミクロン、又は、0.1ミクロンから5ミクロン、又は、0.15ミクロンから2ミクロン、又は、1ミクロンから5ミクロンであり得る。ただし、任意にドープされたマイクロスケールの介在物粒子の平均粒径は、MnZnフェライト粒子の平均粒径よりも小さい。
【0020】
例えば、ドープされたオルソフェライトYFeOを合成するために、化学量論量のY及びFe、並びに、TiO及び/又はZrOなどのドーパント源を混合することができる。次に、酸化物の混合物を1000から1200℃の温度でか焼する。か焼された生成物の粒径は、所望の粒径に縮小される。
【0021】
例えば、ドープされたYIGを合成するためには、化学量論量のY及びFe、並びに、Ce、CaO、V、MnO、Gd、In、及び/又は、Alなどのドーパント源を混合することができる。酸化物の混合物は、か焼することができ、次に、か焼された生成物の粒径を1200から1500℃の温度で所望の粒径に縮小することができる。
【0022】
多相フェライトに任意に存在する添加剤は、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO、Bi、MoO、又は、それらの組み合わせである可能性がある。添加剤は、多相フェライト組成物の総重量に基づいて、0.01から5重量パーセントで多相フェライトに存在することができる。添加剤は、多相フェライト組成物の使用目的の動作周波数での微細構造又は改善された電力損失特性などの所望の特性を備えた多相フェライト組成物を提供するように注意深く選択される。
【0023】
多相フェライト組成物を製造する方法は、MnZnフェライト粒子、MnZnフェライト粒子のD50よりも小さい平均粒径(D50)を有するマイクロスケールの介在物粒子、及び、任意にフェライト混合物を形成するための添加剤を組み合わせる段階と、フェライト混合物とバインダー溶液を含むスラリーを造粒して、50から750ミクロン、好ましくは100から500ミクロンの顆粒を得る段階と、顆粒を圧縮してグリーン体を形成する段階と、グリーン体を焼結する段階と、を含む。焼結は、例えば、0.01から20%の酸素中で1000から1500℃の温度で実施して、多相フェライト組成物を形成することができ、好ましくは、温度は、1100から1350℃である。いくつかの実施形態では、介在物粒子、及び、任意に添加剤は、混合物を粉砕する前にMnZnフェライト粒子と混合されて、選択された粒径のMnZnフェライト粒子が得られる。
【0024】
バインダー溶液は、3から20重量パーセント、又は、5から15重量パーセントの量でフェライト混合物に添加されて、スラリーを形成することができ、ここで、重量パーセントは、スラリーの総重量に基づくものである。バインダー溶液は、4から6重量パーセントのポリビニルアルコール又はポリビニルブチラールなどの水溶液であり得る。
【0025】
スラリーの造粒は、適切なサイズの顆粒を達成するために、例えば、熱噴霧乾燥機システムを使用することによって、任意の適切な方法を使用して実施することができる。特定の実施形態では、顆粒は、50から750マイクロメートル、又は、100から500マイクロメートルのサイズを有する。
【0026】
グリーン体を形成するための顆粒の圧縮は、0.3から4トン/cm、好ましくは0.5から3トン/cmで行われる。
【0027】
グリーン体は、様々な形状に成形することができる。いくつかの実施形態では、グリーン体は、コア構成要素に成形される。コア構成要素の例には、トロイド、プレート、ディスク、Eコア及びEIコアが含まれる。
【0028】
グリーン体の焼結は、空気又は0.01から20%の酸素を含む窒素雰囲気中で行うことができる。焼結温度は、1000から1500℃であり得、好ましくは、この温度は、1100から1350℃である。滞留時間は、1から12時間、又は、2から10時間、又は、3から8時間であり得る。焼結された生成物の室温(25℃)への冷却は、制御された雰囲気で行うことができる。例えば、冷却中、酸素分圧は、0.005から8%、又は、0.01から5%の範囲内に制御することができる。加熱及び冷却段階中の所望の雰囲気条件における低酸素分圧は、この雰囲気中の窒素ガスの流量、例えば、0.5から5リットル/分の窒素ガス、又は、1から3リットル/分の窒素ガスの流量によって制御することができる。適切な加熱及び冷却速度を選択して、所望の特性を備えた生成物を得ることができる。
【0029】
焼結体は、様々な用途の要件を満たすために、必要に応じて、さらに機械加工することができる。
【0030】
物品は、多相フェライト組成物を含むことができる。物品の例には、変圧器、電子デバイス、インダクタ、パワーエレクトロニクスデバイス、電力変換器、インダクタデバイス、アンテナ、送信及び受信モジュール(TRM)、電子的にスキャンされたフェーズドアレイ(ESPA)システム、電子戦(EW)システム、反電磁干渉材料、スイッチモード電源(SMPS)調整コンポーネントを備えた通信デバイス、例えばワイヤレス充電用の磁気バスバー、NFCシールド材、又は、電子バンドギャップメタマテリアルが含まれる。いくつかの実施形態では、物品は、アンテナ又はインダクタなどのマイクロ波デバイスである。物品は、マイクロ波吸収又はマイクロ波シールドの用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、物品は、パッチアンテナ、逆Fアンテナ、又は、平面逆Fアンテナなどのアンテナである。
【0031】
製造された材料の化学組成及び相純度は、X線回折(XRD)などの技術を使用して決定することができる。エネルギー分散型X線分光法を使用して、焼結された生成物の化学量論を確認することができる。形態の決定は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して実行することができる。電力損失、複素透磁率、電気インピーダンス及び電気抵抗率を含む磁気的及び電気的特性は、適切な方法及び機器を使用して決定することができる。例えば、電力損失は、B-Hアナライザ、電力計、又は、その他の同等の測定システムによって決定することができ、複素透磁率及び電気インピーダンスは、インピーダンスアナライザ又は同等のものによって決定することができ、電気抵抗率は、メガオームメーター又は同等のものによって測定することができる。
【0032】
以下の例は、本明細書に開示される多相フェライト組成物及び製造方法の単なる例示であり、本明細書の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
予言的な例
MnZnフェライトの調製
(Mn0.69Zn0.20)Fe2.11スピネルフェライトは、従来のセラミック加工法で作製される。Fe(純度99.95%)、Mn(純度97%、残りはMnO)、及び、ZnO(純度99.99%)の高純度原料酸化物を公称比率で組み合わせ、粉砕、乾燥し、900℃で4時間か焼する。か焼されたMnZnフェライトを押しつぶし、平均粒径2ミクロンに粉砕する。粒径は、LA-960レーザー粒径アナライザー(Horiba)を使用して体積分布粒径として決定される。
【0034】
多相フェライトの準備
一連の多相フェライトサンプルは、平均粒径0.75ミクロンのYIGマイクロスケール介在物粒子をMnZnフェライトと混合することによって調製される。ポリビニルアルコールを5重量パーセントの濃度で混合物に添加し、造粒され、次いで圧力下で圧縮されて、トロイダルグリーン体を形成する。ここで、重量パーセントは、組成物の総重量に基づいている。グリーン体は、5%の酸素分圧(PO)下において1200℃で4時間焼結され、2L/minのNガスフローで室温まで冷却される。
【0035】
磁気的及び電気的特性の測定
すべての試験片は、電力損失、複素透磁率、及び、電気インピーダンスを含む磁気的及び電気的特性について測定される。
【0036】
多相フェライト組成物は、50kHzから10MHzの動作周波数で高い透磁率及び高い磁束密度を維持しながら、超低電力損失を示すという利点があり、特に高い動作周波数、例えば50キロヘルツ(KHz)から10メガヘルツ(MHz)での電力用途での使用に適している。多相フェライト組成物は、200kHzで50から100ミリワット/立方センチメートル(mW/cm)のPv、100ミリテスラ(mT)、1000から3500の透磁率、500mTを超える飽和磁束密度を有する。
【0037】
本明細書に開示される多相フェライト組成物及び多相フェライト組成物の製造方法は、非限定的である以下の態様によってさらに説明される。
【0038】
(態様1)
フェライト混合物を形成するために、MnZnフェライト粒子、Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであり、より好ましくはRがY、Ho又はErであるオルソフェライトRFeO、イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、それらの組み合わせを含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子、及び、任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を組み合わせる段階であって、重量パーセントが、フェライト混合物の総重量に基づいており、前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子のD50よりも小さい、段階と、前記フェライト混合物とバインダー溶液を含むスラリーを造粒して、50から750ミクロン、好ましくは100から500ミクロンの顆粒を得る段階と、前記顆粒を圧縮してグリーン体を形成する段階と、前記グリーン体を0.01から20%の酸素中で焼結して、多相フェライト組成物を生成する段階と、を含む、多相フェライト組成物を製造するための方法。
【0039】
(態様2)
前記MnZnフェライト粒子が、Mn1-xZnFe2+y(x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4)、及び、任意にドーパントを含む、態様1に記載の方法。
【0040】
(態様3)
前記ドーパントが、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせを含む、態様2に記載の方法。
【0041】
(態様4)
前記マイクロスケールの介在物粒子が、ドーパントをさらに含む、態様1から3の何れか1つに記載の方法。
【0042】
(態様5)
前記マイクロスケールの介在物粒子が、オルソフェライトを含み、前記ドーパントが、Zr、Ti又はそれらの組み合わせを含み、又は、前記マイクロスケールの介在物粒子が、YIGを含み、前記ドーパントが、Ce、Ca、V、Mn、Gd、Al、In又はそれらの組み合わせを含む、態様4に記載の方法。
【0043】
(態様6)
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YFeO、YIG又はそれらの組み合わせを含む、態様1から5の何れか1つに記載の方法。
【0044】
(態様7)
前記任意の添加剤が、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO又はそれらの組み合わせである、態様1から6の何れか1つに記載の方法。
【0045】
(態様8)
前記MnZnフェライト粒子が、0.5ミクロンから10ミクロン、好ましくは0.5から2ミクロン、又は、1から5ミクロン、又は、5から10ミクロンの平均粒径(D50)を有する、態様1から7の何れか1つに記載の方法。
【0046】
(態様9)
前記フェライト混合物を粉砕して、0.5ミクロンから10ミクロン、好ましくは0.5から2ミクロン、又は、1から5ミクロン、又は、5から10ミクロンの平均粒径(D50)を有するMnZnフェライト粒子を得る段階、前記MnZnフェライト粒子を合成する段階、前記マイクロスケールの介在物粒子を合成する段階、又は、前記焼結されたグリーン体を冷却して、前記多相フェライト組成物を得る段階を含む、態様1から8の何れか1つに記載の方法。
【0047】
(態様10)
前記バインダー溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルブチラール(PVB)を含み、好ましくは、前記バインダー溶液が、前記バインダー溶液の総重量に基づいて4から6重量パーセントの濃度でPVA又はPVBを含む、態様1から9の何れか1つに記載の方法。
【0048】
(態様11)
前記スラリーを噴霧乾燥することによって造粒が行われる、態様1から10の何れか1つに記載の方法。
【0049】
(態様12)
グリーン体を形成するために前記顆粒を圧縮する段階が、0.3から4トン/cm、好ましくは0.5から3トン/cmで行われる、態様1から11の何れか1つに記載の方法。
【0050】
(態様13)
態様1から12の何れか1つに記載の方法により製造された多相フェライト組成物。
【0051】
(態様14)
MnZnフェライトマトリクスからなる一次相、及び、Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであり、より好ましくはRがY、Ho又はErであるオルソフェライトRFeO、イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は、それらの組み合わせを含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子であって、前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子の平均粒径(D50)よりも小さい、マイクロスケールの介在物粒子、及び、任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を含む、多相フェライト組成物であって、重量パーセントが、前記多相フェライト組成物の総重量に基づく、多相フェライト組成物。
【0052】
(態様15)
前記MnZnフェライト粒子が、Mn1-xZnFe2+y(x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4)、及び、任意にドーパントを含む、態様14に記載の多相フェライト組成物。
【0053】
(態様16)
前記ドーパントが、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせを含む、態様15に記載の多相フェライト組成物。
【0054】
(態様17)
前記マイクロスケールの介在物粒子が、ドーパントをさらに含む、態様14から16の何れか1つに記載の多相フェライト組成物。
【0055】
(態様18)
前記マイクロスケールの介在物粒子が、オルソフェライトを含み、前記ドーパントが、Zr、Ti又はそれらの組み合わせを含み、又は、前記マイクロスケールの介在物粒子が、YIGを含み、前記ドーパントが、Ce、Ca、V、Mn、Gd、Al、In又はそれらの組み合わせを含む、態様17に記載の多相フェライト組成物。
【0056】
(態様19)
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YFeO、YIG又はそれらの組み合わせを含む、態様14から18の何れか1つに記載の多相フェライト組成物。
【0057】
(態様20)
前記任意の添加剤が、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO又はそれらの組み合わせである、態様14から19の何れか1つに記載の多相フェライト組成物。
【0058】
(態様21)
200kHz、100mTで50から150mW/cmの電力損失(Pv)、1000から3500の透磁率、少なくとも450から500mTの磁束密度、又は、それらの組み合わせを有する、態様13から20の何れか1つに記載の多相フェライト組成物。
【0059】
(態様22)
態様13から21の何れか1つに記載の多相フェライト組成物を含み、又は、態様1から12の何れか1つに記載の方法により作られた物品。
【0060】
(態様23)
変圧器、電子デバイス、インダクタ、パワーエレクトロニクスデバイス、電力システム、電源又は電力変換器である、態様22に記載の物品。
【0061】
一般に、本明細書に記載の組成物、物品及び方法は、代わりに、本明細書に開示される任意の成分又は段階を含み、それからなり、又は、本質的にそれからなることができる。物品及び方法は、本願の特許請求の範囲の機能又は目的の達成に必要ではない成分、段階又は構成要素を欠き、又は、実質的に含まないように、追加的又は代替的に製造又は実施することができる。
【0062】
単数形の「a」、「an」及び「the」には、文脈で明確に指示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。「又は」は「及び/又は」を意味する。別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、特許請求の範囲が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。「組み合わせ」には、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などが含まれる。本明細書に記載の値は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲を含み、これは、値がどのように測定又は決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存する。同じ構成要素又は特性に向けられた全ての範囲の終点には、終点と中間値が含まれ、個別に組み合わせることができる。代替的に使用可能な種のリストにおいて、「それらの組み合わせ」は、組み合わせが、リストの少なくとも1つの要素と、名前が付けられていない1つ又は複数の同様の要素との組み合わせを含み得ることを意味する。また、「少なくとも1つ」とは、リストが各要素を個別に含み、リストの2つ以上の要素の組み合わせ、及びリストの少なくとも1つの要素と名前が付けられていない同様の要素との組み合わせを含むことを意味する。
【0063】
本明細書で別段の定めがない限り、全ての試験規格は、本願の出願日現在で有効な最新の規格であり、優先権が主張されている場合は、試験規格が記載されている最も早い優先権出願の出願日である。別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0064】
引用された全ての特許、特許出願及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本願の用語が、組み込まれた参照の用語と矛盾又は対立する場合、本願の用語は、組み込まれた参照の矛盾する用語よりも優先される。
【0065】
開示された主題は、いくつかの実施形態及び代表的な例に関して本明細書に記載されているが、当業者は、その範囲から逸脱することなく、開示された主題に対して様々な修正及び改善を行うことができることを認識するであろう。当該技術分野で知られている追加の特徴も同様に組み込むことができる。さらに、開示された主題のいくつかの実施形態の個々の特徴は、他の実施形態ではなく本明細書で議論することができるが、いくつかの実施形態の個々の特徴は、別の実施形態の1つ又は複数の特徴、又は、複数の実施形態の複数の特徴から組み合わせることができることは明らかであるはずである。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト混合物を形成するために、
MnZnフェライト粒子、
Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであるオルソフェライトRFeO 含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子、及び、
任意に0.01から5重量パーセントの添加剤を組み合わせる段階であって、
重量パーセントが、前記フェライト混合物の総重量に基づいており、
前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、
前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子のD50よりも小さい、段階と、
前記フェライト混合物とバインダー溶液を含むスラリーを造粒して、50から750ミクロン、好ましくは100から500ミクロンの顆粒を得る段階と、
前記顆粒を圧縮してグリーン体を形成する段階と、
前記グリーン体を0.01から20%の酸素中で焼結して、多相フェライト組成物を生成する段階と、
を含む、多相フェライト組成物を製造するための方法。
【請求項2】
前記MnZnフェライト粒子が、Mn1-xZnFe2+y(x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4)、及び、任意にドーパントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドーパントが、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、ドーパントをさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、オルソフェライトを含み、前記ドーパントが、Zr、Ti又はそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YFeO 含む、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記任意の添加剤が、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO又はそれらの組み合わせである、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記MnZnフェライト粒子が、0.5ミクロンから10ミクロン、好ましくは0.5から2ミクロン、又は、1から5ミクロン、又は、5から10ミクロンの平均粒径(D50)を有する、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フェライト混合物を粉砕して、0.5ミクロンから10ミクロン、好ましくは0.5から2ミクロン、又は、1から5ミクロン、又は、5から10ミクロンの平均粒径(D50)を有するMnZnフェライト粒子を得る段階、
前記MnZnフェライト粒子を合成する段階、
前記マイクロスケールの介在物粒子を合成する段階、又は、
前記焼結されたグリーン体を冷却して、前記多相フェライト組成物を得る段階を含む、
請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バインダー溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルブチラール(PVB)を含み、好ましくは、前記バインダー溶液が、前記バインダー溶液の総重量に基づいて4から6重量パーセントの濃度でPVA又はPVBを含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スラリーを噴霧乾燥することによって造粒が行われる、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
グリーン体を形成するために前記顆粒を圧縮する段階が、0.3から4トン/cm、好ましくは0.5から3トン/cmで行われる、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の方法により製造された多相フェライト組成物。
【請求項14】
MnZnフェライトマトリクスからなる一次相、及び、
Rが希土類イオンであり、好ましくはRがY、Ho、Er、Gd又はLuであるオルソフェライトRFeO 含む、0.01から10重量パーセントのマイクロスケールの介在物粒子であって、
前記マイクロスケールの介在物粒子が、0.1ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.15から2ミクロン、又は、1から5ミクロンの平均粒径(D50)を有し、
前記マイクロスケールの介在物粒子のD50が、前記MnZnフェライト粒子の平均粒径(D50)よりも小さい、マイクロスケールの介在物粒子、及び、
任意に0.01から5重量パーセントの添加剤
を含む、多相フェライト組成物であって、
重量パーセントが、前記多相フェライト組成物の総重量に基づく、多相フェライト組成物。
【請求項15】
前記MnZnフェライト粒子が、Mn1-xZnFe2+y(x=0.1から0.9、及び、y=0から0.4)、及び、任意にドーパントを含む、請求項14に記載の多相フェライト組成物。
【請求項16】
前記ドーパントが、Co、Ni、Ti、Zr、Sn、Si、V、Ta、Nb、Ca又はそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の多相フェライト組成物。
【請求項17】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、ドーパントをさらに含む、請求項14から16の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項18】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、オルソフェライトを含み、前記ドーパントが、Zr、Ti又はそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の多相フェライト組成物。
【請求項19】
前記マイクロスケールの介在物粒子が、YFeO 含む、請求項14から18の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項20】
前記任意の添加剤が、CaO、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、Nb、Ta、CoO又はそれらの組み合わせである、請求項14から19の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項21】
200kHz、100mTで50から150mW/cmの電力損失(Pv)、1000から3500の透磁率、少なくとも450から500mTの磁束密度、又は、それらの組み合わせを有する、請求項13から20の何れか一項に記載の多相フェライト組成物。
【請求項22】
請求項13から21の何れか一項に記載の多相フェライト組成物を含み、又は、請求項1から12の何れか一項に記載の方法により作られた物品。
【請求項23】
変圧器、電子デバイス、インダクタ、パワーエレクトロニクスデバイス、電力システム、電源又は電力変換器である、請求項22に記載の物品。
【国際調査報告】