(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(54)【発明の名称】非圧縮性クロマトグラフィー充填樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20220107BHJP
B01J 20/282 20060101ALI20220107BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20220107BHJP
G01N 30/56 20060101ALI20220107BHJP
B01J 20/283 20060101ALI20220107BHJP
B01D 15/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01N30/60 A
B01J20/282 C
G01N30/60 P
B01J20/281 G
G01N30/56 A
B01J20/283
B01D15/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523862
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 US2019059141
(87)【国際公開番号】W WO2020092755
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503393010
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Repligen Corporation
【住所又は居所原語表記】41Seyon Street,Building#1,Suite100,Waltham,Massachusetts02139,United StatesOfAmerica
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ペイサー、ジェームズ ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】チャン、アラン キット ホ
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017CA04
4D017DA03
(57)【要約】
本開示は、セラミックハイドロキシアパタイト粒子などの非圧縮性媒体を充填したクロマトグラフィーカラムを提供し、これは輸送および複数回の使用に対して堅牢である高い分離性能を示す。カラムは、多孔質フリットおよび/または流量調整器などの剛体を用いて軸方向の圧縮を適用することで製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーカラムであって、
第1の端部および第2の端部を有する管状部材と、
前記管状部材の第1の端部に固定された第1の流量分配器と、
前記管状部材の第2の端部に固定された第2の流量分配器と、
非圧縮性成分を含む充填クロマトグラフィー媒体であって、前記充填クロマトグラフィー媒体は、前記管状部材内に前記第1の流量分配器と前記第2の流量分配器との間で配置されている、充填クロマトグラフィー媒体と
を備え、
前記充填クロマトグラフィー媒体は、前記第1の流量分配器と前記第2の流量分配器との間で圧縮により形成されており、
前記クロマトグラフィーカラムの分離性能は、理論段相当高さ(HETP)値および非対称性値によって特徴付けられ、(I)総固定変位25mmの固定変位振動、または(II)全体のG
rmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される振動曝露の後に、(a)前記HETP値が15%を超えて変化せず、かつ/または(b)前記非対称性値が15%を超えて変化しない、クロマトグラフィーカラム。
【請求項2】
(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択される衝撃曝露の後に、(a)前記HETP値が10%を超えて変化せず、かつ/または(b)前記非対称性値が10%を超えて変化しない、請求項1に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項3】
振動-衝撃-振動の一連の曝露の後に、(a)前記HETP値が10%を超えて変化せず、かつ/または(b)前記非対称性値が10%を超えて変化せず、前記衝撃曝露は、(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択され、かつ前記振動曝露は、(IV)総固定変位25mmの固定変位振動、または(V)全体のG
rmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される、請求項1に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項4】
前記HETP値および非対称性値が5%を超えて変化しない、請求項1から3のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項5】
前記非圧縮性成分が40μmのセラミックハイドロキシアパタイトを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項6】
クロマトグラフィーカラムであって、
第1の端部および第2の端部を有する管状部材と、
前記管状部材の第1の端部に固定された第1の流量分配器と、
前記管状部材の第2の端部に固定された第2の流量分配器と、
非圧縮性成分を含む充填クロマトグラフィー媒体であって、前記充填クロマトグラフィー媒体は、前記管状部材内に前記第1の流量分配器と前記第2の流量分配器との間で配置されている、充填クロマトグラフィー媒体と
を備え、
前記充填クロマトグラフィー媒体は、前記第1の流量分配器と前記第2の流量分配器との間で圧縮により形成されている、クロマトグラフィーカラム。
【請求項7】
前記充填クロマトグラフィー媒体が少なくとも2%圧縮されている、請求項6に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項8】
前記充填クロマトグラフィー媒体が20%以下だけ圧縮されている、請求項7に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項9】
前記非圧縮性成分が、シリカ、制御注入型ガラス、セラミック、またはアパタイトを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項10】
前記非圧縮性成分が不定形または球形である、請求項6から9のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項11】
前記第1の流量分配器および前記第2の流量分配器の少なくとも一方が、多孔質のポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリテトラフルオロエチレンのフリットを含む、請求項6から10のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項12】
前記管状部材が動作中に鉛直方向に配向されており、かつ前記管状部材内の前記充填クロマトグラフィー媒体の高さが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10回のクロマトグラフィー使用サイクルにわたって実質的に一定のままである、請求項6から11のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項13】
前記クロマトグラフィーカラムの分離性能が、理論段相当高さ(HETP)値および非対称性値によって特徴付けられ、(a)前記HETP値が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10回のクロマトグラフィー使用サイクルにわたって2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を超えて減少せず、かつ/または(b)前記非対称性値が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10回のクロマトグラフィー使用サイクルにわたって5%、10%、20%、30%、40%または50%を超えて増加または減少しない、請求項6から12のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項14】
(I)総固定変位25mmの固定変位振動、または(II)全体のG
rmsレベル1.15のランダム変位振動から選択される振動曝露の後に、前記HETP値および/または前記非対称性値が10%を超えて変化しない、請求項13に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項15】
(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択される衝撃曝露の後に、(a)前記HETP値が10%を超えて変化せず、かつ/または(b)前記非対称性値が10%を超えて変化しない、請求項13に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項16】
振動-衝撃-振動の一連の曝露の後に、(a)前記HETP値が10%を超えて変化せず、かつ/または(b)前記非対称性値が10%を超えて変化せず、前記衝撃曝露は、(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択され、かつ前記振動曝露は、(IV)総固定変位25mmの固定変位振動、または(V)全体のG
rmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される、請求項13に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項17】
前記管状部材が動作中に鉛直方向に配向されており、かつ前記管状部材内の前記充填クロマトグラフィー媒体の高さが、輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままである、請求項6から16のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項18】
前記クロマトグラフィーカラムの分離性能が、理論段相当高さ(HETP)値または非対称性値によって特徴付けられ、前記HETP値および/または前記非対称性値が、輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままである、請求項6から17のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項19】
前記管状部材内の前記充填クロマトグラフィー媒体の高さが、輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままである、請求項6から18のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項20】
クロマトグラフィーカラムを製造する方法であって、
第1の流量分配器と第2の流量分配器との間で、沈降した非圧縮性のクロマトグラフィー媒体を少なくとも2.5%圧縮することによって充填クロマトグラフィー媒体を製造する段階
を備える、方法。
【請求項21】
前記充填クロマトグラフィー媒体が20%以下で圧縮されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の流量分配器および前記第2の流量分配器の少なくとも一方が、多孔質のポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリテトラフルオロエチレンのフリットを含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記非圧縮性のクロマトグラフィー媒体が、セラミックハイドロキシアパタイト樹脂である、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記非圧縮性のクロマトグラフィー媒体を、層の高さが18~35cmになるように前記クロマトグラフィーカラムに流し込む、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第1のフリットを前記クロマトグラフィーカラムの底部に挿入し、セラミックハイドロキシアパタイト樹脂のスラリーを前記第1のフリット上に流して5~30cmの高さにし、流量分配器と第2のフリットとを前記クロマトグラフィーカラムに挿入する、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記セラミックハイドロキシアパタイト樹脂を毎時200cmで流動充填し、前記流量分配器を前記セラミックハイドロキシアパタイト樹脂の1mm以内まで下げて、毎時200cmで流動充填する、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月31日に出願された、「Packed Imcompressible Chromatography Resins and Methods of Making the Same」と題する米国特許出願第62/753,604号明細書の優先権の利益を主張し、当該出願はその内容全体が参照により本明細書に援用されるものとする。
【0002】
本開示は、非圧縮性樹脂を含む充填クロマトグラフィーカラムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カラムクロマトグラフィーとは、充填クロマトグラフィー媒体(樹脂とも呼ばれる)の固定「層」を、剛性の高いチューブやカラムの中に入れて分離および/または精製を行う技術である。充填媒体は、固体もしくはゲル(「固定相」)の粒子、または液体固定相でコーティングされた固体支持材料の形態であり得る。いずれにしても、充填媒体は通常、カラムチューブの内容積を満たす。
【0004】
一般的に、カラム分離は、液体試料(「移動相」)をカラムに通し、充填クロマトグラフィー媒体の「層」上を通過させることを伴う。試料中の一部の化合物は固定相と結合し、移動相に対して相対的に遅くなり得る。固定相との結合が強い化合物は、結合が弱い化合物よりもカラム内をゆっくりと移動し、この差によって化合物がカラムを通過して出るときに互いに分離される。
【0005】
固定相にセラミックハイドロキシアパタイト粒子(CHP)を利用する重要な樹脂の1グループがある。CHP粒子は一般的に不定形で非圧縮性であり、強い圧縮、振動または混合下では破壊やせん断を起こす可能性がある。CHP樹脂の感度が高いため、CHP粒子を劣化させずに安定した充填層を得るには難しい場合がある。現在の業界プロトコルに従って充填された既製のカラムの層を輸送したり長期貯蔵したりすると、輸送・貯蔵中に沈降または粒子圧密が起こる可能性がある。定位置で充填されたCHPカラムはまた、貯蔵と使用のサイクルを繰り返すうちに沈降しやすくなり、カラムの上部流量調整器と層の上面との間に隙間が形成してしまう。この隙間が十分に大きくなると、混合室ができてしまい、クロマトグラフィー分解能が低下してしまう可能性がある。多くの用途では、CHP粒子の構造的完全性が高い安定した充填済みCHPクロマトグラフィーカラムが理想的であるが、そのようなカラムは現在のところ入手可能ではない。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、充填済みCHPクロマトグラフィーカラム、およびその製造方法を提供する。充填層の安定性が向上し、輸送および/または貯蔵後、ならびにカラムの複数回使用においても高い性能が維持されるようになる。
【0007】
一態様では、本開示は、第1の端部および第2の端部を有する管状部材と、管状部材の第1の端部に固定された第1の流量分配器と、管状部材の第2の端部に固定された第2の流量分配器と、充填クロマトグラフィー媒体とを有するクロマトグラフィーカラムに関する。充填クロマトグラフィー媒体は、非圧縮性成分を含んでいてもよく、第1の流量分配器と第2の流量分配器との間の管状部材に配置されていてもよく、充填クロマトグラフィー媒体は、第1の流量分配器と第2の流量分配器との間で圧縮により形成されていてもよい。カラムの分離性能は、理論段相当高さ(HETP)値と非対称性値によって特徴付けることができる。(I)総固定変位25mmの固定変位振動、または(II)全体のGrmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される振動曝露の後に、HETP値は10%、20%、または30%を超えて変化してはならず、かつ/または非対称性値は10%、20%、または30%を超えて変化してはならない。
【0008】
別の態様では、(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択される衝撃曝露後に、(a)HETP値は10%を超えて変化してはならず、かつ/または(b)非対称性値は10%を超えて変化してはならない。振動-衝撃-振動の一連の曝露の後に、HETP値は10%を超えて変化してはならず、かつ/または非対称性値は10%を超えて変化してはならず、衝撃曝露は、(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択され、かつ振動曝露は、(IV)総固定変位25mmの固定変位振動、または(V)全体のGrmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される。HETP値と非対称性値は、5%、10%、15%、20%、25%、30%を超えて変化してはならない。非圧縮性成分は、40μmのセラミックハイドロキシアパタイトを含んでいてもよい。充填クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2%圧縮されていてもよい。さらに別の態様では、充填クロマトグラフィー媒体は、20%以下だけ圧縮されていてもよい。
【0009】
別の実施形態では、充填クロマトグラフィーカラムの第1の流量分配器および第2の流量分配器の少なくとも一方は、多孔質のポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリテトラフルオロエチレンのフリットを含む。
【0010】
一態様では、本開示は、第1の端部および第2の端部を有する管状部材と、管状部材の第1の端部に固定された第1の流量分配器と、管状部材の第2の端部に固定された第2の流量分配器と、非圧縮性成分を含む充填クロマトグラフィー媒体とを備え、充填クロマトグラフィー媒体は、管状部材内に第1の流量分配器と第2の流量分配器との間で配置されている、クロマトグラフィーカラム(例えば、貯蔵安定性および/または輸送安定性のクロマトグラフィーカラム)に関する。充填クロマトグラフィー媒体は、第1の流量分配器と第2の流量分配器との間で圧縮により形成されていてもよい。
【0011】
さまざまな実施形態では、充填クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2%圧縮されていてもよい。充填クロマトグラフィー媒体は、20%以下だけ圧縮されていてもよい。
【0012】
本開示はさらに、管状部材が動作中に鉛直方向に配向されており、かつ管状部材内の充填クロマトグラフィー媒体の高さが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10回のクロマトグラフィー使用サイクルにわたって実質的に一定のままである、クロマトグラフィーカラムに関する。
【0013】
さまざまな実施形態で使用されるクロマトグラフィーカラムには、カラムの分離性能が理論段相当高さ(HETP)値および非対称性値によって特徴付けられ、(a)HETP値が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10回のクロマトグラフィー使用サイクルにわたって2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%を超えて減少せず、かつ/または(b)非対称性値が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10回のクロマトグラフィー使用サイクルにわたって5%、10%、20%、30%、40%または50%を超えて増加または減少しないものが含まれる。
【0014】
本開示はさらに、管状部材が動作中に鉛直方向に配向されており、かつ管状部材内の充填クロマトグラフィー媒体の高さが、輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままであるクロマトグラフィーカラムに関する。
【0015】
さまざまな実施形態で使用されるクロマトグラフィーカラムには、カラムの分離性能が理論段相当高さ(HETP)値または非対称性値によって特徴付けられ、HETP値および/または非対称性値が輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままであるものが含まれる。HETP値を算出する方法は当技術分野で知られている。
【0016】
本開示はまた、管状部材内の充填クロマトグラフィー媒体の高さが、輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままであるクロマトグラフィーカラムに関する。
【0017】
さらに別の態様では、本開示は、クロマトグラフィーカラムを製造する方法であって、第1および第2の流量分配器の間で、沈降したクロマトグラフィー媒体を少なくとも2.5%圧縮し、それによって充填されたクロマトグラフィー媒体を製造する段階を備える、方法に関する。
【0018】
本開示のこの態様を続けると、いくつかの実施形態では、充填クロマトグラフィー媒体は20%以下だけ圧縮される。
【0019】
さらに、いくつかの実施形態では、第1の流量分配器および第2の流量分配器の少なくとも一方が、多孔質のポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリテトラフルオロエチレンのフリットを含む。
【0020】
非対称性値を算出する方法は当技術分野で知られている。貯蔵または落下の状態をシミュレートする方法は当技術分野で知られており、例えば国際安全輸送協会の2B試験がある。
【0021】
さまざまな実施形態では、HETP値および/または非対称性値は、(I)総固定変位25mmの固定変位振動、または(II)全体のGrmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される振動曝露の後に10%を超えて変化してはならない。(I)150mmの落下、(II)1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択される衝撃曝露後に、HETP値は10%を超えて変化してはならず、かつ/または非対称性値は10%を超えて変化してはならない。振動-衝撃-振動の一連の曝露の後に、HETP値は10%を超えて変化してはならず、かつ/または非対称性値は10%、15%、20%、25%、または30%を超えて変化してはならず、衝撃曝露は、(I)150mmの落下、(II)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす傾斜衝撃、または(III)少なくとも1.7m/sの速度変化をもたらす水平衝撃から選択され、かつ振動曝露は、(IV)総固定変位25mmの固定変位振動または(V)全体のGrmsレベルが1.15のランダム変位振動から選択される。
【0022】
カラムの分離性能は、理論段相当高さ(HETP)値または非対称性値によって特徴付けられることができ、かつHETP値および/または非対称性値は、輸送または貯蔵の前後で実質的に一定のままである。
【0023】
一態様では、本開示は、クロマトグラフィーカラムを製造する方法を説明することができる。この方法は、沈降した非圧縮性クロマトグラフィー媒体を、第1および第2の流量分配器の間で少なくとも2.5%圧縮し、それによって充填されたクロマトグラフィー媒体を製造する段階を備えることができる。
【0024】
さまざまな態様では、充填クロマトグラフィー媒体は、20%以下だけ圧縮されていてもよい。第1の流量分配器および第2の流量分配器の少なくとも一方は、多孔質のポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリテトラフルオロエチレンのフリットを含んでいてもよい。非圧縮性のクロマトグラフィー媒体は、セラミックハイドロキシアパタイト樹脂であってもよい。非圧縮性のクロマトグラフィー媒体は、層の高さが18~25cmになるようにカラムに流し込んでもよい。第1のフリットをカラムの底部に挿入してもよく、セラミックハイドロキシアパタイト樹脂のスラリーを第1のフリット上に流して15~20cmの高さを達成してもよく、流量分配器と第2フリットをカラムに挿入してもよい。樹脂を毎時200cmで流動充填してもよく、流量分配器を樹脂の1mm以内まで下げて、毎時200cmで流動充填してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本明細書に記載される実施形態で使用される例示的なクロマトグラフィーカラムの概略図を示す。
【0026】
【0027】
【
図3】対照充填カラムの圧密前の溶出プロファイルを示す図である。
【0028】
【
図4】対照充填カラムの層圧密後の溶出プロファイルを示す図である。
【0029】
【
図5】カラムを軸方向に圧縮する前の溶出プロファイルを示す図である。
【0030】
【
図6】
図5で試験したのと同じカラムの軸方向の圧縮後の溶出プロファイルを示す図である。
【0031】
【
図7】
図6のカラムの層乾燥後の溶出プロファイルを示す図である。
【0032】
【
図8】
図7のカラムを水平方向に運転した場合の溶出プロファイルを示す図である。
【0033】
【
図9】
図7のカラムを鉛直方向位置に戻した場合のコンディショニング運転の溶出プロファイルを示す図である。
【0034】
【
図10】14cmの圧縮充填の場合のISTA2B試験前後の圧力対流量プロファイルを示す図である。
【0035】
【
図11】内径45.7cmのカラムの圧縮充填を拡張した場合のISTA2B試験前後の圧力対流量プロファイルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[定義]
本明細書で使用される場合、「層の高さ」という用語は、完成したクロマトグラフィーカラム内に含まれる充填クロマトグラフィー媒体粒子の層の直線的な高さを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「充填層」とは、クロマトグラフィーカラム内のクロマトグラフィー媒体粒子の最終的な状態を指す。この最終的な状態は、さまざまな方法で達成される。例えば、1つの方法は、本明細書に記載されるように、流体の流れと、その後の各流量分配器の間での層の軸方向の圧縮とを組み合わせることである。当技術分野で知られている他の方法としては、粒子の重力沈降、振動沈降、および/または機械的な軸方向の圧縮自体が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「流量分配器」とは、クロマトグラフィーカラムの各端部またはその付近に固定される構成要素、例えば、円筒形の構成要素である。流量分配器は、複数の目的に役立つマルチパートアセンブリとすることができる。1つの機能は、カラムに液体を送出するか、またはカラムから液体を排出する異なるパイプ/チューブと適合し得るポートによって、カラムに液体を送出/排出することである。別の機能は、1つまたは複数の小さなチャネルから液体を流入させて、充填層の横断面積全体に液体をできるだけ均等に広げることである。逆に、カラムの出口側にある流量分配器は、横断面積全体に広がった液体を効率的に集め、1つまたは複数の小さなチャネルを通してカラムの外に送出しななければならない(例えば、200mmのカラムは直径6mmの入口/出口ポートを有することができる)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「層支持体」とは、ネット、スクリーン、メッシュ、またはフリットのことで、さまざまな液体の通過を可能にしつつ、充填層を含む充填媒体の小さな粒子を保持するものである。これらの層支持体は、流量分配器に直接接続することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「永久結合」および「永久的に結合された」という用語は、2つの構成要素間のそのような結合が、結合部または結合された構成要素(例えば、チューブと流量分配器)の一方または両方を破壊する以外には分離できないことを示すために使用される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「誘導フープ応力」という用語は、チューブの内径よりも大きな外径を有する流量分配器の挿入によってチューブの壁に発生する円周方向の応力を指す。これらの値の直径方向の差を、本明細書では絞まり嵌めと呼ぶ。誘導フープ応力は、流量分配器が内側に圧縮および偏向させられ、チューブの壁が外側に引き伸ばされるときに、絞まり嵌めによる内部応力によって引き起こされる。
【0042】
本明細書で使用される場合、クロマトグラフィーカラムに適用される「貯蔵安定性」という用語は、そのようなクロマトグラフィーカラムが、構造または性能上の特性を大幅に低下させることなく、倉庫などの貯蔵場所で通常見られる頻度と大きさの振動および衝撃に耐えることができることを意味する。貯蔵安定性には、数日、数週間、または数ヶ月の貯蔵サイクルの間、性能および構造上の特性を維持することも含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、クロマトグラフィーカラムに適用される「輸送安定性」という用語は、そのようなクロマトグラフィーカラムが、構造または性能上の特性を大幅に低下させることなく、輸送環境(例えば、高速道路、鉄道、および/または航空輸送環境)で通常見られる頻度と大きさの振動、衝撃、および回転に耐えることができることを意味する。
【0044】
貯蔵安定性および輸送安定性は、当技術分野で現在使用されている方法、例えば、国際安全輸送協会の2B試験(ISTA2B)に記載されているプロトコルに従って評価することができる。
【0045】
接続詞の「または」と「および/または(かつ/または)」は、非排他的な接続詞として互換的に使用される。
【0046】
不定冠詞の「a」および「an」とは、関連する名詞の少なくとも1つを指し、「少なくとも1つ」と「1つまたは複数」という用語と互換的に使用される。例えば、「モジュール」とは、少なくとも1つのモジュール、または1つまたは複数のモジュールを意味する。
【0047】
[概要]
本開示は、セラミックハイドロキシアパタイトビーズなどの非圧縮性材料を装填した充填クロマトグラフィーカラムを提供し、これは輸送、貯蔵、および複数回の使用をはじめとする、多くの一般的な環境要因や使用要因に対して堅牢である良好な分離特性を示す。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示のカラムは、「絡み合った」非圧縮性粒子を含む充填層を特徴とし、これらの粒子は密に充填されており、例えば振動を受けたときに互いに相対的な動きに抵抗すると考えられる。さらにまた、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、特定の実施形態では、充填層は、流量調整器または剛性の高いフリットなどの剛性の高い要素と並置またはそれどころか接触しており、スラックスペースを最小限に抑えてカラムの内容物のスロッシングを抑制している。これは、輸送および取り扱い時にカラムに加わる力に耐えるために特に有効であり得る。
【0048】
まず、カラムの性能特性に目を向けると、それらは一般的に非対称性が低く(例えば、0.9、1、1.1、1.2、1.1~1.2など)、HETP(理論段相当高さ)値が従来どおり調製されたプレートと同等であることを特徴とする。本開示のカラムは、直径が1~200cmの範囲で変化することができ、例えば、内径が5cm、10cm、12.6cm、25cm、45cmまたは60cmである。これらのカラムの層の高さは、5~60cm、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60cm、10~30cmなどで変化することができる。
【0049】
本開示のカラムは、ポリマーフリットなどの剛体上に樹脂のスラリーを流し込み、流動沈降によって安定した層を調製した後、第2の剛体を用いて層に圧縮力を加えることで調製される。場合によっては、第2の剛体は第2のポリマーフリットであり、カラムの流量調整器の下に設置されているか、または一体化されている。これは有利には、カラムの組み立て時に層の圧縮を、いかなる非一体化部品を使用せずとも素早く行うことを可能にする。ポリマーフリットは、完全に剛性の高い材料を含んでいてもよいし、圧縮時に加わる圧縮力の一部を吸収するために、いくらか順応性であってもよい。圧縮時、層は2%~20%、例えば2.5%、5%、10%、12.5%、15%、17.5%などの範囲で圧縮される。圧縮は、任意の適切な間隔で適用され、1回または2回以上適用してもよい。代替的または追加的に、振動および/またはタッピングを含む他の充填方法を、後述するように、軸方向の圧縮と組み合わせてもよい。層が充填された後は、通常の方法でカラムの調製を継続することができる。
【0050】
本開示に従って調製されたカラムは一般的に振動および落下を含む輸送中に加わる可能性のある力に耐えることができる。場合によっては、これらの力をシミュレートすることもあり、カラムの性能を試験して、HETP値または非対称性値が十分であることを確認してからカラムを輸送に向かわせることもある。
【0051】
圧縮力の適用がCHP粒子の破壊の一因になり得ると考えられていることから、CHP樹脂の圧縮はメーカーによって推奨されないことが多いことに留意されたい。さらに、メーカーの充填プロトコルの中には、「軸方向の圧縮充填」と呼ばれるものがあるが、本開示の方法のように機械的な圧縮力を加える必要はなく、代わりにこれらの既存の方法ではガスを利用してスラリーを撹拌する。例えば、GelTec(商標)クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ在)には、流量アダプターをカラム内に下げるモーター駆動のピストンが含まれている場合があるが、推奨される充填プロトコルでは、流量アダプターと層との間で物理的な接触を行う必要はない。
【0052】
上述の充填層とその調製方法は、充填済みカラムの設計を参照して説明していることにも留意されたい。当業者であれば、これらの充填層とその調製方法を、任意の適切なカラムの設計または使用に適用できることを理解するであろう。これには、高さを調節可能な流量調整器を備えた定位置で注入される層および/またはカラムが含まれるが、これらに限定されない。特定のカラム構成は、上述の充填済みカラムと同じ応力を受けない場合もあるが、それにもかかわらず、本開示の実施形態によって達成される性能および安定性の向上の利益が得られるであろう。前述の内容を制限することなく、ガラス壁の容器を利用した定位置充填カラム設計(例えば、Vantage(登録商標)クロマトグラフィーカラム、EMD Millipore社、マサチューセッツ州ビレリカ在、BPG(商標)カラム、GE Healthcare社、マサチューセッツ州マールボロ在)、および/または上述のGelTec(商標)カラムまたはAxiChrom(商標)、GE Healthcare社、マサチューセッツ州マールボロ在)などのピストン駆動の上部流量調整器を組み込んだカラムが、本開示の特定の実施形態で使用される。
【0053】
[クロマトグラフィーカラム]
本明細書に記載され、
図1および
図2に示されているクロマトグラフィーカラム50は、主に、カラムチューブ20と、一対の流量分配器24A,24B(または、1つの流量分配器と1つのエンドキャップ)とからなる。流量分配器24A,Bは、円筒形のディスクと、当該ディスクに液体が流入したり通過したりすることを可能にする1つまたは複数の入口/出口パイプとを含む。さらに、流量分配器24A,Bは、流量分配器ディスクの充填媒体側に取り付けられた層支持体、スクリーン、および/またはフィルターを含むことができる。カラム50はまた、流量分配器とカラムチューブとの間にOリングを組み込んでいてもよいし、組み込んでいなくてもよいが、本開示のカラムは、必ずしもOリングを必要としない。
【0054】
流量分配器24A,Bの流路は、標準的な慣行および既知の設計に従って設計することができ、流量分配器自体は、例えば、チューブと同じまたは類似のプラスチック材料で作ることができるが、カラムに流すべき液体や試薬に対して不活性な金属、セラミック、および他の材料で作ることもできる。
【0055】
チューブ20は、中空の円筒状の部材であり、典型的には、流体(例えば、液体)が第1の端部(例えば、上端)から第2の端部(例えば、下端)に流れることを可能にする丸い円筒である。チューブの内径は、チューブに流体を供給したり、チューブから流体を取り除いたりするための流量分配器を受け入れるようなサイズと構成になっている。さまざまなクロマトグラフィーカラムの性能仕様に基づいて、チューブ20はさまざまな異なるサイズと構成で作ることができる。いくつかの実施形態では、チューブ20は、最大約185psi(例えば、約20、30、40、50、または60psi)もの内圧に耐えることができる一方で、システムの誘導された内部動作圧力の下で構造的完全性を維持するようなサイズと構成になっている。いくつかの実施形態では、チューブ20は、典型的には、約10cm~約100cmである内径と、約10cm~約90cmである長さとを有する円筒形の部材である。チューブ20は、最初に、所望の最終的な層の高さの約2倍の長さに選択され、両方の流量分配器がカラムチューブ内の所定の位置に固定されたら短くカットされる。
【0056】
一般的に、さまざまな要因に基づくチューブ20の全体的な誘導フープ応力は、クロマトグラフィーカラムが受けることになる予測される内圧など、エンドユーザーの仕様に基づき変化し得る。例えば、チューブ20は、流量分配器の挿入中にチューブが降伏しないように、十分な厚さの壁またはその他の堅牢な壁を有していなければならない。例えば、チューブ20の壁厚は、所望の誘導フープ応力を引き出すことで、最大動作圧力を超える適切な安全率に耐えることができるように十分大きくすることができる。例えば、材料の性質に応じて、例えばポリプロピレンの場合、20cmのカラムは、公称内径199.90mmおよび公称壁厚10.0mmのチューブを有する。30cmのポリプロピレンカラムは、公称内径300.00mmおよび公称壁厚13.0mmのチューブを有する。いくつかの例では、材料の性質に応じて、200mmの内径を有するチューブは、約7.5mm~15mm、例えば、約8、9、10、11、12、または13mmの壁厚を有することが望ましい。直径300mmのチューブは、約10~20mm、例えば、約12、13、14、15、16、17、または18mmの壁厚を有することが望ましい。チューブの壁厚は、チューブが使用中の内圧(例えば、約20psi~約40psi、例えば、20、25、30、または35psi)に耐える適切な強度を有するように規定することができる。さらに、適切な壁厚があれば、意図した動作圧力の範囲全体でカラムの形状(例えば、体積)を維持するのに役立ち、それによってカラムの壁のたわみ量が制限され、カラムの相応しい機能を確保するのに役立つことになる。ガラスや炭素繊維または粒子などの追加の構造材料で強化された熱可塑性プラスチック製のチューブでは、壁が薄くなる場合がある。
【0057】
いくつかの例では、チューブは、25PSI~250PSI、例えば、約50、75、100、125、150、175、200、225、または250PSIの誘導フープ応力を有することが望ましい。チューブの誘導フープ応力は、チューブが使用中の内圧(例えば、約20psi~約40psi、例えば、20、25、30、または35psi)に耐えるのに適した材料特性を有するように規定することができる。さらに、適切な誘導フープ応力は、意図した動作圧力の範囲全体でカラムの形状(例えば、体積)を維持するのに役立ち、それによってカラムの壁のたわみ量が制限され、特許請求の範囲の相応しい機能を確保するのに役立つことになる。適切な誘導フープ応力があることで、カラムは大きな動作圧力に耐え、永久的に位置固定することなく油圧シールを維持することもできる。
【0058】
さらに、チューブの内壁は、両端または少なくとも一方の端部で厚さを薄くしたり減らしたりして、約0.0度~約20度、例えば、約1度、3度、5度、7度、9度、11度、13度、15度、または17度の傾斜または面取り部を形成してもよく、これにより流量分配器の挿入を容易にすることができる。面取りは、チューブの端部から内側に向かって、約10mm~約30mmの範囲で行うことが望ましい。詳細は後述するように、流量分配器の外径はチューブの内径よりも大きく、面取り部は製造時に流量分配器をチューブ内に配置するのに役立つ。
【0059】
いくつかの実施形態では、チューブは、各端部で内面に沿って形成された面取り部を有する円筒である。チューブに受け入れられるようなサイズと構成になっている流量分配器は、出口穴に油圧接続された入口穴と、入口穴から流量分配器の充填媒体側に延在する溝などの流体分配管網とを有する。したがって、流量分配器は、流量分配器の第1の側から1つまたは複数の入口位置で流体を受け入れ、チューブに挿入されたときに充填媒体に向いている流量分配器の第2の側に沿って流体を半径方向外側に分配するように構成されている。さらに、典型的には、流れの方向を逆にすることで、流量分配器は第2の側全体で流体を受け入れ、第1の側の1つまたは複数の出口位置に向けて流体を内側に導くことができる。
【0060】
典型的には、流量分配器24A,Bは丸いディスク状の部材であり、その外径は、流量分配器が挿入されるチューブの内径よりもわずかに大きく、その挿入により、所望の内圧まで漏れを防止するのに有効なフープ応力を誘導するのに十分な絞まり嵌めが生じることになる。流量分配器は比較的半径方向に非圧縮性で、チューブの壁は比較的順応性があるため、絞まり嵌めによりチューブが膨張し、液密シールが形成される。例えば、200mmの内径を有するポリプロピレンチューブ20の場合、ポリプロピレン流量分配器は、201~204mm(例えば、約202mm)の外径を有することができる。内径が300mmの場合、流量分配器24の外径は、約302~306mmとすることができる。チューブ20と流量分配器24A、Bの両方は、組み立て時に誘導フープ応力が材料の降伏強度よりも小さくなるように設計される。したがって、管壁と、多くの実施形態ではそれよりも低い程度で、流量分配器とは、カラムの寿命の間、塑性変形を経て、そのフープ応力を維持する。このフープ応力の値が、チューブと流量分配器の界面での漏れのないシールを保証し、カラムの最大動作圧力を制限する。
【0061】
フィッティングは、流量分配器および流量分配器が配置されているチューブに流体を供給したり、流量分配器および流量分配器が配置されているチューブから流体を取り除いたりするために、流量分配器に締結または固定することができる機械的な連結部である。流体を供給するために、フィッティングには、その中心軸に沿って当該フィッティングを貫通する流体供給穴が形成されている。フィッティングはまた、当該フィッティングを保持するために流量分配器のフィッティング穴に受け入れられる1つまたは複数の特徴部を含む。
図1および
図2に示すように、フィッティング38は、流量分配器24に係合するためのねじ込み型の端部40(例えば、M30×3.5のねじ込み型の端部)を有する。フィッティング38はまた、フィッティング穴26内でフィッティング38を回して固定するための工具(例えば、トルクレンチ)で把持できるナット部分42を有する。いくつかの実施形態では、フィッティング28は、他のタイプの接続機構、例えば接着剤、溶接、バヨネットまたはルアー接続、または他の十分な接続技術を含む。
【0062】
クロマトグラフィーカラム50はまた、チューブ20および上部流量分配器24aを囲む上端キャップ54をさらに含むことができる。トップキャップ54は、チューブ20の一部(例えば、上部)を受け入れて固定する特徴部(例えば、穴、凹部、または把持要素)を含む。トップキャップ54は、入口フィッティング38aおよび遠隔クイックディスコネクト出口フィッティング48をそれぞれ受け入れるようなサイズと構成になっている入口フィッティング穴56および出口フィッティング穴58を含む。トップキャップ54はまた、クロマトグラフィーカラム50を持ち上げて運ぶのに使用できるか、または一体型のキャスターを有するかもしくはローリングカート/ドーリーに一旦置かれた大型のカラムを操縦/誘導するのに使用できる1つまたは複数のハンドル60を含むことができる。トップキャップ54は、ハンドルで持ち上げられたときにクロマトグラフィーカラムの重量を支えることができる金属、プラスチック、または複合材料などの構造的に適した任意のさまざまな材料から作られる。この例では、トップキャップは、ABS、PE、PP、またはガラス充填物、例えばガラス繊維、プラスチックで作られている。
【0063】
シュラウドまたはサイドガードピース62をさらに含むことができる。シュラウドピース62は、基部52からトップキャップ54まで延在し、クロマトグラフィーカラム50の内部構成要素の一部(例えば、出口フィッティング38bを遠隔出口フィッティング48と接続するホース46)を覆うようなサイズと構成にすることができる。シュラウド62は、金属、プラスチック、または複合材料などの任意のさまざまな適切な材料で形成することができる。
【0064】
上下の流量分配器24A,24Bは、カラムの製造および充填時にチューブ20の上下に取り付けられる(例えば、圧入される)。いくつかの実施形態では、チューブ20と流量分配器24A,24Bの一方または両方は、上部の流量分配器24Aの挿入およびチューブ20に媒体材料を充填する前に、永久的に結合される。カラムを十分に試験した後、第2の、例えば、上部の流量分配器24Aは、任意に所定の位置で永久的に結合される。そのような永久的な結合は、結合部または結合された物品(例えば、チューブ20および流量分配器24A,24B)を破壊する以外には容易に分離できない。上端では、追加のキャップ(例えば、トップキャップ)54を任意にチューブ20に着座させて固定し、カラム頂部の流量分配器24aに取り付けられた入口フィッティング38aが、追加の上端キャップ54の入口フィッティング穴56を通過するように配置することができる。主に審美的な特徴部であるそのような任意のトップキャップ54は、留め具、接着剤、チューブとトップキャップとの間の摩擦、または他の機構などのさまざまな固定メカニズムを使用して、チューブ20に固定することができる。
【0065】
下端では、チューブ20は、任意に、ボトムキャップ(例えば、基部)52に着座させて固定することができる。基部52は、留め具、接着剤、チューブとボトムキャップとの間の摩擦、または他の機構などのさまざまな固定機構を用いてチューブ20に固定することができる。任意の基部52を用いた場合、チューブ20の底部の流量分配器24bに取り付けられた出口フィッティング38bは、任意の基部52の空洞内に延在することができ、底部の流量分配器24bから出口フィッティング38bに接続されたホース46は、チューブ20の外周の外部領域に向かって外側に誘導されている。図示されているように、ホース46は、任意の基部52から、チューブ20の側面に沿って上向きに通されて、カラム50の頂部またはその付近に固定されている遠隔クイックディスコネクト出口フィッティング48に接続することができる。ホース46を使用し、遠隔出口フィッティング48をカラム50の頂部付近に配置することで、ユーザーはチューブ20の下側にアクセスする必要がなく、その結果、クロマトグラフィーカラム50がより使いやすくなる。
【0066】
クロマトグラフィーカラムの構成要素(例えば、チューブ20、流量分配器24a,24b、フィッティング38a,38b、および他の構成要素)は、構造的および化学的に適した任意のさまざまなプラスチック材料から作ることができる。例えば、構成要素は、1つまたは複数の熱可塑性プラスチック(例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリル樹脂(例えば、PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、他の熱可塑性プラスチック、または複合材料)および熱硬化性プラスチック(例えば、エポキシ樹脂、および繊維(例えば、ガラスまたは炭素)強化プラスチック)で作られていてもよい。材料選定の際には、材料の特定の機械的特性や、材料がシステムの誘導された内部動作圧力に耐えられるかどうかを考慮する必要がある。
【0067】
[例]
本開示の原理を、以下の非限定的な例によってさらに説明する。
【0068】
[例1:対照充填]
既存の充填方法を使用してカラム性能のベースラインを確立するために、内径4.4cmのカラム(Vantage(登録商標)、Millipore Corporation社、マサチューセッツ州バーリントン在)に、標準的な振動充填方法を用いて、40μmのセラミックハイドロキシアパタイトType1樹脂(CHT(登録商標)、Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ在)を充填した。カラムの底部にフリット(POREX(登録商標)、ジョージア州フェアバーン在)を挿入し、セラミックハイドロキシアパタイト樹脂のスラリーを調製して底部フリット上に流し込んで15~20cmの高さにした。カラムの頂部に流量分配器と第2のフリットを挿入した。樹脂を毎時200cmで流動充填して層を沈降させ、次いで流量分配器を流動沈降させた層の1mm以内まで下げ、再び毎時200cmで5分間流動充填した。タップサイクルを開始する前の層の高さは16.4cmであった。
【0069】
以下のように3回のタップサイクルを行った。流量無しの状態で、プラスチックのロッドを用いて1分間に2~3回の割合でカラムをタップした。3回のタップサイクルを行った。各サイクルにおいて、カラムの周囲と長さに沿って半ランダムなパターンで1分間タッピングを行うか、またはK10空気圧式ボールバイブレーター(K-10、Vibratechniques Ltd社、英国サセックス在)を用いて30PSIおよび約375Hzでタッピングを行った。次いで、毎時200cmで流量を1分間再開した。
【0070】
3回のタップサイクルの後、層の高さは15.8cmで安定した。これは6mmまたは3.7%の圧密率であった。
【0071】
層圧密を行う前の性能試験では、11041N/mのプレート数と1.1の非対称性が得られた(
図3)。40μmのCHPの性能に関するメーカーの指針は、プレート数が4500N/mを超え、非対称性が0.8~2.3である。一部の用途では、3000N/mを超えるプレート数が許容される。振動で圧密した後、プレート数は1339に減少し、非対称性は1.51となった(
図4)。この充填層はもはや使用可能とは見なされない。結果は以下の表1に見出すことができる。
【表1】
【0072】
これらの結果は、この充填アプローチでは性能が低かったことを示している。
【0073】
[例2:軸方向の圧縮充填]
タップサイクルの前に、例1に記載した方法でカラム充填および流動沈降を行った。
図5に示すように、クロマトグラフィー性能を試験した。次いで、上部フリットと流量分配器を手動で下げて軸方向の圧縮を行い、層を2.5%だけ圧縮して層の高さを16.0cmにした。圧縮後の試験は直ぐには行わなかった。その代わりに、タッピングサイクルを行うことで、層の安定性を評価し、更なる圧密が発生するかどうかを確認した。層の高さの減少は見られず、層がさらに圧密化することはなかった。
【0074】
軸方向の圧縮充填の結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0075】
軸方向に圧縮されたカラムのクロマトグラフィー性能は、当初の結果よりもわずかに向上した(12539N/mに対し15341N/m)(表2の3番目)(
図6)。さらに圧縮充填層の応力試験を行うために、カラムをK10バイブレーターで3サイクル完全に振動させ、試験した。振動サイクルは、充填層に大きな影響を与えなかった。層の高さの減少は観察されず、プレート数は12,000N/m超で安定していた。非対称性も変化しなかった。(表2の4番目)。充填カラムにさらに3回の振動を与え、次いでタッピング試験を行った。性能結果への影響や、更なる層の圧密は観察されなかった(表2の5番目)。
【0076】
[例3:軸方向に圧縮された充填層の応力試験]
例2で調製した圧縮充填カラムについて、さらに3回の応力試験を行った。まず、空気を注入してカラムを乾燥させた。60mlの空気(層容積の25%)をカラムの頂部に注入した。カラムは再水和期間なしで直ぐに試験したが、内径が大きいカラムは再水和期間の恩恵を受ける可能性があることに留意されたい。目視では、出口ラインから空気が出ている状態ではカラムは乾燥していたが、パルス注入試験中のダウンフローを始めてから1分以内に直ぐに再水和した。プレートまたは非対称性に大きな変化はなかった(表2の6番目)(
図7)。
【0077】
次に、流量アダプターをさらに2mm下げて、追加の圧縮を行った。このカラムを再度試験したところ、性能に大きな変化は見られなかった。(表2の7番目)。
【0078】
最後に、カラムの充填品質を評価するために、カラムを水平方向に操作した。緩く充填されたカラムでは、再沈降して流量チャネルを形成し、性能が低下すると予測される。カラムを水平にして毎時100cmの流量で1時間運転した後、同じ条件で試験した。プレート数の減少は10%未満であったが、非対称性は1.15~1.69へと大きく変化し(表2の8番目)、クロマトグラムにおいてピークへのわずかなテーリングが観察された(
図8)。この変化は重要ではあるが、性能結果が仕様外になることはなかった。目視では、層内にチャネルや隙間は観察されなかった。
【0079】
カラムを鉛直方向に再配置し、毎時100cmで1カラム体積(CV)分の流量コンディショニングを行い、次いで試験を行った(表2の9番目)(
図9)。非対称性は1.24に改善されたが、プレート数は9212N/mに減少し、依然として非常に高い効率の結果が得られた。さらに2CVの流量フローコンディショニングを行い、その後試験を行った。非対称性は変化しなかったが、プレート数は13288N/mに改善され、層を元の性能に近い状態に再コンディショニングできることがわかった(表2の10番目)。その結果、圧縮層は非常に堅牢で、メーカーの指針に反して非水平層での操作を行うことも可能であることがわかった。
【0080】
これらの結果に基づいて、このカラム規模で軸方向の圧縮を用いて2.5%の層圧縮を行うことは、更なる圧密から層の高さを安定させ、振動せん断による性能低下を防ぐのに十分であった。この結果は、CHT(商標)メーカーの推奨に基づき予測されるものとは反している。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、層圧縮が粒子を所定の位置にロックし、更なる圧密や層の不安定化を防ぐものと仮定される。「ロック」された粒子はまた、動きが制限されている場合、振動せん断力に抵抗する可能性がある。
【0081】
[例4:異なるレベルの充填された層圧縮の試験]
圧縮の結果としてのクロマトグラフィー効率と非対称性の影響を調べるために、内径12.6cmのOPUS(登録商標)(Repligen Corporation社、マサチューセッツ州ウォルサム在)カラムに、40μmのセラミックハイドロキシアパタイトType1樹脂(CHT(商標)、Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ在)を充填した。ポリエチレンフリットをカラムの底部に挿入した(POREX(商標)、ジョージア州フェアバーン在)。セラミックハイドロキシアパタイト樹脂のスラリーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で調製し、層の高さが18~25cmになるようにカラムに流し込んだ。カラムの頂部に流量分配器と第2のフリットを挿入した。この樹脂をPBSを用いて毎時100cmの流速で流動充填し、層を沈降させた。毎時100cmの流量での沈降層の高さは23.0cmであった。毎時100cmの流速を維持しながら、流量分配器を毎時100cmの動的軸圧縮(DAC)で、流動沈降層の1mm以内まで下げた。カラムは3気圧の圧力降下を提供する流速で3カラム体積にコンディショニングし、層の高さが22.5cmになるまで流動下で層を圧密した。最初の試験は22.5cmで行ったが、これは元の流動沈降層の高さから2.2%の圧密率である。
【0082】
流量分配器を沈降樹脂層に圧縮する前に、カラムのHETP(N/m)と非対称性を試験した。層圧縮を行わなかった初期の試験結果は、6985N/mおよび1.85の非対称性であった。次いで、流量分配器を0.5cm間隔で樹脂層に下げ、各ポイントで性能試験を行った。圧縮率は、上部の流量分配器を下げる前に、毎時100cmで観察された元の流動沈降層の高さ(23cm)から算出した。カラム効率と非対称性は、圧縮率が8.7%まで増加すると改善され、その後、追加の圧縮率でゆっくりと減少した。19.6%の圧縮時のカラム効率は6366N/mであり、非対称性は1.42であった。この結果は、メーカー推奨の性能仕様を依然として満たしている。すべての性能の結果は表3のとおりである。
【表3】
【0083】
[例5:14cmの圧縮充填とISTA輸送試験]
カラム充填、流動沈降、流動コンディショニングは、例4に記載したとおりに行った。この実験では、ポリエチレンフリットは使用しなかった。OPUS(商標)(Repligen Corporation社、マサチューセッツ州ウォルサム在)の内径14cmのカラムに、40μmのセラミックハイドロキシアパタイトType1樹脂(CHT(商標)、Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ在)を充填した。カラムは最終的に10%の圧縮率になるように充填した。圧縮率は、上部の流量分配器を下げる前に、毎時100cmの流動沈降層の高さから算出した。10%の圧縮で得られた層の高さは20.6cmであった。
【0084】
10%圧縮したカラムを、10mMリン酸ナトリウムを含む0.1N水酸化ナトリウムに保存し、マサチューセッツ州サットン在のUN1F1ED2 Global Packing Groupで国際安全輸送協会の2B試験(ISTA2B)の試験を受けさせるために包装した。ISTA2Bの手順には、以下の試験カテゴリーが含まれていた:1時間で710ポンドの圧縮、Grmsレベル1.15のランダム振動、衝撃:毎秒少なくとも1.7mの傾斜衝撃、衝撃:8インチ(20.32cm)での回転エッジドロップ、およびGrmsレベル1.15のランダム振動の2回目。ISTA2B試験の前後で、カラム効率と非対称性についてカラムを試験した。充填層の性能属性は、輸送シミュレーション後も大きく変化しなかった(表4)。
【0085】
ISTA2Bの前後で、圧力対流量プロファイルは変化しないままであった(
図10)。これらのデータと維持されたクロマトグラフィー性能から、圧縮率10%で充填された内径14cmのカラムは輸送用に十分な安定性を有していることがわかる。
【表4】
【0086】
[例6:ISTA輸送試験による拡張圧縮充填、内径45.7cmのカラム]
圧縮充填法の拡張性を示すために、内径45.7cmのOPUS(登録商標)(Repligen Corporation社、マサチューセッツ州ウォルサム在)カラムに、40μmのセラミックハイドロキシアパタイトType1樹脂(CHT(商標)、Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を充填した。カラム充填、流動沈降、流動コンディショニングは、例4および5に記載されているとおりに行った。この実験では、ポリエチレンフリットは使用しなかった。カラムは最終的に10.2%の圧縮率になるように充填した。圧縮率は、上部の流量分配器を下げる前に、毎時100cmの流動沈降層の高さから算出した。10.2%の圧縮で得られた層の高さは20.2cmであった。
【0087】
10.2%圧縮したカラムを、10mMリン酸ナトリウムを含む0.1N水酸化ナトリウムに保存し、マサチューセッツ州サットン在のUN1F1ED2 Global Packing Groupで国際安全輸送協会の2B試験(ISTA2B)の試験を受けさせるために包装した。ISTA2Bの手順には、以下の試験カテゴリーが含まれていた:大気プレコンディショニング、大気コンディショニング、Grmsレベル1.15のランダム振動、衝撃:毎秒少なくとも1.7mの傾斜衝撃、衝撃:8インチ(20.32cm)での回転エッジドロップ、およびGrmsレベル1.15のランダム振動の2回目。ISTA2B試験の前後で、カラム効率と非対称性についてカラムを試験した。充填層の性能属性は、輸送シミュレーション後も大きく変化しなかった(表5)。
【0088】
ISTA2Bの前後で、圧力対流量のプロファイルは変化しないままであった(
図11)。これらのデータと維持されたクロマトグラフィー性能から、圧縮率10%で充填された内径45.7cmのカラムは輸送時に十分な安定性を有していることがわかる。
【表5】
【0089】
[例7:CHT(商標)(80μm)での圧縮充填法]
80μmのセラミックハイドロキシアパタイトType1樹脂(CHT(商標)、Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を、内径10cmのOPUSカラム(Repligen Corporation社、マサチューセッツ州ウォルサム在)に充填した。カラム充填、流動沈降、流動コンディショニングは、例4、5および6に記載されているとおりに行った。機械的に圧縮する前と、いくつかの圧縮間隔(5.8%、7.9%、10.2%、および12.4%の圧縮率)とで、カラム効率と非対称性についてカラムを試験した。圧縮率は、上部の流量分配器を下げる前に、毎時100cmの条件下で観察された流動沈降層の高さから算出した。22.6cmの層の高さが観察された。最終的に12.4%で圧縮した後、カラム性能と充填層の安定性について応力試験を行った。充填カラムを、テーブルUS-RD-18X18とバイブレーターSC-500Tを備えたVibco(登録商標)振動テーブル(Vibco INC.社、ロードアイランド州ワイオミング在)に配置した。3バールの圧力で1分間の振動と1分間の流動を5サイクル行った。さらに、重力落下を4サイクル行い(各サイクルは2~3インチ(5.08~7.62cm)の高さから10回落下させることからなる)、その後1分間の流動を行うことで、カラムの応力試験を行った。
【表6】
【0090】
7.9%まで圧縮した後、非対称性の変化は観察されなかったが、カラム効率は7.9%(3030N/m)から12.4%(2717N/m)に低下した。これらの性能結果は、メーカー推奨スペック内に収まっている。
【0091】
振動と落下のサイクルによってカラムの応力試験を行った後、カラム効率と非対称性に変化はなかった。これらの結果から、圧縮充填法は80μmのCHT(商標)Type1の充填に適しており、良好なカラム性能と安定した充填層が得られることがわかる。
【国際調査報告】