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特表2022-506463ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤でがんを治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤でがんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7068
A61K31/4545
A61K31/5513
A61K31/4709
G01N33/574 A
G01N33/574 Z
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523856
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019059084
(87)【国際公開番号】W WO2020092720
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/793,547
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/754,438
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516098524
【氏名又は名称】クラ オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ グアルベルト
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084AA22
4C084AA23
4C084AA24
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC38
4C086BC56
4C086EA17
4C086GA04
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、がん療法の分野に関する。具体的には、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)で対象におけるがんを治療する方法であって、CXCL12/CXCR4経路の活性、及び/またはIGF1R経路の活性に基づいて対象がFTI治療に対して反応性である可能性が高いかどうかを決定することを含む、方法が提供される。本明細書ではまた、FTI及びIGF1R阻害剤またはCXCR4アンタゴニストのいずれかを使用するがん治療の併用療法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるKRAS野生型がんを治療する方法であって、治療的有効量のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いC-X-Cモチーフケモカインリガンド12(CXCL12)発現を有する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記がんは、固形腫瘍である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記固形腫瘍は、膵臓癌である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記がんは、膵管腺癌(PDAC)である、請求項4の方法。
【請求項6】
前記腫瘍は、5%以下のKRASバリアントアレル頻度(VAF)を有する、請求項3~5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
KRAS状態は、一次診断でまたは再発もしくは転移疾患において評価される、請求項1~6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
対象におけるがんを治療する方法であって、治療的有効量のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を前記対象に投与することを含み、前記対象は、
(i)(a)CXCL12発現の参照レベルよりも高いC-X-Cモチーフケモカインリガンド12(CXCL12)発現、または
(b)CXCR4発現の参照レベルよりも高いCXCR4発現、及び
(ii)(a)IGF1発現の参照レベルよりも低いインスリン様成長因子1(IGF1)発現、または
(b)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いインスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)発現
を有する、前記方法。
【請求項9】
前記対象は、検出不能であるIGF1発現を有する、請求項8の方法。
【請求項10】
前記対象は、(i)IGF2発現の参照レベルよりも低いインスリン様成長因子2(IGF2)発現、または(ii)IGF2R発現の参照レベルよりも高いインスリン様成長因子2受容体(IGF2R)発現をさらに有する、請求項8または9の方法。
【請求項11】
前記対象は、検出不能であるIGF2発現を有する、請求項10の方法。
【請求項12】
前記対象は、IGF2遺伝子のヘテロ接合性の喪失も刷り込みの喪失も有さない、請求項8~11のいずれか1項の方法。
【請求項13】
前記対象は、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、請求項8~12のいずれか1項の方法。
【請求項14】
前記対象は、参照比よりも高いCXCL12のC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)に対する発現の比を有する、請求項8~13のいずれか1項の方法。
【請求項15】
前記対象は、CXCR4遺伝子における活性化変異をさらに有する、請求項8~14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記対象は、参照比よりも高いCXCR4のCXCR2発現に対する比をさらに有する、請求項8~15のいずれか1項の方法。
【請求項17】
前記対象は、15%未満、12%未満、10%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する、請求項8~16のいずれか1項の方法。
【請求項18】
前記対象は、KRAS遺伝子における活性化変異を有さない、請求項17の方法。
【請求項19】
前記対象は、15%未満、12%未満、10%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満であるTP53変異アレル頻度を有する、請求項8~18のいずれか1項の方法。
【請求項20】
前記対象は、TP53遺伝子における変異を有さない、請求項19の方法。
【請求項21】
前記対象は、PI3KまたはAKTにおける活性化変異を有さない、請求項8~20のいずれか1項の方法。
【請求項22】
前記対象のサンプルにおけるCXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせの発現レベルを測定することをさらに含む、請求項8~21のいずれか1項の方法。
【請求項23】
前記サンプルにおけるCXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせのタンパク質レベルを測定することを含む、請求項22の方法。
【請求項24】
前記タンパク質レベルは、免疫組織化学(IHC)アプローチ、免疫ブロットアッセイ、フローサイトメトリー(FACS)、またはELISAを使用して決定される、請求項23の方法。
【請求項25】
前記サンプルにおけるCXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせのmRNAレベルを測定すること、請求項22の方法。
【請求項26】
前記mRNAレベルは、qPCR、RT-PCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはFISHを使用して測定される、請求項25の方法。
【請求項27】
IGFBP7、KRAS、TP53、PI3K、AKT、CXCR4またはそれらの任意の組み合わせの変異状態を決定することをさらに含む、請求項8~26のいずれか1項の方法。
【請求項28】
前記サンプルは、組織生検である、請求項22~27のいずれか1項の方法。
【請求項29】
前記サンプルは、腫瘍生検である、請求項22~27のいずれか1項の方法。
【請求項30】
前記サンプルは、単離された細胞である、請求項22~27のいずれか1項の方法。
【請求項31】
がんは、血液癌である、請求項8~30のいずれか1項の方法。
【請求項32】
前記血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される骨髄性血液癌である、請求項31の方法。
【請求項33】
前記血液癌は、AMLである、請求項32の方法。
【請求項34】
前記血液癌は、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択されるリンパ性血液癌である、請求項31の方法。
【請求項35】
前記血液癌は、PTCLである、請求項34の方法。
【請求項36】
前記がんは、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、及び前立腺癌からなる群から選択される固形腫瘍である、請求項1~30のいずれか1項の方法。
【請求項37】
前記固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または胃癌である、請求項36の方法。
【請求項38】
前記固形腫瘍は、乳癌である、請求項36の方法。
【請求項39】
前記乳癌は、プロゲステロン受容体(PR)陽性である、請求項38の方法。
【請求項40】
前記乳癌は、エストロゲン受容体(ER)陰性である、請求項38または請求項39の方法。
【請求項41】
対象における膵臓癌を治療する方法であって、治療的有効量のFTIを前記対象に投与することを含み、前記対象は、
(i)肝臓転移;及び
(ii)正常な上限以下である(1)アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベル、(2)アラニンアミノ基転移酵素レベル、(3)アルカリホスファターゼ、及び/または(4)総ビリルビンレベル
を有する、前記方法。
【請求項42】
対象における膵臓癌を治療する方法であって、治療的有効量のFTIを前記対象に投与することを含み、前記対象は、(i)リンパ節転移を有し、(ii)腹痛を有さない、前記方法。
【請求項43】
前記固形腫瘍は、膵管腺癌(PDAC)である、請求項41または請求項42の方法。
【請求項44】
IGF1R経路の阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~43のいずれか1項の方法。
【請求項45】
FTIは、前記IGF1R経路の阻害剤の前記投与の前、間、または後に投与される、請求項44の方法。
【請求項46】
前記IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤、IGF1R阻害剤、PI3K阻害剤、及びAKT阻害剤からなる群から選択される、請求項44または請求項45の方法。
【請求項47】
前記IGF1R経路の阻害剤は、抗IGF1抗体である、請求項46の方法。
【請求項48】
前記IGF1R経路の阻害剤は、ダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択されるIGF1R阻害剤である、請求項46の方法。
【請求項49】
前記IGF1R経路の阻害剤は、SF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択されるPI3K阻害剤である、請求項46の方法。
【請求項50】
前記IGF1R経路の阻害剤は、ペリホシン、SR13668、A-443654、リン酸トリシリビン一水和物、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択されるAKT阻害剤である、請求項46の方法。
【請求項51】
放射線療法を適用することをさらに含む、請求項1~50のいずれか1項の方法。
【請求項52】
治療的有効量の追加の活性剤を投与することをさらに含む、請求項1~51のいずれか1項の方法。
【請求項53】
前記追加の活性剤は、DNA低メチル化剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、がん抗原に特異的に結合する治療用抗体、造血成長因子、サイトカイン、抗生物質、cox-2阻害剤、CDK阻害剤、免疫調節剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、及びコルチコステロイドまたはそれらの薬理学的誘導体からなる群から選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
前記追加の活性剤は、カペシタビンである、請求項52の方法。
【請求項55】
前記カペシタビンは、1~1000mg/mの用量で投与される、請求項54の方法。
【請求項56】
前記カペシタビンは、1日2回投与される、請求項54または55の方法。
【請求項57】
前記カペシタビンは、21日のサイクルの1~7日目に投与される、請求項54~56のいずれか1項の方法。
【請求項58】
前記カペシタビンは、21日のサイクルの1~14日目に投与される、請求項54~56のいずれか1項の方法。
【請求項59】
前記追加の活性剤は、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体である、請求項52の方法。
【請求項60】
対象におけるがんを治療する方法であって、治療的有効量のFTI及び治療的有効量の(i)IGF1R経路の阻害剤または(ii)CXCR4アンタゴニストを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
前記がんは、固形腫瘍である、請求項60の方法。
【請求項62】
前記固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、及び前立腺癌からなる群から選択される、請求項61の方法。
【請求項63】
前記固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または胃癌である、請求項62の方法。
【請求項64】
前記固形腫瘍は、膵臓癌である、請求項63の方法。
【請求項65】
前記膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である、請求項64の方法。
【請求項66】
前記固形腫瘍は、乳癌である、請求項63の方法。
【請求項67】
前記がんは、血液癌である、請求項60の方法。
【請求項68】
前記血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択される、請求項67の方法。
【請求項69】
前記FTIは、前記IGF1R経路の阻害剤または前記CXCR4アンタゴニストの前記投与の前、間、または後に投与される、請求項60~68のいずれか1項の方法。
【請求項70】
FTIをABD-3100、BL-8040、クロロキン、及びプレリキサホルからなる群から選択されるCXCR4アンタゴニストと共に投与することを含む、請求項60~69のいずれか1項の方法。
【請求項71】
FTIをIGF1阻害剤、IGF1R阻害剤、PI3K阻害剤、及びAKT阻害剤からなる群から選択されるIGF1R経路の阻害剤と共に投与することを含む、請求項60~69のいずれか1項の方法。
【請求項72】
前記IGF1R経路の阻害剤は、抗IGF1抗体である、請求項70の方法。
【請求項73】
前記IGF1R経路の阻害剤は、ダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択されるIGF1R阻害剤である、請求項70の方法。
【請求項74】
前記IGF1R経路の阻害剤は、SF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択されるPI3K阻害剤である、請求項70の方法。
【請求項75】
前記IGF1R経路の阻害剤は、ペリホシン、SR13668、A-443654、リン酸トリシリビン一水和物、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択されるAKT阻害剤である、請求項70の方法。
【請求項76】
前記FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される、請求項1~75のいずれか1項の方法。
【請求項77】
前記FTIは、ロナファルニブである、請求項76の方法。
【請求項78】
前記FTIは、BMS-214662である、請求項76の方法。
【請求項79】
前記FTIは、チピファルニブである、請求項76の方法。
【請求項80】
チピファルニブは、0.05~500mg/kg体重の用量で投与される、請求項79の方法。
【請求項81】
チピファルニブは、1日2回投与される、請求項79または請求項80の方法。
【請求項82】
チピファルニブは、100~1200mgの用量で1日2回投与される、請求項81の方法。
【請求項83】
前記チピファルニブは、100mg、200mg、300mg、400mg、600mg、900mgまたは1200mgの用量で1日2回投与される、請求項82の方法。
【請求項84】
前記チピファルニブは、28日の治療サイクルの1~7及び15~21日目に投与される、請求項79~83のいずれか1項の方法。
【請求項85】
前記チピファルニブは、28日の治療サイクルの1~21日目に投与される、請求項79~83のいずれか1項の方法。
【請求項86】
前記チピファルニブは、28日の治療サイクルの1~7日目に投与される、請求項79~83のいずれか1項の方法。
【請求項87】
前記チピファルニブは、21日のサイクルの1~7日目に投与される、請求項79~83のいずれか1項の方法。
【請求項88】
前記チピファルニブは、21日のサイクルの1~14日目に投与される、請求項79~83のいずれか1項の方法。
【請求項89】
前記チピファルニブは、21日のサイクルの1~14日目に300mgの用量で1日2回投与され、前記カペシタビンは、21日のサイクルの1~14日目に1,000mg/m2の用量で1日2回投与される、請求項79~83のいずれか1項の方法。
【請求項90】
チピファルニブは、少なくとも2サイクルの間、投与される、請求項84~89のいずれか1項の方法。
【請求項91】
チピファルニブは、少なくとも3サイクル、6サイクル、9サイクル、または12サイクルの間、投与される、請求項90の方法。
【請求項92】
療法は、反応の開始を過ぎて少なくとも6ヶ月間維持され得る、請求項84~91のいずれか1項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月01日に出願された米国仮出願第62/754,438号、及び2019年1月17日に出願された米国仮出願第62/793,547号の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、がん療法の分野に関する。特に、本明細書では、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤でがんを治療する方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
治療反応率を改善するための患者集団の層別化は、がん患者の臨床管理においてますます価値あるものになっている。ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)は、がんの治療において有用性を有する治療剤である。しかしながら、患者は、FTI治療に対して異なる反応をする。そのため、がんを有する対象のFTI治療に対する反応性を予測するための方法、またはFTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法は、満たされていない必要性を表す。本明細書で提供される方法と組成物は、これらの必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、対象におけるKRAS野生型がんを治療する方法であって、治療的有効量のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0005】
いくつかの実施形態では、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いC-X-Cモチーフケモカインリガンド12(CXCL12)発現を有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。
【0007】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌である。
【0008】
いくつかの実施形態では、がんは、膵管腺癌(PDAC)である。
【0009】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、5%以下のKRASバリアントアレル頻度(VAF)を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、KRAS状態は、一次診断でまたは再発もしくは転移疾患において評価される。
【0011】
本明細書では、対象におけるがんを治療する方法であって、治療的有効量のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を対象に投与することを含み、対象は、(i)(a)CXCL12発現の参照レベルよりも高いC-X-Cモチーフケモカインリガンド12(CXCL12)発現;または(b)CXCR4発現の参照レベルよりも高いCXCR4発現;及び(ii)(a)IGF1発現の参照レベルよりも低いインスリン様成長因子1(IGF1)発現;または(b)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いインスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)発現を有する、方法が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象は、(i)IGF2発現の参照レベルよりも低いインスリン様成長因子2(IGF2)発現、または(ii)IGF2R発現の参照レベルよりも高いインスリン様成長因子2受容体(IGF2R)発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2遺伝子のヘテロ接合性の喪失も刷り込みの喪失も有さない。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象は、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象は、参照比よりも高いCXCL12のC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)に対する発現の比を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、対象は、CXCR4遺伝子における活性化変異をさらに有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象は、参照比よりも高いCXCR4のCXCR2発現に対する比をさらに有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象は、15%未満、12%未満、10%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS遺伝子における活性化変異を有さない。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象は、15%未満、12%未満、10%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、TP53遺伝子における変異を有さない。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象は、PI3KまたはAKTにおける活性化変異を有さない。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象のサンプルにおけるCXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせの発現レベルを測定することをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、サンプルにおけるCXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせのタンパク質レベルを測定することをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、タンパク質レベルは、免疫組織化学(IHC)アプローチ、免疫ブロットアッセイ、フローサイトメトリー(FACS)、またはELISAを使用して決定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、サンプルにおけるCXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせのmRNAレベルを測定することをさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、mRNAレベルは、qPCR、RT-PCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはFISHを使用して測定される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、IGFBP7、KRAS、TP53、PI3K、AKT、CXCR4またはそれらの任意の組み合わせの変異状態を決定することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、サンプルは、組織生検である。いくつかの実施形態では、サンプルは、腫瘍生検である。いくつかの実施形態では、サンプルは、単離された細胞である。
【0028】
いくつかの実施形態では、がんは、血液癌である。いくつかの実施形態では、血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、血液癌は、AMLである。
【0029】
いくつかの実施形態では、血液癌は、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択されるリンパ性血液癌である。いくつかの実施形態では、血液癌は、PTCLである。
【0030】
いくつかの実施形態では、がんは、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、及び前立腺癌からなる群から選択される固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または胃癌である。
【0031】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、乳癌である。いくつかの実施形態では、乳癌は、プロゲステロン受容体(PR)陽性である。いくつかの実施形態では、乳癌は、エストロゲン受容体(ER)陰性である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書では、対象における膵臓癌を治療する方法であって、治療的有効量のFTIを前記対象に投与することを含み、対象は、(i)肝臓転移;及び(ii)正常な上限以下である(1)アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベル、(2)アラニンアミノ基転移酵素レベル、(3)アルカリホスファターゼ、及び/または(4)総ビリルビンレベルを有する、方法が提供される。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書では、対象における膵臓癌を治療する方法であって、治療的有効量のFTIを前記対象に投与することを含み、対象は、(i)リンパ節転移を有し、(ii)腹痛を有さない、方法が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵管腺癌(PDAC)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、IGF1R経路の阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、FTIは、IGF1R経路の阻害剤の投与の前、間、または後に投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤、IGF1R阻害剤、PI3K阻害剤、及びAKT阻害剤からなる群から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、抗IGF1抗体である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1R阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1R阻害剤は、ダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3K阻害剤は、SF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、AKT阻害剤である。いくつかの実施形態では、AKT阻害剤は、ペリホシン、SR13668、A-443654、リン酸トリシリビン一水和物、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、放射線療法を適用することをさらに含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療的有効量の追加の活性剤を投与することをさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、DNA低メチル化剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、がん抗原に特異的に結合する治療用抗体、造血成長因子、サイトカイン、抗生物質、cox-2阻害剤、CDK阻害剤、免疫調節剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、及びコルチコステロイドまたはそれらの薬理学的誘導体からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記追加の活性剤は、カペシタビンである。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、1~1000mg/mの用量で投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、21日のサイクルの1~7日目に投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、21日のサイクルの1~14日目に投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書では、対象におけるがんを治療する方法であって、治療的有効量のFTI及び治療的有効量の(i)IGF1R経路の阻害剤または(ii)CXCR4アンタゴニストを前記対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0046】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、及び前立腺癌からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または胃癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌である。いくつかの実施形態では、膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、乳癌である。
【0048】
いくつかの実施形態では、がんは、血液癌である。いくつかの実施形態では、血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、FTIは、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストの投与の前、間、または後に投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTIを、AMD-3100、BL-8040、クロロキン、及びプレリキサホルからなる群から選択されるCXCR4アンタゴニストと共に投与することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTIを、IGF1阻害剤、IGF1R阻害剤、PI3K阻害剤、及びAKT阻害剤からなる群から選択されるIGF1R経路の阻害剤と共に投与することをさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、抗IGF1抗体である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1R阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R阻害剤は、ダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、PI3Kは、SF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択される阻害剤である。
【0054】
いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、AKT阻害剤である。いくつかの実施形態では、AKT阻害剤は、ペリホシン、SR13668、A-443654、リン酸トリシリビン一水和物、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法において使用されるFTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、FTIは、ロナファルニブである。いくつかの実施形態では、FTIは、BMS-214662である。
【0057】
いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、0.05~500mg/kg体重の用量で投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、100~1200mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、100mg、200mg、300mg、400mg、600mg、900mgまたは1200mgの用量で1日2回投与される。
【0059】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、28日の治療サイクルの1~7日目及び15~21日目に投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、28日の治療サイクルの1~21日目に投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、28日の治療サイクルの1~7日目に投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、21日のサイクルの1~7日目に投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、21日のサイクルの1~14日目に投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、21日のサイクルの1~14日目に300mgの用量で1日2回投与され、カペシタビンは、21日のサイクルの1~14日目に1,000mg/m2の用量で1日2回投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、少なくとも2サイクルの間、投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、少なくとも3サイクル、6サイクル、9サイクル、または12サイクルの間、投与される。いくつかの実施形態では、療法は、反応の開始を過ぎて少なくとも6ヶ月間維持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
前述及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に示されているように、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の様々な実施形態の原理を説明することに重点が置かれている。
【0063】
図1】乳癌、膵臓癌及び急性骨髄性白血病におけるCXCL12及びIGF1遺伝子の発現の相関関係。
【0064】
図2A】これまでに治療されていないAMLを有する患者におけるチピファルニブ治療に対する患者の反応性に対するIGF1/CXCL12共発現の影響。AML患者の3つのサブセットがIGF1/CXCL12発現に関して特定された。
図2B】これまでに治療されていないAMLを有する患者におけるチピファルニブ治療に対する患者の反応性に対するIGF1/CXCL12共発現の影響。高IGF1及び高CXCL12を有する患者のサブセット。
図2C】これまでに治療されていないAMLを有する患者におけるチピファルニブ治療に対する患者の反応性に対するIGF1/CXCL12共発現の影響。中IGF1、低CXCL12を有する患者のサブセット。
図2D】これまでに治療されていないAMLを有する患者におけるチピファルニブ治療に対する患者の反応性に対するIGF1/CXCL12共発現の影響。低IGF1及び可変CXCL12を有する患者のサブセット。
図2E】これまでに治療されていないAMLを有する患者におけるチピファルニブ治療に対する患者の反応性に対するIGF1/CXCL12共発現の影響。AML患者の骨髄における治療前CXCL12/IGF1発現に基づく完全反応の予測のためのROC曲線。
【0065】
図3】膵臓癌は、最も高いレベルのIGFBPを発現する(TCGA、Provisional)。
【0066】
図4】CXCL12/CXCR4及びIGF1/IGF1R-CXCR4メカニズムに基づくチピファルニブ治療に反応する可能性が高い膵臓腫瘍のサブセットのスキーマ。
【0067】
図5A】局所または節性膵臓腺癌を有する患者及び腹痛を報告しない患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。研究におけるすべての患者(左)、局所進行疾患を有する患者(中央)、及びリンパ節転移を有する患者(右)についての生存可能性のカプランマイヤー曲線。
図5B】局所または節性膵臓腺癌を有する患者及び腹痛を報告しない患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。プラセボ+ゲムシタビン(左)またはチピファルニブ+ゲムシタビン(右)を摂取した患者についての患者の報告された腹痛に応じた生存可能性のカプランマイヤー曲線。
図5C】局所または節性膵臓腺癌を有する患者及び腹痛を報告しない患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。腹痛を報告しなかった研究における患者についての生存可能性のカプランマイヤー曲線。
【0068】
図6A】肝臓に転移する進行膵臓腺癌を有する患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。肝臓のみへの転移を有し、アスパラギン酸トランスアミナーゼが上昇していない患者についてのゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。
図6B】肝臓に転移する進行膵臓腺癌を有する患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。肝臓のみへの転移を有し、フォルフィリノックスで以前に治療された患者についてのゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。
図6C】肝臓に転移する進行膵臓腺癌を有する患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。肝臓転移を有し、高血糖を有さない患者(左)、及び肝臓転移を有し、アスパラギン酸トランスアミナーゼが上昇せず、高血糖を有さない患者(右)についてのゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの研究INT-11から生成されたカプランマイヤー曲線。
【0069】
図7A】KRASまたはTP53変異の低いアレル頻度は、高いCXCL12、IGF1及びIGFBP1の発現を有する膵臓患者を特定する。KRAS変異のサブセットによるTCGA研究の膵臓腺癌におけるCXCL12、IGF1及びIGFBP7遺伝子の発現レベル。
図7B】KRASまたはTP53変異の低いアレル頻度は、高いCXCL12、IGF1及びIGFBP1の発現を有する膵臓患者を特定する。CXCL12過剰発現についてのTP53変異アレル頻度の最適なカットオフは<9%であり(左)、CXCL12過剰発現についてのKRAS変異アレル頻度の最適なカットオフは<7%であった(右)。
【0070】
図8】チピファルニブ治療レジメン(チピファルニブ単独またはチピファルニブ-アトルバスタチン-セレコキシブの組み合わせ)の投与は、KRAS野生型(WT)のCXCL12発現PDACのPDXモデルにおいて腫瘍体積を減少させる。
【0071】
図9】チピファルニブの投与は、CXCL12発現PDACのPDXモデルにおいてG12D KRAS変異を有する腫瘍よりもKRAS野生型(WT)腫瘍において腫瘍体積を減少させるのに有効であった。チピファルニブ-アトルバスタチン-セレコキシブの組み合わせで治療されたPA3546モデル。
【0072】
図10】チピファルニブ治療レジメン(チピファルニブ-アトルバスタチン-セレコキシブの組み合わせ)の投与は、KRAS野生型(WT)PDACのPDXモデルにおいて高レベルのCXCL12を発現した腫瘍において腫瘍体積を減少させるのにより有効であった。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」、「an」及び「the」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数を指す。例えば、サンプルは、1つのサンプルまたは2つ以上のサンプルを指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、哺乳動物を指す。対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、またはそのトランスジェニック種であり得る。対象は、ヒトであり得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「サンプル」は、1つ以上の対象となる成分を含有する物質または物質の混合物を指す。対象からのサンプルは、in vivoまたはin situで得られ、入手され、または収集される生物学的組織または流体由来のサンプルを含む、対象から得られたサンプルを指す。サンプルは、前がんまたはがん細胞または組織を含有する対象の領域から得られ得る。そのようなサンプルは、哺乳動物から単離された器官、組織、部分及び細胞であり得るがこれらに限定されない。例示的なサンプルは、リンパ節、全血、部分的に精製された血液、血清、血漿、骨髄、及び末梢血単核細胞(「PBMC」)を含む。サンプルはまた、組織生検であり得る。例示的なサンプルはまた、細胞溶解物、細胞培養物、細胞株、組織、経口組織、胃腸組織、器官、細胞小器官、体液、血液サンプル、尿サンプル、皮膚サンプルなどを含む。
【0076】
本明細書で使用される場合、サンプルを「分析すること」という用語は、サンプルの特定の特性または特徴に関する評価をするために当該技術分野で認識されているアッセイを行うことを指す。サンプルの特性または特徴は、例えば、サンプルにおける細胞のタイプ、またはサンプルにおける遺伝子の発現レベルであり得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、がん患者に関して使用される場合、(a)がんの成長を阻害すること、もしくはがんの発症を停止すること、または(b)がんの退行を引き起こすこと、または(c)がんの存在と関連する1つ以上の症状を遅延、好転または最小化することを含む、がんの重症度を低下させる、またはがんの進行を遅滞もしくは遅延させる作用を指し得る。例えば、対象における膵臓癌などのがんを「治療すること」は、対象におけるがん成長を阻害する作用を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」は、本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で知られている方法によって対象の身体に化合物または薬学的組成物を送達する、または送達することを引き起こす作用を指す。化合物または薬学的組成物を投与することは、患者の身体内に送達される化合物または薬学的組成物を処方することを含む。例示的な投与の形態は、経口投薬形態、例えば、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液;注射可能な投薬形態、例えば、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、または腹腔内(IP);クリーム、ゼリー、粉末、またはパッチを含む経皮投薬形態;バッカル投薬形態;吸入粉末、スプレー、懸濁液、及び直腸座剤を含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、対象に関する用語「選択すること」及び「選択される」は、既定の基準または既定の基準のセットを満たす、例えば、参照レベルよりも低いIGF1発現を有する特定の対象に基づいて(起因して)より大きな対象群から特定の対象が具体的に選択されることを意味するために使用される、同様に、対象を「選択的に治療すること」は、既定の基準または既定の基準のセットを満たす対象に対する治療を提供することを指す。同様に、「選択的に投与すること」は、既定の基準または既定の基準のセットを満たす対象に薬物を投与することを指す。選択する、選択的に治療する及び選択的に投与するとは、がんを有する対象者に、がんを有することのみに基づいた標準的治療レジメンが与えられるのではなく、対象の生物学的性質に基づいた個別化療法が与えられることを意味する。
【0080】
本明細書で使用される場合、化合物の「治療的有効量」という用語は、疾患または障害に関連して使用される場合は、疾患もしくは障害の治療における治療的利益を提供するのにまたは疾患もしくは障害と関連した1つ以上の症状を遅延もしくは最小化するのに十分な量を指す。疾患または障害は、がんであり得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「発現する」または「発現」は、遺伝子に関連して使用される場合、遺伝子によって保持される情報が、遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、その後のmRNA分子のポリペプチド鎖への翻訳及びその最終的なタンパク質への集合を含む表現型として明らかになるプロセスを指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、遺伝子の「発現レベル」という用語は、例えば、遺伝子のRNA産物の量(遺伝子のmRNAレベル)または遺伝子のタンパク質産物の量(遺伝子のタンパク質レベル)などの遺伝子の発現産物の量または蓄積量を指す。遺伝子が複数のアレルを有する場合、遺伝子の発現レベルは、別段特定されない限り、この遺伝子について存在するすべてのアレルの発現産物の蓄積の合計量を指す。検出できない発現レベルは、遺伝子の発現が、そのような発現を測定するために当該技術分野で知られている標準的なアッセイによって検出することができないことを意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「参照」は、定量可能な値に関連して使用される場合、サンプルにおいて測定される値の有意性を決定するために使用し得る既定の値を指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「参照発現レベル」は、サンプルにおける遺伝子の発現レベルの有意性を決定するために使用し得る遺伝子の既定の発現レベルを指す。サンプルは、細胞、細胞の群、または組織であり得る。例えば、遺伝子の参照発現レベルはまた、様々なサンプル細胞集団における遺伝子の発現レベルの統計的分析を介して当業者によって決定されるカットオフ値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるIGF1の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるIGF1の発現レベルの中央値であり得る。例えば、膵臓癌患者についての参照発現レベルは、膵臓癌患者の集団におけるIGF1の発現レベルの中央値であり得る。
【0085】
用語「参照比」は、2つ以上の遺伝子の発現レベルに関連して本明細書で使用される場合、サンプルにおけるこれらの遺伝子のレベルの比の有意性を決定するために使用され得る当業者によって既に決定された比を指す。サンプルは、細胞、細胞の群、または組織であり得る。例えば、IGFBP7発現のIGF1R発現に対する参照比は、IGFBP7発現のIGF1R発現に対する既定の比であり得る。2つ以上の遺伝子の発現レベルの参照比は、対象の集団におけるこれらの遺伝子の発現レベルの比の中央値であり得る。参照比はまた、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における発現比のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。参照比は、例えば、様々なサンプルの細胞集団における2つの遺伝子の発現レベルの比の統計的分析を介して当業者によって決定されるカットオフ値であり得る。所定の実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/10である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/9である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/8である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/7である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/6である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/5である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/4である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/3である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/2である。いくつかの実施形態では、参照比は、1である。いくつかの実施形態では、参照比は、2である。いくつかの実施形態では、参照比は、3である。いくつかの実施形態では、参照比は、4である。いくつかの実施形態では、参照比は、5である。いくつかの実施形態では、参照比は、6である。いくつかの実施形態では、参照比は、7である。いくつかの実施形態では、参照比は、8である。いくつかの実施形態では、参照比は、9である。いくつかの実施形態では、参照比は、10である。いくつかの実施形態では、参照比は、15である。いくつかの実施形態では、参照比は、20である。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「変異」は、遺伝子に関連して使用される場合、遺伝子のDNA配列の変化を指す。当該技術分野でよく理解されるように、変異は、対応するタンパク質のアミノ酸配列の任意の変化をもたらさないサイレントであり得る。変異は、保存的及び非保存的な変化を含むアミノ酸変化を引き起こす。変化は、アミノ酸配列の置換、欠失、付加、または切断を含む。変異分子は、1つ以上の変異を有し得る。いくつかの実施形態では、DNA配列の遺伝子的変化は、対応するタンパク質の活性化をもたらす。そのような変異は、「活性化変異」と称される。このように、「活性化変異」は、対応するタンパク質の活性化をもたらさない遺伝子における変化を含まない。したがって、特定の遺伝子における任意の「活性化変異」を有さないサンプルまたは対象は、対応するタンパク質の活性に影響を及ぼさない遺伝子における変異またはタンパク質の活性を損なう変異を依然として有し得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「変異アレル頻度」または「バリアントアレル頻度(VAF)」は、がんサンプルまたは個体における遺伝子に関連して使用される場合、変異が存在する細胞の集団を指す。例えば、がんを有する対象におけるKRAS変異アレル頻度は、KRAS変異アレルを有する対象におけるがんの細胞の割合を指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「KRAS野生型がん」は、KRASが変異していない、またはがんが低いKRASバリアントアレル頻度を有する(5%またはそれ未満である)がんを指す。本明細書で使用される場合、「KRAS」は、KRAS4AまたはKRAS4Bのいずれかのアイソフォームをコードする遺伝子を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「反応性」または「反応性の」は、治療に関連して使用される場合、治療されている疾患の症状を軽減または減少させる治療の有効性を指す。がん患者に関連して、FTI治療ががんの成長を有効に阻害し、またはがんの発症を阻止し、がんの退行を引き起こし、または患者におけるがんの存在に関連する1つ以上の症状を遅延もしくは最小化する場合、患者はFTI治療に対して反応性である。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「可能性」は、事象の蓋然性を指す。条件が満たされた場合に対象が特定の治療に対して反応性である「可能性が高い」とは、条件が満たされていない場合よりも条件が満たされた場合に、対象が特定の治療に対して反応性である蓋然性が高いことを意味する。特定の治療に対して反応性である蓋然性は、例えば、特定の条件を満たす対象において、条件を満たしていない対象と比較して、5%、10%、25%、50%、100%、200%、またはそれ以上高い場合がある。例えば、がんを有する対象は、対象が参照比よりも低いIGF1発現を有する場合に、FTI治療に対して反応性である「可能性が高い」とは、対象がFTI治療に対して反応性である蓋然性が、参照比よりも低いIGF1発現を有する対象において、参照比よりも高いIGF1発現を有する対象と比較して、5%、10%、25%、50%、100%、200%、またはそれ以上高いことを意味する。
【0091】
CXCL12(またはストローマ細胞由来因子1)は、リンパ球のための強力な走化性物質である。胚発生中に、CXCL12は、胎児の肝臓から骨への造血細胞の移動を誘導し、成人では、CXCL12は、CXCR4依存的メカニズムを介して内皮前駆細胞をリクルートすることによって血管新生において重要な役割を果たす。CXCL12はまた、脾臓の赤脾髄及びリンパ節の髄質索内で発現する。Pitt et al.,2015,Cancer Cell 27:755-768及びZhao et al.,2011,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108:337-342を参照されたい。ヒトCXCL12の例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、それぞれ、GENBANKのアクセッション番号:NP_000600.1及びNM_000609.6で見ることができる。
【0092】
CXCR4(フジン(fusin)またはCD184としても知られている)は、CXCL12に特異的な受容体である。そのタンパク質は、7回膜貫通領域を有し、細胞表面に位置している。それはCD4タンパク質と共に作用して、HIVの細胞内への侵入をサポートし、また、乳癌細胞で高度に発現される。異なるアイソフォームをコードする選択的転写スプライスバリアントが特性化されている。ヒトCXCR4の例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、それぞれ、GENBANKのアクセッション番号:NP_001008540.1及びNM_001008540.1で見ることができる。
【0093】
CXCR2は、それらのCXCモチーフのすぐ隣のE-L-Rアミノ酸モチーフを保有するCXCケモカインを認識する受容体である。ELR陽性ケモカイン、例えば、CXCL1~CXCL7は、CXCR2に結合する。CXCR2は、哺乳動物における好中球の表面に発現される。CXCR4とは対照的に、CXCR2は、骨髄から末梢血への幹細胞移動において重要な役割を果たし、「移動性受容体」として知られている。ヒトCXCR2転写産物バリアントの例示的なコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_001168298.1及びNM_001557.3で見ることができる。
【0094】
インスリン様成長因子1(IGF1)は、機能及び構造がインスリンと同様であり、成長及び発達の媒介に関与するタンパク質のファミリーのメンバーである。そのタンパク質は、前駆体から処理され、特異的受容体によって結合され、分泌される。この遺伝子における欠陥は、IGF1欠乏の原因である。選択的スプライシングは、同様の処理を受けて成熟タンパク質を生成し得る異なるアイソフォームをコードする複数の転写産物バリアントをもたらす。ヒトIGF1転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_000618.4、及びNP_000609.1;NM_001111283.2、及びNP_001104753.1;NM_001111284.1、及びNP_001104754.1;またはNM_001111285.2、及びNP_001104755.1で見ることができる。
【0095】
インスリン様成長因子2(IGF2)は、発達及び成長に関与するポリペプチド成長因子のインスリンファミリーの別のメンバーである。それは父方アレルからのみ発現される刷り込み遺伝子であり、この遺伝子座におけるエピジェネティックな変化は、ウィルムス腫瘍、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、横紋筋肉腫、及びシルバー・ラッセル症候群を含む多数のヒト疾患と関連している。IGFIIの刷り込みの喪失及び/またはヘテロ接合性の喪失は、がん、例えば、卵巣癌及び大腸癌の発症と関連している。Chen et al.,Clinical cancer research 6(2)(2000):474-479;Cui et al.,Cancer research 62(22)(2002):6442-6446。5’領域がINS遺伝子と重複し、3’領域がこの遺伝子と重複するリードスルーINS-IGF2遺伝子が存在する。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライス転写産物バリアントがこの遺伝子について判明している。ヒトIGF2転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_000612.5、及びNP_000603.1;NM_001007139.5、及びNP_001007140.2;NM_001127598.2、及びNP_001121070.1;NM_001291861.2、及びNP_001278790.1;NM_001291862.2、及びNP_001278791.1で見ることができる。
【0096】
インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)は、インスリン様成長因子(IGF)結合タンパク質(IGFBP)ファミリーのメンバーである。IGFBPは、高親和性でIGFを結合させ、体液及び組織におけるIGF利用可能性を制御し、IGFのその受容体に対する結合を調節する。このタンパク質は、比較的低い親和性でIGFI及びIGFIIを結合させ、低親和性IGFBPのサブファミリーに属する。それはまた、プロスタサイクリン生成及び細胞接着を刺激する。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライス転写産物バリアントがこの遺伝子について記載されている。ヒトIGF1転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NP_001240764.1、及びNM_001253835.1;またはNM_001553.2、及びNP_001544.1で見ることができる。
【0097】
インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)は、高親和性でインスリン様成長因子を結合させる。それはチロシンキナーゼ活性を有する。IGF1Rは、形質転換事象において重要な役割を果たす。前駆体の切断は、アルファ及びベータサブユニットを生成する。それは、細胞生存性を増進させることによって抗アポトーシス剤として機能するほとんどの悪性組織において高度に過剰発現される。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライス転写産物バリアントがこの遺伝子について判明している。ヒトIGF1R転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_000875.4またはNP_000866.1;及びNM_001291858.1またはNP_001278787.1で見ることができる。
【0098】
インスリン様成長因子2受容体(IGF2R)は、インスリン様成長因子2及びマンノース6-ホスフェートの両方にとっての受容体である。この受容体は、リソソーム酵素の細胞内トラフィッキング、トランスフォーミング成長因子ベータの活性化、及びインスリン様成長因子2の分解を含む様々な機能を有する。この遺伝子の変異またはヘテロ接合性の喪失は、肝細胞癌のリスクと関連している。オーソロガスマウス遺伝子は刷り込みされ、母方アレルからのみの発現を示す;しかしながら、ヒト遺伝子の刷り込みは、少数の個体のみが母方アレルからの偏った発現を示すので、多型であり得る。ヒトIGF2Rの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、それぞれ、GENBANKのアクセッション番号:NM_000876.3、及びNP_000867.2で見ることができる。
【0099】
がん遺伝子、及び低分子量GTPアーゼスーパーファミリーのメンバーであるKRAS。単一のアミノ酸置換は、活性化変異の原因である。生じる形質転換タンパク質は、例えば、肺腺癌、粘液性腺腫、膵臓の腺管癌及び大腸癌を含む、様々な悪性腫瘍に関与している。選択的スプライシングは、2つのアイソフォームをコードするバリアントをもたらす。ヒトIGF1転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_004985.4、及びNP_004976.2(アイソフォームb);及びNM_033360.3及びNP_203524.1(アイソフォームa)で見ることができる。
【0100】
転写活性化、DNA結合、及びオリゴマー化ドメインを含有する腫瘍抑制タンパク質である腫瘍タンパク質53(TP53)。コードされるタンパク質は、標的遺伝子の発現を制御するための多様な細胞性ストレスに反応し、それにより細胞サイクル停止、アポトーシス、老化、DNA修復、または代謝の変化を誘導する。この遺伝子における変異は、遺伝性のがん、例えば、リ・フラウメニ症候群を含む、様々なヒトのがんと関連する。この遺伝子の選択的スプライシング及び選択的プロモーターの使用は、複数の転写産物バリアント及びアイソフォームをもたらす。追加のアイソフォームはまた、同一の転写産物バリアントとは別の翻訳開始コドンの使用に起因することが示されている。ヒトTP53転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_000546.5、及びNP_000537.3;NM_001126112.2、及びNP_001119584.1;またはNM_001126113.2及びNP_001119585.1で見ることができる。
【0101】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)は、85kDaの制御サブユニット及び110kDaの触媒サブユニットから構成される。ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート3-キナーゼ触媒サブユニットアルファ(PIK3CA)は、ATPを使用して、PtdIns、PtdIns4P及びPtdIns(4,5)P2をリン酸化する触媒サブユニットである。この遺伝子は発がん性であることが見出されており、その変異は多数のヒトのがんに関与している。Martini et al.,Annals of Medicine,46(6)372-383(2014)。ヒトPIK3CA転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:XM_006713658.4及びXP_006713721.1;またはXM_011512894.2及びXP_011511196.1で見ることができる。
【0102】
AKT1遺伝子によってコードされるセリン-トレオニンタンパク質キナーゼであるAKTセリン/トレオニンキナーゼ1(AKT)は、血清飢餓とされた初代及び不死化線維芽細胞において触媒的に不活性である。AKT1及び関連するAKT2は、血小板由来成長因子によって活性化される。活性化は迅速かつ特異的であり、それはAKT1のプレックストリン相同性ドメインにおける変異によって無効化される。活性化はPI3Kを介して生じることが示された。AKT変異はまた、多数のヒトのがんに関与している。Martini et al.(2014)。複数の選択的スプライス転写産物バリアントがこの遺伝子について判明している。ヒトAKT転写産物バリアントの例示的なアミノ酸配列及び対応するコードする核酸配列は、GENBANKのアクセッション番号:NM_001014431.1及びNP_001014431.1;NM_001014432.1及びNP_001014432.1;またはNM_005163.2及びNP_005154.2で見ることができる。
【0103】
1.方法
本明細書では、FTIでの治療のためにがんを有する対象を選択するための方法が提供される。本明細書で提供される方法は、異なる遺伝子発現レベル、変異状態、または臨床所見を有するがん患者が、FTI治療に対して相違的に反応すること、及び治療の臨床的利益のFTIは、所定の遺伝子の遺伝子発現レベル及び/または変異状態、またはがんの臨床所見と関連していることの発見に部分的に基づく。本明細書では、FTIに対する客観的反応を定義するIGF1RとCXCL12/CXCR4経路との間のクロストークの発見が開示される。具体的には、IGF1経路がFTI(例えば、チピファルニブ)に対する抵抗性を媒介するのに対し、CXCL12/CXCR4経路活性化が客観的反応を予測し得ることが見出された。このように、活性CXCL12/CXCR4経路及び不活性IGF1R経路を特徴とするがんを有する患者は、FTI治療に反応性である可能性が高く、FTI治療にふさわしいそのような患者の選択は、治療の全体的反応率を増大させ得る。
【0104】
1.1.バイオマーカー
このように、本明細書では、活性CXCL12/CXCR4経路及び不活性IGF1R経路に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療に対する反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療の全体的反応性を増加させるための方法が提供される。(a)CXCL12発現レベルが比較的高く、(b)CXCL12のCXCR4に対する発現比が比較的高く、及び/または(c)CXCR4発現が比較的高い場合に、CXCL12/CXCR4経路活性が比較的高い。よって、活性CXCL12/CXCR4経路を有する対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現レベル、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、またはCXCR4発現の参照レベルよりも高いCXCR4発現レベルを有し得る。
【0105】
IGF1R経路は、IGF1のIGF1Rに対する結合によって活性化され、IGFBP7などのタンパク質を結合させることによって阻害され得る。よって、IGF1R経路の活性は、比較的低いレベルのIGF1発現を有するがんにおいて比較的低い。IGF1R経路の活性は、IGFBP7発現レベルが比較的高い場合に、IGF1発現にかかわらず、がんにおいて比較的低い場合がある。IGF1R経路は、IGF1R経路タンパク質、例えば、PI3KまたはAKTの活性化変異によって活性化され得るので、不活性IGF1R経路を有する対象はまた、PI3KまたはAKTにおける活性化変異の非存在に基づいて選択され得る。PI3Kにおける活性化変異は、PIK3CAにおける活性化変異であり得る。よって、不活性IGF1R経路を有する対象はまた、PI3KまたはAKT活性化変異の非存在に基づいて選択され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0107】
また、本明細書では、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)が、がんのFTI治療に対する抵抗性を示し得るという知見が開示される。したがって、いくつかの実施形態では、FTI治療のために選択される対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0109】
IGF2は通常、刷り込みによってサイレンス化される。刷り込みの喪失(LOI)及びヘテロ接合性の喪失(LOH)は、典型的にはIGF2遺伝子の通常はサイレントな母方アレルの活性化を含むがんにおける一般的変化である。IGF2のLOIまたはLOHにより、IGF2発現が増加し、IGF2のIGF1Rに対する結合によってIGF1R経路が活性化され得、これはFTI治療に対する抵抗性をもたらし得る。IGF2は、IGF2Rによって不活性化され得、これはIGF2の分解を媒介する。このように、IGF1R経路の活性は、IGF2Rレベルが比較的高い場合、比較的高いレベルのIGF2発現を有するがんにおいても比較的低い場合がある。
【0110】
したがって、FTI治療にふさわしいがんを有する対象を選択するための本明細書で提供される方法は、対象におけるIGF2発現を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するためにIGF1及びIGF2の両方の発現レベルを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0112】
CXCL12発現レベルに加えて、CXCL12のCXCR4に対する発現比もまた、CXCL12/CXCR4経路の活性化を示し、がんのFTI治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0113】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、またはIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0116】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0117】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0118】
また、CXCR4の活性化レベルはまた、がんのFTI治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCR4の発現レベルに基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4における活性化変異、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0119】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。
【0120】
他の実施形態では、不活性IGF1R経路を有する対象は、IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0121】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0122】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0123】
本明細書ではまた、KRAS活性がFTI抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、KRASの変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度(バリアントアレル頻度、VAF)を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRASにおける活性化変異を有さない。いくつかの実施形態では、KRAS状態は、一次診断でまたは再発もしくは転移疾患において評価される。いくつかの実施形態では、いくつかのサンプルが利用可能である場合、KRAS試験は、最も最近に得られた腫瘍サンプルで実施されるべきである。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、KRAS変異アレル頻度(バリアントアレル頻度、VAF)は、5%であり、またはそれ未満である、方法が提供される。
【0125】
本明細書ではまた、TP53活性がFTI抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、TP53の変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、TP53遺伝子における活性化変異を有さない。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書では、KRAS及びTP53の変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度及び低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度及び15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度及び12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度及び10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度及び8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度及び7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度及び6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%未満であるTP53変異アレル頻度及び5%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、いくつかの実施形態では、対象は、KRASまたはTP53における活性化変異を有さない。
【0127】
当業者は理解するであろうが、本明細書に記載されるFTI治療のための患者選択のためのマーカーは、独立してまたは任意の組み合わせで使用され得る。本明細書に開示されるように、CXCL12及びCXCR4はいずれも、がんのFTI治療に対する感度を推進し得、例えば、IGF1R経路活性及びTP53またはKRASの変異状態を含む要因がFTI治療に対する抵抗性を付与し得る。したがって、例えば、本明細書では、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法であって、患者は、(1)CXCL12活性化(高いCXCL12発現レベルまたは高いCXCL12/CXCR4比)またはCXCR4活性化(高いCXCR4レベル、高いCXCR4/CXCR2比、またはCXCR4における活性化変異)のいずれか、及び(2)不活性IGF1R経路(低いIGF1発現、低いIGF2発現、高いIGFBP7発現、及び/またはPIK3CA及びAKTにおける活性化変異の非存在);及びTP53及び/またはKRASについての低い変異アレル頻度を有する、方法が提供される。
【0128】
FTIは、本明細書に記載のものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。このように、本明細書では、活性CXCL12/CXCR4経路及び不活性IGF1R経路に基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療に対する反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療の全体的反応性を増加させるための方法が提供される。CXCL12発現レベルが比較的高く、CXCL12のCXCR4に対する発現比が比較的高く、またはCXCR4発現レベルが比較的高い場合に、CXCL12/CXCR4経路活性が比較的高い。よって、活性CXCL12/CXCR4経路を有する対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現レベル、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、またはCXCR4発現の参照レベルよりも高いCXCR4発現レベルを有し得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0130】
いくつかの実施形態では、チピファルニブ治療のために選択される対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するためにIGF1及びIGF2の両方の発現レベルを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0137】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてチピファルニブ治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0138】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてチピファルニブ治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0139】
また、CXCR4の活性レベルはまた、がんのチピファルニブ治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCR4の発現レベルに基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4における活性化変異、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0140】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。
【0141】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0142】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。
【0143】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてチピファルニブ治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0144】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてチピファルニブ治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0145】
本明細書ではまた、KRAS活性がチピファルニブ抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、KRASの変異状態に基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度(バリアントアレル頻度、VAF)を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRASにおける活性化変異を有さない。いくつかの実施形態では、いくつかのサンプルが利用可能である場合、KRAS試験は、最も最近に得られた腫瘍サンプルで実施されるべきである。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、KRAS変異アレル頻度(バリアントアレル頻度、VAF)は、5%であり、またはそれ未満である、方法が提供される。
【0147】
本明細書ではまた、TP53変異がチピファルニブ抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、TP53の変異状態に基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、TP53遺伝子における活性化変異を有さない。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書では、KRAS及びTP53の変異状態に基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度及び低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度及び15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度及び12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度及び10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度及び8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度及び7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度及び6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%未満であるTP53変異アレル頻度及び5%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、いくつかの実施形態では、対象は、KRASまたはTP53における活性化変異を有さない。
【0149】
当業者は理解するであろうが、本明細書に記載されるチピファルニブ治療のための患者選択のためのマーカーは、独立してまたは任意の組み合わせで使用され得る。本明細書に開示されるように、CXCL12及びCXCR4はいずれも、がんのチピファルニブ治療に対する感度を推進し得、例えば、IGF1R経路活性及びTP53またはKRASの変異状態を含む要因がチピファルニブ治療に対する抵抗性を付与し得る。したがって、例えば、本明細書では、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法であって、患者は、(1)CXCL12活性化(高いCXCL12発現レベルまたは高いCXCL12/CXCR4比)またはCXCR4活性化(高いCXCR4レベル、高いCXCR4/CXCR2比、またはCXCR4における活性化変異)のいずれか、及び(2)不活性IGF1R経路(低いIGF1発現、低いIGF2発現、高いIGFBP7発現、及び/またはPIK3CA及びAKTにおける活性化変異の非存在);及びTP53及び/またはKRASについての低い変異アレル頻度を有する、方法が提供される。
【0150】
1.2.がん
本明細書では、本明細書に記載される所定の遺伝子の発現レベルまたは変異状態に基づいて、治療的有効量のFTIを対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療する方法が提供される。当業者が理解するであろうが、本明細書に記載の方法は、固形腫瘍及び血液癌を含む、多数の異なるタイプのがんに適用され得る。いくつかの実施形態では、がんは、血液癌である。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。
【0151】
いくつかの実施形態では、がんは、血液癌であり、本明細書では、本明細書に記載される所定の遺伝子の発現レベルまたは変異状態に基づいて治療的有効量のFTIを投与することによって対象における血液癌を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、血液癌は、骨髄性血液癌である。骨髄血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、AMLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、CMMLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、MPNである。いくつかの実施形態では、血液癌は、MDSである。
【0152】
いくつかの実施形態では、血液癌は、リンパ性血液癌である。リンパ性血液癌は、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、NKリンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液癌は、NK白血病である。いくつかの実施形態では、血液癌は、CTCLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、PTCLである。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0154】
また、本明細書では、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)が、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する抵抗性を示し得るという知見が開示される。したがって、いくつかの実施形態では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0156】
したがって、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を有する対象を選択するための本明細書で提供される方法は、対象におけるIGF2発現を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい血液癌患者を選択するためにIGF1及びIGF2の両方の発現レベルを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0158】
CXCL12のCXCR4に対する発現比はまた、CXCL12/CXCR4経路の活性化を示し、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいて、FTI治療にふさわしい血液癌患者を選択するための方法、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。
【0159】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、またはIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0162】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0163】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0164】
また、CXCR4の発現レベルはまた、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCR4の発現レベルに基づいて、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい血液癌患者を選択するための方法、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)患者におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療の反応性を予測するための方法、及び血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)患者集団におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCR4における活性化変異、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0165】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。
【0166】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0167】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。
【0168】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0169】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0170】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。
【0171】
本明細書ではまた、KRAS活性が、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)の治療におけるFTI(例えば、チピファルニブ)抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、KRASの変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしい血液癌患者を選択するための方法、血液癌患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び血液癌患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRASにおける活性化変異を有さない。
【0172】
本明細書ではまた、TP53活性が、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)の治療におけるFTI(例えば、チピファルニブ)抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、TP53の変異状態に基づいて、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい血液癌患者を選択するための方法、血液癌患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び血液癌患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象における血液癌を治療する方法であって、対象は、低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、TP53遺伝子における活性化変異を有さない。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書では、KRAS及びTP53の変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしい血液癌患者を選択するための方法、血液癌患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び血液癌患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)を治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度及び低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度及び15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度及び12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度及び10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度及び8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度及び7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度及び6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%未満であるTP53変異アレル頻度及び5%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、いくつかの実施形態では、対象は、KRASまたはTP53における活性化変異を有さない。
【0174】
当業者は理解するであろうが、本明細書に記載されるFTI(例えば、チピファルニブ)治療のための患者選択のためのマーカーは、独立してまたは任意の組み合わせで使用され得る。本明細書に開示されるように、CXCL12及びCXCR4はいずれも、血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する感度を推進し得、例えば、IGF1R経路活性及びTP53またはKRASの変異状態を含む要因がFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する抵抗性を付与し得る。したがって、例えば、本明細書では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)患者を選択するための方法であって、患者は、(1)CXCL12活性化(高いCXCL12発現レベルまたは高いCXCL12/CXCR4比)またはCXCR4活性化(高いCXCR4レベル、高いCXCR4/CXCR2比、またはCXCR4における活性化変異)のいずれか、及び(2)不活性IGF1R経路(低いIGF1発現、低いIGF2発現、高いIGFBP7発現、及び/またはPIK3CA及びAKTにおける活性化変異の非存在);及び/またはTP53及び/またはKRASについての低い変異アレル頻度を有する、方法が提供される。
【0175】
FTIは、本明細書に記載のものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。このように、本明細書では、例えば、活性CXCL12/CXCR4経路及び不活性IGF1R経路を含む本明細書に開示される分子バイオマーカーに基づいて、チピファルニブ治療にふさわしい血液癌(例えば、AML、PTCL、CMML)患者を選択するための方法、血液癌患者におけるチピファルニブ治療に対する反応性を予測するための方法、及び血液癌患者集団におけるチピファルニブ治療の全体的反応性を増加させるための方法が提供される。
【0176】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍であり、本明細書では、本明細書に記載される所定の遺伝子の発現レベルまたは変異状態に基づいて治療的有効量のFTIを投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法が提供される。固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、または前立腺癌であり得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌である。いくつかの実施形態では、がんは、扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膀胱癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、乳癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、胃癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、大腸癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、中皮腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ブドウ膜黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膠芽腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、食道癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺腺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、卵巣癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肉腫である。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0178】
また、本明細書では、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)が、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する抵抗性を示し得るという知見が開示される。したがって、いくつかの実施形態では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0180】
したがって、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を有する対象を選択するための本明細書で提供される方法は、対象におけるIGF2発現を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい固形腫瘍患者を選択するためにIGF1及びIGF2の両方の発現レベルを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0182】
CXCL12のCXCR4に対する発現比もまた、CXCL12/CXCR4経路の活性化を示し、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいて、FTI治療にふさわしい固形腫瘍患者を選択するための方法、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。
【0183】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、またはIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0185】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比を有し、対象は、(1)IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、または(2)IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0186】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0187】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0188】
また、CXCR4の発現レベルはまた、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCR4の発現レベルに基づいて、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい固形腫瘍患者を選択するための方法、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)患者におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療の反応性を予測するための方法、及び固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)患者集団におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCR4における活性化変異、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0189】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。
【0190】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照発現レベルよりも高いCXCR4の発現レベル、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、参照発現比よりも高いCXCR4のCXCR2に対する発現比、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGFBP7発現の参照レベルよりも高いIGFBP7発現を有する、方法が提供される。
【0191】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のCXCR4に対する発現比、及びIGF2R発現の参照レベルよりも高いIGF2R発現を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0192】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のCXCR4に対する発現比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1発現の参照レベルよりも低いIGF1発現、及びIGF2発現の参照レベルよりも低いIGF2発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2発現を有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1発現及び検出不能であるIGF2発現を有する。
【0193】
いくつかの実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または1/10~10の間の任意の数値である。
【0194】
本明細書ではまた、KRAS活性が、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)の治療におけるFTI(例えば、チピファルニブ)抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、KRASの変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしい固形腫瘍患者を選択するための方法、固形腫瘍患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び固形腫瘍患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度(バリアントアレル頻度、VAF)を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRASにおける活性化変異を有さない。いくつかの実施形態では、いくつかのサンプルが利用可能である場合、KRAS試験は、最も最近に得られた腫瘍サンプルで実施されるべきである。
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照レベルよりも高いCXCL12発現を有し、KRAS変異アレル頻度(バリアントアレル頻度、VAF)は、5%であり、またはそれ未満である、方法が提供される。
【0196】
本明細書ではまた、TP53活性が、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)の治療におけるFTI(例えば、チピファルニブ)抵抗性を媒介するという知見が開示される。このように、本明細書では、TP53の変異状態に基づいて、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい固形腫瘍患者を選択するための方法、固形腫瘍患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び固形腫瘍患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象における固形腫瘍を治療する方法であって、対象は、低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%であり、またはそれ未満であるTP53変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、TP53遺伝子における活性化変異を有さない。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書では、KRAS及びTP53の変異状態に基づいて、FTI治療にふさわしい固形腫瘍患者を選択するための方法、固形腫瘍患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及び固形腫瘍患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)を治療する方法であって、対象は、低いKRAS変異アレル頻度及び低いTP53変異アレル頻度を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、15%未満であるTP53変異アレル頻度及び15%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、12%未満であるTP53変異アレル頻度及び12%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、10%未満であるTP53変異アレル頻度及び10%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、8%未満であるTP53変異アレル頻度及び8%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、7%未満であるTP53変異アレル頻度及び7%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、6%未満であるTP53変異アレル頻度及び6%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、5%未満であるTP53変異アレル頻度及び5%未満であるKRAS変異アレル頻度を有する。いくつかの実施形態では、対象は、いくつかの実施形態では、対象は、KRASまたはTP53における活性化変異を有さない。
【0198】
当業者は理解するであろうが、本明細書に記載されるFTI(例えば、チピファルニブ)治療のための患者選択のためのマーカーは、独立してまたは任意の組み合わせで使用され得る。本明細書に開示されるように、CXCL12及びCXCR4はいずれも、固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)のFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する感度を推進し得、例えば、IGF1R経路活性及びTP53またはKRASの変異状態を含む要因がFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する抵抗性を付与し得る。したがって、例えば、本明細書では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしい固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)患者を選択するための方法であって、患者は、(1)CXCL12活性化(高いCXCL12発現レベルまたは高いCXCL12/CXCR4比)またはCXCR4活性化(高いCXCR4レベル、高いCXCR4/CXCR2比、またはCXCR4における活性化変異)のいずれか、及び(2)不活性IGF1R経路(低いIGF1発現、低いIGF2発現、高いIGFBP7発現、及び/またはPIK3CA及びAKTにおける活性化変異の非存在);及び/またはTP53及び/またはKRASについての低い変異アレル頻度を有する、方法が提供される。
【0199】
FTIは、本明細書に記載のものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。このように、本明細書では、例えば、活性CXCL12/CXCR4経路及び不活性IGF1R経路を含む本明細書に開示される分子バイオマーカーに基づいて、チピファルニブ治療にふさわしい固形腫瘍(例えば、膵臓癌、乳癌)患者を選択するための方法、固形腫瘍患者におけるチピファルニブ治療に対する反応性を予測するための方法、及び固形腫瘍患者集団におけるチピファルニブ治療の全体的反応性を増加させるための方法が提供される。
【0200】
当業者は理解するであろうが、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための本明細書で開示されるメカニズム的基礎は通常、すべてのがんタイプに適用可能であり、よって、特定のがんタイプまたは特定のFTIに限定されない。したがって、特定の実施形態は、例示的な目的のために本明細書に記載されているが、異なる分子シグネチャ(発現レベル、発現比、及び変異状態)、がんタイプ、及び本明細書に記載されるFTIのすべての変更及び組み合わせが明示的に企図される。
【0201】
上述したように、本明細書では、例えば、CXCL12/CXCR4及びIGF1R経路の活性を含む、選択された分子シグネチャに基づいて、FTI治療(例えば、チピファルニブ)にふさわしい乳癌患者を選択する方法、乳癌患者のFTI治療(例えば、チピファルニブ)に対する反応性を決定する方法、及び乳癌患者集団のFTI治療(例えば、チピファルニブ)の全体的反応性を増加させる方法が提供される。当該技術分野で知られているように、乳癌は、エストロゲン受容体(ER)またはプロゲステロン受容体(PR)の発現、及びERの陽性に基づいて異なるサブタイプに分けられ得、及び/または異なる治療に対する反応性の可能性を示す。
【0202】
本明細書ではまた、PR陽性がFTI治療(例えば、チピファルニブ)に対する感度を高め、PR陽性及びER陰性腫瘍がFTI治療に対して極めて感度があるという知見が開示される。したがって、本明細書で提供される方法は、これらの受容体の発現に基づいて、FTI治療にふさわしい乳癌患者を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における乳癌を治療する方法であって、対象は、PR陽性である、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における乳癌を治療する方法であって、対象は、ER陰性である、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における乳癌を治療する方法であって、対象は、PR陽性及びER陰性の両方である、方法が提供される。
【0203】
上述したように、本明細書では、例えば、CXCL12/CXCR4及びIGF1R経路の活性を含む、選択された分子シグネチャに基づいて、FTI治療(例えば、チピファルニブ)にふさわしい膵臓癌患者を選択する方法、膵臓癌患者のFTI治療に対する反応性を決定する方法、及び膵臓癌患者集団のFTI治療の全体的反応性を増加させる方法が提供される。本明細書ではまた、これらの分子シグネチャがまた、膵臓癌の臨床所見に関連し、様々な臨床所見が、膵臓癌患者のFTI治療に対する反応性を予測するための、及び全体的反応率を増加させるためにFTI治療に対して膵臓癌患者を選択するための基礎として機能し得るという知見が開示される。具体的には、本明細書では、CXCL12過剰発現によるCXCL12/CXCR4経路の活性化は、リンパ節転移と関連し、及び/または腹痛の非存在、CXCR7を発現するシュワン細胞に起因する無痛覚の現象及びCXCL12を生成する腫瘍への移行を特徴とするという知見が開示される。このように、膵臓癌患者におけるリンパ節転移及び腹痛の非存在は、膵臓癌患者が、CXCL12の高発現を有し、FTI治療に対して反応性である可能性が高いことを示している。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における膵臓癌を治療する方法であって、対象は、リンパ節転移有し、及び/または腹痛の非存在を特徴とする、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、膵臓癌を有する対象が腹痛を有するかどうかを決定すること、及び対象が腹痛を有さない場合、及び対象がリンパ節転移を有する場合に治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を、以前にフォルフィリノックスで治療されている対象に投与することをさらに含む。
【0204】
本明細書ではまた、CXCR4過剰発現によるCXCL12/CXCR4経路の活性化が、肝臓転移と関連し、健康な肝臓機能を特徴とするという知見が開示される。このように、膵臓癌患者における肝臓転移及び健康な肝臓機能を示す生理的パラメータは、膵臓癌患者が、CXCR4の高発現を有し、FTI(例えば、チピファルニブ)治療に対して反応性である可能性が高いことを示している。
【0205】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における膵臓癌を治療する方法であって、対象は、(i)肝臓転移またはリンパ節転移;及び(ii)正常な範囲内、またはそれぞれの正常な上限(UNL)よりも低い(1)アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベル、(2)アラニンアミノ基転移酵素(ALT)レベル、(3)アルカリホスファターゼ(ALP)、及び/または(4)総ビリルビンレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象がFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対して反応性である可能性が高いかどうかを決定するために対象におけるASTレベル、ALTレベル、ALPレベル、総ビリルビンレベル、またはそれらの任意の組み合わせを決定することをさらに含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における膵臓癌を治療する方法であって、対象は、肝臓転移及び正常な範囲内、またはASLのUNLよりも低いASTレベルを有する、方法が提供される。方法は、対象におけるASTレベルを決定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における膵臓癌を治療する方法であって、対象は、肝臓転移及び正常な範囲内、またはALTのUNLよりも低いALTレベルを有する、方法が提供される。方法は、対象におけるALTレベルを決定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における膵臓癌を治療する方法であって、対象は、肝臓転移及び正常な範囲内、またはALPのUNLよりも低いALPレベルを有する、方法が提供される。方法は、対象におけるALPレベルを決定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象における膵臓癌を治療する方法であって、対象は、肝臓転移及び正常な範囲内、または総ビリルビンレベルのUNLよりも低い総ビリルビンレベルを有する、方法が提供される。方法は、対象における総ビリルビンレベルを決定することをさらに含み得る。本明細書ではまた、上述した方法の様々な変更及び組み合わせが開示される。
【0207】
生理的測定に関連して本明細書で使用される場合、「正常な範囲」は、健康な集団における測定についての値の範囲である。それとは別に、正常の範囲内に入る測定値は、適切な生理的機能を示す。UNLは、正常な範囲の上限である。いくつかの実施形態では、ASTのUNLは、40U/Lであり得る。いくつかの実施形態では、ALTのUNLは、55U/Lであり得る。いくつかの実施形態では、ALPについてのUNLは、120U/Lであり得る。いくつかの実施形態では、総ビリルビンレベルのUNLは、1.0mg/dLであり得る。当該技術分野で知られているように、特定のパラメータの正常な範囲及びUNLは、異なる人口的集団の間で変化し得る。臨床所見を決定する及び本明細書に記載の臨床パラメータを測定する方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0208】
1.3.アッセイ
本明細書に記載されているように、遺伝子(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)の発現レベルは、遺伝子のタンパク質レベルまたはmRNAレベルを指し得る。いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のmRNAレベルを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、遺伝子のmRNAレベルを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のタンパク質レベルを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、遺伝子のタンパク質レベルを決定することをさらに含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現レベルは、遺伝子のmRNAレベルを指し得る。このように、CXCL12発現レベルは、サンプルにおけるCXCL12のmRNAレベルを指し得る。IGF1発現レベルは、サンプルにおけるIGF1のmRNAレベルを指し得る。IGFBP7発現レベルは、サンプルにおけるIGFBP7のmRNAレベルを指し得る。IGF2発現レベルは、サンプルにおけるIGF2のmRNAレベルを指し得る。IGF2R発現レベルは、サンプルにおけるIGF2RのmRNAレベルを指し得る。CXCR4発現レベルは、サンプルにおけるCXCR4のmRNAレベルを指し得る。CXCR2発現レベルは、サンプルにおけるCXCR2のmRNAレベルを指し得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、本明細書では、本明細書に記載される所定の遺伝子のmRNAレベルまたは変異状態に基づいて治療的有効量のFTIを投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12のmRNAの参照レベルよりも高いCXCL12のmRNAレベル、及びIGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベル、及びIGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有する、方法が提供される。
【0211】
いくつかの実施形態では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベルを有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベルを有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベルを有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベルを有し、対象は、(1)IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベル、または(2)IGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0213】
したがって、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがんを有する対象を選択するための本明細書で提供される方法は、対象におけるIGF2のmRNAレベルを測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベル、及びIGF2の参照mRNAレベルよりも低いIGF2のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベル、及びIGF2Rの参照mRNAレベルよりも高いIGF2RのmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがん患者を選択するためにIGF1及びIGF2の両方のmRNAレベルを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高いCXCL12のmRNAレベル、IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベル、及びIGF2の参照mRNAレベルよりも低いIGF2のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベル及び検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。
【0215】
CXCL12のCXCR4に対するmRNA比もまた、CXCL12/CXCR4経路の活性化を示し、がんのFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCL12のCXCR4に対するmRNA比に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0216】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベル、またはIGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比、及びIGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比、及びIGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有する、方法が提供される。
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比を有し、対象は、(1)IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベル、または(2)IGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0219】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2の参照mRNAレベルよりも低いIGF2のmRNAレベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比、及びIGF2Rの参照mRNAレベルよりも高いIGF2RのmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0220】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベル、及びIGF2の参照mRNAレベルよりも低いIGF2のmRNAレベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベル及び検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。
【0221】
また、CXCR4のmRNAレベルはまた、がんのFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCR4のmRNAレベルに基づいて、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照mRNAレベルよりも高いCXCR4のmRNAレベル、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のmRNAレベルのCXCR2のmRNAレベルに対する比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4における活性化変異、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0222】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベルを有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照mRNAレベルよりも高いCXCR4のmRNAレベル、及びIGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のmRNAレベルのCXCR2のmRNAレベルに対する比、及びIGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベルを有する。
【0223】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGFBP7のmRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照mRNAレベルよりも高いCXCR4のmRNAレベル、及びIGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4のmRNAレベルのCXCR2のmRNAレベルに対する比、及びIGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGFBP7の参照mRNAレベルよりも高いIGFBP7のmRNAレベルを有する、方法が提供される。
【0224】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2の参照mRNAレベルよりも低いIGF2のmRNAレベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比、及びIGF2Rの参照mRNAレベルよりも高いIGF2RのmRNAレベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0225】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12のmRNAレベルのCXCR4のmRNAレベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1の参照mRNAレベルよりも低いIGF1のmRNAレベル、及びIGF2の参照mRNAレベルよりも低いIGF2のmRNAレベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1のmRNAレベル及び検出不能であるIGF2のmRNAレベルを有する。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがん患者を選択するための方法であって、患者は、(1)CXCL12活性化(高いCXCL12のmRNAレベルまたはCXCL12のmRNAレベル/CXCR4のmRNAレベルの高い比)またはCXCR4活性化(高いCXCR4のmRNAレベル、CXCR4のmRNAレベル/CXCR2のmRNAレベルの高い比、またはCXCR4における活性化変異)のいずれか、及び(2)不活性IGF1R経路(低いIGF1のmRNAレベル、低いIGF2のmRNAレベル、高いIGFBP7のmRNAレベル、及び/またはPIK3CA及びAKTにおける活性化変異の非存在)及び/またはTP53及び/またはKRASについての低い変異アレル頻度を有する、方法が提供される。
【0227】
FTIは、本明細書に記載のものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。このように、本明細書では、例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせのmRNAレベルを含む、本明細書に開示される分子バイオマーカーのmRNAレベルに基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療に対する反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療の全体的反応性を増加させるための方法が提供される。
【0228】
いくつかの実施形態では、遺伝子の参照mRNAレベルは、健康な対象の集団における遺伝子のmRNAレベルの中央値である。いくつかの実施形態では、遺伝子の参照mRNAレベルは、特定のがんを有する対象の集団における遺伝子のmRNAレベルの中央値である。例えば、膵臓癌患者における遺伝子の参照mRNAレベルは、膵臓癌を有する対象の集団における遺伝子のmRNAレベルの中央値である。別の例では、AML患者における遺伝子の参照mRNAレベルは、AMLを有する対象の集団における遺伝子のmRNAレベルの中央値である。いくつかの実施形態では、遺伝子の参照mRNAレベルは、当業者によって統計的分析によって決定されるカットオフ値である。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、遺伝子のmRNAレベルを決定することを含む。サンプルにおける遺伝子のmRNAレベルを決定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、いくつかの実施形態では、mRNAレベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、qPCR、qRT-PCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、次世代シーケンシング、またはFISHによって決定され得る。
【0230】
mRNAレベルを検出または定量する例示的な方法は、PCRに基づく方法、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイなどを含むがこれらに限定されない。mRNA配列は、少なくとも部分的に相補的なプローブを調製するために使用され得る。次いでプローブは、任意の好適なアッセイ、例えば、PCRに基づく方法、ノーザンブロット、ディップスティックアッセイなどを使用してサンプルにおけるmRNA配列を検出するために使用され得る。
【0231】
サンプルにおけるmRNA発現を定量化するための当該技術分野で知られている一般的に使用される方法は、ノーザンブロット及びin situハイブリダイゼーション(Parker &Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247-283(1999));RNAseプロテクションアッセイ(Hod,Biotechniques 13:852-854(1992));及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Weis et ah,Trends in Genetics 8:263-264(1992))を含む。代替的には、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA-RNAハイブリッド二重鎖またはDNA-タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識し得る抗体が採用され得る。シーケンシングに基づく遺伝子発現分析のための代表的な方法は、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、及び大量並列シグネチャシーケンシング(MPSS)による遺伝子発現分析を含む。
【0232】
高感度で柔軟な定量法はPCRである。PCR法の例は文献で見ることができる。PCRアッセイの例は、米国特許第6,927,024号で見ることができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。RT-PCR法の例は、米国特許第7,122,799号で見ることができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。蛍光in situ PCRの方法は、米国特許第7,186,507号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0233】
しかしながら、本明細書に記載の核酸分析方法において他の核酸増幅プロトコル(すなわち、PCR以外)も使用され得ることが留意される。例えば、好適な増幅方法は、リガーゼ連鎖反応(例えば、Wu & Wallace,Genomics 4:560-569,1988参照);鎖置換アッセイ(例えば、Walker et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392-396,1992;米国特許第5,455,166号参照);ならびに米国特許第5,437,990号;5,409,818号;及び5,399,491号に記載の方法を含む、いくつかの転写に基づく増幅システム;転写増幅システム(TAS)(Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177,1989);及び自己保持配列複製(3SR)(Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878,1990;WO 92/08800)を含む。代替的には、検出可能なレベルまでプローブを増幅させる方法、例えば、Q-レプリカーゼ増幅(Kramer & Lizardi,Nature 339:401-402,1989;Lomeli et al.,Clin.Chem.35:1826-1831,1989)が使用され得る。既知の増幅方法のレビューは、例えば、Current Opinion in Biotechnology 4:41-47(1993)においてAbramson及びMyersによって提供されている。
【0234】
mRNAは、サンプルから単離され得る。サンプルは、組織サンプルであり得る。組織サンプルは、腫瘍生検、例えば、リンパ節生検であり得る。mRNA抽出のための一般的方法は、当該技術分野でよく知られており、Ausubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons(1997)を含む分子生物学の標準的な教科書に開示されている。特に、RNA単離は、Qiagenなどの商業的製造業者製の精製キット、緩衝液セット及びプロテアーゼを使用して、製造業者の指示に従って実施され得る。例えば、培養下の細胞に由来する総RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを使用して単離され得る。他の市販のRNA単離キットは、MASTERPURE(登録商標)完全DNA及びRNA精製キット(EPICENTRE(登録商標)、Madison,Wis.)、及びパラフィンブロックRNA単離キット(Ambion,Inc.)を含む。組織サンプルに由来する総RNAは、RNA Stat-60(Tel-Test)を使用して単離され得る。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離され得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、PCRによる遺伝子発現プロファイル化における第1の工程は、RNA鋳型のcDNAへの逆転写と、それに続くPCR反応における指数関数的増幅である。他の実施形態では、組み合わされた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)反応は、例えば、米国特許第5,310,652号;5,322,770号;5,561,058号;5,641,864号;及び5,693,517号に記載されているように使用され得る。2つの一般的に使用される逆転写酵素は、アビロ(avilo)骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)及びモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写工程は典型的には、状況及び発現プロファイル化の目的に応じて、特定のプライマー、ランダム六量体、またはオリゴdTプライマーを使用してプライミングされる。例えば、抽出されたRNAは、GENEAMP(商標)RNA PCRキット(Perkin Elmer、Calif、USA)を使用して製造業者の指示に従って逆転写され得る。次いで誘導されたcDNAは、その後のPCR反応における鋳型として使用され得る。
【0236】
いくつかの実施形態では、RNA標的の検出及び定量の両方のためにリアルタイム逆転写PCR(qRT-PCR)が使用され得る(Bustin,et al.,2005,Clin.Sci.,109:365-379)。qRT-PCRに基づく方法の例は、例えば、米国特許第7,101,663号で見ることができ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Applied Biosystems 7500などのリアルタイムPCRのための機器が市販されており、TaqMan Sequence Detectionケミストリーなどの試薬も同様である。
【0237】
例えば、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイが製造業者の指示に従って使用され得る。これらのキットは、ヒト、マウス及びラットのmRNA転写産物の迅速で信頼性のある検出及び定量化のための事前製剤化された遺伝子発現アッセイである。TaqMan(登録商標)または米国特許第5,210,015号;5,487,972号;及び5,804,375号;ならびにHolland et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276-7280に記載のような5’-ヌクレアーゼアッセイが使用され得る。TAQMAN(登録商標)PCRは典型的には、TaqまたはTthポリメラーゼの5’-ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素が使用され得る。PCR反応に典型的なアンプリコンを生成するために2つのオリゴヌクレオチドプライマーが使用される。第3のオリゴヌクレオチド、またはプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。プローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって非伸張性であり、レポーター蛍光色素及び消光蛍光色素で標識される。レポーター色素からの任意のレーザー誘導発光は、2つの色素がプローブ上にあるときに共に近くに位置している場合、消光色素によって消光される。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存的様式でプローブを切断する。得られたプローブ断片は、溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第2の蛍光体の消光効果から解放される。新たな分子が合成されるごとに1分子のレポーター色素が遊離し、消光されなかったレポーター色素の検出により、データの定量的解釈のための基礎が提供される。
【0238】
分解生成物を検出するのに好適な任意の方法は、5’ヌクレアーゼアッセイにおいて使用され得る。しばしば、検出プローブは、2つの蛍光色素で標識され、そのうち1つは、他の色素の蛍光を消光することが可能である。色素はプローブに結合され、好ましくは一方が5’末端に結合され、他方が内部部位に結合され、これによりプローブが非ハイブリダイズ状態の場合は消光が生じ、DNAポリメラーゼの5’から3’へのエクソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素間で生じる。
【0239】
増幅は、色素間のプローブの切断をもたらし、これに伴って消光がなくなり、最初に消光していた色素から観察可能な蛍光が増加する。分解生成物の蓄積は、反応蛍光の増加を測定することによってモニタリングされる。米国特許第5,491,063号及び5,571,673号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)は、増幅に伴って生じるプローブの分解を検出するための代替的方法を記載している。5’-ヌクレアーゼアッセイのデータは最初にCt、すなわち、閾値サイクルとして表され得る。上記で論述したように、蛍光値は、すべてのサイクル中で記録され、増幅反応におけるその時点までに増幅された生成物の量を表す。蛍光シグナルが統計的に有意であると最初に記録された点が閾値サイクル(Ct)である。
【0240】
誤差またはサンプル間のばらつきの影響を最小限に抑えるため、PCRは通常、内部標準を使用して実施される。理想的な内部標準は、異なる組織間で一定のレベルで発現され、実験的処置によって影響されない。遺伝子発現のパターンを正規化するために最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド-3-ホスフェート-デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びP-アクチンのmRNAである。
【0241】
PCRプライマー及びプローブは、増幅される遺伝子に存在するイントロン配列に基づいて設計される。この実施形態では、プライマー/プローブ設計における第1の工程は、遺伝子内のイントロン配列の描写である。これは、公共に利用可能なソフトウェア、例えば、Kent,W.,Genome Res.12(4):656-64(2002)によって開発されたDNA BLASTソフトウェアによって、またはBLASTソフトウェア(そのバリエーションを含む)によって行われ得る。その後の工程は、PCRのプライマー及びプローブの設計のよく確立された方法に従う。
【0242】
非特異的シグナルを避けるために、プライマー及びプローブを設計する場合、イントロン内の反復配列をマスクすることが重要であり得る。これは、Baylor College of Medicineによりオンラインで利用可能なRepeat Maskerプログラムを使用することによって容易に達成され得、そのプログラムは、反復要素のライブラリに対してDNA配列をスクリーニングし、反復要素がマスクされたクエリ配列を返す。次いでマスクされたイントロン配列は、任意の市販のまたはそうでなければ公共に利用可能なプライマー/プローブ設計パッケージ、例えば、Primer Express(Applied Biosystems);MGB assay-by-design(Applied Biosystems);Primer3(Rozen and Skaletsky(2000)Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers.In:Krawetz S,Misener S(eds)Bioinformatics Methods and Protocols:Methods in Molecular Biology.Humana Press,Totowa,N.J.,pp 365-386)を使用してプライマー及びプローブ配列を設計するために使用され得る。
【0243】
全トランスクリプトームショットガンシーケンシング(WTSS)とも呼ばれるRNA-Seqは、サンプルのRNA含有量に関する情報を得るためにcDNAをシーケンシングするためのハイスループットシーケンシング技術の使用を指す。RNA-Seqを記載している刊行物は、Wang et al.,Nature Reviews Genetics 10(1):57-63(January 2009);Ryan et al.BioTechniques 45(1):81-94(2008);及びMaher et al.,Nature 458(7234):97-101(January 2009)を含み、これらはそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0244】
差次的遺伝子発現もまた、マイクロアレイ技術を使用して特定され、または確認され得る。この方法では、対象となるポリヌクレオチド配列(cDNA及びオリゴヌクレオチドを含む)が、マイクロチップ基材上にプレーティングされ、またはアレイ化される。アレイ化された配列は次いで、対象となる細胞または組織に由来する特定のDNAプローブとハイブリダイズされ得る。
【0245】
マイクロアレイ技術の実施形態では、cDNAクローンのPCR増幅インサートが、高密度アレイにおいて基材に適用される。好ましくは少なくとも10,000のヌクレオチド配列が基材に適用される。マイクロチップ上に各々10,000要素で固定化されたマイクロアレイ化された遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに好適である。蛍光標識されたcDNAプローブが、対象となる組織から抽出されたRNAの逆転写によって蛍光ヌクレオチドの組み込みを介して生成され得る。チップに適用された標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに特異的にハイブリダイズする。非特異的に結合したプローブを除去するためにストリンジェントな洗浄を行った後、共焦点レーザー顕微鏡法によってまたはCCDカメラなどの他の検出方法によってチップがスキャンされる。各アレイ要素のハイブリダイゼーションの定量は、対応するmRNAの存在量の評価を可能にする。2色の蛍光を用いて、2つのRNA源から生成された別々に標識されたcDNAプローブが、アレイにペアでハイブリダイズされる。よって、各々の特定の遺伝子に対応する2つの源に由来する転写産物の相対的な存在量が同時に決定される。ハイブリダイゼーションの規模の小型化により、大量の遺伝子についての発現パターンの好都合かつ迅速な評価が可能になる。そのような方法は、細胞当たり数コピーしか発現しない希少な転写産物を検出するのに必要な感度を有し、発現レベルにおける少なくともおよそ2倍の相違を再現性よく検出することが示されている(Schena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106-149(1996))。マイクロアレイ分析は、例えば、Affymetrix GENCHIP(商標)技術、またはIncyteのマイクロアレイ技術を使用することによって、製造業者のプロトコルに従って、市販の装置によって実施され得る。
【0246】
遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、各々の転写産物のための個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なく、多数の遺伝子転写産物の同時及び定量的分析を可能にする方法である。まず、タグが各転写産物内の一意の位置から得られるという条件で、転写産物を一意に特定するのに十分な情報を含有する短い配列タグ(約10~14bp)が生成される。次いで、多くの転写産物は、シーケンシングされ得る長い連続分子を形成するために共に連結され、複数のタグの同一性を同時に明らかにする。転写産物の任意の集団の発現パターンは、個々のタグの存在量を決定し、各タグに対応する遺伝子を特定することによって定量的に評価され得る。より詳細には、例えば、Velculescu et al.,Science 270:484- 487(1995);及びVelculescu et al.,Cell 88:243-51(1997)を参照されたい。
【0247】
MassARRAY(Sequenom,San Diego,Calif.)技術は、検出のための質量分析(MS)を使用する遺伝子発現分析の自動化ハイスループット法である。この方法によれば、RNAの単離、逆転写及びPCR増幅の後、cDNAがプライマー伸長に供される。cDNA由来プライマー伸長生成物は精製され、MALTI-TOF MSサンプル調製に必要な成分が事前装填されたチップアレイ上に分配される。反応に存在する様々なcDNAが、得られた質量スペクトルにおけるピーク面積を分析することによって定量化される。
【0248】
mRNAレベルはまた、ハイブリダイゼーションに基づくアッセイによって測定され得る。典型的なmRNAアッセイ法は、1)表面結合対象プローブを得る工程、2)特異的結合を提供するのに十分な条件下での表面結合プローブに対するmRNAの集団のハイブリダイゼーションの工程(3)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄の工程、及び(4)ハイブリダイズされたmRNAの検出の工程を含有し得る。これらの工程の各々で使用される試薬及びそれらの使用条件は、特定の用途に応じて変化し得る。
【0249】
サンプルにおけるmRNAレベルを決定するために任意の好適なアッセイプラットフォームが使用され得る。例えば、アッセイは、ディップスティック、膜、チップ、ディスク、試験ストリップ、フィルター、マイクロスフィア、スライド、マルチウェルプレート、または光ファイバーの形態であり得る。アッセイシステムは、mRNAに対応する核酸が結合される固体支持体を有し得る。固体支持体は、例えば、プラスチック、シリコン、金属、樹脂、ガラス、膜、粒子、沈殿物、ゲル、ポリマー、シート、スフィア、多糖、キャピラリー、フィルム、プレート、またはスライドを有し得る。アッセイ成分が調製され、mRNAを検出するためのキットとして一緒に包装され得る。
【0250】
核酸は、所望の場合に標識されて、標識されたmRNAの集団が生成され得る。一般に、サンプルは、当該技術分野でよく知られている方法を使用して標識され得る(例えば、DNAリガーゼ、ターミナルトランスフェラーゼを使用して、またはRNA骨格を標識することなどによる;例えば、Ausubel,et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons 1995 and Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,2001 Cold Spring Harbor,N.Y.参照)。いくつかの実施形態では、サンプルは、蛍光標識で標識される。例示的な蛍光色素は、キサンテン色素、フルオレセイン色素、ローダミン色素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6カルボキシフルオレセイン(FAM)、6カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6カルボキシ4’、5’ジクロロ2’、7’ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N’,N’テトラメチル6カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6カルボキシXローダミン(ROXまたはR)、5カルボキシローダミン6G(R6G5またはG5)、6カルボキシローダミン6G(R6G6またはG6)、及びローダミン110;シアニン色素、例えば、Cy3、Cy5及びCy7色素;Alexa色素、例えば、Alexa-fluor-555;クマリン、ジエチルアミノクマリン、ウンベリフェロン;ベンズイミド色素、例えば、Hoechst 33258;フェナントリジン色素、例えば、テキサスレッド;エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素、BODIPY色素、キノリン色素、ピレン、フルオレセインクロロトリアジニル、R110、エオシン、JOE、R6G、テトラメチルローダミン、リサミン、ROX、ナフトフルオレセインなどを含むがこれらに限定されない。
【0251】
ハイブリダイゼーションは、所望によりストリンジェンシーが変化し得る好適なハイブリダイゼーション条件下で行われ得る。典型的な条件は、相補的結合メンバー間、すなわち、表面結合対象プローブとサンプルにおける相補的mRNAとの間で固体表面上でプローブ/標的複合体を生成するのに十分である。所定の実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が採用され得る。
【0252】
ハイブリダイゼーションは典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で実施される。標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、サンプルにおける標的mRNAのプローブへの特異的結合を提供するのに十分な条件下)は、Kallioniemi et al.,Science 258:818-821(1992)及びWO93/18186に記載されている。一般的技術に対するいくつかのガイドライン、例えば、Tijssen,Hybridization with Nucleic Acid Probes,Parts I and II(Elsevier,Amsterdam 1993)が利用可能である。in situハイブリダイゼーションに好適な技術の説明については、Gall et al.Meth.Enzymol.,21:470-480(1981);及びAngerer et al.in Genetic Engineering:Principles and Methods(Setlow and Hollaender,Eds.)Vol 7,pgs 43-65(Plenum Press,New York 1985)を参照されたい。温度、塩濃度、ポリヌクレオチド濃度、ハイブリダイゼーション時間、洗浄条件のストリンジェンシーなどを含む適切な条件の選択は、サンプル源、捕捉剤の同一性、予期される相補性の程度などを含む実験設計に依存し、当業者にとって慣用の実験の問題として決定され得る。当業者は、同様のストリンジェンシーの条件を提供するために代替的であるが同等のハイブリダイゼーション及び洗浄条件が利用され得ることを容易に認識する。
【0253】
mRNAハイブリダイゼーション手順の後、表面に結合したポリヌクレオチドは典型的には、未結合核酸を除去するために洗浄される。洗浄は、任意の好都合な洗浄プロトコルを使用して実施され得、その場合、洗浄条件は典型的には、上述したようにストリンジェントである。標的mRNAのプローブへのハイブリダイゼーションは次いで、標準的な技術を使用して検出される。
【0254】
本明細書に記載の対象からのサンプルにおける遺伝子のmRNAレベルを決定するために、本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で知られている任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書では、対象におけるAMLを治療するための方法であって、qRT-PCRを使用して対象からのサンプルにおけるCXCL12及びIGF1のmRNAレベルを決定すること、及びサンプルにおけるCXCL12のmRNAレベルが、CXCL12の参照mRNAレベルよりも高い場合及びサンプルにおけるIGF1のmRNAレベルがIGF1の参照mRNAレベルよりも低い場合、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0255】
いくつかの実施形態では、本明細書では、本明細書に記載される所定の遺伝子のタンパク質レベルまたは変異状態に基づいて治療的有効量のFTIを投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12タンパク質の参照レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベル、及びIGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベル、及びIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有する、方法が提供される。
【0256】
いくつかの実施形態では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12発現の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベルを有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベルを有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベルを有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0257】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベルを有し、対象は、(1)IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベル、または(2)IGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0258】
したがって、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがんを有する対象を選択するための本明細書で提供される方法は、対象におけるIGF2タンパク質レベルを測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベル、及びIGF2の参照タンパク質レベルよりも低いIGF2タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベル、及びIGF2Rの参照タンパク質レベルよりも高いIGF2Rタンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがん患者を選択するためにIGF1及びIGF2の両方のタンパク質レベルを使用する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCL12の参照タンパク質レベルよりも高いCXCL12タンパク質レベル、IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベル、及びIGF2の参照タンパク質レベルよりも低いIGF2タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベル及び検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。
【0260】
CXCL12のCXCR4に対するタンパク質比もまた、CXCL12/CXCR4経路の活性化を示し、がんのFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCL12のCXCR4に対するタンパク質比に基づいて、FTI治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTIを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0261】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベル、またはIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比、及びIGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比、及びIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有する、方法が提供される。
【0262】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比を有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比を有し、対象はさらに、PIK3CAにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比を有し、対象はさらに、AKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0263】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比を有し、対象は、(1)IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベル、または(2)IGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有し、対象はさらに、IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)、PIK3CAにおける活性化変異、及び/またはAKTにおける活性化変異を保有しない、方法が提供される。
【0264】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2の参照タンパク質レベルよりも低いIGF2タンパク質レベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比、及びIGF2Rの参照タンパク質レベルよりも高いIGF2Rタンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0265】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベル、及びIGF2の参照タンパク質レベルよりも低いIGF2タンパク質レベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベル及び検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。
【0266】
また、CXCR4のタンパク質レベルはまた、がんのFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性の可能性を予測し得る。このように、本明細書ではまた、CXCR4のタンパク質レベルに基づいて、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療の反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるFTI(例えば、チピファルニブ)治療に対する反応性を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照タンパク質レベルよりも高いCXCR4のタンパク質レベル、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4タンパク質レベルのCXCR2タンパク質レベルに対する比、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4における活性化変異、及び不活性IGF1R経路を有する、方法が提供される。
【0267】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベルを有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照タンパク質レベルよりも高いCXCR4のタンパク質レベル、及びIGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4タンパク質レベルのCXCR2タンパク質レベルに対する比、及びIGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベルを有する。
【0268】
不活性IGF1R経路を有する対象は、IGFBP7のタンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の参照タンパク質レベルよりも高いCXCR4のタンパク質レベル、及びIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、参照比よりも高いCXCR4タンパク質レベルのCXCR2タンパク質レベルに対する比、及びIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、CXCR4の活性化変異、及びIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高いIGFBP7タンパク質レベルを有する、方法が提供される。
【0269】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF2の参照タンパク質レベルよりも低いIGF2タンパク質レベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI(例えば、チピファルニブ)を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法であって、対象は、より高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比、及びIGF2Rの参照タンパク質レベルよりも高いIGF2Rタンパク質レベルを有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2の刷り込みの喪失を有さない。いくつかの実施形態では、対象は、IGF2のヘテロ接合性の喪失もIGF2の刷り込みの喪失も有さない。
【0270】
いくつかの実施形態では、参照比よりも高いCXCL12タンパク質レベルのCXCR4タンパク質レベルに対する比に基づいてFTI(例えば、チピファルニブ)治療のために選択される対象は、IGF1の参照タンパク質レベルよりも低いIGF1タンパク質レベル、及びIGF2の参照タンパク質レベルよりも低いIGF2タンパク質レベルをさらに有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、検出不能であるIGF1タンパク質レベル及び検出不能であるIGF2タンパク質レベルを有する。
【0271】
いくつかの実施形態では、本明細書では、FTI(例えば、チピファルニブ)治療にふさわしいがん患者を選択するための方法であって、患者は、(1)CXCL12活性化(高いCXCL12タンパク質レベルまたはCXCL12タンパク質レベル/CXCR4タンパク質レベルの高い比)またはCXCR4活性化(高いCXCR4タンパク質レベル、CXCR4タンパク質レベル/CXCR2タンパク質レベルの高い比、またはCXCR4における活性化変異)のいずれか、及び(2)不活性IGF1R経路(低いIGF1タンパク質レベル、低いIGF2タンパク質レベル、高いIGFBP7タンパク質レベル、及び/またはPIK3CA及びAKTにおける活性化変異の非存在)及び/またはTP53及び/またはKRASについての低い変異アレル頻度を有する、方法が提供される。
【0272】
FTIは、本明細書に記載のものを含む任意のFTIであり得る。例えば、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。このように、本明細書では、例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、CXCR2、またはそれらの任意の組み合わせのタンパク質レベルを含む、本明細書に開示される分子バイオマーカーのタンパク質レベルに基づいて、チピファルニブ治療にふさわしいがん患者を選択するための方法、がん患者におけるチピファルニブ治療に対する反応性を予測するための方法、及びがん患者集団におけるチピファルニブ治療の全体的反応性を増加させるための方法が提供される。
【0273】
いくつかの実施形態では、遺伝子の参照タンパク質レベルは、健康な対象の集団における遺伝子のタンパク質レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、遺伝子の参照タンパク質レベルは、特定のがんを有する対象の集団における遺伝子のタンパク質レベルの中央値である。例えば、膵臓癌患者における遺伝子の参照タンパク質レベルは、膵臓癌を有する対象の集団における遺伝子のタンパク質レベルの中央値である。別の例では、AML患者における遺伝子の参照タンパク質レベルは、AMLを有する対象の集団における遺伝子のタンパク質レベルの中央値である。いくつかの実施形態では、遺伝子の参照タンパク質レベルは、当業者によって統計的分析によって決定されるカットオフ値である。
【0274】
サンプルにおける遺伝子のタンパク質レベルを決定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質レベルは、免疫組織化学(IHC)アッセイ、免疫ブロット(IB)アッセイ、免疫蛍光(IF)アッセイ、フローサイトメトリー(FACS)、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルは、ヘマトキシリン及びエオジン染色(「H&E染色」)によって決定され得る。
【0275】
遺伝子のタンパク質レベルは、様々な(IHC)アプローチまたは他の免疫アッセイ法によって検出され得る。組織切片のIHC染色は、サンプルにおけるタンパク質の存在を評価または検出する信頼性のある方法であることが示されている。免疫組織化学技術は、抗体を利用して、in situで細胞性抗原をプローブし、通常は発色法または蛍光法によって可視化する。よって、例えば、ポリクローナル抗血清、または各遺伝子に特異的なモノクローナル抗体を含む、抗体または抗血清は、発現を検出するために使用される。以下により詳細に論述されるように、抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識、例えば、ビオチン、または酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼで抗体自体を直接的に標識することによって検出され得る。代替的には、非標識一次抗体が、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む標識二次抗体と併せて使用される。免疫組織化学プロトコル及びキットは、当該技術分野でよく知られており、市販されている。スライド調製及びIHC処理のための自動化システムが市販されている。Ventana(登録商標)BenchMark XTシステムは、そのような自動化システムの例である。
【0276】
標準的な免疫学的及び免疫アッセイ手順は、Basic and Clinical Immunology(Stites & Terr eds.,7th ed.1991)で見ることができる。その上、免疫アッセイは、Enzyme Immunoassay(Maggio,ed.,1980);及びHarlow & Lane(前掲)で広くレビューされているいくつかの構成のいずれかで実施され得る。一般的な免疫アッセイのレビューについては、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology,volume 37(Asai,ed.1993);Basic and Clinical Immunology(Stites & Ten,eds.,7th ed.1991)も参照されたい。
【0277】
遺伝子のタンパク質レベルを検出するために一般的に使用されるアッセイは、非競合アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイ、及び競合アッセイを含む。典型的には、ELISAアッセイなどのアッセイが使用され得る。ELISAアッセイは、例えば、血液、血漿、血清、腫瘍生検、リンパ節、または骨髄を含む、多様な組織及びサンプルをアッセイするために、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、サンプルは、骨髄生検である。いくつかの実施形態では、サンプルは、骨髄吸引物である。いくつかの実施形態では、サンプルは、髄液サンプル、肝臓サンプル、精巣サンプル、脾臓サンプル、またはリンパ節サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、単離された細胞である。
【0278】
そのようなアッセイ形式を使用する多様な免疫アッセイ技術が利用可能であり、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,016,043号、4,424,279号、及び4,018,653号を参照されたい。これらは、従来の競合結合アッセイだけでなく、非競合タイプの単一部位及び二部位または「サンドイッチ」アッセイの両方を含む。これらのアッセイはまた、標識抗体の標的遺伝子への直接的結合を含む。サンドイッチアッセイは、一般的に使用されるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術の多数のバリエーションが存在する。例えば、典型的なフォワードアッセイでは、非標識抗体が固体基材上に固定化され、試験されるサンプルは、結合分子と接触される。抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な期間の好適なインキュベーション期間の後、次いで、検出可能なシグナルを生成することが可能なレポーター分子で標識された、抗原に特異的な第2の抗体が添加され、インキュベートされ、抗体-抗原-標識抗体の別の複合体の形成に十分な時間を設ける。任意の未反応物質は洗浄除去され、抗原の存在は、レポーター分子によって生成されるシグナルの観察によって決定される。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性であり得、または既知の量の遺伝子を含有する対照サンプルと比較することによって定量され得る。
【0279】
フォワードアッセイに対するバリエーションは、サンプル及び標識抗体の両方が結合抗体に同時に加えられる同時アッセイを含む。容易に明らかとなる任意の小さなバリエーションを含むこれらの技術は当業者によく知られている。典型的なフォワードサンドイッチアッセイでは、遺伝子に特異性を有する第1の抗体が固体表面に共有結合または受動的に結合する。固体表面は、ガラスまたはポリマーであり得、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、または免疫アッセイを実行するのに好適な任意の他の表面の形態であり得る。結合プロセスは当該技術分野でよく知られており、一般に、架橋共有結合または物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は、試験サンプルの調製において洗浄される。次いで試験されるサンプルのアリコートが固相複合体に添加され、十分な期間(例えば、2~40分またはより好都合な場合は一晩)、好適な条件下(例えば、室温~40℃、例えば、25℃~32℃の間(両端含む))でインキュベートされて、抗体に存在する任意のサブユニットの結合が可能になる。インキュベーション期間の後、抗体サブユニット固相が洗浄及び乾燥され、遺伝子の一部に特異的な第2の抗体とインキュベートされる。第2の抗体は、第2の抗体の分子マーカーへの結合を示すために使用されるレポーター分子に連結されている。
【0280】
代替的な方法は、サンプルにおける標的遺伝子を固定化し、次いで固定化された標的を、レポーター分子で標識されていてもいなくてもよい特異的抗体に曝露することを含む。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的が、抗体での直接的標識によって検出可能であり得る。代替的には、第1の抗体に特異的な第2の標識抗体が、標的-第1の抗体複合体に曝露されて、標的-第1の抗体-第2の抗体三次複合体が形成される。複合体は、標識レポーター分子によって放出されるシグナルによって検出される。
【0281】
酵素免疫アッセイの場合、酵素は、通常はグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸を用いて、第2の抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に容易に利用可能な多様な異なるコンジュゲーション技術が存在する。一般的に使用される酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼを含み、その他は本明細書で論述される。特定の酵素と共に使用される基質は通常、対応する酵素による加水分解時の検出可能な色の変化の生成のために選択される。好適な酵素の例は、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼを含む。また、上述の発色性基質ではなく、蛍光生成物を生成する蛍光性基質を採用することも可能である。すべての場合において、酵素標識抗体は、第1の抗体-分子マーカー複合体に添加され、結合させ、次いで過剰な試薬が洗浄除去される。次いで適切な基質を含有する溶液が、抗体-抗原-抗体の複合体に添加される。基質は、第2の抗体に連結された酵素と反応し、定性的視覚的シグナルを提供し、これはさらに、通常は分光光度法で定量化されて、サンプルに存在していた遺伝子の量の表示を提供し得る。代替的に、蛍光化合物、例えば、フルオレセイン及びローダミンは、それらの結合能力を変化させずに抗体に化学的に結合され得る。特定の波長の光での照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸着し、分子において励起状態を誘導し、続いて光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色の光が放出される。EIAのように、蛍光標識抗体は、第1の抗体-分子マーカー複合体に結合される。未結合試薬を洗浄除去した後、次いで残存する三次複合体は、適切な波長の光に曝露され、観察された蛍光は、対象となる分子マーカーの存在を示す。免疫蛍光及びEIA技術は、いずれも当該技術分野極めて良好に確立されており、本明細書で論述されている。
【0282】
本明細書に記載の対象からのサンプルにおける遺伝子のタンパク質レベルを決定するために、本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で知られている任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書では、対象における膵臓癌を治療するための方法であって、IFアッセイを使用して対象からのサンプルにおけるCXCL12、CXCR4、及びIGFBP7のタンパク質レベルを決定すること、及びサンプルにおけるCXCL12のCXCR4に対するタンパク質比が参照比よりも高い場合、及びサンプルにおけるIGFBP7のタンパク質レベルがIGFBP7の参照タンパク質レベルよりも高い場合、治療的有効量のチピファルニブを対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0283】
サンプルにおける追加の遺伝子のレベルを決定するために、本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で知られている発現レベル(例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル)を分析するための任意の方法、例えば、IHCアッセイ、IBアッセイ、IFアッセイ、FACS、ELISA、タンパク質マイクロアレイ分析、qPCR、qRT-PCR、RNA-seq、RNAマイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、次世代シーケンシング、またはFISHが使用され得る。
【0284】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、特定の遺伝子、例えば、IGFBP7、KRAS、TP53、PIK3CA、AKT、CXCR4、またはそれらの任意の組み合わせの変異状態を決定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、IGFBP7の変異状態を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、KRASの変異状態を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、TP53の変異状態を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、PIK3CAの変異状態を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、AKTの変異状態を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、CXCR4の変異状態を決定することをさらに含む。
【0285】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、特定の遺伝子、例えば、IGFBP7、KRAS、TP53、PIK3CA、AKT、CXCR4、またはそれらの任意の組み合わせの変異アレル頻度を決定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、IGFBP7の変異アレル頻度を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、KRASの変異アレル頻度を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、TP53の変異アレル頻度を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、PIK3CAの変異アレル頻度を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、AKTの変異アレル頻度を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、CXCR4の変異アレル頻度を決定することをさらに含む。
【0286】
変異状態及び/または変異アレル頻度を決定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。いくつかの実施形態では、方法は、シーケンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAマイクロアレイ、質量分析(MS)、一塩基多型(SNP)アッセイ、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、または制限断片長多型(FLP)アッセイを含む。いくつかの実施形態では、変異状態及び/または変異アレル頻度は、例えば、サンガーシーケンシング、次世代シーケンシング(NGS)を含む標準的なシーケンシング方法を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、変異状態及び/または変異アレル頻度は、NGSに基づくアッセイによって決定され得る。いくつかの実施形態では、変異状態及び/または変異アレル頻度は、定量PCRに基づくアッセイによって決定され得る。いくつかの実施形態では、変異状態及び/または変異アレル頻度は、リアルタイムPCRアッセイによって決定され得る。いくつかの実施形態では、変異状態及び/または変異アレル頻度は、MSを使用して決定される。いくつかの実施形態では、変異状態及び/または変異アレル頻度は、サンプルから得られたタンパク質を分析することによって決定される。例えば、変異状態は、様々な免疫組織化学(IHC)アプローチ、免疫ブロットアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または当該技術分野で知られている他の免疫アッセイ法によって決定され得る。
【0287】
当業者は理解するであろうが、遺伝子の変異状態を分析するための本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で知られている任意の方法は、特定の変異(複数可)の存在または非存在を決定するために本明細書に記載の方法において使用され得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法はまた、対象からサンプルを得ることを含む。本明細書で提供される方法において使用されるサンプルは、対象からの体液または対象からの腫瘍生検を含む。
【0289】
いくつかの実施形態では、本方法において使用されるサンプルは、生検(例えば、腫瘍生検)を含む。生検は、任意の器官または組織、例えば、皮膚、肝臓、肺、心臓、結腸、腎臓、骨髄、歯、リンパ節、髪、脾臓、脳、乳房、または他の器官からのものであり得る。対象からサンプルを単離するために当業者に知られている任意の生検技術、例えば、直視下生検、非切開生検、コア生検、切開生検、切除生検、または細針吸引生検が使用され得る。いくつかの実施形態では、本方法において使用されるサンプルは、吸引物(例えば、骨髄吸引物)を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、リンパ節生検である。いくつかの実施形態では、サンプルは、凍結組織サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、ホルマリン固定されたパラフィン包埋(「FFPE」)組織サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、脱パラフィン化組織切片であり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、肝臓サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、精巣サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、脾臓サンプルであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、リンパ節サンプルであり得る。
【0290】
いくつかの実施形態では、サンプルは、体液サンプルである。体液の非限定的な例は、血液(例えば、抹消全血、末梢血)、血漿、骨髄、羊水、房水、胆汁、リンパ液、月経物、血清、尿、脳及び脊髄の周囲の脳脊髄液、骨関節の周囲の滑液を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、髄液サンプルであり得る。
【0291】
いくつかの実施形態では、サンプルは、血液サンプルである。血液サンプルは、全血サンプル、部分的に精製された血液サンプル、または末梢血サンプルであり得る。血液サンプルは、例えば、Innis et al,editors,PCR Protocols(Academic Press,1990)に記載されるような従来の技術を使用して得られ得る。白血球は、従来の技術または市販のキット、例えば、RosetteSepキット(Stein Cell Technologies,Vancouver,Canada)を使用して血液サンプルから分離され得る。白血球、例えば、単核細胞、NK細胞、B細胞、T細胞、単球、顆粒球またはリンパ球のサブ集団が、従来の技術、例えば、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec、Auburn、California)または蛍光活性化細胞選別(FACS)(Becton Dickinson、San Jose、California)を使用してさらに単離され得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、血清である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血漿である。一実施形態では、サンプルは、骨髄サンプルである。
【0292】
所定の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用されるサンプルは、複数の細胞を含む。そのような細胞は、任意のタイプの細胞、例えば、幹細胞、血液細胞(例えば、PBMC)、リンパ球、NK細胞、B細胞、T細胞、単球、顆粒球、免疫細胞、または腫瘍もしくはがん細胞を含み得る。特定の細胞集団は、市販の抗体(例えば、Quest Diagnostic(San Juan Capistrano,Calif.);Dako(Denmark))の組み合わせを使用して得られ得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、単離された細胞である。
【0293】
所定の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用されるサンプルは、罹患組織、例えば、腫瘍サンプルからの複数の細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍組織、例えば、腫瘍生検または腫瘍外植片から得られ得る。所定の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される細胞の数は、単一の細胞から約10個の細胞の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される細胞の数は、約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、または5×10である。皮膚生検、薄片(接線)生検、パンチ生検、切開生検(腫瘍の部分を除去する)及び切除生検(腫瘍全体を除去する)を含む異なるタイプの手順が、患者からの腫瘍生検を得るために利用可能である。リンパ節生検は通常、がんが広がっているかどうかを調べるために実施される。細針吸引(FNA)生検及び外科的(切除)リンパ節生検はいずれも利用可能なオプションである。FNA生検により、患者は、細い針を使用してリンパ節の小さな断片を得ることが可能となり、これは、外科的オプションよりも侵襲性が低いが、がん細胞を発見するのに十分な大きさのサンプルを常に提供するとは限らない場合がある。
【0294】
対象から収集された細胞の数及びタイプは、例えば、標準的な細胞検出技術、例えば、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学(例えば、組織特異的または細胞マーカー特異的抗体での染色)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して形態の変化及び細胞表面マーカーを測定することによって、光または共焦点顕微鏡法を使用して細胞の形態を調べることによって、及び/または当該技術分野でよく知られている技術、例えば、PCR及び遺伝子発現プロファイル化を使用して遺伝子発現の変化を測定することによってモニタリングされ得る。これらの技術は、1つ以上の特定のマーカーについて陽性の細胞を特定するためにも使用され得る。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、粒子の蛍光特性に基づいて、細胞を含む粒子を分離するためのよく知られている方法である(Kamarch,1987,Methods Enzymol,151:150-165)。個々の粒子における蛍光部分のレーザー励起は、小さな電荷をもたらし、これにより混合物から正及び負の粒子の電磁的分離が可能となる。一実施形態では、細胞表面マーカー特異的抗体またはリガンドは、異なる蛍光標識で標識される。細胞は、セルソーターで処理され、使用される抗体に結合するそれらの能力に基づいて細胞を分離ことが可能となる。FACSで選別された粒子は、分離及びクローニングを容易化するために96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接的に堆積され得る。
【0295】
所定の実施形態では、細胞のサブセットが、本明細書で提供される方法において使用される。細胞の特定の集団を選別及び単離するための方法は、当該技術分野でよく知られており、細胞サイズ、形態、または細胞内もしくは細胞外マーカーに基づき得る。そのような方法は、フローサイトメトリー、フロー選別、FACS、ビーズに基づく分離、例えば、磁気細胞選別、サイズに基づく分離(例えば、篩、障害物のアレイ、またはフィルター)、マイクロフルイディクスデバイスにおける選別、抗体に基づく分離、沈降、親和性吸着、親和性抽出、密度勾配遠心分離、レーザー捕捉顕微解剖などを含むがこれらに限定されない。
【0296】
1.4.参照レベル
本明細書に記載されているように、用語「参照発現レベル」は、遺伝子(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)に関連して使用される場合、サンプルにおける遺伝子の発現レベルの有意性を決定するために使用し得る遺伝子の既定の発現レベルを指す。サンプルは、細胞、細胞の群、または組織であり得る。遺伝子(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)の参照発現レベルは、健康な対象の集団における遺伝子の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における遺伝子の発現レベルの中央値であり得る。
【0297】
このように、いくつかの実施形態では、CXCL12の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるCXCL12の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、CXCL12の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるCXCL12の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるIGF1の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるIGF1の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGFBP7の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるIGFBP7の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGFBP7の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるIGFBP7の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF2の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるIGF2の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF2の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるIGF2の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF2Rの参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるIGF2Rの発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、IGF2Rの参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるIGF2Rの発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、CXCR4の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるCXCR4の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、CXCR4の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるCXCR4の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、CXCR2の参照発現レベルは、健康な対象の集団におけるCXCR2の発現レベルの中央値であり得る。いくつかの実施形態では、CXCR2の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるCXCR2の発現レベルの中央値であり得る。
【0298】
遺伝子(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)の参照発現レベルは、様々なサンプルの細胞集団における遺伝子の発現レベルの統計的分析を介して当業者によって決定されるカットオフ値であり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における発現のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイル(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)は、上位15%の発現カットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位20%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位25%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位30%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位35%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位40%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位45%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位50%のカットオフであり得る。例えば、CXCL12の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における発現のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるCXCL12の発現レベルの上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。別の例では、IGFBP7の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における発現のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団におけるIGFBP7の発現レベルの上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。
【0299】
いくつかの実施形態では、特定のがんについての遺伝子(例えば、CXCL12、IGF1、IGFBP7、IGF2、IGF2R、CXCR4、またはCXCR2)の参照発現レベルは、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における発現の下位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位10%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位15%の発現カットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位20%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位25%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位30%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位35%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位40%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位45%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、下位50%のカットオフであり得る。例えば、AML患者についてのIGF1の参照発現レベルは、AML患者の集団におけるIGF1発現の下位30%のカットオフであり得る。
【0300】
いくつかの実施形態では、参照発現レベルは、例えば、臨床コホートからのサンプルにおける遺伝子の発現レベルの統計的分析を介して当業者によって決定され得る。
【0301】
用語「参照比」は、2つ以上の遺伝子の発現レベルに関連して本明細書で使用される場合、サンプルにおけるこれらの遺伝子のレベルの比の有意性を決定するために使用され得る当業者によって既に決定された比を指す。サンプルは、細胞、細胞の群、または組織であり得る。例えば、CXCL12発現のCXCR4発現に対する参照比は、CXCL12発現のCXCR4発現に対する既定の比であり得る。2つ以上の遺伝子の発現レベルの参照比は、対象の集団におけるこれらの遺伝子の発現レベルの比の中央値であり得る。例えば、CXCL12発現のCXCR4発現に対する参照比は、健康な集団における比の中央値であり得る。別の例では、CXCL12発現のCXCR4発現に対する参照比は、同じタイプの腫瘍を有する患者の集団における比の中央値であり得る。参照比はまた、同じタイプの腫瘍を有する対象の集団における発現比のカットオフパーセンタイルであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位10%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位15%の発現カットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位20%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位25%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位30%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位35%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位40%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位45%のカットオフであり得る。カットオフパーセンタイルは、上位50%のカットオフであり得る。例えば、膵臓癌患者についての参照発現比は、がん患者の集団におけるCXCL12発現のCXCR4発現に対する比の上位30%のカットオフであり得る。参照比は、例えば、様々なサンプルの細胞集団における2つの遺伝子の発現レベルの比の統計的分析を介して当業者によって決定されるカットオフ値であり得る。所定の実施形態では、参照比は、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/10である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/9である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/8である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/7である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/6である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/5である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/4である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/3である。いくつかの実施形態では、参照比は、1/2である。いくつかの実施形態では、参照比は、1である。いくつかの実施形態では、参照比は、2である。いくつかの実施形態では、参照比は、3である。いくつかの実施形態では、参照比は、4である。いくつかの実施形態では、参照比は、5である。いくつかの実施形態では、参照比は、6である。いくつかの実施形態では、参照比は、7である。いくつかの実施形態では、参照比は、8である。いくつかの実施形態では、参照比は、9である。いくつかの実施形態では、参照比は、10である。いくつかの実施形態では、参照比は、15である。いくつかの実施形態では、参照比は、20である。
【0302】
当業者は理解するであろうが、遺伝子の参照発現レベルまたは2つの遺伝子の発現レベル間の参照比はまた、患者の群のアウトカム、すなわち、患者のFTI治療に対する反応性、ならびに遺伝子の発現レベルまたは患者の群の遺伝子間の発現レベルの比を含む、先行臨床試験からのデータの統計的分析に基づいて決定され得る。特定の治療に対する患者の反応性を予測するために、または特定の治療のために患者を層別化するために使用される場合、1つ以上の遺伝子の参照レベル(または「カットオフ値」)を決定するための多数の統計的方法が当該技術分野でよく知られている。
【0303】
本発明の1つの方法は、反応者と非反応者を区別する本明細書で特定される遺伝子についての発現プロファイルを分析して、1つ以上の遺伝子についての参照発現レベルを決定することを含む。反応者と非反応者との間の比較は、マン・ホイットニーのU検定、カイ二乗検定、またはフィッシャーの正確確率検定を使用して実施され得る。記述統計及び比較の分析は、SigmaStatソフトウェア(Systat Software,Inc.,San Jose,CA,USA)を使用して実施され得る。
【0304】
いくつかの実施形態では、分類及び回帰木(CART)分析が、参照レベルを決定するために適応され得る。CART分析は、二元再帰分割アルゴリズムに基づくものであり、多重線形回帰などのより従来的な方法では明らかにならない可能性がある複合予測変数相互作用の発見を可能にする。二元再帰分割は、1)二元である、つまり、患者を2群に分ける効果がある、2つの考えられる結果変数、すなわち、「反応者」及び「非反応者」が存在し、2)再帰的である、つまり、分析を複数回実施することができ、3)分割される、つまり、全データセットを部分に分けることができる、分析を指す。この分析はまた、低い性能を有する予測変数を排除する能力を有する。分類木は、Salford Predictive Modeler v6.6(Salford Systems,San Diego,CA,USA)を使用して構築され得る。
【0305】
受信者操作特性(ROC)分析は、参照発現レベル、または参照発現比を決定するために、または個々の遺伝子及び/または複数の遺伝子の全体的予測値を試験するために利用され得る。ROC分析のレビューは、Soreide,J Clin Pathol 10.1136(2008)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で見ることができる。
【0306】
参照レベルは、高い感度及び高い特異性の両方を確保するためのトレーニングセットのROC曲線から決定され得る。異なる遺伝子数を有する予測因子の性能は、誤分類エラー率、感度、特異度、2つの予測される群のカプランマイヤー曲線の分離を測定するp値に基づいて評価され得る。
【0307】
Geman et al.(2004)によって最初に導入されたトップスコアリングペア(TSP)アルゴリズムが使用され得る。本質的には、そのアルゴリズムは、クラスC1~C2間のサンプルにおいて遺伝子iが遺伝子jよりも高い発現値を有する事象の頻度における絶対差(Dij)に基づいてすべての遺伝子ペア(遺伝子i及びj)をランク付けする。複数のトップスコアペア(すべてが同じDijを共有する)が存在する場合、1つの遺伝子ペア内で一方のクラスから他方のクラスへと遺伝子の発現レベルの逆転が生じる度合いを測定する、二次的ランクスコアによる最上位ペアが選択される。全サンプルにおいて2倍を超える絶対Dijの頻度が最も高い最上位ペアが候補ペアとして選択される。次いで候補ペアは、独立の試験データセットで評価され得る。一個抜き交差検証(LOOCV)がトレーニングデータセットで行われて、アルゴリズムがどのように実行するかが評価され得る。予測因子の性能は、最大誤分類エラー率に基づいて評価され得る。統計分析はすべてRを使用して行われ得る(R Development Core Team,2006)。
【0308】
臨床的報告可能範囲(CRR)は、試料希釈、濃縮、または直接的な分析測定範囲を拡大するために使用される他の事前処理を可能にする、方法が測定することができる分析物の値の範囲である。Westgard博士によるBasic Methods Validationで提供されているように、実施される実験は多くの場合、「線形性実験」と呼ばれるが、技術的には、2点校正が使用されない限り、方法が線形応答を提供する必要はない。この範囲はまた、方法についての「線形範囲」、「分析範囲」、または「作業範囲」と称され得る。
【0309】
報告可能範囲は、線形性グラフの検査によって評価される。その検査は、点の線形部分を通る最も真っ直ぐな線を手で引くこと、すべての点を通る点から点への線を引き、次いで最も真っ直ぐな線と比較すること、または線形範囲にある点を通る回帰線をフィットさせることを含み得る。分析方法の直線性を評価するための臨床検査標準委員会(Clinical Laboratory Standards Institute)(CLSI)のEP-6プロトコルなどのいくつかのガイドラインで推奨されるより複雑な統計計算がある。しかし、報告可能範囲は、「目視」評価から、すなわち、一連のものの中で最も低い点にフィットする最も真っ直ぐな線を手で引くことによって適切に決定され得ることが一般的に認められている。臨床検査標準委員会(CLSI)は、最小で少なくとも4つの、好ましくは5つの異なる濃度レベルを推奨している。特に報告可能範囲の上限を最大化する必要がある場合は5つよりも多くが使用され得るが、5つのレベルが好都合であり、ほとんどの場合十分である。
【0310】
参照区間は典型的には、慎重に定義された基準を満たす個体から得られた試料(参照サンプル群)をアッセイすることによって確立される。プロトコル、例えば、参照値の理論に関する国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry)(IFCC)の専門家パネル及びCLSIのものは、慎重に選択された参照サンプル群を使用して参照区間を確立する包括的体系的プロセスを詳しく記述している。これらのプロトコルは典型的には、特性化される必要がある各々の群(または亜群)について最低120の参照個体を必要とする。
【0311】
CLSI承認ガイドラインC28-A2には、検査室が確立された参照区間の個々の検査室への移行を検証するための種々の方法が記載されており、これには、1.検査室が提出された情報を単にレビューし、参照区間が採用する検査室の患者集団及び試験方法に適用できることを主観的に検証する、神の(Divine)判断、2.実験的検証が、参照サンプル集団を代表する20人の個体由来の試料を収集及び分析することによって実施される、20個のサンプルでの検証、3.実験的検証が、参照サンプル集団を代表する60人の個体由来の試料を収集及び分析することによって実施され、2つの集団の平均及び標準偏差を比較する統計式を使用して、実際の参照区間が推定され、主張または報告された区間と比較される、60個のサンプルでの推定、ならびに4.主張または報告された参照区間を、観察された方法論的バイアス及び使用されている分析法の間で証明された数学的関係性に基づいて調整または修正することができる、比較法からの計算が含まれる。
【0312】
当業者は、本明細書に開示される遺伝子の参照発現レベルならびに2つ以上の遺伝子の間の参照比が、本明細書で提供される1つ以上の方法または当該技術分野で知られている他の方法によって決定され得ることを理解するであろう。
【0313】
2.併用療法
2.1.FTIとIGF1R経路阻害剤
本明細書に開示されるように、IGF1R経路は、FTIに対する抵抗性を媒介する。したがって、本明細書ではまた、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のIGF1R経路の阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が開示される。IGF1R経路の阻害剤は、FTI治療に対するがんを増感させ、そのため、FTIとの相乗効果を達成する。
【0314】
IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤、IGF1R阻害剤、PI3K阻害剤、またはAKT阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1R阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、AKT阻害剤である。
【0315】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のIGF1阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。IGF1阻害剤は、IGF1がIGF1Rを結合させることまたは活性化することを阻止する抗IGF1抗体であり得る。
【0316】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のIGF1R阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。IGF1R阻害剤は、任意の抗IGF1R抗体であり得る。IGF1R阻害剤は、例えば、A-923573、A-928605、A-947864、AEW-541、AG-1024、ANT-429、AVE1642、AZD-3463、BMS-754807、セリチニブ、FP-008、GSK-1904529A、GTx-134、IG01A-048、INT-231、膜近接合成アナログ、KW-2450、リンシチニブ、LL-28、マソプロコール、NVP-AEW541、NVP-ADW742、OSI-906、ピクロポドフィリン、PL-225B、PNU-145156E、PQIP、XL-228、1R-(E1)-(E1)、AD-0027、ATL-1101、AVE-1642、BIIB-022、シクツムマブ、ダロツズマブ、デュシギツマブ、フィギツムマブ、ガニツマブ、h10H5、イスチラツマブ、KM-1468、ランレオチド、m708.5、ロバツムマブ、テプロツムマブ、及びW-0101を含む当該技術分野で知られている任意のIGF1R阻害剤であり得る。
【0317】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択されるIGF1R阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。
【0318】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のPI3K阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。PI3K阻害剤は、例えば、17ベータヒドロキシウォルトマンニンアナログ、2-(4-ピペラジニル)置換4H-1-ベンゾピラン-4-オン誘導体、ACP-319、AEZS-129、AEZS-136、アリリネチド(alirinetide)、アルペリシブ、AMG-319、AMG-511、アピトリシブ、AQX-MN100、AQX-MN106、ヒ素トリオキシド、AS-252424、AS-605240、ASN-003、Atu-027、AZD-6482、AZD-8154、AZD-8186、AZD-8835、BAG-956、BAY-1082439、BCN-004、BEBT-906、BEBT-908、BGT-226、ビミラリシブ、BMS-754807、BN-107、BR-101801、ブパルリシブ、BVD-723、C-150、CAL-130、CAL-263、CC-115、CHR-4432、CL-27c、CLL-442、CLR-1401、CLR-1502、CLR-457、CMG-002、CNX-1351、塩酸コパンリシブ、CT-365、CT-732、CU-906、クルクミンアナログ、CYH-33、ダクトリシブ、DCB-HDG2-57、デザペリシブ、DS-7423、デュベリシブ、EC-0371、EC-0565、EM-101、EM-12、エントスプレチニブ、エンザスタウリン、エベロリムス、エキセメスタン、EZN-4150、フィメピノスタット、FIM-X13、FP-208、FX-06、ガネテスピブ、GAP-107B8、GDC-0084、GDC-0349、GDC-0941、ゲダトリシブ、GS-548202、GS-599220、GS-9820、GS-9829、GS-9901、GSK-1059615、GSK-2126458、GSK-2292767、GSK-2636771、GSK-2702926A、GSK-418、GVK-01406、HEC-68498、HMPL-689、HNC-VP-L、HS-113、IBL-202、IBL-301、IC87114、イデラリシブ、IIIM-284/14、IIIM-873/15、IM-156、INCB-50465、INK-007、IP55ペプチド、IPI-443、IPI-549、KA-2237、KAR-4141、KBP-7306、KD-06、LAS-191954、LAS-194223、レニオリシブ、LS-008、LY-294002、LY-3023414、MDN-088、ME-344、ME-401、MEN-1611、酪酸メトホルミン、MLC-901、モネパンテル、MTX-211、MTX-216、ナノリポリー(nanolipolee)-007、ネミラリシブ、ネラチニブ、NV-128、NVP-BEZ235、OB-318、オルコロリムス、オレアンドリン、ON-123300、ON-146シリーズ、ONC-201、オパガニブ、OSI-027、OT-043、OXA-01、P-2281、P-6915、パクリタキセル、パヌリシブ、ペプチドH3、ペリホシン、PF-4691502、PF-4989216、フェニトイン、PI-103、ピクチリシブ、PIK-75、ピララリシブ、PKI-179、PKI-402、PQR-311、PQR-312、PQR-316、PQR-340、PQR-370、PQR-401、PQR-514、PQR-530、PQR-5XX、PQR-620、PQR-6XX、メシル酸プキチニブ、PX-867、QLT-0447、ラパマイシンアナログ、ラパマイシン誘導体、ラパタル(Rapatar)、RG-6114、リボシクリブ、リダホロリムス、リゴセルチブナトリウム、リロツムマブ、リスペリドン、ロミデプシン、RP-5002、RP-5090、RP-6503、RV-1729、SAR-260301、SEL-403、セレタリシブ、セラベリシブ、SF-1126、SF-2535、SF-2558HA、シルミタセルチブ、シロリムス、SKLB-JR02、SMI-4a、SN36093、ソレノプシンアナログ、ソノリシブ、SRX-2523、SRX-2558、SRX-2626、SRX-3177、SRX-5000、ST-168、ST-182、スニチニブ、SVPインスリン、SVP-ラパマイシン、TAFA-93、TAM-01、タセリシブ、TAT-N25ペプチド、テムシロリムス、テナリシブ、TG-100-115、TGX-221、トリフロルカス(Triflorcas)、ウブリツキシマブ、ウムブラリシブ、バナジス(Vanadis)、VDC-597、VEL-015、ボクスタリシブ、VS-5584、WJD-008、ウォルトマンニン、ウミデジ(wumideji)、WX-008、WX-037、WX-047、WXFL-10030390、X-339、X-370、X-414、X-480、XL-499、Y-31、YY-20394、YZJ-0673、及びZSTK-474を含む当該技術分野で知られている任意のPI3K阻害剤であり得る。
【0319】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のSF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択されるPI3K阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。
【0320】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のAKT阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。AKT阻害剤、例えば、A-443654、アフレセルチブ、AMG-511、ARQ-751、AT-13148、AV-203、カピバセルチブ、CUDC-101、クルクミンアナログ、デグエリン、EM12、SK-2636771、GSK-690693、IMB-YH-8、INCB-047775、イパタセルチブ二塩酸塩、LY-2503029、LY-2780301、ミランセルチブ塩酸塩、MK-2206、MK-8156、ナノ粒子MK-2206、OB-318、オキシステロール、ペリホシン、PQR-401、PX-316、リゴセルチブナトリウム、SR-13668、SZ-685C、TAS-117、トリシリビン、トリフロルカス(Triflorcas)、ウプロセルチブ、VEL-015、VLI-27、XL-418を含む当該技術分野で知られている任意のAKT阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のペリホシン、SR13668、A-443654、トリシリビン、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択されるAKT阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。
【0321】
がん治療においてIGF1R経路の阻害剤と組み合わせて使用されるFTIは、当該技術分野で知られている任意のFTIであり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、ロナファルニブである。いくつかの実施形態では、FTIは、アルグラビンである。いくつかの実施形態では、FTIは、ペリリルアルコールである。いくつかの実施形態では、FTIは、L778123である。いくつかの実施形態では、FTIは、L739749である。いくつかの実施形態では、FTIは、FTI-277である。いくつかの実施形態では、FTIは、L744832である。いくつかの実施形態では、FTIは、CP-609である。いくつかの実施形態では、FTIは、R208176である。いくつかの実施形態では、FTIは、AZD3409である。いくつかの実施形態では、FTIは、BMS-214662である。
【0322】
いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。本明細書ではまた、治療的有効量のチピファルニブ及び治療的有効量のIGF1R経路の阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。IGF1R経路の阻害剤は、チピファルニブ治療に対するがんを増感させ、そのため、チピファルニブとの相乗効果を達成する。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1R阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、AKT阻害剤である。
【0323】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブ及び治療的有効量のIGF1R阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。IGF1R阻害剤は、ダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択され得る。
【0324】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブ及び治療的有効量のPI3K阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。PI3K阻害剤は、SF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択され得る。
【0325】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブ及び治療的有効量のAKT阻害剤を対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。AKT阻害剤は、ペリホシン、SR13668、A-443654、リン酸トリシリビン一水和物、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択され得る。
【0326】
いくつかの実施形態では、FTI及びIFG1R経路の阻害剤の組み合わせが、血液癌の治療において使用され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、骨髄性血液癌である。骨髄血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、AMLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、CMMLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、MPNである。いくつかの実施形態では、血液癌は、MDSである。
【0327】
いくつかの実施形態では、血液癌は、リンパ性血液癌である。リンパ性血液癌は、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、NKリンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液癌は、NK白血病である。いくつかの実施形態では、血液癌は、CTCLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、PTCLである。
【0328】
いくつかの実施形態では、FTI及びIFG1R経路の阻害剤の組み合わせが、固形腫瘍の治療において使用され得る。固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、または前立腺癌であり得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌である。いくつかの実施形態では、膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である。いくつかの実施形態では、がんは、扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膀胱癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、乳癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、胃癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、大腸癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、中皮腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ブドウ膜黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膠芽腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、食道癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺腺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、卵巣癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肉腫である。
【0329】
本明細書に明示的に記載される実施形態は、例示することが意図されており、限定するものではない。本開示はまた、異なるタイプのがんの治療における異なるFTI及びIGF1R阻害剤の阻害剤のすべての組み合わせ及び変更を含む。
【0330】
2.2.FTIとCXCR4阻害剤
本明細書では、がん治療のためのFTI及びCXCR4経路の阻害剤を含む併用療法が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的に有効なFTI及び治療的有効量のCXCR4アンタゴニストを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。CXCR4アンタゴニストは、例えば、プレリキサホル、クロロキン、及びヒドロキシクロロキンを含む。Kim J et al.,PLoS One,2012;7(2):e31004;Sorensen et al.,Mol.Cancer Ther.2014;13(7):1758-71.Schmukler E et al.,Oncotarget.2014 Jan 15;5(1):173-84。
【0331】
本明細書に開示されるように、CXCR4は、FTIに対する感度を推進し得る。したがって、本明細書ではまた、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のCXCR4のアンタゴニストを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が開示される。CXCR4アンタゴニストは、例えば、AD-114、ALT-1188、AMD-070、AMD-3100、APH-0812、バリキサフォルチド、BKT-140、BKT-170、BL-8040、ブリキサフォル、CCR5受容体調節剤、セフプロジル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、CTCE-0012、CX-549、DBPR-215、D-Lys3 GHRP-6、F-50067、フィルグラスチム、GBV-4086、GMI-1359、KRH-1120、KRH-3166、KRH-3955、LY-2510924、LY-2624587、MEDI-3185、N15Pペプチド、ND-401、NSC-651016、ONO-7161、PF-06747143、プレリキサホル、POL-5551、PTX-9908、SDF-1抗体、T-134、TIQ-15アナログ、ウロクプルマブ、USL-311、VIR-5103、vMIP、vMIP-II、X4-136、X4P-001、またはX4P-002を含む、当該技術分野で知られている任意のCXCR4アンタゴニストであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及び治療的有効量のAMD-3100、BL-8040、クロロキン、及びプレリキサホルからなる群から選択されるCXCR4のアンタゴニストを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。
【0332】
がん治療におけるIGF1R経路の阻害剤と組み合わせて使用されるFTIは、当該技術分野で知られている任意のFTIであり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、ロナファルニブである。いくつかの実施形態では、FTIは、アルグラビンである。いくつかの実施形態では、FTIは、ペリリルアルコールである。いくつかの実施形態では、FTIは、L778123である。いくつかの実施形態では、FTIは、L739749である。いくつかの実施形態では、FTIは、FTI-277である。いくつかの実施形態では、FTIは、L744832である。いくつかの実施形態では、FTIは、CP-609である。いくつかの実施形態では、FTIは、R208176である。いくつかの実施形態では、FTIは、AZD3409である。いくつかの実施形態では、FTIは、BMS-214662である。
【0333】
いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。本明細書ではまた、治療的有効量のチピファルニブ及び治療的有効量のCXCR4のアンタゴニストを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。CXCR4アンタゴニストは、例えば、AD-114、ALT-1188、AMD-070、AMD-3100、APH-0812、バリキサフォルチド、BKT-140、BKT-170、BL-8040、ブリキサフォル、CCR5受容体調節剤、セフプロジル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、CTCE-0012、CX-549、DBPR-215、D-Lys3 GHRP-6、F-50067、フィルグラスチム、GBV-4086、GMI-1359、KRH-1120、KRH-3166、KRH-3955、LY-2510924、LY-2624587、MEDI-3185、N15Pペプチド、ND-401、NSC-651016、ONO-7161、PF-06747143、プレリキサホル、POL-5551、PTX-9908、SDF-1抗体、T-134、TIQ-15アナログ、ウロクプルマブ、USL-311、VIR-5103、vMIP、vMIP-II、X4-136、X4P-001、またはX4P-002を含む、当該技術分野で知られている任意のCXCR4アンタゴニストであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のチピファルニブ及び治療的有効量のAMD-3100、BL-8040、クロロキン、及びプレリキサホルからなる群から選択されるCXCR4のアンタゴニストを対象に投与することによって対象におけるがんを治療する方法が提供される。
【0334】
いくつかの実施形態では、FTI及びCXCR4のアンタゴニストの組み合わせが、血液癌の治療において使用され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、骨髄性血液癌である。骨髄血液癌は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、AMLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、CMMLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、MPNである。いくつかの実施形態では、血液癌は、MDSである。
【0335】
いくつかの実施形態では、血液癌は、リンパ性血液癌である。リンパ性血液癌は、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NKリンパ腫)、ナチュラルキラー細胞白血病(NK白血病)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、血液癌は、NKリンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液癌は、NK白血病である。いくつかの実施形態では、血液癌は、CTCLである。いくつかの実施形態では、血液癌は、PTCLである。
【0336】
いくつかの実施形態では、FTI及びCXCR4のアンタゴニストの組み合わせが、固形腫瘍の治療において使用され得る。固形腫瘍は、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、大腸癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、中皮腫、ブドウ膜黒色腫、膠芽腫、副腎皮質癌、食道癌、黒色腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、肝細胞癌、肉腫、または前立腺癌であり得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌である。いくつかの実施形態では、膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である。いくつかの実施形態では、がんは、扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膀胱癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、乳癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、胃癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、大腸癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、中皮腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ブドウ膜黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膠芽腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、食道癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺腺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、卵巣癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肉腫である。
【0337】
本明細書に明示的に記載される実施形態は、例示することが意図されており、限定するものではない。本開示はまた、異なるタイプのがんの治療における異なるFTI及びCXCR4のアンタゴニストを使用するすべての組み合わせ及び変更を含む。
【0338】
2.3.追加療法
FTI治療はまた、単独でまたは本明細書に記載されるIGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストのいずれかと組み合わせて、がん患者の選択的治療において追加療法と組み合わせて使用され得る。FTIは、本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で知られている任意のFTIであり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ、ロナファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、またはBMS-214662であり得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0339】
いくつかの実施形態では、FTI治療は、放射線療法(radiotherapy)、または放射線療法(radiation therapy)と組み合わせて適用される。放射線療法は、γ線、X線、及び/または腫瘍細胞への放射性同位体の直接送達の使用を含む。他の形態のDNA損傷要素、例えば、マイクロ波、陽子ビーム照射(米国特許第5,760,395号及び4,870,287号;これらのすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、及びUV照射も企図される。これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製及び修復、染色体の集合及び維持に対する広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が非常に高い。
【0340】
いくつかの実施形態では、宿主における腫瘍を照射に対して有効に増感させる治療的有効量のFTIを有する薬学的組成物が投与される。(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6545020号)。照射は、電離放射線及び特にガンマ線であり得る。いくつかの実施形態では、ガンマ線は、線形加速器によってまたは放射性核種によって放出される。放射性核種による腫瘍の照射は、外部または内部であり得る。
【0341】
照射はまた、X線照射であり得る。X線の線量範囲は、長期(3~4週)の場合は50~200レントゲンの1日線量から、2000~6000レントゲンの単回線量の範囲である。放射性同位体の線量範囲は広く変化し、同位体の半減期、放出される放射線の強度及びタイプ、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0342】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物の投与は、腫瘍の照射の最大で1ヶ月、特に最大で10日または1週前に開始する。また、腫瘍の照射は分割され、最初と最後の照射セッションの間のインターバルで薬学的組成物の投与が維持される。
【0343】
FTIの量、照射線量及び照射線量の間欠性は、腫瘍のタイプ、その位置、化学または放射線療法に対する患者の反応などの一連のパラメータに依存し、最終的には医師及び放射線技師が各々の個々の場合において決定するものである。いくつかの実施形態では、FTIは、放射線療法の適用の前に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、放射線療法と同時に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、放射線療法の適用の後に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0344】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療的有効量の追加の活性剤またはサポートケア療法を適用することをさらに含む。追加の活性剤は、化学療法剤であり得る。化学療法剤または薬は、細胞内でのその活性モード、例えば、それらが細胞サイクルに影響を及ぼすかどうか、及びどの段階で影響を及ぼすかによって分類され得る。代替的には、薬剤は、直接的にDNAを架橋する、DNAに挿入する、または核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体及び有糸分裂異常を誘導するその能力に基づいて特性化され得る。FTIは、追加の活性剤の投与の前に投与され得る。FTIは、追加の活性剤と同時に投与され得る。FTIは、活性剤の投与の後に投与され得る。
【0345】
化学療法剤の例は、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロロメラミンを含む、エチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブタラシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロスレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマlI及びカリケアミシンオメガI1);ダイネミシンAを含む、ダイネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗アドレナール剤、例えば、ミトタン及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、トランス白金、及び上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、または誘導体を含む。
【0346】
いくつかの実施形態では、対象に投与される追加の活性剤は、カペシタビンである。所定の実施形態では、カペシタビンは、100mg/m2、200mg/m2、300mg/m2、400mg/m2、500mg/m2、600mg/m2、700mg/m2、800mg/m2、900mg/m2、1,000mg/m2、1100mg/m2、1200mg/m2、1300mg/m2、1400mg/m2、または1500mg/m2の投薬量で対象に投与され得る。所定の実施形態では、カペシタビンは、毎日投与される。所定の実施形態では、カペシタビンは、1日2回投与される。
【0347】
治療サイクルは、異なる長さを有し得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月であり得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、3週である。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、4週である。治療サイクルは、間欠的スケジュールを有し得る。いくつかの実施形態では、3週の治療サイクルは、7日の投薬と、それに続く14日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、3週の治療サイクルは、14日の投薬と、それに続く7日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、7日の投薬と、それに続く21日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、14日の投薬と、それに続く14日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、21日の投薬と、それに続く7日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、1~7及び15~21日目での投薬、ならびに8~14及び22~28日目での休薬を有し得る。
【0348】
いくつかの実施形態では、カペシタビンは、少なくとも1回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、または少なくとも12回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、少なくとも3回の治療サイクルの間、投与され得る。
【0349】
いくつかの実施形態では、カペシタビンは、最大で2週間、投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、最大で3週間、最大で1ヶ月間、最大で2ヶ月間、最大で3ヶ月間、最大で4ヶ月間、最大で5ヶ月間、最大で6ヶ月間、最大で7ヶ月間、最大で8ヶ月間、最大で9ヶ月間、最大で10ヶ月間、最大で11ヶ月間、または最大で12ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビン治療療法は、反応の開始を過ぎて少なくとも6ヶ月間維持され得る。
【0350】
いくつかの実施形態では、カペシタビンは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの1週間(1~7日目)、毎日投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの2週間(1~14日目)、毎日投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの1週間(1~7日目)、1000mg/m2の用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの2週間(1~14日目)、1000mg/m2の用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、4週のサイクルの繰り返しにおいて4週のうちの3週間、毎日投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、4週のサイクルの繰り返しにおいて隔週で(1週投与、1週休薬)毎日投与される。いくつかの実施形態では、カペシタビンは、4週のサイクルの繰り返しにおいて4週のうちの3週間、1000mg/m2の用量で1日2回経口で投与される。
【0351】
追加の活性剤は、大分子(例えば、タンパク質)または小分子(例えば、合成無機、有機金属、または有機分子)であり得る。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、DNA低メチル化剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、CDK阻害剤、またはがん抗原に特異的に結合する治療用抗体である。追加の活性剤はまた、造血成長因子、サイトカイン、抗生物質、cox-2阻害剤、免疫調節剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、コルチコステロイドまたはその薬理学的に活性な変異体もしくは誘導体であり得る。
【0352】
いくつかの実施形態では、追加療法は、化学療法、例えば、シスプラチン、5-FU、カルボプラチン、パクリタキセル、または白金系ダブレット(例えば、シスプラチン/5-FUまたはカルボプラチン/パクリタキセル)である。いくつかの実施形態では、追加療法は、タキサン及び/またはメトトレキサートである。いくつかの実施形態では、追加療法は、PI3K経路を標的とするもの:BKM120(ブパルリシブ)、BYL719、テムシロリムス、リゴセルチブ;MET経路を標的とするもの:チバンチニブ、フィクラツズマブ;HER3経路を標的とするもの、パトリツマブ;FGFR経路を標的とするもの:BGJ398;CDK4/6-細胞サイクル経路を標的とするもの:パルボシクリブ、LEE011、アベマシクリブ、及びリボシクリブ;RTK阻害剤:アンロチニブ;AKT阻害剤:MK2206、GSK2110183、及びGSK2141795;ならびに化学療法:経口アザシチジンから選択され得る。いくつかの実施形態では、追加療法は、免疫療法、例えば、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態では、追加療法は、タキサンである。
【0353】
いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、EGFR阻害剤である。EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、セツキシマブ、ネシツムマブ、オシメルチニブ、またはパニツムマブであり得る。FTIは、EGFR阻害剤の投与の前に投与され得る。FTIは、EGFR阻害剤と同時に投与され得る。FTIは、EGFR阻害剤の投与の後に投与され得る。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、DNA低メチル化剤、例えば、シチジンアナログ(例えば、アザシチジン)または5-アザデオキシシチジン(例えば、デシタビン)である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、インダクション(Induction)、トポテカン、ハイドレア、POエトポシド、レナリドミド、LDAC、及びチオグアニンを含むがこれらに限定されない腫瘍縮小剤である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、ミトキサントロン、エトポシド、シタラビン、またはバルスポダールである。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、ミトキサントロンとバルスポダール、エトポシドとバルスポダール、またはシタラビンとバルスポダールである。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、イダルビシン、フルダラビン、トポテカン、またはara-Cである。いくつかの他の実施形態では、追加の活性剤は、イダルビシンとara-C、フルダラビンとara-C、ミトキサントロンとara-C、またはトポテカンとara-Cである。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、キニーネである。上記で特定された薬剤の他の組み合わせが使用され得、投薬量は医師によって決定され得る。
【0354】
本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で利用可能な治療がFTI治療と組み合わせて使用され得る。例えば、FTIと組み合わせて使用され得る薬物は、Spectrum Pharmaceuticalsによって上市されたベリノスタット(Beleodaq(登録商標))及びプララトレキセート(Folotyn(登録商標))、Celgeneによって上市されたロミデプシン(Istodax(登録商標))、及びSeattle Geneticsによって上市されたブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標));Celgeneによって上市されたアザシチジン(Vidaza(登録商標))及びレナリドミド(Revlimid(登録商標))、及びOtsuka及びJohnson & Johnsonによって上市されたデシタビン(Dacogen(登録商標));バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))、Bayerのソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、Exelixisのカボザンチニブ(Cometriq(登録商標))ならびにEisaiのレンバチニブ(Lenvima(登録商標))を含む。非細胞毒性療法、例えば、プララトレキセート(Folotyn(登録商標))、ロミデプシン(Istodax(登録商標))及びベリノスタット(Beleodaq(登録商標))もFTI治療と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、DNA低メチル化剤である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、シタラビン、ダウルビシン、イダルビシン、またはゲムツズマブ(gentuzumab)、またはオゾガマイシンである。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、DNA低メチル化剤、例えば、アザシチジンまたはデシタビンである。
【0355】
いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、免疫療法剤である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、抗PD1抗体である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、抗PDL1抗体である。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、抗CTLA-4抗体である。
【0356】
FTIと組み合わせて使用される追加の活性剤または療法は、FTI治療の前、それと同時、またはその後に投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される追加の活性剤または療法は、FTI治療の前に投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される追加の活性剤または療法は、FTI治療と同時に投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIと組み合わせて使用される追加の活性剤または療法は、FTI治療の後に投与され得る。
【0357】
いくつかの実施形態では、FTI治療は、骨髄移植と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、骨髄移植の適用の前に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、骨髄移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、骨髄移植の適用の後に投与される。
【0358】
いくつかの実施形態では、FTI治療は、幹細胞移植と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、幹細胞移植の適用の前に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、幹細胞移植と同時に投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、幹細胞移植の適用の後に投与される。
【0359】
当業者は、本明細書に記載の方法が、特定のFTI、製剤、投薬レジメン、追加療法の任意の変更または組み合わせを使用して本明細書に記載の対象を治療することを含むことを理解するであろう。
【0360】
3.薬学的組成物
いくつかの実施形態では、本明細書では、FTIまたはFTIを有する薬学的組成物で対象を治療する方法が提供される。本明細書で提供される薬学的組成物は、治療的有効量のFTI及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含有する。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ;ロナファルニブ(SCH-66336としても知られている);アルグラビン;ペリリルアルコール;CP-609,754、BMS 214662;L778123;L744832;L739749;R208176;AZD3409;またはFTI-277である。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0361】
本明細書ではまた、治療的有効量のFTI及びIGF1R経路の阻害剤ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ;ロナファルニブ(SCH-66336としても知られている);アルグラビン;ペリリルアルコール;CP-609,754、BMS 214662;L778123;L744832;L739749;R208176;AZD3409;またはFTI-277である。本明細書ではまた、治療的有効量のチピファルニブ及びIGF1R経路の阻害剤ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。
【0362】
IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤、IGF1R阻害剤、PI3K阻害剤、またはAKT阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、IGF1R阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、IGF1R経路の阻害剤は、AKT阻害剤である。
【0363】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びIGF1阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、IGF1阻害剤は、IGF1がIGF1Rを結合させることまたは活性化することを阻止する抗IGF1抗体であり得る。
【0364】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びIGF1R阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。IGF1R阻害剤は、抗IGF1R抗体であり得る。IGF1R阻害剤は、例えば、A-923573、A-928605、A-947864、AEW-541、AG-1024、ANT-429、AVE1642、AZD-3463、BMS-754807、セリチニブ、FP-008、GSK-1904529A、GTx-134、IG01A-048、INT-231、膜近接合成アナログ、KW-2450、リンシチニブ、LL-28、マソプロコール、NVP-AEW541、NVP-ADW742、OSI-906、ピクロポドフィリン、PL-225B、PNU-145156E、PQIP、XL-228、1R-(E1)-(E1)、AD-0027、ATL-1101、AVE-1642、BIIB-022、シクツムマブ、ダロツズマブ、デュシギツマブ、フィギツムマブ、ガニツマブ、h10H5、イスチラツマブ、KM-1468、ランレオチド、m708.5、ロバツムマブ、テプロツムマブ、及びW-0101を含む当該技術分野で知られている任意のIGF1R阻害剤であり得る。
【0365】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びIGF1R阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物であって、IGF1R阻害剤は、ダロツズマブ、ロバツムマブ、フィギツムマブ、シクツムマブ、ガニツマブ、AVE1642、OSI-906、NVP-AEW541及びNVP-ADW742からなる群から選択される、薬学的組成物が提供される。
【0366】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びPI3K阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。PI3K阻害剤は、例えば、17ベータヒドロキシウォルトマンニンアナログ、2-(4-ピペラジニル)置換4H-1-ベンゾピラン-4-オン誘導体、ACP-319、AEZS-129、AEZS-136、アリリネチド(alirinetide)、アルペリシブ(BYL-719)、AMG-319、AMG-511、アピトリシブ、AQX-MN100、AQX-MN106、ヒ素トリオキシド、AS-252424、AS-605240、ASN-003、Atu-027、AZD-6482、AZD-8154、AZD-8186、AZD-8835、BAG-956、BAY-1082439、BCN-004、BEBT-906、BEBT-908、BGT-226、ビミラリシブ、BMS-754807、BN-107、BR-101801、ブパルリシブ、BVD-723、C-150、CAL-130、CAL-263、CC-115、CHR-4432、CL-27c、CLL-442、CLR-1401、CLR-1502、CLR-457、CMG-002、CNX-1351、塩酸コパンリシブ、CT-365、CT-732、CU-906、クルクミンアナログ、CYH-33、ダクトリシブ、DCB-HDG2-57、デザペリシブ、DS-7423、デュベリシブ、EC-0371、EC-0565、EM-101、EM-12、エントスプレチニブ、エンザスタウリン、エベロリムス、エキセメスタン、EZN-4150、フィメピノスタット、FIM-X13、FP-208、FX-06、ガネテスピブ、GAP-107B8、GDC-0084、GDC-0349、GDC-0941、ゲダトリシブ、GS-548202、GS-599220、GS-9820、GS-9829、GS-9901、GSK-1059615、GSK-2126458、GSK-2292767、GSK-2636771、GSK-2702926A、GSK-418、GVK-01406、HEC-68498、HMPL-689、HNC-VP-L、HS-113、IBL-202、IBL-301、IC87114、イデアリシブ、IIIM-284/14、IIIM-873/15、IM-156、INCB-50465、INK-007、IP55ペプチド、IPI-443、IPI-549、KA-2237、KAR-4141、KBP-7306、KD-06、LAS-191954、LAS-194223、レニオリシブ、LS-008、LY-294002、LY-3023414、MDN-088、ME-344、ME-401、MEN-1611、酪酸メトホルミン、MLC-901、モネパンテル、MTX-211、MTX-216、ナノリポリー(nanolipolee)-007、ネミラリシブ、ネラチニブ、NV-128、NVP-BEZ235、OB-318、オルコロリムス、オレアンドリン、ON-123300、ON-146シリーズ、ONC-201、オパガニブ、OSI-027、OT-043、OXA-01、P-2281、P-6915、パクリタキセル、パヌリシブ、ペプチドH3、ペリホシン、PF-4691502、PF-4989216、フェニトイン、PI-103、ピクチリシブ、PIK-75、ピララリシブ、PKI-179、PKI-402、PQR-311、PQR-312、PQR-316、PQR-340、PQR-370、PQR-401、PQR-514、PQR-530、PQR-5XX、PQR-620、PQR-6XX、メシル酸プキチニブ、PX-867、QLT-0447、ラパマイシンアナログ、ラパマイシン誘導体、ラパタル(Rapatar)、RG-6114、リボシクリブ、リダホロリムス、リゴセルチブナトリウム、リロツムマブ、リスペリドン、ロミデプシン、RP-5002、RP-5090、RP-6503、RV-1729、SAR-260301、SEL-403、セレタリシブ、セラベリシブ、SF-1126、SF-2535、SF-2558HA、シルミタセルチブ、シロリムス、SKLB-JR02、SMI-4a、SN36093、ソレノプシンアナログ、ソノリシブ、SRX-2523、SRX-2558、SRX-2626、SRX-3177、SRX-5000、ST-168、ST-182、スニチニブ、SVPインスリン、SVP-ラパマイシン、TAFA-93、TAM-01、タセリシブ、TAT-N25ペプチド、テムシロリムス、テナリシブ、TG-100-115、TGX-221、トリフロルカス(Triflorcas)、ウブリツキシマブ、ウムブラリシブ、バナジス(Vanadis)、VDC-597、VEL-015、ボクスタリシブ、VS-5584、WJD-008、ウォルトマンニン、ウミデジ(wumideji)、WX-008、WX-037、WX-047、WXFL-10030390、X-339、X-370、X-414、X-480、XL-499、Y-31、YY-20394、YZJ-0673、及びZSTK-474を含む当該技術分野で知られている任意のPI3K阻害剤であり得る。
【0367】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びPI3K阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物であって、PI3K阻害剤は、SF1126、TGX-221、PIK-75、PI-103、SN36093、IC87114、AS-252424、AS-605240、NVP-BEZ235、GDC-0941、ZSTK474、LY294002及びウォルトマンニンからなる群から選択される、薬学的組成物が提供される。
【0368】
いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びAKT阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。AKT阻害剤、例えば、A-443654、アフレセルチブ、AMG-511、ARQ-751、AT-13148、AV-203、カピバセルチブ、CUDC-101、クルクミンアナログ、デグエリン、EM12、SK-2636771、GSK-690693、IMB-YH-8、INCB-047775、イパタセルチブ二塩酸塩、LY-2503029、LY-2780301、ミランセルチブ塩酸塩、MK-2206、MK-8156、ナノ粒子MK-2206、OB-318、オキシステロール、ペリホシン、PQR-401、PX-316、リゴセルチブナトリウム、SR-13668、SZ-685C、TAS-117、トリシリビン、トリフロルカス(Triflorcas)、ウプロセルチブ、VEL-015、VLI-27、XL-418を含む当該技術分野で知られている任意のAKT阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書では、治療的有効量のFTI及びAKT阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物であって、AKT阻害剤は、ペリホシン、SR13668、A-443654、トリシリビン、GSK690693、及びデグエリンからなる群から選択される、薬学的組成物が提供される。
【0369】
本明細書ではまた、治療的有効量のFTI及びカペシタビンならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ;ロナファルニブ(SCH-66336としても知られている);アルグラビン;ペリリルアルコール;CP-609,754、BMS 214662;L778123;L744832;L739749;R208176;AZD3409;またはFTI-277である。本明細書ではまた、治療的有効量のチピファルニブ及びカペシタビン、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。
【0370】
本明細書ではまた、治療的有効量のFTI及びCXCR4アンタゴニストならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブ;ロナファルニブ(SCH-66336としても知られている);アルグラビン;ペリリルアルコール;CP-609,754、BMS 214662;L778123;L744832;L739749;R208176;AZD3409;またはFTI-277である。本明細書ではまた、治療的有効量のチピファルニブ及びCXCR4アンタゴニストの阻害剤、ならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物が提供される。
【0371】
CXCR4アンタゴニストは、例えば、AD-114、ALT-1188、AMD-070、AMD-3100、APH-0812、バリキサフォルチド、BKT-140、BKT-170、BL-8040、ブリキサフォル、CCR5受容体調節剤、セフプロジル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、CTCE-0012、CX-549、DBPR-215、D-Lys3 GHRP-6、F-50067、フィルグラスチム、GBV-4086、GMI-1359、KRH-1120、KRH-3166、KRH-3955、LY-2510924、LY-2624587、MEDI-3185、N15Pペプチド、ND-401、NSC-651016、ONO-7161、PF-06747143、プレリキサホル、POL-5551、PTX-9908、SDF-1抗体、T-134、TIQ-15アナログ、ウロクプルマブ、USL-311、VIR-5103、vMIP、vMIP-II、X4-136、X4P-001、またはX4P-002を含む、当該技術分野で知られている任意のCXCR4アンタゴニストであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書ではまた、治療的有効量のFTI及びCXCR4アンタゴニストならびに薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を有する薬学的組成物であって、CXCR4は、AMD-3100、BL-8040、クロロキン、及びプレリキサホルからなる群から選択される、薬学的組成物が提供される。
【0372】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストと共にのいずれかで、好適な薬学的調製物、例えば、経口投与のための溶液、懸濁液、錠剤、分散性錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤またはエリキシル、または眼もしくは非経口投与のための滅菌溶液もしくは懸濁液、ならびに経皮パッチ調製物及び乾燥粉末吸入剤に製剤化され得る。典型的にはFTIは、当該技術分野でよく知られている技術及び手順を使用して薬学的組成物に製剤化される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Seventh Edition 1999参照)。
【0373】
組成物において、有効濃度のFTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビン、及び薬学的に許容可能な塩と共にのいずれかで、好適な薬学的担体またはビヒクルと混合される。所定の実施形態では、組成物におけるFTIの濃度は、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、投与時に、血液癌及び固形腫瘍を含む、がんの症状及び/または進行の1つ以上を治療、予防、または好転させる量を送達するのに有効である。
【0374】
組成物は、単回投薬量投与のために製剤化され得る。組成物を製剤化するために、FTIの重量部分は、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、治療される病態が緩和または好転するような有効な濃度で選択されたビヒクル中に溶解され、懸濁され、分散されまたはそうでなければ混合される。投与に好適な薬学的担体またはビヒクルは、特定の投与様式に好適となる当業者に知られている任意のそのような担体を含む。
【0375】
また、FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、組成物における唯一の薬学的活性成分として製剤化され得、または他の活性成分と組み合わされ得る。組織標的化リポソーム、例えば、腫瘍標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液も薬学的に許容可能な担体として好適であり得る。これらは、当業者に知られている方法に従って調製され得る。例えば、リポソーム製剤は、当該技術分野で知られているように調製され得る。簡潔には、リポソーム、例えば、多重膜ベシクル(MLV)は、フラスコの内側に卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)を乾燥落下させることによって形成され得る。二価カチオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の溶液が添加され、脂質膜が分散されるまでフラスコが振盪される。得られたベシクルは洗浄されて、カプセル化されていない化合物が除去され、遠心分離によってペレット化され、次いでPBSに再懸濁される。
【0376】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、治療される患者に対する不要な副作用の非存在下で治療的に有用な効果を発揮するのに十分な量で薬学的に許容可能な担体に含まれる。治療的に有効な濃度は、本明細書に記載のin vitro及びin vivoシステムで化合物を試験することによって経験的に決定され、次いでそれからヒトへの投薬量のために外挿され得る。
【0377】
薬学的組成物におけるFTIの濃度は、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、吸収、組織分布、不活性化及び排泄率、物理化学的特徴、投薬スケジュール、及び投与される量ならびに当業者に知られている他の要因に依存する。例えば、送達される量は、血液癌及び固形腫瘍を含むがんの症状の1つ以上を好転させるのに十分である。
【0378】
所定の実施形態では、治療的に有効な投薬量は、約0.1ng/ml~約50~100μg/mlの活性成分の血清濃度を生じさせるべきである。一実施形態では、薬学的組成物は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.001mg~約2000mgの化合物の投薬量を提供する。薬学的投薬単位形態は、投薬単位形態当たり約1mg~約1000mg、所定の実施形態では、約10~約500mgの必須活性成分または必須成分の組み合わせを提供するように調製される。
【0379】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、一度に投与され得、またはいくつかのより少ない用量に分割されて時間間隔を空けて投与され得る。治療の正確な投薬量及び期間は、治療されている疾患に応じ、既知の試験プロトコルを使用して経験的に、またはin vivoもしくはin vitro試験データからの外挿によって決定され得ることが理解される。濃度及び投薬量の値はまた、緩和されるべき症状の重症度に応じて変化し得ることが留意されるべきである。さらに、任意の特定の対象について、個々の必要性及び組成物を投与するまたは投与を監督する者の専門的判断に応じて特定の投薬レジメンが経時的に調整されるべきであること、及び本明細書に示される濃度範囲は、例示にすぎず、特許請求された組成物の範囲または実施を制限することは意図されていないことを理解されたい。
【0380】
よって、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の1つ以上の有効濃度または量は、全身、外用または局所投与に好適な薬学的担体またはビヒクルと混合されて、薬学的組成物が形成される。化合物は、1つ以上の症状の好転のため、または治療、進行の遅延、または予防のために有効な量で含まれる。組成物における活性化合物の濃度は、吸収、組織分布、不活性化、活性化合物の排泄速度、投薬スケジュール、投与される量、特定の製剤ならびに当業者に知られている他の要因に依存する。
【0381】
組成物は、経口、非経口、直腸、外用及び局所を含むがこれらに限定されない好適な経路によって投与されることが意図される。経口投与の場合、カプセル及び錠剤が製剤化され得る。組成物は、液体、半液体または固体形態であり、各投与経路に好適な手法で製剤化される。
【0382】
非経口、皮内、皮下、または外用適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミドまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール及びメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸及び重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩;ならびに張力の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースのいずれかを含み得る。非経口調製物は、ガラス、プラスチックまたは他の好適な物質から作製されたアンプル、ペン、使い捨てシリンジまたは単回もしくは複数用量バイアルに封入され得る。
【0383】
FTIが、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで不十分な溶解性を示す場合、化合物を可溶化するための方法が使用され得る。そのような方法は当業者に知られており、共溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)の使用、界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)の使用、または重炭酸ナトリウム水溶液への溶解を含むがこれらに限定されない。
【0384】
化合物(複数可)を混合または添加すると、得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得る。得られた混合物の形態は、意図された投与様式及び選択された担体またはビヒクルにおける化合物の溶解性を含む、多数の要因に依存する。有効濃度は、治療される疾患、障害または病態の症状を好転させるのに十分であり、経験的に決定され得る。
【0385】
薬学的組成物は、好適な量の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含有する単位投薬形態、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液または懸濁液、及び経口溶液または懸濁液、及び油水エマルションでヒト及び動物に投与するために提供される。薬学的に治療的に活性な化合物及びその塩は、単位投薬形態または複数の投薬形態で製剤化及び投与される。単位用量形態は、本明細書で使用される場合、ヒト及び動物対象に好適であり、かつ当該技術分野で知られているように包装された物理的に個別の単位を指す。各単位用量は、必要とされる薬学的担体、ビヒクルまたは希釈剤に関連して、所望の治療効果を生成するのに十分な既定の量の治療的に活性な化合物を含有する。単位用量形態の例は、アンプル及びシリンジならびに個々に包装された錠剤またはカプセルを含む。単位用量形態は、その分数または倍数で投与され得る。複数の用量形態は、分離した単位用量形態で投与される単一容器に包装された複数の同一の単位投薬形態である。複数の用量形態の例は、バイアル、錠剤もしくはカプセルのボトルまたはパイントもしくはガロンのボトルを含む。よって、複数の用量形態は、包装して分離されていない複数の単位用量である。
【0386】
持続放出調製物も調製され得る。持続放出調製物の好適な例は、マトリックスが成型品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である、本明細書で提供される化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透膜性マトリックスを含む。持続放出マトリックスの例は、イオントフォレシスパッチ、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及びロイプロリドアセテートから構成される注射可能なマイクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーが100日を超えて分子の放出を可能にするのに対し、所定のヒドロゲルは、より短い期間でタンパク質を放出する。封入された化合物が体内に長期間留まる場合、それらは、37℃で水分に曝露される結果、変性または凝集し得、生物学的活性の喪失及びそれらの構造の可能性のある変化をもたらす。安定化のための合理的な戦略は、関与する作用メカニズムに応じて考案され得る。例えば、凝集メカニズムが、チオジスルフィド交換を介して分子内S-S結合形成であることが発見された場合、安定化は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、水分含有量を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成され得る。
【0387】
0.005%~100%の範囲内の活性成分を含有し、残りが非毒性担体から構成される投薬形態または組成物が調製され得る。経口投与の場合、薬学的に許容可能な非毒性組成物は、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、滑石、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムまたはサッカリンナトリウムなどの通常採用される賦形剤のいずれかの組み込みによって形成される。そのような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、粉末及び持続放出製剤、例えば、限定されないが、埋込物及びマイクロカプセル化送達システム、及び生分解性生体適合性ポリマー、例えば、コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸及び他のものを含む。これらの組成物の調製のための方法は当業者に知られている。企図される組成物は、約0.001%~100%、所定の実施形態では、約0.1~85%または約75~95%の活性成分を含有し得る。
【0388】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、または薬学的に許容可能な塩は、身体からの急速な排泄に対して化合物を保護する担体、例えば、時間放出製剤またはコーティングと共に調製され得る。
【0389】
組成物は、特性の所望の組み合わせを得るために他の活性化合物を含み得る。本明細書で提供される化合物、または本明細書に記載されるその薬学的に許容可能な塩はまた、酸化ストレスに関連する疾患などの本明細書で上記で言及されている疾患または医学的病態の1つ以上の治療において価値があることが一般的技術分野で知られている別の薬理学的薬剤と一緒に投与され得る。
【0390】
本明細書で提供されるラクトース非含有組成物は、当該技術分野でよく知られており、例えば、米国薬局方(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に列挙されている賦形剤を含有し得る。一般に、ラクトース非含有組成物は、活性成分、バインダー/フィラー、及び滑沢剤を薬学的に適合性で薬学的に許容可能な量で含有する。例示的なラクトース非含有投薬形態は、活性成分、微結晶性セルロース、プレゼラチン化デンプン及びステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0391】
本明細書で提供される化合物を含有する無水薬学的組成物及び投薬形態がさらに包含される。例えば、水(例えば、5%)の添加は、保存期間または製剤の経時的な安定性などの特徴を決定するために長期保存をシミュレートする手段として薬学的技術で広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensen,Drug Stability:Principles & Practice,2d.Ed.,Marcel Dekker,NY,NY,1995,pp.379-80を参照されたい。実際に、水及び熱は、いくつかの化合物の分解を促進する。よって、水分及び/または湿度は一般的に、製造、取り扱い、包装、保存、輸送及び製剤の使用中に直面するので、製剤に対する水の影響は非常に重要であり得る。
【0392】
本明細書で提供される無水薬学的組成物及び投薬形態は、無水または低水分を含有する成分及び低水分または低湿度条件を使用して調製され得る。ラクトース及び第1級または第2級アミンを含む少なくとも1つの活性成分を含む薬学的組成物及び投薬形態は、製造、包装、及び/または保存中の水分及び/または湿度との実質的接触が予期される場合に無水である。
【0393】
無水薬学的組成物は、その無水特質が維持されるように調製及び/または保存されるべきである。したがって、無水組成物は、それらが好適な製剤キット(formulary kit)に含められ得るように水への曝露を防止することが知られている物質を使用して包装される。好適な包装の例は、密閉密封された箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック及びストリップパックを含むがこれらに限定されない。
【0394】
経口薬学的投薬形態は、固体、ゲルまたは液体のいずれかである。固体投薬形態は、錠剤、カプセル、顆粒、及びバルク粉末である。経口錠剤のタイプは、腸溶性コーティング、糖コーティング、またはフィルムコーティングされていてもよい圧縮されたチュアブルロゼンジ及び錠剤を含む。カプセルは、硬または軟ゼラチンカプセルであり得るのに対し、顆粒及び粉末は、当業者に知られている他の成分の組み合わせと共に非発泡性または発泡性形態で提供され得る。
【0395】
所定の実施形態では、製剤は、固体投薬形態、例えば、カプセルまたは錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または同様の特質の化合物:バインダー;希釈剤;崩壊剤;滑沢剤;流動促進剤;甘味剤;及び香味剤のいずれかを含有し得る。
【0396】
バインダーの例は、微結晶性セルロース、トラガカントガム、グルコース溶液、アカシア粘液、ゼラチン溶液、スクロース及びデンプンペーストを含む。潤滑剤は、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、ヒカゲノカズラ及びステアリン酸を含む。希釈剤は、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトール及びリン酸二カルシウムを含む。流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素を含むがこれらに限定されない。崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、寒天及びカルボキシメチルセルロースを含む。着色剤は、例えば、承認保証された水溶性FD及びC色素、それらの混合物;ならびにアルミナ水和物に懸濁された水不溶性FD及びC色素のいずれかを含む。甘味剤は、スクロース、ラクトース、マンニトール及び人工甘味剤、例えば、サッカリン、及び多数の噴霧乾燥させた香料を含む。香味剤は、果物などの植物から抽出された天然香料及び心地よい感覚を生み出す化合物、例えば、限定されないが、ペパーミント及びサリチル酸メチルの合成ブレンドを含む。湿潤剤は、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(polyoxyethylene laural ether)を含む。腸溶性コーティングは、脂肪酸、油脂、ワックス、シェラック、アンモニウム化シェラック及びセルロースアセテートフタレートを含む。フィルムコーティングは、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール4000及びセルロースアセテートフタレートを含む。
【0397】
投薬単位形態がカプセルである場合、それは、上記タイプの物質に加えて、液体担体、例えば、脂肪油を含有し得る。また、投薬単位形態は、投薬単位の物理的形態、例えば、糖または他の腸溶性薬剤のコーティングを改変する様々な他の物質を含有し得る。化合物はまた、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、スプリンクル、チューインガムなどの成分として投与され得る。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロースならびに所定の防腐剤、色素及び着色剤及び香料を含有し得る。
【0398】
錠剤に含まれる薬学的に許容可能な担体は、バインダー、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、及び湿潤剤である。腸溶性コーティング錠剤は、腸溶性コーティングのため、胃酸の作用に抵抗性であり、中性またはアルカリ性の腸内で溶解または崩壊する。糖コーティング錠剤は、薬学的に許容可能な物質の異なる層が施されている圧縮錠剤である。フィルムコーティング錠剤は、ポリマーまたは他の好適なコーティングでコーティングされた圧縮錠剤である。複数の圧縮錠剤は、前述した薬学的に許容可能な物質を利用して複数の圧縮サイクルによって作製された圧縮錠剤である。上記投薬形態では着色剤も使用され得る。香味剤及び甘味剤は、圧縮錠剤、糖コーティング錠剤、複数の圧縮錠剤及びチュアブル錠剤で使用される。香味剤及び甘味剤は、チュアブル錠剤及びロゼンジの形成において特に有用である。
【0399】
液体経口投薬形態は、非発泡性顆粒から再構成された水溶液、エマルション、懸濁液、溶液及び/または懸濁液ならびに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物を含む。水溶液は、例えば、エリキシル及びシロップを含む。エマルションは、水中油型又油中水型のいずれかである。
【0400】
エリキシルは、透明で甘味のある含水アルコール性調製物である。エリキシルに使用される薬学的に許容可能な担体は溶媒を含む。シロップは、糖、例えば、スクロースの濃縮された水溶液であり、防腐剤を含有し得る。エマルションは、ある液体が別の液体全体を通して小さな球の形態で分散された二相系である。エマルションに使用される薬学的に許容可能な担体は、非水性液体、乳化剤及び防腐剤である。懸濁液は、薬学的に許容可能な懸濁剤及び防腐剤を使用する。液体経口投薬形態に再構成される、非発泡性顆粒に使用される薬学的に許容可能な物質は、希釈剤、甘味剤及び湿潤剤を含む。液体経口投薬形態に再構成される、発泡性顆粒に使用される薬学的に許容可能な物質は、有機酸及び二酸化炭素源を含む。着色剤及び香味剤は、上記の投薬形態のすべてに使用される。
【0401】
溶媒は、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール及びシロップを含む。防腐剤の例は、グリセリン、メチル及びプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム及びアルコールを含む。エマルションに利用される非水性液体の例は、鉱油及び綿実油を含む。乳化剤の例は、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイト、及び界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含む。懸濁剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ペクチン、トラガカント、ビーガム及びアカシアを含む。希釈剤は、ラクトース及びスクロースを含む。甘味剤は、スクロース、シロップ、グリセリン及び人工甘味剤、例えば、サッカリンを含む。湿潤剤は、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール及びポリオキシエチレンラウリルエーテルを含む。有機添加剤は、クエン酸及び酒石酸を含む。二酸化炭素源は、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む。着色剤は、承認保証された水溶性FD及びC染料、ならびにそれらの混合物のいずれかを含む。香味剤は、果物などの植物から抽出された天然香料、及び心地よい味覚を生み出す化合物の合成ブレンドを含む。
【0402】
固体投薬形態の場合、例えば、炭酸プロピレン、植物油またはトリグリセリド中の溶液または懸濁液がゼラチンカプセルに封入される。そのような溶液、ならびにその調製及び封入は、米国特許第4,328,245号;4,409,239号;及び4,410,545号に開示されている。液体投薬形態の場合、例えば、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液が、投与のために容易に測定される十分な量の薬学的に許容可能な液体担体、例えば、水で希釈され得る。
【0403】
代替的には、液体または半固体経口製剤は、活性化合物または塩を植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)及び他のそのような担体に溶解または分散させ、これらの溶液または懸濁液を硬または軟ゼラチンカプセルシェルに封入することによって調製され得る。他の有用な製剤は、本明細書で提供される化合物を含有するもの、1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(350、550及び750は、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を指す)を含むがこれらに限定されないジアルキル化モノまたはポリアルキレングリコール、及び1つ以上の抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、プロピルガレート、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸及びそのエステル、ならびにジチオカルバメートを含むがこれらに限定されない。
【0404】
他の製剤は、薬学的に許容可能なアセタールを含む水性アルコール性溶液を含むがこれらに限定されない。これらの製剤に使用されるアルコールは、プロピレングリコール及びエタノールを含むがこれらに限定されない1つ以上のヒドロキシル基を有する任意の薬学的に許容可能な水混和性溶媒である。アセタールは、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールを含むがこれらに限定されない。
【0405】
すべての実施形態において、錠剤及びカプセル製剤は、活性成分の溶解を改変または持続させるために当業者に知られているようにコーティングされ得る。よって、例えば、それらは、従来の腸溶的に消化可能なコーティング、例えば、サリチル酸フェニル、ワックス及びセルロースアセテートフタレートでコーティングされ得る。
【0406】
皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射によって通常は特性化される非経口投与も本明細書で提供される。注射剤は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁液に好適な固体形態として、またはエマルションとして通常の形態で調製され得る。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。また、所望の場合、投与される薬学的組成物はまた、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解性向上剤、及び他のそのような薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート及びシクロデキストリンを含有し得る。一定のレベルの投薬量が維持されるように遅延放出または持続放出システムの埋め込みも本明細書で企図される。簡潔には、本明細書で提供される化合物は、体液に不溶性である外側ポリマー膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/ビニルアセテート/ビニルアルコールターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれた固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリル及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルに分散され得る。化合物は、放出速度制御工程において外側ポリマー膜を介して拡散する。そのような非経口組成物に含有される活性化合物の割合は、その特定の特質、ならびに化合物の活性及び対象の必要性に高度に依存する。
【0407】
組成物の非経口投与は、静脈内、皮下及び筋肉内投与を含む。非経口投与のための調製物は、注射の準備がされた滅菌溶液、滅菌乾燥可溶性生成物、例えば、使用直前に溶媒と組み合わされる準備がされた皮下錠剤を含む凍結乾燥粉末、注射の準備がされた滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わされる準備がされた滅菌乾燥不溶性生成物及び滅菌エマルションを含む。溶液は、水性または非水性のいずれかであり得る。
【0408】
静脈内投与される場合、好適な担体は、生理学的生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘及び可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールならびにそれらの混合物を含有する溶液を含む。
【0409】
非経口調製物において使用される薬学的に許容可能な担体は、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝液、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁及び分散剤、乳化剤、封鎖またはキレート剤ならびに他の薬学的に許容可能な物質を含む。
【0410】
水性ビヒクルの例は、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張性デキストロース注射、滅菌水注射、デキストロース及び乳酸リンゲル注射を含む。非水性非経口ビヒクルは、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油及びピーナッツ油を含む。静菌性または静真菌性濃度の抗菌剤は、フェノールまたはクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルpヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含む複数用量容器に包装される非経口調製物に添加されなければならない。等張剤は、塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。緩衝液は、リン酸塩及びクエン酸塩を含む。抗酸化剤は、重硫酸ナトリウムを含む。局所麻酔剤は、プロカイン塩酸塩を含む。懸濁及び分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤は、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)を含む。金属イオンの封鎖またはキレート剤は、EDTAを含む。薬学的担体はまた、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールならびにpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含む。
【0411】
FTIの濃度は、注射が所望の薬理学的効果を生成するための有効量を提供するように調整される。正確な用量は、当該技術分野で知られているように、患者または動物の年齢、体重及び状態に依存する。単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアルまたは針を有するシリンジに包装される。非経口投与のためのすべての調製物は、当該技術分野で知られ、実践されているように無菌でなければならない。
【0412】
例示的には、FTIを含有する滅菌水溶液の静脈内または動脈内注入は、有効な投与様式である。別の実施形態は、所望の薬理学的効果を生成するために必要に応じて注射される活性物質を含有する無菌の水性または油性の溶液または懸濁液である。
【0413】
注射剤は、局所及び全身投与のために設計される。典型的には治療的に有効な投薬量は、治療される組織(複数可)に対して少なくとも約0.1%w/w~最大で約90%w/wまたはそれ以上の濃度、例えば、1%w/wを超える活性化合物を含有するように製剤化される。活性成分は、一度に投与され得、またはいくつかのより少ない用量に分割されて時間間隔を空けて投与され得る。治療の正確な投薬量及び期間は、治療されている組織に応じ、既知の試験プロトコルを使用して経験的に、またはin vivoもしくはin vitro試験データからの外挿によって決定され得ることが理解される。濃度及び投薬量の値はまた、治療される個体の年齢に応じて変化し得ることが留意されるべきである。さらに、任意の特定の対象について、個々の必要性及び製剤を投与するまたは投与を監督する者の専門的判断に応じて特定の投薬レジメンが経時的に調整されるべきであること、及び本明細書に示される濃度範囲は、例示にすぎず、特許請求された製剤の範囲または実施を制限することは意図されていないことを理解されたい。
【0414】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、微粉化または他の好適な形態で懸濁され得、またはより可溶性の活性生成物を生成するためにもしくはプロドラッグを生成するために誘導体化され得る。得られた混合物の形態は、意図された投与様式及び選択された担体またはビヒクルにおける化合物の溶解性を含む、多数の要因に依存する。有効濃度は、病態の症状を好転させるのに十分であり、経験的に決定され得る。
【0415】
溶液、エマルション及び他の混合物としての投与のために再構成され得る凍結乾燥粉末も本明細書で対象となる。それらはまた、固体またはゲルとして再構成及び製剤化され得る。
【0416】
滅菌凍結乾燥粉末は、FTIを単独でまたは本明細書で提供される第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、またはその薬学的に許容可能な塩を好適な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、粉末または粉末から調製された再構成された溶液の安定性または他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤は、デキストロース、ソルビタール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたは他の好適な薬剤を含むがこれらに限定されない。溶媒はまた、緩衝液、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはカリウムまたは当業者に知られている他のそのような緩衝液を、一実施形態では、およそ中性のpHで含有し得る、その後の溶液の滅菌濾過と、それに続く当業者に知られている標準的な条件下での凍結乾燥は、所望の製剤を提供する。一般に、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、化合物の単回投薬量(10~1000mgまたは100~500mgを含むがこれらに限定されない)または複数投薬量を含有する。凍結乾燥された粉末は、適切な条件、例えば、約4℃~室温で保存され得る。
【0417】
この凍結乾燥された粉末の注射用水での再構成は、非経口投与において使用するための製剤を提供する。再構成のために、滅菌水または他の好適な担体1mL当たり1~50mg、約5~35mg、または約9~30mgの凍結乾燥された粉末が添加される。正確な量は、選択された化合物に依存する。そのような量は、経験的に決定され得る。
【0418】
外用混合物は、局所及び全身投与のために記載されたように調製される。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得、クリーム、ゲル、軟膏、エマルション、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、泡、エアロゾル、潅注、スプレー、座剤、絆創膏、皮膚パッチまたは外用投与に好適な任意の他の製剤として製剤化され得る。
【0419】
FTIまたはFTIを有する薬学的組成物は、例えば、吸入(例えば、炎症性疾患、特に喘息の治療に有用なステロイドの送達のためのエアロゾルを記載している米国特許第4,044,126号、4,414,209号、及び4,364,923号参照)による外用適用のためのエアロゾルとして製剤化され得る。呼吸器への投与のためのこれらの製剤は、ネブライザーのためのエアロゾルもしくは溶液の形態、または送気のための微粉末として、単独でまたはラクトースなどの不活性担体と組み合わせて使用され得る。そのような場合、製剤の粒子は、50ミクロン未満または10ミクロン未満の直径を有する。
【0420】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、またはその薬学的組成物は、局所または外用適用のため、例えば、皮膚及び粘膜への、例えば、眼における外用適用のため、ゲル、クリーム、及びローションの形態で、及び眼への適用のためまたは嚢内もしくは髄腔内適用のために製剤化され得る。外用投与は、経皮送達のため及び眼または粘膜への投与のため、または吸入療法のために企図される。活性化合物の単独のまたは他の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせた鼻溶液も投与され得る。これらの溶液、特に眼の使用のために意図されるものは、適切な塩を有するpH約5~7の0.01%~10%の等張液として製剤化され得る。
【0421】
他の投与経路、例えば、経皮パッチ、及び直腸投与も本明細書で企図される。例えば、直腸投与のための薬学的投薬形態は、全身効果のための直腸座剤、カプセル及び錠剤である。本明細書で使用される場合、直腸座剤は、体温で溶融または軟化し、1つ以上の薬理学的または治療的に活性な成分を放出する、直腸に挿入するための固形物を意味する。直腸坐剤で利用される薬学的に許容可能な物質は、基材またはビヒクル及び融点を上昇させるための薬剤である。基材の例は、ココアバター(カカオ脂)、グリセリンゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)及び脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリドの適切な混合物を含む。様々な基材の組み合わせが使用され得る。座剤の融点を上昇させるための薬剤は、鯨ろう及びワックスを含む。直腸座剤は、圧縮法によってまたは成形によって調製され得る。直腸坐剤の例示的な重量は、約2~3グラムである。直腸投与のための錠剤及びカプセルは、同じ薬学的に許容可能な物質を使用して及び経口投与のための製剤と同じ方法によって製造される。
【0422】
FTIは、単独でまたは本明細書で提供される第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤もしくはCXCR4アンタゴニストもしくはカペシタビン、またはそれらの薬学的組成物と共にのいずれかで、制御放出手段によってまたは当業者によく知られている送達装置によって投与され得る。例は、米国特許第:3,845,770号;3,916,899号;3,536,809号;3,598,123号;及び4,008,719号、5,674,533号、5,059,595号、5,591,767号、5,120,548号、5,073,543号、5,639,476号、5,354,556号、5,639,480号、5,733,566号、5,739,108号、5,891,474号、5,922,356号、5,972,891号、5,980,945号、5,993,855号、6,045,830号、6,087,324号、6,113,943号、6,197,350号、6,248,363号、6,264,970号、6,267,981号、6,376,461号、6,419,961号、6,589,548号、6,613,358号、6,699,500号及び6,740,634号に記載されているものを含むがこれらに限定されず、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような投薬形態は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧性システム、多層コーティング、マイクロ粒子、リポソーム、マイクロスフィア、またはそれらの組み合わせを使用して遅延または制御放出を提供して、様々な割合で所望の放出プロファイルを提供するために使用され得る。本明細書に記載のものを含む当業者に知られている好適な制御放出製剤は、本明細書で提供される活性成分と共に使用するために容易に選択され得る。
【0423】
すべての制御放出薬学的製品は、それらの非制御対応物によって達成されるものを超えて薬物療法を改善するという一般的目標を有する。一実施形態では、医学的治療における最適に設計された制御放出調製物の使用は、最小限の時間で病態を治癒または制御するために採用される最小限の薬物物質を特徴とする。所定の実施形態では、制御放出製剤の利点は、薬物の活性の延長、投薬頻度の減少、及び患者コンプライアンスの向上を含む。また、制御放出製剤が、作用開始の時間または薬物の血液レベルなどの他の特徴に影響を及ぼすために使用され得、よって、副(例えば、有害)作用の発生に影響を及ぼし得る。
【0424】
ほとんどの制御放出製剤は、所望の治療効果を速やかにもたらす量の薬物(活性成分)を最初に放出し、このレベルの治療効果を長期間にわたって維持するために、他の量の薬物を徐々に継続的に放出するように設計される。体内でこの一定レベルの薬物を維持するためには、薬物は、代謝されて身体から排泄される薬物の量に置き変わる速度で投薬形態から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、pH、温度、酵素、水、または他の生理的状態または化合物を含むがこれらに限定されない様々な条件によって刺激され得る。
【0425】
所定の実施形態では、FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、静脈内注入、埋込型浸透圧性ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与され得る。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980);Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)参照)。別の実施形態では、ポリマー物質が使用され得る。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的の近くに配置され得、すなわち、よって、全身性用量の一部のみしか必要としない(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115-138(1984)参照)。
【0426】
いくつかの実施形態では、制御放出デバイスは、不適切な免疫活性化の部位または腫瘍の近くで対象に導入される。他の制御放出システムは、Langerによるレビューにおいて論述されている(Science 249:1527-1533(1990)。Fは、体液に不溶性である外側ポリマー膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/ビニルアセテート/ビニルアルコールターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれた固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリル及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルに分散され得る。次いで活性成分は、放出速度制御工程において外側ポリマー膜を介して拡散する。そのような非経口組成物に含有される活性成分の割合は、その特定の特質、ならびに対象の必要性に高度に依存する。
【0427】
FTIは、単独でまたは第2の活性剤、例えば、IGF1R経路の阻害剤またはCXCR4アンタゴニストまたはカペシタビンと共にのいずれかで、またはその薬学的組成物は、包装物質、血液癌及び固形腫瘍を含むがんの1つ以上の症状または進行を治療、予防または好転するために使用される本明細書で提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩、ならびに化合物またはその薬学的に許容可能な塩が、血液癌及び固形腫瘍を含むがんの1つ以上の症状または進行を治療、予防または好転するために使用されることを示す標識を含有する製造品として包装され得る。
【0428】
本明細書で提供される製造品は、包装物質を含有する。薬学的生成物の包装において使用するための包装物質は、当業者によく知られている。例えば、米国特許第5,323,907号、5,052,558号及び5,033,252号を参照されたい。薬学的包装物質の例は、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入具、ポンプ、袋、バイアル、容器、シリンジ、ペン、ボトル、及び選択された製剤ならびに意図される投与様式及び治療に好適な任意の包装物質を含むがこれらに限定されない。本明細書で提供される化合物及び組成物の製剤の広いアレイが企図される。
【0429】
4.FTIの投薬量
いくつかの実施形態では、治療的有効量のFTIを有する薬学的組成物は、経口または非経口で投与される。
【0430】
いくつかの実施形態では、FTIは、0.05から最大で1800mg/kgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、0.05から最大で1500mg/kgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、0.05から最大で500mg/kgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日0.05mg/kg、1日0.1mg/kg、1日0.2mg/kg、1日0.5mg/kg、1日1mg/kg、1日2mg/kg、1日5mg/kg、1日10mg/kg、1日20mg/kg、1日50mg/kg、1日100mg/kg、1日200mg/kg、1日300mg/kg、1日400mg/kg、1日500mg/kg、1日600mg/kg、1日700mg/kg、1日800mg/kg、1日900mg/kg、1日1000mg/kg、1日1100mg/kg、1日1200mg/kg、1日1300mg/kg、1日1400mg/kg、または1日1500mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日1mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日2mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日10mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日20mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日50mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日100mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日200mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日500mg/kgで投与される。FTIは、単回用量として投与され得るか、または複数の用量に再分割され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0431】
いくつかの実施形態では、FTIは、1日50~2400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日100~1800mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日100~1200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、1200mg、または2400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日200mgの用量で投与される。FTIは、1日300mgの用量で投与され得る。FTIは、1日400mgの用量で投与され得る。FTIは、1日500mgの用量で投与され得る。FTIは、1日600mgの用量で投与され得る。FTIは、1日700mgの用量で投与され得る。FTIは、1日800mgの用量で投与され得る。FTIは、1日900mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1000mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1100mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1200mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1300mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1400mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1500mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1600mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1700mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1800mgの用量で投与され得る。FTIは、1日1900mgの用量で投与され得る。FTIは、1日2000mgの用量で投与され得る。FTIは、1日2100mgの用量で投与され得る。FTIは、1日2200mgの用量で投与され得る。FTIは、1日2300mgの用量で投与され得る。FTIは、1日2400mgの用量で投与され得る。FTIは、単回用量として投与され得るか、または複数の用量に再分割され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0432】
いくつかの実施形態では、FTIは、100、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、または1200mgの用量で1日2回(b.i.d)投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、100~1400mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、100~1200mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、300~1200mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、300~900mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、300mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、400mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、500mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、600mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、700mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、800mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、900mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1000mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1100mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、1200mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物及び方法において使用するためのFTIは、チピファルニブである。
【0433】
当業者が理解するであろうが、投薬量は、採用される投薬形態、患者の状態及び感度、投与の経路、ならびに他の要因に応じて変化する。正確な投薬量は、治療を必要とする対象に関連する要因の観点から、実施者によって決定される。投薬量及び投与は、十分なレベルの活性成分を提供するためにまたは所望の効果を維持するために調整される。考慮に入れられ得る要因は、疾患状態の重症度、対象の全般的健康状態、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物併用(複数可)、反応感度、ならびに療法に対する忍容性/反応を含む。治療サイクルの間、1日用量は変化し得るであろう。いくつかの実施形態では、開始投薬量は、治療サイクル内で漸減され得る。いくつかの実施形態では、開始投薬量は、治療サイクル内で漸増され得る。最終投薬量は、用量制限毒性の発生及び他の要因に依存し得る。いくつかの実施形態では、FTIは、1日300mgの開始用量で投与され、1日400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日400mgの開始用量で投与され、1日500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日500mgの開始用量で投与され、1日600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日600mgの開始用量で投与され、1日700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日700mgの開始用量で投与され、1日800mg、900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日800mgの開始用量で投与され、1日900mg、1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日900mgの開始用量で投与され、1日1000mg、1100mg、または1200mgの最大用量に増大される。用量増大は、一度にまたは段階的に行われ得る。例えば、1日600mgでの開始用量は、4日にわたって1日当たり100mg増加させることによって、または2日にわたって1日当たり200mg増加させることによって、または一度に400mg増加させることによって1日1000mgの最終用量まで増大され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0434】
いくつかの実施形態では、FTIは、比較的高い開始用量で投与され、患者の反応及び他の要因に応じてより低い用量へ漸減される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日1200mgの開始用量で投与され、1日1100mg、1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に減少される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日1100mgの開始用量で投与され、1日1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に減少される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日1000mgの開始用量で投与され、1日900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に減少される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日900mgの開始用量で投与され、1日800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に減少される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日800mgの開始用量で投与され、1日700mg、600mg、500mg、400mg、または300mgの最終用量に減少される。いくつかの実施形態では、FTIは、1日600mgの開始用量で投与され、1日500mg、400mg、または300mgの最終用量に減少される。用量減少は、一度にまたは段階的に行われ得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。例えば、1日900mgでの開始用量は、3日にわたって1日当たり100mg減少させることによってまたは一度に300mg減少させることによって1日600mgの最終用量に減少され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0435】
治療サイクルは、異なる長さを有し得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月であり得る。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、3週である。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、4週である。治療サイクルは、間欠的スケジュールを有し得る。いくつかの実施形態では、2週の治療サイクルは、5日の投薬と、それに続く9日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、2週の治療サイクルは、6日の投薬と、それに続く8日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、2週の治療サイクルは、7日の投薬と、それに続く7日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、2週の治療サイクルは、8日の投薬と、それに続く6日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、2週の治療サイクルは、9日の投薬と、それに続く5日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、3週の治療サイクルは、7日の投薬と、それに続く14日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、3週の治療サイクルは、14日の投薬と、それに続く7日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、7日の投薬と、それに続く21日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、14日の投薬と、それに続く14日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、21日の投薬と、それに続く7日の休薬を有し得る。いくつかの実施形態では、4週の治療サイクルは、1~7及び15~21日目での投薬、ならびに8~14及び22~28日目での休薬を有し得る。
【0436】
いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも1回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、または少なくとも12回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも2回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも3回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも6回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも9回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、少なくとも12回の治療サイクルの間、投与され得る。いくつかの実施形態では、FTIは、チピファルニブである。
【0437】
いくつかの実施形態では、FTIは、最大で2週間、投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大で3週間、最大で1ヶ月間、最大で2ヶ月間、最大で3ヶ月間、最大で4ヶ月間、最大で5ヶ月間、最大で6ヶ月間、最大で7ヶ月間、最大で8ヶ月間、最大で9ヶ月間、最大で10ヶ月間、最大で11ヶ月間、または最大で12ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大で1ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大で3ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大で6ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大で9ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、最大で12ヶ月間、投与される。いくつかの実施形態では、FTI治療療法は、反応の開始を過ぎて少なくとも6ヶ月間維持され得る。
【0438】
いくつかの実施形態では、FTIは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの1週間(1~7日目)、毎日投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの2週間(1~14日目)、毎日投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの1週間(1~7日目)、300mgの用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、3週のサイクルの繰り返しにおいて3週のうちの2週間(1~14日目)、300mgの用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、4週のサイクルの繰り返しにおいて4週のうちの3週間、毎日投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、4週のサイクルの繰り返しにおいて隔週で(1週投与、1週休薬)毎日投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、4週のサイクルの繰り返しにおいて4週のうちの3週間、300mgの用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、4週のサイクルの繰り返しにおいて4週のうちの3週間、600mgの用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、4週のサイクルの繰り返しにおいて隔週で(1週投与、1週休薬)900mgの用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、隔週で(28日のサイクルの繰り返しの1~7及び15~21日目)1200mgの用量で1日2回経口で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、28日のサイクルの繰り返しのうち1~5及び15~19日目に1200mgの用量で1日2回経口で投与される。
【0439】
いくつかの実施形態では、300mgの1日2回のチピファルニブの隔週のレジメンが使用採用され得る。そのレジメン下では、患者は、28日の治療サイクルの1~7及び15~21日目に300mgの経口の1日2回の開始用量を摂取する。管理不能の毒性の非存在下では、対象は、最大で12ヶ月間チピファルニブ治療を受け続け得る。対象が治療に対して良好に忍容している場合、用量はまた、1日2回の1200mgまで増加され得る。治療に関連する治療で出現した毒性を制御するための段階的な300mgの用量減少も含まれ得る。
【0440】
いくつかの実施形態では、600mgの1日2回のチピファルニブの隔週のレジメンが使用採用され得る。そのレジメン下では、患者は、28日の治療サイクルの1~7及び15~21日目に600mgの経口の1日2回の開始用量を摂取する。管理不能の毒性の非存在下では、対象は、最大で12ヶ月間チピファルニブ治療を受け続け得る。対象が治療に対して良好に忍容している場合、用量はまた、1日2回の1200mgまで増加され得る。治療に関連する治療で出現した毒性を制御するための段階的な300mgの用量減少も含まれ得る。
【0441】
いくつかの実施形態では、900mgの1日2回のチピファルニブの隔週のレジメンが使用採用され得る。そのレジメン下では、患者は、28日の治療サイクルの1~7及び15~21日目に900mgの経口の1日2回の開始用量を摂取する。管理不能の毒性の非存在下では、対象は、最大で12ヶ月間チピファルニブ治療を受け続け得る。対象が治療に対して良好に忍容している場合、用量はまた、1日2回の1200mgまで増加され得る。治療に関連する治療で出現した毒性を制御するための段階的な300mgの用量減少も含まれ得る。
【0442】
いくつかの他の実施形態では、チピファルニブは、28日の治療サイクルにおいて21日間で300mgの用量で1日2回毎日経口で与えられ、続いて1週間休薬する(21日のスケジュール;Cheng DT,et al.,J Mol Diagn.(2015)17(3):251-64)。いくつかの実施形態では、1日2回の25~1300mgの範囲の5日の投薬と、それに続く9日の休薬が採用される(5日のスケジュール;Zujewski J.,J Clin Oncol.,(2000)Feb;18(4):927-41)。いくつかの実施形態では、1日2回の7日の投薬と、それに続く7日の休薬が採用される(7日のスケジュール;Lara PN Jr.,Anticancer Drugs.,(2005)16(3):317-21;Kirschbaum MH,Leukemia.,(2011)Oct;25(10):1543-7)。7日のスケジュールにおいて、患者は、1日2回の300mgの開始用量と、1日2回の1800mgの最大計画用量までの300mgの用量増大を受け得る。7日のスケジュールの研究において、患者はまた、28日のサイクルの1~7日目及び15~21日目で最大で1日2回の1600mgの用量でチピファルニブを1日2回摂取し得る。
【0443】
いくつかの実施形態では、チピファルニブは、21日のサイクルの1~14日目に300mgの用量で1日2回投与される。いくつかの実施形態では、チピファルニブは、21日のサイクルの1~14日目に300mgの用量で1日2回投与され、カペシタビンは、21日のサイクルの1~14日目に1,000mg/m2の用量で1日2回投与される。
【0444】
先行研究では、FTIは、1日2回の投薬スケジュールとして投与された場合、哺乳動物腫瘍の成長を阻害することが示された。1~5日間での1日単回用量でのFTIの投与は、少なくとも21日まで持続する腫瘍成長の顕著な抑制をもたらしたことが見出された。いくつかの実施形態では、FTIは、50~400mg/kgの投薬量範囲で投与される。いくつかの実施形態では、FTIは、200mg/kgで投与される。FTIに特異的な投薬レジメンはまた、当該技術分野でよく知られている(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6838467号参照)。例えば、化合物アルグラビン(WO98/28303)、ペリリルアルコール(WO99/45712)、SCH-66336(米国特許第5,874,442号)、L778123(WO00/01691)、2((S)-[2(S)-[2(R)-アミノ-3-メルカプト]プロピルアミノ-3(S)-メチル]-ペンチルオキシ-3-フェニルプロピオニル-メチオニンスルホン(WO94/10138)、BMS214662(WO97/30992)、AZD3409;Pfizer化合物A及びB(WO00/12499及びWO00/12498)に好適な投薬量は、参照により本明細書に組み込まれる前述の特許明細書で提供されており、または当業者に知られているか、もしくは当業者によって決定され得る。
【0445】
ペリリルアルコールに関して、薬剤は、150lbのヒト患者当たり1日当たり1~4g投与され得る。一実施形態では、150lbのヒト患者当たり1日当たり1~2g。SCH-66336は典型的には、特定の用途に従って約0.1mg~100mg、より好ましくは約1mg~300mgの単位用量で投与され得る。化合物L778123及び1-(3-クロロフェニル)-4-[1-(4-シアノベンジル)-5-イミダゾリルメチル]-2-ピペラジノンは、1日当たり約0.1mg/kg体重~約20mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.5mg/kg体重~約10mg/kg体重の間の量でヒト患者に投与され得る。
【0446】
Pfizer化合物A及びBは、1日当たり約1.0mg~最大で約500mg、好ましくは1日当たり約1~約100mgの範囲の投薬量で単回または分割(すなわち、複数)用量で投与され得る。治療化合物は通常、1日当たり1kgの体重当たり約0.01~約10mgの範囲の1日投薬量で単回または分割用量で投与され得る。BMS214662は、約0.05~200mg/kg/日、好ましくは100mg/kg/日未満の投薬量範囲で単回用量でまたは2~4個の分割用量で投与され得る。
【0447】
本発明の様々な実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない改変も、本明細書で提供される発明の定義の範囲内で提供されることが理解される。したがって、以下の例は、本発明を限定することではなく、例示することが意図されている。本明細書で引用される参考文献のすべては、それらの全体が参照により組み込まれる。
【実施例
【0448】
5.実施例
この出願全体を通して様々な刊行物が参照されている。GenBank及びGI番号刊行物を含むこれらの刊行物の開示は、それらの全体が、本開示が関連する技術の状態をより十分に説明するために、本出願において参照により本明細書に組み込まれる。上記で提供された例を参照して本発明が説明されているが、本発明の範囲を逸脱することなく様々な改変がなされ得ることが理解されるべきである。
【0449】
実施例1:IGF1経路とCXCL12経路との間のクロストークは、AML及びPTCL患者におけるファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤であるチピファルニブに対する客観的反応を定義する。
チピファルニブ試験(CTEP-20、KO-TIP-002、KO-TIP-004)に登録された71人の患者からの腫瘍サンプルのRNA-Seq及びAffymetrix U133A遺伝子-チップを使用して生成された遺伝子発現プロファイル(GEP)データを研究アウトカムに関して分析し、cBioportal for Cancer GenomicsからのデータセットにおけるmRNA発現の分析で補完した。臨床試験情報:NCT00027872、NCT02464228、NCT02807272。
【0450】
25個の研究において8,401人のがん患者の遺伝子発現プロファイル(cBioportal(TCGA、Provisional)で利用可能)を調べることによって腫瘍CXCL12過剰発現の病理を調査した。それらの研究のうち19個においてIGF1遺伝子及びCXCL12遺伝子の発現における非常に有意な相関関係が存在した。これらの25個の研究が以下で表1に詳述されている。乳癌、膵臓癌及び急性骨髄性白血病(AML)におけるIGF1遺伝子及びCXCL12遺伝子の発現の間の非常に有意な相関関係は図1にも図で示されている。
表1:IGF1及びCXCL12の発現の相関関係
【表1】
【0451】
興味深いことに、チピファルニブの単剤活性が以前に報告されているAML(ρ=0.698、p<0.0001、N=173)を含む適応症において最も高いIGF1/CXCL12相関が観察された。チピファルニブに対する既知の単独療法の反応を有するこれらのがんは、膀胱癌、乳癌及びAMLである(表1)。
【0452】
これまでに治療されていないAMLを有する高齢患者においてチピファルニブ単独療法を調査する研究からのデータ(CTEP-20)を、チピファルニブに対する患者の反応に対するCXCL12及びIGF1の発現の影響を決定するために詳細に調べた。
【0453】
チピファルニブにおける患者アウトカムに対するIGF1/CXCL12共発現の影響を調べた。これまでに治療されていないAMLにおいて、IGF1/CXCL12発現に関して3つの患者サブセットを特定した(図2A)。これらのサブセットは、1)高IGF1、高CXCL12(左の箱ひげ図)、2)中IGF1、低CXCL12(中央の箱ひげ図)、及び3)低IGF1、可変CXCL12、(右の箱ひげ図)であった。
【0454】
高レベルのIGF1の存在下で、高レベルのCXCL12は主に、10人の対象のうち、アウトカムとして完全反応(CR)を有する2人の患者と共に血液学的改善(HI)または安定な疾患(SD)のアウトカムをもたらした(図2B)。CXCL12が低レベルであり、IGF1が中レベルであった場合、低いCXCL12レベルは、アウトカムとして1件のCR及び8件の進行性疾患(PD)を伴って疾患進行をもたらした(図2C)。IGF1レベルが低い場合、CXCL12は様々なレベルを有し、15人の患者のうち6人がCRを経験した。チピファルニブに対するCRは、CXCL12レベルと有意に関連していた(p=0.013)(図2D)。これらのデータは、CXCL12経路活性化が、チピファルニブとの客観的反応を決定するのに対し、高/中IGF1レベルは薬物抵抗性を媒介することを実証している。これらの患者におけるCRの予測についての受信者操作特性(ROC)曲線は、より高いCXCL12及びより低いIGF1レベルがAML患者集団において完全反応を予測することを確認した(図2E)。
【0455】
利用可能な治療前BM遺伝子発現データを有する17人のチピファルニブで治療されたCMML対象において4つの客観的反応及び1つの腫瘍溶解症候群が報告された。CXCL12発現(p=0.07)及びCXCL12/CXCR4比(p=0.03)はそれらの事象を予測したのに対し、IGF1発現レベルは、これらの患者においてほとんど検出できなかった。
【0456】
チピファルニブ単独療法を受けた治療前GEPデータを有する13人の節性PTCL患者においてCXCL12及びIGF1の影響を調査した。高CXCL12は、それらの患者が低レベルのIGF1を発現しなかったという事実にもかかわらず、2つの部分的反応(PR)を予測した(p=0.009)。さらなる調査は、チピファルニブでのPRを経験したPTCL患者の腫瘍は、IGF1受容体(IGF1R)の阻害因子である高レベルのIGFBP7を発現したことを明らかにした(表2)。IGFBP7発現のIGF1R発現のレベルへの調整もまた、それらの患者を療法に対する反応者として特定した。
表2:高CXCL12及び高IGFBP7は、PTCLにおける客観的反応を特定する
【表2】
【0457】
PTCL治療前生検の全エクソームシーケンシングは、非反応患者におけるIGFBP7遺伝子の多型を明らかにした:IGFBP7バリアントL11F(rs11573021)を保有していたのは、PRの最良の反応を有する対象ではおらず、安定な疾患を有する4人の患者のうち1人及びPDを有する10人の患者のうち6人であった(16%のPR/SD対60%のPD、p=0.15)。
【0458】
実施例2:進行膵臓癌におけるチピファルニブの臨床利益と関連する臨床及び分子バイオマーカーの特定。
表1及び図1で見られるように、膵臓癌患者は、チピファルニブ活性が観察された他の腫瘍タイプよりも高い、CXCL12とIGF1遺伝子との間の高い相関を実証した。膵臓腫瘍はまた、極めて高レベルのIGFB7を発現する。IGFBP7は、これらの腫瘍においてIGF1(ρ=0.643、p<0.0001、N=179)及びCXCL12(ρ=0.617、p<0.0001、N=173)と共発現することが見出された。
【0459】
これまでに全身性療法で治療されていない進行膵臓腺癌を有する患者におけるゲムシタビン+チピファルニブ対ゲムシタビン+プラセボの無作為化二重盲検プラセボ対照研究において、チピファルニブ(R115777)を200mgの投薬量で1日2回経口で継続して投与した(研究INT-17)。ゲムシタビンを1,000mg/m(2)の投薬量で8週間で1週×7、次いで4週毎に1週×3で静脈内に投与した。
【0460】
686人の患者を登録した。実験アームについての全体的生存性中央値は、対照アームについての182日に対して193日であった(P=.75)。好中球減少及び血小板減少グレード>または=3が、対照アームにおける30%及び12%に対して実験アームでは40%及び15%で観察された。
【0461】
研究の結果は、ゲムシタビン及びチピファルニブの組み合わせが、単剤ゲムシタビンと比較して進行膵臓癌における全体的生存性を延長させないことを示した一方で、様々なバイオマーカーがチピファルニブの治療活性とのそれらの関係性について試験された。
【0462】
膵臓腫瘍は、異なる環境においてCXCL12及びIGF1を過剰発現し得る。局所進行疾患、節性疾患は、高レベルのCXCL12を発現すると予期されるであろう。特に、腹痛を発症しない膵臓腫瘍は、CXCL12を過剰発現することが知られている。一方、肝臓は、主要なIGF1生成器官であり、肝臓における膵臓腫瘍は、高レベルのIGF1及び、相関により、IGFBP7及びCXCL12を発現することが予期される(図3)。
【0463】
この研究におけるすべての患者が2つの全体治療群として調査されたとき、チピファルニブの治療的利益は確認されなかった(図5A、左パネル)。局所進行疾患(LAD)を有する患者では、非有意の傾向が観察された(図5A、中央パネル)。局所リンパ節に広がった腫瘍(節性疾患)を有する患者は、チピファルニブで治療された場合、より良好な生存性を有していた(図5A、右パネル)。
【0464】
腹痛は、膵臓癌の特徴的な臨床徴候である。膵臓癌患者のサブセットは、CXCL12過剰発現に依存するメカニズムによって末梢神経系シュワン細胞から腫瘍部位への移行に起因する腹痛を経験しない。研究INT-11では、ゲムシタビン及びプラセボでの治療のアウトカムは、研究開始時に腹痛を報告した患者において、報告しなかった患者と比べて有意に異ならなかった(図5B、左)。腹痛を報告しなかった患者は、ゲムシタビン及びチピファルニブで治療された場合、腹痛を報告しなかった患者と比べて有意により良好な生存性を有していた(図5B、中央)。ゲムシタビン及びチピファルニブを用いたより良好な生存性についての傾向は、腹痛を有さない患者のサブセットにおいて両方の治療群を比較した場合に観察された(図5c)。
【0465】
まとめると、これらのデータは、膵臓癌における高いCXCL12発現と関連した臨床環境、例えば、局所疾患または腹痛の非存在が、チピファルニブ療法から利益を受け得る患者の特定に寄与することを示している。
【0466】
CXCR4は、IGF1受容体と機能的に相互作用することが示されている。IGF1は、IGF1生成部位への細胞の移行を誘導し得る。肝臓は、多量のIGF1を生成する。肝臓に転移したが他の器官には転移しなかった膵臓腫瘍を有し、かつその正常な限度内のアスパラギン酸トランスアミナーゼによって明らかにされた許容可能な肝臓機能を依然として有する患者は、チピファルニブ及びゲムシタビン対プラセボ及びゲムシタビンで治療された場合に有意な生存性利益を経験した(図6A)。チピファルニブでの生存性利益は、腫瘍が肺または他の器官に転移した場合、観察されなかった。生存性利益はまた、腫瘍が肝臓(のみ)に転移し、許容可能な肝臓機能が正常な限度内のビリルビン、アラニンアミノ基転移酵素またはアルカリホスファターゼを使用して検証された場合に観察された。チピファルニブでの生存性利益はまた、以前にフォルフィリノックスで治療された患者において観察された(図6B)。
【0467】
IGF1は、小さなIGFBPタンパク質(IGFBP1及び2)(それら自体がインスリンによって制御される)によって間質において制御される。インスリンは、その主な機能の一部としてグルコースレベルを低く維持する。肝臓(のみ)に転移した膵臓腫瘍を有し、かつ研究開始時に高血糖ではなかった患者は、チピファルニブで治療された後に生存性利益を経験した(図6C、左)。肝臓(のみ)に転移した膵臓腫瘍を有し、かつ正常な肝臓機能を有し、研究開始時に高血糖ではなかった患者は、チピファルニブで治療された後に改善した生存性利益を経験した(図6C、右)。
【0468】
まとめると、これらのデータは、IGF1発現、及びその膵臓癌における相関的IGFBP7と関連する臨床的状況、例えば、肝臓転移の存在、正常な肝臓機能及び高血糖の非存在が、チピファルニブ療法から利益を受け得る患者を特定するのに寄与することを示している。
【0469】
実施例3:低いKRAS変異アレル頻度は、チピファルニブから臨床利益を享受する可能性が高い膵臓癌患者を特定した
膵臓腫瘍サンプルにおける低いKRAS変異アレル頻度は、高いCXCL12及び高いIGF1遺伝子発現と関連していた。しかしながら、IGFBP7は、膵臓癌において全体的に高度に発現したが、より低いKRAS変異アレル頻度では増加する傾向があった(図7A)。そのため、低いKRAS変異アレル頻度は、チピファルニブから臨床利益を享受しやすいであろう高CXCL12を有する膵臓癌患者を特定することができた。同様に、低いKRAS変異アレル頻度は、IGF1によって媒介されるチピファルニブに対する任意の潜在的抵抗性を阻止することができた最も高いIGFBP7発現を有する膵臓癌患者を特定することができた(図7A)。
【0470】
CXCL12の発現はまた、野生型TP53状態またはTP53変異の低いアレル頻度を有する腫瘍で上昇した(図7B、左パネル)。CXCL12過剰発現についてのTP53変異アレル頻度の最適なカットオフは≦9%であった。CXCL12過剰発現についてのKRAS変異アレル頻度の最適なカットオフは≦7%である(図7B、右パネル)。
【0471】
実施例4:乳癌患者におけるチピファルニブ治療の臨床利益と関連するCXCL12発現及び他の分子マーカー。
乳癌におけるバイオマーカーをCXCL12/IGF1発現及び患者に投与された場合のチピファルニブの活性とのそれらの関係性についても調べた。チピファルニブで治療された76人の患者で第II相研究を実施した(研究GBR-1)。患者をエストロゲン受容体陽性(ER+)または陰性(ER-)、プロゲステロン受容体陽性(PGR+)または陰性(PGR-)、及びTP53変異の存在または非存在について試験した。研究における全体的反応率は12%であった。バイオマーカーデータは41人の患者において利用可能であった。
【0472】
TCGAデータベースにおけるデータは、CXCL12発現が、エストロゲン受容体(ESR1)発現と逆相関し、プロゲステロン受容体発現(PGR)と直接的に相関していたことを示していた(表3)。IGF1発現とPGR発現との間に有意な関係性はなかった。
【0473】
TCGAデータベースにおけるデータは、CXCL12発現がTP53変異アレル頻度と逆相関していたことを示していた。
【0474】
まとめると、これらのデータは、PGR陽性及びTP53変異の非存在が、高CXCL12発現及びチピファルニブに対する反応に対する感受性を高めることを示している。PGR陽性及びER陰性もまた、CXCL12発現を高める。
表3:乳癌におけるESR1、PGR発現及びTP53変異アレル頻度に関連するCXCL12、IGF1発現
【表3】
【0475】
7人の患者は、PGR(+)及び野生型TP53(TP53(-))である乳癌腫瘍を有していた。それらの患者のうち4人は、チピファルニブに対する客観的反応を経験した(57%)。
表4:PGR(+)TP53(-)患者集団及びチピファルニブに対する反応
【表4】
【0476】
4人の患者が、PGR(+)及びER(-)である乳癌腫瘍を有していた。それらの患者のうち3人は、チピファルニブに対する客観的反応を経験した(75%)。
表5:PGR(+)ER(-)患者集団及びチピファルニブに対する反応
【表5】
【0477】
実施例5:チピファルニブ含有レジメンは、膵臓腺癌のKRAS野生型でCXCL12を発現する患者由来の異種移植片モデルの腫瘍成長を阻害する。
雌のBALB/cヌードまたはNu/nuマウス(6~8週)に腫瘍発症のために初代ヒト腫瘍モデル断片(直径2~3mm)を右脇腹に皮下接種した。平均腫瘍サイズが約250~350mmに達したとき、マウスを無作為に投薬群にグループ化した。動物にチピファルニブビヒクル(20%w/vのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、80mg/kgで1日2回経口の用量のチピファルニブまたはチピファルニブ(80mg/kgで1日2回経口)、セレコキシブ(5mg/kgで1日1回経口)及びアトルバスタチン(2mg/kgで1日1回経口)の組み合わせを3~4週間投薬し、腫瘍寸法を週2回測定した。
【0478】
PDACの選択された患者由来の異種移植片(PDX)モデルを使用してチピファルニブの腫瘍成長を阻害する能力を決定した。選択されたモデルは、表1に示されるように、野生型または変異型のいずれかのKRASを発現し、様々なレベルのヒトCXCL12も発現した。
表6.PDAC PDXモデルにおけるKRAS変異状態及びCXCL12のmRNA発現
【表6】
【0479】
図8は、KRAS野生型でCXCL12のmRNAを発現するPDACの2つの異なるPDXモデルにおいて腫瘍体積の減少における2つの異なるチピファルニブ治療レジメンの有効性を示している。マウスをチピファルニブ、アトルバスタチン、及びセレコキシブからなる組み合わせまたはチピファルニブ単独のいずれかで治療した。図8に示されるように、両方のチピファルニブ治療レジメンが、KRAS野生型でCXCL12を発現するPDACの腫瘍体積を減少させた。
【0480】
腫瘍体積の減少におけるチピファルニブ治療の有効性をPDACの4つの異なるPDXモデルにおいて比較した。4つすべてのPDXモデルの腫瘍が、多量のCXCL12のmRNAを発現した。図9は、チピファルニブ投与が、G12D KRAS変異を有する腫瘍(PA3006及びPA6265)よりも野生型KRASを有する腫瘍(PA2409及びPA3546)において腫瘍体積の減少において有効であったことを示している。
【0481】
同様に、高いCXCL12のmRNA発現は、チピファルニブの有効性を予測する上でKRASのVAFと同様に重要であるようである。腫瘍体積の減少におけるチピファルニブ治療の有効性をKRAS野生型PDACの4つの異なるPDXモデルにおいて比較した。図10は、チピファルニブ投与が、CXCL12を発現しない腫瘍(PA6259及びPA1280)よりも、高レベルのCXCL12のmRNAを発現する腫瘍(PA2409及びPA3546)において腫瘍体積を減少させるのに有効であったことを示している。まとめると、これらのデータは、チピファルニブ治療が、PDACのPDXモデルにおいて多量のCXCL12を発現するKRAS野生型腫瘍における腫瘍体積を減少させたことを示している。
【0482】
実施例6:ゲムシタビン含有化学療法の失敗の後の膵臓の転移性腺癌を有する対象におけるカペシタビンと組み合わされたチピファルニブ対カペシタビン単独の無作為化第2相研究。
この臨床試験は、転移性であり、かつ及び治癒目的で局所療法に適さない、組織学的または細胞学的に確認されたPDCAを有する対象におけるカペシタビンと組み合わされたチピファルニブで治療された対象のOS率を評価する。対象は、難治性でなければならず、または1回以下の先行するゲムシタビン含有化学療法レジメンから再発したものでなければならない。
【0483】
この研究に参加するために、すべての対象は、固形腫瘍における反応評価基準(RECIST)v1.1に従って標的病変としての選択のための基準を満たす測定可能な疾患を有さなければならない。RECIST v1.1による少なくとも1つの測定可能な標的病変の存在は、登録前に局所放射線学によって確認されなければならない。局所放射線学によって確認された少なくとも1つの測定可能な標的病変を有さない対象は、研究に登録されない。また、対象は、肝臓における少なくとも1つの転移病変を有さなければならない。
【0484】
登録された対象は、中央化検査に基づいて既知の腫瘍ミスセンスKRAS変異(ミスセンスKRASバリアントアレル頻度、VAF、>5%として定義される)を有していてはいけない。KRAS状態は、一次診断で得られた腫瘍についてまたは再発もしくは転移疾患において評価され得る。いくつかのサンプルが利用可能である場合、KRAS試験は、最も最近に得られた腫瘍サンプルで実施されるべきである。
【0485】
患者は、チピファルニブ及びカペシタビンの組み合わせまたはカペシタビン単独に2:1で無作為化される。少なくとも35人の対象は、2つの治療群のうちの1つに無作為化(2:1)される。
【0486】
第1の治療群は、チピファルニブ及びカペシタビンを含む治療レジメンを受ける。この群における対象は、21日のサイクルの1~14日目に1,000mg/m2の経口カペシタビンを1日2回と、300mgの経口チピファルニブを1日2回、食事と共に摂取する。第2の治療群は、カペシタビンのみの治療レジメンを受ける。この群における対象は、21日のサイクルの1~14日目に1,250mg/m2の経口カペシタビンを1日2回摂取する。
【0487】
何らかの理由でカペシタビンでの治療を中止した併用アームにおける対象は、チピファルニブでの治療を継続し得、その逆も同様である。管理不能な毒性の非存在下で、対象は、疾患が進行するまで治療を受け続け得る。完全反応が観察された場合、療法は、反応の開始を過ぎて少なくとも6ヶ月間、維持される。併用アームでは、何らかの理由でカペシタビンが中止された場合、対象は、チピファルニブでの治療を継続し得、その逆も可能である。
【0488】
登録された14人の患者で併用アームにおける無益性に関する1回の中間評価が予定される。
【0489】
腫瘍評価は、RECIST v1.1に従って調査者によって実施される。評価は、スクリーニング時及び対象の参加の最初の12ヶ月間のおよそ6週毎に実施される;その後、腫瘍反応評価は、研究治療または疾患進行の開始から2年までおよそ12週毎に行われるべきである。放射線学的評価は、腫瘍進行時に中止される。対象がRECIST v1.1による疾患進行の証拠を用いずに新たな抗がん療法を開始する場合、腫瘍スキャンは、研究手順に対する対象の同意の取り下げがない限り、疾患進行の証拠が存在するまで継続すべきである。
【0490】
疾患進行時には、すべての対象は、死亡または研究の終了(最後の研究対象の登録から最大で2年)のうちいずれか先に生じる方までおよそ12週毎に生存及びその後の療法の使用について追跡調査される。
【0491】
すべての対象が、治療中止後およそ30日を通してまたは別の抗がん治療の投与の直前までのいずれか最初に生じた方まで安全性について追跡調査される。未解決の毒性が治療終了来訪時に存在する場合は、追加の安全性追跡調査が行われ得る。
図1-1】
図1-2】
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10
【国際調査報告】